IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クレハの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】アゾール誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 249/08 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
C07D249/08 521
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023500965
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007064
(87)【国際公開番号】W WO2022177016
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2021026670
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】永井 海人
(72)【発明者】
【氏名】張替 僚
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/093522(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/108286(WO,A1)
【文献】特開平6-340637(JP,A)
【文献】国際公開第2013/157311(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 249/08
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示されるアゾール誘導体の製造方法であって、
【化1】

(式(I)中、Rは、C-C-アルキル基、またはCOであり、ここで、Rは、C-C-アルキル基であり;
およびXは、それぞれ独立に、ハロゲン基、C-C-ハロアルキル基、またはC-C-ハロアルコキシ基であり;
nは、1、2または3である。)
一般式(II)で示されるオキシラン誘導体を、酸性条件下で、4-アミノ-1,2,4-トリアゾールと反応させて、一般式(Ia)で示される化合物を得る工程、および
【化2】

【化3】

(式(II)および(Ia)中、R、X、Xおよびnは、それぞれ式(I)におけるR、X、Xおよびnと同じである。)
得られた一般式(Ia)で示される上記化合物を脱アミノ化して、一般式(I)で示されるアゾール誘導体を形成する工程を含み、
上記一般式(Ia)で示される化合物を得る工程は、4-アミノ-1,2,4-トリアゾールを反応系の溶媒に溶解させた後に酸を添加すること含む、アゾール誘導体の製造方法。
【請求項2】
アルキルスルホン酸またはアリールスルホン酸を含むことにより、上記酸性条件が形成されている、請求項1に記載のアゾール誘導体の製造方法。
【請求項3】
一般式(Ia)で示される上記化合物を含む反応液に亜硝酸アルカリ金属塩および酸を加えることにより脱アミノ化の反応を行う、請求項1または2に記載のアゾール誘導体の製造方法。
【請求項4】
熱時ろ過を経ずに一般式(I)で示されるアゾール誘導体の晶析を行う工程をさらに含む、請求項1~3の何れか1項に記載のアゾール誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾール誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い防除効果を示す農園芸用薬剤として、特許文献1に記載のアゾール誘導体が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、当該アゾール誘導体の製造方法として、オキシラン化合物にアゾールナトリウムを反応させることにより、アゾール化を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開公報第2019/093522号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らが検討を行った結果、アゾールがトリアゾールである場合には、アゾール化工程において、目的物である1,2,4-トリアゾール体に加えて、副生物として1,3,4-トリアゾール体も生じていることを見出した。副生物が生じると、目的物の収率および純度が低下するといった問題が生じる。さらには、副生物を除くための後処理の負担が大きくなるといった問題も生じてくる。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、既存の製造方法よりも副生物が少ないアゾール誘導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアゾール誘導体の製造方法は、上記課題を解決するために、一般式(I)で示されるアゾール誘導体の製造方法であって、
【0008】
【化1】
【0009】
(式(I)中、Rは、C-C-アルキル基、またはCOであり、ここで、Rは、C-C-アルキル基であり;
およびXは、それぞれ独立に、ハロゲン基、C-C-ハロアルキル基、またはC-C-ハロアルコキシ基であり;
nは、1、2または3である。)
一般式(II)で示されるオキシラン誘導体を、酸性条件下で、4-アミノ-1,2,4-トリアゾールと反応させて、一般式(Ia)で示される化合物を得る工程、および
