(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】超音波を使用して不均一な媒体を非侵襲的に特性化するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2022500603
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 FR2020051416
(87)【国際公開番号】W WO2021023933
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-06-14
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509346184
【氏名又は名称】スーパーソニック・イマジン
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】515185843
【氏名又は名称】エコール・シュペリュール・ドゥ・フィシック・エ・ドゥ・シミー・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ヴィル・ドゥ・パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ランベール
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・オーブリー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ファンク
(72)【発明者】
【氏名】ローラ・コーバス
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0199918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均一な媒体の非侵襲的超音波特性評価のための方法であって、当該方法は、
- トランスデューサによって生成された、不均一な媒体の領域に一連の入射超音波を生成するステップであって、前記一連の入射超音波は、入力送信基底(i)を構成する、ステップと;
- 前記入力送信基底(i)と出力受信基底(u)の間で定義された実験的反射行列R
ui(t)を記録するステップと;
- 第1の点を中心とした入力フォーカルスポットに対応する前記実験的反射行列の入力フォーカシングに基づいて計算された空間位置r
inの入力仮想トランスデューサ(TV
in)と、第2の点(P2)を中心とした出力フォーカルスポットに対応する前記実験的反射行列の出力フォーカシングに基づいて計算された空間位置r
outの出力仮想トランスデューサ(TV
out)と、の間の前記媒体の応答REP(r,Δr)を算出するステップであって、前記応答REP(r,Δr)は、前記媒体中の空間位置rの中心点(PC)の関数として表され、前記中心点(PC)は、前記第1の点(P1)と前記第2の点(P2)との中間に位置し、前記第1及び第2の点を通過する測定軸AX
mの原点であり、前記測定軸は、前記媒体の第1の軸(X)に対して角度βを形成し、前記第1の点(P1)は、前記測定軸上の距離座標+Δrにあり、前記第2の点(P2)は、前記測定軸上の距離座標-Δrにある、ステップと、
含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記応答REP(r,Δr)を算出するステップにおいて、前記実験的反射行列の前記入力フォーカシングは、前記入力送信基底(i)と前記入力仮想トランスデューサとの間の波の外向きの飛行時間を使用し、前記出力フォーカシングは、前記出力仮想トランスデューサと前記出力受信基底(u)の間の波の戻り飛行時間を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記媒体の前記応答REP(r,Δr)は、以下の式によって計算され、
【数1】
ここで、
N
inは、前記入力送信基底(i)の要素数であり。
N
outは、前記出力受信基底(u)の要素数であり、
R
ui(t)は実験的反射行列であり、R
ui(u
out,i
in,τ(r
in,r
out,u
out, i
in))は、時間τで送信i
inに続いてトランスデューサu
outによって記録された前記実験的反射行列R
ui(t)の要素であり、
τは、前記入力送信基底(i)と前記第1の点(P1)との間の超音波の外向き飛行時間τ
inと、前記第2の点(P2)と前記出力受信基底(u)との間の超音波の戻り飛行時間τ
outと、の合計であり、
τ(r
in,r
out,u
out,i
in)=τ
in(r
in,i
in)+τ
out(r
out,u
out)
の式によって表れることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
- 距離座標Δrの複数の値と同じ中心点(PC)とに対して、かつ、所定の角度βに対応している同じ測定軸(AX
m)に対して、計算された複数の応答REP(r,Δr)である応答プロファイルPR(δr)を算出するステップであって、δrは中心点から前記第2の点の距離である、すなわち、Δr=δr.u
βになる値であり、u
βは角度βで定義される測定軸AX
mの方向の単位ベクトルである、ステップ、
をさらに含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
- 前記応答プロファイルPR(δr)の係数に基づいて前記中心点(PC)の解像度w(r)を算出するステップであって、ここで、解像度w(r)は、ゼロ距離座標(|Δr|=0)の辺りを中心とする、前記応答プロファイルPR(δr)のピークの幅である、ステップ、
をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ピークの幅は、前記ピークの最大高さの一部である高さで推定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
- 解像度w(r)及び理論解像度w
0(r)に基づいて前記中心点(PC)のフォーカシング基準F(r)を算出するステップであって、前記理論解像度w
0(r)は、前記入力送信基底(i)と前記出力受信基底(u)とに基づいて算出される、ステップ、
をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
- 前記フォーカシング基準F(r)が前記媒体の複数の点で計算され、前記入力フォーカシング及び/または前記出力フォーカシングのための少なくとも1つの計算パラメータが、前記複数の点に対する前記フォーカシング基準F(r)の平均値を最小化または最大化することによって最適化される画像最適化ステップ、
をさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの計算パラメータは、前記媒体中の音速を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
理論解像度は、
- パルス(ω
1)、前記入力送信基底(i)、及び、前記出力受信基底(u)について、前記中心点(PC)における第1の分析計算であって、前記理論解像度は、トランスデューサアレイを前記中心点(PC)から見た角度によって計算される、第1の分析計算と、
- パルス範囲(Δω)、前記入力送信基底(i)、及び、前記出力受信基底(u)について、前記中心点(PC)における第2の分析計算であって、前記理論解像度は、前記実験的反射行列R
ui(t)からの信号の周波数スペクトルによって重み付けされた前記中心点(PC)からトランスデューサアレイを見た角度の前記パルス範囲に亘った積分計算である、第2の分析計算と、
- 先ず、前記入力仮想トランスデューサ(TV
in)に対応する媒体の前記第1の点と、前記入力送信基底(i)と、の間、次に、前記出力仮想トランスデューサ(TV
out)に対応する媒体の前記第2の点と、前記出力受信基底(u)と、の間の波動伝播シミュレーションの第3の計算であって、前記波動伝播シミュレーションは、前記応答REP(r,Δr)と前記媒体内の波動伝播のモデルを使用している、第3の計算と、
のリストに含まれる技術によって算出されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
- 2つの相互応答間の平均相関係数である対称性のレベルα(r)を算出するステップであって、平均値は、所定の解像度w
d(r)より大きい係数の距離座標値について計算され、及び/または、角度値の範囲βについて、または、所定の角度値β
dについて計算され、
第1の点(P1)を中心とした入力フォーカルスポットに対応する前記実験的反射行列の入力フォーカシングに基づいて計算された空間位置r
inの入力仮想トランスデューサ(TV
in)と、第2の点(P2)を中心とした出力フォーカルスポットに対応する前記実験的反射行列の出力フォーカシングに基づいて計算された空間位置r
outの出力仮想トランスデューサ(TV
out)と、の間の前記媒体の第1の応答REP1(r,Δr)と、
第2の点(P2)を中心とした入力フォーカルスポットに対応する実験的反射行列の入力フォーカシングに基づいて計算された空間位置r
inの入力仮想トランスデューサ(TV
in)と、第1の点(P1)を中心とした出力フォーカルスポットに対応する前記実験的反射行列の出力フォーカシングに基づいて計算された空間位置r
outの出力仮想トランスデューサ(TV
out)と、の間の前記媒体の第2の応答REP2(r,-Δr)、であるステップ、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
対称性レベルは、以下の式、
【数2】
または次の式、
【数3】
によって計算され、
ここで、
Re[.]は実数部の数学演算子であり、
|.|は係数数学演算子であり、
<.>は平均数学演算子であり、
*は複素共役演算子であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
