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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】有機物質の分解のための方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/06 20060101AFI20240708BHJP
   B01F 23/41 20220101ALI20240708BHJP
   B01F 25/21 20220101ALI20240708BHJP
   B01D 17/04 20060101ALI20240708BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20240708BHJP
   B01F 25/30 20220101ALI20240708BHJP
   B01F 31/80 20220101ALI20240708BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
G21F9/06 551A
B01F23/41
B01F25/21
B01D17/04
B01D17/04 501D
B01F23/50
B01F25/30
B01F31/80
G21F9/30 571G
G21F9/06 561
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021546013
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 GB2020050266
(87)【国際公開番号】W WO2020161493
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】1901659.1
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521349255
【氏名又は名称】シー-テック イノベーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベル,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】エドウズ,ピーター
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-030689(JP,A)
【文献】特表2001-524387(JP,A)
【文献】特表2000-512538(JP,A)
【文献】特開2015-040790(JP,A)
【文献】特開2015-138014(JP,A)
【文献】国際公開第2003/062495(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166952(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/06
B01F 23/41
B01F 25/21
B01D 17/04
B01F 23/50
B01F 25/30
B01F 31/80
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的に生成され、電気化学セル(8)によって生成または再生された酸化剤を含有する水相を、分解される有機物質を含有する不混和性非水相と、チャンバ(2)内で混合する方法において、
前記チャンバ(2)には、前記水相を前記有機物質と一体化するための接触器(3)、および、非水相物質からの水相物質の少なくとも部分的な分離を促進するためのコアレッサ(5、5A)が取り付けられており、
前記接触器および前記コアレッサはいずれも前記チャンバ内に配置され、前記コアレッサは前記電気化学セルを汚染する前記有機物質の有害な高濃度を防止することを特徴とする、有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法。
【請求項2】
前記非水相が、液体の形態であり、前記接触器が、1つ以上の混合デバイスを備える、請求項1に記載の有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法。
【請求項3】
前記1つ以上の混合デバイスが、1つ以上の機械的撹拌器、回転剪断ミキサ、シェッダプレート、静止型管内ミキサ、乱管流エダクタ、噴流衝突デバイスを備える、請求項2に記載の有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法。
【請求項4】
