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特許7515949気液分離器及びこれを用いた試料の回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】気液分離器及びこれを用いた試料の回収方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/02 20060101AFI20240708BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20240708BHJP
   B04C 5/081 20060101ALI20240708BHJP
   B01J 3/02 20060101ALI20240708BHJP
   B01D 15/40 20060101ALI20240708BHJP
   B01D 11/00 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
G01N30/02 N
B04C5/04
B04C5/081
B01J3/02 A
B01J3/02 101
B01D15/40
B01D11/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024503501
(86)(22)【出願日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2023031538
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2022141669
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232689
【氏名又は名称】日本分光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】寺田 明孝
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 篤志
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-120972(JP,A)
【文献】国際公開第2019/207871(WO,A1)
【文献】特開平08-047605(JP,A)
【文献】特開2005-195398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0015390(US,A1)
【文献】特開2018-149541(JP,A)
【文献】特開2017-219321(JP,A)
【文献】米国特許第03403497(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/00 -20/34
B01D 11/00 -12/00
B01D 15/00 -15/42
B04C 5/04
B04C 5/081
B01J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体クロマトグラフまたは超臨界流体抽出装置において流体から試料を回収する方法であって、
流体中の試料に含まれる目的成分のピークを検出するための検出器を設けて、
前記検出器の下流に設けられた背圧調整弁で流体の圧力を調整し、
前記検出器が前記目的成分のピークを検出したら、該目的成分が到達するタイミングで、前記背圧調整弁の下流にある廃棄・回収切替弁を回収側の流路に切り替えて、試料を含む流体を回収側の流路に設けられた気液分離器で気体と液体に分離し、分離した液体を回収し、
前記目的成分のピークに基づいて、該目的成分の通過が完了するタイミングで、前記背圧調整弁の下流にある廃棄・回収切替弁を廃棄側の流路に切り替えて、流体を廃棄し、
前記廃棄・回収切替弁を前記廃棄側の流路に切り替える前から切り替えた後にかけて、又は、前記廃棄側の流路に切り替えた後、前記気液分離器に前記流体とは別の溶媒を供給し、供給した前記溶媒を前記気液分離器の内部にある液体と一緒に回収し、
試料の目的成分ごとに異なる複数の回収容器を準備し、
前記気液分離器への前記溶媒の供給を止めた後、前記気液分離器を現在の回収容器にセットしたまま所定時間待機し、
前記所定時間の待機後、前記気液分離器と前記複数の回収容器との相対的な位置関係を変更して、前記気液分離器を次の回収容器にセットする、
ことを特徴とする試料の回収方法。
【請求項2】
請求項1記載の試料の回収方法において、前記気液分離器は、
外筒と内筒の二重筒構造を有し、
前記外筒の上端の内壁に、外部からの前記流体を内部に噴射するための噴射口があり、
前記外筒の下端に、前記流体から分離した液体を排出するための排出口があり、
前記内筒の下端は、前記外筒の内部において開口しており、
前記内筒の上端は、前記外筒の閉じた上端を貫通し、前記流体から分離した気体を排気するための排気口を有し、
前記外筒の上端の内壁には、前記流体の噴射口とは別に、外部からの溶媒を内部に吐出するための吐出口が設けられ、
