(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】ナノ結晶質グラフェンキャップ層を含むインターコネクト構造体、及びそのインターコネクト構造体を含む電子素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3205 20060101AFI20240708BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240708BHJP
H01L 23/532 20060101ALI20240708BHJP
C01B 32/186 20170101ALI20240708BHJP
【FI】
H01L21/88 M
C01B32/186
(21)【出願番号】P 2019135421
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0086013
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】木内 敬二
(72)【発明者】
【氏名】卞 卿▲ウン▼
(72)【発明者】
【氏名】申 建旭
(72)【発明者】
【氏名】金 勇勳
(72)【発明者】
【氏名】申 鉉振
(72)【発明者】
【氏名】宋 俔在
(72)【発明者】
【氏名】李 昌錫
(72)【発明者】
【氏名】金 昌▲衒▼
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲連▼柱
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0139114(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0240482(US,A1)
【文献】特開2018-092155(JP,A)
【文献】特表2015-519749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0145332(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
C01B 32/186
H01L 21/768
H01L 23/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのトレンチが形成された誘電体層と、
前記トレンチの内部を充填するように設けられる導電性配線と、
前記導電性配線の少なくとも一面に設けられるものであり、ナノレベルサイズの結晶を含むナノ結晶質グラフェンを含むキャップ層と、
前記トレンチの内部において、前記導電性配線を覆うように設けられるバリア層と、
を含み、
前記導電性配線と前記キャップ層との間には、金属含有層が設けられており、
前記バリア層は、前記誘電体層及び前記導電性配線と直接接触している、インターコネクト構造体。
【請求項2】
前記ナノ結晶質グラフェンは、0.5nm~100nmサイズの結晶を含むことを特徴とする請求項1に記載のインターコネクト構造体。
【請求項3】
前記ナノ結晶質グラフェンにおいて、全体炭素に対するsp
2結合構造を有する炭素の比率が50%~99%であることを特徴とする請求項1または2に記載のインターコネクト構造体。
【請求項4】
前記ナノ結晶質グラフェンは、1at%~20at%の水素を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインターコネクト構造体。
【請求項5】
前記ナノ結晶質グラフェンは、1.6g/cc~2.1g/ccの密度を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のインターコネクト構造体。
【請求項6】
前記誘電体層は、基板に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のインターコネクト構造体。
【請求項7】
前記トレンチは、前記基板に接触するように形成されるか、あるいは前記基板に接触しないように形成されることを特徴とする請求項6に記載のインターコネクト構造体。
【請求項8】
前記導電性配線は、金属または金属合金を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のインターコネクト構造体。
【請求項9】
前記バリア層は、Ta、Ti、Ru、RuTa、IrTa、W、TaN、TiN、RuN、IrTaNまたはWNを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のインターコネクト構造体。
【請求項10】
前記バリア層は、前記導電性配線の上面を露出させるように設けられることを特徴とする請求項1に記載のインターコネクト構造体。
【請求項11】
前記キャップ層は、前記導電性配線の上面を覆うように設けられることを特徴とする請求項10に記載のインターコネクト構造体。
【請求項12】
前記キャップ層は、前記導電性配線周囲の前記バリア層の上面も追加して覆うように設けられることを特徴とする請求項11に記載のインターコネクト構造体。
【請求項13】
前記キャップ層は、前記バリア層周囲の前記誘電体層の上面も追加して覆うように設けられることを特徴とする請求項12に記載のインターコネクト構造体。
【請求項14】
前記キャップ層は、前記導電性配線の上面を覆うように設けられる第1キャップ層と、前記導電性配線と前記バリア層との間に設けられる第2キャップ層と、を含むことを特徴とする請求項11に記載のインターコネクト構造体。
【請求項15】
前記キャップ層は、前記導電性配線の上面を覆うように設けられる第1キャップ層と、前記トレンチの内部において、前記バリア層の外面を覆うように設けられる第2キャップ層と、を含むことを特徴とする請求項11に記載のインターコネクト構造体。
【請求項16】
少なくとも1つのトレンチが形成された誘電体層と、
前記トレンチの内部を充填するように設けられる導電性配線と、
前記導電性配線の少なくとも一面に設けられるものであり、ナノレベルサイズの結晶を含むナノ結晶質グラフェンを含むキャップ層と、
前記トレンチの内部において、前記導電性配線を覆うように設けられるバリア層と、
を含み、
前記バリア層は、前記誘電体層及び前記導電性配線と直接接触しており、
前記バリア層は、前記導電性配線の全表面を覆うように設けられることを特徴とする
、インターコネクト構造体。
【請求項17】
前記キャップ層は、前記バリア層の上面を覆うように設けられる第1キャップ層と、前記トレンチの内部において、前記バリア層の外面を覆うように設けられる第2キャップ層と、を含むことを特徴とする請求項
