(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】送風具、着衣、及び、空調機材
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20240705BHJP
A41D 13/002 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A41D13/005 103
A41D13/002 105
(21)【出願番号】P 2022164375
(22)【出願日】2022-10-12
(62)【分割の表示】P 2018213353の分割
【原出願日】2018-11-13
【審査請求日】2022-11-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100203460
【氏名又は名称】加藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 光徳
(72)【発明者】
【氏名】梅木 壮太
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201854727(CN,U)
【文献】特開2016-056467(JP,A)
【文献】特開2009-228191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/002
A41D27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を身体側へ送る送風機能を有する上半身着衣と、下半身着衣とを、それぞれ上半身及び下半身に着用する人が装着する送風具であって、
装着時に前記上半身着衣と身体との間に上端側が位置し、装着時に前記下半身着衣と身体との間に下端側が位置し、前記上半身着衣と前記身体との間の空間と、前記下半身着衣と前記身体との間の空間を繋ぐ気体の流路を有する本体部材を備え、
前記本体部材は、人が着用した場合における胴回り方向の幅が、身体に向く側の方向の厚みよりも大きく、
前記本体部材の少なくとも一部が蛇腹状であり、
前記本体部材の前記上端側の開口部が前記下端側の開口部よりも大きい、送風具。
【請求項2】
請求項
1に記載の送風具を備える着衣。
【請求項3】
外気を身体側へ送る送風機能
を有する上半身着衣
と、下半身着衣
とを、それぞれ上半身及び下半身に着用する人が装着する
空調機材であって、
請求項
1に記載の送風具と、
前記送風具を取り付け可能な被取付部を有する前記上半身着衣及び前記下半身着衣の少なくとも一方と、を有する、空調機材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風具、その送風具を備える着衣、及び、その送風具を備える空調機材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上半身着衣又は下半身着衣に外気を身体側へと導入する送風機を設け、着衣と身体との間に導入された外気により、身体を冷却する効果を得るものが実用化されている。一方、送風機を備える着衣は、一般的な着衣と比べて高価であるという問題もある。この点を解決したものとして、特許文献1に記載の送風具がある。特許文献1に記載の送風具では、コルセットの外面に複数の筒を取り付けており、上半身着衣と身体との間の空気を下半身着衣と身体との間へと流出させることができる。こうすることで、上半身着衣のみに送風機が設けられている場合でも、下半身に対する冷却効果を得ることができるため、送風機を有する下半身着衣を用意する必要がなくなり、着衣全体のコストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送風機が設けられた着衣は、作業現場等の身体を頻繁に動かす現場で着用されるのが一般的であるため、送風具には、身体を頻繁に動かす状況に適した機能が求められる。この点で、特許文献1に記載の送風具では、コルセットがずれたりすることで機能を十分に果たさなくなる場合もあり、構造的に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、各種の機能を改善した送風具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の基本構成は、外気を身体側へ送る送風機能を少なくとも一方が有する上半身着衣及び下半身着衣を、それぞれ上半身及び下半身に着用する人が装着する送風具であって、装着時に前記上半身着衣と身体との間に上端側が位置し、装着時に前記下半身着衣と身体との間に下端側が位置し、前記上半身着衣と前記身体との間の空間と、前記下半身着衣と前記身体との間の空間を繋ぐ気体の流路を有する本体部材を備えている。
【0007】
第1の構成では、基本構成に加えて、前記本体部材の前記上端側には、装着時に前記上半身着衣側から前記身体側へ向けて前記下端側へと傾斜している上端傾斜部が設けられている。