- 第1の多重散乱インジケータε(r)を決定するステップであって、
【数4】
によって計算され、
α(r)は、前記媒体の前記中心点(PC)で定義される対称性のレベルである、ステップ、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項14】
- 前記応答REP(r,Δr)の係数の2乗の平均であるアフォーカル強度I
off(r)を算出するステップであって、平均は、所定の解像度w
d(r)よりも大きい係数の距離値に対して計算される、及び/または、角度値の範囲βまたは所定の角度値β
dについて計算される、ステップと、
- 対称性のレベルα(r)とアフォーカル強度I
off(r)との積、すなわち、
I
M(r)=α(r)・I
off(r)
である多重散乱I
M(r)を算出するステップと、
- 1-対称性のレベルα(r)とアフォーカル強度I
off(r)との積、すなわち、
I
N(r)=(1-α(r))・I
off(r)
であるノイズ強度I
N(r)を算出ステップと、
をさらに含み、これにより、
I
off(r)=I
M(r)+I
N(r)
の関係式を有する、ステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
第1の多重散乱インジケータε(r)は、多重散乱強度I
M(r)とノイズ強度I
N(r)との間の比、すなわち、
【数5】
によって計算されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
- ゼロ距離座標値(|Δr|=0)の場合、すなわち、第1の点(P1)、第2の点(P2)、及び、中心点(PC)が一致する媒体の点の場合の応答REP(r,Δr=0)の2乗係数の値である共焦点強度I
on(r)を算出するステップと、
- 次の式
I
on(r)=I
S(r)+2I
M(r)+I
N(r)
に基づいて計算された単一散乱強度I
S(r)を算出するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
- 次の式
【数6】
で計算される第2の多重散乱インジケータγ(r)を算出するステップ、
を備えることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
- 前記媒体の局所特性パラメータの画像を決定するステップであって、前記局所特性パラメータは、応答REP(r,Δr)に基づいて決定される、ステップ、
をさらに含むことを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載方法。
【請求項19】
前記局所特性パラメータは、解像度w(r)、フォーカシング基準F(r)、対称性のレベルα(r)、第1の多重散乱インジケータε(r)、第2の多重散乱インジケータγ(r)、アフォーカル強度I
off(r)、共焦点強度I
on(r)、多重散乱強度I
M(r)、単一散乱強度I
S(r)、及び、ノイズ強度I
N(r)を含むリストから選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
不均一な媒体の非侵襲的超音波特性評価のためのシステム(40)であって、当該システムは、
- 前記不均一な媒体の領域で一連の入射超音波を生成するのに適したトランスデューサの第1のアレイ(10)であって、前記一連の入射超音波は入力送信基底(i)を構成し、前記領域によって後方散乱された超音波の時間の関数として記録するのに適している、トランスデューサの第1のアレイ(10)と、
- 前記トランスデューサの前記第1のアレイに結合されたコンピューティングユニット(42)であって、
- 前記入力送信基底(i)と出力受信基底(u)との間で定義された実験的反射行列R
ui(t)を記録することと、
- 第1の点を中心とした入力フォーカルスポットに対応する前記実験的反射行列の入力フォーカシングに基づいて計算された空間位置r
inの入力仮想トランスデューサ(TV
in)と、第2の点(P2)を中心とした出力フォーカルスポットに対応する前記実験的反射行列の出力フォーカシングに基づいて計算された空間位置r
outの出力仮想トランスデューサ(TV
out)と、の間の前記媒体の応答REP(r,Δr)を算出することであって、前記応答REP(r,Δr)は、前記媒体中の空間位置rの中心点(PC)の関数として表され、前記中心点(PC)は、第1の点と第2の点と(P1、P2)の中間に位置し、第1及び第2の点を通過する測定軸(AX
m)の原点であり、前記測定軸は、媒体の第1の軸(X)に対して角度βを形成し、第1の点(P1)は、測定軸上の距離座標+Δrにあり、第2の点(P2)は、測定軸上の距離座標-Δrにある、ことと、
に適しているコンピューティングユニット(42)と、
を備えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、不均一な媒体の非侵襲的超音波特性評価のための方法及びシステムに関するものであり、特に医用画像または非破壊検査、より一般的には超音波画像を使用できるすべての分野に適用される。
【背景技術】
【0002】
音響イメージングの分野では、超音波を使用して積極的にプロービングすることにより、完全にまたは部分的に未知の媒体を特性化することが目標である。特に、これは医用画像で使用される超音波装置の原理である。
【0003】
音響イメージングシステムの解像度は、対象物の細部を識別する機能として定義できる。原則として、音響イメージングシステムは回折によって制限され、理論上の解像度はλ/2(λは媒体内の音の波長)または検出器の有限の開口角によって与えられる。しかしながら、実際には、伝搬媒体内の音速の変動によって解像度が低下することがよくある。
【0004】
実際、音響イメージングでは、ほとんどの場合、媒体は均質であり、音速c0が一定であると見なされる。しかしながら、均質な環境の仮定が常に当てはまるとは限らない。例えば、肝臓の超音波検査の場合、プローブは患者の肋骨の間に配置される。音波は、標的臓器に到達する前に、脂肪及び筋肉の連続する層を通過する。軟組織はそれぞれ異なる機械的特性を有する。従って、音速は均一にはほど遠いものであり、脂肪組織の場合は1450m/s、肝臓の場合は1600m/sである。音速の変化は、波が伝播する場所に応じて、波の位相シフトを引き起こす。これにより、音響波面の収差が発生し、結果として得られる超音波画像の歪みが発生し、その結果、解像度とコントラストが低下する。これらの異常は、健康診断の結果を損なうようなものである可能性がある。
【0005】
図1A~1Cに示されるように、従来の超音波方法は、超音波パルスを独立して送信及び受信することができる圧電トランスデューサ11のアレイ10を使用する。各トランスデューサの位置は、ベクトルuによって識別される。このようなアレイを研究したい媒体に向けて配置すると、媒体を超音波処理してさまざまな方法で画像化することができる。
【0006】
研究対象の媒体の超音波画像を生成する最初の方法は、位置がベクトルu
in(
図1A、左の図)によって識別されるアレイのトランスデューサの1つから超音波パルスを送信することである。これにより、トランスデューサの1D(または2D)アレイに対して、発散する円筒形(または球形)の入射波が発生する。この波は、媒体20の散乱体21によって反射され、後方散乱場は、トランスデューサ11のそれぞれによって時間の関数として記録される(
図1A、右の図)。各トランスデューサをソースとして連続して使用してこの操作を繰り返すことにより、各トランスデューサ間のインパルス応答の集合R(u
in,u
out,t)が測定される。ここで、ベクトルu
outは検出器の位置を示す。これらの応答は、トランスデューサに基づいて表現された反射行列R
uu(t)を形成する。このような測定の利点は、この行列に分析された媒体に関するすべての情報が含まれているという事実にある。例えば、媒体のイメージングを目的として、一連の行列操作を適用することができる。他方、このような取得は、測定の間、媒体が固定されたままであることを前提としているが、これは、生体内での使用の場合には非常に困難である可能性がある。さらに、単一の圧電素子から送信されるエネルギーが低いため、信号対雑音比が低下する可能性がある。
【0007】
分析される媒体の画像を生成するための他の方法が知られており、ビームフォーミング技術を使用して集束された送信が実行される。
図1B、左の図に示すように、これらの方法は、すべてのパルスが一緒に位置r
in目標焦点に到達するように波の移動時間を補正するために、均一速度モデルに基づいて、トランスデューサ11に一連の適切な遅延を適用することからなる。回折の物理的制限により、超音波は超音波プローブの開口部で囲まれた領域に集中する。超音波画像を構築するために、受信時にフォーカシングステップも実行される。次に、アレイ10の要素11によって捕捉されたエコーの集合は、
図1B、右の図に記載されているように、受信時のレンズの効果をシミュレートするために処理される。トランスデューサによって受信された信号は、それらを位相に戻すためにタイムシフトされる。これらの遅延は、送信時に適用される遅延と同じである。送信フェーズでは、すべての信号が位置r
inで干渉する。受信時に、この同じ点r
out=r
inからの信号は、弾道時間t=2||u
out-r
in||/cでの信号の合計によって電子的に干渉する。この合計により、レセプションでのフォーカシングの最終結果が得られる。
図1Bに示される方法は、送信時及び受信時で二重フォーカスイングを合わせる共焦点法として知られており、回折によって制限される横方向の解像度、初期パルスの持続時間によってのみ制限される優れた軸方向の解像度、優れたコントラストで、媒体の反射率を直接画像化することができる。しかしながら、この方法では、画像の媒体の各行において、媒体の各点で、または、少なくとも深度で送信時に物理的にフォーカシングする必要があるため、時間がかかる。
【0008】
最近開発された別の画像技術は、一連の平面波で媒体を超音波処理することによって媒体の画像を生成することからなる。
