(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】リチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物、及びこれによって製造されたリチウム‐硫黄電池の正極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240705BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240705BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240705BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2022577377
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2021016822
(87)【国際公開番号】W WO2022114650
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2020-0162995
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チュンヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウンホ・ジュン
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0036177(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0087977(KR,A)
【文献】特表2017-506800(JP,A)
【文献】ADVANCED ENERGY MATERIALS,2015年08月,Vol.5,1500878,1/8-8/8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/13
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー、増粘剤及びアラビアガムを含
み、
前記バインダーはバインダー組成物の総重量を基準にして40重量%ないし60重量%がバインダー組成物に含まれ、
前記増粘剤はバインダー組成物の総重量を基準にして20重量%ないし35重量%がバインダー組成物に含まれ、
前記アラビアガムはバインダー組成物の総重量を基準にして10重量%ないし30重量%がバインダー組成物に含まれ、
前記アラビアガムは前記増粘剤100重量部に対して30重量部ないし100重量部がバインダー組成物に含まれることを特徴とする、リチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物。
【請求項2】
前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリスチレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化‐EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、この組み合わせ及びこの共重合体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物。
【請求項3】
前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースガム及びこの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物。
【請求項4】
前記増粘剤はリチウム化された形態であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物。
【請求項5】
前記バインダーはバインダー組成物の総重量を基準にして4
5重量%ないし60重量%がバインダー組成物に含まれることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物。
【請求項6】
前記増粘剤はバインダー組成物の総重量を基準にして2
5重量%ないし35重量%がバインダー組成物に含まれることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物。
【請求項7】
前記アラビアガムはバインダー組成物の総重量を基準にして1
5重量%ないし30重量%がバインダー組成物に含まれることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物。
【請求項8】
前記アラビアガムは増粘剤100重量部に対して
45重量部ないし
85重量部がバインダー組成物に含まれることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のバインダー組成物、正極活物質及び導電材を含む正極製造用スラリーを正極集電体上に塗布して形成された、リチウム‐硫黄電池用正極。
【請求項10】
前記バインダー組成物は、正極製造用スラリー内の固形分100重量部に対して0.01重量部ないし10重量部が正極製造用スラリーに含まれることを特徴とする、請求項9に記載のリチウム‐硫黄電池用正極。
【請求項11】
前記正極活物質は正極製造用スラリー内の固形分100重量部に対して80重量部ないし99重量部が正極製造用スラリーに含まれることを特徴とする、請求項9又は10に記載のリチウム‐硫黄電池用正極。
