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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/10 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
A47K13/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020203943
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091237
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】村岡 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】両角 和美
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 祐紀
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-206492(JP,A)
【文献】特開2009-118931(JP,A)
【文献】特開平10-057275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動することで開閉可能に設けられた便座と、
回動することで開閉可能に設けられた便蓋と、
回転することで前記便座を電動で回動させる便座回動軸と、
回転することで前記便蓋を電動で回動させる便蓋回動軸と、
2相パルス方式で前記便座回動軸の回転を検出する便座回転検出部と、
前記便座回動軸及び前記便蓋回動軸の回転を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記便座回動軸を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与し、少なくとも前記駆動力が付与された際の前記便座回転検出部における検出結果に基づいて、前記便座及び前記便蓋の開閉状態を判定する判定モードを行うことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
2相パルス方式で前記便蓋回動軸の回転を検出する便蓋回転検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記判定モードにおいて、前記駆動力が付与された際の前記便座回転検出部における検出結果及び前記便蓋回転検出部における検出結果に基づいて、前記便座及び前記便蓋の開閉状態を判定することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記判定モードにおいて、
前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出し、前記便蓋回転検出部が前記便蓋回動軸の回転を検出した場合に、前記便座が閉状態かつ前記便蓋が閉状態であると判定し、
前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出し、前記便蓋回転検出部が前記便蓋回動軸の回転を検出しない場合に、前記便座が閉状態かつ前記便蓋が開状態であると判定し、
前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出しない場合に、前記便座が開状態かつ前記便蓋が開状態であると判定することを特徴とする請求項2記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記判定モードにおいて、前記駆動力が付与された際の前記便座回転検出部における検出結果のみに基づいて、前記便座及び前記便蓋の開閉状態を判定することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記判定モードにおいて、
前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出し、かつ前記便座回動軸の回転速度が閾値未満の場合に、前記便座が閉状態かつ前記便蓋が閉状態であると判定し、
前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出し、かつ前記便座回動軸の回転速度が前記閾値以上の場合に、前記便座が閉状態かつ前記便蓋が開状態であると判定し、
前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出しない場合に、前記便座が開状態かつ前記便蓋が開状態であると判定することを特徴とする請求項4記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記制御部は、電源投入時に前記判定モードを行うことを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【請求項7】
前記駆動力は、閉状態の前記便座が開方向に回動して閉状態の前記便蓋に接触し、閉状態の前記便蓋を5度以下の角度まで回動させる大きさの駆動力であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ装置において、便座や便蓋を電動で開閉する電動開閉機構を設けることが知られている。このようなトイレ装置では、従来、便座や便蓋を回動させるモータの回転を検出する回転検出部と、便座や便蓋の回動角度(開閉位置)を検出する角度検出部と、を別々に設け、それぞれの検出結果に基づいて電動開閉機構の制御を行っていた。
【0003】
しかし、回転検出部と角度検出部とを別々に設けると、コストが増大してしまうという問題がある。そこで、特許文献1では、モータの回転の有無に加えて回転方向を検出することができる2相パルス方式の回転検出部を用いることが提案されている。これにより、角度検出部を設けなくとも電動開閉機構の制御を行うことができ、コストを削減できる。
【0004】
一方で、角度検出部を省略すると、便座や便蓋の回動角度を検出できないため、イレギュラーな動作が発生した場合に、便座や便蓋の開閉状態を正しく検出できないおそれがある。例えば、閉状態を基準として便座や便蓋の開閉状態が検出される場合には、開状態のままトイレ装置の電源が投入されると、便座や便蓋の開閉状態が誤検出されてしまうおそれがある。開閉状態が誤検出されると、開閉状態に基づいてトイレ装置の機能部を動作させる場合には、機能部を正常に動作させることができなくなるおそれがある。
【0005】
