(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】床版の架設装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20240708BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D21/00 B
(21)【出願番号】P 2023127280
(22)【出願日】2023-08-03
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592182573
【氏名又は名称】オックスジャッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】桑原 康
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】竹林 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】松田 紘和
(72)【発明者】
【氏名】丹波 秀章
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-160556(JP,A)
【文献】特開2019-014599(JP,A)
【文献】特開2007-291787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-24/00
B66F 9/00- 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版を主桁に架設する床版の架設装置において、
前記床版を吊り下げ保持する床版支持フレームと、この床版支持フレームに取り付けられ、フォークリフトのフォークを支持するフォーク支持フレームとを具備し、前記床版支持フレームには、前記床版を複数点で吊り下げる複数の鉛直ジャッキを具備し、
前記フォーク支持フレームは、受梁と、この受梁の両端に設けられ、前記フォークリフトのフォークの差し込まれるフォーク保持具と、前記フォーク支持フレームの両端に設けられ、前記床版支持フレームの橋軸方向の調整と、この床版支持フレームの回転調整のための位置調整装置とを具備することを特徴とする床版の架設装置。
【請求項2】
前記フォーク保持具は、前記フォークを差し込むフォーク挿入筒と、このフォーク挿入筒に設けられ、前記フォークを固定するフォーク固定用ジャッキとを具備することを特徴とする請求
項1記載の床版の架設装置。
【請求項3】
前記位置調整装置は、前記受梁に固着された固定板と、この固定板に互いに係合して摺動自在に重ねられ、前記床版支持フレームに固着された移動板と、前記固定板と移動板との間に連結した位置調整ジャッキとを具備し、この位置調整ジャッキの作動により前記移動板を前記固定板に沿って移動して前記床版支持フレームの位置を調整するようにしたことを特徴とする請求
項1記載の床版の架設装置。
【請求項4】
床版を主桁に架設する床版の架設装置において、
前記床版を吊り下げ保持する床版支持フレームと、この床版支持フレームに取り付けられ、フォークリフトのフォークを支持するフォーク支持フレームとを具備し、前記床版支持フレームには、前記床版を複数点で吊り下げる複数の鉛直ジャッキを具備し、
前記床版支持フレームの上面に、発電機と電動ポンプユニットを搭載し、前記床版支持フレームの下面に、前記フォーク支持フレームを連結梁により着脱自在に連結したことを特徴とす
る床版の架設装置。
【請求項5】
床版を主桁に架設する床版の架設装置において、
前記床版を吊り下げ保持する床版支持フレームと、この床版支持フレームに取り付けられ、フォークリフトのフォークを支持するフォーク支持フレームとを具備し、前記床版支持フレームには、前記床版を複数点で吊り下げる複数の鉛直ジャッキを具備し、
前記床版支持フレームにクレビス金具にて搖動自在に連結した前記鉛直ジャッキは、前記床版支持フレームに設けたジャッキ仮保持具に折りたたみ保持するようにしたことを特徴とす
る床版の架設装置。
【請求項6】
前記床版支持フレームの下面に、前記鉛直ジャッキを連結するための前記クレビス金具の取り付け位置を可変するジャッキ位置保持具を設けたことを特徴とする請求
項5記載の床版の架設装置。
【請求項7】
前記フォーク挿入筒の内部に、上ゴム板と下ゴム板を設けて前記フォーク固定用ジャッキにより前記フォークを固着するようにしたことを特徴とする請求
項2記載の床版の架設装置。
【請求項8】
床版を主桁に架設する床版の架設方法において、
前記床版を吊り下げ保持する床版支持フレームと、この床版支持フレームに取り付けられ、フォークリフトのフォークを支持するフォーク支持フレームとからなり、前記床版支持フレームには、前記床版を吊り下げる複数の鉛直ジャッキを有し、これらの鉛直ジャッキを前記床版支持フレームに搭載した電動ポンプユニットにて油圧制御する床版の架設装置が用いられ、
それぞれの鉛直ジャッキのリフトダウン量の相対値
のうちジャッキ制御作動を開始する
リフトダウン量の差の値である制御値に達したものがある場合は、
リフトダウン量が最大の鉛直ジャッキを待機状態とし、その他の鉛直ジャッキ
は電動ポンプユニットから作動油が供給され続け、リフトダウンを行い、
リフトダウン量の相対値がジャッキ制御
作動を終了するリフトダウン量の差の値である復帰値に収まったら、
待機状態であった鉛直ジャッキ
の作動
を復帰させ、
全ての鉛直ジャッキでのリフトダウンを再開することを特徴とする床版の架設方法。
【請求項9】
床版を主桁に架設する床版の架設方法において、
前記床版を吊り下げ保持する床版支持フレームと、この床版支持フレームに取り付けられ、フォークリフトのフォークを支持するフォーク支持フレームとからなり、前記床版支持フレームには、前記床版を吊り下げる複数の鉛直ジャッキを有し、これらの鉛直ジャッキを前記床版支持フレームに搭載した電動ポンプユニットにて油圧制御する床版の架設装置が用いられ、
