(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】生物学的に活性な化合物を含むホスホアルキルポリマー
(51)【国際特許分類】
A61K 47/59 20170101AFI20240708BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240708BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240708BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61K47/59
A61K47/68
A61P35/00
A61P43/00 123
(21)【出願番号】P 2020538716
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 US2019013104
(87)【国際公開番号】W WO2019140128
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-04
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】マトライ トレイシー
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/183185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造(I)を有する化合物:
【化1】
(I)
またはその立体異性体、薬学的に許容される塩もしくは互変異性体(式中、
Mは、出現毎に独立して、NSAID、キナーゼ阻害剤、アントラサイクリン、EGFR阻害剤、アルキル化剤及び抗がん薬から選択される生物活性部分、または、アリール環及びヘテロアリール環から選択される3つ以上の環を含む蛍光色素であり、ただし、出現するMの少なくとも1つは、蛍光色素ではないことを条件とし、
Lは、6~8のpH、20~40℃の範囲の温度、又は酵素により開裂可能な、生理的に開裂可能なリンカーであり、
L
1は、出現毎に独立して、アルキレン、アルケニレン、またはアルキニレンリンカーであり、
L
2およびL
3は、出現毎に独立して、直接結合、もしくはアルキレン、アルケニレン、またはアルキニレンリンカーであり、
R
1は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、-H、-OH、-SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、アルキルアミニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、Qもしくはそれらの保護形態、またはL’であり、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、アルキルアミニル、アルキルカルボニルおよびアルキルオキシカルボニルは、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルもしくはチオホスホアルキルエーテル、またはそれらの組合せにより置換されていてもよく、
R
4は、出現毎に独立して、OH、O
-、またはOR
dであり、
R
5は、出現毎に、オキソであり、
R
dは、陽イオンであり、
Qは、出現毎に独立して、スルフヒドリル、ジスルフィド、N-スクシンイミドエステル、イミドエステル、ポリフルオロフェニルエステル、イソチオシアネート、アジド、アルキン、アルケン、ジエン、求ジエン体、酸ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル、ホスフィン、α-ハロアミド、ビオチン、アミノまたはマレイミド官能基を含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Qへの共有結合を含むリンカー、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストから選択される標的指向性部分、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストから選択される標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、ポリマー製ビーズまたは非ポリマー製ビーズから選択される固体支持体もしくは固体支持体残基、固体支持体もしくは固体支持体残基への共有結合を含むリンカー、または前記構造(I)を有する他の化合物への共有結合を含むリンカーであり、
mは、出現毎に独立して、0以上の整数であり、ただし、出現するmの少なくとも1つは、3以上の整数であり、
nは、1以上の整数である)。
【請求項2】
以下の構造(IA):
【化2】
(IA)
(式中、x
1およびx
2は、出現毎に独立して、0~6の整数である)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
以下の構造(IB):
【化3】
(IB)
(式中、
x
1およびx
2は、出現毎に独立して、0~6の整数であり、
yは、1~6の整数である)
を有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
(A)x
1およびx
2が、出現毎に、それぞれ1であるか、または
(B)出現毎に、x
1が0であり、x
2が1である、
請求項2または3に記載の化合物。
【請求項5】
以下の構造(IB’)または(IB”):
【化4】
の一方を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
(A)R
2およびR
3が、それぞれ独立して、OHまたは-OP(=R
a)(R
b)R
c(式中、R
aは、OまたはSであり、R
bは、OH、SH、O
-、S
-、OR
dまたはSR
dであり、R
cは、OH、SH、O
-、S
-、OR
d、SR
d、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルであり、R
dは、対イオンである)であるか、
(B)R
2またはR
3の一方が、OHまたは-OP(=R
a)(R
b)R
cであり、R
2またはR
3のもう一方が、Q、またはQへの共有結合を含むリンカーであるか、
(C)R
2またはR
3の1つがL’であり、L’が、固体支持体への共有結合を含むリンカーであり、好ましくは、固体支持体が、ポリマー製ビーズまたは非ポリマー製ビーズであるか、または
(D)R
2またはR
3の1つがL’であり、L’が、標的指向性部分であるか、または標的指向部分へのリンカーであり、好ましくは、L’が、標的指向性部分へのリンカーであり、リンカーが、ヘテロアルキレンリンカーを含み、好ましくは、標的指向性部分が、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストであり、好ましくは、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストが、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、肝細胞成長因子受容体(HGFR)阻害剤、インスリン様成長因子受容体(IGFR)阻害剤、フォレートまたはMET阻害剤である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
Qが、以下の構造:
【化5】
(式中、
Xは、ハロであり、および
EWGは、電子求引基である)
の1つを有する部分を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
(A)mが、出現毎に独立して、1~20の整数であるか、または
(B)mが、出現毎に独立して、1~10の整数である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
(A)nが、1~100の整数であるか、または
(B)nが、1~10の整数である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
Lが、出現毎に独立して、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、二重結合、三重結合、エーテル結合、ケトン、またはそれらの組合せを含むリンカーである、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
(A)出現するMの少なくとも1つが、以下の構造:
【化6】
のうちの1つを有するか、
(B)Mが、出現毎に、以下の構造:
【化7】
のうちの1つを有するか、または
(C)Mが、出現毎に独立して、抗がん薬であり、標的指向性部分が、腫瘍細胞抗原に特異的な抗体であり、好ましくは、腫瘍細胞抗原が、EGFR、HER2、葉酸受容体、CD20またはCD33である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
以下の構造:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
;
;
;
【化24】
(式中、
Mは、出現毎に独立して、F、F’、F’’、E、Y、N’、I’、D’またはD’’であり、ただし、Mの少なくとも1つはN’、I’、D’、またはD’’であり、
F、F’およびF’’はそれぞれ以下の構造:
【化25】
を有し、
Eは、以下の構造:
【化26】
を有し、
Yは、以下の構造:
を有し、
N’は、以下の構造:
【化27】
を有し、
I’は、以下の構造:
【化28】
を有し、
D’は、以下の構造:
【化29】
を有し、または
D’’は、以下の構造:
【化30】
を有する)
の1つを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
単一連結基により抗体に共有結合している請求項1に記載の化合物を含む複数のコンジュゲートを含む組成物であって、
(A)複数のコンジュゲートが少なくとも90%の構造均質性を有するか、
(B)複数のコンジュゲートが、少なくとも95%の構造均質性を有するか、または
(C)複数のコンジュゲートが、99%を超える構造均質性を有し、
ここで構造均質性は、化合物が同じ構造を有することを意味する、
組成物。
【請求項14】
以下の構造:
【化31】
【化32】
【化33】
(式中、
N’は以下の構造:
【化34】
を有し、および
I’は、以下の構造:
【化35】
を有する)
の1つを有する、化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、生物学的に活性なポリマー化合物、ならびにその調製方法および様々な治療方法における使用方法を一般に対象とする。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
標的化薬物コンジュゲートは、例えば化学療法とは異なり、罹患細胞しか標的とせず、かつ健常な細胞を害さないよう意図されている。通常、コンジュゲートは、生物学的に活性なペイロードまたは薬物に連結されている標的指向性分子から構成される。コンジュゲートは、固有の標的能力と生物学的に活性な薬物の治療有効性とを組み合わせることにより、意図する標的だけに薬物を送達し、潜在的な副作用を最小化することができる。
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、がん処置に特に関心がもたれる標的化薬物コンジュゲートのクラスの1つである。ADCは、モノクローナル抗体の標的指向性特徴と、細胞毒性剤のがん死滅能とを組み合わせて、他の化学療法剤よりもいくつかの利点を有する治療を実現する。しかし、ADC構築の複雑さ、具体的には、抗体と薬物との間の化学リンカーに関わる難題により、新規かつ有効な治療剤の開発はかなり困難である。最初のADCは、2001年に承認されたが、次のADCが承認されるまでに、ほとんど10年間が費やされた。現時点において、Adcetris(登録商標)およびKadcyla(登録商標)しか、世界中で市販されていない(Zevalin(登録商標)は、中国でしか承認されてない)。先駆者のPfizer/Wyethは、比較臨床試験の間に安全性問題が観察された後の2010年にMylotarg(登録商標)を取り消した。
したがって、大きな治療指数を有する強力な標的薬物コンジュゲートが当分野において必要とされている。理想的には、このような薬物コンジュゲートは、健常な組織と罹患組織(例えば、腫瘍細胞)との間の微妙な区別を実現すべきである。本発明は、この必要性に応え、さらなる関連する利点を実現する。
【発明の概要】
【0003】
手短に述べると、本発明の実施形態は、腫瘍細胞などの標的への選択的送達を可能にする蛍光色素および/または着色色素を含んでもよい、標的化薬物コンジュゲートとして有用な化合物、ならびにその調製のための試薬を一般に対象とする。このような分子を調製する方法、およびそれを必要とする患者に治療処置を提供するための該分子の使用方法も記載されている。
現在開示されている化合物の実施形態は、リンカー(「L」)によって共有結合により連結されている、1つまたは複数の生物学的に活性な部分を含む。有利には、本発明の実施形態は、ポリマー合成の間に組み込まれ得るか、または合成後に結合され得る化合物を提供する。さらに、本明細書に記載されている実施形態は、同一化合物内の複数の生物学的に活性な部分の取り込み、および標的指向性部分の任意の含有を可能にする。
一実施形態では、以下の構造(I)を有する化合物:
【0004】
【化1】
(I)
または、立体異性体、互変異性体もしくはその塩が提供される(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、L、L
1、L
2、L
3、M、mおよびnは、本明細書で定義されている通りである)。構造(I)の化合物は、様々な処置法の治療剤としての使用を含めた、いくつかの用途における利用が見いだされる。
別の実施形態では、それを必要とする対象に、治療有効量の構造(I)の化合物または構造(I)の化合物を含む組成物を投与するステップを含む、疾患を処置する方法であって、Mはそれぞれ、独立して、疾患を処置するのに有効な生物活性部分を含む、方法が提供される。
本発明のこれらの態様および他の態様が、以下の詳細説明を参照すると明白になろう。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の記載において、ある種の具体的な詳細は、本発明の様々な実施形態の完全な理解をもたらすために記載されている。しかし、当業者は、これらの詳細なしに本発明が行われ得ることを理解しているであろう。
文脈上異なる解釈を要する場合を除き、本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」などのその変化形は、オープンな包括的な意味で、すなわち、「以下に限定されないが、含む」として解釈されるべきである。
【0006】
本明細書全体を参照して、「一実施形態」または「実施形態」という場合、これらの実施形態に関連して記載されている、特定の特徴、構造または性質が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書の全体にわたる様々な位置における、「一実施形態では」または「実施形態では」という言い回しの出現は、すべてが、同じ実施形態を必ずしも指すわけではない。さらに、具体的な特徴、構造または性質は、1つまたは複数の実施形態における、任意の好適な方法において組み合わされてもよい。
「アミノ」とは、-NH2基を指す。
「カルボキシ」とは、-CO2H基を指す。
「シアノ」とは、-CN基を指す。
「ホルミル」」とは、-C(=O)H基を指す。
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」とは、-OH基を指す。
「イミノ」とは、=NH基を指す。
「ニトロ」とは、-NO2基を指す。
「オキソ」とは、=O置換基を指す。
「スルフヒドリル」とは、-SH基を指す。
「チオキソ」とは、=S基を指す。
【0007】
「アルキル」とは、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子(C1-C12アルキル),1~8個の炭素原子(C1-C8アルキル)または1~6個の炭素原子(C1-C6アルキル)を有する、炭素原子および水素原子のみからなる直鎖状または分岐状の炭化水素鎖の基であって、単結合によって分子の残りに結合している炭化水素鎖の基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシルなどを指す。本明細書中において特に具体的に明記しない限り、アルキル基は、置換されていてもよい。
【0008】
「アルキレン」または「アルキレン鎖」とは、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子を有する、炭素および水素のみからなる、分子の残りをラジカル基に連結する、二価の直鎖状または分岐状炭化水素鎖、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレン、プロピニレン、n-ブチニレンなどを指す。アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残りに、かつ単結合を介してラジカル基に結合している。分子の残りおよびラジカル基へのアルキレン鎖の結合点は、この鎖内の1個の炭素または任意の2つの炭素を介することができる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキレンは、置換されていてもよい。
【0009】
「アルケニレン」または「アルケニレン鎖」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、2~12個の炭素原子を有する、炭素および水素のみからなる、分子の残りをラジカル基に連結する、二価の直鎖状または分岐状炭化水素鎖、例えば、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレンなどを指す。アルケニレン鎖は、単結合を介して分子の残りに、および二重結合または単結合を介してラジカル基に結合している。アルケニレン鎖の、分子の残りおよびラジカル基への結合点は、この鎖内の1個の炭素または任意の2個の炭素を介することができる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルケニレンは置換されていてもよい。
「アルキニレン」または「アルキニレン鎖」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有し、2~12個の炭素原子を有する、炭素および水素のみからなる、分子の残りをラジカル基に連結する、二価の直鎖状または分岐状炭化水素鎖、例えば、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレンなどを指す。アルキニレン鎖は、単結合を介して分子の残りに、および二重結合または単結合を介してラジカル基に結合している。アルキニレン鎖の、分子の残りおよびラジカル基への結合点は、この鎖内の1個の炭素または任意の2個の炭素を介することができる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキニレンは、置換されていてもよい。
【0010】
「アルキルエーテル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素結合が、炭素-酸素結合により置き換えられている、上で定義されている任意のアルキル基を指す。炭素-酸素結合は、末端(アルコキシ基中として)に存在していてもよく、または炭素-酸素結合は内部(すなわち、C-O-C)に存在していてもよい。アルキルエーテルは、少なくとも1つの炭素-酸素結合を含むが、1つ超で含むことがある。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)は、アルキルエーテルの意味に含まれている。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキルエーテル基は、置換されていてもよい。例えば、一部の実施形態では、アルキルエーテルは、アルコールまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcにより置換されており、Ra、RbおよびRcはそれぞれ、構造(I)の化合物に関して定義されている通りである。
「アルコキシ」とは、式-ORaの基を指し、Raは、1~12個の炭素原子を含有する、上で定義したアルキル基である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルコキシ基は、置換されていてもよい。
【0011】
「アルコキシアルキルエーテル」とは、式-ORaRbの基を指し、Raは、1~12個の炭素原子を含有する、上で定義したアルキレン基であり、Rbは、本明細書で定義されているアルキルエーテル基である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルコキシアルキルエーテル基は、置換されていてもよく、例えば、アルコールまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcにより置換されていてもよく、Ra、RbおよびRcはそれぞれ、構造(I)の化合物に関して定義されている通りである。
【0012】
「ヘテロアルキル」とは、アルキル基内、またはアルキル基の末端において、少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、Si、N、O、PまたはS)を含む、上で定義したアルキル基を指す。一部の実施形態では、ヘテロ原子は、アルキル基内に存在する(すなわち、ヘテロアルキルは、少なくとも1つの炭素-[ヘテロ原子]x-炭素結合を含み、xは、1、2または3である)。他の実施形態では、ヘテロ原子は、アルキル基の末端に存在し、したがって、該アルキル基を分子の残りに結合させる働きをし(例えば、M1-H-A)、M1は、分子の一部であり、Hは、ヘテロ原子であり、Aは、アルキル基である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアルキル基は、置換されていてもよい。例示的なヘテロアルキル基には、ホスホジエステル結合などのリン-酸素結合を含んでもよい、エチレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド)が含まれる。
