(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】最適化された活性領域の歪みおよび改善されたレーザーダイオード性能のための歪み設計されたクラッド層
(51)【国際特許分類】
H01S 5/343 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
H01S5/343
(21)【出願番号】P 2022520057
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 US2020050925
(87)【国際公開番号】W WO2021067033
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-03-20
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522126279
【氏名又は名称】エヌライト, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NLIGHT, INC.
【住所又は居所原語表記】5408 NE 88th Street,Bldg. E., Vancouver, WA 98665,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ジギャング
(72)【発明者】
【氏名】カンスカー, マノジ
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-215021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0053396(US,A1)
【文献】米国特許第05048036(US,A)
【文献】特開平05-243669(JP,A)
【文献】特開平09-283856(JP,A)
【文献】国際公開第97/50158(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/161865(WO,A1)
【文献】特開2008-034851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の格子定数の材料組成を有する半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された複数のエピ
タキシー層と、を含み、
前記複数のエピタキシー層は、導波路層および複数のクラッド層を備えており、
前記導波路層は、目標の光波長に関連付けられた材料組成を有する活性領域を備えており、
前記活性領域の前記材料組成の第2の格子定数は、前記第1の格子定数と異なっており、
前記複数のクラッド層の
少なくとも1つの材料組成および/または厚さは、活性領域歪みを最適化するために、前記活性領域に目標の応力場を付与するよう設定されて
おり、
前記複数のクラッド層の前記少なくとも1つは、前記導波路層上に設けられたpクラッド層を含み、
前記pクラッド層は、歪み調整材料を含み、
前記歪み調整材料は、前記pクラッド層の全体において均一に分布されておらず、
前記pクラッド層は、前記第1の格子定数に対して互いに異なる格子不整合の度合いを有する複数の交互層を含むことを特徴とするレーザーダイオード。
【請求項2】
前記複数のクラッド層の前記
少なくとも1つは、
前記歪み調整材料を
さらに含む請求項1に記載のレーザーダイオード。
【請求項3】
前記歪み調整材料は、前記複数のクラッド層の前記
少なくとも1つの一部において均一に分布されている請求項2に記載のレーザーダイオード。
【請求項4】
前記歪み調整材料は、前記複数のクラッド層の前記
少なくとも1つの全体において均一に分布されておらず、
前記複数のクラッド層の前記
少なくとも1つは、2つ以上の均一な材料組成をそれぞれ有する2つ以上のサブ層を含む請求項2に記載のレーザーダイオード。
【請求項5】
前記2つ以上のサブ層の第1のサブ層は、前記2つ以上のサブ層の第2のサブ層よりも前記活性領域に近く、
前記第1のサブ層内における前記第1の格子定数に対する格子不整合の度合いは、前記第2のサブ層内における前記第1の格子定数に対する格子不整合の度合いと異なっている請求項4に記載のレーザーダイオード。
【請求項6】
前記複数のクラッド層の前記
少なくとも1つは、勾配材料組成および勾配格子定数を含む請求項2に記載のレーザーダイオード。
【請求項7】
前記歪み調整材料は、周期表III族材料または周期表V族材料を含む請求項2に記載のレーザーダイオード。
【請求項8】
前記複数のクラッド層の前記
少なくとも1つの前記材料組成は、周期表III-V族三元合金、四元合金、または五元合金を含む請求項2に記載のレーザーダイオード。
【請求項9】
