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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】液体含浸表面を有する装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240708BHJP
   B05D 1/18 20060101ALI20240708BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240708BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61M25/00 610
A61M25/00 500
B05D1/18
B32B7/022
B32B1/08 A
B32B1/08 B
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021092358
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2020138084の分割
【原出願日】2013-05-24
(65)【公開番号】P2021126657
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】61/651,541
(32)【優先日】2012-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/651,542
(32)【優先日】2012-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/651,543
(32)【優先日】2012-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ. デイビッド スミス
(72)【発明者】
【氏名】ラジーブ ディーマン
(72)【発明者】
【氏名】アダム ティー. パクソン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジェイ. ラブ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン アール. ソロモン
(72)【発明者】
【氏名】クリパ ケイ. バラナシ
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-526132(JP,A)
【文献】特開2007-215620(JP,A)
【文献】特表2011-500150(JP,A)
【文献】国際公開第2010/028752(WO,A1)
【文献】特表2004-522518(JP,A)
【文献】特表平11-504281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B32B 1/00-43/00
A61M25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、前記カテーテルは、外面と内面とを有し
前記外面は、含浸液体と、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に前記含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた固体フィーチャとを含み、
前記含浸液体は、前記固体フィーチャの間の空間を満たし、
前記外面は、前記固体フィーチャの間に前記含浸液体を安定に含有し、
前記含浸液体は、前記外面の配向とは無関係に、かつ前記カテーテルを通り、入り、または出て行く流体の流動、通過、または除去とは無関係に、前記複数の固体フィーチャの間の位置に実質的に保持されており、
前記外面は、前記含浸液体によって部分的に浸漬され、
前記外面は、血液に対して非浸潤性である、カテーテル。
【請求項2】
前記固体フィーチャは、1ミクロンから50ミクロンの範囲の平均寸法を有する粒子を含み、かつ/または
前記粒子は、隣接する粒子の間または粒子群の間に、1ミクロンから30ミクロンの平均間隔で配置されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記含浸液体は、前記含浸液体の蒸発を防止しまたは低減させる添加剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記外面は、血液中の細胞および/またはその他の生物学的構造に対する損傷を防止するために、剪断力の低減をもたらすように構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記含浸液体は、
a)薬物を含み、かつ/または
b)硬化性であり、硬化によって固体に変換することができる、請求項1~のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記薬物は、防腐性および/または抗菌性であるか、あるいは、生物活性成分である、請求項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記硬化は熱への曝露である、請求項に記載のカテーテル。
【請求項8】
ow(a)<0(式中、Sow(a)は、γwa-γwo-γoaと定義される拡張係数であり、ここで、γは、下付き文字w、a、およびoにより指定される2相間の界面張力であり、wは水であり、aは空気であり、oは前記含浸液体である)である、請求項1~のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記カテーテルは、血液と接触する表面の血栓症の予防をする、請求項1~のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記カテーテルは、汚れ止めおよび/または自己清浄表面を提供する、請求項1~のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項11】
0.01<φ≦0.25(式中、φは平衡時の非浸漬固体に対応する前記液体含浸表面の投影表面積の代表的分率である)である、請求項1~1のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記外面カテーテルは肉に対する潤滑性が高い、請求項1~1のいずれか一項に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2012年5月24日に出願された米国仮特許出願第61/651,543号、2012年5月24日に出願された米国仮特許出願第61/651,542号、および2012年5月24日に出願された米国仮特許出願第61/651,541号への優先権、およびその利益を主張し、本明細書中に参考として援用する。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に、液体含浸表面に関する。より詳細には、ある実施形態において本発明は、液体含浸表面を有するデバイスおよび器具に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
過去10年間で、マイクロ/ナノ設計製作された面が出現したことにより、熱流体科学における広く様々な物理現象を高めるための新しい技法が開発された。例えば、マイクロ/ナノ面のテクスチャの使用は、低い粘性抵抗、氷およびその他の材料に対する低い接着性、自己清浄、および撥水性を実現することが可能な、非浸潤面をもたらした。これらの改善は、一般に、固体面と隣接する液体との間の接触が低減した(即ち、浸潤性が低い)ことから生じる。
液体含浸表面は、参照によりその文章の全体が本明細書に組み込まれる、Smithらによる「Liquid-Impregnated Surfaces, Methods of Making, and Devices Incorporating the Same」という名称の、米国特許出願公開第2013/0032316号として公開された米国特許出願第13/302,356号;Smithらによる「Self-Lubricating Surfaces for Food Packaging and Food Processing Equipment」という名称の米国特許出願第13/517,552号;およびSmithらによる「Apparatus and Methods Employing Liquid-Impregnated Surfaces」という名称の、2013年5月24日に出願された米国仮特許出願第61/827,444号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2013/0032316号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンジット内を通り、入り、または出て行く材料の、流動、通過、または除去に対する抵抗が低いコンジット(例えば、チューブ、パイプ、チャネル、ベッセルなど)と;高い快適性、低減した核生成、ならびにタンパク質の蓄積および汚染に対する抵抗性の改善のために、眼の組織および/または眼の流体に対する潤滑性が高いコンタクトレンズと;肉(または生物流体)に対する高い潤滑性を有しかつ/またはデバイス/器具の表面での核生成が阻止される、デバイスおよび器具とが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明の一態様において、いくつかの実現例では、流体および/または固形物を搬送するためのコンジットであって、高滑り境界条件(high-slip boundary condition)をもたらす内面を有し、それによって内部を通過する材料の流動を容易にする、コンジットが提供される。
【0007】
一態様では、本発明は、流体および/または固形物を搬送するためのコンジットであって、含浸液体と、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャ(solid feature)であってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた固体フィーチャとを含む内面を有する、コンジットを提供する。いくつかの実現例では、含浸液体は、固体フィーチャの間の空間を満たす。内面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有していてもよい。含浸液体は、内面の配向とは無関係に、かつコンジット内を通り、入り、または出て行く流体および/または固形物の流動、通過、または除去とは無関係に、複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持されていてもよい。内面は、内面に高滑り境界条件をもたらすように構成されていてもよく、それによって、コンジット内を通り、入り、または出て行く流体および/または固形物の流動、通過、または除去が容易になる。
【0008】
いくつかの実現例では、コンジットは、チューブ、パイプ、またはチャネルである。いくつかの実現例では、コンジットはノズルである。いくつかの実現例では、コンジットは金型(例えば、射出成型装置の部分)であり、または押出し機の部分である。いくつかの実現例では、コンジットはキャニスターまたはベッセルである。
【0009】
いくつかの実現例では、コンジットは、液体含浸表面から失われた含浸液体を補充するための液体を含有するリザーバを含む。いくつかの実現例では、デバイスは、コンジットと、液体含浸表面から失われた含浸液体を補充するための液体を含有するリザーバとを含む。
【0010】
いくつかの実現例では、含浸液体は、オレイン酸エチル、エステル、脂肪酸、脂肪酸誘導体、植物油(例えば、オリーブ油、ライトオリーブ油、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、亜麻仁油(linseed oil)、ブドウ種子油、亜麻仁油(flaxseed oil)、キャノーラ油、落花生油、紅花油、ヒマワリ油)、イソチオシアン酸フェニル(フェニルカラシ油)、テルペン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o-ブロモトルエン、α-クロロナフタレン、α-ブロモナフタレン、四臭化アセチレン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIm)、トリブロモヒドリン(1,2,3-トリブロモプロパン)、二臭化エチレン、二硫化炭素、ブロモホルム、ヨウ化メチレン(ジヨードメタン)、スタノラックス(stanolax)、Squibbの流動パラフィン、p-ブロモトルエン、モノブロモベンゼン、パークロロエチレン、二硫化炭素、フェニルカラシ油、モノヨードベンゼン、α-モノクロロ-ナフタレン、四臭化アセチレン、アニリン、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、n-ヘプチルアルコール、クレゾール、オレイン酸、リノール酸、フタル酸アミル、シリコーン油、パーフルオロカーボン液体、パーフルオロフッ素化真空油(vacuum oil)(Krytox 1506またはFromblin 06/6など)、フッ素化冷却剤(例えば、3M製の、FC-70として販売されるパーフルオロ-トリペンチルアミン)、イオン性液体、水と不混和性のフッ素化イオン性液体、PDMSを含むシリコーン油、フッ素化シリコーン油、液体金属、電気レオロジー(eletro-rheological)流体、磁気レオロジー(magneto-rheological)流体、フェロ流体、誘電性液体、炭化水素液体、フルオロカーボン液体、冷却剤、真空油、相変化材料、半液体、グリース、滑液、および体液からなる群から選択された少なくとも1種の要素を含む。
【0011】
いくつかの実現例では、固体フィーチャは、蝋、カルナウバ蝋、蜜蝋、カンデリラ蝋、ゼイン(トウモロコシ由来)、デキストリン、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、不溶性繊維、精製された木質セルロース、微結晶質セルロース、カオリナイト(粘土鉱物)、木蝋(Japan wax)、パルプ(例えば、植物の茎のスポンジ状部分)、酸化第二鉄、酸化鉄、ギ酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、シリカ、ガラス、金属、ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、フルオロユーラタン(fluoroeurathane)、フルオロシリコーン、フルオロシラン、変性カーボネート(modified carbonate)、クロロシラン、シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS))、セラミック固体、フッ素化固体、金属間固体、複合固体、PDMS、環状オレフィンポリマー、ポリプロピレン、PVC、PET、HDPE、ポリイミド、PMMA、ガラス、Perspex、Plexiglass、Polymacon、炭化水素(例えば、アルカン、フルオロポリマー、テフロン(登録商標)、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シラン(TCS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシルトリクロロシラン、フルオロPOSS)、セラミック(例えば、炭化チタン、窒化チタン、窒化クロム、窒化ホウ素、炭化クロム、炭化モリブデン、炭窒化チタン、無電解ニッケル、窒化ジルコニウム、フッ素化二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化タンタル、窒化タンタル、ダイヤモンド状炭素、フッ素化ダイヤモンド状炭素)、金属間化合物(例えば、ニッケルアルミナイドおよびチタンアルミナイド)、および複合体からなる群から選択された1つまたは複数の要素を含む。
【0012】
いくつかの実現例では、固体フィーチャは、1ミクロンから50ミクロン(例えば、5ミクロンから50ミクロン)の範囲の平均寸法を有する粒子を含む。いくつかの実現例では、粒子は、隣接する粒子の間または粒子群の間に、約1ミクロンから約30ミクロン(例えば、10ミクロンから30ミクロン)の平均間隔で配置される。いくつかの実現例では、粒子は噴霧配置(spray-deposit)される。
【0013】
いくつかの実現例では、固体フィーチャは、粒子、非晶質粒子、実質的に球状の粒子、ポスト、ナノニードル、マイクロニードル、ナノグラス、マイクログラス、細孔、キャビティ、ウェル、相互接続された細孔、相互接続されたキャビティ、溝、および畝からなる群から選択された少なくとも1つの要素を含みまたは画定する。
【0014】
いくつかの実現例では、含浸液体は、含浸液体の蒸発を防止しまたは低減させる添加剤を含む。
【0015】
本発明の別の態様において、いくつかの実現例では、装置が動作中である場合に2つの部品が互いに接触するように構成され、これら2つの部品の一方またはそれぞれは、含浸液体と、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを有する表面とを含む。いくつかの実現例では、表面のそれぞれに関し、含浸液体が固体フィーチャの間の空間を満たし、表面のそれぞれに関し、その表面が固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有する。いくつかの実現例では、前記表面のそれぞれに関し、含浸液体が、表面の配向とは無関係にかつ表面と表面の間に生じた接触とは無関係に、複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される(例えば、装置が、表面に垂直な接着性を引き起こすように構成される場合;例えば、装置が、低い静摩擦係数を有するように構成される場合;または例えば、装置が、表面に垂直な接着性を引き起こしかつ低い静摩擦係数を有するように構成される場合)。いくつかの実現例では、装置は、軸受、トラック、またはヒンジである。
【0016】
本発明の別の態様において、いくつかの実現例では、開示された技術が、空気またはその他の気体から固体粒子を捕獲するための装置と共に使用される。装置は、含浸液体と、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを含んだ表面を含む。含浸液体は、固体フィーチャの間の空間を満たし、表面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有する。いくつかの実現例では、含浸液体は、表面の配向とは無関係に、前記複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される。
【0017】
いくつかの実現例では、装置は空気フィルターである。
【0018】
含浸液体は、高粘度(例えば、100cP超または1000cP超)を有していてもよい。
【0019】
本発明の別の態様において、いくつかの実現例では、開示した技術を、硬化性含浸液体と、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを有する表面を含む装置と共に使用し、この含浸液体は前記固体フィーチャの間の空間を満たし、表面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有するものである。いくつかの実現例では、含浸液体は、表面の配向とは無関係に、複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持され、含浸液体は、硬化(例えば、熱への曝露)によって固体に変換することができる。
