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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】無人作業車
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240708BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
G05D1/43
E04G21/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021016274
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119283
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】599035627
【氏名又は名称】学校法人加計学園
(73)【特許権者】
【識別番号】000103404
【氏名又は名称】オーエム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊東 和輝
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直輝
(72)【発明者】
【氏名】能瀬 貴大
(72)【発明者】
【氏名】土谷 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 誠二
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-196512(JP,A)
【文献】特開2019-67317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/84
E04G 21/14-21/22
E04F 15/00-15/22
E04F 21/00-21/32
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する溝に囲まれた同一の平面要素が多数並ぶ作業平面上を、作業平面に設定される移動基準を目標として移動させ、搭載させた作業装置に設定された作業基準を溝の交点に一致させた状態で、作業装置に特定作業を実行させる無人作業車であって、
作業装置を搭載させた移動台車に、
作業平面に沿って移動台車を全方向へ進退自在に移動させる移動手段と、
移動基準とする溝の交点から異なる方向に延びる2以上の溝の点群データを取得する計測手段と、
作業装置の作業基準を一致させた溝の交点から延びる溝に掛合させる複数基の姿勢維持手段と、
作業装置、移動手段、計測手段、姿勢維持手段それぞれを制御させる制御手段とを備え、
制御手段は、移動基準とする溝の交点から異なる方向に延びる2以上の溝に合致する基準線データを有し、計測手段が取得した点群データの溝が基準線データと合致するように移動手段を制御して移動台車を移動させることにより、作業装置の作業基準を溝の交点に一致させ、かつ作業装置の作業基準を一致させた溝の交点から延びる溝それぞれに姿勢維持手段を掛合させた状態で作業装置を起動させ、特定作業を実行させる無人作業車。
【請求項2】
姿勢維持手段は、下方に向けて付勢された状態で移動台車に設けられ、下方に突出させて溝に掛合させる請求項1記載の無人作業車。
【請求項3】
姿勢維持手段は、下方に向けて昇降自在な状態で移動台車に設けられ、下降させて溝に掛合させる請求項1又は2いずれか記載の無人作業車。
【請求項4】
姿勢維持手段は、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点を挟んで同じ溝に掛合させる請求項1~3いずれか記載の無人作業車。
【請求項5】
姿勢維持手段は、掛合させる溝より幅が広く、前記溝の延在方向に回動自在なローラで、溝に掛合させる幅の周回フランジを設けている請求項1~4いずれか記載の無人作業車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
交差する溝に囲まれた同一の平面要素が多数並ぶ作業平面上を移動させ、搭載させた作業装置に設定された作業基準を溝の交点に一致させた状態で、作業装置に特定作業を実行させる無人作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
無人作業車は、例えば交差する溝に囲まれた同一の平面要素が多数並ぶ作業平面上を移動させ、搭載させた作業装置に設定された作業基準を溝の交点に一致させた状態で、作業装置に特定作業を実行させる。具体的には、十字状に交差する溝に囲まれた同一の床パネル(平面要素)が多数並ぶ二重床(作業平面)上を移動させ、所定位置で停止させた状態で、搭載させた作業装置に特定作業を実行させる無人作業車がいくつか提案されている(特許文献1~特許文献3)。
【0003】
特許文献1は、二重床(作業平面)上を走行する自動走行機構(作業台車及び移動手段)、高さ調整ボルトを回す自動ボルト回転機構(作業装置)、高さ調整ボルトの位置情報に基づいて自動走行機構を移動させ、作業装置を制御する自動制御手段(制御手段)を備え、溝の交点にある高さ調整ボルトに自動ボルト回転機構の作業基準を一致させ、高さ調整ボルトを回して二重床のレベル調整(特定作業)を実行させる二重床レベル自動調整装置(無人作業車)を開示する(特許文献1・請求項1)。特許文献1が開示する二重床レベル自動調整装置は、設計図面のCADデータやカメラの画像から得られる高さ調整ボルトの位置情報に基づいて、自動走行機構を制御する(特許文献1・[0017][0018])。
【0004】
特許文献2は、二重床(作業平面)の上面を形成する床パネル(フロアパネル、平面要素)を着脱するパネル着脱部と、床パネルを格納する格納部と、床パネルに設けられた軌道に追従して走行する走行部(作業台車及び移動手段)とを備えたフロアパネル着脱装置(無人作業車)を開示する(特許文献2・請求項1)。特許文献2が開示する床パネル着脱装置は、下部床に設けられた支柱の頂部を検出して位置決めする(特許文献2・請求項2)。具体的には、碁盤目状に配置された支柱を平面上の座標として使い(特許文献2・[0011])、走行部の側部に装着された色識別検知センサにより支柱のボス頂部を検出して走行部を位置決めする(特許文献2・[0015])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-160682号公報
