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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】電池正極材料、その処理方法及び電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20240708BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240708BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240708BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M4/13
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023090284
(22)【出願日】2023-05-31
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2023/085616
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521285805
【氏名又は名称】昆明理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梁 風
(72)【発明者】
【氏名】東 鵬
(72)【発明者】
【氏名】張 達
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0372113(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106185866(CN,A)
【文献】国際公開第2020/203652(WO,A1)
【文献】特開2006-302671(JP,A)
【文献】特開2019-189495(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114927672(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114597394(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112038640(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0139761(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上に正極活物質層を形成した正極シートである電池正極材料の処理方法であって、
前記電池正極材料の被処理表面の少なくとも一部は炭素層を有し、前記電池正極材料に対して酸素、窒素ガスのうちの1つまたはそれらの組合せによる冷間プラズマ処理を行って、前記炭素層に活性粒子をドープして、
ここで、活性粒子のドーピング量は、50ppm以上であることを特徴とする電池正極材料の処理方法。
【請求項2】
前記冷間プラズマ処理のパワーは、100W~500Wであり、
前記冷間プラズマ処理の電圧は50V~150Vであり、前記冷間プラズマ処理の処理電流は0.4A~2Aであり、
前記冷間プラズマ処理の時間は、1min~60minであることを特徴とする請求項1に記載の電池正極材料の処理方法。
【請求項3】
冷プラズマを生成する放電は、無線周波数プラズマ放電、コロナ放電、誘電体バリア放電及びスライドアーク放電のうちの1つ又は組合せから選択されることを特徴とする請求項1に記載の電池正極材料の処理方法。
【請求項4】
活性粒子のドーピングは、酸素ドーピング及び窒素ドーピングのうちの1つまたはそれらの組合せであることを特徴とする請求項1に記載の電池正極材料の処理方法。
【請求項5】
前記冷間プラズマ処理は、酸素、窒素ガスのうちの1つまたはそれらの組合せからなる前駆ガスを冷プラズマ発生器に入力して、生成した活性粒子を炭素層にドープすることを含み、
前記前駆ガスの流速は、1ml/s~15ml/sであることを特徴とする請求項1に記載の電池正極材料の処理方法。
【請求項6】
前記電池正極材料は、ポリアニオン型化合物、層状酸化物、スピネル型化合物、プロシアブルーまたは三元リチウム電池の正極材料であることを特徴とする請求項1に記載の電池正極材料の処理方法。
【請求項7】
前記電池正極材料は、リン酸バナジウムナトリウム、リン酸鉄リチウム、リン酸チタンナトリウム、フッ化リン酸ナトリウム、LiMO、NaMO、LiN、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムまたはニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムであり、
ここで、MはCо、Ni、Mn、VまたはFeであり、NはCо、Nix、MnまたはVであることを特徴とする請求項6に記載の電池正極材料の処理方法。
【請求項8】
ドープされた後の前記電池正極材料の表面の少なくとも一部には、棒状形態を有し、且つNaF層が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の電池正極材料の処理方法。
【請求項9】
前記棒状形態の平均長さは1.5μm~3μmであり、前記棒状形態の平均直径は150nm~300nmであることを特徴とする請求項8に記載の電池正極材料の処理方法。
【請求項10】
前記NaF層の平均厚さは6nm~10nmであり、前記NaFの含有量は500ppm以上であることを特徴とする請求項8に記載の電池正極材料の処理方法。
【請求項11】
集電体上に正極活物質層を形成した正極シートである電池正極材料であって、
前記電池正極材料の表面の少なくとも一部は炭素層を含むとともに、棒状形態を有し、
また、前記表面の少なくとも一部には、NaF層が形成されており、
ここで、前記炭素層は、酸素、窒素ガスのうちの1つまたはそれらの組合せによる冷間プラズマ処理後に活性粒子をドープした炭素層であり、ドーピング量は50ppm以上であることを特徴とする電池正極材料。
【請求項12】
前記活性粒子は、酸素及び窒素のうちの1つまたはそれらの組合せであることを特徴とする請求項11に記載の電池正極材料。
【請求項13】
前記棒状形態の平均長さは1.5μm~3μmであり、前記棒状形態の平均直径は150nm~300nmであることを特徴とする請求項11に記載の電池正極材料。
【請求項14】
