(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】生体内薬物伝達のための脂質ナノ粒子およびその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 47/22 20060101AFI20240708BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240708BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240708BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240708BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240708BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240708BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240708BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240708BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240708BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240708BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240708BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240708BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240708BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240708BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61K47/22
A61K9/14
A61K9/51 ZNA
A61K31/7105
A61K31/711
A61K38/02
A61K45/00
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/28
A61K48/00
A61P1/16
A61P3/06
A61P31/20
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2022543192
(86)(22)【出願日】2020-12-31
(86)【国際出願番号】 KR2020019502
(87)【国際公開番号】W WO2021145595
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0005642
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0040586
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520178685
【氏名又は名称】エンハンストバイオ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENHANCEDBIO INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒョクジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ハンセム
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒョキョン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ヨンミ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ミヒャエラ
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1685304(KR,B1)
【文献】国際公開第2019/110067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C12N 15/11
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6員ヘテロ環アミンおよびアルキル-エポキシドが結合したイオン化可能な脂質(ionizable lipid);リン脂質;コレステロール;および
セラミド-PEG(polyethyleneglycol)複合体を含
み、
前記6員ヘテロ環アミンは、
【化1】
であり、
前記アルキル-エポキシドは、C6~C14の炭素の長さを有するものであり、
前記セラミド-PEG複合体は、0.5~5モル%で含まれるものである、
脂質ナノ粒子。
【請求項2】
前記アルキル-エポキシドは、1,2-エポキシドデカン(1,2-epoxydodecane)である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項3】
前記リン脂質は、DOPE、DSPC、POPC、EPC、DOPC、DPPC、DOPG、DPPG、DSPE、Phosphatidylethanolamine、dipalmitoylphosphatidylethanolamine、1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine、POPE、POPC、DOPS、および1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-[phospho-L-serine]からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項4】
前記脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質:リン脂質:コレステロール:
セラミド-PEG複合体を20~50:10~30:30~60:
0.5~5のモル比で含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項5】
前記脂質ナノ粒子は、pKaが6.0~7.0である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項6】
前記脂質ナノ粒子は肝組織を特異的に標的化する、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項7】
前記脂質ナノ粒子は肝細胞(hepatocyte)を標的化する、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項8】
前記脂質ナノ粒子は、LSEC(liver sinusoidal endothelial cell)を標的化する、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項9】
(1)請求項1~
8のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子;および(2)陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせを含む、薬物伝達用組成物。
【請求項10】
前記陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせは、前記脂質ナノ粒子内部に封入されている、請求項
9に記載の薬物伝達用組成物。
【請求項11】
前記脂質ナノ粒子は平均直径が30nm~150nmである、請求項
9に記載の薬物伝達用組成物。
【請求項12】
前記陰イオン性薬物は、ペプチド、タンパク質薬物、タンパク質-核酸構造体、および陰イオン性生体高分子-薬物複合体からなる群から選択される1種以上である、請求項
9に記載の薬物伝達用組成物。
【請求項13】
前記核酸は、小干渉リボ核酸(siRNA)、リボソームリボ核酸(rRNA)、リボ核酸(RNA)、ジオキシリボ核酸(DNA)、相補性ジオキシリボ核酸(cDNA)、アプタマー(aptamer)、伝令リボ核酸(mRNA)、運搬リボ核酸(tRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、miRNA、リボザイム(ribozyme)、PNA、およびDNAzymeからなる群から選択される1種以上である、請求項
9に記載の薬物伝達用組成物。
【請求項14】
(1)請求項1~
8のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子;および(2)陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせを含む、肝疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項15】
前記肝疾患は、ATTRアミロイドーシス(ATTR amyloidosis)、高コレステロール血症(Hypercholesterolemia)、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus infection)、急性肝不全(Acute liver failure)、肝硬変(Cirrhosis)、および肝線維化(liver fibrosis)からなる群から選択される1種以上である、請求項
14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記脂質ナノ粒子は、平均直径が30nm~150nmである、請求項
14に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内薬物伝達のための脂質ナノ粒子およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬製剤産業にあたり、薬の副作用を減らし、効能および効果を極大化させて必要な量の薬物を効率的に伝達できるように設計した薬物送達システム(DDS;Drug Delivery System)は、新薬開発に釣り合う経済的利益を創出しながら成功の可能性が大きい高付加価値核心技術であって、薬物投与を効率化することによって患者の治療の質を高めるのにその目的がある。
【0003】
薬物伝達システムの核心技術の一つである薬物吸収促進技術に属する難溶性薬物の可溶化技術は、新薬物質の開発費用を減らすことができると同時に、現在販売されている医薬品の付加価値を高めることができる最も合理的な方法であると考えられる。特に、我が国のような新薬開発条件が劣悪な状況で薬物の可溶化技術の開発による改良新薬の開発は、少ない費用で莫大な付加価値を創出できる分野である。
【0004】
遺伝子薬物伝達システムを利用した遺伝子治療法は、遺伝的結合を修正し多くの病気を治療するにあたって大きな希望となる。このような遺伝子治療法を成功的かつ安全に行うにあたり、効果的な遺伝子伝達が主な課題の一つであり、ウイルス伝達体が遺伝子伝達に効果的であることが証明された。しかし、免疫原性(immunogenicity)、注入されたDNAサイズの限界および大量生産の困難さなどいくつかの欠点によって遺伝子伝達システムとしてウイルス利用が制限されている。陽イオン性リポソームおよび重合体などの非-ウイルス性遺伝子担体がウイルス性システムの代替手段として注目を浴び始めた。
【0005】
改善された安定性プロファイルおよび重合体伝達体の製造と操作の容易性が効果的かつ安全な遺伝子伝達用非毒性および生分解性重合体担体のデザインおよび合成に対する研究を触発した。ポリ(L-リシン)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)、スターバースト(starburst)、ポリアミドアミン(polyamidoamine)デンドリマー、および陽イオン性リポソームなどが自発的に自己組立が可能であり、プラスミドDNA(pDNA)をエンドサイトーシスにより細胞内に侵入するのに十分に小さい構造で圧縮できるため、非-ウイルス性遺伝子伝達体として幅広く研究されてきた。
【0006】
Antisense RNA、siRNAなどの核酸は、生体内で特定タンパク質の発現を抑制できる物質であって、癌、遺伝病、感染症、自己免疫疾患などの治療に重要なツールとして脚光を浴びている(Novina and Sharp,Nature,430,161-164,2004)。しかし、siRNAなどの核酸は細胞内に直接伝達が難しく、血液中に酵素によって容易に分解されるので、これを克服するための多くの研究が進められている。現在までに核酸を細胞内に運ぶ方法として、正電荷脂質または重合体と混合して運ぶ方法(それぞれ脂質-DNAの複合体(lipoplex)およびポリマー-DNAの複合体(polyplex)と称する)が主に用いられている(Hirkoなど、Curr.Med.Chem.,10,1185-93,2003;Merdanなど、Adv.Drug.Deliv.Rev.,54,715-58,2002)。脂質-DNAの複合体は、核酸と結合して細胞内に核酸をうまく伝達して細胞レベルで多く使用されているが、生体内では局部的に注射の際、多くの場合体内に炎症を誘発させる(Filonand、およびPhillips、Biochim.Biophys.Acta、1329,345-56,1997)などの短所がある。
【0007】
また、このような非-ウイルス性伝達体は、トランスフェクション効率が低いという問題がある。トランスフェクション効率を高めるために多くの努力を注いできたが、これは、依然として安定していると考えられるシステムとは距離が遠い。また、非-ウイルス性遺伝子伝達体担体は、劣悪な生体適合性および非-生分解性により顕著に高い細胞毒性を示す。
【0008】
このような技術的背景下で、本発明者らは薬物封入率に優れ、目的とする器官または細胞に陰イオン性薬物、核酸などを効率的に伝達できる新規粒子を開発するために鋭意努力した結果、イオン化可能な脂質;リン脂質;コレステロール;および脂質-PEG(polyethyleneglycol)複合体を含む脂質ナノ粒子を製造し、前記脂質ナノ粒子が肝組織に特異的に伝達され、陰イオン性化合物または核酸などの薬物が高効率に封入できることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、6員ヘテロ環アミンおよびアルキル-エポキシドが結合したイオン化可能な脂質、リン脂質、コレステロール、および脂質-PEG(polyethyleneglycol)複合体を含む脂質ナノ粒子を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、(1)前記脂質ナノ粒子;および(2)陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせを含む薬物(陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせ)伝達用組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、(1)前記脂質ナノ粒子;および(2)陰イオン性薬物核酸、またはその組み合わせを有効性分として含む肝疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、これについて具体的に説明する。一方、本発明に開示されたそれぞれの説明および実施形態はそれぞれの他の説明および実施形態にも適用される。すなわち、本発明に開示された多様な要素のすべての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、後述する具体的な叙述によって本発明の範疇が限定されない。
【0013】
