(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】飛翔体用の容器及び飛翔体
(51)【国際特許分類】
B64B 1/22 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
B64B1/22
(21)【出願番号】P 2023188820
(22)【出願日】2023-11-02
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520365229
【氏名又は名称】株式会社岩谷技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棧敷 和弥
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 圭介
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/153445(WO,A1)
【文献】特許第7071770(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体が備える容器であって、
収容物を収容する気密な容器本体を備え、
前記容器本体は第1の領域と第2の領域に区分されており、
前記第1の領域を覆い、前記第2の領域を覆わない、前記容器本体よりも太陽からの輻射熱を高い吸収率で吸収する層である熱吸収層を備え
、
前記容器本体の一部は可視光を透過する窓であり、
前記窓の周囲に位置する前記第1の領域から前記窓へと延伸する前記容器本体より熱伝導率が高い線状の部材を備える
容器。
【請求項2】
前記第2の領域の少なくとも一部を覆う、前記熱吸収層と人間による見た目が同一であり、かつ、前記熱吸収層よりも太陽からの輻射熱の吸収率が低い層を備える
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記第2の領域における結露により生じた水を収容する収水容器を備える
請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記収水容器は、前記飛翔体の高度を調整するためのバラスト水を収容するバラストタンクである
請求項
3に記載の容器。
【請求項5】
前記第2の領域における結露により生じた水を前記容器本体の外部空間に排出する排水機構を備える
請求項1に記載の容器。
【請求項6】
前記第2の領域における結露により生じた水を吸収する吸水材を備える
請求項1に記載の容器。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の容器を備える飛翔体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体用の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
気球、飛行船等の浮力により飛翔する飛翔体や、飛行機、ヘリコプター等の揚力により飛翔する飛翔体の多くは、搬送物(人を含む)を収容する容器(飛翔体用の容器)を備えている。例えば、乗客を搬送する飛翔体は、客船又はキャビンと呼ばれる乗客用の容器を備えている。
【0003】
飛翔体が地上から上昇する過程において、飛翔体の高度が高くなる程、飛翔体の容器の外気温が低下する。飛翔体の容器の壁部は、外側に接する低温な空気に熱を奪われ、その温度が低下する。そして、低温となった壁部に内側から接する飛翔体の容器内の空気がその壁部に冷却され、空気中の水蒸気が水に変化して壁部の内側に水滴として付着する、いわゆる結露と呼ばれる現象が発生することがある。
【0004】
飛翔体の容器において結露が発生すると、例えば、結露により生じた水滴が流れ落ち、近くの物が水に濡れてしまう場合がある。また、飛翔体の容器の窓において結露が発生すると、窓を透した視界が悪くなる場所がある。
【0005】
上記の問題を解決するための技術を開示した特許文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、容器本体の内側面を構成する部分よりも熱伝導率が高く、容器本体の内側に露出している第1の部分と、容器本体の外側に露出している第2の部分と、第1の部分と第2の部分の各々と連結されている第3の部分とを有し、容器本体の内部に水蒸気が結露する場合に容器本体の内側面よりも早く結露を生じさせる部材である結露促進部材とを備える飛翔体の容器が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載の容器によれば、容器本体の外側に露出している第2の部材が外部の空気により冷却されると、第3の部分を介して容器本体の内側に露出している第1の部分が冷却され、容器本体の空気よりも低温になる。