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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】眼鏡形フレーム
(51)【国際特許分類】
   G02C 5/16 20060101AFI20240705BHJP
   G02C 5/20 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G02C5/16
G02C5/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022067810
(22)【出願日】2022-04-15
(65)【公開番号】P2023157727
(43)【公開日】2023-10-26
【審査請求日】2022-10-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399037933
【氏名又は名称】株式会社シャルマン
(74)【代理人】
【識別番号】100110814
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大澤 智治
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】本田 博幸
【審判官】井口 猶二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-8654(JP,A)
【文献】特開2002-139706(JP,A)
【文献】実開平5-50420(JP,U)
【文献】特開2017-49477(JP,A)
【文献】特開2013-68713(JP,A)
【文献】特開2001-21845(JP,A)
【文献】特開2004-37654(JP,A)
【文献】特開平11-337881(JP,A)
【文献】特開2004-93741(JP,A)
【文献】特開2014-38292(JP,A)
【文献】実開平7-44367(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント部と、このフロント部の両端に設けられ耳掛け部を備えたテンプルとを有する眼鏡形フレームにおいて、
前記フロント部側に配置された第一の弾性部及びこの第一の弾性部と前記耳掛け部との間に配置された第二の弾性部を有し、
前記第一の弾性部は、第一の方向の弾性変形を許容するとともに前記第一の方向と異なる方向の弾性変形を規制し、
前記第二の弾性部は、前記第一の方向と交叉する第二の方向の弾性変形を許容するとともに、前記第二の方向と異なる方向の弾性変形を規制し、
前記第一の方向は、眼鏡形フレームを装着する装着者の頭部を挟持する左右方向であり、前記第二の方向は、前記左右方向と直交する上下方向であり、
眼鏡形フレームの装着時における上下方向の力の不作用時には、前記第二の弾性部は上下方向に弾性変形せず、
眼鏡形フレームを脱着する際には、前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部は、各々の二方向の撓みの組み合わせにより、前記頭部に沿って弾性変形し、
前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部の弾性力は、異なる二つの方向への弾性変形の組み合わせにより、前記眼鏡形フレームの脱着時及び装着時に前記眼鏡形フレームに作用する力による前記フロントの歪みを抑制するとともに、前記装着者の耳への負荷や痛みを軽減するものであること、
を特徴とする眼鏡形フレーム。
【請求項2】
前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部が前記テンプルに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡形フレーム。
【請求項3】
前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部の少なくとも一方が板ばねであることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡形フレーム。
【請求項4】
前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部の少なくとも一方が複数本の棒状部材から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡形フレーム。
