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  • 特許-排水ポンプ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】排水ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20240708BHJP
   F04D 1/14 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
F04D29/42 E
F04D1/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020091206
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021188518
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 良樹
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-154897(JP,U)
【文献】実開昭54-021201(JP,U)
【文献】実開平04-107496(JP,U)
【文献】特開2011-144691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/14
F04D 11/00
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに収容される回転羽根と、前記回転羽根に接続される駆動軸を有するモーターと、を有し、
前記ハウジングが、上下方向に延在する円筒形状の吸込管を有し、
前記吸込管の下端には、下方を向く吸込口と、前記吸込口を囲む環状の凹面と、が設けられ、
前記凹面の内周縁と外周縁とが同じ高さに配置されることを特徴とする排水ポンプ。
【請求項2】
前記吸込管の下端における径方向の肉厚が、2.5mm以上でかつ8mm以下である、請求項1に記載の排水ポンプ。
【請求項3】
前記凹面の径方向の幅が、前記吸込管の下端における径方向の肉厚と同じである、請求項1または請求項2に記載の排水ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空気調和機のドレン水の排出に用いられる排水ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の排水ポンプの一例が開示されている。特許文献1の排水ポンプは、ハウジングと、ハウジングに収容された回転羽根と、を有している。ハウジングは、上下方向に延在する吸込管を有している。吸込管の下端には、下方を向く吸込口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5422277号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排水ポンプは、吸込口を通じてドレンパンに溜まったドレン水を吸い上げる。しかしながら、吸込口とドレンパンとの間に隙間を設ける必要があるため、全てのドレン水を吸い上げることができない。そのため、ドレンパンにドレン水が残留して、スライムが発生してしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ドレンパンに残留するドレン水の量を低減できる排水ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、排水ポンプの吸込管に着目し、ドレン水を排出する排水動作においてドレンパンからドレン水を吸い上げることができなくなった状態、すなわち、吸い上げたドレン水が落下せずにハウジング内に保持された状態(以下「バランス状態」という)のときに、表面張力によってドレン水の水面から吸込管の下端までドレン水が立ち上がり、ドレン水の水面位置が吸込管の下端より低くなることを見出した。そこで、本発明者らは、吸込管の形状について鋭意検討を行い、本発明を想到するに至った。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る排水ポンプは、ハウジングと、前記ハウジングに収容される回転羽根と、前記回転羽根に接続される駆動軸を有するモーターと、を有し、前記ハウジングが、上下方向に延在する円筒形状の吸込管を有し、前記吸込管の下端には、下方を向く吸込口と、前記吸込口を囲む環状の凹面と、が設けられ、前記凹面の内周縁と外周縁とが同じ高さに配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記吸込管の下端における径方向の幅(肉厚)が、2.5mm以上でかつ8mm以下であることが好ましい。
