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特許7515743レンズを着色又は脱色するための方法、レンズを着色又は脱色するための方法によって取得可能なレンズ、着色又は脱色を含むレンズ、レンズホルダ及びレンズを着色するための着色装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】レンズを着色又は脱色するための方法、レンズを着色又は脱色するための方法によって取得可能なレンズ、着色又は脱色を含むレンズ、レンズホルダ及びレンズを着色するための着色装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20240705BHJP
   G02C 7/10 20060101ALN20240705BHJP
   G02C 13/00 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
G02C7/10
G02C13/00
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2023561036
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2022058686
(87)【国際公開番号】W WO2022207858
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/084270
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507062222
【氏名又は名称】カール ツァイス ヴィジョン インターナショナル ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】523374909
【氏名又は名称】カール ツァイス ヴィジョン サンレンズ チャイナ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Vision Sunlens China Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ テルツィ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン フェン
(72)【発明者】
【氏名】ブローリン リー
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05201955(US,A)
【文献】国際公開第2009/152381(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/123132(WO,A1)
【文献】特開平06-175082(JP,A)
【文献】特開昭60-101517(JP,A)
【文献】米国特許第03993435(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
G02C 7/10
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを着色又は脱色するための第1の方法であって、
- レンズ(50)をレンズホルダ(10)の受取ユニット(20)に挿入することと、
レンズを着色又は脱色するための流体を含む浸漬浴を提供することと、
- 前記レンズホルダ(10)を前記流体に浸漬させることと、
- 所定の最大回転角度まで前記レンズホルダ(10)を回転軸の周りで回転させることと
を含み、これらは、挿入、提供、浸漬、回転の順に行われる、又は、提供、挿入、浸漬、回転の順に行われる、第1の方法において、前記回転軸(60)は、前記レンズの外部にあり、且つ前記レンズ(50)の平面に概して垂直であることを特徴とする第1の方法。
【請求項2】
記回転軸(60)から前記受取ユニット(20)を変位させることを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の第1の方法。
【請求項3】
前記レンズホルダ(10)は、第1の所定の角度で第1の位置まで第1の方向に回転され、且つ第2の所定の角度で第2の位置まで第2の方向に回転され、前記第1の所定の角度は、前記第2の所定の角度と異なることを特徴とする、請求項1又は2に記載の第1の方法。
【請求項4】
前記レンズホルダ(10)は、第1の時間期間にわたって前記第1の位置に保持され、且つ第2の時間期間にわたって前記第2の位置に保持され、前記第1の時間期間は、前記第2の時間期間と異なることを特徴とする、請求項3に記載の第1の方法。
【請求項5】
前記レンズホルダ(10)を前記流体に浸漬させることは、前記浸漬浴の表面に垂直な方向に前記レンズホルダ(10)を移動させることを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記レンズホルダ(10)を前記流体に浸漬させることは、前記レンズホルダ(10)を前記浸漬浴に完全に又は部分的に浸漬させることを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の第1の方法。
【請求項7】
前記レンズホルダ(10)の前記所定の最大回転角度に従い、前記浸漬浴への前記レンズホルダの最大浸漬深さを適合させることを更に含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の第1の方法。
【請求項8】
前記レンズホルダ(10)は、サーボモータにより、前記浸漬浴の前記表面に垂直な前記方向に移動されることを特徴とする、請求項5のいずれか一項に記載の第1の方法。
【請求項9】
前記レンズホルダ(10)は、ベルト駆動装置によって回転されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の第1の方法。
【請求項10】
前記流体は、液体を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の第1の方法。
【請求項11】
- 前記浸漬浴から前記レンズホルダ(10)を取り出すステップと、
- 前記流体を変更すること、前記回転軸に対して前記レンズを変位させること又は前記レンズをそれ自体の幾何中心の周りで回転させることのいずれかを行うステップと、
- 前記レンズホルダ(10)を同じ又は別の浸漬浴に浸漬させるステップと
を更に含み、これらは、取り出し、変更、変位又は回転、浸漬の順に行われることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の第1の方法。
【請求項12】
前記レンズは、平面ガラス、モノレンズ又はシールドを含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の第1の方法。
【請求項13】
前記レンズ(50)は、多角形を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の第1の方法。
【請求項14】
レンズ(50)を着色するための第1の着色装置(100)であって、
- レンズホルダ(10)であって、
- レンズ(50)を第1の平面に保持するように構成された受取ユニット(20)、及び
- 前記第1の平面に概して垂直な回転軸(60)であって、前記レンズホルダ(10)は、前記回転軸(60)の周りで回転するように構成される、回転軸(60)
を含むレンズホルダ(10)と、
レンズを着色又は脱色するための流体を含む浸漬浴(104)であって、前記レンズホルダ(10)は、前記流体に浸漬されるように構成される、浸漬浴(104)と、
- 所定の最大回転角度まで前記レンズホルダ(10)を前記レンズホルダ(10)の前記回転軸(60)の周りで回転させるように構成された回転ユニット(102)と
を含む第1の着色装置(100)において、前記回転軸(60)は、前記レンズ(50)の外部にあることを特徴とする第1の着色装置(100)。
【請求項15】
前記受取ユニット(20)は、前記第1の平面に平行な平面において前記回転軸(60)から変位されるように構成されることを特徴とする、請求項14に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項16】
前記受取ユニット(20)は、前記レンズホルダ(10)への前記レンズ(50)の位置決めを支援するように構成されたガイド要素(15)を含むことを特徴とする、請求項14又は15に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項17】
2つの対向するプレート(14a、14b)を含み、前記プレート(14a、14b)は、前記第1の平面に概して平行であり、前記受取ユニット(20)は、前記プレート(14a、14b)を接続するように構成された接続要素(24a、24b、24c)を含むことを特徴とする、請求項14~16のいずれか一項に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項18】
前記接続要素(24a、24b、24c)は、前記レンズ(10)を保持するための凹部(28)及び/又は突起を含むことを特徴とする、請求項17に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項19】