「ヘテロアルコキシ」とは、式-ORaの基を指し、Raは、1~12個の炭素原子を含有する、上で定義したヘテロアルキル基である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアルコキシ基は、置換されていてもよい。
【0013】
「ヘテロアルキレン」とは、アルキレン鎖内、またはアルキレン鎖の末端において、少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、Si、N、O、PまたはS)を含む、上で定義したアルキレン基を指す。一部の実施形態では、ヘテロ原子は、アルキレン鎖内に存在する(すなわち、ヘテロアルキレンは、少なくとも1つの炭素-[ヘテロ原子]-炭素結合を含み、xは、1、2または3である)。他の実施形態では、ヘテロ原子は、アルキレンの末端に存在し、該アルキレンを分子の残りに結合させるよう働く(例えば、M1-H-A-M2、M1およびM2は、分子の一部であり、Hは、ヘテロ原子であり、Aは、アルキレンである)。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアルキレン基は、置換されていてもよい。例示的なヘテロアルキレン連結基が、以下に例示されている:
【0014】
【化2】
"Cリンカー"
ヘテロアルキレンリンカーの様々な実施形態には、上記のC-リンカーの多量体が含まれる。
「ヘテロアルケニレン」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、上で定義したヘテロアルキレンである。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアルケニレン基は、置換されていてもよい。
「ヘテロアルキニレン」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む、ヘテロアルキレンである。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアルキニレン基は、置換されていてもよい。
【0015】
「ヘテロ原子リンカー」に関連する「ヘテロ原子」とは、1個または複数のヘテロ原子からなる、リンカー基を指す。例示的なヘテロ原子リンカーには、Si、O、N、PおよびSからなる群から選択される単一原子、および複数のヘテロ原子、例えば、式-P(O-)(=O)O-または-OP(O-)(=O)O-および多量体、ならびにそれらの組合せを有するリンカーが含まれる。
「ホスフェート」とは、-OP(=O)(Ra)Rb基(Raは、OH、O-またはORcであり、Rbは、OH、O-、ORcである)、チオホスフェート基またはさらなるホスフェート基(Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である)を指す。
【0016】
「ホスホアルキル」とは、-OP(=O)(Ra)Rb基を指し、Raは、OH、O-またはORcであり、Rbは、-Oアルキルであり、Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ホスホアルキル基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、ホスホアルキル基中の-Oアルキル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルのうちの1つまたは複数により置換されていてもよい。
【0017】
「ホスホアルキルエーテル」とは、-OP(=O)(Ra)Rb基を指し、Raは、OH、O-またはORcであり、Rbは、-Oアルキルエーテルであり、Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ホスホアルキルエーテル基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、ホスホアルキルエーテル基中の-Oアルキルエーテル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルのうちの1つまたは複数により置換されていてもよい。
「チオホスフェート」とは、-OP(=Ra)(Rb)Rc基(Raは、OまたはSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、Rcは、OH、SH、O-、S-、ORd、SRd、ホスフェート基またはさらなるチオホスフェート基であり、Rdは、対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、i)RaはSであり、ii)RbはS-またはSRdであり、iii)Rcは、SH、S-またはSRdであり、またはiv)i)、ii)および/またはiii)の組合せであることを条件とする)を指す。
【0018】
「チオホスホアルキル」とは、-OP(=Ra)(Rb)Rc基を指し、Raは、OまたはSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、Rcは、-Oアルキルであり、Rdは、対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、i)RaはSであり、ii)Rbは、S-またはSRdであり、またはiii)RaはSであり、Rbは、S-またはSRdであることを条件とする。本明細書において特に具体的に明記しない限り、チオホスホアルキル基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、チオホスホアルキル基中の-Oアルキル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルのうちの1つまたは複数により置換されていてもよい。
【0019】
「チオホスホアルキルエーテル」とは、-OP(=Ra)(Rb)Rc基を指し、Raは、OまたはSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、Rcは、-Oアルキルエーテルであり、Rdは、対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、i)Raは、Sであり、ii)Rbは、S-またはSRdであり、またはiii)Raは、Sであり、Rbは、S-またはSRdであることを条件とする。本明細書において特に具体的に明記しない限り、チオホスホアルキルエーテル基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、チオホスホアルキル基中の-Oアルキルエーテル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルのうちの1つまたは複数により置換されていてもよい。
【0020】
「炭素環式」とは、3~18個の炭素原子を含む、安定な3~18員の芳香族環または非芳香族環を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、炭素環式環は、単環式環系、二環式環系、三環式環系または四環式環系とすることができ、これらは、縮合環系または架橋環系を含んでもよく、部分飽和または完全飽和であってもよい。非芳香族カルボシクリルラジカルには、シクロアルキルが含まれる一方、芳香族カルボシクリルラジカルには、アリールが含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、炭素環式基は、置換されていてもよい。
「シクロアルキル」とは、安定な非芳香族単環式環または多環式炭素環式環を指し、これらは、3~15個の炭素原子を有する、好ましくは3~10個の炭素原子を有する、飽和もしくは不飽和な縮合環系または架橋環系であって、単結合によって分子の残りに結合している、縮合環系または架橋環系を含んでもよい。単環式シクロカルキル(cyclocalkyl)には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが含まれる。多環式シクロアルキルには、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチル-ビシクロ-[2.2.1]ヘプタニルなどが含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、シクロアルキル基は置換されていてもよい。
【0021】
「アリール」は、少なくとも1つの炭素環式芳香族環を含む環系を指す。一部の実施形態では、アリールは、6~18個の炭素原子を含む。アリール環は、単環式環系、二環式環系、三環式環系または四環式環系であってもよく、これらは、縮合環系または架橋環系を含んでもよい。アリールには、以下に限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレンおよびトリフェニレンから誘導されるアリールが含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アリール基は、置換されていてもよい。
【0022】
「複素環式」は、1~12個の炭素原子、ならびに窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子を含む、安定な3~18員の芳香族環または非芳香族環を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、複素環式環は、単環式環系、二環式環系、三環式環系または四環式環系であってもよく、これらは、縮合環系または架橋環系を含んでもよく、複素環式環中の窒素原子、炭素原子または硫黄原子は、酸化されていてもよく、窒素原子は、四級化されていてもよく、複素環式環は、部分飽和または完全飽和であってもよい。芳香族複素環式環の例は、ヘテロアリールの定義において、以下に列挙されている(すなわち、ヘテロアリールは、複素環式のサブセットである)。非芳香族複素環式環の例には、以下に限定されないが、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾロピリミジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリオキサニル、トリチアニル、トリアジナニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル、および1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、複素環式基は、置換されていてもよい。
【0023】
「ヘテロアリール」とは、1~13個の炭素原子、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子、および少なくとも1つの芳香族環を含む、5~14員の環系を指す。本発明のある種の実施形態の目的のため、ヘテロアリールラジカルは、単環式環系、二環式環系、三環式環系または四環式環系であってもよく、これらは、縮合環系または架橋環系を含んでもよく、ヘテロアリールラジカル中の窒素原子、炭素原子または硫黄原子は、酸化されていてもよく、窒素原子は、四級化されていてもよい。例には、以下に限定されないが、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、ベンゾオキサゾリノニル、ベンゾイミダゾールチオニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、1-オキシドピリジニル、1-オキシドピリミジニル、1-オキシドピラジニル、1-オキシドピリダジニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プテリジノニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリジノニル、ピラジニル、ピリミジニル、プリルイミジノニル、ピリダジニル、ピロリル、ピリド[2,3-d]ピリミジノニル、キナゾリニル、キナゾリノニル、キノキサリニル、キノキサリノニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-オニル、チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-オニル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、およびチオフェニル(すなわちチエニル)が含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアリール基は、置換されていてもよい。
【0024】
「縮合した」とは、少なくとも2つの環を含む環系を指し、この2つの環は、少なくとも1個の共通した環原子、例えば、2つの共通した環原子を共有する。縮合環が、ヘテロシクリル環またはヘテロアリール環である場合、共通環原子は、炭素または窒素とすることができる。縮合環は、二環式、三環式、四環式(tertracyclic)などを含む。
【0025】
本明細書に使用されている用語「置換されている」は、上記の基(例えば、アルキル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル、チオホスホアルキル、チオホスホアルキルエーテル、炭素環式、シクロアルキル、アリール、複素環式および/またはヘテロアリール)のいずれかを意味し、少なくとも1個の水素原子(例えば、1個、2個、3個またはすべての水素原子)が、以下に限定されないが:F、Cl、BrおよびIなどのハロゲン原子;ヒドロキシル基、アルコキシ基およびエステル基などの基中の酸素原子;チオール基、チオアルキル基、スルホン基、スルホニル基およびスルホキシド基などの基中の硫黄原子;アミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N-オキシド、イミドおよびエナミンなどの基中の窒素原子;トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基およびトリアリールシリル基などの基中のケイ素原子;および様々な他の基中の他のヘテロ原子などの非水素原子への結合によって置き換えられている。「置換されている」はまた、1個または複数の水素原子が、オキソ、カルボニル、カルボキシルおよびエステル基中の酸素、およびイミン、オキシム、ヒドラゾンおよびニトリルなどの基中の窒素などのヘテロ原子への高次結合(例えば、二重結合または三重結合)によって置き換えられている上記の基のいずれかを意味する。例えば、「置換されている」には、1個または複数の水素原子が、-NRgRh、-NRgC(=O)Rh、-NRgC(=O)NRgRh、-NRgC(=O)ORh、-NRgSO2Rh、-OC(=O)NRgRh、-ORg、-SRg、-SORg、-SO2Rg、-OSO2Rg、-SO2ORg、=NSO2Rgおよび-SO2NRgRhによって置き換えられている上記の基のいずれかが含まれる。「置換されている」はまた、1個または複数の水素原子が、-C(=O)Rg、-C(=O)ORg、-C(=O)NRgRh、-CH2SO2Rg、-CH2SO2NRgRhによって置き換えられている上記の基のいずれかを意味する。上述において、RgおよびRhは、同一であるかまたは異なっており、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、N-ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、N-ヘテロアリールおよび/またはヘテロアリールアルキルである。「置換されている」は、1個または複数の水素原子が、アミノ、シアノ、ヒドロキシル、イミノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、N-ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、N-ヘテロアリールおよび/またはヘテロアリールアルキル基への結合によって置き換えられている、上記の基のいずれかをさらに意味する。一部の実施形態では、任意選択の置換基は、-OP(=Ra)(Rb)Rcであり、Ra、RbおよびRcはそれぞれ、構造(I)の化合物に関して定義されている通りである。さらに、上述の置換基のいずれかはまた、上述の置換基のうちの1つまたは複数により置換されていてもよい。
【0026】
「コンジュゲーション」または「バイオコンジュゲーション」とは、2つの分子間の安定な共有結合を形成する化学戦略を指す。用語「バイオコンジュゲーション」は、分子の1つが生体分子(例えば、抗体)である場合に、一般に使用される。このような戦略に由来する生成物または化合物が、コンジュゲートである、コンジュゲートされている、または文法的等価物である。
「蛍光」とは、特定の周波数の光を吸収して、異なる周波数の光を発光することが可能な分子を指す。蛍光は、当業者に周知である。
「有色の」とは、有色スペクトル(すなわち、赤色、黄色、青色など)内の光を吸収する分子を指す。
「リンカー」とは、炭素、酸素、窒素、硫黄、リンおよびそれらの組合せなどの少なくとも1個の原子の連続鎖であって、分子のある部分を同一分子の別の部分に、または異なる分子に、部分または固体支持体(例えば、マイクロ粒子)に連結させる連続鎖を指す。リンカーは、イオン性相互作用または水素結合相互作用などの、共有結合または他の手段を介して分子に結合することができる。
【0027】
用語「生体分子」とは、核酸、炭水化物、アミノ酸、ポリペプチド、グリコタンパク質、ホルモン、アプタマーおよびそれらの混合物を含めた、様々な生体物質のいずれかを指す。より詳細には、用語は、非限定的に、RNA、DNA、オリゴヌクレオチド、修飾または誘導化ヌクレオチド、酵素、受容体、プリオン、受容体リガンド(ホルモンを含む)、抗体、抗原および毒素、ならびに細菌、ウイルス、血液細胞および組織細胞を含むことが意図されている。本発明の目視により検出可能な生体分子(例えば、構造(I)の化合物に連結した生体分子を有する構造(I)の化合物)は、本明細書にさらに記載されている通り、生体分子上のアミノ、ヒドロキシ、カルボキシルまたはスルフヒドリル基などの任意の利用可能な原子または官能基を介して、生体分子の化合物への結合を可能にする反応性基を有する上記の化合物に生体分子を接触させることによって調製される。
【0028】
「反応性基」は、例えば、置換、酸化、還元、付加または環化付加反応によって、第2の反応性基(例えば、「相補性反応性基」)と反応して、1つまたは複数の共有結合を形成することが可能な部分である。例示的な反応性基が、表1に提示されており、例えば、求核剤、求電子剤、ジエン、求ジエン体、アルデヒド、オキシム、ヒドラゾン、アルキン、アミン、アジド、アシルアジド、アシルハライド、ニトリル、ニトロン、スルフヒドリル、ジスルフィド、ハロゲン化スルホニル、イソチオシアネート、イミドエステル、活性化エステル、ケトン、α,β-不飽和カルボニル、アルケン、マレイミド、α-ハロイミド、エポキシド、アジリジン、テトラジン、テトラゾール、ホスフィン、ビオチン、チイランなどを含む。
【0029】
用語「目視可能な」および「目視により検出可能な」は、本明細書において、事前の照射、または化学的活性化もしくは酵素的活性化なしに、目視検査によって観察可能な物質を指すために使用される。このような目視により検出可能な物質は、約300~約900nmの範囲のスペクトル領域の光を吸収して、発光する。好ましくは、このような物質は、強く色を呈し、好ましくは、少なくとも約40,000M-1cm-1、より好ましくは少なくとも約50,000M-1cm-1、さらにより好ましくは少なくとも約60,000M-1cm-1、さらにより好ましくは少なくとも約70,000M-1cm-1、および最も好ましくは少なくとも約80,000M-1cm-1のモル吸光係数を有する。本開示の化合物の実施形態は、裸眼による観察によって検出され得るか、または非限定的に、吸収スペクトル光度計、透過型光学顕微鏡、デジタルカメラおよびスキャナを含めた光学に基づく検出デバイスを活用して検出され得る。目視により検出可能な物質は、可視スペクトルの光を発光および/または吸収するものに限定されない。紫外線(UV)領域(約10nm~約400nm)、赤外(IR)領域(約700nm~約1mm)の光を発光および/または吸収する物質、ならびに電磁スペクトルの他の領域において発光および/または吸収する物質が、「目視により検出可能な」物質の範囲内にやはり含まれる。
【0030】
本発明の実施形態の目的のため、用語「光安定性可視色素」とは、本明細書の上で定義されている通り、目視により検出可能であり、かつ光への曝露時に有意に改変または分解されない化学部分を指す。好ましくは、光安定性可視色素は、少なくとも1時間の光への曝露後に、有意な脱色または分解を示さない。より好ましくは、可視色素は、少なくとも12時間、さらにより好ましくは少なくとも24時間、さらにより好ましくは少なくとも1週間、最も好ましくは少なくとも1か月間、光への曝露後に安定である。本発明の化合物および方法に使用するのに好適な光安定性可視色素の非限定例は、アゾ色素、チオインジゴ色素、キナクリドン顔料、ジオキサジン、フタロシアニン、ペリノン、ジケトピロロピロール、キノフタロンおよびトルアリカルボニウム(truarycarbonium)を含む。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「ペリレン誘導体」は、目視により検出可能な任意の置換ペリレンを含むことが意図されている。しかし、この用語は、ペリレンをそれ自体含むことを意図するものではない。用語「アントラセン誘導体」、「ナフタレン誘導体」、および「ピレン誘導体」が、同様に使用される。一部の好ましい実施形態では、誘導体(例えば、ペリレン、ピレン、アントラセンまたはナフタレン誘導体)は、イミド、ビス-イミドまたはペリレンのヒドラザムイミド(hydrazamimide)誘導体、アントラセン、ナフタレンまたはピレンである。