その際、容器本体の内側面よりも第1の部分が早く低温となるため、結露が生じる場合、まず第1の部分において結露が生じ、容器本体の内側の空気の湿度が下がるため、第1の部分よりも遅く低温となる容器本体の内側面(第1の部分でない部分)では結露が生じにくい。そのため、第1の部分における結露により生じる水を収水容器で収容する等の対策を講じることで、近くの物が水に濡れてしまったり、窓を透した視界が悪くなったりすることが回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特許文献1に記載の発明とは異なる技術的思想に基づき、飛翔体の容器における結露に起因する不都合を低減する手段を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、飛翔体が備える容器であって、収容物を収容する気密な容器本体を備え、前記容器本体は第1の領域と第2の領域に区分されており、前記第1の領域を覆い、前記第2の領域を覆わない、前記容器本体よりも太陽からの輻射熱を高い吸収率で吸収する層である熱吸収層を備え、前記容器本体の一部は可視光を透過する窓であり、前記窓の周囲に位置する前記第1の領域から前記窓へと延伸する前記容器本体より熱伝導率が高い線状の部材を備える容器を提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る容器によれば、熱吸収層で覆われた第1の領域が、熱吸収層で覆われない第2の領域よりも太陽からの輻射熱を多く吸収し、第2の領域よりも高温となるため、相対的に低温な第2の領域において結露が発生しやすく、第1の領域においては結露が発生しにくい。また、熱伝導部が、窓の周囲に位置する第1の領域の熱を窓に伝導して、窓を第2の領域よりも高温にする。その結果、第2の領域において発生する結露の対策を講じることで、結露に起因する不都合を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る飛翔体の全体構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る飛翔体1の全体構成を示した図である。飛翔体1は、気嚢11と、吊索12と、容器13を備える。
【0013】
気嚢11は、ヘリウムガス等の空気より軽い気体を収容し、空気中で浮力を生じる。
【0014】
吊索12は、気嚢11の下方に容器13を吊り下げる役割を果たす複数本(
図1の例では4本)の索体である。
【0015】
容器13は、飛翔体1の飛翔により上空へと搬送される物(人を含んでもよい)を収容する容器である。
【0016】
図2は、容器13の外観を示した図である。
図2(A)は容器13を正面から見た図であり、
図2(B)は容器13を背面から見た図である。
図3は、
図2(A)に破線で示す位置の水平面で容器13を切断した断面を、
図2(A)に矢印Xで示す方向に見た断面図である。
図4は、
図2(A)に一点鎖線で示す位置の鉛直面で容器13を切断した断面を、
図2(A)に矢印Yで示す方向に見た断面図である。
【0017】
なお、
図3及び
図4において、容器13に収容されている物(人を含んでもよい)の図示は省略されている。
【0018】
容器13は、収容物を収容する気密な容器本体131と、容器本体131のうち第1領域A1を覆う熱吸収層132と、容器本体131のうち窓1312の周囲に位置する第1領域A1から窓1312へと延伸する熱伝導部133と、容器本体131のうち第2領域A2における結露により生じた水を収容する収水容器134を備える。
【0019】
容器本体131は、壁1311と、窓1312と、ハッチ1313を備える。
【0020】
壁1311は、容器本体131の大部分を占める可視光を透過しない湾曲した板状の構成部である。壁1311は、全体として、円筒形状の側壁部と側壁部の上側開口部を覆う半球形状の天井部と、側壁部の下側開口部を覆う半球形状の底部とに区分される。壁1311の側壁部には、窓1312で覆われる孔が設けられている。また、壁1311の天井部には、ハッチ1313で覆われる孔が設けられている。壁1311の望ましい素材には、例えば、繊維強化プラスチック等のプラスチック、アルミニウム等の軽金属、それらの組み合わせが含まれる。
【0021】
窓1312は、壁1311の側壁部に設けられた孔を塞ぐように壁1311に取り付けられた、可視光を透過する湾曲した板状の構成部である。窓1312は、容器本体131の内部空間に収容される人が外部空間を視認可能としたり、容器本体131の内部空間に収容される撮影装置が外部空間を撮影可能としたりするために設けられている。窓1312の望ましい素材には、例えば、ポリカーボネート等の透明なプラスチックが含まれる。
【0022】