前記床版の橋軸方向の面を勾配の有無にかかわらず固定しつつ、前記床版に橋軸と直角方向に勾配を付けながらリフトダウンを行う場合、複数の各ジャッキ支点のリフトダウン量を比例演算によって分割したピッチでダウンを行うことを特徴とする床版の架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁における主桁に敷設された古い床版を新床版と交換したり、新床版を敷設したりする床版の架設装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から主桁に敷設された古い床版を新床版と交換したり、新床版を敷設したりするには、
図12に示す方法(特許文献1)や
図13に示す方法(特許文献2)などが知られていた。
図12に示すものは、大型のクローラークレーン4が用いられ、トレーラ5で運ばれてきた新床版2を主桁1に敷設したり、主桁1に敷設されていた古い床版3を撤去してトレーラ5で運び出したり方法である。クローラークレーン4は、旋回範囲が大きいこと、橋の上にクローラークレーン4を設置するには、周りに障害物がないことなど、クローラークレーン4の利用場所に限定されるという問題があった。
【0003】
図13に示すものは、台車付きの門型クレーン6を用いる方法であり、天井の下のクレーン用レール7にクレーン部9を移動自在に設け、このクレーン部9によりトレーラ5で運ばれてきた新床版2を吊り下げ、門型クレーン6と先端支持部8の間の作業スペース10まで移送し、この位置で新床版2の方向を変えて主桁1に吊り降ろし設置するものである。古い床版3の撤去についても同様である。
図13に示すものは、
図12と比較して狭い場所での使用が可能であるが、この門型クレーン6は、構造が複雑で、予め工場や組み立てヤード等で組み立てるとしても運搬作業、組み立て作業、解体作業等に多くの時間を要する。また、クレーン部9で吊り上げた新床版2を作業スペース10で方向を変換したり、mm単位の上下、左右、傾斜の調整をしたりするのが面倒であるなどの問題があった。
【0004】
これらのクレーンを用いる方法の他に、フォークリフトを用いる方法が発表されている(非特許文献1)。
この方法は、後行床版をチェーンブロックで吊り下げた心出し装置を、フォークリフトで持ち上げて先行床版上を移送し、先行床版のメスボルトと後行床版のオスボルトをメスケース部分で結合するというものである。
この非特許文献1には、次のように記載している。
「基本設計については、過去に筆者が開発した機械を参考に橋軸方向、橋軸直角方向へ勾配調整機構をそれぞれ独立した構造とした。そしてそれらを中核に吊り下げフレームのスライド機構(引き寄せ)、フォークに取付ける台座フレームに対して上部機構全体が回転する機構を加えるものとした(図-3)。全て油圧ジャッキによる駆動とし、それぞれのジャッキの役割を明確に分けることにより、設計を簡素化することやオペレータの装置操作理解を簡素化する狙いがあった。」
また、図-4によれば、「X(橋軸方向)、Y(橋軸直角方向)、Z(高さ方向)、回転調整(±5°)、橋軸方向引寄せ(250mm)、横断勾配調整(±2%)、縦断勾配調整(±2%)」の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-274736号公報
【文献】特開2019-19477号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「建設機械施工12」Vol.74 No.12 2022年12月29日特集先端建設技術「48道路橋床版更新工事におけるPCa床版架設機械の開発」一般社団法人日本建設機械施工協会著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1は、フォークリフトを利用する方法であり、特許文献1及び特許文献2記載の方法に比較して狭隘な場所での利用ができる、という利点がある。しかし、Z(高さ方向)の調整は、フォークリフトの昇降機能を利用したもののみであり、微細な調整は困難か、調整に長時間を要する。また、橋軸方向引寄せ(250mm)、横断勾配調整(±2%)、縦断勾配調整(±2%)は、油圧ジャッキを用いるとの記載があるが、具体的な構成が不明である。床版は、心出し装置にチェーンブロックで吊るされており揺れ動くので、床版のボルト接合の位置合わせ、床版の縦断勾配と横断勾配の調整目的の角度の設定が面倒か、長時間を要するなどの問題がある。
【0008】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、狭隘な床版架設の作業現場への搬送、床版の交換作業、床版の新設作業等を簡便な装置で効率よく可能にした床版の架設装置及びその方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による床版の架設装置は、
床版17を主桁18に架設する床版の架設装置において、
前記床版17を吊り下げ保持する床版支持フレーム11と、この床版支持フレーム11に取り付けられ、フォークリフト15のフォーク16を支持するフォーク支持フレーム12とからなり、前記床版支持フレーム11には、前記床版17を複数点で吊り下げる複数の鉛直ジャッキ40を具備したことを特徴とする。
【0010】
前記鉛直ジャッキ40は、前記床版17の幅方向に支持する2基と、前記床版17の長さ方向に支持するための所定間隔で配置された4対8基とからなる。
【0011】
前記フォーク支持フレーム12は、受梁22と、この受梁22の両端に設けられ、フォークリフト15のフォーク16の差し込まれるフォーク保持具35と、前記フォーク支持フレーム12の両端に設けられ、前記床版支持フレーム11の橋軸方向の調整と、この床版支持フレーム11の回転調整のための位置調整装置51とを具備することを特徴とする。
【0012】
前記フォーク保持具35は、前記フォーク16を差し込むフォーク挿入筒36と、このフォーク挿入筒36に設けられ、前記フォーク16を固定するフォーク固定用ジャッキ37とを具備することを特徴とする。