「固体支持体」とは、分子の固定相支持体に関して、当分野で公知の任意の固体基材を指し、例えば、「マイクロ粒子」とは、以下に限定されないが、ガラス製ビーズ、磁気ビーズ、ポリマー製ビーズ、非ポリマー製ビーズなどを含めた、本発明の化合物への結合に有用ないくつかの小型粒子のいずれかを指す。ある種の実施形態では、マイクロ粒子はポリスチレン製ビーズを含む。
「固体支持体残基」とは、分子が固体支持体から開裂されると、分子に結合した状態のままである官能基を指す。固体支持体残基は、当分野で公知であり、固体支持体の構造、および分子を固体支持体に連結する基に基づいて容易に誘導体化され得る。
【0032】
「標的指向性部分」とは、腫瘍細胞抗原などの特定の標的に選択的に結合するか、またはこれと会合する部分である。「選択的に」結合するまたは会合するとは、標的指向性部分が、他の標的に比べて所望の標的と優先的に会合する、またはこれに結合することを意味する。一部の実施形態では、本明細書において開示されている化合物は、この化合物を腫瘍細胞抗原(すなわち、標的指向性部分の標的)に選択的に結合または会合させる目的のための標的指向性部分への連結基を含み、こうして、腫瘍細胞への生物活性部分の送達が可能になる。例示的な標的指向性部分は、以下に限定されないが、抗体、抗原、核酸配列、酵素、タンパク質、細胞表面受容体アンタゴニストなどを含む。一部の実施形態では、標的指向性部分は、細胞表面または細胞中の標的特徴、例えば細胞膜表面または他の細胞構造表面の標的特徴に選択的に結合または会合する、抗体などの部分であり、こうして目的の細胞またはその内部に生物活性部分を送達することが可能となる。所望の生物学的標的に選択的に結合または会合する低分子は、ある種の実施形態における標的指向性部分としても企図される。当業者は、様々な実施形態において有用な他の生物学的標的、および対応する標的指向性部分を理解しているであろう。
【0033】
「生理的に開裂可能なリンカー」とは、生物または細胞系のインビボまたはインビトロ環境に存在している間に、規定の方法で分裂または分離されて、2つ以上の個別の分子をもたらすことができる分子連結基を指す。一般に、このような開裂事象または切断事象を含む生理的条件は、約20~40℃の範囲の温度、約1atm(101kPaまたは14.7psi)の大気圧、約6~8のpH、約1~20mMのグルコース濃度、大気酸素濃度および地球の重力を含むことができる。一部の実施形態では、生理的条件は、酵素条件(すなわち、酵素による開裂)を含む。結合開裂または切断は、均質開裂または不均質開裂とすることができる。
【0034】
本明細書において開示されている本発明の実施形態はまた、1個または複数の原子が異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられることによって同位体標識されている、構造(I)のすべての化合物を包含することが意図されている。開示化合物に組み込むことが可能な同位体の例には、それぞれ、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123Iおよび125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体を含む。
構造(I)の同位体標識化合物は、一般に、当業者に公知の従来技法により、または以下において、および以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用する以下の実施例に記載されているものに類似した方法によって一般に調製され得る。
「安定な化合物」および「安定な構造」は、反応混合物から有用な純度の程度となるまでの単離、および有効な治療剤への製剤化の間に分解しない(survive)ほど十分に頑強な化合物を示すことが意図されている。
【0035】
「任意選択の(Optional)」または「してもよい(optionally)」は、その後に記載されている事象または状況が発生することがあるか、または発生しないことがあること、およびこの記載が、前記事象または状況が起こる場合、およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「置換されていてもよいアルキル」は、このアルキル基が置換されていてもよいこと、または置換されていなくてもよいこと、およびこの記載は置換アルキル基と置換基を有していないアルキル基の両方を含むことを意味する。
「塩」は、酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。
【0036】
「酸付加塩」とは、以下に限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および以下に限定されないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、シヨウノウ酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-二スルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、粘膜酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-二スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサルチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などの有機酸と共に形成される塩を指す。
【0037】
「塩基付加塩」とは、無機塩基または有機塩基の遊離酸への付加から調製される塩を指す。無機塩基に由来する塩には、以下に限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などが含まれる。有機塩基に由来する塩には、以下に限定されないが、一級、二級および三級アミン、および天然の置換アミンを含めた置換アミン、環式アミンの塩、ならびにアンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩基性イオン交換樹脂が含まれる。特に、好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0038】
結晶化は、本明細書において記載されている化合物の溶媒和物を生じることがある。本発明の実施形態は、記載されている化合物の溶媒和物のすべてを含む。本明細書で使用する場合、用語「溶媒和物」とは、本発明の化合物の1つまたは複数の分子と1つまたは複数の溶媒分子を含む凝集物を指す。溶媒は水であってもよく、この場合、溶媒和物は水和物とすることができる。代替的に、溶媒は、有機溶媒であってもよい。したがって、本発明の化合物は、一水和物、二水和物、ヘミ水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物など、ならびに対応する溶媒和物形態を含めた、水和物として存在することがある。本発明の化合物は、真の溶媒和物であってもよい一方、他の場合では、本発明の化合物は、単に偶発的な水または別の溶媒を単に保持することがあるか、または水とある偶発的な溶媒との混合物となることがある。
【0039】
本発明の化合物(例えば、構造Iの化合物)の実施形態、またはその塩、互変異性体もしくは溶媒和物は、1個または複数の立体中心を含有してもよく、したがって、絶対立体化学に関して、(R)-もしくは(S)-、またはアミノ酸の場合、(D)-もしくは(L)-と定義され得る鏡像異性体、ジアステレオマーおよび他の立体異性体が生じることがある。本発明の実施形態は、すべてのこのような可能な異性体、ならびにそのラセミ体および光学的に純粋な形態を含むことが意図されている。光学活性な(+)および(-)、(R)-および(S)-、または(D)-および(L)-異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を使用して調製することができるか、または従来の技法、例えばクロマトグラフィーおよび分別結晶化を使用して分割することができる。個々の鏡像異性体の調製/単離に関する従来の技法には、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または例えば、キラルな高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ体(または、塩もしくは誘導体のラセミ体)の分割が含まれる。本明細書において記載されている化合物が、オレフィン性二重結合、または幾何対称性を生じる他の特徴を含有する場合、特に指定しない限り、この化合物は、EおよびZ幾何異性体を含むことが意図されている。同様に、互変異性体のすべてが含まれることがやはり意図されている。
【0040】
「立体異性体」とは、同じ結合によって結合された同一原子から構成されているが、異なる三次元構造を有している化合物であって、相互変換することができない化合物を指す。本発明は、様々な立体異性体およびそれらの混合物を企図しており、「鏡像異性体」を含み、これは、それらの分子が互いに重なり合わない鏡像となる2つの立体異性体を指す。
「互変異性体」とは、分子の1個の原子から同一分子の別の原子へのプロトン移動を指す。本発明は、任意の前記化合物の互変異性体を含む。本化合物の様々な互変異性体は、当業者によって容易に誘導可能である。
本明細書において使用される化学命名プロトコルおよび構造略図は、ACD/命名バージョン9.07ソフトウェアプログラムおよび/またはChemDraw Ultraバージョン11.0ソフトウェア命名プログラム(CambridgeSoft)を使用する、I.U.P.A.C.命名法システムの修正版である。当業者が精通している一般名称も使用される。
【0041】
上記の通り、本発明の一実施形態では、生物学的に活性な部分と標的指向性部分との間の共有結合性リンカーとして有用な化合物が提供される。他の実施形態では、1つまたは複数の生物学的に活性な部分を含む化合物の調製のための合成中間体として有用な化合物が提供される。一般用語では、本発明の実施形態は、生物学的に活性な部分側鎖を有するポリマーを対象としている。生物学的に活性な部分は、化合物が投与されるpHにおいて、親水性部分を含んでもよい、ホスホアルキルまたは他の連結基を有するリンカーによって連結されている。理論によって拘束されることを望むものではないが、リンカーの長さおよび特定の性質(例えば、親水性、電荷など)は、所望の標的に薬物が放出されるまで、生物活性を保護または保留する一助になると考えられる。別の態様では、リンカーは、所望の標的における生物学的に活性な部分の蓄積を増大するように作用する、生物学的に活性な部分と標的指向性部分との間の連結をもたらす。すなわち、生物活性は、もっぱら、所期の標的において蓄積するために生物活性に効力があるか、または生物活性が増大するのであり、これは、治療の潜在的な副作用(例えば、細胞毒性)を最小化する。
【0042】
例えば、リンカーは、負電荷が望ましい場合、カルボキシレート、ホスフェートおよび/またはチオホスフェートの部分を含んでもよい。正電荷が望ましい場合、一級もしくは四級アミン基、および/または正電荷を保持することが可能な他の基を含有する連結基が使用されてもよい。「電荷を帯びた部分」とは、この部分が、あるpHにおいて、例えば、化合物またはコンジュゲートが投与されるpHにおいて電荷を帯びているが、「電荷を帯びた部分」が、すべてのpHにおいて電荷を帯びていることが必要なわけではないことが理解される。
したがって、一実施形態では、以下の構造(I)を有する化合物:
【0043】
【化3】
(I)
またはその立体異性体、薬学的に許容される塩もしくは互変異性体(式中、
Mは、出現毎に独立して、生物活性部分もしくはその断片、生物活性部分のプロドラッグもしくはその断片、蛍光色素、イメージング剤または放射性同位体結合部位であり、ただし、出現するMの少なくとも1つは、蛍光色素ではないことを条件とし、
Lは、生理的に開裂可能なリンカーであり、
L
1は、出現毎に独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレンまたはヘテロアルキニレンリンカーであり、
L
2およびL
3は、出現毎に独立して、任意選択のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
R
1は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、-H、-OH、-SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、アルキルアミニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、Qもしくはそれらの保護形態、またはL’であり、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、アルキルアミニル、アルキルカルボニルおよびアルキルオキシカルボニルは、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルもしくはチオホスホアルキルエーテル、またはそれらの組合せにより置換されていてもよく、
R
4は、出現毎に独立して、OH、SH、O
-、S
-、OR
dまたはSR
dであり、
R
5は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
R
dは、陽イオンであり、
Qは、出現毎に独立して、標的指向性部分の相補性反応性基Q’と共有結合の形成が可能な、反応性基、またはその保護形態を含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Qへの共有結合を含むリンカー、標的指向性部分、標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、固体支持体もしくは固体支持体残基への共有結合を含むリンカー、固体支持体もしくは固体支持体残基への共有結合を含むリンカー、または構造(I)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、
mは、出現毎に独立して、0以上の整数であり、ただし、出現するmの少なくとも1つは、3以上の整数であることを条件とし、
nは、1以上の整数である)
を提供する。
【0044】
構造(I)の化合物中の様々なリンカーおよび置換基(例えば、M、Q、R1、R2、R3、R4、R5、L、L1、L2、L3およびL’)は、さらにもう1つの置換基により置換されていてもよい。例えば、一部の実施形態では、任意選択の置換基は、構造(I)の化合物の水溶解度、透過性、保持または他の特性を最適化するために選択される。ある種の実施形態では、構造(I)の化合物中のアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、アルキルアミニル、アルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニルはそれぞれ、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、スルフヒドリル、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルおよびチオホスホアルキルエーテルからなる群から選択される、さらに1つの置換基により置換されていてもよい。ある種の実施形態では、任意選択の置換基は、-OP(=Ra)(Rb)Rcであり、Raは、OまたはSであり、Rbは、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、Rcは、OH、SH、O-、S-、ORd、SRd、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルであり、Rdは、対イオンである。ある種の実施形態では、置換基は、細胞浸透度または組織浸透度が増大するように選択される。関連する実施形態では、置換基は、細胞保持または組織保持を増大させるよう選択される。
【0045】
ある種の実施形態では、本化合物は、以下の構造(IA):
【化4】
(IA)
(式中、x
1およびx
2は、出現毎に独立して、0~6の整数である)を有する。ある種の関連する実施形態では、L
1は、出現毎に独立して、C
1-C
6アルキレンまたはC
2-C
6アルキニレンである。
【0046】
一部の実施形態では、本化合物は、以下の構造(IB):
【化5】
(IB)
(式中、
x
1およびx
2は、出現毎に独立して、0~6の整数であり、
yは、1~6の整数である)を有する。それらの実施形態の一部では、yは2である。一部の実施形態では、x
1およびx
2は、出現毎に、それぞれ1である。一部の他の実施形態では、出現毎に、x
1は0であり、x
2は1である。
【0047】
一部の実施形態では、R
4は、出現毎に独立して、OH、O
-またはOR
dである。「OR
d」および「SR
d」は、陽イオンと結合したO
-およびS
-を指すことが意図されていることが理解される。例えば、ホスフェート基の二ナトリウム塩は、以下:
【化6】
(式中、R
dは、ナトリウム(Na
+)である)
として表すことができる。
【0048】
一部の実施形態では、R5は、出現毎に、オキソである。
【0049】
一部のさらなる具体的な実施形態では、本化合物は、以下の構造(IB’)または(IB”):
【化7】
のうちの1つを有する。
【0050】
ある種の実施形態では、R1は、Hである。
一部の実施形態では、出現するMの少なくとも1つは、生物活性部分を含む。他の実施形態では、Mは、出現毎に独立して、生物活性部分を含む。
【0051】
一部の実施形態では、R2およびR3は、それぞれ独立して、OHまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcである。より具体的な実施形態では、R2またはR3の一方はOHまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcであり、R2またはR3のもう一方は、Q、またはQへの共有結合を含むリンカーである。
ある種の実施形態では、R2またはR3の1つは、L’であり、L’は、固体支持体への共有結合を含むリンカーである。そのような実施形態の一部では、固体支持体は、ポリマー製ビーズまたは非ポリマー製ビーズである。
ある種の他の実施形態では、R2またはR3の1つは、L’であり、L’は、標的指向性部分、または標的指向性部分へのリンカーである。それらの実施形態の一部では、L’は、標的指向性部分へのリンカーであり、このリンカーは、ヘテロアルキレンリンカーを含む。
【0052】
リンカーLは、化合物の残りへのM部分の結合点として使用され得る。例えば、一部の実施形態では、構造(I)の化合物への合成前駆体が調製され、M部分は、任意の数の、当分野において公知の容易に利用可能な方法、例えば、「クリックケミストリー」と称される方法を使用して合成前駆体に結合される。この目的の場合、迅速かつ実質的に不可逆な反応のいずれかを使用して、構造(I)の化合物を形成するための合成前駆体にMを結合することができる。例示的な反応には、アジドとアルキンとのトリアゾールを形成する銅触媒反応(Huisgen 1,3-双極子付加環化)、ジエンと求ジエンとの反応(Diels-Alder)、歪みにより促進されるアルキン-ニトロン環化付加、歪アルケンとアジド、テトラジンまたはテトラゾールとの反応、アルケンとアジドの[3+2]環化付加、アルケンとテトラジンの逆需要Diels-Alder、アルケンとテトラゾールの光反応、および求電子性原子への求核攻撃による脱離基の置換などの様々な置換反応が含まれる。例示的な置換反応は、活性化エステル(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、イソシアネート、イソチオシアネートなどとのアミンの反応を含む。一部の実施形態では、Lを形成する反応は、水性環境で行われてもよい。
【0053】
したがって、一部の実施形態では、Lは、出現毎に、2つの相補性反応性基の反応によって形成可能な官能基、例えば、上述の「クリック」反応の1つの生成物である官能基を含むリンカーである。様々な実施形態では、出現するLの少なくとも1つについては、官能基は、アルデヒド、オキシム、ヒドラゾン、アルキン、アミン、アジド、アシルアジド、アシルハライド、ニトリル、ニトロン、スルフヒドリル、ジスルフィド、ハロゲン化スルホニル、イソチオシアネート、イミドエステル、活性化エステル(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、ケトン、α,β-不飽和カルボニル、アルケン、マレイミド、α-ハロイミド、エポキシド、アジリジン、テトラジン、テトラゾール、ホスフィン、ビオチンまたはチイラン官能基と、相補性反応性基との反応、例えば、アミンとN-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはイソチオシアネートとの反応によって形成され得る。
他の実施形態では、出現するLの少なくとも1つについては、官能基は、アルキンおよびアジドの反応によって形成され得る。他の実施形態では、出現するLの少なくとも1つについては、官能基は、アミン(例えば、一級アミン)およびN-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはイソチオシアネートの反応によって形成され得る。
【0054】
さらなる実施形態では、出現するLの少なくとも1つについては、官能基は、アルケン、エステル、アミド、チオエステル、ジスルフィド、炭素環式基、複素環式基またはヘテロアリール基を含む。さらなる実施形態では、出現するLの少なくとも1つについては、官能基は、アルケン、エステル、アミド、チオエステル、チオウレア、ジスルフィド、炭素環式基、複素環式基またはヘテロアリール基を含む。他の実施形態では、官能基は、アミドまたはチオウレアを含む。一部のさらなる具体的な実施形態では、出現するLの少なくとも1つについては、Lは、トリアゾリル官能基を含むリンカーである。他の実施形態では、出現するLの少なくとも1つについては、Lは、アミドまたはチオウレア官能基を含むリンカーである。