【文献】特開平06-026205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示する二重床レベル自動調整装置は、高さ調整ボルト(溝の交点)の位置情報から、どのように自動走行機構を制御するかを明らかにしていない。位置ずれを補正しながら自動走行機構を制御するとすれば、特許文献2の支柱に代えて高さ調整ボルトをカメラの画像から検出し、高さ調整ボルトの位置情報を座標として自動走行機構を制御すると考えられる。つまり、特許文献1の二重床レベル自動調整装置と、特許文献2のフロアパネル着脱装置とは、溝の交点に位置する部材を座標として無人作業車の移動を制御する点が共通する。しかし、溝の交点に位置する部材を座標とする無人作業車の移動の制御は、次の問題がある。
【0007】
まず、溝の交点に位置する部材は、通常、平面要素(床パネル)から下方に下がって位置しているため、無人作業車(二重床レベル自動調整装置、フロアパネル着脱装置)からの距離によって見え方が異なり、カメラの撮影で得られる画像が斜めになるほどに画像の解像度が低下していくことから得られる位置情報が不正確となり、正確な移動の制御が難しくなる。この点、特許文献2では、平面要素と面一となる頂部のボスを検出するとしているが、ボスを締めたり、緩めたりすれば、当然ボスの高さが変化するため、無人作業車からの距離によって見え方が異なることに変わりがない。
【0008】
また、正確な移動の制御を実現するには、座標とする部材を複数検出しなければならないところ、離れた位置にある複数の部材をそれぞれ別のカメラで撮影するとすれば、すべてのカメラが対応する部材を正確に撮影することが難しくなる。とりわけ、無人作業車(二重床レベル自動調整装置、フロアパネル着脱装置)の水平面内における姿勢が傾くと、固定されたカメラでは溝の交点に位置する部材を複数同時に撮影することが難しくなる。ここで、広角のカメラで複数の部材をまとめて撮影することも考えられるが、それでも撮影される部材の数に制限があり、正確な移動の制御を実現することが難しくなる、と考えられる。
【0009】
離れた位置にある複数の部材をそれぞれ別のカメラで撮影することは、作業装置による特定作業の実行により、水平面内における無人作業車の姿勢が傾き、更に難しくなると予想される。作業装置は、高さ調整ボルト(特許文献1)を回転させたり、床パネル(特許文献2)を吊り下げて水平旋回させたりするため、作業装置を搭載させた作業台車を逆向きに回転させる反作用が加わる。特許文献1や特許文献2が開示する二重床レベル自動調整装置やフロアパネル着脱装置は、特段の制動手段が見られず、停止させた移動手段だけで作業台車の姿勢が維持されると考えているようであるが、実際には、制動手段がなければ無人作業車の姿勢は安定しない。
【0010】
このように、溝の交点にある部材を座標とする無人作業車の移動の制御には、正確性を担保する観点から問題があり、作業装置による特定作業の実行により、正確性が更に低下してしまう問題がある。そこで、交差する溝に囲まれた同一の平面要素が多数並ぶ作業平面上を移動させ、搭載させた作業装置に設定された作業基準を溝の交点に一致させた状態で、作業装置に特定作業を実行させる無人作業車において、無人作業車の移動の制御を正確にすると共に、移動の制御の正確性を担保するため、作業装置による特定作業の実行中における無人作業車の姿勢を特定及び維持するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
検討の結果開発したものが、交差する溝に囲まれた同一の平面要素が多数並ぶ作業平面上を、作業平面に設定される移動基準を目標として移動させ、搭載させた作業装置に設定された作業基準を溝の交点に一致させた状態で、作業装置に特定作業を実行させる無人作業車であって、作業装置を搭載させた移動台車に、作業平面に沿って移動台車を全方向へ進退自在に移動させる移動手段と、移動基準とする溝の交点から異なる方向に延びる2以上の溝の点群データを取得する計測手段と、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点から延びる溝に掛合させる複数基の姿勢維持手段と、作業装置、移動手段、計測手段、姿勢維持手段それぞれを制御させる制御手段とを備え、制御手段は、移動基準とする溝の交点から異なる方向に延びる2以上の溝に合致する基準線データを有し、計測手段が取得した溝の交点を含む点群データの溝が基準線データと合致するように移動手段を制御して移動台車を移動させることにより、作業装置の作業基準を溝の交点に一致させ、かつ作業装置の作業基準を一致させた溝の交点から延びる溝それぞれに姿勢維持手段を掛合させた状態で作業装置を起動させ、特定作業を実行させる無人作業車である。
【0012】
多数の平面要素は、基本的に平坦な同一形状(床パネルの場合、平面視正方形)であるが、一部に異なる形状(床パネルの場合、作業平面端に並ぶものが平面視長方形)であってもよい。平面要素を囲む溝は、通常、平面要素の間に形成される隙間(物理的に何もない空間)であるが、例えば凹んだ目地であってもよい。作業平面は、平坦な平面要素を同一面に揃えて並べる平坦面が基本であるが、無人作業車が移動できる程度に湾曲面であってもよい。作業装置に設定された作業基準は、作業対象を操作したり、作業対象を最終的に位置固定したりする作業の中心点で、溝の交点に位置する部材の中心に一致させる。
【0013】
