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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/27 20060101AFI20240708BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240708BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240708BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61K8/27
A61K8/31
A61Q1/02
A61Q1/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020097654
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021187817
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】595137022
【氏名又は名称】東色ピグメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】津幡 和昌
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-217613(JP,A)
【文献】特開2003-081769(JP,A)
【文献】特開2010-037328(JP,A)
【文献】特開2015-229643(JP,A)
【文献】国際公開第2019/050399(WO,A1)
【文献】特表2006-516613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
A61K 31/00-31/327
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ワセリンと(B)粒径が0.55μm~20μmである酸化亜鉛を含有しており、(A)成分と(B)成分の含有量の質量比[(A)/(B)]が0.50~2.0の範囲であり、ワックス成分の含有割合が2質量%未満である、皮膚外用剤であって、
前記皮膚外用剤中の(A)成分と(B)成分の合計含有割合が30質量%~90質量%である、
皮膚外用剤。
【請求項2】
(A)/(B)が0.50~1.0未満の範囲である、請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
さらに(C)酸化チタン、タルク、酸化鉄から選ばれる1または2以上の成分を含む添加剤を含有する、請求項1または2記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
(C)成分の合計含有割合が20質量%以下である、請求項記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
ワックス成分の含有割合が0.1質量%未満である、請求項1~4のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
皮膚外用剤が、軟膏、バーム、クリーム、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、チーク、アイシャドウから選ばれるものである、請求項1~5のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
人の皮膚に塗布して使用する皮膚外用剤は、使用感が良いことと、使用後の自然な仕上がり感などが求められる傾向がある。
【0003】
特許文献1には、(A)アスコルビン酸高級脂肪酸エステル、(B)油脂成分、(C)亜鉛華などの粉体を含有し、アルミ単層チューブに充填されている化粧料の発明が開示されており、美白効果が記載されている。
特許文献2には、(A)固形ワックス、(B)粒径0.1μm以下の酸化チタンなどの微粒子粉体、(C)液状油剤を含有する油性固形化粧料の発明が開示されており、発汗を抑制すること、光沢があることが記載されている。
特許文献3には、(A)白色ワセリン、(B)化粧料粉末、(C)ホスホリルコリン類似基含有重合体、(D)抗炎症剤または殺菌剤を含有する皮膚外用剤組成物の発明が開示されており、ペースト状で伸びの良いことが記載されている。(B)化粧料粉末は、平均粒径1~30μmであることが記載されている。
特許文献4には、基剤と紫外線散乱剤を含み、前記基材としてワセリンと揮発性油剤を含む皮膚外用剤の発明が開示されており、保湿性の良いことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-304012号公報
【文献】特開平3-176411号公報
【文献】特開2003-26608号公報
【文献】特開2015-229643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用感、仕上がり感などが良い皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)ワセリンと(B)平均粒径が0.1~20μmである酸化亜鉛を含有しており、(A)成分と(B)成分の含有量の質量比[(A)/(B)]が0.50~2.0の範囲であり、ワックス成分の含有割合が2質量%未満である、皮膚外用剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の皮膚外用剤は、使用感、仕上がり感が良く、経日安定性も良い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(A)成分のワセリンは、純度などは特に限定されるものではなく、市販品の黄色ワセリンや白色ワセリンのほか、白色ワセリンの純度をさらに高めた製品などを使用することができる。