少なくとも前記流体の噴射口は、噴射された流体が前記外筒と前記内筒の間を前記外筒の内壁に沿って旋回するように、配置されている、ことを特徴とする試料の回収方法。
【請求項3】
請求項記載の試料の回収方法であって、さらに、前記気液分離器は、前記吐出口から吐出するための溶媒を供給する供給装置を備える、ことを特徴とする試料の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2022年9月6日付け出願の日本国特許出願2022-141669号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、超臨界流体クロマトグラフまたは超臨界流体抽出装置における流体を気体と液体に分離するために用いる気液分離器、及び、これを用いた試料の回収方法の改良に関する。
【背景技術】
【0003】
超臨界流体クロマトグラフ(SFC)または超臨界流体抽出装置(SFE)において移動相として用いる10MPa以上の超臨界状態と液体状態の混合状態である二酸化炭素(超臨界CO)は、背圧調整弁を通過した後、配管出口で大気圧に減圧され気化する。気化によってCOの体積は約500倍に膨張するため、移動相に含まれているモディファイア(主にMeOHなどの有機溶媒)は非常に強い勢いでスプレー状に飛散してしまう。
【0004】
そのため、移動相に溶解している試料・抽出物などの目的成分を効率よく回収するには、モディファイアが飛散しないように所定の内部空間で流体(背圧調整弁通過後の移動相)を大気圧に減圧し、これを気体(CO)と液体(モディファイア)に分離し、それぞれ別々の排出口から取り出すための気液分離器が必要になる。特許文献1には、従来の気液分離器の一例である捕集物採取用ノズルが開示されている。
【0005】
特許文献1の図3の捕集物採取用ノズルでは、特に、ノズル本体の内部にフィルタ部(グラスウール等)を設けて、このフィルタ部に流体供給配管の先端を略密着させる。流体(背圧調整弁通過後の移動相)は、配管の先端からフィルタ部に噴霧され、液体と気体に分離する。液体はフィルタ部を介して下方の排出口から滴下し、回収容器に入る。気体は上方の排気口からノズル本体の外部に放出されるようになっている。
【0006】
また、特許文献1の図4(a)には、上記の捕集物採取用ノズルを使ったフラクションコレクタの構成が開示されている。フラクションコレクタは、目的成分ごと、つまり、フラクションのピークごとに回収容器を変更するため、装置側の配管の先端に装着された捕集物採取用ノズルを移動させる移動装置を有している。
【0007】
通常、背圧調整弁と捕集物採取用ノズルの間の流路には、流体の流路を「回収側」と「廃棄側」の間で切替可能な切替弁が設けられている。例えば、装置に設けられた検出器が流体中の目的成分(1つ目のフラクションのピーク)を検出すると、切替弁は、その流体の部分が到達するタイミングで、「廃棄側」から「回収側」に切り替わり、その流体の部分が捕集物採取用ノズルに送られる。これによって、目的成分を含んでいる液体が回収容器に入る。また、切替弁は、1つ目のフラクションのピークを示した流体が通り過ぎたタイミングで、「回収側」から「廃棄側」に切り替わり、目的成分を含まない流体を廃棄する。切替弁が「廃棄側」である間に、捕集物採取用ノズルを次の回収容器の上部に移動し、2つ目のフラクションのピークの検出を待つ。このようにして、目的成分(フラクションのピーク)毎に別々の回収容器へ回収されるようになる。特許文献1の図4(a)のフラクションコレクタでは、捕集物採取用ノズルが1つでよいというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-136838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1の捕集物採取用ノズルを用いて、試料の高い回収率を達成するには、流体中の目的成分が略全て液体に溶け込んでいる状態で、その液体が回収されなければならない。従って、捕集物採取用ノズルにおいて分離される液体の流量は多い方が好ましい。流体から分離した液体とは、超臨界流体に混合されていたモディファイア(有機溶媒等)である。
しかしながら、移動相におけるモディファイアの比率を変化させる、いわゆるグラジエント測定では、モディファイアの流量が少なくなる場合(貧有機溶媒条件)がある。また、移動相自体の流量を少なくする場合(低流量条件)もある。これらの条件では、モディファイア、つまり、液体部分の流量が少なくなるので、気液分離の際に、分離した液体に試料が十分に溶けず、試料の一部が捕集物採取用ノズルの内部に残留したり、分離した気体とともに排気されたりする。その結果、高い回収率での試料の回収が困難になる。
【0010】
本発明の目的は、移動相の条件に左右されることなく、背圧調整弁通過後の移動相である流体から試料(抽出物を含む)を高い回収率で回収できる気液分離器、及び、試料の回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の気液分離器は、
