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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】気体交換を監視するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20240705BHJP
   A61B 5/085 20060101ALI20240705BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20240705BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/085
A61B5/1455
A61M16/00 370Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022538744
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2020087831
(87)【国際公開番号】W WO2021130344
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】62/952,523
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィカリオ フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】トゥルシェル ウィリアム アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ナニェス オヘダ パブロ アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】ポルキー マイケル
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/185714(WO,A1)
【文献】特表2016-526466(JP,A)
【文献】特表2019-514557(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0223761(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0098589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/08- 5/097
A61M 11/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の肺疾患を監視するためのシステムであって、前記システムは、
前記患者に換気治療を提供し、前記患者に提供される印加される圧力と一回呼吸量と気体流量とを決定する換気治療デバイスであって、窒素洗い出し検査を実施するために吸入される酸素の割合を制御するブレンダーを含む、換気治療デバイスと、
前記患者の血液の酸素飽和度を決定する酸素飽和度監視器と、
プロセッサとを備え、
前記窒素洗い出し検査を実施するように前記換気治療デバイスを制御することと、
前記窒素洗い出し検査の結果と前記患者の血液の決定された前記酸素飽和度とに基づいて、前記患者の気体交換障害の変化を決定することと、
前記窒素洗い出し検査の前記結果と前記患者の前記血液の決定された前記酸素飽和度とに少なくとも部分的に基づいて、前記患者の前記気体交換障害の前記変化の原因を決定することと、
を行うように機械可読命令により前記プロセッサが設定されている、システム。
【請求項2】
前記換気治療デバイスが更に、肺エラスタンスを推定し、前記プロセッサが、前記肺エラスタンスに少なくとも部分的に基づいて前記患者の前記気体交換障害の前記変化の原因を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記換気治療デバイスが更に、窒素洗い出しと組み合わせて終末呼気陽圧を施し、前記プロセッサが更に、前記終末呼気陽圧が前記窒素洗い出しと組み合わされて施されたときの前記患者の血液の前記酸素飽和度の時間応答に基づいて肺線維症から急性呼吸窮迫症候群を区別する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記換気治療デバイスが更に、窒素洗い出しと組み合わせて終末呼気陽圧を施し、前記プロセッサが更に、前記終末呼気陽圧が前記窒素洗い出しと組み合わされて施されたときの前記患者の血液の前記酸素飽和度の時間応答に基づいてCOPD疾患進行のインジケーターとしてシャント様効果を追跡する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが更に、前記患者の前記気体交換障害の決定された前記変化に基づいて、憎悪及び/又は再入院に対するリスクを決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、決定木に基づいて前記気体交換障害の前記変化の原因を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが更に、前記決定木の1つ又は複数のノードに応答して、更なる試験を実行し、前記決定木を評価することを進めるために前記更なる試験の結果を使用するように前記システムを制御する、
請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記更なる試験が、心拍数、活動、睡眠データ、呼気流量制限検査、酸素洗い流しチャレンジ検査、過換気、及び増加した呼気終期CO2、tcpPCO2差からなる群から選択された1つ又は複数の検査を含む、
