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特許7515753プラント設計支援装置、及び、プラント設計支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】プラント設計支援装置、及び、プラント設計支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20240705BHJP
   G06F 113/16 20200101ALN20240705BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F113:16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023576774
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2023000698
(87)【国際公開番号】W WO2023145477
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/002745
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519355493
【氏名又は名称】日揮グローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 純
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】信田 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】清水 理絵
(72)【発明者】
【氏名】赤城 範方
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 伝
(72)【発明者】
【氏名】西本 浩也
(72)【発明者】
【氏名】田中 信貴
(72)【発明者】
【氏名】吉井 拓史
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-339357(JP,A)
【文献】特開平10-320427(JP,A)
【文献】米国特許第04862345(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
G05B 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに設置された計器室に接続される一次側ケーブルと、前記プラントに設置された複数の機器にそれぞれ接続される複数の二次側ケーブルとを中継する複数の中継器の配線設計を支援するプラント設計支援装置であって、
前記プラントの配置図における、前記計器室の設置位置、前記機器の設置位置、及び、前記一次側ケーブルが設置可能な領域を示す一次側ケーブル設置領域をプラント設計情報として取得するとともに、前記中継器の配線設計に関する中継器配線設計条件を取得する情報取得部と、
前記情報取得部にて取得された前記プラント設計情報及び前記中継器配線設計条件に基づいて、前記配置図における前記中継器の設置位置と、前記中継器に接続される前記機器の割当とを決定する決定部と、を備える、
プラント設計支援装置。
【請求項2】
前記中継器配線設計条件は、
前記二次側ケーブルの長さの上限値を示す二次側ケーブル上限長さを含み、
前記決定部は、
前記配置図に対して前記機器の設置位置を基準として、前記二次側ケーブル上限長さにより規定される仮想枠を前記機器毎に配置し、
前記一次側ケーブル設置領域の外形線と前記仮想枠との交点同士を結ぶ交差線分を前記機器毎に生成するとともに、前記計器室を起点にして前記機器毎の交差線分が重複している重複線分を探索することで、前記重複線分を含む前記交差線分に対応する前記機器を機器グループとして特定し、
前記機器グループ毎に、前記重複線分の内側に前記中継器の設置位置を決定するとともに、前記重複線分を含む前記交差線分に対応する前記機器を前記中継器に接続するものとして前記機器の割当を決定する、
請求項1に記載のプラント設計支援装置。
【請求項3】
前記プラント設計情報は、
前記機器の設置高さと、前記中継器が設置可能な高さを示す中継器設置可能高さと、前記二次側ケーブルが設置可能な高さを示す二次側ケーブル設置可能高さとを含み、
前記決定部は、
前記配置図に対して前記機器の設置位置を基準として、前記二次側ケーブル上限長さ、前記機器の設置高さ、前記中継器設置可能高さ及び前記二次側ケーブル設置可能高さにより規定される前記仮想枠を前記機器毎に配置する、
請求項2に記載のプラント設計支援装置。
【請求項4】
前記中継器配線設計条件は、
前記二次側ケーブルが接続される前記中継器の端子のスペア率又はスペア数の許容値を示す端子スペア許容値を含み、
前記決定部は、
前記重複線分を含む前記交差線分に対応する前記機器の数が、前記端子スペア許容値を満たすように、前記重複線分を探索することで、前記機器グループを特定する、
請求項2又は請求項3に記載のプラント設計支援装置。
【請求項5】
前記中継器配線設計条件は、
前記二次側ケーブルが接続される前記中継器の端子のスペア率又はスペア数の許容値を示す端子スペア許容値を含み、
前記決定部は、
前記機器グループ毎に、前記重複線分を含む前記交差線分に対応する前記機器の数が、前記端子スペア許容値を満たすように、前記中継器の設置仕様を決定する、
請求項2又は請求項3に記載のプラント設計支援装置。
【請求項6】
前記決定部は、
前記機器グループ毎に前記重複線分の内側に前記中継器の設置位置を決定する際、前記機器グループに含まれる複数の前記機器を前記中継器にそれぞれ接続したときの前記二次側ケーブルの長さを合計した合計値に基づいて、前記中継器の設置位置を決定する、
請求項2又は請求項3に記載のプラント設計支援装置。
【請求項7】
前記プラント設計情報は、
前記一次側ケーブル設置領域のうち、前記中継器を設置することを禁止する領域を示す中継器設置禁止領域を含み、
前記決定部は、
前記交差線分を前記機器毎に生成する際、前記中継器設置禁止領域を除外した前記一次側ケーブル設置領域の外形線と、前記仮想枠との交点同士を結ぶことで前記交差線分を生成する、
請求項2又は請求項3に記載のプラント設計支援装置。
【請求項8】
前記プラント設計情報は、
前記二次側ケーブルを設置することが禁止された領域を示す二次側ケーブル設置禁止領域を含み、
前記決定部は、
前記交差線分を前記機器毎に生成する際、前記交差線分のうち、前記二次側ケーブルを設置したときに前記二次側ケーブル設置禁止領域を通過する線分を除外することで前記交差線分を生成する、
請求項2又は請求項3に記載のプラント設計支援装置。
【請求項9】
前記プラント設計情報は、
前記計器室と前記機器との間で送受信される信号の属性として、前記プラントを管理する複数の管理システムのうちいずれの前記管理システムで使用される機器であるかを特定するシステム種別と、アナログ信号かデジタル信号かを特定する信号種別の少なくとも一方を含み、
前記決定部は、
前記信号の属性毎に、前記中継器の設置位置と、前記中継器に接続される前記機器の割当とを決定する、
請求項1に記載のプラント設計支援装置。
【請求項10】
前記プラント設計情報は、
前記一次側ケーブル設置領域に設置可能な前記信号の属性を示す設置可能信号属性を含み、
前記決定部は、
前記一次側ケーブル設置領域に対して設定された前記設置可能信号属性が示す信号の属性に対応する前記一次側ケーブルが当該一次側ケーブル設置領域に設置されるように、前記中継器の設置位置と、前記中継器に接続される前記機器の割当とを決定する、
請求項9に記載のプラント設計支援装置。
【請求項11】
前記決定部にて決定された前記中継器の設置位置及び前記機器の割当の少なくとも一方のうち一部の情報を修正する修正指示を受け付ける修正受付部をさらに備え、
前記決定部は、
前記修正受付部にて受け付けられた前記修正指示に基づいて、前記中継器の設置位置及び前記機器の割当を修正する、
請求項1に記載のプラント設計支援装置。
【請求項12】
前記プラント設計情報及び前記中継器配線設計条件の少なくとも一方のうち一部の情報を更新する更新指示と、前記決定部にて決定された前記中継器の設置位置及び前記機器の割当の少なくとも一方のうち情報の変更を禁止とする変更禁止範囲を指定する変更禁止指示とを受け付ける更新受付部をさらに備え、
前記決定部は、
前記更新受付部にて受け付けられた前記更新指示により前記プラント設計情報及び前記中継器配線設計条件の少なくとも一方が更新されたとき、更新後の前記プラント設計情報及び前記中継器配線設計条件に基づいて、前記更新受付部にて受け付けられた前記変更禁止指示が指定する前記変更禁止範囲に該当しない前記中継器の設置位置及び前記機器の割当を再決定する、
請求項1に記載のプラント設計支援装置。
【請求項13】
前記決定部は、
前記計器室と前記中継器とを接続する前記一次側ケーブルの経路と、
前記機器と前記中継器とを接続する前記二次側ケーブルの経路とをさらに決定する、
請求項1に記載のプラント設計支援装置。
【請求項14】
前記中継器配線設計条件は、
前記機器に対して前記一次側ケーブル設置領域の反対側に位置する前記中継器に当該機器が接続されることを許可するか否かを示す中機器接続設定を含み、
