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特許7515788フィルム、積層体、フィルム層付き半導体ウェハ、フィルム層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】フィルム、積層体、フィルム層付き半導体ウェハ、フィルム層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240708BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240708BHJP
   C08F 22/40 20060101ALI20240708BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240708BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240708BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20240708BHJP
   C08K 5/357 20060101ALI20240708BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20240708BHJP
   C08L 61/34 20060101ALI20240708BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240708BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240708BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240708BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
B32B27/34
C08F22/40
C08K3/013
C08K5/14
C08K5/3445
C08K5/357
C08L35/00
C08L61/34
H01L21/60 311S
H01L23/30 D
H05K1/03 610N
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021527761
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025151
(87)【国際公開番号】W WO2020262588
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2019122335
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 正志
(72)【発明者】
【氏名】東口 鉱平
(72)【発明者】
【氏名】関戸 隆人
(72)【発明者】
【氏名】高野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木田 剛
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-225639(JP,A)
【文献】特開2016-196548(JP,A)
【文献】特開平08-302273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B32B 27/34
C08F 22/40
C08K 3/013
C08K 5/14
C08K 5/3445
C08K 5/357
C08L 35/00
C08L 61/34
H01L 21/60
H01L 23/29
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド化合物及びシトラコンイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する化合物(A)と、
下記式(1)及び下記式(2)で表される有機過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する有機過酸化物(B)と、
ハイドロパーオキサイド(C)と、
を含有し、
プリアプライドアンダーフィル材用である、フィルム。
【化1】
(式(1)中、R1は各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。)。
【化2】
(式(2)中、R2は各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、X1は、下記式(3)又は(4)で表される基を示す。)。
【化3】
(式(3)中、R3は、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R4は、炭素数1以上3以下のアルキレン基を示し、R5は、水素原子、又は炭素数1以上6以下のアルキル基を示す。)。
【化4】
(式(4)中、R6は各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、X2は、下記一般式(a)~(c)で表される基を示す。)。
【化5】
(式(c)中、n1は1以上5以下の整数を示す。)。
【請求項2】
前記化合物(A)が、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、下記式(5)で表されるマレイミド化合物、下記式(6)で表されるマレイミド化合物、下記式(7)で表されるマレイミド化合物、下記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(9)で表される構成単位と両末端にマレイミド基とを含有するビスマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のフィルム。
【化6】
(式(5)中、R7は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、n2は1以上の整数を示す。)。
【化7】
(式(6)中、n3は1以上30以下の整数を示す。)。
【化8】
(式(7)中、R8は各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R9は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。)。
【化9】
(式(8)中、R10は各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示し、n4は1以上10以下の整数を示す。)。
【化10】
(式(9)中、R11は炭素数1以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示し、R12は炭素数1以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示し、R13は各々独立に、水素原子、炭素数1以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示し、n5は1以上10以下の整数を示す。)。
【請求項3】
前記化合物(A)が、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、前記式(5)で表されるマレイミド化合物、前記式(6)で表されるマレイミド化合物、前記式(7)で表されるマレイミド化合物、前記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び前記式(9)で表される構成単位と両末端にマレイミド基とを含有するビスマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ハイドロパーオキサイド(C)が、下記式(10)で表されるハイドロパーオキサイド、下記式(11)で表されるハイドロパーオキサイド、及び下記式(12)で表されるハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【化11】
(式(10)中、R14は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R15は、水素原子、メチル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基を示す。)。
【化12】
(式(11)中、R16は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R17は、水素原子、メチル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基を示す。)。
【化13】
(式(12)中、R18は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R19は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R20は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。)。
【請求項5】
前記ハイドロパーオキサイド(C)の分子量が、100以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記ハイドロパーオキサイド(C)が、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、及びtert-アミルハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記有機過酸化物(B)が、ジクミルパーオキサイド、n-ブチル-4,4-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2-tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、及び2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
下記式(13)、下記式(14)、下記式(15)、及び下記式(16)で表される、ベンゾオキサジン化合物(D)を更に含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルム。
【化14】
(式(13)中、R21は各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R22は、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(d)~(w)で表される1~4価の有機基を示し、n6は1~4の整数を示す。)。
【化15】
(式(14)中、R23は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R24は、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(d)~(r)で表される1~4価の有機基を示し、n7は1~4の整数を示す。)。
【化16】
(式(15)中、R25は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)。
【化17】
(式(16)中、R26は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)。
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
(式(d)~(w)中、Raは、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、Rbは、水素原子、アリール基、アラルキル、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。)。
【請求項9】
前記ベンゾオキサジン化合物(D)が、下記式(17)及び下記式(18)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項8に記載のフィルム。
【化25】
(式(17)中、R27は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R28は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、X3はアルキレン基、下記式(19)で表される基、式「-SO2-」で表される基、式「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【化26】
(式(18)中、R29は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R30は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、X4はアルキレン基、下記式(19)で表される基、式「-SO2-」で表される基、式「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【化27】
(式(19)中、Yはアルキレン基、又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、n8は0以上の整数を示す。)。
【請求項10】
前記ベンゾオキサジン化合物(D)が、下記式(20)で表される化合物、下記式(21)で表される化合物、下記式(22)で表される化合物、下記式(23)で表される化合物、下記式(24)で表される化合物、及び下記式(25)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項8又は9に記載のフィルム。
【化28】
【化29】
【化30】
(式(22)中、R31は各々独立に、水素原子、又は炭素数1~4の炭化水素基を示す。)
【化31】
【化32】
【化33】
【請求項11】
前記ベンゾオキサジン化合物(D)の含有量が、前記化合物(A)100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、請求項8~10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