請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[01] この特許出願は、2019年12月23日に出願された米国仮特許出願第62/952,523号の、米国特許法第119条(e)に規定された優先権の利益を主張し、同出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[02] 本開示は、肺疾患を患った患者の進行を監視するためのシステム及び方法に関し、より具体的には気体交換障害を監視するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[03] 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺気腫(すなわち、肺の肺胞嚢に対する損傷)に起因した実質組織(すなわち、肺機能に不可欠な組織)の損失により特徴付けられる進行性疾患である。結果として、COPDにおける肺の構造は経時的に変化する。これは吸入された空気からの酸素を、組織への送達のために血液中に送達するための心臓血管系の能力に対して好ましくない結果をもたらす。より詳細には、肺における構造的変化は、非一様な換気灌流不均衡をもたらす。肺の幾つかの領域は換気されるが適切に灌流されず、他の領域は灌流されるが適切に換気されない。無駄な換気及び無駄な灌流は、COPDにおける総気体交換効率を下げ、低酸素血症をもたらす。
【0004】
[04] COPDの進行性の性質を考慮すると、監視は、医学療法及び理学治療に対する患者のコンプライアンスを改善することから、処方を変えること及び/又は処置を進めることまで、介入の必要性を適時に把握するために不可欠である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[05] 肺機能検査は、在宅医療環境において実施することが困難であり得、実施することが患者にとって不快でもある。肺及び心臓血管のパフォーマンスを監視するための機械は、かさばり、及び/又は高価である。これらの、及び他の欠点が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[06] したがって、本開示の1つ又は複数の態様は、患者に換気治療を提供するように、及び、患者に提供される一回呼吸量と気体流量と印加される圧力とを決定するように構成された換気治療デバイスであって、換気治療デバイスが、窒素洗い出し検査を実施するように吸入される酸素の割合を制御するように構成及び配置されたブレンダーを含む、換気治療デバイスと、患者の血液の酸素飽和度を決定するように構成された酸素飽和度監視器と、プロセッサとを備えるシステムであって、プロセッサが、窒素洗い出し検査を実施するように換気治療デバイスを制御することと、窒素洗い出し検査の結果と患者の血液の決定された酸素飽和度とに基づいて、患者の気体交換障害の変化を決定することと、窒素洗い出し検査の結果と患者の血液の決定された酸素飽和度とに少なくとも部分的に基づいて、患者の気体交換障害の変化の原因を決定することとを行うように機械可読命令により構成される、システムに関する。
【0007】
[07] 1つ又は複数の態様は、換気治療デバイスを使用して患者に換気治療を提供するステップと、換気治療デバイスを使用して患者に提供される一回呼吸量と気体流量と印加される圧力とを決定するステップと、患者の血液の酸素飽和度を決定することと、窒素洗い出し検査を実施するように換気治療デバイスを制御、窒素洗い出し検査の結果と患者の血液の決定された酸素飽和度とに基づいて、患者の気体交換障害の変化を決定するステップと、窒素洗い出し検査の結果と患者の血液の決定された酸素飽和度とに少なくとも部分的に基づいて、患者の気体交換障害の変化の原因を決定するステップとを有する、患者の肺疾患を監視する方法に関する。
【0008】
[08] 本開示のこれらの、及び他の目的、特徴、及び特性、並びに、動作の方法、構造物の関連する要素及びパーツの組み合わせの機能、及び、製造の経済性は、添付図面を参照した以下の説明及び添付の特許請求の範囲の検討により更に明らかとなり、添付図面の全てが本明細書の一部を構成し、様々な図内において同様の参照符号は対応する部分を指す。しかし、図面が例示及び説明のみを目的としており、本開示の限定の定義であることを意図したものではないことが明示的に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[09] 1つ又は複数の実施形態による、気体交換障害を監視するように構成されたシステムの概略図である。
図2】[10] COPD患者の呼吸ボリューム及び酸素の可用性の損失の源を示す呼吸器系のモデルの図である。
図3】[11] 無駄な灌流、無駄な換気、及び通常の交換の例を示す呼吸器系の簡略化されたモデルの図である。
図4】[12] シャント様効果をもたらす不十分に換気された肺胞の概略図である。
図5】[13] 複数回の呼吸窒素洗い出し検査中に低下していく窒素飽和度を示す図である。
図6】[14] シミュレーションによる複数回の呼吸窒素洗い出し検査中に適切に換気された肺胞、不十分に換気された肺胞、及び組み合わせにおいて低下していく窒素飽和度を示す図である。
図7】[15] GOLDステージ分類系におけるCOPD重症度に対する肺クリアランスインデックスをプロットした図である。
図8】[16] 異なるGOLDステージにおける患者に対する窒素洗い流しに対する理論的な反応を示す図である。
図9】[17] 実施形態によるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[18] 本明細書において使用されるとき、単数形に対応した表現は、コンテキスト上、他の意味に明示的に規定される場合を除いて複数形による言及を含む。本明細書において使用されるとき、「又は」という用語は、文脈上、他の意味に明示的に規定される場合を除いて「及び/又は」を意味する。本明細書において使用されるとき、2つ以上のパーツ又はコンポーネントが「結合された」という記述は、連結した状態となる限り、直接的に、又は間接的に、すなわち、1つ又は複数の中間パーツ又はコンポーネントを介して、パーツが一緒になって連結されている、又は動作することを意味することとする。本明細書において使用されるとき、「直接結合された」とは、2つの要素が互いに直接接触することを意味する。本明細書において使用されるとき、「固定して結合された」又は「固定された」とは、2つのコンポーネントが互いに対する一定の配向を維持しながら一体となって動くように結合されていることを意味する。
