(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】対象者の呼吸数を決定するための装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
A61B5/08
(21)【出願番号】P 2023525467
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2021079024
(87)【国際公開番号】W WO2022090008
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2024-02-02
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ハック サライナ マリー
(72)【発明者】
【氏名】シュラック アンドレアス ウォルフガング
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0230759(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2687154(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0051205(US,A1)
【文献】国際公開第2009/016334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の呼吸数を決定する装置であって、前記装置が、
赤色及び/又は赤外のフォトプレチスモグラフィ(PPG)信号を取得する入力インターフェースと、
前記PPG信号から第1の特徴シーケンスを抽出し、前記第1の特徴シーケンスから第1の特徴信号を生成する特徴信号ユニットと、
一定のサンプリング・レートで再サンプリングされた信号をもたらすために前記第1の特徴信号を再サンプリング関数で再サンプリングし、及び/又は一定のサンプリング・レートで再サンプリングされた微分値をもたらすために微分値を再サンプリングする再サンプリング・ユニットと、
再サンプリング及び変換された信号をもたらすために前記再サンプリングされた信号のフーリエ変換を算出するか、又は再サンプリング及び変換された微分値をもたらすために前記再サンプリングされた微分値のフーリエ変換を算出する変換ユニットと、
前記再サンプリング及び変換された信号から第1の呼吸数を抽出するか、又は前記再サンプリング及び変換された微分値から前記第1の呼吸数を抽出する抽出ユニットとを備え、
前記第1の特徴シーケンスが、前記対象者の心拍の第1の高調波の、前記心拍の開始に対する位相のシーケンスであり、前記第1の特徴信号が前記位相のシーケンスに対応する、装置。
【請求項2】
解析ユニットをさらに含み、
前記抽出ユニットが、前記再サンプリング及び変換された信号から少なくとも1つのさらなる第1の呼吸数を抽出し、前記解析ユニットが、少なくとも2つの前記第1の呼吸数から最も確度の高い呼吸数を決定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記特徴信号ユニットが、前記PPG信号から第2の特徴シーケンスを抽出し、前記第2の特徴シーケンスから第2の特徴信号を生成し、
前記抽出ユニットが、前記第2の特徴信号から少なくとも第2の呼吸数を抽出し、
前記第2の特徴信号が、(a)前記対象者の心拍の基本周波数における振幅と前記心拍のパルス幅との乗算、(b)前記心拍の前記基本周波数における振幅、(c)単パルス灌流、(d)脈拍数、(e)前記基本周波数と拍動の前記第1の高調波との振幅比、(f)パルス振幅変動、(g)パルス幅変動、及び(h)前記拍動の表面のうちのいずれかに対応する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の特徴信号の前記微分値を算出する計算ユニットをさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
再サンプリング及びフィルタリングされた信号をもたらすために前記再サンプリングされた信号をフィルタリングするフィルタ・ユニットをさらに備え、前記抽出ユニットが、前記再サンプリング及びフィルタリングされた信号から前記第1の呼吸数を抽出し、及び/又は、再サンプリング及びフィルタリングされた微分値をもたらすために前記再サンプリングされた微分値をフィルタリングし、前記抽出ユニットが、前記再サンプリング及びフィルタリングされた微分値から前記第1の呼吸数を抽出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記フィルタ・ユニットが、前記再サンプリングされた信号又は前記再サンプリングされた微分値に対応する予想呼吸数に従っ
てフィルタリングする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記対象者の真の呼吸数を表す前記第1の呼吸数の確度を記述するスコアを前記少なくとも2つの第1の呼吸数に割り当てる採点ユニットをさらに備え、
解析ユニットが、前記スコアを使用して前記最も確度の高い呼吸数を決定する、請求項2
、又は、請求項2を直接的に若しくは間接的に引用する請求項3から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つの第1の呼吸数を呼吸数が類似したグループにグループ分けするグループ分けユニットをさらに備え、呼吸数が所定の呼吸数差未満だけ異なる場合に類似性が仮定さ
れる、請求項2
、又は、請求項2を直接的に若しくは間接的に引用する請求項3から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記所定の呼吸数差が2呼吸/分未満である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記グループ分けユニットが、グループ・スコアを出すためにグループ内の前記少なくとも2つの第1の呼吸数の前記スコアを加算し、解析ユニットが、グループ・スコアの最も高いグループから前記最も確度の高い呼吸数を決定する、請求項8
又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記解析ユニットが、さらに、前記最も確度の高い呼吸数の信頼値を、呼吸数の数及び対応する前記グループの前記グループ・スコアに基づいて決定する、請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
対象者の呼吸数を決定するシステムであって、前記システムが、
赤色及び/又は赤外のフォトプレチスモグラフィ(PPG)信号を提供するPPGセンサと、
対象者の呼吸数を決定するための、請求項1から
11のいずれか一項に記載の装置とを備える、システム。
【請求項13】
対象者の呼吸数を決定するコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータ実施方法が、
コンピュータが、赤色及び/又は赤外のフォトプレチスモグラフィ(PPG)信号を取得するステップと、
前記コンピュータが、前記PPG信号から第1の特徴シーケンスを抽出し、前記特徴シーケンスから第1の特徴信号を生成するステップと、