移動台車は、移動手段、計測手段、姿勢維持手段及び制御手段を、作業装置と共に移動させる移動基礎である。移動台車は、移動手段の駆動源(例えばバッテリ)も搭載することが好ましい。移動手段は、作業平面に沿って全方向へ進退自在に移動させる複数の駆動体から構成される。具体的な駆動体として、個々に水平旋回自在で、制御手段により個々に正転又は逆転が制御される4基の車輪(例えばメカナムホイール)が例示される。この場合、移動台車に搭載された作業装置の作業基準は、4基の車輪に囲まれた内側に位置すると、特定作業が4基の車輪の内側で実行され、移動台車の姿勢が安定して望ましい。
【0014】
計測手段は、移動基準とする溝の交点から異なる方向に延びる2以上の溝の点群データを、前記溝の交点を中心とした一定範囲で取得し、取得した点群データを制御手段に送る。後述するように、制御手段は、点群データと基準線データとを比較し、比較結果に基づいて移動手段を制御する。計測手段は、レーザー又は超音波を利用した三次元スキャナや、静止画又は動画を撮影する画像カメラが例示される。点群データは、移動基準とする溝の交点から異なる方向に延びる2以上の溝が含まれていればよい。取得される溝の点群データは、移動基準とする溝の交点から一方向(例えばX軸プラス方向)に延びるものでも構わないが、好ましくは移動基準とする溝の交点から正逆二方向(例えばX軸プラス方向及びマイナス方向)に延びるものが好ましい。また、移動基準とする溝の交点を中心とした一定範囲の点群データは、単数を基本とするが、複数あってもよい。複数の点群データは、それぞれ単数又は複数の計測手段により取得される。
【0015】
「移動基準」は、無人作業車を移動させる方向及び距離を特定するための作業平面に設定された目標である。本発明では作業装置の作業基準を一致させた溝の交点又は前記溝の交点から延びる溝が別の溝と交差して形成される溝の交点が移動基準として利用される。作業装置の作業基準を一致させた溝の交点から延びる溝が別の溝と交差して形成される溝の交点は、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点からどれだけ離れてもよいが、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点から遠すぎると、計測手段により取得される点群データが歪み、制御手段による移動手段の制御の精度が低下する恐れもあるため、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点の直近にある溝の交点が好ましい。この場合、移動台車は、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点の直近にある溝の交点が露出するように大きさを制限したり、開口を設けたりするとよい。
【0016】
姿勢維持手段は、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点から延びる溝に複数基を同時に掛合させ、特定作業を実行する際の無人作業車の姿勢を特定し、制動手段として、特定作業の実行中における無人作業車の姿勢を維持する。個々の姿勢維持手段は、同じ構造又は構成であることを基本とするが、それぞれ対象とする溝に掛合できれば、相互に構造又は構成が異なってもよい。複数基の姿勢維持手段は、同一の溝に掛合してもよいし、異なる溝に係合してもよいが、無人作業車の姿勢を安定して保持する観点から、互いに離れた位置関係でそれぞれの対象とする溝に掛合すること望ましい。
【0017】
制御手段は、作業装置、移動手段、計測手段、姿勢維持手段を、個々に又は連携して制御する。作業装置に対する制御手段は、起動信号を送って特定作業を開始させ、特定作業が終了すると終了信号を受け取り、移動手段に起動信号を送る。移動手段に対する制御手段は、起動信号を送って無人作業車の移動を開始させ、補正信号を送って無人作業車の姿勢を調整させ、停止信号を送って無人作業車を停止させる。計測手段に対する制御手段は、移動基準とする溝の交点から異なる方向に延びる2以上の溝を含む点群データを計測手段から受け取り、前記点群データと基準線データとを比較して補正信号を作り出し、移動手段に補正信号を送る。
【0018】
姿勢維持手段に対する制御手段は、溝に掛合した姿勢維持手段から掛合完了信号を受け取り、すべての姿勢維持手段から掛合完了信号を受けると、移動手段に停止信号を送ると共に、作業装置に起動信号を送る。ここで、後述するように、姿勢維持手段が昇降自在な場合、姿勢維持手段に対する制御手段は、例えば基本的に姿勢維持手段を上昇させて作業平面との干渉を避けるようにしておき、計測手段から送られてくる点群データに溝の交点が計測され始めた時点で姿勢維持手段を下降させ、溝に掛合できる状態にする。
【0019】
姿勢維持手段は、溝に掛合させることから、作業平面より下方に突出している。このため、無人作業車が移動する際に作業平面と干渉し、移動の邪魔になる。そこで、姿勢維持手段は、下方に向けて付勢された状態で移動台車に設けられ、下方に突出させて溝に掛合させるとよい。下方に向けて付勢された姿勢維持手段は、無人作業車が移動する際、付勢に反して上昇し、下端を平面要素に摺接させ、溝に達すると付勢により下降して溝に掛合する。そして、無人作業車が再び移動を始めると、下方に向けて付勢された姿勢維持手段は、下端を平面要素に乗り上げ、摺接させる。
【0020】
更に作業平面との干渉を完全に回避するため、姿勢維持手段は、下方に向けて昇降自在な状態で移動台車に設けられ、下降させて溝に掛合させるとよい。昇降自在な姿勢維持手段は、上述したように、制御手段により昇降を制御する。姿勢維持手段を昇降させるタイミングは自由である。しかし、作業平面との干渉を避けつつ、作業基準を溝の交点に一致させる段階で溝に掛合させる必要から、昇降自在な姿勢維持手段は、無人作業車の移動開始の時点で上昇させておき、作業基準が溝の交点に接近した時点で下降させるとよい。昇降自在な姿勢維持手段は、下方に付勢させた構成であると好ましい。
【0021】