上記の目的を達成するための一態様は、6員ヘテロ環アミンおよびアルキル-エポキシドが結合したイオン化可能な脂質(ionizable lipid);リン脂質;コレステロール;および脂質-PEG(polyethyleneglycol)複合体を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0014】
本発明の一実施形態による脂質ナノ粒子は、肝組織特異的で生体親和性に優れ、高効率に遺伝子治療剤などを伝達できるため、脂質ナノ粒子媒介遺伝子治療および画像診断技術などの関連技術分野で有用に使用することができる。
【0015】
本明細書において、「イオン化可能な脂質(ionizable lipid)」または「脂質類似体(lipidoid)」は、容易にプロトン化できるアミン-含有脂質を意味し、例えば、周辺のpHにより電荷状態が変わる脂質である。前記イオン化可能な脂質は、6員ヘテロ環アミンおよびアルキル-エポキシドが結合したものであり得る。具体的には、前記イオン化可能な脂質は、6員ヘテロ環アミンおよびアルキル-エポキシドが反応して生成される脂質と類似した特性を有する化合物であり、より具体的には、6員ヘテロ環アミンをアルキル-エポキシドと反応させてエポキシドの開環反応(ring opening reaction)によって生成される化合物であり得る。
【0016】
一例として、前記イオン化可能な脂質は、6員ヘテロ環アミンおよびアルキル-エポキシドは1:n(n=6員ヘテロ環アミンに含まれている第1級アミンの個数×2+第2級アミンの個数×1)のモル比で反応させて結合したものであり得る。一実施形態によれば、246アミンおよび1,2-エポキシドデカンを1:4のモル比で混合して700~800rpm、85~95の条件で2~4日間反応させて製造したものであり得る。
【0017】
前記イオン化可能な脂質は、陽イオン性脂質のpKa未満のpHでプロトン化(正に荷電)され、pKa超過のpHでは実質的に中性である。一例として、前記脂質ナノ粒子は、プロトン化されたイオン化可能な脂質および/または中性を示すイオン化可能な脂質を含み得る。
【0018】
前記イオン化可能な脂質は、脂質と類似した特性を有するイオン化可能な化合物であって、薬物(例えば、陰イオン性薬物および/または核酸)との静電的相互作用により前記薬物が脂質ナノ粒子内に高効率に封入されるようにする役割を果たす。
【0019】
前記6員ヘテロ環アミンは、ピペラジン(piperazine)またはピペリジン(piperidine)構造を含むものであり得る。
【0020】
前記6員ヘテロ環アミンは、第3級アミンを含む鎖状または非鎖状のアミンであり、一例として、
【化1】
からなる群から選択される1種以上であり得る。
【0021】
一例として、前記6員ヘテロ環アミンは、1,4-bis(3-aminopropyl)piperazine、N-(3-Aminopropyl)piperidine、(1-Methyl-4-piperidinyl)methanamine、2-(4-Methyl-piperazin-1-yl)-ethylamine、1-(2-Aminoethyl)piperazine、および1-(3-aminopropyl)piperazineからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0022】
前記イオン化可能な脂質に含まれるアミンの種類によって、脂質ナノ粒子の(i)薬物封入率、(ii)PDI(polydispersity index)、および/または(iii)肝組織、および/または肝を構成する細胞(例えば、肝細胞(hepatocyte)および/またはLSEC(liver sinusoidal endothelial cell;肝類洞内皮細胞))への薬物伝達効率が異なる。
【0023】
前記アミンを含むイオン化可能な脂質を含む脂質ナノ粒子は、下記特徴の1種以上を有する:
(1)高効率に薬物を封入;
(2)製造された粒子の大きさが均一(または低いPDI数値を有し);および/または
(3)肝組織、および/または肝を構成する細胞(例えば、肝細胞および/またはLSEC)への薬物伝達効率に優れる。
【0024】
一実施形態によれば、1,4-bis(3-aminopropyl)piperazine(例えば、Cas Nos.7209-38-3)を含むイオン化可能な脂質を含む脂質ナノ粒子は、他の種類のアミンを含むイオン化可能な脂質を含む脂質ナノ粒子より下記特徴の1種以上を有する:
(1)高効率に薬物を封入;
(2)製造された粒子の大きさが均一(または低いPDI数値を有し);および/または
(3)肝組織、および/または肝を構成する細胞(例えば、肝細胞および/またはLSEC)への薬物伝達効率に優れる。
【0025】
前記アルキル-エポキシドは、下記化学式1のような構造を有する。
【化2】
前記アルキル-エポキシドは、C6~C14、C6~C12、C6~C10、C8~C14、C8~C12、C8~C10、C10~C14、C10~C12、またはC10の炭素の長さを有し、例えば、C10の1,2-エポキシドデカン(1,2-epoxydodecane)である。イオン化可能な脂質に含まれるアルキル-エポキシドの炭素数を上記の範囲とすることにより脂質ナノ粒子内に封入される薬物に対する高い封入率を示すことができる。
【0026】
一例として、前記イオン化可能な脂質は、下記化学式2の一般式を有する。
【化3】
【0027】
上記化学式2の構造は、一実施形態によるイオン化可能な脂質を有する構造の一例であって、イオン化可能な脂質の構造は、6員ヘテロ環アミンおよびアルキル-エポキシドの種類によって異なる。
【0028】
一実施形態によれば、化学式2の構造を有するイオン化可能な脂質を含む脂質ナノ粒子は、他の種類のイオン化可能な脂質を含む脂質ナノ粒子より下記特徴の1種以上を有する:
(1)高効率に薬物を封入;
(2)製造された粒子の大きさが均一(または低いPDI数値を有し);および/または
(3)肝組織、および/または肝を構成する細胞(例えば、肝細胞および/またはLSEC)への薬物伝達効率に優れる。
【0029】
一実施形態によれば、前記脂質ナノ粒子は、pKaが5~8、5.5~7.5、6~7、または6.5~7であり得る。pKaは酸解離定数であって、対象物質の酸の強さを表した指標として一般に使用されているものを指す。前記脂質ナノ粒子のpKa値は、脂質ナノ粒子の生体内安定性および脂質ナノ粒子の薬物放出側面において重要である。一例として、上記範囲のpKa値を示す脂質ナノ粒子は、生体内に安全にターゲット臓器(例えば、肝)および/またはターゲット細胞(肝細胞、および/またはLSEC)に伝達され、ターゲット臓器および/またはターゲット細胞に到達してエンドサイトーシス(endocytosis)後に正電荷を示して、エンドソーム(endosome)膜の陰イオン性タンパク質と静電的相互作用により封入された薬物が放出されるようにすることができる。
【0030】
一実施形態による脂質ナノ粒子の構成要素中のリン脂質は、脂質ナノ粒子内にイオン化可能な脂質および薬物が相互作用して形成されたコアを囲んで保護する役割を果たし、ターゲット細胞のリン脂質二重層と結合して薬物の細胞内への伝達時、細胞膜通過およびエンドソーム脱出(endosomal escape)を容易にすることができる。
【0031】
前記リン脂質は、一実施形態による脂質ナノ粒子の融合を促進できるリン脂質を限定なく用いることができ、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(dioleoylphosphatidylethanolamine、DOPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoylphosphatidylcholine、DSPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(palmitoyloleoylphosphatidylcholine、POPC)、卵ホスファチジルコリン(egg phosphatidylcholine、EPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(dioleoylphosphatidylcholine、DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidylcholine、DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(dioleoylphosphatidylglycerol、DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(dipalmitoylphosphatidylglycerol、DPPG)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(distearoylphosphatidylethanolamine、DSPE)、ホスファチジルエタノールアミン(Phosphatidylethanolamine、PE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoylphosphatidylethanolamine)、1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine、1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine(POPE)、1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(POPC)、1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-[phospho-L-serine](DOPS)、1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-[phospho-L-serine]などからなる群から選択される1種以上であり得る。一例として、DOPEを含む脂質ナノ粒子は、mRNA伝達に効果的(mRNAに対する薬物伝達効率に優れ)であり、別の例として、DSPEを含む脂質ナノ粒子は、siRNA伝達に効果的(siRNAに対する薬物伝達効率に優れ)である。
【0032】
一実施形態による脂質ナノ粒子の構成要素中でコレステロールは、脂質ナノ粒子内に脂質充填に形態的側面から堅固性を付与し、ナノ粒子のコアおよび表面に分散してナノ粒子の安定性を向上させる役割を果たす。
【0033】
本明細書において「脂質-PEG(polyethyleneglycol)複合体」、「脂質-PEG」、「PEG-脂質」、「PEG-lipid」、または「lipid-PEG」は、脂質とPEGがコンジュゲートされた形態を指し、一側端部に親水性重合体であるポリエチレングリコール(PEG)重合体が結合した脂質を意味する。前記脂質-PEG複合体は、脂質ナノ粒子内でナノ粒子の血清内粒子安定性に寄与し、ナノ粒子間の凝集を防ぐ役割を果たす。また、脂質-PEG複合体は、核酸の生体内伝達時、分解酵素から核酸を保護して核酸の体内安定性を強化させ、ナノ粒子内封入された薬物の半減期を増加させる。
【0034】
前記脂質-PEG複合体でPEGは脂質に直接接合されるか、またはリンカーモイエティにより脂質に連結される。PEGを脂質に結合させるために好適な任意のリンカーモイエティを用いることができ、例えば、エステル-非含有リンカーモイエティおよびエステル-含有リンカーモイエティが含まれる。前記エステル-非含有リンカーモイエティは、アミド(-C(O)NH-)、アミノ(-NR-)、カルボニル(-C(O)-)、カルバメート(-NHC(O)O-)、尿素(-NHC(O)NH-)、ジスルフィド(-S-S-)、エーテル(-O-)、スクシニル(-(O)CCH2CH2C(O)-)、スクシンアミジル(-NHC(O)CH2CH2C(O)NH-)、エーテル、ジスルフィドのみならず、これらの組み合わせ(例えば、カルバメートリンカーモイエティおよびアミドリンカーモイエティの両方を含有するリンカー)が挙げられるが、これらに限定されない。前記エステル-含有リンカーモイエティは、例えば、カーボネート(-OC(O)O-)、スクシニル、リン酸エステル(-O-(O)POH-O-)、スルホン酸エステル、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
一例として、前記脂質-PEG複合体の平均分子量は、100ダルトン~10,000ダルトン、200ダルトン~8,000ダルトン,500ダルトン~5,000ダルトン、1,000ダルトン~3,000ダルトン、1,000ダルトン~2,600ダルトン、1,500ダルトン~2,600ダルトン、1,500ダルトン~2,500ダルトン、2,000ダルトン~2,600ダルトン、2,000ダルトン~2,500ダルトン、または2,000ダルトンであり得る。
【0036】
前記脂質-PEG複合体内脂質は、ポリエチレングリコールと結合できる脂質であれば限定なく使用することができ、前記脂質ナノ粒子の他の構成要素であるリン脂質および/またはコレステロールを使用することもできる。具体的には、脂質-PEG複合体内脂質は、セラミド(ceramide)、ジミリストイルグリセロール(dimyristoylglycerol、DMG)、スクシニルジアシルグリセロール(succinoyl-diacylglycerol、s-DAG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoylphosphatidylcholine、DSPC)、ジステアロイルホスファチジルエターノルアミン(distearoylphosphatidylethanolamine、DSPE)、またはコレステロールであり得るが、これらに限定されない。
【0037】
一例として、前記脂質-PEG複合体は、ジアルキルオキシプロピルに結合されたPEG(PEG-DAA)、ジアシルグリセロールに結合されたPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質に結合されたPEG(PEG-PE)、セラミドに接合されたPEG(PEG-CER、セラミド-PEG複合体、セラミド-PEG、PEG-セラミド複合体、またはPEG-セラミド)、コレステロールまたはその誘導体に接合されたPEG、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPC、PEG-DSPE(DSPE-PEG)、およびこれらの混合物であり得、例えば、C16-PEG2000セラミド(N-palmitoyl-sphingosine-1-{succinyl[methoxy(polyethylene glycol)2000]})、DMG-PEG2000、14:0 PEG2000PEであり得る。
【0038】
一実施形態によれば、セラミド-PEG複合体を含む脂質ナノ粒子を含む場合、他の種類の脂質-PEG複合体を含む脂質ナノ粒子を含む場合より下記特徴の1種以上を有する:
(1)高効率に薬物を封入;
(2)製造された粒子の大きさが均一(または低いPDI数値を有し);および/または
(3)肝組織、および/または肝を構成する細胞(例えば、肝細胞および/またはLSEC)への薬物伝達効率に優れる。
【0039】
前記脂質-PEG複合体内PEGは、親水性高分子に血漿タンパク質の吸着を抑制する能力を有しているため、脂質ナノ粒子の体内循環時間を増加させてナノ粒子間の凝集現象を防ぐ役割を果たす。また、脂質-PEG複合体は、生体内でステルス(stealth)機能を果たしてナノ粒子の分解を防止することができる。
【0040】
前記PEGは、脂質に結合しない側に官能基が結合したもの(functionalized PEG)であり得る。この時、使用可能な官能基は、スクシニル基(succinyl)、カルボン酸(carboxylic acid)、マレイミド(maleimide)、アミン基、ビオチン、シアヌル基(cyanur)、および葉酸(folate)などからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0041】