前記NaF層の平均厚さは6nm~10nmであり、前記NaFの含有量は500ppm以上であることを特徴とする請求項11に記載の電池正極材料。
【請求項15】
正極シートであって、
前記正極シートは、集電体と、前記集電体に設けられた正極材料層とを含み、
前記正極材料層の表面の少なくとも一部は、炭素層を含み、且つ表面の少なくとも一部には、棒状形態を有し且つNaF層が形成されており、
ここで、前記炭素層は、酸素、窒素ガスのうちの1つまたはそれらの組合せによる冷間プラズマ処理を経た後に活性粒子がドープされ、ドーピング量は500ppm以上である
ことを特徴とする正極シート。
【請求項16】
前記活性粒子は、酸素、窒素のうちの一種またはそれらの組合せであることを特徴とする請求項15に記載の正極シート。
【請求項17】
前記棒状形態の平均長さは1.5μm~3μmであり、前記棒状形態の平均直径は150nm~300nmであることを特徴とする請求項15に記載の正極シート。
【請求項18】
NaF層の平均厚さは6nm~10nmであり、NaFの含有量は500ppm以上であることを特徴とする請求項15に記載の正極シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池材料の分野に関し、より具体的には、電池正極材料、その処理方法及び電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル消費電子製品や電気自動車などの産業は急速に発展しており、これらの設備の航続時間と長期安定運転の能力を高めるために、高エネルギー密度と高安全安定性の新エネルギー電池を発展する必要が切に求められている。そのため、リチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池は、大規模なエネルギー貯蔵用途の中で最も有望な候補電池の1つと考えられている。しかし、現在知られている正極材料はすべてリチウム/ナトリウムイオンの拡散速度が遅いボトルネックが存在するため、リチウムイオンまたはナトリウムイオン電池のエネルギーと電力密度が低いことをもたらす。一方、高性能の正極材料は、リチウムイオンまたはナトリウムイオン電池のエネルギー密度、サイクル寿命及び倍率性などを高めることができる。従って、高性能の正極材料の開発は特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術の不足に対して、本発明の目的の1つは、上記従来技術に存在する1つまたは複数の問題を解決することである。例えば、本発明の1つの目的は、電池正極粒子の表面エネルギーを増強し、それと電解液との界面親和性を改善することができる処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の一局面は、被処理表面の少なくとも一部に炭素層を有する電池正極材料に対して冷間プラズマ処理を行うことにより、炭素層に活性粒子をドーピングするステップを含む電池正極材料を処理する方法を提供し、ここで、活性粒子のドーピング量は50ppm(モル分率または体積分率,parts per billion,ppm)以上である。
【0005】
本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、冷間プラズマ処理のパワーは100W~500Wであってもよい。
【0006】
本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、冷間プラズマ処理の電圧は50V~150Vであり、冷間プラズマ処理の電流は0.4A~2Aであってもよい。
【0007】
本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、冷間プラズマ処理の時間は1min~60minであってもよい。
【0008】
本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、冷プラズマを生成する放電は、無線周波数プラズマ放電、コロナ放電、誘電体バリア放電、及びスライドアーク放電のうちの1つ又は組合せから選択されてもよい。
【0009】
本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、前記ドーピングは、酸素ドーピング、窒素ドーピングのうちの1つまたは両者の組合せであってもよい。
【0010】
本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、冷間プラズマ処理は、酸素、窒素ガスのうちの1つまたはそれらの組合せからなる前駆ガスを冷プラズマ発生器に入力して、活性粒子を生成して、前記活性粒子を炭素層にドーピングすることを含んでもよい。ここで、前記前駆ガスの流速は、1ml/s~15ml/sであってもよい。
【0011】
本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、前記電池正極材料は、ポリアニオン性化合物、層状酸化物、スピネル型化合物、プロシアブルーまたは三元リチウム電池正極材料であってもよい。例えば、電池正極材料としては、リン酸バナジウムナトリウム、リン酸鉄リチウム、リン酸チタンナトリウム、フッ化リン酸ナトリウム、LiMO、NaMO、LiN、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムまたはニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムが挙げられる。ここで、MはCo、Ni、Mn、VまたはFeであり、NはCo、Nix、MnまたはVである。
【0012】
本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、ドープされた電池正極材料の表面の少なくとも一部は、棒状形態を有している。
【0013】
本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、前記棒状形態の平均長さは、1.5μm~3μmであってもよい。本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、ドーピング後の電池正極材料の表面の少なくとも一部にNaF層が形成され、NaF層の平均厚さは、6nm~10nmとすることができる。
【0014】
本発明に係る電池正極材料の処理方法の一例示的な実施形態において、NaF層の含有量は、500ppm以上である。
【0015】
