(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】電子部品試験装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20240708BHJP
G01R 31/64 20200101ALI20240708BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R31/64
(21)【出願番号】P 2022030040
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591009705
【氏名又は名称】株式会社 東京ウエルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】村井 渉
(72)【発明者】
【氏名】小森 太陽
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 駿輔
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 嘉一
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-142075(JP,A)
【文献】特開2010-98031(JP,A)
【文献】特開2009-244116(JP,A)
【文献】特開2002-151368(JP,A)
【文献】特開平9-152455(JP,A)
【文献】特開平8-306574(JP,A)
【文献】特開平7-14742(JP,A)
【文献】特開昭60-74610(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0115077(KR,A)
【文献】特開2010-44013(JP,A)
【文献】特開2006-284244(JP,A)
【文献】特許第7449581(JP,B2)
【文献】特許第7416439(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 31/26
G01R 31/64
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温より高い試験温度下で、自己発熱を生じる電子部品に電圧を印加する電子部品試験装置であって、
前記電子部品に電圧を印加する電圧印加部と、
前記電子部品における電流を測定する電流測定部と、
予め取得される前記電子部品における漏れ電流と前記電子部品の温度との間の相関関係に照らして、前記電流測定部の漏れ電流に関する測定結果に応じて前記電圧印加部を制御することで、前記電子部品に印加される電圧を調整する制御部と、を備え
、
前記制御部は、前記電流測定部の漏れ電流に関する測定値が、前記相関関係に応じて定められる熱暴走判定閾値を超える場合、前記電子部品の温度を下げるように前記電子部品に印加される電圧を調整する定常状態復帰処理を前記電圧印加部に対して開始する、電子部品試験装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電流測定部の漏れ電流に関する測定値が、前記相関関係に応じて定められる定常判定閾値を下回る場合、前記電圧印加部に対する前記定常状態復帰処理を終了する、請求項
1に記載の電子部品試験装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記定常状態復帰処理において、前記電圧印加部が前記電子部品に電圧を印加する通電時間を調整するように、前記電圧印加部を制御する、請求項
1又は
2に記載の電子部品試験装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記定常状態復帰処理において、前記電圧印加部が前記電子部品に印加する電圧の大きさを調整するように、前記電圧印加部を制御する、請求項
1又は
2に記載の電子部品試験装置。
【請求項5】
前記電圧印加部は、複数の電子部品に電圧を印加し、
前記電流測定部は、前記複数の電子部品における電流を測定し、
前記相関関係は、前記複数の電子部品の各々における漏れ電流と前記複数の電子部品の各々の温度との間の相関関係となっており、
