(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】溶融塩化学を用いた無機ナノ構造の合成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/08 20060101AFI20240708BHJP
H01L 31/0352 20060101ALI20240708BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240708BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240708BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20240708BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240708BHJP
C09K 11/70 20060101ALI20240708BHJP
C09K 11/54 20060101ALI20240708BHJP
C01B 19/04 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C01B25/08 A
H01L31/04 342A
G02B5/20 ZNM
C09K11/08 G
B82Y20/00
B82Y40/00
C09K11/70
C09K11/54
C01B19/04 C
(21)【出願番号】P 2021544693
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 US2020014432
(87)【国際公開番号】W WO2020163075
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-12
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】カーリー,ジョン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】トゥ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ウェンツァオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チュンミン
(72)【発明者】
【氏名】イッペン,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ホッツ,チャールズ
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115920(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0204326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/00,19/00
G02B 5/20
C09K 11/00
B82Y 20/00
B82Y 40/00
H01L 31/04,33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造であって、
In
(1-x)Ga
xP(ここで0<x<1である)を含むコアと、
前記コアの上に配置された少なくとも1つのシェルであって、ZnSeを含む少なくとも1つのシェルと、
を含み、前記ナノ構造
の450nmにおける光学濃度(OD
450
)が0.3
~1.0である、ナノ構造。
【請求項2】
前記ナノ構造が、ZnSeを含む第1のシェルと、第2のシェルとを含む、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項3】
前記第2のシェルがZnSを含む、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項4】
前記コアの直径
が3nm
~10nmである、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項5】
前記コアの直径
が5nmである、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項6】
前記第1のシェルの厚さ
が0.5nm
~4nmである、請求項2に記載のナノ構造。
【請求項7】
前記第2のシェルの厚さ
が0.5nm
~3nmである、請求項2に記載のナノ構造。
【請求項8】
前記ナノ構造のOD
450
が0.5
~0.7である、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項9】
前記ナノ構造の最大吸光度の波長
が430nm
~490nmである、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項10】
前記ナノ構造が量子ドットである、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項11】
前記ナノ構造がカドミウムフリーである、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のナノ構造を含むデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが表示装置であり、該表示装置が、
バックプレーンと、
前記バックプレーン上に配置されるディスプレイパネルと、
前記ナノ構造を含む量子ドット層であって、前記ディスプレイパネル上に配置される量子ドット層と、
を含む量子ドット色変換器を含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記量子ドット層がパターン化された量子ドット層を含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記バックプレーンが、青色LED、LCD、OLED、又はマイクロLEDを含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記表示装置が青色光フィルターを含まない、請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
前記青色光フィルターが
、510nm未満の波長の光に対して15%未満の透過率を有する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
In
(1-x)Ga
xPナノ構造(ここで0<x<1である)の製造方法であって、
(a)少なくとも1つの硫黄含有リガンドを含むInPナノ構造と、ハロゲン化物塩混合物と
を250℃~450℃間の温度で混合して
溶融塩共融混合物を形成することと、
(b)(a)で得られた前記
溶融塩共融混合物をガリウム源
と290℃~380℃間の温度で混合して、前記In
(1-x)Ga
xPナノ構造を得ることと、
を含む、製造方法。
【請求項19】
(a)に
おいて、前記少なくとも1つの硫黄含有リガンドを含むInPナノ構造と前記ハロゲン化物塩混合物
を加熱する前に
前記少なくとも1つの硫黄含有リガンドを含むInPナノ構造と前記ハロゲン化物塩混合物とを粉砕することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
In
(1-x)Ga
xP/ZnSe/ZnSコア/シェル/シェルナノ構造の製造方法であって、
(a)In
(1-x)Ga
xPナノ構造を含むコアを提供することと、
(b)(a)における前記In
(1-x)Ga
xPナノ構造を第1の亜鉛源及びセレン源と混合することと、
(c)(b)における混合物を第2の亜鉛源及び硫黄源と混合して、前記In
(1-x)Ga
xP/ZnSe/ZnSコア/シェル/シェルナノ構造を得ることと、を含み、
0<x<1であり、前記ナノ構造
の450nmにおける光学濃度(OD
450
)が0.3
~1.0である、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、ナノテクノロジーの分野に関する。特に、本発明は、強い青色吸光度を有する高発光性ナノ構造、特にIn(1-x)GaxPコアとZnSe及び/又はZnSシェル層とを含むコア/シェルナノ構造(ここで0<x<1)に関する。本発明は、そのようなナノ構造の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 半導体ナノ構造は、種々の電子デバイス及び光学デバイス中に組み込むことができる。このようなナノ構造の電気的性質及び光学的性質は、例えば、それらの組成、形状、及びサイズによって変化する。例えば、半導体ナノ構造のサイズ調整可能な性質は、発光ダイオード(LED)、レーザー、及び生物医学的標識などの用途で関心が高い。高発光性ナノ構造は、ディスプレイ用途に特に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003] 量子ドットカラーフィルター又は量子ドット色変換器(QDCC)は、ディスプレイアーキテクチャにおける新しい要素である。QDCC中の量子ドットの性能は、フォトルミネッセンス発光極大、半値全幅(FWHM)、透過した青色光の量、及び外部量子効率によって測定することができる。これらの特性の中で、量子ドット層を透過する青色光の量が特に重要である。青色光透過率量は、色域、膜のダウンコンバージョン効率、及びディスプレイ要素の厚さに直接影響を与える。さらに、緑色又は赤色のピクセルを通過する青色光の漏れが多く存在する場合、製造業者は、ディスプレイ中にさらなるフィルターの導入が強いられ、それによってコストが増加し、操作効率が低下する。結果として、量子ドット膜自体が強い青色光吸収を示すことが重要である。改善された青色吸光度及び低い青色光透過率を有するナノ構造組成物の製造が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004] 本発明は、コアであって、In(1-x)GaxPを含み、0<x<1であるコアと;コアの上に配置された少なくとも1つのシェルであって、ZnSeを含む少なくとも1つのシェルとを含むナノ構造であって;ナノ構造の全質量当たりの450nmにおける光学濃度(OD450/全質量)が約0.3~約1.0である、ナノ構造を提供する。
【0005】
[0005] 幾つかの実施形態では、コアは、InN、InSb、InAs、AlN、AlP、AlSb、AlAs、GaN、GaP、GaSb、GaAs、又はそれらの組み合わせを含むIII-V族半導体材料をさらに含む。
【0006】
[0006] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、CdS、CdSe、CdO、CdTe、ZnS、ZnO、ZnTe、MgTe、GaAs、GaSb、GaN、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InSb、InN、AlAs、AlN、AlSb、AlS、PbS、PbO、PbSe、PbTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CuCl、Ge、Si、又はそれらの組み合わせをさらに含む。
【0007】
[0007] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、コアの上に配置された第1のシェルと、第1のシェルの上に配置された第2のシェルとを含む2つのシェルを含む。
【0008】
[0008] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、ZnSeを含む第1のシェルと第2のシェルとを含む。
【0009】
[0009] 幾つかの実施形態では、第2のシェルは、ZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、MgS、MgO、MgSe、MgTe、又はそれらの組み合わせを含むII-VI族半導体材料を含む。幾つかの実施形態では、第2のシェルは、ZnSe、ZnS、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、第2のシェルはZnSを含む。
【0010】
[0010] 幾つかの実施形態では、コアの直径は約3nm~約10nmである。幾つかの実施形態では、コアの直径は約5nmである。
【0011】
[0011] 幾つかの実施形態では、第1のシェルの厚さは約0.5nm~約4nmである。幾つかの実施形態では、第1のシェルの厚さは約1.5nmである。
【0012】
[0012] 幾つかの実施形態では、第2のシェルの厚さは約0.5nm~約3nmである。幾つかの実施形態では、第2のシェル厚さは約0.5nmである。
【0013】
[0013] 幾つかの実施形態では、ナノ構造のOD450/全質量は約0.5~約0.7である。幾つかの実施形態では、ナノ構造のOD450/全質量は約0.6である。
【0014】
[0014] 幾つかの実施形態では、ナノ構造の最大吸光度の波長は約430nm~約490nmである。幾つかの実施形態では、ナノ構造の最大吸光度の波長は約450nmである。
【0015】
[0015] 幾つかの実施形態では、ナノ構造の発光波長は約500nm~約540nmである。幾つかの実施形態では、ナノ構造の発光波長は約520nmである。
【0016】
[0016] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。
【0017】
[0017] 幾つかの実施形態では、ナノ構造はカドミウムフリーである。
【0018】
[0018] 本発明は、前述の実施形態のいずれか1つによるナノ構造を含むデバイスも提供する。
【0019】
[0019] 幾つかの実施形態では、デバイスは表示装置である。
【0020】
[0020] 幾つかの実施形態では、表示装置は、バックプレーンと;バックプレーン上に配置されたディスプレイパネルと;ナノ構造を含む量子ドット層であって、ディスプレイパネル上に配置される量子ドット層とを含む、量子ドット色変換器を含む。
【0021】
[0021] 幾つかの実施形態では、量子ドット層は、パターン化された量子ドット層を含む。
【0022】
[0022] 幾つかの実施形態では、バックプレーンは、青色LED、LCD、OLED、又はマイクロLEDを含む。
【0023】
[0023] 幾つかの実施形態では、表示装置は、青色光フィルターを含まない。幾つかの実施形態では、青色光フィルターは、約510nm未満の波長の光に対して15%未満の透過率を有する。
【0024】
[0024] 幾つかの実施形態では、量子ドット層は約1μm~約25μmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、量子ドット層は約5μm~約25μmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、量子ドット層は約10μm~約12μmの厚さを有する。
【0025】
[0025] 本発明は、In(1-x)GaxPナノ構造(ここで0<x<1である)の製造方法であって:(a)少なくとも1つの硫黄含有リガンドを含むInPナノ構造と、ハロゲン化物塩混合物とを約250℃~450℃間の温度で混合して溶融混合物を形成することと;(b)(a)で得られた溶融混合物をガリウム源と約290℃~380℃間の温度で混合して、In(1-x)GaxPナノ構造を得ることとを含む製造方法も提供する。
【0026】
[0026] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つの硫黄含有リガンドは、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの硫黄含有リガンドは硫化カリウムを含む。