本発明の他の局面による電池正極材料は、その表面の少なくとも一部は炭素層を含むとともに、棒状形態を有する。前記炭素層は、冷間プラズマ処理された後にドープされた活性粒子をドープした炭素層であり、ドーピング量は、50ppm以上である。
【0016】
本発明に係る電池正極材料の一例示的な実施形態において、前記活性粒子は、酸素及び窒素のうちの1つ又は両者の組合せであってもよい。
【0017】
本発明に係る電池正極材料の一例示的な実施形態において、前記棒状形態の平均長さは、1.5μm~3μmである。
【0018】
本発明のさらに他の局面は、上記の電池正極材料の処理方法により処理された正極材料または上記の電池正極材料を含むことができる正極シートを提供する。
【0019】
本発明のさらに他の局面は、上記の正極シートを含むことができる電池を提供する。
【発明の効果】
【0020】
従来の技術と比較して、本発明の有益な効果は、少なくとも以下の1つを含む。
(1)本発明の処理方法は電池正極材料粒子の表面エネルギーを増強し、それと電解液との界面親和性を改善し、性質が均一で、気孔率が低く、イオン伝導率と電子伝導率が高い正極材料を得ることができる。
(2)本発明の正極材料は高い電子伝導率を有し、電解液界面との適合性が良く、表面は「棒状」の形態を有し、電池正極材料と集流体界面との接触に良好な安定性を持たせ、ナトリウムイオン伝送の速度及び電子伝導率を高めることができる。
(3)本発明の処理方法は電池正極材料の表面にNaF層を生成することができ、この層は超高いナトリウムイオン伝導率を有し、正極材料と電解液との副反応の発生を制限するとともに、固液界面でのナトリウムイオンの伝送速度を高める。
(4)本発明の処理後の電池正極材料を用いて製造されたリチウムイオン電池及びナトリウムイオン電池は、高いエネルギー密度、サイクル寿命及び倍率性を有している。
(5)本発明の処理方法は、プロセスフローが簡単で、エネルギー消費が低く、設備への投資が少なく、「三廃」の発生がなく、環境に優しく、大規模な生産応用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下に図面と関連して説明することにより、本発明の上記及びその他の目的及び特徴がより明確になる。
【0022】
図1】本願の一実施形態による電池構造の概略図である。
図2】実施例1における処理後と処理前のリン酸バナジウムナトリウムリン酸バナジウムナトリウム正極材料XRD(X線回折,Diffractionofx-rays,XRD)の比較図を示している。
図3】実施例1における処理後と処理前のリン酸バナジウムナトリウム正極材料のXPS(X線光電子分光法,X-ray photo electron spectroscopy,XPS)の対比図を示す図である。
図4】実施例2において未処理のリン酸バナジウムナトリウム正極材料のSEM(走査型電子顕微鏡,scanning electron microscope,SEM)図を示している。
図5】実施例2における処理後のリン酸バナジウムナトリウムリン酸バナジウムナトリウム正極材料のSEM図を示している。
図6】実施例2における電池の電圧-容量グラフを示している。
図7】実施例3における未処理のリン酸バナジウムナトリウムリン酸バナジウムナトリウム正極材料の電解液に対する接触角を示す図である。
図8】実施例3における処理後のリン酸バナジウムナトリウムリン酸バナジウムナトリウム正極材料の電解液に対する接触角を示す図である。
図9】実施例3における処理後のリン酸バナジウムナトリウムリン酸バナジウムナトリウム正極材料のEIS(電気化学インピーダンススペクトル,Electrochemical Impedance Spectroscopy,EIS)図を示している。
図10】実施例4における未処理のリン酸バナジウムナトリウムリン酸バナジウムナトリウム正極材料のXPSを示している。
図11】実施例4における処理後のリン酸バナジウムナトリウムリン酸バナジウムナトリウム正極材料のXPSを示している。
図12】実施例6における電池の電圧-容量グラフを示している。
図13】実施例6における処理後のリン酸バナジウムナトリウムの長い循環図を示している。
図14】実施例8における電池の電圧-容量グラフを示している。
図15】実施例8における処理後のリン酸鉄リチウムの長い循環図を示している。
図16】実施例9における処理前後のリン酸鉄リチウムのEIS図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明による電池正極材料、その処理方法及び電池について、図面及び例示的な実施形態に関連して詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の一局面による電池正極材料の処理方法は、図1に示した電池に用いられる。前記電池は、電池は、負極構造12、正極構造11、及び負極構造12と正極構造11との間に位置するセパレータ13とを含む。負極構造12は、負極シート121と電解液122とを含む。正極構造11は、電解液122と正極シート110とを含む。正極シート110は、集電体115と、集電体115に配置された正極材料層112とを含む。正極材料層112の表面の少なくとも一部は、炭素層113を有している。また、正極材料層112の表面の少なくとも一部には、棒状形態を有し、且つNaF層が形成されている。ここで、炭素層113は、冷間プラズマ処理された後に、活性粒子114がドープされたものである。正極材料層112は、被覆層または接着層116をさらに含んでもよい。本実施例では、接着層116はNaF層である。
【0025】
前記正極材料層112は、前記電池正極材料を処理する方法によって処理され、以下のステップを備える。被処理表面の少なくとも一部に炭素層113を有する正極材料層112に対して冷間プラズマ処理を行って、炭素層113に対してドーピングを行うステップを含む。ここで、ドーピング量は、50ppm以上である。
【0026】
正極材料層112は、冷プラズマで生成された高活性の粒子によって、正極材料層112の表面に付着または被覆された炭素層113に対してドーブし、炭素層113の表面により多くの窪みを形成することができ、正極材料層112と集流体界面とが接触するときの安定性を高め、さらにナトリウムイオンまたはリチウムイオンの伝送速度及び電子導電率を高める。さらに、正極材料層112と電解液122との親和性を高め、ナトリウムイオンまたはリチウムイオンの半径が大きいことによる深刻な体積効果を緩和し、活物質が長いサイクルの過程で良好な構造安定性を持つようにする。処理されていない正極材料層112に比べて、処理された正極材料層112を使用する電池10は、より低い分極電圧、より低い界面インピーダンス、より安定な充放電プラットフォーム、及びより高い比容量を有する。