前記制御部は、前記相関関係に照らして、前記電流測定部の漏れ電流に関する測定結果に応じて前記電圧印加部を制御することで、前記複数の電子部品に印加される電圧を調整する、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の電子部品試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自己発熱を生じる電子部品に対し、常温よりも高い試験温度下で電圧を印加することで、当該電子部品の試験を行う電子部品試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品メーカーは、出荷対象の電子部品の電気的な特性検査を行って不良品を排除し、良品のみを出荷する。特に近年では、自動車をはじめとする様々な技術分野において、電子部品の特性がより高い信頼性をもって保証されることが要求されるようになってきており、実使用環境に近い高温条件下での試験保証のニーズが高まっている。また高温条件下での試験は、電子部品の寿命劣化を加速させる負荷を与えるのに適しており、初期不良を顕在化させるスクリーニング手段としても有用である。
【0003】
しかしながら、高温条件下で電子部品の電気的な特性試験を行う場合、電子部品が自己発熱を伴って過度に温度上昇してしまうことがある。すなわち電子部品の温度が上昇すると、電子部品での消費電流が増大する。そして電子部品での消費電流が増えると、電子部品の発熱量が増えて電子部品の温度が更に上昇し、その結果、電子部品での消費電流が更に増大する、という悪循環に陥る。このような悪循環によって、元々は良品に分類されていた電子部品が熱ダメージを受けて不良品となってしまい、歩留まりが低下してしまう。
【0004】
特許文献1が開示する試験装置は、温度センサによって検出される電子部品の温度を、当該電子部品を加熱するヒータの制御にフィードバックすることで、自己発熱する電子部品の温度が調整されて電子部品の熱ダメージが抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の試験装置で行われるヒータフィードバック制御では、電子部品の自己発熱量を必ずしも十分には抑えることができないため、自己発熱の度合いが大きい電子部品の温度上昇を適切に抑制できないことがある。
【0007】
また多数の電子部品の試験を同時的に行う場合、電子部品の個体差に起因して、自己発熱の度合いに関して電子部品間で無視できない差が見られることがある。特許文献1の試験装置においてこのような状況に対処するには、各電子部品の温度制御を個別的に行うために各電子部品の温度制御に必要な温度センサ、ヒータ及びフィードバック制御機器のセットが、試験対象の電子部品のそれぞれに関して必要になる。例えば、特許文献1の試験装置において1000個の電子部品の試験を同時的に行う場合、1000セット分の独立した制御系(温度センサ、ヒータ及び制御機器)が必要とされる。
【0008】
さらに特許文献1の試験装置において、試験対象の電子部品間で熱的な相互作用があると、個々の電子部品に関するフィードバック温度制御が成立しなくなる。そのため特許文献1の試験装置では、試験対象の複数の電子部品を密集させることができず、電子部品間に相応の間隔スペースを設けて電子部品間で熱的な相互作用が生じないようにする必要がある。したがって特許文献1の試験装置では、同時的に試験が行われる電子部品の数が増えるに従って、必要とされる設置面積が大幅に大きくなる。
【0009】
このように特許文献1の試験装置は、同時的に試験を行う電子部品の数が増えることで、装置構成が複雑化且つ大型化して装置コストが高くなってしまい、経済性及び面積生産性の点でニーズを満たせないことがある。
【0010】
本開示は上述の事情に鑑みてなされたものであり、自己発熱を生じる電子部品の過度な温度上昇を防ぎつつ当該電子部品の試験を適切に行うことができる電子部品試験装置であって、複数の電子部品の試験に対しても低コスト且つコンパクトな装置構成で対処可能な電子部品試験装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様は、常温より高い試験温度下で、自己発熱を生じる電子部品に電圧を印加する電子部品試験装置であって、電子部品に電圧を印加する電圧印加部と、電子部品における電流を測定する電流測定部と、予め取得される電子部品における漏れ電流と電子部品の温度との間の相関関係に照らして、電流測定部の漏れ電流に関する測定結果に応じて電圧印加部を制御することで、電子部品に印加される電圧を調整する制御部と、を備える、電子部品試験装置に関する。
