(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】糸長計測装置及び編糸のバッファ装置
(51)【国際特許分類】
B65H 61/00 20060101AFI20240705BHJP
B65H 51/22 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B65H61/00
B65H51/22
(21)【出願番号】P 2023517191
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015484
(87)【国際公開番号】W WO2022230558
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2021075968
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】森 淳
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-138563(JP,A)
【文献】特開昭54-82465(JP,A)
【文献】特開2010-47407(JP,A)
【文献】特表2003-528225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 51/22
B65H 55/00
-55/04
B65H 61/00
-63/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の取付部材に対して回転自在に設けられる回転部材と、
前記回転部材の回転軸線上から外れた位置に設けられ、給糸方向上流側から解舒された編糸を前記給糸方向下流側に導入する導入部と、
前記導入部から導入された編糸を前記給糸方向下流側の給糸経路へ導出する導出部と、
前記回転部材の回転量を検出するための回転量検出部と、
を具備し、
前記導入部は、
前記回転部材と一体的に形成され、
前記回転軸線上までの最短距離が20mmよりも短くなる位置に形成され、
前記回転部材は、
給糸方向下流側の給糸経路へと導出される編糸の動作により回転するように形成される、
糸長計測装置。
【請求項2】
前記導出部は、
前記回転部材の回転軸線上に設けられる、
請求項1に記載の糸長計測装置。
【請求項3】
前記導出部は、
前記回転部材と一体的に且つ筒形状に形成される、
請求項1または請求項2に記載の糸長計測装置。
【請求項4】
前記回転量検出部は、
前記回転部材と一体的に回転する被検出部を有し、
前記被検出部の回転に伴う当該被検出部の表面の変化を検出して前記回転量を検出する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の糸長計測装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の糸長計測装置と、編糸が巻回されて貯留され、前記糸長計測装置よりも給糸方向上流側に配置されるボビンと、を備えた編糸のバッファ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッファ装置から繰り出される編糸の糸長を計測可能な糸長計測装置及び編糸のバッファ装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッファ装置から繰り出されて編機に給糸される編糸の糸長を計測する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、回転ドラムに蓄積した糸が引き出される際の引き出し量を計測可能な技術が開示されている。
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、回転ドラムの周囲に、周方向に90度ずつ間隔を空けて4箇所に光学センサを配置し、引き出される糸による光の遮断を各光学センサが検知することで、糸の引き出し量を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、4箇所に光学センサが配置されたとしても、これらの互いの間を通る糸までは検出できないため、糸長計測の精度向上には改善の余地があった。
