(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】心臓弁輪形成及びペーシング処置、関連する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20240705BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20240705BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61F2/24
A61N1/36
A61B5/0215 B
(21)【出願番号】P 2022507893
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(86)【国際出願番号】 US2020045675
(87)【国際公開番号】W WO2021026541
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-08-10
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518373829
【氏名又は名称】トランスミューラル システムズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Transmural Systems LLC
【住所又は居所原語表記】4 Dundee Park Drive,Suite 101,Andover,MA 01810 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラフィー,ナッサー
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ラフィー,クーシャ
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/046205(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0281968(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0324668(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61N 1/36
A61B 5/0215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントにおいて、
a)細長いテザーを備え、これは、ループ形状に形成され;
b)インプラントロックを備え、これは、
細長い前記
テザーの上を覆って摺動し、
細長い前記
テザーと係合して、これにより、
細長い前記
テザーに加えられた緊張を維持し、前記インプラントロックは、そのなかに少なくとも一つの遠位開口部を画定し、少なくとも一つの前記遠位開口部は、遠位へ向けて延びた二つの管状リムに接続され、これは、
細長い前記
テザーの周りに配置され、
前記管状リムのうちの第一のものは、冠静脈洞を横切るよう構成され、そのなかを細長い前記テザーが通り抜けられるよう構成され、前記管状リムのうちの第二のものは、三尖弁を横切るよう構成され、そのなかを細長い前記テザーが通り抜けられるよう構成され;
第一及び第二の
前記管状リムは、第一の方向に沿って前記ロックを出るとき、互いに対して平行であり、
第一の前記管状リムは、曲がって第一の前記方向から離れ、第二の前記管状リムは、第一の前記方向に沿って延び続けて、第一の前記管状リムからの分岐点から離れ、第二の前記管状リムは、その後、第一の前記管状リムに平行な通り道に沿って曲がり、これにより、両方の管状リムは、第一の前記方向に対して概して直交する同じ方向に沿って指し示す、
インプラント。
【請求項2】
請求項1の前記インプラントにおいて、
更に、
スペーサーを備え、これは、前記ロックに結合され、前記インプラントから延び、前記スペーサーは、心臓弁の弁尖同士の間に配置され、これにより、心臓弁の弁尖が前記スペーサーに癒着できるよう構成されている、
インプラント。
【請求項3】
請求項
2の前記インプラントにおいて、前記スペーサーは、膨張可能な部材又は自己拡大する体積を含み、これは、拡大して所定の大きさになり、これにより、患者の生来の三尖弁輪の一部分を占める、インプラント。
【請求項4】
請求項
2の前記インプラントにおいて、前記スペーサーは、自己拡大する複数のフィラメントを含み、これは、近位及び遠位のハブに第一及び第二の端部を有し、これは、圧縮された構成から径方向外側へ向けて拡大して、これにより、右心室流出路のなかに体積を占める、インプラント。
【請求項5】
請求項
2の前記インプラントにおいて、前記スペーサーは、細長い膨張可能な部材を含み、これは、患者の三尖弁の領域のなかで前記患者の
右心室流出路の一部分を占めるよう構成されている、インプラント。
【請求項6】
請求項
5の前記インプラントにおいて、膨張可能な前記部材は、コア部材を含み、これは、膨張可能な前記部材の第一及び第二の端部に結合されている、インプラント。
【請求項7】
請求項
2の前記インプラントにおいて、前記スペーサーは、前記インプラントに、スペーサーテザーを経由して結合されている、インプラント。
【請求項8】
請求項
7の前記インプラントにおいて、前記スペーサーテザーは、前記インプラントに、スペーサーロックを経由して結合され、これは、前記インプラントの前記ロックに結合する、インプラント。
【請求項9】
請求項
2の前記インプラントにおいて、前記スペーサーは、その外側周辺の周りに膜を含む、インプラント。
【請求項10】
請求項
1の前記インプラントにおいて、更に、サドルを備え、これは、前記管状リムを前記分岐点の近くで接合し、前記サドルは、前記インプラントが緊張下にあるとき、応力を心臓組織にわたって分配するよう構成されている、インプラント
。
【請求項11】
請求項
10の前記インプラントにおいて、前記サドルは、縫合ラップを経由して前記管状リムに少なくとも部分的に接合されている、インプラント。
【請求項12】
請求項
10の前記インプラントにおいて、前記サドルは、収縮チューブを経由して前記管状リムに少なくとも部分的に接合されている、インプラント。
【請求項13】
請求項
10の前記インプラントにおいて、前記サドルは、前記管状リムの少なくとも部分的に融解する材料を経由して前記管状リムに少なくとも部分的に接合されている、インプラント。
【請求項14】
請求項1の前記インプラントにおいて、
更に、
配備可能な弁尖を備え、これは、
第二の前記管状リムに結合され、配備可能な前記弁尖は、配備可能な少なくとも一つの構造的リブを含み、これは、前記リムに結合す第一の端部と、自由な第二の端部とを有し、配備可能な少なくとも一つの前記構造的リブは、膜に結合され、前記弁尖は、設置されたとき、自己配備して
右心室流出路のなかへ入り、少なくとも一つの三尖弁の弁尖と癒着するよう構成されている、
インプラント。
【請求項15】
請求項
14の前記インプラントにおいて、配備可能な前記弁尖は、配備可能な第一の構造的リブを含み、これは、遠位へ向けて延びた少なくとも一つの前記管状リムの遠位端部領域に結合してそこから延び、そして、配備可能な第二の構造的リブを含み、これは、遠位へ向けて延びた少なくとも一つの前記管状リムの近位端部領域に結合してそこから延びている、インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、米国仮出願番号第62/884,582号(2019年8月8日提出)に関するものであり、その優先権を主張する。
本特許出願は、特許出願番号第15/796,344(2017年10月27日提出、現在では米国特許第10,433,962号)及び米国特許出願番号第16/264,531号(2019年1月31日提出)に関するものである。
上述した特許出願それぞれの開示は、参照によりこのなかにすべての目的のため、明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野
本開示は、以下の技術及び装置に関する。すなわち、インプラントを心臓のなかに配置して、これにより、心臓の構造や機能を変更する。
【背景技術】
【0003】
背景
従来の僧帽弁弁輪形成術は、開心手術を必要とする。これは、胸骨切開又は開胸と、心停止及び心肺バイパスとを伴う。
例えば、弁輪形成処置は、外科的切開のなかを通り抜けて実行される。ここでは、以下の手段により弁輪の有効サイズを減少させる。すなわち、人工弁輪形成リングを僧帽弁輪の左心房側に取り付ける。
硬性及び可撓性の様々な弁輪形成リングが、この目的のために開発されてきた(米国特許第4,917,698;5,041,130;5,061,277;5,064,431; 5,104,407;5,201,880;5,350,420号に示されるものなど)。
非常に有効ではあるが、この開心処置は、重大な合併症を伴い、回復期が長期化する。
その結果、この処置を提案しないことが多くある。すなわち、手術のリスク及び合併症を正当化するには症状が十分でない患者に対して、又は、進行した疾患に苦しんでいる患者に対して、又は、重大な併存疾患を伴う患者に対してである。
【0004】
僧帽弁修復の経皮的アプローチが開発されてきた。これにより、開心処置の臨床的不利益が減少する。
しかし、これらの処置は、様々な欠点を抱えている。
国際出願第PCT/US2017/031543号(2017年5月8日提出)は、本開示に関連し、その先行技術の状況を上回る相当な改善を提示している。
いくつかの態様において、本開示は、前記先行技術をまた更に上回る改善を提供する。
【0005】
他の態様において、本開示は、ペーシングの領域における改善を提供する。
ペースメーカーがファーマン及びロビンソンによって1958年に最初に導入されて以来、前記ペースメーカーは、徐脈性不整脈を伴う患者を治療するための重要な装置として使用されてきた。
ペースメーカーは、通常、不整脈(完全房室ブロック、高度房室ブロック、症状を伴う洞結節機能不全など)の治療に使用される。
ペースメーカーを使用する治療は、電気刺激が正常に心臓に伝達されないときや、誤った刺激が心臓に伝達されるときに、人為的に電気刺激を提供する方法である。
【0006】
図1A~1Cは、ヒト心臓の伝導系の図である。
図1Aは、伝導系における流れを示す。
図1Bは、心電図における波形を示す。
図1Cは、伝導プロセスと波形との間の関係を例示している。
米国特許出願番号第15/328,046号(2015年6月16日提出)(これは、参照によりこのなかに全体としていかなるすべての目的のために組み込まれる。)で議論されたとおり、電気刺激は、洞房(SA)結節、心房のなかの房室(AV)結節のなかを通り抜け、その後、ヒス束及び心室のなかの脚のなかを通り抜けたのち、伝導路のなかを通り抜けて心室全体に伝達される。
【0007】
心電図において、心室筋の脱分極過程によってQRS複合が発生する。
P波に続く最初の下側へ向かう波をQ波と呼び、最初の上側へ向かう波をR波と呼び、R波に続く下側へ向かう波をS波と呼ぶ。
QRSの幅は、電気が心室にわたって伝導されるのにかかる時間を示す。
QRSの幅は、一般に、正常状態において(約90msの周りで)約0.12秒以内である。しかし、これが0.12秒以上である場合は、心室間伝導欠損の存在を示す。
【0008】
ペースメーカーは、概して、発生器と、リードとからなる。
前記発生器は、動力を供給し、制御器を含む。これは、処理回絡及び検出回路を伴う。これは、心臓の作動態様を検出する。
前記ペースメーカーは、一般に、心臓の作動の状態に応じて、動力を供給し又は動力を一時停止する。
動力は、前記リードを経由して、心臓に選択的に印加される。これは、電極で終端する。
ペースメーカーは、一般に、双極的なやり方で作動する。つまり、前記リードは、実際には、二つの電極(一つは電子を届けるため(陽極)、一つは電子を吸収するため(陰極))を含む。
しかし、前記陰極は、慣例上、熱いリードであると一般に考えられている。
前記陽極が切れ又は機能停止した場合、前記ペースメーカー制御器は、これを検出し、その後、前記装置を単極装置として作動させる。前記陽極はケーシングになり、「熱い」リードが陰極として作用し続ける。
【0009】
現在ペースメーカーによって実行される一般的な治療によれば、ペースメーカーのリードの先端を、心室のうち右心室の心尖部(RV心尖部)のなかに挿入して固定し、その後、電気刺激を提供する。
これは、右心室心尖ペーシング(RVAP)と呼ばれる。
RVAPにおいて、RV心尖部における電気刺激は、心室における電気刺激を速やかに伝達する心臓の伝導系のなかを通り抜けて伝達されない。
その代わり、心室の心肋細胞のなかを通り抜けて伝達される。これは、電気刺激を比較的ゆっくりと伝達する。
その結果、電気刺激が心室にわたって広がるのに、比較的長い時間がかかり得る。
これは、QRS幅の増加をもたらすと予想され得る(そして、一般にもたらす)。これにより、心室の同期がずれ、心臓のポンプ効率が低下する。
理想的には、心室を同時に収縮させる。これにより、効率がもっと高くなる。
【0010】
これに対処するため、前記ペースメーカーリードの前記電極を、右心室基底中隔に位置付けて、心室収縮を誘発する神経束のまわりに電気刺激を印加しようという試みがなされてきた。
これを、右心室中隔ペーシング(RVSP)という。