前記決定部は、
前記中機器接続設定にて前記反対側に位置する前記中継器に接続されることが許可されている場合、前記機器に対して前記一次側ケーブル設置領域の同じ側又は前記反対側に位置する前記中継器に接続されるように、前記中継器の設置位置と、前記中継器に接続される前記機器の割当とを決定し、
前記中機器接続設定にて前記反対側に位置する前記中継器に接続されることが許可されていない場合、前記同じ側の前記中継器だけに接続されるように、前記中継器の設置位置と、前記中継器に接続される前記機器の割当とを決定し、
請求項1に記載のプラント設計支援装置。
【請求項15】
コンピュータ、プラントに設置された計器室に接続される一次側ケーブルと、前記プラントに設置された複数の機器にそれぞれ接続される複数の二次側ケーブルとを中継する複数の中継器の配線設計を支援するプラント設計支援方法であって、
前記プラントの配置図における、前記計器室の設置位置、前記機器の設置位置、及び、前記一次側ケーブルが設置可能な領域を示す一次側ケーブル設置領域をプラント設計情報として取得するとともに、前記中継器の配線設計に関する中継器配線設計条件を取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程にて取得された前記プラント設計情報及び前記中継器配線設計条件に基づいて、前記配置図における前記中継器の設置位置と、前記中継器に接続される前記機器の割当とを決定する決定工程と、を備える、
プラント設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント設計支援装置、及び、プラント設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントには、多数の機器が設置され、それら多数の機器と計器室との間で送受信される機器信号に基づいて、プロセス制御、緊急停止、保安管理等が行われる。各機器は、プラントの各所に設置されるため、プラントにおける電気配線の設計を支援する装置として、例えば、特許文献1には、複数の機器間を接続する電気配線の経路図を生成するプラント電気配線計画装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたプラント電気配線計画装置では、機器(ポンプ、弁、計装器等)と、制御盤との接続関係が既に決められた状態において、機器と制御盤との間を接続する電気配線の経路図を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-135381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機器と計器室との間は、ケーブルを用いて配線しなければならないが、多数の機器の各々に対して計器室まで1本1本ケーブルを敷設した場合、敷設コストが高く、作業性も悪い。そこで、機器と計器室との間に中継器を設置し、複数の機器から中継器までを二次側ケーブル(例えば、単芯ケーブル)でそれぞれ接続し、中継器から計器室までを一次側ケーブル(例えば、多芯ケーブル)で接続する接続形態が採用される。このような中継器を用いた接続形態では、プラントの配置図において、各中継器の設置位置と、各中継器に接続される機器の割当とを決定する作業が生じるが、その際、一次側ケーブルは特定の領域に敷設したい、二次側ケーブルは特定の長さよりも短くしたい等の様々な設計条件を満たすことが要求される。そのため、中継器の配線設計において、短期間での設計や仕様変更に伴う設計変更を適切に実施するためには、現場工事の経験に基づく高度な設計スキルが必要であった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高度な設計スキルを要することなく、中継器の配線設計を適切に実施可能なプラント設計支援装置、及び、プラント設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るプラント設計支援装置は、
プラントに設置された計器室に接続される一次側ケーブルと、前記プラントに設置された複数の機器にそれぞれ接続される複数の二次側ケーブルとを中継する複数の中継器の配線設計を支援するプラント設計支援装置であって、
前記プラントの配置図における、前記計器室の設置位置、前記機器の設置位置、及び、前記一次側ケーブルが設置可能な領域を示す一次側ケーブル設置領域をプラント設計情報として取得するとともに、前記中継器の配線設計に関する中継器配線設計条件を取得する情報取得部と、
前記情報取得部にて取得された前記プラント設計情報及び前記中継器配線設計条件に基づいて、前記配置図における前記中継器の設置位置と、前記中継器に接続される前記機器の割当とを決定する決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係るプラント設計支援装置によれば、決定部が、プラント設計情報及び中継器配線設計条件に基づいて、配置図における中継器の設置位置と、中継器に接続される機器の割当とを決定するので、高度な設計スキルを要することなく、中継器の配線設計を適切に実施することができる。
【0009】
上記以外の課題、構成及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プラント設計支援システム1及びプラント10の一例を示す全体図である。
図2】プラント設計支援装置2の一例を示すブロック図である。
図3】プラント設計データベース5及び設計条件データベース6の一例を示すデータ構成図である。
図4】プロットプラン図500の一例を示す図である。
図5】P&ID図501の一例を示す図である。
図6】I/Oリスト502の一例を示す図である。
図7】配線ブロック図503の一例を示す図である。
図8】決定部202による中継器配線設計処理の第1の処理例を示す機能説明図である。
図9】決定部202による中継器配線設計処理の第1の処理例を示す機能説明図(図8の続き)である。
図10】決定部202による中継器配線設計処理の第1の処理例を示す機能説明図(図9の続き)である。
図11】決定部202による中継器配線設計処理の第2の処理例を示す機能説明図である。
図12】プラント設計支援装置2及び設計者端末装置3を構成するコンピュータ900の一例を示すハードウエア構成図である。
図13】プラント設計支援システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
図14】プラント設計支援システム1の動作の一例を示すフローチャート(図13の続き)である。
図15】決定部202による中継器配線設計処理(ステップS130)の詳細を示すフローチャートである。
図16】中継器配線設計処理の第1の変形例を示す機能説明図である。
図17】中継器配線設計処理の第2の変形例を示す機能説明図である。
図18】中継器配線設計処理の第3の変形例を示す機能説明図である。
図19】中継器配線設計処理の第4の変形例を示す機能説明図である。
図20】中継器配線設計処理の第5の変形例を示す機能説明図である。
図21】中継器配線設計処理の第6の変形例を示す機能説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0012】
(プラント設計支援システム1の構成)
図1は、プラント設計支援システム1及びプラント10の一例を示す全体図である。プラント設計支援システム1は、プラント10の設計、特にプラント10に設置される中継器14の配線設計を支援するためのシステムとして機能する。プラント10は、例えば、天然ガスプラント、石油精製プラント、化学処理プラント、発電プラント、製鉄プラント等の任意のプラントであり、これらの例に限られない。
【0013】
プラント10には、例えば、気体、液体、流動性を有する粉粒体等の任意の流体を処理するための各種の設備11として、反応塔、蒸留塔、タンク、ボイラ、加熱炉、熱交換器、配管等が設置されて、所定の製造プロセスを行う。また、プラント10には、製造プロセスの制御や緊急停止、プラント10の保安監視を行う計器室12と、計器室12との間で各種の機器信号(センサ信号や制御信号)が送受信される複数の機器13と、計器室12と複数の機器13との間に接続されて機器信号を中継する複数の中継器14とが設置される。
【0014】
プラント10では、例えば、プロセス制御システム、緊急停止システム、保安システム等の複数の管理システムが稼働する。プロセス制御システムは、原材料から製品を製造するための製造プロセスを制御する管理システムである。緊急停止システムは、製造プロセスの実行中に設備11や機器13の異常を検知し、製造プロセスの緊急停止を行う管理システムである。保安システムは、危険なガス漏れや火災等を検知し、作業員への避難警報や消火システムを作動させる管理システムである。
【0015】
機器13は、例えば、設備11を流れる流体の流量、圧力、温度、液位、成分等を測定し、その測定結果を示すセンサ信号を出力するセンサ等の計器と、制御信号が入力されて、設備11を流れる流体の流量、圧力、温度、液位、成分等を制御するバルブ、ポンプ、コンプレッサ等の制御器とを含む。なお、機器13は、上記の例に限られず、設備11の一部を含むものでもよいし、設備11の周囲環境における温度、湿度等の物理量を測定する計器でもよいし、それらの物理量を制御する制御器を含むものでもよい。