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、高精度な糸長計測を実現することができる糸長計測装置及び編糸のバッファ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本発明に係る糸長計測装置は、所定の取付部材に対して回転自在に設けられる回転部材と、前記回転部材の回転軸線上から外れた位置に設けられ、給糸方向上流側から解舒された編糸を前記給糸方向下流側に導入する導入部と、前記導入部から導入された編糸を前記給糸方向下流側の給糸経路へ導出する導出部と、前記回転部材の回転量を検出するための回転量検出部と、を具備するものである。
このように構成することにより、高精度な糸長計測を実現することができる。
【0010】
また、前記導出部は、前記回転部材の回転軸線上に設けられるようにしてもよい。
このように構成することにより、編糸に対する負荷を軽減することができる。
【0011】
また、前記導入部は、前記回転軸線上までの最短距離が20mmよりも短くなる位置に形成されるようにしてもよい。
このように構成することにより、より高精度な糸長計測を実現することができる。
【0012】
また、前記回転量検出部は、前記回転部材と一体的に回転する被検出部を有し、前記被検出部の回転に伴う当該被検出部の表面の変化を検出して前記回転量を検出するようにしてもよい。
このように構成することにより、より高精度な糸長計測を実現することができる。
【0013】
また、本発明に係るバッファ装置は、本発明に係る糸長計測装置と、編糸が巻回されて貯留され、前記糸長計測装置よりも給糸方向上流側に配置されるボビンと、を備えたものである。
このように構成することにより、高精度な糸長計測を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、高精度な糸長計測を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る糸長計測装置及びバッファ装置を備える横編機の全体的な構成を示した正面図。
【
図2】横編機の制御に関する構成を示したブロック図。
【
図3】糸長計測装置及びバッファ装置を備える給糸装置を示した正面図。
【
図6】(a)糸長計測装置での編糸の糸長の計測の様子を示す正面図。(b)同じく、(a)におけるX-X断面図。
【
図7】(a)第二実施形態に係る回転部材を示した正面図。(b)第三実施形態に係る回転部材を示した斜視図。(c)第四実施形態に係る回転部材を示した斜視図。
【
図8】(a)第五実施形態に係る回転部材を示した正面図。(b)第六実施形態に係る回転部材を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。また、各図においては、説明の便宜上、一部の部材の図示を適宜省略している場合がある。
【0017】
まず、本発明の第一実施形態に係る給糸装置100を備える横編機1の全体的な構成について説明する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、横編機1は、主としてニードルベッド10、キャリッジ20、糸道レール30、サーボモータ40、糸立台50、制御部60及び給糸装置100を具備する。
【0019】
図1に示すニードルベッド10は、歯口(不図示)を挟んで前後に互いに対向するように配置されている。前後のニードルベッド10は、例えば、前後中央側(互いに対向する側)に向かって上方に傾斜するような側面視逆V字状に配置されている。各ニードルベッド10には、当該ニードルベッド10の長手方向(左右方向)に沿って多数の編針11が並ぶように設けられている。前後のニードルベッド10は、互いに編目の受け渡し(目移し)を行う際に、相対的に左右に移動することができる。
【0020】
キャリッジ20は、前後のニードルベッド10に対して上方から対向するように前後一対配置される。前後のキャリッジ20は、複数の糸道レール30を跨ぐように配置されたブリッジ20aにより連結されている。キャリッジ20は、サーボモータ40(
図2参照)によって、ニードルベッド10の長手方向に沿って往復移動することができる。キャリッジ20には、ニードルベッド10の編針11を選択的に動作させるための選針機構(不図示)やカム機構21(
図2参照)が設けられる。
【0021】
図1に示す糸道レール30は、歯口の上方に、ニードルベッド10の長手方向に沿って延びるように複数配置される。糸道レール30には、編糸Yを給糸するヤーンキャリア31が移動可能となるように支持されている。
【0022】
図1に示す糸立台50には、編糸Yが巻かれた糸コーン51が設けられる。糸コーン51からの編糸Yは、給糸経路Aを経てヤーンキャリア31へと給糸される。ここで、給糸経路Aとは、糸コーン51からヤーンキャリア31までの間の編糸Yが給糸される経路である。また、糸コーン51の上方には、天バネ52が設けられる。天バネ52は、糸コーン51から引き出され、給糸方向下流側(ヤーンキャリア31側)へ給糸される編糸Yに張力を付与するものである。天バネ52は、給糸経路A上に位置する。
