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  • 特許-漏れ磁束が抑制された磁性部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】漏れ磁束が抑制された磁性部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20240705BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01F30/10 C
H01F30/10 A
H01F30/10 S
H01F30/10 M
H01F27/24 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023506090
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2021067109
(87)【国際公開番号】W WO2022022896
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】2007993
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】522457531
【氏名又は名称】ヴァレオ、イーオートモーティブ、フランス、エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】Valeo eAutomotive France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】ボリス、ブシェ
(72)【発明者】
【氏名】ステファヌ、フォンテーヌ
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0385785(US,A1)
【文献】国際公開第2019/206706(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0323720(US,A1)
【文献】特開2001-244129(JP,A)
【文献】実開昭50-064914(JP,U)
【文献】国際公開第2007/099683(WO,A1)
【文献】実開昭53-123131(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24-27/26
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
H02M 3/00- 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの強磁性ハーフコアを備える磁性部品であって、
2つの前記強磁性ハーフコアは、積層されるとともに重ね合わされて強磁性コアを形成し、
前記強磁性コアは、3つの脚部(11、12、13)、すなわち、2つの第1脚部(11、13)と1つの第2脚部(12)とを備え、
各脚部(11、12、13)は、ギャップにより離れた2つの対面するハーフ脚部から形成され、
2つの対面するハーフ脚部は、一方側ハーフ脚部及び他方側ハーフ脚部を含み、
各脚部(11、12、13)は、前記脚部を形成する前記ハーフ脚部の各々においてそれぞれ巻線方向を有する一次巻線(111、121、131)および二次巻線(112、122、132)を備える、磁性部品において、
前記第2脚部(12)は、前記一方側ハーフ脚部上に前記一次巻線(121)を備え、前記他方側ハーフ脚部上に前記二次巻線(122)を備え、
前記第1脚部(11、13)は、前記一方側ハーフ脚部上に前記二次巻線(112、132)を備え、前記他方側ハーフ脚部上に前記一次巻線(111、131)を備え、
前記第2脚部(12)の前記一方側ハーフ脚部上の前記一次巻線(121)の巻線方向は、前記第1脚部(11、13)の前記一方側ハーフ脚部上の前記二次巻線(112、132)の巻線方向に対して逆であり、
前記第2脚部(12)の前記他方側ハーフ脚部上の前記二次巻線(122)の巻線方向は、前記第1脚部(11、13)の前記他方側ハーフ脚部上の前記一次巻線(111、131)の巻線方向に対して逆である、
ことを特徴とする磁性部品。
【請求項2】
2つの前記強磁性ハーフコア各強磁性ハーフコアにおいて、各ハーフコアを形成する3つの前記脚部が、それぞれ、正三角形の頂点に配置される、