【0011】
[19] 本明細書において使用されるとき、「単体の」という用語は、コンポーネントが単一の部品又はユニットとして生成されることを意味する。すなわち、別々に生成された後にユニットとして一緒に結合された部品を含むコンポーネントは、「単体の」コンポーネント又はボディではない。本明細書で使用されている場合、2つ以上のパーツ又はコンポーネントが互いに「係合」するという記述は、パーツが互いに対して直接的に、又は1つ又は複数の中間パーツ又はコンポーネントを通して力を加えることを意味することとする。本明細書で使用されている場合、「数」という用語は、1又は1より大きい整数(すなわち、複数)を意味することとする。
【0012】
[20] 例えば限定されないが、上部、底部、左、右、上側、下側、前、後、及び、その派生語などの、本明細書で使用されている方向の表現は、図面に示される要素の向きに関連しており、特許請求の範囲に明示的に記載されていない限り特許請求の範囲に対する限定ではない。
【0013】
[21] COPDは、患者が気道の閉塞に起因して何らかの程度の呼吸障害を患っている疾患のグループとして最も良く理解される。障害は、換気(空気流)又は呼吸(肺と血液との間の気体の交換)を伴う。多くの場合、種々の病状が患者に存在し、最も一般的には肺気腫(肺胞に対する損傷)、及び慢性気管支炎(粘液産生、咳そう、及び呼吸困難をもたらす気管支の炎症)を含む。憎悪又は急性分断症状は両方とも、事象中に更なるケアを必要とし、より長い期間の損傷をもたらす傾向を示し、結果として、憎悪を経験した患者は、将来的に再度それらを経験する可能性がより高い。
【0014】
[22] 非侵襲性換気(気管挿管ではなくマスクを使用する換気)は基本的な処置のうちの1つであり、死亡率及びCOPD患者の再入院を減らすことに効果的であることが見出されている。在宅医療非侵襲性換気のためのデバイスは、例えばBiPAPデバイスを包含する。ある意味では技術的には非侵襲性換気デバイスではないが、本開示の目的において、CPAPも非侵襲性換気を構成すると考えられる。
【0015】
[23] 一実施形態によると、換気装置自体は、症状に対する処置を行うことだけでなく、更に疾患の進行を監視すること補助するためにも使用される。更に、一実施形態において、同じシステムが、併存疾患に関する情報を提供するために、及び、様々な併存疾患を互いに区別するために使用されてもよい。
【0016】
[24] 図1は、COPD患者の気体交換を監視するように、及び特に、在宅ヘルスケア環境、又は他のより低いレベルのケアにおいて患者を監視するように構成されたシステム10の概略図である。例えば、システム10は、住居用の独立した生活施設、介護付き生活施設、及び/又は療養施設に適用可能である。
【0017】
[25] 幾つかの実施形態において、システム10は、プロセッサ12、電子ストレージ14、外部デバイス16、ユーザーインターフェース20を含むコンピューティングデバイス18、又は他のコンポーネントを備える。外部デバイス16は、例えば、患者の様々な健康状態に関するデータを取得する病院機器である。
【0018】
[26] 電子ストレージ14は、情報(例えば、個々の患者に関連した健康情報、人口統計学的情報、社会情報)を電子的に記憶する電子記憶媒体を備える。電子ストレージ14の電子記憶媒体は、システム10と一体的に(すなわち実質的に取り外し可能でない形態で)提供されたシステムストレージ、及び/又は、例えばポート(例えばUSBポート、FireWireポートなど)又はドライブ(例えばディスクドライブなど)を介してシステム10に対して取り外し可能に接続可能な取り外し可能ストレージの一方又は両方を包含する。電子ストレージ14は、(全体的に、又は部分的に)システム10内の独立したコンポーネントであり、又は、電子ストレージ14は、(全体的に、又は部分的に)システム10の1つ又は複数の他のコンポーネント(例えばコンピューティングデバイス18など)と一体的に提供される。幾つかの実施形態において、電子ストレージ14は、ケア提供位置から離れたサーバーにおいて、プロセッサ12と一緒にサーバーに位置する。電子ストレージ14は、光可読記憶媒体(例えば光ディスクなど)、磁気可読記憶媒体(例えば磁気テープ、磁気ハードドライブ、フロッピードライブなど)、電荷ベース記憶媒体(例えばEPROM、RAMなど)、ソリッドステート記憶媒体(例えばフラッシュドライブなど)、及び/又は他の電子可読記憶媒体のうちの1つ又は複数を備えてもよい。電子ストレージ14は、ソフトウェアアルゴリズム、プロセッサ12により決定された情報、プロセッサ12及び/又はグラフィカルユーザーインターフェース20及び/又は他の外部コンピューティングシステムを介して受信された情報、外部デバイス16から受信された情報、及び/又は、本明細書において説明されているようにシステム10が機能することを可能にする他の情報を記憶する。
【0019】
[27] 外部デバイス16は、情報源及び/又は他のリソースを含む。例えば、外部デバイス16は、酸素及び換気治療デバイス、脈波型酸素飽和度計、活動監視器、睡眠監視器などを包含する監視デバイスを含む。幾つかの実施形態において、外部デバイス16は、例えばネットワーク(例えばインターネット)、電子ストレージ、Wi-Fi技術に関連した機器、Bluetooth(登録商標)技術に関連した機器、データ入力デバイス、センサー、スキャナ、及び/又は他のリソースといった、情報の通信を円滑化するコンポーネントを含む。幾つかの実施形態において、本明細書において外部リソース16に帰属する機能の一部又は全てが、システム10に含まれるリソースにより提供される。
【0020】