前記コンピュータが、一定のサンプリング・レートで再サンプリングされた信号をもたらすために前記第1の特徴信号を再サンプリング関数で再サンプリングし、及び/又は一定のサンプリング・レートで再サンプリングされた微分値をもたらすために微分値を再サンプリングするステップと、
前記コンピュータが、再サンプリング及び変換された信号をもたらすために前記再サンプリングされた信号のフーリエ変換を算出し、又は再サンプリング及び変換された微分値をもたらすために前記再サンプリングされた微分値のフーリエ変換を算出するステップと、
前記コンピュータが、前記再サンプリング及び変換された信号から第1の呼吸数を抽出し、又は前記再サンプリング及び変換された微分値から前記第1の呼吸数を抽出するステップとを有し、
前記第1の特徴シーケンスが、前記対象者の心拍の第1の高調波の、前記心拍の開始に対する位相のシーケンスであり、前記第1の特徴信号が位相のシーケンスに対応する、コンピュータ実施方法。
【請求項14】
コンピュータ上で実行されるときに、前記コンピュータに請求項
13に記載のコンピュータ実施方法のステップを実行させるためのプログラム・コード手段を含む、コンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の呼吸数を決定するための装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人のバイタルサインは、一般に、人の現在の状態を示す指標として、及び深刻な医療事象を予測する有力な因子としての役割がある。特に、呼吸器系は、この点における要求に容易に適応することが知られている。このため、対象者の呼吸数は、例えば、低酸素症、高炭酸ガス血症、代謝性アシドーシス又は呼吸性アシドーシスなどの臨床的増悪及び生理的状態の指標として使用することができる。したがって、呼吸数を正確に測定することで、早期治療につながりやすくなる。
【0003】
呼吸数の精確な測定を可能にするために、様々な方法が開発されてきた。とりわけ、フォトプレスチモグラフィ(PPG)が、対象者の呼吸数を決定するために使用される。
【0004】
PPGは、対象となる領域又はボリュームの光の反射又は透過の時間的な変化を評価する光学測定技法である。PPGは、血液が周囲の組織よりも多くの光を吸収するという原理に基づいており、心拍ごとの血液量の変動が、それに対応して透過又は反射に影響する。したがって、PPG波形が心拍数についての情報を含むだけでなく、呼吸に起因する情報、特に呼吸数もPPG信号から推論され得る。異なる波長(通常、赤色及び赤外)の透過率及び/又は反射率を評価することによって、しばしばSpO2と呼ばれる(動脈)血中酸素飽和度を決定することもできる。
【0005】
PPG、及びPPG信号からのSpO2値の算出は、先行技術であり、数十年にわたって計算されてきた。初期には、しばしば生のPPG信号内において呼吸数が確認できることが観察されてきたが、いわゆるプレス(pleth)信号(反転及びフィルタリングされた生の波信号)においては必ずしもはっきりと確認できなかった。
【0006】
呼吸数のより精確な決定を実現するために、多くの様々なアプローチが構築されてきた。
【0007】
米国特許第2016/0051205号は、例えば、呼吸数測定におけるマルチパラメータ信頼度を決定するために複数の生理的パラメータ入力を使用するシステム及び方法を開示している。開示されているシステム及び方法は、生のPPG波形を入力として取り込むことに基づいている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、対象者の呼吸数を決定するための装置、システム、及び方法を提供することである。特に、PPG信号から呼吸数を高い信頼度レベルで決定することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様では、請求項1で特許請求されるように、対象者の呼吸数を決定するための装置が提示されている。
【0010】
本発明のさらなる態様では、対象者の呼吸数を決定するためのシステムであって、-赤色及び/又は赤外のフォトプレスチモグラフィ(PPG)信号を提供するように構成されたPPGセンサと、-対象者の呼吸数を測定する装置とを備えるシステムが、提示されている。
【0011】
本発明のまたさらなる態様では、対応する方法、及び、コンピュータ・プログラムであって、上記コンピュータ・プログラムがコンピュータ上で実行されるときに、本明細書に開示されている方法のステップをコンピュータに実行させるプログラム・コード手段を備えるコンピュータ・プログラム、並びに、プロセッサによって実行されるときに、本明細書に開示されている方法を実行させるコンピュータ・プログラム製品を内部に格納する非一過性のコンピュータ読み取り可能記録媒体が提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項で定義される。特許請求される方法、システム、コンピュータ・プログラム、及び媒体は、特許請求される装置、特に従属請求項に定義され、本明細書に開示されている装置と類似及び/又は同一の好ましい実施形態を有することが、理解されるべきである。
【0013】
本発明は、対象者の呼吸数を決定するために、PPG信号において、特に生波(PPGデータ)、すなわち(反転及びフィルタリングされた生波信号である)プレス(pleth)信号ではない信号において、最も重要な特徴を使用するという考えに基づいている。生波はフィルタリングされていないので、一般にプレス(pleth)信号よりも多くの(有用な)情報を含んでいる。驚くべきことに、本発明者は、(生の)PPG信号から、心拍の開始に対する上記心拍の第1の高調波の位相を描写する信号を抽出することが、対象者の呼吸数を決定するための信頼できる根拠として役立ち得ることを見出した。このように、第1の特徴は、それぞれの心拍信号の第1の高調波の、上記心拍の開始に対する位相位置を表すことができる。したがって、第1の特徴信号は、心拍のシーケンスについて、上記第1の特徴、すなわち第1の高調波の位相位置が、経時的にどのように変化するかの指標を提供し得る。本発明者は、経時的な位相位置の変化は、対象者の呼吸数を決定するための信頼できる根拠として使用できることを見出した。
【0014】
第1のステップでは、装置は、入力インターフェースによって取得された赤色及び/又は赤外のPPG信号を解析し、パルス・トリガ、すなわちパルス/心拍の開始点を探すように構成されている。そのために、一般的なアルゴリズムを使用することができる。好ましくは、各心拍は、解析され、対象者の個別の拍動の、履歴及び現在の灌流、脈拍、並びに/又はSpO2値に基づいて有効性について判断される。
【0015】
すべての(有効な)拍動について、拍動の開始から終了までのすべての拍動のサンプルが見られる。任意選択で、オフセット又はドリフトの除去が、例えば、拍動の最初及び最後のサンプルを通る近似、すなわち直線を減算することによって適用される。次いで、拍動のフーリエ変換が解析される。フーリエ変換は、例えば、特徴信号ユニットによって算出される。位相及びパルスの開始は、パルス単位で決定することができる。したがって、特徴信号ユニットは、すべての拍動について、それぞれの拍動の第1の高調波の上記拍動の開始に対する位相を抽出し、その結果、拍動の開始に対する第1の高調波の位相のシーケンスが得られる。この特徴のシーケンスによって、第1の特徴信号が生成される。これは、特徴信号ユニットによってPPG信号から抽出される。
