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特許7515565アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/166 20220101AFI20240705BHJP
【FI】
C01F7/166
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022501029
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020069669
(87)【国際公開番号】W WO2021005241
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】19185570.9
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501186162
【氏名又は名称】サゾル ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーメニンク,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ショーネボーン,マルコス
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-179399(JP,A)
【文献】特表2014-534938(JP,A)
【文献】特開2014-198769(JP,A)
【文献】特開2001-107042(JP,A)
【文献】特開2011-246662(JP,A)
【文献】特表2003-509190(JP,A)
【文献】T. R. N. KUTTY et al.,“Luminescence of Eu2+ in strontium aluminates prepared by the hydrothermal method”,Materials Research Bulletin,1990年11月,Vol. 25,No. 11,p.1355-1362,DOI: 10.1016/0025-5408(90)90217-P
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/16 - 7/18
C09K 11/55
C09K 11/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を調製する方法であって、
(a)第1方法による
(i)懸濁液中のベーマイトの微結晶の大きさ(021反射及び/又は020反射)が3nm~50nmであるベーマイト懸濁液を提供する工程、
(ii)水熱処理を前記ベーマイト懸濁液に行い、前記水熱処理をした前記ベーマイト懸濁液を取得する工程、
(iii)前記水熱処理をした前記ベーマイト懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程、及び
(iv)前記Sr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程か、
(b)第2方法による
(i)懸濁液中のベーマイトの微結晶の大きさ(021反射及び/又は020反射)が3nm~50nmであるベーマイト懸濁液を提供する工程、
(ii)前記ベーマイト懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程、
(iii)水熱処理を前記Sr-Al懸濁液に行い、前記水熱処理をした前記Sr-Al懸濁液を取得する工程、及び
(iv)前記水熱処理をした前記Sr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程か、あるいは、
(c)第3方法による
(i)懸濁液中のベーマイトの微結晶の大きさ(021反射及び/又は020反射)が3nm~50nmであるベーマイト懸濁液を提供する工程、
(ii)水熱処理を前記ベーマイト懸濁液に行い、前記水熱処理をした前記ベーマイト懸濁液を取得する工程、
(iii)前記水熱処理をした前記ベーマイト懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程、
(iv)水熱処理を前記Sr-Al懸濁液に行い、前記水熱処理をした前記Sr-Al懸濁液を取得する工程、及び
(v)前記水熱処理をした前記Sr-Al懸濁液を乾燥させて、前記アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記ベーマイト懸濁液の前記水熱処理は、前記ベーマイト懸濁液を、100℃~250℃の範囲の温度で、水の存在下において、0.5時間~14時間の範囲の期間、5~12のpHで加熱することによって行われる
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Sr-Al懸濁液の前記水熱処理は、前記Sr-Al懸濁液を、100℃~250℃の範囲の温度で、水の存在下において、0.5時間~14時間の範囲の期間、5~12のpHで加熱することによって行われる
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ベーマイト懸濁液中の前記ベーマイトの微結晶の大きさ(021反射及び/又は020反射)は、3nm~45nmである
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ストロンチウム化合物は、ストロンチウム塩、又はストロンチウム塩の混合物である
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ベーマイト懸濁液は、
(a)前記ベーマイト懸濁液が水性懸濁液であること、
(b)前記ベーマイト懸濁液の固体含有量が1重量パーセント~30重量パーセントの範囲であること、及び
(c)前記ベーマイト懸濁液中の前記ベーマイトの平均粒径(d50)が0.01μm~100μmであること
の1以上によって更に特徴づけられる
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を調製する方法であって、
(i)請求項1~6のいずれか一項に記載の方法により調製された前記アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を提供する工程と、