一実施形態によれば、前記脂質-PEG複合体は、0.1~15モル%、0.25~15モル%、0.5~15モル%、1~15モル%、1.5~15モル%、2~15モル%、2.5~15モル%、0.1~12.5モル%、0.25~12.5モル%、0.5~12.5モル%、1~12.5モル%、1.5~12.5モル%、2~12.5モル%、2.5~12.5モル%、0.1~10モル%、0.25~10モル%、0.5~10モル%、1~10モル%、1.5~10モル%、2~10モル%、2.5~10モル%、0.1~7.5モル%、0.25~7.5モル%、0.5~7.5モル%、1~7.5モル%、1.5~7.5モル%、2~7.5モル%、2.5~7.5モル%、0.1~5モル%、0.25~5モル%、0.5~5モル%、1~5モル%、1.5~5モル%、2~5モル%、2.5~5モル%、0.1~3モル%、0.25~3モル%、0.5~3モル%、1~3モル%、1.5~3モル%、2~3モル%、2.5~3モル%、0.1~2.5モル%、0.25~2.5モル%、0.5~2.5モル%、1~2.5モル%、1.5~2.5モル%、2~2.5モル%、0.1~4.5モル%、0.25~4.5モル%、0.5~4.5モル%、1~4.5モル%、1.5~4.5モル%、2~4.5モル%、2.5~4.5モル%、0.1~4モル%、0.25~4モル%、0.5~4モル%、1~4モル%、1.5~4モル%、2~4モル%、2.5~4モル%、0.1~3.5モル%、0.25~3.5モル%、0.5~3.5モル%、1~3.5モル%、1.5~3.5モル%、2~3.5モル%、2.5~3.5モル%、0.1~2.0モル%、0.1~1.5モル%、0.1~1.0モル%、0.5~2.0モル%、0.5~1.5モル%、0.5~1.0モル%、1.0~2.0モル%、1.0~1.5モル%、1.5~2.0モル%、1.0モル%、または1.5モル%で前記脂質ナノ粒子に含まれる。
【0042】
一例として、前記脂質ナノ粒子の肝組織、肝細胞、および/またはLSECターゲット効果(薬物伝達効果)は、脂質ナノ粒子に含まれる脂質-PEG複合体の含有量に依存する。
【0043】
例えば、脂質-PEG複合体を0.1~15モル%、0.25~15モル%、0.5~15モル%、1~15モル%、1.5~15モル%、2~15モル%、2.5~15モル%、0.1~12.5モル%、0.25~12.5モル%、0.5~12.5モル%、1~12.5モル%、1.5~12.5モル%、2~12.5モル%、2.5~12.5モル%、0.1~10モル%、0.25~10モル%、0.5~10モル%、1~10モル%、1.5~10モル%、2~10モル%、2.5~10モル%、0.1~7.5モル%、0.25~7.5モル%、0.5~7.5モル%、1~7.5モル%、1.5~7.5モル%、2~7.5モル%、2.5~7.5モル%、0.1~5モル%、0.25~5モル%、0.5~5モル%、1~5モル%、1.5~5モル%、2~5モル%、2.5~5モル%、0.1~3モル%、0.25~3モル%、0.5~3モル%、1~3モル%、1.5~3モル%、2~3モル%、2.5~3モル%、0.1~2.5モル%、0.25~2.5モル%、0.5~2.5モル%、1~2.5モル%、1.5~2.5モル%、2~2.5モル%、0.1~4.5モル%、0.25~4.5モル%、0.5~4.5モル%、1~4.5モル%、1.5~4.5モル%、2~4.5モル%、2.5~4.5モル%、0.1~4モル%、0.25~4モル%、0.5~4モル%、1~4モル%、1.5~4モル%、2~4モル%、2.5~4モル%、0.1~3.5モル%、0.25~3.5モル%、0.5~3.5モル%、1~3.5モル%、1.5~3.5モル%、2~3.5モル%、2.5~3.5モル%、0.1~10モル%、0.1~5.0モル%、0.1~4.5モル%、0.1~4.0モル%、0.1~3.5モル%、0.1~3.0モル%、0.1~2.5モル%、0.1~2.0モル%、0.1~1.5モル%、0.1~1.0モル%、0.5~10モル%、0.5~5.0モル%、0.5~4.5モル%、0.5~4.0モル%、0.5~3.5モル%、0.5~3.0モル%、0.5~2.5モル%、0.5~2.0モル%、0.5~1.5モル%、0.5~1.0モル%、1.0~10モル%、1.0~5.0モル%、1.0~4.5モル%、1.0~4.0モル%、1.0~3.5モル%、1.0~3.0モル%、1.0~2.5モル%、1.0~2.0モル%、1.0~1.5モル%、1.5~10モル%、1.5~5.0モル%、1.5~4.5モル%、1.5~4.0モル%、1.5~3.5モル%、1.5~3.0モル%、1.5~2.5モル%、1.5~2.0モル%、1.0モル%、または1.5モル%で含む脂質ナノ粒子は、(上記の範囲以外の含有量で脂質-PEG複合体を含む脂質ナノ粒子よりも)肝細胞へのターゲット効果に優れる。
【0044】
また、別の例として、脂質-PEG複合体を0.1~15モル%、0.25~15モル%、0.5~15モル%、1~15モル%、1.5~15モル%、2~15モル%、2.5~15モル%、0.1~12.5モル%、0.25~12.5モル%、0.5~12.5モル%、1~12.5モル%、1.5~12.5モル%、2~12.5モル%、2.5~12.5モル%、0.1~10モル%、0.25~10モル%、0.5~10モル%、1~10モル%、1.5~10モル%、2~10モル%、2.5~10モル%、0.1~7.5モル%、0.25~7.5モル%、0.5~7.5モル%、1~7.5モル%、1.5~7.5モル%、2~7.5モル%、2.5~7.5モル%、0.1~5モル%、0.25~5モル%、0.5~5モル%、1~5モル%、1.5~5モル%、2~5モル%、2.5~5モル%、0.1~3モル%、0.25~3モル%、0.5~3モル%、1~3モル%、1.5~3モル%、2~3モル%、2.5~3モル%、0.1~2.5モル%、0.25~2.5モル%、0.5~2.5モル%、1~2.5モル%、1.5~2.5モル%、2~2.5モル%、0.1~4.5モル%、0.25~4.5モル%、0.5~4.5モル%、1~4.5モル%、1.5~4.5モル%、2~4.5モル%、2.5~4.5モル%、0.1~4モル%、0.25~4モル%、0.5~4モル%、1~4モル%、1.5~4モル%、2~4モル%、2.5~4モル%、0.1~3.5モル%、0.25~3.5モル%、0.5~3.5モル%、1~3.5モル%、1.5~3.5モル%、2~3.5モル%、2.5~3.5モル%、0.1~10モル%、0.1~5.0モル%、0.1~4.5モル%、0.1~4.0モル%、0.1~3.5モル%、0.1~3.0モル%、0.1~2.5モル%、0.1~2.0モル%、0.1~1.5モル%、0.1~1.0モル%、0.5~10モル%、0.5~5.0モル%、0.5~4.5モル%、0.5~4.0モル%、0.5~3.5モル%、0.5~3.0モル%、0.5~2.5モル%、0.5~2.0モル%、0.5~1.5モル%、0.5~1.0モル%、1.0~10モル%、1.0~5.0モル%、1.0~4.5モル%、1.0~4.0モル%、1.0~3.5モル%、1.0~3.0モル%、1.0~2.5モル%、1.0~2.0モル%、1.0~1.5モル%、1.5~10モル%、1.5~5.0モル%、1.5~4.5モル%、1.5~4.0モル%、1.5~3.5モル%、1.5~3.0モル%、1.5~2.5モル%、1.5~2.0モル%、1.0モル%、または1.5モル%で含む脂質ナノ粒子は、(上記の範囲以外の含有量で脂質-PEG複合体を含む脂質ナノ粒子よりも)LSECへのターゲット効果に優れる。
【0045】
一実施形態によれば、前記コレステロールは、10~60モル%、20~60モル%、30~60モル%、30~55モル%、30~52.5モル%、30~52モル%、30~51モル%、30~50モル%、30~47.5モル%、30~45モル%、30~44モル%、30~43.5モル%、30~43モル%、30~41.5モル%、30~40モル%、30~39.5モル%、35~60モル%、35~55モル%、35~52.5モル%、35~52モル%、35~51モル%、35~50モル%、35~47.5モル%、35~45モル%、35~44モル%、35~43.5モル%、35~43モル%、35~41.5モル%、35~40モル%、35~39.5モル%、37~60モル%、37~55モル%、37~52.5モル%、37~52モル%、37~51モル%、37.5~50モル%、37.5~47.5モル%、37.5~45モル%、37.5~44モル%、37.5~43.5モル%、37.5~43モル%、37.5~41.5モル%、37.5~40モル%、37.5~39.5モル%、39.5~60モル%、39.5~55モル%、39.5~52.5モル%、39.5~52モル%、39.5~51モル%、39.5~50モル%、39.5~47.5モル%、39.5~45モル%、39.5~44モル%、39.5~43.5モル%、39.5~43モル%、39.5~41.5モル%、39.5~40モル%、40~60モル%、40~55モル%、40~52.5モル%、40~52モル%、40~51モル%、40~50モル%、40~47.5モル%、40~45モル%、40~44モル%、40~43.5モル%、40~43モル%、40~41.5モル%、41.5~60モル%、41.5~55モル%、41.5~52.5モル%、41.5~52モル%、41.5~51モル%、41.5~50モル%、41.5~47.5モル%、41.5~45モル%、41.5~44モル%、41.5~43.5モル%、41.5~43モル%、43~60モル%、43~55モル%、43~52.5モル%、43~52モル%、43~51モル%、43~50モル%、43~47.5モル%、43~45モル%、43~44モル%、43~43.5モル%、43.5~60モル%、43.5~55モル%、43.5~52.5モル%、43.5~52モル%、43.5~51モル%、43.5~50モル%、43.5~47.5モル%、43.5~45モル%、43.5~44モル%、45~60モル%、45~55モル%、45~52.5モル%、45~52モル%、45~51モル%、45~50モル%、45~47.5モル%、47.5~60モル%、47.5~55モル%、47.5~52.5モル%、47.5~52モル%、47.5~51モル%、47.5~50モル%、50~60モル%、50~55モル%、50~52.5モル%、50~52モル%、50~52.5モル%、50~51.5モル%、51~60モル%、51~55モル%、51~52.5モル%、または51~52モル%、51~60モル%、51~55モル%、51~52.5モル%、または51~52モル%で前記脂質ナノ粒子に含まれる。
【0046】
一実施形態によれば、前記脂質-PEG複合体とコレステロールの合計は30~70モル%、40~70モル%、40~60モル%、40~55モル%、40~53.5モル%、40~50モル%、40~47.5モル%、40~45モル%、40~44.5モル%、42~60モル%、42~55モル%、42~53.5モル%、42~50モル%、42~47.5モル%、42~45モル%、42~44.5モル%、44~60モル%、44~55モル%、44~53.5モル%、44~50モル%、44~47.5モル%、44~45モル%、44~44.5モル%、44.5~60モル%、44.5~55モル%、44.5~53.5モル%、44.5~50モル%、44.5~47.5モル%、または44.5~45モル%で前記脂質ナノ粒子に含まれる。
【0047】
一実施形態によれば、前記イオン化可能な脂質は、10~70モル%、10~60モル%、10~55モル%、10~50モル%、10~45モル%、10~42.5モル%、10~40モル%、10~35モル%、10~30モル%、10~26.5モル%、10~25モル%、10~20モル%、15~60モル%、15~55モル%、15~50モル%、15~45モル%、15~42.5モル%、15~40モル%、15~35モル%、15~30モル%、15~26.5モル%、15~25モル%、15~20モル%、20~60モル%、20~55モル%、20~50モル%、20~45モル%、20~42.5モル%、20~40モル%、20~35モル%、20~30モル%、20~26.5モル%、20~25モル%、25~60モル%、25~55モル%、25~50モル%、25~45モル%、25~42.5モル%、25~40モル%、25~35モル%、25~30モル%、25~26.5モル%、26.5~60モル%、26.5~55モル%、26.5~50モル%、26.5~45モル%、26.5~42.5モル%、26.5~40モル%、26.5~35モル%、26.5~30モル%、30~60モル%、30~55モル%、30~50モル%、30~45モル%、30~42.5モル%、30~40モル%、30~35モル%、35~60モル%、35~55モル%、35~50モル%、35~45モル%、35~42.5モル%、35~40モル%、40~60モル%、40~55モル%、40~50モル%、40~45モル%、40~42.5モル%、42.5~60モル%、42.5~55モル%、42.5~50モル%、または42.5~45モル%で前記脂質ナノ粒子に含まれる。
【0048】
一実施形態によれば、前記リン脂質は1~50モル%、5~50モル%、5~40モル%、5~30モル%、5~25モル%、5~20モル%、5~15モル%、5~13モル%、5~10モル%、10~30モル%、10~25モル%、10~20モル%、10~15モル%、10~13モル%、15~30モル%、15~25モル%、15~20モル%、20~30モル%、または20~25モル%で前記脂質ナノ粒子に含まれる。
【0049】
本明細書において「モル%(mol%、モルパーセント)」は、特定の構成成分のモル数を構成成分全体のモル数の和で割った後、100を乗じてパーセントで示したものであり、数式で表現すると、下記数式1の通りである。
【数1】
【0050】
前記脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質:リン脂質:コレステロール:脂質-PEG複合体を20~50:10~30:20~60:0.1~10のモル比、20~50:10~30:20~60:0.25~10のモル比、20~50:10~30:30~60:0.25~10のモル比、20~50:10~30:30~60:0.1~5のモル比、20~50:10~30:30~60:0.5~5のモル比、25~45:10~25:40~50:0.5~3のモル比、25~45:10~20:40~55:0.5~3のモル比、25~45:10~20:40~55:1.0~1.5のモル比、40~45:10~15:40~45:0.5~3.0のモル比、40~45:10~15:40~45:0.5~3のモル比、40~45:10~15:40~45:1~1.5のモル比、25~30:17~22:50~55:0.5~3.0のモル比、25~30:17~22:50~55:1.0~2.5のモル比、または25~30:17~22:50~55:1.5~2.5のモル比で含まれる。一実施形態によれば、前記脂質ナノ粒子に含まれる構成成分中、脂質-PEG複合体およびコレステロールのモル数の和を一定に維持しながら、脂質-PEG複合体のモル数の増加分だけコレステロールのモル数を減少させることで、前記構成成分のモル比を維持する。
【0051】
本明細書において、モル比はモル数比を意味し、「重量部」は、各成分が含まれている重量比率を意味する。
【0052】
一例として、前記脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質20~50重量部、リン脂質10~30重量部、コレステロール20~60重量部(または30~60重量部)、および脂質-PEG複合体0.1~10重量部(または0.25~10重量部、0.5~5重量部)を含み得る。前記脂質ナノ粒子は、ナノ粒子全体の重量を基準にしてイオン化可能な脂質20~50重量%、リン脂質10~30重量%、コレステロール20~60重量%(または30~60重量%)、および脂質-PEG複合体を0.1~10重量%(または0.25~10重量%、0.5~5重量%)を含み得る。別の例として、前記脂質ナノ粒子は、ナノ粒子全体の重量を基準にしてイオン化可能な脂質25~50重量%、リン脂質10~20重量%、コレステロール35~55重量%、および脂質-PEG複合体を0.1~10重量%(または0.25~10重量%、0.5~5重量%)で含み得る。
【0053】
