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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 5/01 20060101AFI20240708BHJP
   B60P 3/35 20060101ALI20240708BHJP
   B62D 53/06 20060101ALI20240708BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20240708BHJP
   B60G 11/04 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B60G5/01
B60P3/35
B62D53/06 Z
B62D53/00 B
B60G11/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023142395
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】523334615
【氏名又は名称】株式会社松華
(74)【代理人】
【識別番号】100139815
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 忠克
(72)【発明者】
【氏名】唐 偉
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0117639(US,A1)
【文献】実開平05-005511(JP,U)
【文献】米国特許第03767222(US,A)
【文献】特開2013-049380(JP,A)
【文献】中国実用新案第203854452(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台と当該車台が備える複数の車軸との間に配置される車両用の懸架装置であって、
車両の前後方向に直列配置された複数のリーフスプリングを備え、
直列配置された各リーフスプリングは、それぞれ別の前記車軸を支持しており、
相互に隣接する前側及び後側の2つの隣接リーフスプリングの間に、前記車台に回動可能に取り付けられた連結部材が配置されており、
前記連結部材には、前記前側隣接リーフスプリングの後端のリーフ後端部と、前記後側隣接リーフスプリングの前端のリーフ前端部が連結されており、
前記2つの隣接リーフスプリングのいずれか一方が受けた荷重の一部を、前記連結部材を介して他方の前記隣接リーフスプリングに伝達可能であり、
前記リーフ後端部と前記連結部材との連結構造であるリーフ後端連結構造と、前記連結部材と前記リーフ前端部との間のリーフ前端連結構造のうち、少なくともいずれか一方の連結構造は、スライド連結であり、
前記リーフ前端連結構造は、前記連結部材の後部連結部に、前記後側隣接リーフスプリングの前記リーフ前端部が回動可能に支持された回転連結であり、
前記リーフ後端連結構造は、前記前側隣接リーフスプリングの前記リーフ後端部と前記連結部材の前部連結部とが相互にスライド可能に連結されたスライド連結であって、しかも、当該リーフ後端部及び当該前部連結部のうちの一方であるガイド面に沿って他方であるスライダがスライド可能に連結された構成であり、
前記スライダは、当該スライダが前記ガイド面の一端側の突き当たり部に突き当たる一方の突き当たり位置と、当該スライダが前記ガイド面の他端側の突き当たり部に突き当たる他方の突き当たり位置との間のスライド区間でスライド可能であり、
当該スライダが前記スライド区間に位置する状態で、前記前側隣接リーフスプリングの前記リーフ後端部が後方及び/又は上方に移動した場合あるいは前方及び/又は下方に移動した場合、前記スライダと前記ガイド面とが相互にスライドすることができる、懸架装置。
【請求項2】
前記スライダが前記一方の突き当たり位置に位置する状態で、前記前側隣接リーフスプリングの前記リーフ後端部が後方及び/又は上方に移動すると、前記連結部材が回動し、当該連結部材に連結された前記後側隣接リーフスプリングの前記リーフ前端部が下方移動する、請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記リーフ後端部は前記ガイド面を有するものであり、前記前部連結部はスライダを有するものである、請求項2に記載の懸架装置。
【請求項4】
直列配置されており、それぞれ別個の前記車軸を支持する前記リーフスプリングの数は3以上であり、
最前方の前記リーフスプリングと最後方の前記リーフスプリングの間に配置された中間リーフスプリングのリーフ前端部は、当該中間リーフスプリングの前側に配置された前側連結部材の前記後部連結部に回動可能に支持されており、
当該中間リーフスプリングのリーフ後端部のガイド面は、当該中間リーフスプリングの後側に配置された後側連結部材の前記前部連結部のスライダにスライド可能に連結されており、
当該中間リーフスプリングが受けた荷重の一部を、前記前側連結部材を介して前側で隣接する前記前側隣接リーフスプリングに伝達可能になっており、しかも、前記後側連結部材を介して後側で隣接する前記後側隣接リーフスプリングに伝達可能になっている、請求項3に記載の懸架装置。
【請求項5】
前記スライダが前記一方の突き当たり位置に位置する状態で、前記中間リーフスプリングのたわみが伸びる変動は、
当該中間リーフスプリングの前記リーフ後端部が後方及び/又は上方に移動して前記後側連結部材が回動し、当該後側連結部材に連結された前記後側隣接リーフスプリングの前記リーフ前端部が下方移動する動作と、
当該中間リーフスプリングの前記リーフ前端部が前方及び/又は上方に移動して前記前側連結部材が回動する動作と、のうち、
両方又はいずれか一方の動作を生じさせる、請求項4に記載の懸架装置。
【請求項6】
車両が路上に停車した状態で、
前記スライダは、前記スライド区間内に位置しており、しかも前記車台に回動可能に連結された前記連結部材の回動軸よりも上方に位置しており、
前記後側隣接リーフスプリングのリーフ前端部は、前記回動軸よりも上方に位置している、請求項1に記載の懸架装置。
【請求項7】
前記車軸は、いずれも、従動輪を支持するものである、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の懸架装置。
【請求項8】
前記車両は、前記従動輪を制動する制動装置を備えていない被牽引車両用である、請求項7に記載の懸架装置。
【請求項9】
前記被牽引車両は、トレーラハウス車両であり、
当該トレーラハウス車両は、そのレイアウトとして、単位面積当たりの重量が相対的に重い重量エリアと、相対的に軽い軽量エリアとを含むものであり、
直列配置された3つの前記リーフスプリングのうち、中央に配置された第2リーフスプリングの上のエリアに、前記重量エリアが配置されている、請求項8に記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両で用いられる懸架装置に関し、特に、リーフスプリングを用いた懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リーフスプリングは、車両用サスペンションとして広く用いられる(特許文献1の図1など参照)。
このリーフスプリング1はその後端部でシャックル5にリンク機構によって連結(回り対偶で連結)されており、シャックル5はリーフスプリング1の後端部に対して前方向きの付勢力を付与している。
車輪が路面の凸部に差し掛かるなどしてリーフスプリングが上向きの力を受けると、リーフスプリング自体の弾発力およびシャックルの付勢力が反力として作用してサスペンション機能を果たすようになっている。
【0003】
また、リーフスプリングは、乗用車、トラックさらには牽引車両(トラクタ)などの動力源を備えた車両のみならず、トレーラ(被牽引車両)においても広く用いられている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-76481号公報
