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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】制御装置、電力変換装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20240705BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240705BHJP
【FI】
H02M7/12 A
H02M7/48 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023538942
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2022042826
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207192
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】エコング ウフォート ウフォート
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅史
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-252994(JP,A)
【文献】特開2004-357442(JP,A)
【文献】特開2007-244193(JP,A)
【文献】特開平6-121548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力を交流電力に変換するインバータとを組み合わせた電力変換装置の制御装置であって、
前記コンバータの直流側の直流電圧に係る直流電圧検出値と前記直流側の直流電圧基準との偏差である直流電圧偏差に対し比例演算及び積分演算を行って、前記比例演算及び前記積分演算の結果を用いて出力値を生成する直流電圧制御器と、
前記インバータの要求出力値を用いて前記直流電圧の変動を抑制させるための補償量を調整する補償演算器と、
前記生成された出力値と前記調整された補償量とに基づいた演算結果を用いて前記コンバータの変換量を制御する制御器と、
前記直流電圧偏差の大きさと前記積分演算の結果とに係る所定の条件が満たされた場合に、前記積分演算の結果を、前記積分演算の結果の絶対値よりも小さな値に変更する安定化制御器と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記安定化制御器は、
前記積分演算の結果の絶対値よりも小さな値として0又は0近傍の値を用いて、前記所定の条件が満たされた場合に、前記積分演算の結果を前記0又は0近傍の値に設定して、その設定の値を用いて前記積分演算を継続する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記直流電圧制御器は、
前記直流電圧検出値から前記直流側の直流電圧基準を減算して得られる前記偏差を積分して、
前記積分演算の結果の符号は、前記偏差の平均値の符号と正負が一致する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定の条件として、
前記直流電圧偏差ΔVdcの値が正の値の第1閾値VTHPよりも大きく、かつ前記積分演算の結果の値が負であることと、
前記直流電圧偏差ΔVdcの値が負の値の第2閾値VTHNよりも小さく、かつ前記積分演算の結果の値が正であることとの内の何れかを満たすことを含む、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記所定の条件として、
前記直流電圧偏差ΔVdcの絶対値が正の値の第1閾値VTHPよりも大きく、前記直流電圧偏差ΔVdcの移動平均の結果の符号が所定の期間を超えて同じ符号であることを含む、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力を交流電力に変換するインバータとの組みを備える電力変換装置であって、
前記コンバータの直流側の直流電圧に係る直流電圧検出値と前記直流側の直流電圧基準との偏差である直流電圧偏差に対し比例演算及び積分演算を行って、前記比例演算及び前記積分演算の結果を用いて出力値を生成する直流電圧制御器と、
前記インバータの要求出力値を用いて前記直流電圧の変動を抑制させるための補償量を調整する補償演算器と、
前記生成された出力値と前記調整された補償量とに基づいた演算結果を用いて前記コンバータの変換量を制御する制御器と、
前記直流電圧偏差の大きさと前記積分演算の結果とに係る所定の条件が満たされた場合に、前記積分演算の結果を、前記積分演算の結果の絶対値よりも小さな値に変更する安定化制御器と、
を備える電力変換装置。
【請求項7】
交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力を交流電力に変換するインバータとの組みを備える電力変換装置の制御方法であって、