【0027】
[0027] 幾つかの実施形態では、硫黄含有リガンドを含むInPナノ構造は、(c)InPナノ構造を溶液中の少なくとも1つの硫黄含有リガンドと混合して、表面に結合した硫黄含有リガンドを有するInPナノ構造を得ることと、(d)(c)で得られた表面に結合した硫黄含有リガンドを有するInPナノ構造を少なくとも1つの溶媒と混合することとを含む。
【0028】
[0028] 幾つかの実施形態では、(d)における少なくとも1つの溶媒はホルムアミドを含む。
【0029】
[0029] 幾つかの実施形態では、(b)における固体とハロゲン化物塩混合物との混合が、加熱する前に(b)における固体とハロゲン化物塩混合物とを粉砕することをさらに含む。
【0030】
[0030] 幾つかの実施形態では、(a)におけるハロゲン化物塩は、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化セシウム、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、(a)におけるハロゲン化物塩は、臭化リチウム、臭化カリウム、及び臭化セシウムを含む。
【0031】
[0031] 幾つかの実施形態では、(b)におけるガリウム源は、フッ化ガリウム、塩化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、(b)におけるガリウム源は、酸化ガリウム、硫化ガリウム、セレン化ガリウム、テルル化ガリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、(b)におけるガリウム源は、メチルガリウム、エチルガリウム、プロピルガリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0032】
[0032] 幾つかの実施形態では、(a)における溶融混合物とガリウム源との混合は、約290℃~330℃の温度で行われる。
【0033】
[0033] 幾つかの実施形態では、(a)における溶融混合物とガリウム源との混合は約20分~約180分間行われる。
【0034】
[0034] 幾つかの実施形態では、ガリウム源中のガリウム原子の、InPナノ構造中のインジウム原子に対するモル比は、約0.3~約5である。幾つかの実施形態では、ガリウム源中のガリウム原子の、InPナノ構造中のインジウム原子に対するモル比は、約0.5~約2である。幾つかの実施形態では、ガリウム源中のガリウム原子の、InPナノ構造中のインジウム原子に対するモル比は約1である。
【0035】
[0035] 幾つかの実施形態では、上記方法は、(b)における混合物とスルフィドリガンドを含む少なくとも1つの溶媒とを混合することをさらに含み、スルフィドリガンドは、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、又はそれらの組み合わせを含む。
【0036】
[0036] 幾つかの実施形態では、上記方法は、(b)における混合物とスルフィドリガンドを含む少なくとも1つの溶媒とを混合することをさらに含み、スルフィドリガンドは硫化カリウムを含む。
【0037】
[0037] 本発明は、In(1-x)GaxP/ZnSe/ZnSコア/シェル/シェルナノ構造の製造方法であって:(a)In(1-x)GaxPナノ構造を含むコアを提供することと;(b)(a)におけるIn(1-x)GaxPナノ構造を第1の亜鉛源及びセレン源と混合することと;(c)(b)における混合物を第2の亜鉛源及び硫黄源と混合してIn(1-x)GaxP/ZnSe/ZnSコア/シェル/シェルナノ構造を得ることとを含む製造方法も提供する。
【0038】
[0038] 幾つかの実施形態では、(b)における第1の亜鉛源は、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、炭酸亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、過塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、(b)における第1の亜鉛源はオレイン酸亜鉛である。
【0039】
[0039] 幾つかの実施形態では、(b)におけるセレン源は、トリオクチルホスフィンセレニド、トリ(n-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(sec-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(tert-ブチル)ホスフィンセレニド、トリメチルホスフィンセレニド、トリフェニルホスフィンセレニド、ジフェニルホスフィンセレニド、フェニルホスフィンセレニド、シクロヘキシルホスフィンセレニド、オクタセレノール(octaselenol)、ドデカセレノール(dodecaselenol)、セレノフェノール、元素セレン、セレン化水素、ビス(トリメチルシリル)セレニド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、(b)におけるセレン源はトリオクチルホスフィンセレニドである。
【0040】
[0040] 幾つかの実施形態では、(c)における第2の亜鉛源は、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、炭酸亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、過塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、(c)における第2の亜鉛源はオレイン酸亜鉛である。
【0041】
[0041] 幾つかの実施形態では、(c)における硫黄源は、元素硫黄、オクタンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール、トリブチルホスフィンスルフィド、イソチオシアン酸シクロヘキシル、α-トルエンチオール、エチレントリチオカーボネート、アリルメルカプタン、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、(c)における硫黄源はドデカンチオールである。
【0042】
[0042] 幾つかの実施形態では、(b)における混合は250℃~350℃の温度で行われる。幾つかの実施形態では、(b)における混合は約300℃の温度で行われる。
【0043】
[0043] 幾つかの実施形態では、(c)における混合は約170℃~約250℃の温度で行われる。幾つかの実施形態では、(c)における混合は約220℃の温度で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】[0044]In
(1-x)Ga
xPナノ構造の調製の合成スキームを示すフローチャートである。
【
図2】[0045]洗浄し溶媒を除去した後のリガンド交換したInPナノ構造の乾燥粉末の重量体温度を示す熱重量分析のグラフである。
【
図3】[0046]InPナノ構造からIn
(1-x)Ga
xPナノ構造(ここでx=0.55である)への変換に伴うスペクトル変化を示す、InPナノ構造及びIn
(1-x)Ga
xPナノ構造のUV-vis吸光度スペクトルを示している。55%のGa
3+含有量(金属基準)は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)によって求めた。
【
図4】[0047]青色バックライト及びLCDパネルを用いたQDCC部分を有する表示装置の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明
定義
[0048] 他に定義されることがなければ、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。以下の定義は、当技術分野における定義を補うものであり、本出願を対象としており、あらゆる関連する場合又は関連しない場合、例えば、あらゆる共同所有される特許又は出願には帰属しない。本明細書に記載のものと類似又は同等のあらゆる方法及び材料を本発明の検証の実施に使用することができるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載される。したがって、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、限定を意図するものではない。
【0046】
[0049] 本明細書及び添付の請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に他のことを示すのでなければ、複数の指示対象を含んでいる。したがって、例えば、「a nanostructure」(1つのナノ構造)への言及は、複数のそのようなナノ構造を含む、などとなる。
【0047】
[0050] 本明細書において使用される場合、「約」という用語は、ある特定の量の値が、その値の±10%だけ変動することを意味する。例えば、「約100nm」は、両端を含めて90nm~110nmのサイズの範囲を含む。
【0048】
[0051] 「ナノ構造」は、約500nm未満の寸法の少なくとも1つの領域又は特性寸法を有する構造である。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。典型的には、領域又は特性寸法は、構造の最短軸に沿って存在する。このような構造の例としては、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ構造、ナノテトラポッド、トライポッド、バイポッド、ナノ結晶、ナノドット、量子ドット、ナノ粒子などが挙げられる。ナノ構造は、例えば、実質的に結晶性、実質的に単結晶性、多結晶性、非晶質、又はそれらの組み合わせであってよい。幾つかの実施形態では、ナノ構造の3つの寸法のそれぞれは、約500nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。
【0049】
[0052] ナノ構造に関連して使用される場合、「ヘテロ構造」という用語は、少なくとも2つの異なる及び/又は区別可能な材料の種類を特徴とするナノ構造を意味する。典型的には、ナノ構造の1つの領域が第1の材料の種類を含み、一方、ナノ構造の第2の領域が第2の材料の種類を含む。ある実施形態では、ナノ構造は、第1の材料のコアと、第2(又は第3など)の材料の少なくとも1つのシェルとを含み、異なる材料の種類は、例えば、ナノワイヤの長軸、分岐ナノワイヤのアームの長軸、又はナノ結晶の中心に対して半径方向に分布する。シェルは、シェルと見なされるために、又はナノ構造がヘテロ構造と見なされるために、隣接する材料を完全に覆うことができるが、必ずしもその必要はなく、例えば、第2の材料の小さな島で覆われた1つの材料を特徴とするナノ結晶はヘテロ構造である。別の実施形態では、異なる材料の種類は、ナノ構造内の異なる位置に分布し、例えば、ナノワイヤの主(長)軸に沿って、又は分岐ナノワイヤのアームの長軸に沿って分布する。ヘテロ構造内の異なる領域は、完全に異なる材料を含むことができ、又は異なる領域は、異なるドーパント若しくは異なる濃度の同じドーパントを有するベース材料(例えば、シリコン)を含むことができる。
【0050】
[0053] 本明細書において使用される場合、ナノ構造の「直径」は、ナノ構造の第1の軸に対して垂直の断面の直径を意味し、ここで第1の軸は、第2及び第3の軸(第2及び第3の軸は、互いの長さが最も近い2つの軸である)に対して、長さの差が最も大きい。第1の軸は、必ずしもナノ構造の最長軸ではなく、例えば、ディスク型ナノ構造の場合、断面は、ディスクの短い縦方向の軸に対して垂直の実質的に円形の断面である。断面が円形ではない場合、直径は、その断面の長軸と短軸との平均である。ナノワイヤなどの細長い、すなわち高アスペクト比のナノ構造の場合、直径は、ナノワイヤの最長軸に対して垂直の断面にわたって測定される。球状ナノ構造の場合、直径は、球の中心を通過して一方の側から他方の側まで測定される。
【0051】
[0054] ナノ構造に関連して使用される場合、「結晶性」又は「実質的に結晶性」という用語は、そのナノ構造が、典型的には構造の1つ以上の寸法にわたって長距離秩序を示すことを意味する。1つの結晶の秩序は結晶の境界を超えて延在することはできないので、「長距離秩序」という用語は、特定のナノ構造の絶対サイズに依存することを当業者は理解されよう。この場合、「長距離秩序」は、ナノ構造の寸法の少なくとも大部分にわたる実質的な秩序を意味する。幾つかの場合では、ナノ構造は、酸化物又はその他のコーティングを有することができ、又はコアと少なくとも1つのシェルとから構成されることができる。このような場合、酸化物、シェル、又はその他のコーティングは、そのような秩序を示すことができるが、そのような秩序を示す必要はないことを認識されよう(例えばこれは非晶質、多結晶性などであってよい)。このような場合、「結晶性」、「実質的に結晶性」、「実質的に単結晶性」、又は「単結晶性」という語句は、ナノ構造の中心コアに対する言及である(コーティング層及びシェルは除外される)。本明細書において使用される場合、「結晶性」又は「実質的に結晶性」という用語は、構造が実質的な長距離秩序(例えば、ナノ構造又はそのコアの少なくとも1つの軸の長さの少なくとも約80%にわたる秩序)を示す限り、種々の欠陥、積層欠陥、原子置換などを含む構造をも包含することを意図している。さらに、コアとナノ構造の外側との間、又はコアと隣接するシェルとの間、又はシェルと第2の隣接するシェルとの間の界面は、非結晶性領域を含んでよく、さらには非晶質であってよいことを認識されよう。これは、ナノ構造が、本明細書において定義されるような結晶性又は実質的に結晶性であることを妨げるものではない。
【0052】
[0055] ナノ構造に関連して使用される場合、「単結晶性」という用語は、ナノ構造が実質的に結晶性であり、実質的に1つの結晶を含むことを示している。コアと1つ以上のシェルとを含むナノ構造ヘテロ構造に関連して使用される場合、「単結晶性」は、コアが実質的に結晶性であり、実質的に1つの結晶を含むことを示している。
【0053】
[0056] 「ナノ結晶」は、実質的に単結晶性であるナノ構造である。したがってナノ結晶は、約500nm未満の寸法の少なくとも1つの領域又は特性寸法を有する。幾つかの実施形態では、ナノ結晶は、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。「ナノ結晶」という用語は、種々の欠陥、積層欠陥、原子置換などを含む実質的に単結晶性のナノ構造と、そのような欠陥、積層欠陥、及び置換を含まない実質的に単結晶性のナノ構造とを含むことが意図される。コアと1つ以上のシェルとを含むナノ結晶ヘテロ構造の場合、ナノ結晶のコアは典型的には実質的に単結晶性であるが、シェルはそうである必要はない。幾つかの実施形態では、ナノ結晶の3つの寸法のそれぞれは、約500nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。
【0054】
[0057] 「量子ドット」(又は「ドット」)という用語は、量子閉じ込め又は励起子閉じ込めを示すナノ結晶を意味する。量子ドットは、材料の性質が実質的に均一であってよく、又はある実施形態では、不均一であってよく、例えばコアと少なくとも1つのシェルとを含むことができる。量子ドットの光学的性質は、それらの粒度、化学組成、及び/又は表面組成の影響を受けることがあり、当技術分野において利用可能な適切な光学的試験によって求めることができる。ナノ結晶サイズが、例えば約1nm~約15nmの範囲内で調整される能力によって、光学スペクトル全体の光電子放出範囲が可能となり、演色の高い自由度が得られる。
【0055】