一部の実施形態は、適切な条件(例えば、生理的条件)下で、開裂可能なLを提供する。したがって、一部の実施形態では、Lは、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、ヒドラゾン、ホスホトリエステル、ジエステル、β-グルクロニド、二重結合、三重結合、エーテル結合、ケトンもしくはオキソ、ジオール、シアノ、ニトロまたはそれらの組合せを含む。
【0055】
一部の実施形態では、Lは、tert-ブチルオキシカルボニル、パラメトキシベンジル、ジアルキルまたはジアリールジアルコキシシラン、オルトエステル、アセタール、β-チオプロピオネート、ケタール、ホスホロアミデート、ヒドラゾン、ビニルエーテル、イミン、アコニチル、トリチル、ポリケタール、ビスアリールヒドラゾン、ジアゾベンゼン、ビビナールジオール、ピロリン酸ジエステルまたはバリン シトルリンを含む。
ある種の実施形態では、Lは、出現毎に独立して、6~8の範囲のpHにおいて、開裂可能なリンカーである。例えば、一部の実施形態では、Lは、pH6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1または8.0において、開裂可能なリンカーである。
【0056】
ある種の実施形態では、Lは、出現毎に独立して、20℃~40℃、25℃~35℃、30℃~35℃、30℃~37℃、35℃~37℃、35℃~40℃、32℃~38℃の範囲の温度において、開裂可能なリンカーである。ある種の実施形態では、Lは、出現毎に独立して、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃または約40℃の温度において開裂可能なリンカーである。
ある種の実施形態では、Lは、出現毎に独立して、酵素によって開裂可能なリンカーである。例えば、一部の実施形態では、酵素は、ヒドロラーゼ、オキシドレダクターゼまたはリアーゼである。ある種の実施形態では、酵素は、EC4.1(例えば、EC4.1.1、EC4.1.2、EC4.1.3またはEC4.1.99)、EC4.2、EC4.3、EC4.4、EC4.5、EC4.6またはEC4.99酵素である。
【0057】
ある種の実施形態では、Lは、以下の構造のうちの1つ:
【化8】
(式中、
Rは、H、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチルまたはフェニルであり、
Xは、OまたはCH
2であり、
nは、0より大きな整数である)を含む。
【0058】
さらに他の実施形態では、出現するLの少なくとも1つについては、L-Mは、以下の構造:
【化9】
(式中、L
1aおよびL
1bは、それぞれ独立して、任意選択のリンカーである)を有する。
【0059】
異なる実施形態では、出現するLの少なくとも1つについては、L-Mは、以下の構造:
【化10】
(式中、L
1aおよびL
1bは、それぞれ独立して、任意選択のリンカーである)を有する。
上述の様々な実施形態では、L
1aもしくはL
1b、またはそれらの両方が、存在しない。他の実施形態では、L
1aもしくはL
1b、またはそれらの両方が存在する。
【0060】
一部の実施形態では、L
1aまたはL
1bは、存在する場合、それぞれ独立してアルキレンまたはヘテロアルキレンである。例えば、一部の実施形態では、L
1aまたはL
1bは、存在する場合、独立して、以下の構造の1つ:
【化11】
を有する。
【0061】
構造(I)のさらに他の異なる実施形態では、Lは、出現毎に独立して、任意選択のアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーである。ある種の実施形態では、Lは、以下の構造の1つ:
【化12】
を有する。
【0062】
一部の具体的な実施形態では、出現するLの少なくとも1つは、以下の構造:
【化13】
のうちの1つを有する。
【0063】
一部の実施形態では、Lは出現毎に、以下の構造のうちの1つ:
【化14】
を有する。
さらなる実施形態では、L
2およびL
3は、出現毎に独立して、C
1-C
6アルキレン、C
2-C
6アルケニレンまたはC
2-C
6アルキニレンである。
他の実施形態では、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、-OP(=R
a)(R
b)OL’であり、L’は、Q、標的指向性部分、分析対象(例えば、分析対象分子)、固体支持体、固体支持体残基、アミノ酸、ヌクレオシド、または構造(I)のさらなる化合物へのアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーである。
【0064】
リンカーL’は、Q、標的指向性部分、分析対象(例えば、分析対象分子)、固体支持体、固体支持体残基、ヌクレオシドまたは構造(I)のさらなる化合物を、構造(I)の化合物に結合させるのに好適な任意のリンカーとすることができる。有利には、ある種の実施形態は、化合物の水溶解度を増大または最適化するために選択される、L’部分の使用を含む。ある種の実施形態では、L’は、ヘテロアルキレン部分である。一部の他のある種の実施形態では、L’は、アルキレンオキシドもしくはホスホジエステル部分、またはそれらの組合せを含む。
【0065】
ある種の実施形態では、L’は、以下の構造:
【化15】
(式中、
m”およびn”は、独立して、1~10の整数であり、
R
eは、H、電子対または対イオンであり、
L”は、標的指向性部分または標的指向性部分への連結基(例えば、抗体)である)を有する。
一部の実施形態では、m”は、4~10の整数、例えば、4、6または10である。他の実施形態では、n”は、3~6の整数、例えば、3、4、5または6である。
【0066】
ある種の実施形態では、標的指向性部分は、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストである。関連する実施形態では、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストは、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、肝細胞成長因子受容体(HGFR)阻害剤、インスリン様成長因子受容体(IGFR)阻害剤、フォレートまたはMET阻害剤である。ある種の実施形態では、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストは、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ)、ラパチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、オシメルチニブ、トバンチニブ(ARQ197)、クリゾチニブ、カボザンチニブ、チルホスチン系(tyrphostin)(例えば、AG538、AG1024)、ピロロ(2,3-d)-ピリミジン誘導体(例えば、NVP-AEW541)、モノクローナル抗体(例えば、フィギツムマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ネシツムマブ、ガニツマブ、シクスツムマブ、ダロツズマブ、ロバツムマブ、オナルツズマブ、K1、ラベツズマブ、ミラツズマブ、ロルボツズマブ、イノツズマブ)、BMS-777607、PF-02341066、PF-04217903、AMG-458、MK-2461、JNJ-38877605、GSK1363089(フォレチニブ)、XL880、XL184、ARQ197、E7050またはINCB28060である。
【0067】
ある種の実施形態では、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストは、EGFR(例えば、EGFRvIII)、HER2、葉酸受容体、CD19、CD20、CD22、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79b、CA6、CD138、CA6、メソテリン、ネクチン4、STEAP1、MUC16、MaPi2b、GCC、Trop-2、AGS-5、ENPP3、炭酸脱水酵素IX、GPNMB、PDMAを標的とする。
【0068】
一部の他の実施形態では、L”は、アルキレンまたはヘテロアルキレン部分である。一部の他のある種の実施形態では、L”は、アルキレンオキシド、ホスホジエステル部分、ペプチジルリンカー、スルフヒドリル、ジスルフィドもしくはマレイミド部分、またはそのそれらの組合せを含む。
【0069】
構造(I)の上述の化合物のいずれかの他のさらなる具体的な実施形態では、R
2またはR
3は、以下の構造の1つ:
R
2またはR
3は、以下の構造の1つ:
【化16】
を有する。
【0070】
構造(I)の化合物のある種の実施形態は、ペプチドの調製に当分野で公知の合成法に類似した固相合成法に準拠して調製することができる。したがって、一部の実施形態では、L’は、固体支持体または固体支持体残基への連結基である。様々な固体支持体(例えば、ポリスチレン、ポリアミド、PEGをベースとする)、保護基(例えば、Fmoc、Boc、トリフェニルメチル)、活性基(例えば、カルボジイミド、トリアゾール)、および他の物質が、容易に入手可能であり、一部の実施形態では、構造(I)の化合物の調製に使用することができる。固体支持体残基は、合成後に除去または修飾され得る。
【0071】
さらに他の実施形態では、Qは、出現毎に独立して、分析対象分子または固体支持体と共有結合を形成することが可能な反応性基を含む部分である。他の実施形態では、Qは、出現毎に独立して、相補性反応性基Q’と共有結合を形成することが可能な反応性基を含む部分である。例えば、一部の実施形態では、Q’は、構造(I)のさらなる化合物に存在し(例えば、R2またはR3位における)、QおよびQ’は相補性反応性基を含み、こうして、構造(I)の化合物と構造(I)のさらなる化合物との反応により、構造(I)の化合物の共有結合による二量体をもたらす。構造(I)の多量体化合物もまた、類似の方法で調製することができ、本発明の実施形態の範囲内に含まれる。
Q基のタイプ、および構造(I)の化合物の残りへのQ基の結合性は、特に限定されないが、ただし、Qは、所望の結合を形成するために適切な反応性を有する部分を含むことを条件とする。
ある種の実施形態では、Qは、水性条件下で加水分解を受けにくいが、分析対象分子または固体支持体に対応する基と結合を形成するのに十分な反応性のある部分(例えば、アミン、アジドまたはアルキン)である。
【0072】
構造(I)の化合物のある種の実施形態は、バイオコンジュゲーションの分野において、一般に使用されているQ基を含む。例えば、一部の実施形態では、Qは、求核性反応性基、求電子性反応性基または環化付加反応性基を含む。一部のより具体的な実施形態では、Qは、スルフヒドリル、ジスルフィド、活性化エステル、イソチオシアネート、アジド、アルキン、アルケン、ジエン、求ジエン体、酸ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル、ホスフィン、α-ハロアミド、ビオチン、アミノまたはマレイミド官能基を含む。一部の実施形態では、活性化エステルは、N-スクシンイミドエステル、イミドエステルまたはポリフルオロフェニル(polyfluorophenyl)エステルである。他の実施形態では、アルキンは、アルキルアジドまたはアシルアジドである。
【0073】
Q基は、保存安定性または他の所望の特性を増大させる保護形態で都合よく提供され得、次に、この保護基は、例えば、標的指向性部分または分析対象とのカップリングにとって適切な時に除去され得る。したがって、Q基は、上記および以下の表1中の反応性基のいずれかを含めた、反応性基の「保護形態」を含む。Qの「保護形態」とは、Qに対して所定の反応条件下で、一層低い反応性を有するが、好ましくは分解しない、または構造(I)の化合物の他の部分と反応しない条件下でQへと変換され得る部分を指す。当業者は、特定のQ、ならびに所望の最終使用および貯蔵条件に基づいて、Qの適切な保護形態を誘導することができる。例えば、Qが-SHである場合、Qの保護形態はジスルフィドを含み、ジスルフィドは、一般的な公知技法および試薬(例えば、TCEP)を使用して還元すると、-SH部分が現れ得る。
【0074】
例示的なQ部分が、以下の表1に提示されている。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0075】
一部の実施形態では、Qが-SHである場合、-SH部分は、例えば、構造(I)の別の化合物の別のスルフヒドリル基とジスルフィド結合を形成する傾向があることに留意すべきである。したがって、一部の実施形態は、ジスルフィド二量体の形態にある、構造(I)の化合物を含み、ジスルフィド結合は、-SHであるQ基から誘導される。
【0076】
他の実施形態では、Q部分は、ジスルフィド部分として都合よく隠され(例えば、保護されている)、この部分は、後に還元されて、所望の標的指向性部分への結合のために活性化されたQ部分をもたらすことができる。例えば、Q部分は、以下の構造:
【化17】
(式中、Rは、置換されていてもよいアルキル基である)を有するジスルフィドとして隠され得る。例えば、一部の実施形態では、Qは、以下の構造:
【0077】
【化18】
(式中、n’は、1~10の整数、例えば6である)を有するジスルフィド部分として提供される。
【0078】
同様に、構造(I)の化合物が、ある種の実施形態の範囲内に含まれ、この場合、R
2およびR
3の一方またはどちらも、構造(I)のさらなる化合物への連結基を含む。例えば、R
2およびR
3の1つまたはどちらも、-OP(=R
a)(R
b)R
cであり、R
cはOL’であり、L’は、構造(I)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーである。このような化合物は、例えば、約10の「M」部分(すなわち、n=9)を有しており、かつ構造(I)の第2の化合物上の相補性Q’基との反応にとって適切な「Q」を有する、構造(I)の第1の化合物を調製することにより調製され得る。この方法では、任意の数、例えば100以上の「M」部分を有する、構造(I)の化合物は、各モノマーを逐次にカップリングする必要なしに調製することができる。構造(I)のこのような化合物の例示的な実施形態は、以下の構造(I’):
【化19】
(I')
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、L、L
1、L
2、L
3、M、mおよびnは出現毎に、独立して、構造(I)の化合物に関して定義されている通りであり、
L”は、Q部分と対応するQ’部分との反応から生じる官能基を含むリンカーであり、
αは、1より大きな整数、例えば1~100、または1~10である)を有する。
構造(I’)の他の化合物は、当業者によって、例えば、本明細書において提供されている構造(I)の化合物を二量化または重合することにより誘導可能である。
【0079】
一部の他の実施形態では、R2またはR3の一方はOHまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcであり、R2またはR3のもう一方は、標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、または固体支持体への共有結合を含むリンカーである。例えば、一部の実施形態では、標的指向性部分は、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストである。さらに異なる実施形態では、固体支持体は、ポリマー製ビーズまたは非ポリマー製ビーズである。
mに関する値は、所望の溶解度、浸透作用または治療用途に基づいて選択され得る別の可変因子である。一部の実施形態では、mは、出現毎に独立して、1~20の整数である。一部の実施形態では、mは、出現毎に独立して、1~10の整数である。他の実施形態では、mは、出現毎に独立して、1~5、例えば、1、2、3、4または5の整数である。
【0080】
溶解度、浸透度または保持はまた、nの様々な値を選択することにより調節することができる。ある種の実施形態では、nは、1~100の整数である。他の実施形態では、nは、1~10の整数である。一部の実施形態では、nは1である。一部の実施形態では、nは2である。一部の実施形態では、nは3である。一部の実施形態では、nは4である。一部の実施形態では、nは5である。一部の実施形態では、nは6である。一部の実施形態では、nは7である。一部の実施形態では、nは8である。一部の実施形態では、nは9である。一部の実施形態では、nは10である。
【0081】
腫瘍細胞抗原には、腫瘍特異的抗原および腫瘍関連抗原、例えばEGFR、HER2、葉酸受容体、CD20、CD33、腫瘍胎児抗原(例えば、アルファフェトプロテイン、癌胎児性抗原、未成熟ラミニン受容体、TAG-72)、CA-125、MUC-1、上皮性腫瘍抗原、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)およびRASまたはp53の異常生成物が含まれる。腫瘍細胞抗原はまた、腫瘍胎児、腫瘍ウイルス(例えば、HPV E6、E7)、過剰発現型/蓄積型(例えば、BING-4、カルシウム活性化塩化物チャネル2、9D7、Ep-CAM、EphA3、HER2、テロメラーゼ、メソテリン、SAP-1、サバイビン)、がん精巣(例えば、BAGEファミリー、CAGEファミリー、GAGEファミリー、MAGEファミリー、SAGEファミリー、XAGEファミリー)、系統限定型、変異型、翻訳後改変型、イディオタイプ、CT9またはCT10(例えば、NY-ESO-1/LAGE-1、PRAME)として特徴付けられる抗原を含むことができる。
一部の実施形態では、Mは、出現毎に独立して、NSAID、キナーゼ阻害剤、アントラサイクリン、EGFR阻害剤またはアルキル化剤である。
【0082】
一部の実施形態では、少なくとも1つのMは、抗がん薬である。ある種の特定の実施形態では、Mは、出現毎に独立して、抗がん薬であり、標的指向性部分は、腫瘍細胞抗原に特異的な抗体である。一部の実施形態では、腫瘍細胞抗原は、EGFR、HER2、葉酸受容体、CD20またはCD33である。
抗がん薬は、本明細書で使用する場合、誘導体を含む。これは、修飾または誘導体化された抗がん薬であり、こうしてこの薬物は、コンジュゲートされ得るか、または別の分子(例えば、Q部分を含むよう)に結合され得る。例えば、マイタンシンはがん薬であり、マイタンシノイドは、がん薬の誘導体である。
【0083】
ある種の実施形態では、抗がん薬は、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、ホスファチジルイノシトールキナーゼ(PI3K)阻害剤、インスリン様成長因子受容体(IGF1R)阻害剤、ヤーヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、Metキナーゼ阻害剤、SRCファミリーキナーゼ阻害剤、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害剤、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(イリノテカンなどまたはエトポシドなどまたはドキソルビシンなど)、タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセルを含めた抗微小管剤など)、抗代謝産物剤(5-FUなどまたはゲムシタビンなど)、アルキル化剤(シスプラチンなどまたはシクロホスファミドなど)、またはタキサンである。
修飾され得る抗がん薬、および本開示の化合物の実施形態に組み込まれ得る抗がん薬には、例えば、オーリスタチンF、オーリスタチンE、マイタンシン、カリチアマイシン、パクリタキセル、ドキソルビシン、クリプトフィシン;エルロチニブ、CC-1065、カルゼレシン、SJG-136、DSB-120、アファチニブ、イレッサまたはメトトレキサートが含まれる。
【0084】
抗がん薬の他の非限定例には、Gleevec(登録商標)(メシル酸イマチニブ)、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、Casodex(ビカルタミド)、Iressa(登録商標)(ゲフィチニブ)およびアドリアマイシン、アルキル化剤(チオテパおよびシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標)など));ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパおよびウレドーパなどのアジリジン;エチレンイミンおよびメチラメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロロメラミンを含む);クロラムブシル、クロルナファジン、クロホスファミド、エストラムスチン、イフォスアミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソウレア;アクラシノマイシン系、アクチノマイシン、アウスラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン系、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、Casodex(登録商標)、クロモマイシン系、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン系、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝産物;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリニン酸などの葉酸補充物質;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモル;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK.RTM;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、およびドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone-Poulenc Rorer、Antony、フランス);レチノイン酸;エスペラミシン系またはカペシタビンが含まれる。同様に、例えばタモキシフェン(Nolvadex(商標))、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール系、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストンおよびトレミフェン(フェアストン);およびフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリンなどの抗アンドロゲン薬;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバンドロネート;カンプトテシン-11(CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)を含めた抗エストロゲン剤などの、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤が、好適ながん薬として含まれる。