前記コンバータの直流側の直流電圧に係る直流電圧検出値と前記直流側の直流電圧基準との偏差である直流電圧偏差に対し比例演算及び積分演算を行って、前記比例演算及び前記積分演算の結果を用いて出力値を生成し、
前記インバータの要求出力値を用いて前記直流電圧の変動を抑制させるための補償量を調整し、
前記生成された出力値と前記調整された補償量とに基づいた演算結果を用いて前記コンバータの変換量を制御する過程と、
前記直流電圧偏差の大きさと前記積分演算の結果とに係る所定の条件が満たされた場合に、前記積分演算の結果を、前記積分演算の結果の絶対値よりも小さな値に変更する過程と、
を含む制御方法。
【請求項8】
前記積分演算の結果の絶対値よりも小さな値として0又は0近傍の値を用いて、前記所定の条件が満たされた場合に、前記積分演算の結果を前記0又は0近傍の値に設定して、その設定の値を用いて前記積分演算を継続する過程、
を含む請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記直流電圧検出値から前記直流側の直流電圧基準を減算して得られる前記偏差を積分する過程を含み、
前記積分演算の結果の符号は、前記偏差の平均値の符号と正負が一致する、
請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記所定の条件として、
前記直流電圧偏差ΔVdcの値が正の値の第1閾値VTHPよりも大きく、かつ前記積分演算の結果の値が負であることと、
前記直流電圧偏差ΔVdcの値が負の値の第2閾値VTHNよりも小さく、かつ前記積分演算の結果の値が正であることとの内の何れかを満たすことを含む、
請求項9に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置、電力変換装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバータ(電力変換器)とインバータとを組み合わせた電力変換装置には、そのコンバータとインバータとの直流側を互いに接続したものがある。コンバータが生成した直流電力をインバータが交流電力に変換する。インバータが駆動する負荷の変動によって、電力変換装置内の直流電圧が変動することがある。これによって、電力変換装置の制御が不安定になることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開平6-168003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、コンバータとインバータとを組み合わせた電力変換装置の直流電圧をより安定させることができる制御装置、電力変換装置及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の制御装置は、交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力を交流電力に変換するインバータとを組み合わせた電力変換装置の制御装置である。前記制御装置は、直流電圧制御器と、補償演算器と、制御器と、安定化制御器と、を備える。前記直流電圧制御器は、前記コンバータの直流側の直流電圧に係る直流電圧検出値と前記直流側の直流電圧基準との偏差である直流電圧偏差に対し比例演算及び積分演算を行って、前記比例演算及び前記積分演算の結果を用いて出力値を生成する。前記補償演算器は、前記インバータの要求出力値を用いて前記直流電圧の変動を抑制させるための補償量を調整する。前記制御部は、前記生成された出力値と前記調整された補償量とに基づいた演算結果を用いて前記コンバータの変換量を制御する。前記安定化制御器は、前記直流電圧偏差の大きさと、前記積分演算の結果とに係る所定の条件が満たされた場合に、前記積分演算の結果を、前記積分演算の結果の絶対値よりも小さな値に変更する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の位相角検出システムを適用したドライブシステムの俯瞰図。
図2】実施形態のコンバータ2における電流制御について説明するための図。
図3】実施形態の制御装置10による制御の概要を説明化するための図。
図4】実施形態の制御装置10による制御の概要を説明化するための図。
図5】実施形態のより具体的な事例を説明するための図。
図6】実施形態のより具体的な事例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の制御装置、電力変換装置及び制御方法を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それらの構成の重複する説明は省略する場合がある。なお、電気的に接続されることを、単に「接続される」ということがある。
【0008】
図1は、実施形態の電力変換装置100の構成図である。
図1には、電力変換装置100のほか、電力変換装置100に係る、入力トランス1と、モータ5と、負荷6とが記載されている。
【0009】
まず、電力変換装置100の概要について説明する。
電力変換装置100は、例えば、コンバータ2と、平滑コンデンサ3と、インバータ4と、直流電圧検出器7と、制御装置10とを備える。コンバータ2とインバータ4の直流側の正極と負極の夫々が直流リンクを介して互いに接続されている。この直流リンクには、平滑コンデンサ3が設けられている。