(ii)前記アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体をか焼して、前記アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を生成する工程と
を含む方法。
【請求項8】
前記アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体をか焼して、前記アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を生成する工程は、900℃~1100℃の範囲の温度で、0.5時間~5時間の範囲の期間行われる
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
粒子が海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造であり、
細く脆弱な焼結ネックによって相互接続された粒子の非多孔質の一次骨格から、粗大な細孔構造が顕著で、かつ、少なくとも
(i)Hg貫入によって測定した15Å~500Åの細孔半径を有する細孔の細孔容積が、0.05ml/g未満であり、かつ、
(ii)Hg貫入によって測定し300Å~5000Åの細孔半径を有する細孔の細孔容積が、0.7~1.5ml/gの範囲である
という特性がある
三次元の二次構造に構築されることによって特徴づけられる
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物。
【請求項10】
レーザ回折法により測定した粒径が、1~150μmの範囲である
請求項9に記載のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物。
【請求項11】
粒子が実質的に略球形形状であり、ISO 13322-2(2006)による動画像解析によって決定された、前記粒子の容積基準による球形度は、0.90~1.00である
請求項9又は10に記載のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物。
【請求項12】
BET表面積が20m/g未満である
請求項9~11のいずれか一項に記載のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物。
【請求項13】
前記アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、SrAl、SrAl、SrAl、SrAl1219、SrAl1425、又はそれらの混合物である
請求項9~12のいずれか一項に記載のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物。
【請求項14】
前記アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、発光のための活性剤でドープがなされている
請求項9~13のいずれか一項に記載のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物。
【請求項15】
発光のための前記活性剤は、Eu、Dy、又はEu及びDyの双方である
請求項14に記載のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的には、発光体の製造に有用な混合酸化物に関する。更に具体的には、本開示は、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体及びその製造方法、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物及びその製造方法、並びにアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を含む発光体に関する。
【背景技術】
【0002】
活性剤としてユウロピウム(Eu2+)とジスプロシウム(Dy3+)でドープがなされたアルミン酸ストロンチウム、特にSrAl:Eu及びSrAl:Dy、並びにその誘導体は、残光特性が長い発光粒子としてその用途が周知である。当該粒子は例えば、セメント、緊急標識、発光時計内部の針及び時間間隔の標識、道路標識、又は繊維の外部若しくは内部で用いられる。
【0003】
一般的には、当該材料は、対応する酸化金属及び/又は炭酸塩の物理的な混合物の固相反応といった、従来の窯業の方法によって調製される。当該方法は、約1300℃~1500℃の高温での強力な熱処理を含む。時として、混合酸化物の前駆体は、反応性を向上させるべく、熱処理の前にボールミルでの粉砕を受ける。上述は、当該混合酸化物の製造工程において、エネルギー消費の高さの原因となる。
【0004】
特許文献1は、ボールミルにおいて、SrCO、Eu、Al、及びホウ酸(溶剤として)の物理的な混合物を粉砕し、次いで1300℃で1時間加熱する工程を含む、リン光性の蛍光体の製造工程について記載している。所望の最終用途、例えば、樹脂又はコーティングとして材料を塗布及び分散させるための所望の粒径分布を取得するためには、多大なエネルギーを消費し、高価な粉砕工程が必要となる。非特許文献1は、アルミナゲル及びSrOを用いて発光体を生成することについて記載している。ゲルにおいては、固体は連続相である。ゲルは懸濁液ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第0622440号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Kutty T.R.N.et al.“Luminescence of EU in Strontium Aluminates prepared by hydrothermal methods”,1 November 1990,MATERIALS RESEARCH BULLETIN,ELSEVIER,KIDLINGTON,GB pages 1355 to 1362,ISSN0025-5408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高温処理によって取得されるアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の高焼結性(従来の窯業の方法の不可欠な部分)のために、高いエネルギー入力及び長期間の粉砕工程が必要となる。上述により、従来の窯業の方法によるアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の製造工程は非効率的となり、更に、強力な粉砕工程は、材料において、材料の発光特性を低下させる欠陥を生成する。