【請求項5】
複数本の前記棒状部材を中間部で捻り、前記中間部より前記フロント部側に前記第一の弾性部を配置し、前記耳掛け部側に前記第二の弾性部を配置したことを特徴とする請求項に記載の眼鏡形フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズやフェイスシールドの他、ライト、カメラ及び小型ディスプレイを含むウェアラブルデバイスなどの機能部材を保持する眼鏡形フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡形フレームは、フロント部に取付けられた左右のノーズパッドを鼻の両側に当て、先端がくの字状に湾曲した左右のテンプルを左右の耳の上方に当てて掛けることにより、四点で安定保持されるようになっている。また、こめかみ部分にパッドを当接させるなどして前記ノーズパッドを不要とした眼鏡形フレームにおいても、左右の前記パッドと左右のテンプルとで、四点で安定保持されるようになっている。βチタンやステンレスなどの弾性を有する部材で形成された前記テンプルは、その弾性によって装着者の頭部を左右両側から挟み込むことで、前記装着者が下を向いたり、頭部を動かしたり、運動をしたりしても前記フロント部が装着者の顔面から位置ずれしにくいようにしている。
【0003】
ところで、テンプルには種々の断面形状を有するものがあるが、断面矩形状のものは、弾性力を一方向に集中させることができることから装着者の頭部を左右両側から強く挟持することができ、前記フロント部が装着者の顔面から位置ずれしにくくできるものの、眼鏡形フレームを脱着する際に湾曲した耳掛け部が装着者の耳に沿って滑りながら押し上げられることから、装着者の耳に大きな負荷が作用し、違和感や痛みを感じるという不具合があるほか、フロント部に大きな捻り力が作用することから、脱着を繰り返すと眼鏡形フレームが歪んでしまい、四点での安定保持ができなくなるという欠点がある。また、眼鏡形フレームの装着時に、運動などによって眼鏡形フレームに衝撃等の外力が作用すると、テンプルが耳の付け根に押し付けられて耳の付け根に痛みを感じたり、衝撃等の繰り返しによりテンプルと耳の付け根とが擦れ合って耳の付け根を傷めてしまうおそれがある。
【0004】
その一方で断面円形状のものは、テンプルがあらゆる方向に弾性変形可能であるため、眼鏡形フレームを脱着する際にテンプルが撓んで掛け外しがしやすく、フロント部に作用する捻り力を小さくできるという利点はあるものの、弾性力が拡散されてしまい装着者の頭部を左右両側から強く挟持することができず、フロント部が装着者の顔面から位置ずれしやすいという欠点がある。
特許文献1に記載のメガネフレームのツル(テンプル)は、斜め上方外側に撓み変形又は押し開くことができるように構成することで、断面円形状のテンプルが有する上記の欠点、すなわち、あらゆる方向に撓み変形可能であるため眼鏡形フレームが位置ずれしやすいという欠点を解消するとともに、テンプルを断面縦長の長方形にしても、メガネを外す際にテンプルを斜め上方に撓むようにすることで、メガネを外しやすくしている(例えば明細書の段落0006,0007及び0019の記載参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-182165号公報(明細書の段落0006,0007及び0019の記載参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のメガネのツルでは、装着者の頭部を左右から挟持する力が斜め上方向に分散されてしまい、フロント部が装着者の顔面から位置ずれしやすくなる。そのほか、弾性力の作用方向が斜め上の一方向だけであるため、複雑な頭部形状に沿って柔軟に変形することができないことから、フロント部に作用する捻り力も未だ大きく、脱着を繰り返すことで眼鏡形フレームが歪やすいという課題を解決するには未だ不十分である。