(A)成分のワセリンとしては、サンホワイト P-150(日興リカ株式会社製)、White Fonoline(Sonneborn社製)、White Protopet 1S(Sonneborn社製)、Perfecta(Sonneborn社製)、などの市販品を使用することができる。
【0009】
(B)成分の酸化亜鉛(亜鉛華)は、平均粒径が0.1~20μmの範囲であり、好ましくは0.2~10μmの範囲であり、さらに好ましくは0.25~5μmの範囲である。(B)成分の酸化亜鉛は、粒径が小さく、紫外線散乱剤として使用されるものは含まれない。
粒径はレーザー回折散乱法で測定した数値である。
(B)成分の酸化亜鉛としては、酸化亜鉛(局方/JP)(ハクスイテック株式会社製)、日本薬局方 酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製)などの市販品を使用することができる。
【0010】
(A)成分と(B)成分の含有量の質量比(A)/(B)は、0.50~2.0の範囲が好ましく、0.60~1.5の範囲がより好ましく、0.70~1.0未満の範囲がさらに好ましく、0.80~0.95の範囲がさらに好ましい。(A)/(B)が前記範囲内であることで、使用感、仕上がり感、経日安定性(50℃)が良くなる。
【0011】
皮膚外用剤中の(A)成分と(B)成分の合計含有割合は、30質量%~90質量%が好ましく、40質量%~80質量%がより好ましく、50質量%~70質量%がさらに好ましい。
(A)成分と(B)成分の合計含有割合が前記範囲内であることで、使用感、仕上がり感、経日安定性(50℃)が良くなる。
【0012】
皮膚外用剤中のワックス成分の含有割合は2質量%未満であり、0.1質量%未満であることが好ましい。
本発明の効果を発現するためにはワックス成分は不要であるが、製造ラインを共用するなどの理由からワックス成分の混入が避けられないような場合であっても、前記含有割合であれば、本発明の効果を損なうことがない。
【0013】
皮膚外用剤は、(A)成分と(B)成分のほかにさらに(C)成分として酸化チタン、タルク、酸化鉄から選ばれる1または2以上の成分を含む添加剤を含有することができる。
酸化チタンは白色顔料や紫外線散乱剤として機能する成分であり、必要に応じて他の水酸化アルミニウム、ジミリスチン酸アルミニウム、ステアリン酸及びその塩、イソステアリン酸及びその塩、シリカ、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコン、オクチルトリエトキシシラン、ラウロイルリシン、ステアロイルグルタミン酸及びその塩、などで表面処理されていてもよい。なお、主として紫外線散乱剤としての機能を発現させようとするときは、平均粒子径が0.1μm未満のものを使用することが好ましい。
【0014】
タルクは、感触改良と使用後の仕上がりの改善を目的として機能する成分である。タルクの粒子径は特に制限されるものではないが、大きな粒子径のものと小さな粒子径のものを単独で使用するか、または併用することができる。
大きな粒子径のタルクとしては、目開き45μmの篩で処理したとき、メッシュパスが90~95質量%量のものであり、平均粒子径(レーザー回折散乱法で測定)が10μm~45μmのものを使用することができる。
小さな粒子径のタルクとしては、4~5μm(D50)のものを使用することができる。
【0015】
酸化鉄は着色顔料として機能する成分であり、必要に応じて水酸化アルミニウム、ジミリスチン酸アルミニウム、ステアリン酸及びその塩、シリカ、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコン、オクチルトリエトキシシラン、ラウロイルリシン、ステアロイルグルタミン酸及びその塩、などで表面処理されていてもよい。
【0016】
(C)成分が皮膚外用剤に含有されているときの合計含有割合は25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましくい。
【0017】
皮膚外用剤には、(A)~(C)成分のほかにも、皮膚外用剤の種類に応じて含有できる各種の公知成分を含有することができる。
着色剤として、黒酸化チタン、酸化クロム、水酸化クロムなどの金属酸化物;群青;紺青;黄色4号及びそのアルミニウムレーキ、黄色5号及びそのアルミニウムレーキ、青色1号及びそのアルミニウムレーキ、赤色104号アルミニウムレーキ、赤色201号、赤色202号、赤色218号、赤色223号、赤色226号、青色404号、だいだい色205号、黄色205号、緑色201号、紫色201号、紫色401号、黒色401号などの法定色素;βカロチン、カルサミン、カルミン、クロロフィル、コチニールなどの天然色素など;
光輝性粉体類として、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー、などのパール顔料;
