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  • 特許-軒先構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】軒先構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/064 20060101AFI20240708BHJP
   E04D 3/36 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
E04D13/064 501A
E04D3/36 A
E04D13/064 502G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020143310
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038691
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-055552(JP,A)
【文献】特開2019-007253(JP,A)
【文献】特開平05-280160(JP,A)
【文献】実開平03-033121(JP,U)
【文献】特開平04-108948(JP,A)
【文献】特開平06-200589(JP,A)
【文献】特開平09-170312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/064
E04D 3/00-3/40
E04B 7/02、9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根における折板屋根板の内部に位置される支持部材が流れ方向に複数設けられ、それぞれの前記支持部材には少なくとも垂下する縦部材を備える軒先納め材が固定され、これらの軒先納め材には、下方から被覆するように化粧材が取り付けられていると共に、最軒端の前記軒先納め材の前記縦部材には、軒先からの吹き上げ風の侵入を防ぐ面材が固定され、軒先側にて左右方向に隣り合う最軒端の前記軒先納め材には、流れ方向に直交するように軒樋が架設状に取り付けられていることを特徴とする軒先構造。
【請求項2】
前記軒先納め材は、角度調整可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の軒先構造。
【請求項3】
前記軒樋の軒先側の側面上端が、前記軒樋の上面を覆うカバー材の下端と係合され、該カバー材の上端が前記縦部材に連絡されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軒先構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新築、既設を問わず各種の折板屋根に容易に適用され、安定に各種の軒樋及び軒天井材等の化粧材を取り付けることができる軒先構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折板屋根に軒樋や化粧材を取り付ける態様としては、工場や倉庫等の大規模建造物に採用されることが多く、美観(意匠性)は採用されるうえで優先度の低いものであった。
例えば特許文献1に記載の構造は、折板屋根の軒先へ延出状に取り付けられた庇アーム18に、樋26や化粧材等などが固定されるものであって、庇アーム18は梁14等の構造材に取り付けられている。
また、特許文献2に記載の構造は、折板屋根のそれぞれの山形部7に縦長の取付部材A2が嵌合状に取り付けられ、隣り合う取付部材A2,A2に架け渡されるように天井主板A1を含む軒天井材Aが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2883485号公報
【文献】特開平6-200589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1では、庇アーム18が梁14に対してボルトナット等による締着や溶接によって取り付けられるため、何れに手法を採用しても屋根業者が自由に行えるものではなかった。即ち締着の場合には、予め梁14等の構造材に穿孔しておく必要(穿孔した構造材/梁を軒先に設置してもらう)があった。また、溶接の場合には、予め施工場に溶接機用の電源を確保する必要があった。さらに、前記特許文献2でも、取付部材A2の下端に軒天井材Aを取り付けるためには、同様にボルトナット等による締着や溶接が用いられるので、その問題点も全く同様であった。