16に記載のインターコネクト構造体。
【請求項18】
基板と、
前記基板に設けられるインターコネクト構造体と、を含み、
前記インターコネクト構造体は、
前記基板に設けられ、少なくとも1つのトレンチが形成された誘電体層と、
前記トレンチの内部を充填するように設けられる導電性配線と、
前記導電性配線の少なくとも一面に設けられるものであり、ナノレベルサイズの結晶を含むナノ結晶質グラフェンを含むキャップ層と、
前記トレンチの内部において、前記導電性配線を覆うように設けられるバリア層と、
を含み、
前記導電性配線と前記キャップ層との間には、金属含有層が設けられており、
前記バリア層は、前記誘電体層及び前記導電性配線と直接接触している、電子素子。
【請求項19】
前記インターコネクト構造体は、前記トレンチの内部において、前記導電性配線を覆うように設けられるバリア層をさらに含むことを特徴とする請求項
18に記載の電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターコネクト構造体に係り、詳細には、ナノ結晶質グラフェンからなるキャップ層を含むインターコネクト構造体、及びそのインターコネクト構造体を含む電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、半導体素子の高集積化のために、半導体素子の大きさが段々と小さくなっており、そのためには、インターコネクト構造体において、銅配線の線幅を狭くする必要がある。一方、銅配線の線幅が狭くなれば、銅配線内の電流密度が上昇し、その結果、銅配線の抵抗が大きくなる。そして、そのような銅配線の抵抗増大は、銅原子のエレクトロマイグレーション(electromigration)を誘発することにより、銅配線内に欠陥が生じてしまう。従って、銅配線の抵抗を低くし、エレクトロマイグレーション防止のためには、銅配線にエレクトロマイグレーション抵抗を向上させることができるキャップ層を設ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、ナノ結晶質グラフェンからなるキャップ層を含むインターコネクト構造体、及びそのインターコネクト構造体を含む電子素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一側面において、
少なくとも1つのトレンチが形成された誘電体層と、
前記トレンチの内部を充填するように設けられる導電性配線と、
前記導電性配線の少なくとも一面に設けられるものであり、ナノレベルサイズの結晶を含むナノ結晶質グラフェンを含むキャップ層と、を含むインターコネクト構造体が提供される。
【0005】
前記ナノ結晶質グラフェンは、例えば、0.5nm~100nmサイズの結晶を含み得る。そして、前記ナノ結晶質グラフェンにおいて、全体炭素に対するsp2結合構造(bonding structure)を有する炭素の比率は50%~99%になる。
【0006】
前記ナノ結晶質グラフェンは、例えば、1at%~20at%(atomic percent)の水素を含んでもよい。前記ナノ結晶質グラフェンは、例えば、1.6g/cc~2.1g/ccの密度を有することができる。
【0007】
前記誘電体層は、基板に設けられる。その場合、前記トレンチは、前記基板に接触するように形成されるか、あるいは前記基板に接触しないように形成される。
【0008】
前記導電性配線は、金属または金属合金を含み得る。
【0009】
前記インターコネクト構造体は、前記トレンチの内部において、前記導電性配線を覆うように設けられるバリア層をさらに含んでもよい。前記バリア層は、前記導電性配線の上面を露出させるようにも設けられる。
【0010】
前記キャップ層は、前記導電性配線の上面を覆うように設けられる。または、前記キャップ層は、前記導電性配線周囲の前記バリア層の上面も追加して覆うように設けられる。または、前記キャップ層は、前記バリア層周囲の前記誘電体層の上面も追加して覆うように設けられる。
【0011】
前記導電性配線と前記キャップ層との間には、金属含有層がさらに設けられてもよい。
【0012】
前記キャップ層は、前記導電性配線の上面を覆うように設けられる第1キャップ層と、前記導電性配線と前記バリア層との間に設けられる第2キャップ層と、を含んでもよい。
【0013】
前記キャップ層は、前記導電性配線の上面を覆うように設けられる第1キャップ層と、前記トレンチの内部において、前記バリア層の外面を覆うように設けられる第2キャップ層と、を含んでもよい。
【0014】
前記バリア層は、前記導電性配線の全表面を覆うように設けられる。前記キャップ層は、前記バリア層の露出された上面を覆うように設けられる第1キャップ層と、前記トレンチの内部において、前記バリア層の外面を覆うように設けられる第2キャップ層と、を含んでもよい。
【0015】
他の側面において、
基板と、
前記基板に設けられるインターコネクト構造体と;を含み、
前記インターコネクト構造体は、
前記基板に設けられ、少なくとも1つのトレンチが形成された誘電体層と、
前記トレンチの内部を充填するように設けられる導電性配線と、
前記導電性配線の少なくとも一面に設けられるものであり、ナノレベルサイズの結晶を含むナノ結晶質グラフェンを含むキャップ層と、を含む電子素子が提供される。
【0016】
前記インターコネクト構造体は、前記トレンチの内部において、前記導電性配線を覆うように設けられるバリア層をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態によれば、導電性配線にナノ結晶質グラフェンからなるキャップ層を設けることにより、導電性配線の電気抵抗を低減させることができ、それにより、エレクトロマイグレーション抵抗を向上させることができる。その結果、導電性配線内に欠陥が生じることを低減させることができるので、導電性配線の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】例示的な実施形態によるインターコネクト構造体を含む電子素子を図示したものである。
【
図2A】一般的な結晶質グラフェンを示すラマンスペクトルを例示的に図示した図面である。
【
図2B】例示的な実施形態によるナノ結晶質グラフェンを示すラマンスペクトルを例示的に図示した図面である。
【
図2C】非晶質炭素層を示すラマンスペクトルを例示的に図示した図面である。
【
図3A】
図1に図示されたインターコネクト構造体を含む電子素子の製造方法について例示的に説明するための図面である。