[0058] 「リガンド」は、例えば、ナノ構造の表面との共有結合性相互作用、イオン性相互作用、ファンデルワールス相互作用、又はその他の分子相互作用により、ナノ構造の1つ以上の面と(弱く又は強くのいずれかで)相互作用が可能な分子である。
【0056】
[0059] 「溶融塩」という用語は、溶融無機塩及びイオン液体を意味する。「溶融無機塩」という用語は、無機成分/イオンのみを含む溶融塩を意味する。「イオン液体」という用語は、少なくとも1つの有機成分/イオンを有し、100℃未満の融点を有する溶融塩を意味する。「イオン液体」は、「室温イオン液体」と呼ばれる場合がある。
【0057】
[0060] 「フォトルミネッセンス量子収率」は、例えばナノ構造又はナノ構造集団によって放出されるフォトンの、吸収されるフォトンに対する比である、当技術分野において知られるように、量子収率は、典型的には、量子収率値が既知である十分に特性決定された標準試料を用いる比較方法によって求められる。
【0058】
[0061] 「ピーク発光波長」(PWL)は、光源の放射測定放出スペクトルがその最大に到達する波長である。
【0059】
[0062] 本明細書において使用される場合、「青色透過率」という用語は、試料を透過する、すなわち通過する入射光の分率を意味し、ここで入射光は約450nmの波長を有する。
【0060】
[0063] 本明細書において使用される場合、「シェル」という用語は、コアの上、又は同じ若しくは異なる組成の以前に堆積されたシェルの上に堆積される材料であって、シェル材料の1つの堆積行為によって得られる材料を意味する。厳密なシェル厚さは、材料並びに前駆体の使用量及び変換率によって決定され、ナノメートルの単位又は単層の単位で報告することができる。本明細書において使用される場合、「目標シェル厚さ」は、必要な前駆体量の計算のために使用される、意図されるシェル厚さを意味する。本明細書において使用される場合、「実際のシェル厚さ」は、合成後のシェル材料の実際の堆積量を意味し、当技術分野において周知の方法によって測定することができる。例として、実際のシェル厚さは、シェル合成の前後のナノ結晶の透過型電子顕微鏡(TEM)画像から求めた粒径を比較することによって測定することができる。
【0061】
[0064] 本明細書において使用される場合、「層」という用語は、コアの上、又は以前に堆積された層の上に堆積される材料であって、コア又はシェル材料の1つの堆積行為によって得られる材料を意味する。層の厳密な厚さは、材料によって決定される。例えば、ZnSe層は約0.33nmの厚さを有することができ、ZnS層は約0.31nmの厚さを有することができる。
【0062】
[0065] 本明細書において使用される場合、「半値全幅」(FWHM)という用語は、量子ドットのサイズ分布の尺度の1つである。量子ドットの発光スペクトルは、一般に、ガウス曲線の形状を有する。ガウス曲線の幅は、FWHMとして定義され、粒子のサイズ分布の理解が得られる。より小さいFWHMは、より狭い量子ドットナノ結晶サイズ分布に対応する。FWHMは発光波長極大にも依存する。
【0063】
[0066] 本明細書において使用される場合、「外部量子効率」(EQE)という用語は、発光ダイオード(LED)から放出されるフォトン数の、デバイスを通過する電子数に対する比である。EQEは、どれだけ効率的にLEDが電子をフォトンに変換し、それらを放出するかを評価する。EQEは式:
EQE=[注入効率]×[固体量子収率]×[抽出効率]
を用いて評価することができ、
ここで:
注入効率=デバイスを通過して活性領域中に注入される電子の比率であり;
固体量子収率=放射性である、したがってフォトンを生成する活性化領域中の全電子-正孔再結合の比率であり;
抽出効率=活性化領域中で生成されデバイスから放出されるフォトンの比率である。
【0064】
[0067] 特に明確に示されるのでなければ、本明細書に列挙される範囲は、両端の値を含む。
【0065】
[0068] 本明細書において、種々のさらなる用語が定義され、又は他の方法で特徴付けられる。
【0066】
[0069] 前述の議論のように、改善された青色吸光度及び低い青色光透過率を有するナノ構造組成物を調製することが必要である。本明細書において、In(1-x)GaxPナノ構造(ここで0<x<1である)を溶融媒体中で形成する方法が開示される。この方法は、InPナノ構造上の有機リガンドを硫黄含有無機リガンドと交換することと、リガンドが交換されたナノ構造を精製することと、InPナノ構造を溶融塩中に溶解させることと、ガリウムをInPナノ構造中に合金化させてIn(1-x)GaxPナノ構造(ここで0<x<1である)を生成することとを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、In(1-x)GaxPナノ構造の上にZnSe及び/又はZnSシェル層を形成することをさらに含む。このコア/シェルナノ構造の光学的性質は、約525nmにおいてフォトルミネッセンス極大を示し、強い青色吸収を示した。このような材料は、入射光の>90%を吸収するために発光層が必要なQDCCなどのLEDダウンコンバージョン膜、量子ドットが青色LED波長(例えば、約450nm)においてより強く吸収する場合に、より少ない緑色量子ドット使用量を必要とする量子ドット増強膜(QDEF)、及びLED流体の内部若しくはLEDカプセルのすぐ上の量子ドットのオンチップ配置若しくはニアチップ配置に組み込むことができる。
【0067】
ナノ構造の製造
[0070] 種々のナノ構造のコロイド合成方法が当技術分野において周知である。このような方法は、例えば結果として得られるナノ構造のサイズ及び/又は形状の分布を制御するために、ナノ構造の成長を制御するための技術を含む。
【0068】
[0071] 典型的なコロイド合成では、半導体ナノ構造は、熱分解させる前駆体を熱溶液(例えば、高温の溶媒及び/又は界面活性剤)中に迅速に注入することによって製造される。前駆体は、同時又は逐次的に注入することができる。前駆体は迅速に反応して核を形成する。ナノ構造の成長は、この核にモノマーが付加することによって起こる。
【0069】
[0072] 界面活性剤分子は、ナノ構造の表面と相互作用する。成長温度において、界面活性剤分子は、ナノ構造表面で迅速な吸着及び脱着が起こり、ナノ構造からの原子の付加及び/又は除去を可能にしながら、成長するナノ構造の凝集を抑制する。一般に、ナノ構造表面に弱く配位する界面活性剤は、ナノ構造の迅速な成長を可能にし、一方、ナノ構造表面により強く結合する界面活性剤は、ナノ構造の成長をより遅くする。界面活性剤は、1つ(又はそれを超える)前駆体と相互作用して、ナノ構造の成長を減速させることもある。
【0070】
[0073] 1つの界面活性剤の存在下でのナノ構造の成長では、典型的には球状のナノ構造が得られる。しかし、例えば2つ(又はそれを超える)界面活性剤が、成長するナノ構造の異なる結晶面に異なるように吸着する場合、2つ以上の界面活性剤の混合物を用いて、非球状のナノ構造を製造できるように成長を制御することができる。
【0071】
[0074] このようにナノ構造の成長に影響する多数の要因が知られており、これらは、独立して、又は組み合わせて、結果として得られるナノ構造のサイズ及び/又は形状の分布が制御されるように操作することができる。このようなものとしては、例えば、温度(核形成及び/又は成長)、前駆体の組成、時間依存性の前駆体濃度、互いの前駆体の比率、界面活性剤の組成、界面活性剤の数、並びに互いの界面活性剤の比率及び/又は互いの界面活性剤と前駆体との比率が挙げられる。
【0072】
[0075] II-VI族ナノ構造の合成は、例えば、米国特許第6,225,198号、米国特許第6,322,901号、米国特許第6,207,229号、米国特許第6,607,829号、米国特許第7,060,243号、米国特許第7,374,824号、米国特許第6,861,155号、米国特許第7,125,605号、米国特許第7,566,476号、米国特許第8,158,193号、及び米国特許第8,101,234号、並びに米国特許出願公開第2011/0262752号、及び米国特許出願公開第2011/0263062号に記載されている。
【0073】
[0076] CdSe/CdS/ZnSコア/シェルナノ構造などのII-VI族ナノ構造は望ましいルミネッセンス挙動を示すことができるが、前述のように、カドミウムの毒性などの問題のために、そのようなナノ構造を使用できる用途が限定される。したがって、好都合なるルミネッセンス特性を有する毒性がより低い代替物が非常に望ましい。
【0074】
[0077] 幾つかの実施形態では、ナノ構造はカドミウムフリーである。本明細書において使用される場合、「カドミウムフリー」という用語は、ナノ構造が100重量ppm未満のカドミウムを含むことが意図される。Restriction of Hazardous Substances(RoHS)のコンプライアンス規定の要求では、均一な前駆体原材料中にカドミウムが0.01重量%(100重量ppm)以下であることが必要である。本発明のCdフリーナノ構造中のカドミウムレベルは、前駆体材料中で微量金属濃度に制限される。Cdフリーナノ構造用の前駆体材料中の微量金属(カドミウムを含む)濃度は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)の分析によって測定され、十億分率(ppb)レベルである。幾つかの実施形態では、「カドミウムフリー」であるナノ構造は、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、又は約1ppm未満のカドミウムを含む。
【0075】
[0078] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、In(1-x)GaxP(ここで0<x<1である)を含むコアと;コアの上に配置された少なくとも1つのシェルとを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、コアの上に配置された第1のシェルと、第1のシェルの上に配置された第2のシェルとを含む。幾つかの実施形態では、第1のシェルはZnSeを含む。幾つかの実施形態では、第2のシェルはZnSを含む。
【0076】
InPナノ構造の製造及びリガンド交換プロセス
[0079] InPナノ構造の製造方法及びリガンド交換が開示される。InPナノ構造は、以下に記載のように(例えば、実施例の「緑色発光コア/シェルドット用のInPコアの合成」及び「赤色発光コア/シェルドット用のInPコアの合成」と題される項を参照されたい)又は当技術分野において周知のように(例えば、米国特許第7,557,028号、米国特許第8,062,967号、米国特許第7,645,397号、米国特許出願公開第2010/0276638号(例えば、実施例7)、及び米国特許出願公開第2014/0001405号、並びに前述の参考文献を参照されたい)製造することができる。InPナノ構造は、本質的にあらゆる所望のサイズであってよい。例えば、InPナノ構造は約1nm~約5nmの平均直径を有することができる。サイズは当技術分野において周知のように求めることができ、例えば、透過電子顕微鏡及び/又は物理的モデリングを用いて求めることができる。幾つかの実施形態では、InPナノ構造の直径は、約1nm~約5nm、約1nm~約4nm、約1nm~約3nm、約1nm~約2nm、約2nm~約5nm、約2nm~約4nm、約2nm~約3nm、約3nm~約5nm、約3nm~約4nm、又は約4nm~約5nmである。幾つかの実施形態では、InPナノ構造の直径は約3nmである。
【0077】
[0080] 幾つかの実施形態では、InPナノ構造は、少なくとも1つのリガンドの存在下で合成される。リガンドによって、例えば、溶媒又はポリマー中のナノ構造の混和性を向上させることができ(これによって、ナノ構造が互いに凝集しないように組成物全体にナノ構造が分布することができる)、ナノ構造の量子収率を増加させることができ、及び/又はナノ構造のルミネッセンスを維持することができる(例えば、ナノ構造がマトリックス中に混入される場合)。幾つかの実施形態では、InPナノ構造の合成のためのリガンドとシェル合成のためのリガンドは同じものである。幾つかの実施形態では、InPナノ構造の合成のためのリガンドとシェル合成のためのリガンドとは異なる。合成後、ナノ構造の表面上のあらゆるリガンドは、別の所望の性質を有する異なるリガンドと交換することができる。リガンドの例は、米国特許出願公開第2005/0205849号、米国特許出願公開第2008/0105855号、米国特許出願公開第2008/0118755号、米国特許出願公開第2009/0065764号、米国特許出願公開第2010/0140551号、米国特許出願公開第2013/0345458号、米国特許出願公開第2014/0151600号、米国特許出願公開第2014/0264189号、及び米国特許出願公開第2014/0001405号に開示されている。
【0078】
[0081] 幾つかの実施形態では、InPナノ構造の合成に適したリガンドは当業者により周知である。幾つかの実施形態では、リガンドは、ラウリン酸、カプロン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸から選択される脂肪酸である。幾つかの実施形態では、リガンドは、トリオクチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、及びトリブチルホスフィンオキシドから選択される有機ホスフィン又は有機ホスフィンオキシドである。幾つかの実施形態では、リガンドはアルキルアミンである。幾つかの実施形態では、リガンドは、ドデシルアミン、オレイルアミン、ヘキサデシルアミン、及びオクタデシルアミンから選択されるアミンである。幾つかの実施形態では、リガンドはトリオクチルホスフィンである。幾つかの実施形態では、リガンドはオレイルアミンである。幾つかの実施形態では、リガンドはジフェニルホスフィンである。
【0079】
[0082] 幾つかの実施形態では、InPナノ構造は、リガンドの混合物の存在下で製造される。幾つかの実施形態では、InPナノ構造は、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの異なるリガンドを含む混合物の存在下で製造される。幾つかの実施形態では、InPナノ構造は、3つの異なるリガンドを含む混合物の存在下で製造される。幾つかの実施形態では、リガンドの混合物は、オレイルアミン、トリオクチルホスフィン、及びジフェニルホスフィンを含む。
【0080】
[0083] 溶融塩に対する溶解性を改善し、加熱下でのナノ構造の安定性を得るために、さらなる合金化反応のために溶融塩中に分散させる前にInPナノ構造に対してリガンド交換プロセスを行うことができる(例えば、リガンド交換なしでは、InPナノ構造は320℃よりも高温で分解する)。幾つかの実施形態では、リガンド交換プロセスによって、少なくとも1つの硫黄含有リガンドを含むInPナノ構造が生成される。幾つかの実施形態では、脂肪酸などの有機リガンドを含むInPナノ構造を少なくとも1つの硫黄含有リガンドと混合することで、表面に結合した硫黄含有リガンドを有するInPナノ構造が得られる。幾つかの実施形態では、リガンド交換プロセスは、得られた表面に結合した硫黄含有リガンドを有するInPナノ構造を少なくとも1つの溶媒と混合することをさらに含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの溶媒はホルムアミドを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも硫黄含有リガンドは、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの硫黄含有リガンドは硫化カリウムを含む。幾つかの実施形態では、リガンド交換のための混合は、約1時間~約20時間、約1時間~約15時間、約1時間~約10時間、約1時間~約5時間、5時間~約20時間、約5時間~約15時間、約5時間~約10時間、約10時間~約20時間、約10時間~約15時間、又は10時間~約15時間続けられる。幾つかの実施形態では、リガンド交換のための混合は少なくとも20時間続けられる。幾つかの実施形態では、リガンド交換のための混合は、約20時間~約50時間、約20時間~約40時間、約20時間~約30時間、約30時間~約50時間、約30時間~約40時間、又は約40時間~約50時間続けられる。