【0008】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の形成温度を低下させるために当該技術分野で提案されている解決策は、ゾル-ゲル法及び燃焼合成法を適用することである。当該手法は一般的には金属硝酸塩を有機燃料と混合し、混合物を約500℃~700℃で加熱することによって行われる。当該方法は、有機燃料の燃焼の発熱エネルギーを用いることによって、従来の窯業の方法に対する相対的なエネルギー入力が低い混合酸化物を生成する。しかしながら、環境に対して所望されないガスの放出を回避すべく、処理システムの後の大量の排気ガスが上述の工程のために必要となる。更には、下流工程での処理中に粉塵を形成する傾向にある綿毛のような微粒子が生成される。
【0009】
したがって、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物生成するための、エネルギー効率の高い工程が必要である。言い換えれば、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を(従来の窯業の方法と比較して)比較的低い温度で生成できる工程、及び粉砕処理中に容易に破壊する微細構造のあるアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を生成する方法が必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1態様によると、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を調製する方法が提供され、当該方法は、
(i)アルミナ懸濁液を提供する工程と、
(ii)アルミナ懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程と、
(iii)水熱処理を
(a)アルミナ懸濁液(次いで取得されるSr-Al懸濁液の水熱処理をしない)、
(b)Sr-Al懸濁液(以前に取得されたアルミナ懸濁液の水熱処理をしない)、又は
(c)アルミナ懸濁液及びSr-Al懸濁液の双方
に行う工程が、
(a)からの水熱処理をしたアルミナ懸濁液、
(b)からの水熱処理をしたSr-Al懸濁液、又は
(c)からの水熱処理をしたアルミナ懸濁液及び水熱処理をしたSr-Al懸濁液の双方
を取得するために適用される工程と、
(iv)水熱処理をした((b)又は(c)を介して取得される)Sr-Al懸濁液又は((a)を介して取得される)Sr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程と
を含む。
【0011】
上述は、工程(iv)のSr-Al懸濁液が水熱処理をしたアルミナ懸濁液の形態のアルミナ懸濁液を含み、水熱処理後にストロンチウム化合物が添加されるが、Sr-Al懸濁液が更に水熱処理をされることはないことを示している。
【0012】
したがって、本開示の第1態様の第1選択肢によると、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を調製する方法が提供され、当該方法は、
(i)アルミナ懸濁液を提供する工程と、
(ii)水熱処理をアルミナ懸濁液に行い、水熱処理をしたアルミナ懸濁液を取得する工程と、
(iii)水熱処理をしたアルミナ懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程と、
(iv)Sr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程と
を含む。
【0013】
本開示の第1態様の第2選択肢によると、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を調製する方法が提供され、当該方法は、
(i)アルミナ懸濁液を提供する工程と、
(ii)アルミナ懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程と、
(iii)水熱処理をSr-Al懸濁液に行い、水熱処理をしたSr-Al懸濁液を取得する工程と、
(iv)水熱処理をしたSr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程と
を含む。
【0014】
本開示の第1態様の第3選択肢によると、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を調製する方法が提供され、当該方法は、
(i)アルミナ懸濁液を提供する工程と、
(ii)水熱処理をアルミナ懸濁液に行い、水熱処理をしたアルミナ懸濁液を取得する工程と、
(iii)水熱処理をしたアルミナ懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程と、
(iv)水熱処理をSr-Al懸濁液に行い、水熱処理をしたSr-Al懸濁液を取得する工程と、
(v)水熱処理をしたSr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程と
を含む。
【0015】
本開示の第1態様の第2選択肢は好適である。
【0016】
以降の説明は、本開示の全ての態様に適用され、第1態様にのみ適用されるものではない。
【0017】
アルミナ懸濁液は、水酸化酸化アルミニウム(AlO(OH))、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化アルミニウム(Al)、又はそれらの任意の組合せの懸濁液にできる。水酸化酸化アルミニウムは、ベーマイト、ダイアスポア、又はそれらの任意の組合せにできる。水酸化アルミニウムは、水バン土石、バイヤライト、又はそれらの任意の組合せにできる。酸化アルミニウムは、γ(ガンマ)-アルミナ、δ(デルタ)-アルミナ、θ(シータ)-アルミナ、α(アルファ)-アルミナ、又はそれらの任意の組合せといった遷移アルミナにできる。