複数基の姿勢維持手段は、同一の溝に掛合させても、異なる溝に掛合させてもよいが、無人作業車の姿勢を維持する制動手段として、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点から見て、同じ側に偏って配置されないことが望ましい。これから、姿勢維持手段は、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点を挟んで同じ溝に掛合させるとよい。この場合、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点を挟んで同数の姿勢維持手段を点対称関係で配置することが望ましい。また、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点から延びる溝のすべてに対して、前記溝の交点を挟む姿勢維持手段を配置することが好ましい。
【0022】
姿勢維持手段は、無人作業車の姿勢を維持する制動手段として、溝に差し込める棒、板や回転円盤を有する構成が例示される。具体的には、溝に対する掛合具合を一定とし、掛合状態を安定に維持するため、姿勢維持手段は、掛合させる溝より幅が広く、前記溝の延在方向に回動自在なローラで、溝に掛合させる幅の周回フランジを設けている構成がよい。周回フランジは、ローラの周面が作業平面に当接して、溝に対する掛合具合を一定にする。周回フランジを設けたローラである姿勢維持手段は、下方に向けて昇降自在としたり、付勢したりすると好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の無人作業車は、移動の制御が正確になる効果がある。これは、計測手段が取得する点群データの溝と基準線データとの比較による移動及び姿勢の制御による効果である。例えば作業平面が二重床とすれば、床パネルが平面要素、床パネル間の隙間が溝となり、溝が必ず作業平面と面一に形成される。このため、無人作業車から離れた溝の交点から異なる方向に延びる2以上の溝の点群データも無理なく取得でき、点群データの溝と基準線データとを比較して、無人作業車の姿勢も正確に特定できる。また、計測手段が静止画カメラ又は動画カメラである場合、取得される点群データは床パネルと溝とのコントラストが明確で2値化しやすく、2値化された点群データの溝と基準線データとの比較に必要な制御手段に対する計算負荷も小さくて済み、制御部を小型及び廉価に構成できる利点もある。
【0024】
また、本発明の無人作業車は、移動の制御の正確性が担保される効果がある。これは、溝に掛合させる姿勢維持手段による効果である。姿勢維持手段は、複数基の姿勢維持手段がすべて溝に掛合することにより、特定作業を実行する際の無人作業車の姿勢を特定する働きと、特定作業の実行中における無人作業車の姿勢を維持する働きとを兼ね備える。そして、姿勢の特定及び維持の働きによって、無人作業車が再び移動を開始する際、移動方向に対するずれを抑制又は防止し、移動の制御の正確性を担保する。
【0025】
下方に向けて付勢された姿勢維持手段は、溝以外の作業平面に摺接して移動させながら、溝に達すれば下方に自ら突出して掛合できる。また、下方に向けて昇降自在な姿勢維持手段は、溝以外の作業平面から上昇させて移動させながら、溝に達すれば下降により突出させて掛合できる。いずれの姿勢維持手段も、無人作業車の移動に際して作業平面との干渉を回避しながら溝に確実に掛合し、特定作業の実行中における無人作業車の姿勢の特定及び維持の効果をもたらす。下方に向けて付勢された姿勢維持手段や下方に向けて昇降自在な姿勢維持手段は、併用すれば、よりよく効果が発揮できる。
【0026】
作業装置の作業基準を一致させた溝の交点を挟んで設けられる姿勢維持手段は、距離を開けて配置されることで、制動手段として無人作業車の姿勢を維持する効果を発揮するほか、特定作業の実行中における無人作業車に加わる水平面内の回転に対して互い違いに対抗し、特定作業の実行中における無人作業車の姿勢を維持する効果もある。無人作業車に加わる水平面内の回転に対抗する効果は、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点を挟んで同数の姿勢維持手段を点対称関係で配置したり、作業装置の作業基準を一致させた溝の交点から延びる溝のすべてに対して配置したりすると、よりよく効果が発揮できる。
【0027】
掛合させる溝より幅が広いローラに周回フランジを設けた姿勢維持手段は、ローラの周面が作業平面に当接して、溝に対する周回フランジの噛み込みが抑制又は防止される結果、周回フランジを溝に掛合させて制動手段としての働きを発揮しつつも、周回フランジを溝に引っかけることなく待避させやすくなる。このように、周回フランジを設けたローラである姿勢維持手段は、周回フランジを溝に掛合及び解除しやすくなっているので、下方に向けて昇降自在とする構成や、付勢したりする構成の適用が容易で、姿勢維持手段として無人作業車の姿勢の特定及び維持がよりよく発揮される利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明を適用した無人作業車の一例を表した正面図である。
図2】本例の無人作業車の右側面図である。
図3】本例の無人作業車の平面図である。
図4】前側、左側及び右側の姿勢維持ユニットを表した本例の無人作業車の部分破断正面図である。
図5】前側、右側及び後側の姿勢維持ユニットを表した本例の無人作業車の部分破断右側面図である。
図6】移動台車の第2層以上を図示略した本例の無人作業車の平面図である。
図7】移動台車に搭載されたパネル押さえ設置装置の縦部分断面図である。
図8図7中A-A断面図である。
図9】パネル押さえ設置作業の段階1として、二重床上に無人作業車を載せた状態を表した平面図である。
図10】パネル押さえ設置作業の段階1として、二重床上に無人作業車を載せた状態を表した右側面図である。
図11】パネル押さえ設置作業の段階1として、二重床上に無人作業車を載せた状態を表した正面図である。
図12】パネル押さえ設置作業の段階1における点群データと基準線データとの比較画面である。
図13】パネル押さえ設置作業の段階2として、無人作業車を大きく前進させた状態を表した平面図である。
図14】パネル押さえ設置作業の段階2として、無人作業車を大きく前進させた状態を表した右側面図である。
図15】パネル押さえ設置作業の段階2として、無人作業車を大きく前進させた状態を表した正面図である。
図16】パネル押さえ設置作業の段階2における点群データと基準線データとの比較画面である。
