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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】生体データ測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 13/20 20210101AFI20240708BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
G01K13/20 341D
A61B5/01 150
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023031568
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2018237498の分割
【原出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2023078190
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2017253079
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512124452
【氏名又は名称】株式会社テクノ・コモンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭生
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/185905(WO,A1)
【文献】特開2016-115219(JP,A)
【文献】特開2009-222543(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140720(WO,A1)
【文献】特開2006-220611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
A61B 5/01
G08C 13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象である生体の体表面上に配置される断熱体、上記断熱体の上記体表面側の底面に配置される第1温度計および上記断熱体の上面に配置される第2温度計を有する複数のパッチと、上記各パッチの上記第1温度計と上記第2温度計より温度信号を取得して上記体表面に流れる熱流を求める信号処理手段とを備えており、
上記パッチには上記断熱体の熱抵抗が異なる2種類のパッチAとパッチBが含まれ、上記パッチAと上記パッチBを交互にマトリクス状に配置してなるDHF型のセンサーシートを備えていることを特徴とする生体データ測定装置。
【請求項2】
上記信号処理手段は、上記センサーシートの底面に配置されている複数の上記第1温度計を一巡するように一つずつ交代的に順次選択して温度信号を得る第1選択回路と、上記センサーシートの上面に配置されている複数の上記第2温度計を一巡するように一つずつ交代的に順次選択して温度信号を得る第2選択回路とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の生体データ測定装置。
【請求項3】
上記第1選択回路と上記第2選択回路は、それぞれ複数本のX方向配線とY方向配を含むマトリクス配線を有し、上記第1選択回路側のマトリクス配線の交点部分に上記第1温度計が接続され、上記第2選択回路側のマトリクス配線の交点部分に上記第2温度計が接続されることを特徴とする請求項2に記載の生体データ測定装置。
【請求項4】
上記第1温度計と上記第2温度計にはそれぞれダイオードが直列に接続され、選択する交点部分には順方向の電流が流され、その他の非選択の交点部分には順方向の電流が流されないことを特徴とする請求項3に記載の生体データ測定装置。
【請求項5】
上記第1温度計と上記第2温度計として、ダイオードが用いられることを特徴とする請求項3に記載の生体データ測定装置。
【請求項6】
上記断熱材として気体もしくは液体が封入されたセルが用いられることを特徴とする請求項1に記載の生体データ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の体表面に取り付けて体温等の生体データを測定する生体データ測定装置に関し、さらに詳しく言えば、生体の特に深部体温を測定する生体データ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、生体の体表面に取り付けて深部体温を測定する方法としては、例えばSingle Heat Flux(SHF)法と、Dual Heat Flux(DHF)法と、Zero Heat Flux(ZHF)法とが知られている。
【0003】
Single Heat Flux(SHF)法の一例として、図27に特許文献1に記載されている図2の構成を示す。同図において、2は第1プローブ、6は第2プローブ、4は断熱材で、3が体表面である。第1プローブ2と第2プローブ6により体表面3からほぼ垂直に生ずる熱流(熱流束)を測定する。
【0004】
SHF法によれば、ヒーターが不要であるため低電力で構成が簡素である、という利点があるが、測定時間が10分程度かかる、という問題がある。また、生体内の熱抵抗(体内熱抵抗)を別の方法であらかじめ測定する必要がある。
【0005】
次に、Dual Heat Flux(DHF)法の一例として、図28に特許文献2に記載されている第1図の構成を示す。同図において、11,17が第1温度センサのペア、12,18が第2温度センサのペアで、第1温度センサのペア11,17により測定された熱流と、第1温度センサのペア12,18により測定された熱流とにより、生体の深部体温を測定する。
【0006】
DHF法によれば、体内の熱抵抗を別の方法で測定することなく深部体温が分かる、また、ヒーターが不要であるため低電力でもある、という利点がある。しかしながら、測定時間がやはり10分程度かかるし、温度センサのペアが2組必要、という問題がある。
【0007】
また、Zero Heat Flux(ZHF)法の一例として、図29に特許文献3に記載されている図6を示す。同図において、140が温度センサで、126がヒータである。ZHF法によると、皮膚表面に貼付した温度センサ140がヒータ126により加温され、温度センサ140と深部体温が平衡に達した時点(約3分程度)で、表示部に深部体温が表示される。
【0008】
ZHF法によれば、測定時間が約3分程度と比較的早い、という利点があるが、他方において、ヒータの消費電力として約1W(ワット)程度必要である、という点で問題がある。また、ZHF法の場合、1W程度の消費電力を必要とするため、体表面に貼り付けて使用する絆創膏型のセンサには適用が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開WO2011/012386号公報(特に図2
【文献】特開昭63-58223号公報(特に第1図)
【文献】米国特許公開第2016/0238463号(特に第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
いずれの方法においても、多くの(各種の)生体データを取得する目的でセンサを人体の複数個所に装着する場合、例えば1センサ当たりの配線数がm本、取り付け個所数をn個所とすると、全体としてm×n本の配線を引き回すことになり、その配線処理が煩わしいばかりでなく、例えば運動時や作業時の生体データを測定する場合には、その動きの妨げにもなる。
【0011】
また、人体に装着するにあたっては(特に複数個所に装着する場合には)、薄くて軽くかつ簡単に装着できることが望まれる。このほか、低コストであることも重要なファクターである。
【0012】