【0027】
幾つかの実施形態では、被処理の正極材料層112は、炭素層113のドーピングを可能にするために、少なくとも一部が炭素層113を有することを示す。炭素層113は、処理すべき正極材料層112の表面の全面に被覆または部分的に被覆されていてもよい。すなわち、本明細書に記載の炭素層113は、正極材料層112の表面の全面または一部のみを形成することができる。幾つかの実施形態では、炭素層113は、一層または複数の層であってもよい。例えば、炭素層113は、2層、3層、4層、層以上、または6層以上であってもよい。なお、正極材料層112の表面は炭素層113だけでなく、正極材料層112の表面に正極材料の性能を向上できる他の被覆層または付着層を含んでもよいことが理解すべきである。
【0028】
幾つかの実施形態では、ドーピング量は正極材料層112の表面の炭素層113の電子導電性に影響を与える。ドーピング量が50ppm未満であれば、正極材料層112の表面の炭素層113に対する電子導電性向上が明らかではないため、ドーピング量は50ppm以上、70ppm以上、85ppm以上、105ppm以上、123ppm以上、152ppm以上、160ppm~246ppm、214ppm~318ppm、259ppm~413ppm、586ppm~793ppm、または803ppm~1050ppmであってもよい。なお、ドーピング量が600ppmを超えると、表面の炭素層113の破壊をもたらし、活性粒子114の循環安定性を低下させる可能性がある。従って50ppm~600ppmのドーピング量が好ましい。
【0029】
幾つかの実施形態では、処理対象とする正極材料層112の厚さは、調整可能である。本明細書で説明するように、任意の厚さの正極材料層112は、本明細書の処理方法で処理されてもよい。幾つかの実施形態では、処理される正極材料層112の厚さは、30μm~100μmであってもよい。例えば、処理される正極材料の厚さは、28μm未満或いは110μm以上であってもよい。または、処理される正極材料の厚さは、15μm、45μm、84μmや141μmであってもよい。
【0030】
幾つかの実施形態では、冷間プラズマ処理のパワーは、100W~500Wであってもよい。100W~500Wの範囲でドーピングを実現するとともに、正極材料層112の表面の炭素層113の安定性を確保することができる。電力が100W未満であれば、炭素-炭素結合を遮断するエネルギーに到達できず、活性粒子114をドープできなくなる。エネルギーが500Wを超えると、正極材料層112の表面の炭素層113の構造が破壊され、その電気化学的性質が低下する。また、この電力範囲内で正極材料層112に高表面エネルギーを持たせ、電解液122の界面との親和性を高めることができる。例えば、冷プラズマの生成は、酸素、窒素、または混合ガスなどのガス源を冷プラズマ発生器内に輸送して、活性粒子114を生成することであってもよい。一方、上記印加電力については、この電力は、前駆ガスに直接作用する電力、即ちガス源が直接受ける電力である。ある実施形態では、冷間プラズマ処理のパワーは150W以上、245W以上、289W以上、または423W以上であってもよい。
【0031】
幾つかの実施形態では、冷間プラズマ処理の電圧は50V~150Vであってもよく、冷間プラズマ処理の電流は0.4A~2Aであってもよい。上記範囲内の電圧と電流を印加することで、冷間プラズマ処理のパワーを100W~500Wにすることができ、炭素結合を遮断するとともに、正極材料層112の表面の炭素層113の安定性を確保することができる。なお、本明細書における電圧及び電流は、冷プラズマ発生器に印加される電圧及び電流であることを当業者は理解すべきである。
【0032】
幾つかの実施形態では、冷間プラズマ処理の電圧は、60V以上、72V以上、83V以上、114V以上、127V以上、または142V以上であってもよいし、上記範囲の組合せであってもよい。冷間プラズマ処理の電流は、0.5A~1.8A、0.7A~1.6A、0.9A~1.4A、1.1A~1.3Aまたは上記範囲の組合せであってもよい。上記印加された電圧、電流及び電力の下で、正極材料層112の表面に棒状の形態(棒状構造)を持たせ、正極材料層112に本明細書に記載の性能を持たせることができる。
【0033】
幾つかの実施形態において、冷間プラズマ処理の時間は1min~60minであり得る。上記冷間プラズマ処理の時間内において、印加される処理電圧と処理電流と連携して、正極材料層112の表面の炭素層113を50ppm以上ドーピングすることを確保することができる。例えば、処理の時間は2min以上、15min以上、23min以上、38min以上、47min以上、52min以上であってもよい。場合によっては、冷間プラズマの処理時間は約30sより大きくてもよく、または約45sより大きくてもよい。しかしながら、本明細書に記載のドーピング量を達成することができる場合には、処理時間を任意に調整してもよいことが理解すべきである。
【0034】
幾つかの実施形態では、生成されるNaFの含有量は電極表面の電気化学的性質に影響を与える。NaFの含有量が50ppm未満であれば、正極材料層112の表面のイオン伝導率の向上が顕著ではないため、NaFの含有量は50ppm以上、70ppm以上、85ppm以上、105ppm以上、123ppm以上、152ppm以上、160ppm~246ppm、214ppm~318ppm、259ppm~413ppm、586ppm~793ppm、または803ppm~1050ppmである。また、500ppmを超えるドーピングは、電極表面の接着剤の破壊をもたらし、活物質間の接着力を低下させる可能性があるので、50ppm~500ppmのドーピング量が好ましい。
【0035】
幾つかの実施形態では、冷プラズマを生成する放電は、無線周波数プラズマ放電(Radio Frequency,RF)、コロナ放電(corona discarge,CD)、誘電体バリア放電(Dielectric Barrier Discharge,DBD)、及びスライドアーク放電(Glide Arc Discharge,GAD)のうちの1つまたは組合せから選択される。上述の冷プラズマ装置を用いて高気圧下で安定的に放電することができ、操作が簡単で、より大きな面積のプラズマ放電領域を形成することができる。これにより、放電領域の活性粒子114の作用範囲が大きくなり、効率的なドーピング処理に基礎を提供した。もちろん、本明細書に記載された処理方法にも、他の冷プラズマ生成に適した放電が適用されることを理解すべきである。
