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特許7515582シクロオキシゲナーゼ阻害剤の局所配合剤およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】シクロオキシゲナーゼ阻害剤の局所配合剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/196 20060101AFI20240705BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240705BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K31/196
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/38
A61P25/00
A61P29/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022525744
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2020059198
(87)【国際公開番号】W WO2021092238
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】62/931,466
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522174096
【氏名又は名称】スマーテック トピカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フナット,トーマス
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-510824(JP,A)
【文献】特表2016-513727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0053290(US,A1)
【文献】特表2016-506941(JP,A)
【文献】Journal of Drug Delivery Science and Technology,2017年,Vol.39,pp.210-216
【文献】Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects,1997年,Vol.123-124,pp.115-123
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2016年,Vol.509,pp.465-476
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所ジクロフェナク配合剤であって、前記配合剤は無水であり、
1.8~2.2wt%のジクロフェナクと;
28.35~34.65wt%の無水エタノールと;
7.2~8.8wt%のオレイン酸、オレイルアルコール、またはそれらの混合物と;
9.9~12.1wt%のプロピレングリコールと;
2.7~3.3wt%のヒドロキシプロピルセルロースと;
18~22wt%のジメチルスルホキシドと;
22.05~26.95wt%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、
からなる、局所ジクロフェナク配合剤。
【請求項2】
前記ジクロフェナクの量が2wt%である、請求項1に記載の局所ジクロフェナク配合剤。
【請求項3】
前記配合剤が、
2wt%のジクロフェナクと;
31.5wt%の無水エタノールと;
8wt%のオレイン酸またはオレイルアルコールと;
11wt%のプロピレングリコールと;
3wt%のヒドロキシプロピルセルロースと;
20wt%のジメチルスルホキシドと;
24.5wt%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、
からなる、請求項2に記載の局所ジクロフェナク配合剤。
【請求項4】
前記配合剤が、
2wt%のジクロフェナクと;
29wt%の無水エタノールと;
8wt%のオレイン酸またはオレイルアルコールと;
11wt%のプロピレングリコールと;
3wt%のヒドロキシプロピルセルロースと;
21wt%のジメチルスルホキシドと;
26wt%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、
からなる、請求項2に記載の局所ジクロフェナク配合剤。
【請求項5】
前記局所ジクロフェナク配合剤をヒトの身体上の場所に塗布することを含む、前記場所の疼痛エピソードを局所的に処置する方法に用いるための、請求項1に記載の局所ジクロフェナク配合剤
【請求項6】
前記局所ジクロフェナク配合剤をヒトの身体上の場所に塗布することを含む、前記場所の疼痛エピソードを局所的に処置する方法に用いるための、請求項2に記載の局所ジクロフェナク配合剤
【請求項7】
前記局所ジクロフェナク配合剤をヒトの身体上の場所に塗布することを含む、前記場所の疼痛エピソードを局所的に処置する方法に用いるための、請求項3に記載の局所ジクロフェナク配合剤
【請求項8】
前記局所ジクロフェナク配合剤をヒトの身体上の場所に塗布することを含む、前記場所の疼痛エピソードを局所的に処置する方法に用いるための、請求項4に記載の局所ジクロフェナク配合剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月6日に出願された表題「TOPICAL FORMULATIONS OF CYCLOOXYGENASE INHIBITORS AND THEIR USE」の米国特許仮出願第62/931,466号の利益を主張するものであり、その仮出願は、全ての表、図および特許請求の範囲を含む全体として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
本開示の背景の以下の議論は単に、本開示を理解する際に読み手を援助するために提供されており、本開示の先行技術を記載または構成することを承認されていない。
【0003】
シクロオキシゲナーゼ(COX、プロスタグランジン・エンドペルオキシド合成酵素としても知られる)は、アラキドン酸からの、トロンボキサンおよびプロスタサイクリンなどのプロスタグランジンをはじめとするプロスタノイドの形成を担う酵素ファミリーを指す。プロスタノイドは、疼痛および炎症の介在物質であるため、COXは、一般的医薬ターゲットを表す。アラキドン酸からのプロスタグランジン、プロスタサイクリンおよびトロンボキサンをはじめとするプロスタノイドの生成を触媒する酵素であるプロスタグランジンG/H合成酵素(シクロオキシゲナーゼまたはCOX)を阻害する薬剤は、COX阻害剤と称される。アスピリンおよびイブプロフェンなどの一般的な非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、酵素COX-1およびCOX-2の阻害を通して効果を発揮するが、セレコキシブおよびエトリコキシブなどのNSAIDは、COX-2アイソザイムに特異的である。アセトアミノフェンは、わずかしか抗炎症活性を有さないためNSAIDと見なされていないが、COX-2を遮断することにより疼痛を処置し、同時にエンドカンナビノイド再取り込みも阻害する。
【0004】
局所配合剤中でのCOX阻害剤の使用は、患者が全身治療に関連する有害効果に見舞われる見込みを低減することに有益になり得る。皮膚に直接塗布される薬品は、局部作用または全身効果のどちらかに意図されてもよい。局所に塗布される薬品(例えば、局所貼付薬、クリーム、ゲル、軟膏、溶液ほか)は、所望の治療効果を実現するために局部組織に到達させることを意図してもよく、または経皮的に作用して経口投与される薬品と同等の全身濃度をもたらしてもよい。
【0005】
疼痛のある病気を処置するために認可された、米国で利用可能な複数の局所NSAID製品がある。ジクロフェナクナトリウム1%ゲル(Voltaren Gel)は、膝および手の関節など、局所処置を受けられる関節の骨関節炎による疼痛の緩和のために認可されている。この製品は、皮膚の薬物浸透を支援するためにイソプロピルアルコール、プロピレングリコール、および水をはじめとするビヒクルの中に種々の追加的構成要素を含有する。ジクロフェナクナトリウム局所溶液1.5%w/w(PENNSAID)は、膝(複数可)の骨関節炎の兆候および症状の処置に適応される。この製品の中の追加的吸収増進構成要素としては、DMSO、プロピレングリコール、水およびアルコールが挙げられる。ジクロフェナクエポラミン1.3%局所貼付薬(Flector Patch)は、軽度の挫傷、捻挫、および打撲傷による急性疼痛の局所処置に適応される。この貼付薬は、1.3%ジクロフェナクエポラミンを含有する接着材で構成され、不織ポリエステルフェルト支持体に塗布され、塗布前に除去されるポリプロピレンフィルム剥離ライナーで覆われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