流体を気体と液体に分離するための気液分離器であって、
外筒と内筒の二重筒構造を有し、
前記外筒の上端の内壁に、外部からの前記流体を内部に噴射するための噴射口があり、
前記外筒の下端に、前記流体から分離した液体を排出するための排出口があり、
前記内筒の下端は、前記外筒の内部において開口しており、
前記内筒の上端は、前記外筒の閉じた上端を貫通し、前記流体から分離した気体を排気するための排気口を有し、
前記外筒の上端の内壁には、前記流体の噴射口とは別に、外部からの溶媒を内部に吐出するための吐出口が設けられ、
少なくとも前記流体の噴射口は、噴射された流体が前記外筒と前記内筒の間を前記外筒の内壁に沿って旋回するように、配置されていることを特徴とする。
【0012】
ここで、気液分離器に送られる流体は、噴射口から外筒と内筒の間に噴射され、旋回しながら下降することによって気体と液体に分離する。分離した気体は、内筒の下端の開口から内筒の内部に入り、上端の排気口から排気される。分離した液体は、主に外筒の内壁を伝って下降し、下端の排出口から排出される。このように流体から液体を穏やかに分離することができ、分離した液体に溶けている試料が回収される。
【0013】
本発明の構成によれば、気液分離器には、後述する溶媒を気液分離器の内部に供給するための流路が、流体の供給流路とは別に設けられており、吐出口から外筒と内筒の間に吐出した溶媒は、流体から分離した液体とともに主に外筒の内壁を伝って下降するようになる。
<回収補助>
移動相の条件が、例えば「貧有機溶媒条件(低モディファイア条件)」や「低流量条件」である場合、「貧有機溶媒条件」では、モディファイアに対する試料の比率が高くなるので、全ての試料が液体(モディファイア)に溶け込んでいるかというとそうではない。「低流量条件」では、気液分離器への時間当たりの流体の供給量が少なくなるので、液体(モディファイア)に溶け込めない試料が発生しやすくなる。
本発明の気液分離器を用いれば、流体と、流体とは別の溶媒とを同時に気液分離器に供給することができるので、上記の移動相の条件のように、流体から分離した液体に溶け込んでいない試料があったとしても、流体とは別に供給された溶媒がそのような試料を捉らえて(溶解して)一緒に排出されるようになる。従って、流体とは別の溶媒が試料回収を補助し、移動相の条件に左右されることなく試料を高い回収率で回収することができる。
<洗浄>
また、例えば、上記のグラジエント測定では、移動相の条件が徐々に変化し、それぞれのフラクションのピークにおける流体中の液体部分(有機溶媒)の流量も様々になる。これに対して、本発明の気液分離器を用いれば、流体の供給を停止した後も、流体とは別の溶媒を気液分離器に供給し続ける(又は、流体の供給を停止した後に、流体とは別の溶媒を気液分離器に供給する)ことができるので、移動相の条件に左右されずに十分な量の溶媒による内部洗浄が可能になる。これによって、気液分離器の内部の試料は、洗浄に使われた溶媒とともに回収される可能性が高くなり、高い回収率を維持しつつ、回収容器間のコンタミネーションを抑止することができる。
【0014】
本発明の気液分離器は、さらに、前記吐出口から吐出するための溶媒を供給する供給装置を備えることが好ましい。
【0015】
ここで、溶媒の供給装置は、移動相の条件に関わらず、水、酸・塩等が溶解した水溶液、任意の有機溶媒などを溶媒として供給してもよい。また、溶媒の供給装置は、流体の流量に応じて、溶媒の供給量を調整してもよい。
【0016】
本発明の試料の供給方法は、超臨界流体クロマトグラフまたは超臨界流体抽出装置において流体から試料を回収する方法であって、
流体中の試料に含まれる目的成分のピークを検出するための検出器を設けて、
前記検出器の下流に設けられた背圧調整弁で流体の圧力を調整し、
前記検出器が前記目的成分のピークを検出したら、該目的成分が到達するタイミングで、前記背圧調整弁の下流にある廃棄・回収切替弁を回収側の流路に切り替えて、試料を含む流体を回収側の流路に設けられた気液分離器で気体と液体に分離し、分離した液体を回収し、
前記目的成分のピークに基づいて、該目的成分の通過が完了するタイミングで、前記背圧調整弁の下流にある廃棄・回収切替弁を廃棄側の流路に切り替えて、流体を廃棄し、
前記廃棄・回収切替弁を前記廃棄側の流路に切り替える前から切り替えた後にかけて、又は、前記廃棄側の流路に切り替えた後、前記気液分離器に前記流体とは別の溶媒を供給し、供給した前記溶媒を前記気液分離器の内部にある液体と一緒に回収することを特徴とする。
【0017】
本発明の試料の回収方法を実行すれば、上記の気液分離器の効果と同様に、回収モード(廃棄・回収切替弁が「回収側の流路」である場合)において、流体と、流体とは別の溶媒とを同時に気液分離器に供給することで、気液分離器の内部に液体に溶け込んでいない試料があったとしても、流体とは別に供給された溶媒がそのような試料を捉らえて(溶解して)一緒に排出されるようになり、移動相の条件に左右されることなく試料を高い回収率で回収することができる。
