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▶ フーイャォ グラス インダストリー グループ カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240705BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20240705BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240705BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240705BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B27/28 Z
G02B5/30
B60K35/23
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023514500
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 CN2021129114
(87)【国際公開番号】W WO2022205916
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】202110330372.0
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516151818
【氏名又は名称】フーイャォ グラス インダストリー グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ツォ,ファイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,リシャン
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ドン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シャオロン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,フェンツ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グオフー
(72)【発明者】
【氏名】福原 康太
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104267498(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106082712(CN,A)
【文献】特表2019-525236(JP,A)
【文献】特表2018-518713(JP,A)
【文献】特開2006-039029(JP,A)
【文献】特表2003-500249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0219818(US,A1)
【文献】国際公開第2016/181740(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/020792(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202017100571(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 5/30
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光源及び合わせガラスを備えるヘッドアップディスプレイ(HUD)システムであって、
前記合わせガラスは外側ガラス板、内側ガラス板、及び前記外側ガラス板と前記内側ガラス板との間に挟まれた中間接着層を含み、前記HUDシステムは透明ナノフィルムをさらに備え、前記透明ナノフィルムは前記中間接着層から遠い前記内側ガラス板の表面に堆積されており、前記透明ナノフィルムは、前記内側ガラス板の前記表面から外側に向かって順に堆積された高屈折率層及び低屈折率層で構成された積層構造体を少なくとも1つ含み、前記高屈折率層の屈折率は1.8以上であり、前記低屈折率層の屈折率は1.6以下であり、
前記投影光源はP偏光を生成するために用いられ、前記P偏光は55°~75°の入射角で前記透明ナノフィルムに入射し、前記透明ナノフィルムを備える前記合わせガラスは、前記P偏光に対する反射率が8%以上であり、
前記透明ナノフィルムを備える前記合わせガラスの580nm~680nmの波長範囲内の近赤光反射率R1と、前記透明ナノフィルムを備える前記合わせガラスの420nm~470nmの波長範囲内の近青光反射率R2との比、R1/R2は1.0~2.0であり、
前記透明ナノフィルムに入射した前記P偏光における580nm~680nmの波長範囲内の近赤光比例T1と、前記透明ナノフィルムに入射した前記P偏光における420nm~470nmの波長範囲内の近青光比例T2との比、T1/T2は0.1~0.9である、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項2】
前記中間接着層の屈折率と前記内側ガラス板の屈折率との差は0.1以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項3】
前記中間接着層はくさび形の断面プロファイルを有し、前記くさび形の断面プロファイルのくさび角は0.01~0.18ミリラジアン(mrad)である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項4】