請求項1に記載の磁性部品。
【請求項3】
2つの前記強磁性ハーフコアは、E型の形状を有する、
請求項1に記載の磁性部品。
【請求項4】
請求項1~3の一項に記載の磁性部品を備える、電気変圧器(10)。
【請求項5】
請求項4に記載の電気変圧器(10)を備える、電気機器部品。
【請求項6】
前記電気変圧器(10)を収容する冷却プールを形成するキャビティを備える冷却モジュールを備える、
請求項5に記載の電気機器部品。
【請求項7】
充電器を形成する、請求項5または6に記載の電気機器部品。
【請求項8】
電力変換器を形成する、請求項5~7の一項に記載の電気機器部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性部品、特に電気変圧器の分野に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、電気変圧器、例えば共振型電圧変換器や任意の他のタイプの電力変換器に組み込まれた電気変圧器、または充電器に組み込まれた電気変圧器の分野に関する。具体的には、本発明は、三相電気変圧器のような磁性部品に関連する。
【背景技術】
【0003】
電気変圧器は、電気エネルギーを一次回路から二次回路に伝達させ得る。
【0004】
周知のように、電気変圧器において、電気エネルギーを一次回路から二次回路に伝達させ得る磁界を生成する電流が流れる磁性コアおよびコイルが使用されている。より正確には、電気変圧器において、特に磁化インダクタンスを用いる電力変換器には、または共振型電圧変換器には、磁性コアの周囲に巻線により形成された一次コイルおよび二次コイルが存在し、これらの間で電気エネルギーが伝達される。
【0005】
より具体的には、三相電気変圧器において、適切な形状の強磁性コアの種々のセグメントに巻回された3つの一次巻線および3つの二次巻線が存在する。特に、一例を図1に示すE型強磁性コアや、図2に一例を示す三角形の強磁性コアが知られている。
【0006】
すべての電気変圧器には漏れインダクタンスがあり、一次回路で発生した磁束の一部が二次回路の巻線に結合されないため、効率低下の原因となっている。また、一次巻線および二次巻線にさらなるロスが出現し得る。非共振型電圧変換器の場合、過電圧がさらにまた発生し得る。電気変圧器のコイルの幾何学的形状、および同様に磁性コアに使用される磁性材料、または実に前記磁性コアの幾何学的形状は、特に電気的および磁気的基準を満たすように構成される。電気変圧器の寸法決めの目的の1つは、特に電気変圧器の漏れインダクタンスの値を抑制することである。
【0007】
特に三相である場合のこのような電気変圧器を製造する2つの主な方法が知られている。図1の例において、コイルは平坦であり、一次巻線310および二次巻線320は、2つの重ね合わされた層を、強磁性コア30の各脚部31、32、33に形成している。平坦巻線技術を利用して組み立てられたこのような既知の電気変圧器3では、漏れインダクタンスは低い。しかしながら、この例では、寄生容量が、一次回路においても二次回路においても非常に高い。さらにまた、下方に配置された巻線、すなわち換言すれば「埋設された」巻線の冷却が非常に困難である。
【0008】
同一タイプのE型強磁性コアでは、積層巻線を作製することも可能である。この既知の構造の1つの利点は、組込みおよび冷却が容易であることにある。しかしながら、このような構造では、漏れインダクタンスが高い。
【0009】
三相電気変圧器4を作製する別の既知の方法は、正三角形の形状の強磁性コアに巻線を設置することからなる。したがって、図2に示すように、脚部は互いから60°で配置される。
【0010】
しかしながら、このような三角形の構成は、機械的に組み込むことが難しい。
【0011】
この文脈において、E型強磁性コアに積層された巻線をベースとする構造により、漏れインダクタンスを利用して共振インダクタンスを機能させて、エネルギーの一次巻線から二次巻線への伝達を促進することが知られている。したがって、一見不利な漏れインダクタンスが活用されている。
【0012】
この既知の原理を図4に示す。図4から分かり得るように、一次巻線が上方のE型強磁性ハーフコアに配置され、二次巻線が下方のE型強磁性ハーフコアに配置される。
【0013】