【0020】
本発明の別の態様において、いくつかの実現例では、開示される技術は、抗力が低減するように構成された表面を含む装置(例えば、航空機、ボート、魚雷など)と共に使用され、この表面は、含浸液体と、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを含む。いくつかの実現例では、含浸液体が固体フィーチャの間の空間を満たし、この表面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有するものである。いくつかの実現例では、含浸液体は、表面の配向とは無関係に、複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される。
【0021】
本発明の一態様において、いくつかの実現例では、肉(または生物流体)に対する潤滑性を高めかつ/またはデバイス/器具の表面上の核生成を阻止するために、液体含浸表面を有する医療用のデバイスおよび器具が提供される。
【0022】
一態様では、本発明は、肉(または生物流体)に対する潤滑性が高くかつ/またはその表面上での核生成を阻止する、医療用デバイスまたは医療用器具を提供し、このデバイスまたは器具は、含浸液体と、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを含んだ表面を含む。ある実施形態では、含浸液体が前記固体フィーチャの間の空間を満たし、表面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有する。ある実施形態では、含浸液体は表面の配向とは無関係に、固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される。
【0023】
ある実施形態では、固体フィーチャは、1ミクロンから50ミクロン(例えば、5ミクロンから50ミクロン)の範囲の平均寸法を有する粒子を含む。粒子は、隣接する粒子の間または粒子群の間に約1ミクロンから約30ミクロン(例えば、10ミクロンから30ミクロン)の平均間隔で配置されていてもよい。粒子は、噴霧配置されてもよい。
【0024】
ある実施形態では、含浸液体は、オレイン酸エチル、エステル、脂肪酸、脂肪酸誘導体、植物油(例えば、オリーブ油、ライトオリーブ油、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、亜麻仁油(linseed oil)、ブドウ種子油、亜麻仁油(flaxseed oil)、キャノーラ油、落花生油、紅花油、ヒマワリ油)、テルペン、イソチオシアン酸フェニル(フェニルカラシ油)、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o-ブロモトルエン、α-クロロナフタレン、α-ブロモナフタレン、四臭化アセチレン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIm)、トリブロモヒドリン(1,2,3-トリブロモプロパン)、二臭化エチレン、二硫化炭素、ブロモホルム、ヨウ化メチレン(ジヨードメタン)、スタノラックス、Squibbの流動パラフィン、p-ブロモトルエン、モノブロモベンゼン、パークロロエチレン、二硫化炭素、フェニルカラシ油、モノヨードベンゼン、α-モノクロロ-ナフタレン、四臭化アセチレン、アニリン、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、n-ヘプチルアルコール、クレゾール、オレイン酸、リノール酸、およびフタル酸アミルからなる群から選択された少なくとも1つの要素を含む。
【0025】
ある実施形態では、固体フィーチャは、蝋、カルナウバ蝋、蜜蝋、カンデリラ蝋、ゼイン(トウモロコシ由来)、デキストリン、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、不溶性繊維、精製された木質セルロース、微結晶質セルロース、カオリナイト(粘土鉱物)、木蝋、パルプ(例えば、植物の茎のスポンジ状部分)、酸化第二鉄、酸化鉄、ギ酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、金属、ポリマー、セラミック固体、フッ素化固体、金属間固体、複合固体、PDMS、環状オレフィンポリマー、ポリプロピレン、PVC、PET、HDPE、ポリイミド、PMMA、ガラス、Perspex、Plexiglass、Polymaconからなる群から選択された1つまたは複数の要素を含む。
【0026】
含浸液体は、含浸液体の蒸発を防止しまたは低減させる、添加剤を含んでいてもよい。医療用デバイスまたは医療用器具は、固定具、義歯、保定器、歯列矯正具(orthodonture)、ブリッジ、インプラント、歯型、プロテーゼ、人工臓器、人工動脈、ステント、注射器、内層(例えば、プラーク形成を防止するための動脈壁の内層)、IVチューブ、IVバッグ、結腸ろうバッグ、手術器具、包帯、および血液ポンプからなる群から選択された要素であってもよい。
【0027】
医療用デバイスまたは医療用器具は、血液ポンプまたはその部分であってもよい。面は、ポンプによってまたはポンプ内を送液される血液またはその他の生物流体中の細胞および/またはその他の生物学的構造に対する損傷を防止するために、剪断力の低減をもたらすように構成されていてもよい。医療用デバイスまたは医療用器具は、丸剤、カプセル剤(例えば、シングルピースまたはツーピース)、錠剤、ゲルキャップ(gelcap)、および坐剤からなる群から選択された要素であってもよい。
【0028】
医療用デバイスまたは医療用器具は、マイクロピペット、生体材料の小体積容器、ヒト血清容器、ピペット、ピペットチップ、マイクロ流体デバイス、透析機、チューブ、内視鏡、挿管デバイス、注射器、ステント、カテーテル、および気管切開チューブからなる群から選択された要素であってもよい。
【0029】
医療用デバイスまたは医療用器具は、手袋、包帯、接着ストリップ(adhesive strip)、薬物放出パッチ、およびコンドームからなる群から選択された要素であってもよい。含浸液体は、防腐性および/または抗菌性であってもよい。含浸液体は、硬化性であってもよく、硬化(例えば、熱への曝露)によって固体に変換することができる。
【0030】
本発明の一態様において、いくつかの実現例では、眼の組織および/または眼の流体に対する潤滑性を高め、快適性を増大させ、核生成を低減させ、タンパク質の蓄積および汚染に対する抵抗性を改善するための、液体含浸表面を有するコンタクトレンズが提供される。
【0031】
一態様では、本発明は、眼の組織/流体に対する潤滑性が高くかつ/またはその表面での核生成が阻止されたコンタクトレンズであって、マイクロスケールおよび/またはナノスケール固体(例えば、ゲル)フィーチャの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャのマトリックスを形成するようにテクスチャが付けられた表面を含む、コンタクトレンズを提供する。含浸液体は、固体フィーチャの間の空間を満たす。表面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有していてもよい。含浸液体は、表面の配向とは無関係に、かつコンタクトレンズの通常の装着、挿入、および取外しの最中に眼の組織に接触するにも関わらず、固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持されていてもよい。
【0032】
いくつかの実現例では、フィーチャは細孔またはキャビティを画定し、含浸液体は細孔またはキャビティを満たす。マトリックスは、約1マイクロメートルから約100マイクロメートルの、フィーチャ同士の間隔を有していてもよい。マトリックスは、約5ナノメートルから約1マイクロメートルの、フィーチャ同士の間隔を有する。表面は、固体フィーチャの前記マトリックスを形成するようにレーザーエッチングされる。含浸液体は、眼の流体に対して実質的に不混和性(例えば、食塩液に対して実質的に不混和性)である。
【0033】
固体フィーチャおよび/またはレンズそのものの材料は、ポリマー、ヒドロゲル、ポリイミド、ポリマコン(polymacon)、シリコーンヒドロゲル、ポリメチルメタクリレート(PMMAまたはPerspex/Plexiglas)、およびガラスからなる群から選択された1つまたは複数の要素を含んでいてもよい。
【0034】
固体フィーチャは、蝋、カルナウバ蝋、蜜蝋、カンデリラ蝋、ゼイン(トウモロコシ由来)、デキストリン、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、不溶性繊維、精製された木質セルロース、微結晶質セルロース、カオリナイト(粘土鉱物)、木蝋、パルプ(例えば、植物の茎のスポンジ状部分)、酸化第二鉄、酸化鉄、ギ酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、シリカ、金属、ポリマー、セラミック固体、フッ素化固体、金属間固体、および複合固体、PDMS、環状オレフィンポリマー、ポリプロピレン、PVC、PET、およびHDPEからなる群から選択された1つまたは複数の要素を含んでいてもよい。
【0035】
含浸液体は、オレイン酸エチル、エステル、脂肪酸、脂肪酸誘導体、テルペン、油、テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)、イソチオシアン酸フェニル、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o-ブロモトルエン、α-クロロナフタレン、α-ブロモナフタレン、四臭化アセチレン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIm)、トリブロモヒドリン(1,2,3-トリブロモプロパン)、二臭化エチレン、二硫化炭素、ブロモホルム、ヨウ化メチレン(ジヨードメタン)、スタノラックス、流動パラフィン、p-ブロモトルエン、モノブロモベンゼン、パークロロエチレン、二硫化炭素、フェニルカラシ油、モノヨードベンゼン、α-モノクロロ-ナフタレン、四臭化アセチレン、アニリン、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、n-ヘプチルアルコール、クレゾール、オレイン酸、リノール酸、およびフタル酸アミルからなる群から選択された少なくとも1つの要素を含んでいてもよい。
【0036】
いくつかの実現例では、含浸液体は、眼の表面に送達するための薬剤を含む。
【0037】
いくつかの実現例では、含浸液体は着色されている(例えば、カラーコンタクトレンズ用)。
【0038】
いくつかの実現例では、含浸液体は、平衡状態または実質的な平衡状態にありながら、面の固体フィーチャの最上部の上方に拡がる液体層を形成する。
【0039】
いくつかの実現例では、液体層は、固体フィーチャの最上部の上方に少なくとも約5nm拡がる。
【0040】
いくつかの実現例では、含浸液体は、薬物(例えば、防腐剤および/または抗菌剤)または生物活性成分(薬物、ビタミン、ミネラル、タンパク質を含むがこれらに限定するものではない。)を含む。
【0041】
いくつかの実現例では、下記の事項(i) 0<φ≦0.25(式中、φは、平衡時の非浸漬固体に対応する液体含浸表面の投影表面積の代表的分率である。)、および(ii) Sow(a)<0(式中、Sow(a)は、γwa-γwo-γoaと定義される拡張係数であり、ここで、γは、下付き文字w、a、およびoにより指定される2相間の界面張力であり、wは水であり、aは空気であり、oは含浸液体である。)の一方または両方を保持する。
【0042】
いくつかの実現例では、下記の事項(i) 0<φ≦0.25(式中、φは、平衡時の非浸漬固体に対応する液体含浸表面の投影表面積の代表的分率である。)、および(ii) Sow(a)<0(式中、Sow(a)は、γwa-γwo-γoaと定義される拡張係数であり、ここで、γは、下付き文字w、a、およびoにより指定される2相間の界面張力であり、wは水であり、aは空気であり、oは含浸液体である。)の一方または両方を保持する。いくつかの実現例では、0<φ≦0.25である。いくつかの実現例では、0<φ≦0.10である。いくつかの実現例では、0.01<φ≦0.25である。いくつかの実現例では、0.01<φ≦0.10である。いくつかの実現例では、Sow(a)<0である。
【0043】
いくつかの実現例では、下記の事項(i) θos(w),receding=0と、(ii) θos(a),receding=0およびθos(w),receding=0とであって、式中、θos(w),recedingは、水(下付き文字「w」)の存在下での表面(下付き文字「s」)上の含浸液体(例えば油、下付き文字「o」)の後退接触角であり、θos(a),recedingは、空気(下付き文字「a」)の存在下での表面(下付き文字「s」)上の含浸液体(例えば油、下付き文字「o」)の後退接触角である、上記事項の一方または両方を保持する。
本発明の目的および特徴は、以下に記述される図面および特許請求の範囲を参照することによって、より良く理解することができる。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
流体および/または固形物を搬送するためのコンジットであって、前記コンジットは、
含浸液体と、
複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであって、それらの間に前記含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた、固体
フィーチャと
を含む内面を有し、
前記含浸液体は、前記固体フィーチャの間の空間を満たし、
前記内面は、前記固体フィーチャの間に前記含浸液体を安定して含有し、
前記含浸液体は、前記内面の配向とは無関係に、かつ前記コンジット内を通り、入り、または出て行く流体および/または固形物の流動、通過、または除去とは無関係に、前記複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持され、
前記内面は、前記内面に高滑り境界条件をもたらすように構成され、それによって前記コンジット内を通り、入り、または出て行く流体および/または固形物の流動、通過、または除去が容易になる、コンジット。
(項目2)
チューブ、パイプ、またはチャネルである、項目1に記載のコンジット。
(項目3)
ノズルである、項目1に記載のコンジット。
(項目4)
金型(例えば、射出成型装置の部分)でありまたは押出し機の部分である、項目1に記載のコンジット。
(項目5)
キャニスターまたはベッセルである、項目1に記載のコンジット。
(項目6)
液体含浸表面から失われた含浸液体を補充するための、液体を含有するリザーバを含む、項目1から5のいずれか一項に記載のコンジット。
(項目7)
項目1から5のいずれか一項に記載のコンジットと、液体含浸表面から失われた含浸液体を補充するための液体を含有するリザーバとを含む装置。
(項目8)
前記含浸液体が、オレイン酸エチル、エステル、脂肪酸、脂肪酸誘導体、植物油(例えば、オリーブ油、ライトオリーブ油、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、亜麻仁油(linseed oil)、ブドウ種子油、亜麻仁油(flaxseed oil)、キャノーラ油、落花生油、紅花油、ヒマワリ油)、イソチオシアン酸フェニル(フェニルカラシ油)、テルペン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o-ブロモトルエン、α-クロロナフタレン、α-ブロモナフタレン、四臭化アセチレン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIm)、トリブロモヒドリン(1,2,3-トリブロモプロパン)、二臭化エチレン、二硫化炭素、ブロモホルム、ヨウ化メチレン(ジヨードメタン)、スタノラックス、Squibbの流動パラフィン、p-ブロモトルエン、モノブロモベンゼン、パークロロエチレン、二硫化炭素、フェニルカラシ油、モノヨードベンゼン、α-モノクロロ-ナフタレン、四臭化アセチレン、アニリン、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、n-ヘプチルアルコール、クレゾール、オレイン酸、リノール酸、フタル酸アミル、シリコーン油、パーフルオロカーボン液体、パーフルオロフッ素化真空油(Krytox 1506またはFromblin 06/6など)、フッ素化冷却剤(例えば、3M製の、FC-70として販売されるパーフルオロ-トリペンチルアミン)、イオン性液体、水に対して不混和性のフッ素化イオン性液体、PDMSを含むシリコーン油、フッ素化シリコーン油、液体金属、電気レオロジー流体、磁気レオロジー流体、フェロ流体、誘電性液体、炭化水素液体、フルオロカーボン液体、冷却剤、真空油、相変化材料、半液体、グリース、滑液、および体液からなる群から選択された少なくとも1種の要素を含む、項目1から6のいずれか一項に記載のコンジット。
(項目9)
前記固体フィーチャが、蝋、カルナウバ蝋、蜜蝋、カンデリラ蝋、ゼイン(トウモロコシ由来)、デキストリン、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、不溶性繊維、精製された木質セルロース、微結晶質セルロース、カオリナイト(粘土鉱物)、木蝋、パルプ(例えば、植物の茎のスポンジ状部分)、酸化第二鉄、酸化鉄、ギ酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、シリカ、ガラス、金属、ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、フルオロユーラタン(fluoroeurathane)、フルオロシリコーン、フルオロシラン、変性カーボネート、クロロシラン、シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS))、セラミック固体、フッ素化固体、金属間固体、複合固体、PDMS、環状オレフィンポリマー、ポリプロピレン、PVC、PET、HDPE、ポリイミド、PMMA、ガラス、Perspex、Plexiglass、Polymacon、炭化水素(例えば、アルカン、フルオロポリマー、テフロン(登録商標)、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シラン(TCS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシルトリクロロシラン、フルオロPOSS)、セラミック(例えば、炭化チタン、窒化チタン、窒化クロム、窒化ホウ素、炭化クロム、炭化モリブデン、炭窒化チタン、無電解ニッケル、窒化ジルコニウム、フッ素化二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化タンタル、窒化タンタル、ダイヤモンド状炭素、フッ素化ダイヤモンド状炭素)、金属間化合物(例えば、ニッケルアルミナイドおよびチタンアルミナイド)および複合体からなる群から選択された1つまたは複数の要素を含む、項目1から8のいずれか一項に記載のコンジット。
(項目10)
前記固体フィーチャが、1ミクロンから50ミクロン(例えば、5ミクロンから50ミクロン)の範囲の平均寸法を有する粒子を含む、項目1から9のいずれか一項に記載のコンジット。