前記透明ナノフィルムを備える前記合わせガラスは、前記P偏光に対する反射率が15%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項5】
前記透明ナノフィルムを備える前記合わせガラスは、前記P偏光に対する反射率が20%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項6】
前記高屈折率層の少なくとも1つは屈折率が2.5以上であり、幾何学的な厚さが45~75nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項7】
前記高屈折率層の少なくとも1つは少なくとも2つの高屈折率サブ層を含み、少なくとも1つの前記高屈折率サブ層の屈折率は2.5以上であり、少なくとも他の1つの前記高屈折率サブ層の屈折率は1.8~2.2である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項8】
前記高屈折率層の少なくとも1つは、2つの第1の高屈折率サブ層と前記2つの第1の高屈折率サブ層の間に配置されている1つの第2の高屈折率サブ層とを含み、前記第1の高屈折率サブ層の屈折率は1.8~2.2であり、前記第2の高屈折率サブ層の屈折率は2.5以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項9】
前記第2の高屈折率サブ層の屈折率は、前記第1の高屈折率サブ層の屈折率より少なくとも0.5大きい、
ことを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項10】
前記透明ナノフィルムに入射した前記P偏光における580nm~680nmの波長範囲内の近赤光比例T1と、前記透明ナノフィルムに入射した前記P偏光における420nm~470nmの波長範囲内の近青光比例T2との比、T1/T2は0.4~0.8である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項11】
前記HUDシステムに光フィルタリング素子が増設され、前記光フィルタリング素子は前記P偏光の光路に位置し、前記光フィルタリング素子は前記P偏光に対する透過率が80%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項12】
前記HUDシステムは投影制御システムをさらに備え、前記投影制御システムは、前記投影光源に前記P偏光を生成するよう制御し、前記投影光源から生成された前記P偏光に対してカラーフィルタリングアルゴリズムを実行するために用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項13】
前記外側ガラス板は厚さが1.8mm以上の湾曲ガラス板であり、前記内側ガラス板は厚さが1.6mm以下の湾曲ガラス板である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項14】
前記内側ガラス板の厚さは0.7~1.2mmであり、前記内側ガラス板は、化学強化されたソーダ石灰シリカガラス、化学強化されたアルミノケイ酸塩ガラス、化学強化されたホウケイ酸ガラス、本体強化されたソーダ石灰シリカガラス、本体強化されたアルミノケイ酸塩ガラス、又は本体強化されたホウケイ酸ガラスである、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項15】
前記近赤光反射率R1と前記近青光反射率R2との比、R1/R2は1.07~1.9である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、発明の名称を「ヘッドアップディスプレイシステム」とする、2021年3月29日に出願された中国特許出願第202110330372.0号の優先権を主張し、そのすべての内容が引用として本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ(head up display、HUD)技術分野に関し、特に、透明ナノフィルムを利用して画像を表示するHUDシステムに関し、具体的に、HUD画像の赤みや黄色みなどの欠陥を解決することができるHUDシステムを提供する。
【背景技術】
【0003】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムは自動車にますます多く配置され、それによって、速度、エンジン回転数、燃費、タイヤ空気圧やナビゲーションなどの重要な走行情報及び外部のスマートデバイスの情報が、運転者の視野に入ったフロントガラス上にリアルタイムに表示されることができる。それで、運転者は頭を下げなくても走行情報を読むことができ、前方道路への注意力が分散することを回避することができる。同時に、運転者が遠くの道と近くの計器パネルとの間に視線を調整する必要がなくなるため、目の疲れを防ぐことができ、運転の安全性を大幅に向上させ、運転体験を改善することができる。
【0004】
HUDシステムは情報を投影して表示する際に、二重像(ゴースト)の課題が存在する。即ち、人間の目で観察される主画像に加えて、人間の目で認識されることができる副画像が現れる可能性がある。副画像をぼかし又は除去するために、従来の方法では、フロントガラスとしてくさび形の合わせガラスが利用される。例えば、特許CN105793033B、CN111417518A、CN110709359Aなどにおいて、合わせガラスの中間層としてくさび形のポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)が利用され又は合わせガラスの1つのガラス板がくさび形断面を有することが開示されている。
