(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】ファイバーレーザーモジュールを含むシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20240708BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
G01N21/65
G01N21/27 A
(21)【出願番号】P 2023515145
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033384
(87)【国際公開番号】W WO2022054923
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2024-02-27
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509339821
【氏名又は名称】アトナープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】プレウィッキ マテウス
(72)【発明者】
【氏名】オウ ニール
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0238532(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0023482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0047750(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0285873(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02982947(EP,A1)
【文献】BAUDISCH, M. et al.,High power multi-color OPCPA source with simultaneous femtosecond deep-UV to mid-IR outputs,Optics Letters,2016年07月27日,Vol. 41, No. 15,pp. 3583-3586,http://dx.doi.org/10.1364/OL.41.003583
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/74
G02B 19/00-G02B 21/00
G02B 21/06-G02B 21/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CARS光を生成するためのストークス光、ポンプ光およびプローブ光を供給する光モジュールを含むシステムであって、
前記光モジュールは、前記ストークス光および前記ポンプ光に変換するための第1のソース光と前記プローブ光に変換するための第2のソース光とを供給するためのファイバーレーザーモジュールと、
前記第1のソース光を前記ストークス光および前記ポンプ光に変換し、前記第2のソース光を前記プローブ光に変換するための複数の光学素子を含むオプティカルプレートとを有し、
前記ファイバーレーザーモジュールは、モードロックされたベースレーザーであって、前記第1のソース光と前記第2のソース光の生成のために分割されるベースレーザーを出力するように構成された発振器と、
前記ベースレーザーの波長範囲をストレッチして前記第1のソース光を生成するように構成されたジェネレータと、
前記第1のソース光用の第1のプリアンプおよび第1のチャープパルス増幅器を含む第1の増幅器と、
前記第2のソース光用の第2のプリアンプおよび第2のチャープパルス増幅器を含む第2の増幅器と、
第1のレーザーダイオードからのレーザーパワーを、前記発振器に対し発振源として、前記ジェネレータに対しポンプパワーとして、前記第1のプリアンプに対しポンプパワーとして、さらに、前記第2のプリアンプに対しポンプパワーとして分配するように構成されたレーザーダイオードパワーディストリビュータとを含む、システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記レーザーダイオードパワーディストリビュータは、前記発振器に供給される前記レーザーパワーを安定化させる第1のEVOA(電子制御式可変光減衰器)と、
前記ジェネレータに供給される前記レーザーパワーを安定化させる第2のEVOAを含む、システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記オプティカルプレートの前記複数の光学素子は、前記ファイバーレーザーモジュールから供給されるストレッチされたソース光を圧縮するコンプレッサーを含み、
前記コンプレッサーは、グレーティングと、
前記グレーティングの両側の光路をそれぞれ折り返すための第1の光学素子および第2の光学素子を含む、システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記第2の光学素子は、前記第1の光学素子に対し直交する方向に光を折り返すように配置されている、システム。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記第1の光学素子は第1のプリズムを含み、
前記第2の光学素子は前記第1のプリズムに対し直交する方向に光を折り返すように配置された第2のプリズムを含む、システム。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれかにおいて、