前記受取ユニット(20)は、3つ以上のレンズ(50)を保持するように構成されることを特徴とする、請求項14~18のいずれか一項に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項20】
前記回転ユニット(102)は、前記レンズホルダ(10)を第1の所定の角度で第1の位置まで第1の方向に回転させ、且つ第2の所定の角度で第2の位置まで第2の方向に回転させるように構成され、前記第1の所定の角度は、前記第2の所定の角度と異なることを特徴とする、請求項14~19のいずれか一項に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項21】
前記回転ユニット(102)は、前記レンズホルダ(10)を第1の時間期間にわたって前記第1の位置に保持し、且つ第2の時間期間にわたって前記第2の位置に保持するように構成され、前記第1の時間期間は、前記第2の時間期間と異なることを特徴とする、請求項20に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項22】
前記回転ユニット(102)は、前記浸漬浴への前記レンズホルダの浸漬深さに従い、前記レンズホルダ(10)の前記所定の最大回転角度を適合させるように構成されることを特徴とする、請求項14~21のいずれか一項に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項23】
前記回転ユニット(102)は、ベルト駆動装置(107)を含むことを特徴とする、請求項14~22のいずれか一項に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項24】
前記浸漬浴(104)の表面に垂直な方向に前記レンズホルダ(10)を移動させるように構成されたリフトユニット(108)を更に含むことを特徴とする、請求項14~23のいずれか一項に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項25】
前記リフトユニット(108)は、前記レンズホルダ(10)を移動させることにより、前記レンズホルダ(10)を前記浸漬浴(104)に完全に又は部分的に浸漬させるように構成されることを特徴とする、請求項24に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項26】
前記リフトユニット(108)は、サーボモータ(110)によって駆動されるように構成されることを特徴とする、請求項24又は25に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項27】
前記リフトユニット(108)は、前記レンズホルダ(10)の前記所定の最大回転角度に従い、前記浸漬浴(104)への前記レンズホルダ(10)の最大浸漬深さを適合させるように構成されることを特徴とする、請求項24~26のいずれか一項に記載の第1の着色装置(100)。
【請求項28】
プログラムコード手段を含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムコード手段は、前記コンピュータプログラムがコンピュータ又は処理ユニットで実行されると、前記コンピュータに、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法のいずれかのステップを実行するように、請求項14~27のいずれか一項に記載の第1の着色装置を制御させるためのものである、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの着色、特に眼鏡レンズの着色に関する。特に、本発明は、レンズを着色又は脱色するための第1、第2及び第3の方法、前記方法によって取得可能なレンズ、着色又は脱色を含むレンズ並びに設計が複雑である、特に偏心ハロー及びペンデュラム着色のレンズ着色を生成するための着色装置に関する。
【0002】
他に、本発明は、前記方法を実行するための対応するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
眼鏡レンズの着色は、ファッション及び医療の両方の理由で求められている。サングラスの場合、濃淡のない着色のレンズが最も一般に使用されるが、近年、追加の利点を提供する勾配の付いた着色が一層重要になっている。一般に、徐々に変わる着色の概念は、ユーザが下部視野をより多くの光又はフルライトで見られるようにしながら、レンズの上部にフルティントを有することであり、それにより例えば車を運転する際にグレア保護及びクリアビジョンを提供する。そのような勾配着色眼鏡の原理は、上部の陰影に起因して虹彩を拡大させ、道路又はコンピュータ等の実際の視野からより多くの光を入れられるようにすることにより可視性を上げることである。同様に、下部ほど暗い陰影を有し、上部ほど明るい陰影を有するレンズも市場に存在する。
【0004】
レンズに勾配のある着色を付ける最も一般的な方法は、レンズを(部分的に)着色浴に浸漬させ、着色剤に長く露出されたレンズの部分ほど暗くなるように浴から徐々に取り出すことである。
【0005】
これらの標準的な勾配着色の利益にも関わらず、なお、多くの状況で大量のグレアが眼に入り得、不必要な眼の疲れ及び眼精疲労を生じさせる。これは、特にテレビの視聴、ディスプレイ前での作業又は読書等の過酷な視覚活動中に当てはまり、なぜなら、この視野周囲からの光は、適切な閲覧に寄与しないためである。それとは真逆で、前記光は、視覚を損なう屈折及び反射を眼に生じさせるとともに、虹彩の開きを低減させ、それにより眼に入ることが許される光量を下げる。これにより、視野内のコンピュータディスプレイは、暗く見えることになり得る一方、周囲光は、望ましくない明るさとして感じられ得る。
【0006】
そのような状況では、上述したような線形勾配着色は、環状勾配着色により補足されているが、レンズの着色濃度は、レンズの中心から周辺に向かって、即ち一方向のみならずレンズの全周囲で増大する。これらの種類の着色は、中央視野からの光の全(又は略全)入射を可能にしながら、他の方向からのダメージを与えるとともに気を逸らす周囲光を除外する。
【0007】
米国特許第5,201,955号明細書は、環状勾配光学レンズ着色システムを記載している。このシステムは、各レンズの外縁部でより暗く、中心に向かって徐々に明るくなる環状勾配着色が生成されるように、垂直に往復すると同時に、レンズ平面の中心にあり、レンズ平面に垂直な軸の周りで回転するフレームにレンズが組み込まれ、レンズの光学中心が完全にクリアであるか、又はレンズの残りの部分よりもかなり明るい、眼鏡レンズの着色のために提供される。
【0008】
しかしながら、多様な眼鏡フレーム及び顧客の様々な解剖学的状況により、よりよい適合、したがってレンズのより複雑な着色勾配が求められる。例えば、米国特許第5,201,955号明細書は、全ての眼に等しくフィットするわけではない。
【0009】
国際公開第2009/152381A1号パンフレットは、コンピュータビジョンシンドローム(CVS)の影響を減じるコンピュータアイウェアに関する。一実施形態では、アイウェアは、フレーム及び2つのレンズを含む。レンズは、光学処理、例えば部分透過性のミラーコーティング、着色又は反射防止コーティング等を含むことができる。
【0010】
国際公開第2011/12312A1号パンフレットは、水平被膜溶液表面を有する被膜溶液浴にレンズを浸漬させるステップと、上記溶液表面を通して前記浴からレンズを取り出すステップとを含み、取り出すステップは、レンズの向きが、前記レンズが前記浴から出現し始めるとき、レンズの光軸が上方に上記レンズの凹面に向かって傾斜する位置から、上記レンズが前記浴から出現し終えるとき、レンズの光軸が上方に前記レンズの凸面に向かって傾斜する位置に連続変化するようにレンズを移動させながら実行される、レンズを浸漬被膜する方法に関する。
【0011】
英国特許出願公開第2,208,322A号明細書は、着色浴に浸漬されたとき、レンズを支持する装置に関し、装置は、フック形部分から任意選択的に懸架可能であり、任意選択的にベースプレート/攪拌器に固定される懸架ロッドを含む。支持部材は、スロットを通るねじによってコネクタ部に固定され、懸架ロッドに沿って摺動可能であり、支持部材をコネクタ部への取り付けポイントに対して枢動又は線形移動できるようにする。レンズホルダは、支持部材のクランク部分から懸架する。支持部材の位置及び向きを調整することにより、レンズの水平軸は、着色浴の表面と整列することができる。
【0012】
米国特許出願公開第2011/107965A1号明細書は、眼科レンズ又は光学レンズに着色濃度の勾配を付与する装置に関する。この勾配着色装置は、着色溶液中に移動する際、垂直運動及びレンズの垂直軸の周りでの回転の両方を利用する。
【0013】