第1の格子定数の材料組成を有する半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、導波路層を備える複数のエピキタシー層と、
前記導波路層を被覆する手段と、を含み、
前記導波路層は、目標の光波長に関連付けられた材料組成を有する活性領域を備えており、
前記活性領域の前記材料組成の第2の格子定数は、前記第1の格子定数と異なっており、
前記被覆する手段は、活性領域歪みを最適化するために、前記活性領域に目標の応力場を付与するための手段を含
み、
前記被覆する手段は、前記導波路層上に設けられたpクラッド層を含み、
前記pクラッド層は、前記応力場を付与するための手段として、歪み調整材料を含み、
前記歪み調整材料は、前記pクラッド層の全体において均一に分布されておらず、
前記pクラッド層は、前記第1の格子定数に対して互いに異なる格子不整合の度合いを有する複数の交互層を含むことを特徴とするレーザーダイオード。
【請求項10】
前記被覆する手段は、
nクラッドを含む請求項
9に記載のレーザーダイオード。
【請求項11】
前記応力場を付与するための手段は、前記pクラッド
層内に位置している請求項
9に記載のレーザーダイオード。
【請求項12】
前記応力場を付与するための手段は、前記nクラッド内に位置している請求項
10に記載のレーザーダイオード。
【請求項13】
前記被覆する手段は、前記pクラッド
層用のpキャップをさらに含む請求項
9に記載のレーザーダイオード。
【請求項14】
前記nクラッドは、内側nクラッドおよび外側nクラッドを含む請求項
10に記載のレーザーダイオード。
【請求項15】
前記半導体基板は、n基板を含む請求項
9に記載のレーザーダイオード。
【請求項16】
前記n基板は、GaAsのn基板を含む請求項
15に記載のレーザーダイオード。
【請求項17】
大光共振器(LOC)をさらに含む請求項
9に記載のレーザーダイオード。
【請求項18】
前記導波路層は、n導波路およびp導波路をさらに備え、
前記p導波路の厚さは、前記n導波路の厚さの30%未満である請求項
9に記載のレーザーダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーダイオード(laser diode)に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバーレーザーは、工業プロセス(例えば、切断、溶接、金属被覆、熱処理等)において、広く使用されている。いくつかのファイバーレーザーでは、光利得媒体(optical gain medium)は、希土類元素がドープされたコアを有する1つ以上の活性光ファイバー(active optical fibers)を含む。希土類元素は、1つ以上の半導体レーザー源からの光によって、光学的に励起(「ポンプ」)されることができる。高出力および高効率のダイオードレーザーに対する需要は大きい。高出力のダイオードレーザーは、電力スケーリングと価格低減(ドル/ワットで測定)の観点から必要とされており、高効率のダイオードレーザーは、エネルギー消費の低減と寿命延長の観点から必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、さらに、詳細な説明と共に、以下開示される技術の利点および原理を説明する。また、添付の図面においては、同様の参照番号が同様の要素を表している。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態に係る、レーザーダイオードのエピタキシー層構造の断面図を示す。
【0005】
【
図2】
図2は、いくつかの実施形態に係る、レーザーダイオードの別のエピタキシー層構造の断面図を示す。
【0006】
【
図3A】
図3Aは、いくつかの実施形態に係る、活性領域の歪みを最適化し、さらに、改善されたレーザーダイオード性能のためにクラッド層が歪み設計された、レーザーダイオードのエピタキシー層構造の断面図を示す。
【0007】
【
図3B】
図3Bは、いくつかの実施形態に係る、活性領域の歪みを最適化し、さらに、改善されたレーザーダイオード性能のためにクラッド層が歪み設計された、レーザーダイオードの別のエピタキシー層構造の断面図を示す。
【0008】
【
図4A】
図4Aは、いくつかの実施形態に係る、
図2のクラッド層の構成を示すブロック図である。
【
図4B】
図4Bは、いくつかの実施形態に係る、
図2のクラッド層の構成を示すブロック図である。
【
図4C】
図4Cは、いくつかの実施形態に係る、
