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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】レーザダイオード装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02208 20210101AFI20240705BHJP
   H01S 5/02257 20210101ALI20240705BHJP
   H01S 5/02218 20210101ALI20240705BHJP
   H01S 5/02315 20210101ALI20240705BHJP
   H01S 5/0239 20210101ALI20240705BHJP
【FI】
H01S5/02208
H01S5/02257
H01S5/02218
H01S5/02315
H01S5/0239
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023532460
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2021076620
(87)【国際公開番号】W WO2022111884
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】102020215033.8
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ピンター,シュテファン
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149573(WO,A1)
【文献】特開2012-160526(JP,A)
【文献】特開2013-080900(JP,A)
【文献】特開2012-147007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0003482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0123213(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1661814(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00ー5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1つのレーザダイオード(5、36、120)を含み、前記レーザダイオード(5、36、120)がエッジエミッタとして形成されており、かつ
- 透明な光学窓(3、30)を備えたハウジング(41、60)を含み、前記透明な光学窓(3、30)が前記ハウジング(41、60)の第1の側壁(61)として形成されており、前記ハウジング(41、60)が、レーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)の外部環境に対して前記レーザダイオード(5、36、120)を気密に遮蔽するために形成されており、前記透明な光学窓(3、30)が、前記レーザダイオード(5、36、120)によって生成された少なくとも1つのレーザビーム(8、42)を前記外部環境へと透過させるよう形成されており、
前記レーザダイオード(5、36、120)が、前記ハウジング(41、60)の底(6、38)に少なくとも間接的に固定されているレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)において、
前記ハウジング(41、60)の前記側壁(16、17、31、51、61、62)および前記ハウジング底(6、38)に向かい合って配置されたハウジング蓋(2、32)が、複数の、とりわけ少なくとも3つのウエハから形成されており、
前記ハウジング(41、60)の前記第1の側壁(61)がガラスウエハ(90)から形成されており、前記第1の側壁(61)に向かい合っている前記ハウジング(41、60)の第2の側壁(31、51、62)が第1のシリコンウエハ(83)から形成されており、前記ハウジング(41、60)の第3の側壁(16)および第4の側壁(17)ならびにハウジング蓋(2、32)が第2のシリコンウエハ(80)から形成されていることを特徴とするレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)。
【請求項2】
前記側壁(16、17、31、51、61、62)が長方形の断面を有することを特徴とする請求項に記載のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)。
【請求項3】