【0036】
幾つかの実施形態では、ドープされた活性粒子114またはドープされた活性物質は、酸素ドープ及び窒素ドープのうちの1つまたは両者の組合せであり得る。例えば、幾つかの実施形態では、単なる酸素ドーピング、単なる窒素ドーピング、または酸素窒素ドーピングであってもよい。冷プラズマにより生成された高活性粒子による炭素層113のドーピングは、正極材料層112により良好な電気化学的性質を持たせることができる。もちろん、上記活性粒子114のドーピングを実現することは、酸素及び窒素ガスのうちの1つまたは両社の組合せからなる前駆ガスを冷プラズマ発生器に入力して、活性粒子114を生成した後に正極材料層112の表面の炭素層113に対してドーピングを行うことを含むことを当業者は理解すべきである。しかしながら、特定の実施形態では、活性粒子114のドーピングは、冷プラズマ発生器の他の形態によっても達成されることができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、冷プラズマ発生器に流入する前駆ガスの流速は、1ml/s~15ml/sであってもよい。上記前駆ガスの流速の下で、協同で印加された電圧と電流は炭素層113へのドーピングを実現することを確保できる。一組の実施形態では、処理対象の正極材料層112を冷プラズマ発生器の中に入れて、本明細書で説明した速度で前駆ガスに通し、冷プラズマ発生器を本明細書で説明した電圧及び電流に調整したら、処理対象の正極材料層112を処理することができる。もちろん、酸素ドーピングを実現するには、酸素雰囲気の下で短時間で酸素ドーピングを完了する必要があり、酸素含有官能基を導入すると同時に酸化作用が極めて少ないことを確保し、時間が長すぎたり、電力が高すぎたりすることに起因する酸化作用を避ける必要があることを理解すべきである。酸素を含む混合ガスについては、酸素の含有量が低いため、酸化作用時に無視できる。
【0038】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の処理後の正極材料層112は、既存の正極材料層112に比べて異なる形態特徴を有する。正極材料層112への処理により、正極材料層112の表面の少なくとも一部は棒状の形態を有するようになる。例えば、リン酸バナジウムナトリウム正極材料については、本明細書に記載の処理方法により処理された後に、その表面に大量の棒状構造または棒状類似構造またはシート状構造などが現れる。
【0039】
幾つかの実施形態では、正極材料の表面はすべて棒状の形態を有するか、または少なくとも0.01%の表面積が棒状の形態を有するか、または少なくとも0.1%の表面積が棒状の形態を有するか、または少なくとも5%の表面積が棒状の形態を有するか、または少なくとも9.8%の表面積が棒状の形態を有するか、または少なくとも15.3%の表面積が棒状の形態を有するか、または少なくとも21.5%の表面積が棒状の形態を有するか、または少なくとも35.4%の表面積が棒状形態を有するか、または少なくとも41.2%の表面積が棒状形態を有するか、または少なくとも49.8%の表面積が棒状形態を有するか、または少なくとも55.1%の表面積が棒状形態を有するか、または少なくとも61.5%の表面積が棒状形態を有するか、または少なくとも73.5%の表面積が棒状形態を有するか、または少なくとも84.5%の表面積が棒状形態を有することが可能である。正極材料の表面に棒状形態を持たせることにより、正極材料と集流体との界面接触ときの安定性を高めることができ、さらにナトリウムイオン輸送の速度及び電子導電率を高めることができる。しかしながら、本明細書に記載の棒状とは、細長い形態を指すか、細長い構造を呈しているか、柱状などとして記述することもできることを理解すべきである。
【0040】
幾つかの実施形態では、棒状形態は特定の長さを有することができる。即ち、棒状形態の平均長さは、1.6μm以上、2.1μm以上、2.4μm以上、2.6μm以上、2.8μm以上、2.9μm以上であってもよい。幾つかの実施形態では、棒状形態は、特定の直径(即ち、棒の径方向直径)を有することができる。即ち、棒状形態の平均値直径は、154nm以上、167nm以上、179nm以上、189nm以上、208nm以上、238nm以上、268nm以上、294nm以上、または283nm以上であってもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、正極材料に対する棒状形態を呈する物質の質量比は特定であってもよい。例えば、棒状の形態を呈する物質が占める正極材料の質量比は、2%~10%であってもよい。幾つかの実施形態では、正極材料に占める棒状形態の物質の質量比は、0.5%以上、0.8%以上、1.5%以上、2.7%以上、3.4%以上、4.7%以上、5.9%以上、6.7%以上または9.4%以上であってもよい。幾つかの特定の実施形態では、質量比率は、15.8%以上、20.1%以上、30.5%以上、または36.8%以上である。
【0042】
幾つかの実施形態では、正極材料層112は、ポリアニオン性化合物、層状酸化物、スピネル型化合物、プロシアブルーまたは三元リチウム電池正極材料であってもよい。ポリアニオン性化合物としては、リン酸バナジウムナトリウムリン酸バナジウムナトリウム、リン酸鉄リチウム、リン酸チタンナトリウム及びフッ化リン酸ナトリウムが挙げられる。層状酸化物としては、LiMO及びNaMOが挙げられる。ここで、Mは、Co、Ni、Mn、V又はFeであり得る。スピネル型化合物としては、LiNが挙げられる。ここで、Nは、Co、Nix、MnまたはVであり得る。三元リチウム電池正極材料としては、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム及びニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムが挙げられる。本明細書に記載の処理方法は、他の正極材料を処理することもできることを理解すべきである。
【0043】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の正極材料の電気化学的性質を増強できる他の物質を導入することもできる。
【0044】