【0008】
送風機能を有する着衣は、作業現場等で使用されるのが一般的であり、作業現場等では屈む動作等が頻繁に行われる。屈む動作等が行われた場合には上半身下着がずり上がり、屈んだ状態から上半身を起こした状態へと姿勢を変化させた場合には、ずり上がった上半身下着が上半身着衣と送風具との間に入り込み、本体部材の流路を閉塞するおそれがある。この点、第1の構成では上端側に上端傾斜部を設けているため、ずり上がった上半身下着を上端傾斜部に沿わせて送風具と身体との間へと誘導することができる。したがって、ずり上がった上半身下着が上半身着衣と送風具との間に入り込む事態を抑制することができる。
【0009】
第2の構成では、基本構成に加えて、前記本体部材の前記下端側には、装着時に前記身体側から前記下半身着衣側へ向けて前記上端側へと傾斜している下端傾斜部が設けられている。
【0010】
作業現場では屈む動作等が頻繁に行われるため、送風具と下半身着衣との擦れが頻繁に起こる。第2の構成では、下端側に下端傾斜部を設けているため、本体部材の下端側と下半身着衣との接触面積を増加させることができ、下半身着衣と送風具とが擦れた際の下半身着衣の損傷を抑制することができる。
【0011】
第3の構成では、基本構成における本体部材を複数備え、前記本体部材どうしは、互いに相対的な回動を許容し、且つ、前記身体方向への重畳が抑制されて接続されている。
【0012】
第3の構成では、複数の本体部材どうしが相対的に回動可能であるため、各本体部材の身体に対する角度をそれぞれ異ならせることで、送風具全体の形状をより身体の形状に沿った形状とすることができる。また、作業時等には、各本体部材と身体との角度が作業に好適な角度となるように、各本体部材と身体との角度が変化するため、作業に好適な送風具を提供することができる。加えて、本体部材の重畳を抑制しているため、本体部材の重畳に起因する嵩張りを抑制することができる。
【0013】
第4の構成では、基本構成における本体部材を複数備え、前記本体部材は、人が着用した場合において胴回り方向に並列に設けられ、互いの側面の一部で接続されている。
【0014】
第4の構成では、本体部材の身体に対する角度等を個別に変更することができるため、作業時等における姿勢の変化に対して本体部材が個別に追従する。したがって、作業に好適な送風具を提供することができる。
【0015】
第5の構成では、基本構成に加えて、本体部材の少なくとも一部が蛇腹状である。
【0016】
第5の構成では、本体部材を蛇腹状としているため、本体部材の形状が人の身体の動きに沿って変形し、作業現場において好適に使用することができる。加えて、蛇腹状とすることで変形可能としつつ強度を確保しているため、着用者が姿勢を変化させた場合等でも流路が閉塞せず、上半身着衣と下半身着衣との間での空気の流通を担保することができる。
【0017】
第6の構成では、基本構成に加えて、前記本体部材が着衣側と身体側との間での変形を抑制する補強部を備える。
【0018】
第6の構成では、補強部により着衣側と身体側との間での変形を抑制しているため、変形による流路の閉塞を抑制することができる。したがって、着用者が姿勢を変化させた場合等でも流路が閉塞せず、上半身着衣と下半身着衣との間での空気の流通を担保することができる。
【0019】
第7の構成では、基本構成に加えて、胴回り方向の幅が身体方向の厚みよりも大きい。
【0020】
第7の構成では、本体部材が扁平した形状であるため、流路面積を確保しつつ、送風具を装着した際の嵩張りを抑制することができる。
【0021】
第8の構成では、基本構成に加えて、前記上端側の前記流路の面積と、前記下端側の前記流路の面積が異なる。
【0022】
第8の構成では、特に、送風機能を有する着衣側の流路の面積を送風機能を有しない着衣側の流路の面積よりも大きくすることで、送風機能を有する着衣側から送風機能を有しない着衣側へと空気を送る場合に、流路内を通過する気体の流速を向上させることができる。これにより、送風機能を有する着衣側からより効率よく空気を送出するとともに、送風機能を有しない着衣側からの体温により温められた空気の逆流を抑制することができる。
【0023】
第9の構成では、基本構成における本体部材を3以上備え、前記本体部材のうちの少なくとも2つは、他の前記本体部材よりも前記流路が長い。
【0024】
第9の構成では、他の本体部材よりも流路が長い本体部材のそれぞれを、足へ向けて空気が吹きだすように配置することができる。
【0025】
第10の構成では、基本構成に加えて、前記上半身着衣及び前記下半身着衣の少なくとも一方に取り付け可能な取付部を備える。
【0026】
第10の構成では、作業現場等で人が姿勢を変化させた場合でも、送風具は着衣に追従するため、上半身着衣と身体との間の空間と、下半身着衣と身体との間の空間とにおける、空気の流通機能を維持することができる。
【0027】