【
図3B】
図1に図示されたインターコネクト構造体を含む電子素子の製造方法について例示的に説明するための図面である。
【
図3C】
図1に図示されたインターコネクト構造体を含む電子素子の製造方法について例示的に説明するための図面である。
【
図4】他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体を含む電子素子を図示した図面である。
【
図5】さらに他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体を含む電子素子を図示した図面である。
【
図6】さらに他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体を含む電子素子を図示した図面である。
【
図7】さらに他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体を含む電子素子を図示した図面である。
【
図8】さらに他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体を含む電子素子を図示した図面である。
【
図9】さらに他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体を含む電子素子を図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付された図面を参照し、実施形態について詳細に説明する。図面において、同一参照符号は、同一構成要素を指し、各構成要素の大きさや厚みは、説明の明瞭性のために誇張されてもいる。また、所定物質層が、基板上や他層上に存在すると説明されるとき、その物質層は、基板や他層に直接接しながら存在する場合もあり、その間に他の第3層が存在する場合もある。そして、以下の実施形態において、各層をなす物質は、例示的なものであるので、それら以外に他の物質が使用されもする。
【0020】
図1は、例示的な実施形態によるインターコネクト構造体120を含む電子素子100を図示したものである。
【0021】
図1を参照すれば、電子素子100は、基板110と、その基板110に設けられるインターコネクト構造体120と、を含む。ここで、インターコネクト構造体120は、誘電体層121、導電性配線125、バリア層126及びキャップ層127を含む。
【0022】
基板110は、半導体基板にもなる。例えば、基板110は、IV族半導体物質、III/V族半導体化合物またはII/VI族半導体化合物を含み得る。具体的な例として、基板110は、Si、Ge、SiC、SiGe、SiGeC、Ge alloy、GaAs、InAs、InPなどを含み得る。しかし、それらは例示的なものであり、それら以外にも、他の多様な半導体物質が基板110として使用される。
【0023】
基板110は、単一層、または互いに異なる物質が積層された複数層を含んでもよい。基板110は、例えば、SOI(silicon on insulator)基板またはSGOI(silicon germanium-on-insulator)基板を含んでもよい。また、基板110は、ドーピングされていない(non-doped)半導体物質、またはドーピングされた(doped)半導体物質を含んでもよい。
【0024】
基板110には、少なくとも1つの半導体素子(図示せず)が含まれてもよい。ここで、半導体素子は、例えば、トランジスタ、キャパシタ、ダイオード及び抵抗器のうち少なくとも一つを含み得る。しかし、それらに限定されるものではない。
【0025】
基板110には、誘電体層121が形成されている。その誘電体層121は、単一層構造、または互いに異なる物質が積層された多層構造を有することができる。誘電体層121は、一般的な半導体製造工程で使用される誘電物質を含み得る。例えば、誘電体層121は、シリコン酸化物、窒化物、シリコン窒化物、シリコンカーバイド、シリケートなどを含み得る。しかし、それらは例示的なものであり、それら以外にも、他の多様な誘電物質が誘電体層121として使用される。また、誘電体層121は有機誘電物質を含んでもよい。
【0026】
誘電体層121には、少なくとも1つのトレンチ121aが所定深さに形成される。ここで、少なくとも1つのトレンチ121aは、基板110に接触しないように形成されるか、あるいは基板110に接触するように形成される。
図1には、誘電体層121に、2個のトレンチ121aが形成されており、そのうち1つのトレンチ121aは、基板110に接触しないように形成され、他の1つのトレンチ121aは、基板110に接触するように形成された場合が図示されている。
【0027】
導電性配線125は、トレンチ121aの内部を充填するように設けられている。導電性配線125は、電気伝導度に優れる金属または金属合金を含み得る。例えば、導電性配線125は、Cu、Ru、Al、Co、W、Mo、Ti、Ta、Ni、Pt、Cr、またはそれらの合金を含み得る。しかし、それらに限定されるものではなく、他の多様な金属が導電性配線125として使用される。
【0028】
トレンチ121aの内壁には、バリア層126が設けられている。ここで、バリア層126は、誘電体層121と導電性配線125との間において、導電性配線125を覆うように設けられる。具体的には、バリア層126は、導電性配線125の側面及び下面を覆うように、トレンチ121aの内壁に設けられてもよい。導電性配線125の上面は、バリア層126から露出される。そのようなバリア層126は、導電性配線125をなす物質の拡散を防止する役割を行う。一方、バリア層126は、誘電体層121と導電性配線125との接着層の役割を追加して行う。
【0029】
バリア層126は、単一層構造、または互いに異なる物質が積層された多層構造を含んでもよい。バリア層126は、例えば、金属、金属の合金、または金属窒化物などを含み得る。具体的な例として、バリア層は、Ta、Ti、Ru、RuTa、IrTa、W、TaN、TiN、RuN、IrTaNまたはWNなどを含み得る。しかし、それらは例示的なものに過ぎず、それら以外にも、他の多様な物質がバリア層126として使用される。
【0030】
トレンチ121aの内部を充填するように設けられた導電性配線125の上面には、キャップ層127が設けられている。キャップ層127は、導電性配線125の露出された上面を覆うように設けられている。
【0031】