RVSPは、右心室流出路(RVOT)の心室中隔で、最も普通に使用される。
RVSPは、理論的にRVAPの欠損を補うものである。しかし、実際の作動において、ペースメーカーのリードを、RVOTの周りで心室中隔に正確に位置付けることは難しい。そして、前記リードが離れたり移動したりし得るので、作動自体が難しく、したがって、一般には使用されない。
RVSPは、もう一つの特徴を有する。すなわち、前記リード先端を心室中隔に位置付けるが、心室中隔の内側ではなく外側を刺激する。そして、以下のことが知られている。すなわち、RVSPは、心内膜や心室中隔の中心を刺激する方法に比べて、効果が低い。
【0011】
QRSをもっと狭くするもう一つの方法が、以下の場合に適用される。すなわち、心室不全を伴う心不全患者が心電図においてQRS幅が広い場合である。
この方法は、二つのリードを使用する。リードの一つをRV心尖部に位置付け、電気刺激を印加する。もう一つのリードを左側行静脈に位置付け、電気刺激を左心室の側方に印加する。
この治療は、電気刺激をRV心尖部及び左心室の側部に同時に印加することにより、QRSをもっと狭くすることを目指している。
これを、「心臓再同期療法(CRT)」という。
CRTは、心不全患者がLBBB(左脚ブロック)を有する場合、非常に有効な治療である。
しかし、CRTには欠点がある。すなわち、QRSをもっと狭くするため、心室を刺激する二つのリードを使用する必要がある。
【0012】
心室中隔に電気刺激を直接印加できる中隔内ペーシングが試みられてきた。
例えば、ペースメーカーの前記リードを、右心室から左心室のなかを通り抜けて心室中隔のなかへ直接強制的に位置付けることによる方法が、US2010/0298841及びUS2013/0231728に開示されている。
これらの方法は、深達度が高い。これは、左右心室の間の心室中隔を人為的に喪失させる。そして、手術中に周囲の組織を断裂する可能性が高い。そして、空気や凝血塊による塞栓症を起こす可能性が高い。
更に、これらの方法には、多くの危険及び限界がある。例えば、好ましい基部ではなく、心室の中央部分又は心尖部に局所的に接近するかもしれない。
米国15/328,046は、本分野の状況の改善を試みている。これは、前述したアプローチにおける欠陥に対処することを意図した更なるアプローチによる。
本開示は、本分野の状況を越える追加的な改善を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の概要
特定の実施形態において、本開示は、インプラントの実装を提供する。これは、テザーを含む。これは、ループ形状に形成されている。そして、ロックを含む。これは、前記テザーの上を覆って摺動し、前記テザーと係合して、これにより、前記テザーに加えられた緊張を維持する。そして、スペーサーを含む。これは、前記ロックに結合され、前記インプラントから延びている。前記スペーサーは、以下のように構成されている。すなわち、心臓弁の弁尖同士の間に配置され、これにより、心臓弁の弁尖が前記スペーサーに癒着できる。
【0014】
いくつかの実装において、前記テザーは、細長い内側のテザーと外側のシース材料とを含んでもよい。前記テザーは、その長さに沿って放射線不透過性の材料を含む。
細長い内側の前記テザーのなかにある放射線不透過性の前記材料は、放射線不透過性のワイヤを含んでもよい。これは、熱収縮性重合体チューブの長さのなかに配置されている。これは、細長い内側の前記テザーの中空コアのなかに存在する。
【0015】
いくつかの実装において、前記スペーサーは、膨張可能な部材又は自己拡大する体積を含んでもよい。これは、拡大して所定の大きさになり、これにより、患者の生来の三尖弁輪の一部分を占める。
前記スペーサーは、自己拡大する複数のフィラメントを含んでもよい。これは、近位及び遠位のハブに第一及び第二の端部を有する。これは、圧縮された構成から径方向外側へ向けて拡大して、これにより、右心室流出路のなかに体積を占める。
前記スペーサーは、細長い膨張可能な部材を含んでもよい。これは、以下のように構成される。すなわち、患者の三尖弁の領域のなかで、前記患者のRVOTの一部分を占める。
膨張可能な前記部材は、コア部材を含んでもよい。これは、膨張可能な前記部材の第一及び第二の端部に結合される。
【0016】
いくつかの実装において、前記スペーサーは、前記インプラントに、スペーサーテザーを経由して結合されてもよい。
前記スペーサーテザーは、前記インプラントに、スペーサーロックを経由して結合されてもよい。これは、前記インプラントの前記ロックに結合する。
前記スペーサーは、その外側周辺の周りに膜を含んでもよい。
前記インプラントロックは、そのなかに少なくとも一つの遠位開口部を画定してもよい。少なくとも一つの前記遠位開口部は、遠位へ向けて延びた二つの管状リムに接続されてもよい。これは、外側の前記シース材料の周りに配置される。
前記管状リムのうちの第一のものは、三尖弁を横切るよう構成してもよい。そして、その上に非外傷性の遠位先端が形成されてもよい。これは、三尖弁を横切ったのち、軸方向に印加される応力を、生来の中隔の表面全体に分配する。
第一の前記管状リムは、そのなかを外側の前記シース材料が通り抜けられるよう構成してもよい。
前記管状リム部のうちの第二のものは、冠静脈洞を横切るよう構成してもよい。そして、そのなかを外側の前記シース材料が通り抜けられるよう構成してもよい。
【0017】
本開示は、更に、以上で記述したようなインプラントを移植する方法を提供する。
前記方法は、以下のうちの一つ以上を含んでもよい。すなわち、ガイドワイヤの遠位端部を少なくとも部分的に方向付けて、心臓の冠静脈洞のなかを通り抜け、右心室又は右心房のなかへ入れる。前記ガイドワイヤの前記遠位端部を前記患者から退却させ、これにより、前記ガイドワイヤの前記近位及び遠位端部を前記患者の外側に出し、前記ガイドワイヤが冠静脈洞を経由して心臓のなかを通り抜けるループ形状の通り道を横切って、生来の僧帽弁を取り囲む。請求項1記載のインプラントの圧着部を、前記ガイドワイヤの近位端部に圧着する。外側の前記シース材料の両端部が前記患者から外部化されるまで、前記インプラントを前進させる。そして、前記インプラントをその場に固着して、これにより、以下のやり方で前記シースの長さを維持する。すなわち、前記ロックを、外側の前記シース材料の向かい合った端部に沿って前進させて、患者の血管系のなかを通り抜け、患者の心臓のなかへ入れる。前記ロックを、患者の心臓のなかで固定する。
前記方法は、更に、以下のうちの一つ以上を含んでもよい。すなわち、外側の前記シース材料の両端部の上を覆って前記スペーサーを前進させる。前記スペーサーを、前記ロックの上を越えて配置する。前記スペーサーを、三尖弁の領域において、RVOTのなかに配置する。前記スペーサーを、患者の三尖弁のなかで拡大し、これにより、三尖弁逆流を軽減する。
【0018】
本開示は、更に、インプラントの実装を提供する。これは、細長いテザーを含む。これは、ループ形状に形成されている。そして、インプラントロックを含む。これは、外側の前記シースの上を覆って摺動し、外側の前記シースと係合して、これにより、外側の前記シース材料に加えられた緊張を維持する。前記インプラントロックは、そのなかに少なくとも一つの遠位開口部を画定する。少なくとも一つの前記遠位開口部は、遠位へ向けて延びた二つの管状リムに接続されている。これは、外側の前記シース材料の周りに配置されている。そして、サドルを含む。これは、前記インプラントロックの近くで前記管状リムの近位端部領域を接合する。前記サドルは、以下のように構成されている。すなわち、前記インプラントが緊張下にあるとき、応力を心臓組織にわたって分配する。
【0019】
望むなら、前記サドルは、バンドであってもよい。これは、前記インプラントが緊張下にあるとき、心臓組織に対して付勢する材料製である。
前記サドルは、縫合ラップを経由して前記管状リムに少なくとも部分的に接合してもよい。
前記サドルは、収縮チューブを経由して前記管状リムに少なくとも部分的に接合してもよい。
前記サドルは、前記管状リムの少なくとも部分的に融解する材料を経由して、前記管状リムに少なくとも部分的に接合してもよい。
【0020】
本開示は、更に、インプラントの実装を提供する。これは、細長いテザーを含む。これは、ループ形状に形成されている。そして、インプラントロックを含む。これは、外側の前記シースの上を覆って摺動し、外側の前記シースと係合して、これにより、外側の前記シース材料に加えられた緊張を維持する。
前記インプラントロックは、そのなかに少なくとも一つの遠位開口部を画定してもよい。
少なくとも一つの前記遠位開口部は、遠位へ向けて延びた二つの管状リムに接続されてもよい。これは、外側の前記シース材料の周りに配置される。
前記管状リムのうちの第一のものは、冠静脈洞を横切るよう構成してもよい。そして、そのなかを細長い前記テザーが通り抜けられるよう構成してもよい。
前記管状リムのうちの第二のものは、三尖弁を横切るよう構成し、そのなかを細長い前記テザーが通り抜けられるよう構成してもよい。
第一及び第二の前記管状リムは、第一の方向に沿って前記ロックを出るとき、互いに対して平行であってもよい。
前記管状リムのうちの前記第一のものは、曲がって第一の前記方向から離れてもよい。第二の前記管状リムは、第一の前記方向に沿って延び続けて、第一の前記管状リムからの分岐点から離れてもよい。
第二の前記管状リムは、その後、第一の前記管状リムに平行な通り道に沿って曲がり、これにより、両方の管状リムは、第一の前記方向に対して概して直交する同じ方向に沿って指し示してもよい。
【0021】
前記インプラントは、更に、サドルを含んでもよい。これは、前記管状リムを前記分岐点の近くで接合する。
前記サドルは、前記インプラントが緊張下にあるとき、心臓組織にわたって応力を分配するよう構成してもよい。
前記サドルは、縫合ラップを経由して前記管状リムに少なくとも部分的に接合してもよい。
前記サドルは、収縮チューブを経由して前記管状リムに少なくとも部分的に接合してもよい。
前記サドルは、前記管状リムの少なくとも部分的に融解する材料を経由して、前記管状リムに少なくとも部分的に接合してもよい。
【0022】
本開示は、更に、移植可能なペーシングシステムを提供する。これは、以下のように構成され配列されている。すなわち、心臓のなかでループを周航する。
前記システムは、このなかで記述したとおりのインプラントを含む。これは、僧帽弁縫縮処置を実行する。そして、少なくとも一つの導電体を含む。そして、心臓ペーシング制御器を含む。これは、動力源と、パルス発生器と、制御回絡とを含む。これは、少なくとも一つの前記導電体に作動可能に結合されている。そして、少なくとも一つの心臓ペーシング電極を含む。これは、心臓組織のなかに移植されるよう構成され配列されている。少なくとも一つの前記心臓ペーシング電極は、少なくとも一つの前記導電体を経由して、前記心臓ペーシング制御器に電気的に結合されている。
【0023】
望むなら、前記ロックを、前記心臓ペーシング制御器に結合してもよい。
少なくとも一つの前記導電体は、細長い内側の前記テザー又は外側のシース材料のなかに、少なくとも部分的に配置されている。
前記ロックは、そのなかを前記心臓ペーシングリードが通り抜けて経路付けられている。
電気通信を、以下のやり方で前記心臓ペーシングリードと確立してもよい。すなわち、前記ロックの一部分を係合する。
電極を、前記インプラントの前記管状リムのうちの一つ以上又は前記インプラントの前記サドル部分に沿って留置してもよい。
望むなら、前記システムは、保護ブリッジを含んでもよい。これは、中隔壁の近くの冠静脈洞のなかにあるとき、LCx動脈を跨ぐ。
前記システムは、更に、少なくとも一つのセンサモジュールを含んでもよい。これは、外側の前記シースのなかに少なくとも部分的に配置される。少なくとも一つの前記センサモジュールは、少なくとも一つのセンサを含む。これは、少なくとも一つの生物学的パラメータを感知する。
少なくとも一つの前記センサモジュールは、少なくとも一つの圧力センサを含んでもよい。これは、血圧を検出する。
少なくとも一つの前記センサモジュールは、以下のうちの少なくとも一つを含んでもよい。すなわち、化学センサ、距離センサ、電気生理学的データを検出する回路を有するセンサ、移動センサ、及び、位置センサである。
【0024】
望むなら、前記ペーシングシステムは、更に、少なくとも一つのペーシングリードを含んでもよい。
少なくとも一つの前記ペーシングリードは、右心房とインターフェースするよう構成し配列してもよい。
少なくとも一つの前記ペーシングリードは、右心室とインターフェースするよう構成し配列してもよい。
少なくとも一つの前記ペーシングリードは、心静脈とインターフェースするよう構成し配列してもよい。
少なくとも一つの前記ペーシングリードは、中隔静脈の近くの組織とインターフェースするよう構成し配列してもよい。
前記制御器は、以下のうちの少なくとも一つを提供するよう構成し配列してもよい。すなわち、ペーシング、除細動、測定及び制御である。
内側の細長い前記テザーが設けられている場合は、ループアンテナを含んでもよい。これは、信号を前記制御器へかつそこから伝導する。
望むなら、前記ペーシングシステムは、更に、貯蔵器を含んでもよい。これは、有益な薬剤を含有する。これは、分注器に結合される。これは、前記制御器によって制御される。
有益な前記薬剤は、医薬を含んでもよい。
有益な前記薬剤は、遺伝子治療材料を含んでもよい。