図1Cは、このいわゆる平面波超音波の原理を示しており、例えば、非特許文献1による記事に記載されている。遅延は、送信時に各信号に適用され(
図1C、左の図)、トランスデューサのアレイ10に対してある角度θ
inで傾斜した波面を形成する。受信時に(
図1C、右の図)、媒体によって後方散乱された場R(u
out,θ
in,t)は、入射角θ
inが変化する一連の入射面波のすべての位置センサu
outによって測定される。これらの応答の集合は、入力としてのフーリエ基底(または平面波基底)と出力としてのトランスデューサの基底の間で定義された反射行列R
uθ(t)を形成する。この行列が記録されると、信号はコヒーレントに合計される前にタイムシフトされ、各位置r
inの点の送信時と受信時にデータの焦点をデジタルで合わせる。超音波画像を形成するために必要なキャプチャの数は、超音波画像の同じレベルのコントラストと解像度のために、標準的な超音波(集束された送信)と比較して少なくなる。
【0009】
図2は、従来の超音波画像化法(
図1A~
図1C)に対する媒体の収差の影響を示している。最初に決定され、送信時と受信時にアレイの各トランスデューサに適用される遅延は、音速が一定の均質な媒体を想定して決定されるため、媒体の画像を評価するのに最適ではない。異常な層22は、入射波面の歪みを誘発する。ステップ25での送信時または励起時、使用される遅延規則は、音響エネルギーが、従来はフォーカルスポットと呼ばれていた回折限界によって囲まれた領域に集中することを不可能にする。受信時に、ステップ26で、使用される遅延ルールは、媒体の焦点から発生する超音波信号を正しく選択することを許可せず、等しく異常なフォーカルスポットから発生する信号を混合する。これにより、画像構築プロセスで二重収差が発生し、解像度が大幅に低下する。次に、ビームフォーミングで一般的に使用される遅延に追加の遅延ルールを追加することにより、異常な層の影響を補正するために、新しい遅延ルールを再計算できる。
【0010】
しかしながら、これらの収差補正がこれらの収差または解像度の低下を完全に補正するわけではない。媒体のフォーカス品質をより良好に推定する必要がある。
【0011】
非特許文献2は、単一の散乱領域においてランダム媒体によって反射された場の統計的特性を研究した。特に、集束された入射波の場合、反射場の空間共分散は、遠方場から透過開口関数のフーリエ変換に比例することが実証された。言い換えると、この定理は、遠方界の反射場の統計的特性の研究が、媒体中の入射波の焦点品質を決定することを可能にすることを説明している。
【0012】
しかしながら、この解決策では、超音波画像の解像度の一般的かつ平均的な推定値しか提供されない。なぜなら、これは、障害の多数の実装にわたって、すなわち、入射波の多数の焦点にわたって反射フィールドの相関を統計的に平均化する必要があるためである。画像の各点での焦点品質の正確で局所的な評価を取得することはできない。さらに、この解決策は単一の散乱領域でのみ有効である。
【0013】
特許文献1は、一連のトランスデューサのトランスデューサ間の応答を表す周波数伝達行列をフィルタリングすることによって、単一の散乱成分から多重散乱成分を分離することができる超音波プロービングの方法を提案している。この方法により、反射波が散乱体での複数の連続反射から生じ、飛行時間が散乱体とトランスデューサの間の距離に直接関係しない多重散乱に関する情報を取得することが可能になる。
【0014】
しかしながら、この解決策では、多重散乱及び単一散乱強度の深さ方向の進化のみを取得できる。これらの数値の横方向の変化にアクセスすることはできないため、画像の各点について、多重散乱強度と単一散乱強度の比率にアクセスすることはできない。従って、単一散乱が支配的であるという事実に基づいて、各深度での超音波画像の信頼性に関する平均的な情報のみを取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【非特許文献】
【0016】
【文献】G. Montaldo et al. “Coherent plane-wave compounding for very high frame rate ultrasonography and transient elastography” (IEEE Trans. Ultrason., Ferroelect. Freq. Control 56 489-506, 2009)
【文献】“The van Cittert-Zernike theorem in pulse echo measurements”, (Raoul Mallart and Mathias Fink, J. Acoust. Soc. Am. 90 (5), November 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、上記の各欠点を克服する方法を提案する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の態様によると、本明細書は、不均一な媒体の非侵襲的超音波特性評価のための方法に関するものであり、この方法は、
- トランスデューサによって生成された不均一な媒体の領域に一連の入射超音波を生成するステップであって、一連の入射超音波は送信基底(i)を構成する、ステップと;
- 入力送信基底(i)と出力受信基底(u)との間で定義された実験的な反射行列Rui(t)を記録するステップと;
- 第1の点(P1)を中心にした入力フォーカルスポットに対応する実験的反射行列の入力フォーカシングに基づいて計算された空間位置rinの入力仮想トランスデューサ(TVin)と、第2の点(P2)を中心にした出力フォーカルスポットに対応する実験的反射行列の出力フォーカシングに基づいて計算された空間位置routの出力仮想トランスデューサ(TVout)と、間の媒体の応答REP(r,Δr)を決定するステップであって、前記応答は、媒体中の空間位置rの中心点(PC)の関数として表され、前記中心点(PC)は、第1の点と第2の点と(P1、P2)の中間に位置し、第1及び第2の点を通過する測定軸(AXm)の原点であり、前記測定軸は、媒体の第1の軸(X)に対して角度βを形成し、第1の点(P1)は、測定軸上の距離座標+Δrにあり、第2の点(P2)は、測定軸上の距離座標-Δrにある、ステップと;
を含む。
【0019】
これらの配置により、この方法は、非常に有利な方法で、入力によって決定するために、第1の点及び第2の点を通過する測定軸の任意の方向に非常に局所的に媒体をプロービングすることを可能にし、これにより、入力及び出力Fociによって、媒体位置rの認定の点にで、かつ、分析の任意の角度方向βで局所応答の新しい行列REP(r,Δr)を算出する。
【0020】
次に、この方法は、媒体に関する局所情報を与える特性パラメータ、超音波画像の品質を定量化するのに非常に有用であり、新しい送信及び/またはキャプチャを反復する必要なしに計算によってこれらの画像を最適化するために使用できるパラメータを定義することを有利に可能にする。これは、イン・ビボ(in vivo)測定中に重要な利点です。
【0021】
記録された実験的反射行列Rui(t)は、「実数」行列、すなわち時間領域の実係数で構成され、各トランスデューサによって記録された電気信号は実数であり得る。あるいは、この行列は「複雑な」行列、すなわち、例えば同相/直交ビームフォーミング(「IQビームフォーミング」として知られる)の復調の場合に、複雑な値で構成される行列であり得る。
【0022】
本開示による方法の様々な実施形態において、使用は、任意選択で、以下の構成のうちの1つ以上を行うことができる。
【0023】
一態様によれば、応答REP(r,Δr)を決定するステップにおいて、実験的反射行列の入力フォーカシングは、送信基底と入力仮想トランスデューサとの間の波の外向きの飛行時間を使用する。出力フォーカシングは、出力仮想トランスデューサと受信基底の間の波の戻り飛行時間を使用する。
【0024】
一態様によれば、媒体の応答REP(r,Δr)は、次の式によって計算される。
【数1】
ここで
N
inは、送信基底iの要素数であり。
N
outは、出力受信基底uの要素数であり、
R
ui(t)は実験的反射行列であり、R
ui(u
out,i
in,τ(r
in,r
out,u
out, i
in))は、時間τでの送信iinに続いてトランスデューサu
outによって記録された実験的反射行列R
ui(t)の要素であり、
τは、送信基底iと第1の点P1との間の超音波の外向き飛行時間τ
inと、第2の点と受信基底uとの間の超音波の戻り飛行時間τ
outと、の合計であり、次の式によって表れる。
τ(r
in,r
out,u
out,i
in)=τ
in(r
in,i
in)+τ
out(r
out,u
out)
【0025】
一態様によれば、この方法は、
- 距離座標Δrの複数の値と同じ中心点(PC)とに対して、かつ、所定の角度βに対応している同じ測定軸(AXm)に対して、計算された複数の応答REP(r,Δr)である応答プロファイルPR(δr)を算出するステップであって、δrは中心点から第2の点の距離である、すなわち、Δr=δr.uβになる値であり、uβは角度βで定義される測定軸AXmの方向の単位ベクトルである、ステップ、
をさらに含む。
【0026】
一態様によれば、この方法は、
- 応答プロファイルの係数に基づいて中心点(PC)の解像度w(r)を算出するステップであって、ここで、解像度w(r)は、ゼロ距離座標(|Δr|=0)の辺りを中心とする、応答プロファイルPR(δr)の前記ピークの幅である、ステップ、
をさらに含む。
【0027】
この方法の一態様によれば、ピークの幅は、前記ピークの最大高さの一部である高さで推定され、前記一部は、例えば、ピークの最大高さの半分である。
【0028】
一態様によれば、この方法は、
-解像度w(r)と理論解像度w0(r)に基づいて中心点(PC)のフォーカシング基準F(r)を決定するステップであって、理論解像度w0(r)は、入力送信基底(i)と出力受信基底(u)とに基づいて算出される、ステップ、
をさらに以下を含む。