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
【0012】
(式(II)および(Ia)中、R、X、Xおよびnは、それぞれ式(I)におけるR、X、Xおよびnと同じである。)
得られた一般式(Ia)で示される上記化合物を脱アミノ化して、一般式(I)で示されるアゾール誘導体を形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、副生物が少なく、目的のアゾール誘導体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。
【0015】
本実施形態は、一般式(I)で示されるアゾール誘導体(以下、「アゾール誘導体(I)」と称する)の製造方法である。
【0016】
【化4】
【0017】
式(I)中、Rは、C-C-アルキル基、またはCOを表す。また、Rは、C-C-アルキル基を表す。
【0018】
-C-アルキル基は、炭素原子数が1~6個である直鎖又は分岐鎖状アルキル基である。C-C-アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、1-メチルエチル基、1,1-ジメチルエチル基、プロピル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ブチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、ペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基および4-メチルペンチル基が挙げられる。
【0019】
およびXは、それぞれ独立に、ハロゲン基、C-C-ハロアルキル基、またはC-C-ハロアルコキシ基である。
【0020】
ハロゲン基としては、塩素基、臭素基、ヨウ素基およびフッ素基が挙げられる。
【0021】
-C-ハロアルキル基は、C-C-アルキル基の置換し得る位置に1または2以上のハロゲン原子が置換されており、置換されるハロゲン基が2以上の場合は、ハロゲン基は同一または異なってもよい。なお、C-C-アルキル基は、炭素原子数が1~4個である直鎖または分岐鎖状アルキル基である。
【0022】
-C-アルキル基は、炭素原子数が1~4個である直鎖または分岐鎖状アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、およびブチル基が挙げられる。ハロゲン基は前述したとおりである。C-C-ハロアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、2-クロロエチル基、2,3-ジクロロプロピル基、ブロモメチル基、クロロジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、および3,3,3-トリフルオロプロピル基が挙げられる。
【0023】
-C-ハロアルコキシ基は、C-C-アルコキシ基の置換し得る位置に1または2以上のハロゲン原子が置換されており、置換されるハロゲン基が2以上の場合は、ハロゲン基は同一または異なってもよい。なお、C-C-アルコキシ基は、炭素原子数が1~4個の直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基である。
【0024】
-C-アルコキシ基は、炭素原子数1~4個の直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、1-メチルプロポキシ基、2-メチルプロポキシ基、ブトキシ基、および1,1-ジメチルエトキシ基が挙げられる。C-C-ハロアルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエトキシ基、および2,2,2-トリフルオロエトキシ基を挙げることができる。
【0025】
nは、1、2または3である。nが2または3である場合、複数あるXは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
本実施形態に係る製造方法は、以下の反応スキームに従って、一般式(II)で表されるオキシラン誘導体(以下、「オキシラン誘導体(II)」と称する)を4-アミノ-1,2,4-トリアゾールと反応させて一般式(Ia)で示されるアミン化合物(以下、「アミン化合物(Ia)」と称する)を得る工程(以下、「工程1」と称する)と、アミン化合物(Ia)を脱アミノ化させてアゾール誘導体(I)を形成する工程(以下、「工程2」と称する)とを含む。なお、下記反応スキーム中の、R、X、Xおよびnは、上述の一般式(I)におけるR、X、Xおよびnに対応する。
【0027】
【化5】
【0028】
(工程1)
工程1では、オキシラン誘導体(II)を、酸性条件下で、4-アミノ-1,2,4-トリアゾールと反応させてアミン化合物(Ia)を得る。
【0029】
工程1において反応系に添加する4-アミノ-1,2,4-トリアゾールの量は、工程1の反応を過不足なく行う観点から、オキシラン誘導体(II)1当量(eq.)に対して、1.0~3.0当量(eq.)であることが好ましい。
【0030】