加えて前記特許文献1では、長さや高さがはじめから決まっているため、化粧仕上げ材を配置する場所を自由に設定することができないものであった。また、前記特許文献2では、軒樋を設ける目的で、軒天井材Aに樋部分を設けるためには下方への荷重が大きくなるので、別途取付構造を必要とするものであった。
【0005】
そこで、本発明は、各種の折板屋根等の縦葺き屋根構造に容易に適用され、軒樋や内樋へ落ち葉等による樋詰まりを防止することなく雨水等を導くことができる軒先納め材、及び軒先構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、折板屋根における折板屋根板の内部に位置される支持部材が流れ方向に複数設けられ、それぞれの前記支持部材には少なくとも垂下する縦部材を備える軒先納め材が固定され、これらの軒先納め材には、下方から被覆するように化粧材が取り付けられていると共に、最軒端の前記軒先納め材の前記縦部材には、軒先からの吹き上げ風の侵入を防ぐ面材が固定され、軒先側にて左右方向に隣り合う最軒端の前記軒先納め材には、流れ方向に直交するように軒樋が架設状に取り付けられていることを特徴とする軒先構造を提案するものである。
【0007】
また、本発明は、前記軒先構造において、前記軒先納め材は、角度調整可能に取り付けられていることを特徴とする軒先構造をも提案する。
【0008】
さらに、本発明は、前記軒先構造において、前記軒樋の軒先側の側面上端が、軒樋の上面を覆うカバー材の下端と係合され、該カバー材の上端が縦部材に連絡されていることを特徴とする軒先構造をも提案する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の軒先構造は、折板屋根板の内部に位置される支持部材が流れ方向に複数設けられ、それぞれの前記支持部材には少なくとも垂下する縦部材を備える軒先納め材が固定され、これらの軒先納め材には、下方から被覆するように化粧材が取り付けられていると共に、最軒端の前記軒先納め材の前記縦部材には、軒先からの吹き上げ風の侵入を防ぐ面材が固定され、軒先側にて左右方向に隣り合う最軒端の前記軒先納め材には、流れ方向に直交するように軒樋が架設状に取り付けられている構成であるから、新築、既設を問わず各種の折板屋根に容易に適用され、安定に各種の軒樋及び軒天井材等の化粧材を取り付けることができる。
【0010】
また、前記軒先納め材が、角度調整可能に取り付けられている場合には、任意の傾斜角度で安定に配設される、即ち任意の傾斜勾配の屋根構造に安定に軒樋を取り付けることができる。
【0011】
さらに、前記軒樋の軒先側の側面上端が、前記軒樋の上面を覆うカバー材の下端と係合され、該カバー材の上端が前記縦部材に連絡されている場合には、軒樋の軒先端を折板屋根側へ引っ張るように保持するため、このカバー材は軒樋の荷重を保持するアームの作用をも果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)本発明の一実施例(第1実施例)の軒先構造を示す側面図、(b)該軒先構造を水下側から見た正面図である。
図2】(a)第1実施例の軒先構造に用いたカバー材を示す側面図、(b)第1実施例の軒先構造に用いた軒樋を示す側面図、(c)第1実施例の軒先構造に用いた樋受け材を示す側面図、(d)第1実施例の軒先構造に用いた支持部材を示す側面図及び正面図、(e)第1実施例の軒先構造に用いた軒先納め材の側面図及び正面図、(f)第1実施例の軒先構造に用いた面材の正面図、(g)第1実施例の軒先構造に用いた化粧材及びその取付構造を示す側面図、(h)第1実施例の軒先構造に用いた面材及びその取付構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の軒先構造は、折板屋根における折板屋根板の内部に位置される支持部材が流れ方向に複数設けられ、それぞれの前記支持部材には少なくとも垂下する縦部材を備える軒先納め材が固定され、これらの軒先納め材には、下方から被覆するように化粧材が取り付けられていると共に、最軒端の前記軒先納め材の前記縦部材には、軒先からの吹き上げ風の侵入を防ぐ面材が固定され、軒先側にて左右方向に隣り合う最軒端の前記軒先納め材には、流れ方向に直交するように軒樋が架設状に取り付けられている。