導電性配線125の上面に設けられるキャップ層127は、ナノ結晶質グラフェンを含む。そのキャップ層127は、単一層構造、または複層が積層された多層構造を有することができる。ナノ結晶質グラフェンとは、一般的な結晶質グラフェンである真性グラフェン(intrinsic graphene)に比べ、小サイズの結晶を含む。例えば、ナノ結晶質グラフェンは、ナノレベル、具体的には、100nm以下の大きさを有する結晶を含み得る。後述するように、導電性配線125の上面に、ナノ結晶質グラフェンからなるキャップ層127を形成することになれば、導電性配線125の電気抵抗を低減させ、それにより、エレクトロマイグレーション(electromigration)抵抗を向上させることができる。
【0032】
以下では、真性グラフェン、ナノ結晶質グラフェン及び非晶質炭素層について具体的に比較して説明する。
【0033】
図2Aないし
図2Cは、一般的な結晶質グラフェン、例示的な実施形態によるナノ結晶質グラフェン、及び非晶質炭素層に係るラマンスペクトルを例示的に図示したものである。後述する全体炭素に対するsp
2結合構造(bonding structure)を有する炭素の比率は、例えば、XPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析を介して得られ、水素の含量は、例えば、ラザフォード後方散乱分光(RBS:Rutherford backscattering spectroscopy)の成分分析を介して得られる。
【0034】
図2Aは、真性グラフェンを示すラマンスペクトルを例示的に図示したものである。
【0035】
図2Aを参照すれば、結晶質グラフェンである真性グラフェンにおいては、 G peak intensityに対するD peak intensityの比率は、例えば、大体0.1より小さく、G peak intensityに対する2D peak intensityの比率は、例えば、大体2よりも大きくなる。そのような真性グラフェンは、大体100nmより大きいサイズの結晶を含み得る。
【0036】
真性グラフェンにおいては、全体炭素に対するsp2結合構造を有する炭素の比率は、ほぼ100%にもなる。そして、真性グラフェンは、水素をほとんど含まない。また、真性グラフェンの密度は、例えば、大体2.1g/ccほどにもなり、真性グラフェンの面抵抗(sheet resistance)は、例えば、大体100~300Ω/sqほどにもなる。
【0037】
図2Bは、ナノ結晶質グラフェンを示すラマンスペクトルを例示的に図示したものである。
【0038】
図2Bを参照すれば、ナノ結晶質グラフェンにおいては、G peak intensityに対するD peak intensityの比率は、例えば、大体2.1より小さく、G peak intensityに対する2D peak intensityの比率は、例えば、大体0.1よりも大きくなる。そして、D peakの半値幅(FWHM:full width at half maximum)は、例えば、大体25~120cm
-1ほどにもなる。
【0039】
ナノ結晶質グラフェンは、真性グラフェンより小サイズ、例えば、大体0.5nm~100nmほどの大きさを有する結晶を含む。ナノ結晶質グラフェンにおいては、全体炭素に対するsp2結合構造を有する炭素の比率は、例えば、大体50%~99%ほどにもなる。そして、ナノ結晶質グラフェンは、例えば、大体1~20at%(atomic percent)ほどの水素を含んでいる。また、ナノ結晶質グラフェンの密度は、例えば、大体1.6~2.1g/ccほどにもなり、ナノ結晶質グラフェンの面抵抗は、例えば、大体1,000Ω/sqよりも大きくなる。
【0040】
図2Cは、非晶質炭素層を示すラマンスペクトルを例示的に図示したものである。
【0041】
図2Cを参照すれば、非晶質炭素層は、D peakの半値幅(FWHM)が、例えば、大体120cm
-1よりも大きくなる。非晶質炭素層においては、全体炭素に対するsp
2結合構造を有する炭素の比率は、例えば、大体30%~50%ほどにもなる。そして、非晶質炭素層には、大体20at%より多い含量の水素を含んでいる。
【0042】
最近では、半導体素子の高集積化のために、半導体素子の大きさが段々と小さくなっており、それにより、導電性配線の線幅も狭くなっている。しかし、導電性配線の線幅が狭くなれば、導電性配線内の電流密度は増大することにより、導電性配線の電気抵抗が大きくなる。そのような電気抵抗の増大は、エレクトロマイグレーション現象を発生させ、導電性配線内に欠陥が生じ、それにより、導電性配線が損傷してしまう。ここで、エレクトロマイグレーションは、伝導性電子と、金属内の原子核との間の運動量伝達によって生じる導体内イオンの持続的な動きによる物質の移動を言う。
【0043】
本実施形態のように、導電性配線125の上面を覆うように設けられるキャップ層127を、ナノ結晶質グラフェンで形成することになれば、導電性配線125の電気抵抗を低減させることができる。具体的な例として、銅配線の上面に、コバルト(Co)からなるキャップ層を形成する場合、銅配線の上面にキャップ層を形成しない場合に比べ、銅配線の電気抵抗を大体4%ほど低減させることができる。それに反し、銅配線の上面に、ナノ結晶質グラフェンからなるキャップ層を形成する場合には、銅配線の上面にキャップ層を形成しない場合に比べ、銅配線の電気抵抗を大体10%ほど低減させることができる。
【0044】
そのように、導電性配線125の上面に、ナノ結晶質グラフェンからなるキャップ層127を形成することにより、導電性配線125の電気抵抗を低減させることができ、エレクトロマイグレーション抵抗を向上させることができる。従って、導電性配線125内における欠陥発生を低減させることができるので、導電性配線125の損傷を防止することができる。
【0045】
図3Aないし
図3Cは、
図1に図示されたインターコネクト構造体120を含む電子素子100の製造方法について例示的に説明するための図面である。
【0046】
図3Aを参照すれば、基板110に、少なくとも1つのトレンチ121aを含む誘電体層121を形成する。具体的には、まず、基板110に、誘電体層121を形成する。ここで、誘電体層121は、一般的な半導体製造工程で使用される蒸着工程、例えば、化学気相蒸着(CVD:chemical vapor deposition)、プラズマ化学気相蒸着(PECVD:plasma enhanced CVD)、スピンコーティング(spin coating)などの工程を介して形成される。
【0047】