図17】パネル押さえ設置作業の段階3として、点群データと基準線データとを一致させた状態を表した平面図である。
図18】パネル押さえ設置作業の段階3として、点群データと基準線データとを一致させた状態を表した右側面図である。
図19】パネル押さえ設置作業の段階3として、点群データと基準線データとを一致させた状態を表した正面図である。
図20】パネル押さえ設置作業の段階3における点群データと基準線データとの比較画面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明は、例えば図1図6に見られるように、パネル支持柱32に支持された平面視正方形の床パネル(平面要素)31を前後左右に並べて構成される二重床(作業平面)3上を移動し、床パネル31間の溝34の交点35からパネル支持柱32にパネル押さえ33を捻じ込むパネル押さえ設置装置(作業装置)2が搭載された無人作業車1に適用される。本例では、パネル押さえ設置装置2が有する電動ドライバ26の軸本体の回転軸線が作業基準M、作業基準Mを作業対象の溝34の交点35に一致させた状態で前方の溝34の交点35が移動基準Pとなる。
【0030】
本例の無人作業車1は、パネル押さえ設置装置2を搭載させた移動台車11に、二重床3に沿って移動台車11を全方向へ進退自在に移動させる4基のメカナムホイール(移動手段)12と、移動基準とする溝34の交点35から前後方向(図1及び図4中紙面直交方向、図2及び図5中紙面左右方向、図3及び図6中紙面上下方向)及び左右方向(図1及び図4中紙面左右方向、図2及び図5中紙面直交方向、図3及び図6中紙面左右方向)に延びる溝34の点群データを取得する動画カメラ(計測手段)13と、パネル押さえ設置装置2の作業基準Mを一致させた溝34の交点から前後方向及び左右方向延びる4本の溝34それぞれに掛合させる4基の姿勢維持ユニット(姿勢維持手段)14と、パネル押さえ設置装置2、メカナムホイール12、動画カメラ13、姿勢維持ユニット14それぞれを制御させる制御コンピュータ(制御手段)15とを備えて構成される。
【0031】
本例の移動台車11は、メカナムホイール12の設置箇所を切り欠いた平面視略十字状の平板からなる第1層111と、メカナムホイール12の設置箇所も含めた平面視長方形状の平板からなる第2層112とを4本の柱113で繋いだフレーム構造である。本例の移動台車11は、搭載するパネル押さえ設置装置2も構造要素として利用している。具体的に、パネル押さえ設置装置2は、第2層112を貫通して第1層111に至る保護ケース28により、第1層111及び第2層112を繋いでいる。また、パネル押さえ設置装置2は、最上段のホッパ21を第2層112の四隅から立ち上がる柱113に支持させている。
【0032】
第1層111は、パネル押さえ設置装置2の電動ドライバ26の軸本体が下降するドライバ用開口115を平面視略中心に設けている。本例は、電動ドライバ26の軸本体の回転軸線をドライバ用開口115の中心に一致させていることから、ドライバ用開口115の中心が作業基準Mである。そして、第1層111は、作業基準Mであるドライバ用開口115の中心を前後軸線VA及び左右軸線HA上の前後左右位置に平面視長方形状のローラ用開口114を設けている。姿勢維持ユニット14は、ローラ147のフランジ1471の向き及び位置を前後軸線VA又は左右軸線HAに一致するように、ローラ用開口114近傍に設けた支持台116に支持ブロック141を固定させ、ローラ用開口114を通じて昇降自在なローラ147を二重床に向けて接近離反させる。
【0033】
本例の第1層111は、前、左及び右の姿勢維持ユニット14を第2層112の範囲に収まる内側に設けているが、後の姿勢維持ユニット14を第2層112からはみ出す後方の突出部分に設けている。これは、パネル押さえ設置装置2の保護ケース28との干渉を避けるためで、パネル押さえ設置装置2の保護ケース28との干渉がなければ、後の姿勢維持ユニット14も第2層112の範囲に収まる第1層111の内側に設けることもできる。姿勢維持ユニット14は、ローラ147のフランジ1471の向き及び位置が前後軸線VA又は左右軸線HAに一致していれば、作業基準Mからの距離が異なっても構わず、作業基準Mを挟んで前後対称位置又は左右対称位置に配置されなくてもよい。
【0034】
本例は、移動台車11が全方向へ進退自在となるように、第1層111の切り欠いた四隅にメカナムホイール12を設けている。メカナムホイール12は、駆動用モータにより回転する車輪本体の周面に、自由回転するローラを45度に傾斜して周方向に多数並べた構成で、ローラの傾斜方向を対角位置で同じにしながら、前後位置で異らせた4基1組で利用される。これにより、移動台車11は、メカナムホイール12それぞれの駆動用モータの回転方向及び回転速度を調整することにより、移動台車11を全方向へ進退自在にする。メカナムホイール12は従来公知であるから、各図では、傾斜したローラを省略したメカナムホイール12を、外形に倣った円柱で簡略図示している。
【0035】
第2層112は、前縁に寄せた左右中央位置に制御コンピュータ15を、制御コンピュータ15の左脇(図1中右側)にバッテリ16をそれぞれ搭載する。また、第2層112は、構造要素としてのパネル押さえ設置装置2の保護ケース28を介して第1層111と繋がったり、保護ケース28と共にパネル押さえ設置装置2の電動ドライバ26を位置固定で保持したり、四隅から立てた柱113によりパネル押さえ設置装置2のホッパ21を支持したりする。制御コンピュータ15及びバッテリ16は、通信ケーブルや給電ケーブルにより、メカナムホイール12の駆動用モータ、姿勢維持ユニット14の昇降用モータや動画カメラ13と接続されている。各図では、通信ケーブルや給電ケーブルの図示を省略している。
【0036】