第11の構成は、基本構成に加えて、第1~第10のいずれかの構成を備える着衣である。
【0028】
第11の構成により、第1~第10のいずれかの構成の効果を着衣に付与することができる。
【0029】
第12の構成は、基本構成を備える送風具と、その送風具を取り付け可能な被取付部を有する前記上半身着衣及び前記下半身着衣の少なくとも一方と、を有する、空調機材である。
【0030】
第12の構成においても、第11の構成と同様に、送風具が奏する効果を着衣に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図5】第1実施形態に係る送風具の左側面図である。
【
図6】第1実施形態に係る送風部のA-A断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る送風具を人が装着した場合の背面図である。
【
図8】第1実施形態に係る送風具を人が装着した場合の断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る送風具の平面図である。
【
図11】第3実施形態に係る送風具の背面図である。
【
図12】第4実施形態に係る送風具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0033】
<第1実施形態>
本実施形態に係る送風具10は、人が着用する着衣に対して装着して使用するものである。本実施形態に係る送風具の構造について、
図1~6を参照して説明する。
【0034】
送風具10は、断面が角丸長方形の筒状である本体部材11を備えている。この本体部材11において、周面の長辺側の一方を正面と称し、他方を背面と称する。また、周面の短辺側を側面と称する。本体部材11の軸方向の一方の端部である上端部12は、背面側の長辺から正面側の長辺側へと、他方の端部である下端部13へ向けて傾斜した上端傾斜部14が設けられている。この上端傾斜部14は、正面方向の略中間まで略一定の角度で傾斜しており、その位置から正面側の長辺へ向けては、中心軸に対して平行となっている。一方、下端部13には、正面側の長辺から背面側の長辺へと、上端部12側へ向けて傾斜した下端傾斜部15が設けられている。この下端傾斜部15は、背面方向の略中間まで略一定の角度で傾斜しており、その位置から背面側の長辺へ向けては、中心軸に対して平行となっている。
【0035】
上端部12と下端部13との間の領域である中間部16の周面は、蛇腹状に形成されている。具体的には、本体部材11の上下方向の軸方向に向けて、全周に亘る凹部と全周に亘る凸部とが交互に設けられており、本体部材の外側面が凸形状であれば内側面は凹形状であり、外側面が凹形状であれば、内側面が凸形状である。したがって、ある凹部に囲まれる面は本体部材11の中心軸に対して直交しており、ある凸部に囲まれる面も同様に、本体部材11の中心軸に対して直交している。また、各凹凸は、厚みが略均一となるように設けられている。本体部材11の内側の空間には、本体部材11の短辺に平行な板状の、本体部材11の両長辺を繋ぐ補強部17が2つ設けられている。この一対の補強部17は平行に設けられており、且つ、それぞれの隣接する短辺からの距離は等しい。また、補強部17の厚みは全面に亘って略均一である。
【0036】
以上のように構成される本体部材11は、内部の空間の中心軸に垂直な面の面積が、上端部12から下端部13へ向けて、徐々に小さくなる。すなわち、正面、背面、及び側面の幅が、それぞれ一定の割合で、上端部12から下端部13へ向けて徐々に小さくなっている。
【0037】
本体部材11の背面側の外側面には、取付部18が設けられている。この取付部18は、本体部材11の背面と平行であり且つ幅及び厚みが略均一な板が、本体部材11の上端部12近傍で本体部材11と接続されており、取付部18の下端には、本体部材11側へ隆起した返しが設けられている。また、この取付部18の上下方向の長さは、中間部16の長さよりも短い。
【0038】
続いて、以上のように構成される送風具10を人が装着し、上半身に上半身着衣20を着用し、下半身に下半身着衣30を着用した状態について、
図7及び
図8を参照して説明する。
図7に示すように、上半身着衣20は、人間が着用した際に人間の胴体を覆う胴部21と、人間の腕を覆う一対の腕部22を備えている。胴部21の背中側には、送風装置23が2つ設けられている。この送風装置23には給電線(図示せず)を介してバッテリ(図示せず)が接続されており、スイッチ(図示せず)が操作されることでバッテリから送風装置23へ電力が供給され、送風装置23が備えるファンが回転する。この、送風装置により、上半身着衣20の外部から人の身体側へと送風が行われる。
【0039】
図7及び8に示すように、着用者は下半身着衣30を着用しており、
図8に示すように、上半身下着24、及び下半身下着31を着用しているが、下半身着衣30は一般的な形状のズボンであるし、上半身下着24および下半身下着31のそれぞれも、一般的な形状のものであるため、具体的な説明は省略する。