また、イレギュラーな動作が発生した場合でも便座や便蓋の開閉状態を正しく検出するために、電源投入時や使用後に必ず便座や便蓋を閉状態にする動作(閉動作)を行う方法も考えられる。しかし、この方法では、便座や便蓋の閉動作中に次の使用者が便座に着座したり使用を開始したりしたときに、閉動作中の便座や便蓋が使用者に接触してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-125856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、2相パルス方式の回転検出部により便座及び便蓋の開閉状態を検出するトイレ装置において、使用者の安全性を確保しつつ、イレギュラーな動作が発生した場合でも便座や便蓋の開閉状態を正しく検出できるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、回動することで開閉可能に設けられた便座と、回動することで開閉可能に設けられた便蓋と、回転することで前記便座を電動で回動させる便座回動軸と、回転することで前記便蓋を電動で回動させる便蓋回動軸と、2相パルス方式で前記便座回動軸の回転を検出する便座回転検出部と、前記便座回動軸及び前記便蓋回動軸の回転を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記便座回動軸を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与し、少なくとも前記駆動力が付与された際の前記便座回転検出部における検出結果に基づいて、前記便座及び前記便蓋の開閉状態を判定する判定モードを行うことを特徴とするトイレ装置である。
【0009】
このトイレ装置によれば、制御部が便座回動軸を回転させる駆動力を付与し、少なくとも駆動力が付与された際の便座回転検出部における検出結果に基づいて、便座及び便蓋の開閉状態を判定する判定モードを行うことで、イレギュラーな動作が発生した場合でも便座及び便蓋の開閉状態を正しく検出することができる。これにより、開閉状態に基づいてトイレ装置の機能部を動作させる場合であっても、機能部を正常に動作させることができる。また、判定モードにおいて、制御部が便座回動軸を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与することで、判定モードを行う際に便座や便蓋が使用者に接触することを抑制できる。これにより、使用者の安全性を確保できる。また、2相パルス方式の便座回転検出部を設けることで、角度検出部を設ける場合と比べて、コストを削減できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、2相パルス方式で前記便蓋回動軸の回転を検出する便蓋回転検出部をさらに備え、前記制御部は、前記判定モードにおいて、前記駆動力が付与された際の前記便座回転検出部における検出結果及び前記便蓋回転検出部における検出結果に基づいて、前記便座及び前記便蓋の開閉状態を判定することを特徴とするトイレ装置である。
【0011】
このトイレ装置によれば、判定モードにおいて、駆動力が付与された際の便座回転検出部における検出結果及び便蓋回転検出部における検出結果に基づいて、制御部が便座及び便蓋の開閉状態を判定することで、より容易に便座及び便蓋の開閉状態を正しく検出することができる。また、2相パルス方式の便蓋回転検出部を設けることで、角度検出部を設ける場合と比べて、コストを削減できる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、前記制御部は、前記判定モードにおいて、前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出し、前記便蓋回転検出部が前記便蓋回動軸の回転を検出した場合に、前記便座が閉状態かつ前記便蓋が閉状態であると判定し、前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出し、前記便蓋回転検出部が前記便蓋回動軸の回転を検出しない場合に、前記便座が閉状態かつ前記便蓋が開状態であると判定し、前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出しない場合に、前記便座が開状態かつ前記便蓋が開状態であると判定することを特徴とするトイレ装置である。
【0013】
このトイレ装置によれば、判定モードにおいて、駆動力が付与された際の便座回動軸の回転の有無、及び、駆動力が付与された際の便蓋回動軸の回転の有無に基づいて、制御部が便座及び便蓋の開閉状態を判定することで、より容易に便座及び便蓋の開閉状態を正しく検出することができる。
【0014】
第4の発明は、第1の発明において、前記制御部は、前記判定モードにおいて、前記駆動力が付与された際の前記便座回転検出部における検出結果のみに基づいて、前記便座及び前記便蓋の開閉状態を判定することを特徴とするトイレ装置である。
【0015】
このトイレ装置によれば、判定モードにおいて、駆動力が付与された際の便座回転検出部における検出結果のみに基づいて、制御部が便座及び便蓋の開閉状態を判定することで、便蓋回転検出部を設けなくとも、便座及び便蓋の開閉状態を正しく検出することができる。これにより、コストをさらに削減することができる。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、前記制御部は、前記判定モードにおいて、前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出し、かつ前記便座回動軸の回転速度が閾値未満の場合に、前記便座が閉状態かつ前記便蓋が閉状態であると判定し、前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出し、かつ前記便座回動軸の回転速度が前記閾値以上の場合に、前記便座が閉状態かつ前記便蓋が開状態であると判定し、前記駆動力が付与された際に、前記便座回転検出部が前記便座回動軸の回転を検出しない場合に、前記便座が開状態かつ前記便蓋が開状態であると判定することを特徴とするトイレ装置である。
【0017】
このトイレ装置によれば、判定モードにおいて、駆動力が付与された際の便座回動軸の回転の有無、及び、駆動力が付与された際の便座回動軸の回転速度に基づいて、制御部が便座及び便蓋の開閉状態を判定することで、便蓋回転検出部を設けなくとも、より容易に便座及び便蓋の開閉状態を正しく検出することができる。
【0018】
第6の発明は、第1~第5のいずれか1つの発明において、前記制御部は、電源投入時に前記判定モードを行うことを特徴とするトイレ装置である。
【0019】