【0016】
計器室12は、例えば、管理システム毎に制御装置(不図示)を備え、複数の機器13のうち計器として機能する機器13からセンサ信号(入力信号ともいう)を受信し、そのセンサ信号が示すセンサ情報に基づいて、複数の機器13のうち制御器として機能する機器13に対して制御信号(出力信号ともいう)を送信する。なお、計器室12は、1つのプラント10に対して複数設置されていてもよいし、管理システム毎に複数設置されていてもよい。また、制御装置は、複数の管理システムで共用されてもよい。
【0017】
中継器14は、例えば、ジャンクションボックスと呼ばれる箱型の電気機器である。中継器14は、一次側端子140と、複数の二次側端子141とを備える。一次側端子には、計器室12に接続される一次側ケーブル15が結線され、二次端子には、機器13に接続される二次側ケーブル16が結線される。中継器14は、一次側ケーブル15と、二次側ケーブル16とを中継することで、計器室12と複数の機器13との間で送受信される機器信号を中継する。中継器14は、二次側端子141の最大端子数や、アナログ信号用の機器かデジタル信号用の機器か等のように、仕様が異なるものであり、プラント10では、複数の仕様の中継器14が使用される。なお、中継器14は、複数の一次側端子140を備えるものでもよい。
【0018】
一次側ケーブル15には、例えば、複数の機器信号を送受信する多芯ケーブルが用いられる。二次側ケーブル16には、単一の機器信号を送受信するための単芯ケーブルが用いられることを基本とするが、多芯ケーブルが用いられてもよい。なお、単芯ケーブル及び多芯ケーブルは、1つの機器信号に対して2本1組のコアを用いたものでよい。その場合、一次側端子140及び二次側端子141は、1つの機器信号に対して2点1組の端子が用いられるため、二次側端子141の最大端子数に代えて、二次側端子141の最大信号接続数という値(最大端子数の半数に相当)を用いてもよい。したがって、2本1組のコアを有する単芯ケーブルを用いたときの二次側端子141の最大接続信号数が5点の場合、物理的な端子数としては10点の二次側端子141を備えることになる。
【0019】
プラント設計支援システム1は、その主要な構成要素として、プラント10に設置される複数の中継器14の配線設計を支援するプラント設計支援装置2と、プラント10の設計者が使用する設計者端末装置3とを備える。プラント設計支援装置2及び設計者端末装置3は、例えば、汎用又は専用のコンピュータ(後述の図12参照)で構成されるとともに、有線又は無線のネットワーク4に接続されて、各種のデータを相互に送受信可能に構成される。なお、プラント設計支援装置2及び設計者端末装置3の数やネットワーク4の構成は、図1の例に限られない。
【0020】
プラント設計支援装置2は、例えば、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータで構成される。プラント設計支援装置2は、各プラント10のプラント設計情報50を管理するプラント設計データベース5と、各プラント10を設計する際の設計要求、設計手順、設計ルール等を管理する設計条件データベース6とを備える。本実施形態では、プラント設計支援装置2が、設計者端末装置3と連携し、詳細設計に含まれる計装設計の一部として、中継器14の配線設計を支援するときの構成や動作を中心に説明するが、プラント設計支援装置2及び設計者端末装置3は、プラント10の全体設計のうち、中継器14の配線設計以外の基本設計や詳細設計を支援するものでもよい。
【0021】
設計者端末装置3は、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され、設計者30により使用される。設計者端末装置3は、アプリケーションやブラウザ等のプログラムがインストールされて、各種の入力操作を受け付けるとともに、表示画面や音声を介して各種の情報を出力する。設計者端末装置3は、プラント設計支援装置2との間で各種のデータを送受信することで、例えば、プラント設計データベース5や設計条件データベース6の内容を表示画面に表示したり、その表示画面上で各種の入力操作を受け付けて、プラント設計データベース5や設計条件データベース6に対して新たなデータを登録したり、登録済みのデータを修正したりすることで、中継器14の配線設計を支援する。
【0022】
(プラント設計支援装置2の構成)
図2は、プラント設計支援装置2の一例を示すブロック図である。プラント設計支援装置2は、プロセッサ等により構成される制御部20と、HDD、SSD、メモリ等により構成される記憶部21と、ネットワーク4との通信インターフェースである通信部22と、キーボード、マウス等により構成される入力部23と、ディスプレイ等により構成される表示部24とを備える。なお、入力部23及び表示部24は省略されてもよい。
【0023】
記憶部21は、プラント設計データベース5、設計条件データベース6、及び、プラント設計支援プログラム210を記憶するとともに、オペレーティングシステム、他のプログラム、各種のデータ等を記憶する。
【0024】
制御部20は、記憶部21に記憶されたプラント設計支援プログラム210を実行することにより、指示受付部200、情報取得部201、決定部202、及び、情報出力部203として機能する。
【0025】
図3は、プラント設計データベース5及び設計条件データベース6の一例を示すデータ構成図である。
【0026】
プラント設計データベース5は、各プラント10(図3の例では、プラントA、B、…、N)の設計データであるプラント設計情報50と、プラント設計情報50により参照される部品マスタ情報51とから構成される。
【0027】
プラント設計情報50は、プラント10の設計作業により生成されるものであり、例えば、プロットプラン図500、P&ID図(Piping&Instrument Diagram)501、I/O(入出力)リスト502、配線ブロック図503、配線設計図504等により構成される。なお、プロットプラン図500、P&ID図501、I/Oリスト502、及び、配線ブロック図503、配線設計図504は、例えば、管理システム毎やフロアの区域毎に生成されていてもよい。
【0028】
プラント10に設置される設備11、機器13、中継器14、一次側ケーブル15、及び、二次側ケーブル16には、設備ID、機器ID、中継器ID、及び、ケーブルIDが、例えば、固有の識別番号、識別コード、識別名称、識別タグ等を表す情報(数字、文字又はこれらの組み合わせ)としてそれぞれ付与され、プロットプラン図500、P&ID図501、I/Oリスト502、配線ブロック図503、及び、配線設計図504では、設備ID、機器ID、中継器ID、及び、ケーブルIDが使用されることで、各データ間の情報が関連付けられる。また、設備11、機器13、中継器14、一次側ケーブル15、及び、二次側ケーブル16には、部品マスタ情報51にて管理される部品IDがそれぞれ割り当てられ、その部品IDに基づいて部品マスタ情報51を参照することで、設備11、機器13、中継器14、一次側ケーブル15、及び、二次側ケーブル16の各仕様が特定される。
【0029】
図4は、プロットプラン図500の一例を示す図である。プロットプラン図500は、プラント10の配置図を記録したデータである。プロットプラン図500には、例えば、設備11の設置位置(X座標、Y座標)及び設置高さ(Z座標)、計器室12の設置位置(X座標、Y座標)、一次側ケーブル15が設置可能な領域を示す一次側ケーブル設置領域、中継器14が設置可能な高さを示す中継器設置可能高さ(Z座標)、二次側ケーブル16が設置可能な高さを示す二次側ケーブル設置可能高さ(Z座標)等が記録される。
【0030】
一次側ケーブル設置領域は、例えば、一次側ケーブル15用のケーブルダクトが設置される領域であり、ケーブルダクトとしては、天井埋込方式、天井吊り方式、床溝方式、床下方式等の任意の方式を採用可能である。中継器設置可能高さは、例えば、中継器14が設置されるときの床面からの高さであり、所定の範囲を有するものでもよい。二次側ケーブル設置可能高さは、例えば、二次側ケーブル16が配線されるときの床面からの高さであり、例えば、天井面の高さ等が指定される。
【0031】
図5は、P&ID図501の一例を示す図である。P&ID図501は、製造プロセスのフローと、設備11及び機器13の配置関係や物理的な接続関係とを記録したデータである。
【0032】
図6は、I/Oリスト502の一例を示す図である。I/Oリスト502は、機器13から送受信される機器信号の属性を、例えば、表形式にて記録したデータである。
【0033】
I/Oリスト502には、機器信号の属性として、機器ID、信号種別、システム種別、設置位置(X座標、Y座標)、設置高さ(Z座標)等が記録される。信号種別は、アナログ信号かデジタル信号かを特定する情報である。システム種別は、プラント10にて稼働する複数の管理システム(本実施形態では、プロセス制御システム、緊急停止システム、保安システム)のうち、いずれの管理システムで使用される機器であるかを特定する情報である。
【0034】