前記有機物質を含有する前記非水相が、電気化学セルのすぐ下流の前記水相内に導入される、請求項2または3に記載の有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法。
【請求項5】
前記非水相が、固体の形態であり、前記接触器が、不活性微粒子を有するかまたは有しない流動層、スプレーノズル、濾床のうちの1つ以上を備える、請求項1に記載の有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法。
【請求項6】
前記混合は、ガス噴霧または超音波もしくは音波の適用によって増強される、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法。
【請求項7】
超音波および音波が、混合容器に、または電気化学セルのすぐ下流の流路管に適用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法。
【請求項8】
前記電気化学セルが、一方の側に陽極液、他方の側に陰極液を含むイオン交換膜を備え、前記陽極液が、水性酸化剤を含有し、前記陽極液が、以下の元素、Ag、Cl、Br、Ce、Coのうちの1つ以上を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法。
【請求項9】
有機物質の添加速度が、前記チャンバからのガスの発生速度を測定することによって制御される、請求項1~8のいずれか一項に記載の有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法。
【請求項10】
前記有機物質が前記チャンバ内で再循環され分解される、請求項1~9のいずれか一項に記載の有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法。
【請求項11】
電気化学的水性酸化物質を生成または再生する電気化学セル(8)と、前記水性酸化物質が、媒介される有機物質と混合されるチャンバ(3)と、を備え
前記水相を前記有機物質と一体化するための接触器(3)を含み、
前記接触器が前記チャンバ内に配置され、
非水相物質からの水相物質の少なくとも部分的な分離を促進するためのコアレッサ(5、5A)を含む装置であって、
前記接触器および前記コアレッサはいずれも前記チャンバ内に配置され、前記コアレッサは前記電気化学セルを汚染する前記有機物質の有害な高濃度を防止することを特徴とする、有機物質の電気化学的に媒介された酸化のための装置。
【請求項12】
前記コアレッサが、フィルタスクリーン、メッシュ、フォーム、もしくはプレートコアレッサデバイス、ハイドロサイクロン、または分離タンクを備える、請求項11に記載の有機物質の電気化学的に媒介された酸化のための装置。
【請求項13】
一方の側に陽極液、他方の側に陰極液を含むイオン交換膜を備える電気化学セルを有し、陽極液が、酸化種の水溶液、例えば、硝酸銀の硝酸溶液であり、陰極液が、硝酸である、請求項11または12記載の有機物質の電気化学的媒介のための装置。
【請求項14】
前記有機物質が、前記チャンバ内で再循環され分解される、請求項11~13のいずれか一項に記載の有機物質の電気化学的に媒介された酸化のための装置。
【請求項15】
有機物質の添加速度が、前記チャンバからのガスの発生速度を測定することによって制御される、請求項11~14のいずれか一項に記載の有機物質の電気化学的に媒介された酸化のための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物、具体的には、原子力産業で生成されるものの分解に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力産業は、放射性種で汚染された有機物質の安全な廃棄に関する重大な問題を経験している。放射能汚染された有機液体廃棄物としては、油圧油、TBP/OKなどの液体抽出剤システム、冷却剤、潤滑剤、溶媒、および分析試薬が挙げられ得る。これらは、水溶性有機物、不混和性有機物、およびエマルジョンの形態であり得る。固体有機汚染廃棄物としては、イオン交換樹脂、グローブ、シール、ワイプ、および他の雑廃棄物、ならびにコーティングおよび表面からのデブリが挙げられる。そのような物質は、研究室および異なるサイトの貯蔵所などの複数の分散された場所に少量保管されているのが見出されることが多い。
【0003】