[28] システム10のプロセッサ12、電子ストレージ14、外部デバイス16、コンピューティングデバイス18、及び/又は他のコンポーネントは、有線接続及び/又は無線接続を介して、ネットワーク(例えばローカルエリアネットワーク及び/又はインターネット)を介して、セルラー技術を介して、Wi-Fi技術を介して、及び/又は他のリソースを介して互いに通信するように構成される。これは限定することを意図したものではないこと、及び、本開示の範囲がこれらのコンポーネントが何らかの他の通信媒体を介して動作可能にリンクされる実施形態を包含することが理解される。幾つかの実施形態において、システム10のプロセッサ12、電子ストレージ14、外部デバイス16、コンピューティングデバイス18、及び/又は他のコンポーネントは、クライアント/サーバーアーキテクチャ、ピアツーピアアーキテクチャ、及び/又は他のアーキテクチャに従って互いに通信するように構成される。
【0021】
[29] 実施形態において、外部デバイス16は、例えば、固定型の、又はモバイル型の家監視機器を含む。外部デバイス16は、ユーザーの健康又は健全さに関連した、心拍数、酸素飽和度、血圧、温度、又は他の情報を監視する装着型装置又は他のユーザーデバイスを含む。
【0022】
[30] コンピューティングデバイス18は、1人又は複数人のユーザーとシステム10との間のインターフェースを提供するように構成される。幾つかの実施形態において、コンピューティングデバイス18は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、拡張現実デバイス(例えばGoogle Glass)を含むスマート装着型デバイス、手首装着型デバイス(例えばApple Watch)、及び/又は、ユーザーに関連した他のコンピューティングデバイスであり、及び/又は、これらに含まれる。幾つかの実施形態において、コンピューティングデバイス18は、ケアマネージャーに割り当てられた個人のリスト又は他の情報の提示を円滑化する。したがって、コンピューティングデバイス18はユーザーインターフェース20を備える。ユーザーインターフェース20に含めることに適したインターフェースデバイスの例は、タッチスクリーン、キーパッド、タッチ感応式ボタン又は物理的なボタン、スイッチ、キーボード、ノブ、レバー、カメラ、ディスプレイ、スピーカー、マイクロホン、インジケーターライト、可聴警報、プリンター、触覚により感知する触覚フィードバックデバイス、又は他のインターフェースデバイスを含む。本開示はコンピューティングデバイス18が取り外し可能なストレージインターフェースを含むことを更に想定している。この例において、情報は、ケア提供者又は他のユーザーがコンピューティングデバイス18の実施態様をカスタマイズすることを可能にする取り外し可能ストレージ(例えばスマートカード、フラッシュドライブ、取り外し可能なディスクなど)からコンピューティングデバイス18にロードされる。コンピューティングデバイス18又はユーザーインターフェースとともに使用するように適応された他の例示的な入力デバイス及び技術は、RS-232ポート、RFリンク、IRリンク、モデム(電話、ケーブルなど)、又は他のデバイス又は技術を含む。
【0023】
[31] プロセッサ12は、システム10の情報処理能力を提供するように構成される。したがって、プロセッサ12は、デジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、情報を処理するように設計されたデジタル回路、情報を処理するように設計されたアナログ回路、状態機械、又は情報を電子的に処理するための他の機構のうちの1つ又は複数を備える。プロセッサ12は1つのエンティティとして図1に示されているが、これは、例示のみを目的としている。幾つかの実施形態において、プロセッサ12は、複数の処理ユニットを備えてもよい。これらの処理ユニットは、同じデバイス(例えばサーバー)内に物理的に位置してもよく、又は、プロセッサ12は、連動して動作する複数のデバイス(例えば、1つ又は複数のサーバー、コンピューティングデバイス、外部リソース16、電子ストレージ14、又は他のデバイスの一部であるデバイス)の処理機能を表してもよい。
【0024】
[32] 図1に示されているように、プロセッサ12は、1つ又は複数のコンピュータプログラムコンポーネントを実行するように機械可読命令24を介して構成される。コンピュータプログラムコンポーネントは、1つ又は複数の実施形態による方法のステップを実施するためのもの又はコンポーネントを備える。プロセッサ12は、ソフトウェアにより、ハードウェアにより、ファームウェアにより、ソフトウェア、ハードウェア、又はファームウェアの何らかの組み合わせにより、又は、プロセッサ12の処理能力を構成するための他のメカニズムによりコンポーネントを実行するように構成される。
【0025】
[33] コンポーネントが1つの処理ユニット内に一緒に配置されているものとして図1に示されているが、プロセッサ12が複数の処理ユニットを備える実施形態では、1つ又は複数のコンポーネントが、他方のコンポーネントから離れて位置してもよいことが理解されなければならない。コンポーネントのうちの任意のものが説明されているものより多い、又は少ない機能を提供してもよいので、以下で説明される異なるコンポーネントにより提供される機能の説明は例示を目的としており、限定することを意図したものではない。例えば、コンポーネントのうちの1つ又は複数が取り除かれてもよく、その機能の一部又は全てが他のコンポーネントにより提供されてもよい。別の例として、プロセッサ12は、以下でコンポーネントのうちの1つに帰属する機能の一部又は全てを実施する1つ又は複数の更なるコンポーネントを実行するように構成されてもよい。
【0026】
[34] システムは、血中酸素及び/又は換気データを入力として受け取るようにプログラムされ、モデルを使用して、生理学的死腔及び肺シャント情報を決定する。結果として得られる情報は、アクションのためにケースマネージャー、臨床医、又は他のケア提供者に報告される。一実施形態において、値は定期的に収集され、及びケア提供者にトレンドとして報告される。
