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特許7515786リンカー基を有するポリマータンデム色素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】リンカー基を有するポリマータンデム色素
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/09 20060101AFI20240708BHJP
   C09B 69/10 20060101ALI20240708BHJP
   C07K 1/13 20060101ALI20240708BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240708BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240708BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20240708BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C07F9/09 U CSP
C09B69/10 Z
C07K1/13
C07K14/705
C07K16/00
C12N15/115 Z
G01N21/64 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020550780
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019021327
(87)【国際公開番号】W WO2019182766
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】62/646,234
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】マトライ トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】シング シャラト
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/177065(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/183185(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/173355(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/183461(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/173348(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F,G01N
CAPlus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造(I)を有する化合物またはその立体異性体、塩もしくは互変異性体。
【化1】
(I)

(式中、
1およびM2は、出現毎に独立して、蛍光性または発色性の発色団であり、ただし、M1およびM2の少なくとも1つは、FRETドナーであり、M1およびM2のうちのもう1つは、対応するFRETアクセプターであることを条件とし、
(A)M1もしくはM2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、ジメチルアミノスチルベン、キナクリドン、フルオロフェニル-ジメチル-BODIPY、bis-フルオロフェニル-BODIPY、アクリジン、テリレン、セキシフェニル、ポルフィリン、ベンゾピレン、(フルオロフェニル-ジメチル-ジフルオロボラ-ジアザ-インダセン)フェニル、(ビス-フルオロフェニル-ジフルオロボラ-ジアザ-インダセン)フェニル、クアテルフェニル、ビ-ベンゾチアゾール、ター-ベンゾチアゾール、ビ-ナフチル、ビ-アントラシル、スクアライン、スクアリリウム、9,10-エチニルアントラセンもしくはター-ナフチル部分であるか、
(B)M1もしくはM2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、p-ターフェニル、ペリレン、アゾベンゼン、フェナジン、フェナントロリン、アクリジン、チオキサンテン、クリセン、ルブレン、コロネン、シアニン、ペリレンイミドもしくはペリレンアミドであるか、
(C)M1もしくはM2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、クマリン色素、レゾルフィン色素、ジピロメテンボロンジフルオリド色素、ルテニウムビピリジル色素、チアゾールオレンジ色素、ポリメチンもしくはN-アリール-1,8-ナフタルイミド色素であるか、
(D)M1およびM2が、出現毎に独立して、ホウ素-ジピロメテン、ローダミン、シアニン、ピレン、ペリレン、ペリレンモノイミドもしくは6-FAMであるか、または
(E)M1およびM2が、出現毎に独立して、以下の構造:
のうちの1つを有し、
1は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
2およびL3は、出現毎に独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
4は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
1は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
2およびR3は、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、-OP(=Ra)(Rb)Rc、またはQであり、
4は、出現毎に独立して、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、
5は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
aは、OまたはSであり、
bは、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、
cは、OH、SH、O-、S-、ORd、OL’、SRd、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルであり、
dは、対イオンであり、
Qは、出現毎に独立して、スルフヒドリル、ジスルフィド、活性化エステル、イソチオシアネート、アジド、アルキン、アルケン、ジエン、求ジエン体、酸ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル、ホスフィン、α-ハロアミド、ビオチン、アミノまたはマレイミド官能基を含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Q、標的指向性部分、分析対象分子、固体支持体、固体支持体残基、ヌクレオシドまたは構造(I)のさらなる化合物へのヘテロアルキレンリンカーであり、
mは、出現毎に独立して、0~10の整数であり、
nは、1~100の整数であり、
ただし、M1およびM2が、フルオレセイン、ピレンおよびペリレン発色団から選択される場合、出現するL4の少なくとも1つは、ヘテロアルキレンであるか、または出現するmの少なくとも1つは0であることを条件とする)
【請求項2】
(A)出現するL4の少なくとも1つが、ヘテロアルキレンであり、該ヘテロアルキレンが、アルキレンオキシドを含むか、または該ヘテロアルキレンが、エチレンオキシドを含み、および
(B)出現するL4の少なくとも1つが、アルキレンであり、少なくとも1つの該アルキレンが、エチレンであるか、または該アルキレンが、出現毎に、エチレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
以下の構造(IA)を有する、請求項1または2に記載の化合物。
【化2】
(IA)

(式中、
zは、出現毎に独立して、1~100の整数であり、
1、m2およびm3は、出現毎に独立して、0~6の整数である)
【請求項4】
以下の構造(IB)を有する、請求項1または2に記載の化合物。
【化3】
(IB)
(式中、
zは、出現毎に独立して、1~100の整数である)
【請求項5】
以下の構造(IC)を有する、請求項1または4に記載の化合物。
【化4】
(IC)

(式中、x1、x2、x3およびx4は、出現毎に独立して、1~6の整数である)
【請求項6】
以下の構造(ID)を有する、請求項3に記載の化合物。
【化5】
(ID)
【請求項7】
以下の構造(IE)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化6】
(IE)
【請求項8】
以下の構造(II)を有する化合物またはその立体異性体、塩もしくは互変異性体。
【化7】
(II)

(式中、
1およびM2は、出現毎に独立して、蛍光性または発色性の発色団であり、ただし出現するM1およびM2の少なくとも1つは一緒になって、FRETアクセプター-ドナー対を形成することを条件とし、
(A)M1もしくはM2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、ジメチルアミノスチルベン、キナクリドン、フルオロフェニル-ジメチル-BODIPY、bis-フルオロフェニル-BODIPY、アクリジン、テリレン、セキシフェニル、ポルフィリン、ベンゾピレン、(フルオロフェニル-ジメチル-ジフルオロボラ-ジアザ-インダセン)フェニル、(ビス-フルオロフェニル-ジフルオロボラ-ジアザ-インダセン)フェニル、クアテルフェニル、ビ-ベンゾチアゾール、ター-ベンゾチアゾール、ビ-ナフチル、ビ-アントラシル、スクアライン、スクアリリウム、9,10-エチニルアントラセンもしくはター-ナフチル部分であるか、
(B)M1もしくはM2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、p-ターフェニル、ペリレン、アゾベンゼン、フェナジン、フェナントロリン、アクリジン、チオキサンテン、クリセン、ルブレン、コロネン、シアニン、ペリレンイミドもしくはペリレンアミドであるか、
(C)M1もしくはM2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、クマリン色素、レゾルフィン色素、ジピロメテンボロンジフルオリド色素、ルテニウムビピリジル色素、チアゾールオレンジ色素、ポリメチンもしくはN-アリール-1,8-ナフタルイミド色素であるか、
(D)M1およびM2が、出現毎に独立して、ホウ素-ジピロメテン、ローダミン、シアニン、ピレン、ペリレン、ペリレンモノイミドもしくは6-FAMであるか、または
(E)M1およびM2が、出現毎に独立して、以下の構造:
のうちの1つを有し、
1は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
2およびL3は、出現毎に独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
4は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
1は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
2およびR3は、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、-OP(=Ra)(Rb)Rc、またはQであり、
4は、出現毎に独立して、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、
5は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
aは、OまたはSであり、
bは、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、
cは、OH、SH、O-、S-、ORd、OL’、SRd、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルであり、
dは、対イオンであり、
Qは、出現毎に独立して、スルフヒドリル、ジスルフィド、活性化エステル、イソチオシアネート、アジド、アルキン、アルケン、ジエン、求ジエン体、酸ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル、ホスフィン、α-ハロアミド、ビオチン、アミノまたはマレイミド官能基を含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Q、標的指向性部分、分析対象分子、固体支持体、固体支持体残基、ヌクレオシド、または構造(II)のさらなる化合物へのヘテロアルキレンリンカーであり、
mは、出現毎に独立して、1~10の整数であり、
nは、1~100の整数である)
【請求項9】
(A)出現するL1の少なくとも1つについて、L1が、エステル、アミド、チオエステル、またはジスルフィド基を含むヘテロアルキレンリンカーであるか、または
(B)L1が、以下の構造:
【化11】

(式中、a、bおよびcは、それぞれ独立して、1~6の範囲の整数である)
のうちの1つを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
(A)R2またはR3の一方が、OHまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcであり、R2またはR3のもう一方が、QまたはQへの共有結合を含むリンカーであるか、
(B)R2およびR3が、それぞれ独立して、-OP(=Ra)(Rb)Rcであり、RcがOL’であり、ここで、
i)L’が、アルキレンオキシドもしくはホスホジエステル部分、またはそれらの組合せを含むか、もしくは
ii)L’が、以下の構造:
【化12】


(式中、
m”およびn”は、独立して、1~10の整数であり、
eは、H、電子対または対イオンであり、
L”は、Re、またはQ、標的指向性部分、分析対象分子、固体支持体、固体支持体残基、ヌクレオシド、構造(I)のさらなる化合物、もしくは構造(II)のさらなる化合物への直接結合もしくは連結基である)
を有するか、
(C)R2またはR3の一方が、OHまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcであり、R2またはR3のもう一方が、分析対象分子または固体支持体へのヘテロアルキレンリンカーであるか、または
(D)R2またはR3が、以下の構造:
【化13-1】
【化13-2】
(式中、
標的指向性部分が、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストであり、
分析対象分子が、核酸、アミノ酸もしくはそれらのポリマー、酵素、受容体、受容体リガンド、抗体、糖タンパク質、アプタマー、またはプリオンであり、
固体支持体が、ポリマー製ビーズまたは非ポリマー製ビーズである)
のうちの1つを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
Qが、以下の構造のうちの1つを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【化14-1】
【化14-2】
(式中、Xはそれぞれ、独立して、ハロゲンである)
【請求項12】
1およびM2が、出現毎に独立して、以下の構造:
【化15】
のうちの1つを有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
以下の構造のうちの1つを有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物。
【化16-1】
【化16-2】
【化16-3】
【化16-4】
【化16-5】
【化16-6】
【化16-7】
【化16-8】
【化16-9】
【化16-10】
【化16-11】
【化16-12】
【化16-13】
【化16-14】
【化16-15】
(式中、
HEGが、
【化17】
であり、
3が、
【化18】
であり、
dTが、
【化19】
であり、
Fが、
【化20】
であり、
Bが、
【化21-1】
であり、
B’が、
【化21-2】
であり、
Tが、
【化22】
であり、
Cが、
【化23】
であり、および
Yが、
【化24】
である)
【請求項14】
以下の構造のうちの1つを有する、請求項8~12のいずれか1項に記載の化合物。
【化25】
(式中、
Fが、
【化26】
であり、
Yが、
【化27】
である)
【請求項15】
分析対象分子を目視で検出する方法であって、
(a)分析対象分子への共有結合を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物を用意するステップ、および
(b)化合物をその可視特性によって検出するステップ
を含む方法。
【請求項16】
分析対象分子を目視で検出する方法であって、
(a)Qへの共有結合を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物を分析対象分子と混合するステップ、
(b)化合物および分析対象分子のバイオコンジュゲートを形成するステップ、および
(c)バイオコンジュゲートをその可視特性によって検出するステップ
を含み、
ここで、Qが、
【化28】
(式中、Xが、ハロであり、EWGが、電子求引基である)
から選択される、方法。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物、および1つまたは複数の分析対象分子を含む組成物。
【請求項18】
ヒトに対する医療行為を除く、1つまたは複数の分析対象分子を検出するための分析法における、請求項17に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、間隔基を有する二量体およびポリマー発色団化合物(例えば、蛍光色素部分を含むポリマー化合物)、ならびにその調製法、ならびに様々な分析法におけるその使用方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
蛍光および/または発色色素は、非常に感度の高い検出試薬が望ましい用途にとって特に好適であることが知られている。試料中の特定の成分または構成成分を優先的に標識することが可能な色素によって、研究者は、その特定の成分または構成成分の存在、量および/または位置を判定することが可能となる。さらに、特定の系は、多様な環境における、その空間的および時間的分布に関するモニタリングが行われ得る。
蛍光および比色定量方法は、化学および生物学において、非常に広範囲に普及している。これらの方法は、生体分子に関する、存在、構造、距離、配向、複合体形成および/または位置に関する有用な情報をもたらす。さらに、時間分解法は、動力学および速度の測定に使用されることが次第に増加している。その結果、核酸およびタンパク質などの生体分子の蛍光または着色標識化に関する多数の戦略が開発されてきた。生体分子の分析は、通常、水性環境で行われるので、所望の空間情報および生体分子の相互作用を明らかにすることが可能な水性系と適合可能な色素の開発および使用に重点が置かれてきた。
したがって、そのような構造情報を明らかにするために、共鳴エネルギー移動を含む技法が開発されてきた。具体的には、Forster共鳴エネルギー移動(「FRET」 - 時に、蛍光共鳴エネルギー移動と互換的に使用されることもある)技法は、生体分子の距離および相互作用の変化を信頼性高く測定する情報を生成する。共鳴エネルギー移動技法は、比較的安価であり、測定値を迅速に得ることができる。しかし、FRETは、発色団の配向および配置、ならびに遊離フルオロフォアおよび望ましくないpHへの感受性のために、エネルギー移動の遮蔽に関連するいくつかの制限を受ける。
【発明の概要】
【0003】
したがって、モル輝度が増大したおよび/またはFRET発光シグナルが増大した、水溶性色素、とりわけ共鳴エネルギー移動色素が当分野において必要とされている。理想的には、このような色素およびバイオマーカーは、強い着色または蛍光となるべきであり、様々な色および蛍光波長に利用可能であるべきである。本発明は、この必要性を満足し、さらに関連する利点を実現する。
手短に述べると、本発明の実施形態は、概して、生体分子などの分析対象分子の目視検出を可能にする、水溶性蛍光色素および/または発色色素および/またはプローブとして有用な化合物、ならびにそれらを調製するための試薬を対象とする。特に、一部の実施形態では、本開示の化合物により、この化合物に結合したFRET蛍光発光が可能となるので、本開示の化合物は有用である。色素を使用する分析対象分子を目視検出する方法もまた記載されている。
【0004】
本開示の色素の実施形態は、リンカー(「L4」)によって共有結合により連結されている、2つ以上の蛍光および/または発色部分(すなわち、発色団)を含む。二量体および/またはポリマー色素の以前の報告とは対照的に、本色素は、対応するモノマー色素化合物よりもかなり高輝度であり、分子内相互作用の結果として、FRET吸光(absorbance)および発光を可能にする。理論に拘泥することを望むものではないが、特定のリンカーにより、分子内FRETが最適化されるよう蛍光および/または発色部分の間が十分に近づけられると考えられる。
本発明の実施形態の水溶性蛍光または発色色素は、強く発色し、FRET過程(例えば、吸光、発光、ストークスシフト)および/または蛍光を可能にし、目視検査または他の手段によって容易に観察することができる。一部の実施形態では、本化合物は、事前の照射、または化学的もしくは酵素的活性化なしに、観察することができる。色素の適切な選択により、本明細書に記載されている通り、様々な発色の目視により検出可能な分析対象分子、および標的分子に関する価値のある空間情報を得ることができる。
【0005】
一実施形態では、以下の構造(I)を有する化合物:
【化1】
(I)

またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩(式中、R1、R2、R3、R4、R5、L1、L2、L3、L4、M1、M2、mおよびnは、本明細書で定義されている通りである)が提供される。
【0006】
別の実施形態は、以下の構造(II)を有する化合物:
【化2】
(II)