【0029】
一態様によれば、この方法は、
-フォーカシング基準F(r)が媒体の複数の点で計算され、入力フォーカシング及び/または出力フォーカシングのための少なくとも1つの計算パラメータが、前記複数の点に対するフォーカシング基準F(r)の平均を最小化または最大化することによって最適化される画像最適化ステップ、
をさらに以下を含む。
【0030】
この方法の一態様によれば、前記少なくとも1つの計算パラメータは、媒体中の音速を含む。
【0031】
この方法の1つの側面によれば、理論上の解像度は、次のリストに含まれる手法によって決定される:
- パルス(ω1)、送信基底(i)、及び、受信基底(u)について、中心点(PC)で第1の分析計算、ここで、理論解像度は、トランスデューサアレイを中心点(PC)から見た場合のトランスデューサアレイが離れる角度によって計算される。
- パルス範囲(Δω)、送信基底(i)、及び、受信基底(u)について、中心点(PC)で第2の分析計算、ここで、理論解像度は、実験的反射行列Rui(t)からの信号の周波数スペクトルによって重み付けされた中心点(PC)からトランスデューサアレイを見た角度の前記パルス範囲に亘った積分計算である、及び
- 先ず、入力仮想トランスデューサ(TVin)に対応する媒体の第1の点と、送信基底(i)と、の間、次に、出力仮想トランスデューサ(TVout)に対応する媒体の第2の点と、受信基底(u)と、の間の波動伝播シミュレーションの第3の計算であって、前記シミュレーションは、応答REP(r,Δr)と媒体内の波動伝播のモデルを使用している。
【0032】
一態様によれば、この方法はさらに以下を含む。
- 2つの相互応答間の平均相関係数である対称性のレベルα(r)を算出するステップであって、前記平均は、所定の解像度wd(r)より大きい係数の距離座標値について計算され、及び/または、角度値の範囲βについて、または、所定の角度値βdについて計算され、
第1の点(P1)を中心とした入力フォーカルスポットに対応する実験的反射行列の入力フォーカシングに基づいて計算された空間位置rinの入力仮想トランスデューサ(TVin)と、第2の点(P2)を中心とした出力フォーカルスポットに対応する実験的反射行列の出力フォーカシングに基づいて計算された空間位置routの出力仮想トランスデューサ(TVout)と、の間の媒体の第1の応答REP1(r,Δr)と、
第2の点(P2)を中心とした入力フォーカルスポットに対応する実験的反射行列の入力フォーカシングに基づいて計算された空間位置rinの入力仮想トランスデューサ(TVin)と、第1の点(P1)を中心とした出力フォーカルスポットに対応する実験的反射行列の出力フォーカシングに基づいて計算された空間位置routの出力仮想トランスデューサ(TVout)と、の間の媒体の第2の応答REP2(r,-Δr)。
【0033】
この方法の一態様によれば、対称性のレベルは、以下の式によって計算される。
【数2】
または次の式で、
【数3】
ここで、
Re[.]は実数部の数学演算子であり、
|.|は係数数学演算子であり、
<.>は平均数学演算子であり、
*は複素共役演算子である。
【0034】
一態様によれば、この方法は、
- 次の式で計算される第1の多重散乱インジケータε(r)を決定するステップ。
【数4】
α(r)は、媒体の中心点(PC)で定義される対称性のレベルである。
【0035】
一態様によれば、この方法は、
- 応答REP(r,Δr)の係数の2乗の平均であるアフォーカル強度I
off(r)を算出するステップであって、平均は、所定の解像度w
d(r)よりも大きい係数の距離値に対して計算される、及び/または、角度値の範囲βまたは所定の角度値β
dについて計算され、例えば、以下の式によって計算される。
【数5】
- 対称性のレベルα(r)とアフォーカル強度I
off(r)との積、すなわち、
I
M(r)=α(r)・I
off(r)
である多重散乱I
M(r)を算出するステップ、
- 1-対称性のレベルα(r)とアフォーカル強度I
off(r)との積、すなわち、
I
N(r)=(1-α(r))・I
off(r)
であるノイズ強度I
N(r)を算出するステップ、
をさらに含み、これにより以下の関係式を有する。
I
off(r)=I
M(r)+I
N(r)
【0036】
この方法の一態様によれば、第1の多重散乱インジケータε(r)は、多重散乱強度I
M(r)とノイズ強度I
N(r)との間の比によって計算される。すなわち、
【数6】
【0037】
一態様によれば、この方法は、
- ゼロ距離座標値(|Δr|=0)の場合、すなわち、第1の点(P1)、第2の点(P2)、及び、中心点(PC)が一致する媒体の点の場合の応答REP(r,Δr=0)の2乗係数の値である共焦点強度Ion(r)を算出するステップと、
- 次の式に基づいて計算された単一散乱強度IS(r)を算出するステップと、
Ion(r)=IS(r)+2IM(r)+IN(r)
をさらに含む。
【0038】
一態様によれば、この方法は、さらに以下を含む。
- 次の式で計算される第2の多重散乱インジケータγ(r)を算出するステップ。
【数7】
【0039】
一態様によれば、この方法は、
- 媒体の局所特性パラメータの画像を決定するステップであって、前記局所特性パラメータは、応答REP(r,Δr)に基づいて決定される、ステップ、
をさらに含む。
【0040】
本方法の一態様によれば、局所特性パラメータは、解像度w(r)、フォーカシング基準F(r)、対称性のレベルα(r)、第1の多重散乱インジケータε(r)、第2の多重散乱インジケータγ(r)、アフォーカル強度Ioff(r)、共焦点強度Ion(r)、多重散乱強度IM(r)、単一散乱強度IS(r)、及び、ノイズ強度IN(r)を含むリストから選択される。
【0041】
第2の態様によれば、本明細書は、上記の超音波特性評価方法のすべての例を実装するように構成された、不均一な媒体の非侵襲的超音波特性評価のためのシステムに関する。第2の態様による超音波特性評価のためのシステムは、
- 不均一な媒体の領域で一連の入射超音波を生成するのに適したトランスデューサの第1のアレイ(10)であって、この一連の入射超音波は送信基底(i)を構成し、前記領域によって後方散乱された超音波の時間の関数として記録するのに適している、トランスデューサの第1のアレイ(10)と、
- トランスデューサの第1のアレイに結合されたコンピューティングユニット(42)であって、
- 入力送信基底(i)と出力受信基底(u)との間で定義された実験的反射行列Rui(t)を記録することと、
- 第1の点を中心とした入力フォーカルスポットに対応する実験的反射行列の入力フォーカシングに基づいて計算された空間位置rinの入力仮想トランスデューサ(TVin)と、第2の点(P2)を中心とした出力フォーカルスポットに対応する実験的反射行列の出力フォーカシングに基づいて計算された空間位置routの出力仮想トランスデューサ(TVout)と、の間の媒体のREP(r,Δr)を算出することであって、前記応答は、媒体中の空間位置rの中心点(PC)の関数として表され、前記中心点(PC)は、第1の点と第2の点と(P1、P2)の中間に位置し、第1及び第2の点を通過する測定軸(AXm)の原点であり、前記測定軸は、媒体の第1の軸(X)に対して角度βを形成し、第1の点(P1)は、測定軸上の距離座標+Δrにあり、第2の点(P2)は、測定軸上の距離座標-Δrにある、ことと、
に適しているコンピューティングユニット(42)と、
を備える。
【0042】
特性評価のためのシステムは、エミッタとレシーバとの両方であるトランスデューサの少なくとも1つのアレイ、または、トランスデューサのいくつかのアレイを含み得、いくつかは送信専用であり、他は超音波の受信専用である。
【0043】
上に提示された技術の他の特徴及び利点は、以下の図を参照して作成された、例示の目的で非限定的な方法で提示された以下の詳細な説明を読むことから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1A】(既に説明されている)超音波画像化及び定量化のための既知の送信/受信メカニズムを示す図である。
【
図1B】(既に説明した)超音波画像化及び定量化のための既知の送信/受信メカニズムを示す図である。
【
図1C】(既に説明した)超音波画像化及び定量化のための既知の送信/受信メカニズムを示す図である。
【
図2】(既に説明した)従来技術による超音波画像化における収差の影響を示めす図である。
【
図3】本明細書における超音波特性評価のための方法を実施するための、超音波特性評価のためのシステムの例を示す図である。
【
図4】本明細書における超音波特性評価の方法で使用される定義を示す図である。
【
図5】
図4のような超音波特性評価の方法による応答行列REP(r,Δr)を表す例示的な図である。
【
図6】
図5の応答行列に対応する応答プロファイルPR(δr)の例を示す図である。
【
図7】3つの不均一な媒体の超音波画像を示めす図であり、この図のパートAは「ファントム」と呼ばれる試験媒体に対応し、この図のパートBは試験媒体上に肉の層が配置された媒体に対応し、この図のパートCは「イン・ビボ」肝臓である媒体に対応する図である。
【
図8】
図7の試験媒体(パートA)のために確立された、解像度w(r)(左側)の画像及び理論的解像度w
0(r)(右側)の画像を示す図である。
【
図9】
図7の3つの不均一な媒体に対して確立されたフォーカシング基準F(r)の画像である(それぞれパートA、B、及びC)。
【
図10】
図7の試験媒体(パートA)のために確立された、フォーカシングのための第1の多重散乱インジケータε(r)の画像を示す図である。
【
図11】
図7の試験媒体(パートA)のために確立された、フォーカシングのための第2の多重散乱インジケータγ(r)の画像を示す図である。
【
図12】
図7の媒体Bの3つのモデルに基づいて、かつ、定義されたフォーカシング基準F(r)に基づいて実行された、音の最適速度の3つの計算を示す図である。している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図を参照して説明される様々な実施形態では、類似または同一の要素が同じ符号を有する。