【0027】
[35] 一実施形態において、システム10は、例えば耳又は指装着型脈波型酸素飽和度計を使用して脈波型酸素飽和度測定によりデサチュレーションを検出する。次に、以下で更に詳細に説明されるアルゴリズムに従って、可能性のある診断結果を提供するために症状の分類を行う。すなわち、COPD進行を監視することに加えて、一実施形態において、システムは、障害の基礎となる源を区別するために、及び共存性の病理を検出するために診断情報を更に提供する。
【0028】
[36] 例えば、適切なアクションは、治療又は処置を変更することを含み得る。換気治療は、例えば、生理学的死腔又は肺シャントの影響を小さくするように調節され得る。
【0029】
[37] 図2は、肺気体交換工程の呼吸30及び心臓血管40側に関連した実施形態によるモデルの例を示す。呼吸デバイス32は、呼吸デバイス32から患者により受け取られる換気(入る及び出る空気のボリューム)に関連したデータを提供する。一例として、このデバイスは、換気量を測定するように構成された、例えばCPAP、Bi-PAP、酸素濃縮器、又は他の呼吸補助デバイスといった呼吸治療デバイスである。
【0030】
[38] 図2に示されているように、総換気量はまず、解剖学的死腔に起因した減少により修正される。解剖学的死腔は、呼吸のボリュームのうちの肺までの経路の部分として規定されるが、気体交換において役割を果たさない。すなわち、これは、鼻(及び/又は口)、気管、及び気管支のボリュームである。第2の部分は、生理学的死腔36に起因した損失である。これは、COPD患者では、肺胞死腔、又は、血液と気体を効果的に交換しない肺の部分である。生理学的死腔の幾つかの定義は解剖学的死腔を含むことに留意されたい。患者の解剖学的死腔は実質的に一定であるので、患者において測定される経時的な変化量は、概して肺胞死腔変化に関連する。より広い定義が使用される限りにおいて、これは単に、総モデル定量化死腔に対する固定のオフセットを表す。
【0031】
[39] 肺気腫の場合、生理学的死腔が肺胞の血液と空気との間の毛細血管インターフェースにおける実質組織及び細胞構造の破壊によりもたらされ得る。結果として、肺構造物は損傷した組織を避けるように変化し、このことが、肺の幾つかの領域が換気されるが適切に灌流されないことをもたらし得る。これらの領域に到達する空気は効果的に交換されず、換気量のうちの一部が失われる。
【0032】
[40] 肺気腫は、肺線維症又は肺組織の傷跡と共存性でもある。この組み合わせは、肺気腫合併肺線維症(CPFE)として知られる。この症状は、一実施形態において換気圧が変えられたときの一回呼吸量の変化を分析することによりコンプライアンス又はエラスタンスを測定するために機械的換気を使用して決定され得る肺弾性の低下により診断され得る。
【0033】
[41] 呼吸ボリュームの残部は、有効な肺胞38に取り込まれた部分である。それは、ボリュームのうちの気体交換に関与するこの部分である。それは、モデルにおいてボリュームV(1-ph)により表される。それは、解剖学的死腔に対して調節されたボリュームに、1から生理学的死腔に起因した損失割合を引いたものを乗算したものである。
【0034】
[42] 有効な肺胞38は、有効な毛細管46との間で酸素(VO2)を二酸化炭素(VCO2)と交換する。COPD患者では、幾らかの肺の有効性が失われて肺シャントをもたらす。肺シャントは、肺胞が毛細血管により血液を適切に供給されるが、肺胞が適切な空気供給を受け取らない状態である。これは、図において、肺シャント部分48が有効な肺胞と気体交換連通しないことを示すことにより表される。
【0035】
[43] 慢性気管支炎では、例えば、幾つかの小さい気道が炎症、粘液、崩壊、損傷した繊毛が分泌物を除去できないこと、又はこれらの要因の組み合わせにより遮断される。結果として、肺胞の毛細血管床が灌流されるが、適切に換気されない。無駄な灌流は、気体交換効率を下げる。
【0036】
[44] 一実施形態において、肺高血圧効果も考慮される。肺高血圧では、肺動脈におけるストレスが、脈管経路に対する変化によりもたらされる。更に、低酸素血症及び炎症の結果としての脈管収縮が多くの場合に存在し、より高い肺抵抗、より高い肺動脈圧、及び場合によっては心不全をもたらす。
【0037】
[45] 図に示されるように、モデルは、肺動脈の血流Qpa、及び、酸素の静脈内濃度50(CvO2)及び二酸化炭素の静脈内濃度50(CvCO2)を考慮している。同様に、出力側の酸素の動脈内濃度52(CaO2)及び二酸化炭素の動脈内濃度52(CaCO2)が考慮される。
【0038】
[46] SPO2及び呼吸量を監視することにより、結果として、どの生理学的死腔割合36及びシャント割合48が決定されるかを決定することが可能である。
【0039】
[47] 肺塞栓症は、また、動脈低酸素血症の結果として存在する。肺塞栓症では、肺動脈が閉塞されて、死腔及び不十分な灌流をもたらす。灌流の低減を伴う他の症状において見られるように、幾らかの換気量が無駄になり、気体交換が損なわれる。
【0040】
[48] ARDS(急性呼吸窮迫症候群)では、肺の広範囲の炎症の急速な発症が存在し、これが膜の透過性を高め、流体が肺胞に入ることを可能にする。これは、不十分な灌流をもたらし、永続的な動脈低酸素血症をもたらし得る。
【0041】
[49] 低酸素血症は、レム睡眠中の低換気に起因して睡眠中に一過的に発生する。一過性低酸素血症の別の考えられる要因は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である。COPD患者の最大40%がOSAの症状を示し、非常に短い無呼吸期間を伴う場合でも最大10%の酸素飽和度の低下をもたらす。システムは、デサチュレーションが発生し、及び消失するときに一過性低酸素血症を検出し、次に、換気装置データの履歴をレビューして、一過性低酸素血症事象(THE)が無呼吸に起因した、又は、粘液の蓄積又は場合によっては指におけるプローブの緩い装着を含み得る何らかの非決定の理由に起因した呼吸低下の結果であるか否かを判定する。