したがって、本発明の課題は、構成が簡単で人体に装着しやすくかつ安価であり、人体の複数個所に装着する場合でも、配線数が増えることがないパッチ(センサユニット)を有する生体データ測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の生体データ測定装置は、被測定対象である生体の体表面上に配置される第1断熱体と、上記第1断熱体上に積層される第2断熱体と、上記第1断熱体の体表面側の底面から少なくとも上記第1断熱体と上記第2断熱体との間の積層面にかけて配線される帯状の導体膜と、第1温度計を含み上記第1断熱体の底面側で上記導体膜上に配置される第1測温回路と、第2温度計を含み上記積層面内において上記導体膜上に配置される第2測温回路とを含むパッチを備えていることを特徴としている。
【0014】
上記導体膜の両面は、上記各測温回路との電気的接続部を除いて電気絶縁膜により覆われていることが好ましい。
【0015】
また、好ましくは、上記第1断熱体の体表面側の底面には、上記導体膜の配線部分を含めて生体親和性を有する皮膚接触層が設けられる。
【0016】
本発明の特徴の一つとして、上記第1測温回路と上記第2測温回路は、上記導体膜に含まれているバス配線に直列に接続されているとともに、上記各測温回路には、上記温度計にて測温された温度信号の出力をオンオフする選択回路が搭載されている態様を含む。なお、本明細書で直列と称しているところは、ブロック図で見た場合であり、ブロック図内部の回路を見ればわかるように、アナログ線や電源線、グランド線は入力を出力へそのまま出しているため、ブロック内部まで見た場合には並列接続になっている部分がある。
【0017】
上記選択回路は、上記第1温度計にて測温された温度信号と上記第2温度計にて測温された温度信号を所定のタイミングで選択的に出力する機能を備えている。
【0018】
好ましい態様として、上記選択回路は、外部からの選択信号により動作するラッチ回路および上記ラッチ回路の出力によりオンオフする半導体スイッチを備え、上記バス配線には、上記温度信号を読み出すためのアナログ線、電源線およびグランド線が含まれており、上記温度計は半導体スイッチを介して上記アナログ線と上記グランド線との間に接続される。
【0019】
また、本発明には、上記パッチを複数備え、上記各パッチが上記バス配線を含む上記導体膜を介して直列に接続される態様が含まれる。
【0020】
また、DHF法対応として、上記パッチの個数が偶数個であり、その奇数番目の第1パッチと偶数番目の第2パッチとでは上記断熱材の厚さが異なっている態様も本発明に含まれる。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、上記パッチの複数個が上記バス配線を含む上記導体膜を介して直列に接続された状態で人体に対する装着ベルトに支持される。
【0022】
また、上記パッチの複数個が上記バス配線を含む上記導体膜を介して直列に接続された状態で衣服に配置されてもよい。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、上記導体膜に、上記アナログ線に連なる第1接続端子、上記電源線に連なる第2接続端子および上記グランド線に連なる第3接続端子を含むコンタクト部が設けられる。
【0024】
上記コンタクト部は、上記パッチ間に存在する上記導体膜に設けられてもよいし、上記パッチの上記第2断熱材の上面に設けられてもよい。
【0025】
本発明の生体データ測定装置は、上記コンタクト部に対して電気的・機械的に着脱可能であり、上記ラッチ回路に電源とラッチ動作の制御クロックを与えるとともに、上記各温度計より温度信号を収集して所定に処理する信号処理部をさらに備えていることを特徴としている。
【0026】
上記信号処理部は、上記第1温度計にて測温される体表面温度をTsk、上記第2温度計にて測温される上記積層面の温度をTsub、上記第1断熱層の熱抵抗をRthins、上記体表面にほぼ垂直に流れる熱流をIthとして、(Tsk-Tsub)/Rthinsにより上記熱流Ithを求める演算部を備えている。
【0027】
また、本発明には、上記パッチの個数が偶数個であり、その奇数番目の第1パッチと偶数番目の第2パッチとでは上記断熱材の厚さが異なっており、上記第1パッチの第1温度計にて測定される上記体表面温度をTsk1、その温度測定部で上記体表面にほぼ垂直に流れる熱流をIth1、上記第2パッチの第1温度計にて測定される上記体表面温度をTsk2、その温度測定部で上記体表面にほぼ垂直に流れる熱流をIth2、上記生体の深部組織から体表面までの体内熱抵抗をRthbodyとして、上記演算部は、(Tsk2-Tsk1)/(Ith1-Ith2)よりRthbodyを算出した後、(Ith1×Rthbody+Tsk1)もしくは(Ith2×Rthbody+Tsk2)より上記生体の深部体温Tcoreを求める態様も含まれてよい。
【0028】
また、本発明には別の態様として、被測定対象である生体の体表面上に配置される断熱体、上記断熱体の上記体表面側の底面に配置される第1温度計および上記断熱体の上面に配置される第2温度計を有する複数のパッチと、上記各パッチの上記第1温度計と上記第2温度計より温度信号を取得して上記体表面に流れる熱流を求める信号処理手段とを備えていることを特徴とする生体データ測定装置が含まれる。
【0029】
上記パッチには上記断熱体の熱抵抗が異なる2種類のパッチAとパッチBが含まれ、上記パッチAと上記パッチBにより、それらを交互にマトリクス状に配置してなるDHF型のセンサーシートが構成される。
【0030】
上記信号処理手段は、上記センサーシートの底面に配置されている複数の上記第1温度計を一巡するように一つずつ交代的に順次選択して温度信号を得る第1選択回路と、上記センサーシートの上面に配置されている複数の上記第2温度計を一巡するように一つずつ交代的に順次選択して温度信号を得る第2選択回路とを備える。
【0031】
上記第1選択回路と上記第2選択回路は、それぞれ複数本のX方向配線とY方向配を含むマトリクス配線を有し、上記第1選択回路側のマトリクス配線の交点部分に上記第1温度計が接続され、上記第2選択回路側のマトリクス配線の交点部分に上記第2温度計が接続される。
【0032】
上記第1温度計と上記第2温度計にはそれぞれダイオードが直列に接続され、選択する交点部分には順方向の電流が流され、その他の非選択の交点部分には順方向の電流が流されないようにする。
【0033】
上記第1温度計と上記第2温度計として、ダイオードが用いられてもよい。
【0034】
また、上記断熱材として気体もしくは液体が封入されたセル(細胞)を用いることもできる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、パッチ(センサユニット)は、基本的に、第1および第2の2つの断熱体、第1および第2の2つの測温回路、帯状の導体膜より構成されるため、構成が簡単で例えば数mm程度の厚さ、数g程度の重さにすることができ、人体に装着しやすくかつ安価であり、選択回路を搭載して第1温度計にて測温された温度信号と第2温度計にて測温された温度信号を所定のタイミングで選択的に出力させることにより、人体の複数個所に装着する場合でも配線数は1パッチ分でよく、従来に比べて配線数を飛躍的に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の生体データ測定装置が備えるパッチの基本的な態様(第1実施形態)を示す(a)模式的な断面図、(b)測温回路を含む模式的な平面図。
図2】上記測温回路の導体膜への(a)第1接続態様を示す模式的な断面図、(b)第2接続態様を示す模式的な断面図。
図3】上記第1実施形態に係るパッチの電気的な構成を概略的に示すブロック図。
図4】本発明の第2実施形態として、上記パッチの複数個を直列に接続した態様を示す模式的な断面図。
図5】上記第2実施形態の別の例を示す模式的な断面図。
図6】上記第2実施形態の電気的な構成を概略的に示すブロック図。
