(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20240708BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240708BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240708BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W30/10
B60W60/00
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020190110
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】濱田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】西條 友馬
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山下 良幸
(72)【発明者】
【氏名】辻 雄太
(72)【発明者】
【氏名】宇江田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】大倉 崇暢
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一貴
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-163984(JP,A)
【文献】国際公開第2020/157533(WO,A1)
【文献】特開2015-045622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00
B60W 60/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサにより路端の位置を検出し、当該路端に車両を寄せて停車させる車両制御システムであって、
前記車両の前方を撮影するカメラと、
前記車両の周辺を走査して被測定物の位置を測定するレーダと、
前記カメラにより撮影された画像及び前記レーダにより測定された被測定物の位置情報に基づき、前記車両を路端に寄せて停車させるために当該車両の操舵装置及び制動装置の制御を行うよう構成されたコントローラと、
を有し、
前記コントローラは、
前記カメラにより撮影された画像に基づき、前記路端上の複数位置の座標を取得し、
前記レーダにより測定された被測定物の位置情報に基づき、前記路端上の複数位置の座標を取得し、
前記カメラにより撮影された画像に基づき取得した前記路端上の複数位置の座標と、前記レーダにより測定された被測定物の位置情報に基づき取得した前記路端上の複数位置の座標とを組み合わせて、前記路端上の複数位置の座標点列を生成し、
前記座標点列に前記車両が接近するように前記操舵装置を制御し、
前記座標点列に前記車両が接近した後に前記車両が停止するように、前記制動装置を制御するように構成されている、
ことを特徴とする車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システムに係わり、特に、センサにより路端の位置を検出し、路端に車両を寄せて停車させる車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者が安全に運転できない状態に陥った場合に、運転者の異常を自動的に検出したり乗員が非常ボタンを押したりすることにより、車両を安全に停止させる車両制御システムの開発が進められている。例えば、特許文献1には、運転者の意識レベルが低下した場合に、交差点内や路肩等の目標停止位置を決定し、その目標停止位置に自車両を停止させる緊急退避システムが開示されている。この特許文献1に記載されているような従来の技術においては、ミリ波センサによりガードレール、防音壁、縁石等の障害物を検出し、前方カメラセンサにより白線等の道路標示を検出して、車両の目標停止位置の決定に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムのような従来の技術において障害物や道路標示の検出に用いられる各種センサは、それぞれ長所と短所がある。例えば、前方カメラセンサとして単眼カメラを用いる場合、自車両から対象物への角度は正確に検出することができるが、対象物までの距離は比較的誤差が大きい。一方、ミリ波センサは、自車両から対象物までの距離は比較的正確に検出することができるが、電波の回折等に起因して自車両から対象物への角度に誤差が生じることがある。したがって、緊急時に車両を路端に寄せて停車させるために路端の位置を検出するには、センサを利用した路端検出の信頼性を向上する必要がある。