前記コンプレッサーは、前記第1の光学素子の側で光路を折り返すための第3の光学素子をさらに含む、システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記オプティカルプレートの前記複数の光学素子は、前記第2のソース光から前記プローブ光を生成するための第2高調波発生(SHG)を含み、
前記SHGは、前記ファイバーレーザーモジュールから供給されるストレッチされたソース光を圧縮するための周期的分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)コンプレッサーを含み、
前記コンプレッサーは、グレーティングと
前記グレーティングの両側の光路をそれぞれ折り曲げるための第1の光学素子および第2の光学素子とを含む、システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記オプティカルプレートの前記複数の光学素子は、前記第1のソース
光の一部を分岐してフォトニック結晶ファイバ(PCF)に導いて伸張して前記ストークス光を生成し、前記第1のソース光の他の一部を前記ポンプ光として分岐させるためのスプリッタを含む、システム。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記ストークス光、前記ポンプ光および前記プローブ光によってターゲットをスキャンし、前記ターゲットからCARS光を取得するように構成されたスキャンニングモジュールと、
前記CARS光を分析するために検出するように構成されたディテクターとをさらに有する、システム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
前記第1のソース光は1030nmを中心とし、前記第2のソース光は1560nmを中心とし、前記ベースレーザーは1560nmを中心とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバーレーザーモジュールを含むシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
公開公報WO2014/061147に顕微鏡が開示されている。この顕微鏡は、光源からの光の光束を第1ポンプ光束と第2ポンプ光束とに分ける第1分光部と、第2ポンプ光束を入力として受け、ストークス光束を出力するストークス光源と、第1のポンプ光束とストークス光束を多重化して多重化光束を生成する多重化部と、多重化光束を試料に集光する第1の集光部と、試料から発生するCARS光(前記多重化光束とは異なる波長を有する)を検出する第1の検出器と、前記第2のポンプ光束と前記ストークス光束の少なくとも一方を部分的に参照光束として分岐させる第2の分光部と、前記試料からの光束と前記参照光束を多重化して干渉光を生成する第2の多重化部と、干渉光を検出する第2の検出器とを有する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の形態の1つは、CARS(Coherent Anti-Stokes Raman Scattering、コヒーレント・アンチストークスラマン分光)光を生成するためのストークス光、ポンプ光およびプローブ光を供給する光モジュールからなるシステムである。光モジュールは、ストークス光およびポンプ光に変換する第1のソース光(光源)と、プローブ光に変換する第2のソース光(光源)とを供給するファイバーレーザーモジュールと、第1のソース光をストークス光およびポンプ光に、第2のソース光をプローブ光に変換するための複数の光学素子を含むオプティカルプレート(光学プレート)とを含む。ファイバーレーザーモジュールは、(i)モードロックされたベースレーザーであって第1のソース光および第2のソース光の生成のために分割されるベースレーザーを出力するように構成された発振器と、(ii)このベースレーザーの波長範囲をストレッチして第1のソース光を生成するように構成されたジェネレータ(生成器)と、(iii)第1のソース光用の第1のプリアンプおよび第1のチャープパルス増幅(CPA)ユニットを含む第1の増幅器(アンプ、アンプリファイア)と、(iv)第2のソース光用の第2のプリアンプおよび第2のCPAユニットを含む第2の増幅器(アンプ、アンプリファイア)と、(v)第1のレーザーダイオードからのレーザーパワーを、上記発振器に発振源として、上記ジェネレータにポンプパワーとして、上記第1のプリアンプにポンプパワーとして、さらに上記第2のプリアンプにポンプパワーとして分配するよう構成されたレーザーダイオード(LD)パワーディストリビュータとを備える。
【0004】
この発明のシステムでは、それぞれのソース光の増幅器にプリアンプを設け、共通のレーザーダイオードのレーザーパワーを発振器およびジェネレータに加えてそれぞれのプリアンプに分配するLDパワー分配器(LD出力分配器)を設けることにより、LDの数を減らすだけでなく、レーザーダイオード(共通LD)をその動作レベル、すなわち、LDの設計出力パワーレベルの90%~100%となるであろうレベルで動作させることが可能である。この領域でLDが動作すると、通常、LDからの強度ノイズは最小となる。したがって、発振器から安定かつ精密に制御または調整されたベースレーザーを得ることができ、これを用いて、ストークス光、ポンプ光およびプローブ光のための安定かつ精密に制御または調整されたソース光を生成することが可能である。1つの実施形態では、ファイバーレーザーモジュールの異なる出力アームからのこれら2つのパルス(第1の光源(第1のソース光、第1のソースパルス)および第2の光源(第2のソース光、第2のソースパルス))は、50ps以内の時間で同期している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本明細書の実施形態は、図面を参照した以下の詳細な説明から、よりよく理解されるであろう。
