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特許7515934会話ベースの精神障害選別方法及びその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】会話ベースの精神障害選別方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240708BHJP
   G09B 5/06 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G09B5/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023502573
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 KR2021008939
(87)【国際公開番号】W WO2022015005
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0087533
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521502757
【氏名又は名称】イモコグ インク.
【氏名又は名称原語表記】Emocog Inc.
【住所又は居所原語表記】(Bongcheon-dong,Character Greenville) 411-ho 7 Boramae-ro 5ga-gil Gwanak-gu, Seoul 08708 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジュンヨン
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-015139(JP,A)
【文献】特開2007-282992(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013302(WO,A1)
【文献】特許第6712028(JP,B2)
【文献】特開2018-050847(JP,A)
【文献】国際公開第2019/081915(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
G09B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ出力部が、ストーリー、単語、音、絵、動き、色及び方向のうち少なくとも1つ以上を含む第1刺激を出力するステップと、
音声入力部が、検査対象から前記第1刺激に対する第1応答を受信し、前記第1応答に基づいて変更された第2刺激を出力するステップと、
音声入力部が、前記検査対象から前記変更された第2刺激に対する第2応答を受信し、音声分析部が、前記第1応答及び第2応答の正解率、前記第1応答及び第2応答に含まれる音声特徴又は前記第1応答及び第2応答による会話内容のうちの少なくとも1つ以上をともに考慮して前記検査対象の認知症疾患の存在可能性を確率で計算するステップを含み、
前記第2刺激を出力するステップは、
第1刺激に対する第1応答の正解率が既定値以上である場合、第1刺激の種類を変更するか、または第1刺激の内容を変更するステップを含むことを特徴とする、精神障害選別装置によって行われる会話ベースの精神障害選別方法。
【請求項2】
前記第1刺激を出力するステップは、刺激に対する正常群と疾患群との間の差を広げるためにストーリーの刺激に含まれる単語を所定の他の単語に置き換えて出力するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の精神障害選別装置によって行われる会話ベースの精神障害選別方法。
【請求項3】
前記第1刺激を出力するステップは、前記検査対象の応答内容に従って出力する刺激を決定するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の精神障害選別装置によって行われる会話ベースの精神障害選別方法。
【請求項4】
前記第1刺激を出力するステップは、刺激の間の出力間隔を制御するか、又は刺激に干渉刺激を配置するステップを含み、
前記干渉刺激は、正常群と疾患群の応答差を広げ、精神疾患選別の精度を高めるために検査対象に混乱を与えるための刺激であることを特徴とする、請求項1に記載の精神障害選別装置によって行われる会話ベースの精神障害選別方法。
【請求項5】
前記音声特徴は、フォルマント、MFCC、音高、音長、及び音質のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の精神障害選別装置によって行われる会話ベースの精神障害選別方法。
【請求項6】