【0025】
本開示は、更に、インプラントの実装を提供者する。これは、細長いテザーを含む。これは、ループ形状に形成されている。そして、インプラントロックを含む。これは、外側の前記シースの上を覆って摺動し、外側の前記シースと係合して、これにより、外側の前記シース材料に加えられた緊張を維持する。
前記インプラントロックは、そのなかに少なくとも一つの遠位開口部を画定してもよい。
少なくとも一つの前記遠位開口部は、遠位へ向けて延びた少なくとも一つの管状リムに接続してもよい。これは、外側の前記シース材料の周りに配置される。
遠位へ向けて延びた少なくとも一つの前記管状リムは、三尖弁を横切るよう構成してもよい。そして、そのなかを細長い前記テザーが通り抜けられるよう構成してもよい。
前記インプラントは、更に、配備可能な弁尖を含んでもよい。これは、遠位へ向けて延びた少なくとも一つの前記管状リムに結合される。
配備可能な前記弁尖は、配備可能な少なくとも一つの構造的リブを含んでもよい。これは、前記リムに結合した第一の端部と、自由な第二の端部とを有する。配備可能な少なくとも一つの前記構造的リブは、膜に結合される。前記弁尖は、以下のように構成される。すなわち、設置されたとき、RVOTのなかへ自己配備し、少なくとも一つの三尖弁の弁尖と癒着する。
望むなら、配備可能な前記弁尖は、配備可能な第一の構造的リブを含んでもよい。これは、遠位へ向けて延びた少なくとも一つの前記管状リムの遠位端部領域に結合してそこから延びる。そして、配備可能な第二の構造的リブを含んでもよい。これは、遠位へ向けて延びた少なくとも一つの前記管状リムの近位端部領域に結合してそこから延びる。
【0026】
以下のことを理解されるべきである。すなわち、前述の一般的な記述及び以下の詳細な記述は、両方とも、例示的であり、このなかで開示された実施形態の更なる説明を提供することを意図している。
【0027】
添付の図面は、この明細書に組み込まれ、その一部を構成する。これが含まれることにより、本開示の方法及びシステムを例示し、その更なる理解を提供する。
記述とともに、図面は、開示された実施形態の原理を説明するのに役立つ。
【0028】
図面の簡潔な記述
例示的な実施形態の前述したもの及び他の対象、態様、機構及び利点は、以下の記載を添付図面と併せて参照することによって、もっと明白になるであろうし、もっとよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1A~1Cは、本開示にしたがい、心臓ペーシングの態様を例示している。
【
図2】
図2は、例示的な冠動脈保護装置を示す概略図である。これは、縫縮弁輪形成処置をしている間の位置にある。
【
図3A】
図3A~3Dは、経洞冠動脈弁輪形成術に関与する心臓の領域を示す一組の図面である。前記保護装置を使用して、これにより、緊張を縫縮緊張装置に印加したとき、冠動脈を締め付けるのを防ぐところを例示している。
図3Aは、心臓の左側方外観図である。上行大動脈から分岐する側方の冠動脈と、側方の回旋動脈の枝と、大心臓静脈とを示す。
【
図3B】
図3Bは、動脈の断面の拡大図である。大心臓静脈のレベルで左冠動脈回旋枝よりも表在して横断する冠静脈洞を示す。
【
図3C】
図3Cは、
図3Bと同様の図である。弁輪形成術をしている間に、その場に保護装置がなく、結紮材(例えば(限定ではない)ワイヤ又は縫合材)を留置するところを示す。弁輪形成処置をしている間に、結紮材を締めると、圧力が冠動脈の枝の上に発揮され、血流及び心筋灌流を制限する。
【
図3D】
図3Dは、この同じ構造の拡大図である。冠動脈よりも表在した冠静脈洞のなかで結紮材の上を覆って前記保護装置を留置したところを示す。
【
図4A】
図4Aは、本開示にしたがい、インプラントの一部分の概略図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示にしたがい、例示的な保護要素の側面図である。
【
図4C】
図4Cは、本開示にしたがい、例示的なインプラントの断面概略図である。
【
図4D】
図4Dは、内側のテザーの図である。これは、
図4Cの前記インプラントにおいて使用するのに適している。
図4E~4Fは、本開示にしたがい、インプラントの更なる実施形態の図である。
【
図5】
図5A~5Eは、本開示にしたがい、圧着部の様々な態様を例示している。これを使用して、例示的なインプラントの遠位端部を、ガイドワイヤの近位端部に接続する。これは、患者の血管系のなかを通り抜けて方向付けられている。
【
図6】
図6Aは、本開示にしたがい、スネアカテーテルの実施形態の概略図である。
図6A~6Bは、標的ワイヤの例示である。これは、
図6Aの前記スネアカテーテルとともに使用する。
【
図7A】
図7Aは、ヒト心臓の概略上面図である。房室弁のレベルで切り取っている。僧帽弁の周りの縫縮弁輪形成結紮材の代替的な二つの軌跡を破線で示す。
【
図7B】
図7Bは、心臓を正面から見た図である。心筋壁の一部分を切り取って、
図7Aの縫縮弁輪形成軌跡を示す。
【
図8】心臓を背面から見た図。冠静脈洞縫縮弁輪形成術の傾斜した平面を示す。本図面は、僧帽弁輪平面の上を覆う小さいほうの従来の外科的な僧帽弁弁輪形成リングと、大きいほうの冠動脈縫縮とを概略的に例示している。これは、僧帽弁平面に対して傾斜した平面にあり、これにより、左心室流出路を包囲する。
【
図9】
図9は、心臓の僧帽弁領域の概略断面図である。人工心臓弁が僧帽弁領域のなかに位置し、外側へ向けて拡大する力を印加する。本開示にしたがう僧帽弁縫縮インプラントが、僧帽弁領域の周りに位置付けられる。そして、内側へ向かう力を印加する。本開示にしたがう冠動脈保護装置が、僧帽弁縫縮装置に沿って位置付けられる。そして、冠動脈が圧縮されないよう保護する。
【
図10】心臓の断面図。僧帽弁縫縮装置が、冠静脈洞のなかを通り抜け、僧帽弁の周りに送達されている。
【
図11】
図11A~11Eは、本開示にしたがい、インプラントに結合されるべきスペーサーの実装を例示している。
【
図12】
図12A~12Cは、本開示にしたがい、スペーサーの第一の実装を三尖弁の場所のなかに留置したところを例示している。
【
図13】
図13A~13Cは、本開示にしたがい、スペーサーの第二の実装を三尖弁の場所のなかに留置したところを例示している。
【
図14】
図14A~14Bは、本開示にしたがい、インプラントの実施形態の態様を例示している。
【
図15】
図15は、本開示にしたがい、インプラントの構築の態様を例示している。
【
図16】
図16A~16Bは、本開示にしたがい、インプラントの更なる実装を例示している。
【
図17】
図17A~17Cは、本開示にしたがい、インプラントを留置したところを示す図を例示している。
【
図18】
図18A~18Dは、本開示にしたがい、インプラントの更なる態様を例示している。
【
図19】
図19A~Eは、本開示にしたがい、インプラントの更なる態様を例示している。
【
図20】
図20A~Eは、本開示にしたがい、弁尖構造の態様を例示している。これは、装置に結合できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
例示的な実施形態の詳細な説明
それと異なる記載がない限り、専門用語は、従来の用法にしたがって使用する。
本開示の様々な実施形態のレビューを容易にするため、用語の以下の説明を提供する:
【0031】
「弁輪形成要素」とは、心臓の弁輪の整形を誘導し、これにより、弁閉鎖不全を修復する装置をいう。
そのような装置は、冠静脈洞のなかに留置され、弁輪を圧縮する力によってその作用を発揮するものを含む。これは、例えば、弾力性のある弁輪形成要素が拡大することにより、又は、縫縮弁輪形成術におけるように、弁輪形成要素を緊張下で留置することによる。
【0032】
用語「備える」は、「限定なく含む」を意味する。したがって、「ガイドカテーテルと、ガイドワイヤとを備える」は、追加的な要素を除外することなく、「ガイドカテーテルと、ガイドワイヤとを含む」を意味する。
【0033】
用語「ガイドワイヤ」とは、単純なガイドワイヤ、硬化したガイドワイヤ、又は、操縦可能なガイドワイヤカテーテルをいう。これは、組織を穿刺したり貫通したりできる。
ガイドワイヤは、また、エネルギーを送達してもよい。これにより、以下の手段により組織を貫通する能力を増大させる。すなわち、例えば、穿刺し、高周波切除エネルギーを送達し、又は、レーザー切除エネルギーを送達する。
【0034】
これらは、「貫通装置」の例である。これは、心臓組織(心筋など)を貫通することができる装置である。
【0035】
このなかで使用するとおり、用語「結紮材」は、任意の適当な緊張材料を包含して意味し、縫合材料だけに限定されない。
用語「緊張材料」又は「結紮材」は、縫合材及び弁輪形成ワイヤを含む。
【0036】
「僧帽弁縫縮弁輪形成術」とは、以下のような弁輪形成処置をいう。すなわち、緊張要素を、冠静脈洞の少なくとも一部分(好ましくは、全部)のなかを通り抜けて留置する。これにより、周方向に向かう緊張を、僧帽弁輪の周りに送達する。そして、緊張要素を選択的な度合いの緊張下に留置できるようにする。これにより、弁輪形成術を実行する。
しかし、前記僧帽弁縫縮弁輪形成術は、他の縫縮軌跡も含む。例えば、このなかで開示されたものなどであり、これは、近位冠静脈中隔穿通枝と、心筋又はその静脈と右心室又は右心房との間に介在する腺維輪とのなかを通り抜け、これにより、周状の縫縮弁輪形成緊張を作り出す軌跡を含む。
【0037】
「緊張材料」は、冠静脈洞僧帽弁縫縮弁輪形成術を実行するのに適した任意の材料である。そこでは、囲み材料を緊張下で留置し、これにより、僧帽弁輪をリモデリングする。
適当な緊張材料の例は、好ましくは、(例えば、重合体織り材料から作製された)シース材料である。これは、このなかに記述されたとおりである。
【0038】
それと異なる説明がない限り、このなかで使用されるすべての専門及び科学用語は、本開示が属する分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
単数形の用語「a」「an」及び「the」は、文脈により明らかにそうではないと示されない限り、複数の指示対象を含む。
用語「又は」は、文脈により明らかにそうではないと示されない限り、言及された代替的な要素のうちの単一の要素、又は、二つ以上の要素の組み合わせをいう。
例えば、語句「rtMRI又は心エコー検査」は、リアルタイムMRI(rtMRI)、無線エコー検査、又は、rtMRI及び心エコー検査の両方をいう。
このなかで記述されたものと同様又は同等の方法及び材料を、本開示の実践又は試験において使用してもよいが、適当な方法及び材料を以下に記述する。
矛盾する場合は、本明細書(用語を含む。)が制御する。
それに加えて、前記材料、方法及び例は、例示的なものに過ぎず、限定を意図するものではない。
【0039】
冠静脈洞僧帽弁縫縮弁輪形成術は、経皮的な僧帽弁修復処置の一例である。このために、開示された保護装置を使用できる。
前記装置及びその使用方法は、冠静脈洞のなかに留置されたいかなる人工弁輪形成要素にも広く適用可能であるが、前記方法を、縫縮弁輪形成術の特定の例に関連して、記述する。
この具体的な例は、縫縮弁輪形成術で使用する前記処置を限定するものと解釈すべきではなく、特定の実施形態におけるその使用を例示するに過ぎない。
【0040】
例示的な経カテーテル僧帽弁縫縮弁輪形成術は、僧帽弁輪の周りに緊張材料又は装置を導入することを伴う。これには、ガイドカテーテルと二次カテーテル(同軸ガイドワイヤ又は疎通カテーテルを方向付ける操舵可能なマイクロカテーテルなど)とを使用する。
僧帽弁輪の周りの範囲へのアクセスを成し遂げるには、様々な経皮的アプローチを使用できる。これは、冠静脈洞から及びそのなかを通り抜けるアクセスを含む。
特定の実施形態において、インプラントの一部分を構成する緊張材料を、僧帽弁輪の周りに適用し、ある実施形態では非解剖学的な部分を含む経路に沿う。
例えば(限定ではなく)、前記緊張材料は、冠静脈洞の最前壁底部分と冠静脈洞口との間の領域を横切ってもよい。
別の非限定的な例として、このような緊張材料を、僧帽弁の心房側を横切って適用し、冠静脈洞の後側面側から前側に至る。あるいは、僧帽弁輪の中隔側から側面側に至ってもよい。
この処置により、僧帽弁輪の断面積と中隔側壁の分離とが減少する。これにより、僧帽弁の癒着線が回復する。
【0041】
冠静脈洞を介した僧帽弁輪形成術は、下にある冠動脈を収縮し又は閉塞するのに十分な圧力を意図せずに伝達すると認められているので、例示的な目的のため、このなかに開示した前記装置のうちのいくつかが開発されている。これにより、処置の安全性及び有効性を増加させる。
図2は、インプラント400の使用を概略的に例示している。これは、僧帽弁縫縮弁輪形成処置において、保護装置420を使用する。
図2は、緊張要素として使用されるシース材料450(好ましい実施形態では、編組縫合材料)を描いている。これは、冠静脈洞250の一部分のなかを通り抜けて延び、冠動脈回旋枝252の上を越える。
図2は、インプラント400を示す。これは、冠静脈洞250のなかに位置付けられている。保護要素420が冠動脈252の上を越えて延びている。そして、近位及び遠位部分428,429が冠動脈252の両側に位置する。
インプラント400の前記テザー部分450に緊張がかかると、前記近位及び遠位部分428,429は、冠動脈252の両側でその場に保持され、下にある冠動脈(LCx)252の上ではなく、冠静脈洞250の壁に圧縮力を伝達する。