【0005】
従来技術において、例えば、特許DE102014220189A1、及び中国特許CN110520782A、CN111433022A、CN111433023Aなどにも、P偏光及び導電性コーティングを利用してHUD画像を生成することが開示されている。それによって、HUD機能を実現すると同時に、断熱及び/又は電気加熱などの機能を実現することもできる。そのため、導電性コーティングの光学的及び電気的性能に対する要求が高い。実際の製品への応用では、P偏光の反射で生成されたHUD画像は色ずれが発生しやすく、HUD画像の赤みや黄色みなどの欠陥が現れ、HUD画像の美感及び品質に重大な影響を与えることが分かった。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)画像に赤みや黄色みなどの欠陥が発生しやすいという技術的課題を解決しようとし、より高品質なHUD画像を有するHUDシステムを提供する。
【0007】
本発明において、技術的課題を解決するには、HUDシステムが提供される。当該HUDシステムは、投影光源及び合わせガラスを備える。合わせガラスは外側ガラス板、内側ガラス板、及び外側ガラス板と内側ガラス板との間に挟まれた中間接着層を含む。当該HUDシステムは透明ナノフィルムをさらに備え、透明ナノフィルムは中間接着層から遠い内側ガラス板の表面に堆積されており、透明ナノフィルムは、内側ガラス板の表面から外側に向かって順に堆積された高屈折率層及び低屈折率層で構成された積層構造体を少なくとも1つ含む。高屈折率層の屈折率は1.8以上であり、低屈折率層の屈折率は1.6以下である。投影光源はP偏光を生成するために用いられ、P偏光は55°~75°の入射角で透明ナノフィルムに入射し、透明ナノフィルムを備える合わせガラスは、P偏光に対する反射率が8%以上である。透明ナノフィルムを備える合わせガラスの580nm~680nmの波長範囲内の近赤光反射率R1と、透明ナノフィルムを備える合わせガラスの420nm~470nmの波長範囲内の近青光反射率R2との比、R1/R2は1.0~2.0である。
【0008】
好ましくは、透明ナノフィルムに入射したP偏光における580nm~680nmの波長範囲内の近赤光比例T1と、透明ナノフィルムに入射したP偏光における420nm~470nmの波長範囲内の近青光比例T2との比、T1/T2は0.1~0.9である。
【0009】
好ましくは、中間接着層の屈折率と内側ガラス板の屈折率との差は0.1以下である。
【0010】
好ましくは、中間接着層はくさび形の断面プロファイルを有し、くさび形の断面プロファイルのくさび角は0.01~0.18ミリラジアン(mrad)である。
【0011】
好ましくは、透明ナノフィルムを備える合わせガラスは、P偏光に対する反射率が15%以上である。
【0012】
好ましくは、透明ナノフィルムを備える合わせガラスは、P偏光に対する反射率が20%以上である。
【0013】
好ましくは、高屈折率層の少なくとも1つは屈折率が2.5以上であり、物理的な厚さが45~75nmである。
【0014】
好ましくは、高屈折率層の少なくとも1つは少なくとも2つの高屈折率サブ層を含み、少なくとも1つの高屈折率サブ層の屈折率は2.5以上であり、少なくとも他の1つの高屈折率サブ層の屈折率は1.8~2.2である。
【0015】
好ましくは、高屈折率層の少なくとも1つは、2つの第1の高屈折率サブ層及び1つの第2の高屈折率サブ層を含み、第1の高屈折率サブ層の屈折率は1.8~2.2であり、第2の高屈折率サブ層の屈折率は2.5以上であり、第2の高屈折率サブ層は2つの第1の高屈折率サブ層の間に配置されている。より好ましくは、第2の高屈折率サブ層の屈折率は、第1の高屈折率サブ層の屈折率より少なくとも0.5大きい。
【0016】
好ましくは、透明ナノフィルムに入射したP偏光における580nm~680nmの波長範囲内の近赤光比例T1と、透明ナノフィルムに入射したP偏光における420nm~470nmの波長範囲内の近青光比例T2との比、T1/T2は0.4~0.8である。
【0017】
好ましくは、HUDシステムに光フィルタリング素子が増設され、光フィルタリング素子はP偏光の光路に位置し、光フィルタリング素子はP偏光に対する透過率が80%以上である。
【0018】
好ましくは、HUDシステムは投影制御システムをさらに備え、投影制御システムは投影光源にP偏光を生成するよう制御するために用いられ、投影制御システムはカラーフィルタリングアルゴリズムを実行するために用いられる。
【0019】
好ましくは、外側ガラス板は厚さが1.8mm以上の湾曲ガラス板であり、内側ガラス板は厚さが1.6mm以下の湾曲ガラス板である。
【0020】
好ましくは、内側ガラス板の厚さは0.7~1.2mmであり、内側ガラス板は、化学強化されたソーダ石灰シリカガラス、化学強化されたアルミノケイ酸塩ガラス、化学強化されたホウケイ酸ガラス、本体強化されたソーダ石灰シリカガラス、本体強化されたアルミノケイ酸塩ガラス、又は本体強化されたホウケイ酸ガラスである。
【0021】
好ましくは、近赤光反射率R1と近青光反射率R2との比、R1/R2は1.07~1.9である。
【0022】