【0010】
例えば、入力トランス1の2次側からコンバータ2に交流が給電され、コンバータ2はこれを直流に変換して平滑コンデンサ3に給電する。なお、平滑コンデンサ3を、コンバータ2側の平滑コンデンサ3Aとインバータ4側の平滑コンデンサ3Bに分けて設ける構成にしてもよい。例えばコンバータ2による変換によって、直流リンクに電圧変動が生じる。その一部は、平滑コンデンサ3によって平滑化される。平滑コンデンサ3によって平滑化された直流電圧は、インバータ4に与えられる。
【0011】
インバータ4は、この直流電圧を交流電圧に変換してモータ5を駆動する。平滑コンデンサ3に印加される電圧は、電圧フィードバック用の直流電圧検出器7によって検出される。
【0012】
これにより、インバータ4は、コンバータ2が生成した直流電力の一部を交流電力に変換する。インバータ4は、モータ5に、その交流電力を供給する。
【0013】
モータ5の軸には、速度フィードバック用の速度検出器5Sが取り付けられている。モータ5の軸には、利用状況によりトルクが変動する負荷6が連結されている。
【0014】
以下、より具体的な例を示して、電力変換装置100の各部の詳細について説明する。
【0015】
コンバータ2は、IGBT、MOSFETなどの複数のスイッチング素子を含み、例えばスイッチング素子をブリッジ接続して構成した所謂アクティブコンバータとして構成されている。コンバータ2は、直流リンクの電圧、つまり直流出力電圧が一定となるようにコンバータ制御部8から制御されている。
【0016】
インバータ4は、IGBT、MOSFETなどの複数のスイッチング素子を含み、例えばスイッチング素子をブリッジ接続して構成した所謂アクティブコンバータとして構成されている。インバータ4とコンバータ2は同様の方式に基づいた構成であってもよく、互いに異なる方式に基づいた構成であってもよい。インバータ4とコンバータ2の構成は、既知の構成を適用してよい。
【0017】
インバータ4は、例えば、モータ5の速度が所定の値となるようにインバータ制御部9から制御されている。なお、コンバータ制御部8及びインバータ制御部9は、纏めて制御装置10として構成してもよい。以下、コンバータ制御部8及びインバータ制御部9の内部構成について説明する。
【0018】
コンバータ制御部8は、例えば、減算器81と、直流電圧制御器82と、加算器83と、安定化制御器84と、電流制御器85(制御器)とを備える。
【0019】
コンバータ制御部8において、直流電圧検出器7によって検出された電圧フィードバック信号は、直流電圧基準Vdcから減算器81によって減算される。減算器81は、その偏差(直流電圧偏差ΔVdcという。)を直流電圧制御器82に与える。直流電圧制御器82は、この直流電圧偏差ΔVdcに対してPI制御を行い、直流電圧偏差ΔVdcが小さくなるような電流基準を出力し、これを加算器83の一方の入力に与える。加算器83の他方には後述するインバータ制御部9からパワー補償信号が与えられる。そして加算器83は、その出力信号、すなわち補償された電流基準を、電流制御器85に与える。電流制御器85は、この電流基準と図示しないコンバータ電流フィードバックとの偏差(直流電流偏差という。)が小さくなるように、例えば第1のPWM制御を行ってコンバータ2を構成するスイッチング素子をオンオフ制御する。安定化制御器84は、負荷6の変動に起因する直流リンクの直流電圧の変動を抑制するようにコンバータ制御部8内で作用する。安定化制御器84の詳細については、後述する。
【0020】
インバータ制御部9は、例えば、減算器91と、速度制御器92と、パワー補償演算器93(補償演算器)と、電流制御器95とを備える。
【0021】
インバータ制御部9において、速度検出器5Sで検出された速度フィードバック信号は、速度基準から減算器91によって減算され、その偏差(速度偏差という。)は速度制御器92に与えられる。速度制御器92はこの速度偏差に対してPI制御を行い、速度偏差が小さくなるようなトルク基準を出力して電流制御器95に与える。なお、ここでのトルク基準とは、例えばベクトル制御を行う場合のトルク軸の電流基準に相当する。電流制御器95は、このトルク基準と、図示しない変成器CTによって検出された結果とに基づいた電圧基準(交流電圧基準という。)を生成し、インバータ出力電流フィードバックとの偏差(交流電流偏差という。)が小さくなるように調整された交流電圧基準を出力する。インバータ4の出力電圧とこの交流電圧基準との差が小さくなるように、電流制御器95は、例えば第2のPWM制御を行ってインバータ4を構成するスイッチング素子をオンオフ制御する。
【0022】
上述したトルク基準は、パワー補償演算器93に与えられる。パワー補償演算器93は、このトルク基準を用いて、パワー補償信号を生成する。このパワー補償信号は、前述した加算器83の第1入力に供給される。
【0023】