またはその立体異性体、塩もしくは互変異性体(式中、R1、R2、R3、R4、R5、L1、L2、L3、L4、M1、M2、mおよびnは、本明細書で定義されている通りである)を提供する。
【0007】
さらに別の実施形態は、アクセプター遷移双極子モーメントを有しており、ポリマー主鎖に共有結合により連結されているアクセプター発色団、およびドナー遷移双極子モーメントを有しており、ポリマー主鎖に共有結合により連結されているドナー発色団を含むポリマー化合物であって、生理的条件にある溶液中で、アクセプター発色団とドナー発色団との間の有効距離が約50.0nm未満であり、アクセプター遷移双極子およびドナー遷移双極子が実質的に平行となる立体配置(confirmation)をとる、ポリマー化合物を提供する。
上述の実施形態は、様々な分析法における、FRET色素、蛍光色素および/または発色色素としての使用を含む、いくつかの用途に利用が見いだされる化合物を記載している。
【0008】
別の実施形態では、試料を染色する方法であって、前記試料に、前記試料が適切な波長で照射されると光学応答を生じるのに十分な量で上記の化合物のうちの1つを添加するステップを含む方法が提供される。
さらに他の実施形態では、本開示は、分析対象分子を目視で検出する方法であって、
(a)上述の化合物(例えば、構造(I)または構造(II)の化合物)のうちの1つを用意するステップ、および
(b)該化合物をその可視特性によって検出するステップ
を含む方法を提供する。
【0009】
他の開示されている方法は、生体分子を目視で検出するための方法であって、
(a)上述の化合物(例えば、構造(I)または構造(II)の化合物)のうちの1つを1つまたは複数の生体分子と混合するステップ、および
(b)該化合物をその可視特性によって検出するステップ
を含む方法を含む。
他の実施形態は、上述の化合物(例えば、構造(I)または構造(II)の化合物)のうちの少なくとも1つ、および1つまたは複数の生体分子を含む組成物を対象とする。1つまたは複数の分析対象(例えば、生体分子)を検出するための分析法における、このような組成物の使用も提供される。
本発明のこれらの態様および他の態様が、以下の詳細な説明を参照すると明白になろう。
【0010】
図面では、同一の参照番号は、同様の要素と識別する。図面における要素のサイズおよび相対位置は、必ずしも、縮尺通りに描かれておらず、これらの要素の一部は、任意に、拡大されて、図面の見易さを改善するように配置されている。さらに、図示されている要素の具体的な形状は、その具体的な要素の実際の形状に関するいかなる情報も伝えることを意図しているわけではなく、図面における認識の容易さを理由に単に選択されているに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】化合物I-1~I-4の発光スペクトルを示すグラフであり、各々は、ペンダントホウ素-ジピロメテン(「BODIPY」)とフルオレセインをベースとする発色団との間に様々なスペーサー長さを有する。
図2】化合物I-5~I-8の発光スペクトルを示すグラフであり、各々は、ペンダントテキサスレッドとフルオレセインをベースとする発色団との間に様々なスペーサー長さを有する。
図3】代表的なポリマー色素化合物に関するドナーの発光量と比較した、化合物I-9~I-12の発光スペクトルのグラフである。
図4】ポリマー化合物の変化が発光量にどのように影響を及ぼすかを比較した、化合物I-13~I-19の発光スペクトルを示すグラフである。
図5】化合物I-20~I-23の発光スペクトル、およびこれらの化合物上のスペーサー長さの影響を示すグラフである。
図6】ポリマー主鎖に対してペンダントとなる3つの個別の色素部分を有する、化合物I-24の吸光度スペクトルを示すグラフである。
図7】7.0および9.0のpH値の場合の、化合物I-24の発光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の記載において、ある種の具体的な詳細は、本発明の様々な実施形態の完全な理解をもたらすために説明される。しかし、当業者は、本発明は、これらの詳細なしに行われ得ることを理解していよう。
文脈上異なる解釈を要する場合を除き、本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」などのその変化形は、オープンな包括的な意味、すなわち、「以下に限定されないが、含む」として解釈されるべきである。
本明細書全体を通じて、「一実施形態」または「ある1つの実施形態」という場合、これらの実施形態に関連して記載されている、特定の特色、構造または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書の全体における様々な位置における、「一実施形態では」または「ある1つの実施形態では」という言い回しが現れる場合、必ずしも、すべてが、同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特色、構造または特徴は、1つまたは複数の実施形態における、任意の好適な方法において組み合わされ得る。
【0013】
「アミノ」とは、-NH2基を指す。
「カルボキシ」とは、-CO2H基を指す。
「シアノ」とは、-CN基を指す。
「ホルミル」とは、-C(=O)H基を指す。
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」とは、-OH基を指す。
「イミノ」とは、=NH基を指す。
「ニトロ」とは、-NO2基を指す。
「オキソ」とは、=O置換基を指す。
「スルフヒドリル」とは、-SH基を指す。
「チオキソ」とは、=S基を指す。
【0014】
「アルキル」とは、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子(C1-C12アルキル)、1~8個の炭素原子(C1-C8アルキル)または1~6個の炭素原子(C1-C6アルキル)を有する、炭素および水素原子のみからなる直鎖状または分岐状の炭化水素鎖の基であって、単結合によって分子の残りに結合している炭化水素鎖の基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシルなどを指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキル基は、置換されていてもよい。
「アルキレン」または「アルキレン鎖」とは、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子を有する、炭素および水素のみからなる、分子の残りをラジカル基に連結する、二価の直鎖状または分岐状炭化水素鎖、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレン、プロピニレン、n-ブチニレンなどを指す。アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残りに、および単結合を介してラジカル基に結合している。分子の残りおよびラジカル基へのアルキレン鎖の結合点は、この鎖内の1個の炭素または任意の2個の炭素を介することができる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキレンは、置換されていてもよい。
【0015】
「アルケニレン」または「アルケニレン鎖」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、2~12個の炭素原子を有する、炭素および水素のみからなる、分子の残りをラジカル基に連結する、二価の直鎖状または分岐状炭化水素鎖、例えば、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレンなどを指す。アルケニレン鎖は、単結合を介して分子の残りに、および二重結合または単結合を介してラジカル基に結合している。分子の残りおよびラジカル基へのアルケニレン鎖の結合点は、この鎖内の1個の炭素または任意の2個の炭素を介することができる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルケニレンは、置換されていてもよい。
「アルキニレン」または「アルキニレン鎖」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み、2~12個の炭素原子を有する、炭素および水素のみからなる、分子の残りをラジカル基に連結する、二価の直鎖状または分岐状炭化水素鎖、例えば、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレンなどを指す。アルキニレン鎖は、単結合を介して分子の残りに、および二重結合または単結合を介してラジカル基に結合している。アルキニレン鎖の、分子の残りおよびラジカル基への結合点は、この鎖内の1個の炭素または任意の2個の炭素を介することができる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキニレンは、置換されていてもよい。
【0016】
「アルキルエーテル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素結合が、炭素-酸素結合により置き換えられている、上で定義されている任意のアルキル基を指す。炭素-酸素結合は、末端(アルコキシ基のように)に存在していてもよく、または炭素酸素結合は内部(すなわち、C-O-C)に存在していてもよい。アルキルエーテルは、少なくとも1つの炭素酸素結合を含むが、1つより多く含むことがある。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)は、アルキルエーテルの意味の範囲内に含まれている。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキルエーテル基は置換されていてもよい。例えば、一部の実施形態では、アルキルエーテルは、アルコールまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcにより置換されており、Ra、RbおよびRcはそれぞれ、構造(I)の化合物に関して定義されている通りである。
「アルコキシ」とは、式-ORaの基を指し、Raは、1~12個の炭素原子を含有する、上で定義したアルキル基である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルコキシ基は置換されていてもよい。
「ヘテロアルキレン」とは、アルキレン鎖内、またはアルキレン鎖の末端において、少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、N、O、PまたはS)を含む、上で定義したアルキレン基を指す。一部の実施形態では、ヘテロ原子は、アルキレン鎖内に存在する(すなわち、ヘテロアルキレンは、少なくとも1個の炭素-[ヘテロ原子]-炭素結合を含み、xは、1、2または3である)。他の実施形態では、ヘテロ原子は、アルキレンの末端に存在し、こうして、このアルキレンを分子の残りに結合させるよう働く(例えば、M1-H-A-M2であり、M1およびM2は、分子の部分であり、Hは、ヘテロ原子であり、Aは、アルキレンである)。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアルキレン基は置換されていてもよい。例示的なヘテロアルキレン基には、エチレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド)、ならびに以下に例示されている連結基である、「C」、「HEG」、「TEG」、「PEG 1K」およびそれらの変形体が含まれる。
【0017】
【化3】
上記のC-リンカー、HEGリンカーおよび/またはPEG 1Kリンカーの多量体が、ヘテロアルキレンリンカーの様々な実施形態に含まれる。
【0018】
一部の実施形態では、
PEG 1Kリンカーの一部の実施形態では、nは25である。多量体は、例えば、以下の構造:
【化4】