局所配合剤が、薬物の低血清レベルを維持して全身毒性を潜在的に回避しながら、局部組織において薬物の治療的濃度を実現し得ることの証拠が、示されている。局所ジクロフェナク調製物は、経口ジクロフェナクで実現される最大血清濃度0.4~2.2%が報告された最大血清濃度であるが、それは有意に低い全身暴露をもたらす。作用部位での高い薬物濃度と低全身濃度の対が、有害効果のリスクを低減しながら全身NSAID以上の有効性に導く可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の簡単な概要
第一の態様において、本開示は、局所シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害配合剤を提供する。これらの配合剤は、
COX-1および/またはCOX-2の阻害剤と;
約1.0~約15.0wt%の間の長鎖一価不飽和脂肪酸、長鎖一価不飽和脂肪アルコール、テルペン、またはそれらの組み合わせと;
0~約5.0wt%の間のポロキサマーと;
0~約5.0wt%の間の医薬的に許容できるセルロース性賦形剤と;
エタノール、プロピレングリコール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、および場合によりジメチルスルホキシドを含む溶媒混合物と、
を含み、
該配合剤は、約5.0wt%以下の水を含む。
【0008】
様々な実施形態において、該配合剤は、カンナビノイド(例えば、テトラヒドロカンナビノール(D9-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸A(THCA-A)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビゲロール(CBG)、およびカンナビゲロール酸(CBGA))、ナプロキセン、アセトアミノフェン、ベンジダミン、ブフェキサマク、ジクロフェナク、エトフェナマート、フルフェナム酸、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、およびサリチラート(例えば、サリチル酸、サリシン、ジフルニサル、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン)からなる群から選択される1種または複数のCOX阻害剤を含む。好ましくは該配合剤は、ジクロフェナクを含み、最も好ましくは該配合剤は、約1.0~約2.5wt%の間のジクロフェナクを含む。特定の実施形態において、該配合剤中の該1種または複数のCOX阻害剤は、約2wt%ジクロフェナクを含む、またはそれからなる。該COX阻害剤は、遊離酸として、または様々な塩(例えば、ジクロフェナクナトリウム、ナプロキセンナトリウム、トロラミンサリチル酸塩、イブプロフェンリシンほか)もしくはエステル(例えば、ジクロフェナクエチルエステル、ナプロキセンメチルエステル、サリチル酸メチル、イブプロフェンジエチルアミノエチルエステルほか)として存在してもよい。
【0009】
特定の実施形態において、該配合剤は、配合剤中に存在する少なくとも7%のCOX阻害剤のジクロフェナクなどのCOX阻害剤の皮膚を通した吸収を提供する。皮膚を通した吸収(または皮膚透過)は、一連のステップを順に、角質層の表面層への浸透剤分子の収着、角質層および生育可能な表皮を通した拡散からなることとして視覚化され得る。真皮の乳頭層では、分子が次の全身分布のために微小循環に取り込まれる。局所塗布された薬物の皮膚を通した吸収を測定するための方法は、当該技術分野で公知である。例えばKezic, Hum. Exp. Toxicol. 2008 27(4): 289-95. doi: 10.1177/0960327107085825を参照されたい。本発明の特許請求の範囲に従う局所COX阻害配合剤は、好ましくは少なくとも10%のCOX阻害剤の皮膚を通した吸収を提供する。
【0010】
特定の実施形態において、本開示の局所COX阻害配合剤は、約2.5wt%を超えない、好ましくは約1wt%以下の水を含む。最も好ましい実施形態において、該配合剤は、無水である。「無水」は、配合剤が水の使用を含まず、水そのものまたは液体溶媒の一成分のどちらかとして、添加されることを意味する。例として、5%の水を含む共沸混合物である95%エタノールは、無水配合剤中で用いられない。しかし、水和されたイオン性化合物の成分である水、または吸湿性の吸収から得られた水は、そのような無水配合剤中に存在してもよい。
【0011】
本明細書で用いられる用語「wt%」は、(成分の質量/配合剤の総質量)×100を指す。例として2wt%ジクロフェナクは、配合剤100gあたり2gのジクロフェナクである。
【0012】
用語「長鎖一価不飽和脂肪酸」は、少なくとも14個の炭素および1つの二重結合を有する脂肪酸を指す。用語「長鎖一価不飽和脂肪アルコール」は、同意義のアルコールを指す(即ち、アルコキシではなく、-OH基が、末端炭素に付着している)。例えば、オレイン酸の式は、CH(CHCH=CH(CHCOOHであり、同意義のオレイルアルコールの式は、CH(CH-CH=CH-(CHOHである。この群に含まれる一価不飽和脂肪酸の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
ミリストレイン酸 14:1 (n-5)
パルミトレイン酸 16:1 (n-7)
シス-バクセン酸 18:1 (n-7)
バクセン酸 18:1 (n-7)
パウリン酸 20:1 (n-7)
オレイン酸 18:1 (n-9)
エライジン酸(トランス-オレイン酸)18:1 (n-9)
11-エイコセン酸(ゴンドイン酸) 20:1 (n-9)
エルカ酸 22:1 (n-9)
ブラシジン酸 22:1 (n-9)
ネルボン酸 24:1 (n-9)
サピエン酸 16:1 (n-10)
ガドレイン酸 20:1 (n-11)
ペトロセリン酸 18:1 (n-12)
【0013】
様々な実施形態において、該配合剤中に存在する長鎖一価不飽和脂肪酸および/または長鎖一価不飽和脂肪アルコールは、C16:1~C22:1の脂肪酸または脂肪アルコールである。好ましい実施形態において、該配合剤中に存在する長鎖一価不飽和脂肪酸は、約1~約15wt%の間のオレイン酸またはオレイルアルコールまたはそれらの混合物、より好ましくは約1~約10wt%の間のオレイン酸またはオレイルアルコールまたはそれらの混合物、最も好ましくは約1~約5wt%の間のオレイン酸またはオレイルアルコールまたはそれらの混合物を含む、またはそれからなる。特定の実施形態において、該配合剤中に存在する長鎖一価不飽和脂肪酸は、約1wt%のオレイン酸もしくはオレイルアルコールもしくはそれらの混合物、約2wt%のオレイン酸もしくはオレイルアルコールもしくはそれらの混合物、約3wt%のオレイン酸もしくはオレイルアルコールもしくはそれらの混合物、約4wt%のオレイン酸もしくはオレイルアルコールもしくはそれらの混合物、約5wt%のオレイン酸もしくはオレイルアルコールもしくはそれらの混合物、約6wt%のオレイン酸もしくはオレイルアルコールもしくはそれらの混合物、約7wt%のオレイン酸もしくはオレイルアルコールもしくはそれらの混合物、約8wt%のオレイン酸もしくはオレイルアルコールもしくはそれらの混合物、約9wt%のオレイン酸もしくはオレイルアルコールもしくはそれらの混合物、または約10wt%のオレイン酸もしくはオレイルアルコールもしくはそれらの混合物を含む、またはそれからなる。
【0014】
ポロキサマーは、ポリオキシエチレンの2つの親水性鎖に隣接されたポリオキシプロピレンの中心の疎水性鎖で構成された非イオン性トリブロック共重合体である。これらの共重合体は、一般に文字P(ポロキサマーの場合)と、続く3桁で命名され、3桁の最初の2桁に100を掛けた値が、ポリオキシプロピレンコアの近似的分子量を与え、最後の桁に10を掛けた値が、ポリオキシエチレンのパーセント量を与える。本開示で用途を見出し得るポロキサマーの例としては、ポロキサマー-101、-105、-105安息香酸塩、-108、-122、-123、-124、-181、-182、-182二安息香酸塩、-183、-184、-185、-188、-212、-215、-217、-231、-234、-235、-237、-238、-282、-284、-288、-331、-333、-334、-335、-338、-401、-402、-403、および-407が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、配合剤中に存在するポロキサマーは、約0.1~約5wt%の間のポロキサマー-188を含む、もしくはそれからなるか、またはポロキサマーを含有しない。