また、廃棄モード(廃棄・回収切替弁が「廃棄側の流路」である場合)において、流体の供給を停止した後も、流体とは別の溶媒を気液分離器に供給し続ける(又は、流体の供給を停止した後に、流体とは別の溶媒を気液分離器に供給する)ことで、移動相の条件に左右されずに十分な量のメイクアップ溶媒による内部洗浄が可能になり、各回収容器における目的外成分のコンタミネーションを抑止することができ、高い回収率を実現できる。
【0018】
本発明の試料の供給方法は、
試料の目的成分ごとに異なる複数の回収容器を準備し、
前記気液分離器への前記溶媒の供給を止めた後、前記気液分離器を現在の回収容器にセットしたまま所定時間待機し、
前記所定時間の待機後、前記気液分離器と前記複数の回収容器との相対的な位置関係を変更して、前記気液分離器を次の回収容器にセットする、ことが好ましい。
【0019】
気液分離器の内部で気液分離を行うため、廃棄・回収切替弁が「廃棄側の流路」に切り替わった後も、気液分離器の内部空間には流体から分離した液体があり、また、供給した溶媒がある。分離した液体や供給した溶媒が気液分離器から排出されるまで、ある程度の待ち時間(滴下待機時間)が必要になる。そこで、本発明の試料の回収方法では、気液分離器への溶媒の供給を止めた後の所定時間を「滴下待機時間」として、気液分離器を現在の回収容器にセットしたまま待機するようにした。この待機中は、気液分離器の内部の試料(現在の目的成分)が、分離した液体や供給した溶媒とともに現在の回収容器に回収されることになる。これによって、少しでも多くの目的成分を同一の回収容器に回収することができ、回収率の更なる向上と、コンタミネーション抑制の効果が増す。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明の気液分離器及び試料の回収方法によれば、幅広い流量条件や様々な組成条件などの移動相の条件に左右されることなく、試料(抽出物を含む)を高い回収率で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第一実施形態の気液分離器の概略構成と原理を示す図である。
図2A】前記気液分離器の2つの流入路の位置関係を或るパターンで示す横断面図である。
図2B】前記気液分離器の2つの流入路の位置関係を別のパターンで示す横断面図である。
図3A】前記気液分離器の2つの流入路の傾斜角度を或るパターンで示す図である。
図3B】前記気液分離器の2つの流入路の傾斜角度を別のパターンで示す図である。
図4】前記気液分離器の整流チップの立体的形状を示す図である。
図5】前記気液分離器の結露防止構造を示す図である。
図6】前記気液分離器を用いた超臨界流体クロマトグラフの背圧調整弁以降の構成を示した概略構成図である。
図7】前記気液分離器を用いた試料回収のフロー図である。
図8】前記気液分離器を用いた試料回収のフロー図(滴下待機時間あり)である。
図9】実施例1のフラクションのピーク群および試料回収動作の説明図である。
図10】実施例2のフラクションのピーク群および試料回収動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第一実施形態にかかる気液分離器は、超臨界流体クロマトグラフや超臨界流体抽出装置の背圧調整弁の下流の配管に接続され、該配管から供給される混合流体(液化COとモディファイア)を気体(CO)と液体(モディファイア)に分離し、その液体を回収するために用いられる。
【0023】
なお、気液分離器に供給される混合流体は、背圧調整弁通過後の移動相であり、これに含まれるCOは、超臨界流体の状態、液化COの状態、又は、液化COの一部が気化している気液混合流体の状態であり、若しくは、これらが混合した状態になっている。本実施形態では説明の簡略化のため、背圧調整弁通過後の移動相には、液化COが含まれているものとする。
【0024】
図面を参照しつつ、本実施形態の気液分離器の構造を説明する。
図1は、気液分離器10の概略構成図である。気液分離器10は、外筒12と内筒14の二重筒構造を有する。外筒12の上端は、接続ブロック16で閉じられ、接続ブロック16の内部には、外筒12の内部空間と連続する円柱状の内部空間が形成されている。
接続ブロック16の外周面には、混合流体の供給配管を接続するための流入口18Aと、メイクアップ溶媒の供給配管を接続するための流入口20Aとが形成されている。
本書においてメイクアップ溶媒とは、気液分離器10の外筒12と内筒14の間に、混合流体とは別に供給される液状の溶媒を指し、例えば水、酸・塩等が溶解した水溶液、任意の有機溶媒などから選択される。
また、接続ブロック16には、図2(A)(図1上の矢印2A-2Aの断面図)に示すように、流入口18Aからの混合流体が流れる流入路18Bと、もう1つの流入口20Aからのメイクアップ溶媒が流れる流入路20Bとが形成されている。
また、接続ブロック16の内壁(外筒12の内壁と連続している。)には、混合流体を内部に噴射するための噴射口18Cと、メイクアップ溶媒を内部に吐出するための吐出口20Cとが形成されている。