(項目11)
前記粒子が、隣接する粒子の間または粒子群の間に、約1ミクロンから約30ミクロン(例えば、10ミクロンから30ミクロン)の平均間隔で配置される、項目10に記載のコンジット。
(項目12)
前記粒子が噴霧配置される、項目10または11に記載のコンジット。
(項目13)
前記固体フィーチャが、粒子、非晶質粒子、実質的に球状の粒子、ポスト、ナノニードル、マイクロニードル、ナノグラス、マイクログラス、細孔、キャビティ、ウェル、相互接続された細孔、相互接続されたキャビティ、溝、および畝からなる群から選択された少なくとも1つの要素を含みまたは画定する、項目1から12のいずれか一項に記載のコンジット。
(項目14)
前記含浸液体が、前記含浸液体の蒸発を防止しまたは低減させる添加剤を含む、項目1から9のいずれか一項に記載のコンジット。
(項目15)
装置が動作中である場合に、互いに接触するように構成された2つの部品を含む装置であって、前記2つの部品の一方またはそれぞれが、
含浸液体と、
複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであって、それらの間に前記含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた、固体フィーチャと
を含む表面を含み、
前記表面のそれぞれに関し、前記含浸液体が前記固体フィーチャの間の空間を満たし、前記表面のそれぞれに関し、前記表面が前記固体フィーチャの間に前記含浸液体を安定して含有し、前記表面のそれぞれに関し、前記含浸液体は、前記表面の配向とは無関係にかつ前記表面の間に生じた接触(例えば、前記装置が、前記表面に垂直な接着性を引き起こすように構成される場合、例えば、前記装置が、低い静摩擦係数を有するように構成される場合、または例えば、前記装置が、前記表面に垂直な接着性を引き起こしかつ低い静摩擦係数を有するように構成される場合)とは無関係に、前記複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される、装置。
(項目16)
軸受、トラック、またはヒンジである、項目15に記載の装置。
(項目17)
空気またはその他の気体から固体粒子を捕獲するための装置であって、前記装置が、
含浸液体と、
複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであって、それらの間に前記含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた、固体フィーチャと
を含む表面を含み、
前記含浸液体が前記固体フィーチャの間の空間を満たし、前記表面が前記固体フィーチャの間に前記含浸液体を安定して含有し、前記含浸液体が、前記表面の配向とは無関係に前記複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される、装置。
(項目18)
空気フィルターである、項目17に記載の装置。
(項目19)
前記含浸液体が高い粘度(例えば、100cP超または1000cP超)を有する、項目17に記載の装置。
(項目20)
硬化性含浸液体と、
複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであって、それらの間に前記含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた、固体フィーチャと
を含む表面を含む装置であって、
前記含浸液体が前記固体フィーチャの間の空間を満たし、前記表面が前記固体フィーチャの間に前記含浸液体を安定して含有し、前記含浸液体が、前記表面の配向とは無関係に前記複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持され、前記含浸液体は硬化すること(例えば、熱への曝露)によって固体に変換することができる、装置。
(項目21)
抗力を低減させるように構成された表面を含む装置(例えば、航空機、ボート、魚雷など)であって、前記表面が、
含浸液体と、
複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであって、それらの間に前記含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた、固体フィーチャと
を含み、
前記含浸液体が前記固体フィーチャの間の空間を満たし、前記表面が前記固体フィーチャの間に前記含浸液体を安定して含有し、前記含浸液体が、前記表面の配向とは無関係に前記複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される、装置。
(項目22)
以下:
(i) 0<φ≦0.25(式中、φは、平衡時の非浸漬固体に対応する前記液体含浸表面の投影表面積の代表的分率である)、および
(ii) Sow(a)<0(式中、Sow(a)は、γwa-γwo-γoaと定義される拡張係数であり、ここで、γは、下付き文字w、a、およびoにより指定される2相間の界面張力であり、wは水であり、aは空気であり、oは前記含浸液体である。)
の一方または両方が適用される、前記項目のいずれか一項に記載のコンジットまたは装置。
(項目23)
0<φ≦0.25である、項目22に記載のコンジットまたは装置。
(項目24)
0<φ≦0.10である、項目22に記載のコンジットまたは装置。
(項目25)
0.01<φ≦0.25である、項目22に記載のコンジットまたは装置。
(項目26)
0.01<φ≦0.10である、項目22に記載のコンジットまたは装置。
(項目27)
ow(a)<0である、項目22に記載のコンジットまたは装置。
(項目28)
以下:
(i) θos(w),receding=0と、
(ii) θos(a),receding=0およびθos(w),receding=0と
の一方または両方が適用される、項目1から21のいずれか一項に記載のコンジットまたは装置であって、
式中、θos(w),recedingは、水(下付き文字「w」)の存在下での前記表面(下付き文字「s」)上の前記含浸液体(例えば油、下付き文字「o」)の後退接触角であり、θos(a),recedingは、空気(下付き文字「a」)の存在下での前記表面(下付き文字「s」)上の前記含浸液体(例えば油、下付き文字「o」)の後退接触角である、コンジットまたは装置。
(項目29)
肉(または生物流体)に対する高い潤滑性を有しかつ/またはその表面上での核生成が阻止された、医療用デバイスまたは医療用器具であって、前記デバイスまたは器具が、
含浸液体と、
複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであって、それらの間に前記含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた、固体フィーチャと
を含む表面を含み、
前記含浸液体が前記固体フィーチャの間の空間を満たし、前記表面が前記固体フィーチャの間に前記含浸液体を安定して含有し、前記含浸液体が、前記表面の配向とは無関係に前記複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される、医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目30)
前記固体フィーチャが、1ミクロンから50ミクロン(例えば、5ミクロンから50ミクロン)の範囲の平均寸法を有する粒子を含む、項目29に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目31)
前記粒子が、隣接する粒子の間または粒子群の間に、約1ミクロンから約30ミクロン(例えば、10ミクロンから30ミクロン)の平均間隔で配置される、項目29または30に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目32)
前記粒子が噴霧配置される、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目33)
前記含浸液体が、オレイン酸エチル、エステル、脂肪酸、脂肪酸誘導体、植物油(例えば、オリーブ油、ライトオリーブ油、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、亜麻仁油(linseed oil)、ブドウ種子油、亜麻仁油(flaxseed oil)、キャノーラ油、落花生油、紅花油、ヒマワリ油)、テルペン、イソチオシアン酸フェニル(フェニルカラシ油)、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o-ブロモトルエン、α-クロロナフタレン、α-ブロモナフタレン、四臭化アセチレン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIm)、トリブロモヒドリン(1,2,3-トリブロモプロパン)、二臭化エチレン、二硫化炭素、ブロモホルム、ヨウ化メチレン(ジヨードメタン)、スタノラックス、Squibbの流動パラフィン、p-ブロモトルエン、モノブロモベンゼン、パークロロエチレン、二硫化炭素、フェニルカラシ油、モノヨードベンゼン、α-モノクロロ-ナフタレン、四臭化アセチレン、アニリン、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、n-ヘプチルアルコール、クレゾール、オレイン酸、リノール酸、およびフタル酸アミルからなる群から選択された少なくとも1つの要素を含む、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目34)
前記固体フィーチャが、蝋、カルナウバ蝋、蜜蝋、カンデリラ蝋、ゼイン(トウモロコシ由来)、デキストリン、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、不溶性繊維、精製された木質セルロース、微結晶質セルロース、カオリナイト(粘土鉱物)、木蝋、パルプ(例えば、植物の茎のスポンジ状部分)、酸化第二鉄、酸化鉄、ギ酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、金属、ポリマー、セラミック固体、フッ素化固体、金属間固体、および複合固体 PDMS、環状オレフィンポリマー、ポリプロピレン、PVC、PET、HDPE、ポリイミド、PMMA、ガラス、Perspex、Plexiglass、Polymaconからなる群から選択された1つまたは複数の要素を含む、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目35)
前記含浸液体が、前記含浸液体の蒸発を防止しまたは低減させる添加剤を含む、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目36)
固定具、義歯、保定器、歯列矯正具、ブリッジ、インプラント、歯型、プロテーゼ、人工臓器、人工動脈、ステント、注射器、内層(例えば、プラーク形成を防止するための動脈壁の内層)、IVチューブ、IVバッグ、結腸ろうバッグ、手術器具、包帯、および血液ポンプからなる群から選択された要素である、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目37)
前記医療用デバイスまたは医療用器具は、血液ポンプまたはその部分であり、前記表面は、前記ポンプによってまたは前記ポンプ内を経て送液される血液またはその他の生物流体中の細胞および/またはその他の生物学的構造に対する損傷を防止するために、剪断力の低減をもたらすよう構成される、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目38)
丸剤、カプセル剤(例えば、シングルピースまたはツーピース)、錠剤、ゲルキャップ、および坐剤からなる群から選択された要素である、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目39)
マイクロピペット(micropoipette)、生体材料の小体積容器、ヒト血清容器、ピペット、ピペットチップ、マイクロ流体デバイス、透析機、チューブ、内視鏡、挿管デバイス、注射器、ステント、カテーテル、および気管切開チューブからなる群から選択された要素である、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目40)
手袋、包帯、接着ストリップ、薬物放出パッチ、およびコンドームからなる群から選択された要素である、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目41)
前記含浸液体が、薬物(例えば、防腐剤および/または抗菌剤)または生物活性成分(薬物、ビタミン、ミネラル、タンパク質を含むがこれらに限定するものではない。)を含む、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目42)
前記含浸液体が、硬化性であり、硬化(例えば、熱への曝露)によって固体に変換することができる、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目43)
以下:
(i) 0<φ≦0.25(式中、φは、平衡時の非浸漬固体に対応する前記液体含浸表面の投影表面積の代表的分率である。)、および
(ii) Sow(a)<0(式中、Sow(a)は、γwa-γwo-γoaと定義される拡張係数であり、ここで、γは、下付き文字w、a、およびoにより指定される2相間の界面張力であり、wは水であり、aは空気であり、oは前記含浸液体である。)
の一方または両方が適用される、前記項目のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目44)
0<φ≦0.25である、項目43に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目45)
0<φ≦0.10である、項目43に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目46)
0.01<φ≦0.25である、項目43に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目47)
0.01<φ≦0.10である、項目43に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目48)
ow(a)<0である、項目43に記載の医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目49)
以下:
(i) θos(w),receding=0と、
(ii) θos(a),receding=0およびθos(w),receding=0と
の一方または両方が適用される、項目29から42のいずれか一項に記載の医療用デバイスまたは医療用器具であって、
式中、θos(w),recedingは、水(下付き文字「w」)の存在下での前記表面(下付き文字「s」)上の前記含浸液体(例えば油、下付き文字「o」)の後退接触角であり、θos(a),recedingは、空気(下付き文字「a」)の存在下での前記表面(下付き文字「s」)上の前記含浸液体(例えば油、下付き文字「o」)の後退接触角である、医療用デバイスまたは医療用器具。
(項目50)
眼の組織/流体に対する高い潤滑性を有しかつ/またはその表面上での核生成が阻止されたコンタクトレンズであって、
前記コンタクトレンズが、マイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体(例えば、ゲル)フィーチャであって、それらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた固体フィーチャのマトリックスを形成するようにテクスチャが付けられた表面を含み、
前記含浸液体が前記固体フィーチャの間の空間を満たし、前記表面が前記固体フィーチャの間に前記含浸液体を安定して含有し、前記含浸液体が、前記表面の配向とは無関係に、かつ前記コンタクトレンズの通常の装着、挿入、および取外し中に前記眼の組織に接触するにも関わらず、前記複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される、コンタクトレンズ。
(項目51)
前記フィーチャが細孔またはキャビティを画定し、前記含浸液体が前記細孔またはキャビティを満たす、項目50に記載のコンタクトレンズ。
(項目52)
前記マトリックスが、約1マイクロメートルから約100マイクロメートルの、フィーチャ同士の間隔を有する、項目50または51に記載のコンタクトレンズ。
(項目53)
前記マトリックスが、約5ナノメートルから約1マイクロメートルの、フィーチャ同士の間隔を有する、前記項目のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
(項目54)
前記表面が、固体フィーチャの前記マトリックスを形成するようにレーザーエッチングされている、前記項目のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
(項目55)
前記含浸液体が、眼の流体と実質的に不混和性(例えば、食塩液と実質的に不混和性)である、前記項目のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
(項目56)
前記固体フィーチャおよび/または前記レンズそのものの材料が、ポリマー、ヒドロゲル、ポリイミド、ポリマコン、シリコーンヒドロゲル、ポリメチルメタクリレート(PMMAまたはPerspex/Plexiglas)、およびガラスからなる群から選択された1つまたは複数の要素を含む、前記項目のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
(項目57)
前記固体フィーチャが、蝋、カルナウバ蝋、蜜蝋、カンデリラ蝋、ゼイン(トウモロコシ由来)、デキストリン、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、不溶性繊維、精製された木質セルロース、微結晶質セルロース、カオリナイト(粘土鉱物)、木蝋、パルプ(例えば、植物の茎のスポンジ状部分)、酸化第二鉄、酸化鉄、ギ酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、シリカ、金属、ポリマー、セラミック固体、フッ素化固体、金属間固体、および複合固体、PDMS、環状オレフィンポリマー、ポリプロピレン、PVC、PET、およびHDPEからなる群から選択された1つまたは複数の要素を含む、前記項目のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
(項目58)
前記含浸液体が、オレイン酸エチル、エステル、脂肪酸、脂肪酸誘導体、テルペン、油、テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)、イソチオシアン酸フェニル、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o-ブロモトルエン、α-クロロナフタレン、α-ブロモナフタレン、四臭化アセチレン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIm)、トリブロモヒドリン(1,2,3-トリブロモプロパン)、二臭化エチレン、二硫化炭素、ブロモホルム、ヨウ化メチレン(ジヨードメタン)、スタノラックス、流動パラフィン、p-ブロモトルエン、モノブロモベンゼン、パークロロエチレン、二硫化炭素、フェニルカラシ油、モノヨードベンゼン、α-モノクロロ-ナフタレン、四臭化アセチレン、アニリン、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、n-ヘプチルアルコール、クレゾール、オレイン酸、リノール酸、およびフタル酸アミルからなる群から選択された少なくとも1つの要素を含む、前記項目のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