図7図6のブロック図の具体的な構成例を示す回路図。
図8】本発明の第3実施形態として、(a)複数のパッチを人体に装着する装着ベルトを示す模式的な斜視図、(b)上記装着ベルトに取り付けられる一連に接続された複数のパッチを示す模式的な斜視図、(c)上記装着ベルトに複数のパッチを取り付けた状態を示す模式的な斜視図。
図9】本発明の第4実施形態として、複数のパッチを人体に着用される衣服に配置した態様を示す模式図。
図10】本発明の第5実施形態として、パッチと信号処理部の接続態様を示す模式図。
図11】上記第5実施形態の別の例として、コンタクト部をパッチ上面に設けた(a)パッチの模式的な断面図、(b)その平面図。
図12a】本発明の第6実施形態で、パッチと信号処理部との電気的・機械的コンタクト部の第1例を示す模式的な断面図。
図12b】上記電気的・機械的コンタクト部の第2例を示す模式的な断面図。
図12c】上記電気的・機械的コンタクト部の第3例を示す模式的な断面図。
図12d】上記電気的・機械的コンタクト部の第4例を示す模式的な断面図。
図12e】上記電気的・機械的コンタクト部の第5例を示す模式的な断面図。
図13】本発明の第7実施形態で、(a)上記パッチの導体膜の一部分を心電信号等を検出する電極とした例を示す模式図、(b)その電極部分の拡大断面図。
図14】上記第7実施形態の電気的な構成を概略的に示すブロック図。
図15図14のブロック図の具体的な構成例を示す回路図。
図16】本発明の第8実施形態として、深部体温とECG,EMG,EEGの同時計測を行う態様を説明するための模式図。
図17】本発明の第9実施形態として、深部体温とGSRの同時計測を行う態様を説明するための模式図。
図18】本発明の第10実施形態として、概日リズム計測に好適な態様を説明するための模式図。
図19】特に概日リズム計測に好適な本発明の第11実施形態を示す模式図。
図20】上記第11実施形態に適用される断熱材の熱抵抗が異なる2種類のパッチを示す断面図。
図21】上記第11実施形態におけるXY走査シートの水平走査回路を示す模式図。
図22】上記第11実施形態におけるXY走査シートの垂直走査回路を示す模式図。
図23】上記第11実施形態におけるXY走査シートの信号処理回路を示す模式図。
図24】上記XY走査シートの交点部分で温度計の接続態様を示す模式図。
図25】上記XY走査シートの交点部分で温度計を接続する際の(a)両面基板を用いた例を示す模式図、(b)片面基板を用いた例を示す模式図。
図26】上記第11実施形態に関連する別の態様を示す模式図。
図27】第1従来技術としてのSHF法を紹介する模式図。
図28】第2従来技術としてのDHF法を紹介する模式図。
図29】第3従来技術としてのZHF法を紹介する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、図1ないし図18により、本発明のいくつかの実施形態について説明するが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0038】
まず、図1ないし図3を参照して、本発明の生体データ測定装置は、基本的な構成の第1実施形態として、生体の体表面に装着して使用されるセンサユニットとしてのパッチ100を備える。
【0039】
パッチ100には、第1および第2の2つの断熱材111,112と、帯状の配線膜(バス配線とも言う)120と、第1および第2の2つの測温回路130,140とが含まれている。
【0040】
第1断熱材111が体表面BS上に配置されるとすれば、第2断熱材112は第1断熱材111の上に積層される。断熱材111,112には、発泡材、とりわけ発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン等の発泡プラスチックが好ましく用いられる。
【0041】
発泡プラスチックの熱伝導率は、発泡倍率によって変化するが、熱伝導率としては0.1W/m/K以下、好ましくは0.05W/m/K以下であることが断熱性や強度的によい。各断熱材111,112の厚さは3mm以下、装着しやすさの観点からすれば、好ましくは1mm以下であるが、十分なS/N比をとるためには、厚くして断熱性を上げる必要がある。
【0042】
第1断熱材111の体表面(皮膚)に接触する面には、生体親和性材料の接触層を形成することが好ましい。接触層の生体親和性材料として、シリコンを成分にもつ材料を使用することができる。
【0043】
防水を目的にパッチ全体を生体親和性材料でくるんで、断熱材111,112や配線膜120、測温回路130,140に汗や水分が入らないようにすることもできる。また、断熱材111,112の間に防水を目的とした接着材を充填することもできる。
【0044】
配線膜120は、コア配線としての帯状(リボン状)をなす導体膜121を有し、この実施形態では、導体膜121の両面が絶縁膜122,122によって覆われている。絶縁膜122には、生体親和性がよく、かぶれ等の問題が起きにくい高分子膜、例えばシロキサン、シリコンゴム(シリコーン)を用いるとよい。
【0045】
導体膜121は、金属材、好ましくは銅、銀、金等により形成される。一例として、一方の絶縁膜122上に導体膜121を帯状に形成し、その上から他方の絶縁膜122を被せることにより配線膜120が形成されるが、配線膜120全体の厚さは数10~数100ミクロンであることが好ましい。
【0046】
配線膜120は、少なくとも第1断熱材111の体表面BSと接触する底面Aから、第1断熱材111の側面を経由して第1断熱材111と第2断熱材112の積層面Bにかけて配線される。第1断熱材111の底面Aの全面を絶縁膜122で覆ってもよい。
【0047】
第1測温回路130は、温度計131と当該温度計131のアクセスを許可する選択回路132を備えている。同様に、第2測温回路140も、温度計141と当該温度計141のアクセスを許可する選択回路142を備えている。
【0048】
温度計131,141には、サーミスタや熱電対、ダイオード等の半導体、放射温度計等が用いられてよい。選択回路132,142は、所定のタイミングで、温度計131,141を後述するバス配線内のアナログ線に接続する。
【0049】
第1測温回路130は、第1断熱材111の底面Aにおいて、配線膜120上に配置され、第2測温回路140は、第1断熱材111と第2断熱材112の積層面Bにおいて、配線膜120上に配置される。
【0050】
測温回路130,140は、図2(a)に示すように、上面側の絶縁膜122の一部分に開口部を形成して導体膜121を露出させて、導体膜121と電気的な接続をとることもできるが、図2(b)に示すように、絶縁膜122の一部分に開口部を設けずに、絶縁膜122と導体膜121の間に配置されてもよい。図2(b)に示す態様によれば、測温回路130,140が半導体チップからなる場合、半導体チップを効果的に保護することができる。
【0051】
第1温度計131にて測温される体表面温度をTsk、第2温度計141にて測温される積層面Bの温度をTsub、第1断熱層11の熱抵抗をRthins、体表面BSにほぼ垂直に流れる熱流をIthとして、熱流Ithは、(Tsk-Tsub)/Rthinsにより求められる
【0052】
ここで、生体の深部体温をTcore、生体の深部組織から体表面BSまでの熱抵抗を体内熱抵抗Rthbodyとして、深部体温Tcoreは、Tcore=Tsk+Ith×Rthbodyより求めることができる。
【0053】
なお、この第1実施形態において、体内熱抵抗Rthbodyは図示しない他の方法で測定される。その方法の一例として、一対の電極より生体に微弱電流(例えば、0.2μA程度)を流して生体内の電気抵抗(GSR:Galvanic Skin Resistance)を測定する体内電気抵抗測定手段により測定される体内電気抵抗値より体内熱抵抗Rthbodyを推定する方法がある。
【0054】