動画カメラ13は、パネル押さえ設置装置2のホッパ21前面に取り付けられ、移動台車11の前方に設定された撮影範囲を常時撮影し、得られた画像を制御コンピュータ15へ点群データPG(後掲図12ほか参照)として送る。制御コンピュータ15は、動画カメラ13から送られてきた点群データと、内部に保有する基準線データRL(後掲図12ほか参照)とを比較し、メカナムホイール12、姿勢維持ユニット14、そしてパネル押さえ設置装置2を制御する。点群データPGは、制御コンピュータ15から有線又は無線により外部装置(例えばモニタ)に送ってもよい。本例の動画カメラ13は、作業基準Mと一致させる溝34の交点35の一つ前の交点35を移動基準Pとし、移動基準Pとする溝34の交点35から前後方向及び左右方向に延びる2本の溝34を含む一定範囲(横長の長方形、後掲図9ほか参照)を撮影範囲とする。
【0037】
姿勢維持ユニット14は、コイルバネ146により下方に向けて付勢されるローラ147を、ラックアンドピニオン機構により昇降自在にした構成である(図4中拡大部分参照)。ローラ147は、溝34に嵌まり込むフランジ1471を周面の幅方向中心に有する構成で、一対のローラ受け145に掛け渡された回動軸に、回動自在に軸着される。ローラ受け145は、それぞれ円柱状のガイド軸143を上方に突出させている。ガイド軸143は、ラック1422が立てられた昇降板144を貫通して延び、昇降板144とローラ受け145との間にコイルバネ146を嵌めている。昇降板144とローラ受け145とは、コイルバネ146により連結され、コイルバネ146の伸縮により距離を変化させる。
【0038】
ラック1422及びガイド軸143は、支持板1411に固定される支持ブロック141を貫通している。支持板1411は、移動台車11の支持台116に固定されている。ラック1422は、支持板1411に載せた昇降用モータ142のピニオン1421に噛み合わさる。これにより、昇降用モータ142によりラック1422を上下動させ、昇降板144、ガイド軸143、コイルバネ146、ローラ受け145、ローラ147を一体に昇降させる。ローラ147の昇降量は、予め設定してもよいし、上限及び下限の検知機構(例えばリミットスイッチ)により制限してもよい。無人作業車1は、フランジ1471と床パネル31との干渉を避けるためにローラ147を上昇させて移動させ、作業基準Mを溝34の交点35に一致させる際にローラ147を下降させ、フランジ1471を溝34に掛合させる。
【0039】
本例のパネル押さえ設置装置2は、図7に見られるように、パネル押さえ33の供給機構を構成するホッパ21、投入口22、第1整列スロープ23、第2整列スロープ24、繰り出しプレート25、保持アーム27と、パネル押さえ33を捻じ込む電動ドライバ26と、第1整列スロープ23、第2整列スロープ24、繰り出しプレート25を囲む保護ケース28とから構成される。パネル押さえ33は、一端にフランジを有するネジ様の柱体構造で、溝34の交点35から覗くパネル支持柱32に捻じ込まれる。床パネル31は、パネル押さえ33とパネル支持柱32とにより、溝34の交点35を囲むように形成された角部の段差である押さえ受け311が挟まれて、固定される。
【0040】
ホッパ21は、移動台車11の第2層112に略等しい平面視長方形の上方を開放し、下窄まりで後方寄りに開口を有する略角錐台状の箱体であり、移動台車11の第2層112に建てた柱113により支持されている。ホッパ21は、上方から無秩序に投入されたパネル押さえ33を大量に貯留し、下方に向けた開口に連続する投入口22を通じてパネル押さえ33を供給する。投入口22は、左右一対の繰り出しローラ221を内蔵している。繰り出しローラ221は、それぞれ内向きに回転し、ホッパ21の開口から突出するパネル押さえ33を挟みながら下方へ押し出し、パネル押さえ33を1つ又は少数ずつ第1整列スロープ23に落下させる。
【0041】
第1整列スロープ23及び第2整列スロープ24は、投入口22から順次落下してくるパネル押さえ33を、上下方向に向きを揃え、落下順に整列させて、移動台車11の第1層111に沿って設けられる繰り出しプレート25に向けて滑らせて送り出す。第1整列スロープ23及び第2整列スロープ24は、図8に見られるように、断面V字状に並ぶ左右一対の保持板を前後方向に傾斜させて構成される。パネル押さえ33は、上端のフランジを保持板に掛合させ、下方の開口から本体を下向きに突出させて向きを上下方向に揃え、フランジを保持板に摺接させながら保持板の傾斜方向に移動させる。パネル押さえ33は、保持板の間から本体を下方に突出させる姿勢でしか安定して移動できないため、たとえ上下に重なっても、上のパネル押さえ33が落ちて向きが揃えられ、第1整列スロープ23及び第2整列スロープ24を移動する間に整列する。
【0042】
本例は、装置構成の関係から、保持板の傾斜方向を後方に下り勾配とした上段の第1スロープ23と、反転させて前方に下り勾配とした下段の第2整列スロープ24とを併せて用いている。これにより、パネル押さえ33を移動させる距離が稼げて、整列させるパネル押さえ33の数が増え、ホッパ21に貯留するパネル押さえ33と合わせて、パネル押さえ設置装置2が保有できるパネル押さえ33の総量を増やしている。しかし、パネル押さえ33の向きを上下方向に揃え、かつ一列に整列させることができれば、前方又は後方のいずれか一方に向けた単調な下り勾配のスロープを用いてもよい。
【0043】
繰り出しプレート25は、フランジがガイドプレート251に支持されたパネル押さえ33を1つずつ前方へ送り、左右一対の保持アーム27に受け渡す。繰り出しプレート25は、左方向(図6中右方向)に開いた櫛歯状の板材で、3箇所の凹部それぞれにパネル押さえ33の本体を嵌め込んで保持する。ガイドプレート251は、繰り出しプレート25の上面に沿って前後方向に延びる左右一対の平板で、パネル押さえ33のフランジを下方から支持する。ガイドプレート251は、位置固定であるが、繰り出しプレート25は、前後左右に移動する周回運動を繰り返す。繰り出しプレート25の駆動手段は、従来公知の各種手段、例えば電動モータを駆動源とするクランク機構を用いる。各図は、繰り出しプレート25の駆動手段の図示を省略している。
【0044】