【0013】
前記位置調整装置51は、前記受梁22に固着された固定板23と、この固定板23に互いに係合して摺動自在に重ねられ、前記床版支持フレーム11に固着された移動板24と、前記固定板23と移動板24との間に連結した位置調整ジャッキ29とを具備し、この位置調整ジャッキ29の作動により前記移動板24を前記固定板23に沿って移動して前記床版支持フレーム11の位置を調整するようにしたことを特徴とする。
【0014】
前記鉛直ジャッキ40は、前記床版支持フレーム11にクレビス金具41にて搖動自在に連結したことを特徴とする。
【0015】
前記床版支持フレーム11の上面に、発電機13と電動ポンプユニット14を搭載し、前記床版支持フレーム11の下面に、前記フォーク支持フレーム12を連結梁34により着脱自在に連結したことを特徴とする。
【0016】
前記床版支持フレーム11に前記クレビス金具41にて搖動自在に連結した前記鉛直ジャッキ40は、前記床版支持フレーム11に設けたジャッキ仮保持具47に折りたたみ保持するようにしたことを特徴とする。
【0017】
前記床版支持フレーム11の下面に、前記鉛直ジャッキ40を連結するための前記クレビス金具41の取り付け位置を可変するジャッキ位置保持具46を設けたことを特徴とする。
【0018】
前記床版支持フレーム11に取り付けた前記鉛直ジャッキ40と、前記フォーク支持フレーム12に取り付けた前記位置調整ジャッキ29とにそれぞれストロークセンサー48を設けて前記鉛直ジャッキ40と前記位置調整ジャッキ29のストロークを検出可能としたことを特徴とする。
【0019】
前記フォーク挿入筒36の内部に、上ゴム板38aと下ゴム板38bを設けて前記フォーク固定用ジャッキ37により前記フォーク16を固着するようにしたことを特徴とする。
【0020】
前記固定板23と前記移動板24の摺動を円滑にするために、前記固定板23と前記移動板24のいずれか一方に摺動板26を設け、いずれか他方にステンレス板25を設けたことを特徴とする。
【0021】
本発明による床版の架設方法は、
床版17を主桁18に架設する床版の架設方法において、
前記床版17を吊り下げ保持する床版支持フレーム11と、この床版支持フレーム11に取り付けられ、フォークリフト15のフォーク16を支持するフォーク支持フレーム12とからなり、前記床版支持フレーム11には、前記床版17を吊り下げる複数の鉛直ジャッキ40を有し、これらの鉛直ジャッキ40を前記床版支持フレーム11に搭載した電動ポンプユニット14にて油圧制御する床版の架設装置が用いられ、
前記複数の鉛直ジャッキ40の全点のジャッキストローク初期値からの相対値がジャッキ制御作動を開始するジャッキストローク差の値である制御値以内の場合は、前記全ての鉛直ジャッキ40に前記電動ポンプユニット14から作動油を供給し続け、全点でリフトダウンを行い、ストローク初期値からの最大値と最小値の相対差がジャッキ制御復帰をするジャッキストローク差の値である復帰値に収まったら、作動待機していた前記鉛直ジャッキ40を作動復帰させ、全点でのリフトダウンを再開することを特徴とする。
【0022】
床版17を主桁18に架設する床版の架設方法において、
前記床版17を吊り下げ保持する床版支持フレーム11と、この床版支持フレーム11に取り付けられ、フォークリフト15のフォーク16を支持するフォーク支持フレーム12とからなり、前記床版支持フレーム11には、前記床版17を吊り下げる複数の鉛直ジャッキ40を有し、これらの鉛直ジャッキ40を前記床版支持フレーム11に搭載した電動ポンプユニット14にて油圧制御する床版の架設装置が用いられ、
前記床版17の橋軸方向の面を勾配の有無にかかわらず固定しつつ、前記床版17に橋軸と直角方向に勾配を付けながらリフトダウンを行う場合、複数の各ジャッキ支点のリフトダウン量を比例演算によって分割したピッチでダウンを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明による請求項1記載の床版の架設装置は、
床版を主桁に架設する床版の架設装置において、
前記床版を吊り下げ保持する床版支持フレームと、この床版支持フレームに取り付けられ、フォークリフトのフォークを支持するフォーク支持フレームとを具備し、前記床版支持フレームには、前記床版を複数点で吊り下げる複数の鉛直ジャッキを具備し、
前記フォーク支持フレームは、受梁と、この受梁の両端に設けられ、前記フォークリフトのフォークの差し込まれるフォーク保持具と、前記フォーク支持フレームの両端に設けられ、前記床版支持フレームの橋軸方向の調整と、この床版支持フレームの回転調整のための位置調整装置とを具備するので、主桁に架設する床版の搬送、架設が狭隘な場所での作業を簡易な装置を用いて可能にする。また、床版を複数点の鉛直ジャッキで吊り下げたので、新床版の結合作業や古い床版からの取り外し作業におけるmm単位の調整を容易に行える。さらに、吊り下げた床版が揺れ動くことがなく作業性に優れている。
さらにまた、フォーク支持フレームに対して鉛直ジャッキで吊り下げた床版支持フレームの橋軸方向の調整と回転調整ができる。
【0025】
請求項2記載の発明は、
前記フォーク保持具は、前記フォークを差し込むフォーク挿入筒と、このフォーク挿入筒に設けられ、前記フォークを固定するフォーク固定用ジャッキとを具備するので、フォークの固定が確実で、作業の安全性を高めることができる。
【0026】
請求項3記載の発明は、
前記位置調整装置は、前記受梁に固着された固定板と、この固定板に互いに係合して摺動自在に重ねられ、前記床版支持フレームに固着された移動板と、前記固定板と移動板との間に連結した位置調整ジャッキとを具備し、この位置調整ジャッキの作動により前記移動板を前記固定板に沿って移動して前記床版支持フレームの位置を調整するようにしたので、鉛直ジャッキで吊り下げた床版支持フレームの橋軸方向の調整と回転調整が位置調整ジャッキの油圧制御で安全、かつ、正確にできる。