【0025】
外筒12の下端の内部空間は、下に行くほど逆円錐状に狭くなっていて、外筒12の下端には、混合流体から分離したモディファイアを排出するための排出口12Aが形成されている。排出口12Aには、整流チップ22が取り付けられ、整流チップ22の上方の内部空間には、整流フィルタ24が取り付けられている。整流フィルタ24は、分離したモディファイアの流れの勢いを弱めて(整流して)、整流チップ22にモディファイアを導く。整流チップ22は、整流フィルタ24を通過して勢いが穏やかになったモディファイアを表面張力によって伝わらせて、流れを整えて、その下方へ突出した中心部から回収容器に滴下させる。
【0026】
内筒14の下端は、外筒12の内部において開口している。内筒の下端の開口14Aは、整流フィルタよりも上方に位置していればよく、本実施形態での開口14Aは、外筒12の内部空間の中間ぐらいの高さ位置である。内筒14の上端は、外筒12の上部の接続ブロック16を貫通し、流体から分離した気体を排気するための排気口14Bを有している。よって、外筒12と内筒14の間の内部空間の圧力は、空の状態では大気圧になる。
【0027】
図2(A)の横断面図に示すように、外筒12および接続ブロック16の肉厚は、内筒14と比べて非常に厚い。接続ブロック16には、混合流体の流入路18Bと、メイクアップ溶媒の流入路20Bとが、この横断面上に形成されている。それぞれの流入路18B,20Bの中心線は、外筒12と内筒14で挟まれた環状の内部空間の接線と一致する。また、二重筒構造の中心周りに、メイクアップ溶媒の流入路20Bを時計回りに90度回転させた場合に、メイクアップ溶媒の流入路20Bが混合流体の流入路18Bに一致する。つまり、吐出口20Cからのメイクアップ溶媒の吐出方向の先に、混合流体の噴射口18Cが位置している。
【0028】
また、図2(B)の横断面図に示すように、二重筒構造の中心周りに、メイクアップ溶媒の流入路20Bを180度回転させた場合に、メイクアップ溶媒の流入路20Bが混合流体の流入路18Bに一致するように、2つの流入路18B,20Bを配置してもよい。
図2(A)、(B)に示す流入路18B,20Bの位置関係は一例であり、両者が重なり合わなければ、上述の90°や180°の回転角度の位置関係に限らず、両者を任意の位置関係に配置してもよい。
【0029】
以上が本実施形態の気液分離器10の概略構成であり、以下にその作用を説明する。
混合流体は、配管を流れて噴射口18Cに達すると、液化COが大気圧に減圧され気化し、体積が膨張する。このため、混合流体は、噴射口18Cからスプレー状に噴射し、外筒12と内筒14の間の環状の内部空間を図中の矢印に示すような旋回する流れを形成する。このような旋回流によって、混合流体は、環状の内部空間において外筒14の内壁に衝突し、モディファイア成分が内壁に付着していくことで、混合流体がCOとモディファイアに分離する。分離したCOはそのまま旋回しながら下降し、内筒14の下端の開口14Aから内筒の内部を上昇し、内筒14の上端の排気口14Bから排気される。
分離したモディファイアは主に外筒12の内壁を伝って下降していくことになる。
メイクアップ溶媒の場合は、混合流体ほどの勢いは出ないが、供給ポンプの吐出圧に応じて、環状の内部空間を同様に旋回する流れを形成する。そして、メイクアップ溶媒は、環状の内部空間において外筒12の内壁に衝突することで内壁に付着していき、主に外筒12の内壁を伝って下降していくことになる。
モディファイアもメイクアップ溶媒も外筒12の内壁を伝って下降していくことにより、これらの液体の飛散が抑制され、穏やかな液体の分離を実現することができる。
下降したモディファイアおよびメイクアップ溶媒は、整流フィルタ24および整流チップ22を介して排出口12Aから回収容器等に滴下するので、モディファイアおよびメイクアップ溶媒に溶解している試料が回収容器に回収される。
なお、混合流体とメイクアップ溶媒を同時に供給する場合、図1では、図示の都合で、噴射後の混合流体による旋回流と、吐出後のメイクアップ溶媒による旋回流とが独立した流れになるかのように見えるが、実際には、混合流体もメイクアップ溶媒も、噴射口18Cまたは吐出口20Cからスプレー状(円錐形状)に広がって、外筒12の内壁に衝突しつつ、内壁に沿った流れを形成するので、両者が混ざり合った状態の旋回流が形成される。そして、混合流体から分離したモディファイアが内壁に付着していき、また、メイクアップ溶媒も内壁に付着していくことで、モディファイアとメイクアップ溶媒が合わさった状態で内壁を伝って下降する。一方、分離したCOはそのまま旋回しながら下降して、内筒14を通って排気される。
【0030】
このように本実施形態の気液分離器10を用いれば、
(1)混合流体とメイクアップ溶媒を同時に気液分離器10に供給することができるので、移動相の条件が例えば「貧モディファイア条件」や「低流量条件」である場合に、分離したモディファイアに溶け込んでいない試料があるとしても、メイクアップ溶媒がそのような試料を捉らえて(溶解して)一緒に排出されるようになる。従って、移動相の条件に左右されることなく試料を高い回収率で回収することができる。