【文献】特開2019- 6235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リーフスプリングは、採用実績も多く構造がシンプルという点で優れているが、振動吸収性能の向上について検討が必要な場合がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、走行時の振動吸収性能が改良されたリーフスプリングを用いた懸架装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車台と当該車台が備える複数の車軸との間に配置される車両用の懸架装置であって、車両の前後方向に直列配置された複数のリーフスプリングを備え、直列配置された各リーフスプリングは、それぞれ別の前記車軸を支持しており、相互に隣接する前側及び後側の2つの隣接リーフスプリングの間に、前記車台に回動可能に取り付けられた連結部材が配置されており、前記連結部材には、前記前側隣接リーフスプリングの後端のリーフ後端部と、前記後側隣接リーフスプリングの前端のリーフ前端部が連結されており、前記2つの隣接リーフスプリングのいずれか一方が受けた荷重の一部を、前記連結部材を介して他方の前記隣接リーフスプリングに伝達可能になっている、懸架装置である。
【0007】
前記リーフ後端部と前記連結部材との連結構造であるリーフ後端連結構造と、前記連結部材と前記リーフ前端部との間のリーフ前端連結構造のうち、少なくともいずれか一方の連結構造は、スライド連結である。
【0008】
前記リーフ前端連結構造は、前記連結部材の後部連結部に、前記後側隣接リーフスプリングの前記リーフ前端部が回動可能に支持された回転連結であり、前記リーフ後端連結構造は、前記前側隣接リーフスプリングの前記リーフ後端部と前記連結部材の前部連結部とが相互にスライド可能に連結されたスライド連結であって、しかも、当該リーフ後端部及び当該前部連結部のうちの一方であるガイド面に沿って他方であるスライダがスライド可能に連結された構成であり、前記スライダは、当該スライダが前記ガイド面の一端側の突き当たり部に突き当たる一方の突き当たり位置と、当該スライダが前記ガイド面の他端側の突き当たり部に突き当たる他方の突き当たり位置との間のスライド区間でスライド可能であり、当該スライダが前記スライド区間に位置する状態で、前記前側隣接リーフスプリングの前記リーフ後端部が後方及び/又は上方に移動した場合あるいは前方及び/又は下方に移動した場合、前記スライダと前記ガイド面とが相互にスライドすることができる。
【0009】
前記スライダが前記一方の突き当たり位置に位置する状態で、前記前側隣接リーフスプリングの前記リーフ後端部が後方及び/又は上方に移動すると、前記連結部材が回動し、当該連結部材に連結された前記後側隣接リーフスプリングの前記リーフ前端部が下方移動する。
【0010】
前記リーフ後端部は前記ガイド面を有するものであり、前記前部連結部はスライダを有するものである。
【0011】
また、直列配置されており、それぞれ別個の前記車軸を支持する前記リーフスプリングの数は3以上であり、最前方の前記リーフスプリングと最後方の前記リーフスプリングの間に配置された中間リーフスプリングのリーフ前端部は、当該中間リーフスプリングの前側に配置された前側連結部材の前記後部連結部に回動可能に支持されており、当該中間リーフスプリングのリーフ後端部のガイド面は、当該中間リーフスプリングの後側に配置された後側連結部材の前記前部連結部のスライダにスライド可能に連結されており、当該中間リーフスプリングが受けた荷重の一部を、前記前側連結部材を介して前側で隣接する前記前側隣接リーフスプリングに伝達可能になっており、しかも、前記後側連結部材を介して後側で隣接する前記後側隣接リーフスプリングに伝達可能になっている。
【0012】
また、前記スライダが前記一方の突き当たり位置に位置する状態で、前記中間リーフスプリングのたわみが伸びる変動は、当該中間リーフスプリングの前記リーフ後端部が後方及び/又は上方に移動して前記後側連結部材が回動し、当該後側連結部材に連結された前記後側隣接リーフスプリングの前記リーフ前端部が下方移動する動作と、当該中間リーフスプリングの前記リーフ前端部が前方及び/又は上方に移動して前記前側連結部材が回動する動作と、のうち、両方又はいずれか一方の動作を生じさせる。
【0013】
車両が路上に停車した状態で、前記スライダは、前記スライド区間内に位置しており、しかも前記車台に回動可能に連結された前記連結部材の回動軸よりも上方に位置しており、前記後側隣接リーフスプリングのリーフ前端部は、前記回動軸よりも上方に位置している。
【0014】
また、前記車軸は、いずれも、従動輪を支持するものである。
また、前記車両は、前記従動輪を制動する制動装置を備えていない被牽引車両用である。
【0015】
前記被牽引車両は、トレーラハウス車両であり、当該トレーラハウス車両は、そのレイアウトとして、単位面積当たりの重量が相対的に重い重量エリアと、相対的に軽い軽量エリアとを含むものであり、直列配置された3つの前記リーフスプリングのうち、中央に配置された第2リーフスプリングの上のエリアに、前記重量エリアが配置されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、走行時の振動吸収性能について、改良された性能を発揮する懸架装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る懸架装置が使用された車両を示す側面図である。
図2】本発明に係る懸架装置を示す側面図である。
図3図2に示される懸架装置の要部を示す拡大図であり、(A)は第1リーフスプリングを示す拡大側面図であり、(B)は第2リーフスプリングを示す拡大側面図であり、(C)は第3リーフスプリングを示す拡大側面図である。
図4図2に示される懸架装置の要部を示す拡大図であり、(A)は第1連結部材の第1スライド軸部がスライド区間に位置する状態を示す拡大側面図であり、(B)は第1スライド軸部が前端位置に位置する状態を示す拡大側面図であり、(C)は第1スライド軸部が後端位置に位置する状態を示す拡大側面図である。
図5図2に示される懸架装置で用いられているリーフスプリングを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る懸架装置(図2参照)について説明する。
ここでは、図1に示されるように、トレーラなどの牽引車両Vに牽引される被牽引車両(以下、単に車両と称することがある)THにおいて用いた実施形態について説明する。
なお、懸架装置は、車両THを平面視したときに、前後方向Xに延びる車両の中心線と並行あるいはほぼ並行に近い向きで、左右両側の車輪に近い位置に配置されるが、ここでは、一方側の車輪に近接して配置された一方の懸架装置1について説明しており、他方についての説明を省略している。
また、リーフスプリングを用いたサスペンションに関する周知の構成について、図示および説明を省略することがある。
【0019】
図2に示されるように、懸架装置1は、車両THの前後方向Xに直列配置された3個(3ユニット)のリーフスプリング10,20,30を備えている。
なお、本実施形態で用いられているリーフスプリング10,20,30は、下側に凸に湾曲した弓形の複数枚の板バネが積層配置されて構成されたリーフスプリングである。
また、懸架装置1は、リーフスプリング10,20,30間に配置された2つの連結部材40,50を備えている。
そして、懸架装置1が設置される車両THの車台(シャシ)60は、懸架装置1の固定に用いられる支持部材61,62,63,64を備えている。
なお、以下の説明では、直列配置された3個(複数)のリーフスプリング10,20,30のうち、連結部材を介して相互に隣接する前後2つのリーフスプリングに着目して説明する際、前後2つのリーフスプリングのことを一組の隣接リーフスプリング(あるいは単に、隣接リーフスプリング)と称することがある。そして、隣接リーフスプリングのうち、前側に配置されているリーフスプリングのことを前側隣接リーフスプリングと称することがあり、隣接リーフスプリングのうち後側に配置されているリーフスプリングのことを後側隣接リーフスプリングと称することがある。
また、直列配置された3個(3個以上)のリーフスプリング10,20,30のうち、最前方に配置された第1リーフスプリング10を最前方リーフスプリングと称することがあり、最後方の第3リーフスプリング30のことを最後方リーフスプリングと称することがあり、再前方リーフスプリングと最後方リーフスプリングの間に配置されたリーフスプリング(第2リーフスプリング20)のことを中間リーフスプリングと称することがある。中間リーフスプリングは、その前後両方の端部が連結部材に連結された構成になっている。