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、断面矩形状のテンプルが有する利点と断面円形状のテンプルが有する利点を併せ持ち、特許文献1に記載のメガネでは解決できない課題を解決することができ、かつ、眼鏡形フレームの脱着時や衝撃時に耳に作用する負荷を軽減することができる眼鏡形フレームの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の眼鏡形フレームは、請求項1に記載するように、フロント部と、このフロント部の両端に設けられ耳掛け部を備えたテンプルとを有する眼鏡形フレームにおいて、前記フロント部側に配置された第一の弾性部及びこの第一の弾性部と前記耳掛け部との間に配置された第二の弾性部を有し、前記第一の弾性部は、第一の方向の弾性変形を許容するとともに前記第一の方向と異なる方向の弾性変形を規制し、前記第二の弾性部は、前記第一の方向と交叉する第二の方向の弾性変形を許容するとともに、前記第二の方向と異なる方向の弾性変形を規制し、前記第一の方向は、眼鏡形フレームを装着する装着者の頭部を挟持する左右方向であり、前記第二の方向は、前記左右方向と直交する上下方向であり、眼鏡形フレームの装着時における上下方向の力の不作用時には、前記第二の弾性部は上下方向に弾性変形せず、眼鏡形フレームを脱着する際には、前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部は、各々の二方向の撓みの組み合わせにより、前記頭部に沿って弾性変形し、前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部の弾性力は、異なる二つの方向への弾性変形の組み合わせにより、前記眼鏡形フレームの脱着時及び装着時に前記眼鏡形フレームに作用する力による前記フロントの歪みを抑制するとともに、前記装着者の耳への負荷や痛みを軽減するものとして構成されている。
【0008】
前記第一の弾性部はフロント部の智などに設けてもよいが、請求項に記載するように、前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部の両方をテンプルに設けてもよい。
このように構成すれば、例えば第一の弾性部で弾性力を一方向に集中させて装着者の頭部を左右両側から強く挟持することができ、第二の弾性部でテンプルを撓ませることで、眼鏡形フレームの脱着時に装着者の耳に大きな負荷を掛けないようにすることができる。また、第一の弾性部と第二の弾性部の組み合わせにより、フロント部に作用する捻り力を緩和することができる。
【0009】
本発明において、前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部の弾性力は、互いの弾性部の機能を阻害させないものとするのがよい。例えば、第一の弾性部が装着者の頭部を左右両側から強く挟持させて、眼鏡形フレームが位置ずれしないように機能する場合、前記第二の弾性部は、眼鏡形フレームに衝撃が作用したときなどに、その弾性力によって眼鏡形フレームを位置ずれさせるものでない弾性力とする。
【0010】
なお、頭部の形状や耳の位置・高さなどは装着者の個々によって異なり、従って第一の弾性部の前記第一の方向及び前記第二の弾性部の第二の方向も装着者によってその最適方向が相違する。そこで前記第一の弾性部と前記第二の弾性 部とは、前記第一の方向と前記第二の方向の相対角度が可変となるように設けられている構成とすることで、装着者の個々に応じた第一の方向及び第二の方向を設定することが可能になる。
【0011】
前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部の材質や形態は、本発明の作用を奏するものであれば特に限定されないが、請求項に記載するように、前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部の少なくとも一方を板ばねから形成してもよい。
また、請求項に記載するように、前記第一の弾性部及び前記第二の弾性部の少なくとも一方を、複数本の棒状部材から形成してもよい。この場合、請求項に記載するように、複数本の前記棒状部材を中間部で捻り、前記中間部より前記フロント部側に前記第一の弾性部を配置し、前記耳掛け部側に前記第二の弾性部を配置するようにしてもよい。前記棒状部材は、断面円形、断面楕円形、断面角形のいずれであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の眼鏡形フレームは、第一の弾性部と第二の弾性部の二軸方向の弾性変形の組み合わせにより、頭部形状に沿った弾性変形が可能になり、眼鏡形フレームの脱着がしやすくなるとともに、フロント部Fに伝達される曲げ力を小さくしてフロント部Fの歪みを抑制することができる。また、運動などで眼鏡形フレームに外から衝撃が作用したときにも、この衝撃を第一の弾性部や第二の弾性部が吸収することで、耳に作用する負荷や痛みを軽減することができる。