【
図1】
図1はこの発明のシステムの一実施形態を示し、
【
図4】
図4はファイバーレーザーモジュールの波長プランを示し、
【
図8】
図8はプローブパルスの時間的な構成を示し、
【
図9】
図9はプローブパルスのスペクトルの構成を示している。
【実施形態の説明】
【0006】
本明細書の実施形態とその様々な特徴および有利な詳細は、添付図面に図示され、以下の説明で詳述される非限定的な実施形態を参照してより完全に説明される。周知の構成要素および処理技術の説明は、本明細書の実施形態を不必要に不明瞭にしないように省略される。本明細書で使用される例は、単に、本明細書の実施形態が実施され得る方法の理解を容易にし、当業者が本明細書の実施形態を実践することをさらに可能にすることを意図している。したがって、実施例は、本明細書の実施形態の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0007】
本明細書では、ファイバーレーザーおよび非線形光学で使用される多くの専門用語が示され、それの略語が使用される。以下のリストは、本明細書で使用される略語である。
FL Fiber Laser ファイバーレーザー
OSC Oscillator 発振器(オシレーター)
LD Laser Diode レーザーダイオード
PD Photo Diode フォトダイオード
EVOA Electronically Controlled Variable Optical Attenuator
電子制御式可変光減衰器
SAM Saturable Absorber Mirror 可飽和吸収ミラー
FC/APC Ferrule Connecter/Angled Physical Contact
フェルール継手/斜めフィジカルコンタクト(平面研磨接合)
Er Erbium エルビウム
EDFA Erbium Doped Fiber Amplifier エルビウム添加ファイバー増幅器
Yb Ytterbium イッテルビウム
YDFA Ytterbium Doped Fiber Amplifier イッテルビウム添加ファイバー増幅器
SMF Single Mode Fiber シングルモードファイバー
PM Polarization Maintaining 偏波保持
HNLF Highly Nonlinear Fiber 高非線形ファイバー
PCF Photonic Crystal Fiber フォトニック結晶ファイバー
WDM Wavelength Division Multiplexing 波長分割多重方式
CIR Optical Circulator 光サーキュレーター
SC Super Continuum スーパーコンティニウム
SHG Second Harmonic Generation 第二高調波発生
FWHM Full Width Half Maximum 半値幅
CARS Coherent Anti-Stokes Raman Spectroscopy
コヒーレント反ストークスラマン分光法
CPA Chirped Pulse Amplification チャープパルス増幅(器)
CFBG Chirped Fiber Bragg Grating
チャープファイバーブラッググレーティング(チャープファイバブラッグ格子)
IW Isolator/WDM Hybrid アイソレータ/WDMハイブリッド
TW Tap/WDM Hybrid タップ/WDMハイブリッド
TIW Tap/Isolator/WDM Hybrid タップ/アイソレータ/WDMハイブリッド
NPD Non-photon Power Dissipation ノンフォトンパワー損失(消費)
【0008】
図1に、この発明の一実施形態によるシステム1を示す。システム1は、ターゲット(物体、試料)5上にCARS光55を生成するためのストークス光51、ポンプ光52およびプローブ光53を供給するための光モジュール10を備える。光モジュール10は、ストークス光51およびポンプ光52に変換するための第1のソース光(第1の光源、第1のソースパルス、第1のレーザーパルス)31、およびプローブ光53に変換するための第2のソース光(第2の光源、第2のソースパルス、第2のレーザーパルス)32を供給するためのファイバーレーザモジュール30と、第1のソース光31をストークス光51およびポンプ光52に、第2のソース光32をプローブ光53に変換するための複数の光学素子29を含むオプティカルプレート(光学プレート)20とを含む。システム1は、ストークス光51、ポンプ光52およびプローブ光53によってターゲット5を走査し、レンズ45および他の光学要素を介してターゲット5からのCARS光55を取得するように構成された走査モジュール(スキャンモジュール)40、および解析のためにCARS光55を検出するように構成された検出器(ディテクタ)43を含んでもよい。システム1は、システム1全体を制御するためのコントローラ(プロセッサ)60を含んでもよい。コントローラ60は、レーザー制御モジュール61、分析装置(アナライザ)62などの他の機能を含んでもよい。
【0009】
走査モジュール40は、指先走査インターフェースモジュール(フィンガーチップスキャンニングインターフェイス)、非侵襲性のサンプラー、侵襲性のサンプラー、流路(フローパス)、またはウェアラブルな走査インターフェースであってもよい。それぞれのタイプの走査インターフェースは、取り換え可能であってもよい。
【0010】
図2は、CARS光学システム1の波長プランの一例を示す。ストークス光51は波長1085~1230nmの第1の範囲R1(400cm
-1~1500cm