【0012】
制御部は、電流測定部の漏れ電流に関する測定値が、相関関係に応じて定められる熱暴走判定閾値を超える場合、電子部品の温度を下げるように電子部品に印加される電圧を調整する定常状態復帰処理を電圧印加部に対して開始してもよい。
【0013】
制御部は、電流測定部の漏れ電流に関する測定値が、相関関係に応じて定められる定常判定閾値を下回る場合、電圧印加部に対する定常状態復帰処理を終了してもよい。
【0014】
制御部は、定常状態復帰処理において、電圧印加部が電子部品に電圧を印加する通電時間を調整するように、電圧印加部を制御してもよい。
【0015】
制御部は、定常状態復帰処理において、電圧印加部が電子部品に印加する電圧の大きさを調整するように、電圧印加部を制御してもよい。
【0016】
電圧印加部は、複数の電子部品に電圧を印加し、電流測定部は、複数の電子部品における電流を測定し、相関関係は、複数の電子部品の各々における漏れ電流と複数の電子部品の各々の温度との間の相関関係となっており、制御部は、相関関係に照らして、電流測定部の漏れ電流に関する測定結果に応じて電圧印加部を制御することで、複数の電子部品に印加される電圧を調整してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、自己発熱を生じる電子部品の過度な温度上昇を防ぎつつ当該電子部品の試験を適切に行うことができ、複数の電子部品の試験に対しても低コスト且つコンパクトな装置構成で対処可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、積層セラミックコンデンサの消費電流とワーク温度との間の相関関係例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す例における、漏れ電流とワーク温度との間の相関関係例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態による電子部品試験装置の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の電子部品試験方法にかかる経過時間(横軸)と各電流測定部の測定電流(縦軸)との間の関係例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の電子部品試験方法にかかる経過時間(横軸)と各電子部品に対する印加電圧(縦軸)との間の関係例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態による電子部品試験装置の構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態の電子部品試験方法にかかる経過時間(横軸)と各電流測定部の測定電流(縦軸)との間の関係例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態の電子部品試験方法にかかる経過時間(横軸)と各電子部品に対する印加電圧(縦軸)との間の関係例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、積層セラミックコンデンサ(MLCC: Multilayer Ceramic Capacitor)の消費電流とワーク温度との間の相関関係例を示す図である。
図1の横軸は、時間(経過時間(秒))を示し、測定対象のMLCCでの消費電流を示す。
【0020】
図1には、MLCCの温度(すなわち「ワーク温度」)が40℃、70℃、100℃、130℃、160℃及び190℃の場合の相関曲線が描かれている。
【0021】
図2は、
図1に示す例における、漏れ電流とワーク温度との間の相関関係例を示す図である。
図2の横軸は漏れ電流を示し、縦軸はワーク温度を示す。
【0022】
本件発明者は、静電容量10μF(ファラド)、定格電圧50V(ボルト)及び温度特性X5R(電子工業会(EIA: Electronic Industries Alliance))を有するMLCCのサンプルに対して125Vの電圧を印加しつつ、当該サンプルにおける消費電流を測定した(
図1参照)
【0023】