プロペニル化合物(E)を更に含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
前記プロペニル化合物(E)の含有量が、前記化合物(A)100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
フラックス成分(F)を更に含有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
前記フラックス成分(F)の含有量が、前記化合物(A)の合計量100質量部に対して、5質量部以上60質量部以下である、請求項14に記載のフィルム。
【請求項16】
無機充填材(G)を更に含有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項17】
前記無機充填材(G)の平均粒子径が、3μm以下である、請求項16に記載のフィルム。
【請求項18】
前記無機充填材(G)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項16又は17に記載のフィルム。
【請求項19】
前記無機充填材(G)の含有量が、前記化合物(A)100質量部に対して、300質量部以下である、請求項16~18のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項20】
イミダゾール化合物(H)を更に含有する、請求項1~19のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項21】
前記イミダゾール化合物(H)の含有量が、前記化合物(A)100質量部に対して、10質量部以下である、請求項20に記載のフィルム。
【請求項22】
厚みが10μm以上100μm以下である、請求項1~21のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項23】
支持基材と、
前記支持基材上に積層された、請求項1~22のいずれか一項に記載のフィルムを含有する層と、
を備える、積層体。
【請求項24】
半導体ウェハと、
前記半導体ウェハに積層された、請求項23に記載の積層体と、
を備え、
前記フィルムを含有する層が、前記半導体ウェハに積層された、フィルム層付き半導体ウェハ。
【請求項25】
半導体搭載用基板と、
前記半導体搭載用基板に積層された、請求項23に記載の積層体と、
を備え、
前記フィルムを含有する層が、前記半導体搭載用基板に積層された、フィルム層付き半導体搭載用基板。
【請求項26】
請求項24に記載のフィルム層付き半導体ウェハ、及び/又は、請求項25に記載のフィルム層付き半導体搭載用基板を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、フィルムを用いた積層体、フィルム層付き半導体ウェハ、フィルム層付き半導体搭載用基板、及びフィルムに関する。詳しくは、本発明は、プリアプライドアンダーフィル材として有用なフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化、及び高性能化に伴い、半導体チップ(以下、「チップ」と略す場合がある。)を半導体搭載用基板(以下、「基板」と略す場合がある。)に搭載する方法として、フリップチップ実装が注目されている。フリップチップ実装においては、チップと基板を接合した後、チップと基板の間隙にアンダーフィル材を充填し、硬化させる工法が一般的である。しかし、半導体装置の小型化や高性能化に伴い、チップに配列される電極の狭ピッチ化や電極間の狭ギャップ化が進み、アンダーフィル材の充填の長時間化による作業性の悪化や未充填等の充填不良の発生が問題となっている。これに対し、チップ又は基板にプリアプライドアンダーフィル材を供給した後、チップと基板との接合と、アンダーフィル材の充填とを同時に行う工法が検討されている。
【0003】
アンダーフィル材は、チップ、及び基板と直接接触する部材であることから、アンダーフィル材に求められる重要な特性として、半導体装置を製造する工程において、最適な溶融粘度を確保すること、及び、半導体装置を製造、及び使用される環境において、チップ、及び基板との間のアンダーフィル未充填部分(以下、「ボイド」と略す場合がある。)を抑制することが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、主樹脂にラジカル重合性モノマーを使用したプリアプライドアンダーフィル材が記載されている。この特許文献1には、チップとの接着性向上を目的にしたシランカップリング剤の配合についての記載がある。
【0005】
特許文献2には、エポキシ樹脂、イミダゾール化合物、及びマレイミド化合物を含むアンダーフィル材が記載されている。
【0006】
特許文献3には、エポキシ化合物、カルボキシル基含有フラックス成分を使用するプリアプライドアンダーフィル材が記載されており、接着について言及されている。
【0007】
特許文献4には、マレイミド化合物、エポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂硬化剤を必須成分とする樹脂組成物が記載されており、熱硬化後の樹脂組成物において高い密着性が得られたと記載されている。
【0008】
特許文献5には、プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、特定の構造を有するマレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、及び無機充填材(C)を含有するプリント配線基板用樹脂組成物についての記載がある。
【0009】
特許文献6には、脂肪族エポキシ化合物、及びベンゾオキサジン化合物を硬化主剤として含有し、かつ、フェノール系硬化剤を含有する電子部品用接着剤についての記載がある。
【0010】
特許文献7には、熱硬化性化合物、前記熱硬化性化合物と反応可能な官能基を有するポリマー、及び熱硬化剤とを含有し、ボンディング温度での溶融粘度が10Pa・s以上15000Pa・s以下であり、ボンディング温度でのゲルタイムが10秒以上であり、かつ、240℃でのゲルタイムが1秒以上10秒以下である接着剤組成物についての記載がある。
【0011】
特許文献8には、シート状熱硬化性樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法の記載がある。
【0012】
また、チップと基板とを、酸化されやすい金属、例えば、はんだや銅を介して接合する場合、接合の阻害要因となる金属酸化膜を接合部から除去し、良好な金属接合を得ることを目的として、プリアプライドアンダーフィル材にカルボン酸などに由来するフラックス成分を添加することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特表2015-503220号公報
【文献】特表2014-521754号公報
【文献】特開2013-112730号公報
【文献】特開2003-221443号公報
【文献】特開2016-196548号公報
【文献】特開2013-008800号公報
【文献】特開2011-157529号公報
【文献】特開2006-245242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、一般的にラジカル重合性モノマーは硬化が速く、配合したシランカップリング剤の接着部位の運動性がチップ表面のシラノール基と、十分な数の結合を形成する前に重合が進んだ主樹脂により律速されてしまう。その結果、特許文献1に記載のプリアプライドアンダーフィル材では、最適な溶融粘度を確保できず、チップ、及びプリント配線板などの基板との十分な密着性及び接着性が得られず、結果としてボイドが生ずる傾向にある。また、ラジカル重合性モノマーは硬化が速いため、樹脂組成物がチップ表面に存在する凹凸に埋まる前に硬化するので、特許文献1に記載のプリアプライドアンダーフィル材では、接着性向上の上で有用となるアンカー効果が十分に得られないという問題がある。
【0015】
特許文献2に記載の材料は、ポリイミドパッシベーション膜にしか作用しないことから、適用範囲が狭いという問題がある。
【0016】
特許文献3に記載の技術において、室温であってもカルボキシル基含有化合物は、エポキシ化合物とわずかに反応が進行し、保管中にフラックス活性が経時的に低下する。そのため、特許文献3に記載のプリアプライドアンダーフィル材は、接合安定性が低く、量産性に乏しいという問題がある。
【0017】
特許文献4に記載の技術においては、マレイミド樹脂の吸水率が高いため、吸湿処理後のチップ接着性が大幅に低下するという問題がある。接着性が不十分であると、剥離界面から水が浸入し、絶縁信頼性が大きく低下する。なお、マレイミド樹脂のみでも、チップとの接着性、及びプリント配線基板との接着性の両立は困難である。
【0018】
特許文献5では、フラックス活性に関する記載はなく、また、フラックス成分についても記載がない。そのため、特許文献5に記載の樹脂組成物では、良好な金属接合は得られないとの問題がある。
【0019】
特許文献6では、エポキシ化合物の接着性は高いが、エポキシ化合物はフラックス成分とも反応してしまい、良好な金属接合を得るために十分なフラックス活性が得られないという問題がある。
【0020】
特許文献7の接着剤組成物では、フラックス性を有する熱硬化剤を含むが、実施例において、エポキシ化合物、及びエポキシ基を含有するポリマーが使用されており、ボンディング温度より低温で両者が反応してしまうため十分なフラックス活性を得ることが難しい。
【0021】
特許文献8においても、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が好適であることが記載されているが、前記のとおり、エポキシ化合物はフラックス成分とも反応してしまい、良好な金属接合を得るために十分なフラックス活性が得られないという問題もある。
【0022】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、保存安定性、可撓性、フラックス活性、硬化性、低ボイド性、溶融粘度のバランスに優れる、フィルム、積層体、フィルム層付き半導体ウェハ、フィルム層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、従来技術が有する上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の成分を併用することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1]
マレイミド化合物及びシトラコンイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する化合物(A)と、
下記式(1)及び下記式(2)で表される有機過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する有機過酸化物(B)と、
ハイドロパーオキサイド(C)と、
を含有する、フィルム。
【化1】
(式(1)中、R1は各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。)。
【化2】
(式(2)中、R2は各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、X1は、下記式(3)又は(4)で表される基を示す。)。
【化3】
(式(3)中、R3は、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R4は、炭素数1以上3以下のアルキレン基を示し、R5は、水素原子、又は炭素数1以上6以下のアルキル基を示す。)。
【化4】
(式(4)中、R6は各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、X2は、下記一般式(a)~(c)で表される基を示す。)。
【化5】
(式(c)中、n1は1以上5以下の整数を示す。)。
[2]
前記化合物(A)が、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、下記式(5)で表されるマレイミド化合物、下記式(6)で表されるマレイミド化合物、下記式(7)で表されるマレイミド化合物、下記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(9)で表される構成単位と両末端にマレイミド基とを含有するビスマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[1]に記載のフィルム。
【化6】
(式(5)中、R7は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、n2は1以上の整数を示す。)。
【化7】
(式(6)中、n3は1以上30以下の整数を示す。)。
【化8】
(式(7)中、R8は各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R9は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。)。
【化9】
(式(8)中、R10は各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示し、n4は1以上10以下の整数を示す。)。
【化10】
(式(9)中、R11は炭素数1以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示し、R12は炭素数1以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示し、R13は各々独立に、水素原子、炭素数1以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示し、n5は1以上10以下の整数を示す。)。
[3]