【0016】
第1の特徴信号は、心拍の開始に対するこれらの心拍の第1の高調波の位相のシーケンスを描写するので、そのサンプル位置は、対象者の心拍の(可変)シーケンスに依存する。実際には、拍動が検出された各時点につき1つの測定値、すなわち1心拍あたり1つの測定値が存在する。当然、心拍周波数は一定ではないので、サンプル位置、したがってサンプリング・レートも一定ではない。一定のサンプリング・レートを実現するために、装置は、第1の特徴信号を再サンプリングするように構成された再サンプリング・ユニットを備えてよい。再サンプリングにより、一定のサンプリング・レートの、特徴(すなわち、対象者の心拍の第1の高調波の、心拍の開始位置に対する位相)対時間の信号が得られる。したがって、再サンプリングによって、例えばその後のフーリエ変換が容易になる。好ましくは、第1の特徴信号は、再サンプリング関数で再サンプリングされる。続いて、抽出ユニットは、心拍開始に対する心拍の第1の高調波の位相のシーケンスに対応する、再サンプリング及び変換された信号、すなわち再サンプリング及び変換された第1の特徴信号から、第1の呼吸数を抽出する。
【0017】
実施形態では、装置は、解析ユニットをさらに備え、抽出ユニットは、再サンプリング及び変換された信号から、少なくとも1つのさらなる第1の呼吸数を抽出するように構成され、解析ユニットは、2つの第1の呼吸数から、最も確度の高い呼吸数を決定するように構成される。
【0018】
一般に、呼吸数は、様々な算出方法を使用して算出される。したがって、少なくとも2つの第1の呼吸数は異なっていてもよい。したがって、解析ユニットは、異なるやり方で算出された上記呼吸数から、最も確度の高い呼吸数、すなわち、対象者の真の呼吸数に最も近くなる呼吸数を決定する。解析ユニットは、従来のデータ処理ユニットであってもよい。しかしながら、解析ユニットは、同様にニューラル・ネットワークであってもよい。ニューラル・ネットワークは、訓練データを用いてトレーニングされ、上記訓練データは、過去に既に処理されたデータ又は模擬データである。
【0019】
実施形態において、特徴信号ユニットは、PPG信号から第2の特徴シーケンスを抽出し、上記第2の特徴シーケンスから第2の特徴信号を生成するように構成され、抽出ユニットは、第2の特徴信号から少なくとも第2の呼吸数を抽出するように構成され、第2の特徴信号は、(a)対象者の心拍の基本周波数における(処理されたPPG信号の)振幅と心拍のパルス幅との乗算、(b)心拍の基本周波数における(処理されたPPG信号の)振幅、(c)単パルス灌流、(d)脈拍数、(e)基本周波数と拍動の第1の高調波との振幅比、(f)パルス振幅変動、(g)パルス幅変動、及び(h)拍動の表面、のうちのいずれかに基づいている。
【0020】
好ましくは、第2の特徴シーケンスは、対象者の心拍の基本周波数における振幅と上記心拍のパルス幅との乗算のシーケンスを含む。心拍の基本周波数における振幅を抽出するために、1拍の開始から終了までのすべての(赤外又は赤色の)生波サンプルが採取される。上述したように、例えば、拍動の最初及び最後のサンプルを通る近似などの直線を減算することによって、オフセット除去又はドリフト除去が適用される。続いて、特徴信号ユニットによって、例えば、1拍のフーリエ変換が算出され、その結果、上記拍動の基本周波数における振幅が得られる。このアプローチでは、フーリエ変換のポイント数がパルスの長さによって変動する。例えば、サンプル・レート125Hzで、有効脈拍数範囲が29.3~300拍/分(bpm)の間では、1拍のサンプル数は25サンプルと256サンプルとの間で変動する。
【0021】
以下の表は、異なる特徴信号のどれが、対象者の呼吸数の決定に関して最も有望な結果を提供するかに関する複数の研究(2019、2014、2018)による実験データに基づく結果を示している。研究3(2018)では、例えば、500個近くのファイルが解析された。どの特徴信号が最良の結果を提供するかを決定するための基準は、NPI=a+b及びNPI2=2×a+bであり、これら2つのうちではNPI2の方が優れた基準である。一般に、NPI又はNPI2は小さいほどより優れている。パラメータ「a」は、決定された呼吸数の基準値からの差が増加するにつれて増加し、パラメータ「b」は、アルゴリズムが呼吸数を決定できない場合に固定値をとり、その他の場合はゼロである。誤った値を表示することは、値を表示しないことよりも悪いことなので、NPI2では「a」の部分に重みが付けられる。表の最後の縦列にそれぞれ示されている。対応する数が小さいほど結果は優れており、すなわち、決定された最も確度の高い呼吸数が真の呼吸数に近い。
【0022】
【0023】
上記の表において、「PAV」はパルス振幅変動(Pulse Amplitude Variability)を、「PWV」はパルス幅変動(Pulse Width Variability)を、「amp」は基本周波数における振幅(amplitude)を、「perf」は単パルス灌流(perfusion)を、「位相」は拍動の第1の高調波の位相を、「表面」は拍動の表面を、すなわち生のPPG信号と拍動の極大点から次の拍動の極大点までの直線(必ずしも水平線ではない)との間に広がる面積を指す(
図13参照)。
【0024】
見てとれるように、すべての研究において、対象者の心拍の第一の高調波の上記心拍の開始に対する位相、及び、対象者の心拍の基本周波数における振幅と上記拍動のパルス幅、すなわちパルス長との乗算の組み合わせが、最も優れた結果をもたらす。
【0025】
しかしながら、第2の特徴信号は、同様に、赤色及び赤外のPPG信号の組み合わせに基づいて算出される単パルス灌流に基づく。より精確には、単パルス灌流は、特許WO2006/097866A1と同様であるが1拍の基本波の赤色及び赤外の振幅に基づいて算出される。
【0026】
脈拍数のシーケンスも第2の特徴信号として使用される。好ましくは、人の脈拍は、赤外PPG信号に基づいて抽出される。
【0027】
拍動の基本波と第1の高調波との振幅比は、基本周波数における処理されたPPG信号と拍動の第1の高調波との振幅の比を意味している。
【0028】
パルス振幅は、各拍動ごとに、拍動の最大値から上記拍動の最小値を減算することで算出することができる。パルス振幅変動は、パルス振幅の変動を示す各拍動ごとのパルス振幅に基づいて決定することができる。
【0029】
同様に、パルス幅変動は、シーケンス内の拍動の幅を比較することによって決定することができる。1拍の幅は、拍動の開始と終了との間の距離を算出することによって決定される。
【0030】
拍動の表面は、生のPPG信号と、拍動の極大点から次の拍動の極大点までの直線(必ずしも水平線ではない)との間に広がる面積として定義される(
図13参照)。
【0031】