図1において「P1」は電力投入初期状態を示す。この電力投入初期状態は、充電が進行し、MLCCのサンプルに電気(電荷)が徐々に蓄えられている状態を示す。一方、
図1において「P2」は定常状態を示す。ここでの定常状態は、電子部品がフル充電された状態を指す。充電完了後の定常状態のMLCCサンプルに電圧を印加すると、MLCCサンプルから電流が漏れ出し、当該漏れ電流(リーク電流)が消費電流(
図1の縦軸参照)として測定される。
【0024】
本件発明者は、ワーク温度を変え(すなわちワーク温度を40℃、70℃、100℃、130℃、160℃及び190℃に変え)、それぞれのワーク温度に関して上述の消費電流の測定を行った。
【0025】
その結果、
図2に示すように、漏れ電流の大きさとワーク温度との間には線形関係(比例関係)があることが確認された。本件発明者は、各種条件(例えば静電容量、定格電圧及び印加電圧など)を変えつつ上述の消費電流の測定を行ったが、いずれの測定においても漏れ電流の大きさとワーク温度との間には線形関係(比例関係)が認められた。
【0026】
漏れ電流の大きさとワーク温度との間の当該相関関係(線形関係)に照らせば、漏れ電流からワーク温度を推定して把握することができる。
【0027】
以下に説明する電子部品試験装置及び電子部品試験方法の各実施形態は、このような漏れ電流とワーク温度との間の相関関係(線形関係)に基づいている。以下の各実施形態では、複数の電子部品の試験が同時的に行われ、当該複数の電子部品の各々における漏れ電流と当該複数の電子部品の各々の温度との間の相関関係に照らして、各電圧印加部の制御及び各電子部品に印加される電圧の調整が行われる。
【0028】
[第1の実施形態]
図3は、第1の実施形態による電子部品試験装置10の構成例を示す図である。
【0029】
図3に示す電子部品試験装置10は、自己発熱する複数の電子部品W(例えば200~1000個の電子部品W)に対して電圧を同時的に印加しつつ、常温より高い試験温度下で各電子部品Wの試験を行う。当該試験の間、各電子部品Wは自己発熱によって温度が上昇し、例えば所望の試験温度が150℃であっても、各電子部品Wの温度は100℃~170℃の温度範囲で変動しうる。
【0030】
電子部品試験装置10によって行われる具体的な試験内容は限定されない。例えば、各電子部品Wに対して熱負荷をかけながら電気的負荷を印加する試験が行われてもよいし、各電子部品Wに対して熱負荷及び電気的負荷をかけながら電気的測定を行う試験が行われてもよい。より具体的には、バーンインなどのスクリーニング試験、耐電圧試験、静電容量試験、絶縁抵抗試験、或いは漏れ電流試験などの電気的試験が、電子部品試験装置10によって行われうる。
【0031】
本例では電子部品WとしてMLCC(積層セラミックコンデンサ)が用いられるが、電子部品試験装置10によって試験可能な電子部品Wは限定されない。例えば負特性サーミスタ、ダイオード、トランジスタなどの半導体素子、或いはセラミックコンデンサ以外のコンデンサの一部などを電子部品Wとして用いることが可能であり、他の任意の電子デバイスが電子部品Wとして用いられてもよい。
【0032】
各電子部品Wは、電子部品本体と、電子部品本体に取り付けられる第1外部電極及び第2外部電極とを有する。
【0033】
電子部品試験装置10は、電源部20と、電源部20に第1配線31を介して接続される複数の第1プローブ21と、電源部20に第2配線32を介して接続される複数の第2プローブ22と、を備える。
【0034】
本例の電源部20は、直流電源装置によって構成され、定格電圧よりも大きな電圧(例えば定格電圧の2.5倍の直流電圧)を各電子部品Wに与えることができる。なお電源部20の構成は限定されない。電源部20は、例えば交流電源装置により構成されてもよいし、直流(直流電流及び直流電圧)及び交流(交流電流及び交流電圧)を各電子部品Wに対して選択的に付与可能な電源装置により構成されてもよい。
【0035】
複数の第1プローブ21は、単一の第1プローブホルダ23によって支持され、複数の電子部品Wのそれぞれの第1外部電極に接続される。複数の第2プローブ22は、単一の第2プローブホルダ24によって支持され、複数の電子部品Wのそれぞれの第2外部電極に接続される。このように第1プローブ21及び第2プローブ22は相互に対を成す電極(ピン状導電体)として機能し、同時的に試験可能な電子部品Wの数と同じ数の第1プローブ21及び第2プローブ22のペアが設けられる。