図2のクラッド層の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本出願および特許請求の範囲において使用されているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうではないと示されない限り、複数形を含む。さらに、用語「備える(includes)」は、「含む(comprises)」との意味を含む。さらに、用語「結合された(coupled)」は、結合された物品間の中間要素の存在を除外しない。本明細書において記述されるシステム、装置、および方法は、いかなる形でも、限定を構成するものとして解釈されるべきではない。その代わりに、本発明は、単独、または、互いの様々な組合せおよび副次的組合せで、様々な開示された実施形態の全ての新規かつ非自明な特徴および態様を対象とする。用語「または」は、「および/または」を意味し、(特に指定されない限り)「排他的または(exclusive or)」を意味しない。
【0010】
開示されたシステム、方法、および装置は、任意の特定の態様、特徴、またはこれらの組み合わせに限定されない。開示されたシステム、方法、および装置は、任意の1つまたは複数の特定の利点が存在すること、または、問題が解決されることを必要としない。任意の動作原理は、説明を容易にするためのものであるが、開示されるシステム、方法、および装置は、そのような動作原理に限定されない。いくつかの開示される方法の操作は、説明の目的のために、特定の順序で説明されるが、この説明の方法は、以下に記載される特定の言語によって特定の順序での実行が要求されない限り、異なった順番で実行されることも含んでいることを、理解されたい。例えば、連続的な順序で説明される動作は、場合によっては、並べ替えられるか、または同時に実行されてもよい。さらに、簡潔化のため、添付の図面は、開示されたシステム、方法、および装置を、他のシステム、方法、および装置と併せて使用可能な様々な方法を示さないことがある。
【0011】
さらに、詳細な説明は、開示される方法を記述するために、「生成する(produce)」および「提供する(provide)」などの用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の動作の高次抽象化(high-level abstractions)である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて変化し得ることは、当業者であれば、容易に認識可能であろう。いくつかの実施例では、値、手順、または装置は、「最低(lowest)」、「最良(best)」、「最小(minimum)」等で参照される。そのような記述は、使用される多くの機能的代替物の中からの選択が為され得ることを示しており、そのような選択は、他の選択よりも良好、より小さい、または、好ましいことを必要としていないことが、理解されるであろう。
【0012】
実施例は、「上方」、「下方」、「上」、「下」等として示される方向を参照して、記述される。これらの用語は、説明の目的のために使用されるが、いかなる特定の空間的配向も意味しない。
【0013】
活性領域(active region:例えば、量子井戸)の歪み設計(strain engineering)は、高出力レーザーダイオードの性能を改善するための1つのアプローチである。活性領域への歪み(strain)の導入は、バンド構造を改変し、これにより、しきい値電流密度(threshold current density)を減少させ、さらに、微分利得(differential gain)を増加させることができる。最適化された歪みレベルを有する活性領域は、(最適化された歪みレベルを有さない活性領域と比較して)電力効率を含む高出力レーザーダイオードの性能を著しく改善し得る。しかしながら、活性領域のみに対する既知の歪み設計では、波長制約(wavelength constraints)によって、活性領域における最適化された歪みレベルを得ることができない。活性領域における最適化された歪みレベルを提供するための歪み設計されたクラッド層(strain-engineered cladding layer)の利用は、ダイオード性能を改善し得る。
【0014】
図1は、大光共振器(LOC:Large Optical Cavity)レーザーダイオードのエピタキシー層構造の断面図を示している。LOCレーザーダイオードは、nドープGaAs基板5と、nクラッド層11と、n導波路層13と、活性領域14(例えば、量子井戸または量子ドット)と、p導波路層15と、pクラッド層16と、キャップ層17、例えば、p型キャップ層(pキャップ)と、を備えている。いくつかの900nm以上のレーザーダイオードでは、pクラッド層16は、厚いAl
0.6Ga
0.4As材料を含んでいてもよい。厚いAl
0.6Ga
0.4As材料とGaAs基材5との間の格子不整合(lattice mismatch)は、活性領域における圧縮歪み(compressive strain)の減少をもたらす。これは、観測されるしきい値電流およびLOCレーザーダイオードのスロープ効率(slope efficiency)に悪影響を及ぼすことがある。
【0015】