前記ハウジング(41、60)が直方体形に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)。
【請求項4】
これに加えて前記レーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)が、前記ハウジング(41、60)に対して独立して配置された固定要素(10)を有し、前記固定要素(10)が、前記レーザダイオードによって生成された前記少なくとも1つのレーザビーム(8、42)が直接的に前記外部環境へと透過するように、前記レーザダイオード(5、36、120)を前記ハウジング(41、60)内で固定するために形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)。
【請求項5】
前記ハウジング底(6、38)がキャリア基板(98)として形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)。
【請求項6】
前記キャリア基板(98)が、前記キャリア基板(98)の下面に、周りを囲んでいる少なくとも1つの第1凹部(7a、7b、97)を有することを特徴とする請求項に記載のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)。
【請求項7】
前記ハウジング蓋(2、32)が少なくとも1つの第2の凹部(33)を有することを特徴とする請求項5または6に記載のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)。
【請求項8】
- 少なくとも2つの相並んで配置された請求項1からのいずれか一項に記載のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)と、
- 光学検出器(47)とを有するシステム(50)であって、
前記少なくとも2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置(1b、1c)の第2のレーザダイオード装置(1c)が、前記第2のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)の第2のハウジング(41、60)の第2の側壁(31、51、62)の外面(34a、34b)にミラー面(45a、45b)を有し、前記ミラー面(45a、45b)が、前記少なくとも2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置(1b、1c)の第1のレーザダイオード装置に対し、前記第1のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)の第1のレーザダイオード(5、36、120)によって放射された少なくとも1つのレーザビーム(8、42)が前記ミラー面(45a、45b)によって前記光学検出器(47)の方向に偏向されるように方向づけられているシステム(50)。
【請求項9】
前記システム(50)がハウジング底(6、38)として前記少なくとも2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)の1つの共通のキャリア基板(98)を有し、前記キャリア基板(98)が、前記第1と第2のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)の間の部分領域(48)内で、開口部(40a、40b)を有し、前記ミラー面(45a、45b)が、前記少なくとも2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置(1b、1c)の前記第1のレーザダイオード装置(1b)に対し、前記第1のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)の前記第1のレーザダイオード(5、36、120)によって放射された前記少なくとも1つのレーザビーム(8、42)が前記ミラー面(45a、45b)によって前記開口部(40a、40b)およびビーム経路内で前記開口部(40a、40b)の後ろに配置された光学検出器(47)の方向に偏向されるように方向づけられていることを特徴とする請求項に記載のシステム(50)。
【請求項10】
求項1からのいずれか一項に記載のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)の製造方法であって、前記方法が、以下のプロセスステップ、すなわち
- 第2のシリコンウエハ(80)を用意するプロセスステップ(99)と、
- 第1のエッチングステップにより、KOHエッチングまたはトレンチエッチングにより、前記第2のシリコンウエハ(80)内に、断面が長方形の貫通孔(81)を生成するプロセスステップ(100)と、