【0036】
各第1プローブ21及び各第2プローブ22は、電子部品Wに対して直接的に接触することが予定されているプローブ要素を有する。このプローブ要素は、電子部品Wに対する良好な電気的接続を確立可能な任意の形態を有し、例えば帯状の導電体(例えばCu、Fe或いはAlなどの金属体)によって構成されてもよいし、導電体めっき(例えばAu、Ag、Ni或いはSnなどの金属めっき)が施されていてもよい。
【0037】
第1プローブホルダ23及び第2プローブホルダ24は、非導電体(例えばマシナブルセラミックスなどの材料)によって構成される。第1プローブホルダ23及び第2プローブホルダ24のうちの少なくともいずれか一方は、制御部13の制御下で移動可能に設けられている。複数の第1プローブ21及び/又は複数の第2プローブ22は、対応のホルダとともに一体的に移動して、試験対象の複数の電子部品Wに接触する試験位置と、試験対象の複数の電子部品Wから離れた退避位置とに配置可能である。
【0038】
第1プローブホルダ23及び第2プローブホルダ24には、それぞれ第1ヒータ25及び第2ヒータ26(例えばラバーヒータ)が設けられている。第1ヒータ25及び第2ヒータ26は、試験対象の電子部品Wの温度(試験温度)を調整する。すなわち第1ヒータ25及び第2ヒータ26からの熱エネルギーが各第1プローブ21及び各第2プローブ22を介して各電子部品Wに伝えられることで、各電子部品Wが加熱されて所望の試験温度に調整される。第1ヒータ25及び第2ヒータ26は、制御部13の制御下で駆動されてもよいし、制御部13によることなく(例えば手動的に)駆動されてもよい。
【0039】
第1ヒータ25及び第2ヒータ26の駆動温度は、お互いに同じであってもよいが、お互いに異なる温度であってもよい。特に、第1ヒータ25及び第2ヒータ26のうちの一方が、電子部品Wの温度を所望の試験温度(例えば150℃)よりも高い温度(例えば153℃)に調整するように発熱し、他方が、電子部品Wの温度を所望の試験温度よりも低い温度(例えば147℃)に調整するように発熱してもよい。この場合、第1プローブ21、第2プローブ22及び電子部品Wは、一方のプローブから電子部品Wに熱移動が生じ且つ電子部品Wから他方のプローブに熱移動が生じる状態に置かれる。そのため、第1プローブ21、電子部品W及び第2プローブ22の熱応答性が高い状態で、試験を行うことができる。
【0040】
一例として、第1プローブ21と第2プローブ22との間の温度差が5℃~15℃となるように、第1ヒータ25及び第2ヒータ26の発熱がコントロールされてもよい。第1プローブ21と第2プローブ22との間の温度差が5℃よりも小さくなると、電子部品Wの放熱が適切に行われないことがある。一方、第1プローブ21と第2プローブ22との間の温度差が15℃よりも大きくなると、電子部品Wの温度コントロールが難しくなることがある。
【0041】
各第2プローブ22と電源部20との間で延びる第2配線32には電圧印加部11及び電流測定部12が設けられ、各電圧印加部11及び各電流測定部12は制御部13に接続される。
【0042】
各電流測定部12は、対応の第2配線32を流れる電流(ひいては対応の電子部品Wにおける電流)を繰り返し測定し、測定結果を制御部13に送信する。各電流測定部12による測定頻度は限定されず、例えば100ms毎に、各電流測定部12は電流測定を行って制御部13に測定結果を送信してもよい。各電圧印加部11は、対応の電子部品Wに電圧を印加する。本実施形態の電圧印加部11は、制御部13の制御下で、対応の電流測定部12の測定結果に基づいて、対応の第2配線32における電流のオン(通電)及びオフ(通電遮断)を行うスイッチング素子として構成される。
【0043】
制御部13は、予め取得されている電子部品Wにおける漏れ電流と電子部品Wの温度(ワーク温度)との間の相関関係に照らして、電流測定部12の漏れ電流に関する測定結果に応じて対応の電圧印加部11を制御することで、電子部品Wに印加される電圧を調整する。
【0044】
本実施形態の制御部13は、PWM制御(パルス幅変調制御)を実行可能なデジタル回路を含み、電子部品Wに印加される電圧をPWM制御に基づいて調整する。すなわち制御部13は、電流測定部12より取得される漏れ電流の測定値に基づいて、対応の電圧印加部11が対応の電子部品Wに電圧を印加する通電時間を調整するように、対応の電圧印加部11を制御する。なおPWM制御の具体例については後述する(