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、路端に車両を寄せて停車させるときに信頼性の高い路端位置を取得できる、車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の車両制御システムは、センサにより路端の位置を検出し、当該路端に車両を寄せて停車させる車両制御システムであって、車両の前方を撮影するカメラと、車両の周辺を走査して被測定物の位置を測定するレーダと、カメラにより撮影された画像及びレーダにより測定された被測定物の位置情報に基づき、車両を路端に寄せて停車させるために当該車両の操舵装置及び制動装置の制御を行うよう構成されたコントローラと、を有し、コントローラは、カメラにより撮影された画像に基づき、路端上の複数位置の座標を取得し、レーダにより測定された被測定物の位置情報に基づき、路端上の複数位置の座標を取得し、カメラにより撮影された画像に基づき取得した路端上の複数位置の座標と、レーダにより測定された被測定物の位置情報に基づき取得した路端上の複数位置の座標とを組み合わせて、路端上の複数位置の座標点列を生成し、座標点列に車両が接近するように操舵装置を制御し、座標点列に車両が接近した後に車両が停止するように、制動装置を制御するように構成されている、ことを特徴とする。
このように構成された本発明においては、コントローラは、カメラ及びレーダのそれぞれによる路端の座標を組み合わせた座標点列に車両を接近させるので、より道路側に突出している座標に接触しないように車両を路端に接近させることができる。したがって、カメラ及びレーダのそれぞれによる路端の座標がそれぞれ誤差を含んでいても、車両を過剰に路端に接近させてしまうことがない。つまり、信頼性の高い路端位置を取得することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明による車両制御システムによれば、路端に車両を寄せて停車させるときに信頼性の高い路端位置を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態による車両制御システムが適用された車両の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態による車両制御システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態による車両制御システムが実行する自動停車処理のフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態による車両制御システムが自動停車処理を実行した場合に検出された路端座標の点列を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態による車両制御システムが自動停車処理を実行した場合の仮想線及び車両の動きを示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態による車両制御システムが自動停車処理を実行した場合の仮想線の横方向移動速度の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両制御システムを説明する。
【0010】
<システム構成>
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態による車両制御システムが適用された車両の全体構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両制御システムが適用された車両の概略構成図である。
図2は、本発明の実施形態による車両制御システムの電気的構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、符号1は、本実施形態による車両制御システムが適用された車両を示す。この車両1は、駆動力を発生するエンジン31、車両1を制動するブレーキ32、及び電動パワーステアリング33を有している。また、車両1には、車両1の前方を撮影するカメラ21、及び車両1の周辺の障害物を検出するレーダ22が設けられている。
【0012】
さらに、
図2に示すように、車両1には、車速を検出する車速センサ23、車両1の進行方向の加速度を検出する加速度センサ24、車両1のヨーレートを検出するヨーレートセンサ25、車両1の舵角を検出する舵角センサ26、アクセルペダルの操作(例えばアクセル開度)を検出するアクセルセンサ27、ブレーキペダルの操作(例えばブレーキペダルの踏み込み量)を検出するブレーキセンサ28、車両1の位置を検出する測位システム29、及びナビシステム30が設けられている。カメラ21が撮影した画像データ、レーダ22が検出した障害物の位置情報、測位システム29により取得された位置情報、ナビシステム30から取得された非常駐車帯の位置等に関する情報、及び各センサにより検出された検出データは、コントローラ10に出力される。
【0013】
カメラ21は、車両1の周囲を撮影し、画像データを出力する。コントローラ10は、カメラ21から受信した画像データに基づいて、対象物(例えば、道路の区画線(例えば車線境界線、車道外側線、車両通行帯最外側線等を含む白線や黄線等)、路端(道路とそれ以外の物との境界、例えば舗装と土との境界、ガードレール、縁石等)、他車両、歩行者、信号、標識、停止線、交差点、障害物等)を特定する。
【0014】