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、パッチ100の複数個(100(1)~100(n))が配線膜120を介して直列状(一筆書き状)に接続される。
【0055】
すなわち、第2実施形態においては、配線膜120を、第1番目のパッチ100(1)の第1断熱材111の底面A→第1断熱材111の側面(図4では右側面)→第1断熱材111と第2断熱材112の積層面B→第2断熱材112の側面(図4では左側面)→第2断熱材112の上面にかけて引き回したのち、パッチ100(1)の側面(図4では右側面)に沿わせて第2番目のパッチ100(2)の第1断熱材111の底面Aに至るように配線し、これを繰り返す。
【0056】
第2実施形態の別の例として、図5に示すように、パッチ100(1)~100(n)のn個(偶数個)のうち、奇数番目のパッチ100(1),(3),(5)…の断熱材111,112に対して、偶数番目のパッチ100(2),(4),(6)…の断熱材111,112の厚さを例えば薄くして、DHF法により体内熱抵抗Rthbodyを算出して、深部体温Tcoreを求めることもできる。この場合には、隣接する奇数番目のパッチと偶数番目のパッチをペアとして用いる。
【0057】
第1番目のパッチ100(1)と第2番目のパッチ100(2)を例にして説明すると、第1番目のパッチ100(1)の第1温度計131にて測定される体表面温度をTsk1、その温度測定部で体表面にほぼ垂直に流れる熱流をIth1、第2番目のパッチ100(2)の第1温度計131にて測定される体表面温度をTsk2、その温度測定部で上記体表面にほぼ垂直に流れる熱流をIth2、生体の深部組織から体表面までの体内熱抵抗をRthbodyとして、Rthbodyは、(Tsk2-Tsk1)/(Ith1-Ith2)より算出され、これにより、深部体温Tcoreは、(Ith1×Rthbody+Tsk1)もしくは(Ith2×Rthbody+Tsk2)より求められる。
【0058】
このように、図5のDHF法とした実施形態によれば、合計2n個のパッチでn個所の深部体温の絶対値を求めることができる。
【0059】
図5のブロック図に示すように、上記第2実施形態において、各パッチ100は配線膜120内の導体膜121を介して直列に接続されるが、本発明によれば、選択回路132,142の存在により、パッチの接続個数を増やしても配線数が増えることがない。
【0060】
図6のブロック図と図7の回路図を参照して、第1測温回路130の選択回路132、第2測温回路140の選択回路142ともに、ラッチ回路151およびその出力によりオンオフする半導体スイッチ152よりなる。この例において、半導体スイッチ152にはMOSFETが用いられることから、ここでは半導体スイッチをMOSFETと言う。また、ラッチ回路151には、フリップ・フロップ回路が用いられている。
【0061】
導体膜121内には、電源線123、クロック線を兼ねたアナログ線124、データ線125およびグランド(GND)線126が含まれている。温度計(例えばサーミスタ)131,141の一端はアナログ線124に接続され、その他端はMOSFET152のドレインに接続される。
【0062】
MOSFET152のゲートはラッチ回路151の出力端子Qに接続される。MOSFETとして例えばN型が用いられる。ラッチ回路151の電源端子Vは電源線123に接続され、グランド端子Gはグラント線126に接続されている。
【0063】
先頭(第1番目)のパッチ100(1)の第1測温回路130にのみ、電源投入時にラッチ回路151をプリセットするプリセット回路153が設けられている。プリセット回路153は、例えば抵抗素子とコンデンサとを有し、電源の立ち上がりを遅らせる。
【0064】
先頭以外のラッチ回路151はリセット回路154を備え、電源投入時にラッチ回路151をリセットする。先頭のラッチ回路151のデータ入力端子Dはグランド線126に接続され、クロックが入力されたら「0」が入力されるようにする。ラッチ回路151の出力端子Qは次のラッチ回路151のデータ入力端子Dに接続される。ラッチ回路151のクロック端子にはクロック線を兼ねたアナログ線124が接続される。
【0065】
電源線123、アナログ線124およびグランド線126は、図10,11で後述するコンタクト部を介して信号処理部200に接続される。信号処理部200は、負荷抵抗201、半導体スイッチ(MOSFET)202および内蔵電源としての電池203を備えている。
【0066】
負荷抵抗201の一端は電池203に接続され、その他端はアナログ線124とMOSFET202のドレインとの接続点に接続されている。MOSFET202のソースはグランド線126に接続され、ゲートにはクロック信号が入力される。
【0067】
これにより電源投入時には、各ラッチ回路151の状態は「100…」となり、先頭のパッチ100(1)の第1測温回路130内の温度計(サーミスタ)131が選択され、その抵抗値をR1、負荷抵抗201の抵抗値をRLとして、アナログ線124には、電源電圧VがRLとR1で分圧された電圧(=V×R1/(RL+R1))が現れる。
【0068】
MOSFET202のゲートに入力される次のクロックにより、今度は、先頭のパッチ100(1)の第2測温回路140内の温度計(サーミスタ)141が選択され、その抵抗値をR2とすると、アナログ線124には、V×R2/(RL+R2)なる電圧が現れる。このようにして、MOSFET202のゲートにクロックが入力されるたびに温度計131,141が順次交代的にシフトされる。
【0069】
この構成により、配線膜120内の配線(導体膜よりなる配線)は4本で済む。また、信号処理部200は、3個のコンタクトを持つだけでよい。パッチを増やしても配線数やコンタクト数は変わらない。
【0070】
各温度計131,141は、例えば1秒間に1回読み出しを行えばよい。ランニング等で、深部体温Tcoreの急激な変化が起こる場合でも、1分間に0.2℃程度の変化であり、その変化量は1秒間で0.01℃以下であるため、1秒おきの読み出しでも問題はない。
【0071】
nとして10個のパッチ、温度計として20個を読み出す場合、20Hz程度の頻度で各温度計を読み出すとすれば、1秒ですべての温度計を読み出すことができる。
【0072】
図8に、第3実施形態として人体に対する装着例の第1例を示す。この装着例では、図8(a)に示すような長尺のベルト300を用いる。ベルト300の素材は、皮膚に密着するよう伸縮性に富むゴム状の生体親和性を有する材料であることが好ましい。
【0073】
このベルト300に、図8(b)に示すように、複数のパッチ100を配線膜120を介して電気的・機械的に連結したパッチ列を取り付ける。図8(c)に示すように、例えば4個のパッチ100(1)~100(4)をベルト300に取り付けることにより、腹部や背中の左右を測定することができる。
【0074】
この場合、信号処理部200をベルト300の任意の位置に配置して、配線膜120内の導体膜121に後述するコンタクト部を介して接続し、各温度計(8個)の測温信号(上記アナログ線124に現れる電圧信号)を順次収集する。
【0075】
図9に、第4実施形態として人体に対する装着例の第2例を示す。この装着例では、上記したのと同じく、複数のパッチ100を配線膜120を介して電気的・機械的に連結したパッチ列を衣服の素材に貼り付けて使用する。
【0076】
例えば、nとして12個のパッチ100(1)~100(12)を衣服の素材に配置することにより、腹部や背中の上中下、それらの左右を測定することができる。この場合においても、信号処理部200を例えば腰の位置に配置して、配線膜120内の導体膜121に後述するコンタクト部を介して接続し、各温度計(24個)の測温信号(上記アナログ線124に現れる電圧信号)を順次収集する。
【0077】
このように、複数個所の体温を測ることで、例えば直腸付近(通常37℃から余り変化しない)の温度と、胃部あたりの温度(自律神経や環境温度等によって変化しやすい)との比較から、装着者の自律神経がどのような温度制御をしているかを把握することができる。