放射性廃棄物に使用される処理方法は、無機廃棄物に好適であり、有機廃棄物には好適ではない。一例が、英国のセラフィールドサイトで運用されている強化されたアクチノイド回収プロセス(EARP)[OSPAR Commission, 2005:“The Application of BAT in UK Nuclear Facilities Report” UK Report on Implementation of PARCOM Recommendation 91/4 on radioactive discharges”] EP0297738A (STEELE DF) 04/01/1989であり、このプロセスは、放射性核種を含む硝酸系水溶液を取り扱う。このプロセスは、有機固体または液体を処理するために設計されたものではなく、また有機固体または液体が、
金属水酸化物の凝集を妨げ、上清を介して環境への放射能放出のリスクを増大させるので、有機固体または液体に耐えないであろう。
【0004】
その結果、有効な処理手段が事実上存在しない核施設では、汚染された有機物質が保管されて存在している。要件は、長期保管、二酸化炭素への分解、または放射性種の濃度を低減して廃棄物指定解除を可能にするための表面除染の前に意図しない浸出が起こらないように、これらの物質を安定化させることである。
【0005】
非放射能的に汚染された用途で使用するために、液体および固体有機物のための一連の分解方法が存在する。これらには、熱分解、焼却、電極の表面で直接的、または溶液中のメディエータ種を介して間接的のいずれかの化学的酸化および電気化学的酸化が含まれる。そのようなプロセスに求められる結果は、その後の安定化および長期保管のために、放射能汚染が物質の小さい体積内に保持される一方で、有機物質が、実質的に分解されることである。
【0006】
電気化学的に媒介された酸化の使用は、有機廃棄物の酸化による処理に関して既知である。このアプローチでは、電気化学セル内の陽極を使用して、溶液中のメディエータイオンの酸化状態を増大させ、次いで、メディエータイオンが、バルク電解質中に分散される。電解質が、分解される有機物質と接触されて、有機物質が、メディエータによって酸化される。非常に高酸化性の種が、陽極酸化によってオンデマンドで生成および再生され得、これらは、効果において、過マンガン酸塩および過硫酸塩などの最も強力な従来の化学的酸化剤に匹敵する。+1および+2の酸化状態を有する銀の使用が、この文脈で既知である-EP0297738A (STEELE DF) 04/01/1989(上記)。硝酸中に銀を含む酸化溶液の適用が、有機物質の分解を目的として、記載されている。そのようなシステムでは、酸化種は、典型的には、イオン交換膜または他の多孔質セパレータによって分離された2つのハーフセルを備える電気化学セル内で生成される。陽極溶液は、硝酸などの酸性媒質内に、銀(I)などの低酸化状態のメディエータ種を含有し、銀(I)は、典型的には白金である陽極上で銀(II)まで酸化される。陰極液は、通常、硝酸などの類似の水溶液で形成されるが、酸化メディエータは有しない。陽極液がセルを通過すると、メディエータの酸化状態が、陽極での電気化学反応で、銀の場合Ag(I)からAg(II)に、増加する。この例では、陰極液のハーフセル内の平衡化反応は、硝酸の還元である。他の陽極液および陰極液および酸化メディエータおよび電気化学反応が可能で、混合メディエータシステムを含む。次いで、酸性硝酸銀(II)溶液などの酸化媒体が、容器に移動し、有機物質を酸化し、有機物質を、安全に排出され得る形態に変換する目的で、酸化媒体が、関心の汚染された有機物質と接触する。二酸化炭素への完全な変換が主な目的であるが、部分的な酸化が、許容され得る。有機種の酸化は、一酸化炭素または二酸化炭素への直接的ではなさそうで、多くの中間種が形成されるであろう。電気化学的に生成された酸化メディエータは安定でなく、有機分子との直接反応によって、または有機分子を酸化するラジカル種を形成し得る水との反応によって、のいずれかで、より低い酸化状態に戻る。酸化メディエータが、より低い酸化状態、記載の例では銀(I)に還元され、次いで、電気化学セルに戻り、再びAg(II)まで酸化される。酸化メディエータは、閉ループ内で使用される。セリウム、コバルト、および他の元素は、かかるシステムにおける酸化還元剤としても既知である-COURMOYER, et al. Parametric optimisation of the MEO process for treatment of mixed waste residues.WM99 Conference Proceedings.Feb 28-Mar 4 1999およびUS5707508 A (SURMA ET AL) 13/01/1998。
【0007】
上記の電気化学的酸化技術を使用した媒介は、理論的には、熱的および化学的技術よりも多くの利点をもたらす。この媒介は、大気圧で運転され得、非熱分解性であり、低温で運転され得、広範囲の液体および固体有機物を分解し得、いつでも限られた量の酸化種のみが存在する状態で化学的に安全であり、電流が切られたときに酸化剤生産を瞬時に停止することで容易に制御可能であり、小さなグローブボックスシステムから、1日に何キログラムもの物質を分解することができるフルスケールのプラントまで拡張可能である。