このトイレ装置によれば、制御部が電源投入時に判定モードを行うことで、便座が開の状態や便蓋が開の状態でトイレ装置の電源が投入された場合でも、便座及び便蓋の開閉状態の誤検出を抑制することができる。
【0020】
第7の発明は、第1~第6のいずれか1つの発明において、前記駆動力は、閉状態の前記便座が開方向に回動して閉状態の前記便蓋に接触し、閉状態の前記便蓋を5度以下の角度まで回動させる大きさの駆動力であることを特徴とするトイレ装置である。
【0021】
このトイレ装置によれば、判定モードにおいて、便座及び便蓋がわずかに開方向に回動する大きさの駆動力を制御部が便座回動軸に付与することで、判定モードを行う際に便座や便蓋が使用者に接触することをさらに抑制できる。これにより、使用者の安全性をより確実に確保できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の態様によれば、2相パルス方式の回転検出部により便座及び便蓋の開閉状態を検出するトイレ装置において、使用者の安全性を確保しつつ、イレギュラーな動作が発生した場合でも便座や便蓋の開閉状態を正しく検出できるトイレ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係るトイレ装置を模式的に表す斜視図である。
図2】便座回動軸及び便蓋回動軸の周辺を模式的に表す平面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、便座回動軸及び便座回転検出部を模式的に表す正面図及び側面図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、便座回転検出部において出力されるパルス信号の一例を表す説明図である。
図5図5(a)~図5(c)は、トイレ装置の第1~第3状態を模式的に表す側面図である。
図6】第1実施形態に係る判定モードの動作の一例を表すフローチャートである。
図7図7(a)及び図7(b)は、判定モードにおける便座及び便蓋の動きを模式的に表す側面図である。
図8】第2実施形態に係る判定モードの動作の一例を表すフローチャートである。
図9】跳ね返り抑制制御の動作の一例を表すフローチャートである。
図10】いたずら抑制制御の動作の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るトイレ装置を模式的に表す斜視図である。
図1に表したように、第1実施形態に係るトイレ装置100は、大便器200の上に設置される。
【0026】
大便器200は、いわゆる腰掛け大便器である。大便器200は、下方へ向けて窪むボウル部201を有する。大便器200は、ボウル部201において使用者の尿や便などの排泄物を受ける。
【0027】
トイレ装置100は、ケーシング10と、便座20と、便蓋30と、便座回動軸40と、便蓋回動軸50と、制御部60と、を有する。図1では、便蓋30が開き、便座20が閉じた状態を表している。本願明細書においては、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「右側方」、「左側方」のそれぞれは、開いた状態の便蓋30を背にして便座20に着座した使用者からみた方向とする。
【0028】
ケーシング10は、大便器200の後部の上に設けられる。ケーシング10は、中空の箱状であり、例えば、便座回動軸40の一部、便蓋回動軸50の一部、及び制御部60などを内蔵する。また、ケーシング10は、例えば、使用者の局部を洗浄するための機能部や使用者を検知する人体検知センサなどを内蔵していてもよい。
【0029】
便座20は、ケーシング10の内部に設けられた便座回動軸40に軸支されることで、ケーシング10に対して回動可能に設けられている。便座20は、全閉位置と全開位置との間で回動することで開閉可能に設けられている。
【0030】
便座20は、着座部21と、ヒンジ部22と、を有する。着座部21は、閉じた状態において、ボウル部201の上方に位置する。着座部21は、使用者が座る部分である。ヒンジ部22は、便座20が閉じた状態において、着座部21の後方に位置する。便座20は、ヒンジ部22において、便座回動軸40と接続されている。
【0031】
便蓋30は、ケーシング10の内部に設けられた便蓋回動軸50に軸支されることで、ケーシング10に対して回動可能に設けられている。便蓋30は、全閉位置と全開位置との間で回動することで開閉可能に設けられている。便蓋30は、閉じた状態において、便座20の上方を覆う。
【0032】
便蓋30は、便蓋本体31と、ヒンジ部32と、を有する。便蓋本体31は、閉じた状態において、便座20の上方に位置する。ヒンジ部32は、便蓋30が閉じた状態において、便蓋本体31の後方に位置する。便蓋30は、ヒンジ部32において、便蓋回動軸50と接続されている。
【0033】
便座回動軸40は、便座20を軸支し、回転することで便座20を電動で回動させる。つまり、便座回動軸40は、便座20を電動で開閉させる電動開閉ユニットである。便座回動軸40は、制御部60と電気的に接続されている。便座回動軸40は、制御部60からの制御信号などに基づいて開方向または閉方向に回転する。これにより、便座回動軸40は、便座20を開方向または閉方向に回動させる。
【0034】
便蓋回動軸50は、便蓋30を軸支し、回転することで便蓋30を電動で回動させる。つまり、便蓋回動軸50は、便蓋30を電動で開閉させる電動開閉ユニットである。便蓋回動軸50は、制御部60と電気的に接続されている。便蓋回動軸50は、制御部60からの制御信号などに基づいて開方向または閉方向に回転する。これにより、便蓋回動軸50は、便蓋30を開方向または閉方向に回動させる。
【0035】
制御部60は、便座回動軸40及び便蓋回動軸50の回転を制御する。これにより、制御部60は、便座20の開閉動作及び便蓋30の開閉動作を制御する。制御部60は、例えば、トイレ装置100に設けられた人体検知センサにおける検知結果やトイレ装置100を操作するための操作部(リモコン)における使用者の操作などに基づいて、便座20の開閉動作及び便蓋30の開閉動作を制御する。人体検知センサは、例えば、使用者の便座20(着座部21)への着座を検知する着座検知センサ、使用者のトイレ室への入室を検知する入室検知センサ、及び使用者のトイレ装置100への接近を検知する接近検知センサなどを含む。
【0036】
図2は、便座回動軸及び便蓋回動軸の周辺を模式的に表す平面図である。
図3(a)及び図3(b)は、便座回動軸及び便座回転検出部を模式的に表す正面図及び側面図である。
図2では、便座20及び便蓋30を取り外した状態を表している。
図3(a)は、図2に示した矢印A1の方向からみた正面図である。