ストーリー、単語、音、絵、動き、色及び方向のうち少なくとも1つ以上を含む第1刺激を出力するデータ出力部と、
検査対象から前記第1刺激に対する第1応答を受信し、前記第1応答に基づいて変更された第2刺激を出力する音声入力部と、
前記第1応答及び第2応答の正解率、前記第1応答及び第2応答に含まれる音声特徴又は前記第1応答及び第2応答による会話内容のうちの少なくとも1つ以上をともに考慮して前記検査対象の認知症疾患の存在可能性を確率で計算する音声分析部とを含み、
前記データ出力部は、第1応答に基づいて第2刺激を出力し、
前記データ出力部は、第1刺激に対する第1応答の正解率が既定値以上である場合、第1刺激の種類を変更するか、または第1刺激の内容を変更することを特徴とする、精神障害選別装置。
【請求項7】
コンピュータ読み取り可能な命令を格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとき、前記少なくとも1つのプロセッサがステップを行うようにし、前記ステップは、
ストーリー、単語、音、絵、動き、色及び方向のうち少なくとも1つ以上を含む第1刺激を出力するステップと、
検査対象から前記第1刺激に対する第1応答を受信し、前記第1応答に基づいて変更された第2刺激を出力するステップと、
前記第1応答及び第2応答の正解率、前記第1応答及び第2応答に含まれる音声特徴又は前記第1応答及び第2応答による会話内容のうちの少なくとも1つ以上をともに考慮して前記検査対象の認知症疾患の存在可能性を確率で計算するステップを含み、
前記第2刺激を出力するステップは、
第1刺激に対する第1応答の正解率が既定値以上である場合、第1刺激の種類を変更するか、または第1刺激の内容を変更するステップを含む、ことを特徴とする、記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、会話を通じて精神科疾患を選別する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の精神障害(例えば、認知症、注意欠陥障害、学習障害、統合失調症、気分障害、依存症など)検査は、専門家によって特定の空間及び特定の時間に行われる。したがって、精神障害の有無の検査を受けようとする者は、検査のために予約をした後、その予約時間に病院などの特定の場所を訪問しなければならない不便さがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の実施形態が解決しようとする技術的課題は、時空間に拘束されることなく病院ではない家などで楽に会話ベースで精神科疾患を選別することができる方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術的課題を達成するための、本発明の実施形態による会話ベースの精神障害選別方法の一例は、ストーリー、単語、音、絵、動き、色及び方向のうち少なくとも1つ以上を含む刺激を出力するステップと、検査対象から前記刺激に対する応答を受信するステップと、前記応答の正解率又は前記応答に含まれる音声特徴を正常群及び疾患群の正解率又は音声特徴と比較するか、又は会話内容を分析して精神障害の有無を選別するステップとを含む。
【0005】
上記の技術的課題を達成するための、本発明の実施形態による会話ベースの精神障害選別装置の一例は、ストーリー、単語、音、絵、動き、色及び方向のうち少なくとも1つ以上を含む刺激を出力するデータ出力部と、検査対象から前記刺激に対する応答を受信する音声入力部と、前記応答の正解率又は前記応答に含まれる音声特徴を正常群及び疾患群の正解率又は音声特徴と比較するか、又は会話内容を分析して精神障害の有無を判断する音声/会話分析部とを含む。
【0006】
上記の技術的課題を達成するための、本発明の実施形態による記録媒体の一例は、コンピュータ読み取り可能な命令を格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記命令は少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとき、前記少なくとも1つのプロセッサがステップを行うようにし、前記ステップは、ストーリー、単語、音、絵、動き、色及び方向のうち少なくとも1つ以上を含む刺激を出力するステップと、検査対象から前記刺激に対する応答を受信するステップと、前記応答の正解率又は前記応答に含まれる音声特徴を正常群及び疾患群の正解率又は音声特徴と比較するか、又は会話内容を分析して精神障害の有無を選別するステップとを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、検査対象は、あえて病院に訪問しなくても、家など心地よい空間で会話ベースの精神障害の有無を診断することができる。また、会話内容と音声データをともに活用して精神障害選別の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態による精神障害選別方法を実装したシステム全体の概略的な構造の例を示す。