(項目59)
前記含浸液体が、眼に送達するための薬剤を含む、前記項目のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
(項目60)
前記含浸液体が着色されている(例えば、カラーコンタクトレンズ用)、前記項目のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
(項目61)
前記含浸液体が、平衡状態または実質的な平衡状態にありながら、前記表面の前記固体フィーチャの最上部の上方に拡がる液体層を形成する、前記項目のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
(項目62)
前記液体層が、前記固体フィーチャの最上部の上方に少なくとも約5nm拡がる、項目61に記載のコンタクトレンズ。
(項目63)
以下:
(i) 0<φ≦0.25(式中、φは、平衡時の非浸漬固体に対応する前記液体含浸表面の投影表面積の代表的分率である。)、および
(ii) Sow(a)<0(式中、Sow(a)は、γwa-γwo-γoaと定義される拡張係数であり、ここで、γは、下付き文字w、a、およびoにより指定される2相間の界面張力であり、wは水であり、aは空気であり、oは前記含浸液体である。)
の一方または両方が適用される、前記項目のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
(項目64)
0<φ≦0.25である、項目63に記載のコンタクトレンズ。
(項目65)
0<φ≦0.10である、項目63に記載のコンタクトレンズ。
(項目66)
0.01<φ≦0.25である、項目63に記載のコンタクトレンズ。
(項目67)
0.01<φ≦0.10である、項目63に記載のコンタクトレンズ。
(項目68)
ow(a)<0である、項目63に記載のコンタクトレンズ。
(項目69)
以下:
(i) θos(w),receding=0と、
(ii) θos(a),receding=0およびθos(w),receding=0と
の一方または両方が適用される、項目50から62のいずれか一項に記載のコンタクトレンズであって、
式中、θos(w),recedingは、水(下付き文字「w」)の存在下での前記表面(下付き文字「s」)上の前記含浸液体(例えば油、下付き文字「o」)の後退接触角であり、θos(a),recedingは、空気(下付き文字「a」)の存在下での前記表面(下付き文字「s」)上の前記含浸液体(例えば油、下付き文字「o」)の後退接触角である、コンタクトレンズ。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、部分的に浸漬された液体含浸表面の、概略断面図および対応する上面図を示す。
【0045】
図2図2Aおよび2Bは、血液を採取するためのピンセットの、液体含浸表面のコーティングの有効性を実証する。
【0046】
図3図3Aおよび3Bは、液体含浸表面の丸剤が、コーティングされていない丸剤よりも容易に、動物の組織上を滑ることを実証する。
【0047】
図4図4Aおよび4Bは、動物の肉が、コーティングされていない表面上よりも容易に、液体含浸表面上を滑ることを実証する。
【0048】
図5A図5Aから5Dは、コンクリートと液体含浸表面がコーティングされた金型とを使用した、離型実験を示す。
図5B図5Aから5Dは、コンクリートと液体含浸表面がコーティングされた金型とを使用した、離型実験を示す。
図5CD図5Aから5Dは、コンクリートと液体含浸表面がコーティングされた金型とを使用した、離型実験を示す。
【0049】
図6図6は、液体含浸表面の接着強度を決定するための、固体同士の接着実験を示す。
【0050】
図7A図7Aから7Fは、チューブ、パイプ、チャネル、またはその他同様の品目に対する液体含浸表面の影響を示す。
図7B図7Aから7Fは、チューブ、パイプ、チャネル、またはその他同様の品目に対する液体含浸表面の影響を示す。
図7C図7Aから7Fは、チューブ、パイプ、チャネル、またはその他同様の品目に対する液体含浸表面の影響を示す。
図7D図7Aから7Fは、チューブ、パイプ、チャネル、またはその他同様の品目に対する液体含浸表面の影響を示す。
図7E図7Aから7Fは、チューブ、パイプ、チャネル、またはその他同様の品目に対する液体含浸表面の影響を示す。
図7F図7Aから7Fは、チューブ、パイプ、チャネル、またはその他同様の品目に対する液体含浸表面の影響を示す。
【0051】
図8図8Aおよび8Bは、射出成型実験の結果を示す。
【0052】
図9AB図9Aから9Dは、液体含浸表面での粉塵捕獲実験を示す。
図9CD図9Aから9Dは、液体含浸表面での粉塵捕獲実験を示す。
【0053】
図10A図10Aから10Eは、粘性材料を受容する表面における液体含浸表面の性質を実証するための、コンジット実験を示す。
図10B図10Aから10Eは、粘性材料を受容する表面における液体含浸表面の性質を実証するための、コンジット実験を示す。
図10C図10Aから10Eは、粘性材料を受容する表面における液体含浸表面の性質を実証するための、コンジット実験を示す。
図10D図10Aから10Eは、粘性材料を受容する表面における液体含浸表面の性質を実証するための、コンジット実験を示す。
図10E図10Aから10Eは、粘性材料を受容する表面における液体含浸表面の性質を実証するための、コンジット実験を示す。
【0054】
図11A図11Aから11Dは、金属球体表面での抗力を測定するために実行された実験を示す。
図11B図11Aから11Dは、金属球体表面での抗力を測定するために実行された実験を示す。
図11C図11Aから11Dは、金属球体表面での抗力を測定するために実行された実験を示す。
図11D図11Aから11Dは、金属球体表面での抗力を測定するために実行された実験を示す。
【0055】
図12図12は、液体含浸表面を有する球体、テクスチャが付けられた外面を有する球体、滑面を有する球体の、浸潤挙動を示す。
【0056】
図13図13Aおよび13Bは、コーティングされていないコンタクトレンズに対する、液体含浸表面がコーティングされたコンタクトレンズの外観および透明度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
詳細な説明
特許請求の範囲に記載される本発明の組成物、混合物、システム、デバイス、方法、およびプロセスは、本明細書に記述される実施形態から得た情報を使用して開発された変形例および適応例を包含することが企図される。本明細書に記述された組成物、混合物、システム、デバイス、方法、およびプロセスの適応例および/または修正例は、当業者が行うこともできる。
【0058】
この記述の全体を通して、物品、デバイス、装置、およびシステムが特定の構成要素を有し、含み(including)、もしくは含む(comprising)として記述される場合、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有し、含み(including)、もしくは含む(comprising)として記述される場合はさらに、列挙される構成要素から本質的になるまたは列挙される構成要素からなる本発明の物品、デバイス、装置、およびシステムがあり、列挙される加工ステップから本質的になるまたは列挙される加工ステップからなる本発明によるプロセスおよび方法があることが企図される。
【0059】
同様に、物品、デバイス、混合物、装置、および組成物が特定の化合物および/または材料を有し、含み(including)、もしくは含む(comprising)として記述される場合はさらに、列挙される化合物および/または材料から本質的になるまたは列挙される化合物および/または材料からなる本発明の物品、デバイス、混合物、装置、および組成物があることが企図される。
【0060】
ステップの順序またはある動作を行うための順序は、本発明が実施可能であり続ける限り重要ではないことを理解されるべきである。さらに、2つ以上のステップまたは動作を同時に実行してもよい。
【0061】
例えば背景技術のセクションにおける、任意の刊行物に関する本明細書の記述は、それらの刊行物が、本明細書に提示される特許請求の範囲のいずれかに対する従来技術の役割を果たすことを認めたものではない。背景技術のセクションは、明確にすることを目的に提示され、任意の請求項に対する従来技術の記述を意味するものではない。
【0062】
本明細書には、含浸液体と、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを含む面が記述され、この含浸液体は固体フィーチャの間の空間を満たし、内面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有し、含浸液体は、複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される。
【0063】
ある実施形態では、固体フィーチャは、面そのものの部分であってもよく(例えば面は、固体フィーチャが生成されるように、エッチングされていてもよくまたはその他の方法でテクスチャが付けられていてもよい。)、または固体フィーチャは、面に付着されていてもよい。ある実施形態では、固体フィーチャは、本質的に疎水性、撥油性、および/または金属非親和性の材料またはコーティングを含む。例えば固体フィーチャは、アルカンなどの炭化水素と、フルオロポリマー、例えばテフロン(登録商標)、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)シラン(TCS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシルトリクロロシラン、フルオロPOSS、および/またはその他のフルオロポリマーとで作製されていてもよい。追加の可能性ある材料には、セラミックス、ポリマー材料、フッ素化材料、金属間化合物、および複合体材料が含まれる。ポリマー材料には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、フルオロユーラタン、フルオロシリコーン、フルオロシラン、変性カーボネート、クロロシラン、シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、および/またはこれらの組合せを含めてもよい。セラミックスには、例えば、炭化チタン、窒化チタン、窒化クロム、窒化ホウ素、炭化クロム、炭化モリブデン、炭窒化チタン、無電解ニッケル、窒化ジルコニウム、フッ素化二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化タンタル、窒化タンタル、ダイヤモンド状炭素、フッ素化ダイヤモンド状炭素、および/またはこれらの組合せを含めてもよい。金属間化合物には、例えば、ニッケルアルミナイド、チタンアルミナイド、および/またはこれらの組合せを含めてもよい。
【0064】
液体含浸表面の固体フィーチャは、物理的テクスチャまたは面粗さを形成してもよい。テクスチャは、ランダムであってもよく、フラクタルを含んでいてもよく、またはパターニングされていてもよい。ある実施形態では、テクスチャは、マイクロスケールまたはナノスケールのフィーチャである。例えば、テクスチャは、長さスケールL(例えば、平均細孔径または平均突起高さ)が約100ミクロン未満、約10ミクロン未満、約1ミクロン未満、約0.1ミクロン未満、または約0.01ミクロン未満であってもよい。ある実施形態では、テクスチャは、ポストまたはその他の突起、例えば球状もしく半球状突起を含む。丸みの付いた突起が、鋭い固体縁部を回避し液体縁部のピン止めを最小限に抑えるのに好ましいと考えられる。テクスチャは、機械的および/または化学的方法を含めた任意の従来方法を使用して、面に導入されてもよい。
【0065】
ある実施形態では、固体フィーチャは粒子を含む。ある実施形態では、粒子は、例えば約5ミクロンから約500ミクロン、または約5ミクロンから約200ミクロン、または約10ミクロンから約50ミクロンの範囲の平均特性寸法を有する。ある実施形態では、特性寸法は、直径(例えば、ほぼ球状の粒子の場合)、長さ(例えば、ほぼ棒形状の粒子の場合)、厚さ、深さ、または高さである。ある実施形態では、粒子は、不溶性繊維、精製された木質セルロース、微結晶質セルロース、オートブラン繊維、カオリナイト(粘土鉱物)、木蝋(ベリー類から得られる。)、パルプ(植物の茎のスポンジ状部分)、酸化第二鉄、酸化鉄、ギ酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、蝋、カルナウバ蝋、蜜蝋、カンデリラ蝋、ゼイン(トウモロコシ由来)、デキストリン、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および/またはエチルヒドロキシエチルセルロースを含む。ある実施形態では、粒子は蝋を含む。ある実施形態では、粒子はランダムに間隔を空けて配置される。ある実施形態では、粒子は、隣接する粒子の間または粒子群の間に約1ミクロンから約500ミクロン、または約5ミクロンから約200ミクロン、または約10ミクロンから約30ミクロンの平均間隔で配置される。ある実施形態では、粒子は噴霧配置される(例えば、エアロゾルまたはその他の噴霧機構によって配置される。)。
【0066】
いくつかの実施形態では、マイクロスケールフィーチャが使用される。いくつかの実施形態では、マイクロスケールフィーチャが粒子である。粒子は、面上にランダムにまたは均一に分散させることができる。粒子間の特徴的な間隔は、約200μm、約100μm、約90μm、約80μm、約70μm、約60μm、約50μm、約40μm、約30μm、約20μm、約10μm、約5μm、または1μmとすることができる。いくつかの実施形態では、粒子間の特徴的な間隔は、100μmから1μm、50μmから20μm、または40μmから30μmの範囲にある。いくつかの実施形態では、粒子間の特徴的な間隔は、100μmから80μm、80μmから50μm、50μmから30μm、または30μmから10μmの範囲にある。いくつかの実施形態では、粒子間の特徴的な間隔は、上記いずれか2つの値の範囲にある。
【0067】
粒子は、約200μm、約100μm、約90μm、約80、約70μm、約60μm、約50μm、約40μm、約30μm、約20μm、約10μm、約5μm、または1μmの平均寸法を有することができる。いくつかの実施形態では、粒子の平均寸法は、100μmから1μm、50μmから10μm、または30μmから20μmの範囲にある。いくつかの実施形態では、粒子の平均寸法は、100μmから80μm、80μmから50μm、50μmから30μm、または30μmから10μmの範囲にある。いくつかの実施形態では、粒子の平均寸法は、上記いずれか2つの値の範囲にある。
【0068】
いくつかの実施形態では、粒子は多孔質である。粒子の特徴的な細孔サイズ(例えば、細孔の幅または長さ)は、約5000nm、約3000nm、約2000nm、約1000nm、約500nm、約400nm、約300nm、約200nm、約100nm、約80nm、約50、約10nmとすることができる。いくつかの実施形態では、特徴的な細孔サイズは、200nmから2μmまたは100nmから1μmの範囲にある。いくつかの実施形態では、特徴的な細孔サイズは上記いずれか2つの値の範囲にある。
【0069】
液体含浸表面の含浸液体は、油をベースにしても水をベース(即ち、水性)にしてもよい。液体は、その性質に基づいて、所与の適用例に合わせて選択されてもよい。ある実施形態では、含浸液体がイオン性液体(例えば、BMI-IM)である。可能性ある含浸液体のその他の例には、ヘキサデカン、真空ポンプ油(例えば、FOMBLIN(登録商標)06/6、KRYTOX(登録商標)1506)、シリコーン油(例えば、10cStまたは1000cSt)、フルオロカーボン(例えば、パーフルオロ-トリペンチルアミン、FC-70)、剪断減粘流体、剪断増粘流体、液体ポリマー、溶解ポリマー、粘弾性流体、および/または液体フルオロPOSSが含まれる。一実施形態では、含浸液体は、ナノ粒子を導入することによって剪断増粘状態にされる。剪断増粘含浸液体は、例えば、欠陥(impalement)を防止しかつ衝突する液体からの影響に抵抗するのに望ましいと考えられる。含浸液体が面から蒸発するのを最小限に抑えるには、低蒸気圧(例えば、0.1mmHg未満、0.001mmHg未満、0.00001mmHg未満、または0.000001mmHg未満)を有する含浸液体を使用することが望ましいと考えられる。ある実施形態では、含浸液体は、-20℃未満、-40℃未満、または約-60℃の凍結点を有する。ある実施形態では、含浸液体の表面張力が約15mN/m、約20mN/m、または約40mN/mである。ある実施形態では、含浸液体の粘度が約10cStから約1000cStである。
【0070】
含浸液体は、液体を固体に付着させる従来の技法を使用して、面に導入されてもよい。ある実施形態では、含浸液体を付着させるのに、浸漬コーティング、ブレードコーティング、またはローラコーティングなどのコーティングプロセスを使用する。あるいは含浸液体は、面を流通する液体材料によって導入および/または補充されてもよい。好ましい実施形態では、含浸液体が付着された後に、毛管力が液体を所定位置に保持する。
【0071】
ある実施形態では、テクスチャを基材に付着させて、固体フィーチャを有する面を形成してもよい。テクスチャの付着には:溶媒への基材の曝露(例えば、溶媒誘発性結晶化)、材料の混合物の押出しまたはブロー成型、機械的動作(例えば、研摩剤との転動)による基材の粗面化、噴霧コーティング、ポリマースピニング、溶液からの粒子の堆積(例えば、層ごとの堆積、および/または液体および粒子懸濁液からの液体の蒸発除去)、フォームまたはフォーム形成材料(例えば、ポリウレタンフォーム)の押出しまたはブロー成型、溶液からのポリマーの堆積、皺の付いたまたはテクスチャの付いた面が残るように冷却することによって膨張する材料の押出しまたはブロー成型、張力または圧縮下にある面上への材料層の付着、多孔質構造を得るためのポリマーの無溶媒誘発性相分離の実施、マイクロコンタクト印刷の実施、レーザーラスタリングの実施、蒸気からの固体テクスチャの核生成(例えば、脱昇華)の実施、アノード化の実施、ミリング、機械加工、ローレット掛け、eビームミリング、熱または化学的酸化の実施、および/または化学気相成長の実施を含めてもよい。ある実施形態では、基材へのテクスチャの付着は、基材への食用粒子の混合物の噴霧を含む。ある実施形態において、フィーチャのマトリックスへの液体の含浸には:フィーチャのマトリックス上への封入液体の噴霧、フィーチャのマトリックス上への液体のブラッシング、液体中へのフィーチャのマトリックスの浸漬、フィーチャのマトリックスのスピニング、フィーチャのマトリックスへの液体の凝縮、液体と1種または複数の揮発性液体を含む溶液の堆積、および/または第2の不混和性液体を用いた面上での液体の拡張が含まれる。ある実施形態では、液体を溶媒と混合し、次いで噴霧するが、それは溶媒が液体粘度を低減させて噴霧をより容易にかつより均一にするからである。次いで溶媒は、コーティングから完全に乾燥除去されることになる。ある実施形態では、方法は、基材にテクスチャを付着させかつ/またはテクスチャの固体フィーチャを化学的に変性させる前に、基材を化学的に変性させるステップをさらに含む。例えば方法は、水に対して70度超の接触角を有する材料(例えば、疎水性材料)を用いて化学的に変性させるステップを含んでいてもよい。変性は、例えばテクスチャを付着させた後に実行されてもよく、または粒子が基材に付着される前に粒子に適用されてもよい。ある実施形態では、フィーチャのマトリックスの含浸は、フィーチャのマトリックスからの過剰な液体の除去を含む。ある実施形態では、過剰な液体の除去には:過剰な液体を運び去るための第2の不混和性液体の使用、過剰な液体を除去するための機械的動作の使用、多孔質材料を使用した過剰な液体の吸収、および/または重力もしくは遠心力を使用してフィーチャのマトリックスから過剰な液体を排出除去させることが含まれる。