【0085】
ある種の実施形態では、少なくとも1つのMは、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ)、ラパチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、オシメルチニブ、トバンチニブ(ARQ197)、クリゾチニブ、カボザンチニブ、チルホスチン系(例えば、AG538、AG1024)、ピロロ(2,3-d)-ピリミジン誘導体(例えば、NVP-AEW541)、モノクローナル抗体(例えば、フィギツムマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ネシツムマブ、ガニツマブ、シクスツムマブ、ダロツズマブ、ロバツムマブ、オナルツズマブ、K1、ラベツズマブ、ミラツズマブ、ロルボツズマブ、イノツズマブ)、BMS-777607、PF-02341066、PF-04217903、AMG-458、MK-2461、JNJ-38877605、GSK1363089(フォレチニブ)、XL880、XL184、ARQ197、E7050またはINCB28060である。
【0086】
所望の場合、本開示の化合物または組成物の実施形態は、Herceptin(登録商標)、Avastin(登録商標)、Erbitux(登録商標)、Rituxan(登録商標)、Taxol(登録商標)、Arimidex(登録商標)、Taxotere(登録商標)、ABVD、アビシン、アバゴボマブ、アクリジンカルボキサミド、アデカツムマブ、17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、アルファラジン、アルボシジブ、3-アミノピリジン-2-カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン、アモナフィド、アントラセンジオン、抗CD22イムノトキシン、抗新生物剤、抗腫瘍性ハーブ、アパジクオン、アチプリモド、アザチオプリン、ベロテカン、ベンダムスチン、BIBW2992、ビリコダル、ブロスタリシン、ブリオスタチン、ブチオニンスルホキシム、CBV(化学療法)、カリクリン、細胞周期非特異的抗新生物剤、ジクロロ酢酸、ディスコデルモライド、エルサミトルシン、エノシタビン、エポチロン、エリブリン、エベロリムス、エキサテカン、エキシスリンド、フェルジノール、ホロデシン、ホスフェストロール、ICE化学療法レジメン、IT-101、イメクソン、イミクイモド、インドロカルバゾール、イロフルベン、ラニクイダル、ラロタキセル、レナリドマイド、ルカントン、ルルトテカン、メホスファミド、ミトゾロミド、ナホキシジン、ネダプラチン、オラパリブ、オルタタキセル、PAC-1、ポーポー、ピクサントロン、プロテアソーム阻害剤、レベカマイシン、レシキモド、ルビテカン、SN-38、サリノスポラミドA、サパシタビン、スタンフォードV、スワインソニン、タラプロフィン、タリクイダール、テガフール-ウラシル、テモダル、テセタキセル、四硝酸トリプラチン、トリス(2-クロロエチル)アミン、トロキサシタビン、ウラムスチン、バジメザン、ビンフルニン、ZD6126またはゾスクイダルなどの一般に処方されている抗がん薬と組み合わせて使用され得る。
【0087】
Mは、所望の治療的特性および/または光学特性に基づいて、例えば、特定の疾患または状態(例えば、がん)の処置、または特定の色調および/もしくは蛍光発光波長の発生に基づいて選択される。一部の実施形態では、Mは、出現毎に同じである。しかし、Mの各出現は、同一のMである必要はなく、ある種の実施形態には、Mが、各出現において同じではない化合物を含むことに留意することが重要である。例えば、一部の実施形態では、Mはそれぞれ、同じではなく、異なるM部分が、異なる治療的特性(例えば、細胞傷害性および抗炎症)を有するよう選択される。一部の実施形態では、Mはそれぞれ、同一ではなく、異なるM部分は、同じまたは類似の治療特性(例えば、細胞毒性)を有するように選択される。ある種の実施形態では、Mはそれぞれ、以下:
【0088】
【0089】
例示を容易にするため、分子の残りとの特定の結合点(すなわち、
【化21】
)を有して図示されているが、M部分は、任意の利用可能な点を介して結合され得る。当業者は、適切な結合点を決定することができる。
【0090】
ある種の実施形態では、L-Mは、以下の構造:
【化22】
の1つを有する。
上述のいずれかのさらなる実施形態では、Mは、同じである。他の実施形態では、Mはそれぞれ、異なる。さらなる実施形態では、1つまたは複数のMは同じであり、1つまたは複数のMは異なる。
【0091】
一部の実施形態では、出現するMの少なくとも1つは、以下の構造:
【化23】
のうちの1つを有する。
【0092】
より具体的な実施形態では、Mは出現毎に、以下の構造:
【化24】
のうちの1つを有する。
【0093】
一部の実施形態では、Mの選択される出現は、同じではなく、異なるM部分は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法において使用するための、吸光度および/または発光を有するように選択される。例えば、このような実施形態では、異なるM部分は、1つの波長における照射の吸光度が、FRET機構によって、異なる波長での照射の発光を引き起こすよう選択される。例示的なM部分は、所望の最終使用に基づいて、当業者により適切に選択され得る。FRET法に関する例示的なM部分には、フルオレセインおよび5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン、スクシンイミジルエステル)色素が含まれる。
Mは、M上の任意に位置(すなわち、原子)から分子の残りに結合し得る。当業者は、Mが分子の残りに結合するための手段を認識していよう。例示的な方法には、本明細書に記載されている「クリック」反応が含まれる。
【0094】
一部の実施形態では、少なくとも1つのMは、蛍光部分または発色部分である。任意の蛍光部分および/または発色部分が使用されてもよく、例えば、当分野で公知のもの、および比色分析、UVおよび/または蛍光アッセイに通常使用されるものが使用されてもよい。本発明の様々な実施形態に有用なM部分の例には、以下に限定されないが、キサンテン誘導体(例えば、フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、エオシンまたはテキサスレッド);シアニン誘導体(例えば、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニンまたはメロシアニン);スクアライン誘導体および環置換スクアライン(セタ(Seta)、セタウ(SeTau)およびスクエア色素を含む);ナフタレン誘導体(例えば、ダンシルおよびポロダン誘導体);クマリン誘導体;オキサジアゾール誘導体(例えば、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾオキサジアゾールまたはベンゾオキサジアゾール);アントラセン誘導体(例えば、DRAQ5、DRAQ7およびCyTRAKオレンジを含むアントラキノン);カスケードブルーなどのピレン誘導体;オキサジン誘導体(例えば、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170);アクリジン誘導体(例えば、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー);アリールメチン誘導体:アウラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン;およびテラピロール誘導体(例えば、ポルフィン、フタロシアニンまたはビリルビン)が含まれる。他の例示的なM部分には、シアニン色素、キサンテート色素(例えば、Hex、Vic、Nedd、JoeまたはTet);ヤキマイエロー、レッドモンドレッド;タムラ;テキサスレッドおよびalexa fluor(登録商標)色素が含まれる。
【0095】
上述のいずれかのさらに他の実施形態では、少なくとも1つのMは、3つ以上のアリール環もしくはヘテロアリール環、またはそれらの組合せ、例えば、4つ以上のアリール環もしくはヘテロアリール環、またはそれらの組合せ、あるいは5つ以上のアリール環もしくはヘテロアリール環、またはそれらの組合せさえも含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのMは、6つのアリール環もしくはヘテロアリール環、またはそれらの組合せを含む。さらなる実施形態では、環は縮合している。例えば、一部の実施形態では、少なくとも1つのMは、3つ以上の縮合環、4つ以上の縮合環、5つ以上の縮合環、または6つ以上にもなることさえある縮合環を含む。
【0096】
一部の実施形態では、少なくとも1つのMは環式である。例えば、一部の実施形態では、少なくとも1つのMは、炭素環式である。他の実施形態では、少なくとも1つのMは、複素環式である。上述のさらに他の実施形態では、少なくとも1つのMは、出現毎に独立して、アリール部分を含む。これらの実施形態の一部では、アリール部分は多環式である。他のさらなる具体例では、アリール部分は、縮合多環式アリール部分であり、例えば、この縮合多環式アリール部分は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または4つを超えることさえあるアリール環を含むことができる。
構造(I)または(I’)の上述の化合物のいずれかの他の実施形態では、少なくとも1つのMは、少なくとも1個のヘテロ原子を含む。例えば、一部の実施形態では、ヘテロ原子は、窒素、酸素または硫黄である。
上述のいずれかのさらなる実施形態では、少なくとも1つのMは、少なくとも1つの置換基を含む。例えば、一部の実施形態では、置換基は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、アリールオキシ、フェニル、アリール、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、t-ブチル、カルボキシ、スルホネート、アミドまたはホルミル基である。
【0097】
上述の一部のさらに具体的な実施形態では、少なくとも1つのMは、ジメチルアミノスチルベン、キナクリドン、フルオロフェニル-ジメチル-BODIPY、his-フルオロフェニル-BODIPY、アクリジン、テリレン、セキシフェニル、ポルフィリン、ベンゾピレン、(フルオロフェニル-ジメチル-ジフルオロボラ-ジアザ-インダセン)フェニル、(ビス-フルオロフェニル-ジフルオロボラ-ジアザ-インダセン)フェニル、クワテルフェニル、ビ-ベンゾチアゾール、ター-ベンゾチアゾール、ビ-ナフチル、ビ-アントラシル、スクアライン、スクアリリウム、9,10-エチニルアントラセンまたはター-ナフチル部分である。他の実施形態では、少なくとも1つのMは、p-ターフェニル、ペリレン、アゾベンゼン、フェナジン、フェナントロリン、アクリジン、チオキサントレン、クリセン、ルブレン、コロネン、シアニン、ペリレンイミドもしくはペリレンアミド、またはそれらの誘導体である。さらなる実施形態では、少なくとも1つのMは、クマリン色素、レゾルフィン色素、ジピロメテンボロンジフルオライド色素、ルテニウムビピリジル色素、エネルギー移動色素、チアゾールオレンジ色素、ポリメチンまたはN-アリール-1,8-ナフタルイミド色素である。
【0098】
一部の実施形態では、少なくとも1つのMは、ピレン、ペリレン、ペリレンモノイミドもしくは6-FAM、またはそれらの誘導体である。一部の他の実施形態では、少なくとも1つのMは、以下の構造:
【0099】
【化25】
のうちの1つを有する。
カルボン酸基を含むM部分は、上記の陰イオン性形態(CO
2
-)で図示されているが、当業者は、これは、pHに応じて様々になること、およびプロトン化形態(CO
2H)は、様々な実施形態に含まれることを理解するであろう。
【0100】
一部の具体的な実施形態では、本化合物は、表2から選択される化合物である。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
【0101】
表2に使用されている通り、および本出願の全体にわたり、R2、R3、LおよびMは、特に示さない限り、構造(I)の化合物に対して提示されている定義を有する。表2の化合物の一部の実施形態では、R2は、-OL’である。一部の実施形態では、Mは、出現毎に独立して、F、F’、F”、E、Y、N’、I’、D’またはD”であり、ただし、少なくとも1つのMは、N’、I’、D’またはD”であることを条件とする。F、F’およびF’’は、それぞれ、以下の構造:
【0102】
【0103】
「E」とは、以下の構造:
【化27】
を指す。「Y」とは、以下の構造:
【化28】
を指す。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
「D”」とは、以下の構造:
【化32】
を指す。
一部の実施形態は、表2に提示されており、抗体などの標的指向性部分にコンジュゲートされている具体的な化合物を含む、上述の化合物のいずれかを含む。一部の実施形態では、構造(I)の化合物の1つが、抗体にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、構造(I)の1~2つの化合物が、抗体にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、構造(I)の2つの化合物が、抗体にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、構造(I)の3つの化合物が、抗体にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、構造(I)の4つの化合物が、抗体にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、構造(I)の5つの化合物が、抗体にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、構造(I)の5つ以下の化合物が、抗体にコンジュゲートされている。
【0108】
様々な実施形態では、反応性ポリマーは、構造(I)の化合物を調製するために使用することができる。ある種の実施形態では、これらの反応性ポリマーは、任意の数の合成方法論により、相補性部分と反応して、Mと反応性ポリマーとの間に共有結合を形成するのに有用な部分を含む合成中間体であり(例えば、上記の「クリック」反応)、こうして、構造(I)の化合物を形成する。したがって、様々な実施形態では、構造(I)の化合物は、以下の構造(II)を有する反応性ポリマー:
【0109】
【化33】
(II)
またはその立体異性体、塩または互変異性体(式中、
Gは、出現毎に独立して、相補性反応性基と共有結合を形成することが可能な、反応性基またはその保護類似体を含む部分であり、
L
1a、L
1、L
2およびL
3は、出現毎に独立して、任意選択のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
R
1は、出現毎に独立して、天然または非天然アミノ酸側鎖であり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、-H、-OH、-SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、アルキルアミニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、Qもしくはそれらの保護形態、またはL’であり、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、アルキルアミニル、アルキルカルボニルおよびアルキルオキシカルボニルは、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルもしくはチオホスホアルキルエーテル、またはそれらの組合せにより置換されていてもよく、
Qは、出現毎に独立して、標的指向性部分の相補性反応性基Q’と共有結合の形成が可能な、反応性基、またはその保護形態を含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Qへの共有結合を含むリンカー、標的指向性部分、標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、固体支持体への共有結合を含むリンカー、固体支持体への共有結合を含むリンカー、または構造(I)の化合物もしくは構造(II)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、
mは、出現毎に独立して、0以上の整数であり、
nは、1以上の整数である)を使用して形成される。
【0110】
一部の実施形態では、反応性ポリマーは、以下の表3から選択される。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【0111】
様々な実施形態では、表3の化合物中のGは、エチニルなどのアルキニルである。他の実施形態では、表3の化合物中のGは、アジドである。他の実施形態では、表3の化合物中のGは、アミノ(NH2)である。他の実施形態では、表3の化合物中のGは、イソチオシアネートである。他の実施形態では、表3の化合物中のGは、N-ヒドロキシスクシンイミドのエステルなどの活性化エステルである。
ある種の実施形態は、治療的に有効な蛍光化合物を対象とし、ただし、出現するMの少なくとも1つが蛍光色素ではなく、出現するMの少なくとも1つが蛍光色素である。治療的に有効な蛍光化合物には、少なくとも1つの生物活性部分もしくはその断片、または生物活性部分のプロドラッグもしくはその断片を含む化合物が含まれ、これらは、紫外線光などの光により励起されると、蛍光シグナルを発する。
【0112】
組成物
特許請求の範囲のいずれか1項の化合物、および標的指向性部分を含む組成物も提供される。
現在開示されている化合物の実施形態は、「調節可能」であり、これは、上述の化合物のいずれかにおける可変因子を適切に選択することにより、当業者は、所望のモル蛍光度(molar fluorescence)および/または所定のモル蛍光(モル輝度(molar brightness))を有する化合物に到達することができることを意味する。本化合物のある種の実施形態の「調節可能性」により、使用者は、特定のアッセイにおいて、使用するための所望の蛍光および/または色調を有する化合物に容易に到達することが可能となる。すべての可変因子は、本明細書において開示されている化合物のある種の実施形態のモル蛍光度に影響を及ぼし得るが、M、L1、mおよびnの適切な選択が、開示化合物の実施形態のモル蛍光度において重要な役割を果たすと考えられる。したがって、一実施形態では、所望のモル蛍光度を有する化合物を得るための方法であって、公知の蛍光度を有するM部分を選択するステップ、M部分を含む構造(I)の化合物を調製するステップ、および所望のモル蛍光度に到達するためのL1、mおよびnに対する適切な可変因子を選択するステップを含む方法が提供される。
【0113】
例示を容易にするため、リン部分(例えば、ホスフェートなど)を含む様々な化合物が、陰イオン性状態(例えば、-OPO(OH)O-、-OPO3
2-)で図示されている。当業者は、電荷はpHに依存し、非電荷(例えば、プロトン化されているか、またはナトリウムもしくは他の陽イオンなどの塩)形態も、本発明の実施形態の範囲内に含まれることを容易に理解するであろう。
上述の化合物のいずれかおよび1つまたは複数の標的指向性部分(例えば、抗体または細胞表面受容体アンタゴニスト)を含む組成物は、様々な他の実施形態において提供される。一部の実施形態では、疾患を処置するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の構造(I)の化合物または構造(I)の化合物を含む組成物を投与するステップを含む方法における、このような組成物の使用であって、Mがそれぞれ独立して、該疾患を処置するのに有効な生物活性部分である使用も提供される。
【0114】
医薬組成物
一実施形態は、本明細書において開示されている実施形態のいずれか1つおよび薬学的に許容される担体による化合物を含む組成物を提供する。
別の実施形態は、単一連結基により抗体に共有結合している請求項1に記載の化合物を含む複数のコンジュゲートを含む組成物であって、複数のコンジュゲートが少なくとも90%の構造均質性を有する、組成物を提供する。「構造均質性」は、抗体への結合点を含めて、同じ構造を有する化合物を意味する。より具体的な実施形態では、複数のコンジュゲートは、少なくとも95%の構造均質性を有する。関連する実施形態では、複数のコンジュゲートは、99%を超える構造均質性を有する。ある種の実施形態では、R2およびR3の1つは、-OP(=Ra)(Rb)OL’またはL’であり、L’は、抗体、もしくはこの抗体への共有結合を含むリンカーである。