図2】本発明の実施形態による精神障害選別方法の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態による精神障害選別を検査対象の正解率に基づいて把握する方法の一例を示す。
図4】本発明の実施形態による精神障害選別を検査対象の音声特徴に基づいて把握する方法の一例を示す。
図5】本発明の実施形態による精神障害選別に使用される刺激のうちストーリーの刺激の一例を示す。
図6】本発明の実施形態による精神障害選別に使用される刺激のうちストーリーの刺激の一例を示す。
図7】本発明の実施形態による精神障害選別装置の一例の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で、添付の図面を参照して、本発明の実施形態による会話ベースの精神障害選別方法及びその装置について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態による精神障害選別方法を実装したシステム全体の概略的な構造の例を示す図である。
【0011】
図1を参照すると、精神障害選別のためのシステムは、主に、ユーザ端末100及び分析サーバ140を含む。ユーザ端末100と分析サーバ140は、有線網や無線網などの通信網150を介して接続することができる。
【0012】
ユーザ端末100は、音声入力装置110、データ出力装置120及び通信部130を含む。ここで、音声入力装置110はマイクなどのように音を入力することができる装置を意味し、データ出力装置120は音を出力するスピーカー又は映像を出力するディスプレイ装置などを意味し、通信部130は分析サーバ140とデータを送受信することができる各種通信モジュールを意味する。ユーザ端末100は、他にもプロセッサ、メモリなど、本実施形態の実装に必要な様々な構成をさらに含むことができる。ただし、本実施形態は説明の便宜上、精神障害選別のために必要な構成を中心に示している。
【0013】
本実施形態において、ユーザ端末100は、音声入力装置110、データ出力装置120及び通信部130を備えた端末であれば全て可能であるので、一般コンピュータ、タブレットPC、スマートフォン、スマート冷蔵庫、スマートTV、AIスピーカー、各種IoT(Internet Of Things)機器などで実装することができ、特定の装置に限定されない。
【0014】
分析サーバ140は、ユーザ端末100から受信したデータを分析して検査対象の精神障害(例えば、認知症など)の有無を判断する装置である。分析サーバ140は「サーバ」という用語に限定されず、サーバだけでなく一般コンピュータやクラウドシステムなどで実装することができる。
【0015】
本実施形態は、精神障害選別のためにユーザ端末100と分析サーバ140とが通信網150で接続されている構造を示しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、分析サーバ140で行う機能の一部又は全部をユーザ端末100で行われることができる。分析サーバ140の機能が全てユーザ端末100で行われる場合、分析サーバ140は省略されてもよい。すなわち、分析サーバ140なしにユーザ端末100で精神障害選別を行い、その結果を表示することができる。ただし、以下では、説明の便宜上、ユーザ端末100と分析サーバ140とが通信網150で接続されている本実施形態の構造を中心に説明する。
【0016】
図2は、本発明の実施形態による精神障害選別方法の一例を示すフローチャートである。
【0017】
図1及び図2を参照すると、ユーザ端末100はデータ出力装置120を介して刺激を出力する(S200)。ここで刺激とは、検査対象の視覚又は聴覚を刺激することができるストーリーや音又は画像などを意味する。例えば、刺激は、ストーリー、単語、音、絵、動き、色及び方向のうち少なくとも1つ以上から構成されることができる。図5及び図6は、ストーリーの刺激の一例を示す。
【0018】
一実施形態では、ユーザ端末100は、分析サーバ140からリアルタイムで刺激内容を受信し、データ出力装置120を介して出力してもよく、ユーザ端末に予め保存された刺激内容を出力してもよい。
【0019】