【請求項12】
前記導電材は正極製造用スラリー内の固形分100重量部に対して0.1重量部ないし15重量部が正極製造用スラリーに含まれることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用正極。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の正極、負極、分離膜及び電解質を含むリチウム‐硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物、及びこれによって製造されたリチウム‐硫黄電池の正極に関する。
【0002】
本出願は2020年11月27日付韓国特許出願第10‐2020‐0162995号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として組み込む。
【背景技術】
【0003】
環境にやさしい電気自動車及びハイブリッド自動車の開発の必要性と、スマートIT機器の急速な発展によって高容量、高出力電池に対する要求が急増している。現在、常用化されたリチウムイオン電池は技術的問題によって制限されたエネルギー密度のみ利用されているため、より高いエネルギー密度を持つリチウム硫黄電池、リチウムセレニウム電池またはリチウム空気電池に対する開発が注目されている。この中でもリチウム硫黄電池及びリチウム空気電池での正極活物質である硫黄及び酸素は類似な物理化学的特性を持ち、豊かな資源埋蔵量によって商用化に対する期待をもっと高めている。
【0004】
高い還元力と電圧特性、そして高い可逆性を持つリチウム金属を負極で使用し、空気または硫黄を正極で使用するリチウム空気電池またはリチウム硫黄電池は、反応生成物であるLi2O2、LiOH、そしてLi2Sに貯蔵された重量当たり、体積当たりリチウムイオン量がリチウムイオン電池の正極で使用されるLiCoO2よりはるかに高く、また、リチウム金属を負極で使用することで最大Li貯蔵の限界がLiC6である黒鉛系負極を使用するリチウムイオン電池に比べて、もっと多い電荷を貯蔵することができるので、理論的エネルギー密度がリチウムイオン電池よりもずっと高い理論的エネルギー密度を示すことができる。しかし、このような高い理論的エネルギー密度にもかかわらず、実際エネルギー密度は理論値の20ないし45%水準と低いため、リチウム‐空気電池とリチウム‐硫黄電池はまだ商業化に至ることができず、開発初期段階にある。
【0005】
具体的に、リチウム空気電池の場合、充電時に生成されたLi2O2とLi2Oが LiイオンとO2に分解されるためには高い過電圧が必要であり、リチウムイオン電池とは違って、外部の空気が出入りすることができる開放型構造を取るので、外部空気の不純物(水分及び二酸化炭素など)の流入によって副反応及び電解質の揮発が起きやすく、その結果、性能が急激に低下される。
【0006】
また、リチウム‐硫黄電池の場合、正極をなしている硫黄と反応最終生成物であるLi2Sは電気的に不導体の性格を持っている。これによって、リチウム‐硫黄電池では、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(tetraethylenglycol dimethylether、TEGDME)系列の誘電率が強い電解質を使用するようになるが、これによって溶解性ポリスルフィドが正極から負極に移動しながらもっと低い単量体のポリスルフィドに還元され、これが正極に行って、また負極に戻ってくるシャトル(shuttle)メカニズムが発生するようになる。その結果、この不溶性Li2SとLi2S2が負極表面とそれ以外の分離膜界面に蓄積されることができる。また、正極では反応中間生成物であるリチウムポリスルフィド(Li2S8)が有機電解液に対する溶解度が高く、放電反応中に持続的にとけて出て正極素材の量が減少し、これによってサイクルによる急激な容量低下が発生するようになる。また、硫黄自体では電気伝導度が非常に低いので、伝導性カーボンまたは高分子などと一緒に使用されているが、この場合、硫黄含量の減少によってセルの全体エネルギー密度が低下される。
【0007】
このような問題を解決するために多孔性正極構造の設計、過電圧防止のための添加剤開発または表面処理層形成などの多様な方法が研究開発されている。この中でも正極開発の観点で、リチウム‐空気電池の場合、放電生成物であるLi2O2が緻密な伝導性マトリックス内部に集まることなく、均一に分散、分布させることで、円滑な電子伝達とともに充電時にリチウムイオンと酸素発生の反応率を極大化し、充電過電圧を下げる方法が検討されている。また、リチウム‐硫黄電池の場合、構造的/組成的に最適の設計を通じて、絶縁体であるLi2Sが緻密な伝導性マトリックスに均一に分散して分布されるようにすることで、電子とリチウムイオンの伝達を容易にして充電過電圧を下げると同時に、正極でのリチウムポリスルフィドの湧出を抑制する方法が検討されている。
【0008】
リチウム‐硫黄電池の正極を製造する時、スラリーの安定及び電極要素の結着のために、バインダー及び増粘剤を使用するようになるが、既存のリチウムイオン電池用バインダー及び増粘剤のみを使用するようになる場合、リチウム‐硫黄電池で発生するリチウムポリスルフィド湧出の調節を通じた反応性増加または寿命増加のような効果を期待することができない。充・放電が進められながら正極から発生するリチウムポリスルフィドの湧出を調節することができる特定官能基を持つ物質の添加を通じて反応性変化を図ることができるが、前記特定物質がスラリー内で分散されて返って流変物性が変化してコーティング及び乾燥の際に電極物性が劣化されることがある。