I/Oリスト502における各機器13の設置位置及び設置高さは、例えば、プロットプラン図500及びP&ID図501を解析することで、P&ID図501から設備11及び機器13の配置関係や物理的な接続関係を特定し、さらにプロットプラン図500から各設備11の設置位置及び設置高さを特定することで取得された結果が記録されたものである。なお、各機器13の設置位置及び設置高さは、プロットプラン図500や他のデータに記録されていてもよく、その場合には、I/Oリスト502における機器13の設置位置及び設置高さは省略されてもよい。
【0035】
図7は、配線ブロック図503の一例を示す図である。配線ブロック図503は、計器室12、機器13、中継器14、一次側ケーブル15、二次側ケーブル16の電気的な接続関係を記録したデータである。
【0036】
配線ブロック図503には、中継器14の配線設計が行われることで、中継器14の設置仕様、中継器14に接続される機器13の割当が記録される。機器13の割当は、複数の二次側端子141に二次側ケーブル16を介してそれぞれ結線される機器13を特定する情報である。中継器14の設置仕様は、例えば、部品IDが割り当てられ、その部品IDにより部品マスタ情報を参照することで、中継器14の仕様を特定する情報である。
【0037】
配線設計図504は、中継器14の配線設計に関する配置図であって、例えば、プロットプラン図500に対してレイヤ(重畳)可能な配置図を記録したデータである。配線設計図504には、中継器14の配線設計が行われることで、中継器14の設置位置(X座標、Y座標)、一次側ケーブル15の経路、二次側ケーブル16の経路等が記録される。なお、配線設計図504に記録されるデータの一部又は全部は、プロットプラン図500や他のデータに記録されていてもよい。
【0038】
部品マスタ情報51は、設備11、機器13、中継器14、一次側ケーブル15、二次側ケーブル16等の各種の部品を管理するデータである。部品マスタ情報51は、部品毎にレコードを有するとともに、例えば、部品ID、名称、大分類、小分類、仕様、サイズ等が登録可能なフィールドを有する。
【0039】
設計条件データベース6は、各プラント10を設計する際の設計要求、設計手順、設計ルール等を記録したデータであり、中継器の配線設計に関する中継器配線設計条件60から構成される。
【0040】
中継器配線設計条件60には、図3に示すように、例えば、二次側ケーブル上限長さ、端子スペア許容値等が記録される。二次側ケーブル上限長さは、二次側ケーブル16の長さの上限値を示す情報である。端子スペア許容値は、二次側ケーブル16が接続される中継器14の二次側端子141のスペア率又はスペア数の許容値を示す情報である。なお、中継器配線設計条件60は、上記の例に限られず、例えば、中継器14の設置台数の上限値や設置可能な中継器14の仕様等を含むものでもよい。また、中継器配線設計条件60は、プラント10毎に別々に用意されていてもよいし、複数のプラント10で共用されてもよい。
【0041】
プラント設計データベース5及び設計条件データベース6は、設計者端末装置3により参照されて、設計者端末装置3の表示画面において、各データの追加、削除、修正等の編集操作が設計者30により行われる。その際、データベース5及び設計条件データベース6の参照や編集作業では、各設計者が有する許可権限に応じて権限制御が行われる。また、プラント設計データベース5及び設計条件データベース6は、CADシステムと連携し、各データ(例えば、部品マスタ情報51等)の更新が随時行われる。
【0042】
なお、プラント設計データベース5及び設計条件データベース6のデータ構成は、上記の例に限られず適宜変更してもよく、上記のデータの一部が省略されてもよいし、上記以外のデータが追加されてもよい。また、プラント設計データベース5及び設計条件データベース6は、任意のデータ形式が採用可能であり、例えば、XML形式でもよいし、CAD形式でもよいし、複数のデータ形式を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
指示受付部200は、各種の表示画面を表示するための表示画面情報を設計者端末装置3に送信し、その表示画面を介して、設計者30による入力操作を受け付けることで、中継器14の配線設計を行う設計者30とのユーザインターフェースとして機能する。指示受付部200は、例えば、中継器14の配線設計の対象となるプラント10の選択指示、中継器14の設置位置及び機器13の割当等を決定する中継器配線設計処理の実行指示等を受け付ける。中継器配線設計処理は、後述の決定部202にて実行される。
【0044】
また、指示受付部200は、修正受付部200A、及び、更新受付部200Bとして機能する。修正受付部200Aは、中継器配線設計処理にて決定された中継器14の設置位置及び機器13の割当の少なくとも一方のうち一部の情報を修正する修正指示を受け付ける。更新受付部200Bは、プラント設計情報50及び中継器配線設計条件60の少なくとも一方のうち一部の情報を更新する更新指示と、中継器配線設計処理にて決定された中継器14の設置位置及び機器13の割当の少なくとも一方のうち情報の変更を禁止とする変更禁止範囲を指定する変更禁止指示とを受け付ける。
【0045】
情報取得部201は、例えば、プラント設計データベース5を参照することで、プラント10の配置図における、計器室12の設置位置、機器13の設置位置、及び、一次側ケーブル設置領域をプラント設計情報50として取得する。その際、情報取得部201は、例えば、プラント設計情報50に含まれるプロットプラン図500及びP&ID図501を解析することで、P&ID図501から設備11及び機器13の配置関係や物理的な接続関係を特定し、さらにプロットプラン図500から各設備11の設置位置及び設置高さを特定することで、各機器13の設置位置及び設置高さを取得するようにしてもよく、その取得した結果をI/Oリスト502に記録するようにしてもよい。なお、情報取得部201は、プラント設計情報50に含まれるデータであれば、上記以外のデータを取得してもよく、例えば、機器13の設置高さ、中継器設置可能高さ、及び、二次側ケーブル設置可能高さをさらに取得してもよいし、機器信号の属性をさらに取得してもよい。
【0046】
また、情報取得部201は、例えば、設計条件データベース6を参照することで、中継器配線設計条件60を取得する。情報取得部201は、中継器配線設計条件60として、例えば、二次側ケーブル上限長さ、及び、端子スペア許容値を取得する。
【0047】
なお、プラント設計データベース5の一部若しくは全部、又は、設計条件データベース6の一部若しくは全部は、ネットワーク4に接続可能な外部装置(複数でもよい)に記憶されていてもよく、その場合には、情報取得部201は、その外部装置からネットワーク4及び通信部22を介してプラント設計情報50及び中継器配線設計条件60を取得してもよい。また、プラント設計データベース5の一部若しくは全部、又は、設計条件データベース6の一部若しくは全部は、任意の記憶媒体に記憶されていてもよく、その場合には、情報取得部201は、その記憶媒体(複数でもよい)からプラント設計情報50及び中継器配線設計条件60を取得してもよい。
【0048】
決定部202は、情報取得部201にて取得されたプラント設計情報50及び中継器配線設計条件60に基づいて、配置図における中継器14の設置位置と、中継器14に接続される機器13の割当とを決定する中継器配線設計処理を行う。
【0049】
中継器配線設計処理の第1の処理例(後述の図8乃至図10参照)として、決定部202は、プラント10の配置図に対して機器13の設置位置を基準として、二次側ケーブル上限長さL1により規定される仮想枠を機器13毎に配置し、一次側ケーブル設置領域の外形線と仮想枠との交点同士を結ぶ交差線分を機器13毎に生成するとともに、計器室12を起点にして機器13毎の交差線分が重複している重複線分を探索することで、重複線分を含む交差線分に対応する機器13を機器グループとして特定し、機器グループ毎に、重複線分の内側に中継器14の設置位置を決定するとともに、重複線分を含む交差線分に対応する機器13を中継器14に接続するものとして機器13の割当を決定する。
【0050】
図8乃至図10は、決定部202による中継器配線設計処理の第1の処理例を示す機能説明図である。図8乃至図10では、説明の簡素化のため、機器13として、5つの機器13A~13Eが設置された状況での中継器配線設計処理について説明する。
【0051】
まず、決定部202は、図8に示すように、プラント10の配置図に対して機器13A~13Eの設置位置P1(白丸)を基準として、二次側ケーブル上限長さL1により規定される仮想枠100A~100E(破線)を機器13A~13E毎に配置する。本実施形態では、仮想枠100A~100Eの形状は、ひし形であり、そのひし形の大きさは、機器13A~13Eの設置位置P1を中心とし、その中心から各点までの距離が二次側ケーブル上限長さL1として規定される。ひし形を採用した理由としては、二次側ケーブル16をX方向及びY方向に沿って配線することを前提とした場合、機器13A~13Eの設置位置P1を中心にして二次側ケーブル上限長さL1を有する二次側ケーブル16が到達可能な範囲は、ひし形状になるためである。なお、仮想枠100の形状は、例えば、円等の他の形状であってもよく、円の場合には、その円の半径を二次側ケーブル上限長さL1により規定すればよい。
【0052】