【0072】
液体含浸表面は、固体面と流動液体との間の粘性抵抗を低減させるのに有用である。一般に、固体面上を流動する液体によって生じる粘性抵抗または剪断応力は、その面に隣接する液体の粘度および剪断率に比例する。伝統的な仮定は、固体面に接触している液体分子がその面に粘着することであり、いわゆる「滑りなし」境界条件である。いくらかの滑りが液体と面との間に生じ得るが、滑りなし境界条件はほとんどの適用例に有用な仮定である。ある実施形態では、固体面で大量の滑りを誘発するので、液体含浸表面が望ましい。40%程度の抗力の低減は、この滑りに起因して実現され得る。
【0073】
ある実施形態では、液体含浸表面のテクスチャ内への液体の含浸は、これらの領域における核生成を防止しまたは低減させる。核生成の低減は、液体が液体含浸表面の固体フィーチャの最上部を覆う場合に高められる。さらに、ある実施形態では、液体含浸表面は、低ロールオフ角(即ち、面に接触している液滴がその面から転がり、または滑り落ち始める、面の角度または勾配)を有する。液体含浸表面に関連付けられた低ロールオフ角では、液体を面上に蓄積することができる前に、面に接触している液滴を面から容易に転がり落とすことが可能である。ある実施形態では、液体含浸表面は水和物非親和性を与えるために使用され、それによって水和物の形成が防止されまたは最小限に抑えられる。ある実施形態では、液体含浸表面は塩非親和性を与えるのに使用され、それによって塩または鉱物スケールの形成が防止されまたは最小限に抑えられる。
【0074】
ある実施形態では、液体含浸表面は、固体面と流動液体との間の粘性抵抗を低減させるのに使用される。ある実施形態では、液体含浸表面は、液体含浸表面と、この面に接触している物質(または、面そのものであり、1つの液体含浸表面が別の液体含浸表面を擦り、または液体含浸表面の複数部分が互いに擦り合う。)との間に潤滑を与えるのに使用される。例えば液体含浸表面は、非ニュートン材料、ビンガムプラスチック、チキソトロピー流体、および/または剪断増粘物質である物質に接触している場合、著しい滑り/潤滑の利点を提供することができる。
【0075】
液体含浸表面は、汚れ止めおよび/または自己清浄をもたらしてもよい。液体含浸表面は、水分の凝縮を促進させるのに使用されてもよい。
【0076】
本明細書で使用される出現面積分率φは、平衡(または偽平衡)時の非浸漬固体に対応する液体含浸表面(の代表的分率)の投影表面積の、代表的分率として定義される。本明細書で使用される「平衡」という用語は、基材が水平方向から外れて保持されるときの重力による排出に起因して含浸被膜の平均厚さが経時的に実質的に変化せず、かつ蒸発が無視できる場合(例えば、液体含浸液体が、その含浸液体の蒸気で飽和した環境内に配置されることになる場合)の状態を指す。同様に、本明細書で使用される「偽平衡」という用語は、蒸発が生じ得る場合以外は同じである状態を指す。
【0077】
一般に、面の「代表的分率」は、表面に十分な数の固体フィーチャがある面の部分であって、その部分が面全体を適切に表すような部分を指す。ある実施形態では、「代表的分率」は、面全体の少なくとも10分の1である。
【0078】
ある実施形態では、φがゼロである(例えば厚さが少なくとも1nm、少なくとも5nm、少なくとも10nm、または少なくとも100nmであってもよい、固体フィーチャの最上部を覆う液体の層がある。)。ある実施形態では、φが0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、0.05、0.01、または0.005未満である。ある実施形態では、φが0.001、0.005、0.01、0.05、0.10、0.15、または0.20超である。ある実施形態では、φが約0から約0.25の範囲にある。ある実施形態では、φが約0から約0.01の範囲にある。ある実施形態では、φが約0.001から約0.25の範囲にある。ある実施形態では、φが約0.001から約0.10の範囲にある。
【0079】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面は、本明細書に記述される種々の実施形態に応じて、含浸液体によるクローキングをなくすことができるようにまたは誘発させることができるように構成される。
【0080】
本明細書で使用される拡張係数、Sow(a)は、γwa-γwo-γoaと定義され、式中、γは、下付き文字w、a、およびoにより指定される2相間の界面張力であり、ここで、wは水であり、aは空気であり、oは含浸液体である。界面張力は、参照によりその文章が本明細書に組み込まれるStauffer, C. E.、「The measurement of surface tension by the pendant drop technique」、J. Phys. Chem. 1965年、69巻、1933~1938頁に記載されるようなペンダントドロップ法を使用して測定することができる。例示的な面およびその界面張力の測定(約25℃で)を、補遺D、特に表S2に示す。
【0081】
いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、0未満のSow(a)を有する含浸液体はクローキングすることなく、その結果、含浸液体の損失はないが、0よりも大きいSow(a)を有する含浸液体は物体(凝縮水滴、細菌コロニー、固体面)をクローキングすることになり、これを腐食や汚れなどの防止に利用することができる。ある実施形態では、クローキングは、蒸気-液体変態(例えば、水蒸気、金属蒸気など)を防止するのに使用される。ある実施形態では、クローキングは、液体-固体の形成(例えば、氷、金属など)を阻止するのに使用される。ある実施形態では、クローキングは、材料を運ぶためのリザーバを作製するのに使用され、したがって独立したクローキングされた材料を外部手段(電場または磁場など)により制御し管理することができるようになる。
【0082】
ある実施形態では、潤滑剤クローキングが望ましく、クローキングされた材料の内容物を保存するタイムカプセルのように、環境汚染を防止する手段として使用される。クローキングは、材料の包封をもたらすことができ、それによって、環境から材料へのアクセスが遮断される。これは材料(バイオアッセイなど)を、環境により汚染させることなくある長さにわたって輸送するのに使用することができる。
【0083】
ある実施形態では、クローキングの量は、粘度、表面張力などの様々な潤滑特性によって制御することができる。さらにまたは代わりに、本発明者らは、材料を放出するためにクローキングされた材料の非浸潤性を制御することができる。したがって、液体が一端で潤滑媒体中に吐出されかつ他端に到達すると潤滑剤を非クローキング状態にする環境に曝されるシステムが企図される。
【0084】
いくつかの実施形態では、含浸液体は、0未満のSow(a)を有するように選択することができる。例示的な含浸液体には、テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)、イソチオシアン酸フェニル(フェニルカラシ油)、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o-ブロモトルエン、α-クロロナフタレン、α-ブロモナフタレン、四臭化アセチレン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIm)、トリブロモヒドリン(1,2,3-トリブロモプロパン)、テトラデカン、シクロヘキサン、二臭化エチレン、二硫化炭素、ブロモホルム、ヨウ化メチレン(ジヨードメタン)、スタノラックス、Squibbの流動パラフィン、p-ブロモトルエン、モノブロモベンゼン、パークロロエチレン、二硫化炭素、フェニルカラシ油、モノヨードベンゼン、α-モノクロロ-ナフタレン、四臭化アセチレン、アニリン、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、n-ヘプチルアルコール、クレゾール、オレイン酸、リノール酸、フタル酸アミル、およびこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0085】
図1を参照すると、部分的に浸漬された液体含浸表面の概略断面図および対応する上面図が示されている。図1の左上の図面は、1列の円錐形状の固体フィーチャの断面図を示す。非浸漬固体102の突起表面積は、上から見てハッチングが施された領域として示され、一方、残りのハッチングが施されていない領域は、浸漬された液体含浸表面100の突起表面積を表す。この固体フィーチャの列の突起表面積に加え、半ランダムパターンに配置されたその他の固体フィーチャが、上から見てハッチングが施された状態で示される。同様に、1列の均等に間隔を空けて配置されたポストの断面図が、図1の右側に示される。十分にパターニングされた別の列のポストが、上から見てハッチングが施された状態で示されている。実証されるように、いくつかの実施形態では、液体含浸表面は、ランダムにかつ/または非ランダムにパターニングされた固体フィーチャを含む。
【0086】
ある実施形態では、材料は、その面上に、図1に示される核生成を示す。材料の面は、マイクロスケールまたはナノスケールの固体フィーチャのアレイであってそれらの間に含浸液体が含有されるように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャのアレイを含む。含浸液体は固体フィーチャの間の空間を満たし、面は、その面の配向とは無関係に、固体フィーチャの間の所定位置に含浸液体を安定して保持する。いくつかの実現例では、粒子は5ミクロンから50ミクロンの平均寸法を有する。いくつかの実現例では、粒子は、隣接する粒子の間または粒子群の間に約10ミクロンから約30ミクロンの平均間隔で配置される。
【0087】
ある実施形態では、粒子は、含浸液体溶液を面に噴霧コーティングすることによって、材料の面上にコーティングされる。噴霧コーティングは、材料の面に含浸液体の均一な被覆を付着させることができる。ある実現例では、含浸液体を、多段階で材料の面上に噴霧コーティングしてもよい。含浸溶液がいくつかの異なる溶液で構成されるある実現例では、含浸液体の様々な構成成分の溶液を異なる段階で目標の面上に噴霧コーティングしてもよい。
【0088】
液体含浸表面の適用は、例えば流体および/または固形物を搬送するためのコンジットにまで拡張することができる。コンジットは、含浸液体と、マイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液を安定して含有するよう十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを含む、内面を有していてもよい。含浸液体は、固体フィーチャの間の空間を満たしてもよい。いくつかの実現例では、内面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有する。含浸液体は、内面の配向とは無関係に、かつコンジット内を通る、入る、または出て行く流体および/または固形物の流動、通過、もしくは除去とは無関係に、固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持されてもよい。内面は、内面で高滑り境界条件を提供するように構成されていてもよく、それによって、コンジット内を通る、入る、または出て行く流体および/または固形物の流動、通過、もしくは除去が容易になる。
【0089】
いくつかの実現例では、コンジットは、液体含浸表面から失われた含浸液体を補充するための、液体を含有するためのリザーバを含む。リザーバは、元の所望の面への液体含浸表面溶液の連続供給を行ってもよい。いくつかの実現例では、リザーバは、液体含浸表面から失われた含浸液体を補充するのに使用される。
【0090】
いくつかの実現例では、含浸液体は、オレイン酸エチル、脂肪酸、植物油(例えば、オリーブ油、ライトオリーブ油、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、亜麻仁油(linseed oil)、ブドウ種子油、亜麻仁油(flaxseed oil)、キャノーラ油、落花生油、紅花油、ヒマワリ油)、テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)、イソチオシアン酸フェニル(フェニルカラシ油)、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o-ブロモトルエン、α-クロロナフタレン、α-ブロモナフタレン、四臭化アセチレン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMIm)、トリブロモヒドリン(1,2,3-トリブロモプロパン)、二臭化エチレン、二硫化炭素、ブロモホルム、ヨウ化メチレン(ジヨードメタン)、スタノラックス、Squibbの流動パライフィン、p-ブロモトルエン、モノブロモベンゼン、パークロロエチレン、二硫化炭素、フェニルカラシ油、モノヨードベンゼン、α-モノクロロ-ナフタレン、四臭化アセチレン、アニリン、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、n-ヘプチルアルコール、クレゾール、オレイン酸、リノール酸、および/またはフタル酸アミルである。含浸液体は、含浸液体の蒸発を防止しまたは低減させる添加剤を含んでいてもよい。
【0091】
いくつかの実現例では、固体フィーチャは、蝋、カルナウバ蝋、蜜蝋、カンデリラ蝋、ゼイン(トウモロコシ由来)、デキストリン、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、不溶性繊維、精製された木質セルロース、微結晶質セルロース、カオリナイト(粘土鉱物)、木蝋、パルプ(例えば、植物の茎のスポンジ状部分)、酸化第二鉄、酸化鉄、ギ酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、金属、ポリマー、セラミック固体、フッ素化固体、金属間固体、および/または複合固体を含む。
【0092】
固体フィーチャは、5ミクロンから50ミクロンの範囲の平均寸法を有する粒子を含んでいてもよい。粒子は、隣接する粒子の間または粒子群の間に約10ミクロンから約30ミクロンの平均間隔で並べられていてもよい。粒子は、噴霧配置させてもよい。
【0093】
固体フィーチャは、粒子、非晶質粒子、実質的に球状の粒子、ポスト、ナノニードル、マイクロニードル、ナノグラス、マイクログラス、細孔、キャビティ、ウェル、相互接続された細孔、および/または相互接続されたキャビティを含んでいてもよい。
【0094】
液体含浸表面の適用は、例えば、装置が動作中である場合に2つの部品が互いに接触するように構成された装置にまで拡張することができる。2つの部品のそれぞれは、含浸液体と、マイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを含む面を含んでいてもよい。面のそれぞれに関し、含浸液体は前記固体フィーチャの間の空間を満たす。各面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有することができる。面のそれぞれに関し、含浸液体は、面の配向とは無関係に、かつ面の間にもたらされた接触とは無関係に、固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持される。いくつかの実現例では、装置が推力軸受である。
【0095】
いくつかの実現例では、開示された技術は、空気またはその他の気体から固体粒子を捕獲するための装置を含む。装置は、含浸液体と、マイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを有する面を含んでいてもよい。含浸液体は、固体フィーチャの間の空間を満たしてもよい。面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有していてもよい。含浸液体は、面の配向とは無関係に、固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持されていてもよい。いくつかの実現例では、装置が空気フィルターである。含浸液体は、高粘度(例えば、1000cP超)を有する。
【0096】
開示された技術は、いくつかの実現例において、硬化性含浸液体と、マイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを有する面を含んでいてもよい。含浸液体は、固体フィーチャの間の空間を満たしてもよい。面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有していてもよい。含浸液体は、面の配向とは無関係に、固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持されていてもよい。含浸液体は、硬化(例えば、熱への曝露)によって、固体に変換されてもよい。
【0097】
液体含浸表面の適用は、例えば、抗力を低減させるように構成された面を有する装置(例えば、車両、自動車、航空機、ボート、魚雷、ミサイルなど)にまで拡張することができる。面は、含浸液体と、マイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってそれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを含んでいてもよい。含浸液体は、固体フィーチャの間の空間を満たしてもよい。面は、固体フィーチャの間に含浸液体を安定して含有していてもよい。含浸液体は、面の配向とは無関係に、固体フィーチャの間で所定位置に実質的に保持されてもよい。
【0098】
液体含浸表面の適用は、例えば、流体搬送と、製造設備、システム、およびプロセスであって、以下に記述されるようなものにまで拡張することができる。いくつかの実現例では、液体含浸表面は、流体/材料の送液、包装、移動、および/または移送に使用される。いくつかの実現例では、液体含浸表面は、容器の間で流体を移送するのに使用されてもよい。液体含浸表面は、セメント、油、ポリマー、チョコレート、キャットフード、ドッグフード、蝋、および/または、石油ガス産業における重油など、粘性材料を搬送するのに使用されてもよい。
【0099】