上記の範囲(モル比、重量部、および/または重量%)でイオン化可能な脂質、コレステロール、リン脂質、および/または脂質-PEG複合体を含む脂質ナノ粒子は、上記の範囲外でイオン化可能な脂質、コレステロール、リン脂質、および/または脂質-PEG複合体を含む脂質ナノ粒子より、(i)脂質ナノ粒子の安定度、(ii)薬物封入率、および/または(iii)肝組織、および/または細胞(例えば、肝細胞および/またはLSEC)をターゲットとする薬物伝達効率に優れる。
【0054】
一実施形態による脂質ナノ粒子は、肝組織、肝細胞(hepatocyte)、および/またはLSEC(liver sinusoidal endothelial cells)内導入が容易になるように平均直径が20nm~200nm、20~180nm、20nm~170nm、20nm~150nm、20nm~120nm、20nm~100nm、20nm~90nm、30nm~200nm、30~180nm、30nm~170nm、30nm~150nm、30nm~120nm、30nm~100nm、30nm~90nm、40nm~200nm、40~180nm、40nm~170nm、40nm~150nm、40nm~120nm、40nm~100nm、40nm~90nm、50nm~200nm、50~180nm、50nm~170nm、50nm~150nm、50nm~120nm、50nm~100nm、50nm~90nm、60nm~200nm、60~180nm、60nm~170nm、60nm~150nm、60nm~120nm、60nm~100nm、60nm~90nm、70nm~200nm、70~180nm、70nm~170nm、70nm~150nm、70nm~120nm、70nm~100nm、70nm~90nm、80nm~200nm、80~180nm、80nm~170nm、80nm~150nm、80nm~120nm、80nm~100nm、80nm~90nm、90nm~200nm、90~180nm、90nm~170nm、90nm~150nm、90nm~120nm、または90nm~100nmであり得る。脂質ナノ粒子が上記の範囲より小さい場合、脂質ナノ粒子の表面積が増加しすぎるので安定性維持が難しく、したがって、標的組織への伝達および/または薬物効果が減少する。
【0055】
一実施形態による脂質ナノ粒子の肝組織、肝細胞、および/またはLSECターゲット効果(薬物伝達効果)は、脂質ナノ粒子の大きさに依存する。例えば、40~120nm、30~100nm、35~95nm、40~90nm、45~90nm、50~90nm、55~85nm、60~80nm、70~90nm、70~80nm、50~70nm、または60~70nmの直径を有する脂質ナノ粒子の場合、肝細胞へのターゲット効果に(上記の範囲以外の直径を有するナノ粒子よりも)優れる。別の例として、20~200nm、20~180nm、40~180nm、40~170nm、50~160nm、70~180nm、70~170nm、75~170nm、75~165nm、70~150nm、70~130nm、75~130nm、80~120nm、85~120nm、約90~120nm、90~110nm、90~100nm、80~110nm、80~100nm、85~95nm、約90nm、または90nmの直径を有する脂質ナノ粒子の場合、LSECへのターゲット効果に(上記の範囲以外の直径を有するナノ粒子よりも)優れる。
【0056】
前記脂質ナノ粒子は、肝組織を特異的標的化するものであり得る。一実施形態による脂質ナノ粒子は、天然のリポタンパク質の代謝挙動を非常に類似に模倣でき、肝による脂質代謝の過程およびこれを通じた治療メカニズムに有用に適用される。
【0057】
前記脂質ナノ粒子は、肝細胞(hepatocyte)を標的化するものであり得る。前記脂質ナノ粒子に含まれている脂質-PEG複合体の含有量が0.1~15モル%、0.25~15モル%、0.5~15モル%、1~15モル%、1.5~15モル%、2~15モル%、2.5~15モル%、0.1~12.5モル%、0.25~12.5モル%、0.5~12.5モル%、1~12.5モル%、1.5~12.5モル%、2~12.5モル%、2.5~12.5モル%、0.1~10モル%、0.25~10モル%、0.5~10モル%、1~10モル%、1.5~10モル%、2~10モル%、2.5~10モル%、0.1~7.5モル%、0.25~7.5モル%、0.5~7.5モル%、1~7.5モル%、1.5~7.5モル%、2~7.5、2.5~7.5モル%、0.1~5モル%、0.25~5モル%、0.5~5モル%、1~5モル%、1.5~5モル%、2~5モル%、2.5~5モル%、0.1~3モル%、0.25~3モル%、0.5~3モル%、1~3モル%、1.5~3モル%、2~3モル%、2.5~3モル%、0.1~2.5モル%、0.25~2.5モル%、0.5~2.5モル%、1~2.5モル%、1.5~2.5モル%、2~2.5モル%、0.1~4.5モル%、0.25~4.5モル%、0.5~4.5モル%、1~4.5モル%、1.5~4.5モル%、2~4.5モル%、2.5~4.5モル%、0.1~4モル%、0.25~4モル%、0.5~4モル%、1~4モル%、1.5~4モル%、2~4モル%、2.5~4モル%、0.1~3.5モル%、0.25~3.5モル%、0.5~3.5モル%、1~3.5モル%、1.5~3.5モル%、2~3.5モル%、2.5~3.5モル%、0.1~2.0モル%、0.1~1.5モル%、0.1~1.0モル%、0.5~2.0モル%、0.5~1.5モル%、0.5~1.0モル%、1.0~2.0モル%、1.0~1.5モル%、1.5~2.0モル%、1.0モル%、または1.5モル%の場合、前記脂質ナノ粒子の肝細胞への薬物伝達効率(肝細胞ターゲット効率)に優れる。
【0058】
前記脂質ナノ粒子は、LSEC(liver sinusoidal endothelial cell)を標的化するものであり得る。前記脂質ナノ粒子に含まれている脂質-PEG複合体の含有量が0.1~15モル%、0.25~15モル%、0.5~15モル%、1~15モル%、1.5~15モル%、2~15モル%、2.5~15モル%、0.1~12.5モル%、0.25~12.5モル%、0.5~12.5モル%、1~12.5モル%、1.5~12.5モル%、2~12.5モル%、2.5~12.5モル%、0.1~10モル%、0.25~10モル%、0.5~10モル%、1~10モル%、1.5~10モル%、2~10モル%、2.5~10モル%、0.1~7.5モル%、0.25~7.5モル%、0.5~7.5モル%、1~7.5モル%、1.5~7.5モル%、2~7.5モル%、2.5~7.5モル%、0.1~5モル%、0.25~5モル%、0.5~5モル%、1~5モル%、1.5~5モル%、2~5モル%、2.5~5モル%、0.1~3モル%、0.25~3モル%、0.5~3モル%、1~3モル%、1.5~3モル%、2~3モル%、2.5~3モル%、0.1~2.5モル%、0.25~2.5モル%、0.5~2.5モル%、1~2.5モル%、1.5~2.5モル%、2~2.5モル%、0.1~4.5モル%、0.25~4.5モル%、0.5~4.5モル%、1~4.5モル%、1.5~4.5モル%、2~4.5モル%、2.5~4.5モル%、0.1~4モル%、0.25~4モル%、0.5~4モル%、1~4モル%、1.5~4モル%、2~4モル%、2.5~4モル%、0.1~3.5モル%、0.25~3.5モル%、0.5~3.5モル%、1~3.5モル%、1.5~3.5モル%、2~3.5モル%、2.5~3.5モル%、0.1~2.0モル%、0.1~1.5モル%、0.1~1.0モル%、0.5~2.0モル%、0.5~1.5モル%、0.5~1.0モル%、1.0~2.0モル%、1.0~1.5モル%、1.5~2.0モル%、1.0モル%、または1.5モル%の場合、前記脂質ナノ粒子のLSECへの薬物伝達効率(LSECターゲット効率)に優れる。
【0059】
本明細書において、前記脂質ナノ粒子が肝組織、肝細胞、および/またはLSECへ「標的化(targeting)」、「位置化(localization)」するとは、組織内または細胞内に内在化(internalization)することであり、核膜も透過できるので核内に内在化することを意味する。
【0060】
他の態様として、(1)前記脂質ナノ粒子;および(2)陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせ(陰イオン性薬物および核酸の組み合わせ)を含む薬物伝達用組成物を提供する。前記薬物は、陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせ(陰イオン性薬物および核酸)であり得る。
【0061】
前記薬物伝達用組成物は、前記脂質ナノ粒子内部に陰イオン性薬物および/または核酸などの生理活性物質が封入されているものであり、陰イオン性薬物および/または核酸などの生理活性物質が安定的かつ高効率に封入されて前記伝達用組成物によって優れた治療効果を示すことができる。また、前記脂質ナノ粒子内部に封入される薬物の種類を治療の目的に応じて多様に調節できる長所がある。
【0062】
前記脂質ナノ粒子は、陰イオン性薬物および/または核酸が(脂質ナノ粒子の)内部に封入されたものであり得る。陰イオン性薬物および/または核酸が(脂質ナノ粒子の内部に)封入された脂質ナノ粒子については上述した脂質ナノ粒子と同様である。
【0063】
一例として、前記脂質ナノ粒子に含まれているイオン化可能な脂質および薬物(陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせ)の重量比は1~20:1、1~15:1、1~10:1、5~20:1、5~15:1、5~10:1、7.5~20:1、7.5~15:1、または7.5~10:1であり得る。
【0064】
一例として、上記の範囲内の重量比で(1)イオン化可能な脂質;および(2)薬物(陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせ)を含む場合、脂質ナノ粒子内部に薬物(陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせ)の封入率および/または薬物伝達効率が上記の範囲外の重量比で(1)イオン化可能な脂質;および(2)陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせを含む脂質ナノ粒子より高いこともある。
【0065】
前記陰イオン性薬物および/または核酸が封入された脂質ナノ粒子は、肝組織、肝細胞(hepatocyte)、および/またはLSEC(liver sinusoidal endothelial cells)内導入が容易になるように平均直径が20nm~200nm、20~180nm、20nm~170nm、20nm~150nm、20nm~120nm、20nm~100nm、20nm~90nm、30nm~200nm、30~180nm、30nm~170nm、30nm~150nm、30nm~120nm、30nm~100nm、30nm~90nm、40nm~200nm、40~180nm、40nm~170nm、40nm~150nm、40nm~120nm、40nm~100nm、40nm~90nm、50nm~200nm、50~180nm、50nm~170nm、50nm~150nm、50nm~120nm、50nm~100nm、50nm~90nm、60nm~200nm、60~180nm、60nm~170nm、60nm~150nm、60nm~120nm、60nm~100nm、60nm~90nm、70nm~200nm、70~180nm、70nm~170nm、70nm~150nm、70nm~120nm、70nm~100nm、70nm~90nm、80nm~200nm、80~180nm、80nm~170nm、80nm~150nm、80nm~120nm、80nm~100nm、80nm~90nm、90nm~200nm、90~180nm、90nm~170nm、90nm~150nm、90nm~120nm、または90nm~100nmであり得る。
【0066】
上記範囲の下限値より脂質ナノ粒子の大きさが小さい場合、(i)脂質ナノ粒子が体循環(systemic circulation)の際、血液中に存在するアポリポプロテイン(apolipoprotein)(例えば、ApoE(例えば、ApoE3))の結合が減少して細胞内に入る脂質ナノ粒子の数が減少することがあり、(ii)脂質ナノ粒子の表面積が増加しすぎるので安定性維持が難しく、したがって、標的組織(または標的細胞)への薬物伝達効率および/または脂質ナノ粒子が運ぶ薬物の治療効果が減少する。
【0067】
上記の範囲内の直径を有する脂質ナノ粒子は、上記範囲の上限値を超える直径を有する脂質ナノ粒子よりもターゲット臓器および/または細胞への薬物伝達効率に優れる。
【0068】
一例として、(1)前記脂質ナノ粒子;および(2)陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせを含む薬物伝達用組成物は、肝細胞(hepatocyte)への薬物伝達用組成物であり得る。
【0069】
一実施形態によれば、前記肝細胞への薬物(陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせ)伝達用組成物に含まれる脂質ナノ粒子の直径は40~120nm、30~100nm、35~95nm、40~90nm、45~90nm、50~90nm、55~85nm、60~80nm、70~90nm、70~80nm、50~70nm、または60~70nmであり得る。肝細胞への薬物伝達時、sinusoidal lumenから肝細胞につながる穿孔(fenestrae)の直径は哺乳動物の場合約140nm、ヒトの場合約100nmであるので、上記範囲の直径を有する薬物伝達用組成物は、肝細胞(hepatocyte)への薬物伝達効率が上記の範囲外の直径を有する脂質ナノ粒子よりも優れる。
【0070】
一実施形態によれば、前記肝細胞への薬物伝達用組成物に含まれる脂質ナノ粒子は、脂質-PEG複合体を0.1~15モル%、0.25~15モル%、0.5~15モル%、1~15モル%、1.5~15モル%、2~15モル%、2.5~15モル%、0.1~12.5モル%、0.25~12.5モル%、0.5~12.5モル%、1~12.5モル%、1.5~12.5モル%、2~12.5モル%、2.5~12.5モル%、0.1~10モル%、0.25~10モル%、0.5~10モル%、1~10モル%、1.5~10モル%、2~10モル%、2.5~10モル%、0.1~7.5モル%、0.25~7.5モル%、0.5~7.5モル%、1~7.5モル%、1.5~7.5モル%、2~7.5モル%、2.5~7.5モル%、0.1~5モル%、0.25~5モル%、0.5~5モル%、1~5モル%、1.5~5モル%、2~5モル%、2.5~5モル%、0.1~3モル%、0.25~3モル%、0.5~3モル%、1~3モル%、1.5~3モル%、2~3モル%、2.5~3モル%、0.1~2.5モル%、0.25~2.5モル%、0.5~2.5モル%、1~2.5モル%、1.5~2.5モル%、2~2.5モル%、0.1~4.5モル%、0.25~4.5モル%、0.5~4.5モル%、1~4.5モル%、1.5~4.5モル%、2~4.5モル%、2.5~4.5モル%、0.1~4モル%、0.25~4モル%、0.5~4モル%、1~4モル%、1.5~4モル%、2~4モル%、2.5~4モル%、0.1~3.5モル%、0.25~3.5モル%、0.5~3.5モル%、1~3.5モル%、1.5~3.5モル%、2~3.5モル%、2.5~3.5モル%、0.1~2.0モル%、0.1~1.5モル%、0.1~1.0モル%、0.5~2.0モル%、0.5~1.5モル%、0.5~1.0モル%、1.0~2.0モル%、1.0~1.5モル%、1.5~2.0モル%、1.0モル%、または1.5モル%で含み得、上記の範囲で脂質-PEG複合体を含む脂質ナノ粒子は、肝細胞特異的(または肝細胞をターゲットとする)薬物伝達効率に優れる。
【0071】
一実施形態によれば、前記肝細胞への薬物伝達用組成物に含まれる脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質:リン脂質:コレステロール:脂質-PEG複合体を上記の範囲または20~50:10~30:30~60:0.5~5のモル比、25~45:10~25:40~50:0.5~3のモル比、25~45:10~20:40~55:0.5~3のモル比、25~45:10~20:40~55:1.0~1.5のモル比で含み得る。上記の範囲のモル比で構成成分を含む脂質ナノ粒子は、肝細胞特異的(または肝細胞をターゲットとする)薬物伝達効率に優れる。