【0008】
しかしながら、有機液体に適用される酸化分解プロセスの制限は、銀2(II)などの酸化還元メディエータ種と、有機液体物質との間の反応速度が、2つの液体の不混和性によって制限されることである。酸化メディエータは、溶液中で比較的低濃度で、かつ化学的に不安定であり、また酸化メディエータは、有機相と速やかに接触および反応し、次いで、陽極で再酸化のために利用可能である必要がある。遅い反応速度は、より長期間のオペレータの監督が必要であり、処理される物質の体積に対して、装置が比較的大きいことを意味する。このことが、記載された目的のためのアプローチを効果のないものにする可能性がある。
【0009】
2つの不混和性相間の反応速度を増加させる一方法が、界面の面積を増加させることである。機械的撹拌の場合、適用される剪断度が、粒径を制御し、典型的には、より高剪断のシステムが、より小さな粒径、およびそれに応じて増加した速度反応をもたらすであろう。しかしながら、不溶性相の微細すぎる分散液は、それが、有機相が電気化学セルに引き込まれて、セパレータを汚染することをもたらす場合、好適ではない可能性がある。そのような酸化プロセスを設計する際の追加的な考慮事項が、標的有機物質の酸化が二酸化炭素および他の気体の生成につながることである。これらは、流体間の界面で生成され、連続的に除去されない場合、プロセスを妨げる可能性がある。
【0010】
電気化学セルの前にエマルションを形成することによって、両方とも、有機分子の媒介電気化学的酸化を強化するために、超音波が使用されてきた(US5707508(STEEL DF)(上記)およびPCT/WO03062495A(LEGG SA ET AL)31/07/2003)。超音波の使用はまた、固体、特に、有機汚染を有する固体の処理に有益であり得、超音波の使用は、集塊の分解および表面膜の除去を支援して、接触面積を増加し得る。
【0011】
有機液体の電気化学的に媒介された分解の既知の実施形態は、撹拌されるタンク反応器への有機液体の添加を伴う。有機相の濃度は、バルク有機液体が分離し、それによって電気化学セルのセパレータを損傷する危険がないように、十分に低く保たれる。このアプローチは、反応容器が比例して大きくなるという望ましくない結果をもたらす。
【0012】
要約すると、十分に高い反応速度、長寿命の電気化学セル性能、および十分にコンパクトな装置をもたらす、有機物質の電気化学的に媒介された酸化分解を使用して、原子力運転サイトに保管されているような放射能汚染された有機廃棄物の分解のための実用的に有用な設備をもたらす既知の手段は存在しない。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、有機物質の酸化のための電気化学的に媒介された方法は、電気化学的に生成された酸化剤を含有する水相を、分解される有機物質を含有する不混和性非水相と、水相を有機物質と一体化するための接触器が取り付けられたチャンバ内で混合するステップを含む。
【0014】
有機物質が液体の形態である方法では、接触器は、機械的撹拌器、回転剪断ミキサ、シェッダプレート、静止型管内ミキサ、乱管流エダクタ、噴流衝突デバイスなどの混合デバイスであり得る。有機物質が水相内に導入される点の位置は重要であり、有利には、電気化学セルのすぐ下流に位置する。
【0015】
固体有機物の場合の効果的な接触器の配置は、不活性微粒子を有するかまたは有しない流動床、スプレーノズル、濾床を含む。
【0016】
固体有機物質および液体有機物質の両方のためのシステムでは、混合は、ガス噴霧、または超音波もしくは音波を適用することによって、増強され得る。超音波および音波は、混合容器内、およびまたは電気化学セルのすぐ下流の流路管内に適用され得、そこには、液体有機相の注入点も位置し得る。記載された接触器の配置のいずれも、機械的混合デバイスによって増強され得る。
【0017】
驚くべきことに、本発明による方法は、有機物質の水相内への分散度が、粗エマルジョンと、微細エマルジョンとの間の中間であるように調整されるときに、効果的に機能することが見出された。有機相の酸化分解速度は、水相と、非水相との間の界面の表面積が、酸化剤の濃度および有機物質の分解速度の両方に適合されるときに、最大化される。この条件を達成することにより、性能を低下させることなく、高効率で長期間にわたって機能し得るシステムがもたらされる。
【0018】