【0014】
前記支持部材を取り付ける折板屋根は、流れ方向に直交する方向(左右方向)に複数の山部及び谷部を備える折板屋根板にて形成され、例えばハゼ締め式、嵌合式等の各種の折板屋根板が知られているが、特に限定されるものではない。
【0015】
前記支持部材は、前記折板屋根板の山部の裏面側に位置されて化粧材や軒樋を支持する部材であって、流れ方向に複数設けられるが、仮に既設屋根の折板屋根の水下端に当該支持部材を組み付けるには、キャップの取付前であれば下方から嵌合させるようにしてもよいし、屋根の軒端から嵌入させるようにしてもよい。また、この支持部材は、タイトフレーム等に固定される保持部材と全く同じものを用いてもよいし、屋根内部から外れない形状であればよい。
【0016】
それぞれの前記支持部材に固定される軒先納め材は、前述のように少なくとも垂下する縦部材を備えるが、前述のように支持部材が複数設けられるので、それらの各支持部材にそれぞれ軒先納め材が固定され、それらのうち、流れ方向の最軒先側にて左右方向に隣り合う軒先納め材の縦部材には、流れ方向に直交するように軒樋が架設状に取り付けられる。
また、それぞれ軒先納め材としては、後述する図示実施例に示すように流れ方向に延在して前記支持部材に固定される横部材を備えることが望ましい。
【0017】
前記縦部材は、後述する図示実施例のように垂下状に配設される部位であって、その下端には、下方から被覆するように化粧材(軒先天井材)が取り付けられている。特に軒先側の軒先納め材の縦部材には、軒樋を支持する樋受け材を取り付けるための位置規制や目印を意図する爪(切り起こし状)等を設けるようにしてもよい。
前記切り起こし状の爪は、上下方向に段階的に設けることで、樋受け材を取り付けるための位置規制や目印とすることができる。また、爪に代えて取付用の複数の孔を設けることで、同様の目的に用いることもできる。
【0018】
また、この軒先納め材は、角度調整可能に取り付けられていることが望ましい。即ち軒先納め材には、前記縦部材と前記横部材との拡開角度を任意に調整可能な角度調整機構が設けられていることが望ましい。
この角度調整機構としては、前記縦部材の基端に回動可能に合わせ接面される重合状の取付部を設け、例えば該取付部を扇状に形成することで、任意の傾斜角度で前記縦部材を安定に配設されることができる。しかもこの取付部に、例えば弾性を有する板状材を介在させることで、締着効果や補強効果を向上させることができる。或いは縦部材と横部材との間に、ボルト状の調整具を架け渡して連結し、ナット状部分を回動させるだけで架け渡し間隔を調整できる態様を採用してもよい。
【0019】
前記軒先納め材の縦部材の下端に取り付けられる化粧材は、下方から被覆する役割を果たす部材であって、後述する図示実施例のように軒天井材を兼ねるものでもよい。前述のように複数設けられる軒先納め材の縦部材の下端に吊り支持されるので、この化粧材の荷重等は、それぞれの縦部材から支持部材に負担されるので、一つ一つの支持部材に分担できる。
【0020】
前記軒先納め材のうち、軒先側に配置された軒先納め材の縦部材に固定される樋受け材は、軒樋の底部を支持可能な支持部を備えると共に、軒樋の建築物側の側面を受支する受支部を備えることが望ましく、該樋受け材に支持される軒樋は、内部に雨水等の排水路が設けられているものであれば、その材質や寸法、形状等については限定されるものではなく、樋として汎用されているU字状、半円状、角状(コ字状)等を用いることができる。また、この軒樋の建築物側の側面下端には、前記樋受け材に支持される被支持部が形成されていることが望ましく、例えば後述する図示実施例のように隅部状又は角状のものを例示することができる。
【0021】
なお、前記軒樋の開放上面にはカバー材が配設されることが望ましい。
このカバー材は、前記軒樋の開放上面を覆うことで、内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積したり、鳥類等が巣作りすることを防止する作用をも果たし、その表面には雨水を内部へ導く導水口、例えば小径のスリット孔が形成されて雨水のみを軒樋内に導く作用をも果たす部材である。