【0115】
他の実施形態は、医薬組成物を対象とする。本医薬組成物は、上述の化合物のいずれか1つ(または複数)および薬学的に許容される担体を含む。一部の実施形態では、本医薬組成物は、経口投与用に製剤化されている。他の実施形態では、本医薬組成物は、注射用に製剤化されている。さらさなる実施形態では、本医薬組成物は、本明細書において開示されている化合物および追加の治療剤(例えば、抗がん剤)を含む。このような治療剤の非限定例は、本明細書の以下に記載されている。
好適な投与経路には、以下に限定されないが、経口、静脈内、直腸、エアゾール、非経口、眼、肺、経粘膜、経皮、膣、耳、鼻腔および局所投与が含まれる。さらに、単なる例として、非経口送達には、筋肉内、皮下、静脈内、髄内の注射、ならびに鞘内、心室内に直接、腹腔内、リンパ内および鼻内への注射が含まれる。
【0116】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、全身的よりもむしろ局所に、例えば、多くの場合、デポ調製物または持続放出製剤で器官に化合物を直接注射することにより投与される。具体的な実施形態では、長時間作用型製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与される。さらに、他の実施形態では、薬物は、例えば、器官特異的抗体により被覆されたリポソーム中で、標的化した薬物送達系で送達される。このような実施形態では、リポソームはその器官へと標的化され、器官によって選択的に摂取される。さらに他の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、速放性製剤の形態、徐放性製剤の形態、または中間放出製剤の形態で提供される。さらに他の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、局所投与される。
【0117】
本発明の実施形態による化合物は、幅広い投与量範囲にわたり有効である。例えば、成人ヒトの処置では、1日あたり0.01~1000mg、0.5~100mg、1~50mg、および1日あたり5~40mgの投与量が、ある実施形態において使用される投与量の例である。例示的な投与量は、1日あたり10~30mgである。正確な投与量は、投与経路、化合物が投与される形態、処置される対象、処置される対象の体重、および主治医の好みおよび経験に依存するであろう。
一部の実施形態では、本発明の化合物は単回用量で投与される。通常、このような投与は、薬剤を迅速に導入するため、注射によって、例えば静脈内注射になるであろう。しかし、適切な場合、他の経路が使用される。本発明の化合物の単回用量はまた、急性状態の処置に使用されることがある。
【0118】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、多回用量で投与される。一部の実施形態では、投与は、1日あたり、ほぼ1回、2回、3回、4回、5回、6回またはそれより多い。他の実施形態では、投与は、ほぼ、1か月に1回、2週毎に1回、1週間に1回、または1日おきに1回である。別の実施形態では、本発明の化合物および別の薬剤が、ほぼ1日1回~1日約6回で一緒に投与される。別の実施形態では、本発明の化合物および薬剤の投与は、約7日未満の間、継続される。さらに別の実施形態では、投与は、約6、10、14、28日間、2か月、6か月または1年間を超えて継続される。一部の場合、必要な限り、連続投薬を実現して、これを維持する。
本発明の化合物の実施形態の投与は、必要な限り継続されてもよい。一部の実施形態では、本発明の化合物は、1、2、3、4、5、6、7、14または28日間を超えて、投与される。一部の実施形態では、本発明の化合物は、28、14、7、6、5、4、3、2または1日未満の間で投与される。一部の実施形態では、本発明の化合物は、例えば、作用が長期的な処置のために、継続的に長期間投与される。
一部の実施形態では、本発明の化合物は、投与量で投与される。化合物の薬物動態の対象間のばらつきのため、投与レジメンの個別化が最適治療に必要であることが当分野において公知である。本発明の化合物の実施形態のための投与は、本開示に照らし合わせて、型通りの実験により見いだすことができる。
【0119】
一部の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、医薬組成物に製剤化される。具体的な実施形態では、医薬組成物は、活性化合物の、薬学的に使用され得る調製物への加工を容易にする、賦形剤および補助剤を含む1種または複数の生理的に許容される担体を使用し、慣用的な方法で製剤化される。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。好適な場合、任意の薬学的に許容される技法、担体および賦形剤を使用して、本明細書に記載されている医薬組成物を製剤化する:Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)。
【0120】
構造(I)の化合物、および薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物が本明細書において提供される。ある種の実施形態では、記載されている化合物は、構造(I)の化合物が、併用療法における場合と同様に、他の活性成分と混合されている医薬組成物として投与される。本明細書において、以下および本開示の全体を通じて併用療法の項目に説明されている活性剤のすべての組合せが包含されている。具体的な実施形態では、本医薬組成物は、構造(I)の1つまたは複数の化合物を含む。
【0121】
医薬組成物は、本明細書で使用する場合、構造(I)の化合物と担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤および/または賦形剤などの他の化学的構成成分との混合物を指す。ある種の実施形態では、本医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。本明細書において提供される処置方法または使用方法を実施する一部の実施形態では、治療有効量の本明細書において提供されている構造(I)の化合物は、処置される疾患、障害または医療的状態を有する哺乳動物に医薬組成物で投与される。具体的な実施形態では、哺乳動物はヒトである。ある種の実施形態では、治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康、使用される化合物の効力および他の因子に応じて様々である。本明細書において記載されている化合物は、単一で、または混合物の構成成分として、1種または複数の治療剤と組み合わせて使用される。
【0122】
一実施形態では、構造(I)の1つまたは複数の化合物は、水溶液中で製剤化される。具体的な実施形態では、水溶液は、単なる例として、ハンクス溶液、リンゲル溶液または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液から選択される。他の実施形態では、構造(I)の1つまたは複数の化合物は、経粘膜投与向けに製剤化されている。具体的な実施形態では、経粘膜製剤は、浸透する障壁に適切な浸透剤を含む。さらに他の実施形態では、本明細書において記載されている化合物が、他の非経口注射向けに製剤される場合、適切な製剤には水性溶液剤または非水性溶液剤が含まれる。具体的な実施形態では、このような溶液剤は、生理学的に適合する緩衝液および/または賦形剤を含む。
別の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、経口投与向けに製剤化されている。本明細書に記載されている化合物は、活性化合物と、例えば薬学的に許容される担体または賦形剤とを組み合わせることにより製剤化される。様々な実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、単なる例として、錠剤、散剤、丸剤、ドラジェ剤、カプセル剤、液体、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー剤、懸濁液剤などを含む経口剤形で製剤化される。
【0123】
ある種の実施形態では、経口使用するための医薬調製物は、1つまたは複数の固体賦形剤と1つまたは複数の本明細書において記載されている化合物とを混合し、得られた混合物を磨砕してもよく、所望の場合、好適な補助剤を添加した後、粒剤の混合物を加工して、錠剤またはドラジェ剤のコアを得ることにより得られる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含めた糖、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、マイクロクリスタリンセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物、またはポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)またはリン酸カルシウムなどの他のものなどの充填剤である。具体的な実施形態では、崩壊剤が、添加されてもよい。崩壊剤には、単なる例として、架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天もしくはアルギン酸またはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)が含まれる。
【0124】
一実施形態では、ドラジェ剤のコアおよび錠剤などの剤形は、1つまたは複数の好適なコーティングが施される。具体的な実施形態では、剤形をコーティングするために濃縮糖溶液が使用される。糖溶液は、単なる例として、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物などの追加の構成成分を含有してもよい。識別目的のために、コーティング剤に染料および/または顔料を添加してもよい。さらに、活性化合物の用量の異なる組合せを特徴付けるために、染料および/または顔料が利用されてもよい。
【0125】
ある種の実施形態では、治療有効量の本明細書に記載されている化合物の少なくとも1つが他の経口剤形に製剤化される。経口剤形は、ゼラチンから作製されたプッシュフィット式カプセル剤、ならびにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤とから作製された軟質密封カプセル剤を含む。具体的な実施形態では、プッシュフィット式カプセル剤は、1種または複数の充填剤との混合物中に活性成分を含有する。充填剤は、単なる例として、ラクトース、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含み、さらに安定化剤を含んでもよい。他の実施形態では、軟質カプセル剤は、好適な液体に溶解または懸濁させた1つまたは複数の活性化合物を含有する。好適な液体には、単なる例として、1つまたは複数の脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールが含まれる。さらに、安定化剤が添加されてもよい。
【0126】
他の実施形態では、治療有効量の本明細書に記載されている化合物の少なくとも1つは、口内投与または舌下投与向けに製剤化されている。口内投与または舌下投与に好適な製剤は、単なる例として、錠剤、ロゼンジ剤またはゲル剤を含む。さらに他の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、ボーラス注射または連続注入に好適な製剤を含めた、親(parental)投与向けに製剤化されている。具体的な実施形態では、注射用製剤は、単位剤形(例えば、アンプル中)で、または多回用量容器中で供給される。保存剤が、注射製剤に添加されてもよい。さらに他の実施形態では、本医薬組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中の滅菌懸濁液剤、溶液剤またはエマルション剤として、非経口注射に好適な形態で製剤化される。非経口注射製剤は、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化用作用剤を含有してもよい。具体的な実施形態では、非経口投与向け医薬製剤は、水溶性形態にある活性化合物の水溶液剤を含む。追加的な実施形態では、活性化合物(例えば、構造(I)の化合物)の懸濁液剤は、適切な油性注射懸濁液剤として調製される。本明細書に記載されている医薬組成物において使用するのに好適な親油性溶媒またはビヒクルには、単なる例として、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。ある特定の実施形態では、水性注射懸濁液剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘度を増大させる物質を含有する。懸濁液剤は、高度に濃縮した溶液剤の調製を可能にするよう、化合物の溶解度を増大させる好適な安定化剤または作用剤を含有してもよい。代替的に、他の実施形態では、活性成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば滅菌発熱物質不含水を用いる構成用の粉末形態にある。
【0127】
さらに他の実施形態では、構造(I)の化合物は、局所投与される。本明細書において記載されている化合物は、溶液剤、懸濁液剤、ローション剤、ゲル剤、ペースト剤、薬用スティック剤、バーム剤、クリーム剤または軟膏剤などの局所投与が可能な様々な組成物に製剤化される。このような医薬組成物は、可溶化剤、安定化剤、張度増強剤、緩衝化剤および保存剤を含有してもよい。
【0128】
さらに他の実施形態では、構造(I)の化合物は、経皮投与向けに製剤化されている。具体的な実施形態では、経皮製剤は、経皮送達デバイスおよび経皮送達パッチ剤を使用し、ポリマーまたは粘着剤中に溶解および/または分散させた、親油性エマルション剤、または緩衝化水溶液剤とすることができる。様々な実施形態では、このようなパッチ剤は、医薬剤の連続送達、パルス送達、または必要に応じた送達向けに構築される。追加的な実施形態では、構造(I)の化合物の経皮送達は、イオン導入パッチ剤などにより行われる。ある種の実施形態では、経皮パッチ剤は、構造(I)の化合物の制御送達を実現する。具体的な実施形態では、吸収速度は、速度制御膜を使用することにより、またはポリマーマトリックスもしくはゲル内に化合物を捕捉することにより減速される。代替実施形態では、吸収を増大させるために、吸収促進剤が使用される。吸収促進剤または担体は、皮膚を通過するのを支援する、吸収可能な薬学的に許容される溶媒を含む。例えば、一実施形態では、経皮デバイスは、裏打ち部材、化合物を含有するレザーバー(担体を含んでもよい)、任意に、長期間にわたり制御された速度および所定速度で宿主の皮膚に化合物を送達するための速度制御障壁、ならびに皮膚にデバイスを固定するための手段を含む包帯の形態にある。
【0129】
他の実施形態では、構造(I)の化合物は、吸入により投与するよう製剤化されている。吸入により投与するのに好適な様々な形態には、以下に限定されないが、エアゾール剤、ミスト剤または散剤が含まれる。構造(I)の化合物のいずれかの医薬組成物は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガス)の使用と共に、加圧パックまたはネブライザーからのエアゾールスプレー供給物の形態で都合よく、送達される。具体的な実施形態では、加圧エアゾールの投与量単位は、計量分を送達するための弁を設けることにより決定される。ある種の実施形態では、本化合物の粉末ミックス、およびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤を含有する、吸入器または吸送器で使用するための、単なる例として、ゼラチンなどのカプセル剤またはカートリッジ剤が製剤化される。
【0130】
さらに他の実施形態では、構造(I)の化合物は、カカオ脂または他のグリセリドなどの慣用的な坐剤用基剤、およびポリビニルピロリドン、PEGなどの合成ポリマーを含有する、浣腸、直腸用ゲル、直腸用発泡体、直腸用エアゾール剤、坐剤、ジェリー坐剤または保持浣腸などの直腸用組成物に製剤化される。組成物の坐剤形態では、以下に限定されないが、カカオ脂と組み合わせてもよい、脂肪酸グリセリドとの混合物などの低融点ワックスが最初に融解する。
【0131】
ある種の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に使用され得る調製物への活性化合物の加工を容易にする、賦形剤および補助剤を含む1種または複数の生理的に許容される担体を使用して、任意の慣用的な方法で製剤化される。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。任意の薬学的に許容される技法、担体および賦形剤は、好適な場合、使用されてもよい。構造(I)の化合物を含む医薬組成物は、単なる例として、慣用的な混合、溶解、造粒、ドラジェ作製、湿式粉砕、エマルション化、カプセル封入化、捕捉または圧縮工程などによる慣用的な方法で製造される。
【0132】
医薬組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、および活性成分として、本明細書に記載されている構造(I)の少なくとも1つの化合物を含む。活性成分は、遊離酸形態または遊離塩基形態にあるか、または薬学的に許容される塩形態にある。さらに、本明細書に記載されている方法および医薬組成物は、N-オキシド、結晶形態(多形としても公知である)、ならびに同一タイプの活性を有するこれらの化合物の活性代謝産物の使用を含む。本明細書に記載されている化合物の互変異性体はすべて、本明細書において提供される化合物の範囲内に含まれる。さらに、本明細書において記載されている化合物は、非溶媒和形態、および水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和物形態を包含する。本明細書において提供される化合物の溶媒和物形態もまた、本明細書において開示されていると見なされる。さらに、本医薬組成物は、他の医療剤または医薬剤、担体、保存剤、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩、緩衝化剤などのアジュバント、および/または治療価値のある物質を含んでもよい。
【0133】
本明細書において記載されている化合物を含む組成物を調製する方法は、本化合物を1つまたは複数の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体と共に製剤化して、固体、半固体または液体を形成することを含む。固形組成物には、以下に限定されないが、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤および坐剤が含まれる。液状組成物は、化合物が溶解している溶液剤、化合物を含むエマルション剤、または本明細書において開示されている化合物を含むリポソーム、ミセルもしくはナノ粒子を含有する溶液剤を含む。半固体組成物は、以下に限定されないが、ゲル剤、懸濁液剤およびクリーム剤を含む。本明細書に記載されている医薬組成物の形態には、液状溶液剤または懸濁液剤、使用前に液体中の溶液剤もしくは懸濁液剤にする場合に好適な固体形態、またはエマルション剤が含まれる。これらの組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤などの非毒性の補助物質を少量含有してもよい。
一部の実施形態では、構造(I)の少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物は、例示的に、薬剤が溶液中、懸濁液中、またはそれらの両方に存在する液体の形態をとる。通常、組成物が溶液剤または懸濁液剤として投与される場合、薬剤の第1の部分は溶液中に存在し、薬剤の第2の部分は、液体マトリックス中の懸濁液中の微粒子形態で存在する。一部の実施形態では、液体組成物はゲル製剤を含む。他の実施形態では、液体組成物は水性である。
【0134】
ある種の実施形態では、有用な水性懸濁液は、懸濁化剤として1つまたは複数のポリマーを含有する。有用なポリマーには、セルロースポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性ポリマー、および架橋カルボキシル含有ポリマーなどの水不溶性ポリマーを含む。本明細書に記載されているある種の医薬組成物は、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/アクリル酸ブチルコポリマー、アルギン酸ナトリウムおよびデキストランから選択される、粘膜付着性ポリマーを含む。
有用な医薬組成物はまた、構造(I)の化合物の溶解を補助する可溶化剤を含んでもよい。用語「可溶化剤」は、薬剤のミセル溶液または真の溶液の形成をもたらす作用剤を一般に含む。許容されるある種の非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80は、眼用として許容されるグリコール、ポリグリコール、例えば、ポリエチレングリコール400およびグリコールエーテルと同様に、可溶化剤として有用である。
【0135】
さらに、有用な医薬組成物は、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸および塩酸などの酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびトリス-ヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基、およびクエン酸塩/デキストロース、炭酸水素ナトリウムおよび塩化アンモニウムなどの緩衝液を含めた、1つまたは複数のpH調節剤または緩衝化剤を含んでもよい。このような酸、塩基および緩衝液は、許容範囲における組成物のpHを維持するために必要な量で含まれる。
【0136】