- 第1のシリコンウエハ(83)を用意するプロセスステップと、
- 前記第1のシリコンウエハが、前記生成された貫通孔(81)を前記第2のシリコンウエハ(80)の下面で塞ぐように、前記第1のシリコンウエハ(83)前記第2のシリコンウエハ(80)を結合するプロセスステップと、
- ガラスウエハ(90)を用意するプロセスステップ(102)と、
- 前記ガラスウエハ(90)が、前記生成された貫通孔(81)を前記第2のシリコンウエハ(80)の上面で塞ぐように、前記第2のシリコンウエハ(80)と前記ガラスウエハ(90)を結合するプロセスステップ(104)と、
第1のシリコンウエハ(83)および前記第2のシリコンウエハ(80)ならびに前記ガラスウエハ(90)を含むウエハスタックを分離平面(89)に沿って分離し、この場合、前記分離平面(89)が、前記貫通孔(81)の主延び方向に沿って走っているプロセスステップ(110)と、
- キャリア基板(89)の外面でエッジエミッタとして形成されたレーザダイオード(5、36、120)が、前記キャリア基板(98)と、前記第1のシリコンウエハ(83)と、前記第2のシリコンウエハ(80)と、前記ガラスウエハ(90)とによって形作られたハウジング(41、60)内に配置されるように、前記キャリア基板(98)を、前記第1のシリコンウエハ(83)、前記第2のシリコンウエハ(80)、および前記ガラスウエハ(90)と結合するプロセスステップ(113)と
を有する製造方法。
【請求項11】
前記第1のシリコンウエハ(83)の上面にトレンチビームストッパ構造(84)が施されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記キャリア基板(98)と、前記第1のシリコンウエハ(83)、前記第2のシリコンウエハ(80)、および前記ガラスウエハ(90)との前記結合が、前記ハウジング(41、60)が気密に密閉されるように行われることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
複数の貫通孔(81)が前記第2のシリコンウエハ(80)内で生成され、かつ前記貫通孔(81)に沿った前記ウエハスタックの前記分離が、複数のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)が生成されるように行われることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項に記載のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)のハウジング(41、60)の気密性の確定方法において、
前記方法が、以下のプロセスステップ、すなわち
- 前記キャリア基板(98)と、前記第1のシリコンウエハ(83)と、前記第2のシリコンウエハ(80)と、前記ガラスウエハ(90)とによって形作られた前記ハウジング(41、60)内で規定の内圧が生成されるように、前記キャリア基板(98)を、前記第1のシリコンウエハ(83)、前記第2のシリコンウエハ(80)、および前記ガラスウエハ(90)と結合し、この場合、前記内圧が周囲圧力に対する圧力差を有するプロセスステップと、
- 前記ハウジング蓋(2、32)の反りを測定するプロセスステップと、
- 前記測定された反りに依存して前記ハウジング(41、60)の気密性を確定するプロセスステップと
を有することを特徴とする気密性の確定方法。
【請求項15】
請求項に記載のシステム(50)の第1のレーザダイオード(5、36、120)の光学機能の確定方法において、
前記方法が、以下のプロセスステップ、すなわち
- 第1のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)の第1のハウジング(41、60)内に配置された第1のレーザダイオード(5、36、120)によって少なくとも1つのレーザビーム(8、42)を放射するプロセスステップと、
- 前記放射されたレーザビーム(8、42)を、第2のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)の第2のハウジング(41、60)の第2の側壁(31、51、62)の外面に配置されたミラー面(45a、45b)によって光学検出器(47)へと偏向し、この場合、前記第1と第2のレーザダイオード装置(1a、1b、1c、122a、122b、122c)が相並んで配置されているプロセスステップと、
- 前記第1のレーザダイオード(5、36、120)の前記光学機能を、前記偏向されたレーザビーム(8、42)強度分布および/または明るさおよび/または波長に依存して、前記光学検出器(47)によって確定するプロセスステップと