本発明において、前記凹面の径方向の幅が、前記吸込管の下端における径方向の肉厚と同じであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排水ポンプは、上下方向に延在する円筒形状の吸込管を有している。そして、吸込管の下端に、下方を向く吸込口と、吸込口を囲む環状の凹面と、が設けられている。このようにしたことから、排水ポンプは、凹面によって高い表面張力がドレン水に作用しドレン水をより高い位置まで立ち上げることができる。そのため、排水ポンプは、水面がより低い位置となるまでドレン水を吸い上げることができ、ドレンパンに残留するドレン水の量を効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例に係る排水ポンプを示す図である。
図2図1の排水ポンプの吸込管の下端の拡大断面図である。
図3】バランス状態の排水ポンプにおける吸込管の下端に対する水面位置を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る排水ポンプについて、図1図2を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例に係る排水ポンプを示す図である。図1(a)は、排水ポンプの断面図である。図1(a)において、ハウジングおよびモーターケースのみ断面で示している。図1(b)は、吸込管を下方から見た図である。図2は、図1の排水ポンプの吸込管の下端の拡大断面図である。
【0013】
本実施例の排水ポンプは、例えば、空気調和機の室内ユニットのドレンパン内に溜まったドレン水を外部に排出するためのものである。この排水ポンプの用途は、ドレン水の排出に限られず、容器内の各種液体の排出や汲み上げなどに用いることができる。
【0014】
図1に示すように、本実施例の排水ポンプ1は、ハウジング10と、回転羽根20と、モーター30と、モーターケース40と、を有している。ハウジング10、回転羽根20およびモーターケース40は、合成樹脂製である。
【0015】
ハウジング10は、略逆円錐台形状の本体部11を有している。本体部11には、下方に延びる吸込管12が設けられている。吸込管12は、上下方向に直線的に延在する円筒形状を有している。吸込管12の下端12cには、下方を向く吸込口12aが設けられている。吸込管12の下端12cには、吸込口12aを囲むように配置された円環状の凹面12bが設けられている。本体部11には、側方に延びる吐出管13が設けられている。吐出管13は、側方を向く吐出口13aを有している。吐出管13は、横方向に直線的に延在する円筒形状を有している。これ以外にも、吐出管13は、吐出口13aが上方を向く略L字形状や円弧形状を有していてもよい。吸込管12および吐出管13は、本体部11の内側に設けられたポンプ室14に接続されている。
【0016】
吸込管12の下端12cにおいて、吸込管12の外径Dが16mm以上でかつ25mm以下であることが好ましい。また、吸込管12の下端における径方向の幅RT(肉厚)が2.5mm以上でかつ8mm以下であることが好ましい。幅RTは、凹面12bの幅でもある。外径Dが16mmより小さいと、凹面12bの幅を十分に確保できず、表面張力によってドレン水Wにおける水面Wsから立ち上がる部分Waの高さHが小さくなる。外径Dが25mmより大きいと吸込管12がドレンパンに設けられるドレン水の集水桝と干渉してしまう。そして、外径Dを16mm以上でかつ25mm以下にすることで、表面張力によってドレン水Wの部分Waの高さHを確保しつつ吸込管12とドレンパンの集水桝との干渉を防いで、ドレンパンに残留するドレン水Wをより効果的に低減できる。また、幅RTが2.5mmより小さいと凹面12bによる高い表面張力を得られない。幅RTが8mmより大きいと外径Dが大きくなってしまい上記干渉が生じるおそれがある。
【0017】
回転羽根20は、軸部21と、大径羽根部22と、小径羽根部23と、を有している。軸部21は、円柱形状を有している。大径羽根部22は、軸部21から放射状に延びる複数の平板形状の大径羽根(図示なし)を有している。大径羽根部22は、複数の大径羽根の先端を連結する円筒形状のリング22aと、リング22aの下端に外周縁が接続された円環形状の下板22bと、を有している。大径羽根部22は、ポンプ室14に配置されている。小径羽根部23は、複数の大径羽根の下端から下板22bの内側を通り下方に延びる複数の平板形状の小径羽根23aを有している。小径羽根部23は、吸込管12の内側に配置されている。
【0018】
モーター30は、ハウジング10の上方に配置されている。モーター30は、モーター本体31と、モーター本体31から下方に延びる駆動軸32と、を有している。駆動軸32は、回転羽根20の軸部21に連結されている。