【0040】
図8に示すように、送風具10における本体部材11の上端部12側は、上半身着衣20と上半身下着24との間に位置するように装着され、下端部13側は、下半身着衣30と下半身下着31との間に位置するように装着される。このとき、下半身着衣30に取り付けられたベルト32を取付部18と本体部材11とが挟持することで、送風具が下半身着衣30に取り付けられる。また、本体部材11の正面側が上半身下着24、下半身下着31および身体40の側を向き、本体部材11の背面側が上半身着衣20及び下半身着衣30の側を向くように取り付けられる。
【0041】
したがって、上端傾斜部14は、上半身着衣20側から身体40側へ向けて下端部13側へと傾斜していることとなり、下端傾斜部15は、身体40側から下半身着衣30側へ向けて上端部12側へと傾斜することとなる。
【0042】
このようにして送風具10が装着された状態で、送風装置23を起動させるスイッチが操作されれば、送風装置23から取り込まれた空気が上半身着衣20と上半身肌着24との間に充填され、且つ、その空気の一部は、送風具10の本体部材11内を通過して、下半身下着30と下半身下着31との間へと流入する。すなわち、送風具10の本体部材11は、上半身着衣20と身体40との間の空間と、下半身着衣30と身体40との間の空間とを繋ぐ、気体の流路として機能している。このとき、人の上半身から熱を奪った空気は、主に、上半身着衣20の襟口及び袖口から外部へと放出される。また、人の下半身から熱を奪った空気は、主に、下半身着衣30の足首から外部へと放出される。
【0043】
上記構成により、本実施形態に係る送風具は、以下の効果を奏する。
【0044】
・送風機能を有する上半身着衣20は、作業現場等で使用されるのが一般的であり、作業現場等では屈む動作等が頻繁に行われる。屈む動作等が行われた場合には上半身着衣20と身体40との間で着用される上半身下着24がずり上がり、屈んだ状態から上半身を起こした状態へと姿勢を変化させた場合には、ずり上がった上半身下着24が上半身着衣20と送風具10との間に入り込み、本体部材11の上端部12の開口を閉塞するおそれがある。この点、本実施形態では上端部12に上端傾斜部14を設けているため、ずり上がった上半身下着24を上端傾斜部14に沿わせて送風具10と身体40との間へと誘導することができる。したがって、ずり上がった上半身下着24が上半身着衣20と送風具10との間に入り込む事態を抑制することができる。
【0045】
・作業現場等では屈む動作等が頻繁に行われるため、送風具10と下半身着衣30との擦れが頻繁に起こる。本実施形態では、下端部13に下端傾斜部15を設けているため、下端部13における下半身着衣30との接触面積を増加させることができる。したがって、下半身着衣30と送風具10とが擦れた際の下半身着衣30の損傷を抑制することができる。
【0046】
・本体部材11において、上端部12側の流路面積を下端部13側の流路面積よりも大きくしているため、上半身着衣20と身体40との間から下半身着衣30と身体40との間へと空気を送る場合に、本体部材11内を通過する空気の流速を向上させることができる。これにより、上半身着衣20と身体40との間からより効率よく空気を送出するとともに、下半身着衣30と身体40との間からの体温により温められた空気の逆流を抑制することができる。
【0047】
・補強部17を備えているため、その補強部17により着衣側と身体40側との間での変形が抑制され、気体の流路の閉塞を抑制することができる。したがって、着用者が姿勢を変化させた場合等でも気体の流路が閉塞せず、上半身着衣20と下半身着衣30との間での空気の流通を担保することができる。
【0048】
・本体部材11が扁平した形状であるため、流路面積を確保しつつ、送風具10を装着した際の嵩張りを抑制することができる。
【0049】
・取付部18を備えており、その取付部18により送風具10を下半身着衣30に取り付けることができるため、送風具10は下半身着衣30の動きに追従する。これにより、作業現場等で人が姿勢を変化させた場合でも、上半身着衣20と身体40との間の空間と、下半身着衣30と身体40との間の空間とにおける、空気の流通機能を維持することができる。
【0050】
・本体部材11の中間部16を蛇腹状としており、外側面に連続する凹凸が設けられているため、その凹凸の角と、上半身着衣20や下半身着衣30等とが接触し、摩擦力が増加したり、引っ掛かったりする。したがって、本体部材11の装着場所の位置ずれを抑制することができる。
【0051】
<第2実施形態>
本実施形態に係る送風具50は、構造の一部が第1実施形態と異なっている。本実施形態に係る送風具50について、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0052】