次に、決定部202は、一次側ケーブル設置領域の外形線101と仮想枠100A~100Eとが交差する2つの交点102A~102E(黒丸)を特定し、その2つの交点102A~102E同士を結ぶ交差線分103A~103Eを機器13A~13E毎に生成する。図9では、説明の容易化のため、5つの交差線分103A~103Eをずらした状態で図示している。
【0053】
次に、決定部202は、図9に示すように、計器室12を起点にして、機器13A~13E毎の交差線分103A~103Eが重複している重複線分104A、104Bを探索することで、重複線分104A、104Bを含む交差線分103A~103Eに対応する機器13A~13Eを機器グループ105A、105Bとして特定する。例えば、決定部202は、計器室12を起点に計器室12から離れるような方向を、機器グループ105A,105Bの探索方向として、重複線分104A、104Bの探索を進めていくことで、複数の機器グループ105A、105Bを順次特定する。図9の例では、決定部202により重複線分104A、104Bが探索された結果として、第1の重複線分104Aを含む3つの交差線分103A~103Cに対応する3つの機器13A~13Cが第1の機器グループ105Aとして特定され、第2の重複線分104Bを含む2つの交差線分103D、103Eに対応する2つの機器13D、13Eが第2の機器グループ105Bとして特定される。
【0054】
その際、決定部202は、重複線分を含む交差線分に対応する機器13の数が、端子スペア許容値を満たすように、重複線分を探索することで、機器グループを特定してもよい。図9において、例えば、中継器14の設置仕様として、二次側端子141の最大端子数(最大信号接続数でもよい)が5点の場合であって、端子スペア許容値が、スペア率50%又はスペア数3点である場合には、2つの機器13A、13Bが第1の機器グループとして特定され、2つの機器13C、13Dが第2の機器グループとして特定され、1つの機器13Eが第3の機器グループとして特定されてもよい。
【0055】
次に、決定部202は、図10に示すように、第1及び第2の機器グループ105A、105B毎に、第1及び第2の重複線分104A、104Bの内側に第1及び第2の中継器14A、14Bの設置位置P2をそれぞれ決定するとともに、第1の重複線分104Aを含む3つの交差線分103A~103Cに対応する3つの機器13A~13Cを第1の中継器14Aに接続し、第2の重複線分104Bを含む2つの交差線分103D、103Eに対応する2つの機器13D、13Eを第2の中継器14Bに接続するものとして、5つの機器13A~13Eの割当を決定する。本実施形態では、第1及び第2の中継器14A、14Bの設置位置P2は、第1及び第2の重複線分104A、104Bの中点に決定されるものとして説明するが、重複線分の内側であれば他の位置に決定されてもよい。
【0056】
その際、決定部202は、機器グループ毎に、重複線分を含む交差線分に対応する機器13の数が、端子スペア許容値を満たすように、中継器14の設置仕様を決定してもよい。図10において、例えば、中継器14の設置仕様として、二次側端子141の最大端子数(最大信号接続数でもよい)が、5点と、10点の2種類が存在する場合であって、端子スペア許容値が、スペア率50%又はスペア数3点である場合には、第1の機器グループ105Aに含まれる機器13A~13Cの数は、3つであるから、第1の機器グループ105Aに対する中継器14の設置仕様は、二次側端子141の最大端子数が10点の仕様に決定され、第2の機器グループ105Bに含まれる機器13D、13Eの数は、2つであるから、第2の機器グループ105Bに対する中継器14の設置仕様は、二次側端子141の最大端子数が5点の仕様に決定される。
【0057】
なお、二次側ケーブル16の長さについて、平面方向(X方向及びY方向)だけでなく、高さ方向(Z方向)についても考慮する場合には、決定部202は、中継器配線設計処理の第2の処理例(後述の図11参照)として、プラント10の配置図に対して機器13の設置位置P1を基準として、二次側ケーブル上限長さL1、機器13の設置高さZ1、中継器14の中継器設置可能高さZ2及び二次側ケーブル設置可能高さZ3により規定される仮想枠を機器13毎に配置するようにしてもよい。
【0058】
図11は、決定部202による中継器配線設計処理の第2の処理例を示す機能説明図である。第2の処理例では、二次側ケーブル16の長さについて高さ方向(Z方向)を考慮した点で第1の処理例と異なるものであり、その他の処理内容は共通する。なお、図11は、1つの機器13Aに対する仮想枠100Aを図示したものである。
【0059】
仮想枠100Aの形状が、ひし形である場合には、機器13の設置位置P1を中心とし、その中心から各点までの距離は、二次側ケーブル上限長さL1から、機器13の設置高さZ1と二次側ケーブル設置可能高さZ3との差分値(=|Z1-Z3|)と、中継器設置可能高さZ2と二次側ケーブル設置可能高さZ3との差分値(=|Z2-Z3|)とをそれぞれ減算した値(=L1-|Z1-Z3|-|Z2-Z3|)として規定される。これにより、中継器14の配線設計において、高さ方向の配線に必要な二次側ケーブル16の長さを反映することができる。
【0060】
中継器配線設計処理のその他の処理例として、決定部202は、信号の属性毎に、中継器14の設置位置と、機器13の割当とを決定するようにしてもよい。
【0061】
例えば、信号の属性として、管理システムを考慮する場合には、決定部202は、管理システム毎に、中継器14の設置位置と、機器13の割当とを決定する。本実施形態では、プロセス制御システム、緊急停止システム、及び、保安システムに対して中継器14を別々に設置することにより、プロセス制御システムに対する中継器14の設置位置と、その中継器14に対する、プロセス制御システムで使用する機器13の割当とを決定し、緊急停止システムに対する中継器14の設置位置と、その中継器14に対する、緊急停止システムで使用する機器13の割当とを決定し、保安システムに対する中継器14の設置位置と、その中継器14に対する、保安システムで使用する機器13の割当とを決定する。
【0062】
また、信号の属性として、信号種別を考慮する場合には、決定部202は、信号種別毎に、中継器14の設置位置と、機器13の割当とを決定する。本実施形態では、デジタル信号用及びアナログ信号用に対して中継器14を別々に設置することにより、デジタル信号用の中継器14の設置位置と、その中継器14に対する、デジタル信号を送受信する機器13の割当とを決定し、アナログ信号用の中継器14の設置位置と、その中継器14に対する、アナログ信号を送受信する機器13の割当とを決定する。
【0063】
さらに、決定部202は、一次側ケーブル15の経路と、二次側ケーブル16の経路とを決定するようにしてもよい。例えば、決定部202は、一次側ケーブル設置領域を通過するように、計器室12の設置位置と、中継器14の設置位置とを結ぶ経路を探索することで、一次側ケーブル15の経路を決定する。決定部202は、二次側ケーブル設置可能高さを満たすように、中継器14の設置位置と、中継器14に接続される機器13とを結ぶ二次側ケーブル16の経路を探索することで、二次側ケーブル16の経路を決定する。
【0064】
また、修正受付部200Aが、修正指示を受け付けたとき、決定部202は、その修正指示に基づいて、中継器14の設置位置及び機器13の割当を修正する。これにより、決定部202により決定された中継器14の設置位置及び機器13の割当を仮決めしたものとして、設計者30による修正指示を反映した状態で本決定することができる。なお、修正指示は、中継器14の設置仕様、一次側ケーブル15の経路及び二次側ケーブル16の経路のいずれかをさらに修正するものでもよく、その場合には、その修正指示に基づいて、それらの情報が修正される。
【0065】
さらに、更新受付部200Bが、更新指示及び変更禁止指示を受け付けたとき、決定部202は、その更新指示により更新された更新後のプラント設計情報50及び中継器配線設計条件60に基づいて、その変更禁止指示が指定する変更禁止範囲に該当しない中継器14の設置位置及び機器13の割当を再決定する。これにより、決定部202により中継器14の設置位置及び機器13の割当が決定された後に、例えば、機器13の追加、削除、変更等の設計変更が行われた場合に、中継器14の配線設計を全てやり直すのではなく、やり直しの対象を変更禁止範囲に該当しない部分だけに限定することで、設計変更による影響範囲を抑制することができる。
【0066】
情報出力部203は、決定部202による中継器配線設計処理により決定された中継器配線設計情報(例えば、中継器14の設置位置及び設置仕様、機器13の割当等)をプラント設計情報50に登録する。具体的には、情報出力部203は、中継器14の設置位置、一次側ケーブル15の経路、及び、二次側ケーブル16の経路を配線設計図504に登録する。また、情報出力部203は、中継器14の設置仕様、中継器14に接続される機器13の割当を配線ブロック図503に登録する。なお、プラント設計情報50に対する中継器配線設計情報の登録先は、上記の例に限られない。
【0067】