【0081】
In(1-x)GaxPナノ構造の製造
[0084] In(1-x)GaxPナノ構造の製造方法が開示される。InPナノ構造を溶融塩中に分散させ、ガリウム源と反応させることで、合金化したIn(1-x)GaxPナノ構造が形成され、ここで0<x<1である。幾つかの実施形態では、溶融塩は共融混合物を含む。
【0082】
[0085] InPナノ構造を分散させるために、種々の溶融無機塩を使用することができる。幾つかの実施形態では、溶融無機塩は、異なる無機塩の混合物(例えば、共融混合物)を含む。幾つかの実施形態では、溶融無機塩は、ルイス酸又はルイス塩基である成分を含む。幾つかの実施形態では、所望の結合親和性、例えばルイス酸/塩基活性を得るために十分な量の塩添加剤を溶融無機塩中に含めることができる。幾つかの実施形態では、溶融無機塩は、350℃未満の融点(Tm)を特徴とする。幾つかの実施形態では、溶融無機塩は、約50℃~約350℃の範囲のTmを有する。適切な溶融無機塩としては、混合ハロゲン化物塩などの金属ハロゲン化物、及びチオシアン酸塩が挙げられる。幾つかの実施形態では、ハロゲン化物塩は、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化セシウム、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、ハロゲン化物塩は、臭化リチウム(LiBr)、臭化カリウム(KBr)、臭化セシウム(CsBr)、臭化アルミニウム(AlBr3)、ヨウ化ガリウム(GaI3)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化アルミニウム(AlCl3)、塩化リチウム(LiCl)、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化カリウム(KI)、塩化亜鉛(ZnCl2)、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、ハロゲン化物塩はNaCl-KCl-AlCl3混合物を含む。幾つかの実施形態では、ハロゲン化物塩はLiBr-KBr-CsBr混合物を含む。幾つかの実施形態では、ハロゲン化物塩はLiCl-LiBr-KBr混合物を含む。幾つかの実施形態では、ハロゲン化物塩はLiCl-LiI-KI混合物を含む。幾つかの実施形態では、ハロゲン化物塩はZnCl2-NaCl-KCl混合物を含む。幾つかの実施形態では、チオシアン酸塩はチオシアン酸ナトリウム(NaSCN)-チオシアン酸カリウム(KSCN)混合物を含む。
【0083】
[0086] InPナノ構造を分散させるために、種々のイオン液体を使用することもできる。溶融無機塩と同様に、イオン液体は異なるイオン液体の混合物であってよい。幾つかの実施形態では、イオン液体はルイス酸又はルイス(Lewis)を含む。適切なイオン液体としては、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム([BMIM])ハライド及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウム([EMIM])ハライドが挙げられる。幾つかの実施形態では、イオン液体は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド([BMIM]+Cl-)及び1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド([BMIM]+I-)を含む。幾つかの実施形態では、イオン液体は、チオシアン酸1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム([BMIM]+SCN-)を含む。
【0084】
[0087] 幾つかの実施形態では、InPナノ構造を溶融塩とともに粉砕し、加熱して、溶融塩中にInPナノ構造を溶解させる。幾つかの実施形態では、InPナノ構造及び溶融塩は、約250℃~約450℃、約250℃~約400℃、約250℃~約350℃、約250℃~約320℃、約250℃~約300℃、約250℃~約280℃、約280℃~約450℃、約280℃~約400℃、約280℃~約350℃、約280℃~約320℃、約280℃~約300℃、約300℃~約450℃、約300℃~約400℃、約300℃~約350℃、約300℃~約320℃、約320℃~約450℃、約320℃~約400℃、約320℃~約350℃、約350℃~約450℃、約350℃~約400℃、又は約400℃~約450℃の高温に加熱される。幾つかの実施形態では、InPナノ構造及び溶融塩は約300℃の高温に加熱される。
【0085】
[0088] 幾つかの実施形態では、InPナノ構造及び溶融塩は、約2分~約120分、約2分~約90分、約2分~約60分、約2分~約40分、約2分~約20分、約2分~約15分、約2分~約10分、約2分~約5分、約5分~約120分、約5分~約90分、約5分~約60分、約5分~約40分、約5分~約20分、約5分~約15分、約5分~約10分、約10分~約120分、約10分~約90分、約10分~約60分、約10分~約40分、約10分~約20分、約10分~約15分、約15分~約120分、約15分~約90分、約15分~約60分、約15分~約40分、約15分~約20分、約20分~約120分、約20分~約90分、約20分~約60分、約20分~約40分、約40分~約120分、約40分~約90分、約40分~約60分、約60分~約120分、約60分~約90分、又は約90分~約120分間高温で加熱される。幾つかの実施形態では、InPナノ構造及び溶融塩は約2分~約20分の間高温で加熱される。幾つかの実施形態では、InPナノ構造及び溶融塩は、InPナノ構造が溶融塩中に完全に溶解するまでの時間高温で加熱される。
【0086】
[0089] 幾つかの実施形態では、分散したInPナノ構造と溶融塩との溶融混合物はガリウム源と混合されて、合金化したナノ構造が形成される。幾つかの実施形態では、合金化したナノ構造を形成するためにガリウム源に接触させる前に、分散したInPナノ構造と溶融塩との混合物は固化される。幾つかの実施形態では、金属源はガリウム源を含む。幾つかの実施形態では、ガリウム源は、フッ化ガリウム、塩化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、ガリウム源は、酸化ガリウム、硫化ガリウム、セレン化ガリウム、テルル化ガリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、ガリウム源は、メチルガリウム、エチルガリウム、プロピルガリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0087】
[0090] 幾つかの実施形態では、溶融混合物とガリウム源とは、約200℃~約400℃、約200℃~約380℃、約200℃~約350℃、約200℃~約330℃、約200℃~約290℃、約200℃~約250℃、約250℃~約400℃、約250℃~約380℃、約250℃~約350℃、約250℃~約330℃、約250℃~約290℃、約290℃~約400℃、約290℃~約380℃、約290℃~約350℃、約290℃~約330℃、約330℃~約400℃、約330℃~約380℃、約330℃~約350℃、約350℃~約400℃、約350℃~約380℃、又は約380℃~約400℃の温度で混合される。幾つかの実施形態では、溶融混合物とガリウム源とは約290℃~約380℃の温度で混合される。幾つかの実施形態では、溶融混合物とガリウム源とは約290℃~約330℃の温度で混合される。
【0088】
[0091] 幾つかの実施形態では、溶融混合物とガリウム源との混合は、約20分~約240分、約20分~約180分、約20分~約100分、約20分~約60分、約20分~約40分、約40分~約240分、約40分~約180分、約40分~約100分、約40分~約60分、約60分~約240分、約60分~約180分、約60分~約100分、約100分~約240分、約100分~約180分、又は約180分~約240分間行われる。幾つかの実施形態では、溶融混合物とガリウム源との混合は約20分~約180分行われる。
【0089】
[0092] 幾つかの実施形態では、ガリウム源中の金属原子の、溶融混合物中のInPナノ構造中のインジウム原子に対するモル比は、約0.3~約5、約0.3~約4、約0.3~約3、約0.3~約2、約0.3~約1、約0.3~約0.5、約0.5~約5、約0.5~約4、約0.5~約3、約0.5~約2、約0.5~約1、約1~約5、約1~約4、約1~約3、約1~約2、約2~約5、約2~約4、約2~約3、約3~約5、約3~約4、又は約4~約5である。幾つかの実施形態では、ガリウム源中のガリウム原子の、溶融混合物中のInPナノ構造中のインジウム原子に対するモル比は約0.3~約5である。幾つかの実施形態では、ガリウム源中のガリウム原子の、溶融混合物中のInPナノ構造中のインジウム原子に対するモル比は約0.5~約2である。幾つかの実施形態では、ガリウム源中のガリウム原子の、溶融混合物中のInPナノ構造中のインジウム原子に対するモル比は約1である。
【0090】
[0093] 幾つかの実施形態では、溶融混合物とガリウム源との混合後、混合物は、スルフィドリガンドを含む少なくとも1つの溶媒と混合される。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、ホルムアミド、トルエン、臭化ジラウリルジメチルアンモニウム、又はそれらの混合物を含む。幾つかの実施形態では、スルフィドリガンドは、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、スルフィドリガンドは硫化カリウムを含む。
【0091】
[0094] 幾つかの実施形態では、In(1-x)GaxPナノ構造は、さらなるシェルの成長のためのコアとして機能する。幾つかの実施形態では、コアは、InP、InN、InSb、InAs、AlN、AlP、AlSb、AlAs、GaN、GaP、GaSb、GaAs、又はそれらの組み合わせを含むIII-V族半導体材料をさらに含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。幾つかの実施形態では、ナノ構造はカドミウムフリーである。
【0092】
[0095] コアのサイズは、当業者に周知の技術を用いて求めることができる。幾つかの実施形態では、コアのサイズは、TEMを用いて求められる。幾つかの実施形態では、コアの直径は、約3nm~約10nm、約3nm~約9nm、約3nm~約8nm、約3nm~約7nm、約3nm~約6nm、約3nm~約5nm、約3nm~約4nm、約4nm~約10nm、約4nm~約9nm、約4nm~約8nm、約4nm~約7nm、約4nm~約6nm、約4nm~約5nm、約5nm~約10nm、約5nm~約9nm、約5nm~約8nm、約5nm~約7nm、約5nm~約6nm、約6nm~約10nm、約6nm~約9nm、約6nm~約8nm、約6nm~約7nm、約7nm~約10nm、約7nm~約9nm、約7nm~約8nm、約8nm~約10nm、約8nm~約9nm、又は約9nm~約10nmである。幾つかの実施形態では、コアの直径は約4.5nm~約6.5nmである。幾つかの実施形態では、コアの直径は約5nmである。
【0093】
[0096] 幾つかの実施形態では、In(1-x)GaxPコアの直径は量子閉じ込めを用いて求められる。量子ドットなどの0次元ナノ微結晶における量子閉じ込めは、微結晶境界内での電子の空間的閉じ込めによって生じる。材料の直径が波動関数のドブロイ波長と同じ大きさになると、量子閉じ込めを確認できる。ナノ構造の電子的性質及び光学的性質は、バルク材料のそれらの性質から大きく逸脱している。閉じ込め寸法がナノ構造の波長よりも大きい場合には、ナノ構造は自由であるかのように振る舞う。この状態の間、バンドギャップは、連続エネルギー状態のためにその元のエネルギーのままとなる。しかし、閉じ込め寸法が減少し、典型的にはナノスケールの単位のある限度に到達すると、エネルギースペクトルが離散的になる。結果として、バンドギャップはサイズ依存性となる。これによって最終的には、ナノ構造のサイズが減少すると、発光のブルーシフトが生じる。
【0094】
[0097] シェル層を得るために必要な材料の濃度を計算するためにIn(1-x)GaxPコアの濃度も求められる。コアの濃度は、低波長(例えば、350nm)におけるバルクの吸収係数を用いて求められる。次に、濃度は次式を用いて計算することができ:濃度(mg/mL)=((平均光学濃度(350nmにおける))×(希釈因数))/(8.08)、ここで、光学濃度は、高遮断光学フィルターを通過する光の透過を表す。光学濃度は、透過の対数の負の値である。
【0095】
[0098] 幾つかの実施形態では、本発明のナノ構造のIn(1-x)GaxPコアは、約10%~約65%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約65%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約65%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約65%、約40%~約50%、又は約50%~約65%のIn(1-x)GaxP含有量(金属を基準とした重量パーセント値による)を有する。
【0096】
[0099] 幾つかの実施形態では、In(1-x)GaxPコアナノ構造は、高いフォトルミネッセンス量子収率を示す。幾つかの実施形態では、コアナノ構造は、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、20%~30%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、30%~40%、40%~90%、40%~80%、40%~70%、40%~60%、40%~50%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~90%、70%~80%、又は80%~90%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。
【0097】
シェルの製造
[0100] 幾つかの実施形態では、本発明のナノ構造は、コアと、コアの上に配置された少なくとも1つのシェルとを含む。シェルは、例えば、ナノ構造の量子収率及び/又は安定性を増加させることができる。幾つかの実施形態では、本発明のナノ構造は、コア及び少なくとも2つのシェルを含む。幾つかの実施形態では、コアとシェルとは異なる材料を含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、異なるシェル材料の複数のシェルを含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、コアの上に配置された第1のシェルと、第1のシェルの上に配置された第2のシェルとを含む2つのシェルを含む。幾つかの実施形態では、第1のシェルはZnSeを含む。幾つかの実施形態では、第2のシェルは、ZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、MgS、MgO、MgSe、MgTe、又はそれらの組み合わせを含むII-VI族半導体材料を含む。幾つかの実施形態では、第2のシェルはZnSを含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルは、CdS、CdSe、CdO、CdTe、ZnS、ZnO、ZnTe、MgTe、GaAs、GaSb、GaN、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InSb、InN、AlAs、AlN、AlSb、AlS、PbS、PbO、PbSe、PbTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CuCl、Ge、Si、又はそれらの組み合わせをさらに含む。