【0046】
以下の詳細な説明では、説明を明確にするために特定の実施形態のみが詳細に説明されているが、これらの例は、本明細書から生じる原理の一般的な範囲を限定することを意図するものではない。
【0047】
本明細書で説明されているさまざまな実施形態及び態様は、複数の方法で組み合わせるまたは簡略化することができる。特に、特に指定がない限り、さまざまな方法のステップを繰り返したり、反転したり、並行して実行したりすることができる。
【0048】
図3は、本明細書による、不均一な媒体20の超音波特性評価のための方法を実施するための、超音波特性評価のためのシステム40の例を示している。システム40は、トランスデューサ11の少なくとも第1のアレイ10、例えば、線形または2次元アレイ、を含む。トランスデューサは、例えば、媒体20と接触して配置された剛性バーの従来の形態であり得る圧電超音波トランスデューサである。トランスデューサのアレイは、例えば、プロービングデバイス41の一部であり、以下、一般的な用語「プローブ」とも称される。トランスデューサのアレイは、コンピューティングユニット42に接続されており、コンピューティングユニット42自体は、ディスプレイデバイス43に接続され得る。コンピューティングユニットは、各トランスデューサ11との間で電気信号を送受信する。次に、超音波トランスデューサは、これらの電気信号を超音波に変換し、超音波を電気信号に変換する。プロービングデバイス41、コンピューティングユニット42、及びディスプレイデバイス43の間の「接続」または「リンク」は、電気的または光学的タイプの任意のタイプの有線接続、または、WiFi、Bluetooth(登録商標)、またはその他等の任意のプロトコルを使用する任意のタイプの無線接続を意味すると理解される。これらの接続またはリンクは、一方向または双方向である。
【0049】
コンピューティングユニット42は、計算または処理ステップを実施するように、特に本明細書による方法のステップを実施するように構成される。慣例により、媒体20の空間参照系は、第1の軸X及び第1の軸に垂直な第2の軸Zをとることによって定義される。簡単にするために、第1の軸Xは、トランスデューサ11が線形アレイに対して整列される方向に対応し、第2の軸Zは、トランスデューサ11のこのアレイ10に対する媒体20の深さ方向に対応する。この定義は、2次元アレイの場合は3軸空間参照系に拡張可能である。
【0050】
図3において、本明細書の残りの部分と同様に、送信及び受信用のトランスデューサのアレイが参照され、より一般的な場合には、トランスデューサのいくつかのアレイを同時に使用できることが理解される。それらは、送信機と受信機の両方にすることも、一部を送信機のみ、その他の受信機のみにすることもできる。
【0051】
本明細書において、特に方法のステップを実施するための計算または処理ステップを参照する場合、各計算または処理ステップは、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、マイクロコード、またはこれらの技術の任意の適切な組み合わせによって実施できることが理解される。ソフトウェアが使用される場合、各計算または処理ステップは、コンピュータプログラム命令またはソフトウェアコードによって実施され得る。これらの命令は、これらの計算または処理ステップを実施するために、コンピュータ(またはコンピューティングユニット)によって読み取り可能な、及び/またはコンピュータ(またはコンピューティングユニット)によって実行される記憶媒体に格納または送信され得る。
【0052】
[媒体の点の分析を定義する]
本明細書では、不均一なサンプルの非侵襲的超音波特性評価の方法とシステムについて説明する。これらの方法及びシステムは、
図4に示される定義に基づく。空間位置rの中心点PCは、媒体の空間参照系で定義され、第1の点P1と第2の点P2との間の中間に位置する。測定軸AX
mが定義され、第1の点P1及び第2の点P2を通過し、トランスデューサ11のアレイの第1の軸Xと角度βを形成する。中心点PCは、測定軸の原点AX
m(測定軸上のゼロの距離座標)に位置する。第1の点P1は距離座標-Δrにあり、2第2の点P2は測定軸の原点である中心点PCから距離座標+Δrにある。
【0053】
空間位置rと距離座標Δrは太字で示されている。これは、これらの要素が位置のベクトルであり、位置に対するオフセットであり、媒体の空間参照系のベクトル(X、Z)であることを意味する。従って、距離座標ベクトルΔrは、測定軸AXmの方向と、第1の軸Xに対するその角度βを考慮に入れる。他の点に対する点の位置の他の定義が超音波の分野の専門家には可能である。特に、第1の点及び第2の点は、距離|Δr|及び角度βによって、または、別の位置識別子によって識別され得る。
【0054】
これらの2つの点P1及びP2は、互いに短い距離、すなわち、互いに数ミリメートル、例えば、20ミリメートル以下であり得る。
【0055】
図4に示されるように、非侵襲的超音波特性評価のための方法は、以下を含む。
- トランスデューサ11のアレイ10を用いて、不均一な媒体の領域に一連の入射超音波US
inを生成するステップであって、一連の入射超音波は、送信基底iである、ステップと、
- 入力送信基底iと出力受信基底uとの間で定義された実験的反射行列R
ui(t)を記録するステップと、
- 第1の点P1の空間位置r
inの入力仮想トランスデューサTV
inと第2の点P2の空間位置r
outの出力仮想トランスデューサTV
outの間の媒体の応答REP(r,Δr)を決定するステップであって、応答は、空間位置rの中心点PCの関数として表されている、ステップと、
を含む。
【0056】
中心点PCは2つの点P1、P2の中間にあるため、次の関係を有する。
r=(rout+rin)/2と、Δr=(rout-rin)/2
【0057】
入力送信基底iは、例えば、
図1A~
図1Cの説明で前述したように、例えば、アレイ10のトランスデューサ11の1つによってそれぞれ生成される波の基底、または軸Xに対して角度傾斜θの平面波の基底である。
【0058】
受信基底uは通常、トランスデューサ11の基底である。
【0059】
従って、超音波を生成するステップは、送信基底iと受信基底uの間にあると理解される。従って、この超音波生成ステップは、平面波など、集束型または非集束型のあらゆるタイプの超音波に対して定義さる。
【0060】
記録ステップでは、実験的反射行列Rui(t)が入力送信基底iと出力受信基底uとの間に定義される。この行列は、各送信iinに対して、空間座標uoutの各トランスデューサ11によって時間tで算出された媒体のすべての時間応答を含む。インデックス「in」で名前が付けられた要素は送信(すなわち入力)を指し、インデックス「out」で名前が付けられた要素は受信(すなわち出力)を指すことが理解される。
【0061】
応答REP(r,Δr)を算出するステップでは、
- 第1の点P1を中心にした入力フォーカルスポットを生成する実験的反射行列Rui(t)に基づく入力フォーカシングプロセスであって、入力フォーカルスポットは、入力仮想トランスデューサTVinに対応する、入力フォーカシングプロセスと、
- 第2の点P2を中心にした出力フォーカルスポットを生成する実験的反射行列Rui(t)に基づく出力フォーカシングプロセスであって、出力フォーカルスポットは、出力仮想トランスデューサTVoutに対応する、出力フォーカシングプロセスと、
が適用される。
【0062】
入力フォーカシングプロセスは、送信基底(i)と入力仮想トランスデューサTVinとの間の波の外向き飛行時間を使用する。出力フォーカシングプロセスは、出力仮想トランスデューサTVoutと受信基底(u)のトランスデューサとの間の波の戻り飛行時間を使用する。これらの入力及び出力フォーカシングプロセスは、実際には、以下でフォーカシングプロセスと呼ばれる入出力フォーカシングプロセスを形成する。
【0063】
従って、第1の点P1は入力仮トランスデューサTVinに相対的であるため、中心点PCに対して測定軸AXm上の座標-Δrに配置され、第2の点P2は出力仮想トランスデューサTVoutに相対的であるため、中心点PCに対して測定軸AXm上の座標+Δrに配置される。
【0064】
(送信時の)入力フォーカシングは、入力フォーカルスポットに対応する空間範囲にわたって点P1を中心に音波を集中させるように構成されている。次に、媒体のこの領域内にある散乱体は、プローブに向かって後方散乱される波を生成する。送信時のフォーカルスポットに対応する媒体の反射率によって特性化されるこの領域は、入力仮想トランスデューサTVinと呼ばれ、「仮想」ソースとして解釈され得る。
【0065】
(受信時の)出力フォーカシングは、出力フォーカルスポットに対応する空間範囲にわたって点P2を中心に配置された散乱体によって生成されたエコーを選択するように構成されている。出力フォーカルスポット(受信)と対応する媒体の反射率によって特性化されるこの領域は、出力仮想トランスデューサTVoutと呼ばれ、「仮想センサ」として解釈され得る。
【0066】
従って、応答REP(r,Δr)は、位置rinにフォーカシングするために位置routから来る圧力場の推定値として解釈され得る。
【0067】
言い換えると、この非侵襲的超音波特性評価の方法では、入力仮想トランスデューサTVinは、媒体内の空間位置rinの超音波「仮想ソース」に対応し、出力仮想トランスデューサTVoutは、空間位置routの超音波「仮想センサ」に対応する。従って、この方法は、点P1及び/または点P2の周りの媒体を空間的にプローブングすることができ、これにより、波の伝播に関する新しい情報を取得することが可能になる。
【0068】
例えば改良されたビームフォーミング方法である、例えばフォーカシングプロセスによる入力仮想トランスデューサTV
inと出力仮想トランスデューサTV
outとの間の媒体の応答REP(r,Δr)の計算は、次の簡略化された式によって表現され得る。
【数8】
ここで、
N
inは、送信基準iの要素数であり、