【0078】
パッチ100は体表面(皮膚面)に接触するように形成するとよい。また、ベルトや服素材を皮膚の一部と見做して、皮膚-ベルトや服素材-パッチの順番で形成することもできる。
【0079】
次に、図10により、第5実施形態としてパッチ100と信号処理部200の電気的接続部(コンタクト部)の構成について説明する。
【0080】
導体膜121内に含まれている電源線123、アナログ線124、データ線125およびグランド(GND)線126のうち、データ線125以外の3線123,124,126を信号処理部200と電気的に接続する必要がある。
【0081】
図10は、そのコンタクト部を配線膜120の所定個所に配置した例を示しており、配線膜120側には3つの接続端子410が設けられる。すなわち、配線膜側の接続端子410には、電源線123に連なる第1接続端子411、アナログ線124に連なる第2接続端子412、グランド線126に連なる第3接続端子413が含まれている。なお、これら接続端子411,412,413を区別する必要がない場合には、総称として接続端子410と言う。
【0082】
これに対して、信号処理部200側にも3つの接続端子420が設けられる。すなわち、信号処理部側の接続端子420には、配線膜側の第1接続端子411に対応する第1接続端子421、配線膜側の第2接続端子412に対応する第2接続端子422、配線膜側の第3接続端子413に対応する第3接続端子423が含まれている。なお、これら接続端子421,422,423を区別する必要がない場合には、総称として接続端子420と言う。
【0083】
配線膜側の接続端子410は、導電性磁性体であることが好ましい。配線膜側の接続端子410として、鉄素材に金や銀、ニッケル等のメッキを施したものを使用することができる。また、配線膜側の接続端子410をはんだ材や導電性接着剤により形成することもできる。後述するカシメ金具を用いてもよい。
【0084】
対向する信号処理部側の接続端子420にも、同じく導電性磁性体を使用することが好ましい。信号処理部200は、プラスチックケースに入れることができるほか、半導体チップとしてモールド封止してもよい。
【0085】
導電性磁性体からなる配線膜側の接続端子410、信号処理部側の接続端子420のいずれか一方、もしくは両方を磁化(着磁)することにより、信号処理部200を近づけるに伴って自己整合的に接触が得られる。
【0086】
この第5実施形態におけるコンタクト部の別の例として、図11に示すように、配線膜側の接続端子410(411,412,413)をパッチ100の第2断熱材112の真上に設置することもできる。コンパクトにできるメリットがある。特には、1個所の温度を測定する場合などに好適である。
【0087】
次に、図12a~12eを参照して、第6実施形態として、配線膜側の接続端子410と信号処理部側の接続端子420の電気的・機械的コンタクト部のいくつかの構成例について説明する。
【0088】
まず、図12aの第1例では、配線膜側の接続端子410と信号処理部側の接続端子420をともに導電性マグネットとしている。導電性マグネットは、コイン型やボタン型の円盤形状が一般的であるが、角型であってもよい。マグネット同士の場合、マグネットの中心位置が自動的に揃う(一致する)メリットがある。なお、導電性マグネットと導体膜121は導電性接着剤にて電気的・機械的に接続する。
【0089】
次に、図12bの第2例では、信号処理部側の接続端子420は導電性マグネットであるが、配線膜側の接続端子410を鉄等の導電性磁性体としている。この場合、配線膜側の接続端子410に、信号処理部側の接続端子420が嵌合する凹部410aを設けるとよい。
【0090】
導電性磁性体と導体膜121との電気的・機械的接続には、上記第1例と同じく、導電性接着剤が用いられてよい。別の態様として、配線膜側の接続端子410の導電性磁性体にAgメッキを施し、導体膜121との間でAg・Ag間の熱融着を行うこともできる。
【0091】
図12cの第3例は、上記第1例の変形例で、導電膜121に配線膜側の接続端子410として用いられる導電性マグネットを門型状のかしめ針431にて固定する。かしめ後にカシメ部分を絶縁膜122で覆う。
【0092】
図12dの第4例は、上記第2例の変形例で、配線膜側の接続端子410として用いられる導電性磁性体自体にかしめ脚432を形成し、このかしめ脚432を導体膜121に食い込ませて固定する。この場合にも、かしめ後に絶縁膜122を被せる。
【0093】
図12eの第5例は、例えばベルト300の上に、導電性マグネットからなる配線膜側の接続端子410を配置してカシメ受けリング433で仮固定したのち、導体膜122の裏面側からカップ状のカシメ金具434をカシメ受けリング433に打ち込んで、配線膜側の接続端子410を本固定する。カシメ金具434の底部は絶縁膜122で覆う。この第5例において、配線膜側の接続端子410はカシメ金具434を介して導体膜121と導通する。
【0094】
次に、図13ないし図15により、第7実施形態として、上記の配線膜120を用いて配線数を増やさずに複数の電極から生体信号を読み出す構成について説明する。
【0095】
電極を通じて読み出す生体信号としては、ECG(Electrocardiogram:心電)、GSR(Galvanic Skin Resistance:皮膚(体内)の電気抵抗)、EIT(Electrical Impedance Tomography:電気インピーダンス)、EMG(Electromyography:筋電)EEG(Electroencephalogram:脳波計)等の各信号がある。
【0096】
図13(b)に示すように、電極160は、配線膜120の片側の絶縁膜122の一部に開口部を設けて、導体膜121の一部分を皮膚に触れるように露出することにより形成することができる。導体膜121として銀(Ag)や塩化銀(AgCl)を主成分とする材料を用いることにより、皮膚との接触電位を減らすことができる。
【0097】
電極160は測定に必要な数だけ形成されるが、配線数を増やさないため、図14に示すように、その各々に選択回路132が設けられる。
【0098】
図15の回路図を参照して、この第7実施形態においても、選択回路132は、ラッチ回路151およびその出力によりオンオフする半導体スイッチ152よりなる。この例において、半導体スイッチ152にはMOSFETが用いられることから、ここでは半導体スイッチをMOSFETと言う。また、ラッチ回路151には、フリップ・フロップ回路が用いられている。
【0099】
ECGやEMG,EEG等の信号は微弱であるため、平衡線路(差動線路)で読み出すことが好ましい。アナログ線124として2本の線124a,124bを有し、任意の2個所の選択回路132をオンさせる。この実施形態では、クロック線127がアナログ線124と分離して配線されている。
【0100】
電極160はMOSFET152のソースに接続されている。MOSFET152のドレインはアナログ線124に接続されるが、この例において、奇数番目ではアナログ線124b側に接続され、偶数番目ではアナログ線124a側に接続される。
【0101】
任意の2個所の選択回路132をオンさせるには、先頭のデータ線125に、任意の2個所がオンとなるような信号を入力するか、もしくは前述したプリセット回路、リセット回路を用いて設定し、クロック線127よりクロックを入力してシフトさせてもよい。さらには、データ線125の途中からデータを入力して、その手前の任意の1個所とそれ以降の任意の1個所を選択することもできる。
【0102】
次に、図16により、第8実施形態として、深部体温とECG,EMG,EEGの同時計測を行う態様について説明する。
【0103】