【0027】
請求項4記載の発明は、
床版を主桁に架設する床版の架設装置において、
前記床版を吊り下げ保持する床版支持フレームと、この床版支持フレームに取り付けられ、フォークリフトのフォークを支持するフォーク支持フレームとを具備し、前記床版支持フレームには、前記床版を複数点で吊り下げる複数の鉛直ジャッキを具備し、
前記床版支持フレームの上面に、発電機と電動ポンプユニットを搭載し、前記床版支持フレームの下面に、前記フォーク支持フレームを連結梁により着脱自在に連結したので、架設装置の運搬と組立が容易で、かつ、狭隘な場所への搬入、搬出が容易である。
【0028】
請求項5記載の発明は、
床版を主桁に架設する床版の架設装置において、
前記床版を吊り下げ保持する床版支持フレームと、この床版支持フレームに取り付けられ、フォークリフトのフォークを支持するフォーク支持フレームとを具備し、前記床版支持フレームには、前記床版を複数点で吊り下げる複数の鉛直ジャッキを具備し、
前記床版支持フレームにクレビス金具にて搖動自在に連結した前記鉛直ジャッキは、前記床版支持フレームに設けたジャッキ仮保持具に折りたたみ保持するようにしたので、床版支持フレームの鉛直ジャッキを折りたたんで嵩張らずに搬送し、現場での組み立てができる。
【0029】
請求項6記載の発明は、
前記床版支持フレームの下面に、前記鉛直ジャッキを連結するための前記クレビス金具の取り付け位置を可変するジャッキ位置保持具を設けたので、長さの異なる床版に利用できる。
【0030】
請求項7記載の発明は、
前記フォーク挿入筒の内部に、上ゴム板と下ゴム板を設けて前記フォーク固定用ジャッキにより前記フォークを固着するようにしたので、フォークが位置ずれを起こすようなことがなく、安全な作業ができる。
【0031】
請求項8記載の発明は、
床版を主桁に架設する床版の架設方法において、
前記床版を吊り下げ保持する床版支持フレームと、この床版支持フレームに取り付けられ、フォークリフトのフォークを支持するフォーク支持フレームとからなり、前記床版支持フレームには、前記床版を吊り下げる複数の鉛直ジャッキを有し、これらの鉛直ジャッキを前記床版支持フレームに搭載した電動ポンプユニットにて油圧制御する床版の架設装置が用いられ、
それぞれの鉛直ジャッキのリフトダウン量の相対値のうちジャッキ制御作動を開始するリフトダウン量の差の値である制御値に達したものがある場合は、リフトダウン量が最大の鉛直ジャッキを待機状態とし、その他の鉛直ジャッキは電動ポンプユニットから作動油が供給され続け、リフトダウンを行い、
リフトダウン量の相対値がジャッキ制御作動を終了するリフトダウン量の差の値である復帰値に収まったら、待機状態であった鉛直ジャッキの作動を復帰させ、全ての鉛直ジャッキでのリフトダウンを再開することことで、全ての鉛直ジャッキのリフトダウンを安全、かつ、効率よく行える。また、全ての鉛直ジャッキの変位相対値が大きくならないように制御してリフトダウンを安全、かつ、効率よく行える。
【0032】
請求項9記載の発明は、
床版を主桁に架設する床版の架設方法において、
前記床版を吊り下げ保持する床版支持フレームと、この床版支持フレームに取り付けられ、フォークリフトのフォークを支持するフォーク支持フレームとからなり、前記床版支持フレームには、前記床版を吊り下げる複数の鉛直ジャッキを有し、これらの鉛直ジャッキを前記床版支持フレームに搭載した電動ポンプユニットにて油圧制御する床版の架設装置が用いられ、
前記床版の橋軸方向の面を勾配の有無にかかわらず固定しつつ、前記床版に橋軸と直角方向に勾配を付けながらリフトダウンを行う場合、複数の各ジャッキ支点のリフトダウン量を比例演算によって分割したピッチでダウンを行うようにしたので、床版の勾配をつけたリフトダウンを安全、かつ、効率よく行える。また、橋軸と直角方向に勾配を付けるだけでなく、橋軸方向にも勾配を付けたリフトダウンを安全、かつ、効率よく行える。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】フォークリフトを用いた本発明による床版の架設装置及びその方法の実施例1を示す説明図である。
【
図2】(a)は、本発明による床版の架設装置及びその方法の実施例1を示す正面図、(b)は、(a)の平面図である。
【
図3】本発明による床版の架設装置及びその方法を床版支持フレーム11とフォーク支持フレーム12に分解して搬送するときの説明図である。
【
図4】本発明によるフォーク支持フレーム12の実施例1の斜視図である。
【
図5】(a)は、本発明によるフォーク支持フレーム12に搭載された位置調整装置51の分解斜視図、(b)は、(a)における固定板23と移動板24の断面図である。
【
図6】本発明によるフォーク支持フレーム12におけるフォーク保持具35の実施例1を示す斜視図である。
【
図7】本発明によるフォーク支持フレーム12におけるフォーク保持具35にフォークリフト15のフォーク16を挿入した状態の実施例1を示す断面図である。
【
図8】(a)は、本発明による鉛直ジャッキ40の橋軸方向に搖動可能であることを示す説明図、(b)は、本発明による鉛直ジャッキ40の橋軸と直角方向に回転可能であることを示す説明図である。
【
図9】(a)は、本発明による床版の架設装置及びその方法の電動ポンプユニット14を用いて2車線用等の長さの長い床版17を吊り下げている状態を示す説明図、(b)は、本発明による床版の架設装置及びその方法の電動ポンプユニット14を用いて1車線用等の長さの短い床版17を吊り下げている状態を示す説明図である。
【
図10】本発明による床版の架設装置及びその方法の油圧回路図を示す説明図である。
【
図11】(a)は、本発明の床版の架設装置及びその方法を用いて床版支持フレーム11を橋軸方向に押し出している状態を示す説明図、(b)は、本発明の床版の架設装置及びその方法を用いて床版支持フレーム11を橋軸方向に引寄せている状態を示す説明図、(c)は、本発明の床版の架設装置及びその方法を用いて床版支持フレーム11を回転している状態を示す説明図である。