【0031】
(2)例えばグラジエント測定では、移動相の条件が徐々に変化し、それぞれのフラクションのピークにおける混合流体中のモディファイアの流量も様々になるが、気液分離器10への混合流体の供給を停止した後も、メイクアップ溶媒を供給し続ける(又は、流体の供給を停止した後に、メイクアップ溶媒を供給する)ことができるので、移動相の条件に左右されずに十分な量のメイクアップ溶媒による気液分離器10の内部洗浄が可能になる。気液分離器10の内部の試料は、洗浄に使われたメイクアップ溶媒とともに回収される可能性が高くなる。従って、目的成分数に合わせて、複数の回収容器へそれぞれの目的成分を回収する場合において、目的成分外(他の回収容器への回収を予定している目的成分)のコンタミネーションを抑止することができ、高い回収率を実現できる。
なお、メイクアップ溶媒の流量を調整することで、一定量の有機溶媒での洗浄も実現できる。
【0032】
(3)例えば水、酸・塩等が溶解した水溶液、シクロヘキサンなど、超臨界COの断熱膨張によって凍結しやすい溶媒であってもメイクアップ溶媒として使用することができるので、メイクアップ溶媒の選択の幅が広がる。
例えば、(i)背圧調整弁の上流において、「水」をメイクアップ溶媒として流路に流入させる場合、背圧調整弁の出口での超臨界COの断熱膨張による冷却作用によって、水が凍結し、流路を閉塞させるリスクがある。(ii)背圧調整弁から気液分離器までの間で流路に水を流入させる場合も、同様に、流路を閉塞させるリスクがある。これに対して、本実施形態のように気液分離器10に直接メイクアップ溶媒を供給する構成であれば、融点が0℃~10℃付近の溶媒をメイクアップ溶媒として採用しても、溶媒の凍結による流路閉塞のリスクを回避することができる。
【0033】
なお、凍結しにくい溶媒(例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル等)であれば、これを第1のメイクアップ溶媒として例えば背圧調整弁の上流から供給しつつ、本実施形態の気液分離器においても、凍結しにくい溶媒を第2のメイクアップ溶媒として直接供給する、というような「併用」も可能になる。もちろん、気液分離器へ直接供給する第2のメイクアップ溶媒として凍結しやすい溶媒を採用してもよい。
【0034】
(4)多様な大きさ、形状の回収容器を使用することができる。
【0035】
図3(A)、(B)は、外筒12の上部の接続ブロック16を異なる向きから見た外観図であり、接続ブロック16に形成される流入口18A,20Aの傾斜角度を説明している。図中の破線は水平面を示す。
図3(A)は、大流量に適した流入口18A,20Aの傾斜角度を示し、水平面と平行(0°)な流入口20Aにメイクアップ溶媒の配管を接続し、水平面と10°を成す傾斜角度で内部に向かって斜め下方向に形成した流入口18Aに混合流体の配管を接続する。
図3(B)は、小流量に適した流入口18A,20Aの傾斜角度を示し、水平面と10°を成す傾斜角度で内部に向かって斜め下方向に形成した流入口20Aにメイクアップ溶媒の配管を接続し、水平面と15°を成す傾斜角度で内部に向かって斜め下方向に形成した流入口18Aに混合流体の配管を接続する。
水平方向(0°)の場合は、噴射または吐出する勢いが旋回流に費やされるため、旋回時間が長くなって分離性能が向上するが、落下は自重任せになるので排出時間が長くなる。そのため、図3(A)のように大流量時は、分離しなければならない混合流体の量が多く、できるだけ旋回時間を稼ぐ必要があるため、水平方向または傾斜角度を小さくするとよい。
これに対して、斜め下方向への傾斜角度を設ければ、噴射または吐出する勢いを旋回流と落下に分散させることができる。そこで、小流量時は旋回時間を稼ぐ必要がないため、図3(B)のように斜め下方向への傾斜角度を大きくして、噴射または吐出する勢いの一部を落下に費やし、分離した液体の排出時間を短くするとよい。
なお、1つの気液分離器に傾斜角度の異なる3つの流入路(0°、10°、15°)又は4以上の流入路(異なる傾斜角度を適宜設定する。)を形成し、大流量時は図3(A)のように接続し、小流量時は図3(B)のように接続を変更するようにしてもよい。使用しない流入口は栓をして閉鎖しておく。
【0036】
図2(A)、図2(B)、図3(A)、図3(B)には2つの流入口18A,20Aの高さ方向のレベルが略同じである場合を示すが、混合流体の流入口18Aよりも、メイクアップ溶媒の流入口20Aを高い位置にすることで、メイクアップ溶媒の洗浄性能を高めることができる。
【0037】
いずれにしても、少なくとも噴射された混合流体が外筒12と内筒14の間を外筒12の内壁に沿って旋回するように、混合流体の流入口18Aの向きを定めていればよく、メイクアップ溶媒の流入口20Aの向きの定め方はここに記載したものに限定されない。
【0038】
図4に、整流チップ22の具体的な立体的形状の一例を示す。