基板110は、半導体基板にもなる。例えば、基板110は、IV族半導体物質、III/V族半導体化合物またはII/VI族半導体化合物を含み得る。基板110は、単一層、または互いに異なる物質が積層された複数層を含んでもよい。また、基板110は、例えば、SOI基板またはSGOI基板を含んでもよい。基板110は、ドーピングされていない半導体物質、またはドーピングされた半導体物質を含んでもよい。
【0048】
基板110には、少なくとも1つの半導体素子(図示せず)が含まれてもよい。例えば、半導体素子は、トランジスタ、キャパシタ、ダイオード及び抵抗器のうち少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。
【0049】
誘電体層121は、一般的な半導体製造工程で使用される誘電物質を含み得る。例えば、誘電体層121は、シリコン酸化物、窒化物、シリコン窒化物、シリコンカーバイド、シリケートなどを含み得る。しかし、それらは単に例示的なものであり、それら以外にも、他の多様な誘電物質が誘電体層121として使用される。また、誘電体層121は、有機誘電物質を含んでもよい。そのような誘電体層121は、単一層構造、または互いに異なる物質が積層された多層構造を有することができる。
【0050】
次に、誘電体層121に、少なくとも1つのトレンチ121aを所定深さに形成する。そのような少なくとも1つのトレンチ121aは、例えば、フォトリソグラフィ(photolithography)工程及びエッチング工程を介して形成される。ここで、少なくとも1つのトレンチ121aは、基板110に接触しないように形成されたり、基板110に接触するように形成されたりする。
図3Aには、誘電体層121に、2個のトレンチ121aが形成されており、そのうち1つのトレンチ121aは、基板110に接触しないように形成され、他の1つのトレンチ121aは、基板110に接触するように形成された場合が図示されている。
【0051】
図3Bを参照すれば、誘電体層121に形成された少なくとも1つのトレンチ121a内部に、導電性配線125及びバリア層126を形成する。まず、誘電体層121の表面を覆うように、バリア層126を形成する。ここで、バリア層126は、一般的な半導体製造工程で使用される蒸着工程を介して形成される。バリア層126は、例えば、金属、金属の合金、または金属窒化物などを含んでもよい。しかし、それらに限定されるものではない。バリア層126は、単一層構造、または互いに異なる物質が積層された多層構造を含んでもよい。
【0052】
次に、少なくとも1つのトレンチ121a内部を充填するように、バリア層126の表面に、導電性配線125を形成する。そのような導電性配線125は、例えば、化学気相蒸着(CVD)、プラズマ化学気相蒸着(PECVD)、物理気相蒸着(PVD:physical vapor deposition)、電気メッキ(electroplating)、化学溶液沈澱(chemical solution deposition)または無電解メッキ(electroless plating)などを介して形成される。一方、導電性配線125を、電気メッキを介して形成する場合には、導電性配線125を形成する前に、バリア層126の表面に電気メッキを促進させるためのメッキシード層(図示せず)を形成することもできる。そのようなメッキシード層は、例えば、銅(Cu)、銅合金、イリジウム(Ir)、イリジウム合金、ルテニウム(Ru)またはルテチウム合金などを含んでもよいが、それらは、単に例示的なものである。
【0053】
導電性配線125は、電気伝導度に優れる金属または金属合金を含み得る。例えば、導電性配線125は、Cu、Ru、Al、Co、W、Mo、Ti、Ta、Ni、Pt、Cr、またはそれらの合金を含み得る。しかし、それらに限定されるものではなく、他の多様な金属が導電性配線125として使用される。
【0054】
次に、平坦化工程を介して、
図3Bに図示されているように、誘電体層121の上面、バリア層126の上面、及び導電性配線125の上面が同一平面になるように加工する。ここで、平坦化工程は、例えば、化学的機械的研磨(CMP:chemical mechanical polishing)工程またはグラインディング工程などを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。
【0055】
図3Cを参照すれば、導電性配線125の上面に、ナノ結晶質グラフェンからなるキャップ層127を形成する。そのキャップ層127は、導電性配線125の露出された上面を覆うようにも形成される。ここで、ナノ結晶質グラフェンからなるキャップ層127は、単一層構造または多層構造に形成される。
【0056】
前述のように、ナノ結晶質グラフェンは、一般的な結晶質グラフェンである真性グラフェンに比べ、小サイズの結晶、例えば、大体100nm以下の大きさ、さらに具体的には、大体0.5nm~100nmほどの大きさを有する結晶を含む。ナノ結晶質グラフェンにおいては、全体炭素に対するsp2結合構造を有する炭素の比率は、例えば、大体50%~99%ほどにもなる。そして、ナノ結晶質グラフェンは、例えば、大体1~20at%ほどの水素を含んでいる。また、ナノ結晶質グラフェンの密度は、例えば、大体1.6~2.1g/ccほどにもなり、ナノ結晶質グラフェンの面抵抗は、例えば、大体1,000Ω/sqよりも大きくなる。
【0057】
キャップ層127は、導電性配線125の上面に、例えば、化学気相蒸着またはプラズマ化学気相蒸着などの蒸着工程を介して、ナノ結晶質グラフェンを成長させることによって形成される。具体的な例を挙げれば、キャップ層127は、プラズマ化学気相蒸着(PECVD)を利用し、比較的低い温度、例えば、大体700℃以下の温度で、導電性配線125の上面に、ナノ結晶質グラフェンを成長させることによって形成される。また、キャップ層127は、蒸着工程以外にも、導電性配線125の上面に、ナノ結晶質グラフェンを転写させる(transfer)ことによって形成される。
【0058】
図4は、他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体220を含む電子素子200を図示したものである。以下においては、前述の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0059】
図4を参照すれば、電子素子200は、基板110と、その基板110に設けられるインターコネクト構造体220と、を含む。ここで、インターコネクト構造体200は、誘電体層121、導電性配線125、バリア層126及びキャップ層227を含む。
【0060】