【0009】
ここで、本発明者は上述した問題を解決することができる、リチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物に対して持続的に研究して本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国公開特許公報第10‐2002‐0092029号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記問題点を解決するために、本願発明はリチウム‐硫黄電池の正極製造用に利用されるバインダー組成物に増粘剤とともにアラビアガムを添加することで、電池の初期放電性能とサイクル性能を改善することができるリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1側面によると、
本発明は、バインダー、増粘剤及びアラビアガムを含むリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物を提供する。
【0013】
本発明の一具体例において、前記バインダーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリスチレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化‐EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、この組み合わせ及びこの共重合体からなる群から選択される。
【0014】
本発明の一具体例において、前記増粘剤はカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースガム及びこの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
本発明の一具体例において、前記バインダーはバインダー組成物の総重量を基準にして40重量%ないし60重量%がバインダー組成物に含まれる。
【0016】
本発明の一具体例において、前記増粘剤はバインダー組成物の総重量を基準にして20重量%ないし35重量%がバインダー組成物に含まれる。
【0017】
本発明の一具体例において、前記アラビアガムは増粘剤100重量部に対して30重量部ないし100重量部がバインダー組成物に含まれる。
【0018】
本発明の第2側面によると、
本発明は上述したバインダー組成物、正極活物質及び導電材を含む正極製造用スラリーを正極集電体上に塗布して形成されたリチウム‐硫黄電池用正極を提供する。
【0019】
本発明の一具体例において、前記バインダー組成物は正極製造用スラリー内の固形分100重量部に対して0.01重量部ないし10重量部が正極製造用スラリーに含まれる。
【0020】
本発明の一具体例において、前記正極活物質は正極製造用スラリー内の固形分100重量部に対して80重量部ないし99重量部が正極製造用スラリーに含まれる。
【0021】
本発明の一具体例において、前記導電材は正極製造用スラリー内の固形分100重量部に対して0.1重量部ないし15重量部が正極製造用スラリーに含まれる。
【0022】
本発明の第3側面によると、
本発明は上述した正極、負極、分離膜及び電解質を含むリチウム‐硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物は、増粘剤とともにアラビアガムを含むことで、リチウム‐硫黄電池に適用する時、電池の初期放電性能とサイクル性能を改善することができる。
【0024】
前記バインダー組成物に含まれるバインダー、増粘剤及びアラビアガムは、3つの成分が一緒に組み合わせられ、アラビアガムの含量が増粘剤の含量を超えないように組み合わせられる時、電池の初期放電性能とサイクル性能の改善効果がより優れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例1及び比較例1によるリチウム‐硫黄二次電池を初期充・放電して比容量に対する電池電位の充・放電プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明によって提供される具体例は下記説明によっていずれも達成されることができる。下記の説明は本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解されるべきであり、本発明が必ずこれに限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0027】
本明細書に記載された物性に対し、測定条件及び方法が具体的に記載されていない場合、前記物性は該当技術分野で通常の技術者によって一般的に利用される測定条件及び方法によって測定される。
【0028】
バインダー組成物
本発明は、バインダー、増粘剤及びアラビアガムを含むリチウム‐硫黄電池の正極製造用バインダー組成物を提供する。既存のリチウム二次電池用バインダー及び増粘剤はリチウム‐硫黄電池で発生するリチウムポリスルフィドの湧出調節のような機能性を確保することはできないが、本発明によるバインダー組成物はアラビアガムをさらに使用することで、リチウム‐硫黄電池の性能改善にもっと適したバインダー組成物を提供する。
【0029】