ハッチ1313は、壁1311の天井部に設けられた孔を塞ぐように壁1311に取り付けられた、可視光を透過しない湾曲した板状の構成部である。ハッチ1313は、ヒンジ等の機構により、壁1311に対し開閉可能に取り付けられている。ハッチ1313は通常は閉じられているが、容器本体131に対する収容物の出し入れの際に開かれる。ハッチ1313の望ましい素材には、例えば、繊維強化プラスチック、ポリカーボネート等の透明プラスチック、アルミニウム等の軽金属、それらの組み合わせが含まれる。
【0023】
容器本体131は、熱吸収層132で覆われている第1領域A1と、熱吸収層132で覆われていない第2領域A2に区分されている。第1領域A1には、壁1311の一部領域と、ハッチ1313の全領域が含まれる。第2領域A2には、壁1311の一部領域と、窓1312の全領域が含まれる。
【0024】
熱吸収層132は、容器本体131よりも太陽からの輻射熱の吸収率が高い素材の層である。従って、容器13に太陽光があたると、熱吸収層132で覆われている第1領域A1に含まれる壁1311の一部とハッチ1313は、熱吸収層132で覆われていない第2領域A2に含まれる壁1311の一部と窓1312よりも高温となる。換言すれば、容器13に太陽光があたっている環境下において、熱吸収層132で覆われていない第2領域A2に含まれる壁1311の一部と窓1312は、熱吸収層132で覆われている第1領域A1に含まれる壁1311の一部とハッチ1313よりも低温となる。
【0025】
熱吸収層132は、例えば、太陽光の吸収率が高い塗料を容器本体131の第1領域A1の外側表面上に塗布することにより形成されてもよいし、太陽光の吸収率が高いフィルムを容器本体131の第1領域A1の外側表面上に貼付することにより形成されてもよい。
【0026】
熱伝導部133は、容器本体131より熱伝導率が高い線状の部材であり、窓1312の周囲に位置する第1領域A1から窓1312へと延伸するように配置されている。熱伝導部133の望ましい素材としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属が含まれる。
【0027】
上記のように、容器13に太陽光があたる環境下において、窓1312は容器本体131の第1領域A1よりも低温となる。熱伝導部133は、窓1312の周囲に位置する第1領域A1の熱を窓1312に伝導して、窓1312を壁1311の第2領域A2よりも高温にするための構成部である。
【0028】
従って、容器13に太陽光があたる環境下において、以下の関係が成立する。
(壁1311の第2領域A2の温度)<(窓1312の温度)<(第1領域A1の温度)
【0029】
その結果、容器本体131において結露が生じる場合、最も低温な壁1311の第2領域A2において結露が生じることになる。
【0030】
収水容器134は、壁1311の第2領域A2の内側の最下部に配置された容器であり、壁1311の第2領域A2における結露により生じた水を収容する。すなわち、結露により生じた水は、壁1311の内側表面に沿って流れ落ち、下方にある収水容器134に流れ込む。その結果、結露により生じた水が容器13の収容物を濡らすことがない。
【0031】
上述した容器13によれば、窓1312に結露が生じない。また、上述した容器13によれば、結露により生じた水が容器13の収容物を濡らすことがない。
【0032】
また、容器13の製造にあたり、第1領域A1の面積と第2領域A2の面積を調整することにより、飛翔体1の飛翔時における容器13内の温度を調整することができる。また、容器13に収容される収容物のうち、低温を嫌う収容物は第1領域A1の近くに配置し、高温を嫌う収容物は第2領域A2の近くに配置することで、それらの収容物の質の低下、故障等の発生の危険性を低減できる。
【0033】
[変形例]
上述した容器13は本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形されてよい。以下に変形の例を示す。なお、以下の2以上の変形例が適宜、組み合わされてもよい。
【0034】
(1)容器本体131のうち、熱吸収層132で覆われている第1領域A1と、熱吸収層132で覆われていない第2領域A2の人間による見た目が異なることによって、容器13の外観が損なわれる場合がある。その問題を解消するために、容器13が、第2領域A2の少なくとも一部を覆う、熱吸収層132と人間による見た目が同一であり、かつ、熱吸収層132よりも太陽からの輻射熱の吸収率が低い層を備えてもよい。
【0035】
図5は、この変形例の一例を説明するための図である。
図5に示す容器13の外側表面上には、「ABCDE FGHIJ」というロゴマークが描かれている。このロゴマークの色と背景の色は異なっている。以下、例として、ロゴマークの色が青であり、背景の色が白であるものとする。
【0036】
この容器13の製造には、以下の4種類の塗料が用いられる。