【0015】
セルロースおよびその誘導体(例えば、エーテルおよびエステル誘導体)は、様々な目的で医薬として調合および産業化された製品の中で用いられることの多い賦形剤の1種である。中でもそれらの使用は、経口液体調製物中の懸濁剤として、そして局所配合剤中の増粘剤としてである。本開示で用途を見出し得る医薬的に許容できるセルロース性賦形剤の例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、該配合剤中に存在する医薬的に許容できるセルロース性賦形剤は、約1.0~約5wt%の間のヒドロキシプロピルセルロースを含む、またはそれからなる。特定の実施形態において、該配合剤中に存在する医薬的に許容できるセルロース性賦形剤は、約1wt%のヒドロキシプロピルセルロース、約2wt%のヒドロキシプロピルセルロース、約3wt%のヒドロキシプロピルセルロース、約4wt%のヒドロキシプロピルセルロース、または約5wt%のヒドロキシプロピルセルロースを含む、またはそれからなる。特定の他の実施形態において、該配合剤は、セルロース性賦形剤不含である。
【0016】
本開示による例示的な局所COX阻害配合剤は、以下の通り溶媒混合物を含む:
約25.0~約50.0wt%の間のエタノール、約2.0~約12.5wt%の間のプロピレングリコール、約0~約25.0wt%の間のジメチルスルホキシド、および約20.0~約49.9wt%の間の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールであり、溶媒混合物は、配合剤の約70.0~約95.0wt%の間であり、該配合剤は、約1wt%以下の水を有し、好ましくは無水である。
【0017】
特定の実施形態において、該配合剤は、約7.5~約12.5wt%の間のプロピレングリコール、より好ましくは約10~約12wt%の間のプロピレングリコールを含む。
【0018】
特定の実施形態において、該配合剤は、約10~約30wt%の間の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、より好ましくは約20~約27.5wt%の間の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールを含む。
【0019】
特定の実施形態において、該配合剤は、約25~約45wt%の間のエタノール、より好ましくは約30~約40wt%の間のエタノールを含む。
【0020】
特定の実施形態において、該配合剤は、約15~約25wt%の間のジメチルスルホキシド、より好ましくは約20wt%のジメチルスルホキシドを含む。特定の他の実施形態において、該配合剤は、15wt%未満のジメチルスルホキシド、好ましくは10wt%未満のジメチルスルホキシド、より好ましくは5wt%未満のジメチルスルホキシド、より好ましくは0wt%のジメチルスルホキシドを含む。
【0021】
好ましい局所COX阻害配合剤は、
約1.0~約2.5wt%の間のジクロフェナクと;
約1.0~約10.0wt%の間の長鎖一価不飽和脂肪酸、長鎖一価不飽和アルコール、またはそれらの混合物と;
0~約5.0wt%の間のポロキサマーと;
約2.0~約5.0wt%の間の医薬的に許容できるセルロース性賦形剤と;
エタノール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノールを含む無水溶媒混合物と、
を含み、またはそれらからなり;
該配合剤は、約25.0~約40.0wt%の間のエタノールと、約2.0~約12.5wt%の間のプロピレングリコールと、約15.0~約25.0wt%の間のジメチルスルホキシドと、約20.0~約49.9wt%の間の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、を含み;該溶媒混合物は、該配合剤の約70.0~約95.0wt%の間であり、該配合剤は、約1wt%以下の水を有し、好ましくは無水である。
【0022】
本開示による好ましい局所COX阻害配合剤は、無水であり、
約2wt%のジクロフェナクと;
約27wt%のエタノールと;
約8wt%のオレイン酸、オレイルアルコール、またはそれらの混合物と;
約0.5wt%のポロキサマー188と;
約11wt%のプロピレングリコールと;
約3wt%のヒドロキシプロピルセルロースと;
約21wt%のジメチルスルホキシドと;
約25wt%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、
を含む、またはそれらからなる。
【0023】
本開示による別の好ましい局所COX阻害配合剤は、無水であり、
約2.0wt%のジクロフェナクと;
約43.5wt%のエタノールと;
約4.0wt%のオレイン酸、オレイルアルコール、またはそれらの混合物と;
0wt%のポロキサマー188と;
約3.0wt%のプロピレングリコールと;
約3.0wt%のヒドロキシプロピルセルロースと;
約20.0wt%のジメチルスルホキシドと;
約24.5wt%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、
を含む、またはそれらからなる。
【0024】
本開示による別の好ましい局所COX阻害配合剤は、無水であり、
約2.0wt%のジクロフェナクと;
約37.5wt%のエタノールと;
約2.0wt%のオレイン酸、オレイルアルコール、またはそれらの混合物と;
0wt%のポロキサマー188と;
約11.0wt%のプロピレングリコールと;
約3.0wt%のヒドロキシプロピルセルロースと;
約20.0wt%のジメチルスルホキシドと;
約24.5wt%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、
を含む、またはそれらからなる。
【0025】
値に関して本明細書全体で用いられる用語「約」は、所与の値の±10%を指す。
【0026】
本開示の例示的配合剤のリストが、以下の表に見出され得る。各例において、表に列挙された値は、それらの範囲内の各値の±10%を包含し得る。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0027】
関連の態様において、本開示は、ヒトの身体上の場所の疼痛エピソードを局所的に処置する方法であって、本開示による局所COX阻害配合剤を該場所に局所的に塗布することを含む、方法を提供する。様々な実施形態において、該疼痛エピソードは、急性疼痛エピソードまたは慢性疼痛エピソードである。処置され得る疼痛エピソードの例としては、骨関節炎、関節リウマチ、軽度~中等度炎症および組織損傷、下背部痛、炎症性関節症(例えば、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎)、テニス肘、頭痛、術後疼痛、筋肉強直から生じた疼痛、ならびにパーキンソン病および外傷性損傷による疼痛が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、本発明は、本開示による局所COX阻害配合剤を膝(複数可)に局所的に塗布することを含む、膝(複数可)の骨関節炎の疼痛を局所的に処置するためのものである。
【0028】
特定の実施形態において、塗布された本開示による局所COX阻害配合剤の用量は、約80mg、約40mg、約30mg、約20mg、または約10mgのCOX阻害剤量を提供する。特定の実施形態において、例えば2wt%ジクロフェナク配合剤4mLの塗布は、ジクロフェナク80mgの局所用量を提供し、2mLは、ジクロフェナク40mgを提供し、1mLは、ジクロフェナク20mgを提供する、などである。
【0029】
幾つかの実施形態において、本開示の配合剤は、ゲル、ローション、クリーム、スプレー、エアロゾル、軟膏、エマルジョン、懸濁液、リポソーム系、ラッカー、貼付薬、包帯、口腔錠、ウエハー、舌下錠、坐剤、膣用投与剤形または密封性ドレッシングの形態である。特別な実施形態において、該配合剤は、ゲルである。幾つかの実施形態において、本開示の配合剤は、皮膚に直接、例えばゲル、軟膏、もしくはクリームとして、または貼付薬、包帯、もしくは他の密封性ドレッシングを通して間接的に、塗布される。本開示の配合剤は、患者の状態に応じて、1日1回または1日あたり複数回塗布されてもよい。幾つかの実施形態において、前記配合剤は、1日1、2、3回または4回投与で、望ましい限り、適宜、数日~数週間~数か月単位、または所望ならより長い間、適合される。該組成物は、手、腕、胴、背中、下肢、足ほかを含む任意の皮膚表面に投与され得る。
【0030】