レーダ22は、対象物(特に、路端(道路とそれ以外の物との境界、例えば舗装と土との境界、ガードレール、縁石等)他車両、歩行者、障害物等)の位置及び速度を測定する。レーダ22として、例えばミリ波レーダを用いることができる。レーダ22は、車両1の周辺に電波を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両1から対象物までの方向及び距離や、車両1と対象物との相対速度を測定する。なお、このようなレーダ22に代えて、レーザレーダや超音波センサ等を用いて対象物との距離や相対速度を測定してもよい。
【0015】
図2に示すように、コントローラ10には、カメラ21が撮影した画像データ、レーダ22が検出した障害物の位置情報、測位システム29により取得された位置情報、ナビシステム30から取得された非常駐車帯の位置等に関する情報、及び各センサ23~28により検出された検出データが入力されるようになっている。
【0016】
コントローラ10は、1つ以上のプロセッサ10a(典型的にはCPU)と、当該プロセッサ上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如きメモリ10bと、を備えるコンピュータにより構成される。
【0017】
具体的には、コントローラ10は、カメラ21が撮影した画像データ、レーダ22が検出した障害物の位置情報、測位システム29により取得された位置情報、ナビシステム30から取得された非常駐車帯の位置等に関する情報、及び各センサ23~28により検出された検出データに基づき、主に、エンジン31、ブレーキ32及び電動パワーステアリング33に対して制御信号を出力し、これらを制御する。例えば、コントローラ10は、エンジン31の点火時期、燃料噴射時期、燃料噴射量を調整するために、エンジン31の点火プラグや燃料噴射弁やスロットル弁などを制御する。また、コントローラ10は、ブレーキ32に制動力を発生させるために、例えばブレーキ32の液圧ポンプやバルブユニットなどを制御する。また、コントローラ10は、車両1の進行方向を変更するために、電動パワーステアリング33のモータなどを制御する。
【0018】
<車両の制御>
次に、
図3乃至
図6により、車両制御システムが行う車両1の自動停車処理について説明する。
図3は、本発明の実施形態による車両制御システムが実行する自動停車処理のフローチャートである。
図4は、本発明の実施形態による車両制御システムが自動停車処理を実行した場合に検出された路端座標の点列を示す平面図である。
図5は、本発明の実施形態による車両制御システムが自動停車処理を実行した場合の仮想線及び車両の動きを示す平面図である。
図6は、本発明の実施形態による車両制御システムが自動停車処理を実行した場合の仮想線の横方向移動速度の変化を示すタイムチャートである。
【0019】
図3の自動停車処理は、車両1が路端に隣接する車線を所定車速(例えば20km/h)以下で走行している場合に、車両1を走行中の車線から路端に寄せて停車させる処理である。例えば、高速道路の追い越し車線を走行中に、車両1に設けられた非常ボタンが押されたり、ドライバモニタリングシステムによりドライバの異常が検知されたりした場合、コントローラ10は既知の自動運転制御により路端に隣接する車線まで車両1を車線変更させ、その車線内を走行しながら所定車速まで車両1を減速させる。その後、
図3の自動停車処理が起動され、コントローラ10によって実行される。
【0020】
図3に示すように、自動停車処理が開始されると、ステップS11において、コントローラ10は、上述したカメラ21が撮影した画像データ、レーダ22が検出した障害物の位置情報、測位システム29により取得された位置情報、ナビシステム30から取得された非常駐車帯の位置等に関する情報、及び各センサ23~28により検出された検出データに対応する情報も含めて、車両1の種々の情報を取得する。
【0021】
次に、ステップS12において、コントローラ10は、ステップS11においてカメラ21から入力された画像データに基づき、車両1が走行している道路の区画線を検出する。
図4及び
図5に示した例では、コントローラ10は、区画線OL(車道外側線)、区画線BL(車線境界線)を検出する。
【0022】
次に、ステップS13において、コントローラ10は、ステップS11においてカメラ21から入力された画像データに基づき、車両1を寄せる側(左側通行の道路を走行している場合は車両1の左側)にある路端上の複数位置の座標を取得する。例えば、コントローラ10は、画像データの輝度に基づき、路端を形成する縁石のエッジを検出する。そして、車両1の現在位置を基準点とする平面座標における、エッジ上の複数位置の座標を取得する。カメラ21がステレオカメラである場合には、路端上の複数位置の座標をリアルタイムで取得することができる。また、カメラ21が単眼カメラである場合には、車両1の走行に伴うカメラ21の視点位置の変化を利用して、路端上の複数位置の座標を三角測量の原理により算出することができる。ここで取得された路端上の複数位置の座標を
図4(a)に示している。この
図4(a)の例では、カメラ21の画像データに基づき取得した路端E上の複数位置の座標を黒丸により示している。
【0023】