(式中、xは、0または0より大きい整数であり、例えばxは、0~100(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)の範囲である)を含むことができる。
「ヘテロアルケニレン」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、上で定義したヘテロアルキレンである。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアルケニレン基は置換されていてもよい。
「ヘテロアルキニレン」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む、ヘテロアルキレンである。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアルキニレン基は置換されていてもよい。
【0019】
「ヘテロ原子リンカー」に関連する「ヘテロ原子」とは、1個または複数のヘテロ原子からなる、リンカー基を指す。例示的なヘテロ原子リンカーには、O、N、PおよびSからなる群から選択される単一原子、ならびに複数のヘテロ原子、例えば、式-P(O-)(=O)O-または-OP(O-)(=O)O-を有するリンカーおよび多量体、ならびにそれらの組合せが含まれる。
「ホスフェート」とは、-OP(=O)(Ra)Rb基(Raは、OH、O-またはORcであり、Rbは、OH、O-、ORcである)、チオホスフェート基、またはさらなるホスフェート基(Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である)を指す。
「ホスホアルキル」とは、-OP(=O)(Ra)Rb基を指し、Raは、OH、O-またはORcであり、Rbは、-Oアルキルであり、Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ホスホアルキル基は置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、ホスホアルキル基中の-Oアルキル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルのうちの1つまたは複数により置換されていてもよい。
【0020】
「ホスホアルキルエーテル」とは、-OP(=O)(Ra)Rb基を指し、Raは、OH、O-またはORcであり、Rbは、-Oアルキルエーテルであり、Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ホスホアルキルエーテル基は置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、ホスホアルキルエーテル基中の-Oアルキルエーテル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルのうちの1つまたは複数により置換されていてもよい。
「チオホスフェート」とは-OP(=Ra)(Rb)Rc基を指し、Raは、OまたはSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、Rcは、OH、SH、O-、S-、ORd、SRd、ホスフェート基、またはさらなるチオホスフェート基であり、Rdは、対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、i)RaはSである、ii)RbはS-もしくはSRdである、iii)Rcは、SH、S-もしくはSRdである、またはiv) i)、ii)および/もしくはiii)の組合せであることを条件とする。
【0021】
「チオホスホアルキル」とは、-OP(=Ra)(Rb)Rc基を指し、Raは、OまたはSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、Rcは、-Oアルキルであり、Rdは、対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、i)RaはSである、ii)Rbは、S-もしくはSRdである、またはiii)Raは、Sであり、Rbは、S-もしくはSRdであることを条件とする。本明細書において特に具体的に明記しない限り、チオホスホアルキル基は置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、チオホスホアルキル基中の-Oアルキル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルのうちの1つまたは複数により置換されていてもよい。
【0022】
「チオホスホアルキルエーテル」とは、-OP(=Ra)(Rb)Rc基を指し、Raは、OまたはSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、Rcは、-Oアルキルエーテルであり、Rdは、対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、i)RaはSである、ii)Rbは、S-もしくはSRdである、またはiii)Raは、Sであり、Rbは、S-もしくはSRdであることを条件とする。本明細書において特に具体的に明記しない限り、チオホスホアルキルエーテル基は置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、チオホスホアルキル基中の-Oアルキルエーテル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルのうちの1つまたは複数により置換されていてもよい。
「炭素環式」とは、3~18個の炭素原子を含む、安定な3~18員の芳香族または非芳香族環を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、炭素環式環は、単環式、二環式、三環式または四環式環系とすることができ、これらは、縮合または架橋環系を含んでもよく、部分または完全飽和であってもよい。非芳香族カルボシクリルラジカルには、シクロアルキルが含まれる一方、芳香族カルボシクリルラジカルには、アリールが含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、炭素環式基は置換されていてもよい。
「シクロアルキル」とは、安定な非芳香族単環式または多環式炭素環式環を指し、これらは、3~15個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子を有する、飽和または不飽和な縮合または架橋環系であって、単結合によって分子の残りに結合している、縮合または架橋環系を含んでもよい。単環式シクロアルキル(cyclocalkyl)には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル(cycloheptly)およびシクロオクチルが含まれる。多環式シクロアルキルには、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチル-ビシクロ-[2.2.1]ヘプタニルなどが含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、シクロアルキル基は置換されていてもよい。
【0023】
「アリール」とは、少なくとも1つの炭素環式芳香族環を含む環系を指す。一部の実施形態では、アリールは、6~18個の炭素原子を含む。アリール環は、単環式、二環式、三環式または四環式環系であってもよく、これらは、縮合または架橋環系を含んでもよい。アリールには、以下に限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレンおよびトリフェニレンから誘導されるアリールが含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アリール基は置換されていてもよい。
【0024】
「複素環式」は、1~12個の炭素原子、ならびに窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子を含む、安定な3~18員の芳香族または非芳香族環を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、複素環式環は、単環式、二環式、三環式または四環式環系であってもよく、これらは、縮合または架橋環系を含んでもよく、複素環式環中の窒素、炭素または硫黄原子は、酸化されていてもよい。窒素原子は四級化されていてもよい。複素環式環は、部分または完全飽和であってもよい。芳香族複素環式環の例は、ヘテロアリールの定義において、以下に列挙されている(すなわち、ヘテロアリールは、複素環式の部分集合である)。非芳香族複素環式環の例には、以下に限定されないが、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾロピリミジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリオキサニル、トリチアニル、トリアジナニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニルおよび1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、複素環式基は置換されていてもよい。
【0025】
「ヘテロアリール」とは、1~13個の炭素原子、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子、および少なくとも1つの芳香族環を含む、5~14員の環系を指す。本発明のある種の実施形態の目的のため、ヘテロアリールラジカルは、単環式、二環式、三環式または四環式環系であってもよく、これらは、縮合または架橋環系を含んでもよく、ヘテロアリールラジカル中の窒素、炭素または硫黄原子は、酸化されていてもよく、窒素原子は、四級化されていてもよい。例には、以下に限定されないが、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、ベンゾオキサゾリノニル、ベンゾイミダゾールチオニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、1-オキシドピリジニル、1-オキシドピリミジニル、1-オキシドピラジニル、1-オキシドピリダジニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プテリジノニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリジノニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリミジノニル(pryrimidinonyl)、ピリダジニル、ピロリル、ピリド[2,3-d]ピリミジノニル、キナゾリニル、キナゾリノニル、キノキサリニル、キノキサリノニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-オニル、チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-オニル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルおよびチオフェニル(すなわち、チエニル)が含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアリール基は置換されていてもよい。
【0026】
接尾辞「-エン(-ene)」は、単結合を介して分子の残りに、および単結合を介してラジカル基に結合した特定の構造的特徴(例えば、アルキル、アリール、ヘテロアルキル)を指す。言い換えると、接尾辞「-エン」とは、分子とラジカル基との間のリンカーである、本明細書において提示されている説明を有する、特定の構造的特徴を指す。「-エン」鎖の、分子の残りおよびラジカル基への結合点は、この鎖内の任意の2個の原子の1個、またはこの任意の2個の原子を介することができる。例えば、アルキレンヘテロアルキレンとは、アルキレン部分およびヘテロアルキレン部分を含むリンカーを指す。
「縮合した」とは、少なくとも2つの環を含む環系を指し、2つの環は、少なくとも1個の共通の環原子、例えば、2つの共通の環原子を共有する。縮合環が、ヘテロシクリル環またはヘテロアリール環である場合、共通の環原子は、炭素または窒素とすることができる。縮合環は、二環式、三環式、四環式(tertracyclic)などを含む。
【0027】
「共役」とは、介在するシグマ結合全体に、1つのp軌道と別のp軌道とに重なりがあることを指す。共役は、環式または非環式化合物に起こり得る。「共役度」とは、介在するシグマ結合全体に、少なくとも1つのp軌道と別のp軌道とに重なりがあることを指す。例えば、1,3-ブタジエンは、一共役度を有する一方、ベンゼンおよび他の芳香族化合物は、通常、複数の共役度を有する。蛍光および発色化合物は、通常、少なくとも一共役度を含む。
「蛍光」とは、特定の周波数の光を吸収して、異なる周波数の光を放出することが可能な分子を指す。蛍光は、当業者に周知である。
「発色」とは、有色スペクトル(すなわち、赤色、黄色、青色など)内の光を吸収する分子を指す。
【0028】
「FRET」とは、Forster共鳴エネルギー移動を指し、1つの部分(例えば、第1の発色団または「ドナー」)の励起に起因するエネルギーが、隣接部分(例えば、第2の発色団または「アクセプター」)に移動する物理的相互作用を指す。「FRET」は、時として、蛍光共鳴エネルギー移動とも互換的に使用される(すなわち、各発色団は、蛍光部分である)。一般に、FRETは、(1)アクセプター発色団の励起または吸収スペクトルが、ドナー発色団の発光スペクトルと重なること、(2)アクセプターおよびドナー発色団の遷移双極子モーメントが、実質的に平行である(すなわち、約0°または180°)こと、および(3)アクセプターおよびドナー発色団が、空間的に近接している(すなわち、互いに近い)ことが必要である。ドナーからアクセプターへのエネルギー移動は、非放射的な双極子-双極子カップリングにより発生し、ドナー発色団とアクセプター発色団との間の距離は、一般に、光の波長よりかなり短い。
【0029】
「ドナー」または「ドナー発色団」とは、励起した電子状態に誘発される、またはこの状態に誘発されることができる発色団(例えば、フルオロフォア)を指し、長距離双極子-双極子相互作用により非放射的に、その励起エネルギーを近傍のアクセプター発色団に移動させることができる。理論に拘泥することを望むものではないが、個々の発色団の振動双極子が類似の共鳴周波数を有するので、エネルギー移動が起こると考えられる。これらの類似の共鳴周波数を有するドナーおよびアクセプターは、「ドナー-アクセプター対」と称され、これは、「FRET部分」または「FRET色素」と互換的に使用される。
「アクセプター」または「アクセプター発色団」とは、ドナー発色団からの励起エネルギーが、長距離双極子-双極子相互作用による非放射的移動を介して移動する、発色団(例えば、フルオロフォア)を指す。
【0030】
「ストークスシフト」とは、電子遷移(例えば、励起状態から非励起状態へ、またはその逆)の吸収および発光スペクトルのバンド極大の位置の間の差異(例えば、波長)を指す。一部の実施形態では、本化合物は、25nmを超える、30nmを超える、35nmを超える、40nmを超える、45nmを超える、50nmを超える、55nmを超える、60nmを超える、65nmを超える、70nmを超える、75nmを超える、80nmを超える、85nmを超える、90nmを超える、95nmを超える、100nmを超える、110nmを超える、120nmを超える、130nmを超える、140nmを超える、150nmを超える、160nmを超える、170nmを超える、180nmを超える、190nmを超える、または200nmを超えるストークスシフトを有する。
「リンカー」とは、炭素、酸素、窒素、硫黄、リンおよびそれらの組合せなどの少なくとも1個の原子の連続鎖であって、分子のある部分を同一分子の別の部分に、または異なる分子、部分もしくは固体支持体(例えば、マイクロ粒子)に連結させる連続鎖を指す。リンカーは、イオン性相互作用または水素結合相互作用などの、共有結合または他の手段を介して分子に連結することができる。
【0031】
「生理的条件」は、約20~40℃の範囲の温度、約1atm(101kPaまたは14.7psi)の大気圧、約6~8のpH、約1~20mMのグルコース濃度を有する溶液または媒体、大気酸素濃度、および/または地球の重力を指す。「生理的条件」は、これらの特性(例えば、20~40℃の範囲の温度、および約6~8のpHを有する)の部分集合を有する溶液または媒体を含む。このような条件はまた、以下に限定されないが、リン酸塩、炭酸水素塩、ヘモグロビンおよび/またはタンパク質を含めた、緩衝液の構成成分または系を含むことができる。
【0032】
用語「生体分子」は、核酸、炭水化物、アミノ酸、ポリペプチド、グリコタンパク質、ホルモン、アプタマーおよびそれらの混合物を含めた、様々な生体物質のいずれかを指す。より詳細には、この用語は、非限定的に、RNA、DNA、オリゴヌクレオチド、修飾または誘導体化ヌクレオチド、酵素、受容体、プリオン、受容体リガンド(ホルモンを含む)、抗体、抗原および毒素、ならびに細菌、ウイルス、血液細胞および組織細胞を含むことが意図されている。本発明の目視により検出可能な生体分子(例えば、構造(I)または(II)の化合物に連結した生体分子を有する構造(I)または(II)の化合物)は、本明細書にさらに記載されている通り、生体分子を、該生体分子上のアミノ、ヒドロキシ、カルボキシルまたはスルフヒドリル基などの任意の利用可能な原子または官能基を介して、生体分子を本化合物に結合させることを可能にする反応性基を有する化合物に接触させることによって調製される。
【0033】
「反応性基」は、例えば、置換、酸化、還元、付加または環化付加反応によって、第2の反応性基(例えば、「相補性反応性基」)と反応して、1つまたは複数の共有結合を形成することができる部分である。例示的な反応性基が、表1に提示されており、例えば、求核剤、求電子剤、ジエン、求ジエン体、アルデヒド、オキシム、ヒドラゾン、アルキン、アミン、アジド、アシルアジド、アシルハライド、ニトリル、ニトロン、スルフヒドリル、ジスルフィド、ハロゲン化スルホニル、イソチオシアネート、イミドエステル、活性化エステル、ケトン、α,β-不飽和カルボニル、アルケン、マレイミド、α-ハロイミド、エポキシド、アジリジン、テトラジン、テトラゾール、ホスフィン、ビオチン、チイランなどを含む。
【0034】
「バイオコンジュゲート(bio-conjugation)」または「バイオコンジュゲート(bio-conjugate)」、および関連する変形語とは、2つの分子間の安定な共有結合を形成させるための化学反応戦略を指す。用語「バイオコンジュゲート」は、分子の1つが生体分子(例えば、抗体)である場合に一般に使用されるが、非生体分子(例えば、ポリマー樹脂)と共有結合を形成することを記載するために使用することができる。このような反応戦略に由来する生成物または化合物は、「コンジュゲート」、「バイオコンジュゲート」または文法的等価物である。
用語「目視可能な」および「目視により検出可能な」は、本明細書において、事前の照射、または化学的もしくは酵素的活性化なしに、目視検査によって観察可能な物質を指すために使用される。このような目視により検出可能な物質は、約300~約900nmの範囲のスペクトル領域の光を吸収して、放出する。好ましくは、このような物質は、強く色を呈し、好ましくは、少なくとも約40,000、より好ましくは少なくとも約50,000M、さらにより好ましくは少なくとも約60,000、さらにより好ましくは少なくとも約70,000および最も好ましくは少なくとも約80,000M-1cm-1のモル吸光係数を有する。本発明の化合物は、裸眼による観察によって検出され得るか、または非限定的に、吸収スペクトル光度計、透過型光学顕微鏡、デジタルカメラおよびスキャナを含めた光学に基づく検出デバイスを用いて検出され得る。目視により検出可能な物質は、可視スペクトルの光を発光および/または吸収するものに限定されない。紫外線(UV)領域(約10nm~約400nm)、赤外(IR)領域(約700nm~約1mm)の光を放出および/または吸収する物質、ならびに電磁スペクトルの他の領域において放出および/または吸収する物質も、「目視により検出可能な」物質の範囲内に含まれる。
【0035】
本発明の実施形態の目的のため、用語「光安定性可視色素」とは、本明細書の上で定義されている通り、目視により検出可能であり、かつ光への曝露時に有意には改変または分解しない化学部分を指す。好ましくは、光安定性可視色素は、少なくとも1時間の光への曝露後に、有意な脱色または分解を示さない。より好ましくは、可視色素は、少なくとも12時間、さらにより好ましくは少なくとも24時間、さらにより好ましくは少なくとも1週間、最も好ましくは少なくとも1か月間の光への曝露後に安定である。本発明の化合物および方法において使用するのに好適な光安定性可視色素の非限定例は、アゾ色素、チオインジゴ色素、キナクリドン顔料、ジオキサジン、フタロシアニン、ペリノン、ジケトピロロピロール、キノフタロンおよびトリアリールカルボニウム(truarycarbonium)を含む。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「ペリレン誘導体」は、目視により検出可能な任意の置換ペリレンを含むことが意図されている。しかし、この用語は、ペリレンそれ自体を含むことを意図するものではない。用語「アントラセン誘導体」、「ナフタレン誘導体」、および「ピレン誘導体」は、類似的に使用される。一部の好ましい実施形態では、誘導体(例えば、ペリレン、ピレン、アントラセンまたはナフタレン誘導体)は、ペリレン、アントラセン、ナフタレンまたはピレンのイミド、ビスイミドまたはヒドラザムイミド(hydrazamimide)誘導体である。
【0037】
本発明の様々な実施形態のポリマー化合物は、特定の分析対象(例えば、生体分子)の存在、位置、空間的相互作用または量を決定することが必要な、生化学的および生物医学的用途などの幅広い種類の分析用途に有用である。したがって、別の態様では、本発明は、生体分子を目視で検出する方法であって、(a)生物系に、生体分子に連結されている、本明細書において開示されている実施形態の化合物(例えば、構造(I)または構造(II))を含む目視により検出可能な生体分子を提供するステップ、および(b)該生体分子をその可視特性によって検出するステップを含む方法を提供する。本発明の目的のために、言い回し「その可視特性によって生体分子を検出する」とは、照射、または化学的もしくは酵素的活性化なしに、生体分子が、裸眼により、または非限定的に、吸収スペクトル光度計、透過型光学顕微鏡、デジタルカメラおよびスキャナを含めた光学に基づく検出デバイスを用いて観察されることを意味する。密度計を使用して、存在する目視により検出可能な生体分子の量を定量することができる。例えば、2つの試料中の生体分子の相対量は、相対光学密度を測定することによって決定することができる。生体分子あたりの色素分子の化学量論が既知であり、かつ色素分子の吸光係数が既知である場合、生体分子の絶対濃度は、光学密度の測定値から求めることもできる。本明細書で使用する場合、用語「生物系」は、目視により検出可能な生体分子に加えて、1つまたは複数の生体分子を含む任意の溶液または混合物を指すために使用される。このような生物系の非限定例には、細胞、細胞抽出物、組織試料、電気泳動用ゲル、アッセイ混合物およびハイブリッド化反応混合物が含まれる。
【0038】
「固体支持体」または「固体支持体残基」とは、分子を固相に支持するための当分野で公知の任意の固体基材を指し、例えば「マイクロ粒子」とは、以下に限定されないが、ガラス製ビーズ、磁気ビーズ、ポリマー製ビーズ、非ポリマー製ビーズなどを含めた、本発明の化合物への結合に有用ないくつかの小型粒子のいずれかを指す。ある種の実施形態では、マイクロ粒子はポリスチレン製ビーズを含む。
「塩基対部分」とは、水素結合を介して、相補性複素環式部分とハイブリダイズすることが可能な複素環式部分を指す(例えば、ワトソン-クリック塩基対)。塩基対部分は、天然および非天然塩基を含む。塩基対部分の非限定例は、アデノシン、グアノシン、チミジン、シトシンおよびウリジン、ならびにそれらの類似体などの(such)RNAおよびDNA塩基である。
本明細書において開示されている本発明の実施形態はまた、1個または複数の原子が異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられることによって、同位体標識されている構造(I)または(II)の化合物のすべてを包含することが意図されている。開示されている化合物に組み込まれ得る同位体の例には、それぞれ、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123Iおよび125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体が含まれる。
構造(I)または(II)の同位体標識化合物は、一般に、当業者に公知の従来技法によって、または以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、以下および以下の実施例に記載されているものに類似した方法によって一般に調製することができる。
【0039】
「安定な化合物」および「安定な構造」は、反応混合物から有用な純度の程度までの単離および有効な治療剤への製剤化に分解しない(survive)ほど十分に頑強な化合物を示すことが意図されている。
【0040】
「任意に用いてもよい(optional)」または「してもよい(optionally)」は、その後に記載されている事象または状況が発生することがあるか、または発生しないことがあることを意味する。このような記載は、該事象または状況が起こる場合、およびそれが起こらない場合を含む。例えば、「置換されていてもよいアルキル」は、このアルキル基が置換されていてもよいこと、または置換されていなくてもよいこと、およびこの記載は置換アルキル基と置換を有していないアルキル基の両方を含むことを意味する。
「塩」は、酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。
「酸付加塩」とは、以下に限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および以下に限定されないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、シヨウノウ酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-二スルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-二スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサルチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などの有機酸と共に形成される塩を指す。
【0041】
「塩基付加塩」とは、無機塩基または有機塩基の遊離酸への付加から調製される塩を指す。無機塩基に由来する塩には、以下に限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などが含まれる。有機塩基に由来する塩には、以下に限定されないが、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの、天然置換アミン、環式アミンおよび塩基性イオン交換樹脂を含めた、一級、二級および三級アミン、置換アミンの塩が含まれる。特に、好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0042】
結晶化は、本明細書において記載されている化合物の溶媒和物を生じることがある。本発明の実施形態は、記載されている化合物の溶媒和物のすべてを含む。本明細書で使用する場合、用語「溶媒和物」とは、本発明の化合物の1つまたは複数の分子と溶媒の1つまたは複数の分子を含む凝集物を指す。溶媒は水であってもよく、この場合、溶媒和物は水和物となり得る。代替的に、溶媒は、有機溶媒であってもよい。したがって、本発明の化合物は、一水和物、二水和物、ヘミ水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物など、ならびに対応する溶媒和物形態を含めた、水和物として存在することがある。本発明の化合物は、真の溶媒和物であってもよい一方、他の場合では、本発明の化合物は、単に偶発的な水または別の溶媒を保持することがあるか、または水とある偶発的な溶媒との混合物であってもよい。
【0043】
本発明の化合物(例えば、構造IまたはIIの化合物)の実施形態、またはその塩、互変異性体もしくは溶媒和物は、1個または複数の不斉中心を含むことがあり、したがって、絶対立体化学に関して、(R)-もしくは(S)-、またはアミノ酸の場合、(D)-もしくは(L)-と定義され得る、鏡像異性体、ジアステレオマーおよび他の立体異性体が生じることがある。本発明の実施形態は、すべてのこのような可能な異性体、ならびにそのラセミ体および光学的に純粋な形態を含むことが意図されている。光学活性な(+)および(-)、(R)-および(S)-、または(D)-および(L)-異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を使用して調製することができるか、または従来の技法、例えばクロマトグラフィーおよび分別結晶化を使用して分割され得る。個々の鏡像異性体の調製/単離に関する従来の技法には、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または例えば、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ体(または、塩もしくは誘導体のラセミ体)の分割が含まれる。本明細書において記載されている化合物が、オレフィン性二重結合または幾何学的不斉の他の中心を含有している場合、および特に指定しない限り、本化合物は、EおよびZ幾何異性体の両方を含むことが意図されている。同様に、互変異性体のすべてが、含まれることも意図されている。
【0044】
「立体異性体」とは、同じ結合によって結合した同一原子から構成されているが、相互変換することができない異なる三次元構造を有する化合物を指す。本発明は、様々な立体異性体およびそれらの混合物を企図しており、2つの立体異性体であって、それらの分子が互いに重なり合わない鏡像である、2つの立体異性体を指す「鏡像異性体」を含む。
「互変変異性体」とは、分子の1個の原子から同一分子の別の原子へのプロトン移動を指す。本発明は、任意の前記化合物の互変異性体を含む。本化合物の様々な互変異性体は、当業者によって容易に誘導可能である。
本明細書において使用される化学命名プロトコールおよび構造略図は、ACD/命名バージョン9.07ソフトウェアプログラムおよび/またはChemDraw Ultraバージョン11.0ソフトウェア命名プログラム(CambridgeSoft)を使用する、I.U.P.A.C.命名法システムの修正版である。当業者が精通している一般名称も使用する。
【0045】
上記の通り、本発明の一実施形態では、様々な分析法におけるFRET、蛍光および/または発色色素として有用な化合物が提供される。他の実施形態では、FRET、蛍光および/または発色色素として有用な化合物を調製する合成中間体として有用な化合物が提供される。一般用語では、本発明の実施形態は、FRET、蛍光および/または発色部分の二量体以上のポリマーを対象としている。FRET、蛍光および/または発色部分は、連結部分によって連結される。理論に拘泥することを望むものではないが、リンカーは、ドナー-アクセプター対の間に十分な空間距離/近接状態を維持する一助となり、こうして、分子内消光が低減されるかまたはなくなると同時に、エネルギーの非放射的移動を容易にするほど十分な近接状態を維持すると考えられる。
【0046】
したがって、一部の実施形態では、本化合物は、以下の構造(A):
【化5】
(A)