を有することを特徴とする光学機能の確定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザダイオード装置およびレーザダイオード装置を有するシステムに関する。これに加えて本発明は、レーザダイオード装置の製造方法、レーザダイオード装置のハウジングの気密性の確定方法、およびシステムの第1のレーザダイオードの光学機能の確定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には、レーザダイオードとしてのエッジエミッタと、レーザダイオードが中に配置されたハウジングとを備えたレーザダイオード装置が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これを出発点として、本発明の基礎となる課題は、構造が単純化されており、かつ作製技術的な利点をもたらすレーザダイオード装置を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、請求項1に基づくレーザダイオード装置および請求項9に基づくレーザダイオード装置を有するシステムが提案される。これに加えて請求項11に基づくレーザダイオード装置の製造方法が提案される。そのうえ本発明は、請求項15に基づくレーザダイオード装置のハウジングの気密性の確定方法および請求項16に基づくシステムの第1のレーザダイオードの光学機能の確定方法を含む。
【0005】
このレーザダイオード装置は、エッジエミッタとして形成された少なくとも1つのレーザダイオードを含む。これに加えてレーザダイオード装置は、ハウジングの第1の側壁として形成された透明な光学窓を備えたハウジングを含む。ハウジングは、レーザダイオード装置の外部環境に対してレーザダイオードを遮蔽することに役立つ。透明な光学窓は、レーザダイオードによって生成された少なくとも1つのレーザビームを外部環境へと透過させるために形成されている。これに関しレーザダイオードは、ハウジングの底に少なくとも間接的に固定されている。エッジエミッタの場合、レーザビームの出射箇所、チップエッジでは放射密度が非常に高い。環境中に存在する有害な気体物質または固体物質がある場合、放射強度の高い領域では、これらの物質との光化学反応が起こる可能性があり、この反応はレーザダイオードの破壊を引き起こす。この破壊を回避するため、ハウジングは、とりわけレーザダイオード装置の外部環境に対してレーザダイオードを気密に遮蔽するために形成されている。ハウジングの側壁およびハウジング底に向かい合って配置されたハウジング蓋は、複数の、とりわけ少なくとも3つのウエハから形成されている。これにより、ウエハ複合体として形成されており、かつ相対的に少なくて容易に結合され得るウエハから形成されているハウジングが生じる。これに関しレーザダイオードは、レーザダイオードの主放射方向がハウジングの底に対して実質的に平行に、とりわけ底の第1の主広がり平面に対して実質的に平行に方向づけられるように、ハウジング内で固定されている。
【0006】
透明な光学窓としてのハウジングの第1の側壁がガラスウエハから、および第1の側壁に向かい合っているハウジングの第2の側壁が第1のシリコンウエハから形成されていることが好ましい。ハウジングのさらなる側壁、とりわけ第3および第4の側壁ならびにハウジング蓋は第2のシリコンウエハから形成されている。
【0007】
側壁が長方形の断面を有することが好ましい。ハウジングが直方体形に形成されていることが好ましい。この関連でハウジングは、第1、第2、第3、および第4の側壁ならびにハウジング底およびハウジング蓋を有する。
【0008】
これに加えてレーザダイオード装置が、ハウジングに対して独立して配置された固定要素を有することが好ましく、この固定要素は、レーザダイオードによって生成された少なくとも1つのレーザビームが直接的に外部環境へと透過するように、レーザダイオードをハウジング内で固定するために形成されている。つまりレーザビームは、ハウジング内での事前の方向転換なしで、光学的な透明な窓に達する。固定要素がセラミック基板として形成されていることが好ましい。この場合、レーザダイオードは、熱伝導に優れた電気絶縁性のセラミック基板にはんだ付けされる。このセラミックには、電気的導体路、さらには電気的貫通ビアが施されている。レーザダイオードは、はんだ付けおよび/またはワイヤボンディングによって導体路と電気的に接続される。セラミックはこの場合、ハウジング底ともはんだ付けされる。したがってレーザダイオードはセラミック基板と機械的に、電気的に、および熱的に結合されている。
【0009】