欧州特許出願公開第2018954A2号明細書は、クリーニング溶液又は被膜溶液を有するタンクを有する、眼科レンズを湿潤させ被膜する装置及びレンズを湿潤させるためにレンズ及び溶液を互いに関連して順次移動させるハンドリングシステムに関する。マスタ制御モジュールがハンドリングシステムに結合され、湿潤プロファイルを実行するように構成される。湿潤プロファイルは、レンズを移動させて、レンズ皮膜がより均一な厚さを有するように、概して一貫したレンズ表面湿潤速度を得る。方法によれば、レンズは、液体浴中で湿潤する。レンズは、湿潤プロファイルに従って浴に対してレンズを移動させるハンドリングシステムに配置される。
【0014】
米国特許出願公開第202/255327A1号明細書は、勾配着色された物品及びその作製方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、レンズを着色又は脱色するための改良された方法、その方法の1つによって取得可能な改良されたレンズ、着色又は脱色を含む改良されたレンズ及び改良された着色装置を提供することである。本発明者らは、より複雑な(勾配のある)着色が可能であることが望ましいことを認めた。特に、(新規の)偏心ハロー及びペンデュラムレンズ着色、特に非対称及び/又は多色偏心ハロー及びペンデュラムレンズ着色を可能にする方法及び着色装置を提供することが有利であろう。更に、対応する新規なハロー及び/又はペンデュラム着色又は脱色設計を有するレンズを提供することが有利であろう。更に、複雑な陰影設計を有するレンズを着色/脱色するための代替の方法を提供することが望ましい
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの問題の1つ又は複数によりよく対処するために、本発明の第1の態様によれば、レンズを着色又は脱色するための第1の方法が提供され、第1の方法は、レンズをレンズホルダの受取ユニットに挿入することと、流体を含む浸漬浴を提供することと、レンズホルダを流体に浸漬させることと、所定の最大回転角度までレンズホルダを回転軸の周りで回転させることであって、回転させることとを含み、第1の方法は、回転軸がレンズの外部にあり、且つレンズの平面に概して垂直であることを特徴とする。この場合、回転軸は、レンズの幾何(又は光学)中心と一致せず、即ちレンズの幾何(又は光学)中心を通らず、レンズホルダは、制限なく、即ち360°又はそれ未満若しくはそれを超えて回転され得る。しかしながら、この場合、回転は、同様に360°未満に留まるように制限され得る。好ましくは、レンズホルダの受取ユニットの外部に配置された回転軸である。
【0017】
レンズホルダを流体に浸漬させることは、特に、浸漬浴の表面に垂直な方向にレンズホルダを移動させることを含む。より詳細には、レンズホルダを流体に浸漬させることは、浸漬浴の表面に垂直な方向にレンズホルダを繰り返し移動させることを含む。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、レンズを着色又は脱色するための第2の方法が提供され、第2の方法は、レンズをレンズホルダに挿入することと、第1の流体を含む浸漬浴を提供することと、レンズホルダを第1の流体に浸漬させることと、所定の最大回転角度までレンズホルダを回転軸の周りで回転させることであって、回転軸は、レンズの平面に概して垂直である、回転させることとを含み、第2の方法は、浸漬浴からレンズホルダを取り出すことと、レンズを(レンズホルダにおいて(レンズの平面において))回転させることと、レンズホルダを、第2の流体を含む別の浸漬浴に浸漬させることであって、第1の流体及び第2の流体は、着色液又は脱色液を含む、浸漬させることとを更に含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、レンズを着色又は脱色するための第3の方法が提供され、第3の方法は、レンズをレンズホルダの受取ユニットに挿入することと、第1の流体を含む浸漬浴を提供することと、レンズホルダを第1の流体に浸漬させることと、所定の最大回転角度までレンズホルダを回転軸の周りで回転させることであって、回転軸は、レンズの平面に概して垂直である、回転させることとを含み、第2の方法は、レンズホルダを浸漬浴から取り出すことと、回転軸に対してレンズの平面に平行な方向において、レンズ及び受取ユニットをレンズホルダに対して変位させることと、レンズホルダを同じ浸漬浴又は第2の流体を含む別の浸漬浴に浸漬させることであって、第1の流体及び第2の流体は、着色液又は脱色液を含む、浸漬させることとを更に含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の第4の態様によれば、第1の法によって取得可能なレンズが提供され、第1の方法は、レンズホルダを浸漬浴に部分的に浸漬させることを含む
【0021】
本発明の第5の態様によれば、第2の方法によって取得可能なレンズが提供される。
【0022】
本発明の第6の態様によれば、第3の方法によって取得可能なレンズが提供される。
【0023】
本発明の第7の態様によれば、着色又は脱色を含むレンズにおいて、着色又は脱色は、環状勾配及びペンデュラム勾配のいずれかを含む少なくとも2つの異なる勾配を含むことを特徴とするレンズが提供される。例えば、レンズは、2つの異なる色を有するレンズの2つの異なるエリアに2つの環状着色を含み得る。同様に、レンズは、レンズ上の異なるエリアに2つのペンデュラム着色を含み得る。
【0024】
一般に、環状勾配は、ハロー又はハローの一部を含み得る。更に、レンズは、浸漬浴中のレンズのペンデュラムのような運動、特に浸漬浴中のレンズの非対称のペンデュラムのような運動、即ち第1の方向における第1の角度への運動及び第2の方向における第2の角度への運動により生成されるペンデュラム勾配を有し得、第1の角度(及び第1の方向)は、第2の角度(及び第2の方向)と異なる。特に、提供されるレンズの着色又は脱色は、レンズの幾何中心に対して回転対称ではない。
【0025】
なる態様によれば、レンズを着色するための第1の着色装置が提供され、第1の着色装置は、レンズホルダであって、レンズを第1の平面に保持するように構成された受取ユニット及び第1の平面に概して垂直な回転軸であって、レンズホルダは、回転軸の周りで回転するように構成される、回転軸を含むレンズホルダと、流体を含む浸漬浴であって、レンズホルダは、流体に浸漬されるように構成される、浸漬浴と、所定の最大回転角度までレンズホルダをレンズホルダの回転軸の周りで回転させるように構成された回転ユニットとを含む第1の着色装置は、回転軸がレンズの外部にあることを特徴とする
【0026】
好ましくは、回転軸は、受取ユニットの外部にさえ配置される。更に、レンズホルダは、浸漬浴へのレンズホルダの浸漬中、回転軸の周りで回転するように構成され得る。
【0027】
更に別の態様によれば、プログラムコード手段を含むコンピュータプログラム、特に非一時的コンピュータプログラムが提供され、プログラムコード手段は、前記コンピュータプログラムがコンピュータ又は処理ユニットで実行されると、コンピュータに、上記の方法のいずれかのステップを実行するように第1の着色装置を制御させるためのものである。本発明の基本概念は、浸漬浴中のレンズの新規の運動を可能にする、レンズを着色又は脱色するための方法を提供することである。特に、大部分の従来の着色装置のレンズホルダでは、レンズは、一般に、幾何中心又は光学中心が回転軸と一致し、浸漬浴に浸漬されているとき、レンズホルダが回転するように配置される。しかしながら、そのような構造では、レンズ着色の生成が制限される。したがって、概念は、回転軸をレンズの外部においてレンズに概して垂直に配置することである。概念は、少なくとも2つの着色サイクルも含み、例えば2つの異なる色を有するレンズを生成する着色方法を提供することである。更なる概念(特許請求される本発明によって網羅されない)は、最大回転角度に従って浸漬浴へのレンズホルダの浸漬深度を適合させること又はその逆である。
【0028】
このように、広範囲の新規の非回転対称レンズ着色(又は脱色)を得ることができる。実際に、使用される(最大)回転角度を問わず、新規の非回転対称レンズ着色及び脱色を得ることができる。例えば、回転軸がレンズの外部にあるように幾何中心から変位された軸の周りで回転するレンズは、第1の角度、例えば45°だけ第1の方向に回転され、次いで第2の方向に例えば90°だけ回転され、次いで再び第1の方向に90°だけ回転され得る。換言すれば、方法は、完全に新規のレンズ着色又は脱色に繋がる、浸漬浴中の非対称のペンデュラムのような運動を含み得る。
【0029】
別の概念は、少なくとも2つの着色サイクルを提供することであり、サイクルのパラメータは、互いに異なる。概念は、例えば、浸漬浴へのレンズホルダの第1の浸漬後、浸漬浴からレンズホルダを取り出し、レンズホルダを同じ浸漬浴又は別の流体を含む別の浸漬浴に浸漬させる前に流体を変更するか、回転軸に対してレンズを変位させるか又はレンズを回転させる(例えば、それ自体の幾何中心の周りで)ことである。このように、従来の着色方法を使用して生成することができない高度に複雑な着色設計を達成することができる。そのようなレンズは、美観及びレンズの特定の領域から眼に達する光量の制御を理由にした着色の的を絞った適合を提供し得、同時に良好な製造可能性を可能し得る。例えば、バイカラーレンズ、特に両色でレンズ上の着色又は脱色パターンが異なるバイカラーレンズを取得し得る。当然のことながら、3色以上を有するレンズも同様に取得することができる。
【0030】