この技術の実践に関する技術的な問題は、漏れ磁束がループしないということである。具体的には、図4に示すように、それは脚部に集中し、側方の脚部21、23から中央の脚部22に「ジャンプ」する。したがって、磁束線は、ギャップと平行になる。
【0014】
したがって、組込みおよび冷却が容易で、かつ漏れインダクタンスが抑制された三相電気変圧器が必要とされている。
【発明の概要】
【0015】
この目的のために、本発明の1つの主題は、2つの強磁性ハーフコアを備える磁性部品であって、2つの前記強磁性ハーフコアは、積層されるとともに重ね合わされて強磁性コアを形成し、前記強磁性コアは、3つの脚部、すなわち、2つの第1脚部と1つの第2脚部とを備え、各脚部は、ギャップにより離れた2つの対面するハーフ脚部から形成され、各脚部は、前記脚部を形成する前記ハーフ脚部の各々においてそれぞれ巻線方向を有する一次巻線および二次巻線を備える磁性部品において、前記第2脚部において、前記一次巻線と前記二次巻線、およびそれらの巻線方向は、前記第1脚部のものに対して逆であることを特徴とする磁性部品である。
【0016】
特に、第1脚部は側方脚部であり得るとともに、第2脚部は中央脚部であり得る。
【0017】
一実施形態によれば、2つの前記強磁性ハーフコアは、各強磁性ハーフコアにおいて、各ハーフコアを形成する3つの前記脚部がそれぞれ互いから60°である、いわゆる「三角形」の配置を有する。特に、各ハーフコアを形成する3つの脚部は、正三角形の頂点に配置される。
【0018】
有利には、2つの前記強磁性ハーフコアは、E型の形状を有する。
【0019】
また、本発明は、以上に簡潔に記載されたような磁性部品を備える電気変圧器に関連する。
【0020】
また、本発明は、以上に簡潔に記載されたような電気変圧器を備える電気機器部品に関する。
【0021】
有利には、前記電気機器部品は、前記電気変圧器を収容する冷却プールを形成するキャビティを備える冷却モジュールを備える。
【0022】
一実施形態によれば、前記電気機器部品は、充電器を形成する。
【0023】
一実施形態によれば、前記電気機器部品は、電力変換器を形成する。
【0024】
本発明は、単なる例示として呈示される以下の説明を読み、非限定的な例として呈示され、類似の物体には同一の参照符号が使用される添付図面を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、重ね合わされた層に配置された一次巻線および二次巻線を有する既知の第1電気変圧器の概略図である。
図2図2は、三角形の強磁性コアに配置された一次巻線および二次巻線を有する既知の第2電気変圧器の概略図である。
図3図3は、電気変圧器の回路図である。
図4図4は、既知の欠点を有するE型電気変圧器の概略図である。
図5図5は、E型強磁性コアに組み付けられた、本発明による電気変圧器の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施を可能にすべく図面には本発明が詳細に示され、前記図面は当然ながら必要に応じて本発明をより良好に定義する役割を果たし得ることに留意されたい。
【0027】
本発明は、磁性部品、及び特に三相変圧器に関する。
【0028】
図3は、入力電圧VINを出力電圧Vに変換するための、電気変圧器を備える共振型電圧変換器回路の等価回路図を示す。電気変圧器は、一次巻線および二次巻線を備えている。一次巻線を通る電流により生成された磁束により、エネルギーが二次巻線に伝達され得る。一次回路にはLLC共振回路が存在する。LLC共振回路は、電気変圧器に組み込まれ得る共振コンデンサCr、共振インダクタLr、および磁化インダクタLmから形成されている。電気変圧器は、一次巻線に接続したスイッチQ1、Q2のハーフブリッジにより制御される。二次回路に接続したダイオードD1、D2により、戻り電流が回避され得る。
【0029】
図4および図5は、先行技術の電気変圧器20の概略図、および本発明による電気変圧器10の一例の概略図をそれぞれ示す。これらの変圧器は、両者ともE型強磁性コアをベースとしている。前記強磁性コアは、対面して積層されたE型の形状を有する2つのハーフコアから形成されている。
【0030】