(式中、Lは、1つまたは複数の(例えば、各々の)M基の間の空間隔離を維持するのに十分なリンカーであり、その結果、分子内消光が低減されるか、またはなくなり、R1、R2、R3、L1、L2、L3およびnは、構造(I)または構造(II)に関して定義されている通りである)を有する。
【0047】
他の実施形態では、以下の構造(I)を有する化合物:
【化6】
(I)

またはその立体異性体、塩もしくは互変異性体(式中、
1およびM2は、出現毎に独立して、発色団であり、ただし出現するM1およびM2の少なくとも1つは一緒になって、FRETドナー-アクセプター対を形成することを条件とし、
1は、出現毎に、任意に用いてもよいリンカーであり、
2およびL3は、出現毎に独立して、任意に用いてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
4は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
1は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
2およびR3は、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、-OP(=Ra)(Rb)Rc、Qもしくはその保護形態、またはL’であり、
4は、出現毎に独立して、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、
5は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
aは、OまたはSであり、
bは、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、
cは、OH、SH、O-、S-、ORd、OL’、SRd、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルであり、
dは、対イオンであり、
Qは、出現毎に独立して、分析対象分子、標的指向性部分、固体支持体または相補性反応性基Q’と共有結合を形成することが可能な、反応性基またはその保護形態を含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Qへの共有結合を含むリンカー、標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、分析対象分子への共有結合を含むリンカー、固体支持体への共有結合を含むリンカー、固体支持体残基への共有結合を含むリンカー、ヌクレオシドへの共有結合を含むリンカー、または構造(I)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、
mは、出現毎に独立して、0以上の整数であり、
nは、1以上の整数である)
が提供される。
【0048】
一部の実施形態では、出現するL4の少なくとも1つは、ヘテロアルキレンである。より具体的な実施形態では、ヘテロアルキレンは、アルキレンオキシドを含む。一部の関連する実施形態では、ヘテロアルキレンは、エチレンオキシドを含む。
【0049】
実施形態では、出現するL4の少なくとも1つは、アルキレンである。一部のより具体的な実施形態では、少なくとも1つのアルキレンはエチレンである。一部の実施形態では、アルキレンは、出現毎に、エチレンである。
【0050】
一部の実施形態では、L1は、出現毎に独立して、任意に用いてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーである。一部の実施形態では、L1は、2つの相補性反応性基(例えば、アジドとアルキン)の反応により形成可能な官能基を含むリンカーである。一部の実施形態では、L1は、出現毎に独立して、任意に用いてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アルキレンヘテロアリーレンアルキレン、アルキレンヘテロシクリレンアルキレン、アルキレンカルボシクリレンアルキレン、ヘテロアルキレンヘテロアリーレンアルキレン、ヘテロアルキレンヘテロシクリレンアルキレン、ヘテロアルキレンカルボシクリレンアルキレン、ヘテロアルキレンヘテロアリーレンヘテロアルキレン、ヘテロアルキレンヘテロシクリレンヘテロアルキレン、ヘテロアルキレンカルボシクリレンヘテロアルキレン、アルキレンヘテロアリーレンヘテロアルキレン、アルキレンヘテロシクリレンヘテロアルキレン、アルキレンカルボシクリレンヘテロアルキレン、ヘテロアリーレン、ヘテロシクリレン、カルボシクリレン、アルキレンヘテロアリーレン、アルキレンヘテロシクリレン、ヘテロアリーレンアルキレン、アルキレンカルボシクリレン、カルボシクリレンアルキレン、ヘテロアルキレンヘテロアリーレン、ヘテロアルキレンヘテロシクリレン、ヘテロアリーレンヘテロアルキレン、ヘテロアルキレンカルボシクリレン、カルボシクリレンヘテロアルキレンまたはヘテロ原子リンカーである。一部の実施形態では、L1は、置換されていてもよい。
【0051】
一部の実施形態では、本化合物は、以下の構造(IA):
【化7】
(IA)

(式中、
zは、出現毎に独立して、1~100の整数であり、
1、m2およびm3は、出現毎に独立して、0~6の整数である)
を有する。
【0052】
一部の他の実施形態では、本化合物は、以下の構造(IB):
【化8】
(IB)

(式中、
zは、出現毎に独立して、1~100の整数である)
を有する。
【0053】
異なる実施形態では、本化合物は、以下の構造(IC):
【化9】
(IC)

(式中、
zは、出現毎に独立して、1~100の整数であり、
1、x2、x3およびx4は、出現毎に独立して、0~6の整数である)
を有する。
【0054】
ある種の関連する実施形態では、zは、1つまたは複数の出現において、3~6の整数である。一部の具体的な実施形態では、x1およびx3は、出現毎に、それぞれ0であり、x2およびx4は、出現毎に、それぞれ1である。一部の実施形態では、x1、x2、x3およびx4は、出現毎に、それぞれ1である。特定の一実施形態では、L4は、以下の構造:
【化10】

(式中、
pは、出現毎に独立して、0~6の整数であり、
yは、出現毎に独立して、1~100の整数である)
を有する。
【0055】
一部の実施形態では、R3は、以下の構造:
【化11】

(式中、
pは、出現毎に独立して、0~6の整数であり、
yは、出現毎に独立して、1~100の整数である)
を含む。
【0056】
ある種の実施形態では、本化合物は、以下の構造(ID):
【化12】
(ID)

を有する。
【0057】
一部の関連する実施形態では、本化合物は、以下の構造(IE):
【化13】
(IE)

を有する。
【0058】
別の実施形態は、以下の構造(II)を有する化合物:
【化14】
(II)

またはその立体異性体、塩もしくは互変異性体(式中、
1およびM2は、出現毎に独立して、発色団であり、ただし出現するM1およびM2の少なくとも1つは一緒になって、FRETアクセプター-ドナー対を形成することを条件とし、
1は、出現毎に、任意に用いてもよいリンカーであり、
2およびL3は、出現毎に独立して、任意に用いてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
4は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
1は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
2およびR3は、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、-OP(=Ra)(Rb)Rc、Qもしくはその保護形態、またはL’であり、
4は、出現毎に独立して、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、
5は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
aは、OまたはSであり、
bは、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、
cは、OH、SH、O-、S-、ORd、OL’、SRd、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルであり、
dは、対イオンであり、
Qは、出現毎に独立して、分析対象分子、標的指向性部分、固体支持体または相補性反応性基Q’と共有結合を形成することが可能な、反応性基またはその保護形態を含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Qへの共有結合を含むリンカー、標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、分析対象分子への共有結合を含むリンカー、固体支持体への共有結合を含むリンカー、固体支持体残基への共有結合を含むリンカー、ヌクレオシドへの共有結合を含むリンカー、または構造(II)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、
mは、出現毎に独立して、0~2、または6より大きい整数であり、
nは、1以上の整数である)
を提供する。
【0059】
構造(I)および(II)の化合物中の様々なリンカーおよび置換基(例えば、M1、M2、Q、R1、R2、R3、Rc、L1、L2、L3およびL4)は、さらにもう1つの置換基により置換されていてもよい。例えば、一部の実施形態では、任意に用いてもよい置換基は、構造(I)または(II)の化合物の水溶解度または他の特性を最適化するよう選択される。ある種の実施形態では、構造(I)および(II)の化合物中のアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルおよびチオホスホアルキルエーテルはそれぞれ、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、スルフヒドリル、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルおよびチオホスホアルキルエーテルからなる群から選択される、さらに1つの置換基により置換されていてもよい。
【0060】
任意に用いてもよいリンカーL1は、化合物の残りへのM1およびM2部分の結合点として使用することができる。例えば、一部の実施形態では、構造(I)または構造(II)の化合物への合成前駆体が調製され、M1および/またはM2部分は、任意の数の、当分野において公知の容易な方法、例えば、「クリックケミストリー」と称される方法を使用して合成前駆体に結合される。この目的の場合、迅速かつ実質的に不可逆な任意の反応を使用して、構造(I)または構造(II)の化合物を形成するための合成前駆体にM1もしくはM2、またはそれらの両方を結合することができる。例示的な反応には、アジドとアルキンとのトリアゾールを形成する銅触媒反応(Huisgenの1,3-双極子環化付加)、ジエンと求ジエンとの反応(Diels-Alder)、歪みにより促進されるアルキン-ニトロン環化付加、歪アルケンとアジド、テトラジンまたはテトラゾールの反応、アルケンとアジドの[3+2]環化付加、アルケンとテトラジンの逆需要Diels-Alder、アルケンとテトラゾールの光反応、ならびに求電子性原子への求核攻撃による脱離基の置換などの様々な置換反応が含まれる。一部の実施形態では、L1を形成する反応は、水性環境中で行われてもよい。
したがって、一部の実施形態では、L1は、出現毎に、2つの相補性反応性基の反応によって形成可能な官能基、例えば、上述の「クリック」反応の1つの生成物である官能基を含むリンカーである。様々な実施形態では、出現するL1の少なくとも1つについて、官能基は、アルデヒド、オキシム、ヒドラゾン、アルキン、アミン、アジド、アシルアジド、アシルハライド、ニトリル、ニトロン、スルフヒドリル、ジスルフィド、ハロゲン化スルホニル、イソチオシアネート、イミドエステル、活性化エステル、ケトン、α,β-不飽和カルボニル、アルケン、マレイミド、α-ハロイミド、エポキシド、アジリジン、テトラジン、テトラゾール、ホスフィン、ビオチンまたはチイラン官能基と、相補性反応性基との反応によって形成され得る。
【0061】
他の実施形態では、出現するL1の少なくとも1つについて、官能基は、アルキンおよびアジドの反応によって形成され得る。
より多くの実施形態では、出現するL1の少なくとも1つについて、官能基は、アルケン、エステル、アミド、チオエステル、ジスルフィド、炭素環式、複素環式またはヘテロアリール基を含む。一部のより具体的な実施形態では、出現するL1の少なくとも1つについて、L1は、トリアゾリル官能基を含むリンカーである。
【0062】
さらに他の実施形態では、出現するL1の少なくとも1つについて、L1-Mは、以下の構造:
【化15】

(式中、L1aおよびL1bは、それぞれ独立して、任意に用いてもよいリンカーである)を有する。
【0063】
異なる実施形態では、出現するL1の少なくとも1つについて、L1-Mは、以下の構造:
【化16】

(式中、L1aおよびL1bは、それぞれ独立して、任意に用いてもよいリンカーである)を有する。
上述の様々な実施形態では、L1aもしくはL1b、またはそれらの両方が、存在しない。他の実施形態では、L1aもしくはL1b、またはそれらの両方が存在する。
一部の実施形態では、L1aおよびL1bは、存在する場合、それぞれ独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンである。例えば、一部の実施形態では、L1aおよびL1bは、存在する場合、独立して、以下の構造:
【化17】
のうちの1つを有する。
【0064】
さらに他の異なる実施形態では、L1は、出現毎に独立して、任意に用いてもよいアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーである。
より多くの実施形態では、L2およびL3は、出現毎に独立して、C1-C6アルキレン、C2-C6アルケニレンまたはC2-C6アルキニレンである。
【0065】
一部の実施形態では、出現するL1の少なくとも1つは、以下の構造:
【化18】
(式中、
a、bおよびcは、それぞれ独立して、1~6の範囲の整数である)
のうちの1つを有する。
【0066】
一部の実施形態では、L1の各出現は、以下の構造:
【化19】
(式中、
a、bおよびcは、それぞれ独立して、1~6の範囲の整数である)
のうちの1つを有する。
【0067】
一部の実施形態では、出現するL1の少なくとも1つは、以下の構造:
【化20】
のうちの1つを有する。
【0068】
一部の実施形態では、L1の各出現は、以下の構造:
【化21】
のうちの1つを有する。
さらに他の実施形態では、R4は、出現毎に独立して、OH、O-またはORdである。「ORd」および「SRd」は、陽イオンに結合した、O-およびS-を指すことが意図されることが理解される。例えば、ホスフェート基の二ナトリウム塩は、以下の通り表すことができる:
【0069】
【化22】

(式中、Raは、ナトリウム(Na+)である)。
他の実施形態では、R5は、出現毎に、オキソである。
上述の化合物のいずれかの一部の異なる実施形態では、R1は、Hである。
他の様々な実施形態では、R2およびR3は、それぞれ独立して、OHまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcである。一部の異なる実施形態では、R2またはR3は、OHまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcであり、R2またはR3のもう一方は、Q、またはQへの共有結合を含むリンカーである。一部の実施形態では、R2およびR3は、それぞれ独立して、-OP(=Ra)(Rb)Rcである。一部の具体的な実施形態では、Rcは、OL’である。それらの実施形態の一部では、L’は、Q、標的指向性部分、分析対象分子、固体支持体、固体支持体残基、ヌクレオシドまたは構造(I)のさらなる化合物、または構造(II)のさらなる化合物へのヘテロアルキレンリンカーである。一部の実施形態では、L’は、アルキレンオキシドもしくはホスホジエステル部分、またはそれらの組合せを含む。ある種の実施形態では、L’は、以下の構造:
【0070】
【化23】

(式中、
m”およびn”は、独立して、1~10の整数であり、
eは、H、電子対または対イオンであり、
L”は、Re、またはQ、標的指向性部分、分析対象分子、固体支持体、固体支持体残基、ヌクレオシドもしくは構造(I)のさらなる化合物、もしくは構造(II)のさらなる化合物への直接結合もしくは連結基である)
を有する。
【0071】
さらに他の実施形態では、Qは、出現毎に独立して、分析対象分子または固体支持体と共有結合を形成することが可能な反応性基を含む部分である。他の実施形態では、Qは、出現毎に独立して、相補性反応性基Q’と共有結合を形成することが可能な反応性基を含む部分である。例えば、一部の実施形態では、Q’は、構造(I)または構造(II)のさらなる化合物に存在し(例えば、R2またはR3の位置)、QおよびQ’は、相補性反応性基を含み、こうして、構造(I)または構造(II)の化合物と構造(I)または構造(II)のさらなる化合物との反応により、構造(I)または構造(II)の化合物の共有結合による二量体をもたらす。構造(I)または構造(II)の多量体化合物もまた、類似の方法で調製することができ、本発明の実施形態の範囲内に含まれる。
【0072】
Q基のタイプ、および構造(I)または構造(II)の化合物の残りへのQ基の結合性は、特に限定されず、ただし、Qは、所望の結合を形成するために適切な反応性を有する部分を含むことを条件とする。
ある種の実施形態では、Qは、水性条件下で加水分解を受けにくいが、分析対象分子または固体支持体の表面の対応する基(例えば、アミン、アジドまたはアルキン)と結合を形成するのに十分な反応性のある部分である。
【0073】
構造(I)および/または構造(II)の化合物のある種の実施形態は、バイオコンジュゲートの分野において、一般に使用されているQ基を含む。例えば一部の実施形態では、Qは、求核性反応性基、求電子性反応性基または環化付加反応性基を含む。一部のより具体的な実施形態では、Qは、スルフヒドリル、ジスルフィド、活性化エステル、イソチオシアネート、アジド、アルキン、アルケン、ジエン、求ジエン体、酸ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル、ホスフィン、α-ハロアミド、ビオチン、アミノまたはマレイミド官能基を含む。一部の実施形態では、活性化エステルは、N-スクシンイミドエステル、イミドエステルまたはポリフルオロフェニル(polyflourophenyl)エステルである。他の実施形態では、アルキンは、アルキルアジドまたはアシルアジドである。一部の実施形態では、Qは、マレイミド官能基を含む。
【0074】
例示的なQ部分は、以下の表Iに提示されている。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
一部の実施形態では、QがSHである場合、SH部分は、構造(I)または構造(II)の別の化合物の別のスルフヒドリル基とジスルフィド結合を形成する傾向があることに留意すべきである。したがって、一部の実施形態は、ジスルフィド二量体の形態にある、構造(I)の化合物を含み、ジスルフィド結合は、SHであるQ基から誘導される。他の実施形態は、ジスルフィド二量体の形態にある、構造(II)の化合物を含み、ジスルフィド結合は、SHであるQ基から誘導される。
一部の他の実施形態では、R2またはR3の一方はOHまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcであり、R2またはR3のもう一方は、分析対象分子への共有結合を含むリンカー、または固体支持体への共有結合を含むリンカーである。例えば、一部の実施形態では、分析対象分子は、核酸、アミノ酸またはそれらのポリマーである。他の実施形態では、分析対象分子は、酵素、受容体、受容体リガンド、抗体、グリコタンパク質、アプタマーまたはプリオンである。さらに異なる実施形態では、固体支持体は、ポリマー製ビーズまたは非ポリマー製ビーズである。一部の実施形態では、標的指向性部分は、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストである。
【0075】
ある種の具体的な実施形態では、R2またはR3は、以下の構造:
【化24】