さらに有用な組成物はまた、1種または複数の塩を組成物のオスモル濃度を許容範囲にするために必要な量で含んでもよい。このような塩には、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム陽イオンおよび塩化物陰イオン、クエン酸陰イオン、アスコルビン酸陰イオン、ホウ酸陰イオン、リン酸陰イオン、炭酸水素陰イオン、硫酸陰イオン、チオ硫酸陰イオンまたは亜硫酸水素陰イオンを有するものが含まれ、好適な塩には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムおよび硫酸アンモニウムが含まれる。
他の有用な医薬組成物は、微生物活性を阻害するための1種または複数の保存剤を含んでもよい。好適な保存剤には、メルフェンおよびチオメルサールなどの水銀含有物質、安定化二酸化塩素、および塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化セチルピリジニウムなどの四級アンモニウム化合物が含まれる。
【0137】
さらに他の有用な組成物は、物理的安定性を増強するため、または他の目的のために、1種または複数の界面活性剤を含む。好適な非イオン性界面活性剤には、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えば、octoxynol10、octoxynol40が含まれる。
さらに他の有用な組成物は、必要な場合、化学安定性を増強するための1つまたは複数の抗酸化剤を含む。好適な抗酸化剤は、単なる例として、アスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムを含む。
ある種の実施形態では、水性懸濁液組成物は、単回用量用の再密閉不可能な容器に包装される。代替的に、多回用量用の再密閉可能な容器を使用し、この場合、組成物中に保存剤を含ませるのが通例である。
代替実施形態では、疎水性医薬品化合物のための他の送達系が使用される。リポソームおよびエマルションが、本明細書において有用な送達用ビヒクルまたは担体の例である。ある種の実施形態では、N-メチルピロリドンなどの有機溶媒も使用される。追加的な実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、治療剤を含有する固体の疎水性ポリマーの半透明マトリックスなどの、持続放出系を使用して送達される。様々な持続放出物質が、本明細書において有用である。一部の実施形態では、持続放出カプセル剤は、最大で100日間にわたり数週間、化合物を放出する。治療試薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化に対するさらなる戦略が使用される。
【0138】
ある種の実施形態では、本明細書に記載されている製剤は、1種または複数の抗酸化剤、金属キレート剤、チオール含有化合物、および/または他の一般的な安定化剤を含む。このような安定化剤の例には、以下に限定されないが、(a)約0.5%~約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%~約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%~約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mMのEDTA、(e)約0.01%~約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%~約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%~約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ポリ硫酸ペントサンおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムおよび亜鉛などの二価陽イオン、または(n)それらの組合せが含まれる。
【0139】
一部の実施形態では、医薬組成物中で提供される1つまたは複数の化合物の濃度は、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19%、18%、17%、16%、15%,14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%、もしくは0.0001%w/w、w/vまたはv/v未満である。
【0140】
一部の実施形態では、1つまたは複数の化合物の濃度は、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19.75%、19.50%、19.25% 19%、18.75%、18.50%、18.25% 18%、17.75%、17.50%、17.25% 17%、16.75%、16.50%、16.25% 16%、15.75%、15.50%、15.25% 15%、14.75%、14.50%、14.25% 14%、13.75%、13.50%、13.25% 13%、12.75%、12.50%、12.25% 12%、11.75%、11.50%、11.25% 11%、10.75%、10.50%、10.25% 10%、9.75%、9.50%、9.25% 9%、8.75%、8.50%、8.25% 8%、7.75%、7.50%、7.25% 7%、6.75%、6.50%、6.25% 6%、5.75%、5.50%、5.25% 5%、4.75%、4.50%、4.25%、4%、3.75%、3.50%、3.25%、3%、2.75%、2.50%、2.25%、2%、1.75%、1.50%、125% 、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%、もしくは0.0001%w/w、w/vまたはv/vより高い。
【0141】
一部の実施形態では、1つまたは複数の化合物の濃度は、約0.0001%~約50%、約0.001%~約40%、約0.01%~約30%、約0.02%~約29%、約0.03%~約28%、約0.04%~約27%、約0.05%~約26%、約0.06%~約25%、約0.07%~約24%、約0.08%~約23%、約0.09%~約22%、約0.1%~約21%、約0.2%~約20%、約0.3%~約19%、約0.4%~約18%、約0.5%~約17%、約0.6%~約16%、約0.7%~約15%、約0.8%~約14%、約0.9%~約12%、約1%~約10%w/w、w/vまたはv/vの範囲内ある。
一部の実施形態では、1つまたは複数の化合物の濃度は、約0.001%~約10%、約0.01%~約5%、約0.02%~約4.5%、約0.03%~約4%、約0.04%~約3.5%、約0.05%~約3%、約0.06%~約2.5%、約0.07%~約2%、約0.08%~約1.5%、約0.09%~約1%、約0.1%~約0.9%w/w、w/vまたはv/vの範囲内にある。
【0142】
一部の実施形態では、1つまたは複数の化合物の量は、10g、9.5g、9.0g、8.5g、8.0g、7.5g、7.0g、6.5g、6.0g、5.5g、5.0g、4.5g、4.0g、3.5g、3.0g、2.5g、2.0g、1.5g、1.0g、0.95g、0.9g、0.85g、0.8g、0.75g、0.7g、0.65g、0.6g、0.55g、0.5g、0.45g、0.4g、0.35g、0.3g、0.25g、0.2g、0.15g、0.1g、0.09g、0.08g、0.07g、0.06g、0.05g、0.04g、0.03g、0.02g、0.01g、0.009g、0.008g、0.007g、0.006g、0.005g、0.004g、0.003g、0.002g、0.001g、0.0009g、0.0008g、0.0007g、0.0006g、0.0005g、0.0004g、0.0003g、0.0002g、または0.0001g以下である。
【0143】
一部の実施形態では、1つまたは複数の化合物の量は、0.0001g、0.0002g、0.0003g、0.0004g、0.0005g、0.0006g、0.0007g、0.0008g、0.0009g、0.001g、0.0015g、0.002g、0.0025g、0.003g、0.0035g、0.004g、0.0045g、0.005g、0.0055g、0.006g、0.0065g、0.007g、0.0075g、0.008g、0.0085g、0.009g、0.0095g、0.01g、0.015g、0.02g、0.025g、0.03g、0.035g、0.04g、0.045g、0.05g、0.055g、0.06g、0.065g、0.07g、0.075g、0.08g、0.085g、0.09g、0.095g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25g、0.3g、0.35g、0.4g、0.45g、0.5g、0.55g、0.6g、0.65g、0.7g、0.75g、0.8g、0.85g、0.9g、0.95g、1g、1.5g、2g、2.5、3g、3.5、4g、4.5g、5g、5.5g、6g、6.5g、7g、7.5g、8g、8.5g、9g、9.5g、または10gより多い。
一部の実施形態では、1つまたは複数の化合物の量は、0.0001~10g、0.0005~9g、0.001~8g、0.005~7g、0.01~6g、0.05~5g、0.1~4g、0.5~4gまたは1~3gの範囲である。
【0144】
処置方法
さらに他の実施形態では、本化合物は、疾患または状態を処置する様々な方法に有用である。したがって、一実施形態は、それを必要とする対象に、治療有効量の本明細書において開示されている実施形態のいずれか1つによる化合物、または本明細書において開示されている実施形態のいずれか1つによる組成物を投与するステップを含む、疾患を処置する方法であって、Mがそれぞれ、独立して、該疾患を処置するのに有効な生物活性部分である方法を提供する。一部の実施形態では、疾患は、がんであり、Mはそれぞれ、独立して抗がん薬である。
【0145】
例えば、ある種の実施形態では、本開示は、固形腫瘍、多発性骨髄腫、神経膠腫、明細胞型腎細胞がん、前立腺がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、GI悪性腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、腎細胞がん、直腸結腸がん、上皮がん、膵臓および胃がん、腎細胞がん、非ホジキンリンパ腫、転移性腎細胞がん、悪性中皮腫、膵臓、卵巣および/または肺の腺がん、B細胞悪性腫瘍、乳がん、黒色腫、再発性多発性骨髄腫、小細胞肺がん、CD22ポジティブB細胞悪性腫瘍、ホジキンリンパ腫/未分化大細胞型リンパ腫またはHER2ポジティブ乳がんを処置する方法を提供する。
【0146】
ある種の実施形態はまた、哺乳動物(例えば、ヒト)に、治療有効量の化合物または薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体を投与するステップを含む、前記哺乳動物における過剰増殖性障害を処置する方法に関する。一部の実施形態では、前記方法は、急性骨髄性白血病、青年期のがん、幼年期の副腎皮質がん、AIDS関連がん(例えば、リンパ腫およびカポジ肉腫)、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型奇形腫様、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、非定型奇形腫様、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、原発性リンパ腫、子宮頚がん、小児がん、脊索腫、心臓腫瘍、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、非浸潤性肝外胆管がん(DCIS)、胎児性腫瘍、CNSがん、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼がん、骨の線維性組織球腫、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、胃腸管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、有毛細胞白血病、頭頚部がん、心臓がん、肝臓がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、腎臓がん、喉頭がん、口唇がんおよび口腔がん、肝臓がん、非浸潤性小葉がん(LCIS)、肺がん、リンパ腫、原発不明転移性扁平上皮性頚部がん、正中管がん、口のがん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/プラズマ細胞新生物、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/脊髄増殖性新生物、多発性骨髄腫、メルケル細胞がん、悪性中皮腫、骨の悪性線維性組織球腫および骨肉腫、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽腔がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、口内がん、口唇がんおよび口腔がん、中咽頭がん、卵巣がん、膵臓がん、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、皮膚がん、胃(stomach)(胃(gastric))がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟組織肉腫、T細胞リンパ腫、精巣がん、喉頭がん、胸腺腫および胸腺がん、甲状腺がん、腎盤および尿管の移行上皮がん、絨毛上皮性腫瘍、幼年期の希少がん、尿道がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がんまたはウイルス誘発性がんなどのがんの処置に関する。一部の実施形態では、前記方法は、皮膚の良性過形成(例えば、乾癬)、再狭窄または前立腺(例えば、良性前立腺肥大症(BPH))などの非癌性過剰増殖性障害の処置に関する。
【0147】
ある種の特定の実施形態は、肺がんの処置の方法であって、それを必要とする対象に、有効量の上記の化合物(または、これを含む医薬組成物)のいずれかを投与するステップを含む方法を提供する。ある種の実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば、腺がん、肺扁平上皮がんまたは大細胞肺がんである。他の実施形態では、肺がんは小細胞肺がんである。開示化合物により処置可能な他の肺がんには、以下に限定されないが、腺腫、カルチノイド腫瘍および未分化がんが含まれる。
【0148】
したがって、上述の方法の一部の実施形態では、R2は、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストなどの標的指向性部分への共有結合連結基を含むリンカーである。例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、肝細胞成長因子受容体(HGFR)阻害剤、インスリン様成長因子受容体(IGFR)阻害剤、フォレートまたはMET阻害剤。
さらなる実施形態では、本方法は、アポトーシスを誘発することをさらに含む。
したがって、本化合物の実施形態は、以下に限定されないが、薬物送達、アポトーシスの定量化、治療薬の送達の適格化、アポトーシスの定量化、ならびに血液がんなどの疾患の診断および処置を含めた任意の数の方法において利用が見いだされる。
【0149】
構造(I)の化合物の実施形態は、上記の方法に加えて、以下に限定されないが、例えば、抗体もしくは糖、またはがん細胞に優先的に結合する他の部分などの標的指向性部分を構造(I)の化合物中に含ませることによるがん処置およびイメージング、ならびに/または薬物送達を含めた様々な分野および方法における利用が見いだされる。
一部の実施形態では、処置の方法は、腫瘍細胞受容体により腫瘍細胞を有する腫瘍を処置するステップを含む。一部の実施形態では、腫瘍細胞は、細胞あたり、1,000~100,000個、1,000~50,000個、1,000~25,000個の受容体、1,000~10,000個の受容体の範囲の受容体を有する。例えば、一部の実施形態では、腫瘍細胞は、細胞あたり、約1,000個、約10,000個の受容体を有するか、または100,000個未満の受容体を有する。
【0150】
調製方法
上記の構造(I)の化合物の実施形態、ならびに上記の構造(I)の化合物中の可変因子R1、R2、R3、R4、R5、L、L1、L2、L3、M、mおよび/またはnに関して本明細書に記載されている任意の具体的な選択は、構造(I)の化合物の他の実施形態および/または可変因子と独立して組み合わされて、上記に具体的に記載されていない本発明の実施形態を形成してもよいことが理解される。さらに、最適なリストが、特定の実施形態および/または特許請求の範囲における任意の特定のR1、R2、R3、R4、R5、L、L1、L2、L3、M、mおよび/またはnの可変因子に関して一覧表示されている事例では、個々の選択はそれぞれ、特定の実施形態および/または特許請求の範囲から除かれ得ること、および最適な残りのリストは、本発明の範囲内にあると見なされることが理解される。
本記載では、図示されている式の置換基および/または可変因子の組合せは、このような寄与が安定な化合物をもたらす場合に許容可能となることが理解される。
【0151】
本明細書に記載されている方法では、中間化合物の官能基が好適な保護基によって保護される必要があり得ることが当業者によってやはり理解されよう。このような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプトおよびカルボン酸が含まれる。ヒドロキシに好適な保護基には、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルまたはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが含まれる。アミノ、アミジノおよびグアニジノに好適な保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが含まれる。メルカプトに好適な保護基には、-C(O)-R”(式中、R”は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが含まれる。カルボン酸用の好適な保護基は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルエステルを含む。保護基は、当業者に公知で、本明細書に記載されている、標準技法に従い付加または除去することができる。保護基の使用は、Green, T.W. and P.G.M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis (1999), 3rd Ed., Wileyに詳述されている。当業者が理解しているように、これらの保護基は、Wang樹脂、Rink樹脂または塩化2-クロロトリチル樹脂などのポリマー樹脂とすることもできる。
さらに、遊離塩基形態または遊離酸形態で存在する本発明の化合物はすべて、当業者に公知の方法によって、適切な無機塩基もしくは有機塩基または無機酸もしくは有機酸による処理によってその塩に変換することができる。本発明の化合物の塩は、標準技法によってその遊離塩基形態または酸形態に変換することができる。
【0152】
以下の反応スキームは、本発明の化合物を作製する例示的な方法を例示している。当業者は、類似の方法によって、または当業者に公知の他の方法を組み合わせることにより、これらの化合物を作製することが可能となり得ることが理解される。本明細書において開示されている化合物(例えば、構造(I)および(II))の実施形態を調製する方法は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、PCT公開番号WO2016/183185に見出すことができる。当業者は、適切な出発構成成分を使用し、必要に応じて合成パラメータを修正することにより、以下に具体的に例示されていない、構造(I)の他の化合物を、以下に記載されているような類似方法で作製することが可能になることがやはり理解される。一般に、出発構成成分は、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis,Inc.、Maybridge、Matrix Scientific、TCIおよびFluorochem USAなどの供給元から得ることができるか、または当業者に公知(例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th edition (Wiley, December 2000)を参照されたい)の情報源に従い合成され得るか、または本発明において記載されている通り調製され得る。
【0153】
反応スキームI
【化34】
反応スキームIは、R
1、L
1a、L
2、L
3およびMが上で定義されている通りであり、R
2およびR
3が上で定義されている通りであるか、またはそれらの保護されたバリアントであり、L
1a’は、それが結合している隣接炭素と一緒になった場合、上で定義されているLとなる、構造(I)の化合物の調製に有用な中間体を調製する例示的な方法を例示する。反応スキーム1を参照すると、構造aの化合物は、購入することができるか、または当業者に周知の方法により調製することができる。当分野で公知のSuzukiカップリン条件下でのM-X(xは、ブロモなどのハロゲンである)との反応により、構造bの化合物をもたらす。構造bの化合物は、以下に記載されている、構造(I)の化合物の調製に使用することができる。
【0154】
反応スキームII
【化35】
反応スキームIIは、構造(I)の化合物の調製に有用な中間体化合物の調製の代替法を例示している。R
1、L、L
1a、L
2、L
3およびMが上で定義されている通りであり、R
2およびR