【0042】
図3A,3B,3C及び3Dは、縫縮弁輪形成保護装置400の前記機能の代替的な図を提供する。
図3Aは、心臓の外部の解剖学的構造を示す。冠静脈洞250が、左冠動脈254の回旋枝252の上を乗り越えて延びている。
図3Bは、冠静脈洞250が冠動脈252に重なっている関係の拡大図を示す。
図3Cは、中空のテザー450を例示している。これは、縫縮弁輪形成術をしている間に緊張下で留置されている。これは、下にある冠動脈252を圧迫し、心筋灌流を邪魔している。
図3Dは、中空のテザー450を示す。これは、保護装置420のなかを通り抜けて延びている。これは、冠動脈252に圧迫力が印加されるのを阻害している。これは、したがって、開存したままであり、心筋組織を正常に灌流することができる。
【0043】
図4A~4Bは、インプラント400の実施形態を例示している。これは、保護ブリッジ420を含む。
前記インプラント400の遠位端部は、圧着部570に接続している。これにより、以下に示すとおり、それを送達するのが容易になる。
遠位送達チューブ440は、シース450の遠位部分の上を覆って滑る。これは、前記インプラント400の様々な構成要素を収容する。
前記圧着部570は、その近位端部で、前記シースの前記遠位端部と、前記インプラント400の前記遠位端部で前記シースの内側にある構成要素との周りに圧着されている。
図4A~4Bに例示したとおり、前記インプラント400は、アーチ形状の保護要素420を含む。
中空のテザー410(小径の編組ポリエステル縫合材など)が、前記保護アーチ420の上にあり、例えば以下の手段により、その場に固定される。すなわち、縫合ループ(不図示)、又は、収縮チューブの一つ以上の小片(不図示)である。
一実装において、収縮チューブの小片は、テザー410及び保護アーチ420の上を覆って摺動し、その場で収縮し、端部から端部まで前記アーチ420の上側表面の上でその場でテザー410を保持する。
望むなら、この収縮チューブは、前記保護要素400の両端部を越えた先まで延びてもよい。これにより、ストレインリリーフとして作用し、これにより、前記要素420の両端部において、剛性がもっと穏やかに遷移する。
また、望むなら、それに加えて又はその代わりとしてのストレインリリーフ430を、また、前記保護要素420の両端部に設けてもよい。これは、また、前記テザー410を取り囲む。
シース450(直径がもっと大きい編組した縫合材など)を、その後、例えば、要素410,420及び430の組立体の上を覆って嵌合する。
シース450は、前記保護要素420が存在しない領域で狭くなる。
遠位送達チューブ440が、前記シース450の遠位領域の上を覆って摺動する。そして、近位送達チューブ470が、前記シース450の近位領域の上を覆って摺動する。そして、望むなら、前記インプラントの前記遠位及び近位端部にそれぞれその場で圧着される。
【0044】
図4Bに例示したとおり、内側の前記テザー410は、複数の下位構成要素からなってもよい。
内側のテザー410の例示した実施形態は、最も内側の金属製の放射線不透過性ワイヤ410a(例えば、白金)を、熱収縮チューブ410b(例えば、PTFE、PET)が取り囲んだものからなってもよい。
これらの入れ子状の構成要素は、その後、適宜、編組した縫合材410cのなかに収容してもよい。
好ましくは、構成要素410a,410b,410cの長さは、シース450と同じ範囲に広がる。そして、前記インプラント400の前記近位及び遠位端部で、シース450に圧着される。
【0045】
好ましくは、内側の前記テザーは410、その全長に沿って放射線不透過性である。これにより、設置している間及びその後におけるその可視化が増強する。
内側のテザー410の放射線不透過性を、金属(例えば白金)製のワイヤの存在によって増強してもよい。前記ワイヤ(又はフィラメント)は、タングステン装填重合体、タンタル装填重合体から形成してもよいし、以下のような前記編組縫合材料410cを使用してもよい。すなわち、何らかのやり方で(例えば、下にある前記重合体のなかへ、又は、前記織り材料のなかへ組み込むことにより)、ビスマス、タングステン、タンタル、硫酸バリウムなどのうちの一つ以上を浸透させる。
【0046】
前記送達チューブ440,470は、前記シース450の上を覆って配置される。そして、前記保護ブリッジ420の前記近位及び遠位端部に当接(又はその近くに位置)してもよい。
除去可能な前記送達チューブは、両側で、連続した外側の前記テザー450の上を覆って組み立てられる。これは、前記保護ブリッジから前記交換圧着部に至る(
図4Aに例示したとおり)。この補助により、前記ガイドワイヤを外して前記縫縮インプラントに交換する。
その代わりとして、外側の前記シース450の下に経路付けてもよい。
除去可能な前記送達チューブは、望みにより、重合体材料(例えば、PEEK、HDPEなど)などから作製してもよい。
前記インプラントがその場にあるとき、除去可能な前記送達チューブを引き出すことにより除去してもよい。
前記構造を取り囲む前記シース450は、今度は、その長さの少なくとも一部分又はその長さのすべてに沿って、潤滑性被覆を含んでもよい。これは、疎水性被覆(例えば、PTFE、PVDF)又は親水性被覆(例えば、PVP)などである。
これは、例えば、追加的な一つ以上の層、又は、PTFE収縮チューブの隣接したり重なったりするチューブの形態で提供してもよい。
前記重なり領域は、ストレインリリーフとして作用してもよい。この助けにより、剛性が遷移する領域を提供する。
前記収縮チューブは、このなかの別の箇所に記述したような多層共押出材であってもよい。これは、重合体又は金属の材料から形成された中間の編組層を含んでもよい。そして、放射線不透過性材料を含んでもよい。
【0047】
いくつかの実装において、シース450は、DSM、ダイニーマ又はテレフレックス製の1~2mm超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)無芯円形編組から作製してもよい。
いくつかの実施形態において、前記テザー/シース450は、重量比で少なくとも20%のビスマスを装填してもよい。これにより、放射線不透過性が増強する。
例えば、前記シースは、約20から約70%の間の(又は、その間の約1重量%刻みの任意の度合いの)ビスマス又は硫酸バリウムを装填してもよい。
それに加えて又はその代わりとして、追加的な又は代替的な放射線不透過性材料を、前記シース材料のなかへ組み込んでもよい。例えば、タングステン、タンタル、硫酸バリウムなどである。
これらの材料は、伸線した金属(例えば、白金など放射線不透過性の材料)製のワイヤとして組み込んでもよい。これは、以下の手段により前記編組のなかへ組み込まれる。例えば、伸線した前記ワイヤを編み込み、あるいは、前記テザーのなかに画定された中心チャネルに沿って方向付ける。
【0048】
図4C及び4Dは、本開示にしたがい、インプラント400’の更なる実施形態を例示している。
図4Cは、インプラント400’の遠位及び中心部分を例示している。
インプラント400’は、最も内側の(例えば白金製の)コアワイヤ410a’を含む。これは、好ましくは、細長いペバックスチューブ410b’のなかに収容される。
構成要素410a’,410b’の組立体を、その後、管状(例えば、5mm)の編組した縫合材410c’のなかへ導入する。
この構成要素の集合体を、その後、もっと短いチューブ480’のなかへ導入する。これも、好ましくは、ペバックスなどの適当な熱可塑性材料製である。
チューブ480’は、好ましくは、たった数インチの長さであり、保護ブリッジ420’の全長にわたるのに十分である。
構成要素410a’,410b’,410c’及び480’を、その後、加熱作業において熱収縮する。
前記加熱作業により、前記ペバックス材料を、編組した前記縫合材410’の繊維の間に溶け込ませる。そして、前記保護ブリッジ420’の前記領域において、その剛性を増強する。
構成要素410a’,410b’,410c’及び480’が熱融合した組立体を、その後、ブリッジ420’の上側の前記表面の上を覆って置く。そして、その後、更なる(例えば、直径1mmの)編組した重合体縫合材450’のなかへ導入する。
前記縫合材450は、構成要素410a’,410b’,410c’及び480’の前記組立体を、ブリッジ420’の上側の前記表面の上で、その場に保持する。
次に、ペバックスなどの適当な熱可塑性材料製の外側の管状層490’を、前記ブリッジ420’を跨ぐ外側の前記シース450’の前記部分の上を覆って嵌合する。
この構成要素の集合体を、その後、再び熱収縮させて、これにより、構成要素480’及び490’の前記重合体材料を、編組したシース450’の繊維のなかへ融合して、剛性を更に増強するとともに、前記インプラント400’の長さに沿って、優れた応力遷移態様を伴う滑らかな表面を提供する。
内側の放射線不透過性のワイヤ410a’は、好ましくは、前記インプラントの全長を横切らない。しかし、その代わりとして、好ましくは、中心領域を占める。これは、約100cmから200cmの長さ(例えば、約170cmの長さ)の間であり、ブリッジ420’の両側にほぼ等しい長さである。
【0049】
図4Dに更に例示したとおり、遠位送達チューブ440’も存在する。これは、好ましくは、ペバックスなどの熱可塑性重合体(好ましくは熱可塑性エラストマー「TPE」)から作製される。
例示したとおり、送達チューブ440’は、裾広がりの近位端部を含む。これは、ブリッジ420’の前記遠位端部に当接し又は部分的に重なり合いさえするのに適している。
近位送達チューブ470’(具体的には例示していない)には、同様に、遠位裾広がりを設けてもよい。これは、同様に、前記ブリッジ420’の前記近位端部に当接し又は重なり合う。
【0050】
図4Dは、インプラント400’の遠位領域を示す。これは、それが断面において遠位圧着部570’にどのように付着するかを示す。
遠位圧着部570’は、遠位通路を含む。これは、ガイドワイヤ(不図示)を受け入れる。そして、近位通路を含む。これは、入れ子状の複数の管状構成要素を受け入れる。
図4Dに例示した最も内側の構成要素は、ペバックスチューブ410b’を含む。これは、編組した縫合材410c’の内側で入れ子状になっている。
コアワイヤ410a’は、この実施形態において、前記圧着部まで完全に延びてはいない。しかし、望むなら、そうであってもよい。
構成要素410c’は、外側のシース(又は、編組した縫合材450’)のなかに配置されている。
縫合材450’の前記遠位端部は、今度は、重合体チューブ(ペバックスなど)製の短い(例えば、2~3cm)区域572’のなかに配置される。
タブ572’の前記遠位端部は、圧着部570’の前記近位面のなかの筒状開口部のなかへ嵌入される。
外側の送達チューブ440を、その後、圧着部570’の外部近位部分の上を覆って摺動させる。これは、凹んでいてもよい。
圧着部570’の近位部分には、そのなかを貫いて複数の穴(又は窓574’)が形成されている。
前記構成要素が組み立てられると、前記組立体が熱収縮し、これにより、送達チューブ440’の前記遠位先端のなかにある重合体が窓574’のなかを通り抜けてチューブ572’と融合し、これにより、圧着部570’がインプラント400’に付着する。
チューブ440’の前記遠位端部は、初期において、外側へ向けて裾広がりであってもよい。この助けにより、初期において、前記構成要素が圧着部570’のなかへ又はその上へ嵌合する。
不図示だが、前記インプラント400’の前記近位端部を、同様に構築し、圧着部なしで融合してもよい。これは、例えば、前記近位送達チューブ470’の前記近位端部を前記内部構成要素に熱収縮させることによる。
【0051】
本開示は、また、ある種のインプラント400’を提供する。これは、保護ブリッジを含まない。
この実施形態構築は、インプラント400’と同じである。ただし、前記ブリッジ420’があるはずの中心領域において、前記ブリッジ420’が存在せず、チューブ480’を含まない点を除く。
その代わりとして、構成要素410a’,410b’及び410c’の前記組立体を熱融合して、外側のシース450’のなかへ導入する。
前記インプラント400’の中心の場所を示すため、マーカーバンドを、以下の手段により、シース450’の上で、その場所まで摺動させ、その場に保持する。すなわち、別の重合体チューブ(好ましくは、ペバックス製)を、前記マーカーの上で摺動させ、その場に熱収縮させる。
望むなら、熱収縮チューブの更なる小片が、前記マーカーの上を覆って収縮してもよい。これもまた、少なくともある程度、放射線不透過性であってもよい。これにより、放射線不透過性を増強するとともに、前記インプラントの中心部の厚さを増加させる。これにより、移植している間の安全機構として、前記ロックのなかを通って引き抜かれるのを防止する。
【0052】
図5A~5Eは、圧着部570の様々な図を描いている。これは、ガイドワイヤの近位端部502から前記インプラント400の遠位端部に遷移する領域を提供する。
前記インプラント400の前記近位端部に第二の圧着部を設ける場合は、代替的な又は追加的な構造的な取り付け場所を設けてもよい。これは、前記シース450の前記近位端部を、前記内側テザー410の近位端部に付着させる。