白く、太陽からの輻射熱の吸収率が高い塗料WH
白く、太陽からの輻射熱の吸収率が低い塗料WL
青く、太陽からの輻射熱の吸収率が高い塗料BH
青く、太陽からの輻射熱の吸収率が低い塗料BL
【0037】
塗料WHと塗料WLは、人間による見た目が同一の白となるように、いずれも、可視光線の周波数帯域においては、概ね全域において吸収率が低い。ここで、「人間による見た目が同一」とは、厳密に同一でなくても、容易に区別できない程度に類似する場合を含む。
【0038】
また、塗料WHと塗料WLは、人体に悪影響を与える紫外線の周波数帯域においては、概ね全域において吸収率が高い。すなわち、塗料WHと塗料WLは、可視光線及び紫外線の周波数帯域における光の吸収率の分布が実質的に同一である。
【0039】
一方、塗料WHと塗料WLは、赤外線の周波数帯域における吸収率が異なっている。具体的には、塗料WHは、赤外線の周波数帯域の概ね全域において吸収率が高いが、塗料WLは、赤外線の周波数帯域の概ね全域において吸収率が低い。その結果、塗料WHと塗料WLは、太陽光下において見た目は同じ白であり、ともに紫外線を遮断するが、塗料WHは塗料WLよりも高温となる。
【0040】
また、塗料BHと塗料BLは、人間による見た目が同一の青となるように、いずれも、可視光線の周波数帯域においては、青の周波数帯域における吸収率が低く、他の周波数帯域における吸収率が高い。ここで、「人間による見た目が同一」とは、厳密に同一でなくても、容易に区別できない程度に類似する場合を含む。
【0041】
また、塗料BHと塗料BLは、人体に悪影響を与える紫外線の周波数帯域においては、概ね全域において吸収率が高い。すなわち、塗料BHと塗料BLは、可視光線及び紫外線の周波数帯域における光の吸収率の分布が実質的に同一である。
【0042】
一方、塗料BHと塗料BLは、赤外線の周波数帯域における吸収率が異なっている。具体的には、塗料WHは、赤外線の周波数帯域の概ね全域において吸収率が高いが、塗料WLは、赤外線の周波数帯域の概ね全域において吸収率が低い。その結果、塗料BHと塗料BLは、太陽光下において見た目は同じ青であり、ともに紫外線を遮断するが、塗料BHは塗料BLよりも高温となる。
【0043】
なお、4種類の塗料により容器本体131の外側表面上に形成される層の太陽からの輻射熱の吸収率は、塗料BH、塗料WH、塗料BL、塗料WLの順に高い。
【0044】
この変形例に係る容器13において、ハッチ1313の全域と、壁1311の第1領域A1のうち背景の部分は、塗料WHの塗布により形成された熱吸収層132により覆われている。また、壁1311の第1領域A1のうちロゴマークの部分は、塗料BHの塗布により形成された熱吸収層132により覆われている。
【0045】
一方、壁1311の第2領域A2のうち背景の部分は、塗料WLの塗布により形成された層により覆われている。また、壁1311の第2領域A2のうちロゴマークの部分は、塗料BLの塗布により形成された層により覆われている。
【0046】
従って、飛翔体1が飛翔し、容器13が外気により冷却された場合、まず、太陽からの輻射熱の吸収率が最も低い塗料WLの塗布により形成された層で覆われている壁1311の第2領域A2のうち背景の部分において結露が生じる。その後、さらに結露が生じる領域が拡大する場合、太陽からの輻射熱の吸収率が2番目に低い塗料BLの塗布により形成された層で覆われている壁1311の第2領域A2のうちロゴマークの部分において結露が生じる。
【0047】
なお、壁1311の第2領域A2のうちロゴマークの部分が、塗料BLに代えて、塗料BHの塗布により形成された層で覆われてもよい。
【0048】
また、上述の例では、見た目は同じだが太陽からの輻射熱の吸収率が異なる塗料の塗布により熱吸収層132と、熱吸収層132よりも太陽からの輻射熱の吸収率が低い層の形成が行われるものとしたが、これに代えて、見た目は同じだが太陽からの輻射熱の吸収率が異なるフィルムの貼付により熱吸収層132と、熱吸収層132よりも太陽からの輻射熱の吸収率が低い層の形成が行われてもよい。
【0049】
(2)収水容器134が、飛翔体1の高度を調整するためのバラスト水を収容するバラストタンクであってもよい。
【0050】
図6は、この変形例の一例を説明するための図である。
図6に示す容器13は、容器本体131の底部にバラストタンク135を備える。バラストタンク135は、容器本体131の内側下部に設けられた床板1351と、壁1311の底部1352と、底部1352に設けられた流出口Oを塞ぐ蓋1353を備え、その内部空間にバラスト水を収容する。蓋1353は通常閉じているが、例えば、容器13に収容される人間(乗員)の操作に応じて開く。蓋1353が開くと、バラストタンク135に収容されているバラスト水が流出口Oを通って外部空間へと排出される。
【0051】
