IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマトプロテック株式会社の特許一覧

特許7515882避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法
<>
  • 特許-避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法 図1
  • 特許-避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法 図2
  • 特許-避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法 図3
  • 特許-避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法 図4
  • 特許-避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法 図5
  • 特許-避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法 図6
  • 特許-避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法
(51)【国際特許分類】
   A62B 5/00 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
A62B5/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021074833
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022169045
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000114905
【氏名又は名称】ヤマトプロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】三上 賢
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112013(JP,A)
【文献】特開2019-084081(JP,A)
【文献】特開2010-035733(JP,A)
【文献】特開平11-290470(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0027954(KR,A)
【文献】米国特許第05303799(US,A)
【文献】特開2000-079175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/00-99/00
E06C 1/00- 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体を有する避難装置において前記枠体の上蓋の下面に固定される固定片と、
前記固定片に対して所望の間隔で取り付けられ、ユーザの操作に供される操作片と、
前記枠体の外面に固定されて、前記枠体から遠ざかるように延びる係合部を有する係合片と、
を具備する避難装置用係止具。
【請求項2】
前記操作片が、
前記固定片との取付部位から下方に延びるとともに、前記固定片との間で開口部を形成する垂下部と、
前記垂下部の下端において屈曲し前記枠体から遠ざかる操作部と、を含み、
ユーザによる前記操作片の操作に応じて前記係合部が前記開口部に係合又は解除することにより、前記上蓋の前記枠体への開閉が可能となること、
を特徴とする請求項1に記載の避難装置用係止具。
【請求項3】
前記固定片と前記操作片とを前記所望の間隔だけ離間させるスペーサを更に具備すること、
を特徴とする請求項2に記載の避難装置用係止具。
【請求項4】
前記開口部の下縁が、前記係合部と係合するべく前記枠体側に隆起して係合凸部を形成すること、
を特徴とする請求項2又は3に記載の避難装置用係止具。
【請求項5】
前記開口部の横幅が、前記係合部の横幅よりも狭いこと、
を特徴とする請求項4に記載の避難装置用係止具。
【請求項6】
交換用上蓋と、請求項1~5のいずれかに記載の避難装置用係止具と、を含む避難装置用上蓋交換セット。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の避難装置用係止具を含む避難装置。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の避難装置用係止具と、交換用上蓋と、を準備し、
既設の避難装置から上蓋を取り外し、
前記既設の避難装置に前記交換用上蓋を取り付け、
前記交換用上蓋に前記固定片を固定し、
前記既設の避難装置の枠体に前記係合片を固定し、
前記固定片に前記所望の間隔で前記操作片を取り付ける、避難装置用上蓋の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1(特許第5062900号公報)は、上蓋の自由端側の辺に設けられる係止部材と、収納枠の周壁に設けられ、上蓋の閉鎖状態において、係止部材と係合可能な係合部材と、を具備する避難装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5062900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、避難装置の上蓋のみ交換が必要となることがある。このとき、新たな上蓋を取り付けようとすると、上蓋側の係止部材と枠側の係合部材の位置関係がずれて、上手く係合しなくなる場合がある。その場合、作業現場にて係止部材及び係合部材の取付位置を調整しなければならないが、例えば係止部材及び係合部材が上蓋及び枠に溶接されていると、この調整作業は現実的でない。
【0005】
そこで、本発明は、上蓋交換の際に上蓋の係止機構を簡便に位置決めすることができる避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく、本発明の第1の形態は、
枠体を有する避難装置において前記枠体の上蓋の下面に固定される固定片と、