送風具50は、筒状の本体部材51,51a,51bを備えており、本体部材51,51a,51bは、同等の形状である。これら本体部材51,51a,51bは、断面が角丸長方形である筒状である。この本体部材51,51a,51bにおいて、第1実施形態と同様に、周面の長辺側の一方を正面と称し、他方を背面と称する。また、周面の短辺側を側面と称する。本体部材51,51a,51bの軸方向の一方の端部である上端部52,52a,52bは、第1実施形態と同様に、それぞれ上端傾斜部が設けられている。この上端傾斜部については、具体的な図示は省略する。一方、下端部53,53a,53bにも、第1実施形態と同様に、傾斜した下端傾斜部55,55a,55bが設けられている。上端部52,52a,52bと下端部の53,53a,53bとの間の領域である中間部56,56a,56bの周面は、第1実施形態と同様に、蛇腹状に形成されている。
【0053】
上述した3つの本体部材51,51a,51bについて、中央に位置する本体部材51を中央本体部材51と称し、人が装着した際に中央本体部材51の左側に位置するものを左方本体部材51aと称し、人が装着した際に中央本体部材51の右側に位置するものを右方本体部材51bと称するものとする。中央本体部材51の左側面は、左方本体部材51aの右側面と接続部59により一箇所で接続されている。同様に、中央本体部材51の右側面は、右方本体部材51bの左側面と接続部59により一箇所で接続されている。各接続箇所の上下方向の位置は等しく、各上端部52,52a,52b及び各下端部53,53a,53bの上下方向の位置も等しい。
【0054】
接続部59は円柱形であり、接続部59の両端が各本体部材51,51a,51bの側面に接続されることで、本体部材51,51a,51bどうしを接続している。また、接続部59の長さは、中間部56,56a,56bの短辺の長さよりも短く、接続部58を折り曲げたとしても、本体部材51,51a,51bの正面側どうし、および背面側どうしが重畳しないようになっている。この接続部59は本体部材51,51a,51bと同様にポリエチレンにより形成されており、かつ、各本体部材51,51a,51bとともに、一体成型されている。加えて、接続部59は可撓性を有するため湾曲可能であり、接続部58を軸として、接続部59を捩じることで本体部材51,51a,51bを回動可能である。
【0055】
本体部材51,51a,51bのうち、中央本体部材51の背面側には、取付部58が設けられている。この取付部58については、第1実施形態における取付部18と同等の形状であるため、具体的な説明を省略する。
【0056】
以上のように構成される送風具50は、第1実施形態と同様に、上端部52,52a,52b側が上半身着衣20と身体40との間に位置し、下端部53,53a,53b側が下半身着衣30と身体40との間に位置するように装着される。このとき、送風具50の各本体部材51,51a,51bは、いずれも、上半身着衣20と身体40との間の空間と、下半身着衣30と身体40との間の空間とを繋ぐ、気体の流路として機能する。具体的な使用方法については、第1実施形態と同等であるため、説明は省略する。
【0057】
上記構成により、本実施形態に係る送風具50は、第1実施形態に係る送風具10が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0058】
・本体部材51,51a,51bの中間部56,56a,56bを蛇腹状としているため、本体部材51,51a,51bの形状が人の身体40の動きに沿って変形し、作業現場において好適に使用することができる。
【0059】
・本体部材51,51a,51bの中間部56,56a,56bを蛇腹状とすることで変形可能としつつ強度を確保しているため、着用者が姿勢を変化させた場合等でも流路が閉塞せず、上半身着衣20と下半身着衣30との間での空気の流通を担保することができる。
【0060】
・本体部材51,51a,51bどうしが相対的に回動可能であるため、各本体部材51,51a,51bの身体40に対する角度をそれぞれ異ならせることで、送風具全体の形状をより身体40の形状に沿った形状とすることができる。また、作業時等には、各本体部材51,51a,51bと身体40との角度が作業に好適な角度となるように、各本体部材51,51a,51bと身体40との角度が変化するため、作業に好適な送風具を提供することができる。
【0061】
・接続部59の長さが、中間部56,56a,56bの短辺の長さよりも短いため、接続部58を折り曲げたとしても、本体部材51,51a,51bの正面側どうし、および背面側どうしが重畳しない。これにより、本体部材51,51a,51bの重畳に起因する送風具50全体の嵩張りを抑制することができる。
【0062】
・本体部材51,51a,51bの側面の一箇所を接続部59により接続しているため、身体40に対する本体部材51,51a,51bの角度等を個別に変更することができる。したがって、作業時等における姿勢の変化に対して本体部材を個別に追従させることができる。