N
outは、出力受信基底uの要素数であり、
R
ui(t)は実験的反射行列であり、R
ui(u
out,i
in,τ(r
in,r
out,u
out,i
in))は、時間τでの送信i
inに続くトランスデューサu
outによって記録された実験的反射行列R
ui(t)の要素である。
【0069】
時間τは、第1の点P1のトランスデューサと送信基底iとの間の超音波の外向き飛行時間τinと、第2の点P2と受信基底uのトランスデューサとの間の超音波の戻り飛行時間τoutの合計であり、次の式で示される通りである。
τ(rin,rout,uout,iin)=τin(rin,iin)+τout(rout,uout) (式2)
【0070】
飛行時間τin及びτoutは、音速モデルに基づいて計算される。仮説は、音速c0が一定の均質な媒体を検討することで構成される。この場合、飛行時間は、プローブと仮想トランスデューサとの間の距離に基づいて直接取得される。
【0071】
送信基底の要素数Ninは、例えば、2以上である。受信基底の要素数Noutは、例えば、2以上である。
【0072】
従って、この改善されたビームフォーミング式は、実験的反射行列Ruiに記録された時間応答の二重の合計です。空間位置routの点P2での受信基底uに従った出力フォーカシング(受信)に関連する合計。従って、この計算は、2つの点P1とP2(空間位置rin,rout)の空間座標に対して実行される。従って、この改善されたビームフォーミング式の結果は、これら2つの空間座標(rin,rout)の圧力場である時間信号になります。
【0073】
応答REP(r,Δr=0)を計算する特定のケースは、点P1及びP2が同じ空間位置rin=rout=rで一致する状況に対応することに留意されたい。この構成は、媒体の画像の点について、画像の各ピクセルが媒体内の同じ点での入力フォーカシング(送信時)のプロセス及び出力フォーカシング(受信時)のプロセスから生じ、通常の共焦点超音波イメージングの場合に正確に対応する。次に、飛行時間τは、波がプローブから空間位置rの単一点に伝播し、この点rからプローブの各トランスデューサに伝播するために必要な外向き及び戻り飛行時間に対応する。
【0074】
これらの配置により、この方法は、測定軸AXmに対応する任意の方向で非常に局所的に媒体をプロービングし、入力及び出力フォーカシングを介して、不均一な媒体20の第1の点と第2の点との間の空間位置rの中心点PCでの媒体に関するより局所的な情報を抽出することを可能にする。この局所情報は、計算された応答値に内に完全に含まれ、媒体の応答REP(r,Δr)は例えば、解像度や多重散乱の観点から、媒体の各点の特性化に使用され得る。この局所情報は、媒体の各点を特性化するために利用できる計算された一時的応答の値に完全に含まれている。
【0075】
実際、点P1及びP2の重ね合わせ、すなわち入力及び出力仮想トランスデューサのフォーカルスポットの重ね合わせ(すなわち、rin=rout及び|Δr|=0)によって特性化された共焦点信号の絶対値を考慮することによって反射率の推定をビームフォーミング後のこの一時的応答から推測するのが通例である。この反射率は、従来の超音波タイプの画像のピクセルの値に対応する。
【0076】
従って、応答REP(r,Δr)は、実距離値|Δr|の任意の集合に対して算出され得る。実距離値|Δr|は、例えば、-Δrmaxと+Δrmaxなどの2つの制限の間で、これらの制限は、入力及び出力仮想トランスデューサが媒体20内にとどまるように決定される。(|Δr|,β)は、距離座標ベクトルΔrの極座標になる。
【0077】
位置rの中心点PCの周りの空間の記述のこれ以前の慣例では、応答REP(r,Δr)は、入力及び出力仮想トランスデューサの空間位置を反転することに対応する。
【0078】
応答REP(r,Δr)の集合は、同じ名前の行列に記録され得る。この応答の行列は、集束された反射行列であり、定義された仮説を使用して、媒体内の任意の点で計算された圧力場を記録する。
【0079】
従って、応答行列REP(r,Δr)(線形プローブの場合は4次元である、r及Δrを2つ含む)が得られ、集束された時間信号を記録する。
【0080】
図5は、応答行列REPのサブ行列に対応する画像を示し、サブ行列は、Z軸座標が固定され、角度βが0度の空間位置rのいくつかの中心点PCの集合に対応する。従って、この画像では、横軸は中心点PCの位置のX軸に沿った変化に対応し、縦軸はこの中心点に対する距離座標Δrに対応します。この画像の横軸上にないこの画像(応答)の点の値は、低い(しかしながらゼロではない)値を有する。横軸上のこの画像(応答)の点の値は、中心点PCでの超音波画像点の強度に対応する値を有する。
【0081】
このような画像は、単一の測定軸上のAXmまたは複数の測定軸上の距離座標Δrの変化に対して、すなわち1つまたは複数の角度値βに対して、応答REP(r,Δr)から抽出され得る。
【0082】
分離距離|Δr|及び角度βの関数としての応答係数の変化を表す極座標画像も構築「され得、これは、中心点PCの周囲の応答の変化、従ってこの点でのフォーカルスポットの変化を表す。
【0083】
[応答プロファイルPR(δr)の計算]
上記の方法で決定された媒体の応答を得た後、応答プロファイルPR(δr)を決定するステップを実行することができ、応答プロファイルは、複数の距離座標Δrの値について計算された複数の応答REP(r,Δr)である。この応答プロファイルPR(δr)は、空間位置rの同じ中心点PCに対して、同じ角度βの方向に対応する同じ測定軸AX
mに沿って考慮される。従って、応答プロファイルPR(δr)は、複数の距離δrに対して決定され、距離δrは、中心点PCに対する第2の点P2の横座標、すなわちΔr=δr.u
βとなる値であり、u
βは角度βによって定義される、測定軸AX
mの方向の単位ベクトルである。言い換えると、応答プロファイルPR(δr)は、
図5の画像の垂直スライスであり、この応答プロファイルは、画像スライスの曲線である。
【0084】
応答REP(r,Δr)は、特に同相/直交ビームフォーミング(「IQビームフォーミング」として知られる)で知られているように、複素数値でフォーカシング定式化を使用する場合、複素数値になり得る。従って、応答プロファイルPR(δr)は、これらの複雑な応答の任意の係数で表すこともできる。
【0085】
図6は、媒体の中心点PC及び角度βの方向について算出され得る応答プロファイルPR(δr)の二乗係数の概略例を示しており、ここで、β=0であり、
図5の画像はこの角度値で構築されている。
【0086】
しかしながら、角度βはゼロ(0)からpi(π)までの任意の値を取ることができるため、応答プロファイル曲線PRcは、複数の角度値βに対してプロットまたは算出され得る。
【0087】
応答プロファイルPR(δr)またはPR(δr,β)(複数の角度が使用されている場合、しかしながら、以下では、説明を簡略化するために空間位置のみを保持する)またはPR(r,δr,β)(中心点の空間位置も使用している場合)の集合は、同じ名前の行列に記録され得る。
【0088】
応答プロファイルPR(δr)は、
- 幅がフォーカルスポットに関連する単一散乱に対応する値δrが低い場合の過剰強度(曲線の最大値)、及び
- 多重散乱現象とノイズから生じるエコーが原因の、δrのすべての値に存在するインコヒーレントな背景、
を示す。
【0089】
図5に表されるサブ行列は、従って、空間位置rの中心点PCの集合に対する応答プロファイルPR(δr)の集合であり、Z軸座標が固定され、角度βはゼロ(または一定)である。
【0090】
この応答プロファイルPR(δr)は、媒体の局所的な特性評価及び/または超音波イメージングプロセス(すなわちビームフォーミング)のパフォーマンスのための新しいパラメータを決定することを可能にする基本的な表現である。これらの特性評価パラメータの結果を、前述の特性評価パラメータで構築された不均一な媒体の画像で説明する。
【0091】
不均一な媒体の3つの異なるケースについてのこれらの特性パラメータについては、以下で詳しく説明される。
図7は、これら3つの不均一な媒体の超音波画像を示している。
-
図7のパートA(左側)では、「ファントム」と呼ばれる試験媒体(媒体A)の画像を見ることができ、これは、異なる剛性の2つのシリンダを含む。
-
図7のパートB(中央)では、上記の試験媒体(媒体B)上に肉の層が配置された媒体の画像を見ることができる。
-
図7のパートC(右側)では、「イン・ビボ」肝臓である媒体(媒体C)の画像を見ることができる。
【0092】
[点の解像度w(r)の計算]
次に、応答プロファイルの係数に基づいて、角度βの測定軸AXmの方向の中心点PCの解像度w(r)を決定するステップを実行できる。従って、この解像度は、超音波画像の解像度の局所的な推定値である。
【0093】
図6に示されるような応答プロファイルの係数は、ゼロ距離座標Δr(|Δr|=0)の周りのピークまたは最大値を含むことに留意されたい。応答プロファイルのこのピークまたは過剰強度は、単一の散乱エコーにリンクされており、2つの仮想トランスデューサTV
inとTV
outのフォーカルスポットが重なっているときに表示さる
。従って、このピークの空間範囲は、角度βの方向に沿った入力及び出力フォーカルスポットの空間寸法と、従って超音波画像の局所解像度と強く相関している。
【0094】
解像度w(r)は、例えばこのピークの幅によって算出され得る。このピークの幅は、例えば、このピークの最大高さの一部である高さで決められる。例えば、高さの一部とは、最大高さの半分または3分の1(1/3)または3分の2(2/3)またはその他の比率になる。ピークの最大高さは、
図6に示される例の場合のように、応答プロファイルの2乗係数、すなわち|PR(δr=0)|
2、のみを考慮した場合、実際には中心点PCでの超音波画像の強度である。
【0095】
解像度が考慮される中心点PCだけでなく角度βにも依存することが理解されるだろう。
【0096】
従って、提案された方法は、各点で
- 角度βがπ/2の場合、すなわち、角度β=π/2に対応する応答プロファイルに対して取得された値w(r)による軸方向の解像度、及び