本発明に係るHUDシステムは、視覚的二重像がないクリアなHUD画像を生成することができ、HUD画像の赤みや黄色みなどの欠陥を解決し、より高品質なHUD画像を得ることができる。また、本発明に係るHUDシステムは、HUD画像に中間色を呈させ、HUD画像の色をより豊かにしてフルカラー表示を実現する(例えば、HUD画像に赤色、緑色、青色、黄色、橙色及び白色など異なる色の標識又は符号を同時に表示する)ことができ、さらに、より低コストでフルカラー表示を実現し、投影光源の使用コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明に係るヘッドアップディスプレイ(HUD)システムの構造を示す概略図である。
図2A図2Aは、本発明に係る1つの積層構造体を含む透明ナノフィルムの構造を示す概略図である。
図2B図2Bは、本発明に係る2つの積層構造体を含む透明ナノフィルムの構造を示す概略図である。
図2C図2Cは、本発明に係る3つの積層構造体を含む透明ナノフィルムの構造を示す概略図である。
図3A図3Aは、本発明に係る2つのサブ層からなる高屈折率層を含む透明ナノフィルムの構造を示す概略図である。
図3B図3Bは、本発明に係る2つのサブ層からなる低屈折率層を含む透明ナノフィルムの構造を示す概略図である。
図3C図3Cは、本発明に係る3つのサブ層からなる高屈折率層を含む透明ナノフィルムの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の内容についてさらに説明する。
【0025】
図1に示されるように、本発明に係るヘッドアップディスプレイ(HUD)システムは、投影光源1及び合わせガラス2を備える。合わせガラス2は外側ガラス板21、内側ガラス板23、及び外側ガラス板21と内側ガラス板23との間に挟まれた中間接着層22を含む。二重像を除去するように、HUDシステムは透明ナノフィルム3をさらに備え、透明ナノフィルム3は、中間接着層22から遠い内側ガラス板23の表面(即ち、第4の表面232)に堆積されている。投影光源1はP偏光11を生成するために用いられ、P偏光11は55°~75°の入射角で透明ナノフィルム3に入射する。透明ナノフィルム3を備える合わせガラス2は、P偏光11に対する反射率が8%以上である。本発明において、P偏光が55°~75°の入射角で入射する場合に、ガラス-空気界面でのP偏光に対する反射率が低く、透明ナノフィルム3のP偏光に対する反射率が高いという特性を利用して、合わせガラス上の反射画像を目視で観察する際に透明ナノフィルム上の反射画像のみを主画像として観察し、視覚的二重像という現象を除去する。
【0026】
本発明において、外側ガラス板21は、第一表面211及び第二表面212を有する。第一表面211は自動車外部に向かって配置されており、且つ中間接着層22から遠い。第二表面212は中間接着層22に近い。内側ガラス板23は第三表面231及び第4の表面232を有する。第三表面231は中間接着層22に近い。第4の表面232は自動車内部に向かって配置されており、且つ中間接着層22から遠い。第二表面212と第三表面231は、中間接着層22を介して接着されて合わせガラス2を形成する。
【0027】
中間接着層22としては、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)、エチレン酢酸ビニル(ethylene vinyl acetate、EVA)、ポリアクリレート(polyacrylate、PA)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate、PMMA)、イオノプラスト中間層(ionoplast interlayer)(セントリグラスプラス(sentry glass plus、SGP))、ポリウレタン(polyurethane、PU)などのうちの少なくとも1つが選択されることができる。より高品質なHUD画像を得るように、中間接着層22の屈折率と内側ガラス板23の屈折率との差は0.1以下であることが好ましい。当然ながら、中間接着層22は、単層構造又は多層構造であることができ、多層構造の例示としては、二層構造、三層構造、四層構造、五層構造などが挙げられる。中間接着層22は他の機能を備えることもでき、例示として、シャドウバンドとして少なくとも1つの着色領域を設けることによって太陽光の目への悪影響を減らすようになり、赤外線吸収剤を加えることによって日焼け止めや断熱機能を備えるようになり、紫外線吸収剤を加えることによって紫外線遮断機能を備えるようになり、又は多層構造を有する中間接着層22のうちの1層の可塑剤含有量を高めることによって遮音機能を備えるようになる。フロントガラス上で生じた車両外部環境における景物の透視二重像を除去するように、中間接着層22はくさび形の断面プロファイルを有することが好ましい。くさび形の断面プロファイルのくさび角は0.01~0.18ミリラジアン(milli-radian、mrad)であり、例えば、0.01mrad、0.02mrad、0.03mrad、0.04mrad、0.05mrad、0.06mrad、0.07mrad、0.08mrad、0.09mrad、0.10mrad、0.11mrad、0.12mrad、0.13mrad、0.14mrad、0.15mrad、0.16mrad、0.17mrad、0.18mradなどが挙げられる。このように、小さいくさび角を有する中間接着層22を利用するのみで、低コストで反射二重像及び透視二重像を同時に除去することができ、より高品質なHUD画像及び観察効果を得ることができる。
【0028】