このように本発明は、断面矩形状のテンプルが有する利点と断面円形状のテンプルが有する利点とを併せ持ち、かつ、断面矩形状のテンプルが有する欠点と断面円形状のテンプルが有する欠点とを同時に解決することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の眼鏡形フレームの好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第一の実施形態]
図1は、本発明の眼鏡形フレームの第一の実施形態に係り、(a)は左右のテンプルのうちの一方のテンプルの平面図、(b)は(a)の側面図である。
以下の説明で眼鏡形フレームは、レンズを保持するフロント部Fを備えた眼鏡フレームとして説明する。左右のテンプル1は、一端が智FaにヒンジFbを介してフロント部Fに連結されることで、フロント部Fに対して折り畳み自在である。左右のテンプル1の他端側は、装着者の耳Hbに沿って掛けることができるように湾曲する耳掛け部Mとして形成されている。
【0014】
ヒンジFbと耳Hbとの間におけるテンプル1の一端側(ヒンジFb側)には、第一の弾性部11が形成され、同他端側には第二の弾性部12が形成されている。
第一の弾性部11の一端と智Fa、第一の弾性部11の他端と第二の弾性部12の一端、第二の弾性部12の他端と耳掛け部Mの一端とは、ろう付けやレーザ溶接、ねじなどで連結することができる。また、第一の弾性部11と第二の弾性部12とは、プレス加工や切削加工などにより一体に形成してもよい。
【0015】
この実施形態では、第一の弾性部11及び第二の弾性部12は、βチタンやステンレス、ばね鋼などの弾性を有する略長方形状の板ばねによって形成されている。板ばねで形成された第一の弾性部11及び第二の弾性部12は、それぞれの両端に曲げ力を加えることで平坦な表裏面側に弾性的に撓み、その他の方向に撓みは生じない。
そして、テンプル1の一端側(ヒンジFb側)には、板ばねの平坦な一面が装着者の側頭部Haに対面する方向(以下の説明では、この方向を「第一の方向」とする)を向くように第一の弾性部11が配置され、第一の弾性部11と耳掛け部Mとの間には、第一の弾性部11の表裏面の向きに対して交叉する方向(同「第二の方向」とする)に平坦な表裏面を向けて、第二の弾性部12が配置されている。なお、この実施形態において、前記第一の方向と第二の方向との交叉角は略直角である。
【0016】
第一の弾性部11と第二の弾性部12とをこのように配置することで、装着者が眼鏡形フレームを頭部Hに装着すると、耳掛け部Mが側頭部Haに沿って外側に押され、この際に生じる曲げ力によって第一の弾性部11が前記第一の方向に撓む。一方、第二の弾性部12は前記第二の方向以外の方向への撓みが規制される。第一の弾性部11が前記第一の方向に撓むことで、図1(a)の符号I,IIに示すようにテンプル1が外側に拡開し、装着者によって頭部幅が異なっても十分に対応することができる。また、外側に拡開した左右のテンプル1が装着者の頭部Hを挟持し、眼鏡形フレームの位置ずれを抑制する。
また、眼鏡形フレームを脱着する際には、耳Hbに沿って湾曲状の耳掛け部Mが移動することで耳掛け部Mが耳Hbによって上方に押されるが、この際に生じる曲げ力によって第二の弾性部12が撓み、耳掛け部Mを上方に移動させる(図1(b)の位置I及び位置II参照)。一方、第一の弾性部11は前記第一の方向以外の方向への撓みが規制される。これにより、耳Hbに作用する負荷や痛みを軽減することができる。
【0017】
本発明の眼鏡形フレームでは、第一の弾性部11と第二の弾性部12とがそれぞれ独立して別方向に弾性的に撓むことで、一軸方向の弾性変形だけでなく、二軸方向の弾性変形の組み合わせで頭部形状に沿った弾性変形が可能となり、これにより眼鏡形フレームの脱着がしやすくなるとともに、フロント部Fに伝達される曲げ力を小さくしてフロント部Fの歪みを抑制することができる。さらに、運動などで眼鏡形フレームに外から衝撃が作用したときにも、この衝撃を第一の弾性部11や第二の弾性部12が吸収することで、耳掛け部Mを介して耳Hbに作用する負荷や痛みを軽減することができる。
【0018】
[第二の実施形態]
図2は、本発明の眼鏡形フレームの第二の実施形態に係り、(a)はテンプルの要部の部分平面図、(b)(c)は連結部の一つであるI部の部分拡大図で、(b)は連結前の状態を、(c)は連結後の状態を示している。
この実施形態では、第一の弾性部11の一端と智Fa、第一の弾性部11の他端と第二の弾性部12の一端、第二の弾性部12の他端と耳掛け部Mの一端とは、螺旋軸130と螺旋孔131とによる連結部13で連結されている。