酸性条件下で反応を行うにあたり、酸性条件を形成させるために用いる酸としては、反応中、酸性条件を維持できる酸であれば特に制限はないが、pKが0以下の酸であることが好ましい。pKが0以下の酸としては、例えば、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、ハロアルキルスルホン酸および硫酸が挙げられる。中でも、アルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸が好ましい。アルキルスルホン酸としては、例えば、エタンスルホン酸およびメタンスルホン酸が挙げられる。また、アリールスルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸が挙げられる。ハロアルキルスルホン酸としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸が挙げられる。
【0031】
用いる酸の量としては、オキシラン誘導体(II)1当量(eq.)に対して、1.0~3.0当量であることが好ましい。
【0032】
また、酸は、4-アミノ-1,2,4-トリアゾールを反応系の溶媒に溶解させた後に添加することが好ましい。
【0033】
工程1の反応における溶媒としては、工程1の反応が進行する溶媒が適宜選択され、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノールおよび2-ブタノール等のアルコール類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドおよびN-メチル-2-ピロリドン等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンおよびジオキサン等のエーテル類;ならびにアセトニトリルおよびプロピオニトリル等のニトリル類が挙げられる。中でも、アルコール類およびアミド類が好ましい。
【0034】
工程1の反応は、例えば、室温で撹拌しながら、または、オイルバス中で加熱撹拌しながら行うことができる。このときの反応温度は、例えば、内温が40~120℃である。
【0035】
(工程2)
工程2では、工程1で得られたアミン化合物(Ia)を脱アミノ化させて、アゾール誘導体(I)を形成する。
【0036】
工程2は、工程1終了後の反応液そのものを用いて、すなわちワンポットで、実施してもよい。これにより、アミン化合物(Ia)の抽出が不要となり、収率および作業効率を高めることができる。
【0037】
工程2における脱アミノ化反応は、窒素原子に結合したアミノ基を脱離させる既知の反応機構に従った反応を実施することにより進行させることができる。脱アミノ化反応の一例としては、例えば、アミン化合物(Ia)を含む反応液に、亜硝酸アルカリ金属塩および酸を添加してアミノ基の脱離を行う反応が挙げられる。ここで、アミン化合物(Ia)を含む反応液とは、工程1により得られる反応液であってもよいし、工程1により得られる反応液からアミン化合物(Ia)を抽出して、別の溶媒に溶解して得られる溶液であってもよい。
【0038】
亜硝酸アルカリ金属塩としては、亜硝酸ナトリウムおよび亜硝酸カリウムが挙げられ、中でも、亜硝酸ナトリウムが好ましい。用いる亜硝酸アルカリ金属塩の量は、工程2の反応を過不足なく行う観点から、アミン化合物(Ia)1当量(eq.)に対して、1.0~5.0当量(eq.)であることが好ましい。得られたアミン化合物(Ia)を定量しない場合には、亜硝酸アルカリ金属塩の量は、工程1で使用したオキシラン誘導体(II)1当量(eq.)に対して、1.0~5.0当量(eq.)とすればよい。
【0039】
亜硝酸ナトリウムとともに用いられる酸としては、塩酸、硫酸および硝酸等の無機酸が挙げられる。用いる酸の量は、0.1~10.0当量(eq.)であることが好ましい。
【0040】
工程2の反応における溶媒としては、工程1の説明で挙げた各溶媒が挙げられる。工程1の反応液そのものを用いて工程2の反応を進める場合、反応液に含まれる溶媒がそのまま使用されるが、同一または異なる溶媒をさらに添加してもよい。
【0041】
工程2の反応は、例えば、-10~60℃の範囲で行うことができる。
【0042】
本実施形態に係る製造方法では、工程1および工程2によってアゾール誘導体(I)を合成することにより、副生物である1,3,4-トリアゾール体(アゾール誘導体(I)は、1,2,4-トリアゾール体)の生成を抑制することができる。そのため、既知の製造方法に比して、副生物が少なく、純度の高いアゾール誘導体(I)を得ることができる。典型的には、工程2終了後の反応物における1,2,4-トリアゾール体の比率が、100%であり得る。ここで、反応物における1,2,4-トリアゾール体の比率とは、1,2,4-トリアゾール体および1,3,4-トリアゾール体の総量を100%としたときの1,2,4-トリアゾール体の割合である。以下、当該比率を、「1,2,4選択率」ともいう。
【0043】
(晶析工程)
本実施形態に係るアゾール誘導体(I)の製造方法では、工程2の後に、アゾール誘導体(I)の晶析による精製を行う工程を含むものであってもよい。なお、上述の通り、本実施形態に係る製造方法の工程1および工程2を経て得られた反応物では、粗製物においても副生物である1,3,4-トリアゾール体の量が非常に少なく、1,2,4-トリアゾール体の純度が非常に高いものである。したがって、本実施形態の製造方法において工程2の後にアゾール誘導体(I)の晶析を行う場合、晶析の前に熱時ろ過を行わなくとも、高純度で目的化合物を得ることができる。したがって、作業負担の軽減の観点から、本実施形態では、熱時ろ過を経ずにアゾール誘導体の晶析を行うことが好ましい。
【0044】
〔まとめ〕
本実施形態に係る製造方法は、一般式(I)で示されるアゾール誘導体の製造方法であって、
【0045】
【化6】