【0018】
好適にはアルミナ懸濁液は水酸化酸化アルミニウム懸濁液であり、より好適には水酸化酸化アルミニウム懸濁液はベーマイト懸濁液である。ベーマイトの(021)反射及び/又は(020)反射での微結晶の大きさは、3nm~50nm、好適には4nm~45nmにできる。
【0019】
アルミナ懸濁液は、好適には水性懸濁液である。水性懸濁液により、アルミナが少なくとも水に添加されることが呈示される。
【0020】
アルミナ懸濁液の固体含有量は、1重量パーセント(wt%)~30重量パーセントの範囲、好適には3重量パーセント~15重量パーセントの範囲にできる。
【0021】
アルミナ懸濁液中の固体のレーザ回折法(以降に記載する)によって測定した平均粒径(d50)は、0.01μm~100μmの範囲、好適には0.2μm~30μmの範囲にできる。
【0022】
50という用語は、当技術分野において周知であり、試料中の粒子の容積の50%が当該粒径よりも小さく、試料中の粒子の容積の50%が当該直径よりも大きい粒径直径であること称する。
【0023】
懸濁液は好適には水性懸濁液であり、より好適には液体の懸濁液の媒体は水である。
【0024】
ストロンチウム化合物は、ストロンチウム塩、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、又はそれらの任意の組合せにできる。ストロンチウム塩は、酢酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、又はそれらの混合物にできる。好適には、ストロンチウム化合物はストロンチウム塩の混合物である。更に好適には、ストロンチウム化合物は酢酸ストロンチウムと炭酸ストロンチウムとの混合物にできる。
【0025】
アルミナ懸濁液、Sr-Al懸濁液、又はその双方を水熱処理する工程は、アルミナ懸濁液、Sr-Al懸濁液、又はその双方を、100℃~250℃の範囲の温度、好適には180℃~220℃の範囲の温度で、水の存在下で0.5時間~14時間の範囲の期間、好適には1時間~8時間の範囲の期間、加熱することによって行うことができる。水熱処理は、5~12のpH、好適には6~11のpHで行うことができる。
【0026】
水熱処理をしたSr-Al懸濁液又はSr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程は、噴霧乾燥によることができる。
【0027】
本開示の第2態様によると、本開示の第1態様(第1態様の第1選択肢、第2選択肢及び第3選択肢を含む)により製造されたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体が提供され、900℃~1100℃の範囲の温度で、0.5時間~5時間の範囲の期間、好適には3時間の期間、か焼が行われる点で特徴づけられる。
【0028】
本開示の第3態様によると、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を調製する方法が提供され、当該方法は、
(i)アルミナ懸濁液を提供する工程と、
(ii)アルミナ懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程と、
(iii)水熱処理を(i)アルミナ懸濁液、(ii)Sr-Al懸濁液、又は(iii)アルミナ懸濁液及びSr-Al懸濁液の双方に行い、水熱処理をしたアルミナ懸濁液、水熱処理をしたSr-Al懸濁液、水熱処理をしたSr-Al懸濁液、又は水熱処理をしたアルミナ懸濁液及び水熱処理をしたSr-Al懸濁液の双方を取得する工程と、
(iv)水熱処理をしたSr-Al懸濁液又はストロンチウムアルミナ懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程と、
(v)アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体をか焼して、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を生成する工程と
を含む。
【0029】
本開示の第3態様は上述の本開示の第1態様と同一であるが、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物が取得されるべく、か焼工程(v)が更に適用されている。
【0030】
したがって、本開示の第3態様の第1選択肢によると、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を調製する方法が提供され、当該方法は、
(i)アルミナ懸濁液を提供する工程と、
(ii)水熱処理をアルミナ懸濁液に行い、水熱処理アルミナ懸濁液を取得する工程と、
(iii)水熱処理をしたアルミナ懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程と、
(iv)Sr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程と、
(v)アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体をか焼して、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を生成する工程と
を含む。
【0031】
本開示の第3態様の第2選択肢によると、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を調製する方法が提供され、当該方法は、
(i)アルミナ懸濁液を提供する工程と、
(ii)アルミナ懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程と、
(iii)水熱処理をSr-Al懸濁液に行い、水熱処理をしたSr-Al懸濁液を取得する工程と、
(iv)水熱処理をしたSr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程と、