床板1351の、壁1311の第2領域A2の下方にあたる位置には、流入口Iが設けられている。壁1311の第2領域A2における結露により生じた水は、流入口Iを通ってバラストタンク135内に流れ込む。
【0052】
なお、蓋1353と蓋1353を開閉する機構は、壁1311の第2領域A2における結露により生じた水を外部空間に排出する排水機構を構成する。上述した実施形態に係る容器13が、収水容器134に収容された水を外部空間に排出するための排水機構を備えてもよい。
(3)容器13が、壁1311の第2領域A2における結露により生じた水を吸収する吸水材を備えてもよい。例えば、収水容器134の内側に吸水材を配置することで、収水容器134に流れ込んだ水が吸水材に吸収される。その結果、例えば飛翔体1の飛翔中に風等を受けて容器13が大きく揺れても、収容されている水が収水容器134から溢れ出ることがない。
【0053】
なお、吸水材の望ましい素材には、例えば、綿やスポンジのように物理的に水を吸収する素材や、高吸水性ポリマーのように化学的に水を吸収する素材が含まれる。
【0054】
(4)上述した実施形態においては、容器本体131のうち、壁1311が第1領域A1と第2領域A2に区分されるものとしたが、これに加えて、もしくは代えて、窓1312が第1領域A1と第2領域A2に区分されてもよい。
【0055】
図7は、この変形例の一例を説明するための図である。
図7に示す容器13において、窓1312は中央に位置する第1領域A1と、周辺に位置する第2領域A2に区分されている。
【0056】
窓1312の第1領域A1には、可視光線を概ね全域で透過し、紫外線と赤外線を概ね全域で吸収するフィルムが貼付されている。一方、窓1312の第2領域A2には、可視光線と赤外線を概ね全域で透過し、紫外線を概ね全域で吸収するフィルムが貼付されている。その結果、容器13に太陽があたると、窓1312の第2領域A2よりも窓1312の第1領域A1が太陽からの輻射熱を多く吸収し、高温となる。その結果、窓1312に内側から接する空気が冷却されて結露を生じる場合、低温な第2領域A2において結露が生じ、高温な第1領域A1においては結露が生じない。
【0057】
なお、窓1312に対するフィルムの貼付に代えて、窓1312に対する透明な塗料の塗布により、第1領域A1に対する熱吸収層132の形成、及び、第2領域A2に対する熱吸収層132よりも輻射熱の吸収率が低い層の形成が行われてもよい。
【0058】
また、窓1312に対するフィルムの貼付や塗料の塗布は、窓1312の内側に対し行われてもよい。
【0059】
(5)上述した実施形態において、熱伝導部133は窓1312の外側面上に配置されるものとした(
図3、
図4等参照)。これに代えて、熱伝導部133が窓1312の内側面上に配置されてもよい。また、熱伝導部133が窓1312の内部に配置されてもよい。
【0060】
(6)上述した実施形態において、容器13は熱伝導部133を備えるものとしたが、容器13は必ずしも熱伝導部133を備えなくてもよい。すなわち、飛翔体1の飛翔に伴い、窓1312よりも壁1311の第2領域A2が十分に低温になり、熱伝導部133がなくても窓1312において結露が発生しない場合、熱伝導部133はなくてよい。
【0061】
(7)上述した実施形態において、飛翔体1の種類はガス気球であるものとしたが、飛翔体1の種類はこれに限られない。飛翔体1は、飛行機やヘリコプターのように、翼に生じる浮力により飛翔する飛翔体であってもよいし、熱気球、飛行船等の浮力により飛翔するガス気球以外の飛翔体であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…飛翔体、11…気嚢、12…吊索、13…容器、131…容器本体、132…熱吸収層、133…熱伝導部、134…収水容器、135…バラストタンク、1311…壁、1312…窓、1313…ハッチ、1351…床板、1352…底部、1353…蓋。
【要約】
【課題】飛翔体の容器における結露に起因する不都合を低減する手段を提案する。
【解決手段】飛翔体用の容器13は、気密な容器本体131と、容器本体131のうち第1領域A1を覆う熱吸収層132と、窓1312の周囲に位置する壁1311の第1領域A1の熱を窓1312に伝導するように壁1311から窓1312へと延伸するように配置された熱伝導部133と、容器本体131の壁1311のうち熱吸収層132で覆われない第2領域A2における結露により生じた水を収容する収水容器134を備える。容器13に太陽光があたると、熱吸収層132で覆われている部分が温められ、続いて、熱伝導部133を通じて窓1312が温められる。その結果、熱吸収層132で覆われていない壁1311の第2領域A2が最も低温となり、その第2領域A2において結露が生じる。結露により生じた水は、収水容器134に流れ込み、収水容器134に収容される。
【選択図】
図2