【0046】
(式(I)中、Rは、C-C-アルキル基、またはCOであり、ここで、Rは、C-C-アルキル基であり;
およびXは、それぞれ独立に、ハロゲン基、C-C-ハロアルキル基、またはC-C-ハロアルコキシ基であり;
nは、1、2または3である。)
一般式(II)で示されるオキシラン誘導体を、酸性条件下で、4-アミノ-1,2,4-トリアゾールと反応させて、一般式(Ia)で示される化合物を得る工程、および
【0047】
【化7】
【0048】
【化8】
【0049】
(式(II)および(Ia)中、R、X、Xおよびnは、それぞれ式(I)におけるR、X、Xおよびnと同じである。)
得られた一般式(Ia)で示される上記化合物を脱アミノ化して、一般式(I)で示されるアゾール誘導体を形成する工程を含む、アゾール誘導体の製造方法である。
【0050】
また、本実施形態に係る製造方法では、アルキルスルホン酸またはアリールスルホン酸を含むことにより、上記酸性条件が形成されていることが好ましい。
【0051】
また、本実施形態に係る製造方法では、一般式(Ia)で示される上記化合物を含む反応液に亜硝酸アルカリ金属塩および酸を加えることにより脱アミノ化の反応を行うことが好ましい。
【0052】
また、本実施形態に係る製造方法では、熱時ろ過を経ずに一般式(I)で示されるアゾール誘導体の晶析を行う工程をさらに含むことが好ましい。
【0053】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例
【0054】
<実施例1:2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピオン酸メチルの合成1>
粗2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)オキシラン-2-カルボン酸メチルのジクロロエタン溶液9.53g(GC純度20.3wt%)をフラスコに加え、ジクロロエタンを留去した。その後、2-ブタノール2.8mL、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール0.72g、およびメタンスルホン酸0.41mLを加えて120℃のオイルバスで加熱撹拌した。反応開始から7時間後、室温まで冷却した後にN,N-ジメチルホルムアミド2.8mLを追加した。氷浴により冷却した後、濃塩酸1.7mLおよび24wt%亜硝酸ナトリウム水溶液2.1mLを滴下した。滴下が終了してから20分後、酢酸エチルおよび飽和重曹水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで3回抽出した。これを飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、橙色液体粗製物4.05gを得た。NMR定量収率:88%。1,2,4選択率:100%。
【0055】
<実施例2:2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピオン酸メチルの合成2>
粗2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)オキシラン-2-カルボン酸メチルのジクロロエタン溶液481.12g(GC純度14.1wt%)をフラスコに加え、ジクロロエタンを留去した。その後、2-プロパノール100mL、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール25.22g、およびメタンスルホン酸21.17gを加えてオイルバスで加熱還流撹拌した。反応開始から20時間後、室温まで冷却した後、濃塩酸75.00gと、亜硝酸ナトリウム24.84gおよび水51.25gを含む水溶液とを滴下した。滴下が終了してから30分後、水50.00gおよびトルエン86.69gを加えて分離し、トルエン86.69gで1回再抽出した。有機層を合わせ、10.6%炭酸ナトリウム水溶液100.00gで1回、9%食塩水110.92gで1回洗浄し、橙色液体粗製物314.07gを得た。HPLC定量収率:84%。1,2,4選択率:100%。
【0056】
上記粗製物の溶媒を留去した後、トルエン343.61gを加えてオイルバスで100℃に昇温し、内温が100℃に到達してから10分間加熱撹拌した。その後15℃/hの速度で92℃まで冷却した。92℃に到達後、標記化合物の種晶0.69gを添加した後、15℃/hの速度で82.5℃まで冷却した。82.5℃に到達後、同温度で30分撹拌を続けた。その後、75℃までは6℃/h、75℃から55℃までは10℃/h、55℃から5℃までは30℃/hの速度で冷却を行い、5℃に到達してから2時間撹拌を続けた。粗液を吸引ろ過し、冷トルエン137.42gで洗浄した。真空検体乾燥機を用いてろ取物を減圧乾燥し、目的物の白色固体を60.11g得た。回収率:86%。HPLC定量純度:98.4%。
【0057】
上記白色固体30.06gおよびトルエン60.00gをフラスコに加えてオイルバスで100℃に昇温し、内温が100℃に到達してから10分間加熱撹拌した。その後15℃/hの速度で92℃まで冷却した。92℃に到達後、標記化合物の種晶0.36gを添加した後、同温度で30分撹拌を続けた。その後、75℃までは6℃/h、75℃から55℃までは10℃/h、55℃から5℃までは30℃/hの速度で冷却を行い、5℃に到達してから2時間撹拌を続けた。粗液を吸引ろ過し、冷トルエン59.2gで洗浄した。真空検体乾燥機を用いてろ取物を減圧乾燥し、目的物の白色固体を28.97g得た。回収率:98%。HPLC定量純度:100%。