この場合には、先の図7で説明した温度計131を有する測温用のバス配線1と、先の図15で説明した心電等の微弱信号を検出する電極160を有する信号検出用のバス配線2の2つのバス配線が用いられる。
【0104】
測温用のバス配線1は、上記したように配線膜側の接続端子410と信号処理部側の接続端子420を介して信号処理部200内の熱流計211に接続される。熱流計211は、各パッチ100内に設けられている温度計131,141による測温信号をバス配線1を経由して順次読み込む。
【0105】
信号検出用のバス配線2に設けられている電極160は、例えばECG測定であれば心臓に近い胸あたり、EMG測定であれば測定したい筋肉の周辺、EEG測定であれば頭部に配置される。
【0106】
これらの電極160はアナログ線124a,124bを介して信号処理部200内のECG測定回路212、EMG測定回路213、EEG測定回路214に接続される。各測定回路では、検出目的の信号に対して最適なフィルタやゲインをかける。
【0107】
この第8実施形態によれば、深部体温とECG,EMG,EEG等の生体ポテンシャルの同時計測を行うことができる。なお、信号処理部200には、上記熱流計や各種の測定回路のほかに、外部機器(例えばパソコン)との通信を行う通信回路215、演算や各部を制御する制御回路216、記憶回路217、電源回路218および電池219が設けられている。
【0108】
次に、図17により、第9実施形態として、深部体温とECG,GSRの同時計測を行う態様について説明する。
【0109】
この場合、信号処理部200は、さらにGSR測定回路221とGSR駆動回路222を備える。図17には、先に説明したEMG測定回路213、EEG測定回路214が示されていないが、これらの測定回路があってもよい。
【0110】
この実施形態において、GSR測定では、好ましくは4端子法により、人体に対して2つの電極を介して電圧を印加し、別の2つの電極にて人体に流れる電流を検出するため、信号検出用のバス配線2のほかに、電圧印加用のバス配線3が用いられる。バス配線3はバス配線2と同様な構成であってよい。
【0111】
例えば、図示のように、4つの電極160(1),160(2),160(3),160(4)が腹部の周りに並べられているとして、GSRを測定するにあたって、外側の2つの電極160(1)と160(4)がバス配線3を介してGSR駆動回路222に接続され、その内側の2つの電極160(2)と160(3)がバス配線2を介してGSR測定回路221に接続される。
【0112】
このようにして、深部体温とECG,GSRの同時計測を行うことができるが、本発明の特徴は、任意の2個所の電極を選択できるところにあり、その電極数をnとして任意の数、例えば胴体を輪切りに測定(EIT測定)できるように、胴の周囲に多くの測定電極、駆動電極を置くことができる。
【0113】
次に、図18により、第10実施形態として、概日リズム(サーカディアンリズム)計測に好適な態様について説明する。
【0114】
この実施形態では、DHF法により深部体温の測定が可能である先の図5で説明した断熱材111,112の厚さの異なる2種類のパッチ(ここではパッチ100A,100Bとする)を用いる。
【0115】
先の図5では、2種類のパッチ100A,100Bを交互に並べてバス配線(配線膜)120を介して一列状態に接続する構成を説明したが、この第10実施形態では、パッチ100A,100Bを交互に市松模様状に配置して面状のDHFセンサとする。
【0116】
先に説明したように、各パッチ100A,100Bには選択回路132,142が設けられているため、パッチ100A,100Bを1本のバス配線120で直列に接続することにより、測温信号の読み出しも容易に行うことができる。
【0117】
このパッチ100A,100Bを含むDHFセンサは、概日リズム計測として、枕やシーツ、マットレス、敷き布団等、就寝時に頭の下に来るもの、さらには椅子の座面や座布団、ソファー等、日中下半身の下に来るものに適用される。
【0118】
例えば、20mm角のパッチを数10個並べることで、枕や椅子の座面等を覆うことができる。これによって、就寝時寝返り等で頭の位置が動いたり、椅子の座り直し等により臀部や下半身の位置が動いても、どこかのパッチで体の深部体温を測ることができる。
【0119】
例えば、就寝時、頭と枕が60mm×30mm角の面積で接触している場合、2×1以上のパッチに頭が接触していることになる。パッチ100Aとパッチ100Bを交互に並べた場合、1個以上のパッチ100A、1個以上のパッチ100Bが接触できており、DHF法の原理から深部体温Tcoreの絶対値を求めることができる。
【0120】
乳幼児を対象にする場合等、比較的皮下の厚さに個人差が少ない応用や、絶対値を重視しない応用では、SHF法を用いて、皮下の厚さとして統計的な平均値を用いることもできる。この場合にはパッチは1種類でよい。
【0121】
この第10実施形態によれば、就寝時から日中にわたって対象者の深部体温変動(概日リズム、サーカディアンリズム)を測定することができる。また、センサから端末を経由してサーバーにデータを送信することにより、自宅や職場での深部体温を取得して終日あるいは数日間の深部体温変化から総合的な判断を行うことができる。
【0122】
次に、図19ないし図26により、第11実施形態として、概日リズム(サーカディアンリズム)計測に好適な別の態様について説明する。
【0123】
まず、図19を参照して、この第11実施形態においても、断熱材の熱抵抗(熱伝導率)が異なる2種類のパッチ500Aとパッチ500B(請求項18ではパッチA,B)を交互にマトリクス状(市松模様状)に配置してなるセンサーシート500を備えているが、パッチの構成とその選択方法が上記第10実施形態とは異なっている。
【0124】
図20を併せて参照して、パッチ500Aは、被測定対象である図示しない生体の体表面上に配置される断熱体511と、断熱体511の体表面側の底面に配置される第1温度計521と、断熱体511の上面に配置される第2温度計531とを備えている。
【0125】
同様に、パッチ500Bは、被測定対象である図示しない生体の体表面上に配置される断熱体512と、断熱体512の体表面側の底面に配置される第1温度計522と、断熱体512の上面に配置される第2温度計532とを備えている。
【0126】
なお、断熱体511,512を区別する必要がない場合には総称として断熱体510とし、第1温度計521,522を区別する必要がない場合には総称として第1温度計520とし、また、第2温度計531,532についても区別する必要がない場合には総称として第2温度計530とする。
【0127】
パッチ500Aの断熱材511の熱抵抗(熱伝導率)と、パッチ500Bの断熱材512の熱抵抗(熱伝導率)は異なっている。断熱材510(511,512)は有意な断熱性能つまりは熱抵抗を得るため、好ましくは数mmの高さを必要とする。
【0128】
熱抵抗を上げる(高くする)必要性は、第1に断熱材510の底面と上面にある第1温度計520と第2温度計530の温度差を十分に得るためである。第2には、パッチ500Aとパッチ500Bとで熱流Ithの差を大きくする必要があるためである。
【0129】
熱流Ithの差を大きくするには、被測定対象物の生体からその周辺の環境までに入るいくつかの熱抵抗の中で断熱材510の熱抵抗の割合・ウェイトを大きくし、かつ、パッチ500Aとパッチ500Bで断熱材510の熱抵抗の差を大きくする必要がある。熱流Ithの差を大きくすることにより、深部温度を2つの熱流Ithから求める精度が高められる。
【0130】
断熱材510(511,512)には、発泡ポリスチレンや発泡ポリウレタン等の発泡材が用いられてもよいが、気体が封入されたセル(細胞)を用いることもできる。パッチ500Aとパッチ500Bとで封入する気体を変えることにより、それら断熱材511,512の熱抵抗を異ならせることができる。
【0131】