別の実施形態では、データ出力装置120を介して出力される刺激内又は刺激の間に干渉刺激を配置してもよい。ここで干渉刺激は正常群と疾患群の応答差を広げ、精神疾患選別の精度を高めるために検査対象に混乱を与えるための刺激である。例えば、図5のようなストーリーの刺激の場合に慣れたストーリーに出てくる慣れた単語や状況を不慣れな単語や状況に変えて出力することができ、ここで生成した単語や状況が干渉刺激に該当する。各刺激に対する干渉刺激の位置と内容は予め定められていてもよい。別の例として、検査対象が答える前に、直前刺激に対する記憶を消去することができるように、検査対象に質問する前に別のストーリーや、音、絵などの干渉刺激を出力するか、又は刺激と刺激の間に一定時間の休止期を与えることもできる。
【0020】
別の実施形態では、ユーザ端末100は、検査対象の応答に応じて出力する刺激の内容をリアルタイムで変えて出力することができる。リアルタイムで変更する刺激内容は、ユーザ端末100で選択されてもよく、検査対象の応答をリアルタイムに分析サーバ140に提供して分析サーバ140からリアルタイムで変えた刺激を受信し、出力されてもよい。例えば、図5及び図6のストーリーの刺激において、質問に対する検査対象の応答の正解率が一定以上の場合に、より難しい内容のストーリーの刺激を出力するか、又は音や画像などの他の種類の刺激を出力することができる。検査対象の正解率に応じて、次に出力する刺激の種類などは予め定められていてもよい。
【0021】
ユーザ端末100は、刺激に対する検査対象の応答を、音声入力装置110を介して受信する(S210)。例えば、刺激が図5のようなストーリーの刺激である場合、ユーザ端末100はデータ出力装置120を介してストーリーを音で出力してもよく、画面に視覚的に表示してもよく、又は音と画面に同時に出力してもよい。刺激を出力した後、ユーザ端末100は図6のような質問をし、音声入力装置110を介して検査対象の応答を入力することができる。
【0022】
ユーザ端末100は、刺激を出力し、その刺激に対する検査対象の応答を受信する過程を、刺激を変えながら繰り返して行うことができる。例えば、ユーザ端末100は、第1刺激を出力した後、それに対する検査対象の応答を受信し、第2刺激を出力した後、それに対する検査対象の応答を受信することができる。すなわち、ユーザ端末100は検査対象と一種の会話を続ける形態で検査を行うことができるので、このために従来のAIスピーカーや各種スマート機器を本実施形態に活用することができる。
【0023】
ユーザ端末100は検査対象から入力された応答を分析サーバ140に送信し、分析サーバ140は検査対象の応答を分析して精神障害を選別する(S220、S230)。具体的には、分析サーバ140は、検査対象の応答内容を分析して、刺激に対する検査対象の応答の正解率及び/又は音声特徴が正常群に近いのかそれとも疾患群に近いのかを分析して精神障害の有無を判断することができる。検査対象の正解率に基づいて精神障害を選別する例を図3に示し、検査対象の音声特徴に基づいて精神障害を選別する例を図4に示す。別の例として、分析サーバ140は、検査対象の応答に含まれる単語数、文章完成度、低頻度単語の使用の有無、重義的文章や曖昧な文章の理解度、感情を表す言葉の使用頻度などを精神障害の有無の判断に併せて考慮することができる。
【0024】
分析サーバ140は、精神障害の分析が完了すると、精神障害選別結果をユーザ端末100又は所定の端末(例えば、検査対象の保護者又は医療スタッフの端末など)に提供することができる。
【0025】
図3は、本発明の実施形態による精神障害選別を検査対象の正解率に基づいて把握する方法の一例を示す図である。
【0026】
図3を参照すると、分析サーバ140は、刺激に対する検査対象の正解率300を把握した後、正常群の正解率310及び疾患群の正解率320と比較する。図5及び図6のストーリーの刺激の場合には、分析サーバ140は、検査対象の応答を従来の多様な音声認識技術で分析して、各質問内容について検査対象の回答を把握した後、その回答が正解か否かを判断することができる。複数の刺激が検査対象に出力される場合、分析サーバ140は各刺激に対する正解か否かをそれぞれ把握することができる。
【0027】
例えば、図5及び図6のストーリーの刺激に対して正常群の正解率310と認知症疾患の疾患群の正解率320が定義されている場合、分析サーバ140は検査対象の正解率300が正常群と疾患群のうちどの群にもっと近いかを把握して認知症疾患の有無を把握することができる。すなわち、正常群の正解率が70%であり、疾患群の正解率が30%である場合、検査対象の正解率が20%であれば、検査対象の正解率が疾患群より低いので、分析サーバ140は認知症疾患があると判断することができる。他の例として、検査対象の正解率が30~70%の間であれば、分析サーバ140は、検査対象の正解率が正常群と疾患群との間で疾患群に近いと認知症疾患が存在する可能性があると判断することができ、この場合、検査対象の正解率と正常群及び疾患群の各正解率との間の相対距離に応じて認知症疾患の存在可能性を確率で計算して提供することもできる。