図1に示されているようないくつかのLOCレーザーダイオードでは、垂直導波路(vertical waveguide)のp側が、導波路全体の厚さに大きく寄与し得る。p-導波路の厚さを著しく減少させたダイオードレーザー設計(例えば、導波路のp-側にオフセットされた大きな量子井戸)は、p導波路内に配向された電気的直列抵抗、大きな順方向バイアスの下でのp導波路内のキャリア蓄積(carrier accumulation)に関連する光損失および漏れ電流を緩和し得、したがって、より低い電圧、より高いスロープ効率および電力、より高い壁プラグ効率(wall plug efficiency)をもたらし得る。
図2は、そのような実施形態の断面図を示している。
図2の実施形態において、p導波路の厚さは、レーザーダイオード内において非常に薄くてもよく、および/または、ダブルnクラッド構造が利用されてもよい。
【0016】
図1のLOCレーザーダイオードと同様に、pクラッド層116の材料とGaAs基板105との間の格子不整合の度合い(degree of lattice mismatch)は、活性領域114内、特に、pクラッド層からの応力場(stress field)がより強くなり、かつ、観測されるしきい値電流およびダイオードレーザーのスロープ効率にマイナスの影響を与えるよう、活性領域114がpクラッド層116に非常に近接して位置する領域内における圧縮歪みを減少させ得る。この実施形態は、外側nクラッド111および内側nクラッド112を含む二重nクラッド構造も含む。この実施形態における他の層は、LOCレーザーダイオードの任意の他の層と同様であってもよい。
【0017】
1つの実施例では、pクラッド層116は、Al0.6Ga0.4Asを含んでいてもよい。Al0.6Ga0.4AsとGaAsとの間の室温格子不整合(room temperature lattice mismatch)は、~0.08%であるため、pクラッド層116がAl0.6Ga0.4Asである実施例では、~0.08%の圧縮歪みを受けることになる。この格子不整合は小さいものの、Al0.6Ga0.4As材料のバルク層は、ウエハー製造工程において、ウエハーの反りにつながり得る応力場を与えるのに十分な厚さであり得る。また、歪んだpクラッド層116からの応力場は、活性領域114内において部分的に緩和(partially relaxing)して、活性領域114に伝播し、ダイオードレーザーの高性能化を達成するために極めて重要な圧縮歪みを生じさせ得る(活性領域114内の適切なレベルの歪みは、バンド構造を変化させ、しきい値電流の減少、微分利得およびスロープ効率の向上をもたらす)。
【0018】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、その材料組成および/または厚さを変化させ、格子不整合の度合いを変化させ、活性領域に最適な歪みを与えることによって、クラッド層を歪み補償(strain-compensate)することができる。いくつかの実施形態では、このアプローチは、クラッド層への歪み補償材料の組み込み(例えば、AlGaAsへのリンの組み込み:AlGaAsクラッド層内のヒ素原子の一部をリン原子で置換する)によるものである。この歪み補償材料は、活性領域に応力場を付与するために、クラッド層の格子定数を、GaAsの格子定数と異なるように、変化させることができる。活性領域の歪み緩和(strain relaxation)を抑制するために完全に歪み補償されたpクラッド層を有し、p導波路の厚さを著しく減少させたダイオードレーザー設計において、最適化された量子井戸歪みの下での、薄いp導波路設計における完全な性能ポテンシャルは、大駆動電流でのより高いパワー、より高いスロープ効率、およびより低いしきい値電流の方式で、歪み補償設計において回復されることが期待される。
【0019】
AlGaAsのpクラッド(p-cladding)における歪み補償のレベルは、最適な活性領域歪みのために、最適化され得る。いくつかのダイオードレーザーには、波長の制約があるため、活性領域内には、所定の組成、例えば、InGaAsが存在する。所定の組成は、活性領域内に所定の歪みを与えてもよい。活性領域は、理想的な活性領域歪みレベルを有していなくてもよい(例えば、915nmダイオードにおけるInGaAs活性領域圧縮歪みは、最良の性能のために最適化された値よりも低い)。最適化された歪みを有するAlGaAsPのpクラッドは、ダイオード性能に対する、この制約を緩和することができる。例えば、915nmダイオードの場合、わずかな(slightly)引張り歪みを有するAl0.6Ga0.4AsP(2.5%を超えるリン成分)を使用して、活性領域に応力場を付与し、InGaAs量子井戸圧縮歪みを増大させることができる。
【0020】
図3Aは、最適化された活性領域歪みおよび改善されたダイオードレーザー性能のために歪み設計されたクラッド層(strain-engineered cladding layer)を有するエピタキシー層構造の断面図を示している。半導体基板205および活性層214、並びに、任意の介在層(intervening layers)は、半導体基板105および活性層114、並びに、任意の介在層(