【0098】
[0101] 幾つかの実施形態では、II-VI族半導体を含む第1のシェルがコアの上に堆積される。幾つかの実施形態では、II-VI族半導体は、II族元素及びVI族元素の混合物を含む。幾つかの実施形態では、堆積される第1のシェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源、及びカドミウム源の中の少なくとも2つの混合物から得られる。幾つかの実施形態では、堆積される第1のシェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源、及びカドミウム源の中の2つの混合物から得られる。幾つかの実施形態では、堆積される第1のシェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源、及びカドミウム源の中の3つの混合物から得られる。幾つかの実施形態では、第1のシェルは、亜鉛及び硫黄;亜鉛及びセレン;亜鉛、硫黄、及びセレン;亜鉛及びテルル;亜鉛、テルル、及び硫黄;亜鉛、テルル、及びセレン;亜鉛、カドミウム、及び硫黄;亜鉛、カドミウム、及びセレン;カドミウム及び硫黄;カドミウム及びセレン;カドミウム、セレン、及び硫黄;カドミウム、亜鉛、及び硫黄;カドミウム、亜鉛、及びセレン;又はカドミウム、亜鉛、硫黄、及びセレンを含む。幾つかの実施形態では、第1のシェルは、ZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、MgS、MgO、MgSe、MgTe、又はそれらの組み合わせを含むII-VI族半導体材料を含む。幾つかの実施形態では、第1のシェルはZnSeを含む。
【0099】
[0102] 幾つかの実施形態では、II-VI族半導体を含む第2のシェルが第1のシェルの上に堆積される。幾つかの実施形態では、II-VI族半導体は、II族元素及びVI族元素の混合物を含む。幾つかの実施形態では、堆積される第2のシェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源、及びカドミウム源の中の少なくとも2つの混合物から得られる。幾つかの実施形態では、堆積される第2のシェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源、及びカドミウム源の中の2つの混合物から得られる。幾つかの実施形態では、堆積される第2のシェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源、及びカドミウム源の中の3つの混合物から得られる。幾つかの実施形態では、第2のシェルは、亜鉛及び硫黄;亜鉛及びセレン;亜鉛、硫黄、及びセレン;亜鉛及びテルル;亜鉛、テルル、及び硫黄;亜鉛、テルル、及びセレン;亜鉛、カドミウム、及び硫黄;亜鉛、カドミウム、及びセレン;カドミウム及び硫黄;カドミウム及びセレン;カドミウム、セレン、及び硫黄;カドミウム、亜鉛、及び硫黄;カドミウム、亜鉛、及びセレン;又はカドミウム、亜鉛、硫黄、及びセレンを含む。幾つかの実施形態では、第2のシェルは、ZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、MgS、MgO、MgSe、MgTe、又はそれらの組み合わせを含むII-VI族半導体材料を含む。幾つかの実施形態では、第2のシェルは、ZnSe、ZnS、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、第2のシェルはZnSを含む。
【0100】
[0103] 幾つかの実施形態では、各シェルは、シェル材料の1つを超える単層を含む。単層の数は、すべてのナノ構造の平均であり;したがって、シェル中の単層の数は分数になる場合がある。幾つかの実施形態では、第1のシェル中の単層の数は、0.25~15、0.25~10、0.25~8、0.25~6、0.25~4、0.25~2、2~15、2~10、2~8、2~6、2~4、6~15、6~10、6~8、8~15、又は8~10である。幾つかの実施形態では、第1のシェルは2~15の単層を含む。幾つかの実施形態では、第2のシェル中の単層の数は、0.25~20、0.25~15、0.25~10、0.25~8、0.25~6、0.25~4、0.25~2、2~20、2~15、2~10、2~8、2~6、2~4、6~20、6~15、6~10、6~8、8~20、8~15、又は8~10である。幾つかの実施形態では、第2のシェルは2~20の単層を含む。
【0101】
[0104] シェルの厚さは、供給される前駆体の量を変化させることで制御できる。特定のシェル厚さの場合、成長反応が実質的に完了したときにあらかじめ決定された厚さのシェルが得られる量で、少なくとも1つの前駆体が場合により供給される。2つ以上の異なる前駆体が供給される場合、各前駆体の量を制限することができるか、又は一方の前駆体を制限された量で供給することができ、他方は過剰で供給されるかのいずれかである。
【0102】
[0105] 各シェルの厚さは、当業者に周知の技術を用いて求めることができる。幾つかの実施形態では、各シェルの厚さは、各シェルを加える前後のナノ構造の平均直径を比較することによって求められる。幾つかの実施形態では、各シェルを加える前後のナノ構造の平均直径はTEMによって求められる。
【0103】
[0106] 幾つかの実施形態では、第1のシェルの厚さは、約0.5nm~約4nm、約0.5nm~約3.5nm、約0.5nm~約3nm、約0.5nm~約2.5nm、約0.5nm~約2nm、約0.5nm~約1.5nm、約0.5nm~約1nm、約1nm~約4nm、約1nm~約3.5nm、約1nm~約3nm、約1nm~約2.5nm、約1nm~約2nm、約1nm~約1.5nm、約1.5nm~約4nm、約1.5nm~約3.5nm、約1.5nm~約3nm、約1.5nm~約2.5nm、約1.5nm~約2nm、約2nm~約4nm、約2nm~約3.5nm、約2nm~約3nm、約2nm~約2.5nm、約2.5nm~約4nm、約2.5nm~約3.5nm、約2.5nm~約3nm、約3nm~約4nm、約3nm~約3.5nm、又は約3.5nm~約4nmである。幾つかの実施形態では、第1のシェルの厚さは約0.5nm~約4nmである。幾つかの実施形態では、第1のシェルの厚さは約1.5nmである。
【0104】
[0107] 幾つかの実施形態、幾つかの実施形態では、第2のシェルの厚さは、約0.5nm~約3nm、約0.5nm~約2.5nm、約0.5nm~約2nm、約0.5nm~約1.5nm、約0.5nm~約1nm、約1nm~約3nm、約1nm~約2.5nm、約1nm~約2nm、約1nm~約1.5nm、約1.5nm~約3nm、約1.5nm~約2.5nm、約1.5nm~約2nm、約2nm~約3nm、約2nm~約2.5nm、又は約2.5nm~約3nmである。幾つかの実施形態では、第2のシェルの厚さは約0.5nm~約3nmである。幾つかの実施形態では、第2のシェルの厚さは約0.5nmである。
【0105】
[0108] 幾つかの実施形態では、各シェルは、少なくとも1つのナノ構造リガンドの存在下で合成される。リガンドによって、例えば、溶媒又はポリマー中のナノ構造の混和性を向上させることができ(これによって、ナノ構造が互いに凝集しないように組成物全体にナノ構造が分布することができる)、ナノ構造の量子収率を増加させることができ、及び/又はナノ構造のルミネッセンスを維持することができる(例えば、ナノ構造がマトリックス中に混入される場合)。合成後、ナノ構造の表面上のあらゆるリガンドは、別の所望の性質を有する異なるリガンドと交換することができる。リガンドの例は、米国特許第7,572,395号、米国特許第8,143,703号、米国特許第8,425,803号、米国特許第8,563,133号、米国特許第8,916,064号、米国特許第9,005,480号、米国特許第9,139,770号、及び米国特許第9,169,435号、並びに米国特許出願公開第2008/0118755号に開示されている。
【0106】
[0109] シェルの合成に適したリガンドは当業者により周知である。幾つかの実施形態では、リガンドは、ラウリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群から選択される脂肪酸である。幾つかの実施形態では、リガンドは、トリオクチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、及びトリブチルホスフィンオキシドから選択される有機ホスフィン又は有機ホスフィンオキシドである。幾つかの実施形態では、リガンドは、ドデシルアミン、オレイルアミン、ヘキサデシルアミン、ジオクチルアミン、及びオクタデシルアミンからなる群から選択されるアミンである。幾つかの実施形態では、リガンドは、トリオクチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィン、又はラウリン酸である。
【0107】
[0110] 幾つかの実施形態では、各シェルは、リガンドの混合物の存在下で製造される。幾つかの実施形態では、各シェルは、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの異なるリガンドを含む混合物の存在下で製造される。幾つかの実施形態では、各シェルは、3つの異なるリガンドを含む混合物の存在下で製造される。幾つかの実施形態では、リガンドの混合物は、トリブチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィン、及びラウリン酸を含む。
【0108】
[0111] 幾つかの実施形態では、各シェルは、溶媒の存在下で製造される。幾つかの実施形態では、溶媒は、1-オクタデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、エイコサン、オクタデカン、ヘキサデカン、テトラデカン、スクアレン、スクアラン、トリオクチルホスフィンオキシド、及びジオクチルエーテルからなる群から選択される。
【0109】
[0112] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とは、約20℃~約350℃、約20℃~約280℃、約20℃~約250℃、約20℃~約200℃、約20℃~約170℃、約20℃~約150℃、約20℃~約100℃、約20℃~約50℃、約50℃~約350℃、約50℃~約280℃、約50℃~約250℃、約50℃~約200℃、約50℃~約170℃、約50℃~約150℃、約50℃~約100℃、約100℃~約350℃、約100℃~約280℃、約100℃~約250℃、約100℃~約200℃、約100℃~約170℃、約100℃~約150℃、約150℃~約350℃、約150℃~約280℃、約150℃~約250℃、約150℃~約200℃、約150℃~約170℃、約170℃~約350℃、約170℃~約280℃、約170℃~約250℃、約170℃~約200℃、約200℃~約350℃、約200℃~約280℃、約200℃~約250℃、約250℃~約350℃、約250℃~約280℃、又は約280℃~約350℃の温度で混合される。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とは約250℃~約350℃の温度で混合される。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とは、約300℃の温度で混合される。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とは、約170℃~約250℃の温度で混合される。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とは約220℃の温度で混合される。
【0110】
[0113] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体との混合後、反応混合物の温度は、約200℃~約350℃、約200℃~約310℃、約200℃~約280℃、約200℃~約250℃、約200℃~約220℃、約220℃~約350℃、約220℃~約310℃、約220℃~約280℃、約220℃~約250℃、約250℃~約350℃、約250℃~約310℃、約250℃~約280℃、約280℃~約350℃、又は約280℃~約310℃の高温まで上昇される。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体との接触後、反応混合物の温度は約280℃~約310℃まで上昇される。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体との接触後、反応混合物の温度は約310℃まで上昇される。
【0111】
[0114] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体との混合後、温度が上記高温に到達するまでの時間は、約2分~約240分、約2分~約200分、約2分~約100分、約2分~約60分、約2分~約40分、約5分~約240分、約5分~約200分、約5分~約100分、約5分~約60分、約5分~約40分、約10分~約240分、約10分~約200分、約10分~約100分、約10分~約60分、約10分~約40分、約40分~約240分、約40分~約200分、約40分~約100分、約40分~約60分、約60分~約240分、約60分~約200分、約60分~約100分、約100分~約240分、約100分~約200分、又は約200分~約240分間である。
【0112】
[0115] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体との混合後の反応混合物の温度は、高温に、約2分~約240分、約2分~約200分、約2分~約100分、約2分~約60分、約2分~約40分、約5分~約240分、約5分~約200分、約5分~約100分、約5分~約60分、約5分~約40分、約10分~約240分、約10分~約200分、約10分~約100分、約10分~約60分、約10分~約40分、約40分~約240分、約40分~約200分、約40分~約100分、約40分~約60分、約60分~約240分、約60分~約200分、約60分~約100分、約100分~約240分、約100分~約200分、又は約200分~約240分間維持される。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体との混合後、反応混合物の温度は、高温に約30分~約120分間維持される。
【0113】
[0116] 幾つかの実施形態では、シェル材料前駆体をさらに添加し、それらを反応混合物に加えた後に高温に維持することによって、追加のシェルが製造される。典型的には、前のシェルの反応が実質的に完了した後に(例えば、少なくとも1つの前の前駆体が消費され、若しくは反応から除去されたとき、又はさらなる成長が検出できないときに)追加のシェル前駆体が供給される。前駆体のさらなる添加によって、追加のシェルが形成される。
【0114】