【
図12】特許文献1に記載された従来のクローラーに搭載した大型のクレーンを用いて床版の交換作業をしている状態の説明図である。
【
図13】特許文献2に記載された従来の門型クレーンを用いて床版の交換作業をしている状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、
床版17を主桁18に架設する床版の架設装置において、
前記床版17を吊り下げ保持する床版支持フレーム11と、この床版支持フレーム11に取り付けられ、フォークリフト15のフォーク16を支持するフォーク支持フレーム12とからなり、前記床版支持フレーム11には、前記床版17を複数点で吊り下げる複数の鉛直ジャッキ40を具備した床版の架設装置である。
前記鉛直ジャッキ40は、前記床版17の幅方向に支持する複数基と、前記床版17の長さ方向に支持するための所定間隔で配置された複数基とを具備することにより、橋軸方向、橋軸と直角方向の勾配調整を正確に行える。
【0035】
前記フォーク支持フレーム12は、受梁22と、この受梁22の両端に設けられ、フォークリフト15のフォーク16の差し込まれるフォーク保持具35と、前記フォーク支持フレーム12の両端に設けられ、前記床版支持フレーム11の橋軸方向の調整と、この床版支持フレーム11の回転調整のための位置調整装置51とを具備する。
【0036】
前記フォーク保持具35は、前記フォーク16を差し込むフォーク挿入筒36と、このフォーク挿入筒36に設けられ、前記フォーク16を固定するフォーク固定用ジャッキ37とを具備する。
【0037】
前記位置調整装置51は、前記受梁22に固着された固定板23と、この固定板23に互いに係合して摺動自在に重ねられ、前記床版支持フレーム11に固着された移動板24と、前記固定板23と移動板24との間に連結した位置調整ジャッキ29とを具備し、この位置調整ジャッキ29の作動により前記移動板24を前記固定板23に沿って移動して前記床版支持フレーム11の位置を調整することにより、鉛直ジャッキで吊り下げた床版支持フレームの橋軸方向の調整と回転調整が位置調整ジャッキの油圧制御で安全、かつ、正確にできる。
【0038】
前記鉛直ジャッキ40は、前記床版支持フレーム11にクレビス金具41にて搖動自在に連結することにより、床版の形状の違いや吊り下げ位置の違いがあってもあらゆる床版に対処できる。
【0039】
前記床版支持フレーム11の上面に、発電機13と電動ポンプユニット14を搭載し、前記床版支持フレーム11の下面に、前記フォーク支持フレーム12を連結梁34により着脱自在に連結することにより、架設装置の運搬と組立が容易で、かつ、狭隘な場所への搬入、搬出が容易である。
【0040】
前記床版支持フレーム11にクレビス金具41にて搖動自在に連結した前記鉛直ジャッキ40は、前記床版支持フレーム11に設けたジャッキ仮保持具47に折りたたみ保持することにより、床版支持フレームの鉛直ジャッキを折りたたんで嵩張らずに搬送し、現場での組み立てができる。
【0041】
前記床版支持フレーム11の下面に、前記鉛直ジャッキ40を連結するための前記クレビス金具41の取り付け位置を可変するジャッキ位置保持具46を設ける。
【0042】
前記床版支持フレーム11に取り付けた前記鉛直ジャッキ40と、前記フォーク支持フレーム12に取り付けた前記位置調整ジャッキ29とにそれぞれストロークセンサー48を設けて前記鉛直ジャッキ40と前記位置調整ジャッキ29のストロークを検出可能とすることにより、床版支持フレームに吊り下げた床版の正確な位置調整の自動制御ができる。
【0043】
前記フォーク挿入筒36の内部に、上ゴム板38aと下ゴム板38bを設けて前記フォーク固定用ジャッキ37により前記フォーク16を固着することにより、フォークが位置ずれを起こすようなことがなく、安全な作業ができる。
【0044】
前記固定板23と前記移動板24の摺動を円滑にするために、前記固定板23と前記移動板24のいずれか一方に摺動板26を設け、いずれか他方にステンレス板25を設けることにより、固定板と移動板の摺動が円滑になり、床版支持フレームの微細な距離の調整ができる。
【0045】
床版17を主桁18に架設する床版の架設方法において、
前記床版17を吊り下げ保持する床版支持フレーム11と、この床版支持フレーム11に取り付けられ、フォークリフト15のフォーク16を支持するフォーク支持フレーム12とからなり、前記床版支持フレーム11には、前記床版17を吊り下げる複数の鉛直ジャッキ40を有し、これらの鉛直ジャッキ40を前記床版支持フレーム11に搭載した電動ポンプユニット14にて油圧制御する床版の架設装置が用いられ、
前記複数の鉛直ジャッキ40の全点のジャッキストローク初期値からの相対値がジャッキ制御作動を開始するジャッキストローク差の値である制御値以内の場合は、前記全ての鉛直ジャッキ40に前記電動ポンプユニット14から作動油を供給し続け、全点でリフトダウンを行い、ストローク初期値からの最大値と最小値の相対差がジャッキ制御復帰をするジャッキストローク差の値である復帰値に収まったら、作動待機していた前記鉛直ジャッキを作動復帰させ、全点でのリフトダウンを再開する。
【0046】
床版17を主桁18に架設する床版の架設方法において、
前記床版17を吊り下げ保持する床版支持フレーム11と、この床版支持フレーム11に取り付けられ、フォークリフト15のフォーク16を支持するフォーク支持フレーム12とからなり、前記床版支持フレーム11には、前記床版17を吊り下げる複数の鉛直ジャッキ40を有し、これらの鉛直ジャッキ40を前記床版支持フレーム11に搭載した電動ポンプユニット14にて油圧制御する床版の架設装置が用いられ、
前記床版の橋軸方向の面を勾配の有無にかかわらず固定しつつ、前記床版17に橋軸と直角方向に勾配を付けながらリフトダウンを行う場合、複数の各ジャッキ支点のリフトダウン量を比例演算によって分割したピッチでダウンを行う。
【実施例1】
【0047】