図2)と同様であってもよい。クラッド層216は、ダイオード性能を改善するために、活性領域214に応力場を付与して、活性領域214内の歪みを最適化するように、歪み設計されてもよい。1つの実施例において、クラッド層216の厚さは、クラッド層116(
図2)の厚さと同じであるが、クラッド層216は、歪み補償材料(strain compensated material)を含む。他の実施形態においては、任意の歪み設計されたクラッド層は、活性領域に応力場を付与するために、歪み設計された厚さ、および/または、歪み設計された組成を有していてもよい。
【0021】
図3Aのレーザーダイオードは、薄いp導波路設計(p導波路セクションの厚さが、導波路層のn導波路セクションの厚さよりも実質的に小さい)を利用するが、この設計は、最適化された活性領域歪みおよび改善された半導体レーザー性能のために歪み設計されたクラッド層を利用するために必要とされない。いくつかの薄いp導波路設計の実施形態では、p導波路セクションの厚さは、n導波路セクションの厚さの30%未満であってもよい(薄いp導波路設計の他の実施形態では、他の比が可能であり、そのような比でも実施可能である)。
図3Bは、
図1に示されたエピタキシー層構造と同様に、歪み設計されたクラッド層216を有する、エピタキシー層構造(例えば、LOCを有するファイバーレーザー)の断面図を示している。半導体基板305および活性層314、並びに、任意の介在層は、半導体基板5および活性層14、並びに、任意の介在層(
図1)と同様であってもよい。クラッド層316は、改善されたダイオード性能のために、活性領域314に応力場を付与して、活性領域314内の歪みを最適化するために、歪み設計されていてもよい。1つの実施例において、クラッド層316の厚さは、クラッド層16(
図1)の厚さと同じであるが、クラッド層316は、歪み補償材料を含む。他の実施形態において、任意の歪み設計されたクラッド層は、活性領域に応力場を付与するために、歪み設計された厚さ、および/または、歪み設計された組成を有していてもよい。
【0022】
図4A~
図4Cを参照すると、クラッド層216および/または316(それぞれ
図3A~
図3B)に組み込まれた歪み調整材料(strain adjusting material)は、クラッド層の一部に均一に分布されていてもよく、または、クラッド層216および/または316の一部に不均一に分布されていてもよい。
図4Aは、歪み調整材料がクラッド層216および/または316の全体に、均一に分布している実施例を示している。歪み調整材料がリンである図示の実施例においては、クラッド層216および/または316の材料組成(material composition)は、Al
0.6Ga
0.4As
0.98P
0.02である。もう少し異なった材料組成であるAl
0.6Ga
0.4As
0.975P
0.025は、室温でGaAとの格子不整合が0である。これをpクラッド層として使用すると、活性領域に与えられる応力場を完全に除去することができる。Al
0.6Ga
0.4As
0.98P
0.02のように、基板に対して格子不整合である材料組成を使用すると、活性領域にゼロではない応力場が付与され、これにより、活性領域内の歪みが最適化され、レーザーダイオードの性能を向上させることができる。
【0023】
室温において、活性領域に何らかの応力場またはゼロ応力場を付与するようクラッド層を設けることが望ましい場合があるが、ダイオードエピタキシー構造が、転位(dislocation)の形成およびウエハー割れを防止するために、成長温度(growth temperature)で超えるべきではないしきい値歪み-厚さ積値(threshold strain-thickness product value)が存在するため、クラッド層歪み設計に、さらなる制約が存在する。したがって、いくつかの実施形態において、転位の形成およびウエハー割れを起こすことなく、所望の応力場を付与するために、クラッド層の厚さは、しきい値歪み-厚さ積値に基づいて変更されてもよい。さらに、歪み調整材料は、活性領域のより近くまたはより遠くに局在されていてもよい(例えば、クラッド層の複数のセクションのうちの1つにおいて不均一に分布および/または均一に分布されていてもよい)。
図4Cは、歪み調整材料の濃度が、活性領域からの距離が増加するにつれて変化する勾配材料組成(gradient material composition)を用いた不均一な分布を示している。
【0024】
図4Bは、歪み調整材料が依然として、各セクション内に均一に分布されている(しかしながら、濃度は、各セクションの少なくとも2つにおいて、異なり得る)別の実施例を示している。