図2(a)中、符号Aで示す部分の連結部13は、第二の弾性部12の他端に形成された螺旋軸130と、耳掛け部Mの他端に形成され螺旋軸130が螺入できる螺旋孔131とを有している。
【0019】
耳掛け部Mに対する第二の弾性部12の取り付け角度(第二の方向の向き)の大小は、螺旋孔131に螺入できる螺旋軸130の螺入長さを長短調整することで、調整することができる。前記螺入長さは、螺旋軸130の軸長を長短変更することで調整することができるが、図示の例のように、螺旋軸130に着脱自在なワッシャ133の肉厚や枚数を変えることで、前記螺入長さを簡単かつ自在に長短調整することができる。符号B,Cで示す部分の連結部13も同様に構成することができ、各部分A,B,Cの螺旋軸130の螺入長さを調整することで、前記第一の方向及び前記第二の方向の交叉角度を、眼鏡形フレームの装着者の個々に応じた最適な角度に調整することが可能になる。
【0020】
[第三の実施形態]
図3は、本発明の眼鏡形フレームの第三の実施形態に係り、(a)はテンプルの要部の部分平面図、(b)は同側面図である。
この実施形態の眼鏡形フレームにおけるテンプル2は、先の実施形態におけるテンプル1の板ばね状の第一の弾性部11及び第二の弾性部12に代えて、弾性を有する複数本の棒状部材21a,22aから形成された第一の弾性部21及び第二の弾性部22を備えている。
先の実施形態と同様に、第一の弾性部21の一端は智Fa(図1参照)に連結され、第二の弾性部22の他端は耳掛け部Mの一端に連結される。第一の弾性部21の他端と第二の弾性部22の一端とは板状又はブロック状の連結部23を介して連結される。
なお、連結部23、智Fa側及び耳掛け部M側の各連結部は、図2に示した第二の実施形態の連結部13と同様の構成としてもよい。
【0021】
第一の弾性部21は、複数本(図示の例では2本)の棒状部材21aを、前記第一の方向に表裏面が向く同一の平面内に配置してあり、第二の弾性部22は、複数本(図示の例では2本)の棒状部材22aを、前記第二の方向に表裏面が向く同一の平面内に配置してある。
棒状部材21a,22aをこのように配置することで、先の実施形態の板ばね状の第一の弾性部11及び第二の弾性部12と同様に、第一の弾性部21において複数本の棒状部材21aは、配置された平面の表裏面側(第一の方向)のみに弾性的に撓み、第二の弾性部22において複数本の棒状部材22aは、配置された平面の表裏面側(第二の方向)のみに弾性的に撓み、その他の方向に撓まない。
【0022】
[第三の実施形態の変形例]
図4は、第三の実施形態の変形例にかかり、(a)はテンプルの要部の部分平面図、(b)は同側面図である。
この実施形態のテンプル3は、第三の実施形態のテンプル2と同様に、第一の弾性部31及び第二の弾性部32が棒状部材から形成されている。第三の実施形態のテンプル2と相違する点は、前記棒状部材が、第一の弾性部31から第二の弾性部32まで連続する単一の棒状部材31aであることである。そして、この棒状部材31aを複数本(図示の例では2本)並設することで、第一の弾性部31及び第二の弾性部32を形成している。
第一の弾性部31では、複数本の棒状部材31aの前部を前記第一の方向に表裏面が向く同一の平面内に配置してあり、第二の弾性部32では、複数本の棒状部材31aの後部を前記第二の方向に表裏面が向く同一の平面内に配置している。
第一の弾性部31と第二の弾性部32との間には、板状又はブロック状の中間部材33が設けられ、複数の棒状部材31aはこの中間部材33に形成された図示しない貫通孔を挿通している。そして、中間部材31aを通過した部分で複数本の棒状部材31aが捻られ、前記第一の方向から第二の方向への方向の転換が行われている。
【0023】
この変形例においても、棒状部材31aをこのように配置することで、第三の実施形態の第一の弾性部21及び第二の弾性部22と同様に作用する。すなわち、第一の弾性部31において複数本の棒状部材31aは、配置された平面の表裏面側(第一の方向)のみに弾性的に撓み、第二の弾性部32において複数本の棒状部材31aは、配置された平面の表裏面側(第二の方向)のみに弾性的に撓み、その他の方向に撓みは生じない。
【0024】
第三の実施形態及びその変形例のテンプル2,3においても、第一の実施形態のテンプル1と同様に、装着者が眼鏡形フレームを頭部Hに装着すると、耳掛け部Mが側頭部Haに沿って外側に押され、この際に生じる曲げ力によって第一の弾性部21,31が第一の方向に撓む。一方、第二の弾性部22,32は、第二の方向以外の方向への撓みが規制される。第一の弾性部21,31が第一の方向に撓むことで、テンプル2,3が外側に拡開し、装着者によって頭部幅が異なっても十分に対応することができる。また、外側に拡開した左右のテンプル2,3が装着者の頭部Hを挟持し、眼鏡形フレームの位置ずれを抑制する。