本実施形態では、解析ユニットは、2つの第1の呼吸数(及び少なくとも1つの第2の呼吸数)から、最も確度の高い呼吸数を決定するように構成されている。しかしながら、さらなる第1の呼吸数又は第2の呼吸数が決定され、したがって、それらのうち最も確度の高い呼吸数が決定されてもよい。
【0032】
別の実施形態では、装置は、第1の特徴信号の微分値を算出するように構成された計算ユニットをさらに備える。同様に、第2の特徴信号の微分値が算出される。
【0033】
再サンプリング・ユニットに関しては、第2の特徴信号又は第2の特徴信号の導関数は、再サンプリング関数によって再サンプリングされる。抽出ユニットは、再サンプリングされた微分値から第1の呼吸数を抽出するように構成されている。
【0034】
別の実施形態では、装置はフィルタ・ユニットをさらに備え、フィルタ・ユニットが、再サンプリングされた信号をフィルタリングして、再サンプリング及びフィルタリングされた信号をもたらすように構成され、抽出ユニットが、再サンプリング及びフィルタリングされた信号から第1の呼吸数を抽出するように構成され、並びに/又はフィルタ・ユニットが、再サンプリングされた微分値をフィルタリングして、再サンプリング及びフィルタリングされた微分値をもたらすように構成され、抽出ユニットが、再サンプリング及びフィルタリングされた微分値から第1の呼吸数を抽出するように構成されている。同様に、再サンプリングされた第2の特徴信号及び/又は第2の特徴信号の再サンプリングされた微分値がフィルタリングされ、第2の呼吸数が決定される。
【0035】
装置の好ましい実施形態において、フィルタ・ユニットは、再サンプリングされた信号及び/又は再サンプリングされた微分値に対応する予想呼吸数に従って適応的にフィルタリングするように構成されている。例えば、第1の特徴信号(及び/又は第2の特徴信号)に適応ローパス・フィルタを適用することができる。ローパス・フィルタのカット・オフ周波数は、予想呼吸数+5呼吸数/分であり、例えば、予想呼吸数は、好ましくは、対象者の心拍の基本周波数における処理されたPPGの(フィルタリングされていない)振幅と心拍のパルス幅との乗算から抽出ユニットによって導出される。しかしながら、ローパス・フィルタのカット・オフ周波数は、より高くても、又はより低くてもよい。
【0036】
変換ユニットは、再サンプリングされた第2の特徴信号のフーリエ変換(及び/又は第2の特徴信号の再サンプリングされた微分値のフーリエ変換)を算出するように構成され、抽出ユニットは、上記信号から第2の呼吸数を抽出するように構成されている。好ましくは、抽出ユニットは、2つのサブユニットを含み、第1のサブユニットは、時間領域の信号から呼吸数を抽出するように構成され、第2のサブユニットは、周波数領域の信号から1つ又は複数の呼吸数を抽出するように構成されている。
【0037】
別の実施形態では、装置は、対象者の真の呼吸数を表す第1の呼吸数の確度を記述するスコアを少なくとも2つの第1の呼吸数に割り当てるように構成された採点ユニットをさらに備え、解析ユニットは、上記スコアを使用して最も確度の高い呼吸数を決定するように構成されている。同様に、採点ユニットは、第2の呼吸数にスコアを割り当てるように構成されてもよく、解析ユニットは、第1の呼吸数及び第2の呼吸数に対応するスコアを個別に比較するか、又は第1の呼吸数のスコアを第2の呼吸数のスコアとも比較して、最も確度の高い呼吸数を決定するように構成されている。
【0038】
さらに別の実施形態では、装置は、少なくとも2つの第1の呼吸数を呼吸数が類似したグループにグループ分けするように構成されたグループ分けユニットを備え、呼吸数が所定の呼吸数差未満だけ異なる場合に類似性が仮定され、特に、上記所定の呼吸数差は2呼吸/分以下である。しかしながら、所定の呼吸数差は、これより高くても、又は低くても同様によい。所定の呼吸数差の範囲内にグループが存在しない場合、新しいグループが作成される。グループ分けユニットの出力は、少なくとも2つのグループを有する。同様に、グループ分けユニットは、第2の呼吸数をそのようなグループに(個別に、又は第1の呼吸数と混合して)同様にグループ分けするように構成される。
【0039】
装置の好ましい実施形態において、グループ分けユニットは、グループ内の少なくとも2つの第1の呼吸数のスコアを加算してグループ・スコアをもたらすようにさらに構成され、解析ユニットは、最も高いグループ・スコアを有するグループから最も確度の高い呼吸数を決定するように構成されている。好ましくは、グループ分けユニットは、(特徴信号ごとに)少なくとも2つのグループを生成し、それらに対応するグループ・スコアを決定する。次いで、最も高いスコアを有するこれらの2つのグループは、上記グループから最も確度の高い呼吸数を決定するように構成された解析ユニットに提供される。しかしながら、グループ分けユニットは、グループ内の第2の呼吸数のスコアを加算して、又は混合グループが存在する場合には、グループの第1及び第2の呼吸数のスコアを加算して、グループ・スコアをもたらすようにも構成され、解析ユニットは、グループ・スコアが最も高いグループから最も可能性の高い呼吸数を決定するように構成されてもよい。
【0040】
装置の別の好ましい実施形態では、解析ユニットは、対応するグループ、すなわち最も確度の高い呼吸数が属するグループの、呼吸数の数及びグループ・スコアに基づいて、最も確度の高い呼吸数の信頼値を決定するようにさらに構成されている。特に、上記信頼値は、最も確度の高い呼吸数のグループにおける呼吸数の数及びグループ・スコアと、第2のグループ(又はさらに多くのグループ)の呼吸数の数及びグループ・スコアとの比較に基づいている。より精確には、信頼値はグループ・サイズとグループ・スコアとの間の差に基づいている。異なるグループ間のスコア及び/又はサイズが類似している場合、結果として得られる信頼値は小さい。しかしながら、1つのグループが支配的な場合は、信頼値は大きい。したがって、信頼値(又は、それを用いて算出される他の値、例えば信号品質指標)は、臨床スタッフによって、最も確度の高い呼吸数はどれくらい信頼性があるかの指標として使用される。例えば、出された呼吸数が最も確度の高いものであっても、その信頼値は低くなり得る。この場合、最も確度の高い呼吸数は、真の呼吸数を信頼性の高いやり方で表してはいない。
【0041】
解析ユニットは、同様に、2番目に確度の高い呼吸数及び3番目に確度の高い呼吸数などを(グループ・スコアのみに基づいて、又はグループ内の呼吸数の数にも基づいて)決定する。
【0042】
さらに別の実施形態では、第1の特徴信号は、少なくとも60秒のタイム・スパンを網羅する。しかしながら、タイム・スパンはより短くても同様によく、信号の安定性に応じて動的に調整されてもよい。例えば、特定の呼吸数でより高いスコアを得るために、より短いタイム・スパンが特に使用される。あるいは、第1の特徴信号は、特定のタイム・スパンを網羅しないが、特定の(所定の)心拍の数を網羅する。第2の特徴信号にも同じことが適用できる。
【0043】
上述した装置のすべてのユニットは、第1の特徴信号を処理するために使用され得るが、同じやり方で第2の特徴信号を処理するためにも同様に使用され得る。実際に、特徴信号ユニットによってPPG信号からさらなる特徴信号が抽出されてもよく、さらなる特徴信号は、第1及び/又は第2の特徴信号と同じ又は他の特徴を記述する。
【0044】