本発明の第2の態様では、有機物質の電気化学的に媒介された酸化のための装置は、電気化学的水性酸化物質を生成または再生する電気化学セルと、接触器を使用して、水性酸化物質が、媒介される有機物質と混合される混合チャンバと、を含む。好ましくは、水性酸化物質と、有機物質との間の接触は、水性酸化物質が混合チャンバ内に導入された直後である。
【0019】
本発明の第2の態様の開発では、有機物質の電気化学的媒介のために使用されるための装置は、有機物質からの水相の分離を促進する相分離デバイス(phase-disengagement device)を含み、またはメディエータ種の再生を可能にする目的、一方で、電気化学セルを汚染する有機相の有害な高濃度を防止することは、フィルタスクリーン、メッシュ、フォームもしくはプレートコアレッサデバイス、ハイドロサイクロン、または分離タンクを含む。
【0020】
電気化学セルは、電気化学セル内で一般的に使用されるタイプのイオン交換膜を含み得る。陽極液は、酸化種の水溶液、例えば、硝酸銀の硝酸溶液である。陰極液は、硝酸であり得る。陰極液を交換する、または酸化する手段が、提供される。
【0021】
本発明は、有機物の分解のための実用的かつ堅牢な配置を形成する。このシステムは、セル膜の汚染のリスクがなく、接触器またはコアレッサ内で部品を移動する必要がなく、信頼性の高い動作を提供すると同時に、良好な反応速度を可能にする。この配置は、グローブボックスおよびモバイル用途のためのコンパクトなスキッドマウント機器などのコンパクト空間内での使用に好適である。この配置は、粒子汚染の存在に対して堅牢であり、汚染された相のアリコートの添加に対して堅牢である。
【0022】
接触器および相分離の態様は、ミキサセトラタイプの配置内に組み合わされ得る。入ってくる2つの液相と、出ていく2つの液相とを有する従来のミキサセトラとは異なり、本明細書に記載のデバイスは、入ってくる2つの液相と、出ていくただ1つの液相と、を有する。従来のミキサとは異なり、本発明に記載のシステムでは、水相のみが、ミキサセトラシステムの外側で循環される。有機相は、デバイス内で再循環および分解される。有機物質の添加速度は、酸化およびガスの発生の速度によって平衡化される。
【0023】
図は、本発明を使用する装置の2つの例示的な実施例を示す。しかしながら、本発明は、決して、図示された構成に限定されない。図面において、
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】垂直に配向されたミキサセトラチャンバを有する本発明の一実施形態の概略図である。
図2】水平に配向されたミキサセトラチャンバを有するシステムの第2の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1では、垂直に配向されたミキサセトラチャンバの本体である容器1。混合チャンバ2は、撹拌器または他の接触器デバイス3を備える。汚染された非水性有機物質は、パイプ11内に、または混合チャンバ2内に直接、注入することによって添加される。酸化種である硝酸を含有する水相が、パイプ4を通じて、混合チャンバ2に連続的に添加される。混合された溶液は、コアレッサユニット5を通って下方に移動する。非水相は、コアレッセユニット内で捕捉されて、上方に浮く一方、水相は、下方に移動して、パイプ6を通って容器を出る。ポンプ7が、水相を引き出し、分割された電気化学セル8を通して水相をポンプ圧送し、電気化学セル8では、酸化メディエータが酸化され、次いで、パイプ11を介して混合チャンバ2内に戻る。平衡化陰極溶液は、分割されたセル8の他方の側を通って、およびより高い酸化状態の陰極液を補充する再生デバイス9を通って移動する。オフガスを除去し、生成された二酸化炭素の量を測定することによって分解速度を監視することを可能にするために、ガス抽出システム10が提供されている。
【0026】
システムの第2の実施形態が、図2に示されている。容器1は、水平に配向されたミキサセトラチャンバの本体である。混合チャンバ2は、撹拌器3で撹拌される。汚染された非水相は、混合チャンバ2に直接添加される。酸化種(硝酸)を含有する水相が、パイプ4を通して混合チャンバ2に連続的に添加される。両方の相の混合物が、ポンプ12によって混合チャンバから引き出され、コアレッサデバイス5Aを有する別個のコアレッサユニット5内にポンプでポンプ圧送される。コアレッセデバイス5Aは、フィルタスクリーン、メッシュ、フォーム、もしくはプレートコアレッサデバイス、ハイドロサイクロン、または分離タンクを備える。
【0027】