【0042】
[50] 図3は、実施形態による換気及び呼吸のモデルを概略的に示す。図において、肺/動脈系の異なる部分を表す3つの領域60、62、64が存在する。各領域は、異なる効率において動作する系の部分を広く表す。例を目的として、それらは極値となるように選択される。実際の肺では、概して変動及びグラデーションが存在する。
【0043】
[51] 図3は、肺胞に到達する空気(肺胞換気量、又は換気量、V)と毛細血管を介して肺胞に到達する血液(灌流、Q)との間のマッチングの効率及び適切さを評価するために典型的に使用される比である換気/灌流比(V/Q)を示す。領域60では、比はゼロであり、換気が存在しないことを示し、結果として、良い灌流にもかかわらず灌流が無駄になる。これは、シャントによる影響を受ける肺の部分を表す。領域62は、適切に灌流される、及び適切に換気される領域であり、したがって比が1であり、良い気体交換を示す。これは、肺系統の健康な部分を表す。最後に、領域64は、適切に換気されるが不十分に灌流される領域であり、無限大の比をもたらし、例えば肺気腫による影響を受ける肺の部分であり得る。
【0044】
[52] 上述のように、シャントは、気体交換に関与せずに右心から左心に通る脱酸素化された混合静脈血の部分であり、すなわちシャントは無駄な灌流をもたらす(V/Q=0)。その最も一般的な定義におけるシャントは、2つの主な成分、すなわち、1)肺胞を完全にバイパスする、及び、気管支、胸膜、及びテベジウス静脈に起因した通常シャント(典型的には心拍出量の約1~2%)と、肺胞流体貯留、硬化、及び崩壊によりもたらされる異常シャントとを含む、解剖学的シャント(絶対的な、又は真のシャント)、及び、2)換気灌流不整合、すなわち100%未満のヘモグロビン飽和度をもたらす換気より多い灌流を伴うシャント様効果を含む。
【0045】
[53] シャントを測定するために、動脈及び混合静脈血サンプルが多かれ少なかれ同時に取得されることを確実なものとすることが有用である。この場合において、同時とは、同じ呼吸サイクル内における(すなわち同じ呼吸中における)測定と考えられ得る。血液サンプルは、酸素の分圧(PO2)及び酸素飽和度(SO2)を測定するために分析される。代替的に、POは、PO2電極を使用して測定される。動脈の酸素濃度(CAO2)及び混合静脈血の酸素濃度(CVO2)が、次に、測定PO2及びSO2から演算され得る。シャント割合が、次に、式(1)に従って計算され得る。
【0046】
[54]
【数1】
ここで、Qは総血流(心拍出量)であり、Qはシャントを通る血流であり、Cc’Oは、肺胞PO2及び酸素解離曲線から通常計算される終末毛細血管血液のO濃度である。この方法及び他の方法は、典型的には、患者から血液を引き出すことを必要とし、更には概して高価な気体分析器の使用を必要とする。
【0047】
[55] 上述のように、死腔は、吸入されるが気体交換に関与しない空気のボリュームに関連しており、すなわち、死腔は無駄な換気(V/A=∞)領域64をもたらす。総死腔(生理学的)は、送達する気道に留まる空気のボリューム(解剖学的死腔)、及び、灌流されない、又は不十分に灌流されるそれらの肺胞に到達する空気のボリューム(肺胞死腔又は死腔様効果)を含む。死腔の演算は、式(2)に従って吐き出された気体の質量バランスを使用することにより行われる。
【0048】
[56]
【数2】
ここで、Vは死腔ボリュームであり、Vは一回呼吸量であり、PaCO2は動脈血の二酸化炭素(CO)の分圧であり、PeCOは吐き出された空気のCOの分圧である。
【0049】
[57] PeCOが混合された吐き出されたCOにより置換される場合、上述の式(2)は、生理学的死腔を与えるのに対し、PeCOが呼気終期COにより配置される場合、それは肺胞死腔を生成する。
【0050】
[58] 必要な測定を実施するために、システム10は外部リソース16を含む。これらは、実施形態において、換気治療のための治療デバイス、脈波型酸素飽和度計、CO監視デバイス、例えば経皮CO監視器、活動監視器、及び睡眠監視器のうちの1つ又は複数を含む。実施形態において、各タイプのデバイスのうちの1つが存在し、又は、デバイスの何らかの組み合わせが存在する。外部リソース16は、無線により、又は有線接続によりシステム10に接続される。外部リソース16からのデータはプロセッサ12への入力として提供され、結果として、データは、機械可読及び実行可能命令24に従って処理され得る。
【0051】
[59] 一実施形態において、アルゴリズムは、一次入力として酸素、二酸化炭素、及び/又は換気データを使用し、更に、生命兆候、活動、及び睡眠データを使用し、脈波型酸素飽和度測定及びCO測定に更に影響を与える交絡した要因に対して制御する。システムはデータを収集し、後述のように(ローカル的に、又はリモート的に)データを分析する。
【0052】
[60] 以下の値のうちの1つ又は複数を含む外部リソース16を使用して種々の測定が行われ得る。
【0053】
[61] SpOは、末梢毛細血管酸素飽和度、すなわち血液中の酸素量の推定値である。より詳細には、SpOは、血液中の総ヘモグロビン量(酸素化ヘモグロビン及び非酸素化ヘモグロビン)と比べたときの酸素化ヘモグロビン(酸素を含有したヘモグロビン)のパーセンテージである。これは、例えば、耳又は指装着型脈波型酸素飽和度計を使用して測定される。
【0054】
[62] SpO応答は、純酸素治療の開始後の(脈波型酸素飽和度計により読み取られた)酸素飽和度の変化レートを特性付ける測定結果である。これは、純酸素が呼吸器系から窒素を洗い流す洗い流し治療として知られる(洗い流し=100%FiO-吸入される酸素の割合)。SpOは以下の手法により表され得る。
【0055】
[63] 時間応答:SpOが100%FiOの開始後に最終値の90%に達するために必要な時間。
【0056】
[64] 時定数:SpOが100%FiOの開始後に最終値の63%に達するために必要な時間。
【0057】