のうちの1つを有する。
【0076】
mの値は、発色団、蛍光の間の所望の距離、および/または発色強度に基づいて選択され得る別の可変因子である。一部の実施形態では、mは、出現毎に独立して、1~10の整数である。他の実施形態では、mは、出現毎に独立して、1~5の整数、例えば、1、2、3、4または5である。
蛍光強度もまた、異なるnの値を選択することによって調節することができる。ある種の実施形態では、nは、1~100の整数である。他の実施形態では、nは、1~10の整数である。
【0077】
1およびM2は、所望の光学特性に基づいて、例えば、所望のストークスシフト、吸光度/発光量の重なり、特定の発色および/または蛍光発光波長に基づいて選択される。一部の実施形態ではM1(または代替として、M2)は、出現毎に同じである。しかし、M1またはM2の各出現は、それぞれ、同一のM1またはM2である必要はないことに留意することが重要である。ある種の実施形態は、M1が、出現毎に同じではない化合物を含む。一部の実施形態は、M2が、出現毎に同じではない化合物を含む。
【0078】
一部の実施形態では、M1およびM2は、FRET法において使用するための、吸光度および/または発光特徴を有するよう選択される。例えば、このような実施形態では、FRET機構によって、異なる波長でのM2による照射の発光を誘発する1つの波長において、M1が照射の吸光度を有するような、異なるM1およびM2部分が選択される。例示的なM1およびM2部分は、所望の最終使用に基づいて、当業者により適切に選択することができる。
個々のM1およびM2はそれぞれ、M1またはM2上の任意の位置(すなわち、原子)からの分子の残りに結合することができる。当業者は、M1またはM2が分子の残りに結合するための手段を認識していよう。例示的な方法には、本明細書に記載されている「クリック」反応が含まれる。
【0079】
一部の実施形態では、M1またはM2は、FRET、蛍光または発色部分である。任意の蛍光および/または発色部分が使用されて、FRETドナー-アクセプター対を形成することができ、例えば、当分野での公知のもの、および通常、比色分析アッセイ、UVアッセイおよび/または蛍光アッセイに使用されるものが使用され得る。一部の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、蛍光性または発色性である。本発明の様々な実施形態に有用なM1またはM2部分の例には、以下に限定されないが、キサンテン誘導体(例えば、フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、エオシンまたはテキサスレッド);シアニン誘導体(例えば、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニンまたはメロシアニン);スクアライン誘導体および環置換スクアライン(セタ、セタウおよびスクエア色素を含む);ナフタレン誘導体(例えば、ダンシルおよびポロダン誘導体);クマリン誘導体;オキサジアゾール誘導体(例えば、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾオキサジアゾールまたはベンゾオキサジアゾール);アントラセン誘導体(例えば、DRAQ5、DRAQ7およびCyTRAKオレンジを含むアントラキノン);カスケードブルーなどのピレン誘導体;オキサジン誘導体(例えば、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170);アクリジン誘導体(例えば、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー);アリールメチン誘導体:アウラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン;およびテトラピロール誘導体(例えば、ポルフィン、フタロシアニンまたはビリルビン)が含まれる。他の例示的なM部分には、シアニン色素、キサンテート色素(例えば、Hex、Vic、Nedd、JoeまたはTet);ヤキマイエロー;レッドモンドレッド;タムラ;テキサスレッドおよびalexa fluor(登録商標)色素が含まれる。
【0080】
上述のいずれかのさらに他の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、3つ以上のアリールもしくはヘテロアリール環、またはそれらの組合せ、例えば、4つ以上のアリールもしくはヘテロアリール環、またはそれらの組合せ、あるいは5つ以上のアリールもしくはヘテロアリール環、またはそれらの組合せさえも含む。一部の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、6つのアリールもしくはヘテロアリール環、またはそれらの組合せを含む。さらなる実施形態では、環は縮合している。例えば、一部の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、3つ以上の縮合環、4つ以上の縮合環、5つ以上の縮合環、または6つ以上の縮合環さえも含む。
【0081】
一部の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方が、環式である。例えば、一部の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方は、炭素環式である。他の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方は、複素環式である。上述のさらに他の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方は、出現毎に独立して、アリール部分を含む。これらの実施形態の一部では、アリール部分は、多環式である。他のさらなる具体例では、アリール部分は、縮合多環式アリール部分であり、例えば、この縮合多環式アリール部分は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または4つを超えることさえあるアリール環を含んでもよい。
上記の構造(I)、(II)、(IA)、(IB)、(IC)、(ID)または(IE)の化合物のいずれかの他の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方は、出現毎に独立して、少なくとも1個のヘテロ原子を含む。例えば、一部の実施形態では、ヘテロ原子は、窒素、酸素または硫黄である。
上述のいずれかのさらにより多くの実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方は、出現毎に独立して、少なくとも1つの置換基を含む。例えば、一部の実施形態では、置換基は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、アリールオキシ、フェニル、アリール、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、t-ブチル、カルボキシ、スルホネート、アミドまたはホルミル基である。
【0082】
上述の一部のさらにより具体的な実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方は、出現毎に独立して、ジメチルアミノスチルベン、キナクリドン、フルオロフェニル-ジメチル-BODIPY、his-フルオロフェニル-BODIPY、アクリジン、テリレン、セキシフェニル、ポルフィリン、ベンゾピレン(フルオロフェニル-ジメチル-ジフルオロボラ-ジアザ-インダセン)フェニル、(ビス-フルオロフェニル-ジフルオロボラ-ジアザ-インダセン)フェニル、クアテルフェニル、ビ-ベンゾチアゾール、ター-ベンゾチアゾール、ビ-ナフチル、ビ-アントラシル、スクアライン、スクアリリウム、9,10-エチニルアントラセンまたはター-ナフチル部分である。他の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方は、出現毎に独立して、p-ターフェニル、ペリレン、アゾベンゼン、フェナジン、フェナントロリン、アクリジン、チオキサンテン、クリセン、ルブレン、コロネン、シアニン、ペリレンイミドもしくはペリレンアミド、またはそれらの誘導体である。さらにより多くの実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方は、出現毎に独立して、クマリン色素、レゾルフィン色素、ジピロメテンボロンジフルオリド色素、ルテニウムビピリジル色素、エネルギー移動色素、チアゾールオレンジ色素、ポリメチンまたはN-アリール-1,8-ナフタルイミド色素である。ある種の実施形態では、M1およびM2は、出現毎に独立して、ホウ素-ジピロメテン、ローダミン、シアニン、ピレン、ペリレン、ペリレンモノイミドもしくは6-FAM、またはそれらの誘導体である。
上述のいずれかのさらにより多くの実施形態では、M1は、出現毎に、同じである。他の実施形態では、M1はそれぞれ、異なる。さらにより多くの実施形態では、1つまたは複数のM1は同じであり、1つまたは複数のM1は異なる。
【0083】
上述のいずれかのさらにより多くの実施形態では、M2は、出現毎に、同じである。他の実施形態では、M2はそれぞれ、異なる。さらにより多くの実施形態では、1つまたは複数のM2は同じであり、1つまたは複数のM2は異なる。
【0084】
一部の実施形態では、M1もしくはM2、またはそれらの両方は、出現毎に独立して、ホウ素-ジピロメテン、ローダミン、シアニン、ピレン、ペリレン、ペリレンモノイミドもしくは6-FAM、またはそれらの誘導体である。一部の他の実施形態では、M1およびM2は、出現毎に独立して、以下の構造:
【0085】
【化25】
のうちの1つを有する。
【0086】
一部の具体的な実施形態では、本化合物は、表2から選択される化合物である。他の具体的な実施形態では、本化合物は、表3から選択される化合物である。表2および3中の化合物は、実施例に説明されている手順に準拠して調製し、それらの構造(identity)は、質量分析法によって確認した。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
【表2-15】
【表2-16】
【表2-17】
【表2-18】
【表2-19】
【表2-20】
【表2-21】
【表2-22】
【表2-23】
【表2-24】
【表2-25】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0087】
上の表2および3、ならびに本開示の全体で使用されている通り、FおよびF’は、それぞれ、以下の構造を有するフルオレセイン部分を指す:
【化26】
【0088】
上の表2および3、ならびに本開示の全体で使用されている通り、dTは、以下の構造を指す:
【化27】
dT

(式中、
Rは、Hまたは直接結合である)。
【0089】
上の表2および3、ならびに本開示の全体で使用されている通り、BおよびB’は、それぞれ、以下の構造を指す:
【化28】
【0090】
上の表2および3、ならびに本開示の全体で使用されている通り、Tは、以下の構造を指す:
【化29】
T
【0091】
上の表2および3、ならびに本開示の全体で使用されている通り、Cは、以下の構造を指す:
【化30】
C
【0092】
上の表2および3、ならびに本開示の全体で使用されている通り、Yは、以下の構造を指す:
【化31】
Y
代替的に、本明細書において開示されているF、F’、B、B’、CおよびYの実施形態のいずれかに関すると、オキソ部分
【化32】