また、このカバー材の望ましい態様としては、後述する図示実施例のようにその下端が軒樋の軒先端と係合して取り付けられ、且つその上端が前記縦部材に連絡されて取り付けられる。このカバー材の下端には、後述する図示実施例に示すように下方へ更に内側へ折曲した略コ字状の係合部が設けられることで、その裏面側に位置する軒樋の軒先端を係合させ、折板屋根側へ引っ張るように保持するため、このカバー材は軒樋の荷重を保持するアームの作用をも果たす。
【0022】
これらの支持部材や軒先納め材を新設又は既設の折板屋根に配設する手順としては、予め前記支持部材及び軒先納め材を組み付けておき、これらを折板屋根に取り付け、それと同時に、或いはその後に、化粧材や軒樋(樋受け材及びカバー材)を取り付けるようにしてもよい。
なお、折板屋根の内部に支持部材を位置させるには、前述のようにキャップ材の配設前に下方から嵌合状に取り付けてもよいし、折板屋根の先端(軒先端)からの嵌入状(挿嵌状)に取り付けてもよい。その支持部材には、前述のように予め縦部材が組み付けられているが、折板屋根の内部に支持部材を位置させる操作に特に支障を生ずることなく容易に施工作業を行うことができる。
【0023】
本発明の軒先構造は、これらの各部材から構成されるものであって、新設又は既設の折板屋根に対し、前記支持部材が流れ方向に複数取り付けられ、それぞれの支持部材には少なくとも垂下する縦部材を備える前記軒先納め材が固定され、これらの軒先納め材には、下方から被覆するように前記化粧材が取り付けられていると共に、軒先側に隣り合う軒先納め材には、流れ方向に直交するように前記軒樋が架設状に取り付けられている構成であるから、新築、既設を問わず各種の折板屋根に容易に適用され、安定に各種の軒樋5を取り付けることができる。
【実施例1】
【0024】
図1(a),(b)に示される第1実施例の軒先構造は、折板屋根における折板屋根板1の内部に位置される支持部材2,2が流れ方向に複数設けられ、それぞれの支持部材2には少なくとも垂下する縦部材3Aを備える軒先納め材3が固定され、これらの軒先納め材3には、下方から被覆するように化粧材4が取り付けられていると共に、軒先側に隣り合う軒先納め材3には、流れ方向に直交するように軒樋5が架設状に取り付けられている構成である。
【0025】
この第1実施例の折板屋根板1は、図1(b)に示されるように左右方向に複数の山部10A及び谷部10Bを備え、その一つの山部10Aを図1(b)に示しているが、ハゼ締め式で接続される構造が示され、その内部には、図1(a)に示されるように流れ方向(=同図の左右方向)に複数の支持部材2,2が取り付けられている。
この折板屋根板1は、図2(d)に示されるように平板部11の両端が傾斜状に立ち上げられ(傾斜状の立ち上げ部12が設けられ)、該立ち上げ部12の上端に折返し状に上方へ延在させた折返し部13が形成され、更にその折返し部13の上端を略水平状に折り返した支持面部14が設けられ、該支持面部14の端縁を上方へ延在させてその先端を隣り合う折板屋根板1とハゼ締め(ハゼ部15)にて接続する構成であり、図示しないタイトフレームに固定される保持部材にて強固に且つ安定に取り付けられている。このタイトフレームは、下端が躯体に固定され、保持部材としては、正面から見て前記支持部材2のように見える(同一物品でもよい)ものが用いられる。
【0026】
前記支持部材2は、図1(a)に示されるように前記折板屋根板1の山部10Aの内部に複数設けられる部材であって、前記折板屋根板1の立ち上げ部12と折返し部13間に形成されるく字状部16a、折返し部13と支持面部14間に形成されるく字状部16bに、それぞれ弾性嵌合される下側凹状部21、上側凸状部22をそれぞれ左右に備えている。
そのため、前記支持部材2は、左右に隣り合う前記折板屋根板1,1の立ち上げ部12と折返し部13間に形成されるく字状部16a、折返し部13と支持面部14間に形成されるく字状部16bが、それぞれ下側凹状部21及び上側凸状部22を弾性状に保持するため、左右に隣り合う前記折板屋根板1,1に、安定に支持されるものである。
なお、この支持部材2は、折板屋根板1の山部10Aの内部に配置可能であって、その組み付け後に容易に外れない形状であればよく、折板屋根板1に対して嵌合状に配置させるものであっても、折板屋根板1の先端(軒先端)からの嵌入、挿嵌状に配置させるものであってもよい。