- ゼロ角度の場合、すなわち、すなわち、角度β=0に対応する応答プロファイルに対して取得された値w(r)による横方向の解像度、
を取得することを可能にする。
【0097】
この方法により、媒体内の任意の点で、フォーカルスポットの範囲を画定できるため、角度βの各方向での超音波法の解像度を定義できる。
【0098】
図8の左側の画像は、試験媒体(媒体A)の各点での解像度w(r、β)の計算例を示している。解像度は、深度とともに、画像の端に向かって移動すると低下することに留意されたい。
【0099】
[理論解像度w0(r)の計算]
第1の変形によれば、理論的解像度w0(r)は、パルス(ω1)、送信基底(i)、及び受信基底(u)について中心点(PC)での第1の分析計算によって算出される。それはトランスデューサアレイを中心点(PC)から見た角度で計算される。それは、空間位置rの中心点を超音波処理するために送信中に、またはこの中心点から来るエコーを収集するために受信中に使用される開口の最大半角に依存する。
【0100】
第2の変形によれば、理論解像度w0(r)は、パルス範囲(Δω)、送信基底(i)、及び受信基底(u)について中心点(PC)での第2の分析計算によって算出される。それは、前記パルス範囲及び記録された信号の周波数スペクトルによって重み付けされた中心点(PC)からトランスデューサアレイが見られる角度にわたる積分計算によって得られる。後者は、実験的な反射行列Rui(t)の要素のフーリエ変換の係数を平均することによって取得され得る。
【0101】
第3の変形によれば、理論解像度w0(r)は、最初に、入力仮想トランスデューサ(TVin)に対応する媒体の第1の点と送信基底(i)との間、次に、出力仮想トランスデューサ(TVout)に対応する媒体の第2の点と受信基底(u)との間で、波の伝播シミュレーションの第3の計算によって算出され、シミュレーションは応答REP(r,Δr)と媒体内の波動伝播のモデルを使用している。この第3の計算は、応答プロファイルPR(r,β,δr)を計算するために実行されたダブルフォーカスステップを反映している。この第3のシミュレーション計算は、音速が応答REP(r,Δr)を計算するために想定される音速モデルに正確に対応するランダム媒体に関連付けられた理論反射行列を生成することで構成される。このシミュレーションでは、物理実験に使用したものと同じ送信基底と同じ受信基底を使用する。次に、解像度w(r)を算出するために実行される一連の操作が繰り返され、生成された理論反射行列に基づいて理論解像度w0(r)が計算される。すべての回折現象が完全に考慮され、収差のない媒体の理論的解像度の推定値が得られる。領域の平均反射率、後方散乱エコーのスペクトルなどの媒体の統計的特性は、実行された実験を最適にモデル化するシミュレーションを使用するために、応答REP(r,Δr)から推定され得ることに留意されたい。
【0102】
図8の右側の画像は、試験媒体(媒体A)の各点での理論的解像度w
0(r)の計算例を示している。解像度は奥行きとともに、また画像の端に向かって移動すると低下することに留意されたい。この画像は、この同じ図の左側の画像と非常によく似ていることに留意されたい。従って、前述の方法で実行された解像度の計算は、理論上の解像度の計算と一致している。
【0103】
[フォーカシング基準F(r)の計算]
解像度w(r)及び理論的解像度w0(r)に基づいて、中心点PCのフォーカシング基準F(r)を算出するステップを実行することができる。理論上の解像度は、例えば、入力送信基底i、出力受信基底u、及び媒体内の超音波の伝播のモデリングに基づいて算出される。
【0104】
通常、フォーカシング基準F(r)は、上記の解像度と理論上の解像度の比率、またはその逆である(単純なルール)。言い換えると次のようになる。
F(r)=w(r)/w0(r) (式3)
または
F(r)=w0(r)/w(r) (式4)
【0105】
図9は、
図7の3つの不均一な媒体(
図7と
図9の間に対応する媒体A、B、及びC)に対して確立されたフォーカシング基準F(r)の画像を示している。
【0106】
このフォーカシング基準の値(1)は、同一の解像度と理論上の解像度(図の明るい部分)に対応する。このフォーカシング基準のゼロ(0)に近い値は、発散する解像度値(図では暗い)、すなわち、劣化したフォーカシングに対応する。
【0107】
媒体Aの画像は、0.97に近いこのフォーカシング基準の平均で非常に均一であることを示している。これは、超音波画像が適切に形成されており、フォーカシングの仮定が正しいことを意味する。媒体B及びCの画像は、媒体Bの表面の肉の層と、媒体Cの肝臓の脂肪または筋肉組織とである、超音波伝播の上流に位置する不均一性に対応する顕著な劣化を示している。媒体Cの画像は、非常に劣化している領域(この画像の左下の暗い領域)を強調しており、これは、
図7(パートC)で生成された画像も同じ場所で同じ問題を抱えていることを意味する。ここで、フォーカシング基準の画像は、超音波システムの操作者に、これらの超音波画像の左側が、特に空間解像度において質が悪いことを示し得る。これは、使用者が超音波画像を解釈して、正しく画像化された領域で優先的に診断を確立したり、超音波画像を生成する方法を変更したりするのに役立つ。例えば、これは、医療診断のために関心のある領域において良質のフォーカシング基準を得るために、操作者がプローブ(すなわち、トランスデューサのアレイ)の位置を変更することを奨励し得る
【0108】
有利には、本技術を実施する画像化システムは、フォーカシング基準の画像に超音波画像を重ね合わせることができるであろう。
【0109】
[対称性レベルα(r)の計算]
次いで、対称性レベルα(r)を決定するステップを実行でき、この対称性レベルは、2つの相互応答間、すなわち、入力仮想トランスデューサ(TVin)及び出力仮想トランスデューサ(TVout)の位置rin及びroutを交換することによる平均相関係数である。従って、空間位置rの中心点PCでの媒体の音響相互関係の基準がテストされる。多重散乱現象から生じる信号は相互的であるが、電子ノイズから生じる信号は相関していないことに留意されたい。
【0110】
この方法では、
第1の点P1を中心とした入力フォーカルスポットを生成する実験的反射行列の入力フォーカルスポットに基づいて計算された入力仮想トランスデューサTVin(空間位置rin)と、第2の点P2を中心とした出力フォーカルスポットを生成する実験的反射行列の出力フォーカルスポットに基づいて計算された出力仮想トランスデューサTVout(空間位置rout)と、の間の媒体の第1の応答REP1(r,Δr)、及び、
第2の点P2を中心とした入力フォーカルスポットを生成する実験的反射行列の入力フォーカルスポットに基づいて計算された入力仮想トランスデューサTVin(空間位置rin)と、第1の点P1を中心とした出力フォーカルスポットを生成する実験的反射行列の出力フォーカルスポットに基づいて計算された出力仮想トランスデューサTVout(空間位置rout)と、の間の媒体の第2の応答REP2(r,-Δr)、
が算出される。
【0111】
さらに、平均相関係数は、所定の解像度w
d(r)より大きい係数の距離座標値Δrに対して計算され(
図6に示されるように)、および/または、角度値βの範囲または所定の角度値β
dに対して計算される。
【0112】
所定の解像度w
d(r)は、有利には、解像度w(r)の半分より大きい値である。好ましくは、所定の解像度w
d(r)は、
図6に見られるように、ピークの値をよりよく除外するために、解像度w(r)の1倍、2倍、または3倍より大きい値である。従って、この変数による平均相関係数は、相関係数が、ピークから遠い距離座標Δrの値に対して、すなわち、中心点PCから遠い仮想トランスデューサの値に対して平均化されることを示し、これにより、この中心点PCの音響相関、すなわち、横軸に対する応答行列REP(r、Δr)の対称性をテストすることを可能にする効果がある(
図5のこのような行列の例を参照)。所定の解像度を超える値は小さいが、対称性の平均相関による比較により、中心点PCの対称性のレベルα(r)を確実に推定することができる。
【0113】
有利には、平均相関係数は、角度値βの範囲または所定の角度値βdについて計算される。従って、この変数による平均相関係数は、相関係数が1つ以上の角度値βに対して平均化されることを示し、これにより、角度対称性をテストしたり、または、角度セクターに基づいて中心点PCの周りの対称性レベル、すなわち、この中心点PCの相反性をテストしたりできる。
【0114】
有利には、平均相関係数は、所定の解像度wd(r)より大きい係数の距離座標値Δr、及び、角度値βの範囲に対して計算される。従って、相関は、単一の散乱寄与がゼロである距離座標値にわたって平均化され、後者は、所定の解像度を下回る距離座標の係数に対してのみ表示される。
【0115】
これにより、より信頼性が高く、安定した推定値を取得することもできる。
【0116】
例えば、対称性レベルα(r)は、次の相関式で計算できる。
【数9】
または、
【数10】
ここで、
Re[.]は実数部の数学演算子であり、
|.|は係数数学演算子であり、
<.>は平均数学演算子であり、この演算子は、1つまたは複数の変数(上記では、例えば、所定の解像度および角度値βより大きい距離座標値)に従って適用され得、
*は複素共役演算子である。
【0117】
いくつかの相関式を使用でき、スペシャリストは、要件と観察された媒体の特性に応じて、この定義を変更するだろう。
【0118】
一般的に言えば、超音波の伝播が中心点PCの周りで相互に振る舞わず、対称性レベルα(r)が1に近い場合、対称性レベルα(r)はゼロ(0)に近く、音波の伝播が中心点PCの周りで対称的または相互に振る舞う場合、対称性レベルα(r)は1に近い。
【0119】
従って、この対称性レベルは、多重散乱に対応する信号の部分の音響相反性の妥当性をテストする。これにより、ノイズは音響相反性の特性に適応しないため、多重散乱とノイズとを区別することができる。
【0120】