本発明の請求項によって包含されない別の概念は、所定の最大回転角度に従って浸漬浴へのレンズホルダの(最大)浸漬深さを適合させること又は浸漬浴へのレンズホルダの(所定の最大)浸漬深さに従って最大回転角度を適合させることである。定の最大回転角度に従って(最大)浸漬深さを適合させることは、最大回転角度と浸漬深さとの間に固定された関連性があることを暗示する。例えば、最大回転角度が第1の回転方向において45°であると決定され、最大回転角度が第2の方向において60°であると決定され、45°が最大浸漬深さ3cmに関連するが、60°の角度が最大浸漬深さ4cmに関連する場合、レンズホルダが第1の方向に最大回転角度まで回転するとき、レンズホルダは、3cmの深さまで浸漬され、レンズホルダが第2の方向に最大回転角度まで回転するとき、レンズホルダは、4cmの深さまで浸漬される。換言すれば、所定の最大回転角度までの回転及び浸漬浴へのレンズホルダの同時浸漬は、所定のパターンに従い、最大回転角度は、所定の(最大)浸漬深さに結び付けられる(又は逆も同様)。換言すれば、レンズホルダの(最大)浸漬深さは、(所定の)最大回転角度に依存し得、及び/又は最大回転角度は、所定の(最大)浸漬深さに依存し得る。
【0031】
レンズ着色の多くの既知の方法では、浸漬浴への浸漬及びレンズホルダの回転運動は、互いに完全に独立している。したがって、同じ設計を有するレンズ着色の再現は、略達成することができない。しかしながら、上記の概念によると、回転運動及び垂直運動、即ち浸漬運動は、所定のパターンにより互いに関連する。換言すれば、レンズホルダの(最大)回転角度(又は任意の回転角度)は、所定のパターンに従い、浸漬浴へのレンズホルダの浸漬深さと結び付けられる。このように、同じパターン(の着色又は脱色)が別の着色/脱色サイクルで適用される場合、同じ着色又は脱色設計を有するレンズを再現できることが保証される。
【0032】
したがって、概念は、回転軸がレンズの外部又は受取ユニットの外部に配置される程度までレンズホルダの回転軸から離れてシフトする(又はシフトすることができる)受取ユニットを含むように従来のレンズホルダを適合させることである。従来のレンズホルダの場合、レンズホルダの回転軸及び挿入されたレンズの幾何(若しくは光学)中心は、概して、一致する。換言すれば、従来のレンズホルダは、レンズホルダの回転軸の周りで回転対称に確実に固定された受取ユニットを含む。しかしながら、これでは、限られたタイプのレンズ着色、特にレンズの幾何(又は光学)中心に対称なレンズ着色のみが可能である。レンズの外部又は受取ユニットの外部にある回転軸を提供することにより、他の設計、特にレンズの中心点に関して対称ではない設計に従ってレンズを着色することも可能になる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において定義される。特許請求されるコンピュータプログラムは、特に従属請求項に定義され、本明細書に開示される、特許請求される方法、レンズホルダ又は着色装置と同様及び/又は同一の改良形態又は好ましい実施形態を有し得ることが理解されるものとする。
【0034】
以下では、本願全体を通して使用される幾つかの用語について手短に説明し、定義するものとする。
【0035】
「レンズ」という用語は、一般に、レンズブランク、即ち例えばレンズを切り出すことができるブランクとして理解され得る。しかしながら、それは、眼鏡レンズとしても同様に理解され得る。それでもなお、「レンズ」という用語は、顕微鏡又は望遠鏡のレンズ等の視覚的補助の他の種類のレンズを含むこともできる。更に、「レンズ」という用語は、平面ガラスを含むこともでき、「ガラス」という用語は、レンズに適した任意の材料として理解されるべきである。したがって、「ガラス」という用語は、プラスチックガラスも包含する。平面ガラスを用いる場合、特に歪みのないイメージングを可能にするガラスが意味される。それとは別に、「レンズ」という用語は、任意の(湾曲した)透明材料、特にシールド(好ましくは眼に適した、例えばユーザの鼻に装用可能な)、より詳細には例えばヘルメットのシールド又はモノレンズを含み得る。
【0036】
「回転軸」という用語は、必ずしも物理的な軸を暗示するわけではなく、同様に想像上の軸を含むこともできる。
【0037】
「360°未満の回転」の定義は、一方向における360°未満の回転又は第1及び第2の方向のそれぞれでの180°未満の回転を含み得る。例えば、360°未満の回転は、一方向における10°又は359°の回転を含み得る。同様に、360°未満の回転は、第1の方向におけるX°の回転及び第2の方向におけるy°の回転をそれぞれ含み得、(x+y)は、360°未満である。例えば、360°未満の回転は、第1の方向における179°の回転及び第2の方向における179°の回転をそれぞれ含み得る。
【0038】
「受取ユニット」という用語は、1つ又は複数のレンズを受け取る(及び保持する)ように特に構成されたレンズホルダの部分を定義する。受取ユニットは、1つ又は複数のレンズを挿入することができるフレーム又はレンズを把持するためのクランプを含み得る。しかしながら、レンズを受け取る(及び保持する)のに適した任意の他の構造体を受取ユニットとして定義することもできる。
【0039】
「受取エリア」という用語は、一般に、受取ユニットの部分、特に受取ユニットにより受け取られるとき、レンズが占めるエリア又は空間として理解され得る。例えば、受取ユニットが、レンズを保持するように構成されたフレームを含む場合、受取エリアは、フレーム内部のエリア、即ちフレームにより囲まれるエリアとして定義され得る。同様に、受取ユニットが、ロッド、特にレンズを保持するように構成された切り欠きを含むロッドを含む場合、受取エリアは、ロッドにより囲まれるエリア又はより詳細にはロッド間又はロッドの切り欠き間に挿入されたときにレンズが占めるエリアとして理解することができる。
【0040】
「幾何中心」という用語は、一般に定義されるように理解され得、即ち物体の全てのポイントの算術平均位置として理解され得る。幾何中心に使用されることが多い別の用語は、質量中心である。
【0041】
「流体」という用語は、加えられた剪断応力又は外力下で連続して変形する物質として理解されたい。特に、流体は、液体、気体又はプラズマを含む。特に、流体は、レンズを着色するための着色液又はレンズを着色するための着色蒸気を含み得、着色は、色及び/又は陰影をレンズに適用することとして理解されたい。同様に、流体は、レンズを脱色するための脱色液又はレンズを脱色するための脱色蒸気を含み得、脱色液又は脱色蒸気、即ち脱色流体は、レンズの色を除去するのに適した、特にレンズのブリーチに適した任意の種類の液体又は蒸気を定義し得る。
【0042】
「着色液」という用語は、レンズを着色するように構成された着色剤を含む液体として理解されたい。
【0043】
「脱色液」という用語は、レンズを脱色するように構成された脱色物質を含む液体として理解されたい。
【0044】
「勾配」という用語は、特に、レンズ表面にわたるレンズの着色又は脱色の強度分布の記述に使用される。特に、「勾配着色」という用語は、第1の方向において強度が増大し、逆方向において強度が低減する、レンズ表面に平行な方向におけるレンズの陰影、より詳細にはレンズ上の徐々に変化する着色強度の記述に使用される。同様に、「勾配脱色」という用語は、レンズ表面に平行な方向における脱色強度に関する勾配の記述に使用される。
【0045】
「浸漬浴」という用語は、レンズホルダ、したがってレンズを浸漬又は浸すことができる流体の槽として理解することができる。浸漬浴は、例えば、タブ又はタンク内に液体を含み得る。液体は、着色液、脱色液又はレンズを着色若しくは脱色するのに適した任意の他の種類の液体を含み得る。
【0046】
「サーボモータ」という用語は、角度位置若しくは線形位置、速度及び加速度の精密制御を可能にする回転式アクチュエータ又はリニアアクチュエータとして理解することができる。一般に、サーボモータは、位置、速度及び/又は加速度フィードバックのセンサに結合された適したモータを含むものと理解される。
【0047】
「ベルト駆動装置」という用語は、少なくとも1つのベルト及び2つのプーリを含む駆動装置として理解されるべきであり、動力がベルトにより少なくとも2つのプーリ間で伝達される。特に、第1のプーリは、ベルトを駆動するように構成され、ベルトは、第2のプーリを駆動する。特に、プーリは、シャフトを含み得る。ベルトの例には、平ベルト、Vベルト及び歯付きベルトがある。
【0048】
「環状勾配」という用語は、中心点を通る平面における中心点周囲の全径方向に延在する勾配として理解されたい。しかしながら、勾配は、必ずしも全方向で同じである必要はない。特定のポイントから変位した環状勾配は、この特定のポイントから変位した中心点を有する環状勾配として理解されるものとする。環状勾配は、「環状勾配設計」として理解することもできる。部分的な環状勾配は、環状勾配設計の一部分として理解されたい。
【0049】
「ペンデュラム勾配」という用語は、浸漬中のレンズのペンデュラムのような運動により形成される勾配として理解されたい。形成される着色又は脱色がレンズの幾何中心に関して対称であるか又は非対称であるかに応じて、勾配は、「中心ペンデュラム勾配」及び「偏心ペンデュラム勾配」に分類することができる。
【0050】