【0023】
図2に示す制御部60は、横編機1の動作を制御するためのものである。制御部60は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部等を具備する。制御部60の記憶部には、横編機1の制御に用いられる種々の情報やプログラム等が記憶される。制御部60は、横編機1の適宜の箇所(例えば、横編機1の本体内(後側のニードルベッド10の下方))に設けられる。
【0024】
制御部60は、サーボモータ40と接続され、当該サーボモータ40の動作を制御することができる。制御部60は、サーボモータ40の動作を制御することで、キャリッジ20を任意に移動させることができる。また制御部60は、サーボモータ40の回転数に基づいて、キャリッジ20の位置を検出することができる。また制御部60は、キャリッジ20(より詳細には、カム機構21)と接続され、当該キャリッジ20の動作を制御することができる。
【0025】
制御部60は、予め作成された編成プログラム等に基づいて、横編機1の各部を制御する。具体的には、制御部60は、サーボモータ40の動作を制御することで、ニードルベッド10の長手方向に沿ってキャリッジ20を往復移動させることができる。この際、キャリッジ20に搭載されたカム機構21等により、編針11を歯口に対して進退させることで、ニット、タック、ミス等の編成動作と、前後のニードルベッド10間での編目の受け渡しを行うことができる。このようなキャリッジ20の往復移動を繰り返すことによって、編地Kが編成される。
【0026】
次に、
図1から
図6までを用いて、給糸装置100の構成について説明する。給糸装置100は、糸コーン51からの編糸Yを貯留すると共に、貯留した編糸Yをヤーンキャリア31へ略一定のテンションで給糸するものである。
図1に示すように、給糸装置100は、横編機1の側方(図例では左側)に配置される。給糸装置100は、給糸経路Aに位置する。なお、図例では、1つの給糸装置100を図示しているが、給糸装置100は必要に応じて複数(例えばヤーンキャリア31の数に応じた数)設置可能である。給糸装置100は、主として支持部110、バッファ装置120、抵抗付与部130、糸長計測装置200及び制御部300を具備する。
【0027】
図3に示す支持部110は、後述するバッファ装置120や糸長計測装置200等を支持するものである。支持部110は、例えば複数の板形状の部材を組み合わせることにより形成される。支持部110は、適宜の設置対象に設置される。支持部110は、上ガイド部111及び下ガイド部112を具備する。
【0028】
上ガイド部111は、天バネ52からの編糸Yが導入される部分である。上ガイド部111は、上下方向に貫通し編糸Yが通過する孔を有する。上ガイド部111は、支持部110の右面から右方に突出する適宜のアームを介して支持される。
【0029】
下ガイド部112は、後述するバッファ装置120からの編糸Yが導出される部分である。下ガイド部112は、上下方向に貫通し編糸Yが通過する孔を有する。下ガイド部112は、上ガイド部111よりも下方において、支持部110の右面から右方に突出する適宜のアームを介して支持される。
【0030】
図3に示すバッファ装置120は、糸コーン51から編糸Yを引き出すと共に、編糸Yを貯留するものである。バッファ装置120に貯留された編糸Yは、必要に応じて給糸方向下流側へ引き出される(繰り出される)。バッファ装置120は、上ガイド部111と下ガイド部112との間に位置するように、支持部110に設けられる。バッファ装置120は、ハウジング121、駆動部122、巻付部123及びボビン124を具備する。
【0031】
ハウジング121は、後述する駆動部122を内部に収容するものである。ハウジング121は、支持部110の右面に固定される。
【0032】
図2及び
図3に示す駆動部122は、後述する巻付部123を駆動するものである。駆動部122は、ハウジング121の内部に設けられる。駆動部122は、適宜の駆動源(例えばモータ等)を有する。
【0033】
図3に示す巻付部123は、上ガイド部111からの編糸Yを、後述するボビン124に巻回するものである。巻付部123は、ハウジング121の下方に位置すると共に、ハウジング121に対して回転自在に設けられる。巻付部123は、駆動部122の駆動力により、上下方向に向く回転軸線回りに回転する。巻付部123は、平面視時計回りに回転する。
【0034】
図3及び