前記化合物(A)が、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、前記式(5)で表されるマレイミド化合物、前記式(6)で表されるマレイミド化合物、前記式(7)で表されるマレイミド化合物、前記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び前記式(9)で表される構成単位と両末端にマレイミド基とを含有するビスマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[2]に記載のフィルム。
[4]
前記ハイドロパーオキサイド(C)が、下記式(10)で表されるハイドロパーオキサイド、下記式(11)で表されるハイドロパーオキサイド、及び下記式(12)で表されるハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載のフィルム。
【化11】
(式(10)中、R14は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R15は、水素原子、メチル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基を示す。)。
【化12】
(式(11)中、R16は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R17は、水素原子、メチル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基を示す。)。
【化13】
(式(12)中、R18は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R19は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R20は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。)。
[5]
前記ハイドロパーオキサイド(C)の分子量が、100以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のフィルム。
[6]
前記ハイドロパーオキサイド(C)が、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、及びtert-アミルハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のフィルム。
[7]
前記有機過酸化物(B)が、ジクミルパーオキサイド、n-ブチル-4,4-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2-tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、及び2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載のフィルム。
[8]
下記式(13)、下記式(14)、下記式(15)、及び下記式(16)で表される、ベンゾオキサジン化合物(D)を更に含有する、[1]~[7]のいずれかに記載のフィルム。
【化14】
(式(13)中、R21は各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R22は、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(d)~(w)で表される1~4価の有機基を示し、n6は1~4の整数を示す。)。
【化15】
(式(14)中、R23は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R24は、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(d)~(r)で表される1~4価の有機基を示し、n7は1~4の整数を示す。)。
【化16】
(式(15)中、R25は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)。
【化17】
(式(16)中、R26は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)。
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
(式(d)~(w)中、Raは、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、Rbは、水素原子、アリール基、アラルキル、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。)。
[9]
前記ベンゾオキサジン化合物(D)が、下記式(17)及び下記式(18)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[8]に記載のフィルム。
【化25】
(式(17)中、R27は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R28は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、X3はアルキレン基、下記式(19)で表される基、式「-SO2-」で表される基、式「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【化26】
(式(18)中、R29は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R30は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、X4はアルキレン基、下記式(19)で表される基、式「-SO2-」で表される基、式「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【化27】
(式(19)中、Yはアルキレン基、又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、n8は0以上の整数を示す。)。
[10]
前記ベンゾオキサジン化合物(D)が、下記式(20)で表される化合物、下記式(21)で表される化合物、下記式(22)で表される化合物、下記式(23)で表される化合物、下記式(24)で表される化合物、及び下記式(25)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[8]又は[9]に記載のフィルム。
【化28】
【化29】
【化30】
(式(22)中、R31は各々独立に、水素原子、又は炭素数1~4の炭化水素基を示す。)
【化31】
【化32】
【化33】
[11]
前記ベンゾオキサジン化合物(D)の含有量が、前記化合物(A)100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、[8]~[10]のいずれかに記載のフィルム。
[12]
プロペニル化合物(E)を更に含有する、[1]~[11]のいずれかに記載のフィルム。
[13]
前記プロペニル化合物(E)の含有量が、前記化合物(A)100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、[12]に記載のフィルム。
[14]
フラックス成分(F)を更に含有する、[1]~[13]のいずれかに記載のフィルム。
[15]
前記フラックス成分(F)の含有量が、前記化合物(A)の合計量100質量部に対して、5質量部以上60質量部以下である、[14]に記載のフィルム。
[16]
無機充填材(G)を更に含有する、[1]~[15]のいずれかに記載のフィルム。
[17]
前記無機充填材(G)の平均粒子径が、3μm以下である、[16]に記載のフィルム。
[18]
前記無機充填材(G)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[16]又は[17]に記載のフィルム。
[19]
前記無機充填材(G)の含有量が、前記化合物(A)100質量部に対して、300質量部以下である、[16]~[18]のいずれかに記載のフィルム。
[20]
イミダゾール化合物(H)を更に含有する、[1]~[19]のいずれかに記載のフィルム。
[21]
前記イミダゾール化合物(H)の含有量が、前記化合物(A)100質量部に対して、10質量部以下である、[20]に記載のフィルム。
[22]
厚みが10μm以上100μm以下である、[1]~[21]のいずれかに記載のフィルム。
[23]
プリアプライドアンダーフィル材用である、[1]~[22]のいずれかに記載のフィルム。
[24]
支持基材と、
前記支持基材上に積層された、[1]~[23]のいずれかに記載のフィルムを含有する層と、
を備える、積層体。
[25]
半導体ウェハと、
前記半導体ウェハに積層された、[24]に記載の積層体と、
を備え、
前記フィルムを含有する層が、前記半導体ウェハに積層された、フィルム層付き半導体ウェハ。
[26]
半導体搭載用基板と、
前記半導体搭載用基板に積層された、[24]に記載の積層体と、
を備え、
前記フィルムを含有する層が、前記半導体搭載用基板に積層された、フィルム層付き半導体搭載用基板。
[27]
[25]に記載のフィルム層付き半導体ウェハ、及び/又は、[26]に記載のフィルム層付き半導体搭載用基板を備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、保存安定性、可撓性、フラックス活性、硬化性、低ボイド性、溶融粘度のバランスに優れる、フィルム、積層体、フィルム層付き半導体ウェハ、フィルム層付き半導体搭載用基板、及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0027】
[フィルム]
本実施形態のフィルムは、マレイミド化合物及びシトラコンイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する化合物(A)(以下、単に「化合物(A)」ともいう。)と、下記式(1)及び下記式(2)で表される有機過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する有機過酸化物(B)(以下、単に「有機過酸化物(B)」ともいう。)と、ハイドロパーオキサイド(C)と、を含有する。このように構成されているため、本実施形態のフィルムは、保存安定性、可撓性、フラックス活性、硬化性、低ボイド性、溶融粘度のバランスに優れるものとなる。本実施形態のフィルムは、このような性能を有するため、チップのフリップチップ実装に使用されるプリアプライドアンダーフィル材として好適に用いられる。
【化34】
(式(1)中、Rは各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。)。
【化35】
(式(2)中、Rは各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、Xは、下記式(3)又は(4)で表される基を示す。)。
【化36】
(式(3)中、Rは、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、Rは、炭素数1以上3以下のアルキレン基を示し、Rは、水素原子、又は炭素数1以上6以下のアルキル基を示す。)。
【化37】
(式(4)中、Rは各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、Xは、下記一般式(a)~(c)で表される基を示す。)。
【化38】
(式(c)中、nは1以上5以下の整数を示す。)。
【0028】
〔化合物(A)〕
本実施形態のフィルムには、絶縁信頼性、及び耐熱性の観点から、マレイミド化合物及びシトラコンイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する化合物(A)を含む。化合物(A)は、分子内に、マレイミド基及びシトラコンイミド基からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであれば特に限定されない。化合物(A)としては、後述のフラックス成分(F)と反応性を示さないことが好ましい。化合物(A)は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
本実施形態に係る化合物(A)としては、後述するプロペニル化合物(E)と優れた反応性が得られ、絶縁性信頼性、及び耐熱性の観点から、マレイミド化合物を含むことが好ましい。
【0030】
マレイミド化合物としては、分子中に1個以上のマレイミド基を有する樹脂又は化合物であれば、特に限定されない。マレイミド化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
マレイミド化合物の具体例としては、以下に限定されないが、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、フェニルメタンマレイミド、o-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N'-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N'-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、下記式(5)で表されるマレイミド化合物、下記式(6)で表されるマレイミド化合物、下記式(7)で表されるマレイミド化合物、下記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(9)で表される構成単位と両末端にマレイミド基とを含有するマレイミド化合物などが挙げられる。化合物(A)としては、マレイミド化合物を重合して得られるプレポリマー、及びマレイミド化合物をアミン化合物等の他の化合物と重合して得られるプレポリマー等の形で、本実施形態に係るフィルムに含有させることもできる。
【化39】
(式(5)中、R7は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、n2は1以上の整数を示し、好ましくは1以上10以下の整数を示す。)。