3が上で定義されている通りであるか、またはそれらの保護されたバリアントである、反応スキームIIを参照すると、購入することができるか、または周知技法によって調製することができる構造cの化合物を、M-G’と反応させて、構造dの化合物を生成させる。ここで、GおよびG’は、相補性反応性を有する官能基(すなわち、反応して共有結合を形成する官能基)を表す。G’は、M、またはMの構造上の主鎖の一部、例えば、環式無水物への側鎖となり得る。Gは、アミノなどの、任意の数の官能基であってもよい。
【0155】
ある種の実施形態では、構造Iの化合物は、2~100の繰り返し単位を含むオリゴマーである。このようなオリゴマーは、周知の自動化DNA合成法に類似する方法を使用して調製することができる。DNA合成法は、当分野において周知である。手短に述べると、2つのアルコール基、例えば上の中間体bまたはd中のR2およびR3は、それぞれ、ジメトキシトリチル(DMT)基および2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノホスホロアミダイト基により官能基化されている。ホスホロアミダイト基は、通常、テトラゾールなどの活性化剤の存在下で、アルコール基に結合させて、次に、ヨウ素によりリン原子を酸化する。ジメトキシトリチル基を、酸(例えば、クロロ酢酸)により除去して、遊離アルコールを露出させることができ、この遊離アルコールは、ホスホロアミダイト基と反応させることができる。2-シアノエチル基は、アンモニア水による処理によってオリゴマー化した後に除去され得る。
【0156】
オリゴマー化法に使用されるホスホロアミダイトの調製もまた、当分野で周知である。例えば、一級アルコール(例えば、R3)は、DMT-Clとの反応によってDMT基として保護され得る。次に、二級アルコール(例えば、R2)は、2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトなどの適切な試薬との反応によって、ホスホロアミダイトとして官能基化される。ホスホロアミダイトの調製方法およびそのオリゴマー化の方法は、当分野において周知である。
【0157】
中間体bまたはdのオリゴマーは、上記の周知のホスホロアミダイト(phophoramidite)化学に従い調製される。所望の数の繰り返し単位mは、ホスホロアミダイトのカップリングを、適切な中間体、例えば、以下の構造:
【0158】
【化36】
を有する中間体と、所望の回数、反復することにより分子に取り込まれる。
以下の実施例は、限定ではなく、例示目的で提示される。
【実施例】
【0159】
一般方法
1Hおよび31P NMRスペクトルは、JEOL400MHz分光計で得る。31P NMRスペクトルは、85%水性リン酸を参照し、1Hスペクトルは、TMSを参照する。逆相HPLC色素分析は、45℃に保持した2.1mmx50mm Acquity BEH-C18カラムを備えるWaters Acquity UHPLCシステムを使用して行う。質量スペクトル分析は、MassLynx4.1アクイジョンソフトウェアを使用する、Waters/Micromass QuattroマイクロMS/システムMS(MSモードのみ)で行う。LC/MSに使用した移動相は、100mMの1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)、8.6mMのトリエチルアミン(TEA)、pH8である。ホスホロアミダイトおよび前駆体分子は、Aapptec(著作権)Spirit(商標)ペプチドC18カラム(4.6mmx100mm、5μmの粒子サイズ)を使用する、ダイオードアレイ検出器および高性能オートサンプラーを備えるAgilent Infinity1260 UHPLCシステムを使用して分析する。励起および発光プロファイル実験は、Cary Eclipseスペクトル光度計で記録する。
反応はすべて、特に明記しない限り、窒素雰囲気下、オーブン乾燥したガラス器具中で行った。市販のDNA合成試薬は、Glen Research(Sterling、VA)から購入する。無水ピリジン、トルエン、ジクロロメタン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、酢酸、ピリジンおよびTHFは、Aldrichから購入する。他の化学物質はすべて、AldrichまたはTCIから購入し、さらに精製することなく、そのまま使用する。
【0160】
すべてのオリゴマー(すなわち、二量体以上)化合物は、ホスホロアミダイトに基づくカップリング手法に関する標準プロトコルを使用するABI394 DNA合成装置で合成する。オリゴマーの合成に関する鎖の構築サイクルは、以下:(i)脱トリチル化、ジクロロメタン中の3%トリクロロ酢酸(trichloroaceticacid)、1分間、(ii)カップリング、アセトニトリル中の0.1Mホスホロアミダイトおよび0.45Mテトラゾール、10分間、(iii)キャッピング、THF/ルチジン、1/1中の0.5M無水酢酸、v/v、15秒、(iv)酸化、THF/ピリジン/水、10/10/1中の0.1Mヨウ素、v/v/v、30秒、の通りである。
【0161】
このサイクル内の化学工程は、0.2~0.4分間の、アセトニトリルによる洗浄および乾燥アルゴンの吹込みが後に続く。塩基およびホスホロアミデート保護基の支持および除去に起因する開裂は、室温で1時間、アンモニアにより処理することによって実現される。次に、オリゴマー色素を、上記の逆相HPLCにより分析する。
【0162】
(実施例1)
イブプロフェン-NHSおよびナプロキセン-NHSの合成
【化37】
【0163】
イブプロフェン-NHSおよびナプロキセン-NHSは、標準カップリング条件を使用して合成した。すなわち、イブプロフェンおよびナプロキセンを、ジクロロメタンに個別に溶解し、この混合物に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を加えた。次に、生成物を必要に応じて精製し、次の合成工程に使用した。イブプロフェン-NHSは、多グラムスケールで1工程で容易に合成される。
【0164】
(実施例2)
イブプロフェンポリマーの合成
【化38】
【0165】
上の反応順序に示されている通り、例示的なポリマー(例えば、アミン官能基側鎖を有する)をイブプロフェン-NHSと連結する。この反応は、塩化マグネシウムを含むホウ酸緩衝化H2O/DMSO混合物を使用して行われる。この反応は、アミン官能基の各々にイブプロフェン部分を首尾よく付加して、所望の生成物を与える。
【0166】
(実施例3)
ナプロキセンポリマーの合成
【化39】
【0167】
上の反応順序に示されている通り、例示的なポリマー(例えば、アミン官能基側鎖を有する)をナプロキセン-NHSに連結する。この反応は、塩化マグネシウムを含むホウ酸緩衝化H2O/DMSO混合物を使用して行われる。この反応は、アミン官能基の各々にイブプロフェン部分を首尾よく付加して、所望の生成物を与える。
【0168】
(実施例4)
ドキソルビシン-NHSの合成
【化40】
ドキソルビシンをジヒドロフラン-2,5-ジオンと反応させて、カルボン酸含有中間体を得る。この中間体を、TFA-NHSおよびピリジンを使用して活性化し、ドキソルビシン-NHSが得られる。
【0169】
(実施例5)
ドキソルビシンポリマーの合成
【化41】
【0170】
例示的なポリマーをドキソルビシン-NHSに連結する。この反応条件は、ドキソルビシン誘導体の溶解度に限界があるので、異なる溶媒混合物を使用する実験を必要とする。反応条件の代替肢は、有機溶媒の含有量を増量すること、反応温度を高くすること、および反応を支援するためドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加することを含む。
【0171】
(実施例6)
ドキソルビシン-PEG-アジドの合成
【化42】
【0172】
ドキソルビシン-PEG-アジドは、50mgスケールで、上に示した反応順序に従い合成した。アジド6-1は、ジヒドロフラン-2,5-ジオンと反応させて、中間体6-2を得て、これをパーフルオロフェノールと反応させて、中間体6-3を得た。中間体6-3をドキソルビシンに連結させて、所望の生成物である、ドキソルビシン-PEG-アジドが良好な収率(74%)で得られた。所望の生成物の存在は、LC-MSによって確認した。
【0173】
(実施例7)
ドキソルビシンポリマーの合成
【化43】
例示的なアルキニル含有ポリマーをドキソルビシン-PEG-アジドに連結する。反応条件は、CuSO
4、トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA)およびアスコルビン酸ナトリウムを含む。60%DMSを含む、pHが7.6のリン酸緩衝水性溶媒中でこの反応を行う。この反応を室温で行い、所望の生成物の存在をLC-MSによって確認する。
【0174】
ポリマー、およびその後にいずれかの標的指向性部分に連結される生物活性部分または蛍光色素部分の数を制御することが可能であることを含めた、多数の利点が本明細書に開示されている実施形態によってもたらされる。ポリマー主鎖の組成はまた、例えば、電荷部分(例えば、数、頻度、間隔など)の組み込みを制御することによって、所望の溶解度特性を実現するように選択することができる。側鎖は、主鎖の組成によってもたらされる特性に加え、本明細書において開示されている化合物の溶解度を調節するための根本を提供するよう選択され得る。
【0175】
本明細書において開示されている実施形態はまた、例えば、無料(complimentary)のまたは相乗的な治療的戦略のために、複数の治療剤を有利に含むことができる化合物を提供する。さらに、本開示の実施形態は、標的化、処置および検出を同時に行うために使用することができる、治療剤、標的指向性部分および色素部分(例えば、フルオロフォア)の組合せを提供する。ポリマー-薬物構築体を、抗体、抗体断片、タンパク質または他の臨床的に関心の高い薬剤などの標的剤にカップリングすることが容易であるため、幅広い関心の持たれる用途(例えば、表面化学、アッセイ開発など)に対して有用性がある。
【0176】
ある種の実施形態の化合物はまた、透過性の増強および保持作用を含めた、他の所望の特性を実現する。必要な溶解性の実現に加えて、本化合物の実施形態の化学的特徴は、本化合物が罹患細胞/組織を透過する能力およびこれらの内部に保持される能力をモジュレートするよう調節され得る。これらの特徴により、浸透度の増強による生物活性剤の効果的な送達、および保持の増強による有効性の増大が可能になる。
【0177】
この明細書に言及されている、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物のすべては、2018年1月12日に出願の米国仮特許出願第62/616,668号を含め、本記載と一致しない程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0178】
上述から、本発明の具体的な実施形態が、例示目的のために本明細書に記載されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な修正が行われてもよいことが理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によるもの以外の限定は受けない。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕以下の構造(I)を有する化合物:
【化1】
(I)
またはその立体異性体、薬学的に許容される塩もしくは互変異性体(式中、
Mは、出現毎に独立して、生物活性部分もしくはその断片、生物活性部分のプロドラッグもしくはその断片、蛍光色素、イメージング剤または放射性同位体結合部位であり、ただし、出現するMの少なくとも1つは、蛍光色素ではないことを条件とし、
Lは、生理的に開裂可能なリンカーであり、
L
1
は、出現毎に独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレンまたはヘテロアルキニレンリンカーであり、
L
2
およびL
3
は、出現毎に独立して、任意選択のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
R
1
は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
R
2
およびR
3
は、それぞれ独立して、-H、-OH、-SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、アルキルアミニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、Qもしくはそれらの保護形態、またはL’であり、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、アルキルアミニル、アルキルカルボニルおよびアルキルオキシカルボニルは、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルもしくはチオホスホアルキルエーテル、またはそれらの組合せにより置換されていてもよく、
R
4
は、出現毎に独立して、OH、SH、O
-
、S
-
、OR
d
またはSR
d
であり、
R
5
は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
R
d
は、陽イオンであり、
Qは、出現毎に独立して、標的指向性部分の相補性反応性基Q’と共有結合の形成が可能な、反応性基、またはその保護形態を含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Qへの共有結合を含むリンカー、標的指向性部分、標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、固体支持体もしくは固体支持体残基、固体支持体もしくは固体支持体残基への共有結合を含むリンカー、または構造(I)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、
mは、出現毎に独立して、0以上の整数であり、ただし、出現するmの少なくとも1つは、3以上の整数であり、
nは、1以上の整数である)。
〔2〕以下の構造(IA):
【化2】
(IA)
(式中、x
1
およびx
2
は、出現毎に独立して、0~6の整数である)
を有する、前記〔1〕に記載の化合物。
〔3〕L
1
が、出現毎に独立して、C
1
-C
6
アルキレンまたはC
2
-C
6
アルキニレンである、前記〔1〕~〔2〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔4〕以下の構造(IB):
【化3】
(IB)
(式中、
x
1
およびx
2
は、出現毎に独立して、0~6の整数であり、
yは、1~6の整数である)
を有する、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔5〕yが2である、前記〔4〕に記載の化合物。
〔6〕x
1
およびx
2
が、出現毎に、それぞれ1である、前記〔2〕~〔5〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔7〕出現毎に、x
1
が0であり、x
2
が1である、前記〔2〕~〔5〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔8〕R
4
が、出現毎に独立して、OH、O
-
またはOR
d
である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔9〕R
5
が、出現毎に、オキソである、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔10〕以下の構造(IB’)または(IB”):
【化4】
の一方を有する、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔11〕R
1
が、Hである、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔12〕R
2
およびR
3
が、それぞれ独立して、OHまたは-OP(=R
a
)(R
b
)R
c
である、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔13〕R
2
またはR
3
の一方が、OHまたは-OP(=R
a
)(R
b
)R
c
であり、R
2
またはR
3
のもう一方が、Q、またはQへの共有結合を含むリンカーである、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔14〕R
2
またはR
3
の1つがL’であり、L’が、固体支持体への共有結合を含むリンカーである、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔15〕固体支持体が、ポリマー製ビーズまたは非ポリマー製ビーズである、前記〔14〕に記載の化合物。
〔16〕R
2
またはR
3
の1つがL’であり、L’が、標的指向性部分であるか、または標的指向部分へのリンカーである、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔17〕L’が、標的指向性部分へのリンカーであり、リンカーが、ヘテロアルキレンリンカーを含む、前記〔16〕に記載の化合物。
〔18〕標的指向性部分が、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストである、前記〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔19〕抗体または細胞表面受容体アンタゴニストが、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、肝細胞成長因子受容体(HGFR)阻害剤、インスリン様成長因子受容体(IGFR)阻害剤、フォレートまたはMET阻害剤である、前記〔18〕に記載の化合物。
〔20〕Qが、スルフヒドリル、ジスルフィド、活性化エステル、イソチオシアネート、アジド、アルキン、アルケン、ジエン、求ジエン体、酸ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル、ホスフィン、α-ハロアミド、ビオチン、アミノまたはマレイミド官能基を含む、前記〔1〕~〔19〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔21〕Qが、表1から選択される部分を含む、前記〔1〕~〔20〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔22〕mが、出現毎に独立して、1~20の整数である、前記〔1〕~〔21〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔23〕mが、出現毎に独立して、1~10の整数である、前記〔1〕~〔22〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔24〕nが、1~100の整数である、前記〔1〕~〔23〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔25〕nが、1~10の整数である、前記〔1〕~〔24〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔26〕Lが、出現毎に独立して、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、二重結合、三重結合、エーテル結合、ケトン、ジオール、シアノ、ニトロまたはそれらの組合せを含むリンカーである、前記〔1〕~〔25〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔27〕Mが、出現毎に独立して、NSAID、キナーゼ阻害剤、アントラサイクリン、EGFR阻害剤またはアルキル化剤である、前記〔1〕~〔26〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔28〕出現するMの少なくとも1つが、以下の構造:
【化5】
のうちの1つを有する、前記〔1〕~〔27〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔29〕Mが、出現毎に、以下の構造:
【化6】
のうちの1つを有する、前記〔1〕~〔28〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔30〕Mが、出現毎に独立して、抗がん薬であり、標的指向性部分が、腫瘍細胞抗原に特異的な抗体である、前記〔1〕~〔27〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔31〕腫瘍細胞抗原が、EGFR、HER2、葉酸受容体、CD20またはCD33である、前記〔30〕に記載の化合物。
〔32〕表2中の化合物から選択される、前記〔1〕に記載の化合物。
〔33〕前記〔1〕~〔32〕のいずれか1項に記載の化合物、および薬学的に許容される担体を含む組成物。
〔34〕単一連結基により抗体に共有結合している前記〔1〕に記載の化合物を含む複数のコンジュゲートを含む組成物であって、複数のコンジュゲートが少なくとも90%の構造均質性を有する、組成物。
〔35〕複数のコンジュゲートが、少なくとも95%の構造均質性を有する、前記〔34〕に記載の組成物。
〔36〕複数のコンジュゲートが、99%を超える構造均質性を有する、前記〔35〕に記載の組成物。
〔37〕R
2
およびR
3
の1つが、-OP(=R
a
)(R
b
)OL’またはL’であり、L’が、抗体、もしくはこの抗体への共有結合を含むリンカーである、前記〔34〕~〔36〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔38〕それを必要とする対象に、治療有効量の前記〔1〕~〔32〕のいずれか1項に記載の化合物、または前記〔33〕~〔37〕のいずれか1項に記載の組成物を投与するステップを含む、疾患を処置する方法であって、Mがそれぞれ、独立して、疾患を処置するのに有効な生物活性部分である、方法。
〔39〕疾患ががんであり、Mがそれぞれ、独立して抗がん薬である、前記〔38〕に記載の方法。