いくつかの実現例では、コンジットと搬送されている材料との間の滑りなし条件が、コンジットの縁部で非常に急峻な速度プロファイルをもたらす。いくつかのプロセスの場合、このプロファイルは、高剪断が材料または生成物を実際に劣化させる可能性があるので非常に望ましくない。開示される技術は、いくつかの実現例において、材料が非常に均一な速度プロファイルを有する例えばスラッグとして移動するように、高滑り境界条件を提供する。これは、非常に粘性のある材料を用いる適用例、およびIVドリップなどの小さいコンジット内を流れる低粘度材料を用いる適用例で、有益である。
【0100】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングを、IVドリップ、IVチューブの内層、およびIVバッグの内面に付着させてもよい。そのようなコーティングは、IVバッグおよび/またはチューブの内容物を、その内容物の廃棄物を最小限に抑えながらIVバッグおよびチューブに沿って容易に滑らせることが可能であると考えられる。IV内層の滑り易さを増大させることにより、液体含浸表面コーティングは、IVチューブおよびバッグとそれらの内容物との間の引力を低減させる。これにより、内容物を容易に吐出させることが可能になる。例えば医師は、薬物をより大きいゲージのIVに入れることができないので、適切な流量の薬物を患者まで運ぶことが頻繁にできない。IVチューブ内での液体含浸表面の生成は、より大きいゲージのIVを使用することなく、適切な流量の薬物を患者まで運ぶ能力を医師に与える。
【0101】
液体含浸表面の適用は、例えば成型で使用されてもよい。例えば液体含浸表面は、トランスファ成型で使用されてもよい。いくつかの実現例では、任意の既存の面を、テクスチャ付きの面に変化させるための方法が含まれる。いくつかの実現例では、テクスチャ付きの面を、未硬化液体ポリマー(例えば)で満たす。満たされた面(金型である。)は、液体ポリマーが既存の面に接触するように、既存の面上に配置されてもよい。次いで液体ポリマーを硬化し、固めてもよい(使用される液体ポリマーに応じて、様々なプロセスにより実現することができる。)。固めた後、金型を除去してテクスチャ付き硬化ポリマーを面上に残すことができる。いくつかの実現例では、当初のテクスチャ付きの面(例えば、金型)を、ナノまたはマイクロスケールの粒子と液体(例えば、スラリー)との混合物で満たすことができる。液体含浸表面は、離型剤として使用されてもよい。
【0102】
液体含浸表面の適用は、例えば軸受で使用されてもよい。例えば推力軸受は、それぞれが不混和性の異なる流体を有する、2つの液体封入面から構成することができる。面が接触している場合、界面は液体-液体となる。得られる摩擦は非常に低くなる。剪断減粘流体は、さらに低い摩擦にするためにまたは抵抗を変化させるよう特別に調整するために使用されてもよい。
【0103】
液体含浸表面の適用は、例えば、高摩擦製造プロセス、容器、および関連ある設備と共に使用されてもよい。例えば液体含浸表面は、射出成型に使用されてもよい。典型的には、射出成型で遭遇する高剪断力は、ポリマーメルト内に粘性加熱をもたらし、極端な場合にはポリマーの燃焼をもたらし得る。金型ランナーおよびキャビティへの液体含浸表面コーティングの付着は、壁面での剪断力を実質的に低減させることになり、より低い射出圧力をもたらす。これは、射出のためのエネルギー要件の低減を含めたいくつかの利益をもたらすが、同じ部分を、より小さく費用のかからない射出成型機で成形できることを意味する。いくつかの実現例では、コーティングは、離型剤として同時に機能することができる。いくつかの実現例では、ノズルからの押出しに必要な電力は、ノズルが液体含浸表面でコーティングされている場合には著しく低減させることができる。液体含浸表面は、酸化されることのない、潤滑化されたダイまたは押出し機の部品を生成するのに使用されてもよい。液体含浸表面は、ダイを潤滑化するのに使用されてもよい。
【0104】
液体含浸表面は、押出しおよび/または鍛造に使用されてもよい。押出しおよび鍛造では共に、典型的には、少量の相対的な滑りを伴いながら(パイプなどのコンジットでの大量の相対的な滑りとは対照的に)高粘性材料がダイの面を通り過ぎるように流れる。これは、プラスチック、金属、ガムやキャンディなどの食品、ワイヤ、糊、エポキシ、ゴム、および/またはポリマーの押出しおよび/または鍛造を含む。液体含浸表面は、冷間押出しおよび/または冷間鍛造で使用されてもよい。
【0105】
液体含浸表面は、液体金属、潤滑剤、コーキング材、セメント、タイルグリット、石膏、タール、アスファルト、石炭スラリー、蝋、洗濯洗剤、皿洗い用洗剤、グリース容器、冷蔵容器、ブタン容器、液体窒素容器、液体ヘリウム容器、ガス容器、液化ガス容器、モーター油容器、石油製品、ブレーキ液容器、油容器、塗料、インク、建設材料(例えば、膨張性)、またはその他の材料および/または容器を含有する容器で使用されてもよい。液体含浸表面は、自己清浄ガラス、光起電力セル、および/または太陽熱を生成するのに使用されてもよい。液体含浸表面は、淡水化(例えば、淡水化に使用される凝縮器)、液体天然ガス凝縮器、エネルギー保存(例えば、発電所、油パイプライン、燃料ラインにおける凝縮器)に関連付けて使用されてもよい。液体含浸表面は、車、航空機、バス、およびその他の車両、および/または設備に除氷面を生成するのに使用されてもよい。液体含浸表面は、液体含浸表面を1つのまたは両方の面に生成するステップを適用することによって、固体間摩擦の低減に使用されてもよい。
【0106】
液体含浸表面は、実験室材料に使用されてもよい。例えば、液体含浸表面は、ピペット、ビーカー、およびその他の材料に使用されてもよい。液体含浸表面は、空気濾過に使用されてもよい。例えば空気フィルターは、液体含浸表面(例えば、液体含浸表面の織込み経路)を含む交換カートリッジを使用してもよい。空気フィルターカートリッジは、空気を周囲の環境からカートリッジ内に通すように移動させてこの空気を濾過するデバイスに組み込まれてもよい。空気フィルター内を通過する粉塵は、いくつかの実現例において、カートリッジ内の液体含浸表面に粘着することになる。
【0107】
スラッグの捕捉、昆虫の捕捉、および/または害虫の捕捉用の液体含浸表面。例えば液体含浸表面は、虫を捕獲するために使用されてもよい。封入面は、大きな垂直力を生成することができ、その面上に止まった昆虫は、自らをそこから移動させるのに十分な力を発生させることができなくなる。封入面は、同様の効果を発揮する可能性があり、小さい昆虫には極めて「粘着性」が高くなる。液体含浸表面は、虫が止まることのできない面を生成することによって、殺虫剤として使用することもできる。
【0108】
液体含浸表面は、接着ストリップに使用してもよい。いくつかの実現例において、液体含浸表面は、面に垂直に、固体物体に対して下向きに引っ張る、含浸液体の表面張力から生じた法線方向に強力な毛管接着力を有する(面を引き離す。)。いくつかの実現例では、テクスチャ付きの面は、凝固しまたは硬化することができる液体(例えば、エポキシ)と共に封入されてもよい。したがって硬化性液体封入面は、従来のテープと同様に付着させるのが便利と考えられるが、エポキシの強度を有する。
【0109】
液体含浸表面は、保存を表示するのに使用されてもよい。例えば使用者は、適正にテクスチャが付けられた面に、書き込み/印刷し/描くことができる。面に油をコーティングした後、書込みは有効にロックされ、保護される。
【0110】
液体含浸表面は、飛行機、列車、もしくは自動車のフロントガラスに、または同様にヘルメットの日除けおよび/または眼鏡(例えば、サングラス)に使用されてもよい。例えば、雨の中でフロントガラスをワイパーで清浄化するには、かなりの量のエネルギーを要する。液体封入フロントガラスは、ワイパーを必要とすることなく、雨滴を潜在的に弾くことができる。同様に、液体含浸表面は、航空機のフロントガラスにも付着させることができる。液体含浸表面は、フロントガラスに付着されてもよく、または必要に応じて(例えば、航空機の着陸中、暴風雨の最中など)リザーバからフロントガラスに噴霧されてもよい。
【0111】
液体含浸表面は、スキー、アイススケート、そり、水着、ボート、またはその他の水および/またはスポーツ設備で使用されてもよい。液体含浸表面は、魚雷の面上で使用されてもよい。
【0112】
液体含浸表面は、農業用のトラクター、CO2凝縮器、LP凝縮器、N2凝縮器、気体凝縮用の面、および/または油圧ラインおよびガスラインの内側に使用されてもよい。
【0113】
液体含浸表面は、家庭用機器、付属品、および鍋、調理器具、食器類、ヘラ、ポット、プレート、ドレイン、および/または便器などの品目に使用されてもよい。液体含浸表面は、液体を捕えるために、面の一部に付着されてもよい。液体含浸表面は、玩具およびゲームに使用されてもよい。例えば液体含浸表面は、スリッピンスライド(a slip n slide)で使用されてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面は、含浸液体の均一な層を任意の面に付着することによって生成される。この面は、コンタクトレンズの面であってもよい。液体封入面は、装着者の快適さを改善するために、コンタクトレンズに付着することができる。液体封入面は、灼熱痛、刺痛、発赤、異物感、過剰な涙、および断続的な視力障害を含めたドライアイの症状を予防するために、かつ眼の潜在的な引掻き傷を低減させるために、コンタクトレンズが水分を保ちかつ眼の中に涙液膜を維持するのを助けることも可能である。
【0115】
現在、使い捨てコンタクトレンズの寿命は平均して2週間である。液体封入面は、実質的に現行の使い捨てコンタクトレンズの寿命を延ばすことができる。コンタクトレンズと眼との間に保たれた液体界面は、コンタクトレンズの摩耗および断裂を低減させるのを助けることができ、それによってコンタクトレンズの寿命が改善される。液体封入面は、コンタクトレンズを一晩、さらに2週間よりも長い期間にわたって装着するのを可能にすると考えられる。
【0116】
いくつかの実施形態では、液体封入面は、コンタクトレンズのメンテナンスを低減させることもできる。「Refresh Contacts」、「Clerz Plus」、または「Clear Eyes Contact Lens Relief」などの現行の再湿潤液滴製品は、コンタクトレンズを湿潤させ、刺激および不快感を引き起こすコンタクトレンズ上に生じた粒子を除去する。しかしこれらの再湿潤液滴は、液体封入面が付けられたコンタクトレンズではしばしば必要とされなくなるが、それは液体封入面が水分を保ちかつドライアイを予防することになるからである。現行のコンタクトレンズは、コンタクトレンズを湿潤させるために夜ごと食塩液に浸漬する必要がある。そのような夜ごとの浸漬は、改善されたコンタクトレンズに存在する液体封入面により、必要ではなくなる可能性がある。
【0117】
いくつかの実施形態では、コンタクトレンズは、レンズの片側もしくは両側にテクスチャもしくは粗さを有していてもよく、またはレンズの全体にわたって拡がる多孔性を有していてもよい。レンズの液体層に収容される液体は、レンズの片側または両側に付着させることができる。あるいは、液体をレンズ全体にわたって浸漬することができる。液体は、購入後に使用者が付着させかつ何回も付着し直すことができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、コンタクトレンズはポリイミドから構成される。テクスチャは、スフェルライトまたはその他の微細なマイクロ構造が形成されるように、ポリイミドのポリマー面の温度または溶媒で誘発した結晶化を介して制御しまたは調節することができる。コンタクトレンズの製造で既に使用されている多くのポリマーは、スフェルライトの結晶化を受ける。
【0119】
固体および液体材料は、眼との接触に関して米国食品医薬品局により安全であると既に考えられている材料から選択されてもよい。液体は、眼の流体に対して不混和性とすることができ、眼の流体は、テクスチャへの供給材として作用することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、固体フィーチャおよびレンズそのものの材料は、ポリマー、ヒドロゲル、ポリイミド、ポリマコン、シリコーンヒドロゲル、ポリメチルメタクリレート(PMMAまたはPerspex/Plexiglas)、またはこれらの材料の任意の組合せであってもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、光学的透明度は、100nmよりも小さいフィーチャを有することによって、またはテクスチャ材料と液体との屈折率を一致させることによって、実現することができる。液体およびテクスチャは、理想的には透明または半透明であるが、可視スペクトルでの有効透過率が少なくとも95%になるように十分薄いと考えられる。
【0122】
いくつかの実施形態では、液体層内の含浸液体は着色されている。着色された含浸は、カラーコンタクトレンズに色を与える。
【0123】
いくつかの実施形態では、含浸液体は、平衡状態または実質的な平衡状態にありながら、面の固体フィーチャの最上部の上方に拡がる液体層を形成する。いくつかの実施形態では、液体層は、固体フィーチャの最上部の上方に少なくとも約5nm拡がる。
【0124】
いくつかの実施形態では、CO2または深UVなどの現行のレーザーエッチング技法を、コンタクトレンズの内面全体にわたってパターニングされテクスチャが付けられた面を発生させるように適合させることができる。現行のレーザーエッチング技法は、コンタクトレンズの内側に小さな識別マークを生成するだけである。レーザー技法は、コンタクトレンズ全体にわたり均一な寸法を有するパターニングされたテクスチャが得られるように拡張してもよい。このテクスチャが付けられた面に、コンタクトレンズの材料と同じまたはほぼ同じ屈折率を有する液体を含浸させることにより、コンタクトレンズが透明になると考えられる。以下に論じる例示的な実験は、液体封入面を有するコンタクトレンズの透明度と、従来のコーティングされていないコンタクトレンズの透明度とを比較する。
【0125】
ある実施形態では、医療用デバイスまたは医療用器具の面を含浸液体溶液で噴霧コーティングすることにより、その面上に粒子がコーティングされる。噴霧コーティングは、含浸液体の均一な被覆を医療用デバイスまたは医療用器具の面に付着させてもよい。ある実現例では、含浸液体は、多段階で医療用デバイスの面上に噴霧コーティングされてもよい。含浸溶液がいくつかの異なる溶液で構成される、ある実現例では、含浸液体の様々な構成成分の溶液を、異なる段階で目標とする面上に噴霧コーティングしてもよい。
【0126】
核生成を阻止するための液体含浸表面の適用例には、例えば、歯、義歯、固定具、または保定器上でのプラークの核生成の予防を含めてもよい。液体含浸表面の適用例には、例えば、人工インプラントでの線維形成の予防を含めてもよい。さらに適用例には、コレステロールまたはその他の固体様材料の蓄積から詰まりが生じる、血液に接触している面またはチューブもしくは人工動脈もしくはステントの面での血栓症の予防を含めてもよい。これらの面は、より潤滑化された界面から利益を得ると考えられる。
【0127】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面は、含浸液体の均一な層を、面に付着させることによって生成される。ある実現例では、この面がヒトまたは動物の組織であってもよい。含浸液体の均一な層は、均一な液体含浸表面コーティングが生成されるように、面上に噴霧されてもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、注射器の内容物を全て空にするために、注射器の内面に付着されてもよい。例えば注射器のシリンダーバレルの内面が、含浸液体でコーティングされてもよい。これは注射器の内容物と注射器のシリンダーバレルの内面との間の引力を低減させて、最大量の注射器の内容物を、少ないプランジャー力を加えることによって排出させることになる。
【0129】
いくつかの実施形態では、プラークの形成を予防するために、液体含浸表面コーティングを動脈壁の人工または天然の内層に付着させてもよい。内層は、プラークを容易に動脈壁の内層に粘着させないような手法で、含浸液体でコーティングされてもよい。含浸液体は、動脈壁に含浸液体溶液を送液することにより、または任意の外科的手段により、動脈壁の内層に付着されてもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングを、IVドリップ、IVチューブの内層、およびIVバッグの内面に付着させてもよい。そのようなコーティングは、IVバッグおよび/またはチューブの内容物を、その内容物の廃棄物を最小限にした状態で、IVバッグおよびチューブに沿って容易に滑らせることが可能と考えられる。IV内層の滑り易さを増大させることにより、液体含浸表面コーティングは、IVチューブおよびバッグとそれらの内容物との間の引力を低減させる。このため内容物を容易に吐出させることが可能である。例えば医師は、薬物をより大きいゲージのIVに入れることができないので、適切な流量の薬物を患者まで運ぶことが頻繁にできない。IVチューブ内での液体含浸表面の生成は、より大きいゲージのIVを使用することなく、適切な流量の薬物を患者まで運ぶ能力を医師に与える。
【0131】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングを結腸ろうバッグに付着させてもよい。これは、結腸ろう形成後に排便のスムーズな受容をより容易にし、患者への不快感を低減させる。
【0132】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、プラークの蓄積が予防されるように歯に付着されてもよい。そのようなコーティングを付着させることによって、食物粒子およびその他のプラークは歯に粘着し難くなり、それによって対象の歯科学的健康状態が増大する。
【0133】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、以下に論じる図2Aおよび2Bで明らかにされた実験により示されるように、金属または金属製の外科用機器に付着されてもよい。そのようなコーティングの、外科用機器への付着は、血液などの体液を、コーティングされた外科用機器から弾き出し、その機器を清浄に保つことが可能になる。
【0134】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、患者への不快感を引き起こすことなく皮膚から包帯を容易に除去できるようにするために、包帯に付着されてもよい。例えば、そのような液体含浸表面コーティングを有する包帯は、時間および圧力と共に非常に緊密に創傷または皮膚にくっ付くことがなく、容易に除去することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、血液ポンプに付着されてもよい。送液される血液およびその他の生物流体で遭遇する剪断力は、細胞をばらばらに切り離すことにより、これらの細胞をしばしば損傷しまたは破壊する。液体含浸表面コーティングは、細胞およびその他の生物学的構造の損傷が予防されるように、ポンプの面での剪断力を著しく低減させた。
【0136】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、実験室用品および医薬品を清浄に保ちかつそれらに異物が粘着しないようにするために、それらに付着されてもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、以下に論じられる図3Aおよび3Bで明らかにされた実験により示されるように、嚥下を容易にする目的で丸剤およびカプセル剤に付着されてもよい。そのようなコーティングの丸剤への付着は、丸剤とヒト組織との間の摩擦力を低減させることによって、コーティングされた丸剤を舌および食道組織に沿って容易に滑らせることを可能にする。