図5参照)。
【0045】
次に、上述の構成を有する電子部品試験装置10によって行われる電子部品試験方法の一例について説明する。
【0046】
図4は、第1の実施形態の電子部品試験方法にかかる経過時間(横軸)と各電流測定部12の測定電流(縦軸)との間の関係例を示す図である。
図5は、第1の実施形態の電子部品試験方法にかかる経過時間(横軸)と各電子部品Wに対する印加電圧(縦軸)との間の関係例を示す図である。
【0047】
試験対象の複数の電子部品Wは、それぞれ、対応の第1プローブ21及び第2プローブ22に接触している状態で、当該対応の第1プローブ21及び第2プローブ22を介して電気が流される。この際、試験対象の複数の電子部品Wは、第1ヒータ25及び第2ヒータ26からの熱エネルギーによって加熱され、これらの電子部品Wの温度(試験温度)は例えば150℃に調整される。
【0048】
具体的には、制御部13の制御下で各電圧印加部11がオン状態に調整され、各電子部品Wに対し、電源部20からの電力が供給される(
図4の「電力投入初期」参照)。これにより各電子部品Wの充電が進行し、各電流測定部12によって取得される測定電流値は徐々に小さくなる。
【0049】
そして各電子部品Wは、充電が完了して、定常状態に達する(
図4の「定常状態」参照)。
【0050】
定常状態の各電子部品Wに対して電圧印加を続行することで、各電子部品Wには漏れ電流が生じる。当該漏れ電流は、対応の電流測定部12により測定電流として取得される。
【0051】
自己発熱する電子部品Wは、定常状態において電圧が印加され続けることで、発熱して温度が上昇し、いわゆる熱暴走を生じることがある(
図4の「熱暴走初期」参照)。特にMLCCが電子部品Wとして使われる場合、MLCCの充電時間を短縮するために高電流による充電が行われることが多いが、そのような場合、必然的に試験温度が高くなるため電子部品Wの熱暴走が起きやすい。熱暴走を起こした電子部品Wは、時間の経過とともに加速度的に昇温し、耐熱温度を超えると破壊に至る(
図4の「熱破壊」参照)。
【0052】
そこで本実施形態の制御部13は、電流測定部12の測定結果が熱暴走判定閾値T1に到達したことを検知したら、対応の電子部品Wに対する定常状態復帰処理を個別的に開始する(
図4及び
図5の「熱暴走検知」参照)。すなわち制御部13は、電流測定部12の漏れ電流に関する測定値が、上述の相関関係に応じて定められる熱暴走判定閾値T1を超える場合、対応の電子部品Wの温度を下げるように当該電子部品Wに印加される電圧を調整する定常状態復帰処理を、対応の電圧印加部11に対して開始する。
【0053】
上述の
図2に示すように、電子部品Wの漏れ電流とワーク温度との間には強い正の相関がある。この相関に照らして、電子部品Wの漏れ電流(すなわち電流測定部12の測定結果)が熱暴走判定閾値T1に到達したか否かを判定することで、電子部品Wが「熱暴走を起こしているか否かの判定基準温度である判定閾値温度」に達したか否かを実質的に判定している。したがって、ここで判定基準として用いられる「測定電流に関する熱暴走判定閾値T1」は、「電子部品Wの温度に関する判定閾値温度」に対応する。
【0054】
このようにして、各電子部品Wの温度を直接的に測定することなく、各電子部品Wの温度が「熱暴走を起こしているか否かの判定閾値温度」に達したか否かを判定でき、ひいては各電子部品Wに熱暴走が生じているか否かを判定できる。
【0055】
熱暴走を起こしている電子部品Wに対して行われる上述の定常状態復帰処理は、対応の電子部品Wが定常状態に戻るまで続行され、対応の電子部品Wが定常状態に戻ったら終了する。具体的には、制御部13は、電流測定部12の漏れ電流に関する測定値が、上述の相関関係に応じて定められる定常判定閾値T2を下回る場合、対応の電圧印加部11に対する定常状態復帰処理を終了する(
図4及び
図5の「定常状態復帰」参照)。ここで判定基準として用いられる「測定電流に関する定常判定閾値T2」は、「電子部品Wが平常状態に置かれているか否かの判定基準温度である判定閾値温度」に対応する。
【0056】