例示したとおり、前記圧着部570は、以下を含む。すなわち、概して円錐状の先細りした外部近位表面と、概して円錐状の先細りした外部遠位表面と、円錐状の先細りした二つの外部中間表面とである。
前記圧着部の前記遠位端部は、前記圧着部570の前記近位端部よりも直径が小さい。これにより、比較的大きな近位内腔を画定する。これは、シース450の遠位端部のなかに収容されそれを含む前記インプラント400の前記遠位端部を受け入れる。そして、比較的狭く交差する遠位内腔を画定する。これは、ガイドワイヤの前記近位端部502を受け入れるよう寸法付けられている。
前記圧着部570は、好ましくは、変形可能な金属製材料から作製される。これは、初期において、前記インプラント400の前記遠位端部に付着する。
前記ガイドワイヤを導入し、心臓のなかを通り抜けて適切に経路付けて、身体から外に出した(以下で更に詳しく議論する。)のち、インプラント400の前記圧着部570を、その後、前記ガイドワイヤの上に(例えば、圧着工具で)圧着する。前記インプラント400は、近位及び遠位の前記送達チューブと、保護要素420と、シース450とを含み、これを、前記保護要素がLCx動脈をまたぐまで、血管系のなかを通り抜けて前進させる。
以下のことが認識されるであろう。すなわち、アーチ状の保護要素を必要としない解剖学的構造を有する患者について、前記保護要素420を、前記インプラントから省略し、例えば、比較的真っ直ぐな構造的要素で置き換えて(あるいは、硬い要素をまったくなくして)もよい。
【0053】
僧帽弁又は三尖弁の逆流(漏出)は、多くの異なる原因によって起こり得る。例えば、虚血性心疾患、心筋梗塞、後天性又は遺伝性の心筋症、先天性欠損症、外傷性損傷、感染症、及び、様々な形態の心疾患などである。
原発性心筋疾患は、拡張を介して弁逆流を引き起こし得る。その結果、弁輪が拡大し、これにより、乳頭筋装置の過伸張、変性若しくは断裂を介して、又は、乳頭筋の機能不全若しくは位置異常を介して、弁尖の接合異常につながる。
この逆流は、心房細動などの心調律異常を生じ得る。これは、それ自体が、心臓筋機能の容認できない悪化を生じ得る。
このような悪化は、機能障害、うっ血性心不全及び重大な疼痛、苦痛、生活の質の低下、又は早期死亡とさえも、関連付けられ得る。
【0054】
それよりも危険でない低侵襲の処置(経皮的弁輪形成術など)により、もっと多くの患者が、弁逆流の機械的治療を受けられるようになる。
手術のリスクと合併症が(開心手術と比較して)減少するので、カテーテルに基づく心臓弁処置は、もっと広範な患者集団に適している。
このなかで開示したのは、カテーテルに基づく弁修復のための改良された装置及び方法である。これを使用して、以下の手段により、損傷し又は機能不全な心臓弁を修復できる。すなわち、例えば、経皮的縫縮弁輪形成術(欠損した心臓弁のリング又は弁輪の再建又は増大)によって弁の弁尖を再配置する。
【0055】
一般に、弁輪形成処置を実施するために使用されるシステムは、ガイドカテーテル(GC)を含んでもよい。例えば、先端がバルーン状のあらかじめ形成された経頚静脈ガイドカテーテルなどである。これは、冠(静脈)洞のなかへ導入される。
逆行性放射線冠静脈造影は、大心臓静脈及び中隔穿通枝静脈を加圧して可視化する。
冠動脈再疎通のために設計された高性能ガイドワイヤを、偏向可能なマイクロカテーテルを使用して操縦し、例えば、大心臓静脈のなかへ入れ、その後、基底中隔穿通枝静脈のなかへ入れてもよい。
【0056】
一般に、弁輪形成処置は、また、撮像システムを使用して、治療対象の内部体組織、器官、構造、空洞及び空間を撮像してもよい。
例えば、送信又は受信コイルを使用して、撮像システム(磁気共鳴撮像(MRI)など)を使用した能動装置ナビゲーションを容易にしてもよい。
この撮像は、概して、任意の又は所定の平面に沿って行なってもよい。これには、様々な撮像方法を使用する。これは、X線技術、X線透視、MRI、電磁陽電子ナビゲーション、ビデオ技術(内視鏡、関節鏡など)、超音波などのそのような技術に基づく。
いくつかの実施形態において、リアルタイムMRI(rtMRI)、心腔内超音波又は電磁的な誘導を採用する。
縫縮弁輪形成術において特に有用な補助手段はXFMである。そこでは、X線をMRIとともに使用して、心筋構造を標的とする。例えば、この助けにより、前記弁輪形成ワイヤを、心臓の構造のなかを通り抜ける軌跡のなかでガイドする。
前記XFM技術は、例えば、デ・シルバ他「Circulation」114号、2342~2350頁(2006年)に開示されている。
前記ガイドカテーテルにより、対象の身体のなかへ経皮的にアクセスできる。例えば、心臓(心臓の腔など)に、腕、首又は脚の静脈のなかを通り抜けて経皮的にアクセスする。
いくつかの実施形態において、前記ガイドカテーテルは、心臓の心室や心房にアクセスするよう設計する。
前記ガイドカテーテルにより、一つ以上の二次カテーテルを導入できる。これは、例えば、弁操作カテーテル若しくはマイクロカテーテル又は疎通針カテーテルを含む。
前記二次カテーテル(又は複数のカテーテル)を使用して、対象の身体のなかの目的の器官、組織又は構造(心臓又は心臓のなかの特定の構造など)を治療し、それに影響を与え、又はそれを操作する。
前記ガイドカテーテルを使用して心臓に経皮的に(又は他のやり方で)アクセスする場合、前記ガイドカテーテルにより、一つ以上の二次カテーテル(弁操作カテーテルなど)を、止血を維持しつつ、心臓のなかへ導入できる。
前記二次カテーテルは、互いに対して、同軸であってもよく隣接していてもよい。あるいは、身体の外側の複数のアクセスポイントから導入してもよい。
【0057】
ガイドカテーテルは、僧帽弁修復処置の適切な構成要素に適合する異なる形状で利用可能である。
例えば、ガイドカテーテル形状を、以下のように提供してもよい。すなわち、異なる曲率半径を有する異なる冠静脈洞に適合し、異なる冠静脈、経大動脈及び経中隔アクセス経路に適合し、あるいは、異なる口径の心房及び心室に適合する。
このような形状は、すべて、適切な一次、二次及び三次曲線に適応してもよい。
経皮経血管的僧帽弁弁輪形成術を実行するのに適したカテーテル構成の例は、本分野で公知であり、米国特許出願公開第2005/0216039号に詳細に記述されている。これは、参照によりこのなかにその全体としてあらゆる目的のため組み込まれる。
【0058】
利用可能な冠静脈洞へのアプローチであればどれを使用してもよいが、静脈アプローチが好ましい。これは、例えば、頸静脈のなかを通り抜ける。
また別の例として、前記ガイドカテーテルを、静脈(大腿又は頸静脈など)のなかへ導入してもよい。そして、下又は上大静脈のなかを通り抜けてガイドして、心臓の右心室のなかへ入れる。
縫縮弁輪形成術の軌跡の二つの例を、
図7A及び
図7Bに示す。
第一の前記軌跡(「単純」又は「RV」軌跡と表示)では、前記弁輪形成ワイヤが、上大静脈のなかを通り抜けて右心房に入り、その後、冠動脈口のなかを通り抜けて冠静脈洞のなかへ導入される。
前記ワイヤを前進させて、大心臓静脈のなかを通り抜け、基底血管(基底中隔穿通枝静脈など)のなかへ入れる。
前記ワイヤは、その後、中隔穿通枝静脈から外に出て、心筋間質のなかを通り抜け、右心室のなかへ入る。そして、中隔三尖弁交連に沿って(前尖と中隔尖との交点で)右心房に再び入る。
【0059】
前記ガイドワイヤを、その後、回収する。これには、例えば、血管スネアを使用する。
任意の適当な器具を使用して、前記ガイドワイヤの前記遠位端部を捕捉してもよい。そして、身体の外側に露出するまで、血管系のなかを通り抜けて退却させる。
ガイドワイヤの回収を容易にするための例示的な好ましい改良されたスネアシステムもまた、
図6で更にこのなかで記述する。
【0060】
限定ではなく、例示の目的のため、
図6は、例示的なスネアカテーテル600を例示している。これは、本開示にしたがい、ガイドワイヤを捕捉する。
図6Aに例示したとおり、前記スネアカテーテル600は、細長い外側の管状部材(又はシース)601によって画定される。これは、そのなかにその長さに沿って中間の管状部材602を摺動可能に受け入れる。
中間の前記管状部材602は、今度は、そのなかにその長さに沿って、更なる細長い内側の管状部材604(ハイポチューブなど)が摺動可能に配置されている。
管状部材602,604を軸方向に相対的にずらすことにより、ワイヤスネアバスケット606(例えば、つぶすことが可能な本体)が拡大し又は潰れる。
スネアバスケット606は、あらかじめ形作られた複数のワイヤによって画定される。そして、近位端部610を有する。これは、中間の管状部材602の前記遠位端部に取り付けられる。そして、遠位端部612を有する。これは、内側の管状部材604の前記遠位端部に取り付けられる。
そのように、管状部材604に対して遠位へ向けて管状部材602を摺動することにより、前記端部612,610が互いから引き離されたとき、前記バスケット606のあらかじめ形作られた前記ワイヤが細長くなり、径方向内側へ向けて潰れる。これにより、バスケット606を、その後、外側の管状部材又はシース601に対して近位に向けて引くことができる。
内側の管状部材604は、好ましくは、金属製部材(ステンレス鋼又はニッケルチタン合金ハイポチューブなど)である。これは、その長さに沿って、更なる管腔を画定する。これは、そのなかを通り抜けてガイドワイヤを収容してもよい。
非外傷性の円錐状に先細りした非外傷性遠位先端605を、好ましくは、内側の前記管状部材604の前記遠位端部と、前記スネアバスケット606の前記遠位端部分612との上を覆って形成する。
【0061】
前記ガイドワイヤを捕まえて、その前記遠位端部を患者から除去したのち、前記インプラント(例えば、400)に、以下の手段により、前記ガイドワイヤを交換する。すなわち、前記インプラントを前記ガイドワイヤの前記近位端部の上に、圧着部(例えば、570)を介して圧着する。
前記インプラント(例えば、400)を、その後、前記ガイドワイヤが患者から退却するときの前記ガイドワイヤの通り道に沿って、前進させてもよい。これをするのは、(設けられていれば)前記保護装置又はブリッジ(例えば、420)の前記遠位端部(例えば、249)が中隔壁に近接し、前記ブリッジがLCx動脈を横切るまでである。
危険に晒される冠動脈の場所は、例えば放射線血管造影によって確認する。
その代わりとなるアプローチにおいて、冠静脈に、画像誘導下で、右心房又は右心室から反対方向に入り、冠静脈洞の枝のなかへ入る。
【0062】
図7A及び7Bに示す代わりの又は「複雑な」右心房縫縮軌跡は、更に後方に延びて、基底中隔心筋のなかを通り抜け、冠静脈洞の近くで右心房のなかへ入る。
前記ワイヤは、中隔の深部組織を横切って、後方向に移動する。そして、冠静脈洞の開口部の上方に出る。
得られた縫縮弁輪形成術の平面を
図8に示す。これは、冠静脈洞860の平面に関係し、そのなかにある。これにより、冠静脈洞が僧帽弁弁輪形成から離れたとしても、弁輪形成が独自に実行可能なままとなる。
図が示すとおり、縫縮の平面860は、冠静脈洞が僧帽弁輪から幾何学的に離れているときでも、僧帽弁癒着を増強する。なぜなら、左心室流出路に向けて「傾斜」しているからである。
前記縫縮平面860と僧帽弁輪の平面862との間の例示した角度αは、したがって、有利である。
更に、例示した縫縮弁輪形成術の軌跡は、心室収縮期に、相反性僧帽弁癒着及び左心室流出路弛緩を誘発する。
【0063】
前記ガイドワイヤは、前記ガイドカテーテルとともに作動するよう寸法付けられている。そして、通常は、前記ガイドカテーテルよりも長い。
例えば、長さが約100から約250センチメートルで、直径が約0.1から約2mmのガイドワイヤを、以上で記述した前記ガイドカテーテルとともに使用してもよい。
二次カテーテル(緊張送達カテーテルなど)を前記ガイドカテーテルとともに使用するつもりならば、その二次カテーテルも、前記ガイドカテーテルとともに作動するよう寸法付ける。そして、通常は、前記ガイドカテーテルよりも長い。
【0064】
前記ガイドカテーテルは、任意の適当な材料又は材料の組合せで作製してもよい。これは、外力(屈曲し又はねじれている間にかかる力など)による潰れに抵抗するのに適した強度及び可撓性の両方を提供する。
例示的な材料は、(限定ではなく)以下を含む。すなわち、重合体(ポリエチレン又はポリウレタンなど);炭素繊維;セラミック;又は、金属(ニチノール、白金、チタン、タンタル、タングステン、ステンレス鋼、銅、金、コバルトクロム合金、又はニッケルなど)である。
前記ガイドカテーテルは、任意に、金属繊維、炭素繊維、ガラス、繊維ガラス、硬質重合体などの高強度材料からなってもよいし、それで補強してもよい。
特定の実施形態において、前記ガイドカテーテル材料は、MRIに適合する。例えば、編組したニチノール、白金、タングステン、金、又は炭素繊維である。
それに加えて、前記ガイドカテーテルの外部表面を、疎水性材料又は物質(テフロン(登録商標)など)などの粘滑性材料で被覆してもよい。例えば、親水性材料(例えば、PVP)などである。この補助により、前記ガイドカテーテルを対象の身体のなかへ挿入したり、この補助により、前記ガイドカテーテルが対象の身体のなかを通り抜けて移動したりする。
【0065】
それに加えて、前記ガイドカテーテルは、偏向可能な先端を含んでもよい。例えば、単一の軸自由度を有する単純な偏向可能な先端などである。