図1において、投影光源1によって生成されたP偏光11は、55°~75°の入射角θで透明ナノフィルム3に入射する。透明ナノフィルム3は、P偏光11の一部を直接に反射して反射光12を形成することができる。反射光12は観察者100の目に直接に入り、HUD主画像を形成する。透明ナノフィルム3が薄く且つ入射角θがブリュースター角(約57°)に近いため、透明ナノフィルム3を透過したP偏光の一部は第4の表面232でほとんど反射せず、また伝播方向が基本的に変わらない。合わせガラス2に入ったP偏光の反射光は観察者100の目に再び入り、その反射光の強度が低くひいてはゼロに近い。それで、観察者100は二重像の存在を感知しにくくなり、この場合のHUD画像はクリアで、視覚的二重像がなく表示効果が良好である。
【0029】
投影光源1は速度、エンジン回転数、燃費、タイヤ空気圧、動的ナビゲーション、ナイトビジョン、ライブマップなどの関連文字及び画像情報を合わせガラス2に出力するために用いられる。それによって、それらの情報は車内の観察者100に観察されることができ、HUDさらに拡張現実ヘッドアップディスプレイ(augmented reality-HUD、AR-HUD)が実現される。投影光源1は当業者に知られている素子であり、レーザー、発光ダイオード(light emitting diode、LED)、液晶ディスプレイ(liquid crystal display、LCD)、デジタル光処理(digital light processing、DLP)、エレクトロルミネセンス(electroluminescence、EL)、陰極線管(cathode ray tube、CRT)、真空蛍光表示管(vacuum fluorescent display、VFD)、コリメートレンズ(collimator lens)、球面補正レンズ、凸レンズ、凹レンズ、反射鏡及び/又は偏光子を含むが、それらに限定されない。また、投影光源1の位置及び入射角は、車両内の観察者100の異なる位置又は高さに合わせるように調整可能である。
【0030】
透明ナノフィルム3を備える合わせガラス2は、少なくとも8%のP偏光11を直接に反射してHUD主画像を形成することができる。透明ナノフィルム3は具体的に、内側ガラス板23の第4の表面232から外側に向かって順に堆積された高屈折率層31及び低屈折率層32で構成された積層構造体を少なくとも1つ含む。高屈折率層31の屈折率は1.8以上である。高屈折率層31の屈折率は2.0以上であると好ましく、2.2以上であるとさらに好ましい。また、高屈折率層31は、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、セリウム(Ce)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)元素の酸化物及びそれらの混合物、又は、ケイ素(Si)、Al、Zr、イットリウム(Y)、Ce、ランタン(La)元素の窒化物、窒素酸化物、及びそれらの混合物から少なくとも1つ選択され、具体的に、TiO、NbO、酸化ハフニウム(HfO)、ZnSnO、TaO、MoO、ZrO、二酸化セリウム(CeO)、三酸化タングステン(WO)、BiO又はSiZrNなどが挙げられることができる。低屈折率層32の屈折率は1.6以下である。低屈折率層32の屈折率は1.5以下であると好ましい。さらに、低屈折率層32は、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)及びそれらの混合物から少なくとも1つ選択され、具体的に、SiAlOであることができる。
【0031】
透明ナノフィルム3を備える合わせガラス2は、P偏光11に対する反射率が15%以上であると好ましい。具体的に、透明ナノフィルム3を備える合わせガラス2の580nm~680nmの波長範囲内の近赤光反射率R1と、透明ナノフィルム3を備える合わせガラス2の420nm~470nmの波長範囲内の近青光反射率R2との比、R1/R2は1.0~2.0であり、具体的に、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9又は2.0などが挙げられることができる。R1/R2は1.07~1.9であるとより好ましい。それによって、P偏光に対してより高い反射率を有し、より高品質なHUD画像を得ることができる。
【0032】
図2Aに示されるように、例示として、透明ナノフィルム3は高屈折率層31及び低屈折率層32で構成された積層構造体を1つ含み、即ち、内側ガラス板23/高屈折率層31/低屈折率層32である。図2Bに示されるように、例示として、透明ナノフィルム3は高屈折率層31及び低屈折率層32で構成された積層構造体を2つ含み、即ち、内側ガラス板23/第1の高屈折率層31/第1の低屈折率層32/第2の高屈折率層31/第2の低屈折率層32である。図2Cに示されるように、例示として、透明ナノフィルム3は高屈折率層31及び低屈折率層32で構成された積層構造体を3つ含み、即ち、内側ガラス板23/第1の高屈折率層31/第1の低屈折率層32/第2の高屈折率層31/第2の低屈折率層32/第3の高屈折率層31/第3の低屈折率層32である。当然ながら、例示として、透明ナノフィルム3は高屈折率層及び低屈折率層で構成された積層構造体を4つ含み、即ち、内側ガラス板23/第1の高屈折率層/第1の低屈折率層/第2の高屈折率層/第2の低屈折率層/第3の高屈折率層/第3の低屈折率層/第4の高屈折率層/第4の低屈折率層である。このように、高屈折率層及び低屈折率層の膜層材料と膜層の厚さを合理的に設計することによって、透明ナノフィルム3は優れた機械的安定性、化学的安定性及び熱安定性を持ち、優れた耐久性を確保することができる。より高品質なHUD画像を得るように、透明ナノフィルム3はP偏光11に対する反射率が20%以上であることが好ましい。具体的に、少なくとも1つの高屈折率層は屈折率が2.5以上であり、物理的な厚さが45~75nmである。
【0033】