基板110及び誘電体層121については上で説明したので、それに係わる説明は省略する。誘電体層121には、少なくとも1つのトレンチ121aが、所定深さに形成される。導電性配線125は、トレンチ121aの内部を充填するように設けられている。ここで、導電性配線125は、電気伝導度に優れる金属または金属合金、例えば、Cu、Ru、Al、Co、W、Mo、Ti、Ta、Ni、Pt、Cr、またはそれらの合金を含み得る。しかし、それらは単に例示的なものである。トレンチ121aの内壁には、バリア層126が設けられている。ここで、バリア層126は、誘電体層121と導電性配線125との間において、導電性配線125を覆うように設けられる。具体的には、バリア層126は、導電性配線125の側面及び下面を覆うように、トレンチ121aの内壁に設けられてもよい。導電性配線125の上面は、バリア層126から露出される。
【0061】
導電性配線125の上面及びバリア層126の上面には、キャップ層227が設けられている。具体的には、キャップ層227は、導電性配線125の露出された上面、及びバリア層126の露出された上面を覆うように設けられている。
【0062】
キャップ層227は、ナノ結晶質グラフェンを含む。ナノ結晶質グラフェンは、前述のように、一般的な結晶質グラフェンである真性グラフェンに比べ、小サイズの結晶、例えば、大体100nm以下の大きさを有する結晶を含む。ナノ結晶質グラフェンについては、前述の実施形態で詳細に説明したので、それに係わる説明は省略する。
【0063】
図5は、さらに他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体320を含む電子素子300を図示したものである。以下では、前述の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0064】
図5を参照すれば、電子素子300は、基板110と、その基板110に設けられるインターコネクト構造体320と、を含む。ここで、インターコネクト構造体320は、誘電体層121、導電性配線125、バリア層126及びキャップ層327を含む。
【0065】
基板110及び誘電体層121については上で説明したので、それに係わる説明は省略する。誘電体層121には、少なくとも1つのトレンチ121aが、所定深さに形成される。導電性配線125は、トレンチ121aの内部を充填するように設けられている。そして、トレンチ121aの内壁には、バリア層126が設けられている。具体的には、バリア層126は、導電性配線125の側面及び下面を覆うように、トレンチ121aの内壁に設けられてもよい。導電性配線125の上面は、バリア層126から露出される。
【0066】
導電性配線125の上面、バリア層126の上面、及び誘電体層121の一部上面には、キャップ層327が設けられている。具体的には、キャップ層327は、導電性配線125の露出された上面、バリア層126の露出された上面、及びバリア層126周囲にある誘電体層121の露出された上面を覆うように設けられている。
【0067】
キャップ層327は、ナノ結晶質グラフェンを含む。ナノ結晶質グラフェンは、前述のように、一般的な結晶質グラフェンである真性グラフェンに比べ、小サイズの結晶、例えば、大体100nm以下の大きさを有する結晶を含む。ナノ結晶質グラフェンについては、前述の実施形態で詳細に説明したので、それに係わる説明は、省略する。
【0068】
図6は、さらに他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体420を含む電子素子400を図示したものである。以下では、前述の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0069】
図6を参照すれば、電子素子400は、基板110と、その基板110に設けられるインターコネクト構造体420と、を含む。ここで、インターコネクト構造体420は、誘電体層121、導電性配線125、バリア層126及びキャップ層427を含む。
【0070】
基板110及び誘電体層121については上で説明したので、それに係わる説明は省略する。誘電体層121には、少なくとも1つのトレンチ121aが、所定深さに形成される。導電性配線125は、トレンチ121aの内部を充填するように設けられている。トレンチ121aの内壁には、バリア層126が設けられている。具体的には、バリア層126は、導電性配線125の側面及び下面を覆うように、トレンチ121aの内壁に設けられてもよい。導電性配線125の上面は、バリア層126から露出される。
【0071】
導電性配線125の上面には、金属含有層428及びキャップ層427が順次に設けられている。ここで、金属含有層428は、キャップ層427を構成するナノ結晶質グラフェンの成長及び形成を促進する役割を行う。
【0072】
金属含有層428は、導電性配線125をなす物質より優秀な耐食性または耐酸化性を有する金属または金属合金を含み得る。例えば、金属含有層428は、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、CoW、CoWP、またはそれらの合金を含み得る。しかし、それらは単に例示的なものである。金属含有層428は、単一層構造または多層構造に形成される。そのような金属含有層428は、例えば、化学気相蒸着(CVD)、プラズマ化学気相蒸着(PECVD)、原子層蒸着(ALD:atomic layer deposition)などの方法を介して、導電性配線125の上面に選択的に形成される。
【0073】
金属含有層428の上面には、キャップ層427が形成されている。キャップ層427は、ナノ結晶質グラフェンを含む。ナノ結晶質グラフェンは、前述のように、一般的な結晶質グラフェンである真性グラフェンに比べ、小サイズの結晶、例えば、大体100nm以下の大きさを有する結晶を含む。ナノ結晶質グラフェンについては、前述の実施形態で詳細に説明したので、それに係わる説明は省略する。前述のように、金属含有層428は、ナノ結晶質グラフェンの成長及び形成を促進する役割を行うので、キャップ層427は、金属含有層428の上面において、さらに効果的に形成される。
【0074】
図7は、さらに他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体520を含む電子素子500を図示したものである。
【0075】
図7を参照すれば、電子素子500は、基板110と、その基板110に設けられるインターコネクト構造体520と、を含む。ここで、インターコネクト構造体520は、誘電体層121、導電性配線525、バリア層526及びキャップ層527を含む。
【0076】