-1)、ポンプ光52は波長1040nmの第2の範囲R2、プローブ光53は波長780nmの第3の範囲R3、TD-CARS光(CARS光、時間依存CARS、時間遅延CARS)55は波長680~760nmの範囲R5を含む。ストークス光51およびポンプ光52は、数十~数百mWの1~数百fS(フェムト秒)オーダーのパルスを含んでもよい。プローブ光53は、数十~数百mWの1~数十pS(ピコ秒)オーダーのパルスを含んでもよい。時間分解コヒーレント反ストークスラマン散乱または時間遅延コヒーレント反ストークスラマン散乱(TD-CARS)マイクロスコピー(顕微鏡)は、仮想電子遷移とラマン遷移の異なる時間応答を利用して、非共鳴バックグラウンドを抑制する技術としても知られている。このような測定方法を様々な用途に容易に適用できるシステムが求められている。
【0011】
光学プレート20上には、光路を構成するためのミラー、プリズム、ダイクロイックミラー等の複数の光学素子29が搭載されている。光学プレート20上には、3つの光路(アーム)21~23が設けられてもよい。光路(第1のアーム)21は、第1のソース光31の一部を分岐するためのスプリッタ21sでストークス光51を供給し、その一部をフォトニック結晶ファイバー(PCF)21aに導き、伸張してストークス光51を生成するための光路である。光路(第2のアーム)22は、第1のソース源31の他の部分をポンプ光52として供給する。光路(第3アーム)23は、第2のソース光32からSHG23sおよび遅延モジュール23aを経由してプローブ光53を供給する。なお、光路22および23は、ポンプ光52およびプローブ光53に含まれるパルスのタイミングを微調整するための時間調整部22dおよび23dをそれぞれ含んでもよい。
【0012】
図3は、ファイバーレーザーモジュール(ファイバーレーザーアセンブリ)30と光学プレート(オプティカルプレート)20とを含む光モジュール(オプティカルモジュール)10の実施形態の1つを示す図である。
図4は、ファイバーレーザーモジュール30の波長プランを示している。ファイバーレーザーモジュール30では、発振器(OSC)310で生成(発生)される1560nmを中心とするベースレーザー35から1030nmを中心とする第1のソース光31と1560nmを中心とする第2のソース光32が出力される。ファイバーレーザーモジュール30は、(1)ベースレーザ35をモードロックして出力し、第1のソース光31および第2のソース光32の生成のために分割するように構成された発振器(OSC)310と、(2)ベースレーザ35の波長域を伸張(ストレッチ)して第1のソース光31を生成するように構成された生成器(ジェネレータ)320、(3)第1のソース光31のための第1のプリアンプ340および第1のチャープパルス増幅(CPA)ユニット350を含む第1の増幅器(アンプ)330、(4)第2のソース光32のための第2のプリアンプ370および第2のチャープパルス増幅(CPA)ユニット380とを含む第2の増幅器(アンプ)360と、(5)第1のレーザーダイオード(LD0)395からのレーザーパワーを、発振器310に対し発振源として、ジェネレータ320に対しポンプパワー(*1)として、第1のプリアンプ340に対しポンプパワー(*2)として、さらに、第2のプリアンプ370に対しポンプパワー(*3)として分配するよう構成されたLDパワー分配器(レーザーダイオードパワーディストリビュータ)390とを備えている。
【0013】
このLDパワー分配器は、発振器310に供給されるレーザーパワーを安定化するための第1のEVOA(Electronically Controlled Variable Optical Attenuator、電子制御式可変光減衰器)391と、発生器320に供給されるレーザーパワーを安定化するための第2のEVOA392とを備えている。このファイバーレーザーモジュール30では、ソース光31および32の増幅器330および360のそれぞれにプリアンプ340および370が設けられ、LDパワー分配器390が、共通のレーザーダイオード(LD0)395からのレーザーパワーを発振器310およびジェネレータ320に加えて、各プリアンプ340および370に分配する。この構成により、LDの数を減らすだけでなく、レーザダイオード(共通LD)395を、このLDの設計出力電力レベルの90%~100%に達する動作レベルで動作(稼働)させることが可能となる。LD395がこの領域で動作する場合、通常、LD395からの強度ノイズは最小となる。したがって、OSC310から安定かつ精密に制御または調整されたベースレーザー35を得ることができ、これを用いて安定かつ精密に制御または調整されたソース光31および32を発生させることができる。このファイバーレーザーモジュール30では、異なる増幅器330および370から出力される第1のソース光31のパルスと第2のソース光32のパルスは、50ps以内で時間的に同期している。
【0014】
また、LDパワー分配器は、OSC310用の第1のEVOA(EVOA1)391と、ジェネレータ320用の第2のEVOA(EVOA2)392とを含む。ファイバーレーザーモジュール30において、OSC310はソース光(光源)31および32の母体となり、OSC310からの変動やノイズは、次の段階を経て伝播し、増幅されることもあり得る。第1のEVOA391は、OSC出力(ベースレーザー)35のモニターであるPD0からのフィードバックと協調し、レーザー出力制御ループを形成し、第1のEVOA391を微調整(精度よく調整)することによりOSC出力パワーを積極的に安定化させる。1μmジェネレーションステージ320については、スーパーコンティニュウム発生プロセスであるため、出力パワーやスペクトルは入力パワーに大きく依存する。同じパワーコントロールの考え方で、HNLF325への入力パワーを一定にするために、プリアンプに第2のEVOA(EVOA2)392が用いられている。