本発明の実施例1を図面に基づき説明する。
本発明は、橋梁の主桁18に新たな床版17を架設したり、主桁18の上の古い床版17を撤去して新たな床版17に交換したりする床版の架設装置及びその方法である。
前記古い床版17又は新たな床版17を主桁18の上の所定の位置まで搬送するには、
図1に示すように、本発明による架設装置50をフォークリフト15で持ち上げ、この架設装置50に前記床版17を吊り下げて、架設した床版17の上を前記フォークリフト15で移送して運搬する。
【0048】
前記架設装置50について、
図2~
図8に基づき説明する。
前記架設装置50は、
図2(a)(b)に示すように、前記床版17を吊り下げる床版支持フレーム11と、この床版支持フレーム11の下面に取り付けられ、前記フォークリフト15のフォーク16を挿入するフォーク支持フレーム12とからなる。
前記床版支持フレーム11は、長さ方向の2本の吊梁19と、幅方向の複数本のつなぎ材20と、筋交などの補強材21とにより、前記2車線用の床版17(長さ8~15m×幅1.5~2.0m)よりやや短い例えば、長さ8.0m×幅1.5mに組み立てられる。
前記床版支持フレーム11の上面中央には、発電機13が取り付けられ、この発電機13の両側には、それぞれ電動ポンプユニット14が取り付けられる。また、この床版支持フレーム11を構成する吊梁19の下面には、2基1対で8基4対の鉛直ジャッキ40が取り付けられる。これらの鉛直ジャッキ40は、例えば橋軸直角方向の中央の間隔が3.5m、左右の間隔がそれぞれ2.0mで配置する。
【0049】
前記鉛直ジャッキ40の上端部を吊梁19の下面に取り付けるには、球面ブッシュを内蔵したクレビス金具41によって、
図8(a)に示すように、橋軸方向に±5°、
図8(b)に示すように、橋軸と直角方向に±90°の搖動可能な状態に連結される。
前記床版支持フレーム11の吊梁19の下面におけるクレビス金具41の取り付け位置は、
図9(a)に示すような2車線用の長い床版17を吊り下げできるだけでなく、
図9(b)に示すような1車線用の短い床版17を吊り下げできるようにするため、前記吊梁19の下面に、ジャッキ位置保持具46が設けて、前記クレビス金具41の取り付け位置を変更できるようになっている。
また、
図3に示すように、前記架設装置50は、架設現場への搬送時には、前記床版支持フレーム11と前記フォーク支持フレーム12は分解され、また、床版支持フレーム11の鉛直ジャッキ40は、吊梁19に沿って折りたたんでジャッキ仮保持具47に固定して搬送する。
【0050】
前記フォーク支持フレーム12は、
図4に示すように、橋軸と直角方向の2本の受梁22を有し、これらの受梁22の両端の下面にそれぞれフォーク保持具35が取り付けられる。これらのフォーク保持具35には、例えば1.9mの間隔で前記フォーク16が挿入されるフォーク挿入筒36が設けられている。前記フォーク保持具35には、
図6に示すように、前記フォーク挿入筒36の下面に、ジャッキ保持材39によってフォーク固定用ジャッキ37が取り付けられている。このフォーク固定用ジャッキ37の上面と、これに対峙する前記フォーク挿入筒36の天井側内面には、それぞれ上ゴム板38aと下ゴム板38bが取付けられ、フォーク16を両面から挟み込み、滑りを防止して、確実に固定する。
【0051】
前記受梁22の両端部上面には、
図4、
図5に示すように、前記床版支持フレーム11の橋軸方向の位置調整と、この床版支持フレーム11の回転調整のための位置調整装置51が設けられている。この位置調整装置51は、前記受梁22の上面に固定的に取り付けられた固定板23と、この固定板23の上面に摺動自在に重ねられた移動板24とを有する。摺動を円滑にするため、前記固定板23の上面に摺動板26を貼り付け、前記移動板24の下面にステンレス板25を貼り付けている。
前記移動板24には、橋軸方向に伸びた段付き長孔27が設けられている。この段付き長孔27は、下部小径長孔27cと、上部大径長孔27aと、これらの間の段部27bとを有する。前記固定板23の中央部には、案内突起28が設けられる。この案内突起28は、下部小径長孔27cに係合する小径部28cと、上部大径長孔27aに係合する大径部28aと、これらの間の段部27bに係合する段部28bからなる。
前記段付き長孔27と案内突起28は、それぞれ前記移動板24と前記固定板23に設けられている場合だけでなく、それぞれ逆に前記固定板23と前記移動板24に設けられていてもよい。
前記固定板23の一端部と前記移動板24の他端部の間には、位置調整ジャッキ29のシリンダー30とピストン31がピン32により取り付けられている。前記移動板24の上面には、橋軸方向に伸びた連結梁34が固定的に取り付けられ、これらの連結梁34は、前記床版支持フレーム11の吊梁19の下面に分解可能に取り付けられる。
【0052】
図10に示すように、前記8基の鉛直ジャッキ40と、4基のフォーク固定用ジャッキ37と、2基の位置調整ジャッキ29のそれぞれの油圧回路は、前記電動ポンプユニット14に接続され、また前記8基の鉛直ジャッキ40のストロークセンサー48と、2基の位置調整ジャッキ29のストロークセンサー48のそれぞれの電気回路は、前記電動ポンプユニット14に接続される。
【0053】
以上のように構成された架設装置50による床版17の架設方法を説明する。
(1)架設装置50の現場への搬送
架設装置50を構成する床版支持フレーム11とフォーク支持フレーム12は、工場や組み立てヤードにてそれぞれ個々に組み立てられる。
前記床版支持フレーム11の上面に、発電機13と2台の電動ポンプユニット14が固定的に載せられ、下面の鉛直ジャッキ40は、搬送時には、嵩張らないように、
図3に示すように、床版支持フレーム11の下面に折りたたみ、鉛直ジャッキ40の床版係止具44を床版支持フレーム11のジャッキ仮保持具47に固定する。
床版17の架設現場では、