繰り出しプレート25は、前方に位置する保持アーム27を前端として前進して保持するパネル押さえ33を1つ分だけ移動させ、そこから右方向(図6中左方向)に横移動してパネル押さえ33の本体を一時的に解放した後、パネル押さえ33の1つ分だけ後退し、左方向(図6中右方向)に横移動して再びパネル押さえ33の本体を保持する周回運動を繰り返す。パネル押さえ33は、常時ガイドプレート251にフランジが支持されているから、周回運動により本体の解放及び保持を繰り返す繰り出しプレート25により、1つずつ前方へ移動させられる。そして、繰り出しプレート25の一番前の凹部に保持されていたパネル押さえ33が、保持アーム27に受け渡される。
【0045】
保持アーム27は、閉じる方向に付勢された一対の旋回するブロックで、対向する内面にパネル押さえ33の側面に倣った凹みを設けている。保持アーム27に設けられた凹みは、上部がパネル押さえ33のフランジが掛合する下り勾配の錐台面、下部がパネル押さえ33の本体に合わせた断面円弧状の周面になっている。繰り出しプレート25から受け渡されたパネル押さえ33は、最初閉じた保持アーム27の上部にフランジを掛合させた状態で保持される。パネル押さえ33は、電動ドライバ26による捻じ込みにより下降すると、保持アーム27を押し広げ、フランジを下部に摺接させながら、ドライバ用開口115を通じてパネル支持柱32に捩じ込まれていく。
【0046】
パネル押さえ設置装置2に設定された作業基準Mは、保持アーム27に保辞されたパネル押さえ33の平面視中心に一致する。電動ドライバ26は、昇降させる軸部分の中心軸線を作業基準Mに一致させている。そして、前後左右の姿勢維持ユニット14は、ローラ147のフランジ1471を、作業基準Mを通る前後軸線VA及び左右軸線HAに沿わせて配置されている。これから、前後左右の姿勢維持ユニット14が有するローラ147のフランジ1471をそれぞれ対応する溝34に掛合させると、作業基準Mが溝34の交点35 に一致し、電動ドライバ26が軸部分を下降させれば、交点35下方に位置するパネル支持柱32にパネル押さえ33を捻じ込むことができる。
【0047】
本例の無人作業車1によるパネル押さえ33の設置手順を説明する。パネル押さえ33の設置作業(特定作業)の段階1は、図9図11に見られるように、無人作業車1を二重床3に置くことから始まる。無人作業車1は、姿勢を調整しながら移動させる。このため、パネル押さえ設置作業の段階1では、無人作業車1を二重床3の自由な位置に置いても構わない。各図では、姿勢維持ユニット14それぞれのローラ147が前後方向及び左右方向に延びる溝34と平行になるように無人作業車1を図示しているが、ローラ147が溝34と交差する位置関係で二重床3に置かれてもよい。
【0048】
パネル押さえ設置作業の段階1において、無人作業車1は、フランジ1471が床パネル31の表面に干渉しないように姿勢維持ユニット14のローラ147を上昇させ(図10及び図11中拡大部分参照)、ホッパ21から供給されたパネル押さえ33が保持アーム27に保持される待機状態でパネル押さえ設置装置2を停止させておくとよい。二重床3に無人作業車1を置いた際、姿勢維持ユニット14のローラ147が下降したり、パネル押さえ設置装置2が待機状態になっていなければ、無人作業車1を起動させた際、制御コンピュータ15が姿勢維持ユニット14のローラ147を上昇させたり、パネル押さえ設置装置2を待機状態にする。そして、制御コンピュータ15は、無人作業車1の起動により、動画カメラ13による撮影を開始させ、無人作業車1を移動させ始める。
【0049】
制御コンピュータ15は、図12に見られるように、移動基準Pとする溝34の交点35から前後左右に延びる溝34に合致する十字状の基準線データRLを有する。基準線データRLは、動画カメラ13の撮影範囲に対して設定されることから、本例では動画カメラ13の撮影範囲を示す図12中に図示している。本例におけるパネル押さえ設置作業の段階1では、点群データPGが基準線データRLより右寄り手前にあるとする。図示を省略するが、実際の点群データPGは、基準線データRLに対して傾いたり、交点35が含まれなかったりする。
【0050】
本例の点群データPGは、動画カメラ13に撮影された溝34及び交点35の画像である。制御コンピュータ15は、動画カメラ13から受け取った点群データPGを2値化した白黒画像に変換し、基準線データRLと比較する(図12は、2値化された点群データPGを図示)。二重床3は、床パネル31の間に形成される溝34や、パネル支持柱32が覗く交点35の影ができやすいのに対し、床パネル31の表面の光の反射が強く、撮影された点群データPGを2値化しやすいため、輪郭が明確な白黒画像に加工された点群データPGを得やすい利点を有する。
【0051】
本例の無人作業車1は、床パネル31の間隔で並ぶ交点35にパネル押さえ33を捻じ込む設置作業を繰り返すことから、床パネル31の幅相当だけ移動させる。このため、パネル押さえ設置作業の段階1では、最初に無人作業車1をパネル31の間隔以上移動させることとし、撮影範囲に確認された交点35を移動基準Pとせず、無人作業車1を置いた位置から床パネル31の間隔以上離れた2つ目の交点35を移動基準Pとする。そして、本例では点群データPGが基準線データRLより右寄りにずれていることから、制御コンピュータ15は、起動信号及び補正信号を送ってメカナムホイール12を駆動し、姿勢を調整しながら無人作業車1を斜め左前方(図9中下方)に向けて移動させる。
【0052】
パネル押さえ33の設置作業の段階2は、図13図15に見られるように、無人作業車1が姿勢を微妙に調整しながら、作業基準Mを交点35に一致させる。無人作業車1が二重床3に置かれた位置からある程度移動すると、移動基準Pである交点35が動画カメラ13の撮影範囲に映し出される(図16参照)。制御コンピュータ15は、動画カメラ13の撮影範囲に移動基準Pである交点35が確認されると、二重床3に対する無人作業車1の姿勢を正確に特定し、かつパネル押さえ設置作業中の姿勢を維持する目的で、姿勢維持ユニット14のローラ147を下降させる(図14及び図15中拡大部分参照)。
【0053】