図5に、気液分離器10の結露防止構造を示す。液化COの気化に伴う断熱膨張によって気液分離器10の内部が冷却される。CO比率や、室内の湿度、回収時間によっては、外筒12の外周面に結露が生じる場合がある。結露により生じた水分が外筒を伝って下降し、回収容器中に混入してしまうことを防ぐため、結露防止構造を設けることが好適である。そこで、外筒12の本体を例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製で形成し、この外周に上下2箇所のパッキン28を介して、一回り大きな外径を有する円筒カバー26(例えば透明なアクリル樹脂製)を取り付けて、外筒自体を結露防止の二重管構造にするとよい。
【0039】
次に、図6を用いて、本実施形態の気液分離器10を利用した試料の回収方法を具体的に説明する。図6は、超臨界流体クロマトグラフ30の背圧調整弁32以降の機器構成を示す。
超臨界流体クロマトグラフ30は、超臨界COを移動相として用いて、移動相には、試料の溶解性を高めるためにモディファイア(主にはMeOH)が混合されている。オートサンプラなどで試料を注入された移動相は、カラムオーブン内に設置されたカラムを通って、試料が目的成分ごとに時間的に分離する。カラムの下流に設けられる例えばUV検出器は、時間的に分離された目的成分に応じたフラクションのピークを検出する。
移動相の流路の圧力は、背圧調整弁32によって10MPa程度以上に一定に保たれる。背圧調整弁32通過後の移動相は、液化COとモディファイアの混合流体であり、この混合流体が、ヒーター34を通過して、廃棄・回収切替弁36に送られる。廃棄・回収切替弁36は、混合流体の流路を「廃棄側」および「回収側」の間で切り替える。廃液側に切り替わると、混合流体は廃棄される。回収側に切り替わると、混合流体は気液分離器10に供給され、気液分離器10の内部空間で大気圧に減圧し、COとモディファイアに分離する。気液分離器10へは、供給装置のポンプ38からメイクアップ溶媒が供給される。気液分離器10で混合流体から分離したモディファイアと、気液分離器10に供給されたメイクアップ溶媒とは、排出口12Aから滴下して回収容器40に入る。
【0040】
図7に示すように、例えばUV検出器によって検出したフラクションのピークのタイミングを基準に、廃棄・回収切替弁36が流路を「回収側」に切り換えることで、目的成分を含む混合流体が気液分離器10に供給され、目的成分がモディファイアおよびメイクアップ溶媒とともに回収容器40に回収される。
【0041】
図7は、廃棄・回収切替弁36とメイクアップ溶媒のポンプ38が、フラクションのピークに応じて動作する際のフロー図を示す。図7において横軸は時間を示す。廃棄・回収切替弁36は、フラクションのピークを示す混合流体が到着するタイミングに合わせて、流路を「廃棄側」から「回収側」に切り替えて、フラクションのピークを示す混合流体の通過が完了するタイミングで、流路を「回収側」から「廃棄側」に戻す。これによって、図7の混合流体のうちの斜め線でハッチを付した範囲が気液分離の対象となる。
メイクアップ溶媒のポンプ38は、気液分離器10への混合流体の供給が停止するタイミングで「オン」し、メイクアップ溶媒の気液分離器10への供給を開始する。ここで、気液分離器10への混合流体の供給停止後の所定時間が「洗浄時間」として設定されており、この洗浄時間が経過したら、メイクアップ溶媒のポンプ38は「オフ」となって、メイクアップ溶媒の供給を停止する。これによって、図7のメイクアップ溶媒(斜め線でハッチを付した範囲)が気液分離器10に供給される。
なお、メイクアップ溶媒のポンプ38は、廃棄・回収切替弁36が流路を「廃棄側」から「回収側」に切り替えるタイミングで「オン」し、メイクアップ溶媒の気液分離器10への供給を開始してもよいし、「回収側」の流路を選択中の任意のタイミングで「オン」してメイクアップ溶媒の供給を開始してもよい。そして上記と同様に「洗浄時間」が経過したら、メイクアップ溶媒の供給を停止してもよい。
【0042】
図7の動作によって、「A」の範囲のメイクアップ溶媒が気液分離器に供給されることによる効果は以下の通りである。廃棄・回収切替弁36が「廃棄側」の流路である場合に、混合流体の供給が停止した後、メイクアップ溶媒を気液分離器10に供給することで、移動相の条件に左右されずに十分な量のメイクアップ溶媒による内部洗浄が可能になり、各回収容器における目的成分のコンタミネーションを抑止することができ、高い回収率を実現できる。
【0043】
また、図7の動作によって、「B」の範囲のメイクアップ溶媒も気液分離器に供給されることによる効果は以下の通りである。廃棄・回収切替弁36が「回収側」の流路である段階から、混合流体とメイクアップ溶媒を同時に気液分離器10に供給することで、気液分離器10の内部にモディファイアに溶け込んでいない試料があったとしても、メイクアップ溶媒がそのような試料を捉らえて(溶解して)一緒に排出されるようになり、移動相の条件に左右されることなく試料を高い回収率で回収することができる。
【0044】
次に、図8に、滴下待機時間を含む動作フローを示す。