図3に示すような設置架台49を用意し、この上に床版支持フレーム11を載せ、鉛直ジャッキ40の床版係止具44をジャッキ仮保持具47から外して垂下する。この状態で床版支持フレーム11の下面に、フォーク支持フレーム12を連結梁34によりボルト等で固定的に取り付ける。
前記設置架台49は、床版支持フレーム11とフォーク支持フレーム12を組み立てた後は、前記架設装置50の仮置き時に使用される。
【0054】
(2)架設装置50を用いて床版17を吊り下げ搬送
架設装置50におけるフォーク支持フレーム12のフォーク挿入筒36に、フォークリフト15のフォーク16を差し込み、
図6及び
図7に示すように、フォーク保持具35のフォーク固定用ジャッキ37でフォーク16を挟みこむ。すると、フォーク16は、上下両面から上ゴム板38aと下ゴム板38bで圧着されて抜け出るのが防止される。
フォークリフト15で架設装置50を持ち上げ、床版17の運び込まれた場所まで移動し、垂下した鉛直ジャッキ40の床版係止具44を床版17のワイヤリング45に引っ掛ける。このとき、垂直に垂下した鉛直ジャッキ40の床版係止具44と床版17のワイヤリング45に多少の位置ずれがあったとしても、鉛直ジャッキ40は、
図8(a)(b)に示すように、クレビス金具41で搖動でき、また、鉛直ジャッキ40の伸縮を電動ポンプユニット14で調整できるので、床版17は、すべての鉛直ジャッキ40の床版係止具44と床版17のワイヤリング45とを係合させることができる。
【0055】
(3)すでに設置した床版17と新たに搬送した床版17との連結
図1に示すように、架設装置50に吊り下げた床版17をフォークリフト15で持ち上げて主桁18のうえの床版17の架設位置まで搬送し、すでに設置した床版17に並べて新たに搬送した床版17を下ろす。すでに設置した床版17と新たに搬送した床版17との位置合わせの詳細は、次の通りである。なお、以下では、橋軸方向をX軸方向とする。
【0056】
(a)X軸(橋軸)方向の調整
図11(a)において、新たに搬送した床版17の位置をすでに設置した床版17と平行(図中上方向)に移動するには、電動ポンプユニット14からの指令により両側の位置調整装置51における位置調整ジャッキ29のピストン31を同量だけ伸ばす。すると、固定板23に対して、案内突起28の嵌合している段付き長孔27を形成した移動板24が移動し、これに伴い連結梁34を介して床版支持フレーム11が前記ピストン31を伸ばした量だけ図中上方向に移動する。
図11(b)において、逆に、新たに搬送した床版17を図中下方向に移動するには、電動ポンプユニット14からの指令により左右の前記位置調整装置51における位置調整ジャッキ29のピストン31を同量だけ縮める。すると、固定板23に対して、移動板24が移動し、これに伴い連結梁34を介して床版支持フレーム11が前記ピストン31を縮めた量だけ図中下方向に移動する。
このように、新たに搬送した床版17の位置をすでに設置した床版17から引き離したり、引寄せたりして位置合わせの調整をし、新たに搬送した床版17とすでに設置した床版17とのボルト連結などが行われる。
【0057】
(b)Y軸(橋軸と直角)方向の調整
フォークリフト15の持つフォーク16の左右方向のスライド機能を利用して架設装置50全体を左右に移動して調整する。
【0058】
(c)Z軸(垂直)方向の調整
フォークリフト15の持つフォーク16の昇降機能を利用して架設装置50全体を昇降して調整する。
また、床版支持フレーム11に垂下したすべての鉛直ジャッキ40のピストン43を伸縮制御することにより床版17を昇降することができる。詳細は、後述の油圧制御にて説明する。
【0059】
(d)回転調整
図11(c)において、床版支持フレーム11に吊り下げた床版17を、図中左回転するには、右側の位置調整装置51における位置調整ジャッキ29のピストン31を伸ばすと同時に、左側の位置調整装置51における位置調整ジャッキ29のピストン31を縮める。すると、右側の移動板24は、上方向に移動し、左側の移動板24は、下方向に移動して、架設装置50は、中心点Oを中心にして角度θだけ左回転する。回転角度θは、右側のピストン31の伸ばす量と、左側のピストン31の縮める量とによって決定される。
また、左右の位置調整装置51における位置調整ジャッキ29のピストン31の伸縮を上記例と逆にすると、右回転する。
両側の位置調整装置51における位置調整ジャッキ29のピストン31の伸縮量を同量ではなく、異ならせたときは、異ならせた値に対応した位置が回転中心となる。
いずれか一方側の位置調整装置51における位置調整ジャッキ29のピストン31だけを伸縮すると、伸縮せずに固定した側の案内突起28を中心点として回転する。回転角度は、θの半分となる。
【0060】
(e)勾配調整
床版17をX軸(橋軸)方向に対する勾配及び/又はY軸(橋軸と直角)方向に対する勾配を調整するには、8基の鉛直ジャッキ40の伸縮を鉛直ジャッキ40の電動ポンプユニット14により制御する。設定された勾配に調整するには、8基の鉛直ジャッキ40の伸縮量が予め演算され、かつ、8基の鉛直ジャッキ40の移動量がそれぞれのストロークセンサー48で計測されてそのデータが電動ポンプユニット14に送られて設定値と比較演算される。詳細は、後述の(iv)比例変位制御時にて説明する。
【0061】
(f)床版17の長さ、幅の調整
鉛直ジャッキ40を垂直に下した時の床版係止具44の位置と床版17の上面のワイヤリング45の位置が一致しないときは、
図9(a)に示すように、鉛直ジャッキ40を所定角度θだけ傾けて床版係止具44とワイヤリング45を係止する。床版17の幅についても同様である。
床版17が1車線用などの短いときは、床版支持フレーム11の下面に複数設けられたジャッキ位置保持具46のいずれかのワイヤリング45に対応する位置のジャッキ位置保持具46に鉛直ジャッキ40のクレビス金具41を係止して吊り下げる。
【0062】
(4)床版支持フレーム11に取り付けられた鉛直ジャッキ40の油圧制御について
図10において、左から鉛直ジャッキ40a、40b、40c、40dとする。
(i)変位同調時