次に、ステップS14において、コントローラ10は、ステップS11においてレーダ22から入力された障害物の位置情報に基づき、車両1を寄せる側(左側通行の道路を走行している場合は車両1の左側)にある路端E上の複数位置の座標を取得する。例えば、コントローラ10は、レーダ22が受信した反射波の強度や送信波との位相差などに基づき、路端を形成する縁石のエッジを検出する。そして、車両1の現在位置を基準点とする平面座標における、エッジ上の複数位置の座標を取得する。
図4(a)の例では、レーダ22のデータに基づき取得した路端E上の複数位置の座標を黒四角により示している。
【0024】
次に、ステップS15において、コントローラ10は、ステップS13においてカメラ21の画像データに基づき取得した路端E上の複数位置の座標と、ステップS14においてレーダ22のデータに基づき取得した路端E上の複数位置の座標とを組み合わせて、路端E上の複数位置の座標点列を生成する。ここで生成した路端E上の複数位置の座標点列を
図4(b)において白抜き三角により示している。
【0025】
次に、ステップS16において、コントローラ10は、車両1の側方から前方に向かって、ステップS12において検出した区画線に沿って延びる左右一対の仮想線を生成する。ここで生成される左右一対の仮想線の例を
図5(a)に示している。この
図5(a)の例では、コントローラ10は、車両1が走行している車線の進行方向左側(つまり路端Eに近い側)の区画線OL(車道外側線)に重なるように左仮想線IL
L(太実線により示す)を生成し、車両1が走行している車線の進行方向右側(つまり路端Eから遠い側)の区画線BL(車線境界線)に重なるように右仮想線IL
R(破線により示す)を生成する。
【0026】
次に、ステップS17において、コントローラ10は、左右一対の仮想線の中間を車両1が走行するように電動パワーステアリング33の制御を開始する。ステップS16において左右一対の仮想線が生成された状態を示す
図5(a)の例では、コントローラ10は、左仮想線IL
Lと右仮想線IL
Rとの間隔の中間を目標走行軌跡TP(一点鎖線により示す)とする。そして、車両1が目標走行軌跡TPに沿って走行するように、電動パワーステアリング33による操舵アシストトルクを決定し、電動パワーステアリング33のモータなどを制御する。
【0027】
次に、ステップS18において、コントローラ10は、左仮想線ILLを路端Eに向かって平行移動させ、次いで、ステップS19において、左仮想線ILLを、ステップS15において生成した路端E上の複数位置の座標点列のうち道路側に最も突出している座標に近接する位置まで移動させて当該位置に固定する。
【0028】
図5の例では、
図5(a)に示すように路端Eに最も近い区画線OLに重なっていた左仮想線IL
Lが、
図5(b)に示すように路端Eの方へ移動し、路端E上の複数位置の座標点列のうち道路側に最も突出している座標Pに近接する位置で固定される。「座標Pに近接する位置」は、座標Pから路肩の幅方向に道路側へ所定距離M離れた位置である。所定距離Mは、車両1と路端Eとの間を人が通るために必要な間隔等を考慮して決定することができ、例えばM=0.2mである。左仮想線IL
Lの移動に伴い、左仮想線IL
Lと右仮想線IL
Rとの間隔の中間に設定される目標走行軌跡TPも路端Eの方へ移動する。このときの目標走行軌跡TPの移動速度は、左仮想線IL
Lの移動速度プロファイルの1/2の速度となる。
【0029】
図6は、仮想線の横方向移動速度の変化(速度プロファイル)を示すタイムチャートである。この
図6において、横軸は時間を示し、縦軸は仮想線の横方向移動速度を示す。横軸におけるT0は左仮想線IL
Lの移動開始時刻、T1は左仮想線IL
Lの移動終了時刻及び右仮想線IL
Rの移動開始時刻、T2は右仮想線IL
Rの移動終了時刻を示している。この
図6において、左仮想線IL
Lの速度プロファイルは曲線G11により示されている。即ち、速度プロファイルG11によれば、左仮想線IL
Lは、時刻T0において移動を開始した後、徐々に速度を上げながら路端Eの方へ移動する。その後、左仮想線IL
Lが路端Eに近づくにつれて移動速度の上昇率は低下し、時刻T1において移動速度が最大値になると共に、左仮想線IL
Lは路端E上の複数位置の座標点列のうち道路側に最も突出している座標Pに近接する位置に到達し、その位置で固定される(
図5(b)の状態)。即ち左仮想線IL
Lの移動速度は0になる。
【0030】
上述したように、左仮想線IL
Lの移動に伴い、左仮想線IL
Lと右仮想線IL
Rとの間隔の中間に設定される目標走行軌跡TPは左仮想線IL
Lの速度プロファイルの1/2の速度で移動する。即ち、
図6において、目標走行軌跡TPの速度プロファイルは、速度プロファイルG11の1/2の速度である曲線G31により表されている。つまり、目標走行軌跡TPは、時刻T0において移動を開始した後、徐々に速度を上げながら路端Eの方へ移動する。その後、左仮想線IL
Lが路端Eに近づくにつれて移動速度の上昇率は低下し、時刻T1において移動速度が最大値になる。
【0031】
ステップS19の後、ステップS20に進み、コントローラ10は、右仮想線IL
Rを路端E側に向かって平行移動させ、次いで、ステップS21において、右仮想線IL
Rを、左仮想線IL
Lから車両1の車幅分だけ離れた位置(つまり車両1の路端Eとは反対側の側面の位置)に固定する。