さらに、情報出力部203は、中継器配線設計情報を表示画面として表示するための表示画面情報を設計者端末装置3に送信し、その表示画面を介して設計者30による確認を促すようにしてもよい。そして、その表示画面を介して、修正受付部200Aが、修正指示を受け付けるようにしてもよいし、更新受付部200Bが、更新指示と、変更禁止指示とを受け付けるようにしてもよい。
【0068】
図12は、プラント設計支援装置2及び設計者端末装置3を構成するコンピュータ900の一例を示すハードウエア構成図である。
【0069】
プラント設計支援装置2及び設計者端末装置3の各々は、汎用又は専用のコンピュータ900により構成される。コンピュータ900は、図12に示すように、その主要な構成要素として、バス910、プロセッサ912、メモリ914、入力デバイス916、出力デバイス917、表示デバイス918、ストレージ装置920、通信I/F(インターフェース)部922、外部機器I/F部924、I/O(入出力)デバイスI/F部926、及び、メディア入出力部928を備える。なお、上記の構成要素は、コンピュータ900が使用される用途に応じて適宜省略されてもよい。
【0070】
プロセッサ912は、1つ又は複数の演算処理装置(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)、DSP(digital signal processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等)で構成され、コンピュータ900全体を統括する制御部として動作する。メモリ914は、各種のデータ及びプログラム930を記憶し、例えば、メインメモリとして機能する揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)と、不揮発性メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等とで構成される。
【0071】
入力デバイス916は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、電子ペン等で構成され、入力部として機能する。出力デバイス917は、例えば、音(音声)出力装置、バイブレーション装置等で構成され、出力部として機能する。表示デバイス918は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、プロジェクタ等で構成され、出力部として機能する。入力デバイス916及び表示デバイス918は、タッチパネルディスプレイのように、一体的に構成されていてもよい。ストレージ装置920は、例えば、HDD、SSD等で構成され、記憶部として機能する。ストレージ装置920は、オペレーティングシステムやプログラム930の実行に必要な各種のデータを記憶する。
【0072】
通信I/F部922は、インターネットやイントラネット等のネットワーク940(図1のネットワーク4と同じであってもよい)に有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って他のコンピュータとの間でデータの送受信を行う通信部として機能する。外部機器I/F部924は、カメラ、プリンタ、スキャナ、リーダライタ等の外部機器950に有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って外部機器950との間でデータの送受信を行う通信部として機能する。I/OデバイスI/F部926は、各種のセンサ、アクチュエータ等のI/Oデバイス960に接続され、I/Oデバイス960との間で、例えば、センサによる検出信号やアクチュエータへの制御信号等の各種の信号やデータの送受信を行う通信部として機能する。メディア入出力部928は、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、CD(Compact Disc)ドライブ等のドライブ装置、メモリカードスロット、USBコネクタで構成され、DVD、CD、メモリカード、USBメモリ等のメディア(非一時的な記憶媒体)970に対してデータの読み書きを行う。
【0073】
上記構成を有するコンピュータ900において、プロセッサ912は、ストレージ装置920に記憶されたプログラム930をメモリ914に呼び出して実行し、バス910を介してコンピュータ900の各部を制御する。なお、プログラム930は、ストレージ装置920に代えて、メモリ914に記憶されていてもよい。プログラム930は、インストール可能なファイル形式又は実行可能なファイル形式でメディア970に記録され、メディア入出力部928を介してコンピュータ900に提供されてもよい。プログラム930は、通信I/F部922を介してネットワーク940経由でダウンロードすることによりコンピュータ900に提供されてもよい。また、コンピュータ900は、プロセッサ912がプログラム930を実行することで実現する各種の機能を、例えば、FPGA(field-programmable gate array)、ASIC(application specific integrated circuit)等のハードウエアで実現するものでもよい。
【0074】
コンピュータ900は、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され、任意の形態の電子機器である。コンピュータ900は、クライアント型コンピュータでもよいし、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータでもよい。
【0075】
(プラント設計支援システム1の動作)
以下、プラント設計支援システム1による一連の動作について説明する。一連の動作は、プラント設計支援装置2の各部(プラント設計支援プログラム210により実行されるプラント設計方法の各工程)と、設計者端末装置3とが連携することで実行される。
【0076】
図13及び図14は、プラント設計支援システム1の動作の一例を示すフローチャートである。以下では、プラント設計データベース5及び設計条件データベース6の情報は事前に登録済みであるものとして説明する。
【0077】
まず、ステップS100にて、設計者端末装置3は、例えば、表示画面上にて設計者30により行われた入力操作として、中継器14の配線設計の対象となるプラント10の選択指示と、中継器配線設計処理の実行指示とが入力されると、それら選択指示及び実行指示に関する指示情報をプラント設計支援装置2に送信する。
【0078】
次に、ステップS110にて、プラント設計支援装置2の指示受付部200は、その指示情報を受信することで、選択指示及び実行指示を受け付ける。
【0079】
次に、ステップS120にて、情報取得部201は、プラント設計データベース5及び設計条件データベース6を参照し、ステップS110にて受け付けられた選択指示及び実行指示に係るプラント設計情報50及び中継器配線設計条件60を取得する。
【0080】
次に、ステップS130にて、決定部202は、ステップS120にて取得されたプラント設計情報50及び中継器配線設計条件60に基づいて、中継器配線設計処理を行う。
【0081】
図15は、決定部202による中継器配線設計処理(ステップS130)の詳細を示すフローチャートである。まず、ステップS1300にて、決定部202は、複数の機器13を、各機器13が接続される接続先の計器室12にて分類する。なお、計器室12が1つの場合には、ステップS131は省略される。次に、ステップS1301にて、複数の機器13を、機器信号の信号種別(アナログ信号又はデジタル信号)にて分類し、ステップS1302にて、複数の機器13を、管理システムのシステム種別(プロセス制御システム、緊急停止システム又は保安システム)にて分類する。なお、中継器配線設計条件60において、同一の中継器14に対して割当不可能な設計要求がさらに定められている場合には、その設計要求に基づいて複数の機器13を分類するステップがさらに追加されてもよい。
【0082】
次に、ステップS1310にて、一次側ケーブル設置領域において、中継器14が設置可能なダクト辺(図8乃至図10の外形線101に対応)を特定する。なお、ダクト辺の位置は、設計者30の入力操作として、設計者端末装置3から受け付けてもよい。
【0083】
そして、ステップS1320にて、決定部202は、ステップS1300~S1302でそれぞれ分類された複数の機器群から、処理対象の機器群を順次選択し、ステップS1330~S1334を繰り返すループ処理を行うことで、機器群の各々に対して、中継器14の設置位置及び設置仕様と、中継器14に接続される機器13の割当とを決定する。ここでは、ステップS1330~S1334に、第1の処理例(図8乃至図10参照)を適用した場合について説明するが、第2の処理例を適用してもよい。
【0084】
ステップS1330にて、決定部202は、図8に示すように、プラント10の配置図に対して、処理対象の機器群に含まれる機器13の設置位置P1を基準として、二次側ケーブル上限長さL1により規定される、例えば、ひし形状の仮想枠100(100A~100E)を機器13毎に配置する。
【0085】
次に、ステップS1331にて、決定部202は、一次側ケーブル設置領域におけるダクト辺に対応する外形線101と仮想枠100とが交差する2つの交点102(102A~102E)を特定し、その2つの交点102同士を結ぶ交差線分103(103A~103E)を機器13毎に生成する。