本発明の別の局面は、一種の正極材料を提供する。本発明の正極材料の一例示的な実施形態では、正極材料は、本明細書に記載の電池正極材料の処理方法によって処理されて得られることができる。幾つかの実施形態では、正極材料の表面の少なくとも一部は、炭素層113を含むとともに、棒状の形態を有する。ここで、炭素層は、冷間プラズマ処理後に活性粒子114をドープした炭素層である。
【0045】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるように、ドーピング量は、50ppm以上であってもよい。
【0046】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるように、活性粒子114は、酸素及び窒素のうちの1つまたは両者の組合せである。
【0047】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるように、棒状形態の平均長さは1.5μm~3μmであり、棒状形態の平均直径は150nm~300nmであってもよい。
【0048】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるように、棒状形態をなす物質の質量比は特定であってもよい。例えば、正極材料で棒状形態を呈する物質が占める質量比は、2%~10%であってもよい。
【0049】
本発明のさらに別の局面は、集流体と集流体に配置された正極材料層とを含む。正極材料は、本明細書で上述した電池正極材料の処理方法で処理された正極材料、または本明細書で上述したような正極材料を含む正極シートを提供する。前記正極材料層は、上記正極材料の他に、導電剤及び接着剤を含んでもよい。正極材料層は、本技術分野で公知の方法により正極シートに導入されることができる。
【0050】
本発明のさらに別の局面は、上述のような正極シートを含む電池、特にナトリウムイオン電池を提供する。なお、電池には、さらに、電池を構成する他の必要不可欠な部材が含まれている。電池の組み立て方法は、本技術分野で知られている。
【0051】
幾つかの実施形態では、電池は、ボタン電池であってもよい。ボタン電池の組み立ては、本技術分野で知られている。例えば、正極シートをグローブボックスに入れて、ボタン電池の組み立てを行うことができる。
【0052】
本発明の上述の例示的な実施形態をよりよく理解するために、以下に具体的な例を挙げてさらに説明する。
【0053】
〔実施例1〕
電池正極材料の処理方法であって、以下のステップを含む。
【0054】
ステップ1では、リン酸バナジウムナトリウム正極材料を調製する。伝統的な塗布技術を利用して、アルミニウム箔を用いて塗布裁断を行い、厚さが80μmであるリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0055】
ステップ2では、窒素ガスDBD冷間プラズマ活性化処理を行う。まず、ステップ(1)におけるリン酸バナジウムナトリウム正極材料の活物質(ここでは処理されていないリン酸バナジウムナトリウムを指す)がコーティングされている片面を、窒素ガスDBD冷プラズマの下で、10ml/sのガス流速、1Aの動作電流及び150Vの電圧で、窒素ガスDBD冷間プラズマ活性化処理を1min行い、室温まで冷却し、活性化処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0056】
ステップ3では、ボタン電池を組み立てる。ステップ(2)における活性化処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料をグローブボックスの中に入れて、ボタン電池の組み立てを行って、12h静置後に、電池のテストを行う。
【0057】
窒素ガスDBDの冷間プラズマ活性化処理後に得られたリン酸バナジウムナトリウムの正極材料に対して物理的に特性を評価したところ、図2のリン酸バナジウムナトリウム正極材料XRD図から分かるように、窒素ガスDBDの冷間プラズマ活性化処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料の物理的性質(図中のDBD-1min)は、未処理(図中のDBD-0min)のものに比べて変化がない。窒素ガスDBDの冷間プラズマ処理はリン酸バナジウムナトリウムの結晶構造に破壊を与えないことを表明する。しかも、図3のリン酸バナジウムナトリウム正極材料のXPS図から、窒素ガスDBD-0minを経ていない電極シートに比べて、窒素ガスDBD-1min処理を経た後にNaF層が生成されることが分かる。
【0058】
〔実施例2〕
電池の正極材料を処理する方法であって、以下のステップを含む。
【0059】
ステップ1では、リン酸バナジウムナトリウム正極材料を調製する。伝統的な塗布技術を利用して、アルミニウム箔を用いて塗布裁断を行い、厚さが80μmであるリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0060】
ステップ2では、窒素ガスDBD冷間プラズマ活性化処理を行う。まず、ステップ(1)におけるリン酸バナジウムナトリウム正極材料の活物質がコーティングされている片面を、窒素ガスDBD冷プラズマの下で、10ml/sのガス流速、1Aの動作電流及び150Vの電圧で、窒素ガスDBD冷間プラズマ活性化処理を2min行い、室温まで冷却し、活性化処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0061】
ステップ3では、ボタン電池を組み立てる。ステップ(2)における活性化処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料をグローブボックスの中に入れて、ボタン電池の組み立てを行って、12h静置後に、電池のテストを行う。
【0062】
窒素ガスDBDの冷間プラズマ活性化処理後に得られたリン酸バナジウムナトリウムの正極材料に対して形態特性評価と物理や電気化学試験を行ったところ、炭素層113にドープされた窒素の含有量は159ppmである。図4及び図5のSEM図から、窒素ガスDBDの冷間プラズマ処理を行っていないリン酸バナジウムナトリウム正極材料(図3を参照)と比較して、処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料(図4を参照)の表面には棒状形態(棒状構造、細長構造)が生じ、リン酸バナジウムナトリウム正極材料と電解液との界面接触を高めることができることが分かる。図6の電圧-容量グラフに示すように、電池の分極は0.04Vから0.03V以内に低下し、充放電プラットフォームはより安定になり、且つ比較的に高い比容量を有している。