高屈折率層31及び低屈折率層32で構成された積層構造体において、高屈折率層31及び/又は低屈折率層32は少なくとも2つのサブ層をさらに含むことができ、即ち、高屈折率層31は少なくとも2つの高屈折率サブ層を含み、及び/又は低屈折率層32は少なくとも2つの低屈折率サブ層を含む。図3Aに示されるように、例示として、高屈折率層31は第1の高屈折率サブ層311及び第2の高屈折率サブ層312を含み、即ち、内側ガラス板23/第1の高屈折率サブ層311/第2の高屈折率サブ層312/低屈折率層32である。また、高屈折率層31における内側ガラス板23に近いサブ層(即ち、第1の高屈折率サブ層311)の屈折率は、内側ガラス板23から遠いサブ層(即ち、第2の高屈折率サブ層312)の屈折率より低いことが好ましい。図3Bに示されるように、例示として、低屈折率層32は第1の低屈折率サブ層321及び第2の低屈折率サブ層322を含み、即ち、内側ガラス板23/高屈折率層31/第1の低屈折率サブ層321/第2の低屈折率サブ層322である。当然ながら、例示として、高屈折率層31は第1の高屈折率サブ層及び第2の高屈折率サブ層を含み、且つ低屈折率層32は第1の低屈折率サブ層及び第2の低屈折率サブ層を含み、即ち、内側ガラス板23/第1の高屈折率サブ層/第2の高屈折率サブ層/第1の低屈折率サブ層/第2の低屈折率サブ層である。
【0034】
高屈折率層31が少なくとも2つの高屈折率サブ層を含む場合に、少なくとも1つの高屈折率サブ層の屈折率は2.5以上であり、少なくとも他の1つの高屈折率サブ層の屈折率は1.8~2.2であることが好ましい。屈折率が1.8~2.2である高屈折率サブ層は、屈折率が2.5以上である高屈折率サブ層より内側ガラス板23の第4の表面232に近い。図3Cに示されるように、具体的な例として、高屈折率層31は3つの高屈折率サブ層を含み、即ち2つの第1の高屈折率サブ層311及び1つの第2の高屈折率サブ層312を含む。第1の高屈折率サブ層311の屈折率は1.8~2.2であり、第2の高屈折率サブ層312の屈折率は2.5以上であり、第2の高屈折率サブ層312は、2つの第1の高屈折率サブ層311の間に配置されている。即ち、高屈折率層31の具体的な構造は、第1の高屈折率サブ層311/第2の高屈折率サブ層312/第1の高屈折率サブ層311である。第2の高屈折率サブ層312の屈折率は、第1の高屈折率サブ層311の屈折率より少なくとも0.5大きいことが好ましい。それによって、P偏光に対してより高い反射率を有し、より高品質なHUD画像を得ることができる。
【0035】
HUD画像の赤みや黄色みなどの欠陥をよりよく解決するように、本発明において、透明ナノフィルム3に入射したP偏光11における580nm~680nmの波長範囲内の近赤光比例T1と、透明ナノフィルム3に入射したP偏光11における420nm~470nmの波長範囲内の近青光比例T2との比、T1/T2は0.1~0.9であると好ましく、具体的に、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9などが挙げられることができ、T1/T2は0.4~0.8であるとさらに好ましい。色度理論(chromaticity theory)によると、所与の照明光源S(λ)のもとで、いかなる物体の備える色の三刺激値X、Y、Zは以下の公式を満たす。
【数1】


【数2】


【数3】

【0036】
kは調整ファクタであり、R(λ)は物体の分光反射率であり、S(λ)は光源の相対的な分光パワー分布であり、

は国際照明委員会(international commission on illumination、CIE)標準観測者を用いて計算された分光三刺激値であり、dλは波長間隔である。上記公式から分かるように、本発明において、透明ナノフィルム3を備える合わせガラス2の近赤光反射率R1と、透明ナノフィルム3を備える合わせガラス2の近青光反射率R2との比R1/R2に基づいて、透明ナノフィルム3に入射したP偏光11の相対的な分光パワー分布が改善される。それによって、HUD画像の赤みや黄色みなどの欠陥を解決すると同時に、HUD画像に中間色を呈させ、HUD画像の色をより豊かにしフルカラー表示を実現する(例えば、HUD画像に赤色、緑色、青色、黄色、橙色及び白色など異なる色の標識又は符号を同時に表示する)ことができる。また、本発明において、投影光源の合成光の比例を厳しく制御しなくてもフルカラー表示を実現することができ、より低コストでフルカラー表示を実現し、投影光源の使用コストを低減することができる。
【0037】
透明ナノフィルム3に入射したP偏光11の相対的な分光パワー分布を改善するために、本発明において、HUDシステムに光フィルタリング素子が増設され及び/又はHUDシステムはカラーフィルタリングアルゴリズムを実行するために用いられることが好ましい。それによって、透明ナノフィルム3に入射したP偏光11における580nm~680nmの波長範囲内の近赤光比例T1と、透明ナノフィルム3に入射したP偏光11における420nm~470nmの波長範囲内の近青光比例T2との比、T1/T2は0.1~0.9となる。光フィルタリング素子はP偏光の光路に位置し、光フィルタリング素子はP偏光に対する透過率が80%以上である。光フィルタリング素子の具体的な例として、光学フィルター、フィルター膜、フィルム、フィルターレンズ、マイクロナノアレイなどが挙げられることができる。光フィルタリング素子は投影光源1の内部に位置してもよく、又は投影光源1と合わせガラス2との間に位置する。HUDシステムは投影制御システムをさらに備える。投影制御システムは投影光源1にP偏光11を生成するよう制御するために用いられ、投影制御システムはカラーフィルタリングアルゴリズムを実行する。投影光源1によって生成されたP偏光11は、デジタル画像処理技術でカラーフィルタリングアルゴリズムにより処理され、カラーフィルタリングアルゴリズムの具体的な例として、線形法、非線形法、マスキング方法、色補償方法、色補正方法などが挙げられることができる。