【0086】
次に、ステップS1332にて、決定部202は、図9に示すように、計器室12を起点にして、機器13毎の交差線分103が重複している重複線分104(104A、104B)を探索することで、重複線分104を含む交差線分103に対応する機器13を機器グループ105(105A、105B)として特定する。
【0087】
次に、ステップS1333にて、決定部202は、図10に示すように、機器グループ105毎に、重複線分104の内側(本実施形態では、重複線分104の中点)に中継器14の設置位置P2を決定するとともに、重複線分104を含む交差線分103に対応する機器13を中継器14に接続するものとして、機器13の割当を決定する。
【0088】
次に、ステップS1334にて、決定部202は、機器グループ105毎に、重複線分104を含む交差線分103に対応する機器13の数が、端子スペア許容値を満たすように、中継器14の設置仕様を決定する。
【0089】
そして、ステップS1320によるループ処理を行うことにより、計器室毎、信号種別毎、及び、システム種別毎に分類された機器群毎に、各中継器14の設置位置及び設置仕様と、各中継器14に対する機器13の割当とを決定し、図15に示す一連の中継器配線設計処理を終了する。
【0090】
次に、図13に示すステップS140にて、情報出力部203は、ステップS130の中継器配線設計にて決定された中継器配線設計情報(例えば、中継器14の設置位置及び設置仕様、機器13の割当等)をプラント設計情報50に登録する。そして、ステップS141にて、情報出力部203は、その中継器配線設計情報を表示画面として表示するための表示画面情報を設計者端末装置3に送信する。その際、情報出力部203は、中継器14の設置台数の合計値、一次側ケーブル15及び二次側ケーブル16の合計本数、一次側ケーブル15及び二次側ケーブル16の各ケーブル長さ、各ケーブル長さを合計した合計値を算出し、その算出した結果を中継器配線設計情報や表示画面情報に含ませるようにしてもよい。
【0091】
次に、ステップS150にて、設計者端末装置3は、その表示画面情報を受信すると、その表示画面情報に基づいて、中継器配線設計情報を表示画面上に表示する。
【0092】
そして、図14に示すステップS160にて、中継器配線設計情報を確認した設計者30の入力操作として、中継器14の設置位置及び機器13の割当の少なくとも一方のうち一部の情報を修正する修正指示が設計者端末装置3に入力された場合には、ステップS161にて、修正受付部200Aが、その修正指示を受け付ける。次に、ステップS162にて、決定部202は、その修正指示に基づいて、中継器14の設置位置及び機器13の割当を修正する。そして、その修正後の中継器配線設計情報は、ステップS140と同様に、情報出力部203によりプラント設計情報50に登録される。
【0093】
また、ステップS170にて、中継器配線設計情報を確認した設計者30の入力操作として、プラント設計情報50及び中継器配線設計条件60の少なくとも一方のうち一部の情報を更新する更新指示と、中継器配線設計情報のうち情報の変更を禁止とする変更禁止範囲を指定する変更禁止指示とが入力された場合には、ステップS171にて、更新受付部200Bが、その更新指示及び変更禁止指示を受け付ける。そして、ステップS172にて、決定部202は、その更新指示及び変更禁止指示に基づいて、更新後のプラント設計情報50及び中継器配線設計条件60に基づいて、その変更禁止指示が指定する変更禁止範囲に該当しない中継器14の設置位置及び機器13の割当を再決定する。そして、その再決定後の中継器配線設計情報は、ステップS140と同様に、情報出力部203によりプラント設計情報50に登録される。さらに、ステップS141と同様に、情報出力部203によりその再決定後の中継器配線設計情報を表示画面として表示するための表示画面情報が設計者端末装置3に送信されてもよい。
【0094】
上記の一連の処理において、ステップS110、S161、S171が指示受付工程、ステップS120が情報取得工程、ステップS130、S162、S172が決定工程、ステップS140が情報出力工程にそれぞれ相当する。
【0095】
以上のように、プラント設計支援装置2によれば、決定部202が、プラント設計情報50及び中継器配線設計条件60に基づいて、配置図における中継器14の設置位置と、中継器14に接続される機器13の割当とを決定するので、多くの現場工事の経験や高度な設計スキルを要することなく、中継器14の配線設計を適切に実施することができる。
【0096】
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【0097】
上記実施形態では、プラント設計支援装置2が備える各部の機能は、1つの装置で実現されるものとして説明したが、各部の機能が複数の装置に分散されることで複数の装置で実現されてもよい。また、設計者端末装置3の制御部が、プラント設計支援プログラム210を実行することで、プラント設計支援装置2として機能するようにしてもよい。
【0098】
上記実施形態では、プラント設計支援システム1が、図13乃至図15に示すフローチャートに従って動作する場合について説明したが、各ステップの実行順序を適宜変更してもよいし、一部のステップを省略してもよい。
【0099】
上記実施形態では、プラント設計支援装置2が、1つの中継器配線設計条件60に対して中継器配線設計処理を行うものとして説明したが、複数の中継器配線設計条件60(例えば、二次側ケーブル上限長さや端子スペア許容値を変更したもの)に対して中継器配線設計処理をそれぞれ行うようにしてもよい。その場合には、プラント設計支援装置2が、中継器配線設計処理にてそれぞれ決定された複数の中継器配線設計情報を設計者30に出力し、設計者30にて比較検討するようにしてもよいし、プラント設計支援装置2が、中継器配線設計処理にてそれぞれ決定された複数の中継器配線設計情報を所定の基準(中継器14の設置台数の合計値、一次側ケーブル15及び二次側ケーブル16の合計本数、各ケーブル長さ、各ケーブル長さの合計値等)で比較することで、最適な中継器配線設計情報を出力するようにしてもよい。
【0100】
上記実施形態では、決定部202による中継器配線設計処理(ステップS130)について詳細な処理内容を説明したが、その処理内容は適宜変更してもよい。以下、中継器配線設計処理における第1乃至第6の変形例について説明する。
【0101】
(第1の変形例)
図16は、中継器配線設計処理の第1の変形例を示す機能説明図である。第1の変形例では、ステップS1331にて、決定部202が、一次側ケーブル設置領域の外形線101と、仮想枠100とが交差する2つの交点102同士を結ぶことで交差線分103を機器13毎に生成する際、図16に示す機器13F、13Gのように、交差線分103F、103Gを一次側ケーブル設置領域の外形線101に沿って生成する。そのため、機器13Gに対する交差線分103Gは、図16に示すように、外形線101の角部分に沿うように2つの交点102Gが結ばれることで折れ線状に生成される。なお、外形線101が湾曲部分を有する場合には、交差線分103は、湾曲状に生成されてもよい。また、図16の例では、重複線分104Cは、直線状に生成されているが、複数の交差線分103が角部分や湾曲部分で重複している場合には、重複線分104Cについても折れ線状や湾曲状に生成されてもよい。
【0102】
これにより、プロットプラン図500において、図16に示す機器13Gのように、機器13Gの上下方向及び左右方向に一次側ケーブル設置領域が存在しない場合でも、交差線分103Gが一次側ケーブル設置領域の外形線101に沿って生成されることで、機器13Gに対する中継器14Cの設置位置P2が決定される。したがって、プロットプラン図500において、機器13の設置位置の自由度を向上することができる。
【0103】
(第2の変形例)
図17は、中継器配線設計処理の第2の変形例を示す機能説明図である。上記実施形態では、ステップS1331にて、交差線分103は、一次側ケーブル設置領域の外形線101と、仮想枠100とが交差する2つの交点102同士を結ぶことで生成されるものとして説明した。その際、交差線分103は、機器13と同じ側に位置する一次側ケーブル設置領域の外形線101と、仮想枠100とが交差する交点(同じ側の交点)同士を結ぶことで機器13と同じ側に生成されてもよいし、機器13と反対側に位置する一次側ケーブル設置領域の外形線101と、仮想枠100とが交差する交点(反対側の交点)同士を結ぶことで機器13と反対側に生成されてもよい。その結果として、中継器14の設置位置P2は、機器13に対して一次側ケーブル設置領域と同じ側に決定されてもよいし、機器13に対して一次側ケーブル設置領域と反対側に決定されてもよい。
【0104】
第2の変形例では、機器13に対して一次側ケーブル設置領域の反対側に位置する中継器14に当該機器13が接続されることを許可するか否かを示す中機器接続設定が、中継器配線設計条件60に記録される。そして、決定部202は、中機器接続設定にて一次側ケーブル設置領域の反対側に接続されることが許可されている場合、機器13に対して一次側ケーブル設置領域の同じ側又は反対側に位置する中継器14に接続されるように、中継器14の設置位置と、機器13の割当とを決定する。また、決定部202は、中機器接続設定にて一次側ケーブル設置領域の反対側に接続されることが許可されていない場合、機器13に対して一次側ケーブル設置領域の同じ側に位置する中継器14だけに接続されるように、中継器14の設置位置と、機器13の割当とを決定する。