は、分子の残りへの直接結合により置き換えられていてもよい。上述の実施形態のうちの一部では、L1は、アルキレン、例えばメチレンまたはエチレンである。
【0093】
現在開示されている色素の組合せ物は、「調節可能」であり、これは、当業者は、上述の化合物のいずれかにおける可変因子を適切に選択することにより、所望のおよび/または所定のFRET特性(例えば、蛍光発光シグナル、ストークスシフト)を有する化合物に到達することができることを意味する。本化合物の「調節可能性」により、使用者は、特定のアッセイにおいて使用するため、または特定の目的分析対象を特定するための所望のスロークスシフト、蛍光シグナルおよび/または発色を有する化合物に容易に到達することが可能となる。すべての可変因子は、本化合物のFRET特性に影響を及ぼし得るが、M1、M2、L4、mおよびnの適切な選択は、本化合物のモル蛍光光度において重要な役割を果たすと考えられる。したがって、一実施形態では、所望のFRET蛍光特性を有する化合物を得るための方法であって、既知の相互反応特性を有するM1およびM2部分を選択するステップ、M1およびM2部分を含む構造(I)または(II)の化合物を調製するステップ、および所望のFRET特性(例えば、スロークスシフト、ドナー発光シグナルの低下)に行き着くためのL4、mおよびnに関する適切な可変因子を選択するステップを含む方法が提供される。
【0094】
FRET蛍光発光シグナルは、ある種の実施形態では、親フルオロフォア(例えば、モノマー)のFRET蛍光発光シグナルに比べた、増加倍率または低下倍率に関して表すことができる。一部の実施形態では、本化合物のFRET蛍光発光シグナルは、親発色団/フルオロフォアに対して、1.1×、1.5×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、または10×より大きい。様々な実施形態は、L4、mおよびnの適切な選択によって、親フルオロフォアに比べて、所望の増加倍率の蛍光光度を有する化合物を調製することを含む。
例示を容易にするため、リン部分(例えば、ホスフェートなど)を含む様々な化合物は、陰イオン性状態(例えば、-OPO(OH)O-、-OPO3 2-)で図示されている。当業者は、電荷はpHに依存し、非電荷(例えば、プロトン化されているか、またはナトリウムもしくは他の陽イオンなどの塩)形態も、本発明の実施形態の範囲内に含まれることを容易に理解するであろう。
【0095】
上述の化合物のいずれか、および1つまたは複数の分析対象分子(例えば、生体分子)を含む組成物が、様々な他の実施形態において提供される。一部の実施形態では、1つまたは複数の分析対象分子を検出するための分析法でのこのような組成物の使用も提供される。
さらに他の実施形態では、本化合物は、様々な分析法に有用である。例えば、ある種の実施形態では、本開示は、試料を染色する方法であって、前記試料に、前記試料が適切な波長で照射されると光学応答を生じるのに十分な量で上述の実施形態(例えば、構造(I)または(II)の化合物)のいずれかの化合物を添加するステップを含む方法を提供する。
【0096】
上述の方法の一部の実施形態では、R2は、生体分子などの分析対象分子への共有結合連結基を含むリンカーである。例えば、核酸、アミノ酸またはそれらのポリマー(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)。さらにより多くの実施形態では、生体分子は、酵素、受容体、受容体リガンド、抗体、糖タンパク質、アプタマーまたはプリオンである。
上述の方法のさらに他の実施形態では、R2は、マイクロ粒子などの固体支持体への共有結合連結基を含むリンカーである。例えば、一部の実施形態では、マイクロ粒子は、ポリマー製ビーズまたは非ポリマー製ビーズである。
【0097】
さらにより多くの実施形態では、光学応答は蛍光応答である。
他の実施形態では、前記試料は細胞を含み、一部の実施形態は、フローサイトメトリーによって前記細胞を観察するステップをさらに含む。
さらにより多くの実施形態では、本方法は、蛍光応答を、検出可能な形で異なる光学特性を有する第2のフルオロフォアの蛍光応答と区別するステップをさらに含む。
他の実施形態では、本開示は、生体分子などの分析対象分子を目視で検出する方法であって、
(a)分析対象分子への共有結合を含む、上述の実施形態によるポリマー化合物(例えば、構造(I)または構造(II))(例えば、R2またはR3の一方は、分析対象分子への共有結合を含むリンカーであり、R2またはR3のもう一方は、H、OH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテルまたは-OP(=Ra)(Rb)Rcである)を用意するステップ、および
(b)該化合物をその可視特性によって検出するステップ
を含む方法を提供する。
【0098】
一部の実施形態では、分析対象分子は、核酸、アミノ酸またはそれらのポリマー(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)である。さらにより多くの実施形態では、分析対象分子は、酵素、受容体、受容体リガンド、抗体、糖タンパク質、アプタマーまたはプリオンである。
他の実施形態では、生体分子などの分析対象分子を目視で検出する方法であって、
(a)表1から選択されるQへの共有結合を含む上述のポリマー化合物のいずれかを分析対象分子と混合するステップ
(b)ポリマー化合物および分析対象分子のバイオコンジュゲートを形成するステップ、および
(c)バイオコンジュゲートをその可視特性によって検出するステップ
を含む方法が提供される。
一部の実施形態は、1つまたは複数の分析対象分子を検出するための分析法における本組成物の使用を提供する。
【0099】
上記の方法に加えて、構造(I)および構造(II)の化合物の実施形態は、以下に限定されないが、がん組織および他の組織を特定するための内視鏡手順における画像化;単一細胞および/もしくは単一分子の分析法、例えば、増幅をほとんどもしくは全く伴わないポリヌクレオチドの検出;例えば、構造(I)および構造(II)の化合物の、抗体もしくは糖、もしくはがん細胞に優先的に結合する他の部分へのコンジュゲートによるがんの画像化;外科手術における画像化;様々な疾患を特定するためのヒストンの結合;例えば、構造(I)および構造(II)の化合物中のM1および/もしくはM2部分を活性薬物部分によって置き換えることによる薬物送達;ならびに/または歯科作業における造影剤、および例えば、構造(I)および構造(II)の化合物の様々な微生物叢および/もしくは生物への優先的な結合による他の手順を含めた、様々な分野および方法における利用を見いだす。
【0100】
上で説明されている構造(I)および構造(II)の化合物の任意の実施形態、ならびに上で説明されている構造(I)または(II)の化合物中の可変因子R1、R2、R3、R4、R5、L1、L2、L3、L4、M1、M2、mおよび/またはnに関して本明細書において説明されている任意の特定の選択肢は、他の実施形態および/または構造(I)もしくは(II)の化合物の可変因子と独立して組み合わされて、上記に具体的に説明されていない本発明の実施形態を形成してもよいことが理解される。さらに、選択肢のリストが、特定の実施形態および/または特許請求の範囲における任意の特定の可変因子R1、R2、R3、R4、R5、L1、L2、L3、L4、M1、M2、mおよび/またはnに関して一覧表示されている場合、個々の選択肢はそれぞれ、特定の実施形態および/または特許請求の範囲から削除され得ること、および選択肢の残りのリストは、本発明の範囲内にあると見なされることが理解される。
本記載では、図示されている式の置換基および/または可変因子の組合せは、このような寄与が安定な化合物をもたらす場合のみ許容可能となることが理解される。
【0101】
本明細書に記載されている方法では、中間化合物の官能基が好適な保護基によって保護される必要があり得ることも、当業者によって理解されよう。このような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプトおよびカルボン酸が含まれる。ヒドロキシに好適な保護基には、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルまたはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが含まれる。アミノ、アミジノおよびグアニジノに好適な保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが含まれる。メルカプトに好適な保護基には、-C(O)-R”(式中、R”は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが含まれる。カルボン酸に好適な保護基には、アルキル、アリールまたはアリールアルキルエステルが含まれる。保護基は、当業者に公知であり、本明細書に記載されている、標準技法に準拠して、付加または除去することができる。保護基の使用は、Green, T.W. and P.G.M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis (1999), 3rd Ed., Wileyに詳述されている。当業者が理解している通り、保護基はまた、Wang樹脂、Rink樹脂または塩化2-クロロトリチル樹脂などのポリマー樹脂であってもよい。
さらに、遊離塩基または酸形態で存在する本発明の化合物はすべて、当業者に公知の方法によって、適切な無機または有機の塩基または酸による処理によってその塩に変換することができる。本発明の化合物の塩は、標準技法によってその遊離塩基または酸形態に変換することができる。
【0102】
以下の反応スキームは、本発明の化合物を作製する例示的な方法を例示している。当業者は、類似の方法により、または当業者に公知の他の方法を組み合わせることにより、これらの化合物を作製することが可能であり得ることが理解される。当業者は、適切な出発構成成分を使用し、必要に応じて合成のパラメーターを修正することにより、以下に具体的に例示されていない構造(I)または(II)の他の化合物を、以下に記載されている類似の方法で、作製することが可能であることも理解される。一般に、出発構成成分は、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis,Inc.、Maybridge、Matrix Scientific、TCIおよびFluorochem USAなどの供給元から得ることができるか、または当業者に公知(例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th edition (Wiley, December 2000)を参照されたい)の情報源に従い合成することができるか、または本発明において記載されている通り調製することができる。
【0103】
特に、本明細書において開示されている化合物(例えば、構造(I)および(II))の実施形態を調製する方法は、それらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれている、例えば、PCT公開番号WO2015/027176、WO2016/138461、WO2016/183185、WO2017/173348、WO2017/173355、WO2017/177065、WO2017/196954、WO2017/214165およびWO2018/022925に見いだすことができる。
【0104】
反応スキームI
【化33】
【0105】
反応スキームIは、R1、L2およびL3が、上で定義されている通りであり、R2およびR3が、上で定義されている通りであるか、またはそれらの保護変形体であり、Lが任意に用いてもよいリンカーである、構造(I)および(II)の化合物の調製に有用な中間体を調製する例示的な方法を例示する。反応スキーム1を参照すると、構造aの化合物は購入することができるか、または当業者に周知の方法により調製することができる。当分野で公知のSuzukiカップリング条件下でのXがブロモなどのハロゲンであるM-Xとの反応により、構造bの化合物をもたらす。構造bの化合物は、以下に記載されている、構造(I)または(II)の化合物の調製に使用することができる。
【0106】
反応スキームII
【化34】
反応スキームIIは、構造(I)および(II)の化合物の調製に有用な中間体の調製の代替法を例示している。R1、L1、L2、L3およびGが、上で定義されている通りであり、R2およびR3が、上で定義されている通りであるか、またはそれらの保護変形体である、反応スキームIIを参照すると、購入することができるか、または周知技法によって調製することができる構造cの化合物を、M-G’と反応させると、構造dの化合物が生成する。ここで、GおよびG’は、相補性反応性を有する官能基(すなわち、反応して共有結合を形成する官能基)を表す。G’は、Mへのペンダント基、またはMの構造上の主鎖の一部であり得る。Gは、アルキンまたはアミンなどの本明細書に記載されている官能基の任意の数とすることができる。
【0107】
構造(I)および(II)の化合物は、構造bまたはdの1つから、周知の自動化DNA合成条件下で、以下の構造(e):
【化35】
(e)

(式中、L4はそれぞれ、独立して、任意に用いてもよいリンカーである)を有するホスホロアミダイト化合物との反応によって調製することができる。
DNA合成法は、当分野において周知である。手短に述べると、2つのアルコール基、例えば上の中間体bまたはd中のR2およびR3は、それぞれ、ジメトキシトリチル(DMT)基および2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノホスホロアミダイト基により官能基化されている。ホスホロアミダイト基は、通常、テトラゾールなどの活性化剤の存在下で、アルコール基とカップリングさせて、次いで、ヨウ素によりリン原子を酸化する。ジメトキシトリチル基を酸(例えば、クロロ酢酸)により除去することができ、遊離アルコールを露出させ、これをホスホロアミダイト基と反応させることができる。2-シアノエチル基は、アンモニア水による処理によってオリゴマー化した後に除去され得る。
【0108】
オリゴマー化法に使用されるホスホロアミダイトの調製もまた、当分野で周知である。例えば、一級アルコール(例えば、R3)は、DMT-Clとの反応によってDMT基として保護され得る。次に、二級アルコール(例えば、R2)を、2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトなどの適切な試薬との反応によって、ホスホロアミダイトとして官能基化する。ホスホロアミダイトの調製およびそれらのオリゴマー化の方法は、当分野で周知であり、実施例中にさらに詳細に記載する。
【0109】
構造(I)または(II)の化合物は、上記の周知のホスホロアミダイト化学反応に従って、中間体bまたはdおよびeのオリゴマー化により調製する。ホスホロアミダイトカップリングを所望の回数、繰り返すことによって、所望の数のm個およびn個の繰り返し単位を分子に組み込む。以下に記載されている通り、構造(III)の化合物は、類似法により調製することができることが理解されよう。
様々な他の実施形態では、構造(I)または(II)の化合物の調製に有用な化合物が提供される。本化合物は、上記の通り、モノマー、二量体および/またはオリゴマー形態で調製することができ、次に、M1および/またはM2部分は、任意の数の合成法(例えば、上記の「クリック」反応)により、本化合物に共有結合により結合されて、構造(I)または(II)の化合物を形成する。したがって、様々な実施形態では、以下の構造(III)を有する化合物:
【化36】
(III)

またはその立体異性体、塩もしくは互変異性体(式中、
1およびG2は、出現毎に独立して、相補性反応性基と共有結合を形成することが可能な反応性基を含む部分であり、
1aおよびL1bは、出現毎に、任意に用いてもよいリンカーであり、
2およびL3は、出現毎に独立して、任意に用いてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
4は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
1は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
2およびR3は、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、-OP(=Ra)(Rb)Rc、Q、Qへの共有結合を含むリンカー、分析対象分子への共有結合を含むリンカー、固体支持体への共有結合を含むリンカー、または構造(II)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、Raは、OまたはSであり、Rbは、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、Rcは、OH、SH、O-、S-、ORd、SRd、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルであり、Rdは、対イオンであり、
4は、出現毎に独立して、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、
5は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
Qは、出現毎に独立して、分析対象分子、固体支持体または相補性反応性基Q’と共有結合を形成することが可能な、反応性基を含む部分であり、
mは、出現毎に独立して、0以上の整数であり、ただし、出現するmの少なくとも1つは、1以上の整数であることを条件とし、
nは、1以上の整数である)
が提供される。
【0110】
様々な実施形態では、以下の構造(IV)を有する化合物:
【化37】
(IV)