【0072】
一例として、(1)前記脂質ナノ粒子;および(2)陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせを含む薬物伝達用組成物は、LSECへの薬物伝達用組成物であり得る。
【0073】
前記LSECへの薬物伝達用組成物に含まれる脂質ナノ粒子の直径は、前記穿孔(fenestrae)の直径と類似しているか、または若干小さい場合にLSECへの薬物伝達効果に優れる。一例として、前記LSECへの薬物伝達用組成物に含まれる脂質ナノ粒子の直径は20~200nm、20~180nm、40~180nm、40~170nm、50~160nm、70~180nm、70~170nm、75~170nm、75~165nm、70~150nm、70~130nm、75~130nm、80~120nm、85~120nm、約90~120nm、90~110nm、80~110nm、80~100nm、85~95nm、約90nm、または90nmであり得る。
【0074】
一実施形態によれば、前記LSECへの薬物伝達用組成物に含まれる脂質ナノ粒子は、脂質-PEG複合体を0.1~15モル%、0.25~15モル%、0.5~15モル%、1~15モル%、1.5~15モル%、2~15モル%、2.5~15モル%、0.1~12.5モル%、0.25~12.5モル%、0.5~12.5モル%、1~12.5モル%、1.5~12.5モル%、2~12.5モル%、2.5~12.5モル%、0.1~10モル%、0.25~10モル%、0.5~10モル%、1~10モル%、1.5~10モル%、2~10モル%、2.5~10モル%、0.1~7.5モル%、0.25~7.5モル%、0.5~7.5モル%、1~7.5モル%、1.5~7.5モル%、2~7.5モル%、2.5~7.5モル%、0.1~5モル%、0.25~5モル%、0.5~5モル%、1~5モル%、1.5~5モル%、2~5モル%、2.5~5モル%、0.1~3モル%、0.25~3モル%、0.5~3モル%、1~3モル%、1.5~3モル%、2~3モル%、2.5~3モル%、0.1~2.5モル%、0.25~2.5モル%、0.5~2.5モル%、1~2.5モル%、1.5~2.5モル%、2~2.5モル%、0.1~4.5モル%、0.25~4.5モル%、0.5~4.5モル%、1~4.5モル%、1.5~4.5モル%、2~4.5モル%、2.5~4.5モル%、0.1~4モル%、0.25~4モル%、0.5~4モル%、1~4モル%、1.5~4モル%、2~4モル%、2.5~4モル%、0.1~3.5モル%、0.25~3.5モル%、0.5~3.5モル%、1~3.5モル%、1.5~3.5モル%、2~3.5モル%、2.5~3.5モル%、0.1~2.0モル%、0.1~1.5モル%、0.1~1.0モル%、0.5~2.0モル%、0.5~1.5モル%、0.5~1.0モル%、1.0~2.0モル%、1.0~1.5モル%、1.5~2.0モル%、1.0モル%、または1.5モル%で含み得、上記の範囲で脂質-PEG複合体を含む脂質ナノ粒子は、LSEC特異的(またはLSECをターゲットとする)薬物伝達効率に優れる。
【0075】
一実施形態によれば、前記LSECへの薬物伝達用組成物に含まれる脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質:リン脂質:コレステロール:脂質-PEG複合体を上記の範囲または20~50:10~30:30~60:0.5~5のモル比、25~45:10~25:40~50:0.5~3のモル比、25~45:10~20:40~55:0.5~3のモル比、25~45:10~20:40~55:1.0~1.5のモル比で含み得る。上記範囲のモル比で構成成分を含む脂質ナノ粒子は、LSEC特異的(またはLSECをターゲットとする)薬物伝達効率に優れる。
【0076】
一実施形態による脂質ナノ粒子は、肝組織特異的な特性により高効率的に治療剤を肝組織内部、肝細胞、および/またはLSECに伝達でき、このような高効率の肝組織、肝細胞、および/またはLSEC特異的脂質ナノ粒子を介した肝疾患治療用薬物、治療用遺伝子などの伝達方法および肝を通して媒介される治療剤などに有用に活用される。また、一実施形態による脂質ナノ粒子は、核酸などの遺伝子薬物と安定した複合体を形成し、低い細胞毒性および効果的な細胞吸水性を示すので、核酸などの遺伝子薬物を伝達するのに効果的である。
【0077】
前記脂質ナノ粒子は、上述した通りである。
【0078】
一実施形態による脂質ナノ粒子は5~8、5.5~7.5、6~7、または6.5~7のpKaを示すことによって酸性pH条件で正電荷を示して、負電荷を持つ核酸および陰イオン性薬物(例えば、タンパク質)などの治療剤と静電的相互作用を通じて容易に薬物との複合体を形成して高効率に薬物を封入することができ、薬物(例えば、核酸)の細胞内または生体内薬物伝達用組成物として有用に用いることができる。
【0079】
本明細書において、「封入(encapsulation)」は、伝達物質を取り囲んで効率的に生体内に取り込ませるためにカプセル化することをいい、薬物封入率(カプセル化効率、Encapsulation efficiency)は、製造に使用された薬物全体の含有量に対して脂質ナノ粒子内に封入された薬物の含有量を意味する。
【0080】
前記伝達用組成物の陰イオン性または核酸薬物の封入率は70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、94%以上、80%超過~99%以下、80%超過~97%以下、80%超過~95%以下、85%以上~95%以下、87%以上~95%以下、90%以上~95%以下、91%以上~95%以下、91%以上~94%以下、91%超過~95%以下、92%以上~99%以下、92%以上~97%以下、または92%以上~95%以下であり得る。
【0081】
一実施形態によれば、前記封入率は、通常使用される方法によって計算され、例えば、前記薬物封入率は、一実施形態による脂質ナノ粒子にTriton-Xを処理し、Triton-Xが処理され、Triton-Xが処理されない脂質ナノ粒子の蛍光強度を特定の波長帯域幅(例えば、exitation:480~490nm、emission:520~530nm)を測定し、下記数式2によって求められる。
【数2】
【0082】
一実施形態による薬物伝達用組成物は、Cas9 mRNAを高い封入率で含み得る。既に知られているCas9 mRNA伝達用組成物は、低い比率でCas9 mRNAを含むのでCas9 mRNA伝達用組成物として活用するには限界があった。これとは異なり、一実施形態による脂質ナノ粒子は高い封入率で、具体的には70%以上の封入率でCas9 mRNAを含むことができ、したがって、遺伝子矯正治療に有用に活用することができる。
【0083】
前記陰イオン性薬物は、陰イオンを帯びる各種ペプチド、タンパク質薬物、タンパク質-核酸構造体またはヒアルロン酸-ペプチド複合体、ヒアルロン酸-タンパク質複合体などの陰イオン性生体高分子-薬物複合体などであり得る。前記タンパク質薬物の非制限的な例としては、遺伝子矯正はさみであるCas9、cpf1などの遺伝子矯正タンパク質をはじめとして、細胞死誘導因子(例えば、cytocrome C、caspase3/7/8/9など)および多様な細胞内タンパク質(例えば、転写因子)などであり得る。
【0084】
前記核酸は、小干渉リボ核酸(siRNA)、リボソームリボ核酸(rRNA)、リボ核酸(RNA)、ジオキシリボ核酸(DNA)、相補性ジオキシリボ核酸(cDNA)、アプタマー(aptamer)、伝令リボ核酸(mRNA)、運搬リボ核酸(tRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、miRNA、リボザイム(ribozyme)、PNA、DNAzyme、および遺伝子矯正のためのsgRNAなどからなる群から選択される1種以上であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0085】
本明細書において用語「siRNA」とは、特定のmRNAの切断(cleavage)によりRNAi(RNA interference)現象を誘導できる二本鎖RNA(duplex RNA)、あるいは一本鎖RNAの内部で二本鎖形態をとる一本鎖RNAを称する。ターゲット遺伝子のmRNAと相同な配列を有するセンスRNA鎖と、これと相補的な配列を有するアンチセンスRNA鎖で構成される。siRNAは、ターゲット遺伝子の発現を抑制できるので、効率的な遺伝子ノックダウン方法として、または遺伝子治療(gene therapy)の方法として提供される。二本鎖間の結合はヌクレオチド間の水素結合により形成され、二本鎖の内部のすべてのヌクレオチドが相補的に完全結合していなくてもよい。
【0086】
siRNAの長さは約15~60個、具体的には約15~50個、約15~40個、約15~30個、約15~25個、約16~25個、約19~25個、約20~25個、または約20~23個のヌクレオチドであり得る。前記siRNAの長さは、二本鎖RNAの一方のヌクレオチドの数、すなわち塩基対の数を意味し、一本鎖RNAの場合は、一本鎖RNAの内部の二本鎖の長さを意味する。また、siRNAは、血中安定性を増加させるか、または免疫反応を弱化させるなどの目的のために多様な官能基を導入したヌクレオチドから構成される。
【0087】
本明細書において用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、効能を増進させるために一つ以上の塩基、糖または骨格(backbone)の位置で変形できる(De Mesmaeker et al.,Curr Opin Struct Biol.,5(3):343-55,1995)。オリゴヌクレオチド骨格は、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、単鎖アルキル、シクロアルキル、単鎖ヘテロアトミック、ヘテロシクリック糖間結合などに変形できる。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一つ以上の置換された糖モイエティ(sugar moiety)を含み得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、変形された塩基を含み得る。変形された塩基には、ヒポキサンチン、6-メチルアデニン、5-メチルピリミジン(特に5-メチルシトシン)、5-ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC、ゲントビオシルHMC、2-アミノアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、8-アザグアニン、7-デアザグアニン、N6(6-アミノヘキシル)アデニン、2,6-ジアミノフリンなどがある。
【0088】
本明細書において、「一本鎖ジオキシリボ核酸(ssDNA)」は、特定のターゲットDNAに選択的に結合してアンチジーン(antigene)効果を誘導する一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0089】
本明細書において、「アプタマー(aptamer)」は、特定のターゲットに結合するオリゴヌクレオチド(一般に、20~80nt DNAあるいはRNA)を意味する。好ましくは、本発明において「アプタマー」は、オリゴヌクレオチドアプタマー(例えば、DNAあるいはRNA aptamer)を意味する。
【0090】
本明細書において、「mRNA」は、遺伝子を発現可能な合成mRNA(in vitro transcribed mRNA)を意味する。
【0091】
本明細書において、「shRNA」は、一本鎖で50~70個で構成されたヌクレオチドを意味し、in vivo上でステム-ループ(stemloop)構造をなしている。5~10個のヌクレオチドのループ部位の両方に相補的に19~29個のヌクレオチドの長いRNAが塩基対をなして二本鎖のステムを形成する。
【0092】
本明細書において、「miRNA(microRNA)」は、遺伝子発現を調節し、全長21~23個のヌクレオチドで構成された一本鎖RNA分子を意味する。miRNAは、細胞内で発現しないオリゴヌクレオチドであり、短いステム-ループ構造を有する。miRNAは、1または2以上のmRNA(messenger RNA)と全体または部分的に相同性を有し、前記mRNAと相補的な結合によりターゲット遺伝子発現を抑制する。
【0093】
本明細書において、「リボザイム(ribozyme)」はRNAの一種であって、特定なRNAの塩基配列を認識して自体的にこれを切断する酵素のような機能を有するRNAである。リボザイムは、ターゲット伝令RNA鎖の相補的な塩基配列で特異性を有し結合する領域とターゲットRNAを切断する領域からなる。
【0094】
本明細書において、「DNAzyme」は、酵素活性を有する一本鎖DNA分子であって、10~23個のヌクレオチドで構成されたDNAzyme(10-23 DNAzyme)は、生理的に類似した条件下でRNA鎖を特定位置で切断する。10-23 DNAzymeは、塩基対を形成せず露出したいかなるフリンおよびピリミジンの間を切断する。10-23 DNA酵素(DNAzyme)は、15個の保存された塩基配列(例えば、5’-GGCTAGCTACAACGA-3’)からなる酵素の活性部位(catalytic domain)および上述した酵素の活性部位の両方にRNA基質を認識する7~8個のDNA塩基配列からなる基質認識ドメイン(RNA substrate binding domain)で構成される。
【0095】
本明細書において、「PNA(Peptide nucleic acid)」は、核酸とタンパク質の性質を両方とも有する分子であって、DNAまたはRNAと相補的に結合が可能な分子を意味する。PNAは、核酸塩基(nucleobase)がペプチド結合で連結された類似DNAで1999年に最初に報告された(文献[Nielsen PE,Egholm M,Berg RH,Buchardt O,「Sequence-selective recognition of DNA by strand displacement with a thymine-substituted polyamide」,Science 1991,Vol.254:pp1497-1500])。PNAは自然界には存在せず、人工的に化学的な方法で合成される。PNAは、相補的な塩基配列の天然核酸と混成化(hybridization)反応を起こして二本鎖を形成する。長さが同じ場合、PNA/DNA二本鎖はDNA/DNA二本鎖より、PNA/RNA二本鎖はDNA/RNA二本鎖より安定である。ペプチド基本骨格としては、N-(2-アミノエチル)グリシンがアミド結合により繰り返し連結されたものが最もよく使用され、この場合、ペプチド核酸の基本骨格(backbone)は、負電荷を帯びる天然核酸の基本骨格と異なり電気的に中性である。PNAに存在する4個の核酸塩基は、空間的大きさと核酸塩基間の距離が天然の核酸の場合とほぼ同じである。PNAは、化学的に天然の核酸よりも安定しているだけでなく、核酸分解酵素(nuclease)やタンパク質分解酵素(protease)によって分解されず、生物学的にも安定している。
【0096】
本明細書において、「sgRNA」は、特定のDNAターゲットに結合するオリゴヌクレオチド(一般にRNA分子)にcrispr RNA(crRNA)とtracer(tracrRNA)の複合単一RNA分子を意味する。CRISPR systemでCas9 nucleaseとともに特定のDNA配列を認識するために利用され、選択的な遺伝子切断を可能にするRNA分子であって、ほぼDNAと相補的に結合が可能な20-nt配列を含み、全長は100ntである。
【0097】
本明細書において、「遺伝子矯正タンパク質」は、Cas9、spCas9、cjCas9、casX、CasYおよびCpf1などを称し、sgRNAとともにターゲットDNA塩基配列を認識してDNA切断を起こすタンパク質をいう。