環状着色、部分的環状着色又はペンデュラム着色に関する「勾配の中心」という用語は、所望の勾配を達成するためにレンズが周りで回転する必要があるポイント、即ちレンズ平面における、回転軸が配置されるポイントとして理解されたい。
【0051】
「~に概して垂直な」という用語は、+/-10°、好ましくは+/-5°、より好ましくは+/-2.5°、更に好ましくは+/-1°の許容差で「垂直な」又は「90°角度を有する」ものとして理解されたい。
【0052】
「最大回転角度」という用語は、レンズホルダが(回転を停止する前及び/又は回転方向が変わる前に)回転する最大角度として理解されたい。
【0053】
「最大浸漬深さ」という用語は、浸漬の最深点(レンズホルダを保持する前又はレンズホルダを浸漬浴から上方に引き出す前)として理解されたい。
【0054】
第1の方法の一実施形態では、第1の方法は、好ましくは、浸漬中、回転軸から受取ユニットを変位させることを更に含む。受取ユニット、したがってレンズは、連続して又は段階的に変位され得、段階サイズは、1mm~20mm、特に2mm~15mm、特に3mm~10mm、特に5mm~8mmの少なくとも1つの間の範囲であり得る。好ましくは、レンズは、径方向に回転軸から変位される。
【0055】
変位を調整することにより、レンズ着色の非対称性を変えることができる。特に浸漬中に実行される場合のこの手法の利点は、複雑な着色設計を単一の着色サイクルで、即ちレンズホルダを浸漬浴から取り出す必要なく及び/又は着色装置を全体的に変更する必要なくもたらし得ることである。したがって、多様な完全に新規のレンズ着色をもたらすことができる。更に、複雑なレンズ着色をより高速、より安価且つより低い複雑性で生成することができる。
【0056】
第1の方法の別の実施形態では、レンズホルダは、第1の所定の角度で第1の位置まで第1の方向に回転され、且つ/又は第2の所定の角度で第2の位置まで第2の方向に回転され、第1の所定の角度は、第2の所定の角度と異なる。例えば、レンズホルダは、第1の方向に45°回転され、且つ第2の方向に90°回転され得るか、又は第1の方向に45°回転され、且つ第2の方向に45°回転され得る。
【0057】
第1の方法の別の実施形態では、レンズホルダは、第1の時間期間にわたって第1の位置に保持され、且つ第2の時間期間にわたって第2の位置に保持され、第1の時間期間は、第2の時間期間と異なる。このように、レンズの着色又は脱色の強度は、レンズの異なるエリアで変わることができる。
【0058】
第1の方法の別の実施形態では、レンズホルダを流体に浸漬させることは、浸漬浴の表面に垂直な方向にレンズホルダを移動させることを含む。好ましくは、レンズホルダを移動させる速度及び距離/深さは、適合され得る。例えば、レンズホルダは、浸漬浴中に第1の距離、即ち第1の深さだけ移動させることができ、同様に第1の距離(深さ)と異なる第2の距離、即ち第2の深さだけ逆方向に、即ち浸漬浴から出る方向に移動させることができる。
【0059】
好ましい実施形態では、レンズホルダを流体に浸漬させることは、レンズホルダを浸漬浴に完全に又は部分的に浸漬させることを含む。特に、レンズホルダの受取ユニット/受取エリアは、レンズホルダを移動させることによって浸漬浴に完全に又は部分的に浸漬され得る。したがって、1つのレンズ(又は複数のレンズ)を浸漬浴に完全に又は部分的に浸漬させ得る。
【0060】
更なる好ましい実施形態では、第1の方法は、レンズホルダの所定の最大回転角度に従い、浸漬浴へのレンズホルダの最大浸漬深さを適合させることを含む。
【0061】
別の好ましい実施形態では、レンズホルダは、サーボモータにより、浸漬浴の表面に垂直な方向に移動される。サーボモータの使用は、滑らかで一定した移動、したがってレンズの精密な着色又は脱色をサポートする。
【0062】
更なる実施形態では、レンズホルダは、ベルト駆動装置によって回転される。したがって、レンズの角度位置を精密に適合させることができる。これにより、レンズの精密な(角度依存)着色又は脱色が可能になる。
【0063】
第1の方法の別の実施形態では、流体は、液体、特にレンズを着色するように構成された着色剤を含む着色液又はレンズを脱色するように構成された脱色液を含む。しかしながら、流体は、同様に、蒸気又は霧、特にレンズを着色するように構成された着色蒸気又はレンズを脱色するように構成された脱色蒸気を含み得る。
【0064】
更なる実施形態では、第1の方法は、レンズホルダを浸漬浴から取り出すステップと、流体を変更すること、回転軸に対してレンズ(特にレンズの幾何中心)を変位させること又はレンズをそれ自体の幾何中心の周りで回転させることのいずれかを行うステップと、レンズホルダを同じ又は別の浸漬浴に浸漬させるステップとを含む。したがって、方法は、2つ以上の着色又は脱色サイクル、即ちレンズの着色/脱色の期間又は換言すれば着色装置の実行期間を含み得る。例えば、第1の着色サイクルで使用される着色液は、第2の着色サイクルで異なる色の着色剤を使用し得るように変更され得る。同様に、レンズは、第1のサイクルで第1の位置に位置し得、別の着色(又は脱色)サイクル前に前記位置から離れてシフトし得る。
【0065】
レンズの一実施形態では、レンズは、眼科レンズ、平面ガラス、モノレンズ又はシールド、特にヘルメットシールドを含む。
【0066】
レンズの別の実施形態では、レンズは、多角形、特に三角形又は四角形を含む。
【0067】
第1の着色装置の一実施形態では、レンズホルダの受取ユニットは、第1の平面に平行な平面において回転軸から変位されるように構成され、特に調整可能に変位されるように構成され、より詳細には40mmだけ調整可能に変位されるように構成される。別の実施形態では、レンズホルダの受取ユニットは、10mmまで、特に15mmまで、特に20mmまで、特に30mmまで、特に40mmまで変位され得る。一実施形態では、レンズホルダの受取ユニットは、少なくとも5mm、特に少なくとも10mm、特に少なくとも15mm、特に少なくとも20mmだけ変位され得る。受取ユニットの位置は、連続して又は段階的に調整可能であり得、段階サイズは、1mm~20mm、特に2mm~15mm、特に3mm~10mm、特に5mm~8mmの少なくとも1つの間の範囲であり得る。好ましくは、受取ユニットは、径方向に回転軸から変位されるように構成される。
【0068】
特に変位が、着色サイクル中、即ちレンズを浸漬浴に浸漬させている間に実行される場合、シフト量、即ち変位量を調整することにより、レンズ着色の設計を変更することができる。シフトするために、受取ユニットは、例えば、レンズホルダのいわゆる偏心エリア内部でシフトするように構成されたシフト要素を含み得る。この手法の利点は、複雑な着色設計を単一の着色サイクルで、即ちレンズホルダを浸漬浴から取り出す必要なく及び/又は着色装置を全体的に変更する必要なくもたらし得ることである。したがって、多様な全体的に新規のレンズ着色をもたらすことができる。更に、複雑なレンズ着色をより高速、より安価且つより低い複雑性で生成することができる。
【0069】
第1の着色装置の別の実施形態では、レンズホルダの受取ユニットは、レンズホルダへの、より詳細にはレンズホルダの受取エリアへのレンズの位置決めを支援するように構成されたガイド要素を含む。ガイド要素は、例えば、レンズの所望の位置を記すカラードット等のマーカであり得る。同様に、ガイド要素は、受取ユニットの凹部若しくは突起であり得るか、又は例えば例としてレンズの縁部における切り欠きに挿入されるように構成されたバーであり得る。ガイド要素は、レンズホルダへのレンズの精密な位置決め、したがって着色又は陰影の精密な適用を可能にする。
【0070】
更なる実施形態では、第1の着色装置のレンズホルダは、2つの対向するプレートを含み、プレートは、第1の平面に概して平行であり、受取ユニットは、プレートを接続するように構成された接続要素を含む。接続要素は、例えば、プレートを接続するロッド又はパネルであり得る。好ましくは、プレートは、円盤である。より好ましくは、プレートは、偏心エリアを含み、受取ユニットは、シフト要素を含み、シフト要素は、偏心エリア内でシフトすることができる。
【0071】
好ましい実施形態では、接続要素は、レンズを保持するための凹部及び/又は突起を含む。例えば、接続要素は、切り欠き又はレンズを把持するための突出クランプを含み得る。このように、レンズがレンズホルダにより固定位置に保持されることを保証することができる。
【0072】
第1の着色装置の別の実施形態では、レンズホルダの受取ユニットは、3つ以上のレンズを保持するように構成される。そのような場合、レンズの位置決めを支援するガイド要素は、特に有用である。これは、これらのガイド要素が、着色されるレンズの所望の位置及び/又は向きを示し得るためである。したがって、ユーザは、複数のレンズを同じように同時に着色することができるように、複数のレンズをレンズホルダに同じ向きで容易に挿入することができる。特に、これにより、複数のレンズ、即ち高精度の大量生産のための精密な着色効果が可能になる。
【0073】
第1の着色装置の別の実施形態では、回転ユニットは、レンズホルダを第1の所定の角度で第1の位置まで第1の方向に回転され、且つ第2の所定の角度で第2の位置まで第2の方向に回転されるように構成される。したがって、レンズホルダの回転移動は、非対称に実行され得る。例えば、レンズホルダは、第1の方向に90°だけ回転され、且つ第2の方向に60°だけ回転されるように構成され得る。