またはその立体異性体、塩もしくは互変異性体(式中、
1およびG2は、出現毎に独立して、相補性反応性基と共有結合を形成することが可能な反応性基を含む部分であり、
1aおよびL1bは、出現毎に独立して、任意に用いてもよいリンカーであり、
2およびL3は、出現毎に独立して、任意に用いてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
4は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
1は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
2およびR3は、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、-OP(=Ra)(Rb)Rc、Q、Qへの共有結合を含むリンカー、分析対象分子への共有結合を含むリンカー、固体支持体への共有結合を含むリンカー、または構造(II)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、Raは、OまたはSであり、Rbは、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、Rcは、OH、SH、O-、S-、ORd、SRd、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルであり、Rdは、対イオンであり、
4は、出現毎に独立して、OH、SH、O-、S-、ORdまたはSRdであり、
5は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
Qは、出現毎に独立して、分析対象分子、固体支持体または相補性反応性基Q’と共有結合を形成することが可能な、反応性基を含む部分であり、
mは、出現毎に独立して、0以上の整数であり、ただし、出現するmの少なくとも1つは、1以上の整数であることを条件とし、
nは、1以上の整数である)
が提供される。
【0111】
構造(III)および(IV)の化合物中のG1およびG2部分は、M1またはM2部分上の相補性基と共有結合を形成するための適切な反応性基を有する基を含む任意の部分から選択され得る。例示的な実施形態では、G1およびG2部分は、表1に提示されているそれらの具体例を含めた、本明細書に記載されているQ部分のいずれかから選択することができる。一部の実施形態では、G1もしくはG2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、アジドとアルキンとのトリアゾールを形成する銅触媒反応(Huisgen 1,3-双極子環化付加)、ジエンと求ジエンとの反応(Diels-Alder)、歪みにより促進されるアルキン-ニトロン環化付加、歪アルケンとアジド、テトラジンまたはテトラゾールとの反応、アルケンとアジド[3+2]環化付加、アルケンおよびテトラジンの逆需要Diels-Alder、アルケンおよびテトラゾールの光反応、ならびに求電子性原子への求核攻撃による脱離基の置換などの様々な置換反応を含めた反応に好適な部分を含む。
【0112】
一部の実施形態では、G1もしくはG2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、アルデヒド、オキシム、ヒドラゾン、アルキン、アミン、アジド、アシルアジド、アシルハライド、ニトリル、ニトロン、スルフヒドリル、ジスルフィド、ハロゲン化スルホニル、イソチオシアネート、イミドエステル、活性化エステル、ケトン、α,β-不飽和カルボニル、アルケン、マレイミド、α-ハロイミド、エポキシド、アジリジン、テトラジン、テトラゾール、ホスフィン、ビオチンまたはチイラン官能基を含む部分である。
【0113】
他の実施形態では、G1もしくはG2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、アルキンまたはアジド基を含む。異なる実施形態では、G1もしくはG2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、相補性反応性基との反応時に、アルケン、エステル、アミド、チオエステル、ジスルフィド、炭素環式、複素環式またはヘテロアリール基を含む官能基を形成することが可能な反応性基を含む。例えば、一部の実施形態では、ヘテロアリールは、トリアゾリルである。
【0114】
構造(III)および(IV)の化合物の様々な他の実施形態では、L2およびL3は、出現毎に独立して、C1-C6アルキレン、C2-C6アルケニレンまたはC2-C6アルキニレンである。
構造(III)および(IV)の他の実施形態では、L1aはそれぞれ、存在しない。他の実施形態では、L1aはそれぞれ存在し、例えば、L1aは、出現毎に独立して、ヘテロアルキレンである。ある種の実施形態では、L1aは、以下の構造:
【化38】
を有する。
構造(III)および(IV)の上述の実施形態のいずれかの他のものでは、G1もしくはG2、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、
【化39】
である。
【0115】
様々な実施形態では、G1は、出現毎に、エチニルなどのアルキニルであり、G2は-NH2である。他の実施形態では、G1は、出現毎に、アジドであり、G2は、出現毎に、-NH2である。
様々な実施形態では、G2は、出現毎に、エチニルなどのアルキニルであり、G1は-NH2である。他の実施形態では、G2は、出現毎に、アジドであり、G1は、出現毎に、-NH2である。
FRET過程の効率は、発色団の特徴に一部、依存する。具体的には、高い効率のFRETは、ドナー発色団の吸光度スペクトルと、アクセプター発色団の発光スペクトルとの間に大きな重なりが必要である。さらに、発色団の距離および配向は、重要な役割を果たす。FRET効率は、発色団間の距離の6乗に反比例し、遷移双極子モーメントの角度は、実質的に、並行に並んでいるべきである(すなわち、0°または180°に近い)。したがって、ある種の実施形態では、第1および第2の発色団のポリマー主鎖への共有結合は、第1の発色団と第2の発色団との距離が最小化し、遷移双極子モーメントが実質的に並ぶように選択される。FRETの効率は、以下の式:
【0116】
【数1】
(式中、EFRETは、FRET効率であり、Rは、発色団間の距離であり、Roは、以下の式:
Ro=(8.8×1023JK2o-41/6
(式中、Jは、アクセプターの吸光度スペクトルとドナーの発光スペクトルとのスペクトルの重なりであり、Qoは、ドナーの量子効率であり、n-4は、ドナーとアクセプターとの間の媒体の指数(一定)であり、K2は、双極子配向整合(dipole directions matching)である)により表される)により表すことができる。
したがって、一実施形態は、アクセプター遷移双極子モーメントを有しており、ポリマー主鎖に共有結合により連結されているアクセプター発色団、およびドナー遷移双極子モーメントを有しており、ポリマー主鎖に共有結合により連結されているドナー発色団を含むポリマー化合物であって、生理的条件にある溶液中で、アクセプター発色団とドナー発色団との間の有効距離が約50.0nm未満であり、アクセプター遷移双極子およびドナー遷移双極子が実質的に平行となる立体配置をとる、ポリマー化合物を提供する。
【0117】
一部の実施形態では、アクセプター発色団とドナー発色団との間の有効距離は、約25.0nm未満である。一部の実施形態では、アクセプター発色団とドナー発色団との間の有効距離は、約10.0nm未満である。一部の実施形態では、アクセプター発色団とドナー発色団との間の有効距離は、約30.0nm未満、約27.0nm未満、約22.0nm未満、約20.0nm未満、約17.0nm未満、約15.0nm未満、約12.0nm未満、約11.0nm未満、約9.0nm未満、約8.0nm未満、約7.0nm未満、約6.0nm未満、約5.0nm未満、約4.0nm未満、約3.0nm未満、約2.0nm未満、または約1.0nm未満である。
【0118】
一部の実施形態では、アクセプター発色団は、蛍光色素部分である。ある種の実施形態では、ドナー発色団は、蛍光色素部分である。ある種の関連する実施形態では、アクセプター発色団およびドナー発色団はどちらも、蛍光色素部分である。
一部の実施形態では、アクセプター遷移双極子モーメントとドナー遷移双極子モーメントとの間の角度は、120°~180°の範囲である。例えば、一部の実施形態では、アクセプター遷移双極子モーメントとドナー遷移双極子モーメントとの間の角度は、125°~180°、130°~180°、140°~180°、150°~180°、160°~180°、170°~180°、172°~180°、175°~180°または177°~180°の範囲である。
ある種の実施形態では、アクセプター遷移双極子モーメントとドナー遷移双極子モーメントとの間の角度は、0°~60°の範囲である。例えば、一部の実施形態では、アクセプター遷移双極子モーメントとドナー遷移双極子モーメントとの間の角度は、0°~50°、0°~40°、0°~30°、0°~20°、0°~10°、0°~8°、0°~5°、0°~3°、または0°~2°の範囲である。
【0119】
一部のより具体的な実施形態では、本ポリマー化合物は、ポリマー主鎖の近位端部において共有結合により連結されている第1のアクセプター発色団、ポリマー主鎖の遠位端部において共有結合により連結されている第2のアクセプター発色団、およびポリマー主鎖の近位端部と遠位端部との間に共有結合により連結されているドナー発色団をさらに含む。
ある種の実施形態では、本ポリマー主鎖は、ホスフェートリンカーを含む。一部の実施形態では、本ポリマー主鎖は、複数のホスフェートリンカーを含む。
一部の関連する実施形態では、ポリマー主鎖は、アルキレンオキシドリンカーを含む。一部のより具体的な実施形態では、アルキレンオキシドはエチレンオキシドである。一部の具体的な実施形態では、ポリマー主鎖は、HEGリンカー、Cリンカーまたはそれらの組合せを含む。
【0120】
一部の実施形態では、本ポリマー化合物は、20,000g/mol未満の分子量を有する。一部の実施形態では、本ポリマー化合物は、19,000g/mol、18,500g/mol、18,000g/mol、17,500g/mol、17,000g/mol、16,500g/mol、16,000g/mol、15,500g/mol、15,000g/mol、14,500g/mol、14,000g/mol、13,500g/mol、13,000g/mol、12,500g/mol、11,500g/mol、11,000g/mol、10,500g/mol、10,000g/mol、9,500g/mol、9,000g/mol、8,500g/mol、8,000g/mol、7,500g/mol、7,000g/mol、6,500g/mol、6,000g/mol、5,500g/mol、5,000g/mol、4,500g/mol、4,000g/mol、3,500g/mol、3,000g/mol、2,500g/mol、2,000g/mol、1,500g/molまたは1,000g/mol未満の分子量を有する。
一部の実施形態では、本ポリマー化合物は、ペプチドでもタンパク質でもない。一部の他の実施形態では、本ポリマー主鎖は、アミド結合を有さない。
以下の実施例は、限定ではなく、例示目的のために提示される。
【実施例
【0121】
一般方法
質量スペクトル分析は、MassLynx 4.1アクイジションソフトウェアを使用する、Waters/Micromass QuattroマイクロMS/MSシステム(MSモードのみ)で行った。色素に関してLC/MSに使用した移動相は、100mMの1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)、8.6mMのトリエチルアミン(TEA)、pH8とした。ホスホロアミダイトおよび前駆体分子も、アセトニトリル/水の移動相のグラジエントを使用し、45℃に保持した2.1mmx50mm Acquity BEH-C18カラムを備えるWaters Acquity UHPLCシステムを使用して分析した。モノマー中間体の分子量は、Waters/Micromass QuattroマイクロMS/MSシステム(MSモードのみ)で、トロピリウム陽イオン注入増強イオン化を使用して得た。励起および発光プロファイル実験を、Cary Eclipseスペクトル光度計で記録した。
反応はすべて、特に明記しない限り、窒素雰囲気下、オーブン乾燥したガラス器具中で行った。市販のDNA合成試薬をGlen Research(Sterling、VA)から購入した。無水ピリジン、トルエン、ジクロロメタン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、酢酸、ピリジンおよびTHFは、Aldrichから購入した。他の化学品はすべて、AldrichまたはTCIから購入し、さらに精製することなくそのまま使用した。
【0122】
(実施例1)
ポリマー主鎖の合成および誘導体化
代表的なアミン/アルキンポリマー化合物の合成
ポリマーは、0.5~1μmolスケールで、Applied Biosystems394 DNA/RNA合成装置を使用して合成した。ポリマー化合物は、CPGビーズまたはポリスチレン固体支持体上に直接、合成した。合成は、標準固相DNA合成法を使用して、3’から5’の方向に行った(すなわち、β-シアノエチルホスホロアミダイトカップリング化学反応)。モノマー試薬(例えば、フルオロシドホスホロアミダイト、C2アルキルホスホロアミダイト、ヘキサエチレングリコールホスホロアミダイト、アミノホスホロアミダイトおよびアルキンホスホロアミダイト)をアセトニトリルおよびジクロロメタンに溶解し、0.1M保存溶液を作製した。モノマー試薬は、以下の合成サイクルを使用する連続的な順序で加えた:
1)ジクロロメタンまたはトルエン中、5’-ジメトキシトリチル保護基をジクロロ酢酸により除去する、
2)活性剤試薬(0.2M ETT)を用いて、アセトニトリル中、次のホスホロアミダイトモノマー試薬をカップリングする、
3)ホスフェート(III)をヨウ素/ピリジン/水で酸化して、安定なホスフェート(v)を形成させる、
4)未反応5’-ヒドロキシル基を無水酢酸/1-メチルイミダゾール(1-methylimidizole)/アセトニトリルによりキャップする。
【0123】
所望のポリマー化合物が組み立てられるまで、この合成サイクルを繰り返した。完了すると、ジクロロメタンまたはトルエン中、ジクロロ酢酸を使用して末端モノメトキシトリチル(MMT)基またはジメトキシトリチル(DMT)基を除去した。合成後、アセトニトリル中、20%ジエチルアミンにより15分間、支持体を処理した。
次に、濃水酸化アンモニウム水溶液を55℃で2時間、使用し、固体支持体から代表的なアミンポリマーを開裂させた。構築物は、ESI-MSによって特徴付け、質量および純度を確認した。濃度はUVによって決定した。
【0124】
アミン/アルキンポリマー化合物への発色団のカップリング
代表的なポリマー構築物は、直交反応性基(例えば、アミンおよびアルキン)を有するように合成し、そうして、個別の色素部分を付加することができた。例えばクリックケミストリーを使用して、ポリマーのアルキンに第1のフルオロフォアを結合させた。
100mMアスコルビン酸ナトリウム溶液および500mMリン酸緩衝液pH7.6を調製した。アジド官能基を含む第1の所望の色素部分を、100mMの濃度でジメチルスルホキシドに溶解した(「色素溶液」)。
等量のTHTPAおよび硫酸銅を添加することによって、100mMアスコルビン酸ナトリウム溶液を調製し(すなわち、100mMアスコルビン酸ナトリウム/100mM THTPA/50mM硫酸銅の2.5:1:1混合物)、この混合物を5~10分間、静置して、次いで、アスコルビン酸ナトリウムを添加した。
【0125】
リン酸緩衝液、色素溶液、ポリマー化合物および余分のDMSOを一緒に混合し、次いでアスコルビン酸ナトリウム溶液を混合した。0.5mMの最終ポリマー濃度、100mMのリン酸緩衝液濃度、50~60%のDMSOおよび5~10倍過剰の色素を有する反応物を調製した。反応物を暗所中、回転器またはボルテックス上で一晩、置いた。試料を水により希釈し、G-25 Sephadex樹脂を使用して脱塩した。試料を採取し、ESI-MSによって特徴付け、質量および純度を確認した。試料分析後、ポリマー化合物を凍結乾燥した。
代表的なポリマー化合物への第2の所望の色素部分(例えば、フルオロフォアまたは他の標識)の付加は、NHS-エステル/アミンカップリング化学反応を使用して実現した。四ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9)の保存溶液(「ホウ酸緩衝液」)を最初に調製した。NHS-エステルを含む第2の色素部分は、DMSO中の100~200mMの濃度で溶解した。1~2mMのポリマー濃度、100mMのホウ酸緩衝液濃度、30~75%のDMSOおよび5~10倍過剰の色素を有するよう反応物を調製した。反応物を暗所中、回転器またはボルテックス上で一晩、置いた。試料を水により希釈し、G-25 Sephadex樹脂を使用して脱塩した。試料を採取し、ESI-MSによって特徴付け、質量および純度を確認した。さらに、UVおよび蛍光分光法による特徴付けを使用して、FRET特性を決定した。
【0126】
(実施例2)
発色団間のポリマー主鎖の長さの最適化 - 試験1
ペンダント発色団間のポリマー主鎖の長さの変化を比較して、最適スペーサー長さ(すなわち、ヘキサエチレングリコールまたは「HEG」単位の数)を決定した。
溶液は、化合物I-1、I-2、I-3およびI-4に関して、100mMの濃度で調製した。各試料の発光スペクトルを494nmの励起波長を使用して検出した。この実験結果により、この組合せ(すなわち、BODIPY-TMRおよび6-FAM)に関する最適間隔は、2つのヘキサエチレングリコール単位のスペーサーであることが示される。図1に示されている実験結果により、ドナー発光シグナルが最小化され、アクセプターの発光シグナルは比較的高いことが示される。分子モデリングの計算は、化合物I-1のトランス型を除き、実験データと実質的に一致した。
【0127】
(実施例3)
発色団間のポリマー主鎖の長さの最適化 - 試験2
代表的なポリマー化合物を試験し、各々は、FAM発色団(FRETドナー)およびテキサスレッド発色団(FRETアクセプター)を有した。代表的なポリマー化合物を比較し、最適スペーサー長さを決定した。
溶液は、化合物I-5、I-6、I-7およびI-8に関して、200nMの濃度ならびにpH7.0で調製した。各試料の発光スペクトルを488nmの励起波長(620nmの発光を検出)を使用して検出した。これらの結果が、図2に示されている。データにより、個々の発色団間のスペーサーの長さは、必ずしも、より高いFRET効率を示さないことが示唆される。この組合せ(すなわち、FAMおよびテキサスレッド)に関すると、分子モデリングの計算は、実験結果と実質的に一致する。
【0128】
(実施例4)
ドナー発光の特徴付け
ポリマー化合物を調製し、代表的な化合物の発光スペクトルの輝度に及ぼす相対位置の影響を決定した。代表的な試料ポリマー(すなわち、化合物I-9、I-10、I-11およびI-12)を、100nMの濃度およびpH7.0の溶液で調製した。試料は、494nmの励起波長を使用して試験し、得られたスペクトルを図3に示す。データが示す通り、ドナー発光シグナルは、個々の試料の各々に対して検出されたアクセプター発光シグナルと実質的に類似する。
【0129】
理論に拘泥することを望むものではないが、本出願人らは、ドナー発色団とアクセプター発色団との間の間隔を最適化し、またポリマー主鎖に沿って、アクセプター発色団間にドナー発色団を位置決めすることを試みた。この戦略を使用して、ドナー発光シグナルを低下させると同時に、アクセプター発色団のシグナル強度を維持した。様々なスペーサー長さ、ならびにアクセプターおよびドナー発色団の相対位置を有する試料を、500nMの濃度、pH7で調製して試験(すなわち、化合物I-13、I-14、I-15、I-16、I-17、I-18およびI-19)し、それらの結果を図4に示す。本出願人らは、ポリマー主鎖上のアクセプター発色団間にドナー発色団を位置決めすると、ドナー発光シグナルの有意な低下がもたらされることを予期せぬことに見いだした。さらに、最適間隔長さは、化合物I-14に図示される通り、2つのヘキサエチレングリコールまたは「HEG」単位であることを発見した。
発色団の間隔と相対発光シグナル強度との間の関係をさらに明らかにするため、様々な数のHEG単位を有する試料を調製して試験した。具体的には、化合物I-20、I-21、I-22およびI-23をそれぞれ、5μMの濃度、pH7.2の溶液で調製した。個々の化合物のそれぞれに対する発光スペクトルが図5に示されている。
【0130】
(実施例5)
三価ポリマー化合物の合成
3つの個別の発色団を有する代表的なポリマー化合物を合成した。NHS/アミンカップリングによりFAM発色団を付加した、アジド/アルキンカップリング(すなわち、「クリック」反応)によりBODIPY-TMR発色団を付加した、およびNHS/アミンカップリングによりテキサスレッド発色団を付加したポリマー化合物を実施例1に準拠して合成した。所望の生成物(すなわち、化合物I-24)は、ESI-MSによって、[M+H]+=4909.5であると確認した。
【0131】
所望の生成物を、pH7において、5μMの濃度で溶液に溶解し、その吸光度スペクトルを得た。FAM、BODIPY-TMRおよびテキサスレッドに対する吸光度ピークは、それぞれ、約510nm、540nmおよび595nmで観察した(図6)。pH7およびpH9の溶液を使用して、化合物I-24の発光スペクトルを決定し(図7)、それぞれ、約515nm、575nmおよび610nmにおいて、FAM、BODIPY-TMRおよびテキサスレッドの三価のポリマー化合物のFRET発光シグナルを示した。
【0132】
この明細書に言及されている、および/または出願データシートに一覧表示されている米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物のすべてが、2018年3月21日に出願の米国仮特許出願第62/646,234号を含め、本記載と矛盾しない程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0133】
上述から、本発明の具体的な実施形態が、例示目的のために本明細書に記載されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な修正が行われ得ることが理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によるもの以外の限定は受けない。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕以下の構造(I)を有する化合物またはその立体異性体、塩もしくは互変異性体。
【化1】

(I)

(式中、
1 およびM 2 は、出現毎に独立して、発色団であり、ただし、M 1 およびM 2 の少なくとも1つは、FRETドナーであり、M 1 およびM 2 のもう一方は、対応するFRETアクセプターであることを条件とし、
1 は、出現毎に、任意に用いてもよいリンカーであり、
2 およびL 3 は、出現毎に独立して、任意に用いてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
4 は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
1 は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
2 およびR 3 は、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、-OP(=R a )(R b )R c 、Qもしくはその保護形態、またはL’であり、
4 は、出現毎に独立して、OH、SH、O - 、S - 、OR d またはSR d であり、
5 は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
a は、OまたはSであり、
b は、OH、SH、O - 、S - 、OR d またはSR d であり、
c は、OH、SH、O - 、S - 、OR d 、OL’、SR d 、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルであり、
d は、対イオンであり、
Qは、出現毎に独立して、分析対象分子、標的指向性部分、固体支持体または相補性反応性基Q’と共有結合を形成することが可能な、反応性基またはその保護形態を含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Qへの共有結合を含むリンカー、標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、分析対象分子への共有結合を含むリンカー、固体支持体への共有結合を含むリンカー、固体支持体残基への共有結合を含むリンカー、ヌクレオシドへの共有結合を含むリンカー、または構造(I)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、
mは、出現毎に独立して、0以上の整数であり、
nは、1以上の整数であり、
ただし、M 1 およびM 2 が、フルオレセイン、ピレンおよびペリレン発色団から選択される場合、出現するL 4 の少なくとも1つは、ヘテロアルキレンであるか、または出現するmの少なくとも1つは0であることを条件とする)
〔2〕出現するL 4 の少なくとも1つがヘテロアルキレンである、前記〔1〕に記載の化合物。
〔3〕ヘテロアルキレンがアルキレンオキシドを含む、前記〔2〕に記載の化合物。
〔4〕ヘテロアルキレンが、エチレンオキシドを含む、前記〔2〕~〔3〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔5〕出現するL 4 の少なくとも1つがアルキレンである、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔6〕少なくとも1つのアルキレンが、エチレンである、前記〔5〕に記載の化合物。
〔7〕アルキレンが、出現毎に、エチレンである、前記〔5〕に記載の化合物。
〔8〕以下の構造(IA)を有する、前記〔1〕~〔7〕に記載の化合物。
【化2】

(IA)