ハウジング底がキャリア基板として形成されていることが好ましい。このキャリア基板がセラミック基板として形成されていることが好ましい。代替策として、キャリア基板が電気的貫通ビアを備えたシリコン基板またはガラスウエハ基板として形成されている。これは、ハウジングを引き続き少ないハウジング部品によるウエハ複合体として形成し、シリコン・ガラス技術でのウエハ複合体の作製も同様に簡略化されているという利点を提供する。キャリア基板が、キャリア基板の下面に、少なくとも1つの第1の凹部を有することが好ましい。キャリア基板とハウジングのその他の側壁との接合剤として、ボンディング温度が300℃超のガラスはんだが使用される場合、ボンディングプロセスは、レーザアシストボンディングプロセスによってのみ行われ得る。キャリア基板の下面での少なくとも1つの、とりわけ周りを囲んでいる第1の凹部は、レーザ出力のより良いカップリングまたは取り込みに役立つ。
【0010】
ハウジング蓋が少なくとも1つの第2の凹部を有し、それによりハウジング蓋が少なくとも局所的に薄化していることが好ましい。この薄化した蓋は、ハウジングの気密性検査、したがってハウジングが実際にどこまで気密に密閉されているのかの検査を実施するために利用され得る。
【0011】
本発明のさらなる対象は、2つの相並んで配置された前述のようなレーザダイオード装置を含むシステムである。システムはこれに加えて、例えばフォトダイオードのような光学検出器を含む。少なくとも2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置の第2のレーザダイオード装置は、第2のレーザダイオード装置の第2のハウジングの第2の側壁の外面にミラー面を有する。これに関しミラー面は、少なくとも2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置の第1のレーザダイオード装置に対し、第1のレーザダイオード装置の第1のレーザダイオードによって放射された少なくとも1つのレーザビームがミラー面によって光学検出器の方向に偏向されるように方向づけられている。とりわけ、第2の側壁の外面自体がミラー面として形成されている。このために、とりわけ第2の側壁の外面に凹部が設けられており、この凹部は例えばKOHエッチングによって生成される。システムがハウジング底として1つの共通のキャリア基板を有し、このキャリア基板上に2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置が配置されていることが好ましい。キャリア基板はここでもセラミックから形成されていることが好ましい。代替策として、キャリア基板が電気的貫通ビアを備えたシリコンウエハまたはガラスウエハから形成されている。キャリア基板は、第1と第2のレーザダイオード装置の間の部分領域内で、とりわけ貫通孔として形成された開口部を有する。ミラー面は、少なくとも2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置の第1のレーザダイオード装置に対し、第1のレーザダイオード装置のレーザダイオードによって放射された少なくとも1つのレーザビームがミラー面によって開口部およびビーム経路内で開口部の後ろに配置された光学検出器の方向に偏向されるように方向づけられている。キャリア基板の下面の方の側に光学検出器を配置することにより、ウエハ複合体の電気試験もレーザダイオードの光学試験も共通の側から実施され得るという利点が生じる。
【0012】
本発明のさらなる対象は、レーザダイオード装置の製造方法である。製造されるレーザダイオード装置は、とりわけ前述のレーザダイオード装置である。これに関し、最初に第2のシリコンウエハが用意される。次に、第1のエッチングステップにより第2のシリコンウエハ内に貫通孔が生成される。貫通孔は、とりわけ長方形の断面で生成される。第1のエッチングステップは、とりわけKOHエッチングまたはトレンチエッチングによって実施される。さらなるプロセスステップで第1のシリコンウエハが用意される。続いて、第1のシリコンウエハが、生成された貫通孔を第2のシリコンウエハの下面で塞ぐように、第1と第2のシリコンウエハが相互に結合される。次にガラスウエハが用意される。次のプロセスステップでは、ガラスウエハが、生成された貫通孔を第2のシリコンウエハの上面で塞ぐように、第2のシリコンウエハとガラスウエハが相互に結合される。次に、第1および第2のシリコンウエハならびにガラスウエハを含むウエハスタックが、分離平面に沿って分離される。言い換えれば、ウエハスタックが分離平面に沿って切断または個別化される。分離平面は、貫通孔の主延び方向に沿って走っており、したがって分離工程後には、個別化されたハウジング部分が、それぞれ1つの横への開口部を有する。次のステップでは、キャリアウエハの外面でエッジエミッタとして形成されたレーザダイオードが、キャリア基板と、第1のシリコンウエハと、第2のシリコンウエハと、ガラスウエハとによって形作られたハウジング内に配置されるように、キャリア基板が、第1のシリコンウエハ、第2のシリコンウエハ、およびガラスウエハと結合される。この最後のプロセスステップのため、個別化されたハウジング部分が90°回転させられることが好ましく、これにより、製造方法が平面的に、1つの共通の平面内で続けられ得る。