前記バインダーは、正極の構成成分の間の接着力及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させるために使用される物質で、該当技術分野で一般的に使用されるものであれば特に限定されない。前記バインダーは正極製造用スラリー内で均一に分散されるようにエマルジョン型バインダーが使用されることができる。前記エマルジョン型バインダーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリスチレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化‐EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などを挙げることができ、これらの中で1種単独、または2種以上の混合物が使用されることができる。ここで、前記共重合体は各高分子が結合されたブロック共重合体だけでなく、各高分子の単量体が混合されて結合されたランダム共重合体を含む。例えば、本明細書ではポリエチレンとポリプロピレンの共重合体はエチレン‐プロピレン共重合体を含む概念で解釈される。
【0030】
本発明の一具体例によると、前記バインダーはバインダー組成物の総重量を基準にして40重量%ないし60重量%、好ましくは45重量%ないし60重量%、より好ましくは45重量%ないし55重量%がバインダー組成物に含まれる。前記バインダーが40重量%未満でバインダーに含まれる場合、正極の構成成分の間の接着力及び正極活物質と正極集電体との接着力が低下され、前記バインダーが60重量%超過でバインダーに含まれる場合、リチウム‐硫黄電池で増粘剤とアラビアガムの添加による性能改善効果を期待することができない。
【0031】
前記増粘剤は基本的に粘度を調節するために使われ、正極製造用スラリーの物性、さらにはリチウム‐硫黄電池物性の側面でバインダー及びアラビアガムとともに使用するに適切な物質が選択されることができる。前記増粘剤はセルロース系高分子であってもよく、前記セルロース系高分子はカルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose、CMC)、メチルセルロース(methyl cellulose、MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose、HPC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(methyl hydroxypropyl cellulose、MHPC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(ethyl hydroxyethyl cellulose、EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(methyl ethylhydroxyethyl cellulose、MEHEC)、セルロースガム(cellulose gum)及びこの組み合わせからなる群から選択されることができる。本発明の一具体例によると、前記増粘剤でカルボキシメチルセルロースが使用される。前記セルロース系高分子はリチウム化された形態であってもよい。前記セルロース系高分子は、水酸化基またはカルボキシ基などの作用基を含むので、前記作用基の水素をリチウムに置換してリチウム化することができ、セルロース系高分子をリチウム化する場合、さらなるリチウムソースを確保することができて、リチウム‐硫黄電池の性能改善に役立つ。
【0032】
本発明の一具体例によると、前記増粘剤はバインダー組成物の総重量を基準にして20重量%ないし35重量%、好ましくは25重量%ないし35重量%がバインダー組成物に含まれる。前記増粘剤が20重量%未満でバインダーに含まれる場合、正極製造用スラリーの粘度が低くて正極構成成分の均一な分散とこれを通じる機能性確保に容易ではなく、前記増粘剤が35重量%超過でバインダーに含まれる場合、正極製造用スラリーの流動性が低くなって正極構成成分の均一な分散とこれを通じた機能性確保に容易ではない。
【0033】
バインダー組成物において、ガム(gum)はリチウム‐硫黄電池でリチウムポリスルフィドの湧出調節のような追加的な機能性確保のために使用される。キサンタンガム、クアガムなど多様な種類のガムが存在するが、アラビアガムは上述したバインダー及び増粘剤とともに使用する時、より特別な機能性を示す。アラビアガムは豆科アラビアガムの木(Acacia senegal WILLDENOW)またはその他の同属植物の分泌液を乾燥させたもの、またはこれを脱塩して得られるものとして主成分は多糖類である。特に、比較的に広いpHの範囲で安定的な硫化物を得ることができて、上述したバインダー及び増粘剤とともに使用する時、リチウム‐硫黄電池の性能と係った十分な機能性を確保することができる。
【0034】
本発明の一具体例によると、前記アラビアガムはバインダー組成物の総重量を基準にして10重量%ないし30重量%、好ましくは15重量%ないし30重量%、より好ましくは15重量%ないし25重量%がバインダー組成物に含まれる。前記アラビアガムが10重量%未満でバインダーに含まれる場合、リチウムポリスルフィドの湧出調節のような追加的な機能性を確保しにくく、前記アラビアガムが30重量%超過でバインダーに含まれる場合、これを適用したリチウム‐硫黄電池の初期放電時に過電圧が発生することがあって好ましくない。
【0035】
前記アラビアガムは増粘剤100重量部に対して30重量部ないし100重量部、好ましくは45重量部ないし85重量部、より好ましくは60重量部ないし70重量部がバインダー組成物に含まれる。上述したように、アラビアガムは増粘剤とともに使用する時、十分な機能性を確保することができ、前記範囲内で調節されることが機能性確保により有利である。