【0015】
このファイバーレーザーモジュール30は、システム1の2つの基本的な光源(ソース光)31および32を提供する。1つは1032nmを中心とする波長のものであり、他の1つは1560nmを中心とする波長のものである。これら2つの出力31および32は、光学プレート20への入力となり、光学プレート20の入力要件にマッチする。1032nm出力(第1の光源、第1のソース光)31は、~66psのFWHMパルス持続時間(パルスデュレイション)を有する12MHzの光パルスを提供する。スペクトルFWHM帯域幅は~14nmであり、コリメータに接続されたFC/APCコネクタからの直接の平均出力パワーは、450mW~520mWの範囲であることが好ましい。この出力は、パルスコンプレッション(圧縮)のためにフリースペース(自由空間)の回折格子コンプレッサー(圧縮器)71に送られる。コンプレッサー71の後、このビームは、分割され、CARSストークスおよびCARSポンプの生成のために、2つのアーム21および22にそれぞれ入力される。1032nmファイバーレーザー出力31からの供給パワーは、自由空間の伝搬における損失を補償するためのものであり、したがって、パワーレベルは、光学プレート上のさらなる段階における入力の要求を満たすことができる。
【0016】
1560nm出力(第2の光源、第2のソース光)32は、1032nm出力31と全く同じパルス頻度(パルスの繰り返し)を12MHzで提供する。FWHMパルス持続時間は~35psであり、FWHMスペクトル帯域幅は~7nmである。平均出力パワーは、130mWから180mWの範囲である。この出力32は、パルスコンプレッション(圧縮)のためにフリースペースグレーチングコンプレッサー(自由空間回折格子圧縮器)72に送られる。コンプレッサー72の後、このビーム32は非線形結晶を介してSHG23sを用い、波長780nmのCARSプローブビーム53として提供される。
【0017】
このファイバーレーザーモジュール30は全体として、発振器ステージ(OSC)310、1μm発生ステージ(ジェネレータ)320、1032nmCPAステージ(第1のアンプ)350、1560nmCPAステージ(第2のアンプ)360の4つのサブアセンブリ(ステージ)から構成されている。以下、各ステージについて説明する。
【0018】
ファイバーレーザーモジュール30は、ポンプLDおよびパワー分配器390として機能するFLモジュールを含む。3つのLD395~397が用いられており、それらが提供できる980nmでの最大出力パワーは、レーザーダイオード(LD0)395、レーザーダイオード(LD1)396、およびレーザーダイオード(LD2)397の順に、600mW、850mW、および850mWである。レーザーダイオード(LD0)395は、発振器310、1μmジェネレータの増幅器320、CPAステージ350および380の前段のプレアンプステージ340および370にポンプパワーを供給する。まず、レーザーダイオード(LD0)395からの出力(レーザーパワー)は、20/80カプラ(FL14)に直接スプライス(直に接合)される。その後、20%アーム(20%用の光路、20%分岐)は、電子的に制御可能な第1のEVOA(EVOA1)391にスプライスされる。ソフトウェアループは、このコンポーネントと協働して、発振器310からの出力電力を正確に制御することができる。次に、FL14からの80%アーム(80%用の光路、80%分岐)は、カプラ(FL15)で50/50の比率に分割される。FL15からの1つのアームは第2のEVOA(EVOA2)392に行き、ジェネレータ320で安定した1μm生成のためのアンプ出力パワーを制御するために使用される。FL15からの他の50%アームは、その後再び50/50に分割され、各アームはその後、CPAステージ330および360のプリアンプポンプ入力にスプライス(接合)される。
【0019】
図5は、OSC310の構成を示す図である。このファイバーレーザーOSC310は、
図5に示すように、Erドープドアクティブファイバー(Er添加活性ファイバー)で構築され、Cバンド範囲(1530nm~1565nm)の出力波長を提供し、分配器390内の976nmでワークするレーザーダイオード(LD0)395がOSC(発振器)310にポンプパワーを提供するとともに、CPAステージ330および360内のプリアンプのサブアセンブリにもポンプパワーを提供する。レーザーダイオード(LD0)395からの出力は、ファイバーカプラーで20/80に分割される。20%アームは、発振器310への入力ポンプパワーを細かく制御するために第1のEVOA(EVOA1)391にリンクされる。この発振器310に用いられているファイバーは、Cバンド波長で異常分散と正常分散を持つPM-SMFを含む。これは、キャビティ(空洞)内部の不要な非線形効果を最小化するために、キャビティディスパージョン(空洞分散)を管理するためである。ファイバー長は、出力仕様における繰り返し周波数である12MHzに合わせて精密に調整されている。レーザー出力35はSAM315でモードロックされ、FWHMスペクトル帯域幅が6~8nm、平均出力が1~1.5mWであるがSAM315とErファイバの特性による。出力35の10%はファイバーカプラーで分岐され、PD0に送られ、発振器パワーモニターに使用される。この発振器パワーモニターは、第1のEVOA(EVOA1)391への印加電圧を制御する電子基板のフィードバックとなり、OSC310の出力パワーを一定に制御する。残りの90%は50/50で分割され、それぞれ1μmジェネレータステージ320と1560nmCPAステージ(第2の増幅器)360に送られる。
【0020】