強磁性コアは、3つの脚部11、12、13、21、22、23、すなわち、2つの側方脚部11、13、21、23と1つの中央脚部12、22とを有している。各脚部11、12、13、21、22、23は、ギャップにより離れた2つの対面するハーフ脚部から形成されている。各脚部11、12、13、21、22、23は、三相電気変圧器20および10の1つの相にそれぞれ対応している。E型コアをベースとする電気変圧器において、Eの各アーム、すなわち換言すれば、前記強磁性コアの各脚部11、12、13、21、22、23は、電気変圧器の1つの相に対応する。同様に、三角形の変圧器において、三角形の1つの頂点に対応する各脚部は、電気変圧器の1つの相に接続する。
【0031】
図4において、巻線211、212、221、222、231、232は、上方のハーフ脚部にすべて配置された一次巻線のすべてについて、そして下方のハーフ脚部にすべて配置された二次巻線について、それぞれ同一の方向に巻回されている。
【0032】
先行技術を表し図4に概略的に示すこの構造の欠点は、漏れ磁束の一部が、反対方向に向かうことである。この磁束は、その相に対応する脚部をループせず、1つの脚部から次のものにジャンプする。特に、磁束はギャップに対して平行に発生し、各側方脚部21、23から中央脚部22にジャンプする。換言すれば、各側方脚部21、23と中央脚部22との結合が生じる。
【0033】
これにより、電気変圧器20の中央である中央脚部22において、ロスが増加し過熱する危険性がもたらされる。
【0034】
この結合を回避する1つの方法は、側方脚部21、23から中央脚部22へ磁束がこのようにジャンプすることを防止するように、側方脚部21、23を中央脚部22から遠ざかるように移動させることであり得るが、強磁性コアのサイズはそのために増加するであろう。しかしながら、これにより、明らかに電気変圧器は嵩張ることとなり、不利であろう。
【0035】
図5は、本発明が提案する一実施形態による解決策を示す。中央脚部12において、一次巻線121と二次巻線122とが逆になっており、これらの一次巻線121および二次巻線122の巻線方向が逆になっている。したがって、中央脚部12の一次巻線121は、側方脚部11、13の二次巻線112、132と同じ側の強磁性コアに配置されている。また、これにより、中央脚部12の二次巻線122は、側方脚部11、13の一次巻線111,131と同じ側の強磁性コアに配置されている。さらに、中央脚部12の一次巻線121および二次巻線122の巻線方向は、側方脚部11、13の巻線111、112、131、132のものと逆になっている。
【0036】
本発明による構造により、磁束が脚部間でジャンプすることが回避される。具体的には、図5に示すように、種々の脚部11、12、13で生成された磁束成分が、図4のように中央脚部12に集中せずに、対になって反発し合う。したがって、側方脚部11、13で生成された磁束は、中央脚部12にジャンプしない。
【0037】
このため、中央脚部12の磁束は増加せず、結果として過熱の危険性が減少する。
【0038】
図5の実施形態による本発明の実施に関連する1つの利点は、標準的なE型コアを使用することである。なぜならば、これは機械的に組み込みやすく、かつ標準的な冷却技術、特に周知のように冷却プールを介して冷却しやすいため、巻線およびコアの十分な冷却が得られるからである。
【0039】
さらに、線形のE型コアによる三相電気変圧器は、側方脚部11、13で形成される相が中央脚部12からよりも、互いに離れているという意味において対称でないことに留意されたい。これに対し、三角形の電気変圧器では、特に三角形が正三角形である場合、相は等距離にある。これは、脚部も等距離にあるためである。E型電気変圧器の場合、本発明は、漏れ磁束が制御された磁束と同一の磁気経路をとることを防止する点で、より推奨される。本発明によれば、漏れ磁束は制御された磁束と干渉しない。換言すれば、漏れ磁束は制御された磁束に対抗しないため、さらなるロスが生じない。
【0040】
三角形の変圧器の場合、特に三角形が正三角形であるとき、本発明により、外部の誘導部品が不要とされ得る。さらに、この場合、すべての脚部が等距離にある。
【0041】
本発明によれば、上述のように、このような電気変圧器は、特に自動車用の電気機器部品、特に充電器または電力変換器に有利に組み込まれ得る。
【0042】
さらに、E型電気変圧器の場合、本発明によるこのような電気変圧器は、当該電気変圧器を収容する冷却プールを形成するキャビティを有する冷却モジュールを備える電気機器部品のケーシングに容易に組み込まれ得る。
図1
図2
図3
図4
図5