また、眼鏡形フレームを脱着する際には、耳Hbに沿って湾曲状の耳掛け部Mが移動することで耳掛け部Mが耳Hbによって上方に押されるが、この際に生じる曲げ力によって第二の弾性部22,32が撓み、耳掛け部Mを上方に移動させる。一方、第一の弾性部21,31は前記第一の方向以外の方向への撓みが規制される。これにより、耳Hbに作用する負荷や痛みを軽減することができる。
【0025】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明によって限定されるものではない。
例えば、上記の説明では第一の弾性部11,21、31及び第二の弾性部12,22,32はβチタンやステンレス、ばね鋼などの金属で形成されているものとして説明したが、ばね性(弾性)を有するものであれば他の金属であってもよく、ばね性を有するポリアミドなどの樹脂であってもよい。
また、第一の実施形態において、第一の弾性部11及び第二の弾性部12は平面視して略長方形状の平坦な板ばねとして説明したが、同じ作用を奏するのであれば、平面視した形状は楕円形状や雲形その他の形状としてもよく、波形の板ばねや一部又は全体が一方向に湾曲した板ばねとしてもよい。また、第三の実施形態及びその変形例では、各棒状部材21a,31a,22a,32aを同一平面内に配置するとしているが、各棒状部材21a,31a,22a,32aが三本以上の場合において、第一の弾性部21,31及び第二の弾性部22,32の撓みの方向を第一の方向及び第二の方向に指向させることができるのであれば、必ずしも全てを同一の平面内に配置しなくてもよい。
【0026】
さらに、上記の説明では、第一の弾性部11,21,31が第一の方向を向き、第二の弾性部12,22、32がこれと交叉する第二の方向を向くようにしているが、第一の弾性部11,21,31が第二の方向を向き、第二の弾性部12,22、32がこれと交叉する第一の方向を向くようにしてもよい。このようにすることで、上下方向に弾性変形する第一の弾性部11,21,31を上記の実施形態のテンプル1,2,3よりも耳Hbから遠くに位置させることができ、運動などの際に眼鏡形フレームに衝撃が作用しても、耳Hbへの負担や痛みをより軽減することができる。
また、上記の説明では第一の弾性部及び第二の弾性部をテンプルに設けているが、必ずしも第一の弾性部及び第二の弾性部の両方をテンプルに設けなくてもよく、例えば、フロント部Fの智Faに第一の弾性部を設け、テンプルに第二の弾性部を設けるようにしてもよい。この場合は、例えば智FaのヒンジFbをばねヒンジとし、このばねヒンジを第一の弾性部としてもよい。
さらに本発明では、第一の実施形態の第一の弾性部11、第三の実施形態又はその変形例の第一の弾性部21,31と、第一の実施形態の第二の弾性部12、第三の実施形態又はその変形例の第二の弾性部22,32とを適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の眼鏡形フレームは、レンズやフェイスシールドをフロント部に保持する眼鏡形フレームの他、ライト、カメラ、小型ディスプレイなどに代表されるウェアラブルデバイスなどの機能部材を保持する眼鏡形フレームにも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の眼鏡形フレームの第一の実施形態に係り、(a)は左右のテンプルのうちの一方のテンプルの平面図、(b)は(a)の側面図である。
図2】本発明の眼鏡形フレームの第二の実施形態に係り、(a)はテンプルの要部の部分平面図、(b)(c)は連結部の一つであるI部の部分拡大図で、(b)は連結前の状態を、(c)は連結後の状態を示している。
図3】本発明の眼鏡形フレームの第三の実施形態に係り、(a)はテンプルの要部の部分平面図、(b)は同側面図である。
図4】第三の実施形態の眼鏡形フレームの変形例に係り、(a)はテンプルの要部の部分平面図、(b)は同側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1,2,3 テンプル
11,21,31 第一の弾性部
21a,31a 棒状部材
12,22,32 第二の弾性部
22a 棒状部材
13,23 連結部
33 中間部材
130 螺旋部
131 螺旋孔
133 ワッシャ
F フロント部
Fa 智
Fb ヒンジ
M 耳掛け部
H 頭部
Ha 側頭部
Hb 耳
図1
図2
図3
図4