(v)アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体をか焼して、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を生成する工程と
を含む。
【0032】
本開示の第3態様の第3選択肢によると、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を調製する方法が提供され、当該方法は、
(i)アルミナ懸濁液を提供する工程と、
(ii)水熱処理をアルミナ懸濁液に行い、水熱処理をしたアルミナ懸濁液を取得する工程と、
(iii)水熱処理をしたアルミナ懸濁液にストロンチウム化合物を添加して、ストロンチウムアルミナ懸濁液(Sr-Al懸濁液)を形成する工程と、
(iv)水熱処理をSr-Al懸濁液に行い、水熱処理をしたSr-Al懸濁液を取得する工程と、
(v)水熱処理をしたSr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程と、
(vi)アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体をか焼して、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を生成する工程と
を含む。
【0033】
本開示の第3態様の第1選択肢は好適である。
【0034】
アルミナ懸濁液は、水酸化酸化アルミニウム(AlO(OH))、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化アルミニウム(Al)、又はそれらの任意の組合せの懸濁液にできる。水酸化酸化アルミニウムは、ベーマイト、ダイアスポア、又はそれらの任意の組合せにできる。水酸化アルミニウム(Al(OH))は、水バン土石、バイヤライト、又はそれらの任意の組合せにできる。酸化アルミニウムは、γ-アルミナ、ο-アルミナ、θ-アルミナ、α-アルミナ、又はそれらの任意の組合せといった転移アルミナにできる。
【0035】
好適にはアルミナ懸濁液は水酸化酸化アルミニウム懸濁液であり、より好適には水酸化酸化アルミニウム懸濁液はベーマイト懸濁液である。ベーマイトの微結晶の大きさ(021反射)は、3nm~50nm、好適には3nm~45nmにできる。
【0036】
アルミナ懸濁液は、好適には水性懸濁液である。水性懸濁液によって、アルミナを少なくとも水に添加すること、又はその逆が呈示される。
【0037】
アルミナ懸濁液の固体含有量は、1重量パーセント~30重量パーセントの範囲、好適には3重量パーセント~15重量パーセントの範囲にできる。
【0038】
アルミナ懸濁液中の固体のレーザ回折法(以降に記載する)によって測定した平均粒径(d50)は、0.01μm~100μmの範囲、好適には0.2μm~30μmの範囲にできる。d50は前述で定義される。
【0039】
ストロンチウム化合物は、ストロンチウム塩、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、又はそれらの任意の組合せにできる。ストロンチウム塩は、酢酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム又はそれらの混合物にできる。好適には、ストロンチウム化合物はストロンチウム塩の混合物である。更に好適には、ストロンチウム化合物は酢酸ストロンチウムと炭酸ストロンチウムとの混合物にできる。
【0040】
水熱処理をアルミナ懸濁液、Sr-Al懸濁液、又はその双方に行う工程は、アルミナ懸濁液、Sr-Al懸濁液、又はその双方を、100℃~250℃の範囲の温度、好適には180℃~220℃の範囲の温度に、0.5時間~14時間の範囲の期間、好適には1時間~8時間の範囲の期間、(2つの処理工程において)加熱することによって行うことができる。水熱処理は、5~12のpH、好適には6~11のpHで行うことができる。
【0041】
Sr-Al懸濁液又はSr-Al懸濁液を乾燥させて、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を生成する工程は、噴霧乾燥によることができる。
【0042】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体をか焼して、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を生成する工程は、900℃~1100℃の範囲の温度で、0.5時間~5時間の範囲の期間、行うことができる。好適には、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体をか焼して、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を生成する工程は、900℃~1100℃の範囲の温度で、3時間の期間、行われる。
【0043】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体をか焼する工程は、当該技術分野で公知の任意のか焼方法、例えば、ロータリ窯式のか焼炉又はマッフル炉を用いて行うことができる。上述の方法は、本開示の技術分野の当業者に公知である。
【0044】
本開示の第4態様によると、本開示の第3態様により生成されたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物が提供され、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の粒子は、海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造である点で特徴づけられる。
【0045】
本明細書においては、用語「海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造(spongy- or porous bone-like microstructure)」は、細く脆弱な焼結ネックによって相互連結された粒子の非多孔質の一次骨格から、Hg貫入法によって測定できる細孔径の粗大な細孔構造が顕著である、好適には球形形状の三次元の二次構造に構築されることにより特徴づけられる粒子構造を意味することが意図される。上述の構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって更に観察可能である。