【0038】
自動車ガラスを使用する安全要求を満たすために、外側ガラス板21としては、厚さが1.8mm以上の湾曲ガラス板が選択され、例えば、外側ガラス板21は、少なくとも560℃の高温熱処理及びベンディング成形工程を行うことによって取得される。内側ガラス板23としては、少なくとも560℃の高温熱処理及びベンディング成形工程を行うことによって取得された湾曲ガラス板が選択される。自動車の軽量化という観点から、内側ガラス板23は厚さが1.6mm以下の湾曲ガラス板であることが好ましい。本発明において、内側ガラス板23の第4の表面232に透明ナノフィルム3が堆積された場合に、より薄い内側ガラス板23を用いるとよりよいHUD效果を得ることができる、ことは発見された。内側ガラス板23は厚さが0.7~1.2mmであると好ましい。内側ガラス板23は、化学強化されたソーダ石灰シリカガラス、化学強化されたアルミノケイ酸塩ガラス、化学強化されたホウケイ酸ガラス、本体強化されたソーダ石灰シリカガラス、本体強化されたアルミノケイ酸塩ガラス、又は本体強化されたホウケイ酸ガラスなどであることができる。本発明に係る化学強化は主に、異なるイオン半径を有するイオンがガラスの表面でイオン交換を行うことによって、応力層の深さをある程度に伴い、ガラスの表面に高い表面応力が発生し、それによって、ガラスの力学性能の強度を高めることである。本発明に係る本体強化されたガラスとは、物理強化を必要とせず、化学強化も必要とせず、自体が別のガラスと直接に合わせて合わせガラスを形成することができる原ガラス(raw glass)である。また、合わせガラスの品質は、中国の「GB9656-2016自動車安全ガラス」などの自動車合わせガラスの使用基準に適合する。
【実施例
【0039】
以下、本発明のいくつかの実施例を挙げながらさらに説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0040】
以下、本発明の実施例1~15のHUDシステム及び比較例1~3のHUDシステムについて説明する。実施例1~15及び比較例1~3において、投影光源としては、LEDバックライトを使用した薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(thin film transistor LCD、TFT-LCD)投影機が選択される。TFT-LCD投影機はP偏光を生成することができ、複数の反射鏡を含む。観察者によって観察されることができる表示画像が最もクリアになるように、投影光源の位置、出射光の入射方向が調整されることができる。
【0041】
T1は透明ナノフィルム3に入射したP偏光11における580nm~680nmの波長範囲内の近赤光比例であり、T2は透明ナノフィルム3に入射したP偏光11における420nm~470nmの波長範囲内の近青光比例であり、T1及びT2はそれぞれ、以下の公式に基づいて計算で得られる。
【数4】


【数5】


【0042】
kは調整ファクタであり、R(λ)は物体の分光反射率であり、S(λ)は光源の相対的な分光パワー分布であり、

は国際照明委員会(CIE)標準観察者を用いて計算された分光三刺激値であり、dλは波長間隔である。
【0043】
R1は透明ナノフィルム3を備える合わせガラスの580nm~680nmの波長範囲内の近赤光反射率であり、R2は透明ナノフィルム3を備える合わせガラスの420nm~470nmの波長範囲内の近青光反射率であり、R1及びR2は国際標準化機構(international organization for standardization、ISO)9050という規格に基づいて測定及び計算で得られる。
【0044】
実施例1~5及び比較例1
【0045】
本発明において、透明ナノフィルムの膜構造を設計し、及び透明ナノフィルムに入射したP偏光のT1/T2の値を調整することによって、実施例1~5及び比較例1を得る。
【0046】
合わせガラス:グリーンガラス(2.1mm)/PVB(0.76mm)/ホワイトガラス(2.1mm)/透明ナノフィルム。
【0047】
透明ナノフィルム:ホワイトガラス/SiN(41.4nm)/TiO(48.9nm)/SiN(13.3nm)/SiO(112nm)。
【0048】
実施例1:入射P偏光のT1/T2は0.8に等しい。
【0049】
実施例2:入射P偏光のT1/T2は0.7に等しい。
【0050】
実施例3:入射P偏光のT1/T2は0.6に等しい。
【0051】
実施例4:入射P偏光のT1/T2は0.5に等しい。
【0052】
実施例5:入射P偏光のT1/T2は0.4に等しい。
【0053】
比較例1:入射P偏光は、光フィルタリング処理又はカラーフィルタリング処理がされない投影光源によって生成された白色光である。
【0054】