本開示が以下の記載で明らかにされた、または図面で例証された構成の詳細および成分の配列への適用に限定されないことが、理解されなければならない。本開示は、記載されたものに加えて複数の実施形態、ならびに様々な方法で実践および実行されることが可能である。同じく本明細書で用いられる句法および用語法、ならびに要約書が、記載を目的としており、限定ととらえるべきでないことが、理解されなければならない。
【0031】
そのため当業者は、本開示の基本となる概念が、本開示の複数の目的を実行するための他の構造、方法およびシステムの設計の基本原理として即座に利用され得ることを察知するであろう。それゆえ、特許請求の範囲が本開示の主旨および範囲を逸脱しない限りにおいて、そのような均等な構造を含むと解釈されることが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】表1の2%ジクロフェナク配合剤の皮膚透過フラックスデータ。
図2】表1の2%ジクロフェナク配合剤の皮膚透過送達用量データ。
図3】2%ジクロフェナク配合剤D34およびPennsaidの送達された経皮用量データ。
図4】2%ジクロフェナク配合剤D34およびPennsaidの皮膚保持用量データ。
図5】ジクロフェナクの送達率%としての、2%ジクロフェナク配合剤D34およびPennsaidの送達された経皮用量データ。
図6】2%ジクロフェナク配合剤D34およびPennsaidの皮膚透過フラックスデータ。
図7】2%ジクロフェナク配合剤D51~D55およびPennsaidの送達された経皮用量データ。
図8】2%ジクロフェナク配合剤D51~D55およびPennsaidの皮膚透過フラックスデータ。
図9】2%ジクロフェナク配合剤D37~D39およびPennsaidの送達された経皮用量データ。
図10】ジクロフェナクの送達率%としての、2%ジクロフェナク配合剤D37~D39およびPennsaidの送達された経皮用量データ。
図11】2%ジクロフェナク配合剤D37~D39およびPennsaidの皮膚透過フラックスデータ。
図12】2%ジクロフェナク配合剤D51~D55およびPennsaidの送達された経皮用量データ。
図13】2%ジクロフェナク配合剤D56およびPennsaidの送達された経皮用量データ。
図14】2%ジクロフェナク配合剤D57~D59およびPennsaidの送達された経皮用量データ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示の詳細な記載
COX阻害剤の局所的な皮膚を通した送達における最大の妨害は、皮膚の最外層である角質層(SC)の遮断性、皮膚結合、皮膚代謝、皮膚毒性および長いラグタイムである。
【0034】
SCを通した薬物拡散を容易にする薬物誘導体、超飽和系、物理的アプローチ、および化学的浸透増進剤(収着促進剤)の使用をはじめとする異なる方法論が、経皮吸収を増進するために開発された。それに関係して、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコールまたは脂肪アルコールエーテル、脂肪エーテル、低級アルコール、グリセロールエステル、多価アルコール、ジオール、アミド(例えば、N,N-ジエチル-m-トルアミド)、アミン、テルペン、極性溶媒、ピロリドンおよびその誘導体、スルホキシド、アゾンまたはラウロカプラム、界面活性剤、レシチン、ポリオール、グリコール、第四級アンモニウム化合物、シリコーン、アルカノアート、特定の生態、酵素、錯化剤、マクロサイクリック、溶媒ほか数多くの化学物質が、皮膚透過促進能のために利用されてきた。
【0035】
本明細書で用いられる「透過増進」は、原薬(API)が皮膚を透過する速度を上昇させるように、APIへの皮膚の透過性を上昇させることを指す。同様に「透過増進剤」(PE)は、そのような透過増進を実現する薬物または薬物混合物を指す。本開示に適したPE混合物は、以下の機構の1つまたは複数により皮膚を通したAPIの浸透を促進する:(1)皮膚中の薬物の拡散性を上昇させることによる;(2)バリア機能の低下につながるSC脂質流動化を引き起こすことによる(可逆的作用);(3)ビヒクル中の薬物の熱力学的活性を上昇および最適化することによる;(4)薬物の分配係数に影響を及ぼすことによる;および(5)配合剤から皮膚の上層中への放出を増加させることによる。
【0036】
特定の実施形態において、本開示に適したPE混合物は、以下の特徴の1つまたは複数を有する:皮膚への非毒性、非刺激性、非アレルギー性、および/または非感受性であること;少なくとも適当な透過作用を発揮するのに必要となる濃度で、薬理学的不活性であること;即座の、予測的で、そして/または可逆的な効果;医薬調製物に容易に組み込まれること;ならびに美容的に許容できること。
【0037】
脂肪酸透過増進剤
本開示のPE混合物は、好ましくは長鎖脂肪酸などの1種または複数の脂肪酸を含む。例えば脂肪酸は、オレイン酸(シス-9-オクタデセン酸)、またはその機能的誘導体であってもよい。特定の実施形態において、PEは、脂肪酸エステル、脂肪アルコールまたは脂肪アルコールエーテル、脂肪エーテル、低級アルコール、グリセロールエステル、多価アルコール、ジオール、アミド(例えば、N,N-ジエチル-m-トルアミド)、アミン、テルペン、極性溶媒またはそれらの混合物である。特定の実施形態において、脂肪酸は、アルカン酸、カプリン酸、二酸、エチルオクタデカン酸、ヘキサン酸、乳酸、ラウリン酸、リノエライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ネオデカン酸、オレイン酸(シス-9-オクタデセン酸)、パルミチン酸、ペラルゴン酸、プロピオン酸、またはバクセン酸である。特定の実施形態において、PEは、ミリスチン酸イソプロピルなどのC8~C22脂肪酸の少なくとも1種である。
【0038】
任意の特別な理論に結び付けるのを望むものではないが、本開示の脂肪酸PEは、SC中の細胞間脂質二重膜を選択的に撹乱し、それによりAPIによるSCの浸透を増進すると考えられる。特定の実施形態において、特に親油性薬物/APIでは、不飽和脂肪酸が飽和同等物より皮膚を通した吸収の増進についてより効果的である(例えば、5倍、10倍、15倍、20倍大きい、またはより大きい)という一般的傾向に基づき、脂肪酸異性体の二重結合の数およびシス/トランス配置を適合させることにより、浸透増進効果の差が適合されてもよい。
【0039】
特定の実施形態において、PEは、オレイン酸、リノール酸、a-リノレン酸、アラキドン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、カプリル酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、またはミリスチン酸であり、場合によりプロピレングリコール、エタノール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、およびデクスパンテンのうちの1つをさらに含む。特定の実施形態において、PEは、パルミチン酸であり、局所配合剤は、SCへのAPIの浸透(特にアルキルリッチ領域)を増進するために配合される。特定の実施形態において、PEは、ミリスチン酸であり、局所配合剤は、表皮へのAPIの浸透を増進するために配合される。特定の実施形態において、PEは、サリチル酸オクチルであり、局所配合剤は、表皮および真皮中への水溶性または脂溶性APIの浸透を増進するために配合される。
【0040】
追加的な脂肪酸ベースのPEは、メキシコ特許第9705070号、ギリシャ特許第1004995号、米国特許出願公開第2005-020552A1号、WO05/060540号、カナダ特許第2,420,895号、メキシコ特許第9800545号、WO04/054552号、ニュージーランド特許第537359号、WO98/18417号、WO96/30020号、ドイツ特許第4301783号、米国特許第4,885,174号、米国特許第4,983,396号、ニュージーランド特許第222346号、カナダ特許第1,280,974号および米国特許第4,626,539号に見出され得る。
【0041】
テルペン透過増進剤
テルペンは、その高い増進効果および低い皮膚刺激性により、医薬および美容配合剤中で透過増進剤としての用途を見出され得る。テルペンは、主として薬用植物から抽出され、炭素、水素および酸素原子のみで構成された分子成分を有する揮発性化合物である。テルペンの基本的化学構造は、テルペンを分類するのに用いられる複数の繰り返しイソプレン(C5H8)単位からなる。2、3種のテルペン(例えば、1,8-シネオール、メントール、およびメントン)は、米国食品医薬品局により発行された安全基準合格証(GRAS)の薬剤のリストに含まれる。本開示に適したテルペンの例は、メントール、D-リモネン、ゲラニオール、ネロリドール、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0042】
スルホキシド透過増進剤