【0046】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、SrAl、SrAl、SrAl、SrAl1219、SrAl1425、又はそれらの混合物にできる。好適には、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物はSrAlである。
【0047】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の細孔容積は、Hg貫入によって測定した300Å~5000Åの範囲の細孔半径について、0.7~1.5ml/gの範囲にできる。
【0048】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の細孔容積は、Hg貫入によって測定した15Å~500Åの範囲の細孔半径について、0.05ml/g未満にできる。
【0049】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物のレーザ回折によって測定した粒径は、1~150μmの範囲、好適には5~150μmの範囲にできる。
【0050】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の粒子は、略球形形状にできる。「略(substantially)」によって、60%以上のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の粒子が球形形状であることが呈示される。上述とは別個に、球形形状の粒子の容積基準による球形度は、好適には0.90~1.00である。
【0051】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物のBET表面積は、20m/g未満にできる。
【0052】
本開示の第5態様によると、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物が提供され、粒子が海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造である点で特徴づけられる。
【0053】
「海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造」との文言の意味は、前述で定義したとおりである。
【0054】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、SrAl、SrAl、SrAl、SrAl1219、SrAl1425、又はそれらの混合物にできる。好適には、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物はSrAlである。
【0055】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の細孔容積は、Hg貫入によって測定した300Å~5000Åの範囲の細孔半径について、0.7~1.5ml/gの範囲にできる。
【0056】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の細孔容積は、Hg貫入によって測定した15Å~500Åの範囲の細孔半径について、0.05ml/g未満にできる。
【0057】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物のレーザ回折法(以降に記載する)によって測定した粒径は、1~150μmの範囲、好適には5~150μmの範囲にできる。
【0058】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の粒子は、略球形形状にできる。「略」によって、60%以上のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の粒子が球形形状であることが呈示される。上述とは別個に、球形形状の粒子の容積基準による球形度は、好適には0.90~1.00である。
【0059】
アルミン酸ストロンチウム混合酸化物のBET表面積は、20m/g未満にできる。
【0060】
本開示の第6の態様によると、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物が提供され、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の粒子が海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造であり、
細孔容積がHg貫入によって測定した15Å~500Åの範囲の細孔半径について、0.05ml/g未満であること、
細孔容積がHg貫入によって測定した300Å~5000Åの範囲の細孔半径について、0.7~1.5ml/gの範囲であること、
レーザ回折(以降に記載する)により測定した粒径が1~150μmの範囲、好適には5~150μmの範囲であること、
粒子が略球形形状であり、粒子の容積基準による球形度が0.90~1.00であること、及び
BET表面積が20m/g未満であること
のうちの1以上の特性、好適には2以上の特性、最も好適には全ての特性がある点で特徴づけられる。
【0061】
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、SrAl、SrAl、SrAl、SrAl1219、SrAl1425、又はそれらの混合物にできる。好適には、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物はSrAlである。
【0062】
本開示の様々な態様のいずれかのアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、活性剤でドープがなされて、ドープがなされたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を形成できる。活性剤は希土類酸化物にできる。希土類酸化物は、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)、又はEu及びDyの双方にできる。好適には、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物はEu及びDyの双方でドープがなされる。ドープがなされたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、好適には全希土類酸化物質量の5重量パーセント未満、好適には0.5~5重量パーセント未満でドープがなされる。