本実施形態では、上述の定常状態復帰処理がPWM制御に基づいて行われる。すなわち制御部13は、定常状態復帰処理において対応の電圧印加部11のオンオフ駆動を制御し、対応の電子部品Wに電圧が印加される時間(オン時間)及び対応の電子部品Wに電圧が印加されない時間(オフ時間)が調整する。このように制御部13は、定常状態復帰処理において対応の電圧印加部11を制御し、当該電圧印加部11が電子部品Wに電圧を印加する通電時間を調整することで、当該電子部品Wの温度を下げる。これにより各電子部品Wの熱暴走が沈静化され、各電子部品Wの熱破壊を未然に回避できる。
【0057】
なお、ここでのPWM制御の具体的な制御方法は限定されない。一例として
図5に示すように、制御部13は、所定の時間間隔(例えば100ms)を100%として扱い、電流測定部12による測定電流の変化率(変化速度)に応じて(すなわち対応の電子部品Wの温度変化の割合に応じて)、対応の電子部品Wに対する電圧印加のオン及びオフの繰り返し頻度を調整するように、対応の電圧印加部11を制御してもよい。
【0058】
このように電子部品Wは、たとえ熱暴走を起こして昇温しても、熱破壊を起こす前に(すなわち熱破壊を起こしうるワーク温度(漏れ電流)に到達する前に)、上述の定常状態復帰処理(PWM制御)により温度が下げられて定常状態に復帰する。
【0059】
試験が継続的に行われている間は、各電子部品Wに対する電圧の印加が続く。そのため各電子部品Wは、一旦定常状態に復帰しても、その後再び熱暴走を起こしうる。
【0060】
しかしながら本実施形態によれば、制御部13が各電流測定部12の測定結果に基づいて各電子部品Wの温度を監視し続け、熱暴走を起こしている電子部品W(すなわち漏れ電流が熱暴走判定閾値T1を超える電子部品W)に対して上述の定常状態復帰処理(PWM制御)が繰り返し適用される。これにより、各電子部品Wの熱暴走を経時的に防ぎつつ、多数の電子部品Wの試験を同時的に行うことができる。
【0061】
以上説明したように本実施形態の電子部品試験装置10及び電子部品試験方法によれば、自己発熱する電子部品Wの過度な温度上昇を防ぎつつ、当該電子部品Wの試験を適切に行うことができる。
【0062】
特に、各電子部品Wの漏れ電流とワーク温度との間の相関関係に照らして、漏れ電流の測定値に基づいて各電子部品Wの温度を推定できるので、個々の電子部品Wの温度を直接的に測定する必要がない。そのため、個々の電子部品Wの温度の測定及び制御のための制御系(温度センサ、ヒータ及び制御機器)が不要であり、電子部品試験装置10の装置構成を簡素化できる。
【0063】
また本実施形態の電子部品試験方法によれば、電子部品間に熱的な相互作用が生じていても、各電子部品Wの熱暴走を防ぎつつ試験を有効に実施できる。そのため、多数の電子部品Wの試験を同時的に行う場合、限られたスペースに多数の電子部品Wを並べた状態で試験を行うことが可能である。このように本実施形態は、低コスト且つコンパクトな構成の電子部品試験装置10によって、複数の電子部品Wの試験を同時的に適切に行うことができ、経済性及び面積生産性に優れる。
【0064】
[第2の実施形態]
本実施形態において、上述の第1の実施形態と同一又は対応の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
図6は、第2の実施形態による電子部品試験装置10の構成例を示す図である。
【0066】
上述の第1の実施形態ではPWM制御(デジタル回路)によって電子部品Wに対する印加電圧が制御されるが、本実施形態の制御部13は、レギュレータ制御を実行可能なアナログ回路を含み、アナログ制御によって電子部品Wに印加される電圧の大きさを調整する。
【0067】
すなわち本実施形態において、対応の電子部品Wに電圧を印加する各電圧印加部11は、制御部13の制御下で、対応の電流測定部12の測定結果に基づいて、対応の電子部品Wに印加する電圧の大きさを変更可能な素子として構成される。
【0068】
制御部13は、各電流測定部12の測定結果である各電子部品Wからの漏れ電流に基づいて、対応の電圧印加部11が電子部品Wに印加する電圧の大きさを調整するように、対応の電圧印加部11を制御する。なおレギュレータ制御の具体例については後述する(
図8参照)。
【0069】
他の構成は、上述の第1の実施形態の電子部品試験装置10(
図3参照)と同様である。
【0070】
次に、上述の構成を有する電子部品試験装置10によって行われる電子部品試験方法の一例について説明する。
【0071】
図7は、第2の実施形態の電子部品試験方法にかかる経過時間(横軸)と各電流測定部12の測定電流(縦軸)との間の関係例を示す図である。