【0020】
支持部材のうち、最も前方に配置された前部支持部材61は、最も前方に配置された第1リーフスプリング10の前端部(第1アイ)11を回動可能に支持(ピボット支持)する部材である。第1中間支持部材62は、第1連結部材40を回動可能に支持する部材である。第2中間支持部材63は、第2連結部材50を回動可能に支持する部材である。最も後方に配置された後部支持部材64は、最も後方に配置された第3リーフスプリング30の後端部(第3スライド部32)を支持する部材である。
【0021】
第1リーフスプリング10は、その前端部の第1アイ11(リーフ前端部)において車両THの前部支持部材61に回動自在に連結されており、その後端部の第1スライド部12(リーフ後端部)において、第1連結部材40の後述の第2スライド軸部42(スライダ)にスライド可能に連結されている(リーフ後端連結構造、スライド連結)。
このような第1スライド部(リーフ後端部)12と第1連結部材40との連結構造のことをリーフ後端連結構造と称することがある。そして、第1スライド部12と第1連結部材40との連結構造は、スライド連結構造である。
なお、第1アイ11の回動軸11aは、車両前後方向Xに対して直交する水平の横方向(図2における紙面直交方向)に延びる軸である。
【0022】
図5に示されるように、第1リーフスプリング10の第1スライド部12は、第1リーフスプリング10を構成する複数枚の板バネのうち、最上段に配置された最長のバネ(以下、親バネと称することがある)10aの後端部を曲げ形成することにより形成されたものであり、親バネ10aと一体構造である。
また、第1スライド部12は、親バネ10aの後端部に配置された、いわゆるオーバル形状ということができる形状の部位である。
より詳細に説明すると、第1スライド部12は、下向きに凸に湾曲した弓形の親バネ10aの本体部の後端側に連なるように延在する板状の下ガイド部121と、下ガイド部の上方に対向配置された板状の上ガイド部122と、下ガイド部121の後端部および上ガイド部122の後端部に連なっており後方に向けて凸形状に湾曲した後端半円弧部123と、上ガイド部122の前端部に連なっていると共に上ガイド部122の前端から下向きに湾曲しており前方に向けて凸形状に湾曲した前端半円弧部124とを備えている。
つまり、第1スライド部12は、下ガイド部121、上ガイド部122、後端半円弧部123および前端半円弧部124に囲まれた、いわゆるオーバル形状の第1中空部(以下、第1スライド溝と称することがある)13を備えている。
第1スライド溝13は、下向きに凸に湾曲した親バネ10aに沿って、その延在方向Xsに延びる長溝(長孔)であり、横方向(図5における紙面直交方向)に貫通しており、親バネ10aの延在方向Xsに延びる下側のガイド面(下ガイド部121の上面)121aと上側のガイド面(上ガイド部122の上面)122aとを有している。
つまり、第1スライド部12にスライド可能に連結さている後述の第1スライド軸部(他方の滑り対偶)42は、第1スライド溝13(一方の滑り対偶)にスライド可能に連結されているということもできる。
なお、第1スライド部12(第1スライド溝、親バネ10a)の延在方向Xsは、前後方向Xとほぼ同じ方向であるので、第1スライド部12の方向を前後方向Xと称する場合がある。
【0023】
なお、第2リーフスプリング20及び第3リーフスプリング30の構成については、第1リーフスプリング10と同様であるので、ここでは説明を省略し、共通の構成には同一の名称を付し、必要に応じて名称の前の「第1」に代えて「第2」や「第3」を付した用語を用いることとする。
【0024】
第1連結部材40(図3(A)等参照)は、第1中間支持部材62に回動自在に連結される第1回動軸部41と、第1リーフスプリング10の第1スライド部12に連結される棒形状の第1スライド軸部42(前部連結部)と、第2リーフスプリング20の前端アイ(第2アイ)21が回動自在に支持される第1連動軸部43(後部連結部)とを備えている。
第1回動軸部41は、第1連結部材40の中央部に形成されており、第1スライド軸部42は、第1回動軸部41よりも前方に配置されており、第1連動軸部43は、第1回動軸部41よりも後方に配置されている。
なお、第1回動軸部41および第1連動軸部43の回動軸方向、棒形状の第1スライド軸部42の延在方向は、いずれも上述した横方向(図3における紙面直交方向)である。
【0025】
なお、第2中間支持部材63(図2参照)に回動自在に支持されている第2連結部材50の構成については、第1連結部材40と同様であるので、ここでは説明を省略し、共通の構成には同一の名称を付し、必要に応じて名称の前の「第1」に代えて「第2」を付した用語を用いることとする。
【0026】
このような部材10,20,30,40,50を用いた構造では、第1リーフスプリング10が受けた力の一部を第1回動軸部41における第1連結部材40の回動を介して第2リーフスプリング20側に伝達することができ、反対に、第2リーフスプリング20が受けた力の一部を第1回動軸部41における第1連結部材40の回動を介して第1リーフスプリング10に伝達することができる。
つまり、懸架装置1では、例えば第1リーフスプリング10が後述の上方力FA1(図2参照)などの荷重を受けたとき、そのうちの一部の力を、第1連結部材40を介して第2リーフスプリング20に伝達することができ、これにより、上方力FA1を、第1リーフスプリング10と第2リーフスプリング20との協働で受けることができるようになっている。
【0027】
次に、第1連結部材40の構成を主に図4(A)を用いてさらに説明する。
図4(A)に示される第1連結部材40は、第1スライド軸部42と第1連動軸部43とが同じ高さに位置する状態である。
第1連結部材40は、第1回動軸部41が形成された中央部40aの前端から前方に向けて斜め上方に延びる前アーム部40bを備えており、前アーム部40bの前端部に、第1スライド軸部42が配置されている。
また、第1連結部材40は、中央部40aの後端から後方に向けて斜め上方に延びる後アーム部40cを備えており、後アーム部40cの後端部に第1連動軸部43が配置されている。
つまり、第1スライド軸部42と第1連動軸部43とが同じ高さに位置するとき、第1スライド軸部42及び第1連動軸部43は、第1回動軸部41より上方に位置する。
例えば、車両THが路上に停車した状態(しかも走行可能な状態)のとき、第1スライド軸部(スライダ)42は、スライド区間Pm内に位置しており、しかも車台60に回動可能に連結された第1連結部材40の第1回動軸41よりも上方に位置しており、第2リーフスプリング(後側隣接リーフスプリング)20の第2アイ(リーフ前端部)21は、第1回動軸41よりも上方に位置している。
また、本実施形態では、第1回動軸部41から第1スライド軸部42までの離間距離D1と、第1回動軸部41から第1連動軸部43までの離間距離D2は等距離である。
また、第1リーフスプリング10と第1連結部材40とを比較すると、第1連結部材40における上述の離間距離D1,D2は、第1リーフスプリング10の前後の支持位置間距離S(図5参照)より短い。
支持位置間距離Sとは、第1アイ11と第1スライド軸部42の離間距離であり、第1連結部材40の回動による第1スライド軸部42の移動によって変動する。
なお、第1スライド軸部42が後述のスライド区間Pmに位置する状態(例えば図4(A)に示される状態)で、後述の上方力FA1(図2参照)等の荷重を受けた第1リーフスプリング10のたわみ状態が変動して支持位置間距離Sが変動し、第1リーフスプリング10の後端部(例えば第1スライド部12)の位置が変動(前後方向及び/又は上下方向の移動を)した場合、その変動のほとんどは第1スライド軸部42との間のスライドによって吸収され、変動に起因する一部の力が摩擦力を介して第2スライド軸部42(第1連結部材40)側に伝達される。