【0063】
本開示の第7態様によると、前述のようなアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物、又は本開示の方法によって生成されたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を含む発光体が提供される。
【0064】
本開示の方法により生成されたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物、又は前述のようなアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、発光体において用いることができる。
【0065】
本明細書において前述したように、本開示の様々な第2~7態様のいずれかのアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、細孔容積が、Hg貫入によって測定した15Å~500Åの範囲の細孔半径(中間細孔領域)について、0.05ml/g未満であり、300Å~5000Åの範囲の細孔半径について、0.7~1.5ml/gの範囲であることによって好適に特徴づけられる。上述の粗大な細孔構造の顕著性は、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の粒子の海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造を示す。上述は走査型電子顕微鏡(SEM)によって更に観察可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
本開示は、以下の限定されない実施例及び図面を参照して記載される
【0067】
図1図1は、実施例1により生成されたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物のSEM画像である。
図2図2は、比較例1により生成されたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物のSEM画像である。
図3図3は、比較例2により生成されたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物のSEM画像である。
図4図4は、実施例1及び比較例1の細孔容積及び細孔径を比較するグラフである。
図5図5は、実施例1により生成されたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の位相成分のXRDである。
図6図6は、比較例1による生成物の副生成物としてのSrAl1219及びSrAlとともに、単斜晶系のSrAlの混合物を示すXRDである。
図7図7は、実施例1および比較例1の粒径(Malvern Mastersizerにより測定)と粉砕時間とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1に示すように、本開示のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって容易に観察できる。
【0069】
対照的に、従来の窯業の方法により調製されたアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物のSEM画像(例えば、図2に示すような)は、強く凝集した大きな粒子の高密度構造を呈する。
【0070】
理論により結びつけられていないが、本開示者は、本開示のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造は、例えばリン光発光剤における混合酸化物の更に効率的な粉砕挙動について実現される利点の少なくとも一部を担っていると考える。
【0071】
本開示者は、本開示のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体が、900℃程度の低い温度でアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物に変化しうることを見出した。上述は、変化が従来公知の技術より低い温度で生じるので有利である。
【0072】
更に、本開示者は、本開示のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の粒子が球形形状であり、かつ、海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造であり、粉砕処理において容易に破壊されることを見出した。したがって、本開示のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体及び本開示のアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を、例えば燐光剤のために使用することによって、全体的なエネルギー需要及び粉砕処理時間が低減されるとともに、強力な粉砕によって生じる発光特性の劣化が低減されるので、工程の効率を改善できる。
【0073】
《適用される分析方法およびパラメータ定義》
[粒径及び粒径分布]
分散媒質中の無機物粒子のd50は、フラウンホーファーの理論を適用して、水分散液において、「Malvern Mastersizer 2000」を用いたレーザ散乱によって測定した。dは直径を表す。測定した粒子は、実質的に凝集粒子を含まない。
【0074】
[微結晶の大きさ]
ベーマイトの微結晶の大きさは、X線粉末回折パターンにおける(021)反射を用いて、シェラー(Scherrer)法によって決定される。
【0075】
[表面積]
BET表面積と細孔容積を、液体窒素の温度でクアンタクロムからのクアドラソルブのような典型的な容積測定装置を用いて、窒素の物理吸着で測定した。表面積は、Brunauer-Emmett-Teller法(BET法:DIN ISO 9277:2003-05)を用いて決定される。