【0063】
〔実施例3〕
電池正極材料の処理方法であって、以下のステップを含む。
【0064】
ステップ1では、リン酸バナジウムナトリウム正極材料を調製する。伝統的な塗布技術を利用して、アルミニウム箔を用いて塗布裁断を行い、厚さが80μmであるリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0065】
ステップ2では、窒素DBD冷間プラズマ活性化処理を行う。まず、ステップ(1)におけるリン酸バナジウムナトリウム正極材料の活物質がコーティングされている片面を、窒素DBD冷プラズマの下で、10ml/sのガス流速、1Aの動作電流及び150Vの電圧で、窒素DBD冷間プラズマ活性化処理を4min行い、室温まで冷却し、活性化処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0066】
ステップ3では、ボタン電池を組み立てる。活性化された前記リン酸バナジウムナトリウム正極材料をグローブボックスの中に入れて、ボタン電池の組み立てを行って、12h静置した後に、電池のテストを行う。
【0067】
窒素ガスDBDの冷間プラズマ活性化処理後に得られたリン酸バナジウムナトリウム正極材料に対して物理や電気化学試験を行ったところ、炭素層113にドープされた窒素の含有量は87ppmである。未処理のリン酸バナジウムナトリウム正極材料の電解液に対する接触角は、図7に示す通りである。処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料の電解液に対する接触角は、図8に示す通りである。その電解液に対する接触角が14.15°から12.4°まで減少するので、処理を経た後、リン酸バナジウムナトリウム正極材料の電解液への浸潤性が良くなることを証明した。これと同時に、図9のEIS(電気化学インピーダンススペクトル)に示すように、未処理のものに比べて、界面インピーダンスは3200Ωから2500Ωに低下した。
【0068】
〔実施例4〕
電池正極材料の処理方法であって、以下のステップを含む。
【0069】
ステップ1では、リン酸バナジウムナトリウム正極材料を調製する。伝統的な塗布技術を利用して、アルミニウム箔を用いて塗布裁断を行い、厚さが80μmであるリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0070】
ステップ2では、窒素DBD冷間プラズマ活性化処理を行う。まず、ステップ(1)におけるリン酸バナジウムナトリウム正極材料の活物質がコーティングされている片面を、窒素DBD冷プラズマの下で、10ml/sのガス流速、1Aの動作電流及び150Vの電圧で、窒素DBD冷間プラズマ活性化処理を6min行い、室温まで冷却し、活性化処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0071】
ステップ3では、ボタン電池を組み立てる。ステップ(2)で得られた前記活性化処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料をグローブボックスの中に入れて、ボタン電池の組み立てを行って、12h静置後に、電池のテストを行う。
【0072】
窒素ガスDBDの冷間プラズマ活性化処理により得られたリン酸バナジウムナトリウム正極材料に対して物理及び電気化学試験を行ったところ、炭素層113にドープされた窒素の含有量は308ppmである。未処理のリン酸バナジウムナトリウム正極材料のXPSは、図10に示す通りである。処理後のリン酸バナジウムナトリウムリン酸バナジウムナトリウム正極材料のXPSは図11に示す通りである。ここで、ピリジン窒素、ピロール窒素、黒鉛化窒素の含有量が増加し(ここでのピリジン窒素、ピロール窒素及び黒鉛化窒素が窒素粒子が炭素層113にドープされた場合の3つの異なる存在形態である)、それによって、炭素層113の窪みが増加し、これはリン酸バナジウムナトリウムの電子伝導率とイオン伝導率の向上に役立つ。
【0073】
〔実施例5〕
電池正極材料の処理方法であって、以下のステップを含む。
【0074】
ステップ1では、リン酸バナジウムナトリウム正極材料を調製する。伝統的な塗布技術を利用して、アルミニウム箔を用いて塗布裁断を行い、厚さが80μmであるリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0075】
ステップ2では、酸素RF冷間プラズマ活性化処理を行う。まず、ステップ(1)におけるリン酸バナジウムナトリウム正極材料の活物質がコーティングされている片面を、酸素RF冷プラズマの下で、10ml/sのガス流速、1Aの動作電流及び100Vの電圧で、窒素ガスRF冷間プラズマ活性化処理を6min行い、室温まで冷却し、活性化処理後のリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0076】
ステップ3では、ボタン電池を組み立てる。ステップ(2)で得られた前記活性化されたリン酸バナジウムナトリウム正極材料をグローブボックスの中に入れて、ボタン電池の組み立てを行って、12h静置後に、電池のテストを行う。
【0077】
酸素RF冷間プラズマ活性化処理により得られたリン酸バナジウムナトリウムの正極材料に対して物理及び電気化学試験を行ったところ、炭素層113にドープされたアルゴンの含有量は287ppmである。未処理の電極シートに比べて、分極とインピーダンスが比較的低い。ここで、分極は43%低下し、インピーダンスは18%低下した。
【0078】
〔実施例6〕
電池正極材料の処理方法であって、以下のステップを含む。
【0079】
ステップ1では、リン酸バナジウムナトリウム正極材料を調製する。伝統的な塗布技術を利用して、アルミニウム箔を用いて塗布裁断を行い、厚さが80μmであるリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0080】
ステップ2では、窒素酸素混合気体CD冷間プラズマ活性化処理を行う。まず、ステップ(1)で得られたリン酸バナジウムナトリウム正極材料の活物質がコーティングされている片面を、窒素酸素混合気体CD冷プラズマの下で、10ml/sのガス流速、2Aの動作電流及び100Vの電圧で、窒素酸素混合気体CD冷間プラズマ活性化処理を4min行い、室温まで冷却し、活性化リン酸バナジウムナトリウムの正極材料を得る。
【0081】