熱抵抗が高い(熱伝導率が低い)気体として、炭酸ガスやアルゴン、空気等を使用することができる。これに対して、熱抵抗が低い(熱伝導率が高い)気体としては、水素やヘリウム等を使用することができる。
【0132】
セルへの封入物質(断熱材)の選択として、気体の組合せだけでなく、液体の組合せや固体の組合せも使用することができる。さらには、気体と液体、液体と固体、気体と固体の組合せやこれらを混合させた物質の組合せも使用することができる。
【0133】
断熱材510は快適性を確保するために、変形する特性を備えていることが好ましい。特に固体を使用する場合、例えばビーズ状の粒を使用するとよい。ただし、使用している間にビーズの形状が変形すると、温度校正時から特性が変化することになるため、ビーズ自体は変形し難く作製し、ビーズ全体としてビーズの位置の移動・流動性で変形する特性を持たせることが好ましい。
【0134】
なお、図19ではパッチの升目が四角く区切られているが、円形や三角形、5角形、その他の多角形等に区切られてもよい。
【0135】
また、図26に示すように、センサーシート500の変形例として、パッチ500Aとパッチ500Bから得られる2つの熱流Ithの干渉を減らすため、さらには通気性を高めるため、円柱状のセル(気泡)を点在させてもよい。正確な円柱である必要はなく、例えば半球(半円)状である態様もこれに含まれる。梱包材に使用される気泡緩衝材や、これと類似の材料を使用することもできる。
【0136】
図26に示す態様においても、快適性を向上させるために、封入物質に流動性を持たせることが好ましい。例えば、頭部が載せられたとき、複数の気泡で頭を支えることになるが、各気泡の変形が温度校正時の状態と熱的に同等と見なせるかが重要になる。
【0137】
例えば、気泡の高さが左から右へ斜めに変形した場合でも、平均化した高さが校正時と同じであれば熱抵抗として同等と見なせるので都合がよい。気泡のサイズ、直径や高さを考慮して設計することが好ましい。
【0138】
Dual Heat Flux法では、熱流を測定する2つの部位において、被測定対象の皮下の厚さがほぼ同一である必要がある(未知数が増えてしまうため)。そのため、皮下の厚さがあまり変動しない体の部位を測るか、あるいは、パッチ500Aとパッチ500Bの間隔を狭めることが好ましい。
【0139】
これらを考慮して、気泡の間隔や密度、測定部位を設定する。図26の例において、パッチ500Aとパッチ500Bをピッチの半分の位置に交互に並べて千鳥状に高い密度で配置しているのはこのためである。
【0140】
このセンサーシート500の上に頭等が載せられたとき、それぞれ複数のパッチ500Aとパッチ500Bが頭に接触することになる。このような場合、頭の深部体温を計算するのに意味のある熱流を得るため、パッチ500Aに関して得られる複数の熱流を平均化してパッチ500Aの熱流とし、また、パッチ500Bに関しても同じく得られる複数の熱流を平均化してパッチ500Bの熱流とすることができる。
【0141】
上記第11実施形態(図26の変形例を含む)では、それよりも前の各実施形態で第2温度計530の上に配置されていた第2の断熱体が省略されているが、既存の枕やマットレス等の上に第11実施形態に係るセンサーシート500を置くことにより、測定対象の深部から無限遠の環境に至るまでの熱流が形成される。
【0142】
図24を参照して、第1温度計520と第2温度計530は、サーミスタや熱電対、放射温度計等の温度検出素子541を備えるが、この実施形態によると、温度検出素子541にスイッチ素子としてのダイオード542が直列に接続されている。
【0143】
これによれば、選択したいパッチのダイオード542に順方向の電流を流し、それ以外のパッチのダイオード542には逆方向の電圧をかけることにより、特定の一つのパッチの温度計を選択することができる。
【0144】
なお、この構成では、ダイオード542と温度検出素子541の両方の温度特性が合わさった温度依存性を持つことになるが、ダイオード+温度計として温度の校正をすればよい。また、ダイオードの電圧・電流特性の温度依存性を利用することで、ダイオードを温度計として利用することもできる。すなわち、第1温度計520、第2温度計530をダイオードのみの構成とすることもできる。
【0145】
この第11実施形態に係る生体データ測定装置は、センサーシート500の底面に配置されている複数の第1温度計520(521,522)を一巡するように一つずつ交代的に順次選択して温度信号を得る第1のXY走査シート(第1選択回路)610と、センサーシート500の上面に配置されている複数の第2温度計530(531,532)を一巡するように一つずつ交代的に順次選択して温度信号を得る第2のXY走査シート(第2選択回路)620とを備えている。第1および第2のXY走査シート610,620を区別する必要がない場合には総称としてXY走査シート600と言う。
【0146】
XY走査シート600(610,620)は、それぞれ、図21に示す水平走査回路630と、図22に示す垂直走査回路640と、図23に示す信号処理回路650とを備えている。
【0147】
水平走査回路630は、n本のY方向配線(Y(1)~Y(n))の各々に設けられ、そのY方向配線を電源VDDもしくはグランドGNDのいずれかに接続するn個のスイッチ632(632(1)~632(n))と、スイッチ632を順次交代的にオンオフするシフトレジスタ631とを備えている。
【0148】
垂直走査回路640は、m本のX方向配線(X(1)~X(m))の各々に設けられ、そのX方向配線を信号線SignalもしくはグランドGNDのいずれかに接続するm個のスイッチ642(642(1)~642(m))と、スイッチ642を順次交代的にオンオフするシフトレジスタ641とを備えている。n,mは任意の正の整数で、n=mであってもよい。
【0149】
特定の一つパッチの第1温度計520と第2温度計530を選択するために、水平走査回路630側のシフトレジスタ631によりn個のスイッチ632の中の一つをグランドGNDに接続し、残りのスイッチ632を電源VDDに接続する。
【0150】
また、垂直走査回路640側のシフトレジスタ641によりm個のスイッチ642の中の一つを信号線Signalに接続し、残りのスイッチ642をグランドGNDに接続する。
【0151】
これにより、X方向配線のうちの信号線Signalに接続されたX方向配線と、Y方向配線のうちのグランドGNDに接続されたY方向配線の交点部分においてダイオード542に対して順方向電圧がかけられ、信号線Signalより温度検出素子541に電流が流される。
【0152】
なお、別の方法として、スイッチ632の電源VDDに接続する端子や、スイッチ642のグランドGNDに接続する端子を省略して、非選択時にフローティングとすることでもダイオード542を非選択にすることができる。
【0153】
ダイオード542に逆電圧をかけた方がダイオードの寄生容量を小さくしたり、ノイズによる誤動作を防ぐ効果があるが、特に小規模のアレイではフローティングでも問題が少ない場合があり、そのような場合には上記のフローティング方式を選択できる。
【0154】
図23に示すように、垂直走査回路640の信号線Signalは信号処理回路650に接続されている。信号処理回路650は定電流源652を備え、定電流源652より上記のように選択された温度計の温度検出素子541に定電流が流され、これによって発生する電圧がアンプ653で所定に増幅され温度信号として制御回路651に入力される。
【0155】
したがって、シフトレジスタ631,641によりX方向配線とY方向配線を選択することにより、すべてのパッチの第1温度計520と第2温度計530とから温度信号が得られる。
【0156】
制御回路651は、A/D変換器や通信機能を内蔵したマイコンチップやモジュール等で構成することができる。また、アンプ653からのアナログ信号をデジタル信号に変換して、無線で近くの端末やクラウドサーバー等にデータを送信することもできる。
【0157】