他方、例えば、第1スライド軸部42が後述の第1スライド部12の前端位置(一方の突き当たり位置)P1に位置する状態(図4(B)参照)で、上方力FAを受けた第1リーフスプリング10のたわみ状態が変動し、第1リーフスプリング10の後端部(例えば第1スライド部12)の位置が変動(後方移動及び/又は上方移動を)した場合、その変動は、全て第1スライド軸部42に伝達されて第1連結部材40(第1スライド軸部42)の回動動作RL1によって吸収される。また、第1スライド軸部42が後述の第1スライド部12の後端位置(他方の突き当たり位置)P2に位置する状態(図4(C)参照)で、下方力FBを受けた第1リーフスプリング10のたわみ状態が変動し、第1リーフスプリング10の後端部(例えば第1スライド部12)の位置が変動(前方移動及び/又は下方移動を)した場合、その変動は、全て第1スライド軸部42に伝達されて第1連結部材40(第1スライド軸部42)の回動動作RL2によって吸収される。
このように、本実施形態の懸架装置1は、第1スライド軸部(スライダ)42がスライド区間Pmに位置しているか否かによって、第1リーフスプリング10のたわみの変動(や変動に起因する力)を吸収するメカニズムが変化するように構成されている。
なお、本実施形態では、第1スライド部(第1リーフ後端部)12が第1スライド軸部(前部連結部、スライダ)42に対して相対的に後方移動及び/又は上方移動すると、最終的に、第1スライド軸部(スライダ)42が第1スライド部(第1リーフ後端部(ガイド面)12の一端側の突き当たり部に突き当たる一方の突き当たり位置(前端位置)P1に移動し、第1スライド部(第1リーフ後端部)12が第1スライド軸部(前部連結部、スライダ)42に対して相対的に前方移動及び/又は下方移動すると、最終的に、第1スライド軸部(スライダ)42が第1スライド部(第1リーフ後端部(ガイド面)12の他端側の突き当たり部に突き当たる他方の突き当たり位置(後端位置)P2に移動するようになっており、第1スライド軸部(前部連結部、スライダ)42は、一方の突き当たり位置P1と他方の突き当たり位置P2との間の、スライド可能なスライド区間においてスライド可能になっている。
また、リーフスプリング10,20,30のたわみの変動に関して、リーフスプリングが例えば上方力FA(FA1,FA2,FA3)を受けて曲率半径が大きくなる変形をした場合、その変形を、たわみが伸びる(弱まる)変動(変形)と称することがあり、例えば下方力FB(FB1,FB2,FB3)を受けて曲率半径が小さくなる変形をした場合、その変形を、たわみが強まる変動(変形)と称することがある。
【0028】
第1スライド軸部42は、第1スライド部12に対して、第1スライド部12の延在方向(長手方向)Xsに沿ってスライド可能である。別言すれば、第1スライド軸部42は、第1スライド部12の前端に当接する前端位置P1(図4(B)参照)と、第1スライド部12の後端に当接する後端位置P2(図4(C)参照)との間で移動可能である。
なお、スライド部12(22,32)について、前端位置P1と後端位置P2との間であってスライド軸部42(52)がスライド可能な位置(範囲)のことをスライド区間Pm(図5参照)と称することがあり、スライド区間内の位置のことをスライド位置Pmと称することがある。また、スライド位置Pmのうち、スライド前端位置P1及びスライド後端位P2から等距離の中央の位置をスライド中央位置Psと称することがある。
なお、第2連結部材50の構成については、上述の理由と同様の理由で、詳細な説明を省略した。
【0029】
次に、懸架装置1の動作を説明する。
【0030】
ここでは、図1に示されるように、車両THのタイヤTが走行可能な状態で路面XRに接地した状態を基準として、タイヤTが、上方力FAや下方力FBなどの上下方向の力(荷重)を受けた場合を説明する。
なお、ここで言う上方力FA(FA1,FA2,FA3)は、例えば、走行中の車両THのタイヤTが路面XRの凸部XRa(図1参照)の上を通過したときにタイヤTが受ける上向きの力(上方に突き上げられる向きの力)である。
また、ここで言う下方力FB(FB1,FB2,FB3)は、上方力とは逆向きの力、例えば、走行中の車両THのタイヤTが路面XRの凹部の上を通過したときにタイヤTが受ける下向きの力(路面XRから受けていた重力の反作用の力が抜けて受ける重力方向の力)である。
【0031】
なお、以下の説明では、第1リーフスプリング10の前端の第1アイ11と、第1リーフスプリング10の後端側に連結された第1連結部材40の第1回動軸部41とを通る境界面B1(図3参照)を用いて説明することがある。
特に説明がない限り、以下の説明は、車両THの停車状態、そして走行状態においても、スライド軸部(の中心)42(52)の位置は、境界面(境界線)B1,B2よりも上側のエリアに位置している状態に関する説明である。
また、以下の説明は、図3(A)に示されるように、第1アイ11と第1スライド軸部42とを結ぶ線分L1と、第1回動軸部41と第1スライド軸部42とを結んだ線分L2とのなす角度(重力方向下側に位置する交差角の角度)α1が90度より大きく180度より小さい(90度以上180度以下)場合に関する説明である。
つまり、本実施形態の懸架装置1は、このような範囲で動作するように構成されたものである。
【0032】
[動作説明1]
図2に示されるように第1連結部材40の第1スライド軸部42が第1スライド部12のスライド区間Pm(図4(A)参照)に位置する状態を起点として説明する。
【0033】
この状態で、第1タイヤT1(第1車軸A1)が上方力FA1を受けると、その力が第1リーフスプリング10に伝わる。
上方力FA1は、下側に凸に湾曲(反って)いる第1リーフスプリング10の反りを伸ばす(曲率半径を大きくする)向きの力、別言すれば、第1リーフスプリング10のたわみが伸びる変形(変動)を生じさせる力である。
このとき、前端の第1アイ11は前端支持部材61に軸支持されているので、上方力FA1を受けた第1リーフスプリング10の反りが伸びると、第1リーフスプリング10の第1スライド部12を第1リーフスプリング10(の親バネ10a)の長手方向Xs(図4(A)参照)の後方に移動させる力Fp(不図示)が生じる。
また、第1リーフスプリング10が上方力FA1を受けたとき、第1リーフスプリング10には、第1前端アイ11を回動軸として第1リーフスプリング10の第1スライド部12を上方回動(図3(A)における反時計回り回動)RS1させる力Fq(不図示)が生じる。
以下の説明では、第1リーフスプリング10が上方力FA1を受けたときに生じるこれらの力Fp,Fqの合力を後方伝達分力FR(FR1,FR2,FR3)と称する(図3参照)。
なお、図3などに示される後方伝達分力FRの矢印の向きや長さは、イメージしやすいように便宜的に示したものであり、必ずしも正確なものではない。
【0034】
図2に示される状態のとき、第1スライド軸部42は第1スライド部12に対してスライド可能なスライド区間Pm内に位置しており、第1スライド軸部42の第1回動軸41回りの回動方向K1(図4(A)参照)は第1スライド軸部42のスライド方向Xsと近似した方向である。
上方力FA1を受けたときに生じる後方伝達分力FR1には、回動方向K1の分力(第1スライド軸部42の時計回りの力)が含まれるが、第1スライド軸部42の回動方向K1とスライド方向Xsとが近似しており第1スライド軸部42がスライド可能な場合、後方伝達分力FR1のうちの回動方向K1の成分の力のほとんどは、第1スライド部12を後方にスライド移動させる力として作用する。
つまり、後方伝達分力FR1の回動方向K1の力のうち、第1リーフスプリング10側から第1連結部材40側に伝達されるのは、スライド可能な状態の第1スライド部12と第1スライド軸部42との間に生じる摩擦力を介して伝達される一部の力である。このようにして伝達される力は、第1連結部材40を後ろ向き(時計回りRL1)に回動さる力である。
【0035】
上述したように、懸架装置1では、第1リーフスプリング10が受けた上方力FA1を、第1リーフスプリング10と第2リーフスプリング20との協働で受けることができるが、第1スライド軸部42が第1スライド部12のスライド区間Pm内に位置する場合(図2図4(A)参照)、第1リーフスプリング10が受けた上方力FA1のうち第1連結部材40を介して第2リーフスプリング20に伝達される力の割合は相対的に小さく、伝達される力は一部である(相対的には小さい)ということができる。
【0036】