本発明のこれら及びその他の態様は、以下に説明される実施形態を参照することにより明らかとなり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明による対象者の呼吸数を決定するための装置の第1実施形態の概略図である。
【
図2】本発明による赤外及び/又は赤色のPPG信号から導出される拍動間信号の図である。
【
図3A】本発明による対象者の呼吸数を決定するための装置の第2の実施形態の概略図である。
【
図3B】本発明による対象者の呼吸数を決定するための装置の第3の実施形態を示す概略図である。
【
図4】本発明による対象者の呼吸数を決定するための装置の第4の実施形態の概略図である。
【
図5】本発明による対象者の呼吸数を決定するための方法の第1の概略図である。
【
図6】本発明による対象者の呼吸数を決定するための方法の第2の概略図である。
【
図7】本発明による対象者の呼吸数を決定するためのシステムの実施形態の概略図である。
【
図8A】本発明による(第2の)特徴信号の図である。
【
図8B】本発明による(第2の)特徴信号の図である。
【
図10】本発明による再サンプリングされた特徴信号のフーリエ変換の振幅スペクトルの第1の図である。
【
図11】本発明による時間領域でのパルス振幅変動(PAV)を示す図である。
【
図12】本発明による1拍に対応する処理されたPPG信号のフーリエ変換の振幅スペクトルの第2の図である。
【
図13】本発明による拍動の様々な特徴を示す、赤外及び/又は赤色のPPG信号から導出される拍動間信号の図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明による対象者の呼吸数を求めるための装置10の第1の実施形態の概略図を示している。装置10は、入力インターフェース12と、特徴信号ユニット14と、抽出ユニット16とを備え、任意選択で解析ユニット18も備える。入力インターフェース12は、例えば、患者に取り付けられたPPGセンサから赤色及び/又は赤外のPPG信号11を取得するように構成されている。特徴信号部14は、取得されたPPG信号を解析し、上記信号から第1の特徴シーケンスを抽出する。特に、信号から心拍が抽出され、上記心拍について、対象者の心拍の第1高調波の、上記心拍の開始に対する位相が決定される。拍動の開始に対するこれらの位相は、特徴シーケンスを表し、特徴信号ユニットは、上記シーケンスから第1の特徴信号を生成する。第1の特徴信号13aから、抽出ユニット16は、少なくとも第1の呼吸数151aを抽出する。任意選択で、抽出ユニット16は、さらなる呼吸数152aを抽出する。好ましい実施形態では、3つ又は4つの第1の呼吸数が抽出される。次いで、解析ユニットは、1つ又は複数の呼吸数から、任意選択の後続ステップにおいて、少なくとも1つの非常に確度の高い呼吸数を含む高確率の呼吸数グループを決定する。好ましくは、少なくとも1つの非常に確度の高い呼吸数よりも可能性の低い少なくとも1つの呼吸数を含む、可能性の低い呼吸数グループも決定される。
【0047】
図2は、赤外及び/又は赤色のPPG信号から導出される拍動間信号の図である。類似の拍動間信号は、赤外又は赤色のPPG信号のみから導出し得る。信号には、第1の拍動i-1、第2の拍動i、及び第3の拍動i+1の3つの拍動が示されている。信号内に示されるドットは、各拍動のパルス・トリガ、すなわち各拍動の開始に印を付けたものである。パルス・トリガは、図に示される立下がりエッジの、最も大きい勾配として算出される。実際に、本発明の装置10、好ましくは装置10の特徴信号ユニット14は、PPG信号において上記パルス・トリガを探すように構成されている。このように、拍動の開始時間がわかり、拍動の開始に対する拍動の第1の高調波の位相を計算することができる。心拍の開始は、例えば、極大点又は極焦点、転換点、最大勾配などの曲線特性に基づいて決定することができる。
【0048】
図3Aは、対象者の呼吸数を決定するための装置の第2の実施形態の概略図を示している。本実施形態では、装置10は、フィルタ・ユニット22のカット・オフ周波数を較正するように構成されている。装置10は、入力インターフェース12と、特徴信号ユニット14と、計算ユニット26と、再サンプリング・ユニット20と、フィルタ・ユニット22と、抽出ユニット16とを備える。較正に使用される特徴信号は、好ましくは第2の特徴信号であり、より好ましくは、対象者の心拍の基本周波数における処理されたPPGの振幅と、対応するパルス幅との乗算である。
図3Aでは、計算ユニット26をバイパスする信号が破線に相当する(これは、
図3B及び
図4にも適用される)。
【0049】
第3の第2の呼吸数053bは、第2の呼吸数3とも呼ばれ、これを決定するには、まず入力PPG信号11から特徴信号ユニット14によって生成される第2の特徴信号13bが再サンプリングされる。再サンプリングは、再サンプリング・ユニット20によって行われる。再サンプリングは、例えば、台形の再サンプリング関数を用いて行うことができる。次いで、再サンプリングされた(第1の特徴)信号19bは、第3の第2の呼吸数053bを導出する抽出ユニット16に提供される。任意選択で、さらなる第2の呼吸数が上記信号から導出される。
【0050】
第4の第2の呼吸数054bは、第2の呼吸数4とも呼ばれ、これを決定するには、まず第2の特徴信号13bが計算ユニット26に提供され、計算ユニット26が第1の特徴信号13bの微分値25bを算出する。続いて、再サンプリング・ユニット20は、上記微分値25bを再サンプリングし、それにより、一定のサンプリング・レートを有する再サンプリングされた微分値27bを生成する。次いで、再サンプリングされた微分値27bは、第4の第2の呼吸数054bを抽出するように構成された抽出ユニット16に提供される。
【0051】
ここで、本実施形態では、第2の呼吸数は時間領域の信号から決定される。
【0052】
続いて、上記呼吸数は、フィルタ・ユニット22のフィルタのカット・オフ周波数を決定するために使用される。特に、第3の第2の呼吸数053bは、バンドパス・フィルタを構成する、すなわち較正するのに使用され、一方、第4の第2の呼吸数054bは、ローパス・フィルタを構成する、すなわち較正するために使用される。
【0053】
図3Bは、対象者の呼吸数を決定するための装置の第3の実施形態の概略図を示している。装置10は、入力インターフェース12と、特徴信号ユニット14と、計算ユニット26と、再サンプリング・ユニット20と、フィルタ・ユニット22と、変換ユニット24と、抽出ユニット16と、採点ユニット28と、グループ分けユニット30と、解析ユニット18とを備える。
【0054】
第1の第1の呼吸数151aは、第1の呼吸数1とも呼ばれ、これを決定するには、まず入力PPG信号11から特徴信号ユニット14によって生成される第1の特徴信号13aが再サンプリングされる。再サンプリングは、再サンプリング・ユニット20によって行われる。次いで、再サンプリングされた(第1の特徴)信号19aは、再サンプリングされた信号19aのフーリエ変換を算出する、すなわち再サンプリング及びフーリエ変換された信号23aを生成するように構成された変換ユニット24に提供される。次いで、再サンプリング及びフーリエ変換された信号23aは、上記信号から第1の第1の呼吸数151aを導出する抽出ユニット16に提供される。したがって、第1の第1の呼吸数151aは周波数領域で決定される。上記信号から、さらなる第1の呼吸数、例えば、第6の第1の呼吸数156a及び第7の第1の呼吸数157aもそれぞれ決定される。