【0013】
第1のシリコンウエハの上面にトレンチビームストッパ構造が施されることが好ましい。このトレンチビームストッパ構造は、とりわけ、例えば粗度の大きなまたは柱状構造をもつビーム吸収性表面を生成するエッチングである。
【0014】
キャリア基板と、第1のシリコンウエハ、第2のシリコンウエハ、およびガラスウエハとの結合は、ハウジングが気密に密閉されるように行われることが好ましい。そのような気密密閉のための接合剤として、ガラスはんだが使用されることが好ましい。
【0015】
複数のレーザダイオード装置が製造されることが好ましい。この関連で、第2のシリコンウエハ内に複数の貫通孔が生成される。この場合、後に行われるウエハスタックの分離または個別化は、貫通孔に沿って、とりわけ貫通孔の主延び方向に沿って走っている分離平面に沿って行われる。
【0016】
本発明のさらなる対象は、レーザダイオード装置のハウジングの気密性の確定方法である。このために、ハウジング蓋が少なくとも1つの第2の凹部を有し、したがって少なくとも局所的に薄化されている前述のレーザダイオード装置が使用される。この第2の凹部を生成するため、貫通孔のエッチングの際にオーバエッチングが実施されることが好ましい。このようなオーバエッチングは、例えばKOHエッチングによって達成され得る。この検査方法では、最初に、キャリア基板と、第1のシリコンウエハと、第2のシリコンウエハと、ガラスウエハとによって形作られたハウジング内で規定の内圧が生成されるように、キャリア基板が、第1のシリコンウエハ、第2のシリコンウエハ、およびガラスウエハと結合される。これに関し内圧は周囲圧力に対する圧力差を有する。次のステップでは、ハウジング蓋の反りが測定される。その後、測定された反りに依存してハウジングの気密性が確定される。これに関してはとりわけ、製造されたハウジングが実際に気密に密閉されているかどうかが確定される。
【0017】
本発明のさらなる対象は、少なくとも2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置および光学検出器を含む前述のシステムの第1のレーザダイオードの光学機能の確定方法である。光学機能とは、第1のレーザダイオードによって放射されたレーザビームの品質、とりわけ良さのことである。この方法では、最初に、第1のレーザダイオード装置の第1のハウジング内に配置された第1のレーザダイオードによって少なくとも1つのレーザビームが放射される。次に、放射されたレーザビームが、第2のレーザダイオード装置の第2のハウジングの第2の側壁の外面に配置されたミラー面によって光学検出器へと偏向される。次に、偏向されたレーザビームに依存して第1のレーザダイオードの光学機能が確定される。とりわけ、光学機能は、偏向されたレーザビームの強度分布および/または明るさおよび/または波長に依存して、光学検出器によって確定される。述べた方法により、レーザダイオードの光学機能の検査は、製造方法に続く電気光学検査に組み込まれ得る。別々の検査装置は必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1a】レーザダイオード装置の第1の実施形態を横から見た第1の断面の概略図である。
図1b】レーザダイオード装置の第1の実施形態を横から見た第2の断面の概略図である。
図1c】レーザダイオード装置の第1の実施形態を上から見た第3の断面の概略図である。
図2】2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置を含むシステムを横から見た概略図である。
図3a】複数のレーザダイオード装置を生成するためのプロセスステップの概略図である。
図3b】複数のレーザダイオード装置を生成するためのさらなるプロセスステップの概略図である。
図3c】複数のレーザダイオード装置を生成するためのさらなるプロセスステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1aは、レーザダイオード装置1aの第1の実施形態を横から見た第1の断面を概略的に示している。これに関しレーザダイオード装置1aは、エッジエミッタとして形成されたレーザダイオード5を含んでいる。これに加えてレーザダイオード装置は、透明な光学窓3を備えたハウジング60を含んでいる。これに関し透明な光学窓3は、ハウジング60の第1の側壁61として形成されている。ハウジング60は、レーザダイオード装置1aの外部環境に対してレーザダイオード5をとりわけ気密に遮蔽するために形成されている。透明な光学窓3は、レーザダイオード5によって生成された少なくとも1つのレーザビーム8を外部環境へと透過させるために形成されている。ビーム9aおよび9bによって示された角度範囲は、レーザビーム8が放射され得る範囲を表す。ビーム9aおよび9bによって示された角度範囲は、例えばレーザビームの波長に依存する。レーザダイオード5は、この実施形態では独立した固定要素10を介して間接的に、ハウジング60の底6に固定されている。この図で示したハウジング60の第1の側壁61、ハウジング60の第2の側壁62、およびハウジング底6に向かい合って配置されたハウジング蓋2は、3つのウエハから形成されている。接合剤20a~20dとして、この第1の実施形態ではガラスはんだが使用されている。