【化40】
(式(6)中、n3は1以上30以下の整数を示す。)。
【化41】
(式(7)中、R8は各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R9は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。)。
【化42】
(式(8)中、R10は各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示し、n4は1以上10以下の整数を示す。)。
【化43】
(式(9)中、R11は炭素数1以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示し、R12は炭素数1以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示し、R13は各々独立に、水素原子、炭素数1以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2以上16以下の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示し、n5は1以上10以下の整数を示す。)。
【0031】
化合物(A)は、上述した中でも、有機溶剤への溶解性の観点から、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-フェニルマレイミド、上記式(5)で表されるマレイミド化合物、上記式(6)で表されるマレイミド化合物、上記式(7)で表されるマレイミド化合物、上記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び上記式(9)で表される構成単位と両末端にマレイミド基とを含有するビスマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、上記式(5)で表されるマレイミド化合物、上記式(6)で表されるマレイミド化合物、上記式(7)で表されるマレイミド化合物、上記式(8)で表されるマレイミド化合物、及び上記式(9)で表される構成単位と両末端にマレイミド基とを含有するビスマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。さらに、化合物(A)は、良好な保存安定性、可撓性、フラックス活性、硬化性及び低ボイド性を維持しつつ、とりわけ溶融粘度を向上させる観点から、マレイミド化合物として、上記式(8)で表されるマレイミド化合物を含有することがさらに好ましく、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、上記式(6)で表されるマレイミド化合物、上記式(7)で表されるマレイミド化合物及び上記式(8)で表されるマレイミド化合物を含有することがよりさらに好ましい。
【0032】
マレイミド化合物としては、市販品を用いてもよく、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパンとしては、例えば、大和化成工業(株)社製BMI-80(商品名)が挙げられる。式(5)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、大和化成工業(株)社製BMI-2300(商品名)が挙げられる。式(6)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、ケイ・アイ化成(株)製BMI-1000P(商品名、式(6)中のn3=14(平均))、ケイ・アイ化成(株)社製BMI-650P(商品名、式(6)中のn3=9(平均))、ケイ・アイ化成(株)社製BMI-250P(商品名、式(6)中のn3=3~8(平均))、ケイ・アイ化成(株)社製CUA-4(商品名、式(6)中のn3=1)等が挙げられる。式(7)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、ケイ・アイ化成(株)製BMI-70(商品名;ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン)が挙げられる。式(8)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、日本化薬(株)社製MIR-3000-70MT(商品名、式(8)中の 10 が全て水素原子であり、 4 が1~10の混合物である)が挙げられる。式(9)で表される構成単位と両末端にマレイミド基とを含有するマレイミド化合物としては、例えば、日本化薬(株)社製MIZ-001(商品名)が挙げられる。
【0033】
シトラコンイミド化合物としては、特に限定されないが、例えば、o-フェニレンビスシトラコンイミド、m-フェニレンビスシトラコンイミド、p-フェニレンビスシトラコンイミド、4,4-ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、2,2-ビス[4-(4-シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、1,3-キシリレンビス(シトラコンイミド)、N-[3-ビス(トリメチルシリル)アミノ-1-プロピル]シトラコンイミド、N-[3-ビス(トリエチルシリル)アミノ-1-プロピル]シトラコンイミド、N-[3-ビス(トリフェニルシリル)アミノ-1-プロピル]シトラコンイミド、N,N’-(m-フェニレンジメチレン)ジシトラコンイミド、N-[3-(メチリデンスクシンイミドメチル)ベンジル]シトラコンイミドが挙げられる。シトラコンイミド化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
本実施形態のフィルムにおいて、化合物(A)の含有量は、特に限定されないが、実装後のパッケージの絶縁信頼性及び耐熱性を確保する観点から、フィルム中、10質量%以上60質量%以下で含むことが好ましく、15質量%以上50質量%以下で含むことがより好ましく、20質量%以上40質量%以下で含むことがさらに好ましい。
【0035】
〔有機過酸化物(B)〕
本実施形態のフィルムには、実装時の硬化性を付与する観点から、下記式(1)及び下記式(2)で表される有機過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する有機過酸化物(B)を含む。有機過酸化物(B)は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【化44】
(式(1)中、Rは各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。)。
【化45】
(式(2)中、Rは各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、Xは、下記式(3)又は(4)で表される基を示す。)。
【化46】
(式(3)中、Rは、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、Rは、炭素数1以上3以下のアルキレン基を示し、Rは、水素原子、又は炭素数1以上6以下のアルキル基を示す。)。
【化47】
(式(4)中、Rは各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、Xは、下記一般式(a)~(c)で表される基を示す。)。
【化48】
(式(c)中、nは1以上5以下の整数を示す。)。
【0036】
本実施形態において、有機溶剤への溶解性、及びフィルム作製時の揮発又は熱分解を抑制する観点から、有機過酸化物(B)は、ジクミルパーオキサイド、n-ブチル-4,4-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2-tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、及び2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0037】
本実施形態のフィルムにおいて、有機過酸化物(B)の含有量は、特に限定されないが、実装時の揮発分を低減する観点から、化合物(A)100質量部に対して、0.01質量部以上15質量部以下で含むことが好ましく、0.05質量部以上10質量部以下で含むことがより好ましく、0.1質量部以上8質量部以下で含むことがさらに好ましい。
【0038】
〔ハイドロパーオキサイド(C)〕
本実施形態のフィルムには、実装時の硬化性を付与する観点から、ハイドロパーオキサイド(C)を含んでいてもよい。ハイドロパーオキサイド(C)は、過酸化水素の水素原子を有機基で置換したものであれば特に限定されない。本実施形態において、ハイドロパーオキサイド(C)は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
ハイドロパーオキサイド(C)としては、例えば、下記式(10)で表されるハイドロパーオキサイド、下記式(11)で表されるハイドロパーオキサイド、及び下記式(12)で表されるハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【化49】
(式(10)中、R14は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R15は、水素原子、メチル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基を示す。)。
【化50】
(式(11)中、R16は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R17は、水素原子、メチル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基を示す。)。
【化51】
(式(12)中、R18は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R19は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示し、R20は各々独立に、水素原子、又はメチル基を示す。)。
【0040】
ハイドロパーオキサイド(C)の分子量は、特に限定されないが、実装時の揮発分を低減する観点から、100以上であることが好ましく、より好ましくは130以上である。同様の観点から、ハイドロパーオキサイド(C)が、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、及びtert-アミルハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0041】
本実施形態のフィルムにおいて、ハイドロパーオキサイド(C)の含有量は、特に限定されないが、実装時の硬化性、及び揮発分の低減を両立する観点から、化合物(A)100質量部に対して、10質量部以下で含むことが好ましく、0.01質量部以上10質量部以下で含むことがより好ましく、0.1質量部以上8質量部以下で含むことがさらに好ましい。
【0042】
〔ベンゾオキサジン化合物(D)〕
本実施形態のフィルムには、接着性を付与する観点から、ベンゾオキサジン化合物(D)を含んでいてもよい。ベンゾオキサジン化合物としては、基本骨格としてオキサジン環を有していれば、特に限定されない。本実施形態において、ベンゾオキサジン化合物には、ナフトオキサジン化合物などの多環オキサジン骨格を有する化合物も含まれる。本実施形態において、ベンゾオキサジン化合物(D)は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。本実施形態において、ベンゾオキサジン化合物(D)は、下記式(13)、下記式(14)、下記式(15)、及び下記式(16)で表されるものであることが好ましい。
【化52】
(式(13)中、R23は各々独立に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R24は、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(d)~(w)で表される1~4価の有機基を示し、nは1~4の整数を示す。)。
【化53】
(式(14)中、R25は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R26は、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、又は下記一般式(d)~(r)で表される1~4価の有機基を示し、nは1~4の整数を示す。)。
【化54】
(式(15)中、R27は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)。
【化55】
(式(16)中、R28は、アルキル基、シクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。)。
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
(式(d)~(w)中、Rは、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、Rは、水素原子、アリール基、アラルキル、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。)。
【0043】
本実施形態において、難燃性、及び耐熱性観点から、ベンゾオキサジン化合物(D)は、下記式(17)及び下記式(18)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【化63】
(式(17)中、R29は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R30は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、Xはアルキレン基、下記式(19)で表される基、式「-SO-」で表される基、式「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【化64】