図5の例では、
図5(a)及び
図5(b)に示すように車両1の路端Eとは反対側に隣接する区画線BLに重なっていた右仮想線IL
Rが、
図5(c)に示すように路端Eの方へ移動し、車両1の右側の側面の位置で固定される。右仮想線IL
Rの移動に伴い、左仮想線IL
Lと右仮想線IL
Rとの間隔の中間に設定される目標走行軌跡TPも路端Eの方へ移動する。このときの目標走行軌跡TPの移動速度は、左仮想線IL
Lの移動時と同様に右仮想線IL
Rの速度プロファイルの1/2の速度となる。右仮想線IL
Rが固定される位置は、左仮想線IL
Lから車両1の車幅分だけ離れた位置なので、
図5(c)に示すように車両1の車幅方向位置は左仮想線IL
Lと右仮想線IL
Rとによって挟まれた位置で固定される。
【0032】
図6において、右仮想線IL
Rの速度プロファイルは曲線G21により示されている。即ち、速度プロファイルG21によれば、右仮想線IL
Rは、時刻T1において、左仮想線IL
Lが座標Pに近接する位置に到達したときの移動速度と同一の速度で移動を開始する。その後、徐々に速度を下げながら路端Eの方へ移動し、時刻T2において移動速度が0になると共に、右仮想線IL
Rは左仮想線IL
Lから車両1の車幅分だけ離れた位置(つまり車両1の路端Eとは反対側の側面の位置)に到達し、その位置で固定される(
図5(c)の状態)。
【0033】
上述したように、右仮想線IL
Rの移動に伴い、左仮想線IL
Lと右仮想線IL
Rとの間隔の中間に設定される目標走行軌跡TPは右仮想線IL
Rの速度プロファイルの1/2の速度で移動する。即ち、
図6において、目標走行軌跡TPの速度プロファイルは、速度プロファイルG21の1/2の速度である曲線G31により表されている。つまり、目標走行軌跡TPは、時刻T1から徐々に速度を下げながら路端Eの方へ移動する。その後、右仮想線IL
Rが車両1の路端Eとは反対側の側面に近づくにつれて移動速度の低下率は低下し、時刻T2において移動速度が0になる。また、時刻T1において左仮想線IL
Lが座標Pに近接する位置に到達したときの移動速度と、時刻T1において右仮想線IL
Rが移動を開始したときの移動速度とが同一なので、目標走行軌跡TPの移動速度は時刻T1の前後で滑らかに連続している。つまり、車両1の車幅方向の移動速度が時刻T1の前後においてほぼ一定であり、不連続に変化することはないので、車両1の不安定な挙動により乗員に不安感や不快感を与えることを防止できる。
【0034】
ステップS21の後、ステップS22に進み、コントローラ10は、車両1を停止させる。例えば、コントローラ10は、車速が0になるまで所定の減速度(例えば0.2G以下の減速度)が発生するようにエンジン31やブレーキ32を制御する。車両1が停止した後、コントローラ10は自動停車処理を終了する。
【0035】
<変形例>
次に、本発明の実施形態のさらなる変形例を説明する。
上述した実施形態においては、車両制御システムを搭載する車両1は、駆動力を発生する動力源としてエンジン31を搭載する場合を例として説明したが、このエンジン31に代えて、あるいはエンジン31と共に、動力源として車両1にバッテリ及びモータを搭載してもよい。
【0036】
また、上述した実施形態においては、レーダ22としてミリ波レーダを用いる場合を例示したが、ミリ波レーダに代えて、あるいはミリ波レーダと共に、レーザレーダなど異なる測定原理を利用するレーダを用いてもよい。
【0037】
<作用効果>
次に、上述した本発明の各実施形態及び本発明の実施形態の変形例による車両制御システムの効果を説明する。
【0038】
コントローラ10は、カメラ21により撮影された画像に基づき、路端E上の複数位置の座標を取得し、レーダ22により測定された被測定物の位置情報に基づき、路端E上の複数位置の座標を取得し、カメラ21により撮影された画像に基づき取得した路端E上の複数位置の座標と、レーダ22により測定された被測定物の位置情報に基づき取得した路端E上の複数位置の座標とを組み合わせて、路端E上の複数位置の座標点列を生成し、座標点列に車両1が接近するように電動パワーステアリング33を制御し、座標点列に車両1が接近した後に車両1が停止するように、ブレーキ32を制御する。つまり、コントローラ10は、カメラ21及びレーダ22のそれぞれによる路端Eの座標を組み合わせた座標点列に車両1を接近させるので、より道路側に突出している座標に接触しないように車両1を路端Eに接近させることができる。したがって、カメラ21及びレーダ22のそれぞれによる路端Eの座標がそれぞれ誤差を含んでいても、車両1を過剰に路端Eに接近させてしまうことがない。つまり、信頼性の高い路端位置を取得することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
10 コントローラ
10a プロセッサ
10b メモリ
21 カメラ
22 レーダ
23 車速センサ
24 加速度センサ
25 ヨーレートセンサ
26 舵角センサ
27 アクセルセンサ
28 ブレーキセンサ
29 測位システム
30 ナビシステム
31 エンジン
32 ブレーキ
33 電動パワーステアリング
E 路端
ILL 左仮想線
ILR 右仮想線
OL 区画線
BL 区画線
TP 目標走行軌跡