【0036】
正極及びこれを含むリチウム‐硫黄電池
本発明は上述したバインダー組成物によって製造されたリチウム‐硫黄電池用正極を提供する。本発明による正極は正極集電体の一面または両面に正極製造用スラリーを塗布した後、乾燥及び圧延することで製造される。前記正極製造用スラリーは上述したバインダー組成物とともに、正極活物質及び導電材を含む。正極集電体上に正極製造用スラリーが塗布/乾燥/圧延されて形成された層は、電池の正極活物質を含む層であって、正極活物質層で表現されることができる。
【0037】
前記バインダー組成物は上述した内容とおりである。前記正極製造用スラリーでバインダー組成物は、正極の構成成分を接着させる基本的な機能性に基づいて、電池の性能を最大限に向上させることができる方向に調節されることができる。本発明の一具体例によると、前記バインダー組成物は正極製造用スラリー内の固形分100重量部に対して0.01重量部ないし10重量部、好ましくは1重量部ないし8重量部、より好ましくは2重量部ないし5重量部が正極製造用スラリーに含まれる。ここで、スラリー内の固形分とは、スラリーを製造する時に使用される溶媒を除いた正極活物質、導電材及びバインダー組成物の固体成分を意味する。増粘剤とアラビアガムを通じて機能性が補完されることによって、バインダー組成物を少量で使用しても接着性及び電池の性能側面で改善された効果を期待することができる。前記バインダー組成物が10重量部超過で正極製造用スラリーに含まれる場合、相対的に正極活物質の含量が減少し、電池の性能改善側面で好ましくない。
【0038】
前記正極集電体は正極活物質を支持するためのもので、一般的に3ないし500μmの厚さで作られ、優れる導電性を持ち、リチウム二次電池の電圧領域で電気化学的に安定したものであれば特に制限されるものではない。例えば、前記正極集電体は銅、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つの金属であってもよく、前記ステンレススチールはカーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されることができ、前記合金ではアルミニウム‐カドミウム合金を好ましく使用することができ、その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などを使用することもできる。
【0039】
前記正極集電体はその表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を使用することができる。
【0040】
前記正極活物質は電池で電子を取り交わして実質的に電池性能を発現する役目をし、リチウム‐硫黄電池で正極活物質は硫黄元素を含む。具体的に、前記正極活物質は硫黄元素(Elemental sulfur、S8)、硫黄系列化合物またはこれらの混合物を含む。前記硫黄系列化合物は、Li2Sn(n≧1)、有機硫黄化合物または硫黄‐炭素化合物((C2Sx)n:x=2.5~50、n≧2)などを含む。前記硫黄元素は単独では電気伝導性がないため、炭素材と複合化して硫黄‐炭素複合体の形態で使用することができる。
【0041】
前記硫黄‐炭素複合体は、その粒子の大きさが1μmないし100μmであってもよい。前記硫黄‐炭素複合体の粒子の大きさが1μm未満の場合、粒子間の抵抗が増えてリチウム‐硫黄二次電池の電極に過電圧が発生することがあって、100μmを超える場合は、単位重量当たり表面積が小さくなって電極内の電解質とのウェッティング(wetting)面積及びリチウムイオンとの反応サイト(site)が減少するようになって、複合体大きさ対比電子の伝達量が少なくなって反応が遅くなり、電池の放電容量が減少されることがある。
【0042】
前記硫黄‐炭素複合体において、硫黄は硫黄‐炭素複合体の総重量を基準にして60重量%ないし90重量%、好ましくは70重量%ないし80重量%が硫黄‐炭素複合体に含まれることができる。前記硫黄が60重量%未満で硫黄‐炭素複合体に含まれる場合、電池のエネルギー密度の減少する問題が発生することがあって、前記硫黄が90重量%超過で硫黄‐炭素複合体に含まれる場合、電極内の導電性が低下されて正極活物質の機能性の落ちる問題が発生することがある。
【0043】
前記硫黄‐炭素複合体を構成する炭素材(または、硫黄担持材)は多孔性を持つものであって、特に、本発明の正極活物質で使用される炭素材は、高い比表面積(3,000m2/g以上)及びその気孔率(単位重量当たり気孔の体積:0.7~3.0cm3/g)の特性を持つので、多量の硫黄を担持することができる。
【0044】
前記炭素材はグラファイト(graphite);グラフェン(graphene);還元グラフェンオキサイド(rGO);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック(Carbon Black);単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)などの炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;及び活性炭素(Activated carbon);からなる群から選択された1種以上を例示することができ、その形態は、球形、棒形、針状、板状、チューブ型またはバルク型などであってもよい。
【0045】