分配器(ディストリビュータ)390では、レーザーダイオード(LD0)395とのファイバーカプラ(FL14)からの80%アームは、別のファイバカプラ(FL15)によって50/50に分割される。一方の分岐(ブランチ)は、CPAステージ330および360のプリアンプに行く。もう一方のブランチは、第2のEVOA(EVOA2)392に接続され、EDFA(Er02)のポンプとして1μmジェネレーションステージ(発生ステージ、生成ステージ)320に行く。これらのブランチに関しては、後のサブセクションで詳しく説明する予定である。
【0021】
FLモジュール320は、1μmジェネレーションステージ(発生ステージ、生成ステージ、generator)である。このステージ320の機能は、1560nmのベースレーザ35から1μmの波長を生成(発生)させることである。1μmアームと1.5μmアームとで全く同じ反復率(周波数)を得ることが目的である。
図3にその構成を示す。このステージ320は、発振器310からの出力35をステージ入力とする。出力の増幅は、このステージ320内に組み込まれたEDFA(Er02)で行われ、増幅器からの平均出力パワー(電力)は~18mWである。パワーの1%がカップリングされ、パワー監視のために増幅器の出力直後のPD1に送られる。PD1からの信号は、第2のEVOA(EVOA2)392を制御する基板へのフィードバックとなり、このEDFAからの出力パワーを一定に保つことができる。EDFAの出力パルスは、負の分散を提供するファイバーの一部によって直接圧縮される。HNLF325へのスプライスポットにおいて、FWHMパルス持続時間(デュレイション)は~60fsに圧縮され、~25kWのピークパワーに相当する。このピークパワーの光パルスを短いHNLFに送ると、波長は1560nmから伸び(広がり)、最終的には1μmから1.7μmをカバーするようになる。これがいわゆるSC生成過程である。すなわち、このピークパワーのパルスは、HNLF325中を伝播し強い非線形効果を受け、1560nmから短波長および長波長へとスペクトルを広げることができ、最終的には1μmから1.7~1.8μmのスーパーコンティニュームスペクトルを形成することができる。この1μmの部分は、次の増幅器330のために収穫される我々のターゲットである。
【0022】
FLモジュール330は、1032nmCPAステージ(第1の増幅器)である。このステージ330は、前置増幅(プレアンプリフィケーション)、パルス伸張(パルスストレッチ)、および最終の増幅プロセスを含む。分配器390のどのEVOAにも接続されていない50%ポンプ分岐は、ここで別のファイバカプラ(FL16)により再度50/50に分岐される。一方のアームは、この1032nmCPAステージ330のプリアンプ340へ、他方は1560nmCPAステージ360のプリアンプ370へ向かい、これについては後述する。
【0023】
図3に示すように、生成された1μmは1μmCIR333のポート#1に送られる。このCIR333のポート#1からポート#2にかけては、成分の特性上、SCスペクトルから1μmの部分のみが選択される。ポート#2では、Ybファイバー(Yb01)、CFBG335、1030/980WDM/Tapハイブリッドコンポーネント336が順次接合(接続)される。選択された1μmのシード(元、ソース)は、まずYbファイバーにおいて増幅される。その後、CFBG335が1018nmから1053nmの波長範囲内で40%程度のパワーを反射する。この範囲外の波長はCFBG335を直接透過してWDM336から出力される。WDM336の出力は、このプリアンプ340以降のスペクトル(tap2を介して)とパワー(PD2を介して)のモニターとして用いられる。反射された部分は再びYbファイバー(Yb01)を通過し、2回目の増幅を受けた後にポート#2へ戻る。ポート#2に入ったプレアンプされた1μmパルスは、CIR333のポート#3から出力される。この時点で、1μmパルスは伸張され、最終増幅器350で増幅される準備が整ったことになる。
【0024】
レーザーダイオード(LD1)396は、1032nmの最終増幅器350に最大850mWのポンプパワーを供給する個別のレーザーダイオードである。最初に、CIRポート#3からのシード(種、素)は、アイソレータ/WDMハイブリッドコンポーネント337にスプライス(接続、接合)される。この部品は、反射光と残留ポンプによる損傷から前方のステージを保護する。次に、Ybファイバー(Yb02)とWDM338とが順に接合され、1032nmのCPAステージ330を構築する。最終出力(第1の光源、第1のソース光)31は、~66psのFWHMパルス持続時間を有する12MHzの光パルスを提供する。スペクトルFWHM帯域幅は~14nmであり、コリメータに接続されたFC/APCコネクタからの直接の平均出力パワーは450mW~520mWの範囲にあることが好ましい。PD3とtap3には1%のTapが接続され、パワーとスペクトルのモニタリングがそれぞれ行われる。PD3は、1032nmCPAステージ330からの出力を一定にするための制御ループを形成するためのフィードバックを提供する。
【0025】
FLモジュール360は、1560nmのCPAステージである。