図4に示すボビン124は、編糸Yを貯留可能なものである。ボビン124は、軸方向を上下方向に向けた略円柱形状に形成される。ボビン124は、巻付部123の下方に位置するように、ハウジング121に設けられる。ボビン124は、外周面に編糸Yが巻回されることで編糸Yを貯留する。ボビン124には、一定の巻き方で(1周あたりの糸長が概ね同じ長さになるように)、巻付部123により編糸Yが巻回される。
【0035】
ボビン124に貯留された編糸Yは、横編機1(キャリッジ20やヤーンキャリア31等)の編成動作に伴い引き出され(解舒され)、給糸方向下流側へ給糸される。ボビン124から解舒される編糸Yの位置は、ボビン124の外周面に沿って平面視時計回りに旋回するように変わる。
【0036】
図3及び
図4に示す抵抗付与部130は、ボビン124から引き出される編糸Yに、摩擦による抵抗を付与するものである。抵抗付与部130は、ボビン124の下方に配置される。抵抗付与部130は、編糸Yが通過可能なように上下方向に開口した形状に形成される。抵抗付与部130は、当接部131、受け部132及び付勢部133を具備する。なお、
図3及び
図4では、抵抗付与部130を断面図として図示している。
【0037】
当接部131は、ボビン124の下端部に当接する部分である。当接部131は、上下を逆にした略円錐台形状であって、上下に開口する筒形状に形成されている。当接部131は、ボビン124と当接する面が、断面視において上方へ向かうに従い拡径する傾斜面状となっている。本実施形態では、上記傾斜面の水平方向に対する角度を、略25度程度に形成している。当接部131は、例えばフィルム等により形成される。
【0038】
受け部132は、後述する付勢部133の付勢力を受ける部分である。受け部132は、当接部131の下端部から下方に延びるように形成される。受け部132は、上下に開口する略筒形状に形成されている。受け部132の上部に形成された開口の内径は、下部に形成された開口の内径よりも小さく形成されている。
【0039】
付勢部133は、受け部132を上方へ付勢するものである。付勢部133としては、例えば圧縮コイルばねを採用可能である。付勢部133の上端部は、受け部132の上部(開口の周囲の部分)に当接する。付勢部133の下端部は、適宜の部材(本実施形態では後述する回転支持部220)を介して、支持部110に支持される。付勢部133は、受け部132を介して、当接部131をボビン124の下端部に押し付けるように付勢する。
【0040】
上述の如き抵抗付与部130の当接部131が、ボビン124の下端部に押し付けられることで、当接部131とボビン124との間の編糸Yに、摩擦による抵抗を付与することができる。上記構成としたことで、編糸Yが給糸方向下流側へ引き出された際に、当接部131とボビン124との間を通過する編糸Yにある程度の張力を付与することができる。これにより、ボビン124から引き出される編糸Yが、慣性により出過ぎることを抑制することができる。また、抵抗付与部130(当接部131、受け部132及び付勢部133)には、全体として、ボビン124から引き出される編糸Yを通過させる開口が形成されている。当接部131により張力を付与された編糸Yは、上記開口を通過し、下ガイド部112側へ給糸される。
【0041】
なお、横編機1においては、下ガイド部112よりも給糸方向下流側に、下ガイド部112から引き出された編糸Yの緩みを取る適宜のテンショナーを設ける構成を採用可能である。これによれば、キャリッジの移動に伴い編糸Yに緩みが生じた場合でも、テンショナーにより編糸Yの緩みを吸収させることができる。
【0042】
図4から
図6までに示す糸長計測装置200は、ボビン124から引き出される編糸Yの糸長を計測可能なものである。糸長計測装置200は、ボビン124の下方(給糸方向下流側)に配置される。糸長計測装置200は、回転部材210、回転支持部220及び回転量検出部230を具備する。
【0043】
図4及び
図5に示す回転部材210は、ボビン124に対して回転自在に設けられるものである。回転部材210は、軸方向を上下方向に向けた略円筒形状に形成される。すなわち、回転部材210には、上下方向に貫通する内部空間が形成されている。本実施形態では、回転時の振動を抑制する観点から、回転部材210の上下方向の長さを比較的小さく(例えば、後述する円盤部231の外径よりも小さく)形成している。回転部材210の上下方向の長さとしては、例えば50mm~100mmを採用可能である。
【0044】