[65] 呼吸応答:SpOが100%FiOの開始後に最終値の90%に達するために必要な呼吸数。
【0058】
[66] ボリューム応答:SpOが100%FiOの開始後に最終値の90%に達するために必要な総換気量(一回呼吸量*n呼吸)。
【0059】
[67] EtCOは、各呼吸サイクルの終了時における二酸化炭素の分圧(呼気終期CO)であり、それは、典型的には波形カプノグラフィを介して評価される。EtCOは、肺胞COレベルの近い近似であると考えられる。
【0060】
[68] tcpCOは、一実施形態において、動脈CO分圧の連続的な間接的推定結果を提供することができる皮膚のCO分圧の測定結果である。
【0061】
[69] FiOは、吸気における酸素の割合である。周辺空気は21%に等しいFiOを伴うが、機械的に換気される患者は、最大100%の酸素レベルを投与され得る。この点について、換気装置はブレンダー、すなわち、選択された割合の吸入される酸素を提供するために純粋な酸素を空気と混合することができるデバイスを含む。
【0062】
[70] 実施形態による方法の適用時に有用である他の因子は、抵抗(Rrs)及びエラスタンス(Ers)を含む呼吸器系の機械的性質の推定結果を含む。このような測定は、例えば、呼吸補助における圧力が変化するときに一回呼吸量の変化を測定することにより行われる。関心のある更なる事象は、10秒以上の睡眠時無呼吸事象(無呼吸)、10秒以上にわたる吸気流量の90%以上の低減、異常な呼吸又は浅い呼吸、吸気流量が10秒以上にわたって30%より多いが90%未満分低下したか否か、(例えば3%以上の)酸素飽和度の低下、及び、チェーン・ストークス呼吸(短い無呼吸の後に速く深い呼吸が続くパターン)を含む。
【0063】
[71] チェーン・ストークス呼吸事象を検出するために、限定されないが、状態機械、ウェーブレットにより計算された周波数情報、呼吸流量及び酸素飽和度測定データのエポックに関する機械学習分類器を含む種々の利用可能な方法が存在する。CSRの有用な定義は、少なくとも1回の10秒以上の無呼吸の後に過換気の期間、及び30秒~120秒の総サイクル期間が存在する呼吸パターンである。
【0064】
[72] COPDの進行は、V/Q<<1を伴う不十分に換気された肺胞の数の増加により特徴付けられる。これは、灌流が適切であるが換気量が不十分なシャント様効果をもたらす。これは図4に概略的に示されている。
【0065】
[73] 適切に換気された肺胞ユニット80は、肺動脈82からの血液と気体を交換し、酸素化Cc’Oを伴う酸素化血液を肺静脈84に渡すのに対し、不十分に換気された肺胞ユニット86は、シャント様効果に起因してそれほど多くの酸素を受け取らない。例示を目的として、解剖学的シャント88が更に示されている。
【0066】
[74] 不十分に換気された肺胞に対して、上述のような洗い流し治療は、比較的長い測定される時間応答を必要とする。これは、窒素(N)が不十分に換気される肺胞から洗い流されるためにより長い時間がかかるからである。通常の空気では、Nは、約21%のFiOを伴う周辺空気の79%を占める。肺胞酸素濃度が100%に達したとき、それは、空気が洗い流すOにより完全に置換させられたと表現され得る。
【0067】
[75] 複数呼吸窒素洗い出し(MBNW)検査は、窒素を肺から洗い出すために必要な時間を定量化するための検査である。MBNW検査は、100%FiOを投与すること、及び、吐き出された空気のN濃度を測定することにより実施される。図4及び図5は、MBNW検査によるシミュレーションデータの例を示す。図4は概して、MBNW検査中における一連の呼吸にわたるN濃度の漸減を示す。一方で、図5は、検査中にNが洗い流されるために必要な呼吸数を示し、特に、不十分に換気された肺胞ユニットと適切に換気された肺胞ユニットとの間の差を示す。図5は、対数目盛りにプロットされた、適切に換気された肺胞(正方形)と不十分に換気された肺胞(三角形)との間の低下速度を比較している。円は、適切に換気された肺胞と不十分に換気された肺胞との両方を含む組み合わされた系に対する全体的な低下速度を表している。
【0068】
[76] したがって、悪化するCOPD症状の結果としての、より多くの不十分に換気された肺胞ユニット、及び、対応する進行性の気体交換障害は、より遅い窒素洗い出しをもたらす傾向を示すこととなる。すなわち、MBNW検査では、100%までのFiOの段階的な増加に応答して、窒素のより遅い減少、及び、肺胞酸素濃度の増加における対応する遅い増加が見られることとなる。この特徴的により遅い応答は、COPDの異なるGOLDステージにいる2人の患者に対する図8において確認され得る(GOLDステージ2であり3ではないことに注意しなければならない)。図7において、肺クリアランスインデックス(LCIN2)は、患者のGOLDステージ(1、2、3)に従った異なるグループのCOPD患者に関連している。見てわかるように、より高いGOLDステージは、より高いLCIN2(すなわち、除去するためのより長い期間)に関連している。
【0069】
[77] 一定の解剖学的シャントを伴う患者に対して、FiOの変化に起因した肺胞酸素濃度の任意の変化が、動脈に伝達されなければならない。動脈酸素含有量は、動脈酸素飽和度レベル(SaO)を介して定量化される。例えば指装着型デバイスを使用して測定されるSpOは、SaOの代用である。したがって、悪化するCOPD症状に起因して、気体交換障害(より多くの不十分に換気された肺胞及びより遅い窒素洗い出し)が存在する場合、FiOが100%まで上げられた後のSpOの時間応答は、より長くなる(SpOはその最終値により遅いペースで到達する)と想定することが合理的である。図8は、2つの異なるCOPD GOLDステージの100%FiOチャレンジに対する想定される応答のサンプル比較例を示す。
【0070】