XY走査シート600(610,620)は、好ましくはフレキシブルな回路基板より構成される。その回路基板として、図25(a)にXY走査シート600を両面フレキシブル基板により構成した例を示し、図25(b)にXY走査シート600を片面フレキシブル基板により構成した例を示す。
【0158】
図25(a)の両面フレキシブル基板の場合には、例えばX方向配線が表側、Y方向配線が裏側に配線されているとして、それらの交点(交差)部分において、基板の表面側にスルーホール配線を介してY方向配線に連なるランド701を形成し、このランド701とX方向配線との間に、温度計520,530をチップ化して実装する。なお、参照符号702,703は保護カバー(カバーレイ)である。
【0159】
図25(b)の片面フレキシブル基板の場合には、X方向配線,Y方向配線のうちの例えばY方向配線のX方向配線を横切る部分を切断するとともに、チップ化した温度計520,530のパッケージの底面に、丸囲み図に示すように、X方向配線に沿うX電極705と、Y方向配線の切断した各端部に接続されるY電極706,706を形成する。
【0160】
図24の温度計520,530の構成を参照して、パッケージ内において、例えばダイオード542のアノード側をX電極705に接続するとともに、温度検出素子541の端部を二股状としてY電極706,706に跨がるように接続して、チップ化した温度計520,530をX方向配線,Y方向配線の交点(交差)部分に実装する。この場合においても、好ましくは基板面に保護カバーが設けられる。
【0161】
必要とする配線本数について、図6の実施形態では、配線膜120中の導体膜121のように複数本の配線を必要としているが、この第11実施形態によれば、各配線は1本で済むため、横方向の熱の流れを最小限にすることができる。
【0162】
また、配線の断面積が小さいことから、配線の周りに生ずる隙間を最小限にすることができる。配線の周りの隙間は、横からの空気の流入を引き起こし、縦方向の熱流を検出するHeatFluxセンサの動作に悪影響を及ぼす。本発明によれは、この影響を最小限にすることができる。
【0163】
なお、フレキシブル基板に代えて、XY方向の配線に絶縁被覆された導体を使用したり、もしくは裸の導線を使用してXYの交叉部に絶縁を施したりしてもよい。また、伸縮性のある導体、例えば銀(Ag)等のメッキを施した繊維を用いることにより、測定対象に装着した際、配線を切れにくくすることができる。
【0164】
上記実施形態では、信号処理回路650等を各XY走査シート610,620に持たせているが、信号処理回路650や制御回路651、通信機能等を一方のXY走査シートにまとめて配置してもよい。また、各XY走査シート610,620内で温度計520,530の温度信号を順次読み出しているが、各XY走査シート610,620の動作は並行処理として同時に並列に行ってもよい。
【0165】
本発明によれば、携帯性、生体親和性、ロバスト性、信頼性、操作性、メンテナンス性、コストおよび複合判断の点で、次のような効果が奏される。
【0166】
(a)携帯性:パッチは数mm程度の厚さ、数g程度の重さにすることができる。信号処理部は、絆創膏のような柔軟性と15mm×40mm×5mmくらいの大きさ、10g程度の重さにでき、ユーザーの負担や違和感を減らすことができる。また、無線を介してデータをクラウドとの間で共有することができる。
【0167】
(b)生体親和性:シリコンを主成分とする絶縁膜を皮膚に接触する部分に用いることにより、かぶれ等の影響を最小化することができる。
【0168】
(c)ロバスト性:発泡材等を用いた断熱材により、TsubとTsk間の温度を数℃程度に上げることができ、NTCサーミスタ等の高い抵抗温度係数(数%/℃~十数%/℃)を用いた温度計により、高い感度を得ることができ、ノイズ等が入っても高いS/N比を維持できる。また、薄膜を用いた柔軟構造や粘着性を有するシリコーン等の材料を皮膚面に用いることにより、体の動きがあっても位置ずれが少ない。
【0169】
(d)信頼性:選択回路を用いることで配線数を飛躍的に減少させることができる。例えば、ベルト型で4個所の深部体温を測る場合、パッチ一つあたり2~4個の温度計があるため、合計で8~16個のサーミスタとなり、従来では16~32本の配線を引き回すことになるが、本発明によれば、4本の配線と3個のコンタクト部で済む。このように、配線数やコンタクト数を減らすことで、配線やコンタクトの一つあたりの面積も増やすことができ、数の減少と相俟って電気的接続の信頼性を大幅に向上できる。
【0170】
(e)操作性:マグネットを使用したコンタクト部は、信号処理部のケースを近づければ自己整合的に位置決めができ、初めて使用するユーザーでも直感的な装着ができる。信号処理部は無線により制御され、その制御は端末やクラウド内のアルゴリズムや計算機パワーを使用でき、ユーザーがほぼ意識することなく、ユーザーごとのパラメータに設定することができる。
【0171】
(f)メンテナンス性:シリコンを成分に持つ絶縁膜や貴金属を使用した導体膜により、パッチ単位やパッチの付いたベルト、衣服はそのまま洗うことができ、汗の成分や体の油脂等の汚れを取り除くことができる。回路としては、温度計や選択回路があるのみで、高価な部品を使用していないため、汚れたら交換する体系を提供することができる。
【0172】
(g)コスト:絶縁膜や導体膜からなる帯状もしくはシート状の配線膜を使用して、一筆書き状にパッチを連結することができることから、接合個所が少なく自動機による製造を容易にする。
【0173】
(h)複合的判断:体温や環境温度、ECG,GSR等の測定手段を有し、温度情報からユーザーが高温環境・低温環境に居ること、ECGやGSR等からユーザーが運動やストレス環境に置かれていること、等をシステムが把握でき、自律神経状態を含めた複合的判断から、ユーザーや管理者、その他医療関係者等適切な人にユーザーの体調情報を提供することができる。
【0174】
また、上記第11実施形態においては、それぞれM×N個の第1温度計520と第2温度計530、合わせて2×(M×N)個の温度計の値を読むのに、2×(M+N)本の配線本数でよく、つまりは掛け算ではなく足し算の配線本数で済むことになり、信頼性の向上とコスト低減が可能となる。
【符号の説明】
【0175】
100,500A,500B パッチ
111,112 断熱材
120 配線膜
121 導体膜
122 絶縁膜
123 電源線
124(124a,124b) アナログ線
125 データ線
126 グランド(GND)線
130,140 測温回路
131,141 温度計
132,142 選択回路
151 ラッチ回路
152 半導体スイッチ(MOSFET)
160 電極
200 信号処理部
211 熱流計
212 EDG測定回路
213 EMG測定回路
214 EEG測定回路
215 通信回路
216 制御回路
217 記憶回路
218 電源回路
219 電源(内蔵電池)
221 GSR測定回路
222 GSR駆動回路
410(411,412,413) 配線膜側の接続端子
420(421,422,423) 信号処理部側の接続端子
500 センサーシート
520(521,522) 第1温度計
530(531,532) 第2温度計
600(610,620) XY走査シート
630 水平走査回路
640 垂直走査回路
631,641 シフトレジスター
632,642 スイッチ
BS 体表面
Ith 熱流(熱流束)
Rthbody 体内熱抵抗
Tsk 体表面の温度
Tsub 積層面の温度
Tcore 深部体温
図1
図2
図3
図4
図5
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図12b
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図12e
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