【0063】
<第3実施形態>
本実施形態に係る送風具60は、構造の一部が第2実施形態と異なっている。本実施形態に係る送風具60について、
図11を参照して説明する。本実施形態に係る送風具60は、第2実施形態と同様に、断面が角丸長方形である筒状の中央本体部材61、左方本体部材61a、及び右方本体部材61bを備えており、左方本体部材61a、及び右方本体部材61bの形状が第2実施形態と異なっている。
【0064】
本実施形態における左方本体部材61aは中央本体部材61よりも長く、且つ、下端部63a側が左方向へと湾曲している。同様に、右方本体部材61bも中央本体部材61よりも長く、且つ、下端部63b側が右方向へと湾曲している。
【0065】
各本体部材61,61a,61bの軸方向の一方の端部である上端部62,62a,62bは、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、それぞれ上端傾斜部が設けられている。この上端傾斜部については、具体的な図示は省略する。一方、下端部63,63a,63bにも、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、傾斜した下端傾斜部65,65a,65bが設けられている。上端部62,62a,62bと下端部の63,63a,63bとの間の領域である中間部66,66a,66bの周面は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、蛇腹状に形成されている。
【0066】
中央本体部材61には、取付部68が設けられている。また、中央本体部材61と、左方本体部材61a及び右方本体部材61bとは、第2実施形態と同様に、接続部69により接続されている。これら取付部68及び接続部69については、第2実施形態と同等の形状であるため、具体的な説明は省略する。
【0067】
以上のように構成される送風具60は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、上端部62,62a,62b側が上半身着衣20と身体40との間に位置し、下端部63,63a,63b側が下半身着衣30と身体40との間に位置するように装着される。このとき、左方本体部材61aの下端部63aは、着用者の左足の付根近傍に位置し、右方本体部材61bの下端部63bは、着用者の右足の付根近傍に位置することとなる。なお、具体的な使用方法については、第1実施形態と同等であるため、説明は省略する。
【0068】
上記構成により、本実施形態に係る送風具60は、第2実施形態に係る送風具50が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0069】
・送風具60を装着した際に、左方本体部材61a及び右方本体部材61bの下端部63a,63bが、それぞれ左右の足の付根近傍に位置するため、足に向けて効率よく送風を行うことができる。
【0070】
<第4実施形態>
本実施形態に係る送風具70は、構造の一部が第1実施形態と異なっている。本実施形態に係る送風具70について、
図12を参照して説明する。本実施形態に係る送風具70は、第1実施形態に係る送風具10の、正面側の面を有しない形状と同等の形状である。すなわち本実施形形態に係る送風具70の本体部材71は、第1実施形態に係る送風具10の背面に相当する長板状の部材の両側面に、第1実施形態に係る送風具10の側面に相当する長板状の部材が接続されている構造である。したがって、背面図については、第1実施形態と同一であり、正面図、側面図、断面図についても、第1実施形態における各図から自明なものであるため、具体的な図示は省略している。
【0071】
本実施形態に係る送風具70の本体部材71は、図示するように、第1実施形態に係る送風具10が有するものと同等の形状の補強部77、及び、接続部78を備えている。
【0072】
なお、本実施形態に係る送風具の上端部には、第1~3実施形態と同様に上端傾斜部が設けられており、下端部には、第1~3実施形態と同様に下端傾斜部が設けられている。これらの形状は、正面側の面を有しない点を除いて第1実施形態と同様であるため、具体的な図示及び説明を省略する。
【0073】
本実施形態に係る送風具70を装着した場合、送風具を身体40との間の空間が空気の流路として機能し、上半身着衣20と身体40との間の空間と、下半身着衣30と身体40との間の空間とを、その流路が繋ぐことになる。
【0074】
上記構成により、本実施形態に係る送風具70は、第1実施形態に係る送風具が奏する効果に準ずる効果を奏する。
【0075】
<変形例>