図8は、第2の実施形態の電子部品試験方法にかかる経過時間(横軸)と各電子部品Wに対する印加電圧(縦軸)との間の関係例を示す図である。
【0072】
本実施形態の電子部品試験方法も、基本的には、上述の第1の実施形態の電子部品試験方法と同様にして行われる。
【0073】
すなわち試験対象の複数の電子部品Wは、所望の試験温度に調整され且つ対応の第1プローブ21及び第2プローブ22に接触している状態で電気が流されて、試験が行われる。
【0074】
これにより各電子部品Wの充電が進行し、各電流測定部12により取得される測定電流値は徐々に小さくなって、電子部品Wは定常状態に達する(
図7の「定常状態」参照)。そして、定常状態の各電子部品Wに対して電圧を印加し続けることで各電子部品Wには漏れ電流が流れ、当該漏れ電流は、対応の電流測定部12により測定電流として取得される。制御部13は、このようにして取得される各電子部品Wの漏れ電流の測定結果に基づいて、各電子部品Wの温度を監視する。
【0075】
そして制御部13は、電流測定部12の測定結果に基づいて、漏れ電流が熱暴走判定閾値T1に到達した電子部品Wを検知したら(
図7及び
図8の「熱暴走検知」参照)、当該電子部品Wに対して定常状態復帰処理を個別的に開始する。すなわち制御部13は、定常状態復帰処理において、対応の電圧印加部11が電子部品Wに印加する電圧の大きさを調整するように当該電圧印加部11を制御し、対応の電子部品Wの温度が下がるように当該電子部品Wに印加される電圧が調整される。
【0076】
このように本実施形態では、レギュレータ制御に基づいて上述の定常状態復帰処理が行われ、対応の電圧印加部11が制御部13の制御下でアナログ的に駆動されることで、熱暴走を起こしている電子部品Wに印加される電圧の大きさが調整される。
【0077】
ここでのレギュレータ制御の具体的な制御方法は限定されない。一例として
図8に示すように、時間の経過に対し、電子部品Wに対する印加電圧を比例的且つ継続的に小さくすることで、対応の電子部品Wの温度を下げてもよい。ただし、レギュレータ制御はこの制御方法には限定されない。例えば、対応の電流測定部12によって取得される電流測定値(すなわち対応の電子部品Wの漏れ電流)に応じて、対応の電子部品Wに対する印加電圧を指数関数的に小さくしてもよい。或いは、対応の電流測定部12によって取得される電流測定値に応じて、対応の電子部品Wに対する印加電圧を段階的に小さくしてもよい。
【0078】
上述の定常状態復帰処理は、熱暴走を起こしている電子部品Wが定常状態に戻るまで続行され、当該電子部品Wが定常状態に戻ったら終了する。具体的には、制御部13は、電流測定部12の測定結果が定常判定閾値T2に到達したことを検知したら、定常状態復帰処理を終了する(
図7及び
図8の「定常状態復帰」参照)。
【0079】
そして制御部13は、各電流測定部12の測定結果に基づいて各電子部品Wの温度を監視し続け、熱暴走を起こしている電子部品W(すなわち漏れ電流が熱暴走判定閾値T1を超える電子部品W)に対して上述の定常状態復帰処理(レギュレータ制御)を繰り返し適用する。これにより各電子部品Wの熱暴走を防ぎつつ、多数の電子部品Wの試験を同時的に行うことができる。
【0080】
以上説明したように本実施形態においても、自己発熱を生じる電子部品Wの過度な温度上昇を防ぎつつ当該電子部品Wの試験を適切に行うことができ、複数の電子部品Wの試験に対しても低コスト且つコンパクトな装置構成で対処できる。
【0081】
本明細書で開示されている実施形態及び変形例はすべての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。また上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の電子部品試験方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 電子部品試験装置
11 電圧印加部
12 電流測定部
13 制御部
20 電源部
21 第1プローブ
22 第2プローブ
23 第1プローブホルダ
24 第2プローブホルダ
25 第1ヒータ
26 第2ヒータ
31 第1配線
32 第2配線
P1 電力投入初期状態
P2 定常状態
T1 熱暴走判定閾値
T2 定常判定閾値
W 電子部品