[0117] 幾つかの実施形態では、さらなるシェルを得るために追加のシェル材料前駆体を加える前に、ナノ構造が冷却される。幾つかの実施形態では、さらなるシェルを得るために追加のシェル材料前駆体を加える前に、ナノ構造は高温に維持される。
【0115】
[0118] ナノ構造を所望の厚さ及び直径に到達させるために、シェルの十分な層が加えられた後に、ナノ構造を冷却することができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は室温まで冷却される。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造を含む反応混合物を希釈するために有機溶媒が加えられる。
【0116】
[0119] 幾つかの実施形態では、反応混合物の希釈に用いられる有機溶媒は、エタノール、ヘキサン、ペンタン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、又はN-メチルピロリジノンである。幾つかの実施形態では、有機溶媒はトルエンである。
【0117】
[0120] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は単離される。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、有機溶媒を用いた沈殿によって単離される。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、エタノールを用いた凝集によって単離される。
【0118】
[0121] 単層の数によって、コア/シェルナノ構造のサイズが決定される。コア/シェルナノ構造のサイズは、当業者に周知の技術を用いて求めることができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造のサイズはTEMを用いて求められる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、約1nm~約15nm、約1nm~約10nm、約1nm~約9nm、約1nm~約8nm、約1nm~約7nm、約1nm~約6nm、約1nm~約5nm、約5nm~約15nm、約5nm~約10nm、約5nm~約9nm、約5nm~約8nm、約5nm~約7nm、約5nm~約6nm、約6nm~約15nm、約6nm~約10nm、約6nm~約9nm、約6nm~約8nm、約6nm~約7nm、約7nm~約15nm、約7nm~約10nm、約7nm~約9nm、約7nm~約8nm、約8nm~約15nm、約8nm~約10nm、約8nm~約9nm、約9nm~約15nm、約9nm~約10nm、又は約10nm~約15nmの平均直径を有する。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、約6nm~約7nmの平均直径を有する。
【0119】
[0122] 幾つかの実施形態では、追加のシェルを堆積する前に、コア/シェルナノ構造の酸エッチングステップが行われる。
【0120】
InPコアの上へのZnSe/ZnSシェルの製造
[0123] 幾つかの実施形態では、In(1-x)GaxP/ZnSe/ZnS(コア/シェル/シェル)ナノ構造の製造方法であって:(a)In(1-x)GaxPナノ構造を含むコアを提供することと;(b)(a)におけるIn(1-x)GaxPナノ構造を第1の亜鉛源及びセレン源と混合することと;(c)(b)における混合物を第2の亜鉛源及び硫黄源と混合して、In(1-x)GaxP/ZnSe/ZnSコア/シェル/シェルナノ構造を得ることとを含む製造方法が提供される。
【0121】
[0124] 幾つかの実施形態では、(b)における混合は、約200℃~約350℃、約200℃~約300℃、約200℃~約280℃、約200℃~約250℃、約250℃~約350℃、約250℃~約300℃、約250℃~約280℃、約280℃~約350℃、約280℃~約300℃、又は約300℃~約350℃の温度で行われる。幾つかの実施形態では、(b)における混合は約250℃~約350℃の温度で行われる。幾つかの実施形態では、(b)における混合は約300℃の温度で行われる。
【0122】
[0125] 幾つかの実施形態では、(c)における混合は、約170℃~約250℃、約185℃~約250℃、約200℃~約250℃、約220℃~約250℃、約170℃~約220℃、約185℃~約220℃、約200℃~約220℃、約170℃~約200℃、又は約185℃~約200℃の温度で行われる。幾つかの実施形態では、(c)における混合は約170℃~約250℃の温度で行われる。幾つかの実施形態では、(c)における混合は約220℃の温度で行われる。
【0123】
[0126] ZnSeシェル及びZnSシェルの製造の詳細を以下で議論する。
【0124】
ZnSeシェルの製造
[0127] 幾つかの実施形態では、コアナノ構造の上に堆積される第1のシェルはZnSeシェルである。
【0125】
[0128] 幾つかの実施形態では、ZnSeシェルを形成するためにコア又はコア/シェルナノ構造に接触させるシェル前駆体は、亜鉛源及びセレン源を含む。
【0126】
[0129] 幾つかの実施形態では、亜鉛源は、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、炭酸亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、過塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、亜鉛源はオレイン酸亜鉛である。幾つかの実施形態では、亜鉛源は塩化亜鉛である。
【0127】
[0130] 幾つかの実施形態では、セレン源は、トリオクチルホスフィンセレニド、トリ(n-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(sec-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(tert-ブチル)ホスフィンセレニド、トリメチルホスフィンセレニド、トリフェニルホスフィンセレニド、ジフェニルホスフィンセレニド、フェニルホスフィンセレニド、シクロヘキシルホスフィンセレニド、オクタセレノール、ドデカセレノール、セレノフェノール、元素セレン、セレン化水素、ビス(トリメチルシリル)セレニド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、セレン源はトリオクチルホスフィンセレニドである。
【0128】
[0131] 幾つかの実施形態では、コア中のIn(1-x)GaxPの、ZnSeシェルを形成するための亜鉛源に対するモル比は、1:2~1:1000、1:2~1:100、1:2~1:50、1:2~1:25、1:2~1:15、1:2~1:10、1:2~1:5、1:5~1:1000、1:5~1:100、1:5~1:50、1:5~1:25、1:5~1:15、1:5~1:10、1:10~1:1000、1:10~1:100、1:10~1:50、1:10~1:25、1:10~1:15、1:15~1:1000、1:15~1:100、1:15~1:50、1:15~1:25、1:25~1:1000、1:25~1:100、1:25~1:50、1:50~1:1000、1:50~1:100、又は1:100~1:1000である。
【0129】
[0132] 幾つかの実施形態では、コア中のIn(1-x)GaxPの、ZnSeシェルを形成するためのセレン源に対するモル比は、1:2~1:1000、1:2~1:100、1:2~1:50、1:2~1:25、1:2~1:15、1:2~1:10、1:2~1:5、1:5~1:1000、1:5~1:100、1:5~1:50、1:5~1:25、1:5~1:15、1:5~1:10、1:10~1:1000、1:10~1:100、1:10~1:50、1:10~1:25、1:10~1:15、1:15~1:1000、1:15~1:100、1:15~1:50、1:15~1:25、1:25~1:1000、1:25~1:100、1:25~1:50、1:50~1:1000、1:50~1:100、又は1:100~1:1000である。
【0130】
[0133] 幾つかの実施形態では、ZnSeシェルは、約0.5nm~約4nm、約0.5nm~約3.5nm、約0.5nm~約3nm、約0.5nm~約2.5nm、約0.5nm~約2nm、約0.5nm~約1.5nm、約0.5nm~約1nm、約1nm~約4nm、約1nm~約3.5nm、約1nm~約3nm、約1nm~約2.5nm、約1nm~約2nm、約1nm~約1.5nm、約1.5nm~約4nm、約1.5nm~約3.5nm、約1.5nm~約3nm、約1.5nm~約2.5nm、約1.5nm~約2nm、約2nm~約4nm、約2nm~約3.5nm、約2nm~約3nm、約2nm~約2.5nm、約2.5nm~約4nm、約2.5nm~約3.5nm、約2.5nm~約3nm、約3nm~約4nm、約3nm~約3.5nm、又は約3.5nm~約4nmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、ZnSeシェルは約2nmの厚さを有する。
【0131】
ZnSeシェルの上へのZnSシェルの製造
[0134] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルナノ構造の上に堆積されるシェルはZnSシェルである。幾つかの実施形態では、ZnSシェルはMgと合金化されてZnMgSが形成される。
【0132】
[0135] 幾つかの実施形態では、ZnSシェルを形成するためにコア又はコア/シェルナノ構造に接触させるシェル前駆体は、亜鉛源及び硫黄源を含む。
【0133】
[0136] 幾つかの実施形態では、ZnSシェルは、ナノ構造表面における欠陥を不動態化させ、これによって、量子収率が改善され、LED及びレーザーなどのデバイス中に使用する場合の効率がより高くなる。さらに、欠陥状態によって生じるスペクトル不純物を不動態化によって除去することができ、これによって彩度が増加する。
【0134】
[0137] 幾つかの実施形態では、亜鉛源は、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、炭酸亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、過塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、亜鉛源は酢酸亜鉛である。
【0135】
[0138] 幾つかの実施形態では、硫黄源は、元素硫黄、オクタンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール、トリブチルホスフィンスルフィド、イソチオシアン酸シクロヘキシル、α-トルエンチオール、エチレントリチオカーボネート、アリルメルカプタン、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、硫黄源はドデカンチオールである。
【0136】
[0139] 幾つかの実施形態では、コア中のIn(1-x)GaxPの、ZnSシェルを形成するための亜鉛源に対するモル比は、1:2~1:1000、1:2~1:100、1:2~1:50、1:2~1:25、1:2~1:15、1:2~1:10、1:2~1:5、1:5~1:1000、1:5~1:100、1:5~1:50、1:5~1:25、1:5~1:15、1:5~1:10、1:10~1:1000、1:10~1:100、1:10~1:50、1:10~1:25、1:10~1:15、1:15~1:1000、1:15~1:100、1:15~1:50、1:15~1:25、1:25~1:1000、1:25~1:100、1:25~1:50、1:50~1:1000、1:50~1:100、又は1:100~1:1000である。
【0137】
[0140] 幾つかの実施形態では、コア中のIn(1-x)GaxPの、ZnSシェルを形成するための硫黄源に対するモル比は、1:2~1:1000、1:2~1:100、1:2~1:50、1:2~1:25、1:2~1:15、1:2~1:10、1:2~1:5、1:5~1:1000、1:5~1:100、1:5~1:50、1:5~1:25、1:5~1:15、1:5~1:10、1:10~1:1000、1:10~1:100、1:10~1:50、1:10~1:25、1:10~1:15、1:15~1:1000、1:15~1:100、1:15~1:50、1:15~1:25、1:25~1:1000、1:25~1:100、1:25~1:50、1:50~1:1000、1:50~1:100、又は1:100~1:1000である。
【0138】
[0141] 幾つかの実施形態では、ZnSシェルは、約約0.5nm~約3nm、約0.5nm~約2.5nm、約0.5nm~約2nm、約0.5nm~約1.5nm、約0.5nm~約1nm、約1nm~約3nm、約1nm~約2.5nm、約1nm~約2nm、約1nm~約1.5nm、約1.5nm~約3nm、約1.5nm~約2.5nm、約1.5nm~約2nm、約2nm~約3nm、約2nm~約2.5nm、又は約2.5nm~約3nmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、ZnSシェルは約0.5nm~約3nmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、ZnSシェルは約1nmの厚さを有する。
【0139】
コア/シェルナノ構造
[0142] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、In(1-x)GaxP/ZnSe/ZnSコア/シェル/シェルナノ構造である。幾つかの実施形態では、コア/シェル(s)ナノ構造は、In(1-x)GaxP/ZnSe/ZnSコア/シェル/シェル量子ドットである。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、In(1-x)GaxP/ZnSe/ZnSeSコア/シェル/シェルナノ構造である。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、In(1-x)GaxP/ZnSe/ZnSeSコア/シェル/シェル量子ドットである。
【0140】
[0143] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、高いフォトルミネッセンス量子収率を示す。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、30%~99%、30%~95%、30%~90%、30%~85%、30%~80%、30%~60%、30%~50%、30%~40%、40%~99%、40%~95%、40%~90%、40%~85%、40%~80%、40%~60%、40%~50%、50%~99%、50%~95%、50%~90%、50%~85%、60%~99%、60%~95%、60%~85%、80%~99%、80%~90%、80%~85%、85%~99%、又は85%~95%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、50%~60%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。
【0141】
[0144] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、青色、インジゴ、紫色、及び/又は紫外の範囲で発光する。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、約500nm~約540nm、約500nm~約530nm、約500nm~約520nm、約500nm~約510nm、約510nm~約540nm、約510nm~約530nm、約510nm~約520nm、約520nm~約540nm、約520nm~約530nm、又は約530nm~約540nmの発光極大を有する。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、約520nmの発光極大を有する。