・各実施形態では、中間部16,56,56a,56b,66,66a,66b,76を蛇腹状に形成するものとしたが、蛇腹状とせず平坦な板状としてもよい。また、上端部12,52,52a,52b,62,62a,62b,72及び下端部13,53,53a,53b,63,63a,63b,73の少なくとも一方を、端まで蛇腹状に形成してもよいし、上端部12,52,52a,52b,62,62a,62b,72及び下端部13,53,53a,53b,63,63a,63b,73の少なくとも一方を蛇腹状にしつつ、中間部16,56,56a,56b,66,66a,66b,7については平坦な板状としてもよい。なお、蛇腹状に形成するうえで、外側面のみに凹凸を交互に設け、内側面を平坦な面としてもよい。
【0076】
・各実施形態では、本体部材11,51,51a,51b,61,61a,61b,71を上端部12,52,52a,52b,62,62a,62b,72から下端部13,53,53a,53b,63,63a,63b,73へ向かって流路面積が徐々に小さくなるものとしているが、流路面積が一定であってもよい。また、上端部12,52,52a,52b,62,62a,62b,72から下端部13,53,53a,53b,63,63a,63b,73へ向かって流路面積が徐々に大きくなるものとしてもよい。
【0077】
・各実施形態では、上端部12,52,52a,52b,62,62a,62b,72及び下端部13,53,53a,53b,63,63a,63b,73のそれぞれが、全面に亘って開口しているが、一部が開口するものであってもよい。例えば、上端部12,52,52a,52b,62,62a,62b,72及び下端部13,53,53a,53b,63,63a,63b,73の少なくとも一方に、開口部の一部を閉塞する板状の部材を設けたり、1又は複数の孔が設けられた板状の部材を設けたりしてもよい。
【0078】
・第1実施形態及び第4実施形態では、補強部17,77を備えるものとしているが、補強部は備えなくてもよい。また、中間部16,56,56a,56b,66,66a,66b,76を蛇腹状に形成することで、本体部材11,51,51a,51b,61,61a,61b,71の強度が増して流路の閉塞を抑制することができるため、蛇腹状に形成された中間部16,56,56a,56b,66,66a,66b,76を補強部と称することができる。
【0079】
・本体部材11,51,51a,51b,61,61a,61b,71の強度を確保するうえで、本体部材11,51,51a,51b,61,61a,61b,71の材質により、流路の閉塞を抑制する強度を持たせてもよい。また、本体部材11,51,51a,51b,61,61a,61b,71の側面の厚みを増やしたり、短辺の長さを短くしたりして、流路の閉塞を抑制する強度を持たせてもよい。なお、流路の閉塞を抑制する強度を持たせるうえで、正面と背面の幅方向の中間近傍が接触しつつ、幅方向の両端には隙間が生じて流路を確保できればよいが、ベルト32を強く締めたとしても、正面と背面の幅方向の中間近傍が接触しない程度の強度があることが、より好ましい。
【0080】
・各実施形態では、本体部材11,51,51a,51b,61,61a,61b,71の断面形状を角丸長方形としたが、断面形状はこれに限られない。角丸多角形、多角形、円形、長円形、楕円形等、種々の断面形状とすることができる。
【0081】
・各実施形態において、取付部18,58,68,78により送風具10,50,60,70を下半身着衣30に装着するものとしたが、送風具10,50,60,70の取付方法は種々の変更が可能である。例えば、下半身着衣30にはベルト31を装着することが一般的であるため、そのベルト31により送風具10,50,60,70を身体40側へ押圧することで、送風具10,50,60,70を装着するものとしてもよい。また、他の形状の取付部等により、上半身着衣20、上半身下着24、下半身下着32等に送風具10,50,60,70を装着するものとしてもよい。
【0082】
・各実施形態では、送風具10,50,60,70に取付部18,58,68,78を設けるものとしたが、上半身着衣20、下半身着衣30、上半身下着24、下半身下着32等に、送風具10,50,60,70を取り付け可能な被取付部を設けるものとしてもよい。この場合には、空調機材と称することができる。被取付部を備える着衣と送風具10,50,60,70とを纏めて、空調機材と称することができる。
【0083】
・実施形態では、送風具10,50,60,70を下半身着衣30に着脱可能としたが、送風具を着脱可能とせず、あらかじめ上半身着衣20又は下半身着衣30が送風具10,50,60,70を備えるものとしてもよい。
【0084】
・第2実施形態及び第3実施形態では、本体部材51,51a,51b,61,61a,61bを3本設けるものとしたが、本体部材の数はこれに限られない。
【0085】
・第2実施形態及び第3実施形態では、接続部59,69により左右それぞれ1箇所で接続するものとしたが、接続部59,69の数及び接続する部分については、種々の変更が可能である。
【0086】