【0027】
前記軒先納め材3は、図2(e)に示されるように下方へ延在する縦棒状の縦部材3Aを含んでおり、基端に扇状部分31を含んで流れ方向に延在する横部材3Bが組み合わされ、角度調整可能に取り付けられている。
前記縦部材3Aは、上端に前記横部材3B(扇状部分31)と重合する扇状部分32を備えて上下方向に延在する部材(L字材)であって、その横部分34も縦部分35も縦長の略矩形状であり、前記横部材3Bは、縦部分が流れ方向に延在する前記扇状部分31であって横部分がそこから略水平状に延在する固定面33であるL字材である。
なお、これらの「L字状材」は、正面から見える横部分と側面から見える縦部分とからなるL鋼等の素材からなることを意味し、前記扇状部分32,31は、それぞれの縦部分に形成されている。
それぞれの扇状部分31,32を接面状に重合させ、少なくとも一箇所に固定具を打ち込むことにより、横部材3Bと縦部材3Aとの傾斜角度を調整することができる。即ちこれらの構成は、前記角度調整機構の一態様である。この態様では、扇の要になる位置を、第1の固定部36とし、該固定部を軸として回動でき、周囲に相当する位置を第2の固定部37a、37bとしたので、適宜に回動させて固定具を打ち込んで容易に角度調整することができる。
【0028】
この第1実施例における前記折板屋根は、水平方向に延在する躯体上にタイトフレームが固定され、該タイトフレームに保持部材が固定され、該保持部材に折板屋根板1が保持される嵌合式構造であって、隣り合う折板屋根板1,1は、ハゼ締め式で取り付けられている。
なお、前記折板屋根板1は、面板部11(谷部10B)の両側縁12,12を表面側に立ち上げた折板屋根を構築する部材であって、立ち上がり部12の高さの中程には保持部材に弾性的に係合されるく字状の係合部16a,16bが形成され、左右に隣り合う折板屋根板1,1の上端はハゼ締めにて接続されている。
このような折板屋根においては、山部10Aは立ち上がり部12,12から上方部分が相当し、谷部10Bは面板部11が相当し、雨水等は谷部10Bである面板部11を流れ方向に流下する。
【0029】
前記軒先納め材3のうち、軒先側に配置された軒先側の軒先納め材3の縦部材3Aに固定される樋受け材6は、図2(c)に示されるように軒樋5の側面部53から前記縦部材3Aへの固定部61と、軒樋5の建築物側の側面部53の下端531を受支する受支部62と、を備えている。この樋受け部材6は、軒樋5の建築物側の側面部53の下端531を支持する受支部62の他に、高さの中程に、側方へ垂れ下がる膨出部64を設けることで、下方が開放する溝状63が形成され、軒樋5の建築物側の側面部53の上端532を下方から差し込むように取り付けることができる。
【0030】
前記樋受け材6に支持される軒樋5は、図2(b)に示されるように前記樋受け材6に受支されて内部にU字状の雨水等の排水路が設けられる部材であって、内部に導かれた雨水等は排水路から底面部51を流下される。
この軒樋5は、長さ方向に延在して略平坦状の底面部51の側端が立ち上げられ、軒先側(図面では左側)に、三つの傾斜面と二つの略水平面とで構成される側面部52が設けられ、建築物側(図面では右側)には、略垂直状に起立する側面部53が設けられ、これらの底面部51及び側面部52,53にて排水路が形成されている。
前記軒先側の側面部52の上端に位置する傾斜面と略水平面は、カバー材7の係合部72に保持(係合)される軒先端521である。また、前記側面53の下端には、隅部状の被保持部531が設けられ、前記樋受け材6の横片状の受支部62に、上方から載置状に配置されて支持される部位である。さらに、この側面部53の上端には、差込状の被取付部532が、前記樋受け材6の溝状の取付部63に、下方から挿入状に差し込まれて取り付けられる部位である。なお、この軒樋5は、前記軒先納め材3(縦部材3A)にビス5bにて固定されるが、前記樋受け材6と共に配されてビス5cにても固定されている。
【0031】
前記軒樋5の開放上面にはカバー材7が配設されているが、このカバー材7は、図2(a)に示されるようにその下端(軒先端)72が前記軒樋5の軒先端521と係合され、その上端73が前記軒先納め材3(縦部材3A)に連絡されている。