前記固定片に対して所望の間隔で取り付けられ、ユーザの操作に供される操作片と、
前記枠体の外面に固定されて、前記枠体から遠ざかるように延びる係合部を有する係合片と、
を具備する避難装置用係止具
を提供する。
かかる避難装置用係止具では、前記操作片が、
前記固定片との取付部位から下方に延びるとともに、前記固定片との間で開口部を形成する垂下部と、
前記垂下部の下端において屈曲し前記枠体から遠ざかる操作部と、を含み、
ユーザによる前記操作片の操作に応じて前記係合部が前記開口部に係合又は解除することにより、前記上蓋の前記枠体への開閉(閉開)が可能となること(即ち、前記係合部が前記開口部に係合すると前記上蓋が前記枠体に係止し、ユーザによる前記操作片の操作に応じて前記係合部と前記開口部との係合が解除されると、前記上蓋を開くことが可能となること)、
が好ましい。
【0007】
本発明の避難装置用係止具は、前記固定片と前記操作片とを前記所望の間隔だけ離間させるスペーサを更に具備すること、が好ましい。
【0008】
また、本発明の避難装置用係止具では、前記開口部の下縁が、前記係合部と係合するべく前記枠体側に隆起して係合凸部を形成すること、が好ましい。
【0009】
また、本発明の避難装置用係止具では、前記開口部の横幅が、前記係合部の横幅よりも狭いこと、が好ましい。
【0010】
本発明の第2の形態は、交換用上蓋と、上記のいずれかに記載の避難装置用係止具と、を含む避難装置用上蓋交換セットを提供する。
【0011】
本発明の第3の形態は、上記のいずれかに記載の避難装置用係止具を含む避難装置を提供する。
【0012】
本発明の第4の形態は、
上記のいずれかに記載の避難装置用係止具と、交換用上蓋と、を準備し、
既設の避難装置から上蓋を取り外し、
前記既設の避難装置に前記交換用上蓋を取り付け、
前記交換用上蓋に前記固定片を固定し、
前記既設の避難装置の枠体に前記係合片を固定し、
前記固定片に前記所望の間隔で前記操作片を取り付ける、避難装置用上蓋の交換方法
を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上蓋交換の際に上蓋の係止機構を簡便に位置決めすることができる。また、想定される最大風速等の設置環境に応じて上蓋の開放強度を簡易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る避難装置1の概略を示す断面図である。
図2】上蓋3の概略を示す正面図、下面図及び側面図である。
図3】避難装置用係止具10の概略を示す斜視図である。
図4】避難装置用係止具10の分解斜視図である。
図5】固定片20及び操作片30の連結手順を示す側面図である。
図6】固定片20、操作片30及びスペーサWの連結手順を示す側面図である。
図7】避難装置1の上蓋3を開く手順を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る避難装置用係止具、避難装置用上蓋交換セット、避難装置、及び避難装置用上蓋の交換方法の代表的な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明はこれら図面に限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0016】
本実施形態に係る避難装置1は、高層建築物のベランダ等に埋め込まれ、火災発生の際に使用される。図1に示すように、避難装置1は、上方及び下方に開口する枠体2、枠体2の上側の開口を覆う上蓋、枠体2の下側の開口を覆う下蓋4、並びに、枠体2に収納される梯子5を含む。なお、各部材は、従来公知の避難装置と同様に、各種金属で構成されている。固定片20と操作片30は、ユーザ操作に応じて弾性変形するべく(図7(A)~(C)参照)、例えばステンレスバネ鋼で作製されることが好ましい。
【0017】
また、本実施形態に係る避難装置用係止具10は、交換用上蓋3とともに避難装置用上蓋交換セットを構成し(図2参照)、あるいは、枠体2、上蓋3、下蓋4及び梯子5とともに避難装置1を構成することができる(図1参照)。かかる避難装置用係止具10は、例えば図3に示すように、固定片20、操作片30及び係合片40を具備する。
【0018】
固定片20は、ネジや溶接などで上蓋3の下面3Aに固定される略矩形の金属板である(図2(A)~(C)参照)。図4に示すように、固定片20の辺21の両端から、下方に向けて連結部22,23が延びている。連結部22,23は、固定片20に対して略直角に屈曲している(図5(A)、図6(A)参照)が、直角よりもやや大きく屈曲していることが好ましく、とりわけ90°~100°に屈曲していることが好ましい。連結部22,23にはネジ孔22A,23Aが形成されている。
【0019】
操作片30は、ユーザにより操作される金属片であり、固定片20とは別パーツである。操作片30は、ネジなどの固定手段Sを介して固定片20に取り付けられるとともに(図4参照)、枠体2の外側に露出する(図1参照)。
【0020】
より具体的には、操作片30は、枠体2の外面に対向しつつ固定片20から下方に延びる垂下部31、及び、垂下部31の下端から延びて枠体2から遠ざかる操作部32を含む(図7(A)参照)。操作部32の先端は、ユーザによる操作のために上蓋3から露出する(図7(A),(B)参照)。
【0021】
図3及び図4に示すように、垂下部31は、略C字状をなす板部材であり、両端部34,35において固定片20の連結部22,23と連結される。連結にはネジなどの固定手段Sが用いられる。連結の際、固定片20の連結部22,23と操作片30の垂下部31(端部34,35)との間に、ワッシャなどのスペーサWを介在させてもよい。スペーサWの個数により、固定片20と操作片30との間を所望の距離だけ広げたり狭めたりすることができる。
【0022】
垂下部31は、固定片20と連結されることで、開口部33を形成する。開口部33を形成する縁部のうち下縁部は、係合片40と係合する部位であり(図7(A)参照)、枠体2側に突出ないし隆起して係合凸部36を構成している(図3参照)。なお、この係合凸部36は、垂下部31の一部において枠体2の外から内の方向に向かって凹むように、板金成型することにより一体的に形成され、係合凹部ともいえる。別部材を取り付けることにより係合凸部36を構成することも可能である。