ところで、第1リーフスプリング10が上方力FA1を受けて後方伝達分力FR1が生じたとき、第1アイ11を前方に移動させる向きの力FF1(図3(A)参照。以下、前方伝達分力FFと称することがある。)が生じるが、第1アイ11は車体THに固定された前端支持部材61に支持されているので、前方伝達分力FF1が生じても第1アイ11が車体前後方向Xに移動することはない。
【0037】
なお、図2に示されるように、第1連結部材40の第1スライド軸部42が第1スライド部12のスライド区間Pmに位置する状態で、第1車輪T1が下方力FB1を受けた場合、上方力FA1を受けた場合とは逆向きの作用や動きが生じる。
下方力FB1を受けた場合の動作や作用は、基本的には、上方力を受けた場合の逆向きであり、逆向きの用語に置換した説明になるので、ここではその説明を省略する。また、後述の「動作説明2~6」についても同様に、下方力を受けた場合の動作等の説明を省略する。
【0038】
[動作説明2]
第1リーフスプリング10が上方力FA1を受けてたわみが伸びる変形(変動)が生じ、第1スライド部12が後方移動すると、第1スライド部12内の第1スライド軸部42は相対的に第1スライド部12内を前端側に移動する。そして、大きな上方力を受けた場合、第1スライド軸部42は最終的には、第1スライド部12の前端の前端半円弧部124に当接する位置P1(以下、単に前端位置)に達する(図4(B)参照)。
なお、第1スライド軸部42が相対的に後方移動した場合は、最終的に後端位置P2(後端半円弧部123に当接する位置、他方の突き当たり位置)に達する(図4(C)参照)。
【0039】
ここでは、第1連結部材40の第1スライド軸部42が第1スライド部12の前端位置(一方の突き当たり位置)P1に位置する状態(図4(B)参照)で、第1タイヤT1(第1車軸A1)が上方力FA1を受けた場合を説明する。
なお、「動作説明1」と共通の内容については、説明を省略する。
【0040】
この状態で、第1リーフスプリング10が上方力FA1を受けると、第1スライド軸部42は第1スライド部12内を相対的に前方移動(スライド)しないので、上方力FA1の後方伝達分力FR1は、第1スライド部12から第1スライド軸部42(第1連結部材40、第2アイ21)に直接伝達される。
後方伝達分力FRによって第1スライド部12が後方移動すると、これに連動して第1スライド軸部42が回動方向K1に後方回動RL1(図4(A)参照)。このとき、第1スライド軸部42の回動角度と同じ角度だけ、第2リーフスプリング20の第2アイ21が時計回りRL1(図4(B)における下向き)に回動する。
ここで、第1スライド部の延在方向Xsと第1スライド軸部42の回動方向K1はほぼ同じ方向なので、第1スライド部12の後方移動量と、第1スライド軸部42(第2アイ21)の回動方向K1への回動量はほとんど同じであるということができ、第1リーフスプリング10が上方力FA1を受けたときに第1連結部材40を介して第2リーフスプリング20に伝達される力(の割合)は、「動作説明1」の場合と比べて相対的に大きいということができる。
第1リーフスプリング10が受けた上方力FA1を、第1リーフスプリング10と第2リーフスプリング20との協働で受けることができる点と、第1アイ11が車体前後方向Xに移動しない点は「動作説明1」の場合と同様である。
【0041】
[動作説明1と動作説明2との動作の比較]
上述したように、例えば、上方力FA1(後方伝達分力FR1)が比較的小さい場合など、第1連結部材40の第1スライド軸部42が第1スライド部12のスライド区間Pmに位置するとき(図4(A)参照)、第1リーフスプリング10側から第2リーフスプリング20側に伝達される力の割合は相対的に小さく、第1スライド軸部42(第2アイ21)の回動量は相対的に小さいが、より大きな上方力FA1(後方伝達分力FR1)を受けて第1スライド軸部42が第1スライド部12の前端位置P1に位置する状態になると、後方伝達分力FR1のうち、第1リーフスプリング10側から第2リーフスプリング20側に伝達される力の割合が相対的に大きくなる。
【0042】
このように、懸架装置1は、第1リーフスプリング10が受ける上方力FA1が大きくなったときに、力の伝達が摩擦伝達から直接伝達に変わり、より大きな割合の力を第1リーフスプリング10側から隣接する第2リーフスプリング20に伝達できるように構成されている。
【0043】
なお、以下の説明では、「動作説明1」の場合のように、第2スライド軸部42が第1スライド部12のスライド区間Pm内に位置しており、後方伝達分力FR(または前方伝達分力FF)などがスライド(摩擦力、滑り対偶)を介して連結されたリーフスプリング10,20,30と連結部材40,50との相互間で伝達される状態を「相対的に連動性が低い連結状態(相対的に協働性が低い連動状態)」と称することがある。この場合、後方伝達分力FR(又は前方伝達分力FF)などのうちの、伝達される力の割合が相対的に小さい。
また「動作説明2」の場合ように、第2スライド軸部42が第1スライド部12の前端位置P1に位置しており、相互に連結されたリーフスプリング10と連結部材40との相互間で後方伝達分力FR(又は前方伝達分力FFなど)が直接伝達される状態を「相対的に連動性が高い連動状態(相対的に協働性が高い協働状態)」と称することがある。この場合、後方伝達分力FR(又は前方伝達分力FF)などのうちの、伝達される力の割合が相対的に大きい。つまり、ここでいう直接伝達とは、後方伝達分力FR(又は前方伝達分力FF)がスライド(摩擦力、滑り対偶)ではなく、回動連結(回り対偶)を介したいわゆるリンク機構によって伝達されることである。
【0044】
[動作説明3]
図2に示されるように、第1連結部材40の第1スライド軸部42が第1スライド部12のスライド区間Pmに位置しており、かつ、第2連結部材50の第2スライド軸部52が第2スライド部22のスライド区間Pmに位置している状態で、第2タイヤT2(第2車軸A2)が上方力FA2を受けた場合を説明する。
なお、「動作説明1、2」と共通の内容については、説明を省略することがある。
【0045】
この状態で第2タイヤが上方力FA2を受けると、その力が第2リーフスプリング20に伝わる。これにより、第2リーフスプリング20はたわみが伸びるように変動(変形)し、上方力FA2の後方伝達分力FR2が生じる。
そして、後方伝達分力FR2の回動方向K1の成分の力のうち、一部の力が第2スライド部22と第2スライド軸部52との間の摩擦力を介して、第2リーフスプリング20から第2連結部材50側に伝達される。
【0046】
ところで、第2リーフスプリング20の前端の第2アイ21は、第1アイ11とは異なり、第1連結部材40の第1連動軸部43に軸支持された状態で連結されており、第1回動軸41 回りに回動可能になっている。
したがって、第2リーフスプリング20において後方伝達分力FR2が生じると共に、前端側の第2アイ21を前方移動させる向きの前方伝達分力FF2(図3B参照)が生じ、第1連結部材40を介して摩擦力により第1リーフスプリング10側に伝達される。
なお、上述した第2リーフスプリング20の前端の第2アイ21と第1連結部材40の第1連動軸部43との連結構造のことをリーフ前端連結構造と称することがある。そして、第2アイ21と第1連動軸部43は回転連結構造(回動連結構造)である。
【0047】
このように、本実施形態の懸架装置1では、第2リーフスプリング20が上方力FA2を受けたとき、その一部の力を第1リーフスプリング10及び第3リーフスプリング30の両方に伝達することができるようになっており、第2リーフスプリング20が受けた上方力FA2を、第1、第2及び第3リーフスプリング10,20,30の協働によって受けることができるようになっている。
【0048】
「動作説明3」の状態は、第1スライド軸部42及び第2スライド軸部52が第1スライド部12及び第2スライド部22のスライド区間Pmに位置する状態であり、相対的に連動性が低い連結状態であるので、後方伝達分力FR2及び前方伝達分力FF2が生じたとき、第2リーフスプリング20から隣接する第2連結部材50(第3リーフスプリング30)側や第1連結部材40(第1リーフスプリング10)側に伝達される力の割合は相対的に小さい。
【0049】
[動作説明4]
次に、第2連結部材50の第2スライド軸部52が第2スライド部22の前端位置P1に位置する状態(図4(B)参照)で、第2タイヤT2(第2車軸A2)が上方力FA2を受けた場合を説明する。