また、回転部材210は、上部が下部よりも拡径した形状に形成される。回転部材210の上部の半径は、ボビン124の編糸Yが巻回される部分の半径よりも小さく形成されている。回転部材210は、後述する回転支持部220に、上下方向に向く回転軸線B回りに回転可能に支持される。回転軸線Bは、回転部材210の平面視中央に位置する(
図6(b)参照)。
【0045】
回転部材210は、ボビン124の下方に設けられる。回転部材210は、略上半部が抵抗付与部130(当接部131、受け部132及び付勢部133)の開口内に位置するように配置される。また、回転部材210は、平面視において、回転軸線Bがボビン124の平面視中央と概ね一致するように配置される。回転部材210は、導入部211及び導出部212を具備する。
【0046】
導入部211は、ボビン124からの編糸Yを給糸方向下流側に導入するものである。導入部211は、回転部材210の上部において水平方向に向けて開口するように形成される。導入部211は、回転部材210の上部の外周面と、回転部材210の内部空間と、を連通するように形成される。
【0047】
図5に示すように、導入部211は、回転軸線B上から外れた位置に設けられている。より詳細には、導入部211は、回転軸線Bよりも径方向外側に位置する。本実施形態では、導入部211から回転軸線Bまでの最短距離L(径方向の距離)を、20mmよりも短くなるように形成している。ここで、最短距離Lは、導入部211のうち回転軸線Bに対して最も外側に位置する部分(回転部材210の上部の外周面)から回転軸線Bまでの距離である。本実施形態では、最短距離Lは回転部材210の上部の半径である。
【0048】
導出部212は、導入部211から導入された編糸Yを給糸方向下流側の給糸経路Aへ導出するものである。導出部212は、回転部材210の下端部において下方に向けて開口するように形成される。導出部212は、回転部材210の内部空間と連通すると共に、回転軸線B上に設けられている。
【0049】
図4及び
図6(a)に示す回転支持部220は、回転部材210を回転軸線B回りに回転可能に支持するものである。回転支持部220は、上下方向に貫通する貫通孔を有し、当該貫通孔に回転部材210の下部が挿通される。回転支持部220は、回転部材210を滑らかに回転させるための適宜のベアリング(不図示)を有する。回転支持部220は、抵抗付与部130の下方に位置するように、支持部110の右面に固定される。回転支持部220の上面には、付勢部133の下端部を保持可能な凹部が形成されている。
【0050】
図4及び
図6に示す回転量検出部230は、回転部材210の回転量を検出可能なものである。回転量検出部230は、回転支持部220の内部に収容される。回転量検出部230は、円盤部231及びセンサ部232を具備する。
【0051】
円盤部231は、回転部材210と一体的に回転するものである。円盤部231は、厚さ方向を上下方向に向けた略円盤形状に形成される。円盤部231は、平面視中央の開口部に回転部材210が挿通された状態で、回転部材210に固定される。
図6(b)に示すように、円盤部231の表面には、適宜のスリット231aが形成されている。なお、
図6(b)では、円盤部231の表面の一部にスリット231aを図示しているが、スリット231aは、円盤部231の表面の略全体(全周)に亘って形成される。
【0052】
センサ部232は、円盤部231の回転に伴う当該円盤部231の表面の変化を検出可能なものである。センサ部232は、光学式のエンコーダを構成する。具体的には、センサ部232は、円盤部231のスリット231aを介した光(例えば赤外線)の通過や、スリット231a以外の部分による光の遮蔽を検知することで、円盤部231の表面の変化を検出可能な光学式センサである。センサ部232の検知結果を用いることで、円盤部231(回転部材210)の回転量を検知することができる。なお、センサ部232としては、光の通過又は遮蔽の検知により円盤部231の表面の変化を検出するものに限られず、円盤部231の表面に照射された光の反射を検知することで、円盤部231の表面の変化を検出するものを採用可能である。また、センサ部232は、光学式のエンコーダを構成するものに限られず、磁気式等の他の方式のエンコーダを構成するものであってもよい。具体的には、センサ部232としては、光学式センサに限られず、磁気センサ等の円盤部231の表面の変化を検出可能な種々のセンサを採用可能である。また、センサ部232は、エンコーダを構成するものに限られず、円盤部231の表面の変化を検出可能な他の検出装置を構成するものであってもよい。またセンサ部232は、円盤部231の回転量を検出することができるものであれば、必ずしも円盤部231の表面の変化を検出するものでなくてもよい。
【0053】