ローラ147を下降させた姿勢維持ユニット14は、ローラ147のフランジ1471が未だ溝34に掛合する位置にないため、フランジ1471を床パネル31の表面に当接させ、コイルバネ146を圧縮させる。コイルバネ146は、フランジ1471を溝34に掛合させたローラ147が適度な付勢力で床パネル31の表面に押し付けられる長さ及び圧縮量に設定される。このため、段階2では、圧縮したコイルバネ146がフランジ1471を床パネル31の表面に強く押し付けて、無人作業車1の微妙な位置調整を阻害する場合も考えられる。この場合、例えばコイルバネ146の伸縮を監視する位置センサを姿勢維持ユニット14に設け、段階2におけるローラ147の下降量を調整してコイルバネ146の圧縮量を制限させてもよい。制御コンピュータ15は、点群データPGと基準線データRLとを比較して作り出した補正信号を送ってメカナムホイール12を駆動し、無人作業車1の姿勢を調整しながら右斜め前方に少しずつ移動させ、姿勢維持ユニット14それぞれのローラ147のフランジ1471を対応する溝34に接近させる。
【0054】
パネル押さえ33の設置作業の段階3は、図17図19に見られるように、作業基準Mを交点35に一致させた無人作業車1が位置固定され、パネル押さえ設置装置2によるパネル押さえ33の設置作業が実行される。本例の無人作業車1は、4基の姿勢維持ユニット14が有するローラ147のフランジ1471がすべて溝34に掛合することを受けて、メカナムホイール12を停止させ、代わってパネル押さえ設置装置2を起動させて、パネル押さえ33の設置作業を開始する。
【0055】
無人作業車1が姿勢を調整して基準線データRLと点群データPGとを一致させる(図20参照)と、前後の姿勢維持ユニット14は、ローラ147のフランジ1471を前後方向に延びる溝34に一致するので、コイルバネ146が伸びてフランジ1471を溝34に掛合させる(図18中拡大部分参照)。同様に、左右の姿勢維持ユニット14は、ローラ147のフランジ1471を左右方向に延びる溝34に一致するので、コイルバネ146が伸びてフランジ1471を溝34に掛合させる(図19中拡大部分参照)。4基の姿勢維持ユニット14は、実際の溝34との微妙なズレによって、順次又は同時にローラ147のフランジ1471を溝34に掛合させる。
【0056】
4基の姿勢維持ユニット14は、それぞれのローラ147のフランジ1471を、直交する前後軸線VA及び左右軸線HAに沿わせている。そして、パネル押さえ設置装置2の作業基準Mは、前後軸線VA及び左右軸線HAの交点に設定している(図6参照)。このため、4基の姿勢維持ユニット14がそれぞれ対応する溝34にローラ147のフランジ1471を掛合させると、作業基準Mと溝34の交点35とが一致する(図17参照)。このように、姿勢維持ユニット14は、パネル押さえ設置作業に際し、パネル押さえ設置装置2の作業基準Mを溝34の交点35に一致させる位置決め作用を有する。
【0057】
また、4基の姿勢維持ユニット14がそれぞれ対応する溝34にローラ147のフランジ1471を掛合させると、溝34に対して無人作業車1が位置固定される。これは、無人作業車1が前後左右に動かなくなり、パネル押さえ設置作業中の位置が固定されるということだけでなく、パネル押さえ設置装置2によりパネル押さえ33がパネル支持柱32に捩じ込まれる際の回転モーメントを受けて無人作業車1が旋回運動しなくなり、パネル押さえ設置作業中の姿勢が維持されるということを意味する。こうして、本発明の無人作業車1は、移動の制御が正確になり、かつ移動の制御の正確性が担保される効果を得ている。
【0058】
制御コンピュータ15は、溝34にフランジ1471を掛合させた姿勢維持ユニット14すべてから掛合完了信号を受け取ると、メカナムホイール12に停止信号を送ると共に、パネル押さえ設置装置2に起動信号を送る。姿勢維持ユニット14の掛合完了信号は、例えばコイルバネ146の伸長やローラ受け145の下降を物理的に検知するリミットスイッチから送る。無人作業車1は、4基の姿勢維持ユニット14を溝34に掛合させて正確に位置決めされ、かつ位置ずれが防止されており、メカナムホイール12も停止して安定している。このため、パネル押さえ設置装置2は、電動ドライバ26により、作業基準Mの軸線上にあるパネル押さえ33をパネル支持柱32に正確に捻じ込むことができる。
【0059】
パネル押さえ設置装置2は、電動ドライバ26の設定された駆動時間の経過や、捩じ込んだパネル押さえ33から受ける一定以上のトルクを検知することにより、パネル押さえ設置作業を終了し、制御コンピュータ15に終了信号を送る。パネル押さえ設置装置2は、繰り出しプレート25を1回だけ周回させ、作業基準Mに次のパネル押さえ33を送り出した後、停止させる。パネル押さえ設置装置2から終了信号を受け取った制御コンピュータ15は、無人作業車1の次の移動に備え、フランジ1471と床パネル31との干渉を避けるため、姿勢維持ユニット14のローラ147を上昇させる。
【0060】
そして、制御コンピュータ15は、メカナムホイール12に起動信号を送り、再び床パネル31の幅相当だけ移動させ、次のパネル押さえ設置作業に移る。本例の無人作業車1は、前方への移動を繰り返し、前後方向の溝34の交点35にパネル押さえ33を設置していく。そして、無人作業車1は、二重床2の端に達すると1度だけ直交方向(例えば左方向)に床パネル31の幅相当だけ移動し、今度は後方への移動を繰り返し、隣の溝34に並ぶ交点35にパネル押さえ33を設置していく。こうして、本例の無人作業車1は、自動的に二重床3のパネル支持柱32すべてに対して、パネル押さえ33を設置する。
【符号の説明】
【0061】
1 無人作業車
11 移動台車
116 支持台
12 メカナムホイール
13 動画カメラ
14 姿勢維持ユニット
147 ローラ
1471 フランジ
15 制御コンピュータ
2 パネル押さえ設置装置
21 ホッパ
22 投入口
25 繰り出しプレート
251 ガイドプレート
26 電動ドライバ
27 保持アーム
3 二重床
31 床パネル
32 パネル支持柱
33 パネル押さえ
34 溝
35 交点
M 作業基準
P 移動基準
HA 左右軸線
VA 前後軸線
PG 点群データ
RL 基準線データ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20