【0142】
[0145] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造の最大吸光度の波長は、約430nm~約490nm、約430nm~約470nm、約430nm~約450nm、約450nm~約490nm、約450nm~約470nm、又は約470nm~約490nmである。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造の最大吸光度の波長は約450nmである。
【0143】
[0146] 結果として得られるコア/シェルナノ構造は、場合により、マトリックス(例えば、有機ポリマー、ケイ素含有ポリマー、無機、ガラス状、及び/又はその他のマトリックス)の中に埋め込まれ、フィルムマトリックス中に存在し、ナノ構造発光体の製造に使用される、及び/又はデバイス中、例えば、LED、バックライト、ダウンライト、又は他のディスプレイ若しくは照明装置、又は光学フィルターの中に組み込まれる。代表的な発光体及び照明装置は、例えば、所望の波長若しくはその付近に発光極大を有するナノ構造の集団を混入することによって特定の色の光を発生させることができ、又は異なる発光極大を有する2つ以上の異なるナノ構造集団を混入することによって広い色域を発生させることができる。種々の適切なマトリックスは当技術分野において周知である。例えば、米国特許第7,068,898号、並びに米国特許出願公開第2010/0276638号、米国特許出願公開第2007/0034833号、及び米国特許出願公開第2012/0113672号を参照されたい。代表的なナノ構造発光フィルム、LED、バックライトユニットなどは、例えば、米国特許出願公開第2010/0276638号、米国特許出願公開第2012/0113672号、米国特許出願公開第2008/0237540号、米国特許出願公開第2010/0110728号、及び米国特許出願公開第2010/0155749号、並びに米国特許第7,374,807号、米国特許第7,645,397号、米国特許第6,501,091号、及び米国特許第6,803,719号に記載されている。
【0144】
[0147] 幾つかの実施形態では、フィルムマトリックス中に存在する場合のコア/シェルナノ構造の青色透過率は約15%以下であり、このフィルムマトリックスは、約1μm~約25μmの厚さを有し、乾燥質量基準で約10%~約60%のコア/シェルナノ構造を含む。幾つかの実施形態では、フィルムマトリックス中に存在する場合のナノ構造の青色透過率は、約0%~約15%、約0%~約12%、約0%~約10%、約0%~約5%、約5%~約15%、約5%~約12%、約5%~約10%、約10%~約15%、約10%~約12%、又は約12%~約15%であり、このフィルムマトリックスは、約1μm~約25μmの厚さを有し、乾燥質量基準で約10%~約60%のコア/シェルナノ構造を含む。幾つかの実施形態では、フィルムマトリックス中に存在する場合のナノ構造の青色透過率は約5%、このフィルムマトリックスは、約1μm~約25μmの厚さを有し、乾燥質量基準で約10%~約60%のコア/シェルナノ構造を含む。幾つかの実施形態では、フィルムマトリックスは、ナノ構造を含まない場合に1%未満の青色透過率を有する。本明細書において使用される場合、青色透過率は、フィルムマトリックスを通過する入射光の分率として定義され、この入射光は約450nmの波長を有する。
【0145】
[0148] 本発明のコア/シェルナノ構造は、青色LEDが集中する場所で450nmにおいて高い吸光度を有する。青色吸光度は、全質量当たりの450nmにおける光学濃度(OD450/全質量)として測定される。幾つかの実施形態では、ナノ構造のOD450/全質量は、約0.3~約1、約0.4~約1、約0.5~約1、約0.6~約1、約0.7~約1、約0.8~約1、約0.9~約1、約約0.3~約0.9、約0.4~約0.9、0.5及び約0.9、約0.6~約0.9、約0.7~約0.9、約0.8~約0.9、約0.3~約0.8、約0.4~約0.8、約0.5~約0.8、約0.6~約0.8、約0.7~約0.8、約0.3~約0.7、約0.4~約0.7、約0.5~約0.7、約0.6~約0.7、約0.3~約0.6、約0.4~約0.6、約0.5~約0.6、約0.3~約0.5、約0.4~約0.5、又は0.3~約0.4である。幾つかの実施形態では、ナノ構造のOD450/全質量は約0.5~約1である。幾つかの実施形態では、ナノ構造のOD450/全質量は約0.5~約0.7である。幾つかの実施形態では、ナノ構造のOD450/全質量は約0.6である。
【0146】
[0149] 上記方法によって得られるコア/シェルナノ構造も本発明の特徴である。したがって、ある種の実施形態では、コア/シェルナノ構造の集団が提供される。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は量子ドットである。
【0147】
ナノ構造層
[0150] 幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含むナノ構造層であって、ナノ構造がIn(1-x)GaxPコア(ここで0<x<1である)と、少なくとも1つのシェルとを含み、ナノ構造層のOD450/全質量が約0.5~約1であるナノ構造層を提供する。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルはZnSe及びZnS(又はZnSeS)を含む。
【0148】
[0151] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。
【0149】
成形物品
[0152] 幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含む成形物品であって、ナノ構造が、In(1-x)GaxPコアと少なくとも1つのシェルとを含み、ナノ構造のOD450/全質量が約0.5~約1である成形物品を提供する。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルはZnSe及びZnS(又はZnSeS)を含む。
【0150】
[0153] 幾つかの実施形態では、成形物品は、フィルム、表示装置用基板、又は発光ダイオードである。
【0151】
[0154] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。
【0152】
[0155] 幾つかの実施形態では、表示装置は量子ドット色変換器を含む。幾つかの実施形態では、表示装置は、バックプレーンと;バックプレーン上に配置されるディスプレイパネルと;ナノ構造を含む量子ドット層とを含む。幾つかの実施形態では、量子ドット層は、ディスプレイパネル上に配置される。幾つかの実施形態では、量子ドット層は、パターン化された量子ドット層を含む。
【0153】
[0156] 幾つかの実施形態では、バックプレーンは、青色LED、LCD、OLED、又はマイクロLEDを含む。
【0154】
[0157] 幾つかの実施形態では、表示装置は量子ドット色変換器を含む。幾つかの実施形態では、表示装置は、ナノ構造を含む量子ドット層と、青色LED、OLED、マイクロLED、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される光源要素とを含む。幾つかの実施形態では、量子ドット層は光源要素上に配置される。幾つかの実施形態では、量子ドット層は、パターン化された量子ドット層を含む。
【0155】
[0158] 幾つかの実施形態では、量子ドット層は約1μm~約25μmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、量子ドット層は約5μm~約25μmの厚さを有する。幾つかの実施形態では、量子ドット層は約10μm~約12μmの厚さを有する。
【0156】
[0159] 幾つかの実施形態では、表示装置又は発光ダイオードは、青色光フィルターを含まない。幾つかの実施形態では、青色光フィルターは、約510nm未満又は約490nm未満の波長の光に対して15%未満、10%未満、又は5%未満の透過率を有する。
【0157】
ナノ構造層の製造
[0160] 幾つかの実施形態では、ナノ構造層は、ポリマーマトリックス中に埋め込まれてよい。本明細書において使用される場合、「埋め込まれる」という用語は、マトリックスの成分の大部分を構成するポリマーで、ナノ構造集団が取り囲まれる又は包み込まれることを示すために使用される。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのナノ構造集団は、適切には、マトリックス全体にわたって均一に分布する。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのナノ構造集団は、用途に特異的な分布により分布する。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、ポリマー中に混合され、基板の表面に塗布される。
【0158】
[0161] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物が堆積されて、ナノ構造層が形成される。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、限定するものではないが、塗装、スプレーコーティング、溶媒スプレー、湿式コーティング、接着剤コーティング、スピンコーティング、テープコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、インクジェット蒸気噴射、ドロップキャスティング、ブレードコーティング、ミスト堆積、又はそれらの組み合わせなどの当技術分野において周知のあらゆる適切な方法によって堆積することができる。ナノ構造組成物は、基板の所望の層の上に直接コーティングすることができる。或いは、ナノ構造組成物から、独立した要素として固体層を形成し、続いて基板に取り付けることができる。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、1つ以上のバリア層の上に堆積することができる。
【0159】
[0162] 幾つかの実施形態では、ナノ構造層は堆積後に硬化される。適切な硬化方法としては、UV硬化などの光硬化、及び熱硬化が挙げられる。ナノ構造層の形成に、従来の積層膜加工方法、テープコーティング方法、及び/又はロールツーロール製造方法を使用することができる。
【0160】
スピンコーティング
[0163] 幾つかの実施形態では、スピンコーティングを用いてナノ構造組成物が基板上に堆積される。スピンコーティングでは、典型的には、スピナーと呼ばれる機械の上に搭載され真空によって固定される基板の中央の上に少量の材料が配置される。スピナーによって基板が高速回転し、それによって向心力が生じることで、基板の中央から端部へ材料が広がる。ほとんどの材料は振り落とされるが、ある量は基板上に残存し、回転を続けると表面上に材料の薄い膜が形成される。膜の最終厚さは、回転速度、加速、及び回転時間などのスピンプロセスのために選択したパラメーターに加えて、堆積される材料及び基板の性質によって決定される。制御された厚さを実現するために必要なスピンコーティング条件は、堆積される材料の粘度及び温度に大きく依存する。幾つかの実施形態では、500rpm~6000rpmのスピン速度が10~60秒のスピン時間で使用される。
【0161】
ミスト堆積
[0164] 幾つかの実施形態では、ミスト堆積を用いてナノ構造組成物が基板上に堆積される。ミスト堆積は、室温及び大気圧で行われ、プロセス条件を変化させることによって膜厚を精密に制御することができる。ミスト堆積中、窒素ガスによって、液体源材料が微細なミストとなり堆積チャンバーまで送られる。次にこのミストは、フィールドスクリーンとウエハホルダーとの間の高電圧電位によってウエハ表面に引き寄せられる。液滴がウエハ表面上で合体してから、ウエハをチャンバーから取り出し、熱硬化させることで溶媒を蒸発させる。液体前駆体は、溶媒と堆積される材料との混合物である。これは加圧窒素ガスによって噴霧器まで送られる。Price, S.C., et al., “Formation of Ultra-Thin Quantum Dot Films by Mist Deposition,” ESC Transactions 11:89-94 (2007)。
【0162】
スプレーコーティング
[0165] 幾つかの実施形態では、スプレーコーティングを用いてナノ構造組成物が基板上に堆積される。スプレーコーティングの典型的な装置は、スプレーノズル、噴霧器、前駆体溶液、及びキャリアガスを含む。スプレー堆積プロセスでは、前駆体溶液は、キャリアガスによって、又は霧化(例えば、超音波、エアブラスト、又は静電気)によって、マイクロサイズの液滴に微細化される。噴霧器を出た液滴は、希望通りに制御され調節されるキャリアガスを用いることで、ノズルから基板表面付近まで加速される。基板上を完全に覆うための設計によって、スプレーノズルと基板との間の相対運動が規定される。
【0163】
[0166] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物の塗布は、溶媒をさらに含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物を塗布する為の溶媒は、水、有機溶媒、無機溶媒、ハロゲン化有機溶媒、又はそれらの混合物である。実例となる溶媒としては、水、D2O、アセトン、エタノール、ジオキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロパノール、アニソール、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、トルエン、ジメチルスルホキシド、シクロペンタノン、テトラメチレンスルホキシド、キシレン、ε-カプロラクトン、テトラヒドロフラン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
[0167] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物を熱硬化させてナノ構造層を形成する。幾つかの実施形態では、組成物はUV光を用いて硬化させる。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、ナノ構造膜のバリア層の上に直接コーティングされ、続いて追加のバリア層がナノ構造層の上に堆積されて、ナノ構造膜が形成される。強度、安定性、及びコーティング均一性を付与するため、並びに材料の不整合性、気泡形成、及びバリア層材料又は他の材料のしわや折りたたみを防止するために、バリア膜の下に支持基板を使用することができる。さらに、上部及び底部のバリア層の間に材料を封止するために、ナノ構造層の上に1つ以上のバリア層が好ましくは堆積される。適切には、バリア層を積層膜として積層し、任意選択的に封止又はさらなる処理を行い、続いてそのナノ構造膜を特定の発光デバイス中に組み込むことができる。ナノ構造組成物の堆積プロセスは、当業者によって理解されるように、追加の又は種々の構成要素を含むことができる。このような実施形態によって、明るさ及び色などのナノ構造の発光特性(例えば、量子ドット膜の白色点を調整するため)、ナノ構造の膜厚、及びその他の特性のインラインプロセス調整が可能となる。さらに、これらの実施形態では、製造中のナノ構造膜の特性の定期的な試験を行うことができ、厳密なナノ構造膜の特性を実現するためにあらゆる必要な切り換えを行うことができる。ナノ構造膜の形成に使用される混合物のそれぞれの量を電子的に変更するためにコンピュータープログラムを使用できるので、このような試験及び調整は、加工ラインの機械的構成を変更することなく行うこともできる。