全鉛直ジャッキ40a、40b、40c、40dのリフトダウン量が同量の200mmで、リフトダウン量の最大値:200mm、最小値:200mm、相対値:0mm、制御設定値が例えば、制御値(ジャッキ制御作動を開始するジャッキストローク差の値):10mm、復帰値(ジャッキ制御復帰をするジャッキストローク差の値):5mm、停止値(異常発生と判断し、ジャッキ動作停止をするジャッキストローク差の値):15mmとする。
以上のような仮定において、全点のジャッキストローク初期値からの相対値が制御値以内の場合は、全鉛直ジャッキ40a、40b、40c、40dに電動ポンプユニット14から作動油が供給され続け、全点でリフトダウンを行う。
このようにして、全ジャッキについて、同量を同調しながらリフトダウンを行う。
【0063】
(ii)変位制御作動時
鉛直ジャッキ40aのリフトダウン量が最小値:200mm、鉛直ジャッキ40bのリフトダウン量が201mm、鉛直ジャッキ40cのリフトダウン量が203mm、鉛直ジャッキ40dのリフトダウン量が最大値:210mmで、リフトダウン量の最大値:210mm、最小値:200mm、相対値:10mm、制御設定値が例えば、制御値(ジャッキ制御作動を開始するジャッキストローク差の値):10mm、復帰値(ジャッキ制御復帰をするジャッキストローク差の値):5mm、停止値(異常発生と判断し、ジャッキ動作停止をするジャッキストローク差の値):15mmとする。
以上のような仮定において、全点のジャッキストローク初期値からの相対値が制御値に達した場合は、先行している鉛直ジャッキ40dは、待機状態となり、その他の鉛直ジャッキ40a、40b、40cで電動ポンプユニット14から作動油が供給され続け、リフトダウンを行う。
このようにして、全点で同量を同調ながらリフトダウンを行う。
【0064】
(iii)作動復帰時
鉛直ジャッキ40aのリフトダウン量が最小値:200mm、鉛直ジャッキ40bのリフトダウン量が203mm、鉛直ジャッキ40cのリフトダウン量が204mm、鉛直ジャッキ40dのリフトダウン量が最大値:205mmで、リフトダウン量の最大値:205mm、最小値:200mm、相対値:5mm、制御設定値が例えば、制御値(ジャッキ制御作動を開始するジャッキストローク差の値):10mm、復帰値(ジャッキ制御復帰をするジャッキストローク差の値):5mm、停止値(異常発生と判断し、ジャッキ動作停止をするジャッキストローク差の値):15mmとする。
以上のような仮定において、全点でリフトダウンを継続し、ストローク初期値からの最大値と最小値の相対差が復帰値に収まったら、作動待機していた鉛直ジャッキ40dを作動復帰させ、全点でのリフトダウンを再開する。
このようにして、先行している鉛直ジャッキ40dを作動待機させ、変位相対差が大きくならないようにする。
【0065】
(iv)比例変位制御時
床版17に橋軸と直角方向に勾配を付けながらリフトダウンを行う場合、各ジャッキ支点のリフトダウン量を比例演算によって分割したピッチでダウンを行う。
制御設定値が例えば、鉛直ジャッキ40a:400mm、鉛直ジャッキ40b:500mm、鉛直ジャッキ40c:700mm、鉛直ジャッキ40d:800mmで、分割数:100に設定した場合、以下の表のように分割したピッチでダウンを行う。
回数 鉛直ジャッキ
40a 鉛直ジャッキ
40b 鉛直ジャッキ
40c 鉛直ジャッキ
40d
1 4mm 5mm 7mm 8mm
2 8mm 10mm 14mm 16mm
3 12mm 15mm 21mm 24mm
… … … … …
100 400mm 500mm 700mm 800mm
上記例では、床版17が橋軸方向に水平で、橋軸と直角方向に勾配を付けながらリフトダウンを行う場合について説明したが、床版17が橋軸方向にも勾配を付ける場合には、鉛直ジャッキ40a、40b、40c、40dのそれぞれの橋軸方向の2基のジャッキで床版17に橋軸方向に所定の勾配を付け、この状態で前述のように、橋軸と直角方向に勾配を付けながらリフトダウンを行う。
その他、橋軸方向の勾配と、橋軸と直角方向の勾配を共に複数回に分割したピッチで同時に比例変位制御することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1…主桁、2…新床版、3…古い床版、4…クローラークレーン、5…トレーラ、6…門型クレーン、7…クレーン用レール、8…先端支持部、9…クレーン部、10…作業スペース、11…床版支持フレーム、12…フォーク支持フレーム、13…発電機、14…電動ポンプユニット、15…フォークリフト、16…フォーク、17…床版、18…主桁、19…吊梁、20…つなぎ材、21…補強材、22…受梁、23…固定板、24…移動板、25…ステンレス板、26…摺動板、27…段付き長孔、28…案内突起、29…位置調整ジャッキ、30…シリンダー、31…ピストン、32…ピン、34…連結梁、35…フォーク保持具、36…フォーク挿入筒、37…フォーク固定用ジャッキ、38…ゴム板、39…ジャッキ保持材、40…鉛直ジャッキ、41…クレビス金具、42…シリンダー、43…ピストン、44…床版係止具、45…ワイヤリング、46…ジャッキ位置保持具、47…ジャッキ仮保持具、48…ストロークセンサー、49…設置架台、50…架設装置、51…位置調整装置。
【要約】
【課題】狭隘な床版の作業現場への搬送、床版の交換作業、床版の新設作業等を簡便な装置で効率よく可能にした床版の架設装置及びその方法を提供することを目的とする。
【解決手段】床版17を主桁18に架設する床版の架設装置において、前記床版17を吊り下げ保持する床版支持フレーム11と、この床版支持フレーム11に取り付けられ、フォークリフト15のフォーク16を支持するフォーク支持フレーム12とからなり、前記床版支持フレーム11には、前記床版17を複数点で吊り下げる複数の鉛直ジャッキ40を具備し、前記鉛直ジャッキ40は、前記床版17の幅方向に支持する2基と、前記床版17の長さ方向に支持するための所定間隔で配置された4対8基とからなる。
【選択図】
図1