特定の実施形態において、本開示に適したPE混合物は、親水性および親油性の両方のAPIの浸透を増進するために、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。DMSOに置き換えられ得る追加的なDMSO様PEとしては、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、環状スルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、および2-ヒドロキシウンデシルメチルスルホキシドなどの類似の化学的に関係した化合物が挙げられる。
【0043】
グリコール透過増進剤
特定の実施形態において、本開示に適したPE混合物は、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテル、またはジエチレングリコールモノメチルエーテルまたは他のジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコールほか、1種または複数のグリコールベースの化合物を含む。現在、米国食品医薬品局(FDA)の不活性成分データベースは、局所(最大49.9%)および経皮(最大5%)投与経路のためのジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol)をリストに入れている。Transcutolの重要な特性は、広範囲の親水性および親油性の活性物質(actives)を溶解する能力である。溶解力においてPGおよびEtOHの性能より優れた能力により、それは高度に有用な医薬賦形剤とされる。Transcutolは、約0.5という負のlogPを有し、疎水性基とも親和性および良好な混和性を実証する極性プロトン性可溶化剤と見なされる。角質層を即座に浸透する、負のlogPを有する溶媒の能力は、負のlogP値を有する活性物質より即座に角質層に浸透する親油性活性物質(2~3のlogP値)と対照的である。Transcutolは、ほとんどの医薬賦形剤と相溶性があり;グリセリン、エタノール、プロピレングリコールおよび水のような一般的溶媒に可溶性であり;中鎖トリグリセリドおよびポリエチレングリコールベースの界面活性剤(ポリオキシルグリセリド)のような極性脂質と混和性であるが;非極性鉱物油またはジメチコーン中に不溶性である。Transcutolは、水への高い可溶性および混和性のおかげで、相対湿度条件に応じて水和させてもよい。
【0044】
乳化剤
皮膚または粘膜表面への局所塗布のための配合剤を生成することは多くの場合、油相を乳化剤と混合することを必要とし得る。乳化剤は、低分子、オリゴマーまたはポリマーであり得る医薬的に許容できる界面活性剤である。それは、非イオン性、カチオン性またはアニオン性であってもよい。それは、天然または合成起源のものであってもよい。
【0045】
数多くの乳化剤が、本開示で用いられてもよい。特定の実施形態において、乳化剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、または非イオン性乳化剤(ステアリン酸グリセリルおよび/またはステアリン酸PEG100など)を含んでいてもよい。他の代表的な乳化剤としては、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばセトマクロゴール1000などのマクロゴールエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば市販のTween、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、およびケイ酸マグネシウムアルミニウムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの表面改質剤のほとんどが、公知の医薬賦形剤であり、American Pharmaceutical AssociationおよびPharmaceutical Society of Great Britainの共同発行によるHandbook of Pharmaceutical Excipients、Pharmaceutical Press, 1986に詳細に記載される。
【0046】
界面活性剤の他の例としては、チロキサポール、ポロキサマーおよびポリキサミン(polyxamines)が挙げられる。ポロキサマーは、互いに連結された親水性ポリエチレンオキシド(PEO)および疎水性ポリプロピレンオキシド(PPO)ブロックで構成された水溶性トリブロックコポリマーである。これらのブロックコポリマーの両親媒性は、PEOおよび/またはPPOブロック成分の長さを制御することにより変動され得る(Ahmed et al., 2001)。このポロキサマー化学薬品ファミリーの複数のメンバー(ポロキサマー188および407など)は、哺乳動物細胞および組織に生体適合性および非毒性であることが知られており、生物医学的適用に有用とされる。これらの界面活性剤は、哺乳動物細胞膜中または細胞膜上に組み込まれ、それによりタンパク質吸着および細胞接着を低減することが知られている。
【0047】
さらに別の乳化剤としては、レシチン、American Cyanamidから入手可能なスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルであるAerosol OTなどのスルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、DuPontから入手可能なラウリル硫酸ナトリウムであるDuponol P、Rohm and Haasから入手可能なアルキルアリールポリエーテルスルホン酸塩であるTriton X-200、Croda,Inc.から入手可能なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであるTween(登録商標)20およびTween(登録商標)80、Croda,Inc.から入手可能なステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロースの混合物であるCrodesta F-110、Croda,Inc.から入手可能なCrodesta SL-40、ならびにCi8H37-CH2(CON(CH3)CH2(CHOH)4CHOH)2であるSA90HCO;デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシル-P-D-グルコピラノシド;n-デシル-P-D-マルトピラノシド;n-ドデシル-P-D-グルコピラノシド;n-ドデシル-P-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-P-D-グルコピラノシド;n-ヘプチル-P-D-チオグルコシド;n-ヘキシル-P-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイル(noyl)-P-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-P-D-グルコピラノシド;オクチル-P-D-チオグルコピラノシド;および同様のものが挙げられる。
【0048】
ポロキサマーおよびセルロース性賦形剤などの多くのポリマー乳化剤はまた、ゲル化剤として作用する。ゲルは、相対的に多量の液体中に分散された少量の固体を含むが、より固形様の特徴を保有する、半固形三次元ポリマーマトリックスである。ゲルは、固体状態に特徴的な機械的性質を呈し、分散された成分および分散媒の両方が、連続的に系全体で自然に伸長する。ゲルは多くの場合、透明または半透明の半固形配合剤であり、目立たないため患者に好都合である。局所ゲル配合剤は、クリームおよび軟膏に比較して脂っこくなく、より良好な塗布特性および安定性を提供するため、薬物に適した送達系を提供する。
【0049】
他の構成要素
特定の実施形態において、該組成物は、非限定的に、湿潤剤;テクスチャ増進剤(texture enhancers);湿度調節剤;pH調節剤;浸透圧改良剤;UV-AおよびUV-Bスクリーニング剤;ならびに抗酸化剤をはじめとする1種もしくは複数の添加剤またはそれらの組み合わせをさらに含んでいてもよい。例えば抗酸化剤は、a-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソールもしくはブチル化ヒドロキシトルエン、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノール、または特定の金属キレート化剤であり得る。当業者は、本開示に本質的に関連する有利な特性が想定される添加により有害作用を受けない、または実質的に受けないように、これらの組成物に添加される任意選択による化合物(複数可)を選択することができよう。