(式(18)中、R31は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、R32は各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示し、Xはアルキレン基、下記式(19)で表される基、式「-SO-」で表される基、式「-CO-」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。)。
【化65】
(式(19)中、Yはアルキレン基、又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、nは0以上の整数を示し、好ましくは0以上5以下の整数を示す。)。
【0044】
本実施形態において、有機溶剤への溶解性の観点から、ベンゾオキサジン化合物(D)は、下記式(20)で表される化合物、下記式(21)で表される化合物、下記式(22)で表される化合物、下記式(23)で表される化合物、下記式(24)で表される化合物、及び下記式(25)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【化66】
【化67】
【化68】
(式(22)中、R33は各々独立に、水素原子、又は炭素数1~4の炭化水素基を示す。)
【化69】
【化70】
【化71】
【0045】
なお、本実施形態において、ベンゾオキサジン化合物(D)中には、モノマーが重合して生成したオリゴマーなどを含んでいてもよい。
【0046】
本実施形態のフィルムにおいて、ベンゾオキサジン化合物(D)の含有量は、特に限定されないが、フィルムの接着性、及び可撓性を両立する観点から、化合物(A)100質量部に対して、5質量部以上60質量部以下で含むことが好ましく、10質量部以上55質量部以下で含むことがより好ましく、15質量部以上50質量部以下で含むことがさらに好ましい。
【0047】
〔プロペニル化合物(E)〕
本実施形態のフィルムには、接着性、及び実装時の硬化性を付与する観点から、プロペニル化合物(E)を含んでいてもよい。プロペニル化合物(E)としては、プロペニル基を含有するものであれば特に限定されない。本実施形態において、プロペニル化合物(E)は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。本実施形態において、プロペニル化合物(E)は、分子内の末端に下記式(26)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【化72】
【0048】
式(26)中、-*は、結合手を示し、重合体の主鎖と結合する。
【0049】
プロペニル化合物(E)は、末端に反応性の高いプロペニル基を有するため、硬化過程において、プロペニル基同士の反応、並びにマレイミド基及びシトラコンイミド基とプロペニル基との反応が生じやすい。そのため、得られる硬化物の架橋密度が上がり、低ボイド性が得られ、更に、耐熱性(ガラス転移温度)も向上する。また、極性基を有しているため、チップ及び基板など被接着体とアンダーフィル材とのチップ接着性も向上する。
【0050】
プロペニル化合物(E)の主鎖である重合体は、アルケニル基及びヒドロキシ基を含めば、特に限定されない。
アルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、プロペニル基、ブテニル基、及びヘキセニル基が挙げられる。これらの中でも、プロペニル基が好ましい。
【0051】
重合体としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリフェニルメタン型フェノール、テトラキスフェノール、ノボラック型フェノール、クレゾールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール(ビフェニル型フェノール)等のフェノール環にアルケニル基を有する重合体が挙げられる。これらの重合体には、置換基を有していてもよい。また、これらの重合体は、1種又は2種以上を適宜組み合わせてもよい。
このような置換基としては、ハロゲン原子、及び直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基が挙げられる。直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基には、置換基として、アルケニル基を有することが好ましい。アルケニル基については、前述のとおりである。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
直鎖状又は分岐状の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、及びt-ヘキシル基が挙げられる。
環状の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族環状炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、及びシクロドデシル基等の単環式脂肪族炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環式脂肪族炭化水素基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、及びフェナントレン等の芳香族炭化水素環から水素原子1個を除いた基が挙げられる。
【0052】
プロペニル化合物(E)は、特に限定されないが、フリップチップ実装中において、プロペニル化合物(E)の揮発によるボイドを防ぐ観点から、プロペニル化合物(E)の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算で、300以上10,000以下であることが好ましく、400以上7,000以下であることがより好ましく、更には1000以上3000以下であることがより好ましい
【0053】
プロペニル化合物(E)は、下記式(26-1)で表され、かつ、分子内におけるアルケニル基の20%以上がプロペニル基である樹脂を含むことが好ましい。本実施形態のフィルムにこのようなプロペニル化合物(E)を含むと、優れた耐熱性が得られる。
【化73】
(式(26-1)中、Wは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~15の炭化水素基を表す。Uは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。n1は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。)
【0054】
式(26-1)において、Wは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~15の炭化水素基を表す。Wにおける置換基としては、芳香環を含むことが好ましく、この場合、プロペニル化合物(E)は、後述の式(26-2)で表され、かつ、分子内におけるアルケニル基の20%以上がプロペニル基である樹脂であることが好ましい。
また、式(26-1)におけるWとしては、芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数10~15の芳香族炭化水素基がより好ましい。Wは、特に限定されないが、例えば、次の構造が挙げられる。これらの構造は、1種又は2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【化74】
【0055】
これらの中でも、Wは、耐熱性の点から、アルキル型ビフェニル骨格を有することが好ましい。
【0056】
式(26-1)において、分子内におけるアルケニル基の20%以上がプロペニル基とは、Uと末端のプロペニル基との合計に対して、そのうち20%以上がプロペニル基であることを称す。式(26-1)において、分子内におけるアルケニル基の40%以上がプロペニル基であることが好ましく、60%以上がプロペニル基であることがより好ましい。上限は、特に限定されないが、100%である。分子内におけるアルケニル基が前記範囲にあると、優れた硬化性が得られる。
式(26-1)において、プロペニル基以外のUは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。炭素数2~6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、ブテニル基、及びヘキセニル基が挙げられる。プロペニル基以外のUとしては、硬化性を好適に制御できる点から、水素原子が好ましい。
【0057】
式(26-1)において、n1は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。n1は、硬化性を好適に制御できる点から、その平均値が1~10の実数であることが好ましく、その平均値が1~6の実数であることがより好ましい。
【0058】
式(26-1)におけるWが置換基として芳香環を含む場合、プロペニル化合物(E)は、下記式(26-2)で表され、かつ、分子内におけるアルケニル基の20%以上がプロペニル基である樹脂であることが好ましい。
【化75】
【0059】
式(26-2)中、Yは、各々独立に、炭素数1~6の炭化水素基を表す。Xは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。n2は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。
【0060】
式(26-2)において、Yは、各々独立に、炭素数1~6の2価の炭化水素基を表す。Yは、炭素数1~6の2価の炭化水素基にある水素原子の1つが、アルケニル基を有するフェノール環に置換された構造である。Yとしては、特に限定されないが、炭素数1~6であって、直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基であることが好ましい。
直鎖状の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、及びヘキシレン基が挙げられる。分岐鎖状の炭化水素基としては、例えば、-C(CH32-、-CH(CH3)-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、及び-C(CH2CH32-のアルキルメチレン基;-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-C(CH32CH2-、-CH(CH2CH3)CH2-、及び-C(CH2CH32-CH2-のアルキルエチレン基が挙げられる。
環状の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、及びシクロヘキシレン基が挙げられる。
これらの炭化水素基は、1種又は2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【0061】
これらの中でも、Yは、後述のラジカル重合性樹脂又は化合物(B)等の他の樹脂と良好な相溶性が得られる点から、メチレン基が好ましい。
【0062】
式(26-2)において、分子内におけるアルケニル基の20%以上がプロペニル基とは、Xと末端のプロペニル基との合計に対して、そのうち20%以上がプロペニル基であることを称す。式(26-2)において、分子内におけるアルケニル基の40%以上がプロペニル基であることが好ましく、60%以上がプロペニル基であることがより好ましい。上限は、特に限定されないが、100である。分子内におけるアルケニル基が前記範囲にあると、優れた硬化性が得られる。
式(26-2)において、プロペニル基以外のXは、各々独立に、水素原子又は炭素数2~6のアルケニル基を表す。炭素数2~6のアルケニル基としては、前記のとおりである。プロペニル基以外のUとしては、硬化性を好適に制御できる点から、水素原子が好ましい。
【0063】
式(26-2)において、n2は、繰り返し数を表し、その平均値は1~20の実数である。nは、硬化性を好適に制御できる点から、その平均値が1~10の実数であることが好ましく、その平均値が1~6の実数であることがより好ましい。
【0064】
本実施形態に係る式(26-1)又は式(26-2)で表されるプロペニル化合物(E)の製造方法は、特に限定されず公知の方法で製造できる。
製造方法としては、例えば、原料してフェノール樹脂を用いた方法が挙げられる。フェノール樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリフェニルメタン型フェノール、テトラキスフェノール、ノボラック型フェノール、クレゾールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール(ビフェニル型フェノール)、及びトリフェニルメタン骨格を有するフェノール(トリフェニルメタン型フェノール)が挙げられる。
製造方法では、これらのフェノール樹脂中におけるヒドロキシル基をアリル化することでアリルエーテル体を合成し、その後、得られたアリルエーテル基をプロペニルエーテル基へ転移反応することで得られる。また、得られたアリルエーテル基をクライゼン転移反応によりアリル化フェノールを得て、その後、公知の方法に従って、アリル基をプロペニル基に転移反応することでも得られる。
【0065】
プロペニル化合物(E)としては、下記の式(26-3)で表される構造を含むプロペニル基含有樹脂、及び下記の式(26-4)を含むプロペニル基含有樹脂が好ましい。このようなプロペニル化合物(E)としては、市販品を用いてもよく、例えば、式(26-3)で表される構造を含むプロペニル基含有樹脂としては、群栄化学工業(株)製のBPN01-S(商品名、質量平均分子量:1830)が挙げられ、下記の式(26-4)を含むプロペニル基含有樹脂としては、群栄化学工業(株)製のTPMP01(商品名、質量平均分子量:2371)が挙げられる。
【化76】
(上記式(26-3)はn11が1~10の混合物である。)
【化77】