図3(b)は、図3(a)に示した矢印A2の方向からみた側面図である。
【0037】
図2に表したように、便座回動軸40は、モータ41と、伝達機構42と、を有する。モータ41は、便座20を回動させるための駆動力を発生させる。伝達機構42は、モータ41及び便座20のヒンジ部22に接続され、モータ41の駆動力を便座20のヒンジ部22に伝達する。
【0038】
図3(a)及び図3(b)に表したように、モータ41は、駆動部41aと、軸部41bと、マグネット41cと、を有する。駆動部41aは、駆動することで軸部41bを回転させる。軸部41bは、伝達機構42に接続され、駆動部41aの駆動力を伝達機構42に出力する。マグネット41cは、軸部41bに取り付けられ、軸部41bとともに回転する。マグネット41cは、回転方向においてS極とN極とが交互に配置された構造を有する。図3(b)では、S極を黒色で表し、N極を白色で表している。
【0039】
伝達機構42は、減速機構42aと、出力軸42bと、を有する。減速機構42aは、ギアなどによりモータ41の回転を減速させることで、トルクを増大させる。減速機構42aは、必要に応じて設けられ、省略可能である。出力軸42bは、減速機構42a及び便座20のヒンジ部22に接続され、減速機構42aを介してモータ41の駆動力(すなわち、軸部41bの回転)を便座20のヒンジ部22に出力する。
【0040】
モータ41は、ケーシング10の内部に収納されている。より具体的には、駆動部41a、軸部41b、及びマグネット41cは、ケーシング10の内部に収納されている。伝達機構42は、一部がケーシング10の内部に収納され、他の一部がケーシング10の外部に位置している。より具体的には、減速機構42aは、ケーシング10の内部に収納されている。出力軸42bは、ケーシング10の外部に向けて突出している。
【0041】
制御部60は、例えば、モータ41の駆動部41aに電力を供給することで、便座回動軸40に駆動力を付与する。制御部60は、例えば、モータ41の駆動部41aへの電力の供給を停止することで、便座回動軸40への駆動力の付与を停止する。
【0042】
図2に表したように、便蓋回動軸50は、便座回動軸40の後方に設けられている。便蓋回動軸50は、モータ51と、伝達機構52と、を有する。モータ51は、便蓋30を回動させるための駆動力を発生させる。伝達機構52は、モータ51及び便蓋30のヒンジ部32に接続され、モータ51の駆動力を便蓋30のヒンジ部32に伝達する。
【0043】
モータ51は、駆動部51aと、軸部51bと、マグネット51cと、を有する。伝達機構52は、減速機構52aと、出力軸52bと、を有する。便蓋回動軸50のモータ51及び伝達機構52の構造は、便座回動軸40のモータ41及び伝達機構42の構造と実質的に同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
制御部60は、例えば、モータ51の駆動部51aに電力を供給することで、便蓋回動軸50に駆動力を付与する。制御部60は、例えば、モータ51の駆動部51aへの電力の供給を停止することで、便蓋回動軸50への駆動力の付与を停止する。
【0045】
また、トイレ装置100は、便座回転検出部45及び便蓋回転検出部55をさらに備える。便座回転検出部45は、便座回動軸40の回転を検出する。便蓋回転検出部55は、便蓋回動軸50の回転を検出する。便座回転検出部45及び便蓋回転検出部55は、それぞれ、制御部60と電気的に接続されており、制御部60に検出結果を出力する。
【0046】
この例では、便座回転検出部45は、便座回動軸40の下方に設けられている。便座回転検出部45は、これに限定されず、便座回動軸40の上方や前方などに設けられてもよい。便座回転検出部45は、例えば、便座回転検出部45と便座回動軸40との間の距離が便座回転検出部45と便蓋回動軸50との間の距離よりも短くなる位置に設けられることが好ましい。これにより、誤検出を抑制できる。
【0047】
この例では、便蓋回転検出部55は、便蓋回動軸50の下方に設けられている。便蓋回転検出部55は、これに限定されず、便蓋回動軸50の上方や後方などに設けられてもよい。便蓋回転検出部55は、例えば、便蓋回転検出部55と便蓋回動軸50との間の距離が便蓋回転検出部55と便座回動軸40との間の距離よりも短くなる位置に設けられることが好ましい。これにより、誤検出を抑制できる。
【0048】
便座回転検出部45及び便蓋回転検出部55は、それぞれ、2相パルス方式の回転検出センサである。2相パルス方式の回転検出センサは、回転により生じるパルス信号の有無により回動軸の回転の有無を検出し、2つのパルス信号の位相差により回動軸の回転方向を検出する。2相パルス方式の回転検出センサは、例えば、いわゆるロータリエンコーダである。以下、便座回転検出部45を例に挙げて説明するが、便蓋回転検出部55も同様の構造である。
【0049】
この例では、便座回転検出部45は、磁気方式のロータリエンコーダである。便座回転検出部45は、第1センサ45aと、第2センサ45bと、を有する。第1センサ45a及び第2センサ45bは、それぞれ、マグネット41cの回転を検出するホールICである。以下、便座回転検出部45による便座回動軸40の回転の検出について、説明する。
【0050】
図4(a)及び図4(b)は、便座回転検出部において出力されるパルス信号の一例を表す説明図である。
図4(a)は、便座回動軸40が開方向に回転するときに便座回転検出部45において出力されるパルス信号の一例を表している。
図4(b)は、便座回動軸40が閉方向に回転するときに便座回転検出部45において出力されるパルス信号の一例を表している。
【0051】
便座回動軸40が開方向に回転するとき、マグネット41cは、図3(b)に示した開方向D1の向きに回転する。また、便座回動軸40が閉方向に回転するとき、マグネット41cは、図3(b)に示した閉方向D2の向きに回転する。
【0052】
第1センサ45aは、マグネット41cの回転に応じて、HighまたはLowになる第1信号を出力する。第2センサ45bは、マグネット41cの回転に応じて、HighまたはLowになる第2信号を出力する。第1信号及び第2信号は、マグネット41cが回転するとき、HighとLowとが交互に出力されるパルス状の信号となる。
【0053】
制御部60は、パルス状の第1信号及び第2信号が出力されているとき、便座回動軸40が回転していると判定する。言い換えれば、制御部60は、パルス状の第1信号及び第2信号の有無により、便座回動軸40の回転の有無を判定する。また、制御部60は、例えば、パルス状の第1信号及び第2信号が出力されているとき、基準位置(例えば、全閉位置)からのパルス数に応じて、便座20の相対的な位置(回動角度)を判定する。また、制御部60は、パルスの周波数(単位時間あたりのパルス数)に基づいて、便座回動軸40の回転速度を判定する。