本発明の一具体例によると、前記正極活物質は正極製造用スラリー内の固形分100重量部に対して80重量部ないし99重量部、好ましくは85重量部ないし95重量部が正極製造用スラリーに含まれる。前記正極活物質が80重量部未満で正極製造用スラリーに含まれる場合、電池のエネルギー密度が減少する問題が発生することがあって、前記正極活物質が99重量部超過で正極製造用スラリーに含まれる場合、バインダーの含量が不足して正極活物質間の接着力が低下されることがあって、導電材の含量が不足して電極内の導電性が低下される問題が発生することがある。
【0046】
前記導電材は電極に導電性を与えるために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさずに電子伝導性を持つものであれば特に制限なく使用可能である。具体的な例では、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などを挙げることができ、これらの中で1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。
【0047】
本発明の一具体例によると、前記導電材は正極製造用スラリー内の固形分100重量部に対して0.1重量部ないし15重量部、好ましくは1重量部ないし10重量部、より好ましくは2重量部ないし8重量部が正極製造用スラリーに含まれる。前記導電材が0.1重量%未満で正極製造用スラリーに含まれる場合、導電材の含量が不足して電極内の導電性が低下される問題が発生することがあって、前記導電材が15重量%超過で正極製造用スラリーに含まれる場合、正極活物質の量が相対的に少なくなって電池の放電容量及びエネルギー密度が低下される問題が発生することがある。
【0048】
本発明は上述した正極と一緒に、負極、分離膜及び電解質を含むリチウム‐硫黄電池を提供する。前記リチウム‐硫黄電池は、正極‐分離膜‐負極を順次積層した電池組立体を電池ケースに入れて電解質を注入することで製造される。
【0049】
前記負極は、負極集電体、及び負極集電体上に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー及び導電材を含むことができる。
【0050】
前記負極活物質では、リチウムイオン(Li+)を可逆的に吸蔵(Intercalation)または放出(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を使用することができる。前記リチウムイオン(Li+)を可逆的に吸蔵または放出することができる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物である。前記リチウムイオン(Li+)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、窒化チタンまたはシリコーンである。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金である。
【0051】
前記バインダー、導電材及び負極集電体は、上述した正極での構成を参照して選択されることができるが、必ずこれに限定されるものではない。また、前記負極集電体上に負極活物質層を形成する方法は、正極と同様、公知された塗布方法によって特に限定されるものではない。負極活物質としてリチウム金属などを使用する場合、バインダー、導電材または負極集電体なしに負極を構成することができる。
【0052】
前記分離膜は本発明のリチウム‐硫黄電池において、正の電極を物理的に分離するためのもので、通常リチウム‐硫黄電池で分離膜として使用されるものであれば特別な制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して抵抗が低くて、電解質の含湿能力に優れるものが好ましい。前記分離膜は多孔性基材からなることができるが、前記多孔性基材は通常電気化学素子に使用される多孔性基材であれば、いずれも使用可能であり、例えば、ポリオレフィン系多孔性膜または不織布を使用することができるが、これに特に限定されるものではない。
【0053】
前記ポリオレフィン系多孔性膜の例では、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子で形成した膜(membrane)を挙げることができる。
【0054】
前記不織布としては、ポリオレフィン系不織布の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)及びポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)などをそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子で形成した不織布を挙げることができる。前記不織布の構造は長繊維で構成されたスパンボンド不織布またはメルトブローン不織布である。
【0055】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1ないし100μm、好ましくは5ないし50μmである。前記多孔性基材に存在する気孔の大きさ及び気孔率も特に制限されないが、それぞれ0.001ないし50μm及び10ないし95%である。
【0056】
前記電解質はリチウムイオンを含み、これを媒介にして正極と負極で電気化学的な酸化または還元反応を起こすためのものである。前記電解質はリチウム金属と反応しない非水電解液または固体電解質が可能であるが、好ましくは非水電解質で、電解質塩及び有機溶媒を含む。
【0057】