【0055】
第2の第1の呼吸数152aは、第1の呼吸数2とも呼ばれ、これを決定するには、まず第1の特徴信号13aが計算ユニット26に提供され、計算ユニット26が第1の特徴信号13aの微分値25aを算出する。続いて、再サンプリング・ユニット20は、上記微分値25aを再サンプリングし、これにより一定のサンプリング・レートを有する再サンプリングされた微分値27aを生成する。次いで、再サンプリングされた微分値27aは、変換ユニット24によってフーリエ変換され、その結果、再サンプリング及び変換された微分値29aが得られる。再サンプリングされた微分値29aを使用して、抽出ユニット16は、第2の第1の呼吸数152aを抽出する。したがって、第2の第1の呼吸数152aも、周波数領域の信号から決定される。
【0056】
第3の第1の呼吸数153aは、第1の呼吸数3とも呼ばれ、任意選択で、再サンプリング・ユニット20及びフィルタ・ユニット22を使用して抽出することができる。第1のステップでは、第1の特徴信号13aは、再サンプリング・ユニット20によって再サンプリングされ、次いでフィルタ・ユニット22によってフィルタリングされ、これにより再サンプリング及びフィルタリングされた信号21aが生成される。この実施形態では、フィルタ・ユニット22は、予想呼吸数(の上限)に適合され、予想呼吸数は、好ましくは(フィルタリングされていない)第2の特徴信号、例えば、対象者の心拍の基本周波数における振幅と心拍のパルス幅との乗算のシーケンスから導出される(
図3A参照)。フィルタリングされた再サンプリングされた信号21aから、抽出ユニット16は第1の呼吸数3 153aを決定する。すなわち、本実施形態では、再サンプリング及びフィルタリングされた信号21aが時間領域で解析される。
【0057】
第4の第1の呼吸数154aは、第1の呼吸数4とも呼ばれ、第1の特徴信号13aの微分値25aを算出する計算ユニット26と、再サンプリング・ユニット20と、フィルタ・ユニット22とを使用して、任意選択で抽出することができる。微分値の算出後、対応する信号25aは、再サンプリングされた微分値27aを生成するように構成された再サンプリング・ユニットに提供される。再サンプリングされた微分値をフィルタリングした後、すなわち再サンプリング及びフィルタリングされた微分値33aを生成した後、抽出ユニット16は、再サンプリング及びフィルタリングされた微分値33aから第1の呼吸数4 154aを決定する。すなわち、本実施形態では、再サンプリング及びフィルタリングされた微分値33aは、時間領域で解析される。
【0058】
呼吸数153a及び154aの抽出に関して、フィルタ・ユニット22には、任意選択で、例えば、
図3Aに関して説明された別の装置又は事前の較正ステップにおいて決定された呼吸数053b及び054bがさらに提供される。呼吸数053b及び054bは、特にフィルタ較正に使用される。しかしながら、フィルタ較正を事前に行うことも可能である。
【0059】
一般に、抽出ユニット16は、周波数領域の信号からさらなる第1の呼吸数を抽出するように構成されている。好ましくは、抽出ユニット16は、再サンプリング及びフーリエ変換された信号23a及び再サンプリングされた微分値29aから、それぞれ第1の呼吸数1及び2を抽出するだけでなく、
図3Bに示すように、さらに第1の呼吸数156a、157a、158a、及び159aを抽出する。
【0060】
抽出ユニット16は、2つのサブユニットに分割されてもよく、第1の(抽出)サブユニットは、時間領域の信号を処理するように構成され、第2の(抽出)サブユニットは、周波数領域の信号を処理するように構成されている。したがって、本実施形態では、第1の抽出サブユニットは、第1の呼吸数153a及び154aを抽出するように構成され、第2の抽出サブユニットは、第1の呼吸数151、152a、156a、157a、158a、及び159aを抽出するように構成されている。
【0061】
第1の呼吸数は、採点ユニット28によってさらに処理される。採点ユニット28は、呼吸数のそれぞれにスコアを割り当て、その結果、採点された呼吸数161a、162aなどが得られる。割り当てられたスコアは、呼吸数151a、152aなどが対象者の真の呼吸数を表す確度を記述する。この目的で、採点ユニット28は、第1の呼吸数のそれぞれについて、品質メトリックを示す。すなわち、呼吸数のスコアが高いほど、上記呼吸数が真の呼吸数である確度が高い。特に低呼吸数に関しては、周波数領域の導関数から決定される呼吸数は、時間領域の導関数から決定されるものよりも信頼性が高い。したがって、周波数領域の導関数から抽出された呼吸数には、時間領域の導関数から抽出された呼吸数よりも大きい重み付けが割り当てられる。それぞれの重み付けは、呼吸数のスコアに影響を与える。
【0062】
さらに、周波数領域の信号について、突出したピークがある場合、対応する呼吸数のスコアは一般に高くなる。しかしながら、スペクトルがいくつかのピークを示す場合、どのピークが正しい呼吸数に属するかは明白でない。したがって、スコアは、最も高いピークの突出、及び他のピーク高さに対するピークの高さにも依存する。
【0063】
次いで、採点された第1の呼吸数161a、162aなどは、これらの呼吸数を、呼吸数が類似したグループにグループ分けするように構成されたグループ分けユニット30に提供される。本実施形態では、呼吸数は、グループ・スコアが高い第1のグループ171、及びグループ・スコアがより低い第2のグループ172の、少なくとも2つのグループに仕分けられる。続いて、両グループ171及び172は、最も確度の高い呼吸数17を抽出するために解析ユニット18に提供される。一般に、最もスコアの高い呼吸数が、解析ユニット18によって、最も確度の高い呼吸数17として選択される。
【0064】
図4は、対象者の呼吸数を決定するための装置の第4の実施形態の概略図を示している。第4の実施形態は、第3の実施形態と同様のユニットを備えている。さらに、本実施形態では、特徴信号ユニット14は、PPG信号11から第1の特徴信号13a及び第2の特徴信号13bを生成するように構成されている。第1の特徴信号13aは、対象者の拍動の第1の高調波の、これらの拍動の開始に対する位相のシーケンスを含み、第2の特徴信号13bは、対象者の心拍の基本周波数における振幅とこれらの拍動のパルス幅との乗算のシーケンスを含む。しかしながら、第1の特徴信号13aが心拍の基本周波数における振幅のシーケンスを含み、第2の特徴信号13bが単パルス灌流のシーケンスを含むことも考えられる。いずれの場合も、本実施形態では、特徴信号13bは特徴信号13aと同じように処理される。特に、本実施形態では、4つの第1の呼吸数151a、152a、153a、及び154aが決定され、4つの第2の呼吸数151b、152b、153b、及び154bが決定される。
【0065】