【0054】
また、便座回動軸40が開方向に回転すると、マグネット41cが開方向D1に回転するため、図4(a)に表したように、まず、第2センサ45bの第2信号がHighになり、その後、第1センサ45aの第1信号がHighになる。一方、便座回動軸40が閉方向に回転すると、マグネット41cが閉方向D2に回転するため、図4(b)に表したように、まず、第1センサ45aの第1信号がHighになり、その後、第2センサ45bの第2信号がHighになる。
【0055】
制御部60は、第2信号がHighになった後に第1信号がHighになると、便座回動軸40が開方向に回転している(すなわち、便座20が開方向に回動している)と判定する。制御部60は、第1信号がHighになった後に第2信号がHighになると、便座回動軸40が閉方向に回転している(すなわち、便座20が閉方向に回動している)と判定する。このように、制御部60は、第1信号と第2信号との位相差により、便座回動軸40の回転方向を判定する。
【0056】
なお、この例では、マグネット41cは、モータ41に設けられているが、マグネット41cが設けられる位置は、これに限定されない。マグネット41cは、例えば、伝達機構42に設けられていてもよい。
【0057】
また、便座回転検出部45は、磁気方式のロータリエンコーダに限定されず、例えば、光電方式のロータリエンコーダであってもよい。便座回転検出部45が光電方式のロータリエンコーダの場合も、同様に、制御部60は、パルス状の第1信号及び第2信号の有無により、便座回動軸40の回転の有無を判定できる。また、制御部60は、第1信号と第2信号との位相差により、便座回動軸40の回転方向を判定できる。
【0058】
図5(a)~図5(c)は、トイレ装置の第1~第3状態を模式的に表す側面図である。
図5(a)、図5(b)、及び図5(c)は、それぞれ、トイレ装置100の第1状態、第2状態、及び第3状態を表している。
【0059】
図5(a)に表したように、第1状態において、便座20は閉状態であり、便蓋30は閉状態である。つまり、第1状態は、便座20も便蓋30も閉じた状態である。言い換えれば、第1状態において、便座20は全閉位置にあり、便蓋30は全閉位置にある。
【0060】
図5(b)に表したように、第2状態において、便座20は閉状態であり、便蓋30は開状態である。つまり、第2状態は、便座20のみが閉じた状態(便蓋30のみが開いた状態)である。言い換えれば、第2状態において、便座20は全閉位置にあり、便蓋30は全開位置にある。
【0061】
図5(c)に表したように、第3状態において、便座20は開状態であり、便蓋30は開状態である。つまり、第3状態は、便座20も便蓋30も開いた状態である。言い換えれば、第3状態において、便座20は全開位置にあり、便蓋30は全開位置にある。
【0062】
制御部60は、記憶された便座20の開閉状態、及び、便座回転検出部45における検出結果(すなわち、便座回動軸40の開方向の回転及び閉方向の回転の有無)に基づいて、便座20の開閉状態を判定し、記憶する。また、制御部60は、記憶された便蓋30の開閉状態、及び、便蓋回転検出部55における検出結果(すなわち、便蓋回動軸50の開方向の回転及び閉方向の回転の有無)に基づいて、便蓋30の開閉状態を判定し、記憶する。つまり、制御部60は、記憶された便座20や便蓋30の開閉状態、及び、便座回転検出部45や便蓋回転検出部55における検出結果に基づいて、トイレ装置100が第1~第3状態のいずれの状態にあるかを判定し、記憶する。
【0063】
制御部60は、記憶したトイレ装置100の開閉状態(第1~第3状態)に基づいて、トイレ装置100の機能部の動作を制御する。制御部60は、例えば、トイレ装置100が第1状態(便座:閉、便蓋:閉)のときに、使用者のトイレ室への入室を検知すると、便蓋30を開方向に回動させる。
【0064】
図6は、第1実施形態に係る判定モードの動作の一例を表すフローチャートである。
図6に表したように、制御部60は、便座20及び便蓋30の開閉状態を判定する判定モードを行う。第1実施形態では、制御部60は、判定モードにおいて、便座回転検出部45における検出結果及び便蓋回転検出部55における検出結果に基づいて、便座20及び便蓋30の開閉状態を判定する。以下、具体的に説明する。
【0065】
制御部60は、電源が投入されたら(ステップS101:Yes)、判定モードを行う。制御部60は、判定モードにおいて、便座回動軸40を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与する(ステップS102)。判定モードにおいて付与される駆動力については、後述する。
【0066】
制御部60は、便座回動軸40を開方向に所定角度回転させる駆動力が付与された際に、便座回転検出部45が便座回動軸40の回転を検出し(ステップS103:Yes)、便蓋回転検出部55が便蓋回動軸50の回転を検出した(ステップS104:Yes)場合に、便座20が閉状態かつ便蓋30が閉状態であると判定し、記憶する(ステップS105)。つまり、制御部60は、便座20を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与した際に、便座20及び便蓋30の両方が回動したら、トイレ装置100が第1状態(図5(a)参照)であると判定し、記憶する。
【0067】
制御部60は、便座回動軸40を開方向に所定角度回転させる駆動力が付与された際に、便座回転検出部45が便座回動軸40の回転を検出し(ステップS103:Yes)、便蓋回転検出部55が便蓋回動軸50の回転を検出しない(ステップS104:No)場合に、便座20が閉状態かつ便蓋30が開状態であると判定し、記憶する(ステップS106)。つまり、制御部60は、便座20を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与した際に、便座20が回転し便蓋30が回転しないときに、トイレ装置100が第2状態(図5(b)参照)であると判定し、記憶する。
【0068】
制御部60は、便座回動軸40を開方向に所定角度回転させる駆動力が付与された際に、便座回転検出部45が便座回動軸40の回転を検出しない(ステップS103:No)場合に、便座20が開状態かつ便蓋30が開状態であると判定し、記憶する(ステップS107)。つまり、制御部60は、便座20を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与した際に、便座20が回転しないときに、トイレ装置100が第3状態(図5(c)参照)であると判定し、記憶する。