図2に示す制御部300は、給糸装置100の動作を制御するためのものである。制御部300は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部等を具備する。制御部300の記憶部には、給糸装置100の制御に用いられる種々の情報やプログラム等が記憶される。制御部300は、バッファ装置120の駆動部122と接続され、当該駆動部122の動作を制御することができる。また、制御部300は、回転量検出部230(センサ部232)と接続され、センサ部232の検知結果を取得することができる。また、制御部300は、制御部60と通信可能に接続され、制御部60との情報のやりとりを行うことができる。なお、本実施形態では、制御部300及び制御部60を別体とした例を示したが、このような構成に代えて、制御部300及び制御部60を一体に構成してもよい。
【0054】
以下では、給糸装置100による給糸の様子について説明する。
【0055】
まず、制御部300は、バッファ装置120に編糸Yを貯留する。制御部300は、
図3に示すように、駆動部122(巻付部123)を駆動することで、糸コーン51から編糸Yを引き出すと共にボビン124に巻回させて貯留する。この際、制御部300は、ボビン124に巻回された編糸Yの1周あたりの糸長や駆動部122の駆動量等に基づいて巻付部123の動作を制御することで、一定量の編糸Yをボビン124に巻回させることができる。なお、編糸Yの1周あたりの糸長としては、適宜の値を制御部300に入力してもよく、予め記憶させたボビン124の円周や直径等の情報を用いて制御部300に算出させてもよい。
【0056】
図1に示すように、ボビン124に貯留された編糸Yは、横編機1の編成動作に伴いボビン124から引き出される。ボビン124から引き出された編糸Yの糸長は、糸長計測装置200により計測される。なお、糸長計測装置200による糸長の計測の説明は後述する。
【0057】
制御部300は、ボビン124から引き出された編糸Yの糸長の計測結果を取得すると共に、糸長の計測結果に基づいて駆動部122(巻付部123)を駆動することで、編糸Yを引き出すと共にボビン124に巻回させる。このように、引き出された分の長さの編糸Yをボビン124に巻回させることで、一定量の編糸Yをボビン124に貯留することができる。
【0058】
以下では、
図6を用いて、糸長計測装置200による糸長の計測について説明する。
【0059】
横編機1の編成動作に伴いボビン124から編糸Yが引き出されれば、編糸Yの動作に伴って回転部材210が平面視時計回りに回転する。より詳細には、ボビン124に巻回された編糸Yが引き出される際には、ボビン124から解舒される編糸Yの位置は、ボビン124の外周面に沿って平面視時計回りに旋回するように変わる。このような編糸Yの動作に伴い、回転軸線B上から外れた位置に設けられた回転部材210の導入部211が編糸Yに押圧される(
図6(a)参照)。これにより、回転部材210は、回転軸線Bを中心として平面視時計回りに回転する。
【0060】
回転量検出部230は、上記回転部材210と一体的に回転する円盤部231の表面の変化を検出する。制御部300は、回転量検出部230の検知結果を取得すると共に、当該検知結果に基づいてボビン124から引き出された糸長を計測する。制御部300は、例えば回転部材210の回転量(ボビン124から引き出された編糸Yの周回数)と、ボビン124に巻回された編糸Yの1周あたりの糸長と、を用いた算出を行うことで、ボビン124から引き出された糸長を計測することができる。
【0061】
制御部300は、上記計測した糸長を記憶することができる。また、制御部300は、制御部60から取得したサーボモータ40の回転数やキャリッジ20の動作に関する情報に基づいて、編成動作ごと(例えばループ長あたり)に消費する糸長を測定可能である。
【0062】
上述の如く構成された給糸装置100は、高精度な糸長計測を実現することができる。すなわち、例えばボビン124の周囲に、周方向に等間隔を空けて4箇所に光学センサを配置した給糸装置では、引き出される編糸Yによる光の遮断を各光学センサが検知することで、編糸Yの引き出し量を計測することができる。しかしながら、このようなものでは、4箇所に光学センサを配置したとしても各光学センサの間を通る糸までは検出できないため、糸長の計測の精度向上には改善の余地がある。また、糸長計測の精度向上を目的として光学センサの数を増やすことも考えられるが、この場合はコストが増加することが考えられる。
【0063】