例示的な(非限定的な)固定支点及び可動支点の先端が偏向可能なカテーテルが、市販されている。例えば、以下に記述された先端が偏向可能なカテーテルなどである。すなわち、米国特許第5,397,321号、第5,487,757号、第5,944,689号、第5,928,191号、第6,074,351号、第6,198,974号、第6,346,099号である。これらは、それぞれ、参照によりこのなかに全体としてあらゆるすべての目的のため組み込まれる。
したがって、任意の適当な固定支点又は可動支点の先端が偏向可能なカテーテルを、このなかに開示したガイドカテーテルとして使用するために適合させてもよい。
前記ガイドカテーテルは、また、以下のような構造又は機構を含んでもよい。すなわち、この補助により、前記カテーテルがその長手方向軸の周りで回転する。
【0066】
前記ガイドカテーテルは、その近位端部に、ガイドカラー、ハンドグリップ、ハンドルなどの構造又は装置を含んでもよい。この補助により、前記ガイドカテーテルが作動する。
様々な制御機構(これは、電気的、光学的又は機械的な制御機構を含む。)を前記カテーテルに、ガイドカラーを介して取り付けてもよい。
例えば、ガイドワイヤを、機械的制御機構として含んでもよい。
前記ガイドカラーは、追加的な操作的機構を含んでもよい。例えば、前記ガイドカテーテルの手動制御を補助するためのグリップ、前記ガイドカテーテル管腔又は細分化された管腔の向きを示すマーカー、ガイドカテーテル前進の深さを測るためのマーカー、ガイドカテーテル操作又は対象の生理学的徴候を測定するための器具(例えば、温度ゲージ又は圧力モニタ)、又は正確な少量の注射液を送達するため前記ガイドカテーテル管腔に結合された注入制御機構などである。
いくつかの実施形態において、前記ガイドカラーは、以下のような器具類を含有する。これは、前記ガイドカテーテルのなかの金属編組に電気的に結合されている。したがって、これにより、前記ガイドカテーテルを同時にMRI用受信コイルとして使用できる。
【0067】
前記ガイドカテーテルを対象の身体のなかへかつそのなかを通り抜けてガイドする前記システムとともに使用されるガイドワイヤは、任意の適当な材料又は材料の組合せからなってもよい。これは、前記ガイドカテーテルに関連して以上で記述した材料を含む。
例示的な(非限定的な)ガイドワイヤは、前記装置とともに使用するのに適した強度と可撓性とを有する材料からなる。例えば、金属(例えば、外科用ステンレス鋼、ニチノール、白金、チタン、タングステン、銅、ニッケルなど)製の撚り糸、炭素繊維、又は重合体(編組したナイロンなど)などである。
特定の(非限定的な)ガイドワイヤは、ニチノールなどの可撓性でねじれにくい材料の撚り糸からなる。
前記ガイドカテーテル又はガイドワイヤは、画像を増強する機構、構造、材料又は装置(放射線不透過性マーカー(例えば、前記ガイドワイヤの外周の周りにある白金又はタンタルのバンド)など)を、その遠位端部に隣接して含んでもよい。
別の例として、前記ガイドワイヤは、エッチング又はノッチを含んでもよい。あるいは、超音波反射材料で被覆してもよい。これにより、血管内、心腔内、経食堂などの超音波撮像方法を介して得られる画像を増強する。
別の例として、前記ガイドワイヤを、T1短縮剤又はT2短縮剤で被覆してもよい。これにより、MRIを使用した受動的な可視化が容易になる。
更に別の例として、光ファイバ二次カテーテルを、前記ガイドカテーテルの二次カテーテル管腔のなかへ挿入し挿通してもよい。この助けにより、ガイドワイヤが前記遠位ガイドワイヤ管腔ポートのなかを通り抜けて配備されたとき、対象のなかにおける前記ガイドワイヤの位置を可視化する。
いくつかの実施形態において、前記ガイドワイヤやガイドカテーテルは、組織(心筋骨格、筋肉、結合組織など)を貫通するのに有用な構造、装置又はデバイスを、その遠位先端に含む。
例えば、前記ガイドワイヤの前記遠位先端を、組織のなかを穿刺し貫く突端まで鋭利にしてもよい。あるいは、その遠位先端に芯抜き機構又は鉗子を有する二次カテーテルを、前記ガイドカテーテルと併用してもよい。
その代わりとなる実施形態において、前記ガイドワイヤは、高周波又はレーザー切除エネルギーを送達してもよい。この助けにより、組織を横切る。
しかし、その代わりとなる実施形態において、前記ガイドワイヤの前記遠位端部を屈曲して、J字形状又は豚の尻尾形状の先端を提供する。これにより、操作している間に、ガイドワイヤが組織を穿孔しないよう保護する。
その代わりとなる更に他の実施形態において、前記ガイドワイヤそれ自体が、偏向可能な先端を有する。これにより、生来の組織平面とは無関係に組織を横切ることが容易になる。
一つ以上の二次カテーテルを、前記ガイドカテーテルの前記管腔のなかに配備してもよい。
前記ガイドカテーテルと同様、それぞれの二次カテーテルは、近位端部と遠位端部とを有する。しかし、すべての二次カテーテルが管腔を有するわけではない。
例えば、非管腔二次カテーテルは、様々なプローブを含んでもよい。例えば、温度プローブ、高周波又は低温切除プローブ、中実針などである。
【0068】
例示的で非限定的な二次カテーテルは、疎通針カテーテルである。これを、前記ガイドカテーテルのなかを通り抜けて、心臓の腔のなかへ配備してもよい。これにより、縫縮弁輪形成結紮材を、冠静脈洞のなかを通り抜けて、僧帽弁の周りに留置する。
疎通針カテーテルは、二次カテーテルの一種である。これを使用して、目的の体組織、器官又は構造に、縫合材を適用してもよい。
【0069】
緊張を、弁輪形成縫縮術を介して、前記シース材料(例えば、450)のなかを通り抜けて印加する。これは、好ましくは、以上で記述したような中空の編組した縫合材料である。
ロック送達カテーテル(これは、以下で更に詳細に記述するとおり、前記ロック送達カテーテルの端部に装着されたロックのなかを通り抜けて前記縫合材の両端部を方向付ける。)と協調して、血管アクセスポイントで前記シースの両端部(例えば、450)が外部化したとき、そこに緊張を印加してもよい。
前記シース(例えば、450)のなかの緊張を、その後、以下の手段により固定してもよい。すなわち、前記ロック送達カテーテルの前記ロックをロックする。例えば、米国特許第10,433,962号に記述されたものなどである。
前記ロック又は結び目が、望みにより、二つの縫縮軌跡が交差する右心房又は右心室に位置してもよい。あるいは、血管アクセスポイント又はその二つの間に位置してもよい。
したがって、望むなら、例えば送達カテーテルを介して印加される前記固着装置に対する対圧により、緊張を送達してもよい。
固着する前に、緊張を解放し又は減少させてもよい。例えば、これにより、前記保護装置を位置変更し、あるいは、僧帽弁輪外周の減少度合いを下げる。
緊張を印加するとき、弁逆流を、好ましくは、適切な撮像技術により反復的かつ非侵襲的に評価する。
このような撮像技術は、以下を含む。すなわち、X線血管造影、電磁位置検出、MRI、外部又は腔内若しくは血管内超音波、X線断層撮影、左心房又は肺静脈又は肺動脈など罹患した腔における圧力変換器、あるいは、上記のいずれかの「融合」又は組合せである。
弁逆流を削減(又は更に進んで、排除)し、所望の緊張が達成されたのち、以上で言及したとおり、ロック又は結び目送達システムを使用して、緊張を固定する。そして、前記ロック又は結び目の近位の余ったシース材料を、任意の所望のやり方で、切断し除去してもよい。
本開示の一態様にしたがい、切断器具を、米国特許第10,433,962号に記述されたように使用してもよい。
保護装置(例えば、420)を伴う前記インプラントの使用は、縫縮弁輪形成技術における使用のために開示されている。
しかし、前記保護装置は、その特有の解剖学的構造によっては、すべての患者に必要というわけではない。
【0070】
図9は、心臓の僧帽弁領域の概略断面図である。これは、例示的なインプラントシステム900を示す。これは、移植されたTMV912を含む。これは、心臓壁902のなかに位置付けられている。そして、僧帽弁縫縮弁輪形成装置910を含む。これは、心臓壁の周りに位置付けられている。
前記装置910は、アーチ状の保護装置420を含む。これは、冠動脈252を跨ぎ越え、これにより、外側から前記装置910によって印加された圧力と、TMV912によって心臓壁902の内側に印加された外側へ向けて拡大する力914によるものとの両方から、動脈を保護する。
例示的な前記保護装置420は、アーチ状部分を含む。これは、平らで概して同一平面上にある二つの近位及び遠位区域428,429の間に延びている。
前記ブリッジ(又は保護装置)420は、他の例示的な保護装置に関してこのなかで記述した機構及び寸法の任意の組合せを有してもよい。
【0071】
図10は、緊張縫合材(例えば、450)を示す。これは、開示された保護装置を含むことなく、部分的に僧帽弁の周りの冠静脈洞250のなかを通り抜けて延びている。
その結果、冠静脈洞が動脈に重なっているので、冠動脈回旋枝252を緊張縫合材の下で陥れ、動脈に望ましくない圧迫を印加する。
TMVを、また、僧帽弁のなかに移植したとき、内側から外への追加的な圧迫力を、動脈252に印加し得る。
前記保護装置がなければ、動脈252は、向かい合った力によって、潰れたり締め付けられたりするかもしれない。
【0072】
図11A~11Eは、スペーサーの実装を例示している。これは、本開示にしたがい、インプラントに結合され、これにより、心臓弁(三尖弁など)のなかに少なくとも部分的に位置する。
前記スペーサーは、好ましくは、本開示で描かれるとおり、縫縮インプラントに結合される。しかし、患者の血管系のなかに存在する拡大フレームなど他の手段を経由して、前記スペーサーをその場に定着することも可能である。
【0073】
図11Aは、本開示にしたがい、スペーサー1100の態様を描いている。これは、カバーを除いて、内部の構成要素を例示している。
例示したとおり、前記スペーサー1100は、細長い複数の部材1106から形成されている。
それぞれの細長い部材1106(又はフィラメント)は、NiTi合金材料などの形状記憶材料から作製されたワイヤであってもよい。
しかし、以下のことが認識されるであろう。すなわち、他の材料を使用してもよい。
それぞれの細長い部材1106は、前記構造のなかの他のフィラメントに、近位端部(又はハブ)1102及び遠位端部(又はハブ)1104で接続されている。
それぞれのハブは、例えば、圧着又は管状区域から形成してもよい。これに、フィラメント1106を取り付ける。
前記近位ハブ1102は、ロック又はロックハウジング1108に、テザー又はケーブル1110を経由して結合されている。
【0074】
図11Aの例示した実施形態において、DFT(登録商標)ワイヤ(例えば、フォートウェインメタルズ社(インディアナ州フォートウェイン)製)から作製される。これは、白金ワイヤで満たしたNiTiチューブを含み、これにより、NiTi材料由来の形状記憶特性と白金材料由来の放射線不透過性との組合せを提供する。
前記NiTi材料は、以下のように構成されている。すなわち、前記フィラメント1106がすべて径方向内側へ向けて(送達カテーテルの内側などで)圧縮されている潰れた直線状の構成から自己拡大して、描かれた拡大した構成になる。
前記装置は、管状カテーテルの端部から外に配備されたとき、描いた形状をとる。
前記テザー又は中心付けアーム1110も、また、NiTi材料から作製してもよい。そして、外側へ向けて突出して血管系のなかへ入ることを意図する。これにより、前記スペーサーが前記管腔のなかで中心になることができる。その結果、三尖弁のほぼ中心に配置され、この例では、三尖弁の弁尖が前記スペーサー1100の表面に対して癒着できる。
前記ロック1108及びスペーサーは、以下の手段により導入される。すなわち、前記スペーサーを運搬する前記ロック1108を、前記縫縮インプラントのシース450から形成された前記テザーを縫って越えさせる。
例示したとおり、前記ロック1108は、以下のように構成されている。すなわち、前記縫縮インプラントの前記管状リムが付着する前記縫縮インプラントの前記ロックの周りを摺動し、そこに付着する。
前記ロック1108と、前記縫縮インプラントのロック及びリムとの相対的な向きを、
図11Eに描いている。
【0075】
図11Bは、
図11C及び
図11Dの実施形態と並んで、
図11Aの実施形態を再び描いている。
図11Aの実施形態には、好ましくは、膜カバーを設ける。これは、前記フィラメント1106を覆い、これにより、前記フィラメントによって画定される体積を囲い込む。
図11Cは、直径が比較的大きなバルーンを描いている。
図11Dは、直径が比較的小さなバルーンを描いている。これは、
図11Bの実施形態の代わりに使用してもよい。
前記バルーンは、以下のように構成してもよい。すなわち、
図11Bの実施形態などの拡大する構造的要素と同様、フィラメント(例えば、1106)を経由して自己拡大する。
前記バルーンは、同様に、生理食塩水などの流体で満たしてもよい。
図11C及び11Dの具体的に例示した実施形態は、膨張可能なバルーンを含む。これは、その近位及び遠位端部で、細長い内側の構造的部材又はテザー1114(NiTiワイヤなど)に接続されている。これは、前記バルーンの前記近位端部のなかを通り抜けて延び、前記ロック1108に結合する。
図11Eは、
図11Dの実施形態を描いている。これは、縫縮インプラントの叉骨状ロックの上を越えて配置されている。
【0076】
図12A~12Cは、本開示にしたがい、スペーサーの第一の実装を三尖弁の場所のなかに留置したところを例示している。