【0050】
加えて、該組成物は、抗ヒスタミン薬などの1種または複数の追加的な活性剤、コルチコステロイド、局所麻酔薬、局所鎮痛剤および抗生物質をさらに含んでいてもよい。様々な実施形態において、抗ヒスタミン薬は、ジフェンヒドラミン塩酸塩またはクロルフェニラミンマレイン酸塩であってもよく;コルチコステロイドは、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン-21-モノエステル(ヒドロコルチゾン-21-酢酸エステル、ヒドロコルチゾン-21-酪酸エステル、ヒドロコルチゾン-21-プロピン酸エステル、ヒドロコルチゾン-21-吉草酸エステルほか)、およびヒドロコルチゾン-17,21-ジエステル(ヒドロコルチゾン-17,21-二酢酸エステル、ヒドロコルチゾン-17-酢酸-21-酪酸エステル、ヒドロコルチゾン-17,21-二酪酸エステルなど)、デキサメタゾン、フルメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ベタメタゾン安息香酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフロラゾン二酢酸エステル、フルオシノニド、モメタゾンフランカルボン酸エステル、またはトリアムシノロンアセトニドであってもよく;局所麻酔薬は、ベンゾカイン、リドカイン、プリロカインおよびジブカインであってもよく;局所鎮痛剤は、1-メントール、d,l-カンファーまたはカプサイシンであってもよい。
【0051】
本開示の好ましい実施形態:
1. 局所シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害配合剤であって、
ヒトCOX-1、ヒトCOX-2、またはヒトCOX-1とヒトCOX-2の両方を阻害する1種または複数のCOX阻害剤と;
約1.0~約15.0wt%の間の長鎖一価不飽和脂肪酸、長鎖一価不飽和脂肪アルコール、テルペン、またはそれらの組み合わせと;
0~約5.0wt%の間のポロキサマーと;
約1.0~約5.0wt%の間の医薬的に許容できるセルロース性賦形剤と;
エタノール、プロピレングリコール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、および場合によりジメチルスルホキシドを含む溶媒混合物と、
を含み、
約5.0wt%以下の水を含む、
局所COX阻害配合剤。
2. ナプロキセン、アセトアミノフェン、ベンジダミン、ブフェキサマク、ジクロフェナク、エトフェナマート、フルフェナム酸、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸、サリシン、ジフルニサル、サリチル酸マグネシウム、およびサリチル酸コリンからなる群から選択されるCOX阻害剤を含む、実施形態1による局所COX阻害配合剤。
3. 該配合剤中に存在するCOX阻害剤が、ジクロフェナクを含む、またはそれからなる、実施形態2による局所COX阻害配合剤。
4. 約1.0~約2.5wt%の間のジクロフェナクを含む、実施形態3による局所COX阻害配合剤。
5. 少なくとも約7%のジクロフェナクの皮膚を通した吸収を提供する、実施形態4による局所COX阻害配合剤。
6. 少なくとも約10%のジクロフェナクの皮膚を通した吸収を提供する、実施形態5による局所COX阻害配合剤。
7. 約1.0wt%以下の水を含む、実施形態1~6の1つによる局所COX阻害配合剤。
8. 無水である、実施形態7による局所COX阻害配合剤。
9. 該配合剤が、約25.0~約50.0wt%の間のエタノールと、約2.0~約12.5wt%の間のプロピレングリコールと、約0~約25.0wt%の間のジメチルスルホキシドと、約20.0~約49.9wt%の間の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、を含み、該溶媒混合物が、該配合剤の約70.0~約95.0wt%の間である、実施形態1~8の1つによる局所COX阻害配合剤。
10. 約1.0~約10.0wt%の間の長鎖一価不飽和脂肪酸、長鎖一価不飽和アルコール、またはそれらの混合物を含む、実施形態1~9の1つによる局所COX阻害配合剤。
11. 該配合剤中に存在する長鎖一価不飽和脂肪酸、長鎖一価不飽和アルコール、またはそれらの混合物が、オレイン酸、オレイルアルコールまたはそれらの混合物を含む、またはそれからなる、実施形態1~10の1つによる局所COX阻害配合剤。
12. ポロキサマー-101、-105、-105安息香酸塩、-108、-122、-123、-124、-181、-182、-182二安息香酸塩、-183、-184、-185、-188、-212、-215、-217、-231、-234、-235、-237、-238、-282、-284、-288、-331、-333、-334、-335、-338、-401、-402、-403、および-407からなる群から選択されるポロキサマーを含む、実施形態1~11の1つによる局所COX阻害配合剤。
13. 0~約5.0wt%の間のポロキサマー-188を含む、実施形態12による局所COX阻害配合剤。
14. ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される医薬的に許容できるセルロース性賦形剤を含む、実施形態1~11の1つによる局所COX阻害配合剤。
15. 約1.0~約5.0wt%の間のヒドロキシプロピルセルロースを含む、実施形態14による局所COX阻害配合剤。
16. 約1.0~約2.5wt%の間のジクロフェナクと;
約1.0~約10.0wt%の間の、長鎖一価不飽和脂肪酸、長鎖一価不飽和脂肪アルコール、またはそれらの混合物、好ましくはオレイン酸、オレイルアルコール、またはそれらの混合物を含む、またはそれからなる長鎖一価不飽和脂肪酸、長鎖一価不飽和脂肪アルコール、またはそれらの混合物と;
0~約5.0wt%の間のポロキサマーと;
約2.0~約5.0wt%の間の医薬的に許容できるセルロース性賦形剤、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースを含む、またはそれからなる医薬的に許容できるセルロース性賦形剤と;
エタノール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノールを含む無水溶媒混合物と、
を含む、実施形態1による局所COX阻害配合剤であって、
該配合剤が、約25.0~約50.0wt%の間のエタノールと、約2.0~約12.5wt%の間のプロピレングリコールと、約15.0~約25.0wt%の間のジメチルスルホキシドと、約20.0~約49.9wt%の間の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、を含み、該溶媒混合物が、該配合剤の約70.0~約95.0wt%の間である、局所COX阻害配合剤。
17. 無水であり、
約2.0wt%のジクロフェナクと;
約27.0wt%のエタノールと;
約8.0wt%のオレイン酸、オレイルアルコール、またはそれらの混合物と;
約0.5wt%のポロキサマー188と;
約11.0wt%のプロピレングリコールと;
約3.0wt%のヒドロキシプロピルセルロースと;
約21.0wt%のジメチルスルホキシドと;
約25.0wt%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、
を含む、またはそれらからなる、実施形態1による局所COX阻害配合剤。
18. 無水であり、
約2.0wt%のジクロフェナクと;
約43.5wt%のエタノールと;
約4.0wt%のオレイン酸、オレイルアルコール、またはそれらの混合物と;
0wt%のポロキサマー188と;
約3.0wt%のプロピレングリコールと;
約3.0wt%のヒドロキシプロピルセルロースと;
約20.0wt%のジメチルスルホキシドと;
約24.5wt%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、
を含む、またはそれらからなる、実施形態1による局所COX阻害配合剤。
19. 無水であり、
約2.0wt%のジクロフェナクと;
約37.5wt%のエタノールと;
約2.0wt%のオレイン酸、オレイルアルコール、またはそれらの混合物と;
0wt%のポロキサマー188と;
約11.0wt%のプロピレングリコールと;
約3.0wt%のヒドロキシプロピルセルロースと;
約20.0wt%のジメチルスルホキシドと;
約24.5wt%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、
を含む、またはそれらからなる、実施形態1による局所COX阻害配合剤。
20. 無水であり、
約2.0wt%のジクロフェナクと;
約31.5wt%のエタノールと;