基板110は、半導体基板にもなる。例えば、基板110は、IV族半導体物質、III/V族半導体化合物またはII/VI族半導体化合物を含み得る。しかし、それらに限定されるものではない。基板110は、単一層、または互いに異なる物質が積層された複数層を含んでもよい。また、基板110は、ドーピングされていない半導体物質、またはドーピングされた半導体物質を含んでもよい。基板110には、少なくとも1つの半導体素子(図示せず)が含まれてもよい。ここで、半導体素子は、例えば、トランジスタ、キャパシタ、ダイオード及び抵抗器のうち少なくとも一つを含んでもよいが、それらは単に例示的なものである。
【0077】
基板110には、誘電体層121が形成されている。そのような誘電体層121は、単一層構造、または互いに異なる物質が積層された多層構造を有することができる。誘電体層121は、一般的な半導体製造工程で使用される誘電物質を含み得る。例えば、誘電体層121は、無機誘電物質または有機誘電物質を含み得る。
【0078】
誘電体層121には、少なくとも1つのトレンチ121aが、所定深さに形成される。ここで、少なくとも1つのトレンチ121aは、基板110に接触しないように形成されるか、あるいは基板110に接触するように形成される。
図7には、誘電体層121に、2個のトレンチ121aが形成されており、そのうち1つのトレンチ121aは、基板110に接触しないように形成され、他の1つのトレンチ121aは、基板110に接触するように形成された場合が図示されている。
【0079】
導電性配線525は、トレンチ121aの内部を充填するように設けられている。ここで、導電性配線525は、電気伝導度に優れる金属または金属合金を含み得る。例えば、導電性配線525は、Cu、Ru、Al、Co、W、Mo、Ti、Ta、Ni、Pt、Cr、またはそれらの合金を含み得る。しかし、それらに限定されるものではなく、他の多様な金属が導電性配線525としても使用される。キャップ層527は、導電性配線525の全表面を覆うように設けられている。キャップ層は、第1キャップ層527a及び第2キャップ層527bを含む。ここで、第1キャップ層527aは、導電性配線525の上面、及び第2キャップ層527bの上面を覆うように設けられ、第2キャップ層527bは、トレンチ121aの内部において、導電性配線525の外面、すなわち、側面及び下面を覆うように設けられる。
【0080】
キャップ層527は、ナノ結晶質グラフェンを含む。キャップ層527は、単一層構造、または複層が積層された多層構造を有することができる。ナノ結晶質グラフェンは、一般的な結晶質グラフェンである真性グラフェンに比べ、小サイズの結晶、例えば、100nm以下の大きさを有する結晶を含む。
【0081】
このように、導電性配線525の全表面にナノ結晶質グラフェンからなるキャップ層527を設けることにより、導電性配線525の電気抵抗を低減させることができ、それにより、エレクトロマイグレーション抵抗を増大させることができる。具体的には、第1キャップ層527aは、導電性配線525の上面で生じうるエレクトロマイグレーションの抵抗を増大させることができ、第2キャップ層527bは、トレンチ121aの内部に設けられて、導電性配線525の側面及び下面で生じうるエレクトロマイグレーションの抵抗を増大させることができる。また、第2キャップ層527bは、導電性配線525をなす物質の拡散を防止する拡散バリアの役割も行う。
【0082】
バリア層526は、トレンチ121aの内部において、第2キャップ層527bを覆うように設けられている。具体的には、バリア層526は、第2キャップ層527bの側面及び下面を覆うように設けられている。そのようなバリア層526は、導電性配線525をなす物質の拡散を防止する役割を行う。バリア層526は、単一層構造、または互いに異なる物質が積層された多層構造を含んでもよい。バリア層526は、例えば、金属、金属の合金、または金属窒化物などを含み得る。具体的な例として、バリア層526は、Ta、Ti、Ru、RuTa、IrTa、W、TaN、TiN、RuN、IrTaN、またはWNなどを含み得る。しかし、それらは単に例示的なものであり、それら以外にも他の多様な物質がバリア層526として使用される。
【0083】
本実施形態においては、導電性配線525とバリア層526との間に拡散バリアの役割も遂行することができる第2キャップ層527bを設けることにより、バリア層526に要求される層厚や層数を低減させることができる。
【0084】
一方、
図7には、第1キャップ層527aが導電性配線525の上面、及び第2キャップ層527bの上面を覆うように設けられる場合が例示的に図示されている。しかし、第1キャップ層527aは、導電性配線525の上面だけ覆うようにも設けられる。また、第1キャップ層527aは、導電性配線525の上面、第2キャップ層527bの上面、及び第2キャップ層527b周囲にある誘電体層121の上面を覆うようにも設けられる。
【0085】
図8は、さらに他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体620を含む電子素子600を図示したものである。以下では、前述の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0086】
図8を参照すれば、電子素子600は、基板110と、その基板110に設けられるインターコネクト構造体620と、を含む。ここで、インターコネクト構造体620は、誘電体層121、導電性配線625、バリア層626及びキャップ層627を含む。
【0087】
基板110は、半導体基板にもなる。基板110は、単一層、または互いに異なる物質が積層された複数層を含んでもよい。また、基板110は、ドーピングされていない半導体物質、またはドーピングされた半導体物質を含んでもよい。そのような基板110には、少なくとも1つの半導体素子(図示せず)が含まれてもよい。
【0088】
基板110には、誘電体層121が形成されている。その誘電体層121は、単一層構造、または互いに異なる物質が積層された多層構造を有することができる。誘電体層121は、一般的な半導体製造工程で使用される誘電物質を含み得る。例えば、誘電体層121は、無機誘電物質または有機誘電物質を含み得る。誘電体層121には、少なくとも1つのトレンチ121aが、所定深さに形成される。ここで、少なくとも1つのトレンチ121aは、基板110に接触しないように形成されるか、あるいは基板110に接触するように形成される。
【0089】