【0058】
<実施例3:2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピオン酸メチルの合成3>
粗2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)オキシラン-2-カルボン酸メチルのジクロロエタン溶液463.03g(GC純度14.7wt%)をフラスコに加え、ジクロロエタンを留去した。その後、1-プロパノール100mL、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール25.22g、およびメタンスルホン酸19.24gを加えてオイルバスで加熱還流撹拌した。反応開始から17時間後、室温まで冷却した後、濃塩酸44.56gを滴下し、内温5℃まで冷却した後、亜硝酸ナトリウム22.08gおよび水71.48gを含む水溶液を滴下した。滴下が終了してから30分後、トルエン8.68gを加えて分離し、橙色液体粗製物235.93gを得た。HPLC定量収率:86%。1,2,4選択率:100%。
【0059】
上記粗製物の溶媒を留去した後、水40.00gを加えて再度留去した。トルエン173.42gを加えて内温80℃まで昇温し、炭酸ナトリウム10.61gおよび水100.00gを含む水溶液を滴下し、下層を分離した。オイルバスで100℃に昇温し、内温が100℃に到達してから10分間加熱撹拌した。その後10℃/hの速度で80℃まで冷却した。80℃に到達後、標記化合物の種晶0.82gを添加した後、同温度で30分撹拌を続けた。その後、50℃までは10℃/h、50℃から5℃までは20℃/hの速度で冷却を行い、5℃に到達してから2時間撹拌を続けた。粗液を吸引ろ過し、冷水50.00g、50.00g、冷トルエン43.34g、43.34gで洗浄した。真空検体乾燥機を用いてろ取物を減圧乾燥し、目的物の白色固体を66.65g得た。回収率:97%。HPLC定量純度:99.1%。
【0060】
<実施例4:2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピオン酸メチルの合成4>
粗2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)オキシラン-2-カルボン酸メチルのジクロロエタン溶液2327.87g(GC純度14.6wt%)をフラスコに加え、ジクロロエタンを留去した。その後、1-プロパノール500mL、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール401.51g、およびメタンスルホン酸96.11gを加えてオイルバスで加熱還流撹拌した。反応開始から18時間後、室温まで冷却し、橙色液体粗製物1058.48gを得た。
【0061】
上記粗製物105.85gおよび水50.01gをフラスコに加え、溶媒を留去した後、内温30℃で濃塩酸22.28gおよび水50.00gを滴下し、亜硝酸ナトリウム11.05gおよび水35.74gを含む水溶液を滴下した。滴下が終了してから30分後、トルエン86.69gを加えて内温60℃まで昇温してから水層を分離した。続けて内温80℃まで昇温し、炭酸ナトリウム5.30gおよび水25.03gを含む水溶液を滴下し、下層を分離した。オイルバスで100℃に昇温し、内温が100℃に到達してから10分間加熱撹拌した。その後10℃/hの速度で80℃まで冷却した。80℃に到達後、標記化合物の種晶0.41gを添加した後、同温度で30分撹拌を続けた。その後、50℃までは10℃/h、50℃から5℃までは20℃/hの速度で冷却を行い、5℃に到達してから2時間撹拌を続けた。粗液を吸引ろ過し、冷水25.00g、25.00g、冷トルエン21.67g、21.67gで洗浄した。真空検体乾燥機を用いてろ取物を減圧乾燥し、目的物の白色固体を33.56g得た。HPLC定量収率:81%。1,2,4選択率:100%。HPLC定量純度:99.1%。
【0062】
<比較例1:2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピオン酸メチルの合成5>
粗2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)オキシラン-2-カルボン酸メチル69.4mg、およびN,N-ジメチルアセトアミド0.5mLをフラスコに加えて溶解した後、トリアゾール14.8mgおよびトリアゾールナトリウム塩19.7mgを加えて60℃に昇温し撹拌した。反応開始から2時間後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチル抽出した。これを3回水洗した後、飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、標記化合物の粗製物79.9mgを得た。1,2,4選択率:91%。
【0063】
粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,酢酸エチル)にて精製し、標記の化合物70.8mgを白色固体として得た。収率:85%。
【0064】
なお、本比較例では、トリアゾールおよびトリアゾールナトリウム塩の両方を添加しているが、このことは1,2,4選択率に影響を与えるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、農園芸用薬剤として有用なアゾール誘導体の製造に利用することができる。