【0074】
好ましくは、回転ユニットは、回転速度を適合させるように構成することもできる。
【0075】
第1の着色装置の別の実施形態では、回転ユニットは、レンズホルダを第1の時間期間にわたって第1の位置に保持し、且つ第2の時間期間にわたって第2の位置に保持するように構成され、第1の時間期間は、第2の時間期間と異なる。これにより、レンズの異なるエリアで異なる着色又は脱色強度が可能になり、したがって完全に新規の着色又は脱色設計が可能になる。
【0076】
第1の着色装置の更に別の実施形態では、回転ユニットは、浸漬浴へのレンズホルダの浸漬深さに従い、レンズホルダの所定の最大回転角度を適合させるように構成される。
【0077】
第1の着色装置の好ましい実施形態では、回転ユニットは、ベルト駆動装置を含む。ベルト駆動装置の使用は、着色装置におけるレンズホルダの回転を安定化することができる。しかしながら、他の種類の駆動装置も同様に考えられる。
【0078】
別の実施形態では、第1の着色装置は、浸漬浴の表面に垂直な方向にレンズホルダを移動させるように構成されたリフトユニットを更に含む。リフトユニットは、ベルト駆動式であり得る。好ましくは、リフトユニットは、移動量、即ちレンズホルダが移動する距離又は浸漬深さを適合させるとともに、移動速度を適合させるように構成される。例えば、リフトユニットは、レンズホルダを浸漬浴中に第1の距離だけ移動させ、レンズホルダを逆方向に、即ち浸漬浴から出る方向に第2の距離だけ移動させるように構成され得る。
【0079】
第1の着色装置の好ましい実施形態では、リフトユニットは、レンズホルダを移動させることにより、レンズホルダを浸漬浴に完全に又は部分的に浸漬させるように構成される。特に、リフトユニットは、レンズホルダを移動させることにより、浸漬浴にレンズホルダの受取エリアを完全に又は部分的に浸漬させるように構成され得る。したがって、リフトユニットは、受取ユニットにより受取エリアに保持された1つのレンズ(又は複数のレンズ)を浸漬浴に完全に又は部分的に浸漬させるように構成される。
【0080】
更に別の実施形態では、リフトユニットは、サーボモータによって駆動されるように構成される。同様に、回転ユニットもサーボモータによって駆動され得る。これは、滑らかで一定の線形運動又は回転をそれぞれ保証する。
【0081】
別の実施形態では、リフトユニットは、レンズホルダの所定の最大回転角度に従い、浸漬浴へのレンズホルダの最大浸漬深さを適合させるように構成される。換言すれば、リフトユニットは、回転ユニットにより誘導されるレンズホルダの最大回転に応じてレンズホルダの移動を適合させるように構成され得る。しかしながら、同様に、回転ユニットは、リフトユニットにより誘導されるレンズホルダの移動に応じてレンズホルダの回転角度を適合させるように構成され得る。例えば、レンズホルダが第1の方向に5°回転する場合、リフトユニットは、レンズホルダが第1の浸漬深さだけ浸漬浴に浸漬するように、浸漬浴の完全に上にあるレンズホルダを浸漬浴に向けて移動させるように構成され得る。即ち、リフトユニットにより誘導される線形運動及び回転ユニットにより誘導される最大回転運動を互いに関連させることができる。
【0082】
更に別の実施形態では、着色装置は、浸漬浴を攪拌するように構成された攪拌機構を更に含む。攪拌機構は、着色液又は脱色液が浸漬浴中に均一に分布することを保証する。
【0083】
それは別に、着色装置は、浸漬浴を加熱するように構成された加熱要素を更に含み得る。
【0084】
上記の特徴及び以下で説明する特徴は、それぞれ示された組合せで使用され得るだけでなく、本発明の範囲から逸脱せずに他の組合せ又は別個に使用され得ることを理解されたい。
【0085】
本発明のこれら及び他の態様は、以下で説明する実施形態から明らかになり、以下で説明する実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】本発明の一態様による、レンズを着色又は脱色するための方法の第1の実施形態のフローチャートを示す。
図2A】レンズを着色又は脱色するための従来の方法を用いて取得可能な多様なレンズを示す。
図2B】本発明の一態様による方法の第2の実施形態を用いて取得可能な第1の多様なレンズを示す。
図3】本発明の一態様による方法の第3の実施形態を用いて取得可能な第2の多様なレンズを示す。
図4】本発明の一態様による方法の第4の実施形態を用いて取得可能な一対のレンズを示す。
図5】従来技術から既知のレンズホルダの一実施形態を示す。
図6】複数のレンズがレンズホルダに挿入されている状態の図5のレンズホルダの実施形態を示す。
図7A-7B】着色後の図5に示されるレンズホルダ内のレンズの概略図を示す。
図8】本発明の一態様による着色装置の一実施形態で使用されるレンズホルダの第1の実施形態を示す。
図9A-9B】着色後の図5に示されるレンズホルダ内のレンズの概略図を示す。
図10】本発明の一態様による着色装置の一実施形態で使用されるレンズホルダの第2の実施形態の一部分での斜視図を示す。
図11色装置の第1の実施形態(特許請求の範囲によって網羅されない)の側面図を示す。
図12】レンズホルダの回転軸に対する受取ユニットの変位を示す概略図を示す。
図13色装置の第2の実施形態(特許請求の範囲によって網羅されない)での斜視図を示す。
図14】本発明の一態様による着色装置の一実施形態で使用されるレンズホルダの第3の実施形態を示す。
図15】本発明の一態様による着色装置の第3の実施形態の側面図を示す。
図16】着色装置内のレンズホルダの精密に制御される角度回転のための例示的な歯車配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
図1は、本発明の一態様による、レンズを着色又は脱色するための方法の第1の実施形態のフローチャートを示す。第1のステップS202において、1つのレンズ(又は複数のレンズ)がレンズホルダに挿入される。レンズホルダは、レンズの幾何中心がレンズホルダの回転軸と一致するようにレンズが配置される従来のレンズホルダを含み得るか、又は挿入されたレンズの幾何中心が回転軸から離れてシフトし得る本発明の一態様によるレンズホルダが使用され得る。
【0088】
第2のステップS204において、流体を含む浸漬浴が提供される。流体は、例えば着色液又はブリーチ(脱色)液であり得る。ステップS202及びS204の時間順は関連性がないため、ステップS204は、ステップS202前に実行され得る。
【0089】
第3のステップS206において、レンズホルダは、浸漬浴の流体に浸漬される。レンズホルダは、浸漬浴に完全に又は部分的に浸漬し得る。
【0090】
ステップS208において、次のステップとしてステップS210が実行されるか、又はステップS212が実行されるかが判断される。この判断は、使用されるレンズホルダに基づく。より詳細には、この判断は、レンズホルダにおけるレンズの配置に基づく。レンズホルダの回転軸が受取ユニットの外部又はレンズの外部にある、即ちレンズの受取エリアを通る場合、ステップS210が実行される。ステップS210は、(所定の)最大回転角度に従って浸漬浴へのレンズホルダの最大浸漬深さを適合させること又は浸漬浴へのレンズホルダの(所定の最大)浸漬深さに従って最大回転角度を適合させることを含む。しかしながら、ステップS208において、チェックされて、回転軸がレンズホルダ内のレンズの外部(又は受取ユニットの外部)にあると確認された場合、レンズホルダは、浸漬浴へのレンズホルダの浸漬深さから独立して回転することができる(S212)。
【0091】
任意選択的に、この実施形態の方法は、ステップS214、即ちレンズホルダを浸漬浴から取り出すこと、流体を変更すること、回転軸に対してレンズを変位させること又はレンズをそれ自体の幾何中心の周りで回転させることのいずれか並びに同じ又は別の浸漬浴にレンズホルダを浸漬させることを更に含む。
【0092】
図2Aは、レンズを着色又は脱色するための従来の方法を用いて取得可能な第1の多様なレンズを示す。図2Aのa)は、中心ハローレンズ着色を示す。図2Aのb)は、同様の着色の更なる変形を示す。図2Aのc)は、反転中心ハローを有するレンズを示す。これらの種類の着色は、レンズを浸漬浴に部分的に浸漬させ、レンズの幾何中心を通り、レンズ平面に垂直な軸の周りを少なくとも360°回転させることを含む方法によって取得することができる。
【0093】
図2Bは、本発明の一態様による方法の第2の実施形態を用いて取得可能な第1の多様なレンズを示す。図2Bに示される全てのレンズ(より詳細にはレンズ着色)は、レンズホルダの回転軸からレンズの幾何中心を変位させることを含む方法により又は受取ユニットが回転軸から変位したレンズホルダを使用することによって取得することができる。レンズホルダは少なくとも360°回転する。図2Bのa)は偏心ハロー着色を有するレンズを示す。この種の着色は、レンズ、特にレンズの幾何中心がレンズホルダの回転軸から離れて位置する場合、達成することができる。更に、回転軸は、浸漬浴の表面の上、即ち着色剤を含む浸漬浴外の平行平面にあるように配置することができる。その場合、レンズホルダが回転軸の周りで回転する場合、図2Bのa)に示される着色設計が得られる。図2Bのb)は反転偏心ハローを有するレンズを示す。使用される方法は図2Bのa)に示されるレンズのものと同じであり得るが、唯一の違いは、回転軸が平行平面にあるべきであるが、浸漬浴の表面よりも下、即ち浸漬浴内部にあるべきことである。