【0076】
[細孔容積及び細孔半径]
本明細書で提供される細孔容積及び細孔半径は、Barrett、Joyner、及びHalendaによって提案された方法(BJH法)を用いて、77KでHg貫入によって測定される。
【0077】
細孔径分布は、DIN 66133により、Micromeritics社の「Porosimeter Autopore IV 9500」を用いて、水銀貫入で決定される。細孔径は半径として提供される。
【0078】
SEMの写真は、後方散乱電子モードにおいて、「FEI Phenom」装置によって撮影された。試料は、測定前に金でスパッタリングした。
【0079】
ISO 13322-2(2006)に記載されているように、容積基準による球形度(更に手短に言うと、球形度)は、Retsch社の「Camsizer P4」による動画像解析によって決定される。球形度(SPHT3)は、粒子投影の周囲長P及び面積Aの測定値から、以下の式を用いて算出される。
【0080】
【数1】
【0081】
決定した値は無次元であり、理想的な球体(「球形形状(spherically-shaped)」と更に称する)では1になり、非理想的な球体である球形形状の粒子では通常1未満になる。本開示の場合、球形度は0.9より大きい。
【0082】
球形度及び海綿状構造又は多孔質の骨状構造は、SEMによって視覚化される。
【実施例
【0083】
[実施例1]
アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、本開示の方法により生成した。固体含有量が7.1%であり、208.8gのベーマイトを含有する懸濁液は、200gの蒸留水溶液に、16.3gの酢酸ストロンチウムと17.2gのSrCOとを含む溶液と混合した。210℃、5時間の水熱処理の後、pH8.5で懸濁液を噴霧乾燥し、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体を取得した。アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の前駆体は、1000°Cで3時間か焼して、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物を形成した。アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物は、SEM及びX線回折(XRD)によって分析した。
【0084】
図1は、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の海綿状微細構造又は多孔質の骨状微細構造を明示する。
【0085】
図4に示すように、アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の細孔容積は、Hg貫入によって決定した300Å~5000Åの細孔径について、1.02ml/gである。アルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の細孔容積は、Hg貫入によって測定した15Å~500Åの細孔径について、0.02ml/gである。
【0086】
図5は、本開示により生成したアルミン酸ストロンチウムの混合酸化物の位相成分における、SrAlの存在を示す。
【0087】
[比較例1]
SrCOとγ-Alとの化学量論的な混合物(平均粒径(d50):30μm、商標名「PURALOX SBaー150」にて市販)を乳鉢で混合し、従来の窯業の方法により1500℃で3時間、か焼した。
【0088】
図2は、従来の窯業の方法により調整した生成物の高密度、高焼結性を示す。材料の高焼結性は、細孔体積の測定値によって確認される。図4に示すように、Hg貫入によって決定される300Å~5000Åの細孔半径として提供される細孔径についての細孔容積は0.01ml/gより小さく、Hg貫入によって決定される15Å~500Åの細孔径についての細孔容積は更に、0.01ml/gより小さい。
【0089】
図6は、副生成物としてのSrAl1219及びSrAlとともに、単斜晶系SrAlの混合物を示し、固相反応が1500℃で未だに完全に完了していないことを示す。
【0090】
[粉砕試験]
実施例1及び比較例1からの材料の各々は、5重量パーセントの固体含有量まで水に懸濁した。各々の懸濁液は、高剪断式撹拌機「ULTRA-TURRAX」において、600rpmで操作して処理した。
【0091】
各々の懸濁液における固体の粒径(d50)は、5分後、10分後、及び15分後にレーザ回折によって測定した。比較のため、10分後及び15分後のd50値の測定値は、5分後に決定されるd50値に参照される。
【0092】
表1及び図7に示すように、実施例1の本開示の材料は、粉砕中に容易に破壊される一方、当該粉砕条件下で、比較例1で取得された材料では粒子の減少は観察されないことが明確である。
【0093】
【表1】
【0094】
[比較例2]
Sr-アルミン酸塩は、非特許文献1(Kutty et.al.,MatResBull.25,(1990),1355)により調製した。
【0095】
25重量パーセントのNH水溶液を、60℃でAl-硫酸塩の水溶液に添加して、Al*xHOのゲルを沈殿させた。ゲルの硫酸塩は、水で洗浄除去した。当該ゲルのX線粉末回折分析は、顕著な偽性のベーマイト特性を明示し、微結晶の大きさの測定値は1.5nmであった。
【0096】
ゲルは、Al:Srのモル比が2:1のSrCOのか焼により、新たに調製されたSrOと混合された。混合物は、240℃で6時間、水熱エージングがなされた。固体は、濾過により分離され、水で洗浄され、アセトンで乾燥させ、1000℃で3時間、か焼した。
【0097】
取得された細孔容積は、表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
図3に見られるように、粒子の形状は球形ではなく、微細構造は、海綿又は骨の特徴から逸脱している。
【0100】
したがって、本開示に記載されているような材料特性は、非特許文献1に記載されている方法によっては得られないことが示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7