【0028】
図4は、本発明の実施形態による精神障害選別を検査対象の音声特徴に基づいて把握する方法の一例を示す図である。
【0029】
図4を参照すると、分析サーバ140は、検査対象の音声特徴400を分析して、正常群の音声特徴410及び疾患群の音声特徴420と比較することができる。分析サーバ140は、音声特徴の例としてフォルマント(formant)、メル周波数ケプストラム係数(Mel-Frequency Cepstral Coefficient:MFCC)、音高、音長、音質(voice quality)などを分析することができる。
【0030】
分析サーバ140は、正常群に対する音声特徴410と疾患群に対する音声特徴420を予め把握して記憶しており、検査対象の音声特徴400が正常群に近いのか、それとも疾患群に近いのかを把握して検査対象の精神疾患の有無を選別することができる。例えば、図5及び図6のストーリーの刺激に基づいて認知症に対する正常群の音声特徴410及び疾患群の音声特徴420が定義されていると、分析サーバ140は、検査対象の音声特徴400が正常群と疾患群のうちどちらにどれだけ近いかを分析して認知症疾患の可能性を把握することができる。例えば、検査対象の音声特徴400が疾患群の音声特徴420と80%類似している場合、分析サーバ140は認知症疾患の可能性が80%であると出力することができる。
【0031】
音声特徴の比較は、多様な方法で行うことができる。例えば、分析サーバ140は、検査対象の応答から抽出する音声特徴の値(例えば、フォルマント、MFCC、音高等)を予め定めており、検査対象の応答から所定の音声特徴の値を把握し、これらの値を変数とするベクターを作る。正常群と疾患群の音声特徴の値も予めベクターで作られている。分析サーバ140は、検査対象の音声特徴のベクターと正常群及び疾患群の各ベクターとの間の類似度(例えば、ユークリッド距離など)を把握し、どれとより類似するかを把握することができる。
【0032】
別の実施形態では、分析サーバ140は会話内容を分析して精神障害選別に用いることができる。例えば、分析サーバ140は、検査対象の応答から単語数、文章完成度、低頻度単語(すなわち、難しい単語)の使用、重義的文章や曖昧な文章の理解度、感情を表す言葉の使用頻度などを把握した後、所定の精神障害選別の基準値と比較して、精神障害の有無を判断することができる。例えば、分析サーバ140は、単語数が所定の値以下であれば精神障害であると判断し、低頻度単語の使用頻度が一定以上であれば精神障害でないと判断し、感情を表す言葉の使用頻度が一定以上であれば精神障害でないと判断することができる。あるいは、人工知能又は従来の多様な文章分析技法を用いて検査対象の応答に対する文章完成度や重義的文章又は曖昧な文章の理解度などを把握した後、これを基に精神障害の有無を選別することもできる。
【0033】
別の実施形態では、分析サーバ140は人工知能を用いて会話内容を分析することができる。例えば、人工知能モデルは、正常群に属する人との会話及び疾患群に属する人との会話を通じて正常群と疾患群を分類するように学習することができる。分析サーバ140は、このように学習された人工知能モデルを用いて検査対象との会話を通じて精神障害の有無を判断することができる。人工知能モデルは、AIスピーカーなど、ユーザとの会話が可能なモデルで構成することができる。例えば、分析サーバ140は、人工知能モデルを介して天気や日付などの日常的な会話を刺激として出力し、これに対する検査対象の応答を受信する過程を通じて把握された会話内容を用いて検査対象が正常群及び疾患群のいずれのクラスに属するのかを把握することができる。
【0034】
分析サーバ140は、図3の検査対象の正解率300、図4の検査対象の音声特徴400及び会話内容のうちの少なくとも1つ以上をともに考慮して精神障害選別の精度を向上させることができる。
【0035】
図5及び図6は、本発明の実施形態による精神障害選別に使用される刺激のうちストーリーの刺激の一例を示す図である。
【0036】
図5を参照すると、ストーリーの刺激は所定の一定量のストーリーを含む。例えば、ストーリーの刺激は、興夫(フンブ)伝などのように広く知られている物語であり得る。ユーザ端末100は、精神障害選別のためにストーリーの刺激を出力する際に、それをそのまま出力してもよく、又は特定の単語を所定の他の単語に置き換えて出力してもよい。例えば、フンブが飯じゃくしで頬を殴られる慣れた興夫(フンブ)伝のストーリーで慣れた「飯じゃくし」という単語を不慣れな「盆」に置き換えて出力することで認知症患者の干渉を最大化することができる。
【0037】
図6を参照すると、ユーザ端末100は、質問を通じて検査対象からストーリーの刺激に対する応答を受信することができる。