このカバー材7は、前記軒樋5の内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積したり、鳥類等が巣作りすることを防止する部材であって、その表面(化粧面71)には雨水を内部へ導く導水口711として複数のスリット孔が形成され、その下端には略コ字状に形成された下端(係合部)72が、前記軒樋5の軒先端521と係合して取り付けられ、その上端付近に固定部73が形成され、該固定部73が、前記縦部材3Aに固定されている。
前記係合部72は、化粧面71の軒先端から斜め上方へ延在し、その先端を下方へ折曲し、更にその下端を内側へ折曲した略コ字状に形成され、化粧面71と係合部72との境界には下方へ凹む排水溝712が形成され、所定間隔で導水口が形成されている。
前記固定部73は、化粧面71の建築物側端付近に位置する部位であって、前記軒先納め材3(縦部材3A)にビス7bにて固定されている。
【0032】
前記軒先納め材3の縦部材3Aの下端に取り付けられる化粧材4は、下方から被覆する役割を果たす軒天井材であり、図2(g)に示されるように縦部材3Aの下端に取り付けられた金具4A,4B、流れ方向に連続する補強金具4Cを介して固定されており、この化粧材4の荷重等は、それぞれの縦部材3Aから前記支持部材2に負担(分担)される。
【0033】
なお、この第1実施例の軒先構造には、図2(f)に示される面材8が取り付けられ、該面材8が折板屋根の山部10Aの内部を軒先側から隠すと共に、軒先からの吹き上げ風の侵入を防ぐ役割も果たしている。この面材8は、前記軒先納め材3の縦部材3Aに固定される取付部材8Aの軒先側に固定されており、該取付部材8Aはて正面視が三角枠状に形成されている。
【0034】
この第1実施例の軒先構造を既設の折板屋根に固定するには、予め軒先納め材3を取り付けた支持部材2を、流れ方向に複数固定する。
続いて、取り付けた軒先納め材3の縦部材3Aが鉛直状になるように微調整して臨ませ(固定し)、それぞれの縦部材3Aに金具4A~4Cを固定すると共にそれらに化粧材4を取り付ける。
また、軒先側に配置された軒先納め材3の縦部材3Aに、樋受け部材6や軒樋5、及びカバー材7を取り付ければよい。その際、軒樋5及びカバー材7は、流れ方向に直交するように取り付けるが、所定間隔で取り付ける樋受け材6は、隣り合う縦部材3Aにそれぞれビス5b,5cにて固定して取り付ける。
【0035】
このように施工された第1実施例の軒先構造は、新築、既設を問わず各種の折板屋根に容易に適用され、安定に各種の軒樋5及び軒天井材等の化粧材4を取り付けることができる。
【0036】
さらに、この第1実施例では、軒先納め材3が、角度調整可能に取り付けられているので、任意の傾斜角度で安定に配設される、即ち任意の傾斜勾配の屋根構造に安定に軒樋5を取り付けることができる。
【0037】
また、この第1実施例では、軒樋5の軒先側の側面上端521が、この軒樋5の上面を覆うカバー材7の下端(係合部72)と係合され、該カバー材7の上端(固定部73)が縦部材3Aに連絡されているので、軒樋4の軒先端521を折板屋根側へ引っ張るように保持するため、このカバー材7は軒樋5の荷重を保持するアームの作用をも果たす。
【0038】
このように本発明の軒先構造では、軒天井材等の各種の化粧材4は、多数の軒先納め材3の縦部材3Aに支持され、各種の軒樋5は、軒先側に取り付けられた複数の縦部材3Aに架設状に取り付けられているため、それぞれ様々な仕様の化粧材4や軒樋5を適宜に用いることができる。
特に前記第1実施例では、カバー材7が軒樋5の荷重を保持するアームの作用を果たすので、例えば多量の降雪がカバー材7の上面に堆積したり、軒樋5の内部に多量の雨水が流れることがあっても、該荷重によって軒樋5が変形したり或いは下方へ傾倒したり落下することを防止できる。
【符号の説明】
【0039】
1 折板屋根板
10A 山部
10B 谷部
2 支持部材
21 下側凹状部
22 上側凸状部
3 軒先納め材
3A 縦部材
3B 横部材
4 化粧材
4A L字金具
4B 金具
4C 補強金具
5 軒樋
51 底面部
52 (軒先側の)側面部
521 軒先端
53 (建築物側の)側面部
531 被支持部
532 側面上端(被取付部)
6 樋受け材
62 支持部
63 取付部
7 カバー材
71 化粧面
711 導水口
712 排水溝
72 係合部
73 固定部
8 面材
8A 取付部材
図1
図2