【0098】
一実施形態による脂質ナノ粒子によって薬物および/または核酸が伝達される標的細胞は、生体内または生体で分離された肝細胞(hepatocyte)、および/またはLSECであり得る。一実施形態による薬物伝達用組成物および/または薬物(陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせ)および脂質ナノ粒子との複合体は、肝細胞、および/またはLSECをターゲットとするか、または特異的に標的化するものであり得る。したがって、一実施形態による脂質ナノ粒子または前記脂質ナノ粒子を含む薬物核酸伝達用組成物は、肝線維化、肝硬変、肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎など)などの急性または慢性肝疾患の治療のためのものであり、また、肝を通して吸収される治療剤(薬物)の伝達用組成物として活用される。
【0099】
また、他の態様は、(1)前記脂質ナノ粒子;および(2)陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせを含む、肝疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0100】
前記肝疾患の予防または治療用薬学的組成物に含まれる脂質ナノ粒子については上述した薬物伝達用組成物に含まれる脂質ナノ粒子に対するものと同様である。
【0101】
前記肝疾患の予防または治療用薬学的組成物に含まれる陰イオン性薬物および核酸については上述した薬物伝達用組成物に含まれる陰イオン性薬物および核酸に対するものと同様である。
【0102】
一実施形態による肝疾患の予防または治療用薬学的組成物は、内部に陰イオン性薬物および/または核酸が封入された脂質ナノ粒子を含み得る。
【0103】
前記肝疾患は、ATTRアミロイドーシス(ATTR amyloidosis)、高コレステロール血症(Hypercholesterolemia)、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus infection)、急性肝不全(Acute liver failure)、肝硬変(Cirrhosis)、および肝線維化(liver fibrosis)からなる群から選択される1種以上であり得る。
【0104】
前記陰イオン性薬物は、肝疾患の予防または治療効果を有する。
【0105】
前記核酸は、肝疾患の予防または治療効果を有し、例えば、(1)TTR(Transthyretin)((e.g.,ヒトTTR(タンパク質:GenBank Accession Nos.NP_000362.1;遺伝子:GenBank Accession Nos.NM_000371.4など)、マウスTTR(タンパク質:GenBank Accession No.;NP_038725.1;遺伝子:GenBank Accession No.NM_013697.5など))、(2)PCSK9(Proprotein convertase subtilisin/kexin type9)((e.g.,ヒトPCSK9(タンパク質:GenBank Accession Nos.NP_777596.2;遺伝子:GenBank Accession Nos.NM_174936.4など)、マウスPCSK9(タンパク質:GenBank Accession No.NP_705793.1;遺伝子:GenBank Accession No.NM_153565.2など))、(3)HBV(Hepatitis B Virus)(例えば、HBV genotype A(e.g.,GenBank Accession No.:X02763、X51970、またはAF090842);HBV genotype B(e.g.,GenBank Accession No.:D00329、AF100309、またはAB033554;HBV genotype C(e.g.,GenBank Accession No.:X04615、M12906、AB014381、AB042285、AB042284、AB042283、AB042282、AB026815、AB026814、AB026813、AB026812、またはAB026811);HBV genotype D(e.g.,GenBank Accession No.:X65259、M32138、またはX85254);HBV genotype E(e.g.,GenBank Accession No.:X75657またはAB032431);HBV genotype F(e.g.,GenBank Accession No.:X69798、AB036910、またはAF223965);HBV genotype G(e.g.,GenBank Accession No.:AF160501、AB064310、またはAF405706);HBV genotype H(e.g.,AY090454、AY090457、またはAY090460)(4)Bax(BCL2 associated X))((e.g.,ヒトBax(タンパク質:GenBank Accession Nos.NP_001278357.1、NP_001278358.1、NP_001278359.1、NP_001278360.1、NP_004315.1;遺伝子:GenBank Accession Nos.NM_001291428.2、NM_001291429.2、NM_001291430.1、NM_001291431.2、NM_004324.4など)、マウスBax(タンパク質:GenBank Accession No.NP_031553.1;遺伝子:GenBank Accession No.NM_007527.3など)、(5)VEGF(Vascular endothelial growth factor)(例えば、VEGFA((e.g.,ヒトVEGFA(タンパク質:GenBank Accession Nos.NP_001020537.2、NP_001020538.2、NP_001020539.2、NP_001020540.2、NP_001020541.2;遺伝子:GenBank Accession Nos.NM_003376.6、NM_001025366.3、NM_001025367.3、NM_001025368.3、NM_001025369.3など)、マウスVEGFA(タンパク質:GenBank Accession No.NP_001020421.2、NP_001020428.2、NP_001103736.1、NP_001103737.1、NP_001103738.1;遺伝子:GenBank Accession No.NM_001025250.3、NM_001025257.3、NM_001110266.1、NM_001110267.1、NM_001110268.1など);VEGFB((e.g.,ヒトVEGFB(タンパク質:GenBank Accession Nos.NP_001230662.1、NP_003368.1;遺伝子:GenBank Accession Nos.NM_003377.5、NM_001243733.2など)、マウスVEGFB(タンパク質:GenBank Accession No.NP_001172093.1、NP_035827.1;遺伝子:GenBank Accession No.NM_001185164.1、NM_011697.3など);VEGFC(e.g.,ヒトVEGFC(タンパク質:GenBank Accession Nos.NP_005420.1;遺伝子:GenBank Accession Nos.NM_005429.5など)、マウスVEGFC(タンパク質:GenBank Accession No.;NP_033532.1;遺伝子:GenBank Accession No.NM_009506.2など))、および/または(6)PDGF(Platelet-derived growth factor)(例えば、PDGFA((e.g.,ヒトPDGFA(タンパク質:GenBank Accession Nos.NP_002598.4、NP_148983.1、;遺伝子:GenBank Accession Nos.NM_002607.5、NM_033023.4など)、マウスPDGFA(タンパク質:GenBank Accession No.NP_032834.1、NP_001350200.1;遺伝子:GenBank Accession No.NM_008808.4、NM_001363271.1など));PDGFB((e.g.,ヒトPDGFB(タンパク質:GenBank Accession Nos.NP_002599.1、NP_148937.1;遺伝子:GenBank Accession Nos.NM_033016.3、NM_002608.4など)、マウスPDGFB(タンパク質:GenBank Accession No.NP_035187.2;遺伝子:GenBank Accession No.NM_011057.4など));PDGFC((e.g.,ヒトPDGFC(タンパク質:GenBank Accession Nos.NP_057289.1;遺伝子:GenBank Accession Nos.NM_016205.3など)、マウスPDGFC(タンパク質:GenBank Accession No.NP_064355.1、NP_001344675.1;遺伝子:GenBank Accession No.NM_019971.3、NM_001357746.1など));PDGFD(e.g.,ヒトPDGFD(タンパク質:GenBank Accession Nos.NP_079484.1、NP_149126.1;遺伝子:GenBank Accession Nos.NM_033135.4、NM_025208.5など)、マウスPDGFD(タンパク質:GenBank Accession No.NP_082200.1、NP_001344326.1、NP_001344327.1;遺伝子:GenBank Accession No.NM_027924.3、NM_001357397.1、NM_001357398.1など))の発現を抑制できるsiRNAおよび/またはmiRNAであり得る。
【0106】
前記薬学的組成物は、ヒトを含む哺乳動物に非経口投与を含む多様な経路により投与され、非経口投与は静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用でき、投与量は、患者の身体状態および体重、病気の程度、薬物形態、投与経路および時間によって異なるが、当業者によって適宜選択される。
【0107】
一実施形態による前記薬学的組成物を製剤化する場合、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して製造される。
【0108】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶液、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。
【0109】
非水性溶剤や懸濁剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどを使用することができる。坐剤基剤には、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどを使用することができる。
【0110】
一実施形態による薬学的組成物は、薬学的に有効な量を投与することができる。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野でよく知られている要素により決定することができる。一実施形態による薬学的組成物は個別に治療剤として投与するか、または他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次的または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。前記要素をすべて考慮して副作用なく、最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定することができる。
【0111】
具体的には、本発明による化合物の有効量は、患者の年齢、性別、体重により異なり、毎日または隔日に投与するか、1日1回~3回に分けて投与することができる。しかし、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減できるので、前記投与量はいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0112】
一実施形態によれば、前記薬学的組成物は薬学的組成物に含まれている薬物(陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせ)の濃度を基準にして0.1~100mg/kg、0.1~50mg/kg、1~10mg/kg、または1~5mg/kgの容量を投与することができる。
【0113】
さらに他の態様は、(1)前記脂質ナノ粒子;および(2)陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせを含む、組成物(例えば、前記肝疾患の予防または治療用薬学的組成物)を患者に投与する段階を含む肝疾患の予防または治療方法を提供する。脂質ナノ粒子、陰イオン性薬物、核酸、薬学的組成物、および肝疾患については上述した通りである。
【0114】
一実施形態によれば、前記肝疾患の予防または治療方法は、前記組成物を投与する段階以前に、前記肝疾患の予防および/または治療を必要とする患者を確認(選別)する段階をさらに含み得る。
【0115】
前記治療方法が適用される対象個体は、肝疾患が発病または発病し得るヒトを含むネズミ、家畜などを含む哺乳動物を意味するが、これらに限定されない。一実施形態による脂質ナノ粒子を含む前記薬学的組成物は、肝に陰イオン性薬物および/または核酸を効率的に伝達できるので、個体を効率的に治療することができる。
【0116】
一実施形態によれば、(1)前記脂質ナノ粒子;および(2)陰イオン性薬物、核酸、またはその組み合わせを含む、組成物(例えば、前記肝疾患の予防または治療用薬学的組成物)の薬学的有効量を患者に投与する段階を含む、肝疾患の予防または治療方法を提供することができる。薬学的有効量については上述した通りであり、好適な1日の総使用量は、正しい医学的判断の範囲内で処置によって決定され、1回または数回に分けて投与することができる。しかし、特定患者に対する具体的な治療的有効量は達成しようとする反応の種類と程度、場合により他の製剤の使用の有無をはじめとする具体的組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食餌、投与時間、投与経路および組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と共に使用されるか、または同時に使用される薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野でよく知られている類似因子に応じて異にして適用することができる。
【発明の効果】
【0117】
本発明の一実施形態による脂質ナノ粒子は、肝組織特異的で、生体親和性に優れ、高効率に遺伝子治療剤などを伝達することができ、脂質ナノ粒子媒介遺伝子治療などの関連技術分野において有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1a】一実施形態による脂質ナノ粒子の例示的な構造を示す図である。
【
図1b】一実施形態によるナノ粒子をCryo-TEMで観察したイメージを示す図である。
【
図2】CDCl
3で246-C10の
1H NMR(室温、400MHz)の結果を示す図である。
【
図3a】241-C10 LNP~243-C10 LNPは、各脂質ナノ粒子がpH4.1~pH9.6の範囲を有する溶液における蛍光強度を測定した結果を示す図である。
【
図3b】244-C10 LNP~246-C10 LNPは、各脂質ナノ粒子がpH4.1~pH9.6の範囲を有する溶液における蛍光強度を測定した結果を示す図である。
【