図3に示すように、このステージ360は、前置増幅(プレアンプリフィケーション)、パルス伸張(パルスストレッチ)、および最終増幅のプロセスを含む。構成の概要は1032nmCPAステージ330と同じであるが、波長領域が異なるため、構成要素が若干異なる。前置増幅器(プレアンプ)370のポンプソースは、分配器390から分割されたポンプの残り半分である。1560nmのシードは、OSC出力35の80%から分割された残り半分である。1032nmCPAステージ330の考え方は1560nmCPAステージ360にも適用されるが、1560nmCPAステージ360の1560nmCIR361ポート#1を用いて、1560nmで動作するCFBG363とWDM364とのコンポーネントを、シードをプリアンプとパルスストレッチプロセスに持ち込んでいる。レーザーダイオード(LD2)397は、1560nmの最終増幅器380に最大850mWのポンプパワーを供給する、もう1つの個別のレーザーダイオードである。CIR361のポート#3から、プレアンプされたシードが、Er-ファイバ(Er04)およびタップ/アイソレータ/WDMハイブリッドコンポーネント365に送られ、1560nmのCPAステージ360を完成させる。
【0026】
最終出力は、1560nmの出力32として12MHzの光パルスを提供する。FWHMパルス持続時間は~35psであり、FWHMスペクトル帯域幅は~7nmである。平均出力パワーは130mWから180mWの範囲である。PD4とtap4とは1%のTapが接続され、パワーとスペクトルとの両方のモニタリングが行われる。PD4はまた、1560nmCPAステージ360から一定の出力を得る制御ループを形成するためのフィードバックを提供する。
【0027】
図6および7は、コンプレッサー(1560nmパルスコンプレッサー)72を説明する図である。ファイバーレーザーモジュール30が提供するチャープパルス増幅方式の一部であり、コンプレッサー71および72は、それぞれのアーム21、22および23に供給する前に、第1のソース光31および第2のソース光32のパルスのストレッチ(伸張)をそれぞれ反転させるために光学プレート20に設けられたものである。一般に、コンプレッサーは、パルス持続時間(継続時間、デュレーション)を変化させている。それは、入力されたレーザーパルスの持続時間を達成可能な最短の持続時間に圧縮している。すなわち、超高速システムで使用されるチャープパルス増幅(CPA)方式では、短いレーザーパルスはまず伸張され、次に増幅され、最後に短いパルス持続時間に戻るように圧縮される。増幅率が高いほど、パルスの時間的な枠(エンベロープ)を歪ませる損傷や非線形効果を避けるために、パルスを大きく伸張する必要がある。伸張(ストレッチング)はファイバーで実現できるが、問題は圧縮である。従来のコンプレッサー(圧縮器)は、2つの平行なグレーティングからなり、グレーティングの間隔は圧縮係数に比例する。
【0028】
図6および
図7に示されるコンプレッサー72は、ファイバーレーザーモジュール30から供給される伸張された光源(ソース光、1560nmパルス)32を圧縮するものである。コンプレッサー72は、グレーチング(回折格子)710と、回折格子710の両側721および722において、光路700をそれぞれ折り返すために設けられた第1の光学素子711および第2の光学素子712とを含む。第2の光学素子712は、第1の光学素子711と直交する方向に光を折り返すように配置されている。コンプレッサー72は、第1の光学素子711の側721において、光路700を折り返すための第3の光学素子713をさらに含んでもよい。コンプレッサー72において、光路700を折り返すための代表的な光学素子はプリズムであり、したがって、第1の光学素子711は第1のプリズム731を含み、第2の光学素子712は、第1のプリズム731と直交する方向に光を折り返すように配置された第2のプリズム732を含んでもよい。第3の光学素子713は、第1のプリズム731と平行な方向に光を折り返すように配置された第3のプリズム733を含んでもよい。また、コンプレッサー72は、第3の光学素子713の位置を調整して、圧縮するための光路長を詳細に制御するための位置調整装置715を含んでもよい。
【0029】
コンプレッサー72において、ビーム、この場合、第2のソース光32は、コンプレッサー72に入り、そのスペクトル成分は、グレーティング710によって回折される。光路700は波長に依存するので、パルス持続時間が3桁伸びるようにスペクトル位相が変更される。圧縮率72は、グレーティングの分離の関数である。折り曲げられた設計のプリズム731、732および733は、同じグレーティング710上でスペクトルを再帰反射するために使用される。プリズム733はリニアステージ(位置調整装置)715上に配置され、グレーティングの平行度に影響を与えることなく有効なグレーティング分離能力を変更する便利な方法を提供する。
【0030】
この1560nmコンプレッサー72の場合、第1および第2の入射の間の距離は~200mmであるので、フットプリント(設置面積)をコンパクトにするために、第2のプリズム732は第2の折り返し用に追加される。回折格子710に2回目の入射後、ビーム702は、第1のプリズム731と直交する(垂直な)方向に光を折り返すように配置された第2のプリズム732に入るため、高さが変化したビーム702を再帰反射(逆に反射)させることができる。次に、ビーム702は、その経路を引き返す。4回目のグレーティング710への入射で、スペクトルは出力ビーム715に再結合され、プローブ光53を生成するために第3のアーム(光路)23の第2のソース光(光源)32として使用される。
【0031】
説明したように、フットプリント(設置面積、占有面積)を最小にするために、コンプレッサー72では、1つのグレーティングを用いた折り返し設計が用いられている。コンプレッサー72において、グレーティング710で回折されたビーム701は、第1のプリズム731と第3のプリズム733で折り返され、グレーティング710に再入射される。再びグレーティング710で回折されたビーム702は、さらに進み、第2のプリズム732で折り畳まれてグレーティング710に再入射する。コンプレッサー72は、光路700を2回折り返しており、1回の折り返し方式よりもはるかに小さなフットプリントを実現する。二重に折り畳まれたコンプレッサー72は、一重に折り畳まれた同等の構造よりも、2倍小さいフットプリントを占めている。なお、コンプレッサー71にも同様の構造を適用することができる。