具体的に言うと、例示の目的のため、心臓の重合体複製を使用して、前記縫縮インプラントを留置するところを実証する。これは、このなかの別の個所及び米国特許第10,433,962号に記述されているとおりである。
具体的に言うと、シース450を含む前記インプラントの前記本体を経路付けて、前記ロック組立体の前記リムのなかを通り抜けたのち、そして、前記ロックをその場でロックし、緊張下で僧帽弁輪を留置したのち、アクセス可能な前記シース450の一端部又は両端部をガイドレールとして使用する。前記ロック1108を、前記シース450の一又は両端部を縫い越え、前記ロックの上を越えて送達する。これにより、前記スペーサー1100が三尖弁の範囲のなかへ突出する。
所望の留置が、前記ロック1108の軸方向及び回転方向の位置を調整することによって得られると、前記ロックをその場にロックする。
前記ロックは、締り嵌めを経由してその場にロックしてもよいし、前記縫縮インプラントの前記ロックの上へラッチしてもよい。
更なる例を経由して、前記ロック1100を前進させて、前記シース450の二つの端部のうちの一つを越え、もう一つのテザーと平行にしてもよい。結び目を、前記テザー端部450の両方に沿って押し下げ、前記ロック1108を越えさせてもよい。これにより、前記スペーサーインプラント1100を三尖弁のなかでその場に保持する。
設置している間、前記スペーサー1100の調整を、視覚化及びコントラスト流体の下でリアルタイムでしてもよい。これにより、前記スペーサー1100が三尖弁のなかに適切に留置されることを確実にし、弁尖の最適な癒着を確実にする。
前記スペーサー1100は、解放可能な接続(例えば、構成要素1108への縫い付け接続)を経由して、送達カテーテル(不図示)の前記遠位端部に結合してもよい。前記送達カテーテルは、一つの前記テザー又は複数のテザー450に沿って、前記オーバーザワイヤ(OTW)又はラピッドエクスチェンジ(RX)構成のなかに縫い付けてもよい。
前記ロック1108を、その後、前記縫縮インプラントの前記ロックの上を覆って摺動させ、その場にロックしてもよい。
図13A~13Cは、本開示にしたがい、スペーサーの第二の実装を三尖弁の場所のなかに留置したところを例示している。
図13Aは、膨張したスペーサーを例示している。これは、切断されていないインプラントテザー450の上を覆って位置付けられている。
図13Bは、前記縫縮インプラントの前記叉骨状ロック構造の相対的配置と、前記スペーサー1100の横方向における位置付けとを例示している。一方、
図13Cは、軸方向から見た三尖弁範囲における相対的配置を描いている。
【0077】
図14A~14Bは、本開示にしたがい、インプラントの実施形態の態様を例示している。
具体的に言うと、
図14A~14Bは、僧帽弁縫縮インプラントロック及びリムの態様を描いている。これは、頸アクセスのために構成されている。
図14Aは、頸アクセス縫縮叉骨状部及びロックを描いている。これは、「サドル」アタッチメントを伴わない。一方、
図14Bは、「サドル」アタッチメントを伴う前記インプラントを描いている。
前記サドルアタッチメントは、両端部で、前記ロックから外側へ向けて延びる前記リムのそれぞれに結合している。
前記サドルアタッチメントは、前記ロック及びリムの作動に、以下の手段により、利益をもたらす。すなわち、この助けにより、前記シース450を経由して緊張下に留置されたとき、前記装置の前記リムが分離するのを制限する。
それに加えて、前記サドルの助けにより、その長さに沿って機械的応力を広げ、これにより、前記サドルを使用しない場合よりも均等に、心臓組織にわたって応力を分配する。
これはまた、冠静脈洞及びRVOTリムに沿って、もっと均一な表面を作り出す。
図14Cは、
図14Bのインプラント実施形態の移植を例示している。これは、三尖弁のなかを通り抜けて、右心室流出路(RVOT)リムを留置することを例示している。
図14Cは、更に、中隔壁に沿って前記サドル部分を留置することを例示している。これは、中隔壁の表面にわたって応力がどのように広がるかを例示している。
【0078】
図15は、本開示にしたがい、前記サドルアタッチメントの変形例の構築の態様を例示している。
前記サドルアタッチメントは、ポリエステル製の綿散糸材料からなる。その上に、可視化を助ける放射線不透過性の材料の層が配置されている。
放射線不透過性の前記層は、その上を覆って、ポリエステル製の綿散糸材料カバーが配置されている。これは、前記サドルのなかで放射線不透過性の前記材料を間に挟む。
前記綿散糸バンドは、以下のように構成されている。すなわち、組織と連続的に接触する。
放射線不透過性の前記材料は、様々な形態をとってもよい。これは、放射線不透過性の重合体ビーディング、放射線不透過性の材料を装填した平坦なリボン、放射線不透過性の材料を装填した重合体リボン、綿散糸材料の上に配置された放射線不透過性のインク、放射線不透過性の材料を装填した縫合材、前記サドルを取り囲む金属マーカーバンドなどである。
図15の例示された実施形態において、綿散糸材料の区域を、放射線不透過性の材料の上を覆って、連続的な綿散糸ストラップの上に縫い付けて、包み込む。
前記サドルを形成する前記バンドを、その後、前記ロックの前記CS及びRVOTリムに、様々なやり方で取り付けてもよい。
例えば、前記サドルを、以下の手段により、前記叉骨状リムに取り付けてもよい。すなわち、前記組立体の上を覆って重合体をリフローしたり、縫合材料で前記リムの上を覆って前記サドルの両端部を包んだりする。
以下のことが認められるであろう。すなわち、様々な技術を使用して、前記サドルを前記リムに接着してもよく、描いた技術は、単に例示的なものにすぎない。
【0079】
図16A~16Bは、本開示にしたがい、叉骨状部及びロックインプラントの更なる実装を例示している。これは、大腿アクセスのために構成されている。
図16Aは、このようなインプラントを描いている。これは、サドルアタッチメントを伴わない。そして、
図16Bは、このようなインプラントを描いている。これは、サドルアタッチメントを伴う。
図14A~14Bの前記叉骨状ロックと同様に、
図16A~16Bに描いた前記叉骨状ロックは、それぞれ、ロック体を含む。これは、冠静脈洞(CS)リム及び右心室流出路(RVOT)リムを有する。これは、前記ロックの遠位端部から延びている。前記ロック体は、そのなかを通り抜ける少なくとも一つの管腔(不図示)を画定する。これにより、前記テザーが通り抜けることができる。これは、また、前記CS及びRVOTリムのなかを通り抜ける。
前記ロックは、ロックカテーテルを使用して、その場にロックする。例えば、米国特許第10,433,962号に記述されているとおりである。内側のロック体を、前記ロックの外側の前記本体に対してその場に押し込み又は引き込んで、前記テザー450を前記ロックのなかのその場で押しつぶすなどして保持し、これにより、僧帽弁輪にかかる緊張を維持する。
図14Bの実施形態と同様、
図16Bに描いた叉骨状ロックは、サドルアタッチメントを含む。これは、二つの前記リムを前記分岐部で跨ぐ。そして、緊張下にあるとき、前記脚部の分離を制限する。
前記リムのそれぞれは、バンパーで終端してもよい。これは、米国特許第10,433,962号に示されるとおりである。
前記サドルの助けにより、前記インプラントが緊張下で留置されたとき、右心房中隔壁に沿った組織の表面に沿って応力が広がる。
図16A~16Bに描いたに描いた叉骨状ロックは、以下のように特に構成されている。すなわち、米国特許第10,433,962号に示された僧帽弁縫縮処置を実行する。ただし、大腿アクセスを経由する点を除く。
前記ロック及び叉骨状部の形状は、したがって、その方向からアクセスするよう構成されている。
特に、前記ロックを含む前記組立体の前記部分(このなかでロックタワーと称する。)は、下大静脈のなかへ下降する。これは、大腿アクセスを経由して得られる方向だからである。
具体的には、両方のリムが外側へ向けて平行な方向に延びている。
前記リムのうちの第一のものは、その後、曲がって側方に外れ、冠静脈洞のなかへ導入される。その後、第二の前記RVOTリムも、曲がって側方に外れる。前記リムは、両方とも、向きを変えて、基本的に垂直方向に沿う。これにより、大腿アプローチを使用するとき、CS及びRVOTにアクセスする。
認識されるであろうとおり、前記サドルは、以下のように構成してもよい。すなわち、概して平面的な構成で配備する。そして、前記リムよりも有効幅が広い。これにより、心臓組織に沿って緊張誘導応力をもっと効果的に広げる。
図17A~17Cは、本開示にしたがい、
図16A~16Bの前記インプラントを留置するところを示す図を例示している。
図17Aは、移植されたとき、前記ロック組立体の前記ロックタワーを、IVCのなかへ相対的に下方へ向けて留置するところを描いている。
図17Bは、
図16A~16Bのインプラントの前記サドルを描いている。これは、冠静脈洞口及び中隔壁を横切って配置されている。そして、冠静脈洞に対する前記冠静脈洞リムの位置付けと、三尖弁のなかを通り抜ける前記RVOTリムの相対的な位置付けとを描いている。
図17Cは、
図16A~16Bの前記装置をブタモデルのなかの生体位に移植するところを描いた画像である。これは、IVCのなかへ下降している前記叉骨状部と、前記リム同士の間の前記サドルの相対的位置とを示す。
また示されるのは、前記インプラントの残りの部分である。これは、前記シース450を含む。これは、前記アーチ状のブリッジ420を取り囲んでいる。
また描かれるのは、マーカーバンド422である。これらは、互いから間隔を置いてあり、前記テザー450の周りに圧着されている。この助けにより、前記リムと前記ロックとのなかを通り抜けて退却したテザー450の量と測定とを完遂する。
図19C~Eは、シミュレートされた心臓構造において、
図16Bのインプラントを生体位に留置することを例示している。
図19Cは、
図16Bの実施形態とともに、前記CS及びRVOTリムを接続する前記サドルバンドがどのように広がり、前記ロックタワーの下に大きな表面範囲を提供して、緊張下にある組織にかかる負荷を広げるかを例示している。
【0080】
本開示に更にしたがい、
図14及び16の前記インプラントを、以下のような構造として使用してもよい。すなわち、心臓ペーシングを可能にするペーシング電極及びペーサーハードウェアを支持する。
【0081】
限定ではなく、例示だけの目的のため、
図18A~18Dは、本開示にしたがい、
図16Bの前記インプラントの更なる態様を例示している。これにより、前記装置がペーシングのために使用するよう適合されたとき、センサ及び電極の相対的な留置を示す。
図19A~Bは、また、
図14Bの前記インプラントのためのセンサなどの構成要素を例示的に留置したところを描いている。
【0082】
いくつかの実装において、心臓のなかでループ状の通り道を周航するよう構成され配列された移植可能なペーシングシステムを設けてもよい。
例えば、米国15/328,046は、一つの技術を示している。これは、中隔静脈を介してペースメーカーリードを移植する。これに使用するアプローチは、冠静脈洞のなかを通り抜けるものであり、本開示にしたがい、装置を移植する通り道を作製するのと同様のやり方である。
【0083】
したがって、初期のリード(好ましくは、双極リード)を、心筋のなかで、以下の場所に定着する。すなわち、そこに由来する信号が最小限の信号を提供できるところである。
適切に定着されると、望むなら、前記リードの近位端部(又はその延長部)を、患者から外部化してもよい。このなかに開示したものに構造において類似した特別に構成されたインプラントを、前記心臓リードの上を覆って送達してもよい。これには、前記心臓リードを、少なくとも部分的に送達レールとして使用する。
その代わりとして、前記心臓リードを外部化してもよい。そして、前記インプラントを、このなかに開示したような外部化されたガイドワイヤの近位端部に圧着したのち送達してもよい。そして、前記インプラントを設置してもよい。
前記ロックを設置する時期が来たとき、前記ロックを、前記インプラント(例えば400)及び前記心臓リードの上を越えて縫い通してもよい。そして、前記ロックをその場にロックしたとき、前記ロックが以下のように構成されてもよい。すなわち、前記リードとの電気的な接触が完成する。
例えば、前記ロックは、制御器を含んでもよい。これは、動力供給源と、信号発生器とを有する。
内側の細長い前記テザーは、前記ロックで電気回路を完成させられてもよい。そして、適切な制御回絡を前記ロックのなかに設けてもよい。これにより、内側の前記テザーのなかの白金などのワイヤのループが、以下のようなアンテナとして機能する。すなわち、信号を送受信し、又は、充電パルスを受信して、これにより、前記ペースメーカーを動かすための前記ロックのなかのバッテリーを充電する。
【0084】
しかし、
図18A~18D及び19A~Bの実施形態は、また、以下のように構成してもよい。すなわち、示したとおり、それらのセンサ及び電極のすべてを、一体化されたユニットとして基板上に含有する。
したがって、前記インプラントを送達し、その場で組み立ててもよい。そして、以下のようにプログラムしてもよい。すなわち、心臓組織を刺激したり、心臓のなかで生物学的条件(例えば、電気的、機械的及び化学的な条件)を感知したりする。
【0085】