このパワー補償演算器93は、コンバータ制御部8によるコンバータ2内の直流リンクの直流電圧制御に対して、インバータ4の稼働状態の情報を用いて、コンバータ2内の直流リンクの直流電圧の変動を補償するように作用する。この補償は、インバータ4の稼働状態に基づいたフィードフォワード要素になる。例えば、このパワー補償演算器93は、大きな負荷6の変動が起きた際に、直流電圧が大きく下がることを抑制するように、直流電圧制御を司るコンバータ制御の制御系にフィードフォワードの補償分を注入する。なお、このパワー補償演算器93による補償分は、コンバータ制御部8の直流電圧制御の結果に対して加算されるため、補償量を適正にすることが必要になる。
【0024】
なお、制御装置10の一部は、例えば、記憶装置に格納されたプログラムを展開し、あるいはプログラムの各ステップを逐次読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)等のハードウェアにより実現されてもよい。この場合、上述した各構成要素の一部又は全部は、CPUによって実行されるプログラムの一部である。例えば、制御装置10の動作をCPUにより実行、実現する場合には、コンバータ制御部8及びインバータ制御部9のプログラムを、共通のCPUによって実行されるようにしてもよく、コンバータ制御部8及びインバータ制御部9に対応付けて設けたCPUによって実行されるようにしてもよい。
【0025】
また、制御装置10は、シーケンサ(PLC(programmable logic controller)と呼ぶ。)によって実現されてもよい。コンバータ制御部8及びインバータ制御部9は、共通するPLCのプログラムの一部として実現されてもよいし、別のPLCによって実現されてもよい。このPLCは、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの半導体装置、又は複数の半導体装置の組み合わせによって形成されていてもよい。
【0026】
ところで、負荷6のトルクの変動によって、モータ5の駆動状態に影響することがある。このような負荷6のトルクの変動に起因する影響を軽減可能な事例について説明する。
図2は、実施形態のコンバータ2における電流制御について説明するための図である。
この図2に示す直流電圧制御器82は、比例演算ブロック821と、積分演算ブロック822と、加算器823とを備える。
【0027】
比例演算ブロック821は、供給される電圧偏差ΔVdcに所定の比例演算ゲイン(比例G)を乗じて、直流電流基準の比例演算成分を出力する。
【0028】
積分演算ブロック822は、供給される電圧偏差ΔVdcに所定の積分演算ゲイン(積分G)を乗じて、これを積分した結果を出力する。
【0029】
例えば、積分演算ブロック822は、乗算器8221と、積分器8222とを備える。乗算器8221は、供給される電圧偏差ΔVdcに所定の積分演算ゲインを乗じて出力する。積分器8222は、電圧偏差ΔVdcに所定の積分演算ゲインを乗じて出力された結果を積分する。積分器8222は、例えば、数値積分演算を実施して、その数値積分演算の結果は、所定時間保持される。その結果、積分演算ブロック822は、電圧偏差ΔVdcに所定の積分演算ゲインを乗じて出力された結果の積分値を得る。この積分値は、直流電流基準の積分演算成分になる。
なお、実施形態の積分器8222は、外部からの制御により、例えばクリア信号の供給を受けて、その積分値をクリアして0にするように形成されている。
【0030】
より具体的に一例を示して、その積分値をクリアする一手法について説明する。
積分器8222に、出力振幅の変動を許容する範囲を設定する。出力振幅の変動を許容する範囲は、外部からの制御によって変更可能にする。
例えば、積分器8222は、その範囲の下限値から上限値までに収まる出力信号をそのまま出力し、その範囲を超える出力信号をその下限値又は上限値に制限して出力する。さらに、その範囲の上限値と下限値の何れかを一次的に0に変更することで、その変更に伴って積分値が強制的に0に制限できる。この仕組みを利用して、積分器8222は、積分値を0に設定するとよい。例えば、積分値が負であるときに、出力振幅の変動を許容する範囲の下限値が0に変更された場合に、積分器8222は、積分値を0に設定する。なお、積分値が正であるときに、上記のように出力振幅の変動を許容する範囲の下限値を0に変更されたとしても、これによって積分器8222の動作に影響はない。出力振幅の変動を許容する範囲の上限値を0に変更する場合も同様である。これによれば、電圧偏差ΔVdcと積分値(積分項)の極性により積分器8222をクリアする。これによって、クリア時の積分器8222の応答を、クリア機能を有していない積分器の応答よりも早くした。
【0031】
上記のように、積分器8222に出力振幅の変動を許容する範囲の上限値と下限値を、所定の期間継続して0に設定することで、上限値と下限値の何れかが0に設定されている期間に、この制限値を超えるような異常動作が生じても、この影響を抑制できる。
なお、積分器8222が積分値をクリアする手法は、この手法に制限されることはなく、適当な手法を選択できる。例えば、積分値を示す変数の値を直接0に変えてもよい。
【0032】
加算器823は、直流電流基準の比例演算成分と直流電流基準の積分演算成分とを加算して、直流リンクの直流電圧制御のための直流電流基準を算出する。