[78] 一実施形態において、システムは決定木に従って進行し、決定木により検出された障害の分類が決定される。上述のように、障害は、無駄な換気(死腔)又は無駄な灌流(シャント)の一方又は両方にリンクされる。図9は、機械的換気補助の処方がCOPD症状に起因していると仮定して、異なる疾患エピソード間で弁別するための1つの可能な決定木を示す。図9は、各検査の結果に基づく分岐判断を示し、及び、次のレベルの障害の源の識別に進むために、どの可能な更なる検査が使用されるかを示す。決定木は、以下のように読むことができる。
【0071】
[79] ベースライン状態を評価するために、換気装置は、1)呼吸器系抵抗(Rrs)及びエラスタンス(Ers)を推定し、及び、2)100%FiOチャレンジに対するSpO応答を測定する。換気装置は、次にRrs値とErs値とを連続的に監視する。このような連続監視機能を含む換気装置は、例えば、Philips Healthcareから入手可能なTrinity換気装置を包含する。
【0072】
[80] 一実施形態において、システムは、換気データ(例えば一回呼吸量、患者流量、印加気道内圧及び呼吸量)に加えて生命兆候(例えば心拍数)、活動、及び睡眠データを使用して、気体交換、ひいては脈波型酸素飽和度測定及びCO測定に影響を与える交絡した要因(例えば運動及びより高い代謝需要)に対して制御する。
【0073】
[81] 圧力が換気装置により印加されたときに流量変化に対するより大きい抵抗を検出することによりRrsの増加が検出された場合、換気装置は、呼気流量制限(EFL)の存在を評価するために検査を始動する。このような検査は、流量ボリュームループ、過膨脹のインジケーターとしての(終末呼気陽圧)の内因性PEEP(PEEP)の推定結果を含み得るが、これらに限定されない。又は、システムは、PEEP処置を施すことによりEFLが存在することを暗示し、及び、EFLがPEEPにより無効にされることを観測する。又は機械は、PEEP滴定と100%FiOチャレンジとの組み合わせを施す。PEEPは、EFLの影響を軽減するように機能し、したがって、これは、100%FiOチャレンジと組み合わされて適用される場合、100%FiOチャレンジに対して改善されたSpO応答をもたらさなければならない。すなわち、改善された(すなわち、より高速な)SpO応答がこの検査中に観測された場合、EFLが、観測された障害の原因として決定される。
【0074】
[82] EFLが検出された場合、Rrsの増加は、悪化するCOPD症状、例えば潜在的な憎悪エピソード又は気管支けいれんに起因する。換気装置は、前述のようにCOPDにおける気体交換の潜在的な進行性の障害の一部としてシャント様効果を定量化するために、(PEEP増加を伴わない)100%FiOチャレンジを更に使用する。
【0075】
[83] EFLが検出されない場合、Rrsの増加は例えば分泌物貯留といった症状を伴わない閉塞に帰属する。
【0076】
[84] ベースラインに比べて抵抗の大幅な増加が観測されないが、Ersの増加が検出された場合、機械は、ARDS型又は肺線維症として悪化する症状を分類するためにPEEP滴定及び100%FiOチャレンジコンボ検査を実施する。PEEPはARDS患者の気体交換を改善する傾向を示すので、100%FiOチャレンジに対するSpO応答の改善が観測されなければならない。また一方では、肺線維症は、PEEP適用後に改善された気体交換を示すことが想定されず、したがって、この検査は、それらの2つの症状を区別する。
【0077】
[85] Rrs又はErsの変化が検出されない場合、換気装置は、以下の兆候、すなわち、過換気、無駄な換気(死腔)の増加の代用としての増加したEtCO-tcpPCO差、及び/又は、100%FiOに対するSpOの最終値の変化のうちの1つ又は複数を確認する。これらの兆候の組み合わせが観測された場合、検査は、肺塞栓症が基礎となる原因であることを決定する。
【0078】
[86] 理解されるように、図9の決定木は、2分木又は決定論的木とは限らない。ファジー分類器が使用されてもよく、又は、確率論的決定は、各ノード、又は全てではないが幾つかのノードにおいて行われる。経時的に定量的なデータが収集され、例えば、専門家の臨床診断又は臨床現場において行われる補助的測定により監督されるブースティング及びバギング技術を伴うランダムフォレストを含む機械学習技術が適用される。
【0079】
[87] 一実施形態において、決定木に沿った経路は、最高の有意性及び/又は最高の信頼性をもつパラメータに基づいて決定される。
【0080】
[88] ここまでの説明は、現時点で最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものに基づいて例示を目的として詳細を提供しているが、このような詳細がそれだけを目的としていること、及び、本開示が明示的に開示されている実施形態に限定されず、むしろ、添付の請求項の趣旨及び範囲に入る変形例及び均等な構成を包含することを意図したものであることが理解される。例えば、本開示は可能な範囲において、任意の実施形態の1つ又は複数の特徴が任意の他の実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わされ得ることを想定していることが理解される。
【0081】
[89] 特許請求の範囲において、括弧内に記載されたいずれの参照符号も、請求項を限定すると解釈されてはならない。「備える」、「含む」、「有する」、又は「もつ」という表現は、請求項に列挙されている要素及びステップ以外の要素及びステップの存在を否定するわけではない。幾つかの手段を列挙したデバイスの請求項において、これらの手段のうちの幾つかが同じ1つのハードウェア物品により具現化されてもよい。単数形の表現は、複数のこのような要素の存在を否定するわけではない。幾つかの手段を列挙した任意のデバイスの請求項において、これらの手段のうちの幾つかが同じ1つのハードウェア物品により具現化されてもよい。単に決定の要素が相互に異なる従属請求項に記載されているということが、これらの要素が組み合わせて使用されることができないことを示すわけではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】