【0019】
モーターケース40は、スナップフィット機構によってハウジング10に取り付けられている。モーターケース40は、下部ケース50と、上部ケース60と、を有している。
【0020】
下部ケース50は、底壁部51と、周壁部54と、モーター支持部56と、を有している。
【0021】
底壁部51は、円板形状を有している。底壁部51は、ハウジング10の本体部11の上端開口を塞ぐように配置される。底壁部51は、本体部11とともにポンプ室14を画定する。底壁部51の中央には、軸孔51aが設けられている。軸孔51aには、回転羽根20の軸部21が挿入される。
【0022】
周壁部54は、円筒形状を有している。周壁部54の下端は、底壁部51に接続されている。周壁部54は、底壁部51から上方に延びるように配置されている。周壁部54の上端には、モーター支持部56が接続されている。
【0023】
上部ケース60は、モーター支持部56にスナップフィット機構によって取り付けられる。上部ケース60は、モーター30の上部を覆うように配置される。モーターケース40は、モーター支持部56と上部ケース60との間にモーター30を収容する。モーター30の配線部分などの一部が、モーターケース40の外側に配置される。
【0024】
以上より、本実施例の排水ポンプ1は、上下方向に延在する円筒形状の吸込管12を有している。そして、吸込管12の下端12cに、下方を向く吸込口12aと、吸込口12aを囲む環状の凹面12bと、が設けられている。このようにしたことから、排水ポンプ1は、表面張力によってドレン水Wをより高い位置まで立ち上げることができる。そのため、排水ポンプ1は、水面がより低い位置となるまでドレン水Wを吸い上げることができ、ドレンパンに残留するドレン水Wの量を効果的に低減できる。
【0025】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0026】
本発明者らは、本発明に係る排水ポンプの実施例1および比較例1、2を用いて、バランス状態での吸込管の下端に対するドレン水の水面位置を計測し、本発明の効果について検証した。
【0027】
実施例1は、上記で説明した排水ポンプ1の構成を有する。実施例1は、吸込管の下端における外径Dが20.0mmである。吸込口の周囲の形状は円環状の凹面であり、吸込管の下端における径方向の幅RTが4.5mmである。
【0028】
比較例1は、吸込管の下端における外径Dおよび幅RTはいずれも実施例1と同じである。しかし、比較例1は、吸込口の周囲の形状が円環状の平面であることが実施例1と異なる。比較例1は、吸込管以外は、実施例1と同一の構成を有する。
【0029】
比較例2は、吸込管の下端における外径Dが16.0mmであり、吸込口の周囲の形状は円環状の平面である。また、比較例2では、吸込管の下端における径方向の幅RTが2.5mmであり、上記比較例1の幅RTよりも狭くなっている。比較例2は、吸込管以外は、実施例1と同一の構成を有する。
【0030】
実施例1および比較例1、2においてドレンパンからドレン水Wを排出する排水動作を行い、バランス状態となったときの吸込管の下端に対するドレン水Wの水面位置を計測した。実施例1および比較例1、2において水面位置を3回ずつ計測し、平均値を算出した。表1に、実施例1および比較例1、2の吸込管の構成と計測結果とを示す。図3に、計測結果を示す。図3は、バランス状態の排水ポンプにおける吸込管の下端に対する水面位置(平均値)を示すグラフである。
【0031】
【表1】
【0032】
比較例1および比較例2の計測結果から、吸込口周囲の平面の幅を大きくすることでドレン水の水面位置をより低くできることが分かった。さらに、実施例1および比較例1の計測結果から、吸込口の周囲の形状を平面から凹面にすることでドレン水の水面位置をさらに低くできることが分かった。すなわち、排水ポンプでは、吸込口の周囲の形状を円環状の凹面にすることで、円環状の平面を採用した構成に比べて、ドレン水の水面位置をより低くできる。
【0033】
このことから、実機を用いた検証でも、本発明の効果が明らかとなった。
【符号の説明】
【0034】
1…排水ポンプ、11…本体部、12…吸込管、12a…吸込口、12b…凹面、12c…下端、13…吐出管、13a…吐出口、14…ポンプ室、10…ハウジング、20…回転羽根、21…軸部、22…大径羽根部、22a…リング、22b…下板、23…小径羽根部、23a…小径羽根、30…モーター、31…モーター本体、32…駆動軸、40…モーターケース、50…下部ケース、51…底壁部、51a…軸孔、54…周壁部、56…モーター支持部、60…上部ケース、W…ドレン水、Ws…水面、Wa…ドレン水における表面から立ち上がる部分

図1
図2
図3