【0033】
このような直流電圧制御器82は、出力信号の状態を監視するモニタや、出力信号の安定性を確保するためのリミッタ(アンチオーバシュート機能)を備えていてもよい。これらは、過大な出力信号、出力信号の不安定な状態を検出又は抑制するものであり、本実施形態で許容される出力信号は、比較的小さな振幅になることから、平時の状態にあれば異常状態とは判定されないことが多い。
【0034】
安定化制御器84は、判別器841と、制限値制御信号生成器842とを備える。
判別器841は、供給される直流電圧偏差ΔVdcの大きさを判定して、その判定結果を論理値で出力する。
例えば、判別器841は、直流電圧偏差ΔVdcの値が、正の値の閾値VTHPよりも大きい場合に「1」を出力し、直流電圧偏差ΔVdcの値が、負の値の閾値VTHNよりも小さい場合に「-1」を出力し、上記以外の場合に「0」を出力する。
【0035】
上記の閾値VTHPと閾値VTHNは、0又は0近傍の値に予め定められている。例えば、閾値VTHPを「+1%」に、閾値VTHNを「-1%」にするとよい。
【0036】
制限値制御信号生成器842は、判別器841の出力の変化を検出して、制限値制御信号を生成する。制限値制御信号生成器842は、積分器8222の積分出力の値の極性を判別して、その結果に基づいて、制限値制御信号の出力を制限することがある。
【0037】
例えば、制限値制御信号生成器842は、直流電圧偏差ΔVdcの値が、正の値の閾値VTHPよりも大きく、かつ積分出力の値が負の場合に「1」を出力し、直流電圧偏差ΔVdcの値が、負の値の閾値VTHNよりも小さく、かつ積分出力の値が正の場合に「-1」を出力し、上記以外の場合に「0」を出力する。
【0038】
積分演算ブロック822は、積分ゲイン(積分G)と積和演算とによって定まる所定の積分特性を有する。積分演算ブロック822は、直流電圧制御に係る直流電圧偏差ΔVdcに対する積分演算を実施する。直流電圧偏差ΔVdcの関係を式(1)に示す。
【0039】
ΔVdc=(積分G)x(Vdc-VdcFBK) (1)
【0040】
なお、実施形態の積分器8222は、判別器841の判別結果に基づいて下記の初期化制御を実施する。
積分器8222は、上記の判別器841からの出力(極性判別という)が、「0」から「1」に、又は「0」から「-1」に、変化したことを検出して、その検出に応じて、保持していた積分結果の値を「0」にする。
【0041】
このように、安定化制御器84は、直流電圧偏差ΔVdcの大きさと、積分演算の結果とに係る所定の条件が満たされた場合に、その積分演算の結果を、積分演算の結果の絶対値よりも小さな値の「0」に変更する。
【0042】
図3から図6を参照して、実施形態の制御装置10による制御について説明する。
図3図4は、実施形態の制御装置10による制御の概要を説明化するための図である。
図3図4に示すタイミングチャートには、それぞれの上段側から、直流電圧基準Vdc、直流電圧フィードバックVdcFBK、直流電圧偏差ΔVdc、負荷率、極性判別結果、及び積分器出力が、それぞれ示されている。
【0043】
この実施形態では、直流電圧基準Vdcの定格を100%で示す。例えば直流電圧基準Vdcの変動範囲を0から100%までの間の値にする。直流電圧フィードバックVdcFBKの定格を100%で示す。直流電圧フィードバックVdcFBKの値は、安全性・品質維持に支障がない範囲で定格を超えた値をとることがある。直流電圧偏差ΔVdcは、上述の直流電圧基準Vdcから直流電圧フィードバックVdcFBKを減算して得られた値を示す。負荷率の定格を100%で示す。例えば負荷率の変動範囲を0から100%までの間の値にする。極性判別結果は、直流電圧偏差ΔVdcと積分器出力に対して所定の判定基準に基づいた判定の結果を、-1、0、+1の3値で示す。積分器出力は、積分器8222による積分演算の結果を示す。
【0044】
この図3図4に示す波形は、動作の説明を簡略化するために、モデル化した一例を示す。実際の波形は、後述するように、より複雑な波形になる。
【0045】
なお極性判別の判定に用いる閾値について、正の値の第1閾値VTHPを1%とし、負の値の第2閾値VTHNを-1%にする。この閾値は、一例であり、これに制限されず、適宜変更してよい。
【0046】
このタイミングチャートの起点にあたる初期段階では、直流電圧基準Vdcを0%にして、モータ5を停止状態にするように制御している。負荷率も直流電圧フィードバックVdcFBKの値もそれぞれ0%であり、回生電力が生じない状態にあることがわかる。つまり、モータ5は停止しているとみなせる。この状態の直流電圧偏差ΔVdcが0%であるから、積分器出力も0になっている。
【0047】
まず、図3に示す第1事象と、これに対する応答動作について説明する。第1事象には、負荷率が急に増加する過程が含まれている。
【0048】
時刻t11に、直流電圧基準Vdcを0%から100%に立ち上げて、モータ5を起動させて定格運転にすることを指令する。この場合の負荷率を100%とする。これに応じて、直流電圧フィードバックVdcFBKの値が101%になっている。この状態の直流電圧偏差ΔVdcが-1%であり、積分器出力が負の値をとって、その絶対値が徐々に増加する。つまり、積分器出力の減少が続く。