【0069】
なお、便座20が開状態の場合には、便蓋30も開状態であるため、制御部60は、便座回転検出部45における検出結果(便座回動軸40の回転の有無)のみによって第3状態を判定することができる。
【0070】
この例では、制御部60は、トイレ装置100への電源投入時に判定モードを行っている。制御部60が判定モードを行うタイミングは、これに限定されない。制御部60は、例えば、人体検知センサが人体を検知していないときに、判定モードを行ってもよい。
【0071】
より具体的には、制御部60は、例えば、着座検知センサが使用者の便座20への着座を検知していないとき(つまり、使用者が便座20に着座していないとき)に、判定モードを行ってもよい。また、制御部60は、例えば、入室検知センサが使用者のトイレ室への入室を検知していないとき(つまり、トイレ室内に使用者がいないとき)に、判定モードを行ってもよい。また、制御部60は、例えば、接近検知センサが使用者のトイレ装置100への接近を検知していないとき。(つまり、使用者がトイレ装置100に接近していないとき)に、判定モードを行ってもよい。
【0072】
この場合、制御部60は、例えば、人体検知センサが人体を検知している状態(検知状態)から人体を検知していない状態(非検知状態)になった後の所定のタイミング(例えば、非検知状態になってから5秒後から10秒後の間)に、判定モードを行うことが好ましい。
【0073】
図7(a)及び図7(b)は、判定モードにおける便座及び便蓋の動きを模式的に表す側面図である。
図7(a)及び図7(b)に表したように、制御部60は、判定モードにおいて、閉状態の便座20が開方向に回動して閉状態の便蓋30に接触し、閉状態の便蓋30を5度以下の角度まで回動させる大きさの駆動力を付与する。つまり、制御部60は、判定モードにおいて、図7(a)に表した状態から図7(b)に表した状態(0°<θ≦5°)になるような大きさの駆動力を付与する。回動角度θは、便蓋30の下端の全閉位置からの回動角度である。
【0074】
このような大きさの駆動力を付与した場合、トイレ装置100が第1状態(便座:閉、便蓋:閉)であれば、便座20が開方向に回動して閉状態の便蓋30に接触し、閉状態の便蓋30を5度以下の角度まで回動させる。また、このような大きさの駆動力を付与した場合、トイレ装置100が第2状態(便座:閉、便蓋:開)であれば、便座20が5度以上開方向に回動するのに対して、便蓋30は回動しない。また、このような大きさの駆動力を付与した場合、トイレ装置100が第3状態(便座:開、便蓋:開)であれば、便座20も便蓋30も回動しない。これにより、上記のように、制御部60は、便座20及び便蓋30の開閉状態を判定することができる。
【0075】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る判定モードの動作の一例を表すフローチャートである。
図8に表したように、第2実施形態では、制御部60は、判定モードにおいて、便座回転検出部45における検出結果のみに基づいて、便座20及び便蓋30の開閉状態を判定する。以下、具体的に説明する。
【0076】
制御部60は、電源が投入されたら(ステップS201:Yes)、判定モードを行う。制御部60は、判定モードにおいて、便座回動軸40を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与する(ステップS202)。判定モードにおいて付与される駆動力の大きさは、第1実施形態と同様である。
【0077】
制御部60は、便座回動軸40を開方向に所定角度回転させる駆動力が付与された際に、便座回転検出部45が便座回動軸40の回転を検出し(ステップS203:Yes)、かつ、便座回動軸40の回転速度が閾値未満(ステップS204:Yes)の場合に、便座20が閉状態かつ便蓋30が閉状態であると判定し、記憶する(ステップS205)。つまり、制御部60は、便座20を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与した際に、便座20が所定速度よりも遅い速度で回動したら、トイレ装置100が第1状態(図5(a)参照)であると判定し、記憶する。
【0078】
制御部60は、便座回動軸40を開方向に所定角度回転させる駆動力が付与された際に、便座回転検出部45が便座回動軸40の回転を検出し(ステップS203:Yes)、かつ、便座回動軸40の回転速度が閾値以上(ステップS204:No)場合に、便座20が閉状態かつ便蓋30が開状態であると判定し、記憶する(ステップS206)。つまり、制御部60は、便座20を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与した際に、便座20が所定速度以上の速度で回動したら、トイレ装置100が第2状態(図5(b)参照)であると判定し、記憶する。
【0079】
なお、便蓋30が閉状態の場合には、便座20を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与した際に、便蓋30を持ち上げながら便座20が開方向に回動する。そのため、便蓋30が閉状態の場合には、便蓋30の重さの分の負荷がかかり、便蓋30が開状態の場合と比べて、便座回動軸40の回転速度が遅くなる。言い換えれば、便蓋30が開状態の場合には、便蓋30の重さの分の負荷がかからないため、便蓋30が閉状態の場合と比べて、便座回動軸40の回転速度が速くなる。これにより、制御部60は、第1状態と第2状態とを判別することができる。
【0080】
制御部60は、便座回動軸40を開方向に所定角度回転させる駆動力が付与された際に、便座回転検出部45が便座回動軸40の回転を検出しない(ステップS203:No)場合に、便座20が開状態かつ便蓋30が開状態であると判定し、記憶する(ステップS207)。つまり、制御部60は、便座20を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与した際に、便座20が回転しないときに、トイレ装置100が第3状態(図5(c)参照)であると判定し、記憶する。
【0081】
なお、便座20が開状態の場合には、便蓋30も開状態であるため、制御部60は、便座回転検出部45における検出結果(便座回動軸40の回転の有無)のみによって第3状態を判定することができる。
【0082】