なお、「動作説明1~3」と共通の内容については、説明を省略することがある。
【0050】
この状態で、第2リーフスプリング20が上方力FA2を受けると、第2リーフスプリング20のたわみが伸びる変動が生じるが、第2スライド軸部52は第2スライド部22内を前方移動できないので、上方力FA2の後方伝達分力FR2は、第2スライド部22から第2スライド軸部52(第2連結部材50、第3アイ31)に直接伝達される。
後方伝達分力FR2によって第2スライド部22が後方(及び/又は上方)移動すると、これに連動して第2スライド軸部52(第2連結部材、後側連結部材)が回動方向K1に後方回動RL1する。このとき、第2スライド軸部52の回動角度と同じ角度だけ、第3リーフスプリング30の第3アイ31が時計回りRL1(図4Bにおける下向き)に回動する。
この場合、第2スライド部22の後方移動量と、第2スライド軸部52(第3アイ31)の回動方向K1への回動量はほとんど同じであるということができ、上方力FA2を受けたときに第2連結部材20を介して第3リーフスプリング30に伝達される力(の割合)は、「動作説明3」の場合と比べて相対的に大きい。
【0051】
また、第2リーフスプリング20が上方力FA2を受けて後方伝達分力FR2が生じたとき、前端側の第2アイ21を前方移動させる前方伝達分力FF2が生じ、第1連結部材40(第1リーフスプリング10側)に伝達される。
前方伝達分力FF2によって第2アイ(リーフ前端部)21が前方(及び/又は上方)に回動移動すると、これに連動して第1連結部材(前側連結部材)40が回動し、第1リーフスプリング10側に力が伝達される。
【0052】
「動作説明4」の状態は、第2スライド軸部52が第2スライド部22の前端位置P1に位置する状態であり、相対的に連動性が高い連結状態であるので、後方伝達分力FR2及び前方伝達分力FF2が生じたとき、第2リーフスプリング20から隣接する第2連結部材50側や第1連結部材40側に伝達される力の割合は相対的に大きい。
なお、前方伝達分力FF2が生じたときに、第2リーフスプリング20から隣接する第1連結部材40側を介して第1リーフスプリング10に伝達される力の割合は、第1スライド軸部42と第1スライド部12との連結状態が、相対的に連動性の高い連結状態であるか、低い連結状態であるかによって定まるものである。
【0053】
また、上方力FA2を第1~第3リーフスプリング10,20,30の協働で受けることができる点は「動作説明3」の場合と同様である。
【0054】
[動作説明3と動作説明4との動作の比較]
動作説明1と動作説明2との関係と同様であり、懸架装置1は、第2リーフスプリング20が受ける上方力FA2が大きくなったときに、力の伝達が摩擦伝達から直接伝達に変わり、より大きな割合の力を第2リーフスプリング20側から隣接する第3リーフスプリング30や第1連結部材40に伝達できるように構成されている。
【0055】
[動作説明5]
図2に示されるように、第2連結部材50の第2スライド軸部52が第2スライド部22のスライド区間Pmに位置しており、かつ、第4支持部材64の第3スライド軸部65が第3スライド部32のスライド区Pmに位置している状態で、第3タイヤT3(第3車軸A3)が上方力FA3を受けた場合を説明する。
なお、「動作説明1~4」と共通の内容については、説明を省略することがある。
【0056】
この状態で第3タイヤT3が上方力FA3を受けると、その力が第3リーフスプリング30に伝わり、第3リーフスプリング30のたわみが伸びる変形(変動)が生じ、後方伝達分力FR3が生じる(図3(C)参照)。
後方伝達分力FR3の回動方向K1の成分の力のうち、一部の力が第3スライド部32と第3スライド軸部65との間の摩擦力を介して、第2リーフスプリング30から第3スライド軸部65(後部支持部材64)に伝達される。
なお、第3スライド軸部65は、後部支持部材64に固定されているので、後方伝達分力FR3が生じたとき、第3スライド部32は固定された第3スライド軸部に対してスライド可能であるが、第3スライド軸65は第3スライド部32からの力を受けても移動することはない。
【0057】
第3リーフスプリング30の前端の第3アイ31は、第2アイ11と同様、第2連結部材50の第2連動軸部53に支持されており、回動可能になっている。したがって、第3リーフスプリング30において後方伝達分力FR3が生じると、前端側の第3アイ31を前方移動させる前方伝達分力FF3が生じ、第2連結部材50を介して摩擦力により第2リーフスプリング20側に伝達される。
【0058】
このように、懸架装置1は、第3リーフスプリング30が受けた上方力FA3を、第2及び第3リーフスプリング20,30の協働で受けることができるようになっている。
【0059】
「動作説明5」の状態は、第2スライド軸部52及び第3スライド軸部65が第2スライド部22及び第3スライド部32のスライド区間Pmに位置する状態であり、相対的に連動性が低い連結状態であるので、後方伝達分力FR及び前方伝達分力FFが生じたとき、第3リーフスプリング30から隣接する第2連結部材(第2リーフスプリング)側に伝達される力の割合は相対的に小さい。
【0060】
[動作説明6]
第3スライド軸部65が第3スライド部32の前端位置P1に位置する状態で、第3タイヤT3(第3車軸A1)が上方力FA3を受けた場合を説明する。
なお、「動作説明1~5」と共通の内容については、説明を省略することがある。
【0061】
この状態で第3リーフスプリング30が上方力FA3を受けると、第3リーフスプリング30のたわみが伸びる変形(変動)が生じ、後方伝達分力FR3と前方伝達分力FF3が生じるが、第3スライド軸部65は後部支持部材64に固定されているので、後方伝達分力FRによって第3スライド軸部65及び第3スライド部32が後方移動することはない。
その一方で、前方伝達分力FF3は、前端側の第3アイ31を前方移動させる力として作用し、第2連結部材50に伝達され、第1リーフスプリング10側に力が伝達される。
【0062】
「動作説明6」の状態は、第3スライド軸部65が第3スライド部32の前端位置P1に位置する状態であり、相対的に連動性が高い連結状態であるので、前方伝達分力FF3が生じたとき、第3リーフスプリング30から隣接する第2連結部材50に伝達される力は相対的に大きい。
なお、前方伝達分力FF3が生じたときに、第3リーフスプリング30から隣接する第2連結部材50側を介して第2リーフスプリング20に伝達される力の割合は、第2スライド軸部52と第2スライド部22との連結状態が相対的に連動性の高い連結状態であるか、低い連結状態であるかによって定まる。
【0063】
また、FA3を第2及び第3リーフスプリング20,30の協働で受けることができるようになっている点は「動作説明5」の場合と同様である。
【0064】
[動作説明5と動作説明6の動作の比較]
動作説明3と動作説明4との関係と同様であり、懸架装置1は、第3リーフスプリング30が受ける上方力FA3が大きくなったときに、力の伝達が摩擦伝達から直接伝達に変わり、より大きな割合の力を第3リーフスプリング30側から隣接する第2連結部材50に伝達できるように構成されている。
【0065】
次に、本実施形態の懸架装置の動きについて、車両走行時の状況を想定しつつ説明する。
【0066】
走行中の車両THの懸架装置1は、様々な力を受けて複雑な挙動を示すものであるが、ここでは、上方力FAを受けた場合の挙動に着目して懸架装置1の作用効果を説明する。したがって、実際の挙動と必ずしも一致するものではない。
【0067】
ここでは、3つのリーフスプリング10,20,30が直列配置された構成の懸架装置1の動作について、図2に示される状態を起点として説明する。
【0068】
[第1タイヤT1が受けた上方力FA1に起因する振動の発生緩和について]
この状態で走行中の車両THが、例えば、路面XRの凸部XRa(図1参照)や上り坂に差し掛かった場合、まず第1タイヤT1(第1車軸A1)が凸部から上方力FA1を受ける。
これにより、第1リーフスプリング10が上方力FA1を受け、上方力FA1の後方伝達分力FR1が生じる。
【0069】