【0020】
ハウジング底6は、この実施形態ではキャリア基板として形成されている。キャリア基板もまたこの場合はシリコンから成っており、かつここでは図示されていない貫通ビアを有する。キャリア基板は、レーザアシストボンディングプロセスの際にレーザ出力をより良くカップリングするため、キャリア基板の下面に、第1の周りを囲んでいる凹部7aおよび7bを有する。
【0021】
ハウジング60の第1の側壁61はこの実施形態ではガラスウエハから形成されている。ハウジング60の第2の側壁62は第1のシリコンウエハから形成されており、ハウジング蓋2は第2のシリコンウエハから形成されている。
【0022】
側壁61および62は長方形の断面を有し、ハウジング60は直方体形に形成されている。
ハウジング60に対して独立して配置された固定要素10は、レーザダイオード5によって生成されたレーザビーム8が直接的に外部環境へと透過するように、レーザダイオード5をハウジング60の内部11において固定するために形成されている。これに関し固定要素10はセラミック基板として形成されている。このセラミック基板には、ここでは図示されていない電気的導体路、さらには電気的貫通ビアが施されている。レーザダイオード5は、はんだ付けおよび/またはワイヤボンディングによって導体路と電気的に接続される。セラミックはこの場合、ハウジング底6ともはんだ付けされている。したがってレーザダイオード5は固定要素10と機械的に、電気的に、および熱的に結合されている。
【0023】
レーザダイオード5はさらに、レーザダイオード5の主放射方向が底6の第1の主広がり平面12に対して実質的に平行に方向づけられるように、ハウジング60内で固定されている。
【0024】
図1bは、レーザダイオード装置1aの第1の実施形態を横から見た第2の断面を示している。これに関し切断面は、図1aでの切断平面14に沿って生成された。ここでは追加的に、ハウジング60の第3の側壁16および第4の側壁17が見える。これらの側壁16および17は第2のシリコンウエハから形成されている。さらにハウジング底6内の追加的な凹部7cおよび7dが認識され得る。
【0025】
図1cは、レーザダイオード装置1aの第1の実施形態を上から見た第3の断面を示している。これに関し切断面は、図2aでの切断平面14に沿って生成された。ここでは追加的に、この場合はガラスはんだとして形成されている接合剤20eおよび20fが見える。
【0026】
図2は、2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置1bおよび1cを含むシステム50を横から見て概略的に示している。ただしこの図では、簡略化のため第1のレーザダイオード装置1bだけがより正確に図示されている。加えてシステム50は光学検出器47を含んでいる。図1a~図1cで示したレーザダイオード装置1aとは異なり、第1のレーザダイオード装置1bも第2のレーザダイオード装置1cも、それぞれの第2の側壁31および51の外面34aおよび34bにミラー面45aおよび45bを有する。これに関し第2のレーザダイオード装置1cのミラー面45bは、第1のレーザダイオード装置1bに対し、第1のレーザダイオード装置1bの第1のレーザダイオード36によって放射された少なくとも1つのレーザビーム42がミラー面45bによって光学検出器47の方向に偏向されるように方向づけられている。光学検出器47は、第1のレーザダイオード36の光学機能を、偏向されたレーザビーム42に依存して、とりわけ強度分布および/または明るさおよび/または波長に依存して確定するために形成されている。この関連でシステム50はさらに、少なくとも2つの相並んで配置されたレーザダイオード装置1bおよび1cの1つの共通のキャリア基板を有し、このキャリア基板が、第1のレーザダイオード装置1bのハウジング底38として用いられる。キャリア基板はここでも、キャリア基板の下面に、周りを囲んでいる2つの凹部39aおよび39bを有する。キャリア基板は、第1のレーザダイオード装置1bと第2のレーザダイオード装置1cの間の部分領域48内で、ここでは貫通孔として形成された開口部40bを有する。ミラー面45bは第1のレーザダイオード装置1bに対し、レーザダイオード36によって放射されたレーザビーム42が光学的な透明な窓30を経てミラー面45bによって開口部40bおよびビーム経路内で開口部40bの後ろに配置された光学検出器47の方向に偏向されるように方向づけられている。