【0049】
なお、この段階の極性判別は、下記の状況にあることから0に維持される。
積分演算の結果(積分出力)の値が負であるが、直流電圧偏差ΔVdcの値が正の値の第1閾値VTHPよりも大きくはないため、極性判別が0になっている。
【0050】
時刻t12に、負荷が変動して負荷率が200%にステップ状に急に増加する。直流電圧基準Vdcは100%に維持されているが、直流電圧フィードバックVdcFBKの値が98%に低下する。その結果、この状態の直流電圧偏差ΔVdcが2%に増加する。
【0051】
なお、この段階の極性判別は、下記の状況にあることから+1になる。
負荷率が急に変化するときまでの積分演算の結果(積分出力)の値が負であって、直流電圧偏差ΔVdcの値が正の値の第1閾値VTHPよりも大きくなったため、安定化制御器84は、極性判別を+1にする。
これに応じて、積分器8222によって積分器出力がクリアされる。その後、積分器8222による積分が再開されて積分器出力が正の値をとり、その絶対値が徐々に増加する。上記のクリアの後、上記の通り積分出力の値が正になるが、直流電圧偏差ΔVdcの値が負の値の第2閾値VTHNよりも小さくはないため、積分器出力が続けてクリアされることはない。
【0052】
その後、負荷率が200%に維持されているが、積分出力の絶対値の増加に伴って、補償量が増加することで、直流電圧フィードバックVdcFBKの値が98%から100%に向かって徐々に増加する。これに伴い、直流電圧偏差ΔVdcが2%から0%に向かって徐々に減少する。
【0053】
時刻t13になると、直流電圧偏差ΔVdcが、正の値の第1閾値VTHPよりも小さくなったため、安定化制御器84は、極性判別を0にする。その後も、直流電圧偏差ΔVdcの減少の傾向が続く。直流電圧偏差ΔVdcの値が小さくなるにつれて、その積分演算の結果である積分出力の値の変化が少なくなる。
【0054】
このように、電力変換装置100の制御装置10は、時刻t12に生じた負荷の急な増加に対して、電力変換装置100を異常停止させるような状態を避けつつ、その急な増加に対する応答が可能になる。
【0055】
次に、図4に示す第2事象と、これに対する応答動作について説明する。第2事象には、負荷率が急に減少する過程が含まれている。
時刻t21に、直流電圧基準Vdcを0%から100%に立ち上げて、モータ5を起動させて定格運転にすることを指令する。この場合の負荷率を100%とする。これに応じて、直流電圧フィードバックVdcFBKの値が99%になっている。この状態の直流電圧偏差ΔVdcが1%であり、積分器出力が正の値をとって、その絶対値が徐々に増加する。つまり、積分器出力の増加が続く。
【0056】
なお、この段階の極性判別は、下記の状況にあることから0に維持される。
積分演算の結果(積分出力)の値が正であるが、直流電圧偏差ΔVdcの値が正の値の第1閾値VTHPよりも大きくはないため、極性判別が0になっている。
【0057】
時刻t22に、負荷が変動して負荷率が50%にステップ状に急に減少する。直流電圧基準Vdcは100%に維持されているが、直流電圧フィードバックVdcFBKの値が102%に増加する。その結果、この状態の直流電圧偏差ΔVdcが-2%まで低下する。
【0058】
なお、この段階の極性判別は、下記の状況にあることから-1になる。
負荷率が急に変化するときまでの積分演算の結果(積分出力)の値が負であって、直流電圧偏差ΔVdcの値が負の値の第2閾値VTHNよりも低下したため、安定化制御器84は、極性判別を-1にする。
これに応じて、積分器8222によって積分器出力がクリアされる。その後、積分器8222による積分が再開されて積分器出力が負の値をとり、その絶対値が徐々に増加する。上記のクリアの後、上記の通り積分出力の値が負になるが、直流電圧偏差ΔVdcの値が負の値の第2閾値VTHNよりも小さくはないため、積分器出力が続けてクリアされることはない。
【0059】
その後、負荷率が50%に維持されているが、積分出力の絶対値の増加に伴って、補償量が増加することで、直流電圧フィードバックVdcFBKの値が102%から100%に向かって徐々に減少する。これに伴い、直流電圧偏差ΔVdcが-2%から0%に向かって徐々に増加する。
【0060】
時刻t23になると、直流電圧偏差ΔVdcが、負の値の第2閾値VTHNよりも大きくなったため、安定化制御器84は、極性判別を0にする。その後も、直流電圧偏差ΔVdcの増加の傾向が続く。直流電圧偏差ΔVdcの絶対値が小さくなるにつれて、その積分演算の結果である積分出力の値の変化が少なくなる。
【0061】
このように、電力変換装置100の制御装置10は、時刻t22に生じた負荷の急な減少に対して、電力変換装置100を異常停止させるような状態を避けつつ、その急な減少に対する応答が可能になる。
【0062】
図5図6は、実施形態のより具体的な事例を説明するための図である。
図5は、図3の時刻t12付近の動作をより具体的に説明するための図である。図6は、図4の時刻t22付近の動作をより具体的に説明するための図である。
【0063】