油剤として、炭化水素、スクワラン、アルキッド、アクリル、スルホンアミド樹脂、ニトロセルロース;オリーブ油、アーモンド油、カカオ脂、マカデミアナッツ油、アボカド油、硬化パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、月見草油、合成トリグリセライド、ロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、高級脂肪酸、合成エステル、直鎖・環状シリコーンオイル、ジメチルポリシロキサン、モノステアリン酸グリセリン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、ポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ロジンペンタエリスリトットエステル、ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリイソオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、モノラウリン酸プロピレングリコール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルなど;
保湿成分として、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビット、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジグリセリン、マンニトール、POEメチルグリコシド、生体高分子、蔗糖、エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルなど;
防腐剤、乳化剤、安定化剤、可塑剤;
陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、蛋白質系界面活性剤;
有効成分、ビタミンCジパルミテート、ビタミン類、アミノ酸、美白剤、殺菌剤、保湿剤;
カオリン、マイカ、シリカ、セリサイト、アルミナ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、硫酸バリウム、などの体質顔料、
pH調整剤、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、金属イオン封止剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、分散剤、緩衝剤、沈殿防止成分、褐色防止剤、使用性改質剤などを挙げることができる。
【0018】
皮膚外用剤は、軟膏、バーム、クリーム、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、チーク、アイシャドウから選ばれるものにすることができる。
【実施例
【0019】
(A)成分
ワセリン:White Protopet 1S(Sonneborn社製)
(B)成分
酸化亜鉛:日本薬局方 酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製,平均粒径0.55μm)
(C)成分
タルク*粒径45μm以下、90-95%メッシュパス:SW-特)(浅田製粉株式会社製)
タルク4-5μm(D50):JA-13R(浅田製粉株式会社製)
酸化鉄:MI-TAROX合成酸化鉄R-516PS,LL-100P.BL-100P(三好化成工業株式会社製)
酸化チタン:MI-PFC-407(三好化成工業株式会社製)
【0020】
(その他の成分)
ミネラルオイル(#70):Carnation(Sonneborn社製)
ミネラルオイル(#350):Kaydol(Sonneborn社製)
ポリエチレンワックス:Performalene PL(New Phase Technologie社製)
マイクロクリスタリンワックス:Multiwax W-445(Sonneborn社製)
酸化チタン:微粒子酸化チタン,MT-100TV(テイカ株式会社製)
ジメチルシリル化シリカ:R-972V(日本アエロジル株式会社製)
【0021】
実施例1~6、比較例1、2
表1に示す各成分から実施例と比較例の皮膚外用剤を下記の方法で調製製造した。
表1に示す(A)成分とその他の成分を含む油相を予め80~100℃下で加熱混合し、表1に示す(B)成分、(C)成分及びその他の成分(ジメチルシリル化シリカ)を含む粉体相を油相に添加して、三本ローラーを用いて均一混合して、溶融状態の混錬物を得る。得られた前記混錬物を80~100℃に加熱して、真空脱泡機を用いて攪拌しながら脱泡した後、容器に充填する。
【0022】
(1)使用感
実施例および比較例の皮膚外用剤の適量を女性パネラー5名の顔表面の全体に塗布した。前記塗布面を目視観察して、最も良かったものを5、最も悪かったものを1とする5段階で評価した。評価結果は5名の平均点とした。
【0023】
(2)仕上がり感
「(1)使用感」の試験と並行して試験して、同様にして評価した。
【0024】
(3)経日安定性(50℃)
50℃恒温槽内で30日間静置させた皮膚外用剤の性状を目視で観察した。経日安定性の判定を室温保管品と比較し、下記基準により評価した。
1:分離
2:やや分離
3:多少上清あり
4:若干上清あり
5:変化なし
【0025】
(4)総合評価
(1)~(3)の各試験の平均を求め、次の基準で評価した。
◎:平均点4.5~5
〇:平均点4~4.5未満
×:平均点3.5未満
【0026】
【表1】
【0027】
実施例1~6は、使用感、仕上がり感、安定性をバランス良く具備しているため、総合評価が良かった。
比較例1は、ワックスを含有しており、(A)/(B)も本発明の範囲外であるため、使用感、仕上がり感が悪く、総合評価も悪かった。
比較例2は、ワックスの含有量が多いため、使用感、仕上がり感が悪く、総合評価も悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の皮膚外用剤は、軟膏、バーム、クリーム、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、チーク、アイシャドウなどに利用することができる。