(式(26-4)はn12が1~10の混合物である。)
【0066】
本実施形態のフィルムにおいて、プロペニル化合物(E)の含有量は、特に限定されないが、フィルムの可撓性、及び接着性を両立する観点から、化合物(A)100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下で含むことが好ましい。
【0067】
〔フラックス成分(F)〕
本実施形態のフィルムには、フリップチップ実装中においてフラックス活性を発現させるため、フラックス成分(F)を更に含むことが好ましい。フラックス成分(F)は、分子中に1個以上の酸性部位を有する有機化合物であれば、特に限定されない。酸性部位としては、例えば、リン酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、及びスルホン酸基が好ましく、本実施形態のフィルムをプリアプライドアンダーフィル材として用いた半導体装置において、接合部を構成するはんだや銅等の金属のマイグレーション、及び腐食をより有効に防止する観点から、フェノール性水酸基又はカルボキシル基がより好ましい。フラックス成分(F)は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0068】
フラックス成分(F)は、特に限定されないが、接合部の酸化膜の除去を十分行うために、酸解離定数pKaが、3.8以上15.0以下であることが好ましく、ワニス及び樹脂積層体の保存安定性とフラックス活性の両立の観点から、4.0以上14.0以下であることがより好ましい。
【0069】
本実施形態のフィルムにおけるフラックス成分(F)は、特に限定されないが、フリップチップ実装中においてフラックス活性が発現する前に揮発してしまうこと、すなわち接合部の酸化膜を除去する前にフラックス成分(F)が揮発してしまうことを防ぐ観点から、分子量が200以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましい。酸としての運動性を有し、十分なフラックス活性を得るためには、分子量8000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。
【0070】
フラックス成分(F)としては、特に限定されないが、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸、ジフェノール酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン酸変性樹脂、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、及びフェノールフタリンが挙げられる。これらのフラックス成分(F)は、溶剤溶解性及び保存安定性の観に優れる点から、好ましい。
【0071】
これらの中でも、化合物(A)による失活を防ぐ観点からは、デヒドロアビエチン酸、ジフェノール酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン酸変性樹脂、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミンがより好ましい。デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン酸変性樹脂、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、及びN,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミンは、比較的反応性が低いことから、本実施形態に係るプロペニル含有樹脂(A)及び本実施形態に係るラジカル重合性樹脂又は化合物(B)との反応がほとんど起こらず、酸化膜の除去に必要となる十分なフラックス活性が維持される観点から更に好ましい。
【0072】
フラックス成分(F)としては、市販のものを使用してもよく、ロジン変性マレイン酸樹脂の例としては、以下に限定されないが、マルキードNo32(荒川化学工業(株)製)が挙げられる。
【0073】
本実施形態のフィルムにおいて、フラックス成分(F)の含有量は、特に限定されないが、絶縁信頼性、及び実装時に十分なフラックス活性を確保する観点から、化合物(A)100質量部に対して、5質量部以上70質量部以下で含むことが好ましく、10質量部以上65質量部以下で含むことがより好ましく、15質量部以上60質量部以下で含むことがさらに好ましい。
【0074】
〔無機充填材(G)〕
本実施形態のフィルムには、耐燃性の向上、熱伝導率の向上、及び熱膨張率の低減のため、無機充填材(G)を更に含むことが好ましい。無機充填材を使用することにより、フィルム等の耐燃性、及び熱伝導率を向上させ、熱膨張率を低減することができる。
【0075】
無機充填材(G)の平均粒径は、特に限定されないが、本実施形態のフィルムをプリアプライドアンダーフィル材として用いる場合、チップに配列される電極の狭ピッチ化や電極間の狭ギャップ化に対応する観点からは、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。その平均粒径の下限値は、特に限定されないが、例えば、10nmである。なお、本実施形態において、無機充填材(G)の「平均粒径」とは、無機充填材(G)のメジアン径を意味するものとする。ここでメジアン径とは、ある粒径を基準として粉体の粒度分布を2つに分けた場合に、より粒径が大きい側の粒子の体積と、より粒径が小さい側の粒子の体積とが、全粉体の夫々50%を占めるような粒径を意味する。無機充填材(G)の平均粒径(メジアン径)は、湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
【0076】
無機充填材(G)としては、特に限定されないが、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、及び中空シリカ等のシリカ;ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、及び窒化アルミニウム等のアルミニウム化合物;酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物;炭酸カルシウム、及び硫酸カルシウム等のカルシウム化合物;酸化モリブデン、及びモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物;窒化ホウ素;硫酸バリウム;天然タルク、及び焼成タルク等のタルク;マイカ;短繊維状ガラス、球状ガラス、及び微粉末ガラス(例えば、Eガラス、Tガラス、Dガラス)等のガラスが挙げられる。また、本実施形態のフィルムに導電性又は異方導電性を付与したい場合には、無機充填材(G)として、例えば、金、銀、ニッケル、銅、錫合金、及びパラジウムの金属粒子を使用してもよい。
【0077】
これらの中でも、本実施形態のフィルムの耐燃性の向上及び熱膨張率の低減の観点から、無機充填材(G)としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素がより好ましく、その中でもシリカが更に好ましい。シリカとしては、例えば、デンカ(株)製のSFP-120MC(商品名)、及びSFP-130MC(商品名)、(株)アドマテックス製の0.3μmSX-CM1(商品名)、0.3μmSX-EM1(商品名)、0.3μmSV-EM1(商品名)、SC1050-MLQ(商品名)、SC2050-MNU(商品名)、SC2050-MTX(商品名)、2.2μmSC6103-SQ(商品名)、SE2053-SQ(商品名)、Y50SZ-AM1(商品名)、YA050C-MJE(商品名)、YA050C-MJF(商品名)、及びYA050C-MJA(商品名)が挙げられる。
【0078】
これらの無機充填材(G)は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0079】
無機充填材(G)は、シランカップリング剤で表面処理されたものを用いてもよい。
シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、及びγ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系シランカップリング剤;N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノシラン系シランカップリング剤;トリメトキシフェニルシラン等のフェニルシラン系シランカップリング剤;イミダゾールシラン系シランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0080】
本実施形態のフィルムにおいて、無機充填材(G)の含有量は、特に限定されないがフィルムの難燃性の向上、及び熱膨張率の低減を両立する観点から、化合物(A)100質量部に対して、300質量部以下で含むことが好ましく、20質量部以上300質量部以下で含むことがより好ましく、50質量部以上250質量部以下で含むことがさらに好ましい。
【0081】
〔イミダゾール化合物(H)〕
本実施形態のフィルムには、実装時の硬化性を付与する観点から、イミダゾール化合物(H)を含んでいてもよい。イミダゾール化合物(H)は、イミダゾール基を有するものであれば特に限定されない。イミダゾール化合物(H)は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0082】
本実施形態において、イミダゾール化合物(H)は、下記式(h1)で表されるものを含むことが好ましい。
【化78】
(式(h1)中、Rは、メチル基、又はエチル基を示し、Rは、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、Rは、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。)
【0083】
本実施形態において、有機溶剤への溶解性、及び実装時の揮発分を低減する観点から、イミダゾール化合物(H)は、下記式(h2)で表されるイミダゾール化合物であることが好ましい。
【化79】
(式(h2)中、R17は、メチル基、又はエチル基を示し、R18は、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、R19は、水素原子、又はメチル基を示す。)
【0084】
本実施形態において、実装時の分子の運動性を確保する観点から、イミダゾール化合物(H)は、下記式(h3)で表されるイミダゾール化合物であることが好ましい。
【化80】
(式(h3)中、R20は、メチル基、又はエチル基を示し、R21は、水素原子、メチル基、エチル基、又はベンジル基を示し、R22は、水素原子、又はメチル基を示す。)
【0085】
本実施形態において、優れたフラックス活性、及び有機溶剤への溶解性を両立する観点から、イミダゾール化合物(H)は、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、及び2-エチル-4-メチルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0086】
本実施形態のフィルムにおいて、イミダゾール化合物(H)の含有量は、特に限定されないが、ワニスの保存安定性、及び実装時の硬化性を両立する観点から、化合物(A)100質量部に対して、10質量部以下で含むことが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下で含むことがより好ましく、0.5質量部以上8質量部以下で含むことがさらに好ましい。
【0087】
〔その他の成分〕
本実施形態のフィルムでは、化合物(A)、有機過酸化物(B)、ハイドロパーオキサイド(C)、ベンゾオキサジン化合物(D)、プロペニル化合物(E)、フラックス成分(F)、無機充填材(G)及びイミダゾール化合物(H)の他に、その他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0088】
その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、可撓性付与成分が挙げられる。可撓性付与成分は、フィルムを含む層に対して可撓性を付与できるような成分であれば、特に限定されないが、例えば、本実施形態に係る、化合物(A)、ベンゾオキサジン化合物(D)プロペニル化合物(E)及びフラックス成分(F)以外の、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、(メタ)アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリウレタン、ポリプロピレン、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリルポリマー、及びシリコーン樹脂等の熱可塑性の高分子化合物が挙げられる。これらの可撓性付与成分は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0089】
本実施形態のフィルムには、その他の成分として、樹脂と無機充填材との界面の接着性の向上、及び吸湿耐熱性の向上を目的として、シランカップリング剤を含むこともできる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、及びγ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系シランカップリング剤;N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノシラン系シランカップリング剤;トリメトキシフェニルシラン等のフェニルシラン系シランカップリング剤;イミダゾールシラン系シランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
シランカップリング剤を使用する場合、その含有量は、特に限定されないが、吸湿耐熱性の向上、及びフリップチップ実装時の揮発量の低減観点から、化合物(A)100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0090】