ここで、上方力FA1の大きさが比較的小さい場合、第1スライド部12に連結された第1スライド軸部42は、第1スライド部12内のスライド区間Pmに位置する状態(相対的に連動性が低い状態)に維持される。
連動性が低い場合、上述したように、第1リーフスプリング10が受けた上方力FA1の後方伝達分力FR1うち、第1連結部材40を介して第2リーフスプリング20側に伝達される力の割合は小さい。つまり、上方力FA1(後方伝達分力FR1)のほとんどは、第1リーフスプリング10の弾性変形(反りが伸びる変形)動作によって受けられ、振動発生が緩和される。
【0070】
他方、走行中の車両THが路面XRの凸部XRa(図1参照)に差し掛かった場合で、第1リーフスプリング10が受けた上方力FA1が比較的大きい場合、より大きな後方伝達分力FR1が生じることとなり、第1スライド軸部42が第1スライド部12の前端位置P1(図4(B)参照)に位置する状態(相対的に連動性が高い状態)になることがある。
連動性が高い場合、後方伝達分力FR1が大きいだけでなく、後方伝達分力FR1のうち第1連結部材40を介して第2リーフスプリング20に伝達される力の割合も大きくなる。
【0071】
このように、懸架装置では、路面側から受ける上方力FA1が大きくなって連動性が高い状態になると、路面側から受ける上方力FA1が小さく連動性が低い場合と比較して、より大きな力が第2リーフスプリング20側に伝達されるようになっている。
つまり、懸架装置では、第1リーフスプリング10が大きな上方力FA1を受けたときに、大きな割合の力が隣接する第2リーフスプリング20に伝達されるようになっており、両リーフスプリング10,20の協働によって、大きな上方力FA1に起因する大きな振動の発生を、より効果的かつ確実に緩和できるようになっている。
【0072】
[第2タイヤT2が受けた上方力FA2に起因する振動の発生緩和について]
その後、車両THがさらに走行すると、第1タイヤT1は凸部XRaを通過し、第2タイヤT2が凸部XRaに差し掛かる。
これにより、第2リーフスプリング20が上方力FA2を受け、上方力FA2の後方伝達分力FR2及び前方伝達分力FF2が生じる。
【0073】
上方力FA2の大きさが比較的小さい場合、第2スライド部22に連結された第2スライド軸部52は、第2スライド部22内のスライド区間Pmに位置する状態(相対的に連動性が低い状態)に維持される。
連動性が低い場合、上述したように、後方伝達分力FR2うち第2連結部材50を介して第3リーフスプリング30側に伝達される力の割合は小さく、前方伝達分力FF2うち第1連結部材40を介して第1リーフスプリング10側に伝達される力の割合は小さい。つまり、上方力FA2(後方伝達分力FR2及び前方伝達分力FF2)のほとんどは、第2リーフスプリング20の弾性変形(反りが伸びる変形)動作によって受けられ、振動発生が緩和される。
【0074】
他方、走行中の車両THが路面XRの凸部XRa(図1参照)に差し掛かった場合で、第2リーフスプリング20が受けた上方力FA2が比較的大きい場合、より大きな後方伝達分力FR2が生じることとなり、第2スライド軸部52が第2スライド部22の前端位置P1に位置する状態(相対的に連動性が高い状態)になることがある。
連動性が高い場合、後方伝達分力FR2が大きいだけでなく、後方伝達分力FR2のうち第2連結部材50を介して第3リーフスプリング30に伝達される力の割合も大きくなる。
また、第2リーフスプリング20の場合、後方伝達分力FR2と共に発生する前方伝達分力FF2についても、第1連結部材40を介して第1リーフスプリング10側に伝達される力の割合が大きくなる。
【0075】
このように、懸架装置1では、路面側から受ける上方力FA2が大きくなって連動性が高い状態になると、路面側から受ける上方力FA2が小さく連動性が低い場合と比較して、より大きな力が第3リーフスプリング30側に伝達されるとともに、第1リーフスプリング10側に伝達されるようになっている。
つまり、懸架装置1では、第2リーフスプリング20が大きな上方力FA2を受けたときに、大きな割合の力が前後両方で隣接する第1リーフスプリング10及び第3リーフスプリング30に伝達されるようになっており、3つのリーフスプリング10,20,30の協働によって、大きな上方力FA2に起因する大きな振動の発生を、より効果的かつ確実に緩和できるようになっている。
【0076】
[第3タイヤT3が受けた上方力FA3に起因する振動の発生緩和について]
その後、車両THがさらに走行すると、第2タイヤT2は凸部XRaを通過し、第3タイヤT3が凸部XRaに差し掛かる。
これにより、第3リーフスプリング30が上方力FA3を受け、上方力FA3の後方伝達分力FR3及び前方伝達分力FF3が生じる。
【0077】
上方力FA3の大きさが比較的小さい場合、第3スライド部32に連結された第3スライド軸部65は、第3スライド部32内のスライド区間Pmに位置する状態(相対的に連動性が低い状態)に維持される。
連動性が低い場合、上述したように、後方伝達分力FR3うち第3スライド軸部65(後部支持部材64)側に伝達される力の割合は小さく、前方伝達分力FF3うち第2連結部材50を介して第2リーフスプリング20側に伝達される力の割合は小さい。つまり、上方力FA3(後方伝達分力FR3及び前方伝達分力FF3)のほとんどは、第3リーフスプリング30の弾性変形(反りが伸びる変形)動作によって受けられ、振動発生が緩和される。
【0078】
他方、走行中の車両THが路面XRの凸部XRa(図1参照)に差し掛かった場合で、第3リーフスプリング30が受けた上方力FA3が比較的大きい場合、より大きな後方伝達分力FR3が生じることとなり、第3スライド軸部65が第3スライド部32の前端位置P1に位置する状態(相対的に連動性が高い状態)になることがある。
連動性が高い場合、より大きな後方伝達分力FR3及び前方伝達分力FF3が生じることになるが、第3スライド軸部65は後部支持部材64に固定されているので、前方伝達分力FF3について、その力FF3のうち第2連結部材50を介して第2リーフスプリング20側に伝達される力の割合が大きくなる。
【0079】
このように、懸架装置1では、路面側から受ける上方力FA3が大きくなって連動性が高い状態になると、路面側から受ける上方力FA2が小さく連動性が低い場合と比較して、より大きな力が第2リーフスプリング20側に伝達されるようになっている。
つまり、懸架装置1では、第3リーフスプリング30が大きな上方力FA3を受けたときに、大きな割合の力が前側で隣接する第2リーフスプリング20に伝達されるようになっており、第2、第3リーフスプリング20,30の協働によって、大きな上方力FA3に起因する大きな振動の発生を、より効果的かつ確実に緩和できるようになっている。
【0080】
以上の説明から解るように、懸架装置1では、大きな上方力FA(下方力FB)を受けたときに、その力を受けたリーフスプリングだけで衝撃を緩和するのではなく、隣接するリーフスプリングとの協働によって効果的に衝撃を緩和できるようになっている。
【0081】
特に、前後両側に隣接するリーフスプリングを有する構成の第2リーフスプリング20では、大きな上方力FA2(下方力FB2)を受けたときに、その力を前後両側のリーフスプリングに効果的に伝達し、前後両側のリーフスプリングとの協働でより効果的に衝撃を緩和できる。
【0082】
上述した実施形態の懸架装置1は、被牽引車両で用いられている例であり、懸架装置1の各リーフスプリングが支持する車軸は従動輪が装着されるものであり、車輪(従動輪)の制動装置を備えていない車両用として好適であるが、種々の車両用のサスペンションとして使用可能である。
【0083】
また、本実施形態の懸架装置は、被牽引車両のうち、例えばトレーラハウス用の懸架装置として、より好適である。
トレーラハウスTHは、居住空間が搭載(積載)された車両であり、例えば、キッチンなどの水回りや、居室などの区画(居住空間)を有する。
また、区画の単位面積当たりの重量は、その用途などによってバラバラであり、各区画のレイアウト(間取り)は固定された位置に配置されることになる。
ところで、荷物が積載される貨物車両の場合、荷物を積載する段階で貨物車両全体が均一な重量バランスになるように積載するなど、車両の全体バランスを考慮しつつ積載することが可能であり一般的であるが、上述したように、トレーラハウスでは、単位面積当たり重量がそれぞれ異なる区画が組み合わせられて固定されたレイアウトになっており、居住性などを優先させた間取りにしようとすると車両全体のバランスがとれた状態を実現することが困難になりなりやすい。