【0165】
バリア層
[0168] 幾つかの実施形態では、成形物品は、ナノ構造層の一方又は両方の側のいずれかの上に配置された1つ以上のバリア層を含む。適切なバリア層は、ナノ構造層及び成形物品を高温、酸素、及び水分などの周囲条件から保護する。適切なバリア材料としては、疎水性であり、成形物品に対し化学的及び機械的に適合性であり、光安定性及び化学安定性を示し、高温に耐えることができる非黄変性で透明な光学材料が挙げられる。幾つかの実施形態では、1つ以上のバリア層は、成形物品と屈折率整合している。幾つかの実施形態では、成形物品のマトリックス材料と1つ以上の隣接するバリア層とは、屈折率整合して同様の屈折率を有し、そのためバリア層を透過してして成形物品に向かう光の大部分は、バリア層からナノ構造層中まで到達する。この屈折率整合によって、バリア材料とマトリックス材料との間の界面における光学的損失が減少する。
【0166】
[0169] バリア層は、適切には固体材料であり、硬化した液体、ゲル、又はポリマーであってよい。バリア層は、個別の用途に依存して可撓性又は非可撓性の材料を含むことができる。バリア層は、好ましくは平面状の層であり、個別の発光用途に依存してあらゆる適切な形状及び表面積構成を含むことができる。幾つかの実施形態では、1つ以上のバリア層は積層膜加工技術に適合し、それによってナノ構造層が、少なくとも第1のバリア層の上に配置され、少なくとも第2のバリア層が、ナノ構造層の反対側のナノ構造層の上に配置されて、一実施形態による成形物品が形成される。適切なバリア材料としては、当技術分野において周知のあらゆる適切なバリア材料が挙げられる。幾つかの実施形態では、適切なバリア材料としては、ガラス、ポリマー、及び酸化物が挙げられる。適切なバリア層材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマー;酸化ケイ素、酸化チタン、又は酸化アルミニウム(例えば、SiO2、Si2O3、TiO2、又はAl2O3)などの酸化物;並びに適切なそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、成形物品の各バリア層は、異なる材料又は組成物を含む少なくとも2つの層を含み、この多層バリアによって、バリア層中でピンホール欠陥の位置がそろうのが回避され、又は減少し、ナノ構造層中への酸素及び水分の浸透に対する有効なバリアとなる。ナノ構造層は、あらゆる適切な材料又は材料の組み合わせ、並びにあらゆる適切な数のバリア層を、ナノ構造層のいずれか又は両方の側に含むことができる。バリア層の材料、厚さ、及び数は、個別の用途に依存し、適切には、ナノ構造層のバリア保護及び明るさを最大化しながら、成形物品の厚さが最小限となるように選択される。好ましい実施形態では、各バリア層は、積層膜、好ましくは二重積層膜を含み、ここで各バリア層の厚さは、ロールツーロール又は積層製造プロセスにおいてしわがなくなるのに十分な厚さである。バリアの数又は厚さは、ナノ構造が重金属又は他の毒性材料を含む実施形態では法律上の毒性の指針にさらに依存することがあり、この指針によってより多い又はより厚いバリア層が必要となる場合がある。バリアのさらなる考慮点としては、コスト、利用可能性、及び機械的強度が挙げられる。
【0167】
[0170] 幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、ナノ構造層のそれぞれの側に隣接する2つ以上のバリア層、例えば、ナノ構造層のそれぞれの側の上の2或いは3層、又はそれぞれの側の上の2つのバリア層を含む。幾つかの実施形態では、各バリア層は、薄いガラス板、例えば、約100μm、100μm以下、又は50μm以下の厚さを有するガラス板を含む。
【0168】
[0171] 成形物品の各バリア層はあらゆる適切な厚さを有することができ、これは当業者に理解されるように、発光装置及び用途、並びにバリア層及びナノ構造層などの個別の膜の構成要素の個別の要求及び特性に依存する。幾つかの実施形態では、各バリア層は、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、又は15μm以下の厚さを有することができる。ある実施形態では、バリア層は、酸化ケイ素、酸化チタン、及び酸化アルミニウム(例えば、SiO2、Si2O3、TiO2、又はAl2O3)などの材料を含むことができる酸化物コーティングを含む。酸化物コーティングは、約10μm以下、5μm以下、1μm以下、又は100nm以下の厚さを有することができる。ある実施形態では、バリアは、約100nm以下、10nm以下、5nm以下、又は3nm以下の厚さの薄い酸化物コーティングを含む。上部及び/又は底部のバリアは、薄い酸化物コーティングからなることができ、又は薄い酸化物コーティングと1つ以上の追加の材料層とを含むことができる。
【0169】
ナノ構造層の特徴及び実施形態
[0172] 幾つかの実施形態では、ナノ構造層は表示装置を形成するために使用される。本明細書において使用される場合、表示装置は、発光ディスプレイを有するあらゆるシステムを意味する。このようなデバイスとしては、液晶ディスプレイ(LCD)を含むデバイス、OLED又はマイクロLEDなどの発光ディスプレイ、テレビ、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、ゲーム機、電子書籍リーダー、デジタルカメラなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0170】
[0173] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、「オンチップ」配置によって表示装置中に組み込まれる。本明細書において使用される場合、「オンチップ」は、LEDカップ中にナノ構造を配置することを意味する。幾つかの実施形態では、LEDカップを満たすために、ナノ構造は樹脂又は流体中に溶解される。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、「ニアチップ」配置によって表示装置中に組み込まれる。本明細書において使用される場合、「ニアチップ」は、放出される光がナノ構造フィルムを通過するように、LED組立体の上面にナノ構造をコーティングすることを意味する。
【0171】
改善された性質を有する成形物品
[0174] 幾つかの実施形態では、ナノ構造を用いて製造された成形物品は、約1.5%~約20%、約1.5%~約15%、約1.5%~約12%、約1.5%~約10%、約1.5%~約8%、約1.5%~約4%、約1.5%~約3%、約3%~約20%、約3%~約15%、約3%~約12%、約3%~約10%、約3%~約8%、約8%~約20%、約8%~約15%、約8%~約12%、約8%~約10%、約10%~約20%、約10%~約15%、約10%~約12%、約12%~約20%、約12%~約15%、又は約15%~約20%のEQEを示す。幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。幾つかの実施形態では、成形物品は発光ダイオードである。
【0172】
[0175] 幾つかの実施形態では、ナノ構造を用いて製造された成形物品は、500nm~580nmの発光極大を有するフォトルミネッセンススペクトルを示す。幾つかの実施形態では、ナノ構造を用いて製造された成形物品は、510nm~550nmの発光極大を有するフォトルミネッセンススペクトルを示す。幾つかの実施形態では、ナノ構造を用いて製造された成形物品は、約530nmの発光極大を有するフォトルミネッセンススペクトルを示す。
【0173】
[0176] 以下の実施例は、本明細書に記載の生成物及び方法の説明的で非限定的なものである。分野において通常遭遇し、本開示を考慮すれば当業者には明らかとなる、種々の条件、配合、及びその他のパラメーターの適切な修正及び適合は、本発明の意図及び範囲内となる。
【実施例】
【0174】
実施例1
In
(1-x)Ga
xPナノ構造の合成
[0177] In
(1-x)Ga
xPナノ構造を製造するための多段階合成方法を
図1中に示す。溶融塩に対してInPナノ構造が溶解性になり、カルボン酸インジウムが分解する320℃よりも高温に対して抵抗性となるようにするため、溶融塩共融混合物中に分散させる前に、InPナノ構造のリガンド交換プロセスを行って、InPナノ構造上に結合した有機カルボン酸塩リガンドをスルフィドリガンドで置換した。
【0175】
[0178] 小規模(InPナノ構造の重量が約500mg未満)において、ある体積のトルエン中のInPナノ構造を、同じ体積の過剰の硫化カリウムを含むホルムアミドと混合することによってリガンド交換を行い、続いて約1時間撹拌した。この手順をスケールアップすると、変換がより遅くなったが、その理由は、二相反応の反応速度は、界面の断面積によって制限されるためであった。この理由のため、1グラムを超えるInPナノ構造の規模では、反応物を少なくとも20時間撹拌した。幾つかの方法では、反応を加速するために高剪断混合も使用した。
【0176】
[0179] リガンド交換後、ナノ構造をトルエン層からより高密度のホルムアミド層中に移動させた。次にこのホルムアミド溶液をトルエンで5回洗浄して、過剰の有機不純物を除去した後、アセトニトリルを用いてナノ構造を沈殿させて固体を得た。次にこの固体を以下の溶媒のそれぞれで2回洗浄した:過剰の硫化カリウムを除去するためのジメチルホルムアミド;アセトニトリル;及びジエチルエーテル。最終のジエチルエーテルの洗浄によって、ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルが除去され、粉末の乾燥がより容易になった。この十分な精製計画の後、ナノ構造含む粉末は、600℃までの熱重量分析(TGA)測定中に5%未満の質量減を示した(
図2)。重要なこととして、さらなる9%のTGA減少を示す材料は、本明細書に記載の溶融塩化学には適合しておらず、残留有機物の炭化であった。したがって、記載の精製方法が好ましい。
【0177】
[0180] 上記のようにして得たInPナノ構造及び硫黄含有リガンド(InP/S
x
2-)を含む組成物の粉末を、乳鉢及び乳棒を用いて、LiBr-KBr-CsBr共融混合物とともに粉砕し、続いて300℃まで加熱して、InPを溶融塩共融混合物中に溶解させた。特に、加熱前にInPを塩混合物とともに粉砕しない場合は、ナノ構造は焼結すると思われ、溶融塩中に分散しなかった。これらの高温での撹拌を維持するために、アルミニウム加熱ブロック、撹拌ホットプレート、及びデジタル温度系を含む装置を組み立てた(
図4)。アルミニウムブロックは、反応中に40mLバイアルのキャップを比較的低温に維持するのに十分な短さであり、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の解重合による問題を回避するためにガラス撹拌棒を使用した。この装置によって、温度制御、撹拌が行われ、反応容器の密閉が可能であった。
【0178】
[0181] InP/Sx
2-が溶融塩混合物中に十分に溶解した後、混合物を加熱ブロックから移動させ、周囲温度のアルミニウム中に入れて急冷し、混合物を固化させた。塩を冷却した後、ハロゲン化ガリウム(GaX3、X=Cl、Br、I)を混合物に加えた。バイアルにしっかりとキャップを取り付けて、混合物を再び300℃を超えるまで加熱した。Ga合金化の程度は、種々の量のGaX3の添加(0.3~5.0当量で変動)、反応温度(300~350℃)、及び反応時間(0.5~3時間)によって制御できた。Ga合金化プロセス中、混合物の色が薄くなって見え、これはバンドギャップの増加と一致した。
【0179】
[0182] 溶融塩中のGa合金化後、混合物を冷却し、乳鉢及び乳棒を用いて粉砕し、塩を水に溶解させた。過剰の硫化カリウムを加えて長時間撹拌することによって、残りのIn
(1-x)Ga
xPナノ構造をホルムアミド中に分散させた。ナノ構造がホルムアミド中に溶解した後、トルエンと臭化ジラウリルジメチルアンモニウムとの混合物を加えて、ナノ構造をトルエン中に移動させた。トルエン中に溶解させた後、ナノ構造の分光分析を行い、シェル形成反応に使用した。
図3は、トルエン中のIn
(1-x)Ga
xPナノ構造及びそれらの調製に用いたInPナノ構造のUV-vis吸光度スペクトルを示している。
図3は、InPコアからIn
(1-x)Ga
xPコア(ここでx=0.55である)への変換に伴うスペクトル変化を示している。55%のGa
3+含有量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)によって求めた。
【0180】
実施例2
In(1-x)GaxP合金化コアのシェル形成手順
[0183] In(1-x)GaxPコアの合成に使用した試薬を表1中に列挙する。
【0181】
【0182】
手順:
[0184] 100mLの三口丸底フラスコに、熱電対アダプター、磁気撹拌子、ガスアダプター、及び隔膜を取り付けた。オレイン酸亜鉛、オクタデセン、及びラウリン酸をこのフラスコ中に加え、脱気した。次にフラスコを真空ラインに取り付けて、減圧下に置き、約10分間、約80℃まで加熱した。このフラスコを短時間で正のN2圧に戻し、約270℃まで上昇させた。In(1-x)GaxPナノ構造と、第1ショットのセレン(TOPSe #1)とを約140℃において加えた。次にパージトラップを真空ラインに取り付け、200℃において取り外した。混合物を再び270℃まで上昇させ、第2ショットのセレン(TOPSe #2)を2分かけて加えた。混合物を310℃まで上昇させ、その温度を20分間維持した。次にドデカンチオールを10分かけて加え、この反応温度を約50分間維持した。TOPを加えて反応をクエンチし、反応物を170℃まで冷却した。混合物をグローブボックス中に入れ、続いてトルエン及びエタノールによる精製を行った。
【0183】
[0185] In(l-x)GaxPナノ構造に、オレイン酸亜鉛、TOPSe、及びドデカンチオールの混合物を用いたシェル形成によって、In(1-x)GaxP/ZnSe/ZnSを含む組成を有する発光性ナノ構造を得た。これらのナノ構造は、InPコアを含むコア-シェルナノ構造よりも短い波長で発光した。さらに質量基準で吸収される青色光の量(OD450/全質量)は、InPコアを有するナノ構造の約0.4の最大値から、In(1-x)GaxPコアを有するナノ構造の約0.6まで改善された(表2)。
【0184】
【0185】
[0186] 結論として、無機リガンド交換方法及びガリウム源との溶融塩反応によって製造したIn(1-x)GaxPコアを有するナノ構造は、InPコアを有するナノ構造と比較して青色光吸収の改善を示した。
【0186】
実施例3
QDCC中の用途
[0187] QDCC用途において、パターン化された量子ドット層(例えば、
図4中に示されるようなQDPR)は、ディスプレイパネル(例えば、
図4中に示されるLCD)の前面付近に配置される。バックプレーンを通過する青色光は、パターン化された量子ドット層によって吸収され、緑色又は赤色のいずれかの光を放出する(
図6)。バックプレーンは、青色LED、LCD、OLED、マイクロLED、又は青色光源を有するあらゆる他のモジュールを含むことができる。原理上は、青色量子ドットも使用される場合、紫色及びUV源を使用できる。
【0187】
[0188] ここで本発明を十分に説明してきたが、本発明又はそのあらゆる実施形態に影響を与えない条件、配合物、及びその他のパラメーターの広く同等の範囲内で同じことを実施できることを当業者は理解されよう。本明細書において引用されるすべての特許、特許出願、及び刊行物は、それらの全体が参照により完全に本明細書に援用される。