【0094】
図2Bのc)は、偏心ハロー着色を有する一対のレンズを示す。ハローの位置は、予め定義された位置に、特にレンズホルダの回転軸から予め得定義された距離且つレンズの幾何中心に対して予め定義された角度位置にレンズホルダにおけるレンズを修正することにより精密に調整することができる。図2Bのd)は偏心ハローを有する別の1対のレンズを示す。しかしながら、図2Bのd)では、ハローはレンズに部分的にのみ適用される。特に、図2Bのd)は、勾配中心がレンズ外にあるが、レンズの縁部に近いレンズ着色を示す。換言すれば、図2Bのd)に示されるレンズを達成するためには、回転軸は、レンズ外にある必要がある。異なるハローサイズは、浸漬浴への浸漬深さを適合させることにより及び回転軸を変位させることによって取得することができる。
【0095】
図3は、本発明の一態様による方法を用いて取得可能な第2の多様なレンズを示す。図3のa)は、「中心単一ペンデュラム」と呼ばれる着色を有するレンズを示す。この種の着色は、レンズホルダの回転軸が浸漬浴の表面の上、即ち浸漬浴の外部の平行平面に位置する場合及びレンズホルダが両方向で約90°のみ回転する場合、取得し得る。図3のb)は、「中心デュアルペンデュラム」と呼ばれる着色を有するレンズを示す。この種の着色は、図3のa)に示される着色と同じように達成することができるが、着色サイクル間でレンズがレンズ平面において180°回転する。同様に、図3のc)に示される着色、即ち「中心トリプルペンデュラム」着色は、図3のa)に示されるように着色されたレンズが、浸漬浴104への別の浸漬前、120°度回転する場合、達成することができる。図3のd)は「中心矩形ペンデュラム」着色を示す。この種の着色は、図3のa)に示されるように着色されたレンズが、別の着色サイクル前、浸漬浴104内で90°度回転する場合、達成することができる。したがって、図3のb)、図3のc)及び図3のd)に示されるレンズ着色は、本発明による第2の方法の一実施形態により達成し得る。図3のe)は、角度回転に基づいて浸漬深さを制御することにより提供することができる、目的に合わせられた着色の更なる例として「余剰ペンデュラム着色」を示す。前記レンズ着色は、本願に開示される第3の方法の一実施形態により達成することができる。
【0096】
図4は、本発明の一態様による第2の方法の別の実施形態を用いて取得可能な一対のレンズを示す。この実施形態では、レンズの幾何中心は、レンズホルダの回転軸から離れてシフトしている。更に、第1の着色サイクルにおいて、レンズホルダは少なくとも360°回転し、第2のサイクルにおいて、レンズホルダの回転は360°未満に制限される。より詳細には、レンズホルダは、第1の方向において180°未満回転し、第2の方向において180°未満回転する。受取ユニットは、図4に示される着色を得るために偏心であり、ホルダはペンデュラムのように回転するため、図4に示される着色は「偏心ペンデュラムハロー」と呼ばれる。
【0097】
図5は、複数のレンズを同時に着色するように構成された従来のレンズホルダ10を示す。レンズホルダ10は、3つのロッド24a、24b及び24cにより接続された2つの対向するプレート14a及び14bを含む。3つのロッド24a、24b及び24cは、複数の切り欠き28を含む。着色されるレンズ50は、ロッドの切り欠きに挿入され、プレート12a及び12b間に挿入可能なバー26により留め付けることができる。バー26は、切り欠きに位置するレンズに力を加えるように構成され、特にロッドの切り欠き28内部に留まるようにレンズに強いるように構成される。したがって、3つのロッド24a、24b及び24c並びにバーは、受取ユニット20を形成する。
【0098】
ロッド及びバーから離れるプレートの側で、プレート14a及び14bは各々、シャフト12a及び12bをそれぞれ含む。レンズホルダ10は、シャフト12a及び12bを通って延在する(想像上の)回転軸60の周りで回転し得る。典型的には、シャフト12a及び12bはプレート14a及び14bの幾何中心に位置する。受取ユニット20は典型的には、受取ユニット20により保持されるレンズ50の幾何中心が回転軸60上に位置するように配置される。したがって、レンズホルダ10に回転軸60の周りで回転させると、レンズホルダに挿入されたレンズ50は、幾何中心の周りで回転される。
【0099】
図6は、レンズ50が受取ユニット20に挿入された状態の図5の従来のレンズホルダ10を示す。見て分かるように、レンズ50は、ロッド24a、24b及び24cとバー26との間で把持される。特に、レンズは、ロッドの切り欠き28により固定され、それによりレンズのシフトを防ぐ。
【0100】
図7A及び図7Bは、着色後の図6に示されるレンズホルダ10内のレンズの概略図を示す。特に、図7Aは、3つのロッド24a、24b及び24c並びにバー26を含むレンズホルダ10に挿入されたレンズ50の正面図を示す。レンズ50の着色は、レンズホルダ10(したがってレンズ50)が、様々な深さで浸漬浴に浸漬されている間、回転軸60周りを少なくとも360°(又は360°の倍数)回転する着色手順により達成することができる。実際には、そのようないわゆる中心ハロー着色レンズは、回転軸60が着色手順全体を通して浸漬浴の表面よりも下に留まるように、浸漬浴中で往復運動する、回転するレンズホルダ10を使用することにより生成し得る。図7Aに示されるレンズの着色は、「反転中心ハロー着色」である。
【0101】
図7Bは、3つのロッド24a、24b及び24c並びにバー26を含むレンズホルダ10に挿入されたレンズ50の正面図を示す。レンズはいわゆる中心ハロー着色を用いて着色される。この種の着色は、浸漬浴が着色の代わりに脱色液を含む、図7Aに関して着色手順に濃淡のない着色を有するレンズを使用することにより達成することができる。しかしながら、同種の着色は、レンズホルダの回転軸60が着色手順全体を通して浸漬浴の方面の上に留まりながら、浸漬浴に着色剤を使用することにより達成し得る。
【0102】
図8は、本発明の一態様による着色装置の実施形態で使用するためのレンズホルダ10の第1の実施形態を示す。レンズホルダ10は、3つのロッド24a、24b及び24cにより接続された2つの対向するプレート14a及び14bを含む。3つのロッド24a、24b及び24cは複数の切り欠き28を含む。着色されるレンズ50は、ロッドの切り欠きに挿入され、バー26により留め付けることができ、バー26は、挿入されたレンズに力を加えるように構成され、ロッドの切り欠き28内部に留まるようにレンズに強いる。レンズホルダ10は、プレート14a及び14bのそれぞれの外側に2つのシャフト12a及び12bを更に含む。シャフト12a及び12bは、着色装置のシャフトの受取部に挿入され、それによりシャフト12a及び12bを通って延在する回転軸60の周りをレンズホルダ10が回転できるようにするように構成される。図5及び図6に示される従来のレンズホルダとは対照的に、本発明のレンズホルダ10は、回転軸60から離れてシフトする受取ユニット20を含む。特に、レンズの受取エリアの幾何中心は、回転軸60に対して変位する。より正確に言えば、レンズホルダの回転軸は、レンズの外部(及び更に受取部の外部)に配置される。
【0103】
図9A及び図9Bは、着色後の図8に示されるレンズホルダ10内のレンズ50の概略図を示す。特に、図9Aは3つのロッド24a、24b及び24c並びにバー26を含むレンズホルダ10に挿入されたレンズ50の正面図を示す。図9Aにおけるレンズ50の着色は、いわゆる反転偏心ハロー着色を反映しており、勾配の中心は、レンズの外部にあるが、レンズの縁部に近い。例えば、図8に示されるように、濃淡のない着色を有するレンズ50をレンズホルダ10に挿入し、少なくとも360°だけ回転軸の周りでレンズホルダ10に回転させながら、前記レンズホルダ10(及びレンズ)を、脱色液を含む浸漬浴に部分的に浸漬させることにより、反転偏心ハロー着色を達成することができる。着色の漸次的陰影は、レンズホルダ10が回転している間、レンズホルダ10が浸漬表面に対して(わずかに)上下移動する(破線で示されている)場合、達成することができる。
【0104】
図9Bも、3つのロッド24a、24b及び24c並びにバー26を含むレンズホルダ10に挿入されたレンズ50の正面図を示す。示されているレンズ50の着色は、偏心ハロー着色であり、レンズ50が脱色液の代わりに着色液に露出されることを除き、図9Bに示されるレンズに適用される着色手順により達成することができる。
【0105】
図10は、本発明の一態様による着色装置の実施形態で使用するためのレンズホルダの第2の実施形態の一部での斜視図を示す。特に、図10は、3つのロッド24a、24b及び24c並びにバー26を含む受取ユニットを示し、3つのロッド及びバーはシフト要素84に接続される。この実施形態では、シフト要素84はリングを含む。ロッド24a、24b及び24cは、レンズ50が挿入される切り欠きを含む。レンズ50は更に、バー26により受取ユニットから落ちないようにされる。固定位置は、レンズの縁部上の切り欠きを通って延在する、この実施形態ではスティックであるガイド要素15により保証される。リングは、その平面がロッドに垂直であるように配置される。換言すれば、リングの平面はレンズ平面に平行であるように構成される。シフト要素84(即ちリング)は、レンズホルダのプレート14の偏心空間82に挿入されるように構成される。