導電性配線625は、トレンチ121aの内部を充填するように設けられている。導電性配線625は、電気伝導度に優れる金属または金属合金を含み得る。例えば、導電性配線625は、Cu、Ru、Al、Co、W、Mo、Ti、Ta、Ni、Pt、Cr、またはそれらの合金を含み得る。しかし、それらは単に例示的なものである。
【0090】
バリア層626は、トレンチ121aの内部において、導電性配線625の外面、すなわち、側面及び下面を覆うように設けられている。導電性配線625の上面は、バリア層626から露出される。バリア層626は、導電性配線625をなす物質の拡散を防止する役割を行う。バリア層626は、単一層構造、または互いに異なる物質が積層された多層構造を含んでもよい。バリア層626は、例えば、金属、金属の合金、または金属窒化物などを含み得る。
【0091】
キャップ層627は、導電性配線625及びバリア層626を覆うように設けられている。キャップ層627は、第1キャップ層627a及び第2キャップ層627bを含む。ここで、第1キャップ層627aは、導電性配線625の上面、バリア層626の上面、及び第2キャップ層627bの上面を覆うように設けられ、第2キャップ層627bは、トレンチ121aの内部において、バリア層626の外面、すなわち、側面及び下面を覆うように設けられる。
【0092】
キャップ層627は、ナノ結晶質グラフェンを含む。キャップ層627は、単一層構造、または複層が積層された多層構造を有することができる。ナノ結晶質グラフェンは、一般的な結晶質グラフェンである真性グラフェンに比べ、小サイズの結晶、例えば、100nm以下の大きさを有する結晶を含む。
【0093】
第1キャップ層627aは、導電性配線625の上面で生じうるエレクトロマイグレーションの抵抗を増大させることができ、第2キャップ層627bは、トレンチ121aの内部に設けられて、導電性配線625の側面及び下面で生じうるエレクトロマイグレーションの抵抗を増大させることができる。また、第2キャップ層627bは、導電性配線625をなす物質の拡散を防止する拡散バリアの役割も行う。
【0094】
本実施形態においては、バリア層626の側面及び下面に、バリアの役割も遂行することができる第2キャップ層627bを設けることにより、バリア層626に要求される層厚や層数を低減させることができる。
【0095】
一方、
図8には、第1キャップ層627aが、導電性配線625の上面、バリア層626の上面、及び第2キャップ層627bの上面を覆うように設けられる場合が例示的に図示されている。しかし、第1キャップ層627aは、導電性配線625の上面だけ覆うようにも設けられるか、あるいは第1キャップ層627aは、導電性配線625の上面、及びバリア層626の上面を覆うようにも設けられる。また、第1キャップ層627aは、導電性配線625の上面、バリア層626の上面、第2キャップ層627bの上面、及び第2キャップ層627b周囲にある誘電体層121の上面を覆うようにも設けられる。
【0096】
図9は、さらに他の例示的な実施形態によるインターコネクト構造体700を含む電子素子を図示したものである。以下では、前述の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0097】
図9を参照すれば、電子素子700は、基板110と、その基板110に設けられるインターコネクト構造体720と、を含む。インターコネクト構造体720は、誘電体層121、導電性配線725、バリア層726及びキャップ層727を含む。
【0098】
基板110には、誘電体層121が設けられており、その誘電体層121には、少なくとも1つのトレンチ121aが、所定深さに形成される。ここで、少なくとも1つのトレンチ121aは、基板110に接触しないように形成されるか、あるいは基板110に接触するようにも形成される。
【0099】
導電性配線725は、トレンチ121aの内部を充填するように設けられている。導電性配線725は、電気伝導度に優れる金属または金属合金を含み得る。バリア層726は、導電性配線725の全表面(すなわち、上面、側面及び下面)を覆うように設けられている。そのようなバリア層726は、例えば、金属、金属の合金、または金属窒化物などを含み得る。
【0100】
キャップ層727は、バリア層726を覆うように設けられている。キャップ層727は、第1キャップ層727a及び第2キャップ層727bを含む。ここで、第1キャップ層727aは、バリア層725の上面、及び第2キャップ層727bの上面を覆うように設けられ、第2キャップ層727bは、トレンチ121aの内部において、バリア層726の外面(すなわち、側面及び下面)を覆うように設けられる。
【0101】
キャップ層727は、ナノ結晶質グラフェンを含む。キャップ層727は、単一層構造、または複層が積層された多層構造を有することができる。ナノ結晶質グラフェンは、一般的な結晶質グラフェンである真性グラフェンに比べ、小サイズの結晶、例えば、100nm以下の大きさを有する結晶を含む。
【0102】
第1キャップ層727a及び第2キャップ層727bは、導電性配線725で生じうるエレクトロマイグレーションの抵抗を増大させることができる。また、第1キャップ層727a及び第2キャップ層727bは、導電性配線725をなす物質の拡散を防止する拡散バリアの役割も行う。それにより、バリア層726に要求される層厚や層数を低減させることができる。
【0103】
以上の例示的な実施形態によれば、導電性配線にナノ結晶質グラフェンからなるキャップ層を設けることにより、導電性配線の電気抵抗を低減させることができ、それにより、エレクトロマイグレーション抵抗を向上させることができる。その結果、導電性配線内に欠陥が生じることを低減させることができるので、導電性配線の損傷を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の、ナノ結晶質グラフェンキャップ層を含むインターコネクト構造体、及びそのインターコネクト構造体を含む電子素子は、例えば、半導体素子関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0105】
100,200,300,400,500,600,700 電子素子
110 基板
120,220,320,420,520,620,720 インターコネクト構造体
121 誘電体層
121a トレンチ
125,525,625,725 導電性配線
126,526,726 バリア層
127,227,327,427,527,627,727 キャップ層
527a,627a,727a 第1キャップ層
527b,627b,727b 第2キャップ層