・第2実施形態及び第3実施形態において、本体部材51,51a,51b,61,61a,61bの上端部52,52a,52b,62,62a,62bの位置を揃えるものとしているが、位置が異なっていてもよい。また、第2実施形態において、本体部材51,51a,51bの下端部53,53a,53bの位置が異なっていてもよい。
【0087】
・第2実施形態及び第3実施形態において、上端傾斜部及び下端傾斜部55,55a,55bの傾斜方向の一部を、逆方向としてもよい。また、傾斜部を有しない本体部材があってもよい。
【0088】
・第2実施形態及び第3実施形態では、各本体部材51,51a,51b,61,61a,61bの断面形状を等しくしているが、異なっていてもよい。
【0089】
・第2実施形態及び第3実施形態では、本体部材51,51a,51b,61,61a,61bどうしを接続部59,69で接続するものとしているが、接続部59,69を設けず、本体部材51,51a,51b,61,61a,61bの側面どうしを直接接続するものとしてもよい。この場合において、側面の全体を接続するものとしてもよいが、第2実施形態及び第3実施形態のように側面の一部のみを接続すれば、装着時の柔軟性を確保することができる。
【0090】
・第2実施形態及び第3実施形態では、円柱形の接続部59,69により本体部材51,51a,51b,61,61a,61bどうしを接続するものとしたが、接続部59,69の形状はこれに限られない。例えば、板状の接続部により接続してもよい。この場合でも、板状の接続部の硬さを撓む程度のものとすれば、本体部材51,51a,51b,61,61a,61bを身体40の動きに追従させて回動させることができる。なお、接続部を板状とした場合に、本体部材51,51a,51b,61,61a,61bの軸方向に水平な板状であってもよいし、垂直な板状であってもよい。
【0091】
・第2実施形態及び第3実施形態のように接続部59,69を設ける代わりに、接続部の機能を有する部材を別に設けるものとしてもよい。例えば、隣接させる本体部材51,51a,51b,61,61a,61bどうしの間に隙間が生じるようにしたうえで、粘着力を有するテープやベルト状の部材等のような柔軟性を有する部材を、外側面に巻き付けるようにしてもよい。
【0092】
・第4実施形態では、第1実施形態に係る送風具10の正面側の面を有しない形状と同等の形状としたが、この形状を第2実施形態に係る送風具50や第3実施形態に係る送風具60に適用してもよい
【0093】
・実施形態では、上半身着衣20が送風機能を有するものとしたが、上半身着衣20については送風機能を有さず、下半身着衣30が送風機能を有する場合でも、各実施形態に係る送風具10,50,60,70を装着して同様の効果を得ることができる。また、上半身着衣20及び下半身着衣30が共に送風機能を有している場合でも送風具10,50,60,70を装着してもよい。この場合には、上半身着衣20及び下半身着衣30の一方の送風機能を停止させた状態で使用することができるため、長時間の作業の場合において送風機能を選択して作動させることができる。また、バッテリ切れの場合にも、他方の着衣の送風機能により、バッテリが切れた着衣側への送風を行うことができる。
【0094】
・実施形態では、送風具10,50,60,70を人の背中側に装着するものとしているが、脇腹近傍に装着してもよいし、腹部近傍に装着してもよい。また、送風具10,50,60,70を装着する数についても一つに限られず、複数であってもよい。この場合に各送風具10,50,60,70の本体部材11,51,51a,51b,61,61a,61b,71どうしが第2実施形態や第3実施形態のごとく接続部で接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。
【0095】
・実施形態では、送風具10,50,60,70を単一の材料で一体成型するものとしたが、材料は実施形態で示したものに限られないし、部材ごとに成型した後に接合させるものとしてもよい。また、部材ごとに材料を変更したりしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10…送風具、11…本体部材、12…上端部、13…下端部、14…上端傾斜部、15…下端傾斜部、16…中間部、17…補強部、18…取付部、20…上半身着衣、30…下半身着衣、40…身体、50…送風具、51…中央本体部材、51a…左方本体部材、51b…右方本体部材、52,52a,52b…上端部、53,53a,53b…下端部、55,55a,55b…下端傾斜部、56,56a,56b…中間部、58…取付部、59…接続部、60…送風具、61…中央本体部材、61a…左方本体部材、61b…右方本体部材、62,62a,62b…上端部、63,63a,63b…下端部、65,65a,65b…下端傾斜部、66,66a,66b…中間部、68…取付部、69…接続部、70…送風具、71…本体部材、77…補強部、78…取付部