本実施形態のフィルムには、その他の成分として、積層体の製造性向上及び充填材の分散性等の目的として、湿潤分散剤を含むこともできる。湿潤分散剤としては、一般に塗料等に使用されている湿潤分散剤であれば、特に限定されない。例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk(登録商標)-110(商品名)、同-111(商品名)、同-180(商品名)、同-161(商品名)、BYK-W996(商品名)、同-W9010(商品名)、及び同-W903(商品名)が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
湿潤分散剤を使用する場合、その含有量は、特に限定されないが、積層体の製造性向上の観点からは、無機充填材(G)100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下とすることが好ましく、0.5質量部以上3質量部以下とすることがより好ましい。なお、2種以上の湿潤分散剤を併用する場合には、これらの合計量が前記比率を満たすことが好ましい。
【0091】
その他の成分として、本実施形態のフィルムには、所期の特性が損なわれない範囲において、種々の目的により、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、光沢剤、難燃剤、及びイオントラップ剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
本実施形態のフィルムにおいて、その他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、通常、化合物(A)100質量部に対して、それぞれ0.01~10質量部である。
【0092】
本実施形態のフィルムは、プリアプライドアンダーフィル材用として好適であることから、半硬化状態(Bステージ)であることが好ましい。フィルムが半硬化状態であることにより、優れた、低ボイド性及びチップ接着性を得ることができる。本実施形態において、半硬化状態(Bステージ)とは、フィルム中に含まれる各成分が、積極的に反応(硬化)を始めてはいないが、フィルムが乾燥状態、すなわち、粘着性がない程度まで、加熱して溶媒を揮発させている状態を称し、加熱しなくても硬化せずに溶媒が揮発したのみの状態も含まれる。本実施形態において、半硬化状態(Bステージ)の最低溶融粘度は、通常、50,000Pa・s以下である。なお、最低溶融粘度は後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0093】
本実施形態のフィルムの厚さは、特に限定されないが、実装時の接続端子間のアンダーフィル充填性を確保する観点から、10μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0094】
〔フィルムの製造方法〕
本実施形態のフィルムは、前述した組成を有するものが得られる限り、製造方法は特に限定されない。本実施形態のフィルムの製造方法としては、例えば、化合物(A)と、有機過酸化物(B)と、ハイドロパーオキサイド(C)とを、必要に応じて、ベンゾオキサジン化合物(D)と、プロペニル化合物(E)と、フラックス成分(F)と、無機充填材(G)と、イミダゾール化合物(H)と、その他の成分とを、適宜混合し、その後、これらの成分を有機溶剤に溶解又は分散させたワニスの形態とし、このワニスを支持体上に塗布、及び乾燥することで得ることができる。具体的な製造方法については、後述の積層体の製造方法、及び実施例を参考にできる。本実施形態のフィルムは、乾燥後、支持体より剥離して用いてもよく、支持体と共に用いてもよい。
【0095】
有機溶剤は、前記の成分を各々好適に溶解又は分散させることができ、かつ、本実施形態のフィルムの所期の効果を損なわないものであれば特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、及びプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と略す場合がある。)、及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミド等のアミド類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0096】
支持体は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、及びトリアセチルアセテートフィルム等が挙げられる。それらの中でも、PETフィルムが好ましい。
【0097】
[積層体]
本実施形態の積層体は、支持基材と、支持基材上に積層された本実施形態のフィルムを含有する層と、を備える。このような積層体は、本実施形態のフィルムが、支持基材に添着されて得られる。支持基材としては、特に限定されないが、高分子フィルムを使用することができる。高分子フィルムの材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン-酸化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリイミド、並びにポリアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含有するフィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル、ポリイミド、及びポリアミドが好ましく、ポリエステルの一種である、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0098】
支持基材の厚さは、特に限定されないが、積層体の製造性、例えば、支持基材にフィルムを塗布する場合の塗布厚の安定性と、積層体の搬送性の点から、10~100μmであることが好ましい。支持基板の厚さの下限としては、積層体を製造する際の歩留り確保の点から、12μm以上であることがより好ましくは、25μm以上であることが更に好ましく、30μm以上であることが更により好ましい。支持基板の厚さの上限としては、支持基材が最終的に半導体装置の構成部材として存在することなく、工程の途中で剥離される点と、積層体の製造コストの点から、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。
【0099】
支持基材上に、本実施形態のフィルムを含む層(以下、単に「フィルム層」ともいう。)を形成して本実施形態の積層体を製造する方法としては、特に限定されない。そのような製造方法として、例えば、本実施形態のフィルムを有機溶剤に溶解又は分散させたワニスを、支持基材の表面に塗布し、加熱、及び/又は減圧下で乾燥し、溶媒を除去して本実施形態のフィルムを固化させ、フィルム層を形成する手法が挙げられる。乾燥条件は、特に限定されないが、フィルム層に対する有機溶剤の含有比率が、フィルム層の総量(100質量部)に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下となるように乾燥させる。かかる乾燥を達成する条件は、ワニス中の有機溶媒の種類と配合量によって適宜調整することができる。例えば、化合物(A)100質量部に対して、10~120質量部のメチルエチルケトンを含むワニスの場合、1気圧下で90~160℃の加熱条件下で3~10分程度の乾燥が目安となる。なお、上記フィルム層は、絶縁層として機能し得るものである。
【0100】
[フィルム層付き半導体ウェハ、及びフィルム層付き半導体搭載用基板]
本実施形態のフィルム層付き半導体ウェハは、半導体ウェハと、その半導体ウェハに積層された本実施形態の積層体とを備え、フィルムを含む層が、半導体ウェハに積層される。また、本実施形態のフィルム層付き半導体搭載用基板は、半導体搭載用基板と、その半導体搭載用基板に積層された本実施形態の積層体とを備え、フィルムを含む層が、半導体搭載用基板に積層される。
【0101】
本実施形態のフィルム層付き半導体ウェハを作製する方法は、特に限定されないが、例えば、半導体ウェハの電極が形成された面、すなわち基板との接合が行われる面に、本実施形態の積層体のフィルム層が対向するよう貼り合わせることで得られる。また、本実施形態のフィルム層付き半導体搭載用基板を作製する方法は、特に限定されないが、例えば、半導体搭載用基板のチップ搭載側の面に、本実施形態の積層体のフィルム層が対向するよう貼り合わせることで得られる。
【0102】
本実施形態の積層体を半導体ウェハ又は半導体搭載用基板に貼り合わせる方法としては、特に限定されないが、真空加圧式ラミネータを好適に使用することができる。この場合、本実施形態の積層体に対してゴム等の弾性体を介して加圧し、貼り合わせる方法が好ましい。ラミネート条件としては、当業界で一般に使用されている条件であれば、特に限定されないが、例えば、50~140℃の温度、1~11kgf/cm2の範囲の接触圧力、並びに20hPa以下の雰囲気減圧下で行われる。ラミネート工程の後に、金属板による熱プレスにより、貼り合わされた積層体の平滑化を行ってもよい。前記ラミネート工程、及び平滑化工程は、市販されている真空加圧式ラミネータによって連続的に行うことができる。半導体ウェハ又は半導体搭載用基板に貼り付けられた積層体は、いずれの場合もチップのフリップチップ実装前までに支持基材の除去が行われる。
【0103】
[半導体装置]
本実施形態の半導体装置は、本実施形態のフィルム層付き半導体ウェハ、及び/又は本実施形態のフィルム層付き半導体搭載用基板を備える。本実施形態の半導体装置を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態のフィルム層付き半導体ウェハを研削等の手段で薄化、及びダイシングソー等による個片化を行い、フィルム層付きチップとし、これを半導体搭載用基板に搭載する手法が挙げられる。また、本実施形態のフィルム層付き半導体搭載用基板に、チップを搭載してもよい。フィルム層付きチップを半導体搭載用基板に搭載する方法、及び半導体チップをフィルム層付き半導体搭載用基板に搭載する方法では、熱圧着工法に対応したフリップチップボンダを好適に使用することができる。また、本実施形態ではチップを半導体搭載用基板にフリップチップ実装する場合を便宜的に説明しているが、チップをフリップチップ実装しつつ、本実施形態のフィルムを適用する対象は、半導体搭載用基板以外とすることも可能である。例えば、本実施形態のフィルムは、半導体ウェハ上へチップを搭載する際の半導体ウェハとチップとの接合部や、TSV(Through Silicon Via)等を経由してチップ間接続を行うチップ積層体の、各チップ間の接合部に使用することも可能であり、いずれの場合も本発明による優位性を得ることができる。
【実施例
【0104】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0105】
[フィルム及び積層体の作製]
(実施例1)
化合物(A)として、次の4種を併用した。すなわち、前記式(6)で表され、nが14(平均値)であるマレイミド化合物(BMI-1000P(商品名)、ケイ・アイ化成(株)製)58.44質量部、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70(商品名)、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)10.02質量部(不揮発分換算で5.01質量部)、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン(BMI-80(商品名)、ケイ・アイ化成(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)20.04質量部(不揮発分換算で10.02質量部)、及び前記式(8)におけるR10がすべて水素原子であるマレイミド化合物を含有するMEK溶液(MIR-3000-70MT(商品名)、日本化薬(株)製、不揮発分70質量%)37.90質量部(不揮発分換算で26.53質量部)を準備した。
また、ベンゾオキサジン化合物(D)として、P-d型ベンゾオキサジン(四国化成工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)83.48質量部(不揮発分換算で41.74質量部)、プロペニル化合物(E)として、下記の式(26-3)で表される構造を含むプロペニル基含有樹脂のMEK溶液(不揮発分50質量%)50.46質量部(不揮発分換算で25.23質量部)、フラックス成分(F)として、ロジン変性マレイン酸樹脂(マルキードNo32(商品名)、荒川化学工業(株)製)のMEK溶液(不揮発分50質量%)100.18質量部(不揮発分換算で50.09質量部)、無機充填材(G)として、スラリーシリカ(YA050C-MJE(商品名)、固形分50%、平均粒子径:50nm、(株)アドマテックス製)417.44質量部(不揮発分換算で208.72質量部)、ハイドロパーオキサイド(C)として、下記式(11-1)で表されるハイドロパーオキサイド(パーメンタH(商品名)、日油(株)製、不揮発分50%)3.74質量部(不揮発分換算で1.87質量部)、有機過酸化物(B)として、下記式(1-1)で表される有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド、キシダ化学(株)製)1.87質量部、及び、イミダゾール化合物(H)として、下記式(h4)で表されるイミダゾール化合物(2E4MZ(商品名)、四国化成工業(株)製)5.01質量部を、上記4種の化合物(A)と混合し、高速攪拌装置を用いて40分間撹拌して、ワニスを得た。
得られたワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1-38(商品名)、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、フィルム層(絶縁層)の厚さが30μmである積層体を得た。なお、フィルムの質量より、フィルム中の化合物(A)の含有量は23.1質量%と算出された。