図5図6に示すタイミングチャートには、それぞれの上段側から、直流電圧基準Vdc、直流電圧フィードバックVdcFBK、極性判別、積分器出力(AVR_INT)、PI出力(AVR_PIOUT)、q軸電流基準Iq*及び補償量調整信号(Iq_FF)が、それぞれ示されている。
【0064】
図5に示された波形と、図3に示された波形との間の相違点は、図3の波形がモデル化によって模擬されたものであるのに対し、図5の波形は、実動作中に観測されたものであることである。
実動作の場合には、各信号にステップ状の状態変化を起こすことが難しく、そのため、波形の立ち上がりが緩やかになっている。この影響で、直流電圧フィードバックVdcFBKが図3の波形に比べて緩やかに変化することが読み取れる。
また、直流電圧フィードバックVdcFBKが図3の波形に比べて緩やかに変化することにより、図示されない直流電圧偏差ΔVdcの値が逐次変化する。これにより、積分器出力(AVR_INT)の波形が直線ではなく曲線状に変化する。
PI出力(AVR_PIOUT)とq軸電流基準Iq*とには、直流電圧フィードバックVdcFBKに重畳されていた比較的周波数の高い成分に対応する変動が重畳されている。
なお、補償量調整信号(Iq_FF)は、固定値の1である。補償量の大きさを調整可能に構成した場合に、この値をすることにより補償量の大きさを調整できる。
【0065】
上記のように、波形の細部の違いがみられるが、図3図4を用いて説明した基本動作を、この図5図6によって確認できる。
【0066】
上記の実施形態の制御装置10は、交流電力を直流電力に変換するコンバータ2と、直流電力を交流電力に変換するインバータ4とを組み合わせた電力変換装置100の制御装置である。制御装置10は、直流電圧制御器82と、パワー補償演算器93と、電流制御器85と、安定化制御器84と、を備える。前記直流電圧制御器は、コンバータ2の直流側の直流電圧に係る直流電圧検出値VdcFBKと直流側の直流電圧基準Vdcとの偏差である直流電圧偏差ΔVdcに対し比例演算及び積分演算を行って、その比例演算及び前記積分演算の結果を用いて出力値を生成する。パワー補償演算器93は、インバータ4の要求出力値を用いて直流電圧の変動を抑制させるための補償量を調整する。電流制御器85は、生成された出力値と調整された補償量とに基づいた演算結果を用いてコンバータ2の変換量を制御する。安定化制御器84は、直流電圧偏差ΔVdcの大きさと、積分演算の結果とに係る所定の条件が満たされた場合に、積分演算の結果を、積分演算の結果の絶対値よりも小さな値の0に変更する。これにより、コンバータとインバータとを組み合わせた電力変換装置の直流電圧をより安定させることができる。
【0067】
本実施形態によれば、衝撃荷重(impact load)が負荷に掛った場合であっても、その影響で直流電圧Vdcが急に変動することがなく、コンバータ制御部8の挙動が不安定になることを抑制することができる。これにより、直流電圧の変動を低減したり、制御装置10の応答を早めたりすることができる。
比較例な場合、直流電圧Vdcが急に変動すると、モータ5の制御が不安定になった状態が継続したり、駆動が停止したりすることがあった。
これに対して、制御装置10は、直流電圧Vdcが急に変動しても、モータ5の制御が不安定になったり、駆動が停止したりすることを軽減できる。
【0068】
なお、上記の所定の条件として、直流電圧偏差ΔVdcの絶対値が正の値の第1閾値VTHPよりも大きく、直流電圧偏差ΔVdcの移動平均の結果の符号が所定の期間を超えて同じ符号であることを含むこととしてもよい。
【0069】
(第2の実施形態)
第1の実施形態において、典型的な制御の一例として、判別器841の判別結果に基づいて保持していた積分結果の値を「0」にする初期化制御を実施する事例について説明した。本実施形態では、積分値の初期化制御により設定する値を、「0」に代えて「0」以外の小さな値にした事例について説明する。
【0070】
例えば、積分値の初期化制御により設定する値を、その時点の積分演算の結果の絶対値よりも小さな値(初期値δと呼ぶ。)にする。この初期値δは、「0」以外の値である。
【0071】
この場合、積分器8222は、上記の判別器841からの出力(極性判別)が、「0」から「1」に、又は「0」から「-1」に、変化したことを検出して、その検出に応じて、保持していた積分結果の値を初期値δにする。
【0072】
その結果、積分器8222は、初期値δに直流電圧偏差ΔVdcを積算することになる。
これにより、安定化制御器84は、直流電圧偏差ΔVdcの大きさと、積分演算の結果とに係る所定の条件が満たされた場合に、その積分演算の結果を、積分演算の結果の絶対値よりも小さな値の初期値δに変更できる。
【0073】
安定化制御器84は、積分演算の結果の絶対値よりも小さな値として0近傍の値を用いて、上記と同様の所定の条件が満たされた場合に、積分演算の結果を0近傍の値に設定して、その設定の値を用いて積分演算を継続させるとよい。
これにより、本実施形態の場合も、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