したがって、前記ペーシングシステムは、以下を含んでもよい。すなわち、このなかに示したような細長い内側のテザーである。これは、近位端部と遠位端部とを有する。そして、外側のシース材料である。これは、細長い内側の前記テザーを取り囲む。これは、近位端部と遠位端部とを有する。そして、少なくとも一つの導電体である。これは、細長い内側の前記テザー及び外側の前記シースのうちの少なくとも一つに沿って又はそのなかに配置される。そして、心臓ペーシング制御器である。これは、描いたとおり、前記インプラントの前記ロックのなかへ一体化してもよい。そして、動力源(バッテリーなど)と、パルス発生器と、制御回絡とを含んでもよい。これは、少なくとも一つの前記導電体に作動可能に結合される。そして、少なくとも一つの心臓ペーシング電極である。これは、以下のように構成され配列されている。すなわち、心臓組織のなか又はその頂部の上に移植される。少なくとも一つの前記心臓ペーシング電極は、少なくとも一つの前記導電体を経由して前記心臓ペーシング制御器に電気的に結合されている。そして、ロックである。これは、外側の前記シース材料の前記近位端部及び遠位端部を固定する。
【0086】
いくつかの実装において、前記ロックを、前記心臓ペーシング制御器に結合してもよい。
少なくとも一つの前記導電体は、細長い内側の前記テザーのなかに少なくとも部分的に配置されている。これは、前記インプラントのシース450のなかに収容されている。
望むなら、前記ロック/制御器は、そのなかを通り抜けて一つ以上の心臓ペーシングリードが経路付けられてもよい。これは、電極で終端する。これは、図に示したとおり所定の場所で、又は、他の任意の所望の位置で指示される。
電気通信を、以下の手段により、前記心臓ペーシングリードと確立してもよい。すなわち、前記ロックの一部分を係合する。
あるいは、前記ロック/制御器を、心臓リード及び電極にあらかじめ接続してもよい。これは、
図18A~19Bに描かれた前記インプラントの湾曲した管状リムのなかへ一体的に形成される。これは、前記ロック/制御器に接続する。
望むなら、前記ロックリムによって受け入れられた前記インプラントの部分にも、センサを設けてもよい。
望むなら、電力を、このなかの別の箇所に記述したコア白金ワイヤを介して、インプラントに直接運んでもよい。
前記ロックリムの前記端部同士の間にある前記シース部分のなかへ一体化された構成要素(センサ及び電極など)は、その後、作動するため、コアワイヤ(例えば、410a’)から動力を引き出してもよい。
前記動力供給源/ロックとペーシング電極などのセンサとの間の電気的な接続は、直流伝導路であってもよい。導体は、ロック/制御器に取り付けられたリムの内側及び外側の管状重合体層の間に留置され、あるいは、前記インプラントの前記層のなかに入れ子状にされる。
望むなら、前記センサ又は電極を、前記インプラントロック/リム及びシース450の表面の上を覆って形成してもよい。これは、ブリッジが設けられているか否かに関わらない。その後、熱収縮した重合体チューブの追加的な層で覆ってもよい。
望むなら、チューブのその外側の層は、そのなかに窓が形成されてもよい。これは、前記センサ又は電極を露出させる。
【0087】
いくつかの実装において、前記ペーシングシステムは、更に、外側の前記シースの長さに沿って、少なくとも一つの管腔を含んでもよい。これは、ペーシングリードを受け入れる。前記ペーシングシステムは、前記ペーシングリードに沿って摺動して、冠静脈洞のなかへ入ってもよい。
少なくとも一つの前記管腔は、以下のように構成してもよい。すなわち、前記ペーシングリードを方向付けて、前記心臓ペーシング制御器へ向かわせる。
いくつかの実施形態において、前記システムは、保護ブリッジを含んでもよい。これは、中隔壁の近くの冠静脈洞のなかにあるとき、LCx動脈を跨ぐ。これは、このなかの別の箇所で記述したとおりである。
いくつかの実施形態において、前記心臓ペーシング制御器の少なくとも一部分を、外側の前記シースのなかに配置してもよい。
【0088】
前記ペーシングシステムは、更に、電池を含んでもよい。これは、前記ロック、リム、又は外側の前記シース450のなかの構成要素のなかに配置される。
前記ペーシングシステムは、更に、回路板を含んでもよい。これは、例えば、外側の前記シース450のなか又は前記ロック体のなかに、少なくとも部分的に配置される。
前記ペーシングシステムは、更に、通信回路を含んでもよい。これは、外側の前記シースのなかに、少なくとも部分的に配置される。
前記通信回路は、有線であってもよいし、無線(例えば、ブルートゥース通信を介して)であってもよい。
【0089】
望むなら、前記ペーシングシステムは、少なくとも一つのセンサ回路を含んでもよい。これは、外側の前記シースのなかに、少なくとも部分的に配置される。少なくとも一つの前記センサモジュールは、少なくとも一つのセンサ(例えば、感知回路)を含む。これは、少なくとも一つの生物学的パラメータを感知する。
例えば、少なくとも一つの前記センサ回路/モジュールは、少なくとも一つの圧力センサを含んでもよい。これは、血圧を検出する。あるいは、以下のうちの少なくとも一つを含んでもよい。すなわち、化学センサ、距離センサ、電気生理学的データを検出する回路を有するセンサ、移動センサ、位置センサである。
【0090】
いくつかの実装において、少なくとも一つの前記導電体は、前記ロック/制御器で終端してもよい。
望むなら、前記システムは、更に、少なくとも一つのペーシングリード(や電気センサ。これは、心臓電気信号を感知する。)を含んでもよい。これは、外側の前記シースの表面のなかに形成される。
少なくとも一つの前記ペーシングリードは、右心房とインターフェースするよう構成し配列してもよい。
望むなら、更なるペーシングリードを、右心室、又は、中隔静脈などの心静脈とインターフェースするよう構成し配列してもよい。そして、例えば、CSリムやRVOTリム又は18Cに沿って互いに間隔を置いた
図18Bの円で示される領域のなかに、前記サドルに沿って位置させてもよい。
同様に、
図19Bは、RVOT及びCSリムの両方に沿うとともに、前記サドルに沿ってセンサ及び電極を例示的に留置するところを描いている。
両方の実施形態において、前記サドルとCS及びRVOTリムとによって画定される三角形領域を使用して、ハウジングを位置させてもよい。これは、バッテリーや制御器や通信回路を含む。
前記インプラントの前記ループは、その長さに沿って導性部材を含んでもよい。これは、遠隔充電や外側制御器への通信のためのループアンテナを形成してもよい。
望むなら、前記制御器は、以下のうちの少なくとも一つを提供するよう構成し配列してもよい。すなわち、ペーシング、除細動、測定及び制御である。
【0091】
したがって、前記ペーシングシステムのいくつかの実装において、内側の細長い前記テザーは、ループアンテナを含んでもよい。これは、信号を前記制御器へかつそこから伝導する。
更なる実装において、前記ペーシングシステム(などのシステム)は、更に、貯蔵器を含んでもよい。これは、有益な薬剤を含有する。これは、分注器に結合される。これは、前記制御器によって制御される。
例えば、有益な前記薬剤は、医薬や、遺伝子治療材料や、生細胞を含んでもよい。これは、損傷した心臓の少なくとも一つの場所に播種するためのものである。
【0092】
心臓の固有の電気活動(すなわち、P波又はQRS複合)は、小さな電流(数ミリボルト)を、前記ペースメーカーリードのなかを通り抜けて伝達し、前記パルス発生器に至らせる。
この電流は、前記ペースメーカー回路によって登録され又は感知されてもよい。
前記ペースメーカー感知を使用して、固有心拍に対するペースメーカーの応答を策定してもよい。
P波(又は、心房活動)は、(存在すれば)心房リードのなかを通り抜けて伝達され、前記ペースメーカーの前記心房チャネルに至り、心房活動として感知される。
心室活動(QRS複合)は、(存在すれば、中隔静脈を介してなど)心室リードのなかを通り抜けて伝達され、前記ペースメーカーの前記心室チャネルに至る。これが、心室活動として感知される。
【0093】
電気的活動を心臓から前記ペースメーカーに伝達するためには、閉じた電気回路が存在しなければならない。これは、電気的インパルスを前記ペースメーカーから心臓に伝達する場合とまったく同じである。
したがって、ペーシングとまったく同じように、感知は、単極でもよいし、双極でもよい。
双極感知は、前記リードの前記先端電極と前記リング電極との間に生じる固有の電気活動を検出する。
単極感知は、前記リードの前記先端と前記パルス発生器の前記金属シェルとの間に生じる電気活動を検出する。
これはずっと大きな範囲なので、(横隔膜の筋肉又は身体の外側にある源によって発生し得るような)他の電気信号を検出する(したがって、ペースメーカーによって心拍として誤って解釈される)可能性が高くなる。
重要なのは、以下の点に留意することである。すなわち、信号がどの心腔に由来するかを前記ペースメーカーが判定する唯一のやり方は、どのリードが前記信号を前記ペースメーカーに伝達するかによってである。
例えば、前記ペースメーカーは、前記心房リードのなかを通り抜けて前記心房チャネルまで伝達される任意の電気信号を、P波として解釈し得る。たとえ、前記信号が実際は前記心房チャネルによって感知されるには振幅が十分に大きいQRS複合であったとしても。
また、以下の点に注意されたい。すなわち、前記ペースメーカーが心房又は心室信号を感知する時刻は、必ずしもP波又はQRSの始まりではない。
前記ペースメーカーは、電気活動が実際に前記ペースメーカーリードに到達しなければ、心腔のなかの活動を感知できない。
【0094】
本開示は、更に、心臓インプラントの実施形態を提供する。これは、その上に少なくとも一つの弁尖が配置されている。
限定ではなく、例示の目的のため、
図20A~Eは、本開示にしたがい、装置に結合できる弁尖構造の態様を例示している。
図21A~21Bは、
図20A~20Eの実装を留置するところを例示している。
描いたとおり、弁尖2900は、好ましくは、以下のように構成される。すなわち、この助けにより、三尖弁逆流の影響を、以下の手段により低減する。すなわち、中隔三尖弁尖と前尖との間の空間を占め、前記インプラントの前記RVOTリムを前記弁尖同士の間の交連部のなかに位置させる。
認識されるであろうとおり、二つ以上の帆部又は弁尖を、望みにより設けてもよい。
【0095】
例示したとおり、開示した前記僧帽弁縫縮インプラントの前記ロック組立体の前記RVOTリムには、配備可能な一つ以上の弁尖2900を設けてもよい。これにより、三尖弁の生来の一つ以上の弁尖を補完し、あるいは、少なくとも部分的に置換する。
前記弁尖2900は、概略形状が帆状であってもよい。これは、膜又は織物を含む。これは、一つ以上の点で、前記僧帽弁縫縮インプラントの前記RVOTリムに取り付けられる。そして、また、配備可能なフレームワークを含む。
図20Aは、そのような弁尖(又は帆部)を例示している。これは、前記僧帽弁縫縮インプラントの前記RVOTリムに結合されている。
描いたとおり、前記弁尖は、前記RVOTリムと結合した長手方向縁部を有する。
例えば、前記膜又は織物を、管状スリーブのなかに、一方の縁に沿って形成してもよい。これにより、そのなかを通り抜ける前記RVOTリムを収容する。
前記弁尖又は帆部は、また、少なくとも一つの自由縁を含む。これは、前記RVOTリムから外側へ向けて延び、三尖弁の領域の血流の通り道のなかへ入ることができる。
配備可能な一つ以上の構造的要素又はリブを、以下の手段により、RVOTリムと一体化してもよい。例えば、そこに、熱収縮バンドなどのカップリングで取り付ける。これは、
図20D~20Eに描いたとおりである。
図20Dは、形状記憶材料(例えば、NiTi合金)製の湾曲した平坦な二つのループを描いている。
遠位リブの遠位端部は、前記RVOTリムの前記遠位端部でバンパーの近くで付着する。前記近位リブの近位端部は、前記RVOTリムの近位端部又は領域で付着する。
前記帆部又は弁尖は、好ましくは、構造的リブに縫合する。この助けにより、前記弁尖が非拘束になったとき、前記弁尖が配備する。
前記帆部又は弁尖は、好ましくは、不活性織物(ePTFE、ポリエステルなどの適当な織物など)を含む。
【0096】
前記弁尖を、送達している間に、RVOTリムに巻き付けられた拘束位置で保持し、結合材(縫合材(不図示)など)でその場に保持してもよい。これにより、前記弁尖が、送達されたとき、(例えば、引き結びなどの適当な手段を経由して)前記結合材を解放することにより配備できる。
その代わりとして、前記帆部は、前記CSリムとともに前記RVOTリムに対して潰れたり、それに巻き付けたりしてもよく、近位に退却して、送達カテーテルの管状遠位端部のなかへ入ってもよい。前記帆部又は弁尖は、前記シースを撤退させたとき、生体位で自己配備してもよい。
図21A~21Bは、三尖弁の近くのRVOTのなかで前記帆部又は弁尖2900を生体位に留置するところを示す概略図である。
【0097】
このなかに開示した前記装置及び方法は、そのままの状態で他の処置に使用してもよい。あるいは、必要に応じて特定の処置に適合するよう改変してもよい。
本開示の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、以下のことが認められるべきである。すなわち、例示した実施形態は、本開示の好ましい例に過ぎず、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
このなかで参照されたそれぞれ及びすべての特許及び特許出願は、参照によりこのなかに全体としていかなるすべての目的のために明示的に組み込まれる。