図4Bと同様の1つの実施形態は、それぞれ異なるリン組成およびそれぞれ異なる歪みレベルを有するAlGaAsPの交互層(alternating layers)を有する超格子クラッド層設計(superlattice cladding layer design)を採用し得る。AlGaAsPの交互層のそれぞれのリン組成および歪みレベルは、ゼロ平均歪みまたは所望の平均歪みレベルを有するよう、選択されてもよい。それぞれ異なる歪みの交互AlGaAsP層間の格子不整合は、累積歪み-厚さ積値(cumulative strain-thickness product)が、臨界値を超えたとしても、転位事象がない(またはほとんどない)よう、局在されていてもよい。
図4Cと同様の実施形態は、リン組成が変化するAlGaAsPクラッド層を有し、さらに、ゼロまたは導波路により近くなるほど少なくなる圧縮歪みと、活性領域(例えば、活性井戸)から離れるほど大きくなる圧縮歪みと、を有していてもよい。ここで、活性領域は、より歪んだAlGaAsPクラッド層からさらに離れて位置し、したがって、より少ない応力場を受ける。一方、クラッド層中の勾配リン組成は、成長温度での累積ひずみ‐厚さ積値を、臨界値より低い値まで低下させることができる。
【0025】
歪み設計されたクラッド層の材料組成
レーザーダイオードの歪み設計されたクラッド層は、活性領域(例えば、量子井戸、量子ドット等)に目的の応力場を付与するため、特に、格子整合(lattice matched)(または半導体基板との非最適格子不整合(non-optimally lattice mismatched))するであろう組成に、歪み調整材料を組み込むことができる。いくつかの実施形態においては、歪み調整材料は、周期表III族材料または周期表V族材料であってもよい。例えば、AlGaAsクラッド層中のヒ素原子の一部を置換するために、リン原子を組み込んでもよい。AlGaAsPの室温格子定数は、リン組成の増加と共に線形に減少する。GaAs基板に対するAl0.6Ga0.4AsPの格子不整合は、Al0.6Ga0.4Asの~0.08%圧縮から、Al0.6Ga0.4As0.977P0.023のGaAsに整合する格子、Al0.6Ga0.4As0.954P0.046の~0.08%引張(tensile)まで変化する。いくつかの他の実施形態においては、歪み設計されたクラッド層の材料組成は、周期表III-V族三元合金、四元合金、または五元合金(Quinternary alloys)であってもよい。三元合金、四元合金、または五元合金の材料組成は、GaAs基板に対する引張歪み、格子整合、または圧縮歪みを受けるクラッド層用に調整されてもよい。
【0026】
GaAsと格子整合またはわずかに不整合であり得る四元合金クラッド層としては、AlGaAsP、InGaAsP、およびAlInGaPを挙げることができる(ただし、これらに限定されない)。例えば、In0.49Ga0.45As0.06Pは、クラッド層で使用されるAl0.6Ga0.4Asと同様のバンドギャップエネルギーを有しているが、GaAs基板に対して格子整合されており、GaAs基板に対して引張歪み、格子整合、または圧縮歪みされるように、調整された材料組成を有していてもよい。五元合金クラッド層の例としては、AlInGaAsPが挙げられるが、これに限定されない。5元合金は、バンドギャップ設計(bandgap engineering)および格子整合において、4元合金よりもより大きな設計自由度を与えることができる。
【0027】
歪み調整材料は、クラッド層のそれぞれ異なるセクションにおいて、異なるように組み込まれてもよい。例えば、クラッド層は、サブ層のうちの1つにおける歪み調整材料の平均濃度が、サブ層のうちの異なる1つにおける歪み調整材料の平均濃度と異なるようになっている、2つ以上のサブ層を含むことができる。活性領域に最も近いサブ層は、別のサブ層とは異なる平均濃度を有することができる。他の実施例において、クラッド層の一部(例えば、クラッド層全体またはクラッド層の一部)は、歪み調整材料の勾配濃度を有していてもよい。
【0028】
様々な実施形態において、レーザーダイオードは、複数のクラッド層を含んでいてもよく、これらのクラッド層のいくつか、または、全ては、歪み設計されていてもよい。歪み設計された複数のクラッド層が存在する場合、各歪み設計されたクラッド層は、凝集応力場(aggregate stress field)が活性領域を歪み設計する、個々の応力場を付与してもよい。
【0029】
開示された技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を参照されたが、図示された実施形態は、好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことは、認識されるべきである。我々は、本発明として、添付の特許請求の範囲および原理の範囲内に入る全てを請求する。