ステップ3では、ボタン電池を組み立てる。ステップ(2)で得られた前記活性化リン酸バナジウムナトリウム正極材料をグローブボックスの中に入れて、ボタン電池の組み立てを行う。電池のテストを行う前に、12h静置する必要がある。
【0082】
窒素酸素混合ガスCDの冷間プラズマ活性化処理により得られたリン酸バナジウムナトリウムの正極材料に対して物理及び電気化学試験を行ったところ、炭素層113にドープされた窒素酸素の含有量は378ppmである。未処理の電極シートに比べて、分極とインピーダンスが比較的小さい。5C条件下でのリン酸バナジウムナトリウムの電圧容量は、図12に示す通りである。処理後の電池の容量は、元の基礎の上で13.6%向上し、電池の分極は約45%低下した。5C条件下でのリン酸バナジウムナトリウムの長い循環図は、図13に示す通りである。処理後の電池の容量保持率は、元の基礎の上で14%向上した。
【0083】
〔実施例7〕
電池正極材料の処理方法であって、以下のステップを含む。
【0084】
ステップ1では、リン酸バナジウムナトリウム正極材料を調製する。伝統的な塗布技術を利用して、アルミニウム箔を用いて塗布裁断を行い、厚さが80μmであるリン酸バナジウムナトリウム正極材料を得る。
【0085】
ステップ2では、酸素CD冷間プラズマ活性化処理を行う。まず、ステップ(1)で得られたリン酸バナジウムナトリウム正極材料の活物質がコーティングされている片面を、酸素CD冷プラズマの下で、10ml/sのガス流速、2Aの動作電流、及び100Vの電圧で、酸素CD冷間プラズマ活性化処理を4min行い、室温まで冷却し、活性化リン酸バナジウムナトリウムの正極材料を得る。
【0086】
ステップ3では、ボタン電池を組み立てる。ステップ(2)で得られた前記活性化リン酸バナジウムナトリウム正極材料をグローブボックスの中に入れて、ボタン電池の組み立てを行う。電池のテストを行う前に、12h静置する必要がある。
【0087】
酸素CD冷間プラズマ活性化処理により得られたリン酸バナジウムナトリウムの正極材料に対して物理及び電気化学試験を行ったところ、炭素層113にドープされた酸素の含有量は587ppmであり、未処理の電極シートに比べて、低い分極とインピーダンスを有していた。ここで、分極は45%低下し、インピーダンスは20%低下した。
【0088】
〔実施例8〕
正極材料を処理する方法であって、以下のステップを含む。
【0089】
ステップ1では、リン酸鉄リチウム正極材料を調製する。伝統的な塗布技術を利用して、アルミニウム箔を用いて塗布裁断を行い、厚さが80μmであるリン酸鉄リチウム正極材料を得る。
【0090】
ステップ2では、窒素ガスDBD冷間プラズマ活性化処理を行う。まず、ステップ(1)で得られたリン酸鉄リチウム正極材料の活物質がコーティングされている片面を、窒素ガスDBD冷プラズマの下で、10ml/sのガス流速、4Aの動作電流及び100Vの電圧で、窒素ガスDBD冷間プラズマ活性化処理を4min行い、室温まで冷却し、活性化リン酸鉄リチウムの正極材料を得る。
【0091】
ステップ3では、ボタン電池を組み立てる。ステップ(2)で得られた前記活性化リン酸鉄リチウム正極材料をグローブボックスの中に入れて、ボタン電池の組み立てを行う。電池のテストを行う前に、12h静置する必要がある。
【0092】
窒素ガスDBD冷間プラズマ活性化処理により得られたリン酸鉄リチウムの正極材料に対して物理及び電気化学試験を行ったところ、炭素層113にドープされた窒素の含有量は600ppmであり、未処理の電極シートに比べて、より低い分極、より高い容量及びより高い容量保持率を有する。5C条件下で処理したリン酸鉄リチウムの電圧容量は、図14に示す通りである。処理後の電池分極は約86%低下し、容量は元の基礎の上で42.7%向上した。5C条件下で処理したリン酸鉄リチウムの長い循環図は、図15に示す通りである。容量保持率は、元の基礎の上で69.7%向上した。
【0093】
〔実施例9〕
リン酸鉄リチウム正極材料を処理する方法であって、以下のステップを含む。
【0094】
ステップ1では、リン酸鉄リチウム正極材料を調製する。伝統的な塗布技術を利用して、アルミニウム箔を用いて塗布裁断を行い、厚さが80μmであるリン酸鉄リチウム正極材料を得る。
【0095】
ステップ2では、窒素ガスDBD冷間プラズマ活性化処理を行う。まず、ステップ(1)で得られたリン酸鉄リチウム正極材料の活物質がコーティングされている片面を、窒素ガスDBD冷プラズマの下で、10ml/sのガス流速、4Aの動作電流及び100Vの電圧で、窒素ガスDBD冷間プラズマ活性化処理を10min行い、室温まで冷却し、活性化リン酸鉄リチウムの正極材料を得る。
【0096】
ステップ3では、ボタン電池を組み立てる。ステップ(2)で得られた前記活性化リン酸鉄リチウム正極材料をグローブボックスの中に入れて、ボタン電池の組み立てを行う。電池のテストを行う前に、12h静置する必要がある。
【0097】
窒素ガスDBD冷間プラズマ活性化処理により得られたリン酸鉄リチウムの正極材料に対して物理及び電気化学試験を行ったところ、炭素層113にドープされた窒素の含有量は700ppmであり、未処理の電極シートに比べて、低いインピーダンスを有する。処理前後のリン酸鉄リチウムのEIS図は、図16に示す通りである。処理後に、電池インピーダンスは、126.3Ωから27.2Ωまで減少した。
【0098】
以上、本発明を例示的な実施例と関連して説明したが、当業者は、特許請求の範囲に規定された精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の例示的な実施例に対して種々の変更及び改善を行うことができる。
【要約】      (修正有)
【課題】電池正極材料の粒子表面エネルギーを強め、それと電解液との界面親和性を改善し、材質が均一であり、気孔率が低く、イオン伝導率と電子伝導率が高い正極材料を得ることができる、電池正極材料の処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の電池正極材料の処理方法は、被処理表面の少なくとも一部に炭素層を有する電池正極材料に対して冷間プラズマ処理を行って、炭素層に対してドーピングを行う。ここで、ドーピング量は50ppm以上である。電池正極材料の表面の少なくとも一部は、炭素層を含むとともに、棒状形態を有している。炭素層は、冷間プラズマ処理された後に活性粒子をドープした炭素層となり、且つ正極材料の表面に高ナトリウムイオン伝導性のNaF層が形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16