【0105】
例えば、中機器接続設定にて一次側ケーブル設置領域の反対側に接続されることが許可されている場合には、決定部202は、図17に示すように、機器13Jと反対側に位置する一次側ケーブル設置領域の外形線101と、仮想枠100とが交差する2つの交点102J同士を結ぶことで、機器13Jと反対側に交差線分103Jを生成する。これにより、機器13Jは、図17に示すように、一次側ケーブル設置領域の反対側に位置する中継器14Dに接続されるように割り当てられる。そして、機器13Jに対する二次側ケーブル16は、一次側ケーブル設置領域を跨ぐようにして設置される。したがって、中継器14の設置台数を抑制することができる。
【0106】
(第3の変形例)
図18は、中継器配線設計処理の第3の変形例を示す機能説明図である。第3の変形例では、ステップS1333にて、決定部202が、機器グループ105毎に重複線分104の内側に中継器14の設置位置P2を決定する際、機器グループ105に含まれる複数の機器13を中継器14にそれぞれ接続したときの二次側ケーブル16の長さを合計した合計値に基づいて、中継器14の設置位置P2を決定する。そのため、図18に示す機器13A~13Cに対する中継器14Eの設置位置P2は、図10に示す中継器14Aの設置位置P2(重複線分104Aの中点)に比較して、機器13C側に設置される。なお、決定部202は、二次側ケーブル16の各ケーブル長さを合計した合計値が短くなるように中継器14の設置位置P2を決定してもよい。さらに、決定部202は、その合計値が最小値となるように中継器14の設置位置P2を決定してもよい。
【0107】
これにより、中継器14の設置位置P2が、二次側ケーブル16の各ケーブル長さを合計した合計値が考慮されて決定される。したがって、二次側ケーブル16の全体の使用量を低減することができる。
【0108】
(第4の変形例)
図19は、中継器配線設計処理の第4の変形例を示す機能説明図である。第4の変形例では、一次側ケーブル設置領域のうち、中継器14を設置することを禁止する領域を示す中継器設置禁止領域106が、例えば、プロットプラン図500に記録される。そして、決定部202は、その中継器設置禁止領域106を除外した一次側ケーブル設置領域に対して中継器14の設置位置P2を決定する。
【0109】
具体的には、ステップS1331にて、決定部202が、交差線分103を機器13毎に生成する際、図19に示すように、中継器設置禁止領域106を除外した一次側ケーブル設置領域の外形線101と、仮想枠100K~100Mとが交差する2つの交点102K~102Mを特定し、その2つの交点102K~102M同士を結ぶ交差線分103K~103Mを生成する。図19の例では、機器13K、13Lに対する交差線分103K、103Lが、中継器設置禁止領域106の端部(交点102K、102L)までに制限されて生成される。
【0110】
これにより、交差線分103K、103Lに重複する重複線分104Gが、図19に示すように、中継器設置禁止領域106を含まないように探索されるので、中継器14Gの設置位置P2は、中継器設置禁止領域106を避けて決定される。したがって、例えば、一次側ケーブル15が地下に埋設されるような領域を中継器設置禁止領域106として扱うことにより、そのような中継器設置禁止領域106に中継器14の設置位置P2が決定されることを防止することができる。
【0111】
(第5の変形例)
図20は、中継器配線設計処理の第5の変形例を示す機能説明図である。上記実施形態では、その他の処理例として、決定部202が、信号の属性毎に、中継器14の設置位置P2と、機器13の割当とを決定するものとして説明した。第5の変形例では、一次側ケーブル設置領域に対して設置可能な信号の属性を示す設置可能信号属性が、例えば、プロットプラン図500に記録される。そして、決定部202は、一次側ケーブル設置領域に対して設定された設置可能信号属性が示す信号の属性に対応する一次側ケーブル15がその一次側ケーブル設置領域に設置されるように、中継器14の設置位置P2と、機器13の割当とを決定する。
【0112】
例えば、信号の属性として、管理システムを考慮する場合には、決定部202は、設置可能信号属性としてプロセス制御システムが設定された一次側ケーブル設置領域(外形線101A)に対して、プロセス制御システムで使用する機器13N、13Pが二次側ケーブル16で接続されるように、プロセス制御システムに対する中継器14Hの設置位置P2を決定する。そして。決定部202は、設置可能信号属性として緊急停止システムが設定された一次側ケーブル設置領域(外形線101B)に対して、緊急停止システムで使用する機器13Q、13Rが二次側ケーブル16で接続されるように、緊急停止システムに対する中継器14Iの設置位置P2を決定する。
【0113】
また、信号の属性として、信号種別を考慮する場合には、決定部202は、設置可能信号属性としてデジタル信号用が設定された一次側ケーブル設置領域(外形線101A)に対して、デジタル信号を送受信する機器13N、13Pが二次側ケーブル16で接続されるように、デジタル信号用の中継器14Hの設置位置P2を決定する。そして。決定部202は、設置可能信号属性としてアナログ信号用が設定された一次側ケーブル設置領域(外形線101A)に対して、アナログ信号を送受信する機器13Q、13Rが二次側ケーブル16で接続されるように、アナログ信号用の中継器14Iの設置位置P2を決定する。
【0114】
これにより、中継器14の設置位置P2と、機器13の割当とが、一次側ケーブル設置領域に対して設置可能信号属性で設定された特定の信号の属性に対応する一次側ケーブル15が設置されるように決定される。したがって、設置可能信号属性が設定された一次側ケーブル設置領域に対して、その設置可能信号属性とは異なる信号の属性に対応する中継器14が設置されたり、機器13が割り当てられたりすることを防止することができる。
【0115】
(第6の変形例)
図21は、中継器配線設計処理の第6の変形例を示す機能説明図である。第6の変形例では、二次側ケーブル16を設置することが禁止された領域を示す二次側ケーブル設置禁止領域107が、例えば、プロットプラン図500に記録される。そして、決定部202は、その二次側ケーブル設置禁止領域107を二次側ケーブル16が通過しないように、中継器14の設置位置P2を決定する。
【0116】
具体的には、ステップS1331にて、決定部202が、交差線分103を機器13毎に生成する際、交差線分103のうち、二次側ケーブル16を設置したときに二次側ケーブル設置禁止領域107を通過する線分を除外することにより交差線分103S~103Vを生成する。図21の例では、機器13Uに対する交差線分103Uが、二次側ケーブル設置禁止領域107の端部(交点102U)までに制限される。
【0117】
これにより、交差線分103Uに重複する重複線分104Kが、図21に示すように、二次側ケーブル設置禁止領域107に重ならないように探索されるので、機器13Uに対する二次側ケーブル16を設置したときの経路が、二次側ケーブル設置禁止領域107を避けて決定される。したがって、例えば、二次側ケーブル16を設置することが困難な障害物が存在したり、近接する複数の機器13が同じ中継器14に接続されないように、2つの中継器14に別々に接続したりするような場合に、実際の障害物や仮想的な障害物を二次側ケーブル設置禁止領域107として扱うことにより、そのような二次側ケーブル設置禁止領域107を通過するように、二次側ケーブル16の経路が決定されることを防止することができる。
【符号の説明】
【0118】
1…プラント設計支援システム、2…プラント設計支援装置、
3…設計者端末装置、4…ネットワーク、
5…プラント設計データベース、6…設計条件データベース、
10…プラント、11…設備、12…計器室、
13、13A~13W…機器、14、14A~14K…中継器、
15…一次側ケーブル、16…二次側ケーブル、
20…制御部、21…記憶部、22…通信部、
23…入力部、24…表示部、50…プラント設計情報、
51…部品マスタ情報、60…中継器配線設計条件、
100A~100W…仮想枠、101…外形線、
102A~102W…交点、103A~103W…交差線分、
104A~104K…重複線分、
105A、105B…機器グループ、
106…中継器設置禁止領域、107…二次側ケーブル設置禁止領域、
140…一次側端子、141…二次側端子、
200…指示受付部、200A…修正受付部、
200B…更新受付部、201…情報取得部、202…決定部、
203…情報出力部、210…プラント設計支援プログラム、
500…プロットプラン図、501…P&ID図、
502…I/Oリスト、503…配線ブロック図、504…配線設計図
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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