約8.0wt%のオレイン酸、オレイルアルコール、またはそれらの混合物と;
0wt%のポロキサマー188と;
約11.0wt%のプロピレングリコールと;
約3.0wt%のヒドロキシプロピルセルロースと;
約20.0wt%のジメチルスルホキシドと;
約24.5wt%の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールと、
を含む、またはそれらからなる、実施形態1による局所COX阻害配合剤。
21. ヒトの身体上の場所の疼痛エピソードを局所的に処置する方法であって、実施形態1~20の1つによる局所COX阻害配合剤を該場所に局所的に塗布することを含む、方法。
22. 該疼痛エピソードが、急性疼痛エピソードである、実施形態21による方法。
23. 該疼痛エピソードが、慢性疼痛エピソードである、実施形態21による方法。
24. 膝(複数可)の骨関節炎の疼痛を局所的に処置する方法であって、実施形態1~20の1つによる局所COX阻害配合剤を該膝(複数可)に局所的に塗布することを含む、方法。
25. 該COX阻害剤が、ジクロフェナクであり、ジクロフェナクの局所用量が、約80mg以下である、実施形態21~24の1つによる方法。
26. ジクロフェナクの該局所用量が、約80mg、約40mg、約30mg、約20mg、または約10mgである、実施形態25による方法。
27. 該局所COX阻害配合剤が、約2wt%のジクロフェナクを含む、実施形態21~26の1つによる方法。
【0052】
実施例
以下の実施例は、本開示を例示するのに役立つ。これらの実施例は、本開示の範囲を限定するものではない。
【0053】
実施例1:局所ジクロフェナク配合剤
材料
DMSO、CAS番号:67-68-5
オレイン酸、CAS番号 112-80-1
Trascutol(ジエチレングリコールモノエチルエーテル;2-(2-エトキシエトキシ)エタノール)、CAS番号 111-90-0
エチルアルコール 200プルーフ、無水、CAS番号 64-17-5
ポロキサマー188、CAS番号 9003-11-6
1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、CAS番号:57-55-6
Klucel(商標)GF Pharm(ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、CAS番号:9004-64-2)
ジクロフェナクナトリウム(2-[(2,6-ジクロロフェニル)アミノ]ベンゼン酢酸ナトリウム塩)、CAS番号:15307-79-6
【0054】
2%ジクロフェナク配合剤を作製するための手順
オレイン酸を60℃に加熱し、その後、ポロキサマー188をオレイン酸に混合および溶解する。
20℃でプロピレングリコールをDMSOに、混合しながら添加する。ヒドロキシプロピルセルロースを混合物に緩やかに添加する。1時間混合する。
transcutolを60℃に加熱し、ジクロフェナクナトリウムをtranscutolに溶解する。
混合しながら、transcutol/ジクロフェナクナトリウムをDMSO/プロピレングリコールに添加する。オレイン酸/ポロキサマー188とひとまとめにし、その後、エタノールを添加し、均質になるまで混合する。
【0055】
ポロキサマー188を用いない代わりの手順:
20℃でプロピレングリコールをDMSOに、混合しながら添加する。
20℃で、ジクロフェナクナトリウムをtranscutolに溶解する。
混合しながら、transcutol/ジクロフェナクナトリウムをDMSO/プロピレングリコールに添加する。ヒドロキシプロピルセルロースを混合物に緩やかに添加する。その後、エタノールを添加して、均質になるまで混合する。オレイン酸を添加し、均質になるまで混合する。
【0056】
本開示の例示的配合剤(wt%)
ジクロフェナクナトリウム 1.8~2.2wt%
DMSO 18.0~22.0wt%
Transcutol 15.0~25.0%
プロピレングリコール 10.0~12.0wt%
エチルアルコール 25.0~40.0wt%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.7~3.3wt%
ポロキサマーP188 0.0~3.0wt%
オレイン酸 7.0~9.0wt%
【0057】
実施例2.透過テスト
フランツ型拡散セル実験を、本開示の下で教示された組成物からのジクロフェナクのヒト皮膚でのフラックス速度を分析するために用いた。例えばBartosova and Bajgar, Transdermal Drug Delivery In Vitro Using Diffusion Cells, Curr. Med. Chem. 2012, 19: 4671-4677を参照されたい。
【0058】
本明細書に記載された実施例において、レセプターウェル容積3.3mLのフランツ型拡散セル(「FDC」)を、ブタ皮膚またはヒト死体の皮膚のどちらかと共に使用した。ヒト死体の皮膚では、分層ヒト死体皮膚(0.015”~0.018”)を、AlloSource(コロラド州センテニアル)またはSkin Bank New York Firefighters(ニューヨーク州ニューヨーク)から得た。組織バンクにより、皮膚組織はおよそ250μmの厚さに採取されて、ドライアイス上で凍結運搬された。組織の供給源、ドナー情報、身体の部分、組織の条件、および受取前の貯蔵期間に関係する死体皮膚供給業者から入手可能な情報の全てを、試験ファイル中に保持した。ドナーの皮膚を受け取ったら、皮膚切片を使用するまで-20℃に貯蔵した。使用の前に、皮膚切片をフリーザから取り出し、周囲温度で放置して完全に解凍した。
【0059】
ドナーウェルは、約0.55cmの皮膚面積を取り扱う。レセプターウェルに、0.01%アジ化ナトリウムを含有するPBS(「レセプター流体」)を充填したが、この流体は、実験全体のシンク条件を提供すると検証されている。磁気撹拌棒を用いてレセプターウェル内のレセプター流体を連続撹拌しながら、FDCのレセプターウェルを撹拌ドライブロック内で37℃に保持した(皮膚表面の温度は32(±0.5)℃である)。ピンチクランプを用いて均一な圧力の下で、ドナーおよびレセプターチャンバーを皮膚切片の周りで締め付けた。
【0060】
FDCを組み立てた後、皮膚をレセプター流体と20分間接触させて水和させた。
この期間に任意の漏出を示したFDCはいずれも廃棄した。
【0061】
テスト配合剤の塗布前に、各皮膚切片の完全性および品質を、トリチウム標識水の経皮フラックスまたは経表皮電気抵抗(「TEER」)の測定を通してテストした。(皮膚完全性は通常、ブタ皮膚切片ではテストされなかった)。TEER測定を以下のとおり実施した。PBSの分取量150μLを、各FDCドナーウェルに導入した。10分後に、ブラント電極プローブをドナーウェルの中に入れ、皮膚表面にプローブ自体の重量により軽く静置した。その後、FDCのレセプターチャンバーのサンプル口を介して、第二の電極をレセプター流体中に挿入した。100Hzでの交流(「AC」)信号の100mV二乗平均平方根(「RMS」)を、波形発生器を用いて皮膚にあて、その後、インピーダンスをデジタルマルチメータで測定し、結果をkΩで記録した。異常に低い(わずかに<2kΩ)インピーダンスを示したFDCはいずれも廃棄し、FDCを、測定されたインピーダンス計測値の大きさに従ってランク付けした。その後、各テスト物質のレプリケートが各々、ほぼ等しい平均経表皮電気抵抗値で皮膚切片に適用されるように、テスト物質をFDCのバッチに割り付けた。
【0062】
膜完全性テストが完了して、細胞が適当に分類された後、テスト物質の試料をその後、皮膚の角質層に塗布した。単回投与レジメンを、この試験で用いた。典型的には合計でおよそ36のFDCのバッチで、テスト配合剤各々を六重測定で検査する。
【0063】
Nichiryoポジティブディスプレイスメントピペットを用いて用量を塗布した。用量をピペットから皮膚に分配し、ガラス棒の平たい端部を利用して表面に延ばした。典型的な吸引用量は、ほとんどの実験でセルあたり配合剤10mLであった。配合剤そのものは、典型的には1wt%で作製された。10mL用量が皮膚に塗布されて、配合剤を延ばした時のガラス棒への損失がなく、配合剤中の活性物質が1wt%であり、配合剤の比重が1.0であり、表面積がセルあたり0.55cmであると仮定すると、各FDCは、ジクロフェナクを約181.8mg/cmで投与された。
【0064】
典型的には24時間の、プリセット時間に、試料を各レセプターウェルから抜き取った。目盛り付きハミルトン型注射筒を使用して、分取量300μlを24時間目に各FDCのサンプリング口から抜き取った。各抜き取った分取量を、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに導入した。HPLC分析前は、試料を4~8℃の冷蔵庫で貯蔵した。試料は、回収後5日以内に分析した。