以上に説明した少なくとも一つの実施形態によれば、制御装置は、交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力を交流電力に変換するインバータとを組み合わせた電力変換装置の制御装置である。前記制御装置は、直流電圧制御器と、補償演算器と、制御器と、安定化制御器と、を備える。前記直流電圧制御器は、前記コンバータの直流側の直流電圧に係る直流電圧検出値と前記直流側の直流電圧基準との偏差である直流電圧偏差に対し比例演算及び積分演算を行って、前記比例演算及び前記積分演算の結果を用いて出力値を生成する。前記補償演算器は、前記インバータの要求出力値を用いて前記直流電圧の変動を抑制させるための補償量を調整する。前記制御部は、前記生成された出力値と前記調整された補償量とに基づいた演算結果を用いて前記コンバータの変換量を制御する。前記安定化制御器は、前記直流電圧偏差の大きさと、前記積分演算の結果とに係る所定の条件が満たされた場合に、前記積分演算の結果を、前記積分演算の結果の絶対値よりも小さな値に変更する。これにより、コンバータとインバータとを組み合わせた電力変換装置の直流電圧をより安定させることができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0076】
(付記)
[1]上記実施形態の一態様は、交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力を交流電力に変換するインバータとを組み合わせた電力変換装置の制御装置である。
この制御装置は、
前記コンバータの直流側の直流電圧に係る直流電圧検出値と前記直流側の直流電圧基準との偏差である直流電圧偏差に対し比例演算及び積分演算を行って、前記比例演算及び前記積分演算の結果を用いて出力値を生成する直流電圧制御器と、
前記インバータの要求出力値を用いて前記直流電圧の変動を抑制させるための補償量を調整する補償演算器と、
前記生成された出力値と前記調整された補償量とに基づいた演算結果を用いて前記コンバータの変換量を制御する制御器と、
前記直流電圧偏差の大きさと前記積分演算の結果とに係る所定の条件が満たされた場合に、前記積分演算の結果を、前記積分演算の結果の絶対値よりも小さな値に変更する安定化制御器と、を備えるものである。
[2]上記[1]に記載の制御装置において、前記安定化制御器は、
前記積分演算の結果の絶対値よりも小さな値として0又は0近傍の値を用いて、前記所定の条件が満たされた場合に、前記積分演算の結果を前記0又は0近傍の値に設定して、その設定の値を用いて前記積分演算を継続するとよい。
[3]上記[1]又は[2]に記載の制御装置において、前記直流電圧制御器は、
前記直流電圧検出値から前記直流側の直流電圧基準を減算して得られる前記偏差を積分する。この場合に、前記積分演算の結果の符号は、前記偏差の平均値の符号と正負が一致するとよい。
[4]上記[3]に記載の制御装置において、前記所定の条件として、
前記直流電圧偏差ΔVdcの値が正の値の第1閾値VTHPよりも大きく、かつ前記積分演算の結果の値が負であることと、
前記直流電圧偏差ΔVdcの値が負の値の第2閾値VTHNよりも小さく、かつ前記積分演算の結果の値が正であることとの内の何れかを満たすことを含むとよい。
[5]上記[3]に記載の制御装置において、前記所定の条件として、
前記直流電圧偏差ΔVdcの絶対値が正の値の第1閾値VTHPよりも大きく、前記直流電圧偏差ΔVdcの移動平均の結果の符号が所定の期間を超えて同じ符号であることを含むとよい。
【符号の説明】
【0077】
100…電力変換装置、
2…コンバータ、
3、3A、3B…平滑コンデンサ、
4…インバータ、
5…モータ、
6…負荷、
7…直流電圧検出器、
8…コンバータ制御部、
9…インバータ制御部、
10…制御装置、
81…減算器、
82…直流電圧制御器、
821…比例演算ブロック、
822…積分演算ブロック、
83、823…加算器、
84…安定化制御器、
85…電流制御器(制御器)
841…判別器、
842…制限値制御信号生成器、
93…パワー補償演算器(補償演算器)
【要約】
実施形態の制御装置は、交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力を交流電力に変換するインバータとを組み合わせた電力変換装置の制御装置である。前記制御装置は、直流電圧制御器と、補償演算器と、制御器と、安定化制御器と、を備える。前記直流電圧制御器は、前記コンバータの直流側の直流電圧に係る直流電圧検出値と前記直流側の直流電圧基準との偏差である直流電圧偏差に対し比例演算及び積分演算を行って、前記比例演算及び前記積分演算の結果を用いて出力値を生成する。前記補償演算器は、前記インバータの要求出力値を用いて前記直流電圧の変動を抑制させるための補償量を調整する。前記制御部は、前記生成された出力値と前記調整された補償量とに基づいた演算結果を用いて前記コンバータの変換量を制御する。前記安定化制御器は、前記直流電圧偏差の大きさと、前記積分演算の結果とに係る所定の条件が満たされた場合に、前記積分演算の結果を、前記積分演算の結果の絶対値よりも小さな値に変更する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6