【0023】
操作部32は、段差37を有する。したがって、操作部32の先端は、垂下部31の下端よりも上方に位置する。これにより、上蓋3を開く際に操作片30を操作しやすい。
【0024】
上記のとおり固定片20及び操作片30が上蓋3に取り付けられるのに対して、係合片40は枠体2に取り付けられる。すなわち、係合片40は、ネジや溶接などの固定手段を介して枠体2の外面に固定される金属板である(図7(A)参照)。
【0025】
係合片40は、略矩形をなし、その上縁から枠体2の外側に向けて突出する、つまり略L字状に屈曲する、係合部41を有する。この係合部41はその下面において垂下部31の係合凸部36と接触し、その結果、上蓋3が枠体2に係止されることとなる(図7(A)参照)。
【0026】
本実施形態において、係合部41の横幅は、係合凸部36の横幅よりも長い。したがって、係合部41が最も深く係合凸部36と係合したとき、係合部41の先端は、垂下部31(端部34,35)に接触し、開口部33を通過することはない。すなわち、係合部41と係合凸部36の係合深さは、係合凸部36の奥行までに制限される。
【0027】
次いで、避難装置用係止具10を含む避難装置用上蓋交換セットを用いて、避難装置1の上蓋3を交換する手順を説明する。
【0028】
まず、避難装置用係止具10及び上蓋3(手順の説明の便宜上、交換用上蓋3という。)を準備のうえ、既設の避難装置から上蓋を取り外す。そして、既存の避難装置に交換用上蓋3を取り付ける。なお、予め交換用上蓋3に固定片20を仮留め又は固定しておいてもよい。
【0029】
次いで、交換用上蓋3に固定片20を取り付け、併せて、避難装置の枠体2に係合片40を暫定的に取り付ける。そして、固定片20に操作片30を仮留めし、操作片30と係合片40との係合具合を確認しつつ、スペーサWによる調整を行う。なお、スペーサWは必ずしも必要ではなく、また、1つ又は複数のスペーサWを利用可能である。
【0030】
例えば、操作片30の暫定的な取付位置において、操作片30が係合片40に近付き過ぎていて係合し得ない場合には、スペーサWを介在させることで操作片30の位置を調整し(枠体2の外側にずらし)、操作片30と係合片40とを係合可能にすることができる(図6(A),(B)参照)。
【0031】
また、操作片30の暫定的な取付位置において、操作片30が係合片40と強く(深く)係合する場合には(図5(B)参照)、スペーサWを介在させることで、操作片30と係合片40との係合度合を弱めることができる(図6(A),(B)参照)。
【0032】
ちなみに、操作片30の暫定的な取付位置が枠体2の外側に寄り過ぎていて、操作片30と係合片40とが係合しない場合には(図5(B)参照)、固定片20の固定位置を調整する必要がある。
【0033】
このような手順で上蓋を交換された避難装置1では、風圧等によって意図せず上蓋3が持ち上げられると、操作片30の係合凸部36が係合片40の係合部41の下面に接触する。これにより、上蓋3の更に上への移動が規制され、上蓋3の開きを抑制することができる(図7(A))。
【0034】
そして、ユーザによって操作片30の操作部32が持ち上げられると、操作片30が垂下部31の上縁(固定片20の辺21)を中心に回動し、操作片30(係合凸部36)と係合片40(係合部41)との係合が解除される(図7(B))。このとき、操作片30と係合片40との係合が深いと、係合の解除のために必要な操作片30の回動量が大きくなり、より大きな力での操作が必要となる。逆に、操作片30と係合片40との係合が浅いと、係合の解除のために必要な操作片30の回動量が小さくて済み、より小さな力での操作で足りる。
【0035】
操作片30と係合片40との係合が解除された状態で、操作片30及び上蓋3が持ち上げられると、上蓋3が開く(図7(C))。ただし、上蓋3にチャイルドロック機構が搭載されている場合には、更にチャイルドロックの解除を要する。
【0036】
したがって、係合片40と操作片30とがより深く係合していると、上蓋3はより強い風速に耐えることができる一方、係合の解除のためにユーザはより強い力を必要とする。逆に、係合片40と操作片30とがより浅く係合していると、上蓋3の耐えられる風速は低下するものの、係合の解除のために必要な力は小さくて済む。
【0037】
このように、本実施形態では、上蓋3の係止機構として、上蓋3側に固定片20及び操作片30の2パーツ、及び、枠体2側に係合片40の1パーツ、の合計3パーツを含み、固定片20及び操作片30をボルト等の固定手段で固定している。従来、上蓋3のみの交換の際、上蓋側に固定された係止部材と枠側に固定された係合部材とがずれて上手く係合しない場合があるのに対して、本実施形態では、固定片20と操作片30との間にワッシャ等のスペーサWを挟み込むことで、作業現場での位置関係の調整が容易に可能となる。
【0038】
また、ワッシャの枚数を増減させることで、係合片40と操作片30との係合強さを調整することが可能である。この点、発明者らの実験結果によれば、中程度の係合強さでは、上蓋は風速30m/s程度の風速に10分程度耐えることができるのに対して、係合をより強く(深く)すると、上蓋は風速50m/sもの風速に耐えることができる。
【0039】
なお、避難装置用係止具10が避難装置1の構成部品として提供されることも想定される。この場合、上蓋3側の係止具と枠体2側の係合具との位置関係がずれて上手く係合しないことは想定されないが、例えば高層階に設置される避難装置1に対しては、想定される強い風速に充分に耐えられるように、操作片30と係合片40との係合を通常よりも強く設定することができる。
【0040】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それらも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 避難装置
2 枠体
3 上蓋
10 避難装置用係止具
20 固定片
30 操作片
31 垂下部
32 操作部
33 開口部
40 係合片
41 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7