前記非水電解液に含まれる電解質塩はリチウム塩である。前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものであれば制限なく使用されることができる。前記リチウム塩は、LiN(FSO2)2、LiSCN、LiN(CN)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiPF6、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiNO3、LiClO4、LiAlO4、LiAlCl4、LiSbF6、LiAsF6、LiBF2C2O4、LiBC4O8、Li(CF3)2PF4、Li(CF3)3PF3、Li(CF3)4PF2、Li(CF3)5PF、Li(CF3)6P、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiCF3CF2SO3、LiCF3CF2(CF3)2CO、Li(CF3SO2)2CH、LiCF3(CF2)7SO3、LiCF3CO2、LiCH3CO2及びこの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されない。
【0058】
前記リチウム塩の濃度は、電解液混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解された塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウム二次電池分野に公知された他の要因のような多くの要因によって、0.1Mないし8.0M、好ましくは0.5Mないし5.0M、より好ましくは1.0Mないし3.0Mである。もし、リチウム塩の濃度が前記範囲未満であれば、電解液の伝導度が低くなって電池性能が低下されることがあって、前記範囲超過であれば電解液の粘度が増加してリチウムイオン(Li+)の移動性が減少されることがあるので、前記範囲内で適正濃度を選択することが好ましい。
【0059】
前記非水電解液に含まれる有機溶媒としては、リチウム‐硫黄電池用電解液に通常的に使用されるものなどを制限なく使用することができる。本発明の一具体例によると、前記有機溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系または非プロトン性溶媒を使用することができる。その中で、代表的にはエーテル系溶媒を使用することができる。
【0060】
前記カーボネート系溶媒では、具体的に、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、またはブチレンカーボネート(BC)、などが使用されることができる。
【0061】
前記エステル系溶媒では、具体的に、メチルアセテート、エチルアセテート、n‐プロピルアセテート、1,1‐ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネイト、エチルプロピオネイト、γ‐ブチロラクトン、ジカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(carprolactone)などが使用されることができる。
【0062】
前記エーテル系溶媒としては、具体的に、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラハイドロフラン、2‐メチルテトラハイドロフラン、またはポリエチレングリコールジメチルエーテルなどが使用されることができる。
【0063】
前記ケトン系溶媒としては、具体的にシクロヘキサノンなどが使用されることができる。前記アルコール系溶媒では、具体的に、エタノール、イソプロピルアルコールなどが使用されることができる。
【0064】
前記非プロトン性溶媒としては、具体的に、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3‐ジオキソラン(DOL)などのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)などが使用されることができる。
【0065】
前記非水性有機溶媒は単独で、または一つ以上混合して使用されることができ、一つ以上混合して使用される場合の混合の割合は目的とする電池性能によって適切に調節することができる。
【0066】
前記電解質はLiNO3をさらに含むことができる。前記電解質が前記LiNO3を含む場合、シャトル抑制効果を向上させることができる。前記電解質が前記電解質全体重量に対して前記LiNO3を0.1ないし10重量%で含むことができる。
【0067】
前記電解質は液体電解質、ゲル重合体電解質及び固体重合体電解質からなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、液体状態の電解質であってもよい。
【0068】
前記非水電解液の注入は最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電気化学素子の製造工程中に適切な段階で行われることができる。すなわち、電気化学素子の組み立て前または電気化学素子の組み立て最終段階などで適用されることができる。
【0069】
本発明によるリチウム‐硫黄電池は一般的な工程である巻取(winding)以外にも分離膜と電極の積層(lamination、stack)及びフォールディング(folding)工程が可能である。前記二次電池の形状は特に制限されないし、円筒状、積層型、コイン型など多様な形状にすることができる。