[第1の多重散乱インジケータε(r)の計算]
次いで、中心点PCの第1の多重散乱インジケータε(r)を算出するステップを実行することができ、この多重散乱インジケータは、例えば、以下の式によって計算される。
【数11】
ここで、
α(r)は、媒体の中心点PCで定義される対称性レベルである。
【0121】
この第1の多重散乱インジケータε(r)は、対称性レベルがゼロの場合はゼロであり、対称性レベルが1に近い場合は無限大に近づく傾向がある。
【0122】
図10は、
図7の3つの不均一な媒体(
図7と
図10の間に対応する媒体A、B、及びC)に対して確立された第1の多重散乱インジケータε(r)の画像を示す図は、デシベル(対数目盛)で目盛りが付けられている。
【0123】
この最初の多重散乱インジケータの値が大きいと、多重散乱の割合が高くなる(図の明るい部分)。このフォーカシング基準の小さな値は、多重散乱がほとんどまたはわずかであることに対応します(図で暗い部分)。従って、媒体Aの場合、この第1の多重散乱インジケータは、不均一性シリンダの1つの背後にある超音波散乱の局所領域を示している。媒体B及びCの場合、この第1の多重散乱インジケータは、媒体Bの肉部分の下流、または肝臓の脂肪組織の下流のいずれかで、これらの媒体の容積の大部分での散乱を強調する。
【0124】
[アフォーカル強度I
off(r)の計算]
次いで、中心点PCのアフォーカル強度I
off(r)を算出するステップを実行することが可能であり、このアフォーカル強度は、応答REP(r,Δr)の二乗係数の平均であり、平均が計算される。所定の解像度w
d(r)(すなわち|Δr|>w
d(r))より大きい係数の距離値の場合、及び/または、角度値βの範囲または所定の角度値β
dに対して計算された場合、例えば次の式で計算される。
【数12】
及び
I(r,Δr)=|REP(r,Δr)|
2 (式9)
ここで、
I(r,Δr)は点の強度、すなわちこの点での応答の2乗係数であり、
|.|は関数数学演算子であり、
<.>は平均数学演算子であり、この演算子は、1つまたは複数の変数(上記では、例えば、所定の解像度および角度値βより大きい距離座標値)に従って適用され得る。
【0125】
アフォーカル強度Ioff(r)は、超音波画像のインコヒーレントエネルギーを特性化するために使用される。
【0126】
アフォーカル強度Ioff(r)は、多重散乱現象(相互)または電子ノイズ(ランダム)に起因するエコーの寄与に起因する。従って、対称性レベルα(r)を使用することにより、アフォーカル強度Ioff(r)を多重散乱強度とノイズ強度とに細分化することができる。
【0127】
[多重散乱強度IM(r)の計算]
次いで、IM(r)を算出するステップを実行でき、この多重散乱強度は、対称性レベルα(r)とアフォーカル強度Ioff(r)の積である。すなわち、
IM(r)=α(r)・Ioff(r) (式10)
【0128】
[ノイズ強度IN(r)の計算]
次いで、ノイズ強度IN(r)を算出するステップを実行できる。このノイズ強度は、1から対称レベルα(r)を引いたものとアフォーカル強度Ioff(r)の積である。すなわち、
IN(r)=(1-α(r))・Ioff(r) (式11)
これにより、以下の関係を有する。
Ioff(r)=IM(r)+IN(r) (式12)
【0129】
次いで、第1の多重散乱インジケータε(r)は、多重散乱強度I
M(r)とノイズ強度I
N(r)の比率によって、すなわち、次の式に従って計算され得る。
【数13】
【0130】
ダブルフォーカシングプロセスによって得られるアンテナゲインのために超音波画像の多重散乱の割合が低いため、このインジケータにより、超音波画像の多重散乱の割合が電子ノイズよりも優勢になる領域を特定することができる。
【0131】
例えば、
図10の画像については、角度βをゼロ(β=0)で取得すると、次の観察が可能になります。
【0132】
図1の画像Aでは、
図10を参照すると、ディスク(空間位置[X,Z]=[-5,40]mmに位置する)における散乱体密度の増加は、最初の多重散乱インジケータε(r)の増加を強調していることが分かる。これは、ディスクの深さよりも深い場合に表示されることに留意されたい。この現象は、多重散乱現象から生じるエコーが、多重散乱波と相互作用した最後の散乱体の深さにもはや比例しない飛行時間を有するという事実から生じる。従って、この基準により、考慮される点の上流で発生する多重散乱を調べることができる。
【0133】
図10の画像Bにおいて、38mmの深さZで、第1の多重散乱インジケータε(r)の画像は、この第1の多重散乱インジケータの急激な増加を示している。これらの信号は、ファントムの表面とプローブの表面の間の平行なエコーの二重反射から発生する。
【0134】
図10の画像Cにおいて、軸方向に繰り返される横方向のパターンがある。この現象は、組織の2つの平行な壁の間で連続的に反射されたエコーから発生する。
【0135】
[共焦点強度Ion(r)の計算]
次いで、共焦点強度Ion(r)を算出するステップを実行できる。この共焦点強度は、距離座標値Δrがゼロ、すなわち|Δr|=0、の場合の応答REP(r,Δr=0)の2乗係数の値になり、第1の点P1、第2の点P2、及び中心点PCが一致する媒体内の点を意味する。
【0136】
[単一散乱強度IS(r)の計算]
単一散乱強度IS(r)を算出するステップを実行できる。この単一散乱強度は、次の式に基づいて計算される。
Ion(r)=IS(r)+2IM(r)+IN(r) (式14)
【0137】
この式の因数2は、コヒーレント後方散乱の現象に由来することにご留意されたい。
【0138】
[第2の多重散乱インジケータγ(r)の計算]
第2の多重散乱インジケータγ(r)を算出するステップを実行することができ、この第2の多重散乱インジケータは、以下の式によって計算される。
【数14】
【0139】
この第2の多重散乱インジケータγ(r)を使用すると、多重散乱の比率を単一散乱の比率と比較できる。
図11は、
図7の3つの不均一な媒体(
図7と
図10の間に対応する媒体A、B、及びC)に対して確立された第2の多重散乱インジケータγ(r)の画像を示している。これらの数値は、デシベル(対数目盛)で目盛りが付けられている。
【0140】
この最初の多重散乱インジケータの大きな値は、単一散乱(図の明るい部分)と比較して、多重散乱の大部分に対応する。この第2の多重散乱インジケータの値が低い場合は、単一散乱(図では暗い部分)と比較して多重散乱がほとんどないことを意味する。従って、この第2の多重散乱インジケータは、媒体Cが大きく散乱していることを示している。
【0141】
図11の画像は、コントラストが異なりますが、
図10の対応する画像で観察された同じ現象を強調していており、この第2の多重散乱インジケータにより、媒体の減衰とは関係なく、多重散乱の現象に敏感な新しい基準を決定できる。実際、私たちは媒体内で同じ伝播時間を有するエコーを研究している。従って、それらは同じ方法で減衰される。
【0142】
[超音波画像計算の最適化]
上記の計算の1つの可能な利用法は、超音波画像の計算を最適化することである。
【0143】
超音波画像は、例えば、媒体内のすべての点の連続した入力及び出力フォーカシングによって計算される。
図5の横軸上の集合点は、この
図5の画像を形成するために使用される深さzで計算されたこの超音波画像の行に対応する。
【0144】
しかしながら、この超音波画像の計算は、音速(超音波の伝播速度)がよく知られており、一定である均質な媒体の仮定に強く依存している。この仮定が正しくない場合、フォーカシング遅延ルールが考慮される媒体に対応せず、フォーカシングが不完全である。その後、超音波画像の解像度が低下する。他のフォーカシング計算パラメータがフォーカシングに影響を与える可能性がある。
【0145】
次いで、フォーカシング基準F(r)が媒体内の複数の点(例えば、画像の所定の領域)で計算される、画像最適化ステップを実行することができ、入力フォーカシング及び/または出力フォーカシングのための少なくとも1つの計算パラメータが前記複数の点について前記フォーカシング基準F(r)の平均を最小化または最大化することによって最適化される。
【0146】
例えば、前記少なくとも1つの計算パラメータは、少なくとも媒体中の音速を含む。随意に、この計算パラメータは音速である。
【0147】
音速cの可能な範囲に基づいてフォーカシング基準F(r)を最適化する場合、
図12に提示されたものの1つと同様の曲線が得られ、フォーカシング基準F(r)が最適な音速c
optを示す最大値を示す。この最適な音速c
optは、実際には、(プローブと所定の領域の焦点面の間を)通過する媒体の厚さ全体にわたって統合された音速に対応する。
【0148】
言い換えると、フォーカシングを実行するために使用される音速モデルが媒体の真の音速と一致するときに、フォーカス品質、従ってフォーカシング基準が最大になる。
【0149】
媒体中の音速の推定を改善するには、例えば、媒体の多層モデルを導入する必要がある。各層は、この層の音速ciと均一であると想定される。各層の厚さは、媒体に関する事前の知識があるか、第1の超音波画像に基づいて推定する必要がある。従って、フォーカシング基準を最適化することにより、均質モデルを使用して最外層の音速を推定し、次いで次の層を最適化することにより、2層モデルを使用して次の層の音速を推定していく。
【0150】
図12は、以下を使用して、媒体Bの同じ所定の領域に対して実行された最適化を示している。
a)最適な音速c1
optの曲線B1の単層モデル
b)最適な音速c2
optの曲線B2の2層モデル
c)最適な音速c3
optの曲線B1の3層モデル
【0151】
従って、上記の最適化手法と媒体の多層モデリングにより、音速の推定速度を改善することが可能になり、従って、媒体内の音速の深さ方向の変化を算出することが可能になる。
【符号の説明】
【0152】
10 トランスデューサアレイ
11 トランスデューサ
20 媒体
21 散乱体
40 システム
41 プロービングデバイス
42 コンピューティングユニット
43 ディスプレイデバイス