図8では、廃棄・回収切替弁36が流路を「回収側」から「廃棄側」に戻し、さらに、メイクアップ溶媒のポンプ38が気液分離器へのメイクアップ溶媒の供給を停止した後、所定の滴下待機時間だけ、気液分離器10を現在の回収容器40Aの位置で待機する。
そして、滴下待機時間が経過したら、気液分離器10の移動装置を使って、気液分離器10を次の回収容器40Bの位置まで移動させる。
【0045】
「廃棄側」の流路に切り替わった後も、気液分離器10の内部空間には混合流体から分離したモディファイアがあり、また、供給したメイクアップ溶媒もある。分離したモディファイアやメイクアップ溶媒が気液分離器10から排出されるまで、ある程度の待ち時間(滴下待機時間)が必要になる。そこで、図8の動作フローのように、気液分離器10へのメイクアップ溶媒の供給を止めた後の所定時間を「滴下待機時間」として、気液分離器10を現在の回収容器40Aにセットしたまま待機させる。この待機中に、気液分離器10の内部の試料(現在の目的成分)が、分離したモディファイアやメイクアップ溶媒とともに現在の回収容器40Aに回収される。これによって、少しでも多くの試料を同一の回収容器40Aに回収することができ、回収率の更なる向上と、各回収容器における目的外成分のコンタミネーションを抑制するという効果が増す。
【0046】
洗浄中は、移動相中のモディファイアが気液分離器10に供給されないので、洗浄中に移動相中のモディファイアが気液分離器10に供給される場合よりも、上記の滴下待機時間が短縮される。
【0047】
<実施例>
超臨界流体液体クロマトグラフに本実施形態の気液分離器を接続して試料の回収を実行し、試料の回収率を測定した。ここでは、それぞれのフラクションピークの回収後にメイクアップ溶媒の供給を開始し、フラクションピークごとに異なる回収容器に回収した。
【0048】
実施例1の条件
カラム:逆相カラム(C18)
移動相(CO/メタノール):95/5
移動相流量:120mL/min
移動相圧力:10MPa
試料: カフェイン 1000ppm
アントラセン 500ppm
フルオレン 500ppm
試料注入量:1000μL
検出波長: 200-650nm
メイクアップ溶媒: メタノール
メイクアップ溶媒流量:10mL/min
【0049】
実施例2の条件
カラム:逆相カラム(C18)
移動相(CO/メタノール):95/5
移動相流量:20mL/min
移動相圧力:10MPa
試料: カフェイン 1000ppm
アントラセン 500ppm
フルオレン 500ppm
試料注入量:100μL
検出波長: 200-400nm、215nm
メイクアップ溶媒: メタノール
メイクアップ溶媒流量:4mL/min
【0050】
図9図10にそれぞれの実施例のフラクションのピーク群と試料回収動作タイミングを示す。回収率(%)は以下の表1のようになった。
【0051】
(表1)
―――――――――――――――――――――――
回収率(%) 実施例1 実施例2
―――――――――――――――――――――――
カフェイン 98.1 99.7
アントラセン 94.8 96.2
フルオレン 93.6 (100)
―――――――――――――――――――――――
【0052】
実施例1、2の結果より、移動相の流量が20~120mL/minの範囲で、また、試料注入量が100~1000μLの範囲で、目的成分を高い回収率で回収できることが分かった。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態における構成、配置、数値等は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
10 気液分離器
12 外筒
12A 排出口
14 内筒
14A 開口
14B 排気口
18C 噴射口
20C 吐出口
30 超臨界流体クロマトグラフ(背圧調整弁以降の構成)
32 背圧調整弁
36 廃棄・回収切替弁
38 メイクアップ溶媒のポンプ(溶媒の供給装置)
40 回収容器
【要約】
本発明は、超臨界流体装置の流体を液体と気体に分離し、分離した液体を速やかに排出するための気液分離器の技術分野に属し、気液分離器(10)は、外筒(12)と内筒(14)の二重筒構造を有する。外筒(12)の上端の内壁に、外部からの流体を内部に噴射する噴射口がある。外筒(12)の下端に、流体から分離した液体を排出する排出口(12A)がある。内筒(14)の下端は、外筒(12)の内部において開口している。内筒(14)の上端は、外筒(12)の閉じた上端を貫通し、流体から分離した気体を排気する排気口(14B)を有する。外筒(12)の上端の内壁には、流体の噴射口とは別に、外部からの溶媒を内部に吐出するための吐出口がある。噴射口および吐出口は、噴射された流体の気体部分が外筒と内筒の間の内部空間を旋回しながら降下し、噴射された流体の液体部分および吐出された溶媒が主に外筒(12)の内壁を伝って下降するように、配置されている。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10