【0138】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、マイクロピペット、ピペット、ピペットチップ、生物流体およびサンプルの小体積容器に付着されてもよい。小体積容器およびマイクロピペットの場合、容器に粘着したままの内容物の割合は、容器の全体積に対して有意な分率を示す。さらに内容物は、しばしば高価であり、得るのに労力を非常に要する。これらの容器およびピペットチップの内面への含浸液体コーティングの付着は、廃棄物を最小限に抑えた状態でこれらの容器から内容物を容易に排出させる。同様に、コーティングは、これらの容器の内容物、特にDNAおよびRNAストランドに付着されてもよく、小体積容器からのこれら化合物の容易な排出を支援することになる。
【0139】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングをマイクロ流体デバイスに付着させてもよい。しばしばマイクロ流体チャネルは、これらのチャネル内を通過している内容物で詰まるようになる。マイクロ流体チャネルを液体含浸表面コーティングでコーティングすることにより、これらのマイクロ流体チャネルの内容物はチャネルに詰まらず、マイクロ流体デバイスは、いかなるメンテナンスも行わずに長期間にわたり動作し続けることができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングを、透析チューブおよび透析機のその他の構成要素に付着させて、血液からの廃棄物および過剰な水の除去をより容易に進めることができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、内視鏡、ステント、注射針、ステント、カテーテル、気管切開チューブ、および挿管デバイスなどの体内に挿入される任意の手術用具に付着させてもよい。そのようなコーティングは、これらの面に付着させると、身体組織に望ましくない裂傷を全く引き起こすことなく体内にさらに容易に挿入することが可能になる。そのようなコーティングは、挿管装備のより快適な挿入を可能にする。コーティング内の封入液体は、手術用具が挿入されている間に挿入の局所領域に麻酔をかけ清浄にすることができる、中間防腐剤および麻酔薬を含有していてもよい。ヒト組織をシミュレートするのに使用されるステーキに接触させた、手術器具の面をシミュレートするのに使用されるポリプロピレンシートを使用して実行された実験を、以下に論じる図4Aおよび4Bに示す。
【0142】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングを、クリーム、処方クリーム、軟膏、ネオスポリン、3種の抗生物質を含む軟膏(triple antibiotic ointment)、火傷を緩和するクリーム(burn relieving cream)、痒み止めクリーム、アロエゲル、日焼け止めローション、およびその他のローションに付着させてもよい。コーティングは、軟膏、ローション、およびクリームの容器に付着させてもよい。そのようなコーティングは、これらの化学物質を容易に吐出させると考えられ、そのようなクリーム、軟膏のローションの最後の数滴が容器の壁面に粘着するのを防止すると考えられる。
【0143】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、医療用品、手袋、開放創を覆うための包帯、皮膚の状態に合わせた包帯、医療用インプラント、インプラントコーティングを異物から清浄に保つために、これらに付着されてもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングを、医療用デバイスの面、人工心臓、および人工臓器に、これらのデバイス上に有機物質が蓄積されないように付着させてもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、有効な動作を損なわせる可能性のある汚れおよび有機物質の蓄積をなくした状態を保つために、液体含浸表面コーティングをプロテーゼおよび自己潤滑関節に付着させてもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングを、保定器、歯型、義歯、歯科用固定具、目に見えない固定具などの歯列矯正用具に付着させてもよい。面コーティングは、これらの歯列矯正用具の面上のプラークの蓄積を回避することができ、歯科学的健康および衛生状態が改善される。
【0147】
いくつかの実施形態では、生物付着を回避するために、液体含浸表面コーティングをブリッジおよび濡れ面に付着させてもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティング内の封入液体は、面を清浄なままにするために、防腐性および抗菌性であってもよい。これは、医療用デバイスの清浄さが最優先される医療の適用例において、特に重要である。
【0149】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングを、接着ストリップに付着させてもよい。液体含浸表面は、法線方向において強力な毛管接着力を有する。横力は、含浸液体粘度に依存する。極端に高い粘度の含浸液体は、本質的に固体として振る舞うことができ、滑りが防止され、したがって面は、テープと同様に振る舞う可能性がある。低粘度流体は容易に滑り、そのため法線方向では接着剤として振る舞うが、横に滑る面が得られる。あるいは、テクスチャが付いた面は、凝固しまたは硬化することができる液体(即ち、エポキシのような)で封入することができる。したがって硬化性液体封入面は、従来のテープと同様に都合良く付着することができるが、エポキシの強度を有する。
【0150】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングをコンドームに付着させてもよい。保護コーティングは性交中の摩擦を低減させることができ、裂傷を予防することができる。さらに面コーティングは、摩擦を低減しかつ裂傷を最小限に抑えるよう、身体の開口部に挿入される類似の成人用の用具に付着させることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングを薬物放出パッチに付着させてもよい。この製品は、バンドエイドと同様に見えてもよいが、バンドエイドの白色部分を液体封入面に置き換えることができる。封入液体は、薬剤または薬物とすることができる。次いでこの液体は、薬剤が送達されるように皮膚に付着することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングを、マニキュア液、シャンプー、コンディショナー、ボディウォッシュ、ヘアジェル、フェイスマスク、および練り歯磨きなどの化粧品に付着させてもよい。これらの化粧品に、そのようなコーティングを付着させることにより、粉塵を弾くことが可能になり、身体に付着される化粧品に通常なら引き付けられる可能性のある粉塵を防ぐ。
【0153】
医療用デバイスまたは器具の面と、前記面に接触している組織または流体との間の機械的な相互作用を、制御することができる。流体は、その由来が生物であってもよく(血液、唾液、汗、尿、または間質液が含まれるが、これらに限定されない。)、または生物活性成分(薬物、ビタミン、ミネラル、タンパク質、ペプチド、または核酸が含まれるが、これらに限定されない。)を流体に加えた人造の懸濁液もしくは溶液であってもよい。
【0154】
一実施形態では、医療用デバイスまたは医療用器具の面の潤滑性は、接触する組織または流体に対する潤滑性が、修正されていない面よりも増大するようにまたは低下するように、修正される。このように、組織または流体に対する面の有効摩擦係数は、制御可能な方法で増大または低下させることができる。例えば、デバイスまたは器具の面が、組織または流体の面を端から端まで容易に動くことが望まれる場合、その有効摩擦係数を低減させることができ;同様に、デバイスまたは器具の面が、組織または流体の面を端から端まで容易に動かないことが望まれる場合(例えば、デバイスまたは器具が、組織または流体に効果的に固着される。)、その有効摩擦係数を増大させることができる。
【0155】
一実施形態において、医療用デバイスまたは医療用器具には、組織、または生物流体、または薬物を含めた生物活性成分を懸濁させたもしくは溶解した流体に対して、制御された潤滑性が設けられ、このデバイスまたは器具は、含浸液体と、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってこれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを含んだ面を含むものであり、前記含浸液体は前記固体フィーチャの間の空間を満たし、前記面は、前記固体フィーチャの間に前記含浸液体を安定して含有し、前記含浸液体は、前記面の配向とは無関係に前記複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持されるものである。
【0156】
本発明の別の実施形態では、デバイスまたは器具の潤滑性は、デバイスまたは器具の面の端から端までの組織または流体の移動を空間制御する目的で、空間次元で変化する。一例では、流体がデバイスまたは器具の面のいくつかの部分を容易に流れ、それと共にデバイスまたは器具の面のその他の部分では実質的に留まり、または捕捉されることが望まれる可能性がある。別の例では、組織が面のいくつかの領域上を自由に動くとともに面のその他の領域には実質的に固着されたままになるように、デバイスまたは器具の面と組織との間の相互作用を制御することが望まれる可能性がある。
【0157】
一実施形態では、面および/または含浸液体の性質は、異なる潤滑性のパターンが得られるように、空間次元で変化する。
【0158】
本発明の別の実施形態において、組織そのものの面は、組織と医療用デバイスもしくは器具の面との間の潤滑性を制御するように、または組織の面上の流体の運動に対して、修正される。組織の面は、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャが組織の面に導入されるように、機械的、化学的、電気的、またはその他の力を使用して修正することができる。これらのフィーチャは、含浸液体を効果的にかつ安定して保つのに十分であり、その性質は、このように修正された組織と、医療用デバイスもしくは器具の面との間の潤滑性を制御することが可能であり、または組織の面上の流体の運動に対して十分なものである。組織面のこの修正は、デバイスもしくは器具の面に対するまたは流体に対する組織の潤滑特性に、一時的なまたは永続的な変化をもたらし得る。
【0159】
一実施形態において、組織には、医療用デバイスもしくは医療用器具、または生物流体、または薬物を含めた生物活性成分を懸濁させたもしくは溶解した流体に対して、制御された潤滑性が設けられ、この組織は、含浸液体と、複数のマイクロスケールおよび/またはナノスケールの固体フィーチャであってこれらの間に含浸液体を安定して含有するように十分に近接して間隔を空けられた上記固体フィーチャとを含んだ面を含むものであり、前記含浸液体は前記固体フィーチャの間の空間を満たし、前記面は、前記固体フィーチャの間に前記含浸液体を安定して含有し、前記含浸液体は、前記面の配向とは無関係に前記複数の固体フィーチャの間の所定位置に実質的に保持されるものである。
【0160】
一実施形態では、面および/または含浸液体の性質は、異なる潤滑性のパターンが得られるように空間次元で変化する。
【実施例
【0161】
(実験実施例)
(実施例1)
【0162】
図2は、液体含浸表面コーティングがコーティングされたピンセットからの、血液の液滴の反発に関する実験測定を示す。図2Aに示されるように、2つの同一のプラスチックピンセット、ピンセット202およびピンセット204を、2ドラムのブタ血液で満たされた容器206内に浸漬する。ピンセット202は、対照ピンセットとしてコーティングされていない。ピンセット204は、液体含浸表面コーティングでコーティングされている。ピンセット202および204を同時に容器206に浸漬し、同時に取り出す。ピンセット202および204を同じ手で持つ。
【0163】
図2Bは、両方のピンセット202および204をブタ血液の容器206から取り出したときの、ピンセット204に対する面コーティングの影響を示す。コーティングされていないピンセット202は、血液残留物の染みが付いている。液体含浸表面がコーティングされたピンセット204からは、ピンセット204を容器204から引き出したばかりのときに血液の大部分が落とされて最小限の残留物しかない。
【0164】
図2の実験は、医療用デバイスを体液から清浄に保つように、液体含浸表面を設計製作できることを実証する。これは、医療用設備および手術用具を滅菌状態に保つのに役立つ。
【0165】
(実施例2)
【0166】
この実施例は、液体含浸表面の丸剤が、コーティングされていない丸剤よりも嚥下するのが容易であることを実証する。これは、コーティングされていない丸剤の滑り速度に対し、1片のステーキ上での、液体含浸表面がコーティングされた丸剤の滑り速度を比較することによって実証される。
【0167】
図3Aは、食道および舌組織を模倣したステーキ上での、コーティングされた丸剤302とコーティングされていない丸剤304との滑りを明らかにするために撮影したビデオのスクリーンショットを示す。コーティングされ、またコーティングされていない丸剤を、図3Aに示されるように2片のステーキ、ステーキ306および308上で、平行な向きに配置した。ステーキ306および308は、65°の傾きで配置した。丸剤302には液体含浸表面(カルナウバ蝋およびオレイン酸エチル)をコーティングし、それに対して丸剤304は、対照としてコーティングしなかった。
【0168】
特にピンセットは、円筒状の薄黄色の丸剤(Vitacost Alpha Lipoic Acid & Acetyl L-Carnitine HCl--1600mg/1回分)を拾い上げるのに使用した。カルナウバ蝋を3秒間、丸剤302に噴霧して、液体含浸コーティングの均一なコーティングを付着させた。オレイン酸エチルを付着させる前に、コーティングが乾燥するような時間にわたり、窒素ガスを丸剤302全体に吹き付けた。オレイン酸エチルを3秒間、丸剤302に噴霧して、均一なコーティングを付着させた。引き続き、コーティングされていない丸剤304をステーキ308上に置いた。液体含浸表面がコーティングされた丸剤302を、ステーキ306上に置いた。丸剤302および304を、それらのそれぞれのステーキの最上部に置いた。丸剤の向きは、定規310に直交していた。引き続き、ステーキ306および308を調節して、その面が65度傾くようにした。図3Aは、丸剤がステーキの最上部に置かれてからゼロ秒での、丸剤302および304を示す。
【0169】
図3Bは、丸剤302および304をステーキの最上部においてから3.5秒のスクリーンショットを示す。この時、コーティングされた丸剤302はステーキ306の底部に達したのに対し、コーティングされていない丸剤304は、ステーキ308の最上部に残されたままであった。丸剤302はゆっくり滑り始めたが、約4.5cm/秒の速さまで急速に加速した(1.5秒にわたる7cmの移動距離を基に計算した。)。コーティングされていない丸剤は、この実験全体を通してステーキの最上部に残されたままであった。
【0170】
図3の実験は、コーティングされていない丸剤が同じ傾斜角でステーキ上の任意の距離を移動しなかったので、丸剤表面の液体含浸表面コーティングは、ヒトの舌および食道の面構造を模倣したステーキなどの動物組織の最上部での丸剤の滑りを助けることを実証する。
【0171】
(実施例3)
【0172】
この実施例は、液体含浸表面と肉との間の低摩擦を実証する。これは、液体含浸表面上の生のアイラウンドステーキの滑り速度と、コーティングされていない面上での別の生のアイラウンドステーキの滑り速度とを比較することによって実証する。ビデオを撮影して、コーティングされていない、またコーティングされた、ポリプロピレンシート上でのステーキの動きを明らかにした。
【0173】
この実験は、最初に12”×12”のポリプロピレン(PP)シート(ゲージ=0.060”)を2枚の6”×12”シート、シート406および408に切断することによって行った。カルナウバ蝋をシート408に15から30秒間噴霧して、均一なコーティングを付着させた。引き続き、オレイン酸エチレンをシート408に30から45秒間噴霧して、均一なコーティングを付着させた。シート406は、対照としてコーティングしないままにした。シート406をシート408の隣に置き、両方のシート406および408を45度の傾きに配置した。ステーキ402をシート406の最上部に置き、ステーキ404をシート408の最上部に置いた。食肉ステーキの開始点は、PPシートの最上部から4インチであった。食肉が移動するビデオを撮影して、コーティングされていないPPシートとコーティングされたPPシートとの差を明らかにした。図4Aは、ステーキをPPシートの最上部に置いたときの、時間ゼロでのビデオフレームを示す。図4Bは、図4Bに示されるフレームから131秒後のビデオフレームを示す。図4Bは、ステーキ404がシート408の底部に達し、一方、コーティングされていないステーキ402は、PPシート406の最上部付近に残されたままであることを示す。
【0174】
ステーキが、PPシートの底部まで8インチ移動する時間を測定した。PPシート408上のステーキ404は、シートの底部まで移動するのに131秒要した。シート408上での、液体含浸表面がコーティングされたステーキ404の平均速度は、0.055インチ/秒であった。PPシート406上の、コーティングされていないステーキ402は、僅かに移動したが、2分30秒後にシートの底部から約7インチのままであった。追加の時間(約5分)後、ステーキは、傾斜ランプをさらに下向きに全く移動しないようであった。
【0175】
図4の実験は、面上の液体含浸表面コーティングが、コーティングされていない面におけるよりも容易に、面上で動物肉を滑らせるのを助けることを実証する。これは、そのような液体含浸表面コーティングが剪断力を低減させて、送液される血液またはその他の生物流体中の細胞およびその他の生物学的構造への損傷を防止することを証明する証拠を提供する。
【0176】
(実施例4)
【0177】
図5A~Dは、コンクリートと液体含浸表面がコーティングされた金型とを使用した離型実験を示す。いくつかの実施形態では、液体含浸表面コーティングは、歯型などの歯列矯正用具に付着されてもよい。図5Aに示されるように、隙間および構造が備わった、サルの形状をした超緻密なプラスチックボトルを使用して、離型/非粘着コーティングとしての液体含浸表面を実証した。約500mlのHDPE、サル形状のボトルを、鋸を往復させて半分に切断し、図5Bに示されるように前半分および後半分を生成した。ボトルの後半分に、以下に記述するように液体含浸表面をコーティングし、一方、前半分はコーティングしないままにした。
【0178】
液体含浸溶液を、ボトルの後半分に噴霧した。液体含浸溶液は、フッ素化蝋(HF diblock grey、Toko)1.5gをトルエン80mlに添加し、蝋が全て溶解するまでホットプレート上で加熱するステップを使用して調製した。次に溶液を5分間超音波処理し、室温まで冷ました。最後に、PTFE粒子(1μmサイズ、Sigma)10gを添加し、さらに5分間超音波処理した。溶液を金型に噴霧して、厚さ約10umのコーティングを生成し、次いでGalden HT 200を噴霧することによりテクスチャに含浸させ、テクスチャを満たした。