(式中、
zは、出現毎に独立して、1~100の整数であり、
1 、m 2 およびm 3 は、出現毎に独立して、0~6の整数である)
〔9〕以下の構造(IB)を有する、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の化合物。
【化3】

(IB)

(式中、
zは、出現毎に独立して、1~100の整数である)
〔10〕以下の構造(IC)を有する、前記〔1〕~〔4〕または〔9〕のいずれか1項に記載の化合物。
【化4】

(IC)

(式中、
1 、x 2 、x 3 およびx 4 は、出現毎に独立して、0~6の整数である)
〔11〕zが、1つまたは複数の出現において、3~6の整数である、前記〔8〕~〔10〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔12〕x 1 およびx 3 が、出現毎に、それぞれ0であり、x 2 およびx 4 が、出現毎に、それぞれ1である、前記〔10〕~〔11〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔13〕x 1 、x 2 、x 3 およびx 4 が、出現毎に、それぞれ1である、前記〔10〕~〔11〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔14〕以下の構造(ID)を有する、前記〔8〕に記載の化合物。
【化5】

(ID)

〔15〕以下の構造(IE)を有する、前記〔1〕に記載の化合物。
【化6】

(IE)

〔16〕以下の構造(II)を有する化合物またはその立体異性体、塩もしくは互変異性体。
【化7】

(II)

(式中、
1 およびM 2 は、出現毎に独立して、発色団であり、ただし出現するM 1 およびM 2 の少なくとも1つは一緒になって、FRETアクセプター-ドナー対を形成することを条件とし、
1 は、出現毎に、任意に用いてもよいリンカーであり、
2 およびL 3 は、出現毎に独立して、任意に用いてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレンまたはヘテロ原子リンカーであり、
4 は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
1 は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
2 およびR 3 は、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、-OP(=R a )(R b )R c 、Qもしくはその保護形態、またはL’であり、
4 は、出現毎に独立して、OH、SH、O - 、S - 、OR d またはSR d であり、
5 は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
a は、OまたはSであり、
b は、OH、SH、O - 、S - 、OR d またはSR d であり、
c は、OH、SH、O - 、S - 、OR d 、OL’、SR d 、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテルまたはチオホスホアルキルエーテルであり、
d は、対イオンであり、
Qは、出現毎に独立して、分析対象分子、標的指向性部分、固体支持体または相補性反応性基Q’と共有結合を形成することが可能な、反応性基またはその保護形態を含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Qへの共有結合を含むリンカー、標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、分析対象分子への共有結合を含むリンカー、固体支持体への共有結合を含むリンカー、固体支持体残基への共有結合を含むリンカー、ヌクレオシドへの共有結合を含むリンカー、または構造(II)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、
mは、出現毎に独立して、0~2、または6より大きい整数であり、
nは、1以上の整数である)
〔17〕L 1 が、出現毎に、2つの相補性反応性基の反応により形成可能な官能基を含むリンカーである、前記〔1〕~〔16〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔18〕出現するL 1 の少なくとも1つについて、官能基が、アルデヒド、オキシム、ヒドラゾン、アルキン、アミン、アジド、アシルアジド、アシルハライド、ニトリル、ニトロン、スルフヒドリル、ジスルフィド、ハロゲン化スルホニル、イソチオシアネート、イミドエステル、活性化エステル、ケトン、α,β-不飽和カルボニル、アルケン、マレイミド、α-ハロイミド、エポキシド、アジリジン、テトラジン、テトラゾール、ホスフィン、ビオチンまたはチイラン官能基と、相補性反応性基との反応によって形成され得る、前記〔17〕に記載の化合物。
〔19〕出現するL 1 の少なくとも1つについて、官能基が、アルキンおよびアジドの反応によって形成され得る、前記〔17〕に記載の化合物。
〔20〕出現するL 1 の少なくとも1つについて、官能基が、アルケン、エステル、アミド、チオエステル、ジスルフィド、炭素環式、複素環式またはヘテロアリール基を含む、前記〔17〕に記載の化合物。
〔21〕出現するL 1 の少なくとも1つについて、L 1 が、トリアゾリル官能基を含むリンカーである、前記〔17〕に記載の化合物。
〔22〕出現するL 1 の少なくとも1つについて、L 1 -Mが、以下の構造を有する、前記〔17〕に記載の化合物。
【化8】


(式中、L 1a およびL 1b は、それぞれ独立して、任意に用いてもよいリンカーである)
〔23〕出現するL 1 の少なくとも1つについて、L 1 -Mが、以下の構造を有する、前記〔17〕に記載の化合物。
【化9】


(式中、L 1a およびL 1b は、それぞれ独立して、任意に用いてもよいリンカーである)
〔24〕L 1a もしくはL 1b 、またはそれらの両方が存在しない、前記〔22〕~〔23〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔25〕L 1a またはL 1b 、またはどちらも存在する、前記〔22〕~〔23〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔26〕L 1a およびL 1b が、存在する場合、それぞれ独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンである、前記〔25〕に記載の化合物。
〔27〕L 1a およびL 1b が、存在する場合、独立して、以下の構造のうちの1つを有する、前記〔25〕に記載の化合物。
【化10】

〔28〕L 1 が、出現毎に独立して、任意に用いてもよいアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーである、前記〔1〕~〔16〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔29〕L 2 およびL 3 が、出現毎に独立して、C 1 -C 6 アルキレン、C 2 -C 6 アルケニレンまたはC 2 -C 6 アルキニレンである、前記〔1〕~〔28〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔30〕L 1 が、以下の構造のうちの1つを有する、前記〔1〕~〔16〕または〔28〕のいずれか1項に記載の化合物。
【化11】

(式中、
a、bおよびcは、それぞれ独立して、1~6の範囲の整数である)
〔31〕R 4 が、出現毎に独立して、OH、O - またはOR d である、前記〔1〕~〔30〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔32〕R 5 が、出現毎に、オキソである、前記〔1〕~〔31〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔33〕R 1 が、出現毎に、Hである、前記〔1〕~〔32〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔34〕R 2 またはR 3 の一方が、OHまたは-OP(=R a )(R b )R c であり、R 2 またはR 3 のもう一方が、QまたはQへの共有結合を含むリンカーである、前記〔1〕~〔33〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔35〕R 2 およびR 3 が、それぞれ独立して、-OP(=R a )(R b )R c である、前記〔1〕~〔33〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔36〕R c がOL’である、前記〔35〕に記載の化合物。
〔37〕L’が、Q、標的指向性部分、分析対象分子、固体支持体、固体支持体残基、ヌクレオシドまたは構造(I)のさらなる化合物、または構造(II)のさらなる化合物へのヘテロアルキレンリンカーである、前記〔36〕に記載の化合物。
〔38〕L’が、アルキレンオキシドもしくはホスホジエステル部分、またはそれらの組合せを含む、前記〔37〕に記載の化合物。
〔39〕L’が、以下の構造を有する、前記〔36〕~〔38〕のいずれか1項に記載の化合物。
【化12】


(式中、
m”およびn”は、独立して、1~10の整数であり、
e は、H、電子対または対イオンであり、
L”は、R e 、またはQ、標的指向性部分、分析対象分子、固体支持体、固体支持体残基、ヌクレオシドもしくは構造(I)のさらなる化合物、もしくは構造(II)のさらなる化合物への直接結合もしくは連結基である)
〔40〕Qが、求核性反応性基、求電子性反応性基または環化付加反応性基を含む、前記〔1〕~〔39〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔41〕Qが、スルフヒドリル、ジスルフィド、活性化エステル、イソチオシアネート、アジド、アルキン、アルケン、ジエン、求ジエン体、酸ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル、ホスフィン、α-ハロアミド、ビオチン、アミノまたはマレイミド官能基を含む、前記〔1〕~〔40〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔42〕Qが、マレイミド官能基を含む、前記〔1〕~〔41〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔43〕アジドが、アルキルアジドまたはアシルアジドである、前記〔41〕に記載の化合物。
〔44〕活性化エステルが、N-スクシンイミドエステル、イミドエステルまたはポリフルオロフェニルエステルである、前記〔41〕に記載の化合物。
〔45〕Qが、以下の構造のうちの1つを有する、前記〔1〕~〔44〕のいずれか1項に記載の化合物。
【化13】




(式中、Xはそれぞれ、独立して、ハロゲンである)
〔46〕標的指向性部分が、抗体または細胞表面受容体アンタゴニストである、前記〔37〕または〔40〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔47〕R 2 またはR 3 の一方が、OHまたは-OP(=R a )(R b )R c であり、R 2 またはR 3 のもう一方が、分析対象分子への共有結合を含むリンカー、または固体支持体への共有結合を含むリンカーである、前記〔1〕~〔33〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔48〕分析対象分子が、核酸、アミノ酸またはそれらのポリマーである、前記〔47〕に記載の化合物。
〔49〕分析対象分子が、酵素、受容体、受容体リガンド、抗体、糖タンパク質、アプタマーまたはプリオンである、前記〔47〕に記載の化合物。
〔50〕固体支持体が、ポリマー製ビーズまたは非ポリマー製ビーズである、前記〔47〕に記載の化合物。
〔51〕R 2 またはR 3 が、以下の構造のうちの1つを有する、前記〔1〕~〔33〕のいずれか1項に記載の化合物。
【化14】




〔52〕mが、出現毎に独立して、1~10の整数である、前記〔1〕~〔51〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔53〕mが、出現毎に独立して、1~5の整数である、前記〔1〕~〔51〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔54〕nが、1~100の整数である、前記〔1〕~〔53〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔55〕nが、1~10の整数である、前記〔1〕~〔53〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔56〕M 1 もしくはM 2 、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、4つ以上のアリールもしくはヘテロアリール環、またはそれらの組合せを含む部分である、前記〔1〕~〔55〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔57〕M 1 もしくはM 2 、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、蛍光性または発色性である、前記〔1〕~〔56〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔58〕M 1 もしくはM 2 、またはそれらの両方が、蛍光性である、前記〔57〕に記載の化合物。
〔59〕M 1 もしくはM 2 、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、少なくとも4つの縮合環を含む、縮合多環式アリール部分を含む、前記〔1〕~〔58〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔60〕M 1 もしくはM 2 、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、ジメチルアミノスチルベン、キナクリドン、フルオロフェニル-ジメチル-BODIPY、his-フルオロフェニル-BODIPY、アクリジン、テリレン、セキシフェニル、ポルフィリン、ベンゾピレン、(フルオロフェニル-ジメチル-ジフルオロボラ-ジアザ-インダセン)フェニル、(ビス-フルオロフェニル-ジフルオロボラ-ジアザ-インダセン)フェニル、クアテルフェニル、ビ-ベンゾチアゾール、ター-ベンゾチアゾール、ビ-ナフチル、ビ-アントラシル、スクアライン、スクアリリウム、9,10-エチニルアントラセンまたはター-ナフチル部分である、前記〔1〕~〔59〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔61〕M 1 もしくはM 2 、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、p-ターフェニル、ペリレン、アゾベンゼン、フェナジン、フェナントロリン、アクリジン、チオキサントレン、クリセン、ルブレン、コロネン、シアニン、ペリレンイミドもしくはペリレンアミド、またはそれらの誘導体である、前記〔1〕~〔59〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔62〕M 1 もしくはM 2 、またはそれらの両方が、出現毎に独立して、クマリン色素、レゾルフィン色素、ジピロメテンボロンジフルオリド色素、ルテニウムビピリジル色素、チアゾールオレンジ色素、ポリメチンまたはN-アリール-1,8-ナフタルイミド色素である、前記〔1〕~〔59〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔63〕M 1 およびM 2 が、出現毎に独立して、ホウ素-ジピロメテン、ローダミン、シアニン、ピレン、ペリレン、ペリレンモノイミドもしくは6-FAM、またはそれらの誘導体である、前記〔1〕~〔59〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔64〕M 1 およびM 2 が、出現毎に独立して、以下の構造のうちの1つを有する、前記〔1〕~〔63〕のいずれか1項に記載の化合物。
【化15】

〔65〕表2から選択される、前記〔1〕~〔64〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔66〕表3から選択される、前記〔16〕~〔65〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔67〕アクセプター遷移双極子モーメントを有しており、ポリマー主鎖に共有結合により連結されているアクセプター発色団、および
ドナー遷移双極子モーメントを有しており、ポリマー主鎖に共有結合により連結されているドナー発色団
を含むポリマー化合物あって、
生理的条件にある溶液中でアクセプター発色団とドナー発色団との間の有効距離が約50.0nm未満であり、アクセプター遷移双極子およびドナー遷移双極子が実質的に平行となる立体配置をとる、
ポリマー化合物。
〔68〕アクセプター発色団とドナー発色団との間の有効距離が、約25.0nm未満である、前記〔67〕に記載のポリマー化合物。
〔69〕アクセプター発色団とドナー発色団との間の有効距離が、約10.0nm未満である、前記〔67〕~〔68〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔70〕アクセプター発色団が、蛍光色素部分である、前記〔67〕~〔69〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔71〕ドナー発色団が、蛍光色素部分である、前記〔67〕~〔70〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔72〕アクセプター発色団およびドナー発色団のどちらも、蛍光色素部分である、前記〔67〕~〔71〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔73〕アクセプター遷移双極子モーメントとドナー遷移双極子モーメントとの間の角度が、120°~180°の範囲である、前記〔67〕~〔72〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔74〕アクセプター遷移双極子モーメントとドナー遷移双極子モーメントとの間の角度が、0°~60°の範囲である、前記〔67〕~〔73〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔75〕ポリマー主鎖の近位端部において、共有結合により連結されている第1のアクセプター発色団、
ポリマー主鎖の遠位端部において、共有結合により連結されている第2のアクセプター発色団、および
ポリマー主鎖の近位端部および遠位端部の間で共有結合により連結されているドナー発色団
をさらに含む、前記〔67〕~〔74〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔76〕ポリマー主鎖がホスフェートリンカーを含む、前記〔67〕~〔75〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔77〕ポリマー主鎖が、アルキレンオキシドリンカーを含む、前記〔67〕~〔76〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔78〕アルキレンオキシドがエチレンオキシドである、前記〔77〕に記載のポリマー化合物。
〔79〕約20,000g/mol未満の分子量を有する、前記〔67〕~〔78〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔80〕約17,000g/mol未満の分子量を有する、前記〔67〕~〔79〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔81〕約15,000g/mol未満の分子量を有する、前記〔67〕~〔80〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物。
〔82〕試料を染色する方法であって、前記試料に、前記試料が適切な波長で照射されると光学応答を生じるのに十分な量で前記〔1〕~〔81〕のいずれか1項に記載の化合物を添加するステップを含む方法。
〔83〕前記光学応答が、蛍光応答である、前記〔82〕に記載の方法。
〔84〕前記試料が細胞を含む、前記〔82〕~〔83〕のいずれか1項に記載の方法。
〔85〕フローサイトメトリーによって前記細胞を観察するステップをさらに含む、前記〔84〕に記載の方法。
〔86〕蛍光応答を、検出可能な形で異なる光学特性を有する第2のフルオロフォアの蛍光応答と区別するステップをさらに含む、前記〔83〕に記載の方法。
〔87〕分析対象分子を目視で検出する方法であって、
(a)分析対象分子への共有結合を含む、前記〔1〕~〔81〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物を用意するステップ、および
(b)ポリマー化合物をその可視特性によって検出するステップ
を含む方法。
〔88〕分析対象分子を目視で検出する方法であって、
(a)表1から選択されるQへの共有結合を含む、前記〔1〕~〔81〕のいずれか1項に記載のポリマー化合物を分析対象分子と混合するステップ、
(b)ポリマー化合物および分析対象分子のバイオコンジュゲートを形成するステップ、および
(c)バイオコンジュゲートをその可視特性によって検出するステップ
を含む方法。
〔89〕前記〔1〕~〔81〕のいずれか1項に記載の化合物、および1つまたは複数の分析対象分子を含む組成物。
〔90〕1つまたは複数の分析対象分子を検出するための分析法における、前記〔89〕に記載の組成物の使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7