重い水相は、コアレッセユニット5の底部に沈降し、パイプ6を通して引き出され、分割された電気化学セル8の一方の側を通してポンプ7によってポンプ圧送され、そこからパイプ4を通って混合チャンバ内に戻る。残留有機物質を含有する分離された軽い相は、堰13を越えて流れ、混合チャンバ2内に戻る。平衡化陰極溶液は、分割されたセル8の他方の側を通って、およびより高い酸化状態の陰極液を補充する再生デバイス9を通って移動する。ガス抽出システム10が、オフガスに対して提供され、生成された二酸化炭素の量を測定することによって分解速度を監視することを可能にする。
【0028】
システムの構成要素の他の実施形態は、当業者には明らかであろう。
【0029】
本発明の使用の実施例
以下は、本発明の装置を用いた有機物質の分解の実施例である。
【0030】
実施例1 汚染された油圧油の分解
本発明の便益を示すための実験において、硝酸銀の硝酸溶液を用いて、油圧油が処理された。油は、6Mの硝酸中の0.2mol%硝酸銀の溶液を使用して、二酸化炭素に実質的に酸化され、陽極液として使用された。試験は、電気化学分割電気化学セルの陽極液回路および陰極液回路の両方の中に1リットルの電解質がある状態で行われ、使用された陰極液は、硝酸銀を添加しない6Mの硝酸を含有した。セルは、25平方センチメートルの電極面積を有し、使用された分離膜は、イオン交換膜である。セルは、両方の電解質ストリームでDC電流および同様の流量で運転され、使用された電流密度は、平方メートル当たり4000Aであった。両方の電解質が、333Kに加熱され、油の既知のアリコートが、陽極溶液に添加された。陽極液が、セルへの戻りが容器の基部にある反応容器を通して循環された。生成された二酸化炭素量の分析が、生成されたAg(II)のモル数と、二酸化炭素の生成とを適合させることによって、電流効率に変換された。
【0031】
2つの実験が実施された。第1の実験では、標準的な実験室用オーバーヘッド撹拌機が、油相と、水性不混和性相との間の界面に位置付けられ、セルは、電解質供給が、容器の油相の下の水相内に入るように運転された。3時間にわたるこの実験のランでは、セル電圧は、4Vで安定化し、全体的な電流効率は12%であり、残りの種は、水相内で崩壊した。第2の実験では、いくつかの変更が実験に対して行われ、凝集媒体が、電気化学セルに戻る前に油を除去するために、反応容器の底に含まれ、油の添加が、電気化学セルを出る陽極液の流れの中に行われ、次いで、反応容器に入る前に、インライン静止型ミキサを通過され、セルからの流れが、反応容器の液位の上に入り、適切なレベルの流体の分散を生成するように設定されたシェッダプレートによって油層にわたって分散された。3時間にわたって動作するこの実験では、電流効率は、85%を超え、セル内の電圧は、同じ電流密度を維持しながら、2.6Vに低下した。これらの結果は、不混和性流体の混合を制御することによって達成される改善を示し、電圧の低下は、電気化学セルに入る有機種の減少に起因する。
【0032】
実施例2 汚染されたイオン交換樹脂ビーズの分解
イオン交換樹脂が、硝酸銀の硝酸溶液を使用して処理された。イオン交換樹脂が、流動床として配置され、水相の流入ストリームによって流動化された。放射能汚染は、好適な形態で存在する非放射性微量金属元素(trace non-radioactive metallic element)を使用してシミュレートされた。樹脂ビーズは、実質的に二酸化炭素に酸化された。微量元素は、沈殿または溶媒抽出などの従来の核処理によって、その後の処理および回収に好適な形態で、水溶液中に実質的に移された。
【0033】
実施例3 汚染された合成グローブ材料の分解
細断されたグローブ材料が、硝酸銀の硝酸溶液を使用して処理された。放射能汚染は、好適な形態で存在する非放射性微量金属元素を使用してシミュレートされた。比較的短い処理時間が、より容易に処分されるグレードに廃棄物を再分類するのに十分な除染度をもたらすことが見出された。より長い処理は、グローブ材料が、実質的に二酸化炭素に酸化される結果となった。微量元素は、沈殿または溶媒抽出などの従来の核処理によって、その後の処理および回収に好適な形態で、水溶液中に実質的に移された。
【0034】
実施例4 不活性粒子上に固定された汚染された有機物の分解。
一部の汚染された物質については、充填床または流動床として接触器内に存在する高表面積の固体粒子上に、汚染された物質を固定することが有利であり得る。この実施例では、高粘度の有機油が、シリカビーズの表面にわたって分散された。ビーズは、酸化水相が流れるカラム内に充填された。好適な化学形態で存在する非放射性金属元素が、実質的に水相に移された。
【0035】
上記の実施例では、金属非放射性マーカが、放射性種の代替として使用された。本発明によるライブシステムでは、放射性種が、実際に水(硝酸)相に移される。放射性種は、水相内に残留し、水相が従来の核処理のために送られるまで、そこに蓄積される。
図1
図2
【図 】