【0032】
光学プレート20に含まれる第3の光路(第3のアーム)23には、プローブパルスの形状を制御するためのSHGとしてPPLN23sが採用されている。本システム1において、プローブ光53として供給されるプローブパルスには、相反する2つの要求がある。すなわち、システム1のスペクトル分解能を高めるためには狭帯域(ナローバンド幅)のプローブパルスが必要であり、共振CARS信号55を抑制するために時間遅延を用いる場合のシステム1の時間分解能を高めるためにはエッジの鋭い(シャープエッジを有する)プローブパルスが必要であるということである。単純な倍化用の結晶(ダブリングクリスタル)と比較して、PPLN(Periodically poled lithium niobate、周期的分極反転ニオブ酸リチウム)23sを用いることで、より高い変換効率と広い帯域幅を達成することが可能である。同時に、PPLNの周期構造を使用することにより、
図8および
図9に示すように、同じ帯域幅の等価ガウスパルスよりもはるかに急峻なプローブエッジを生成する建設的干渉(constructive interference)がもたらされる。
【0033】
以上において説明したように、TD-CARSのためのハイブリッド・ファイバー/フリースペース(自由空間)レーザー・アーキテクチャ(ファイバー/フリースペース複合型のレーザー構成)が開示されている。フェムト秒ファイバーレーザーシステムは、2つの主要な出力を有する。1つの出力は、6nm前後の帯域幅で1560nmを中心とする12MHzの光源(ソース光)を供給する。このスペクトル条件により、パルス幅を~580fsまで圧縮することができる。ピークパワーは最大~17kW、平均パワーは最大120mWに達することができる。もう1つの出力は、全く同じ繰り返し周波数で、波長が1030nmを中心として14nmの帯域幅のソース光である。圧縮後のパルス幅は~120fsである。最大平均出力は450mWで、ピークパワーは最大~230kWまで到達できる。出力コリメータでは、異なる出力アームからのこれら2種類のパルスは、50ps以内で時間的に同期できる。
【0034】
本明細書では、高性能CARSのためのフルファイバーソリューションが開示されている。このピコ秒ファイバーレーザーシステムは、時間的に重なった1μmおよび1.3μmパルスを含む1つの出力を有する。このシステムは、~0.3nmの狭い帯域幅で1μmの出力波長を提供するレーザー発振器が最初となる。これが基(素、源、シード)となり、増幅ステージのために2つのアームに分割される。一方のアーム(光路)では、増幅された1μmがスーパーコンティニウム発生用のフォトニック結晶ファイバーに直接接合され、1.3μmまでの波長域を提供する。1.3μmを中心とする100nmの帯域幅であれば平均出力は100mWまで可能である。1.3μmアームは、1μmアームと再び結合され、最終的に単一出力となる。最終的な出力は、1.3μmで100mW、1μmでワット(W)レベルの平均電力を含み得る。出力のパルス幅は20ps未満である。様々な設計により、2つのパルスは部分的に時間的に重なり合うことも、完全に時間的に重なり合うことも可能である。
【0035】
本明細書では、コンパクトな光コンプレッサーが開示されている。超高速システムで使用されるチャープパルス増幅(CPA)方式では、短いレーザーパルスはまず伸張され、次に増幅され、最後に短いパルス持続時間に戻るように圧縮される。増幅率が高いほど、パルスの時間的な枠(エンベロープ)を歪ませる損傷や非線形効果を避けるために、パルスの伸張を大きくする必要がある。伸張(ストレッチング)はファイバーで実現できるため、問題は圧縮となる。従来のコンプレッサーは2つの平行な回折格子からなり、回折格子の間隔は圧縮率に比例している。また、設置面積(フットプリント)を小さくするために、1枚のグレーティングを折り曲げて使用してもよい。我々は、さらにコンプレッサーを2つ折りにすることを提案し、1つ折りよりもはるかに小さなフットプリントを達成できる。2つ折り(ダブルフォルデド)コンプレッサーを示すアセンブリを示しており、1つ折りのコンプレッサーと同等の構造よりも半分に近い設置面積が実現できる。
【0036】
本明細書では、プローブパルスの形状制御が開示されている。このプローブパルスには、狭帯域(ナローバンド)で高いスペクトル分解能を実現することと、共振CARS信号を抑制するために遅延を用いたときに、パルスエッジをシャープにして時間分解能を実現するという、相反する要求がある。単純な2倍波結晶では変換効率が低く、帯域もPPLN(Periodically poled lithium niobate)より広くなってしまう。同時に、PPLNの周期構造を使用すると、同じ帯域幅の等価ガウスパルスよりもはるかに急峻なプローブエッジを生成する建設的干渉を発生させることができる。
【0037】
特定の実施形態の前述の説明は、本明細書の実施形態の一般的な性質を十分に明らかにするので、第三者は、現在の知識を適用することによって、一般的な概念から逸脱することなく、かかる特定の実施形態を容易に修正および/または様々な用途に適合させることができ、したがって、かかる適合および修正は、開示した実施形態の意味および同等物の範囲で理解されるべきであるし、理解することを意図するものである。本明細書で採用される言い回しまたは用語は、説明のためのものであり、限定するためのものではないことを理解されたい。したがって、本明細書では、好ましい実施形態について説明したが、当業者は、本明細書の実施形態が、添付の請求項の精神および範囲内で変更を加えて実施できることを認識するであろう。