一方、本実施形態に係る給糸装置100は、給糸方向下流側の給糸経路Aへと導出される編糸Yの動作により回転部材210が回転することとなるため、当該回転部材210の回転量を検出することにより、高精度な糸長計測を実現することができる。また、上記構成は、例えば編糸Yを検知する光学センサの数を増やすような構成と比べて簡易な構成で高精度な糸長計測を実現することができる。これにより、コストの増加を抑えつつ糸長計測の精度を向上させることができる。また、給糸装置100の構成によれば、ボビン124の周囲に光学センサを設ける場合よりも、回転量検出部230の径方向の寸法を小さくすることができ、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、回転部材210の導出部212を、回転軸線B上に設けている。これにより、回転部材210の内部空間を通過する編糸Yに対する負荷を軽減することができる。
【0065】
また、本実施形態では、回転部材210の導入部211を、回転軸線B上までの最短距離Lが比較的短くなる(20mmよりも短くなる)位置に形成している。これにより、編糸Yの導出が停止した場合(すなわち、編糸Yの動作が停止した場合)に、回転部材210が慣性により回転し続けることを抑制し易くできるため、より高精度な糸長計測を実現することができる。
【0066】
また、本実施形態では、編糸Yの動作により回転部材210と一体的に回転する円盤部231(回転量検出部230)の表面の変化を検出することで、より高精度な糸長計測を実現することができる。
【0067】
なお、本実施形態に係る円盤部231は、本発明に係る被検出部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る回転支持部220は、本発明に係る所定の取付部材の実施の一形態である。
【0068】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0069】
例えば、本実施形態においては、回転部材210の導入部211を、回転軸線B上までの最短距離Lが20mmよりも短くなる位置に形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、最短距離Lは、20mm以上でもよい。
【0070】
また、本実施形態においては、抵抗付与部130の当接部131を、断面視における傾斜面の水平方向に対する角度を略25度程度に形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。上記傾斜面の水平方向に対する角度を更に大きい角度(例えば、略45度程度)に形成してもよい。また、上記傾斜面の水平方向に対する角度を、25度よりも小さい角度に形成してもよい。
【0071】
また、本実施形態においては、抵抗付与部130の当接部131を、上下を逆にした略円錐台形状に形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、当接部131を、略円盤形状に形成してもよい。この場合は、円盤の上面を、ボビン124の下端面に当接させる。またこの場合は、円盤の中央に、ボビン124からの編糸Yが通過可能な開口を形成する。
【0072】
以下では回転部材210の別実施形態(第二~第六実施形態)について説明する。
【0073】
図7(a)に示す第二実施形態に係る回転部材210Aは、導入部211の構成が、第一実施形態に係る回転部材210と異なっている。また、回転部材210Aは、第一実施形態に係る回転部材210よりも上下方向の寸法が大きく形成されている。
【0074】
回転部材210Aは、導入部211が斜め上方向に向けて開口するように形成されている。回転部材210Aは、上部の外周面の一部が斜め上方向を向くように切り欠かれており、この上方向を向く面に導入部211が形成されている。回転部材210Aの導出部212は、回転部材210Bの回転軸線B上に位置し、導入部211は、回転軸線Bよりも径方向外側に位置している。第二実施形態に係る回転部材210Aの構成によれば、例えば、ボビン124と回転部材210Aとの間の距離が大きくなった場合でも、導入部211に編糸Yを導入させ易くすることができる。
【0075】
図7(b)に示す第三実施形態に係る回転部材210Bは、軸方向を上下方向に向けた略円柱形状に形成されている。回転部材210Bは、上面において上方向に向けて開口するように導入部211が形成され、下面において下方向に向けて開口するように導出部212が形成されている。導出部212は、回転部材210Bの回転軸線B上に位置し、導入部211は、回転軸線Bよりも径方向外側に位置している。また、回転部材210Bは、導入部211と導出部212とを連通するように、上下方向に対して傾斜する経路が形成されている。