【0179】
速硬コンクリートを製造業者の取扱説明書に従い混合し、図5Cに示されるように、満たされるまで各金型内に注いだ。コンクリートを、室温(70°F)で約15分間、そのまま硬化し、各金型をカウンター上で上下に転動させた。次いで本発明者らは、コーティングされたプラスチックの金型を、固めたコンクリートから容易にかつ完全に引き出すと、図5Dに示されるように、ボトルの内側の鋳造物が残された。コーティングされていない側は、金型から外さなかった。
【0180】
(実施例5)
【0181】
図6は、固体同士の接着実験を示す。横力(滑り)は含浸液体粘度に依存する。極端に高粘度の含浸液体は、本質的に固体として振る舞うことができ、滑りが防止され、したがって面は、テープと同様に振る舞うと考えられる(図6)。低粘度流体は容易に滑り、したがって、法線方向では接着剤として振る舞うが横に滑る面が得られる(マレットを容易に滑らすことができるが引っ張り上げることは極めて難しい、エアーホッケーテーブルを想像されたい。)。
【0182】
接着力は、法線方向にスライドガラスから液体含浸表面を分離するのに必要な力を測定することによって得られた。スライドガラスはスケールに取着され、液体含浸表面は、法線方向にその面から引き上げられた。含浸液体に起因する毛管力は、τadh=1.1±0.1Paの接着強度をもたらした。液体含浸表面は、25umの間隔を空けて配置された幅および高さが10umの四角形のポストの、リソグラフィーでパターニングされたアレイを使用して調製された。10cStのシリコーン油を、その面に含浸させた。
【0183】
本発明者らは、3つの異なる構成を有する2つの固体材料の間の静摩擦係数μを測定した。第1の界面はPET上のケイ素(構成1)であり、第2の界面は、PET上の液体含浸表面(これに関して通常の接着性を測定した。)を有するケイ素であり、第3の界面(構成3)はカルナウバ蝋が噴霧されたガラスであって、オレイン酸エチルを含浸させたテクスチャが付いた面を生成するものである。下にあるPET面は、練り歯磨きの薄膜でコーティングされて、カルナウバ蝋よりもオレイン酸エチルが優先的に接触する化学的性質をもたらし、固体材料間の安定な液体被膜が保証された。これら構成のそれぞれに関する摩擦係数を、μ=tanαslide(式中、αslideは、面が最初に滑り始める角度である。)として計算した。錘を各面の最上部に取着した結果、各面において、上面の単位面積当たりの力はおよそ520±10N/mになった。構成1、2、および3に関する滑り出し角度αslideは、それぞれ24°、16°、および7°であり、その結果、摩擦係数μ=tanαslideはそれぞれ0.44、0.29、および0.12になった。したがって構成2および3は共に、直接固体/固体界面(構成1)よりも低い摩擦係数をもたらした。底部の化学的性質が練り歯磨きの層により修正された構成3は、最も低い摩擦を有し-これはおそらくは、液体(オレイン酸エチル)の薄膜が練り歯磨きとカルナウバ蝋との間で安定であり、したがって固体同士の接触がなかったからである。
【0184】
(実施例6)
【0185】
図7A~Fは、チューブ、パイプ、チャネル、またはその他同様の品目に対する液体含浸表面の影響を実証する。PVCパイプを1フィートのセクションに切断した。カルナウバ蝋コーティング(トリクロロエチレンに懸濁したカルナウバ蝋、5重量%)をパイプの両端に5~20秒間噴霧して、パイプの内側に均一なコーティングを付着させた。N2をパイプの端から端までかつ内部に吹き込み、コーティングを乾燥させた(約1~2分)。次に、パイプが再び透明になるまで(テクスチャに完全に含浸させたことを示す。)、オレイン酸エチルをパイプの両端に5~20秒間噴霧した。得られた製品は、液体含浸内面を有するパイプであった。
【0186】
長さが等しい液体含浸パイプおよび修正されていないパイプを、パイプ試験装置に組み立てた。修正されていないパイプを対照として使用して、液体含浸パイプの影響を評価した。テープを使用して厚紙に固定された2本のパイプを図7Aに示す。ラベル「Start(スタート)」および「Finish(フィニッシュ)」を、両方のパイプの同じ一に付着させた。各パイプ上でラベル同士を隔てる距離は、20cmであった。練り歯磨き20グラムを、両方のチューブのスタートラインに付けた。パイプ試験装置を45度の角度に配置し、練り歯磨きの速度ならびに練り歯磨きがスタートラインからフィニッシュラインまで20cmを移動するのに要する時間を測定した。図7B~Eは、コーティングされていないパイプとコーティングされたパイプでの、経時的な練り歯磨きの位置を示す。図7Bは、全経過時間4秒を示す。図7Cは、経過時間9秒を示し、その最中にコーティングされたパイプ内部の練り歯磨きは約10cm滑り、一方、コーティングされていないパイプ内の練り歯磨きはスタートラインにあるままであった。図7Dは、実験開始から1.9秒後の、フィニッシュライン近くにある、コーティングされたパイプ内の練り歯磨きを示す。図7Eに示されるように、2.1秒の全経過時間後、コーティングされたパイプ内の練り歯磨きはフィニッシュラインにあるが、コーティングされていないパイプ内の練り歯磨きはスタートラインにあるままである。図7Fに示されるように、2.4秒の全経過時間後、コーティングされたパイプ内の練り歯磨きはコーティングされたパイプから外に排出されるが、コーティングされていないパイプ内の練り歯磨きはスタートラインにあるままである。
【表1】
【0187】
図7A~Fに関連して記述された実験を、5回実行した。練り歯磨きが「スタート」から「フィニッシュ」まで20cm移動するのに要する時間の長さを、各トライアルごとに測定した。練り歯磨きの速度も決定した。コーティングされたPVCパイプ内で、練り歯磨きは平均して7.54±1.16cm/秒であった。練り歯磨きは、コーティングされていないPVCパイプ内では移動せず、したがって速度はゼロと見なした。コーティングされたパイプ内での練り歯磨きの時間および速度を表1に示す。
【0188】
(実施例7)
【0189】
図8A~Bは、射出成型実験の結果を示す。建築用接着剤の2つのチューブ(Sonolastic(登録商標)150 w/VLM Technology)を得て、それらのチップを、吐出用に同じID(7mm)に切断した。HF DiblockおよびTeflon粒子の溶液(前述の調製物)を、チップの内側に噴霧し、次いでGalden HT200を含浸させた。次いで各チューブを計量した。N2ガスシリンダーにフック留めした空気圧式コーキングガン、およびレギュレーターを使用して、実験を行った。
【0190】
1つの実験では、直径6mmのドリルビットを使用して各チューブを穿刺し、それぞれから、3つの異なる圧力で、持続時間5秒にわたり吐出させた。シーラントがボトルから出始めたらすぐに時間計測を開始した。圧力は、それぞれ30、35、および40psiであった。それぞれの吐出後に、チューブを計量し、平均質量流量を、(吐出された質量)/(吐出時間)として計算した。結果を図8A~Bにまとめる。結果は、コーティングされたノズルが標準ノズルよりも、同じ圧力で約50%増大した速度を示す。あるいは、同じ質量流量の場合、コーティングされていないノズルよりも液体含浸表面を有するノズルでは、同じ質量流量で減圧が必要である。例えば、表およびグラフに示されるデータにおいて、圧力30psiでのコーティングされたノズルの流量と、35psiでのコーティングされていないノズルの流量は(コーティングされたノズルに関して1.38g/秒であり、それに比べてコーティングされていないノズルに関しては1.37g/秒である。)ほぼ同じである。
【0191】
これは、必要な電力の14%の低減を示す(必要な電力=(圧力)×(質量流量)/(密度))。結果はノズルを超えて拡張するが、より一般には、材料をチューブ、パイプ、チャネルなどの内部に流すための電力は著しく低減させることができ、材料が接触する面は液体含浸表面を有することを実証する。
【0192】
(実施例8)
【0193】
図9A~Eは、液体含浸表面上での粉塵捕獲実験を示す。PETプラスチックの2つのほぼ2”の四角形を、0.040”の厚さのシートから切り取り、計量した。一方の四角形を、テクスチャ付きカルナウバ蝋およびオレイン酸エチルを含む液体含浸表面でコーティングし、他方は対照としてコーティングしないままにした。次いでコーティングされた四角形を、コーティングの量を明らかにするために再計量した。
【0194】
両方の四角形を、図9Aおよび9Bに示されるように、グローブボックス内のアルミニウムホルダー上に配置した。次いで中力粉を、図9Cに示されるようにグローブボックス内に導入した。二掴みの粉を一緒に「投げ入れ」て粉塵の雲を生成し、1回はサンプルの正面に、1回は後方に生成した。部品を図9Dに示されるようにボックスから取り出した。部品を計量し、粉末による重量増加は、液体含浸表面上に関しては0.52gであり、それに比べてコーティングされていないPET面上に関しては0.03gと計算された。データを図9Eに示す。
【0195】
(実施例9)
【0196】
図10A~Eは、コンジット実験を示す。図10Aに示されるように、長さ6”、直径2インチのPVCパイプを長さ方向に半分に鋸で切断して、コンクリートの送出に使用されるシュートを模倣する2つの「コンジット」を生成した。図10A~Eの右側のシュートは、フッ素化蝋およびTeflon粒子(ほかの箇所で記述する。)の液体含浸表面でコーティングし、Galden HT 200を含浸させた。図10A~Eの左側のシュートは、コーティングされないままであった。シュートを、45°でプラスチックのバケツに並べて配置した。速硬コンクリートを、製造業者の取扱説明書に従い混合し、コーティングされていないコンジットに注いだが、図10B~Eに示されるように、未硬化のコンクリートが面に粘着し、全てが底部に到達したわけではなかったことを示した。次いで未硬化コンクリートを、コーティングされたコンジットに注いだ。コーティングされたコンジットに注がれたコンクリートの全ては、シュートから滑り出し、図10B~Eに示されるようにコンジットの底部に至った。コーティングされていないコンジットに付着したコンクリートは、約20cm/秒のスピードで移動した。
【0197】
(実施例10)
【0198】
図11A~Dは、金属球表面の抗力を測定するために実行された実験を示す。典型的な超疎水性面では、凹凸の中に空気を捕捉するために、低エネルギー面上の面の凹凸を利用する。この空気層は、凹凸フィーチャ上を流れる流体により速度滑りを導入することができるが、それは空気が、空気ポケット内を自由に移動できるからである。これは最終的には、問題となっている上記流動流体での抗力を低減させる。さらに、空気は容易に圧縮されるので、圧力/力が導入されたときにこのポケットを容易に潰すことができる。本発明者らは、図11Aにおいて超疎水性面のこの弱さを実証する。ここで超疎水性アルミニウム球(後述するテクスチャ生成の方法)を水に浸漬し、1気圧から2気圧を加え、次いで元の1気圧に減圧した。空気被膜は2気圧で完全に潰れ、1気圧に減圧後、個々の泡へと再成長する。潰れると、面はもはや超疎水性ではなく、超疎水性は減圧後に再度得られない。これは、多くの超疎水性面が、なぜ工業的/技術的適用例で堅牢ではないかを説明する。潤滑剤含浸面では、2次流体または潤滑剤を、空気ポケットの代わりに面の凹凸に組み込む。この潤滑剤流体は、その上方を流れる1次流体による滑り条件を可能にし、液体はほとんど非圧縮性であるのでさらになお安定である。滑りの程度は、速度プロファイルを線形外挿し、滑り長さbを、そのプロファイルが0に外挿される面からの深さと定義することによって、特徴付けることができる。界面の上と下での剪断応力のバランスは、それを示す。
【0199】
液体含浸表面の滑り長さbを評価するために、本発明者らは、図に示されるようなシステムをモデル化する。ゼロ速度に線形外挿することにより、本発明者らは、滑り長さが:
b=V/(du/dy) 方程式1
であることがわかる。
【0200】
式中、uはx方向の流体速度であり、Vは油-水界面の速度であり、(du/dy)は、液-液界面の直上の速度勾配である。V=t(du/dy)(式中、tは膜厚であり、(du/dy)は被膜内の速度勾配である。)であることを認識し、これを方程式(1)に代入すると、本発明者らは:
b=t(du/dy)/(du/dy) 方程式2
を得る。
【0201】
界面の最上面において、剪断応力はτ=μ(du/dy)に等しく、界面の含浸液体側では、τ=μ(du/dy)である。τは、油-水界面ではτに等しくなければならないので、
μ(du/dy)=μ(du/dy)
であり、これを配列し直すと:
μ/μ=(du/dy)/(du/dy) 方程式3
が得られる。
【0202】
これを方程式2に代入すると、
b=t(μ/μ)またはb/t=μ/μ 方程式4
が得られる。
【0203】
μ/μ<1の場合、実際には含浸面に利益がないことに留意されたい。これが真実であるなら、外部流体を含浸させるのではなく単に外部流体でテクスチャを満たすことによって、より大きい滑り長さが得られると考えられる(エッチングされたテクスチャは、単に物体の直径が2tだけ小さいので、低い抗力をもたらすことを効果的に意味する。)。より粘性のある液体を含浸させた場合、滑り長さはコーティング厚さよりも小さく、したがって利益は、あたかも固体物体がt未満だけ小さいということである。この理論は、液体含浸表面の利益が、μ/μ>1の場合に十分になるだけである(低い抗力という文脈で)ということを予測する。
【0204】
粘性液体中を落下する球体では、到達する終端速度はV~Dと定められ、しかし液体含浸表面は、球体の有効直径を2bだけ効果的に低減させ、したがって本発明者らはより一般に:V~(D-2b)と書くことができる。
【0205】
半インチの直径のアルミニウム球体を、アセトンおよびエタノールと共に超音波処理して、汚れ/汚染物を除去した。次いで球体を、2.5M HCl溶液で約8分間、室温でエッチングした。エッチング後、球体を最初に脱イオン水で完全に濯ぎ、次いで沸騰している脱イオン水に20分間浸漬した。2つの長さのスケール上でテクスチャを実現した。より大きい凹凸は5~20ミクロン程度であり、最上部のより微細なテクスチャはナノメートルスケールである。このテクスチャの画像を図11Bに示す。方程式4から、本発明者らは、10μmの凹凸の場合に滑り長さが約1.1mmであると推定する。
【0206】
3つのタイプのサンプルを試験した。通常の滑らかなアルミニウム球体、超疎水性アルミニウム球体、および潤滑剤含浸アルミニウム球体は全て、直径0.5”である。超疎水性球体に、前述のテクスチャ処理プロセスでテクスチャを付け、次いで低エネルギーシラン(オクタデシルトリクロロシラン-OTS)で処理した。潤滑剤含浸サンプルには、前述のテクスチャ処理プロセスでテクスチャを付け、OTSで処理し、最後に、潤滑剤のリザーバにゆっくり浸漬することにより、10cStのシリコーン油を含浸させた。
【0207】
次いでサンプルを、グリセリン(約1100cSt)の大きい浴の中に慎重に降下させた。長方形の容器を使用して、容器の曲率に起因した落下球体の視覚的歪みを回避した。1対のサンプルのピンセットを、各トライアルごとに直接下向きにかつ同じ場所にサンプルを慎重に降下させるため、容器の上方に固定した。これは、実験の反復性を高めることが判明した。水-グリセリン混合物を使用して、浴の液体の粘度を純水(1cSt)から純グリセリン(約1100cSt)まで変化させた。
【0208】
高速カメラを使用して、図11Cに示されるように浴の液体中を落下する球体を捕獲した。球体が終端速度に到達すると、球体の力はバランスをとった状態になる(重力、抗力、および浮力)。本発明者らの実験における球体は、一般に、数センチメートル以内で一定の終端速度に到達する。
【0209】
本発明者らは、図11Dに示されるように、球体のテクスチャに含浸潤滑剤を利用することによって、落下するアルミニウム球体の終端速度の増大(抗力の低減)を示すことができた。
【0210】
(実施例11)
【0211】
図12は、金属球体表面での浸潤挙動を測定するのに実行された、2つの実験を示す。実験は、3個の球体で実行した。第1の球体は、滑らかな面を有する球体(「通常」)であった。第2の球体は、外側にテクスチャが付けられた面を有する球体(「OTS」)であった。第3の球体は、液体含浸外面を有する球体(「LTS」)からなるものであった。第1の実験において、各球体は、図12に示されるように水中に部分的に浸漬された。第2の実験では、各球体を、図12に示されるように水中に浸漬した。各球体の浸潤挙動を、図12に示す。
【0212】
(実施例12)
【0213】
図13Aおよび13Bは、従来のコーティングされていないコンタクトレンズの透明度と比較したときの、液体封入面を有するコンタクトレンズの透明度の実験測定を示す。
【0214】
ベースカーブ半径8.4ミリメートル、直径14ミリメートル、パワーが-0.75ジオプターの、2個のAcuve Oasysコンタクトレンズをこの実験で使用し、レンズ1302およびレンズ1304のラベルを付けた。レンズ1302および1304を、食塩液に浸漬した。ピンセットを使用して、レンズ1302および1304を食塩液から取り出し、窒素ガスでブロー乾燥した。カルナウバ蝋懸濁液を、レンズ1304の内面および外面に噴霧し、それと共にレンズ1304を、噴霧ノズルから少なくとも12インチ離して保持することにより、レンズに対する噴霧力を最小限に抑え、均一なコーティングを実現した。引き続き、窒素ガスをレンズ1304の全体に吹き付けて、オレイン酸エチルを付着させる前にコーティングを乾燥させる時間をとった。引き続き、オレイン酸エチルをレンズ1304の内面および外面に噴霧し、それと共にレンズ1304を噴霧ノズルから少なくとも12インチ離して保持することにより、レンズに対する噴霧力を最小限に抑え、均一なコーティングを実現した。最後に、コンタクトレンズ1302および1304を、ノートのページ1306に置いてバックグラウンドを設け、コーティングの透明度を実証し、図13Aおよび13Bの写真を撮影した。図13Bは、図13Aの画像を拡大したものである。
【0215】
この実験において、カルナウバ蝋およびオレイン酸エチルを含む液体含浸表面がコーティングされたコンタクトレンズ1304は、ノートのページ206上に置かれた場合に透明度を実証した。単語が、透明なコーティングを通して明瞭に見えた(図13Aおよび13B参照)。
【0216】
接触角の測定を、コーティングされていないレンズ1302とコーティングされたコンタクトレンズ1304との両方に関して行った。未処理のコンタクトレンズ1302上に堆積された液滴は、面上で徐々に吸収され、水が面上で滑らないことを示した。代わりに、堆積した水滴は吸収された。コンタクトレンズとして、レンズ1304の面を含浸液体含浸表面コーティングで完全に覆い、レンズ1304の基材材料は、面のロールオフ角(即ち、滑り易さ)に実質的な影響を及ぼさないと考えられる。
【0217】
カルナウバ蝋をスライドガラス上に付着させ、スライドガラス上の5マイクロリットルの水滴のロールオフ角を測定して、コーティング性能を測定した。ロールオフ角は、Rame-hartゴニオメーターを使用して測定した。ロールオフ角は、約3°と測定された。この低いロールオフ角は、液体含浸表面上での流体の滑りを乱すという性質が類似している水により、容易であることを実証する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5CD
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9AB
図9CD
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13