つまり、トレーラハウスTHでは、必然的に、単位面積当たりの重量が重い区画(以下、重量区画)THhと、単位面積当たりの重量が軽い区画とが存在することになる。
【0084】
ところで、本実施形態の懸架装置1は、上述したように、3つのリーフスプリング10,20,30が直列配置された構成になっている。
より具体的に言えば、トレーラハウス車両THの左右両側に、2つの懸架装置1が、間隔をあけ、平行に、直列配置されている。
そして、上述したように、車両前後の方向の中央に配置された第2リーフスプリング20は、大きな上方力FA2(図2参照)を受けたとき、その力を前後両側のリーフスプリング10,20に分散伝達できるようになっており、前後いずれか一方で隣接するリーフスプリングにしか力を分散できない第1、第3リーフスプリング10,30と比較して、より優れた衝撃緩和性能、振動緩和性能を有する構成である。
【0085】
そうすると、トレーラハウス車両TH(図1参照)では、中央配置された第2タイヤT2の第2車軸A2を支持する第2リーフスプリング20の上方の中央エリアTHcと、前方配置された第1タイヤT1の第1車軸A1を支持する第1リーフスプリング10の上方の前方エリアTHaと、後方配置された第3タイヤT3の第3車軸A3を支持する第3リーフスプリング30の上方の後方エリアTHeとを比較した場合、重量区画THhが配置された場合の振動緩和性能は、中央エリアHcが最も優れているということができる。
単位面積当たりの重量が重い重量区画THhとしては、例えば、貯水タンクエリアや、貯水タンクなどを含む水回りエリアなどを挙げることができる。
【0086】
このように、本実施形態の懸架装置1を用いれば、同じ性能、同じ形状のリーフスプリングを直列配置した構成を採用するにもかかわらず、中央に配置されたリーフスプリングの上方に、重量区画THhの配置に適したエリア、すなわち振動緩和性能により優れたエリア(中央エリアTHc)を設けることができる。
この中央エリアTHcに水回りエリアなどの重量区画THhを配置したレイアウト構成は、トレーラハウス車両の走行時の車内の振動や揺れがより軽減されるレイアウトであり、トレーラハウス車両の内装や配備品の振動に起因する故障などの軽減に寄与するレイアウトである。
【0087】
本出願に係る発明は、上記実施例で説明した構成に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変されたものが含まれる。
【0088】
例えば、本実施形態の懸架装置1は、直列配置されたリーフスプリングの数は3つであるが、複数(2又は3以上)であればよく、3個に限られるものではない。
直列配置されるリーフスプリングの数が3つ以上の懸架装置では、最前列及び最後列に配置されたリーフスプリング以外の中間位置(中央位置)に配置されたリーフスプリングは、その前後両側で連結部材に連結された構成である。このようなリーフスプリングでは、第2リーフスプリング20に関する説明から解るように、最前列や最後列のリーフスプリングと比較して、振動緩和性能を発揮しやすい。
なお、直列配置されるリーフスプリングの数が4個以上の場合、いずれかのリーフスプリングが受けた上方力をより多くのリーフスプリングに伝達して衝撃緩和可能である点で、特徴を有する。また、重量区画THhの配置に好適な中央エリアTHcを広い範囲で実現できる。中央エリアTHcが広ければ重力区画THhの配置の自由度が向上し、居住性と制振性を兼ね備えたトレーラハウスのレイアウトの実現性が向上する。
他方、直列配置されるリーフスプリングの数が3個の場合、衝撃緩和性能に優れた中間位置のリーフスプリングを有する構成を最少のリーフスプリングの数で実現できるという、特徴を有する。
【0089】
また、本実施形態の懸架装置では、スライド部12,22,32(滑り対偶)がリーフスプリングの後端側に位置するように、リーフスプリングが配置されているが、車両の特性などに応じて、スライド部(滑り対偶)がリーフスプリングの前端側に位置するようにリーフスプリングを配置する構成も考えられる。
【符号の説明】
【0090】
1…懸架装置、10…第1リーフスプリング、10a…親バネ、
11…第1アイ(第1リーフ前端部、第1前端アイ)、11a…第1アイの回動軸、
12…第1スライド部(第1リーフ後端部、一方の滑り対偶)、
121…下ガイド部、122…上ガイド部、123…後端半円弧部(一方の突き当たり部)、124…前端半円弧部(他方の突き当たり部)、
121a…ガイド面(下ガイド部の上面)、122a…ガイド面(上ガイド部の上面)、
13…第1中空部(第1スライド溝、一方の滑り対偶)、
20…第2リーフスプリング(中間リーフスプリング)、
21…第2アイ(第2前端アイ、第2リーフ前端部)、21a…第2アイの回動軸、
22…第2スライド部(第2リーフ後端部、一方の滑り対偶)、
23…第2中空部(第2スライド溝、一方の滑り対偶)、
30…第3リーフスプリング、
31…第3アイ(第3前端アイ、第3リーフ前端部)、31a…第3アイの回動軸、
32…第3スライド部(第3リーフ後端部、一方の滑り対偶)、
33…第3中空部(第3スライド溝、一方の滑り対偶)、
40…第1連結部材(前側連結部材)、
40a…第1連結部材の中央部、40b…前アーム部、40c…後アーム部、
41…第1回動軸部(第1回動軸)、
42…第1スライド軸部(前部連結部、スライダ、他方の滑り対偶)、
43…第1連動軸部(後部連結部)、
50…第2連結部材(後側連結部材)、
50a…第2連結部材の中央部、50b…前アーム部、50c…後アーム部、
51…第2回動軸部(第2回動軸)、
52…第2スライド軸部(前部連結部、スライダ、他方の滑り対偶)、
53…第2連動軸部(後部連結部)、
60…車両の車台(シャシ)、61…前部支持部材、62…第1中間支持部材、
63…第2中間支持部材、64…後部支持部材、
65…第3スライド軸部、
A1,A2,A3…車軸、B1,B2…境界面(境界線)、
D1,D2…連結部材の軸間距離(離間距離)、
FA,FA1,FA2,FA3…上方力(荷重)、FB,FB1,FB2,FB3…下方力(荷重)、
FF,FF1,FF2,FF3…前方伝達分力、FR,FR1,FR2,FR3…後方伝達分力、
K1…第1連結部材の回動方向、L1,L2…仮想線分、
P1…(第1)スライド部の前端位置(一方の突き当たり位置)、
P2…(第1)スライド部の後端位置(他方の突き当たり位置)、
Pm…スライド区間(スライド位置)、Ps…第1スライド中央位置、
RL1…第1連結部材(第2アイ)の後方回動方向、
RL2…第1連結部材(第2アイ)の前方回動方向、
RS1…リーフスプリングのスライド部の上方回動(反時計回り)、
RS2…リーフスプリングのスライド部の下方回動(時計回り)、
S…第1リーフスプリングの前後の支持位置間距離、
T,T1,T2,T3…タイヤ、TH…被牽引車両(車両、トレーラハウス)、
THa…前方エリア、THc…中央エリア、THe…後方エリアThe、THh…重量区画、
V…トレーラなどの牽引車両、
X…前後方向(車両前後方向)、
Xs…第1スライド部(第1スライド溝、親バネ)の延在方向(長手方向)、
XR…路面、XRa…路面の凸部、
α1…角度(重力方向下側に位置する交差角の角度)。
【要約】
【課題】走行時の振動吸収性能が改良された車両用の懸架装置を提供すること。
【解決手段】
車両の前後方向に直列配置された複数のリーフスプリング10,20,30を備え、直列配置された各リーフスプリングは、それぞれ別の前記車軸を支持しており、相互に隣接する前側及び後側の2つの隣接リーフスプリングの間に、前記車台に回動可能に取り付けられた連結部材40,50が配置されており、前記連結部材には、前記前側隣接リーフスプリングの後端のリーフ後端部12,22,32と、前記後側隣接リーフスプリングの前端のリーフ前端部11,21,31が連結されており、前記2つの隣接リーフスプリングのいずれか一方が受けた荷重の一部を、前記連結部材を介して他方の前記隣接リーフスプリングに伝達可能になっている、懸架装置である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5