図4a】各ナノ粒子の細胞内遺伝子伝達効率を示す結果である。具体的には、ルシフェラーゼをコードするmRNA(luc mRNA)を封入したLNPをHeLa cellに形質転換させた後、細胞を溶解して測定した発光強度を示す図である。
【
図4b】各ナノ粒子の細胞内遺伝子伝達効率を示す結果である。具体的には、luc mRNAを封入したLNPを肝細胞(Hepatocyte)に形質転換させた後、細胞を溶解して測定した発光強度を示す。図において、+ApoEはApoE3を処理した群を意味し、-ApoEはApoE3を処理しない群を意味する。
【
図5a】Luc mRNAが封入された244-C10 LNP~246-C10 LNPが投与されたマウスで生体内薬物伝達分布を示す図である、
【
図5b】Luc mRNAが封入された246-C10 LNPが投与されたマウスで摘出されたマウスの各器官に対する薬物伝達分布を示す図である。
【
図6】1.0~2.5モル%で脂質-PEGを含む246-C10 LNPが投与されたマウスで脂質ナノ粒子に含まれている脂質-PEGの含有量に応じた、脂質ナノ粒子の薬物伝達効率およびナノ粒子の大きさを示す図である。
【
図7】脂質ナノ粒子に封入して投与したsiFVIIの濃度に応じた肝細胞(hepatocyte)のターゲットの可能性をFVIIの発現量により確認した結果を示す図である。
【
図8】脂質ナノ粒子に含まれている脂質-PEGの含有量に応じた脂質ナノ粒子の脂質ナノ粒子の大きさとPDI数値を示し(左表)、生体内肝細胞(hepatocyte)への薬物伝達効率をFVIIの発現量により確認した結果(右グラフ)を示すものである。
【
図9】脂質ナノ粒子に含まれている脂質-PEGの含有量に応じた脂質ナノ粒子の大きさとPDI数値を示し(左表)、生体内LSECへの薬物伝達効率をFVIIIの発現量により確認した結果(右グラフ)を示すものである。
【
図10】セラミド-PEGまたはDSPE-PEGを含む脂質ナノ粒子の細胞内siRNA伝達効率を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
本発明は、下記の実施例を例に挙げて、さらに詳しく説明するが、下記の実施例によって権利範囲を制限することを意図するものではない。
【0120】
以下、実施例を通じて本発明をもっと詳しく説明する。これら実施例はただ本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは当業界で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【0121】
実施例1.イオン化可能な脂質(ionizable lipid)の製造
実施例1-1.イオン化可能な脂質の製造
6員ヘテロ環第3級アミンを含む下記表1のアミン系化合物および1,2-epoxidodecane(以下、C10)(Sigma-Aldrich社製、米国)を1:n(n=第1級アミン×2+第2級アミン×1)のモル比で反応させて、イオン化可能な脂質を合成した。
【0122】
【0123】
具体的には、5mlバイアールに前記表1の241~246のアミンそれぞれとエポキシド(C10)を1:n(n=第1級アミン×2+第2級アミン×1)のモル比でマグネチックバーと一緒に添加して、撹拌機で750rpm、90℃で3日間反応させた。その後、WELUX fine silica column(Intertec社製、韓国)で精製した後、前記反応によって生成された各イオン化可能な脂質の分子量を計算し、エタノールを使用して100mg/mlの濃度に合わせて保管した。241のアミンとC10を使用して製造したイオン化可能な脂質を「241-C10」と称し、他の種類のアミンを使用して製造したイオン化可能な脂質も同様に、「使用されたアミンの名前(241~246)-C10」と称した。
【0124】
実施例1-2.生成されたイオン化可能な脂質の確認
前記実施例1-1で製造したイオン化可能な脂質を確認するために、1H NMRを行った。具体的には、実施例1-1で合成したイオン化可能な脂質(246-C10)5μgをCDCl
3(sigma社製、米国)0.5mlに希釈して100mmoleの濃度となるように準備した。その後、400MHz NMR専用チューブに0.5mlずつ入れて上部を塞いだ後、パラフィルムでシールドしてAgilent 400MHZ FT-NMR(Agilent社製、米国)を用いてNMR spectraを得て、その結果を
図2に示す。
図2に示すように、246-C10の各官能基を示す信号が飽和されたことが分かった。
【0125】
また、実施例1-1で製造したイオン化可能な脂質(241-C10~246-C10)を確認するためにMS分析を行った。具体的には、イオン化可能な脂質は0.5ppm以下の濃度にエタノールに希釈してMS分析を行った。分析に用いられた装置は、Agilent Technologies社製(Palo Alto、米国)の6230LC/MSであり、分離管はAgilent Technologies社製のZorbax SB-C18(100mm×2.1mm i.d.,3.5μm)を用い、移動相として0.1%ギ酸が含まれている蒸留水(A)とアセトニトリル(B)の2種類の溶媒を勾配溶離した。移動相の溶媒勾配は、最初の有機溶媒のアセトニトリル(B)の比率を30%から始まり、2分まで80%まで上げた後、再び有機溶媒の比率が30%まで下げ、安定化するまで4分間維持した。移動相の流速は300ul/minであり、この時、分析装置の注入量は2ulであった。MS分析を行った結果を下記表2に示す。表2に示すように、イオン化可能な脂質の測定されたm/z ratioと計算されたm/z ratioがほぼ一致することを確認することができた。
【0126】
【0127】
上記結果から実施例1-1でイオン化可能な脂質がうまく作られたことを確認することができた。
【0128】
実施例2.脂質ナノ粒子の製造
実施例2-1.脂質ナノ粒子の製造
前記実施例1-1で製造したイオン化可能な脂質(241-C10~246-C10)、コレステロール(Cholesterol powder、BioReagent、suitable for cell culture、≧99%、sigma社製、韓国)、リン脂質(DSPC)(Avanti社製、米国)、および脂質-PEG複合体(セラミド-PEG複合体;C16 PEG2000 Ceramide、Avanti社製、米国)をエタノールに42.5:13:43:1.5のモル比で溶解させた。
【0129】
イオン化可能な脂質、コレステロール、リン脂質、および脂質-PEGが溶解したエタノールおよびアセテートバッファーを1:3の体積比で12ml/minの流速で微細流体混合装置(Benchtop Nanoassemblr;PNI社製、Canada)を用いて混合して、脂質ナノ粒子(LNP)を製造した。
【0130】
実施例2-2.核酸が封入された脂質ナノ粒子の製造
前記実施例1-1で製造したイオン化可能な脂質(241-C10~246-C10)、コレステロール(Cholesterol powder、BioReagent、suitable for cell culture、≧99%、sigma社製、韓国)、リン脂質(DSPCまたはDOPE)(18:0 PC(DSPC)、18:1(△9-Cis)PE(DOPE)、Avanti社製、米国)、および脂質-PEG複合体(セラミド-PEG複合体;C16 PEG2000 Ceramid、Avanti社製、米国)をエタノールに溶解させた。RNA治療剤であるmRNA(luciferase mRNA;配列番号1)30μgをクエン酸ナトリウム0.75mlに希釈させるか、またはsiRNA(siFVII;配列番号2および配列番号3を同じモル比で混合、またはsiFVIII;配列番号4~配列番号11を同じモル比で混合、またはsiLuc:配列番号12および配列番号13を同じモル比で混合)30μgを50mMの酢酸ナトリウム0.75mlに希釈させて水性相を製造した。
【0131】
使用されたsiRNA配列は次の通りである:配列番号2(FVII target siRNA_sense;5’-GGAUCAUCUCAAGUCUUACdtdt-3’)、配列番号3(FVII target siRNA_antisense;5’-GUAAGACUUGAGAUGAUCCdtdt-3’)、配列番号4(FVIII target siRNA_sense_1;5’CUUAUAUCGUGGAGAAUUAdtdt-3’)配列番号5(FVIII target siRNA_antisense_1;5’-UAAUUCUCCACGAUAUAAGdtdt-3’)、配列番号6(FVIII target siRNA_sense_2;5’-UCAAAGGAUUCGAUGGUAUdtdt-3’)、配列番号7(FVIII target siRNA_antisense_2;5’-AUACCAUCGAAUCCUUUGAdtdt-3’)、配列番号8(FVIII target siRNA_sense_3;5’-CAAGAGCACUAGUGAUUAUdtdt-3’)、配列番号9(FVIII target siRNA_antisense_3;5’-AUAAUCACUAGUGCUCUUGdtdt-3’)、配列番号10(FVIII target siRNA_sense_4;5’-GGGCACCACUCCUGAAAUAdtdt-3’)、配列番号11(FVIII target siRNA_antisense_4;5’-UAUUUCAGGAGUGGUGCCCdtdt-3’)、配列番号12(siLuc_sense;5’-AACGCUGGGCGUUAAUCAAdtdt-3’)、配列番号13(siLuc_antisense;5’-UUGAUUAACGCCCAGCGUUdtdt-3’)。
【0132】
イオン化可能な脂質、コレステロール、リン脂質、および脂質-PEG複合体(以下、脂質-PEG)が溶解した有機相(エタノール)およびRNA治療剤(核酸)が溶解した水性相(酢酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム)を12ml/minの流速で微細流体混合装置(Benchtop Nanoassemblr;PNI社製、Canada)を用いて混合して、核酸が封入された脂質ナノ粒子(LNP)を製造した。(i)mRNAが封入された脂質ナノ粒子を製造するために、イオン化可能な脂質:リン脂質(DOPE):コレステロール:脂質-PEG(C16-PEG2000セラミド)を26.5:20:52.5~51:1.0~2.5(モル比の総和が100となるようにコレステロールと脂質-PEGの含有量を調節)のモル比でエタノールに溶解させ、mRNA(luciferase mRNA;配列番号1):イオン化可能な脂質が1:10の重量比となるように有機相および水性相を混合して脂質ナノ粒子を製造した。(ii)siRNAが封入された脂質ナノ粒子を製造するためにイオン化可能な脂質:リン脂質(DSPC):コレステロール:脂質-PEG(C16-PEG2000セラミド)を42.5:13:44~39.5:0.5~5.0(モル比の総和が100となるようにコレステロールと脂質-PEGの含有量を調節)のモル比でエタノールに溶解させ、siRNA(siFVII;配列番号2および配列番号3を同じモル比で混合、またはsiFVIII;配列番号4~配列番号11を同じモル比で混合、またはsiLuc:配列番号12および配列番号13を同じモル比で混合):イオン化可能な脂質が1:7.5の重量比となるように有機相および水性相を混合して脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle;LNP)を製造した。
【0133】
製造されたLNPをエタノールの除去および体内のpHと脂質ナノ粒子のpHを合わせるために、3500 MWCO透析カセットを用いて、16時間PBSに対して透析した。
【0134】
イオン化可能な脂質「241-C10」を含む脂質ナノ粒子を「241-C10 LNP」と称し、他の種類のアミンを含むイオン化可能な脂質を使用して製造した脂質ナノ粒子(核酸が封入された脂質ナノ粒子含み)を「含まれているアミンの名前(241~246)-C10 LNP」と称した。
【0135】
実施例2-3.核酸が封入された脂質ナノ粒子の観察
siLuc(配列番号12および配列番号13)が封入された脂質ナノ粒子をセラミド-PEG複合体(C16-PEG2000セラミド)を使用して実施例2-2と同様に製造した。製造された脂質ナノ粒子(セラミド-PEG複合体を1.5モル%含み)を200mesh carbon lacey film Cu-gridにsiRNAの濃度を基準にして60ugロードしてvitrobotで液化した(約-170度以下)Ethaneに浸してplunge freezeさせて準備した後、Cryo-TEM(Tecnai F20、FEI)で観察し、その結果を
図1bに示す。
図1bに示すように、中身の詰まった球状の粒子が観察された。
【0136】
実施例3.脂質ナノ粒子のpKa
本実施例でインビトロTNS分析(In vitro TNS assay)により前記実施例2-1で剤形化された各脂質ナノ粒子(LNP)のpKaを計算した。陰イオン性TNSは、正に荷電したイオン化可能な脂質と相互作用して親油性になり、pH値がそれぞれのLNPのpKa値に近接することによってTNSの親油性が低くなり、さらに多くの水分子がTNS蛍光をクェンチング(quenching)させるので、6.0~7.0のpKaを有する脂質ナノ粒子は生体内薬物伝達効率に優れ、pHによる蛍光(fluorescence)を示すグラフにおいて、「s字型曲線」を示す脂質ナノ粒子はエンドソーム膜と相互作用が容易であり、酸性化の際には、容易にエンドソームから脱出することを意味する。
【0137】
具体的には、20mM sodium phosphate、25mM citrate、20mM ammonium acetate、および150mM NaClを含む溶液のpHを0.1N NaOHおよび/または0.1N HClを使用して、pH4.1からpH9.6まで0.5の間隔で調整して多様なpH単位の溶液を製造した。それぞれのpH(pH4.1からpH9.6まで0.5間隔のpH)を有する溶液を100ulずつblack 96well plateに添加し、300uMのTNSストック(stock)溶液を使用して6uMの最終濃度となるように上記の範囲のpHを有する溶液にそれぞれ添加した。241-C10 LNP~246-C10 LNPを最終濃度が20uMとなるように混合溶液に添加した。蛍光強度は、Tecan装置を用いて325nmのexcitation、435nmのemissionで測定して、各脂質ナノ粒子に対する蛍光強度を
図3aおよび
図3bに示し、各脂質ナノ粒子に対するpKaは最大蛍光の半分に達するpH値を計算して、下記表3に示す。
図3bに示すように、244-C10 LNP~246-C10 LNPは、非線形回帰分析(nonlinear regression)により蛍光滴定s字型曲線を示すことが分かった。
【0138】
【0139】
上記表3で確認したように、一実施形態による脂質ナノ粒子は、生体内安全性および薬物放出に優れたpKa6.0~7.0の範囲であることを確認した。
【0140】
実施例2-2と同様の方法で製造した、核酸が封入されたLNPの場合も含まれているイオン化可能な脂質の種類(イオン化可能な脂質に含まれているアミンの種類)により同じ様相を示した。
【0141】
実施例4.脂質ナノ粒子の特性確認
実施例4-1.粒子の大きさの測定
本実施例で前記実施例2-2で製造したmRNAが封入された脂質ナノ粒子(LNP;脂質-PEGを1.5モル%含み)の大きさを測定した。前記実施例2-2で製造した各脂質ナノ粒子に含まれているRNA(luciferase mRNA;配列番号1)の濃度が1μg/mlとなるようにPBSを使用して希釈し、Malvern Zetasizer Nano(Malvern Instruments、UK)で動的光散乱法(DLS)を用いてLNPの直径および多分散度(PDI;polydispersity index)を測定し、その結果は下記表4に示す。
【0142】
【0143】
上記表4で確認したように、一実施形態による脂質ナノ粒子は、肝細胞内導入が容易で、薬物放出に優れた粒子の大きさを示し、241-C10 LNP>243-C10 LNP>242-C10 LNP=245-C10 LNP>244-C10 LNP>246-C10 LNPの順にPDI数値が小さく、粒子が均一であることが分かった。