この例では、制御部60は、駆動力が付与された際の便座回動軸40の回転速度に基づいて、第1状態と第2状態とを判別している。制御部60が第1状態と第2状態とを判別する手段は、これに限定されない。制御部60は、例えば、駆動力が付与された際の便座回動軸40の相対的な回転角度(つまり、パルス数)に基づいて、第1状態と第2状態とを判別してもよい。便蓋30が閉状態の場合には、便蓋30の重さの分の負荷がかかり、便蓋30が開状態の場合と比べて、同じ大きさの駆動力が付与された際に全閉位置からの便座回動軸40の回転角度が小さくなる。
【0083】
この例では、制御部60は、トイレ装置100への電源投入時に判定モードを行っている。制御部60が判定モードを行うタイミングは、これに限定されない。制御部60は、例えば、人体検知センサが人体を検知していないときに、判定モードを行ってもよい。
【0084】
第2実施形態では、制御部60は、便座回転検出部45における検出結果のみに基づいて、便座20及び便蓋30の開閉状態を判定する。そのため、第2実施形態のトイレ装置では、便蓋回動軸50の回転を検出する便蓋回転検出部55を省略可能である。それ以外は、第1実施形態のトイレ装置100と同様である。
【0085】
図9は、跳ね返り抑制制御の動作の一例を表すフローチャートである。
図9に表したように、制御部60は、便蓋30を開方向に回動させる際に、便蓋30が全開位置に達したときに跳ね返ることを抑制するための跳ね返り抑制制御を行ってもよい。以下、具体的に説明する。
【0086】
制御部60は、まず、便蓋回動軸50への開方向の駆動力の付与を開始して、便蓋30の開方向への回動を開始する(ステップS301)。このとき、制御部60は、例えば、第1駆動力P1で便蓋回動軸50を開方向に回転させる。
【0087】
制御部60は、便蓋30が開端直前位置に到達するまで、第1駆動力P1で便蓋回動軸50を開方向に回転させる(ステップS302:No)。開端直前位置は、例えば、全閉位置から全開位置までの第1信号(または第2信号)の総パルス数を100%としたときに、全閉位置から開方向に回動してパルス数が90%になる位置である。開端直前位置は、これに限定されず、例えば、全閉位置から開方向に回動してパルス数が80%以上99%以下になる任意の位置であってもよい。
【0088】
便蓋30が開端直前位置に到達したら(ステップS302:Yes)、制御部60は、跳ね返り抑制制御を行う(ステップS303)。制御部60は、例えば、便蓋30が全開位置に到達するまで跳ね返り抑制制御を行う。
【0089】
跳ね返り抑制制御において、制御部60は、例えば、便蓋回動軸50の開方向への回転を抑制する。より具体的には、跳ね返り抑制制御において、制御部60は、例えば、便蓋回動軸50を開方向に回転させる駆動力を第1駆動力P1よりも小さい第2駆動力P2に変更する。あるいは、跳ね返り抑制制御において、制御部60は、例えば、便蓋回動軸50への駆動力の付与を停止する。あるいは、跳ね返り抑制制御において、制御部60は、例えば、便蓋回動軸50への閉方向の第3駆動力P3の付与を開始する。
【0090】
制御部60は、便蓋30が全開位置に到達したときに、便蓋30の跳ね返りの有無を判定する(ステップS304)。制御部60は、例えば、便蓋回転検出部55が便蓋回動軸50の閉方向の回転を検出した場合に、便蓋30の跳ね返りがあると判定する。制御部60は、例えば、便蓋回転検出部55が便蓋回動軸50の閉方向の回転を検出しない場合、便蓋30の跳ね返りがないと判定する。
【0091】
制御部60は、便蓋30の跳ね返りの有無の判定結果を、次回の便蓋30の回動時の跳ね返り抑制制御にフィードバックする。便蓋30の跳ね返りがあった場合、制御部60は、例えば、次回の跳ね返り抑制制御を行う際に、便蓋回動軸50の開方向への回転を前回よりも強く抑制する。制御部60は、例えば、前回の跳ね返り抑制制御において便蓋回動軸50に開方向の第2駆動力P2を付与していた場合には、次回の跳ね返り抑制制御において、第2駆動力P2をより小さくしたり、駆動力の付与を停止したり、便蓋回動軸50に閉方向の第3駆動力P3を付与したりする。制御部60は、例えば、前回の跳ね返り抑制制御において便蓋回動軸50への駆動力の付与を停止していた場合には、次回の跳ね返り抑制制御において、便蓋回動軸50に閉方向の第3駆動力P3を付与する。制御部60は、例えば、前回の跳ね返り抑制制御において便蓋回動軸50に閉方向の第3駆動力P3を付与していた場合には、次回の跳ね返り抑制制御において、第3駆動力P3をより大きくする。
【0092】
また、跳ね返り抑制制御により便蓋30が全開位置に到達しなかった場合、制御部60は、例えば、次回の跳ね返り抑制制御を行う際に、便蓋回動軸50の開方向への回転を前回よりも弱く抑制する。制御部60は、例えば、前回の跳ね返り抑制制御において便蓋回動軸50に開方向の第2駆動力P2を付与していた場合には、次回の跳ね返り抑制制御において、第2駆動力P2をより大きくする。制御部60は、例えば、前回の跳ね返り抑制制御において便蓋回動軸50への駆動力の付与を停止していた場合には、次回の跳ね返り抑制制御において、便蓋回動軸50に開方向の第2駆動力P2を付与する。制御部60は、例えば、前回の跳ね返り抑制制御において便蓋回動軸50に閉方向の第3駆動力P3を付与していた場合には、次回の跳ね返り抑制制御において、第3駆動力P3をより小さくしたり、便蓋回動軸50への駆動力の付与を停止したり、便蓋回動軸50に開方向の第2駆動力P2を付与したりする。
【0093】
このような跳ね返り抑制制御を行うことで、便蓋30の跳ね返りを抑制することができる。また、便蓋30が開端直前位置に到達してから跳ね返り抑制制御を行うことで、便蓋30が全開位置に移動するまでにかかる時間が長くなることを抑制しつつ、便蓋30の跳ね返りを抑制することができる。また、跳ね返り抑制制御のフィードバックを行うことで、製品の個体差によらず、便蓋30の跳ね返りを抑制することができる。
【0094】
なお、制御部60は、便座20を開方向に回動させる際に、便座20の跳ね返り抑制制御を行ってもよい。便座20の跳ね返り抑制制御は、上述した便蓋30の跳ね返り抑制制御と同様にして行うことができる。
【0095】
図10は、故障抑制制御の動作の一例を表すフローチャートである。
図10に表したように、制御部60は、便蓋30を開方向に回動させる際に、故障抑制制御を行ってもよい。以下、具体的に説明する。
【0096】
制御部60は、まず、便蓋回動軸50への開方向の駆動力の付与を開始して、便蓋30の開方向への回動を開始する(ステップS401)。制御部60は、便蓋30が全開位置に達するまで、便蓋回動軸50に開方向の駆動力を付与する。
【0097】