第1の呼吸数の1番目の151a及び第2の呼吸数の1番目の151bは、第3の実施形態における第1の呼吸数の1番目の151aと同じやり方で決定される。第1の呼吸数の2番目の152a及び第2の呼吸数の2番目の152bは、第3の実施形態における第1の呼吸数の2番目の152aと同様のやり方で決定され、呼吸数153a及び153b、並びに154a及び154bは、それぞれ第3の実施形態における第1の呼吸数の3番目の153a及び第1の呼吸数の4番目の154aと同じやり方で決定される。
【0066】
要約すると、4組の呼吸数が抽出され、2組は周波数領域の信号から抽出され、2組は時間領域の信号から抽出される。
【0067】
呼吸数は、呼吸数にスコアを割り当てる採点ユニット28に提供される。呼吸数に対応するスコアが高いほど、上記呼吸数が真の呼吸数である確度が高い。呼吸数及び対応するスコアを取得した後、グループ分けユニット30は、呼吸数を異なるグループにグループ分けする。特に、第1の呼吸数151a、152a、153a、及び154aの呼吸数は、所定の呼吸数差、例えば、2呼吸/分(rpm:respirations per minute)よりも大きく相違しない場合、1つにグループ化される。同じやり方で、第2の呼吸数151b、152b、153b、及び154bがグループ化される。このように、グループ内のすべての呼吸数のスコアは、(グループ分けユニットによって)合算され、好ましくは重み付けもされて、グループ・スコアが出される。このようにして、グループ分けユニットは、4つのグループ171a、171b、172a、及び172bを、例えばそれらに対応するグループ・スコアと共に、解析ユニット18に提供する。解析ユニット18では、グループ・スコアが解析され、グループ・スコアが最も高いグループが、最も確度の高い呼吸数を含むと仮定される。最も確度の高い呼吸数17は、本実施形態においてグループ・スコアが最も高いグループ内で最も多く見られる呼吸数である。しかしながら、最も確度の高い呼吸数17を決定する他のやり方も考えられる。
【0068】
実際には、最も確度の高い呼吸数17は、グループ・スコアが最も高いグループから選択されるだけでなく、グループ内の呼吸数の数も役立ち得る。例えば、グループ・スコアは高いがそれぞれのグループに呼吸数が1つだけある場合、最も確度の高い呼吸数17は、呼吸数の数がより多い別のグループから選択される。
【0069】
また、第1の呼吸数及び第2の呼吸数にそれぞれ対応する最も確度の高い呼吸数17も決定される。次いで、全特徴のうち最も確度の高い呼吸数の候補をクラスタ化し、結果として最終的な呼吸数が得られる。このステップに基づいて、信頼値も算出される。好ましくは、信頼値は、グループのサイズと重み付けとの間の差に基づいている。異なるグループ間の重み付け及び/又はサイズが類似している場合、信頼値は小さい。しかしながら、1つのグループが支配的な場合、信頼値は高い。また、最終的な呼吸数に関して、信号品質インデックスも導出される。信号品質インデックスは、最終的な呼吸数の信頼度、及び出力値の履歴に基づいている。
【0070】
それ以外では、グループ分けユニット30は、第1及び第2の呼吸数は、それらが特定の特徴信号に関連するかに関係なくグループにグループ分けされ得る。したがって、グループ内では、第1及び第2の呼吸数が混在し得る。
【0071】
第1及び第2の呼吸数に関して、装置10の解析ユニット18は、複数の2番目に確度の高い呼吸数を(それぞれの対応するグループ・サイズ及びグループ重み付けと共に)決定する、又は、両方の種類の呼吸数、すなわち抽出されたPPG信号のすべての特徴に関する1つの2番目に確度の高い呼吸数を決定するためにも、使用される。
【0072】
図5は、本発明による対象者の呼吸数を決定する方法の第1の図を示す。本方法は、PPG信号を提供するステップS11を含み、ステップS13a、S13b、…、S13Nにおいて、PPG信号からN個の(異なる)特徴信号が決定される。次いで、N個の特徴信号は、任意選択であり図示しない中間ステップにおいて、フーリエ変換又は導出される。ステップS151a、S152a、…、S151b、S152b、…、S151N、S152N、...において、少なくとも1つの呼吸数が、N個の処理された特徴信号のそれぞれから抽出される。好ましくは、周波数領域の信号から、少なくとも2つの呼吸数が抽出される。したがって、各特徴に対して、多数の呼吸数が抽出される。同様に、ある特徴が時間領域でのみ考慮される場合、1つの呼吸しか抽出されない。ステップ161a、162a、…、161b、162b、163b、…、161N、162N、…において、スコアが特徴信号に対して割り当てられる。ステップS171a、S171b、…、S171Nにおいて、各特徴信号について採点された呼吸数が、異なるグループにグループ分けされる。本実施形態では、特徴信号ごとに2つのグループが生成される。特に、各特徴(信号)について、グループ・スコアが高いグループ、及びグループ・スコアがより低いグループが生成される。しかしながら、類似したスコアを有する呼吸数のさらなるグループが生成され得る。ステップS17では、解析ユニットにおいて、どの呼吸数が最も確度の高い呼吸数17であるかが決められる。
【0073】
図6は、対象者の呼吸数を決定するための方法の第2の図を示している。本方法の第1のステップS11ではPPG信号が提供され、ステップS13aでは、PPG信号から特徴のシーケンスが抽出され、第1の特徴信号が生成される。特徴信号は次いで、4つの異なるやり方で処理される。
【0074】
第1のやり方では、第1の特徴信号が、ステップS20において再サンプリングされ、ステップS24においてフーリエ変換される。並行して、すなわち第2のやり方では、ステップS26において第1の特徴信号の微分値が算出され、ステップS20においてこの導関数が再サンプリングされ、ステップS24において再サンプリングされた導関数がフーリエ変換される。第3のやり方では、第1の特徴信号が、ステップS20において再サンプリングされ、その後ステップS22においてフィルタリングされる。第4のやり方では、第1の特徴信号の微分値が導出され(ステップS26)、次いでこれが再サンプリングされ(ステップS20)、フィルタリングされる(ステップS22)。したがって、周波数領域では2つの信号、時間領域では2つの信号が存在する。これらの信号から、ステップS151a、S152a、S153a、及びS154aにおいて、それぞれ第1の呼吸数が抽出される。周波数領域の信号からは、さらに多くの呼吸数が抽出される。例えば、周波数領域の各信号から、3つの呼吸数が抽出される。次いで、抽出された呼吸数に、ステップS161a、S162a、S163a、及びS164aにおいてスコアが割り当てられる。続いて、ステップS171aでは、類似した呼吸数がそれぞれのグループにグループ分けされ、グループ内の呼吸数のスコアが合算されて、いわゆるグループ・スコアになる。本実施形態では2つのグループが生成され、第1のグループは、真の呼吸数を表す、可能性の高い呼吸数を含み、第2のグループは、可能性の低い呼吸数を含む。ステップS18では、グループの構成(すなわち、グループ内の呼吸数の数)、グループ・スコア、及び/又はグループ内の異なる呼吸数のスコアに応じて、対象者の最も確度の高い呼吸数及び2番目に確度の高い呼吸数はどれかが決められる。
【0075】