【0106】
この実施形態では、シフト要素84は偏心空間84においてシフトするように構成される。特に、プレートは、レンズホルダの回転軸からのシフト(即ち変位)量を示す目盛りを含み得る。例えば、リング上のマーカが目盛りの「0」を指す場合、これは、ロッド及びバー(したがってレンズ)により囲まれた受取エリアの幾何中心をレンズホルダの回転中心が通るように受取ユニットが位置していることを示し得る。他方、例えばマーカが「10」を指す場合、これは、10mm中心からずれること、即ち回転軸からレンズの幾何中心が10mmシフトすることを示す。同様に、受取ユニットは、受取エリア(したがってレンズ)を通る軸の周りを偏心空間84において回転し得る。回転量も同様に目盛りで示すことができる。
【0107】
レンズホルダは、シフト要素84をレンズホルダの偏心空間82に固定するように構成された固定要素、例えばねじを更に含み得る。この実施形態では、偏心空間82は、プレート14における凹部を含む。しかしながら、他の種類の偏心空間も考えられる。例えば、偏心空間は、シフト要素84が移動することができるレール等により画定することができる。
【0108】
図11は、(請求項によって包含されない)第2の着色装置100の第1の実施形態の側面図を示す。実際には、着色装置100の部分のみが図11で見られる。特に、レンズホルダ10のプレート14a及びプレート14a上のシャフト12aが示されている。レンズホルダ10のシャフト12aは、着色装置100の受取要素に挿入される。この構造により、レンズホルダ10は、シャフトの駆動により安定して回転することができる。
【0109】
図12は、レンズホルダの回転軸に対する受取ユニット20の変位を示す概略図を示す。この図では、シフト要素84はリングにより表され、レンズ50の位置を反映した受取ユニットの受取エリア21は、破線で囲まれた円で示されている。図12は特に、合計で5mmになることが示される、回転軸60に対するレンズホルダ(したがってレンズ)の受取エリア21の幾何中心80の変位を示す。特に、受取ユニット20が動き回ることができる空間を示す偏心空間82が示されている。見ることができ、示される目盛りによっても示されるように、受取ユニット20、したがってレンズの幾何中心80は、特に回転軸がもはやレンズホルダの受取エリアを通らないように、即ち回転軸が受取エリア外部にある(即ちシフト要素84が可能な限り低い位置にシフトした場合)ように、回転軸60から更に離れてシフトすることができる。しかしながら、受取ユニット20は、同様に、幾何中心80及び回転軸60が一致する位置にシフトして戻ることができる。
【0110】
図13は、ンズ50を着色するための(請求項によって包含されない)第2の着色装置100の別の実施形態での斜視図を示す。着色装置100は、レンズホルダ10、浸漬浴104及び回転ユニット102を含む。レンズホルダ10は、ロッド24及びバー26により接続された2つの対向するプレート14a及び14bを含む。レンズ50を固定位置に保持するために、ロッドはレンズを受け取るための切り欠きを含み、バーは、レンズがレンズホルダに固定されたままであることを保証する。この実施形態にけるレンズホルダ10のロッドは、複数の切り欠きを含み複数のレンズをレンズホルダ10の受取エリアに保持できるようにする。レンズホルダ10は、着色装置100の受取要素106に挿入されるように構成されたシャフト12a及び12bを更に含む。したがって、レンズホルダ10はシャフト12a及び12bを結ぶ(想像上の)回転軸60の周りで回転し得る。実際には、シャフト12aを回転させ、したがって回転軸60の周りをレンズホルダ10に回転させるように構成されたベルト駆動装置107を含む、着色装置100内の回転ユニット102が提供される。
【0111】
ロッド24及びバー26は、端部においてシフト要素84に接続され、シフト要素84はプレート14a及び14bとそれぞれ接続される。特に、シフト要素はプレート14a及び14bのそれぞれの偏心空間82、即ち凹部内を移動することができる。したがって、受取ユニットは、(想像上の)回転軸60がプレート14a及び14bをそれぞれ通るポイントに対してプレート14a及び14bの表面に沿ってシフトすることができる。
【0112】
図13に示される実施形態では、着色装置100は、浸漬浴の表面に垂直な方向において、レンズホルダ10を移動させるように構成されたリフトユニット108を更に含む。リフトユニット108は、浸漬浴の底部に向かってレンズホルダを同方向及び/又は逆方向に移動させ得る。したがって、リフトユニット108は、浸漬浴104への浸漬深さを調整するように構成される。特に、リフトユニット108は、回転ユニット102がレンズホルダ10を回転させている間、レンズホルダ10を移動させ得る。この実施形態では、レンズホルダ10は、リフトユニット108により浸漬浴に第1の深さまで浸漬されている間、回転軸60の周りを第1の方向で第1の最大角度まで回転し得る。次いで、レンズホルダ10は、もはや浸漬浴に浸漬されないように上昇し得る。次のステップにおいて、レンズホルダは、リフトユニット108により第2の深さまで浸漬浴に浸漬されながら、回転軸60の周りを第2の方向に第2の最大角度まで回転ユニット102により回転し得る。
【0113】
浸漬浴104へのレンズの浸漬深さを調整することにより及び2つの回転方向における回転角度を調整することにより、広範囲の個々のレンズ着色を生成することができる。これは、着色プロセス中、即ち着色サイクル間で例えば着色の色を変えることにより着色が変更される場合、なおも当てはまる。更に、浸漬浴に着色剤を使用する代わりに脱色液を使用し得、それにより新規の脱色効果が生じる。着色装置100を使用して、例えば偏心ハロー着色を第1の位置に有し、反転偏心ハローを第2の位置に有するレンズを作製することができる。
【0114】
この実施形態では、リフトユニット108はサーボモータ110により走ることができる。そのようなモータの使用により、レンズホルダ10の滑らかな移動、したがってレンズの精密な着色が保証される。
【0115】
図14は、本発明の一態様による着色装置で使用するためのレンズホルダ10の別の実施形態を示す。この実施形態では、レンズホルダ10は複数のレンズ、特に160を超えるレンズを保持するように構成される。レンズホルダ10は、着色装置100に挿入されるラック16を含む。ラック16は、2行に配置された16のサブホルダを含む。各サブホルダは、複数のレンズ50、特に10を超えるレンズを受取固定する切り欠きを含む2つのロッドを含む。
【0116】
図15は、本発明の一態様による着色装置100の一実施形態の側面図を示す。着色装置100は、着色装置100の浸漬浴104に部分的に浸漬された3つのレンズホルダ10a、10b及び10cを含む。レンズホルダ10cには、着色される複数のレンズ50が挿入される。
【0117】
図16は、着色装置内のレンズホルダの精密に制御される角度回転のための例示的な歯車配置を示す。従来の着色装置では、そのような精密な角度制御は求められない。本発明者らは、特に、レンズホルダ10の回転角度に従って浸漬浴104へのレンズホルダ10の浸漬深さを適合させるように構成されたリフトユニット108の状況で、回転軸の周りでレンズホルダに回転させるように適合された歯車配置を有するレンズホルダを含む着色装置を提供することにより、角度回転の精密制御を提供できることを認めた。特に、平歯車が角度回転の正確な制御を提供する。
【0118】
本発明について図面及び上記の説明に詳細に図示し、説明したが、そのような図及び説明は、説明のため又は例示と見なされるべきであり、限定として見なされるべきではなく、本発明は、開示される実施形態に限定されない。請求項に記載された本発明を実施するに当たり、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の研究から、当業者であれば、開示された実施形態の他の変形形態を理解し、実施することができる。
【0119】
特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数を除外しない。単一の要素又は他のユニットは、特許請求の範囲に記載される幾つかの項目の機能を満たし得る。特定の尺度が相互に異なる従属請求項に記載されることのみでは、これらの尺度の組合せを有利に使用できないことを示さない。
【0120】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される光学記憶媒体又は固体状態媒体等の適した媒体に記憶/適した媒体で配布され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介する等の他の形態で配布され得る。
【0121】
特許請求の範囲におけるあらゆる参照符号は、範囲の限定として解釈されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図3a)】
図3b)】
図3c)】
図3d)】
図3e)】
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16