【0144】
実施例4-2.薬物封入率の測定
核酸薬物としてsiRNA(siFVII siRNA)を封入した各LNP(脂質-PEGを1.5モル%含み)のカプセル化効率(薬物封入率、%)をRibogreen分析(Quant-iTTM RiboGreen(登録商標)RNA、Invitrogen)により測定した。前記実施例2-2で製造した核酸薬物を封入したLNPを96ウェルプレートでsiRNAの最終濃度が4~7μg/mlとなるように1×TE緩衝液50ulに希釈した。Triton-Xを処理しないグループ(Triton-X LNP(-))は1×TEバッファー50ulを添加し、Triton-Xを処理したグループ(Triton-X LNP(+))は2%Triton-Xバッファー50ulを添加した。37℃で10分間インキュベーションして、Triton-XでLNPを分解してカプセル化された核酸を放出させた。その後、Ribogreen試薬100ulを各ウェルに添加した。Triton LNP(-)とTriton LNP(+)の蛍光強度(FL)は、Infinite(登録商標)200 PRO NanoQuant(Tecan)で波長帯域幅(exitation:485nm、emission:528nm)で測定し、薬物封入率(カプセル化効率、%)は下記数式3のように計算した。各LNPに対する薬物封入率(%)は、2回繰り返して測定した結果値の平均値であり、下記表5に示す。
【0145】
【0146】
【0147】
上記表5で確認したように、一実施形態による脂質ナノ粒子は、高効率に薬物を封入できることを確認した。
【0148】
実施例5.脂質ナノ粒子を用いた細胞内核酸伝達確認
実施例5-1.LNPに含まれるイオン化可能な脂質の種類による核酸伝達効果
一実施形態によるLNPを細胞に形質転換(transfection)させる一日前にHeLa細胞(韓国細胞株銀行)をwhite plate(96well)に0.01×106cells/wellに分注してDMEM media(SH30022、Hyclone、米国)で37℃、0.5~3%CO2の条件で培養した。実施例2-2で製造した、ルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子をコードするmRNA(luc mRNA;配列番号1)が封入されたLNP(脂質-PEGを1.5モル%含む241-C10 LNP~246-C10 LNP)をApoE3 0.1μg/mlとピペットで攪拌した後、常温で10分間インキュベーションした後、HeLa cellで処理(脂質ナノ粒子に含まれているmRNAを基準にして100ng/well)した。ApoE3は、LNP表面に結合して細胞表面に発現したLDL受容体を通じてLNPが細胞内にエンドサイトーシス(endocytosis)により取り込まれる役割を果たす。
【0149】
24時間後、Bright-Glo
TM Luciferase Assay溶液(promega社製、米国)を100ul/wellずつ処理して10分間常温に置いた後、溶解した細胞をInfinite M200発光測定装置(Tecan社製、米国)を用いて発光強度(luminescence intensity)を測定し、その結果を
図4aに示す。
図4aに示すように、pKaの範囲が6.0~7.0である244-C10 LNP、245-C10 LNP、および246-C10 LNPの場合、強い発光強度を示し、その中でも246-C10 LNPの場合発光強度が最も高く、246-C10 LNPが細胞内薬物伝達効率が最も高いことが分かった。
【0150】
実施例5-2.肝細胞内核酸伝達確認
実施例2-2で製造した246-C10脂質ナノ粒子を用いて肝細胞(Hepatocyte)にluc mRNAを伝達して発光強度を測定して前記遺伝子の発現を確認した。
【0151】
具体的には、luc mRNA(配列番号1)が封入された246-C10 LNP(脂質-PEGを1.5モル%含み)をApoE3 5μg/mlと結合させた後、ナノ粒子に含まれているmRNA濃度を基準にして0.2μg/well、0.5μg/well、または1μg/wellに1×105 cells/wellで分注した肝細胞(Hepatocyte)の細胞株(Nexel社製、Korea)にLNPを処理した。6時間後、Bright-Glo
TM Luciferase Assay溶液(promega社製、米国)を100ul/well処理して10分間常温に置いた後、溶解した細胞をInfinite M200発光測定装置(Tecan社製、米国)を用いて発光強度(luminescence intensity)を測定して、その結果を
図4bに示す。
【0152】
図4bで確認したように、一実施形態による脂質ナノ粒子はApoE3との結合により細胞内に導入が容易であり、濃度依存的に薬物(核酸)伝達量が増加し、肝細胞(hepatocyte)に薬物を高効率に伝達できることを確認した。
【0153】
実施例6.脂質ナノ粒子を使用した生体内発現確認
前記実施例5-1で確認したように、インビトロで優れた遺伝子発現効果(遺伝子伝達効果)を示す244-C10 LNP~246-C10 LNPの生体内薬物伝達効率および生体分布(biodistribution)を本実施例で確認した。
【0154】
前記実施例2-2の方法のとおりluc mRNA(配列番号1)が封入された244-C10~246-C10 LNP(脂質-PEGを1.5モル%含み)を製造し、各ナノ粒子をPBSで16時間透析してエタノールを除去した。脂質ナノ粒子に含まれているmRNAを基準にして0.1mg/kgの容量でC57BL/6 Femaleで7週齢のマウス(オリエンタルバイオ)にmRNAが封入された脂質ナノ粒子を静脈(i.v)注射後、3時間後にルシフェリン(luciferin)0.25mg/kgを腹腔投与してIVIS(PerkinElmer社製、米国)装置を用いて生物発光(bioluminescence)を確認して、その結果を
図5aに示す。
【0155】
luc mRNAが封入された246-C10 LNPが投与されたマウスを犠牲にして臓器を摘出し、各臓器で脂質粒子の生体分布(biodistribution)をIVIS装置により確認して、その結果を
図5bに示す。
【0156】
図5aに示すように、luc mRNAが封入された244-C10 LNP~246-C10 LNPが投与されたマウスの生体内で高い発光強度を示し、これは前記実施例5-1の結果とも一致する。特に、
図5aおよび
図5bに示すように、全身イメージングとエキソビボ全臓器のイメージング(ex vivo organ imaging)によりluc mRNAが封入された246-C10 LNPの場合、肝特異的に高い発光強度を示すことを確認して、一実施形態による脂質ナノ粒子は、肝への高い生体分布を示すことを確認することができた。
【0157】
実施例7.核酸伝達に最適な脂質ナノ粒子の組成比の確認
本実施例で、生体内で肝特異的に薬物伝達効率に最も優れた脂質ナノ粒子の組成比を確認した。
【0158】
脂質ナノ粒子の製造にあたって、脂質-PEG(C16-PEG2000セラミド)を1.0~2.5モル%で混合して前記実施例2-2と同様の方法で、luc mRNA(配列番号1)が封入された脂質ナノ粒子(246-C10 LNP)を製造した。脂質ナノ粒子に含まれているイオン化可能な脂質(Ionizable lipid):mRNAの重量比は10:1であり、LNPに含まれるイオン化可能な脂質(246-C10):リン脂質(DOPE):コレステロール:脂質-PEG(C16-PEG2000セラミド)のモル比は、26.5:20:52.5~51:1.0~2.5(モル比の総和が100となるようにコレステロールと脂質-PEGの含有量を調節)であった。
【0159】
脂質-PEGを1.0モル%、1.5モル%、または2.5モル%で含有し、luc mRNAが封入された246-C10 LNPを前記実施例6と同様の方法で、脂質ナノ粒子に含まれているluc mRNAを基準にして0.1mg/kgの容量でC57BL/6 Female 7週齢のマウス(オリエンタルバイオ)にmRNAが封入された脂質ナノ粒子を静脈(i.v)注射後、3時間後にルシフェリン(luciferin)0.25mg/kgを腹腔投与してIVIS(PerkinElmer社製、米国)装置を用いて生物発光(bioluminescence)を確認して、その結果を
図6に示し、脂質-PEGの含有量に応じた脂質ナノ粒子の大きさを実施例4-1と同様の方法で測定して、下記表6および
図6に示す。
【0160】
【0161】
図6に示すように、一実施形態による脂質ナノ粒子を投与した群から肝への薬物伝達効率に優れたことを確認することができ、脂質-PEGを1.5モル%で含むLNPの大きさは約70nm程度であった。
【0162】
実施例8.肝細胞(hepatocyte)特異的薬物伝達効果確認
実施例8-1.脂質ナノ粒子を使用したFVIIノックアウト(knockout)効果確認
FVIIは、肝細胞(hepatocyte)で特異的に発現するので、本実施例の一例による脂質ナノ粒子の肝細胞ターゲットの可能性をsiFVIIを用いたFVII(Factor VII)ノックアウト効果により確認した。
【0163】
脂質ナノ粒子に含まれているsiRNAの濃度を基準にして0.03mg/kg、0.1mg/kg、または0.3mg/kgの濃度で、前記実施例2-2で製造したFVII target siRNA(配列番号2および配列番号3)が封入された246-C10脂質ナノ粒子(脂質-PEGを1.5モル%含み)をC57BL/6雌で7週齢、20gのマウスに静脈注射後、3日後に尾静脈から血液を収集し、coaset FVII assay kitのプロトコルにより血液分析し、PBSが投与されたマウスの血液から標準曲線(standard curve)を示してFVIIの発現量を測定し、その結果を
図7に示す。
図7に示すように、246-C10脂質ナノ粒子に封入されたsiRNAの濃度依存的に生体内でFVII発現を抑制したので、一実施形態による脂質ナノ粒子が肝細胞をターゲットとして核酸を伝達できることを確認した。
【0164】
実施例8-2.脂質-PEGの含有量に応じた肝細胞への薬物伝達効果
脂質ナノ粒子に含まれる脂質-PEGの含有量を0.5~5.0モル%に変更し、前記実施例2-2と同様の方法でsiFVII(配列番号2および配列番号3)が封入された脂質ナノ粒子(246-C10 LNP)を製造した。脂質ナノ粒子に含まれているイオン化可能な脂質:siRNAの重量比は7.5:1であり、LNPに含まれるイオン化可能な脂質(246-C10):リン脂質(DSPC):コレステロール:脂質-PEG(C16-PEG2000セラミド)のモル比は、42.5:13:44~39.5:0.5~5.0(モル比の総和が100となるようにコレステロールと脂質-PEGの含有量を調節)であった。
【0165】
上記で製造した脂質ナノ粒子の直径および多分散度(PDI;polydispersity index)を前記実施例4-1と同様の方法で測定して、下記表7および
図8(左表)に示す。
【0166】
【0167】
脂質ナノ粒子に含まれているsiRNAを基準にして0.2mg/kgの容量となるように、siFVIIが封入された脂質ナノ粒子(0.5~5モル%で脂質-PEGを含み)をC57BL/6 femaleで7週齢、20gのマウスに静脈注射後、3日後に尾静脈から血液を収集して、前記実施例8-1と同様の方法で、coaset FVII assay kitを用いて、FVIIの発現量を測定し、その結果を
図8(右グラフ)に示す。
図8に示すように、一例による脂質ナノ粒子の投与時、生体内のFVIIの発現が減少し、一例により0.5~5.0モル%の脂質-PEGの含有量を有する脂質ナノ粒子を投与した場合、FVIIの発現の抑制に優れていることを確認した。
【0168】
実施例9.LSECの特異的薬物伝達効果
FVIIIは、LSEC(liver sinusoidal endothelial cells)に特異的に発現するので、本実施例で一例による脂質ナノ粒子のLSECターゲットの可能性をsiFVIIIを使用したFVIII(Factor VIII)ノックアウト効果により確認するために、脂質-PEGの含有量に応じた薬物伝達効果を観察した。
【0169】
脂質ナノ粒子に含まれる脂質-PEGの含有量を0.5~5.0モル%に変更し、前記実施例2と同様の方法でsiFVIII(配列番号4~配列番号11)が封入されたナノ粒子(246-C10 LNP)を製造した。脂質ナノ粒子に含まれているイオン化可能な脂質:siRNAの重量比は7.5:1であり、LNPに含まれるイオン化可能な脂質(246-C10):リン脂質(DSPC):コレステロール:脂質-PEG(C16-PEG2000セラミド)=42.5:13:44~39.5:0.5~5.0(モル比の総和が100となるようにコレステロールと脂質-PEGの含有量を調節)であった。
【0170】
上記で製造した脂質ナノ粒子の直径およびPDIを前記実施例4-1と同様の方法で測定して、下記表8および
図9(左表)に示す。
【0171】
【0172】
脂質ナノ粒子に含まれているsiRNAを基準にして0.5mg/kgの容量となるように、siFVIIIが封入された脂質ナノ粒子(0.5~5モル%で脂質-PEGを含み)をC57BL/6雌で7週齢、20gのマウスに静脈注射後、2日後に尾静脈から血液を収集し、前記実施例8-1と同様の方法で、coaset FVIII assay kitを用いてFVIIIの発現量を測定し、その結果を
図9(右グラフ)に示す。
図9に示すように、一例による脂質ナノ粒子の投与時、生体内のFVIIIの発現が減少し、一例による脂質ナノ粒子がLSECをターゲットとすることを確認し、一例により0.5~5.0モル%の脂質-PEGの含有量を有する脂質ナノ粒子を投与した場合、FVIIの発現の抑制に優れていることを確認した。
【0173】
実施例10.脂質-PEG複合体の種類による薬物伝達効果
脂質-PEG複合体として、セラミド-PEG複合体(C16-PEG2000セラミド;Avanti社製、米国)またはPEG-DSPE(Avanti社製、米国)を含む脂質ナノ粒子(脂質-PEG複合体を0.25~10.0モル%で含み)を前記実施例2-2と同様の方法で脂質ナノ粒子を製造した。
【0174】
脂質ナノ粒子に含まれているイオン化可能な脂質:siRNA(siLuc)の重量比は7.5:1であり、LNPに含まれるイオン化可能な脂質(246-C10):リン脂質(DSPC):コレステロール:脂質-PEG(セラミド-PEGまたはPEG-DSPE)のモル比は、42.5:13:44.25~34.5:0.25~10(モル比の総和が100となるようにコレステロールと脂質-PEGの含有量を調節)であった。使用されたsiLuc(ルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子をターゲットとするsiRNA;配列番号12および配列番号13)の配列は前記実施例2-2に記載した。
【0175】
一実施形態によるLNPを細胞に形質転換(transfection)させる一日前に、HeLa細胞(韓国細胞株銀行)をwhite plate(96well)に0.01×10
6cells/wellで分注して、DMEM media(SH30022、Hyclone社製、米国)で37℃、0.5~3%CO
2の条件で培養した。siLucが封入された脂質ナノ粒子をsiRNA濃度を基準にして10nMでHeLa-Luc細胞株処理24時間後、Bright-Glo
TM Luciferase Assay溶液(promega社製、米国)を100ul/wellずつ処理して10分間常温に置いた後、溶解した細胞をInfinite M200発光測定装置(Tecan社製、米国)を用いて発光強度(luminescence intensity)を測定して、その結果を
図10に示す。測定された結果は平均±SDで示された。結果値は、T-testによる方法で統計的検証を行い、p<0.05以上である場合を統計的に有意であると定義した。
【0176】
図10に示すように、一実施形態による脂質ナノ粒子は、細胞への核酸伝達効果に優れ、特に脂質-PEG複合体としてセラミド-PEG複合体を含む場合、核酸伝達効果が優れていることが分かった。
【配列表】