制御部60は、便蓋回動軸50に開方向の駆動力を付与している間に、便蓋回転検出部55において便蓋回動軸50の閉方向の回転を検出しない場合には(ステップS402:No)、便蓋30が全開位置に達するまで、便蓋回動軸50への開方向の駆動力の付与を継続する。制御部60は、便蓋回動軸50に開方向の駆動力を付与している間に、便蓋回転検出部55において便蓋回動軸50の閉方向の回転を検出すると(ステップS402:Yes)、故障抑制制御を行う。故障抑制制御において、制御部60は、便蓋回動軸50への開方向の駆動力の付与を停止する(ステップS403)。
【0098】
このような故障抑制制御を行うことで、いたずらなどにより便蓋回動軸50に開方向の駆動力を付与している間に便蓋回動軸50に閉方向の力がかかった場合に、便蓋回動軸50への開方向の駆動力の付与を停止できる。これにより、いたずらなどにより便蓋回動軸50に過剰な負荷がかかって故障することを抑制できる。
【0099】
また、角度検出部を設けた従来のトイレ装置では、便蓋回動軸の回転方向を検出できないため、便蓋の位置を複数のエリアに分け、開側のエリアから閉側のエリアに逆行した際に便蓋回動軸への開方向の駆動力の付与を停止する故障抑制制御を行っていた。これに対し、上記のように便蓋回動軸50の回転方向を検出して故障抑制制御を行うことで、エリアをまたがなくても便蓋回動軸50に逆向きの力がかかっていることを検知でき、より迅速に便蓋回動軸50への駆動力の付与を停止できる。これにより、いたずらなどにより便蓋回動軸50に過剰な負荷がかかって故障することをさらに抑制できる。また、便蓋30が使用者に当たることを抑制できるため、使用者の安全性をより向上できる。
【0100】
なお、制御部60は、便座20を開方向に回動させる際に、便座20の故障抑制制御を行ってもよい。便座20の故障抑制制御は、上述した便蓋30の故障抑制制御と同様にして行うことができる。
【0101】
以下、実施形態に係るトイレ装置100の作用効果について、説明する。
便座や便蓋を電動で開閉するトイレ装置の電動開閉機構において、コストを削減するために、2相パルス方式の回転検出部を用いて角度検出部を省略することが提案されている。しかし、角度検出部を省略すると、イレギュラーな動作が発生した場合に便座や便蓋の開閉状態を正しく検出できなくなるおそれがある。電源投入時や使用後に必ず便座や便蓋の閉動作を行う方法も考えられるが、この方法では、便座や便蓋の閉動作中に次の使用者が便座に着座したり使用を開始したりしたときに、閉動作中の便座や便蓋が使用者に接触してしまうおそれがある。
【0102】
これに対し、実施形態に係るトイレ装置100によれば、制御部60が便座回動軸40を回転させる駆動力を付与し、少なくとも駆動力が付与された際の便座回転検出部45における検出結果に基づいて、便座20及び便蓋30の開閉状態を判定する判定モードを行うことで、イレギュラーな動作が発生した場合でも便座20及び便蓋30の開閉状態を正しく検出することができる。これにより、開閉状態に基づいてトイレ装置100の機能部を動作させる場合であっても、機能部を正常に動作させることができる。また、判定モードにおいて、制御部60が便座回動軸40を開方向に所定角度回転させる駆動力を付与することで、判定モードを行う際に便座20や便蓋30が使用者に接触することを抑制できる。これにより、使用者の安全性を確保できる。また、2相パルス方式の便座回転検出部45を設けることで、角度検出部を設ける場合と比べて、コストを削減できる。
【0103】
また、判定モードにおいて、駆動力が付与された際の便座回転検出部45における検出結果及び便蓋回転検出部55における検出結果に基づいて、制御部60が便座20及び便蓋30の開閉状態を判定することで、より容易に便座20及び便蓋30の開閉状態を正しく検出することができる。また、2相パルス方式の便蓋回転検出部55を設けることで、角度検出部を設ける場合と比べて、コストを削減できる。
【0104】
また、判定モードにおいて、駆動力が付与された際の便座回動軸40の回転の有無、及び、駆動力が付与された際の便蓋回動軸50の回転の有無に基づいて、制御部60が便座20及び便蓋30の開閉状態を判定することで、より容易に便座20及び便蓋30の開閉状態を正しく検出することができる。
【0105】
また、判定モードにおいて、駆動力が付与された際の便座回転検出部45における検出結果のみに基づいて、制御部60が便座20及び便蓋30の開閉状態を判定することで、便蓋回転検出部55を設けなくとも、便座20及び便蓋30の開閉状態を正しく検出することができる。これにより、コストをさらに削減することができる。
【0106】
また、判定モードにおいて、駆動力が付与された際の便座回動軸40の回転の有無、及び、駆動力が付与された際の便座回動軸40の回転速度に基づいて、制御部60が便座20及び便蓋30の開閉状態を判定することで、便蓋回転検出部55を設けなくとも、より容易に便座20及び便蓋30の開閉状態を正しく検出することができる。
【0107】
また、制御部60が電源投入時に判定モードを行うことで、便座20が開の状態や便蓋30が開の状態でトイレ装置100の電源が投入された場合でも、便座20及び便蓋30の開閉状態の誤検出を抑制することができる。
【0108】
また、判定モードにおいて、便座20及び便蓋30がわずかに開方向に回動する大きさの駆動力を制御部60が便座回動軸40に付与することで、判定モードを行う際に便座20や便蓋30が使用者に接触することをさらに抑制できる。これにより、使用者の安全性をより確実に確保できる。
【0109】
以上のように、実施形態によれば、2相パルス方式の回転検出部により便座及び便蓋の開閉状態を検出するトイレ装置において、使用者の安全性を確保しつつ、イレギュラーな動作が発生した場合でも便座や便蓋の開閉状態を正しく検出できるトイレ装置が提供される。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、トイレ装置が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0111】
10 ケーシング、
20 便座、
21 着座部、
22 ヒンジ部、
30 便蓋、
31 便蓋本体、
32 ヒンジ部、
40 便座回動軸、
41 モータ、
41a 駆動部、
41b 軸部、
41c マグネット、
42 伝達機構、
42a 減速機構、
42b 出力軸、
45 便座回転検出部、
45a 第1センサ、
45b 第2センサ、
50 便蓋回動軸、
51 モータ、
51a 駆動部、
51b 軸部、
51c マグネット、
52 伝達機構、
52a 減速機構、
52b 出力軸、
55 便蓋回転検出部、
60 制御部、
100 トイレ装置、
200 大便器、
201 ボウル部
図1
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図9
図10