【0065】
その後、24時間目に皮膚をセロファンテープで3回テープストリッピングし、各テープストリッピングは、セロファンテープ片を皮膚に小さな圧力であてること、およびテープを剥離し、それにより角質層の再上層を規則正しく除去すること、からなる。テープ片は、廃棄した。
【0066】
テープストリッピングを完了した後、一対のスパチュラを用いることにより、残りの皮膚を表皮および真皮区画に分割した。必要ならば、皮膚を60℃に設定したホットプレート上に1分間置いて、皮膚の分離を容易にした。表皮および真皮区画をその後、別個にガラスバイアルに入れ、その中にDMSO 3mLを添加した。皮膚片をその後、穏やかに撹拌しながら40℃で24時間インキュベートした。24時間のインキュベーション期間の後、試料を回収した。
【0067】
レセプターウェルおよび皮膚抽出物から抜き取られた試料をその後、Chemstationソフトウエアを利用して検証されたHPLC法により分析した。ジクロフェナクのAUCを記録して、較正標準のAUC値および公知の濃度値から作成された検量線を用いてmg/ml値に変換した。これらのmg/ml値を試験結果のExcelワークブックにインポートした。これらの濃度をその後、レセプター容積(3.3mL)または皮膚抽出容量(3ml)に掛けて、mg/cm2での最終累積量のためにレセプター流体(0.55cm2)に暴露された皮膚表面積で割った。活性物質の濃度を各例についてアッセイして報告した。
【表6】
【0068】
図1は、表1の2%ジクロフェナク配合剤の皮膚透過フラックスデータを表し、図2は、表1の2%ジクロフェナク配合剤の皮膚透過送達用量データを表す。
【0069】
実施例3
低減量のDMSOおよび増加量のtranscutolを含有する追加的配合剤を、配合剤D32から外挿して、同じ手順により検査した。
【表7】
【0070】
図3、4および5は、ジクロフェナクの送達された経皮用量、皮膚中に保持された用量、および送達率%として計算された量としてのPennsaidと配合剤D34の直接的比較を表す。認められ得る通り、配合剤D34は、Pennsaidより有意に多くのジクロフェナクを経皮送達したが、Pennsaidは、表皮および真皮中により多くの保持量を呈した。配合剤D34からのジクロフェナクの経皮送達率%は、48時間目に15%を超えていた。
【0071】
図6は、これらの2種の配合剤の経時的なジクロフェナクフラックスを示す。最大ジクロフェナクフラックスが、塗布の12時間以内に観察された。
【0072】
実施例4
オレイン酸、プロピレングリコール、およびエチルアルコールの量を変動させた追加的配合剤を、同じ手順により検査した。
【表8】
【0073】
図7は、表1の2%ジクロフェナク配合剤の皮膚透過送達用量のデータを表し、図8は、表1の2%ジクロフェナク配合剤の皮膚透過フラックスデータを表す。示された通り、これらの配合剤は、実質的に少量のDMSOおよびかなり少量の塗布配合剤である配合剤D1Cと同等量のジクロフェナクを送達することができる。
【0074】
実施例5
transcutolおよびエチルアルコールの量を変動させた追加的配合剤を、同じ手順により検査した。
【表9】
【0075】
図9、10および11は、ジクロフェナクの送達された経皮用量、皮膚中に保持された用量、および送達率%として計算された量としてのPennsaidと配合剤D34の直接的比較を表す。
【0076】
実施例6
オレイン酸、プロピレングリコール、およびエチルアルコールの量を変動させた追加的配合剤を、同じ手順により検査した。
【表10】
【0077】
配合剤のこの群では、オレイン酸濃度が、高濃度の8.0%から低下して2.0%まで変動した。テストデータは、Pennsaid 6μLおよび配合剤3μLから出発して投与量を変動させた。これは、1/2用量の配合剤でより良好な浸透を示すデータである。配合剤D56の2番目のデータセットでは、Pennsaid 6μLおよび配合剤D56 3μLという第二の用量を、第二の塗布を模擬するために用いた。全てのデータセットの対照は、実際のPennsaid製品であった。図12および13を参照されたい。
【0078】
図12では、棒1:Pennsaid 2%ジクロフェナク、DC1対照、用量6μL;棒2:2%ジクロフェナクD51、用量3μL;棒3:2%ジクロフェナクD52、用量3μL;棒4:2%ジクロフェナクD53、用量3μL;棒4:2%ジクロフェナクD53;棒5:2%ジクロフェナクD54;棒6:2%ジクロフェナクD55。
【0079】
図13では、群#1 DIC Pennsaid用量6μL;群#2 D56用量6μL;群#3 D56用量3μL;群#4 D1C Pennsaidを24時間目にさらに6μL用量塗布;群#5 D56を24時間目にさらに3μL用量塗布。
【0080】
死体の皮膚透過データは、表皮および真皮中への、そして死体の皮膚試料を通した、Pennsaid(6μL用量)および配合剤D56(3μL用量)製品の両方の2%ジクロフェナク透過を示す。以下の計算は、これらの配合剤での48時間後の皮膚表面cmに残留するジクロフェナクナトリウムの量を示す。示された通り、局所的処方薬では消費者が日用量を反復して塗布することが潜在的に懸念され得る配合剤D56に比較して、Pennsaid製品ではほぼ7倍のジクロフェナクナトリウムが皮膚表面/cmに残留した。
【表11】
【0081】
実施例7
オレイン酸、プロピレングリコール、およびエチルアルコールの量を変動させた追加的配合剤を、同じ手順により検査した。
【表12】
【0082】
これらの配合剤には、配合剤に添加されたオレイン酸は存在しなかった。配合剤D58には、グリセリンが4.0%添加された。配合剤D59には、オレイルアルコールが4.0%添加された。
【0083】
配合剤中にオレイン酸が存在しなければ、ジクロフェナクの透過が、Pennsaidよりも透過が少ないポイントまで有意に下落した。オレイン酸およびオレイルアルコールは、ジクロフェナクの浸透を増進する。
【0084】
図14では、群#1 DIC Pennsaid;群#2 D57;群#3 D58;群#4 D59。
【0085】
実施例8:発行物
以下の発行物は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0086】
McPherson and Cimino, Topical NSAID Formulations, Pain Medicine, Volume 14, Issue suppl_1, December 2013, Pages S35-S39, doi.org/10.1111/pme.12288
WO2009081217号
WO2016033308号
WO2017173269号
米国特許第9101591号
【0087】
本開示が目的を実行するように、そして言及された到達目標および利点と、そこに本質的に存在するものを得るようにうまく適応されていることは、当業者に即座に察知される。本明細書に提供された実施例は、好ましい実施形態の代表であり、例示であり、本開示の範囲の限定を意図したものではない。
【0088】
本開示の範囲および主旨を逸脱することなく、様々な置き換えおよび改良が本明細書の開示になされ得ることは、当業者に即座に明白となろう。
【0089】
本明細書で言及された全ての特許および発行物は、本開示が属する技術分野の当業者のレベルの指標である。全ての特許および発行物は、各個別の発行物が具体的かつ個別に参照により組み入れられるのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0090】
本明細書に例証的に記載された開示は適宜、本明細書に具体的に開示されていないいずれかの要素または複数の要素、限定または複数の限定の非存在下で実践されてもよい。したがって例えば本明細書の各例において、用語「含む」、「から本質的になる」および「からなる」のいずれかが、他の2つの用語のどちらかと交換されてもよい。用いられた用語および表現は、本明細書の用語として用いられていて限定ではなく、そのような用語および表現の使用において、図示および記載された特色またはその一部のいずれか均等物を除外することを意図せず、請求された本開示の範囲内で様々な改良が可能であることは、認識されよう。したがって、本開示を好ましい実施形態および任意選択での特色により具体的に開示したが、本明細書に開示された概念の改良および変更が当業者に求められてもよく、そのような改良および変更が添付された特許請求の範囲に定義された本開示の範囲に含まれると見なされることが、理解されなければならない。
【0091】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲で明らかにされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14