図7は、対象者の呼吸数を決定するシステムの実施形態の概略図を示している。システム100は、赤色及び/又は赤外のフォトプレチスモグラフィ(PPG)信号を提供するように構成されたPPGセンサ50と、対象者200の呼吸数を決定するための装置10とを備える。本システムの装置10は、入力インターフェース12と、特徴信号ユニット14と、抽出ユニット16と、解析ユニット18と、表示ユニット32とを備える。
【0076】
本実施形態のPPGセンサ50は、対象者の額に取り付けるパッチの形態で設計されている。なお、PPGセンサ50は、対象者200の他の身体領域に取り付けられてもよい。実際には、リモートPPGセンサを使用することも可能である。装置10のセンサ50及び入力インターフェース12は、有線により接続されているが、PPGセンサ50及び入力インターフェース12が無線通信インターフェースを介して動作してもよい。
【0077】
PPGセンサ50は、患者のPPG信号を測定し、上記信号11を装置10の入力インターフェース12に提供するように構成されている。装置50はPPG信号11を処理し、装置10の解析ユニット18は、対象者200の最も確度の高い呼吸数17を決定するように構成されている。次いで、最も確度の高い呼吸数17が、装置10の表示ユニット32に表示される。このように、例えば臨床スタッフが、臨床的憎悪を早期に認識することができる。
【0078】
図8A及び
図8Bはそれぞれ、本発明による(第2の)特徴信号の図を示している。特に、
図8Aは、時間領域における各心拍の基本周波数における振幅のシーケンスの図を示し、
図8Bは、時間領域における単パルス灌流のシーケンスの図を示している。例示的な実施形態では、図示されるように、両方の特徴が60秒間解析される。
【0079】
図9A及び
図9Bはそれぞれ、本発明による特徴信号の図を示している。特に、
図9Aは、心拍の開始に対する心拍の第1の高調波の位相のシーケンスの図を示している。
図9Bは、心拍の基本周波数における振幅とパルス長との乗算のシーケンスを示している。
【0080】
図10は、再サンプリングされた特徴信号のフーリエ変換の振幅スペクトルの図を示している。一般に、そのようなフーリエ変換から、(第1又は第2の)呼吸数が導出される。呼吸数(RR:Respiration Rate)を導出するために、呼吸数の範囲[minRR, maxRR]が定義され、その中に呼吸数が位置している可能性が最も高い。この範囲は、特に患者の脈拍数に依存し、脈拍数もPPG信号から(例えば、特徴信号ユニットによって)抽出することができる。本装置の例示的な実施形態では、範囲の下限minRRは、(脈拍数)/15で定義され、範囲の上限maxRRは、(脈拍数)/2で定義される。しかしながら、他の範囲が使用されてもよい。次いで、その範囲内で最も高いピークが、呼吸数、すなわちこのやり方で算出された最も確度の高い呼吸数として選択される。2番目に高いピークが、このやり方で算出される2番目に確度の高い呼吸数である。次いで、異なるやり方で算出された(最も確度の高い)複数の呼吸数が比較され、最も確度の高い呼吸数が解析ユニット18によって決定される。しかしながら、
図10に示すフーリエ変換からは、呼吸数は導出されない。実際には、最も確度の高い呼吸数を示す最も高いピークがないことが、示された図から推論することができる。実際には、ほぼ同じ高さを有する3つのピークがあり、したがって信頼性のある呼吸数を導出することができない。換言すると、呼吸数のスコアを決定するために、図中のピークの突出、及び上記ピークの高さが決定される。例えば、スペクトル内の2つのピークの高さが類似している場合、決定された呼吸数の信頼性は高くないので、小さいスコアを有する。
図10に示すスペクトルには、実際には高さの類似した3つのピークがある。したがって、対応する呼吸数のスコアは非常に低く、したがって結果には信頼性がない。
【0081】
図11は、時間領域におけるパルス振幅変動(PAV)の図を示している。60秒の時間窓及び50秒の時間窓が図示されている。抽出ユニット16によって決定された(第1又は第2の)呼吸数に対応するスコアに応じて、時間窓が適合される。特に、60秒の時間窓に対する呼吸数のスコアが小さい場合(したがって、導出された呼吸数の信頼性がない場合)、時間窓は、例えば50秒に縮小される。
【0082】
図12は、赤外生波の1拍分のフーリエ変換の振幅スペクトルの図を示している。このフーリエ変換から、基本周波数及び高調波が導出される。特に、
図12では、基本周波数(f0)、第1の高調波(f1)、及び第2の高調波(f2)に印が付けられている。したがって、そのようなフーリエ変換から、基準周波数における振幅又は第1の高調波の位相が導出される。これらの値を取得するには、以下の手順に従う。まず、すべての赤色又は赤外の生波のPPGサンプルは、1拍の開始から終了まで採取される。続いて、拍動の最初のサンプル及び最後のサンプルを通る近似である直線が減算される。次いで、1拍に対応するこの信号のフーリエ変換が算出される。サンプル・レートが125Hzで、有効脈拍数範囲が29.3~300拍/分の場合、1拍のサンプル数は25サンプルと256サンプルとの間で変動する。それに応じて、フーリエ変換のポイント数は、パルスの長さに伴って変動する。
【0083】
図13は、拍動の異なる特徴を示す赤外及び赤色のPPG信号から導出される拍動間信号の図を示している。特に、
図13は、赤外生波から生じる3つの拍動を示している。拍動iの表面は、生信号と、上記拍動の極大点から次の拍動i+1の極大点までの直線との間に広がる面積として定義される。
図13は、特徴PAVすなわちパルスの高さ、及び特徴PWVすなわちパルスの幅をさらに示している。
【0084】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明されているが、そのような図示および説明は、例証的又は例示的であって制限的ではないとみなされるべきであり、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲を研究することで、請求された発明を実施する当業者は、理解し、実施することができる。
【0085】
特許請求の範囲において、「備える/含む」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は、複数形を排除するものではない。単一の要素又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されたいくつかの項目の機能を果たすこともある。ある方策が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0086】
コンピュータ・プログラムは、他のハードウェアと一体に又はその一部として供給される光記憶媒体又は固体媒体などの適切な非一時的媒体に記憶/配布され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システムを介する配布などの他の形態でも配布され得る。
【0087】
特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、範囲を限定すると解釈されるべきではない。