実施例1~5及び比較例1において、HUDシステムは、投影光源によって生成されたP偏光を55°、60°、65°、70°、75°の入射角で投影する。呈される目標画像は、入射角に対応する反射角の方向から観察される。目標画像が白色スポットであるか否かという基準に基づいて、HUD画像が赤み又は黄色みを帯びるか否かが判断される。白色スポットの赤・緑・青(red-green-blue、RGB)値が(255、255、255)であり、観察結果は表1に計上される。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から分かるように、透明ナノフィルムを備える合わせガラスのR1/R2は1.29~1.90である。比較例1では、光フィルタリング処理又はカラーフィルタリング処理がされない投影光源を利用して生成された白色光が55°、60°、65°、70°、75°で入射する際に、目標画像は赤み、黄色みを帯び、又は強い黄色みを呈している。実施例1~5では、T1/T2が0.4~0.8である入射P偏光を利用することで、目標画像は、赤みや黄色みを帯びない基準の白色スポットを呈している。実施例1では、P偏光が60°及び65°で入射する際に、やや黄色みを帯びるが、赤みという現象が著しく改善され、また、やや黄色みを帯びるという現象はHUD画像の観察効果に影響を与えない。
【0057】
実施例6~10及び比較例2
【0058】
本発明において、透明ナノフィルムの膜構造を設計し、及び透明ナノフィルムに入射したP偏光のT1/T2の値を調整することによって、実施例6~10及び比較例2を得る。
【0059】
合わせガラス:グリーンガラス(2.1mm)/PVB(0.76mm)/ホワイトガラス(0.7mm)/透明ナノフィルム。
【0060】
透明ナノフィルム:ホワイトガラス/ZnSnO(24.8nm)/SiO(13.8nm)/ZrN(10.2nm)/TiO(51.7nm)/ZrN(13nm)/SiO(116nm)。
【0061】
実施例6:入射P偏光のT1/T2は0.8に等しい。
【0062】
実施例7:入射P偏光のT1/T2は0.7に等しい。
【0063】
実施例8:入射P偏光のT1/T2は0.6に等しい。
【0064】
実施例9:入射P偏光のT1/T2は0.5に等しい。
【0065】
実施例10:入射P偏光のT1/T2は0.4に等しい。
【0066】
比較例2:入射P偏光は、光フィルタリング処理又はカラーフィルタリング処理がされない投影光源によって生成された白色光である。
【0067】
実施例6~10及び比較例2において、HUDシステムは、投影光源によって生成されたP偏光を55°、60°、65°、70°、75°の入射角で投影する。呈される目標画像は、入射角に対応する反射角の方向から観察される。目標画像が白色スポットであるか否かという基準に基づいて、HUD画像が赤み又は黄色みを帯びるか否かが判断される。白色スポットのRGB値が(255、255、255)であり、観察結果は表2に計上される。
【0068】
【表2】
【0069】
表2から分かるように、透明ナノフィルムを備える合わせガラスのR1/R2は1.14~1.47である。比較例2では、光フィルタリング処理又はカラーフィルタリング処理がされない投影光源を利用して生成された白色光が55°、60°、65°、70°、75°で入射する際に、目標画像は強い黄色みを呈している。実施例6~10では、T1/T2が0.4~0.8である入射P偏光を利用することで、目標画像は、黄色みを帯びない基準の白色スポットを呈している。実施例6では、P偏光が60°及び65°で入射する際に、目標画像はやや黄色みを帯びるが、それはHUD画像の観察効果に影響を与えない。
【0070】
実施例11~15及び比較例3
【0071】
本発明において、透明ナノフィルムの膜構造を設計し、及び透明ナノフィルムに入射したP偏光のT1/T2の値を調整することによって、実施例11~15及び比較例3を得る。
【0072】
合わせガラス:グリーンガラス(2.1mm)/PVB(0.76mm)/ホワイトガラス(1.6mm)/透明ナノフィルム。
【0073】
透明ナノフィルム:ホワイトガラス/SiN(15.4nm)/TiO(35.1nm)/SiO(14.5nm)/TiO(9.4nm)/SiN(9.0nm)/SiO(108.4nm)。
【0074】
実施例11:入射P偏光のT1/T2は0.8に等しい。
【0075】
実施例12:入射P偏光のT1/T2は0.7に等しい。
【0076】
実施例13:入射P偏光のT1/T2は0.6に等しい。
【0077】
実施例14:入射P偏光のT1/T2は0.5に等しい。
【0078】
実施例15:入射P偏光のT1/T2は0.4に等しい。
【0079】
比較例3:入射P偏光は、光フィルタリング処理又はカラーフィルタリング処理がされない投影光源によって生成された白色光である。
【0080】
実施例11~15及び比較例3において、HUDシステムは、投影光源によって生成されたP偏光を55°、60°、65°、70°、75°の入射角で投影する。呈される目標画像は、入射角に対応する反射角の方向から観察される。目標画像が白色スポットであるか否かという基準に基づいて、HUD画像が赤み又は黄色みを帯びるか否かが判断される。白色スポットのRGB値が(255、255、255)であり、観察結果は表3に計上される。
【0081】
【表3】
【0082】
表3から分かるように、透明ナノフィルムを備える合わせガラスのR1/R2は1.07~1.25である。比較例3では、光フィルタリング処理又はカラーフィルタリング処理がされない投影光源を利用して生成された白色光が55°、60°、65°、70°、75°で入射する際に、目標画像は強い黄色みを呈している。実施例11~15では、T1/T2が0.4~0.8である入射P偏光を利用することで、目標画像は、黄色みを帯びない基準の白色スポットを呈している。
【0083】
上記では、本発明に記載のHUDシステムについて具体的に説明したが、本発明は上記した具体的な実施形態の内容に限定されないため、本発明の技術的要点に基づいて行われるいかなる改良、同等の修正及び置換などは、いずれも本発明の保護範囲に属する。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C