【0027】
これに加えて第1のレーザダイオード装置1bのハウジング蓋32は、図1a~図1cで示したレーザダイオード装置1aとは異なり、第2の凹部33を有する。第2の凹部33は、この場合はオーバエッチングによって生成された。このようなオーバエッチングは、例えばKOHエッチングによって達成され得る。薄化したハウジング蓋32は、第1のレーザダイオード装置1bのハウジング41の気密性の確定に役立つ。この関連で、ハウジング41をハウジング底38としてのキャリアウエハと接合する際に、ハウジング空洞内の気体圧力を、周囲圧力に対して圧力差が生じるように調整する。この圧力差が、薄化したハウジング蓋32をアーチ状に湾曲させる。気密性試験は、この反りの測定/検査を介して行われる。
【0028】
図3aは、複数のレーザダイオード装置の製造方法の第1の部分ステップを概略的に示している。これに関しては、最初に第1のプロセスステップ99で第2のシリコンウエハ80が用意される。次のプロセスステップ100では、第1のエッチングステップにより第2のシリコンウエハ内に断面が長方形の貫通孔が生成される。第1のエッチングステップは、とりわけKOHエッチングまたはその代わりにトレンチエッチングである。次のプロセスステップ101では、第2のシリコンウエハ80の下面に接合剤82が施される。その次にプロセスステップ102では第1のシリコンウエハ83が用意され、次のプロセスステップ103では、シリコンウエハ83の上面にトレンチビームストッパ構造84が施される。トレンチビームストッパ構造84は、とりわけ、例えば粗度の大きなまたは柱状構造をもつビーム吸収性表面を発生させるエッチングである。次のプロセスステップ104では、第1のシリコンウエハ83が、生成された貫通孔81を第2のシリコンウエハ80の下面で塞ぐように、第1のシリコンウエハ83と第2のシリコンウエハ80が接合剤82によって相互に結合される。次のプロセスステップ105では、第2のシリコンウエハの上面に接合剤86が施される。
【0029】
図3bは、複数のレーザダイオード装置の製造方法の続きとして、この方法のさらなる部分ステップを示している。プロセスステップ105の次のプロセスステップ107ではガラスウエハ90が用意され、次のステップ108では全面的に反射防止コーティング91が付与される。プロセスステップ108の次のプロセスステップ109では、ガラスウエハ90が、生成された貫通孔81を第2のシリコンウエハ80の上面で塞ぐように、第2のシリコンウエハ80とガラスウエハ90が相互に結合される。次のプロセスステップ110では、ウエハスタックが分離平面89に沿って分離され、したがって個々の生成されたハウジング部分またはウエハスタック要素が互いから分離される。これに関しハウジング部分の個別化は、貫通孔81の主延び方向に沿って走っている分離平面89に沿って行われる。
【0030】
図3cは、複数のレーザダイオード装置の製造方法の続きとして、この方法のさらなる部分ステップを示している。プロセスステップ110の次のプロセスステップ112では、ハウジング部分が90°回転されて、保持装置94a~94dとしての、開口部150を有するトレイ151内に配置される。加えて、ガラスウエハ90の側面および第1のシリコンウエハ83の側面に、接合剤95aおよび95bとしてガラスはんだが施される。プロセスステップ112の次のプロセスステップ113では、キャリア基板98が押圧板96により、ハウジング部分を備えたトレイ151に対して位置合わせされ、かつキャリアウエハの外面でエッジエミッタとして形成されたレーザダイオード120が、キャリア基板98と、第1のシリコンウエハ83と、第2のシリコンウエハ80と、ガラスウエハ90とによって形作られたハウジング内に配置されるように、キャリア基板98が、第1のシリコンウエハ83、第2のシリコンウエハ80、およびガラスウエハ90と結合される。キャリア基板98とハウジング部分が相互にボンディングされる。この例示的実施形態では接合剤として、ボンディング温度が実質的に300℃超のガラスはんだが使用される。したがってボンディングプロセスは、レーザアシストボンディングプロセスによってのみ行われ得る。この関連で、レーザ出力をより良くカップリングするため、キャリア基板98が第1の周りを囲んでいる凹部97を有する。接合ステップ中に弾性板121がトレイ151の開口部150内にアーチ状に湾曲し、これによりハウジング部分への押圧力を生成する。レーザダイオードは独立した固定要素によってキャリア基板98と結合されている。プロセスステップ113の次のプロセスステップ114では、レーザダイオード装置122a~122cがまた個別化される。
図1a
図1b
図1c
図2
図3a
図3b
図3c