【0070】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
【0071】
実施例
実施例1
1.正極の製造
ブチルアクリレート‐スチレン共重合体(LG化学製品)をリチウム化されたカルボキシメチルセルロース(ジーエルケム(GBLi‐1000)製品)及びアラビアガム(大井化金製品)と混合してバインダー組成物を製造した。また、硫黄(Sigma‐Aldrich製品)をCNT(Carbon Nanotube)と一緒にボールミルを利用して75:25の重量比で混合した後、155℃で熱処理して硫黄‐炭素複合体の正極活物質を製造した。導電材としては、Super Pを準備した。上述した正極活物質、導電材及びバインダー組成物(バインダー、増粘剤及びアラビアガム)を溶媒の水に添加し、ビードミーリング(beads milling)方式で混合して正極製造用スラリーを製造した。この時、混合の割合は重量比で正極活物質:導電材:バインダー:増粘剤:アラビアガムが90:5:2.5:1.5:1になるようにした。製造した正極製造用スラリーをアルミニウムホイル集電体に塗布した後、50℃で2時間乾燥して正極を製造した(正極のエネルギー密度:5.5mAh/cm2)。
【0072】
2.リチウム‐硫黄電池の製造
上述した方法によって製造された正極と一緒に、下記のように負極、分離膜及び電解質を製造してリチウム‐硫黄電池(CR‐2032コインセル)を組立てた。
【0073】
(1)負極
負極としてリチウムホイルを使用した。
【0074】
(2)分離膜
分離膜としてポリエチレン膜を使用した。
【0075】
(3)電解質
電解質としてジオキソラン(DOL)及びジメチルエーテル(DME)の混合溶媒にLiTFSIを0.1モル濃度で混合し、LiNO3を電解液対比1重量%で添加した電解質を使用した。
【0076】
比較例1
バインダー組成物を製造する時、アラビアガムを使用せず、エマルジョン形バインダーとリチウム化されたカルボキシメチルセルロースのみを混合して使用し、これによって正極製造用スラリーで混合の割合は正極活物質:導電材:バインダー:増粘剤が91:5:2.5:1.5になるように調節したことを除いては、実施例1と同様の方式でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0077】
比較例2
バインダー組成物を製造する時、リチウム化されたカルボキシメチルセルロースを使用せずに、エマルジョン形バインダーとアラビアガムのみを混合して使用し、これによって正極製造用スラリーで混合の割合は正極活物質:導電材:バインダー:アラビアガムが91.5:5:2.5:1になるように調節したことを除いては、実施例1と同様の方式でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0078】
比較例3
バインダー組成物を製造する時、アラビアガムの代わりにクアガムを使用したことを除いては、実施例1と同様の方式でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0079】
比較例4
バインダー組成物を製造する時、アラビアガムの代わりにキサンタンガムを使用したことを除いては、実施例1と同様の方式でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0080】
比較例5
正極製造用スラリーで混合の割合を正極活物質:導電材:バインダー:増粘剤:アラビアガムが89:5:2.5:1.5:2になるように調節したことを除いては、実施例1と同様の方式でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0081】
実験例:製造された電池の初期放電性能及びサイクル性能評価
実施例1で製造されたリチウム‐硫黄電池と比較例1ないし5で製造されたリチウム‐硫黄電池を25℃の温度条件で1.8V~2.5Vの電圧範囲内で0.1C‐rateで充電及び放電後、0.3C‐rateで充電及び0.5C‐rateで放電させて電池のサイクル性能を評価した。電池のサイクル性能は初期放電容量を基準にして80%以上の放電容量を示すサイクル回数で評価され、該当サイクル回数を超える場合、初期放電容量を基準にして放電容量が80%未満に落ちた。代表的に、実施例1及び比較例1で製造されたリチウム‐硫黄電池を初期充・放電して比容量に対する電池電位の充・放電プロファイルグラフを作成して下記
図1に示し、全体リチウム‐硫黄電池に対する初期放電性能及びサイクル性能評価結果を下記表1に示す。
【0082】
【0083】
前記表1によると、バインダー組成物としてアラビアガムをバインダー及び増粘剤とともに使用する時、初期放電容量だけでなく、サイクル性能が改善されることが確認された。具体的に、アラビアガム、バインダー及び増粘剤を含むバインダー組成物において、アラビアガムを除く場合(比較例1)または増粘剤を除く場合(比較例2)、初期放電性能及びサイクル性能が低下された。また、前記バインダー組成物において、アラビアガムをクアガムに代替する場合(比較例3)またはキサンタンガムに代替する場合(比較例4)、同様に初期放電性能及びサイクル性能が低下された。アラビアガム、バインダー及び増粘剤を含むバインダー組成物を使用してもアラビアガムを増粘剤より多く使用する場合、初期放電性能及びサイクル性能の改善効果がほとんど表れなかった。
【0084】
本発明の単純な変形ないし変更は、いずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求範囲によって明確になる。