【化81】
(上記式(26-3)はn11が1~10の混合物である。)
【化82】
【化83】
【化84】
【0106】
(実施例2)
ハイドロパーオキサイド(C)としてのパーメンタHの配合量を0.47質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0107】
(実施例3)
ハイドロパーオキサイド(C)として、パーメンタHの代わりに、下記式(10-1)で表されるハイドロパーオキサイド(パークミルP(商品名)、日油(株)製)1.87質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【化85】
【0108】
(実施例4)
ハイドロパーオキサイド(C)としてのパークミルPの配合量を0.47質量部に変更した以外は、実施例3と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0109】
(実施例5)
ハイドロパーオキサイド(C)として、パーメンタHの代わりに、下記式(10-2)で表されるハイドロパーオキサイド(パークミルH-80(商品名)、日油(株)製)1.87質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【化86】
【0110】
(実施例6)
ハイドロパーオキサイド(C)としてのパークミルH-80の配合量を0.47質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0111】
(実施例7)
有機過酸化物(B)として、ジクミルパーオキサイドの代わりに、下記式(2-1)で表される有機過酸化物(パーブチルP(商品名)、日油(株)製)1.17質量部を使用し、ハイドロパーオキサイド(C)としてのパーメンタHの配合量を1.17質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【化87】
【0112】
(実施例8)
有機過酸化物(B)としてのパーブチルPの配合量を2.50質量部に変更し、ハイドロパーオキサイド(C)としてのパーメンタHの配合量を0.87質量部に変更した以外は、実施例7と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0113】
(実施例9)
有機過酸化物(B)として、ジクミルパーオキサイドの代わりに、下記式(2-2)で表される有機過酸化物(パーヘキサV(商品名)、日油(株)製)1.87質量部を使用し、ハイドロパーオキサイド(C)としてのパーメンタHの配合量を0.62質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【化88】
【0114】
(実施例10)
有機過酸化物(B)として、ジクミルパーオキサイドの代わりに、パーヘキサV2.97質量部を使用し、ハイドロパーオキサイド(C)として、パーメンタHの代わりに、パークミルH-80について1.10質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0115】
(実施例11)
イミダゾール化合物(H)としての2E4MZを使用せず、有機過酸化物(B)としてのジクミルパーオキサイドの配合量を5.56質量部に変更し、ハイドロパーオキサイド(C)としてのパーメンタHの配合量を3.74質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0116】
(実施例12)
ハイドロパーオキサイド(C)として、パーメンタHの代わりに、下記式(12-1)で表されるハイドロパーオキサイド(パーオクタH(商品名)、日油(株)製)1.87質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【化89】
【0117】
(実施例13)
ハイドロパーオキサイド(C)として、パーメンタHの代わりに、パーオクタH3.74質量部を使用した以外は、実施例11と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0118】
(実施例14)
ハイドロパーオキサイド(C)として、パーメンタHの代わりに、下記式(12-2)で表されるハイドロパーオキサイド(ルペロックスTAH(商品名)、アルケマ吉富(株)製)1.87質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【化90】
【0119】
(実施例15)
ハイドロパーオキサイド(C)として、パーメンタHの代わりに、ルペロックスTAH3.74質量部を使用した以外は、実施例11と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0120】
(実施例16)
化合物(A)として用いた前記4種のうち、MIR-3000-70MTの代わりに、前記式(5)で表され、nが1~3であるマレイミド化合物(BMI-2300(商品名)、大和化成工業(株)社製)10.32質量部を用い、BMI-70の配合量を15.62質量部(不揮発分換算)に変更し、BMI-80の配合量を15.62質量部(不揮発分換算)に変更した以外は、実施例11と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0121】
(比較例1)
ハイドロパーオキサイド(C)としてのパーメンタHを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0122】
(比較例2)
有機過酸化物(B)としてのジクミルパーオキサイドの配合量を10.85質量部に変更した以外は、比較例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0123】
(比較例3)
有機過酸化物(B)としてのジクミルパーオキサイドを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0124】
(比較例4)
ハイドロパーオキサイド(C)としてのパーメンタHの配合量を10.85質量部に変更した以外は、比較例3と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0125】
(比較例5)
有機過酸化物(B)としてのジクミルパーオキサイドを使用しなかった以外は、実施例3と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0126】
(比較例6)
ハイドロパーオキサイド(C)としてのパークミルPの配合量を10.85質量部に変更した以外は、比較例5と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0127】
(比較例7)
有機過酸化物(B)としてのジクミルパーオキサイドを使用しなかった以外は、実施例5と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0128】
(比較例8)
ハイドロパーオキサイド(C)としてのパークミルH-80の配合量を10.85質量部に変更した以外は、比較例7と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0129】
(比較例9)
有機過酸化物(B)としてのジクミルパーオキサイドの代わりに、下記式(1’)で表される有機過酸化物(パーブチルD(商品名)、日油(株)製)1.87質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【化91】
【0130】
(比較例10)
イミダゾール化合物(H)としての2E4MZを使用せず、ハイドロパーオキサイド(C)としてのパーメンタHの配合量を3.74質量部に変更し、有機過酸化物(B)としてのパーブチルDの配合量を5.56質量部に変更した以外は、比較例9と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0131】
(比較例11)
ハイドロパーオキサイド(C)として、パーメンタHの代わりに、下記式(12-3)で表されるハイドロパーオキサイド(ルペロックスTBH(商品名)、アルケマ吉富(株)製)1.87質量部を使用した以外は、比較例3と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【化92】
【0132】
(比較例12)
ハイドロパーオキサイド(C)としてのルペロックスTBHの配合量を3.74質量部に変更した以外は、比較例11と同様にして、ワニスを調製し、フィルム層の厚さが30μmである積層体を得た。
【0133】
[積層体の評価]
(1)ワニス保存安定性
実施例1~15及び比較例1~11で得られたワニスの粘度(a)を、25℃でB型粘度計(東京計器(株)製)を用いて測定し、密閉容器内に25℃で1週間放置した後の粘度(b)を、B型粘度計を用いて再び測定した。下記式にて1週間経過後の粘度変化率を算出して、粘度変化率が10%未満の場合はAA、10%以上20%未満の場合はA、20%以上40%未満の場合はB、40%以上の場合はC、ワニス作製時にワニスのゲル化が確認された場合はDとして記載した。結果を表1~2に示す。
粘度変化率={|粘度(b)-粘度(a)|/粘度(a)}×100
【0134】
(2)屈曲性
実施例1~15及び比較例1~11で得られた積層体を5cm×10cmの短冊状に断裁した後、室温において支持基材のポリエチレンテレフタレートフィルムが内側になるように所定の外径を有する金属管に巻き付け、5秒間保持した後巻き戻した。この作業を10回繰り返した後、樹脂組成物層のクラックの有無を目視で確認し、可撓性の評価を行った。樹脂組成物層のクラックが確認されなかった最小の金属管の外径が、10mm以下の場合はAA、10mm以上20mm以下の場合はA、20mm以上60mm以下の場合はB,60mm以上の場合はCとして記載した。結果を表1~2に示す。
【0135】
(3)フラックス活性
実施例1~15及び比較例1~11で得られたフィルム層を粉砕して得られた樹脂粉を、厚さ12μmの電解銅箔(3EC-III(商品名)、三井金属鉱業(株)製)の光沢面に散布し、直径0.5mmのはんだボール(エコソルダー(登録商標)ボールM705(商品名)、Sn-3.0Ag-0.5Cu合金、千住金属工業(株)製)を置いた。これを、235℃に保たれたホットプレートの上で1分間加熱し、銅箔上ではんだを溶融させた後、室温で冷却した。はんだボールの銅箔への濡れ広がりをはんだボールの接触角を測定することにより、フラックス活性を評価した。はんだボールの接触角は、デジタルマイクロスコープ(KH-7700(商品名)、(株)ハイロックス製)を用いて、銅箔上に溶融して濡れ広がったはんだボールの半径(c)及びはんだボールの高さ(d)を求め、下記式より接触角を算出した。
はんだボールの接触角=2arctan{(d)/(c)}
はんだボールの接触角が1.60ラジアン未満の場合はAA、1.60ラジアン以上2.00ラジアン未満の場合はA、2.00ラジアン以上2.20ラジアン未満の場合はB、2.20ラジアン以上の場合はCとして記載した。結果を表1~2に示す。
【0136】
(4)硬化性
実施例1~15及び比較例1~11で得られたフィルム層を粉砕して得られた樹脂粉を、示差走査熱量測定装置(Q100(商品名)、TAインスツルメンツ(株)製)を用いて、昇温速度10℃/minの条件で30℃~350℃の範囲における発熱量を測定した。145℃の時の発熱量(W/g)が、0.05W/g以上の場合はAA、0.04W/g以上0.05W/g未満の場合はA、0.03W/g以上0.04W/g未満の場合はB、0.03W/g未満の場合はCとして記載した。結果を表1~2に示す。
【0137】
(5)ボイド
実施例1~15及び比較例1~11で得られた積層体を8mm×8mmの正方形に切断し評価用基板上にラミネートした後、フリップチップボンダ(LFB-2301(商品名)、(株)新川製)を用いて、ステージ温度70℃、ボンドヘッド温度260℃、荷重50N、時間6秒の条件で、銅とはんだで構成されるCuピラーを電極に持つ半導体チップを熱圧着し実装を行った。実装後のサンプルを超音波探傷映像化装置(μ-SDS(商品名)、日本クラウトクレーマー(株)製)を用いて、半導体チップ実装部の範囲におけるフィルム層のボイドの有無を確認した。ボイドの割合が5%未満の場合はAA、10%未満5%以上の場合はA、30%未満10%以上の場合はB、30%以上の場合はCとして記載した。結果を表1~2に示す。
【0138】
(6)最低溶融粘度
実施例1~15及び比較例1~11で得られたフィルム層を粉砕して得られた樹脂粉を1g測りとり、錠剤成形器(SSP-10A(商品名)、(株)島津製作所製)を用いて、圧力20kN、時間5分の条件で、直径25mm、厚さ1.5mmのタブレット状に成形し、レオメータ(ARES-G2(商品名)、TAインスツルメンツ(株)製)を用いて、昇温速度10℃/minの条件で40℃~260℃の範囲における粘度を測定した。最低溶融粘度が10000Pa・s以上50000Pa・s未満の場合はAA、最低溶融粘度が50000Pa・s以上70000Pa・s未満、又は、1000Pa・s以上10000Pa・s未満の場合はA、最低溶融粘度が70000Pa・s以上100000Pa・s未満、又は、100Pa・s以上1000Pa・s未満の場合はB、最低溶融粘度が100000Pa・s以上、又は、100Pa・s未満の場合はCとして記載した。結果を表1~2に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
本出願は、2019年6月28日出願の日本国特許出願(特願2019-122335号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本実施形態のフィルムは、保存安定性、可撓性、フラックス活性、硬化性、低ボイド性、溶融粘度等、各種の物性バランスに優れることから、プリアプライドアンダーフィル材料として好適である。また、本実施形態のフィルムは、フラックス活性に優れることから、チップと基板との接合、チップと半導体ウェハとの接合、チップとチップとの接合によって得られる積層体において、長期的な使用にも耐え得る高い信頼性を付与することができる。