【0038】
図7は、本発明の実施形態による精神障害選別装置の一例の構成を示す図である。
【0039】
図7を参照すると、精神障害選別装置600は、データ出力部610、音声入力部620及び音声/会話分析部630を含む。
【0040】
精神障害選別装置600は、図1のように通信網150で接続されているユーザ端末100と分析サーバ140で実装されてもよく、又はユーザ端末140のみで実装されてもよい。例えば、データ出力部610、音声入力部620及び音声/会話分析部630は、アプリケーションとして実装され、スマートフォン、AIスピーカーなどに搭載されて行うことができる。あるいは、データ出力部610及び音声入力部620はアプリケーションで実装され、スマートフォン、AIスピーカー等に搭載されて実行され、音声/会話分析部630は分析サーバ140に実装できるなど精神障害選別装置600は実施形態に従って、様々な形態で実装することができる。
【0041】
データ出力部610は刺激を出力する。例えば、データ出力部610がAIスピーカーやスマートフォンなどに実装された場合、データ出力部610はAIスピーカーを介して刺激を出力することができる。実施形態によれば、データ出力部610は、外部の分析サーバ140から刺激を受信した後、それをAIスピーカーを介して出力することができる。あるいは、データ出力部610は、日付、天気、家族関係などの日常的な質問内容を刺激として出力してもよい。
【0042】
音声入力部620は、刺激に対する検査対象の応答を受信する。例えば、音声入力部620がAIスピーカーに実装された場合に刺激に対する検査対象の答えをAIスピーカーを介して入力することができる。
【0043】
音声/会話分析部630は、音声入力部620を介して入力された検査対象の応答を分析して精神障害の有無を選別する。例えば、図5及び図6のように、ストーリーの刺激に対する検査対象の応答を受信した場合、音声/会話分析部630は、検査対象の正解率を分析し、検査対象の音声特徴を分析することもできる。音声/会話分析部630は、実施形態に従ってユーザ端末100に実装されてもよく、図1の分析サーバ140に実装されてもよい。音声/会話分析部630が図1の分析サーバ140に実装された場合、音声入力部620は検査対象の応答を分析サーバ140に送信することができる。
【0044】
別の実施形態では、音声/会話分析部630は、音声入力部620を介して入力された検査対象の会話内容を分析して精神障害の有無を選別する。例えば、音声/会話分析部630は、検査対象の応答に含まれる単語数、低頻度単語の使用の有無、感情を表す言葉の使用頻度などを分析した後、所定の基準と比較して精神障害の有無を選別することができる。あるいは、音声/会話分析部630は、正常群と疾患群に属する人との会話内容を学習データとして用いて学習させた人工知能モデルを用いることができる。この場合、音声/会話分析部630は、人工知能モデルを介して検査対象との会話内容が正常群と疾患群のいずれに属するかを把握することができる。音声/会話分析部630は、正解率、音声特徴及び会話内容のうちの少なくとも1つ以上を用いて精神障害の有無を判断することができる。
【0045】
また、本発明は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体にコンピュータで読み取り可能なコードとして実装することができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、コンピュータシステムによって読み取れるデータが保存されるあらゆる種類の記録装置を含む。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例には、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ記憶装置などがある。また、コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、ネットワークに接続されたコンピュータシステムに分散され、分散方式としてコンピュータで読み取り可能なコードが保存され実行されることができる。
【0046】
これまで、本発明に関してその好ましい実施形態を中心に見てきた。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形態で実装され得ることが理解されるであろう。したがって、開示された実施形態は限定的な観点ではなく説明的な観点から考慮されるべきである。本発明の範囲は上記の説明ではなく特許請求の範囲に示されており、それと同等の範囲内にある全ての相違点は本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7