【0076】
図7(c)に示す第四実施形態に係る回転部材210Cは、略L字形状に折り曲げた板状の部材により形成されている。回転部材210Cは、水平方向を向く板面を貫通するように導入部211が形成され、上下方向を向く板面を貫通するように導出部212が形成されている。導出部212は、回転部材210Cの回転軸線B上に位置し、導入部211は、回転軸線Bよりも径方向外側に位置している。上記構成によれば、板状の部材に孔を空けることで、比較的容易に回転部材210Cを形成することができる。
【0077】
図8(a)に示す第五実施形態に係る回転部材210Dは、ボビン124に対して回転軸線B回りに回転自在に設けられる回転体213と、回転体213から水平方向に延びるアーム214と、を備えている。回転体213は、適宜の部材(例えば回転支持部220)に回転自在に支持される。回転部材210Dの導入部211は、上下方向に開口する筒形状に形成され、アーム214の先端に設けられている。
【0078】
回転部材210Dの導出部212は、上下方向に開口する筒形状に形成され、回転体213の下方において回転軸線B上に設けられている。なお、図例では導出部212を模式的に示しているが、導出部212は回転部材210Dと一体的に形成されている。第五実施形態に係る回転部材210Dは、第一実施形態と同様な回転量検出部230(エンコーダ)を用いることができる。
【0079】
図8(b)に示す第六実施形態に係る回転部材210Eは、導入部211の構成が、第五実施形態に係る回転部材210Dと異なっている。回転部材210Eは、導入部211が、編糸Yを引っ掛け可能なフック形状に形成されている。上記構成によれば、編糸Yを導入部211に容易に導入させることができる。
【0080】
上記第二~第六実施形態の構成によっても、導出部212が回転軸線B上に設けられると共に、導入部211が回転軸線B上から外れた位置に設けられた回転部材を実現することができる。上記第二~第六実施形態は、本発明の第一実施形態と概ね同様な効果を奏する。
【0081】
また、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0082】
例えば、上記各実施形態では、バッファ装置120と糸長計測装置200とを別体に形成したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、バッファ装置120と糸長計測装置200とを一体に形成してもよい。この場合は、例えば糸長計測装置200をボビン124に設けた構成を採用可能である。また、糸長計測装置200をボビン124に設けた場合には、例えば
図8に示す第五実施形態に係る回転部材210D及び第六実施形態に係る回転部材210Eの導出部212を、導入部211と別部材として形成する構成を採用可能である。この場合は、導出部212は、適宜の部材に回転自在に支持されてもよく、回転不能に支持されてもよい。
【0083】
また、上記各実施形態では、回転部材210の導出部212を回転軸線B上に設けているが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、導出部212を、回転軸線B上から外れた位置に設けてもよい。ただし、編糸Yに対する負荷の軽減の観点から、導出部212を回転軸線Bに近い位置に設けることが望ましい。
【0084】
また、上記各実施形態では、編機の一例として横編機1を示したが、本発明はこれに限るものではなく、その他種々の編機(例えば、丸編機、経編機等)に適用することも可能である。すなわち、各種編機の給糸経路Aに、本実施形態に係る給糸装置100を配置することができる。
【0085】
また、上記各実施形態では、給糸装置100に設けられた制御部300によって糸長の計測を行う例を示したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、制御部300の機能の一部又は全部を、給糸装置100とは別途設けられた制御部(例えば、パーソナルコンピュータ等)で実行することも可能である。例えば、糸長の計測を、横編機1の外部に配置されたPCや、制御部60により実行することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、バッファ装置から繰り出される編糸の糸長を計測可能な糸長計測装置及び編糸のバッファ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 横編機
100 給糸装置
120 バッファ装置
200 糸長計測装置