(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 47/00 20060101AFI20240708BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240708BHJP
C08L 71/08 20060101ALI20240708BHJP
C08G 63/00 20060101ALI20240708BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240708BHJP
C08K 5/37 20060101ALI20240708BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C08L47/00
C08L23/26
C08L71/08
C08G63/00
C08K3/013
C08K5/37
C08K5/103
(21)【出願番号】P 2022579101
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 KR2021011022
(87)【国際公開番号】W WO2022071661
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0127535
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ド・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジョ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・グ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヒョン・イ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0375951(US,A1)
【文献】特開2011-074340(JP,A)
【文献】特開2019-081860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 47/00
C08L 23/26
C08G 63/00
C08K 3/013
C08L 71/08
C08K 5/37
C08K 5/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤パート及び硬化剤パートを含む2液型硬化性組成物の硬化剤パートに含まれる硬化性組成物であって、
酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダー、フィラー、及び分散剤を含み、
前記分散剤が下記化学式1の単位を含む高分子化合物を含む、硬化性組成物。
【化1】
前記化学式1において、L
1は、炭素数3~6のアルキレン基であり、L
2は、メチレン基またはエチレン基であり、p/qは、0.5~2の範囲内の数である。
【請求項2】
前記酸無水物単位は、無水マレイン酸単
位である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンバインダーは、酸価が50~120mgKOH/gの範囲内である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンバインダーは、スチレン単位、ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群から選ばれる1つ以上の単位を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィンバインダーは、重量平均分子量が3,000~30,000g/molの範囲内である、請求項1から4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィンバインダーは、多分散指数が2~5の範囲内である、請求項1から5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記化学式1の単位を含む高分子化合物は、重量平均分子量が5,000~40,000g/molの範囲内である、請求項1から6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記化学式1の単位を含む高分子化合物は、多分散指数が0.8~2の範囲内である、請求項1から7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記ポリオレフィンバインダー100重量部に対して1~10重量部の前記分散剤を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記分散剤がエステル化合物をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記エステル化合物は、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、アルキレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、アルキレングリコールジアセテート、アルキルラクテート及びアルキル2-ヒドロキシアイソアルキレートからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上を含む、請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
チオール化合物をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記チオール化合物は、炭素数1~20のアルキル基が置換されたチオールである、請求項12に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記フィラーを分散剤100重量部に対して25,000~45,000重量部の割合で含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
前記分散剤は、前記エステル化合物を5~40重量%で含む、請求項10または11に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
前記チオール化合物を分散剤100重量部に対して100~500重量部の範囲内の割合で含む、請求項12または13に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
押圧力が
27.7gf(0.272N)以上60gf
(0.588N)以下である、
請求項1から16のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項18】
酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダー、フィラー、及びリン酸系高分子分散剤を含み、押圧力が
27.7gf(0.272N)以上60gf
(0.588N)以下であ
り、
前記酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダーは、無水マレイン酸単位を含むポリブタジエンであり、
前記フィラーは、酸化アルミニウムフィラー及び水酸化アルミニウムフィラーの混合物であり、
前記リン酸系高分子分散剤が下記化学式1の単位を含む高分子化合物を含み、
【化2】
前記化学式1において、L
1
は、炭素数3~6のアルキレン基であり、L
2
は、メチレン基またはエチレン基であり、p/qは、0.5~2の範囲内の数であり、
前記酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダー100重量部に対して1~10重量部の前記リン酸系高分子分散剤を含み、
前記リン酸系高分子分散剤100重量部に対して25,000~45,000重量部の前記フィラーを含む、
硬化性組成物。
【請求項19】
発熱性素子及び冷却部位を含み、
前記発熱性素子及び冷却部位の間で両者を熱的接触させている、請求項1から17のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物または請求項18に記載の硬化性組成物の硬化物を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2020年9月29日付大韓民国特許出願第10-2020-0127535号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
電気製品、電子製品または二次電池などのバッテリーから発生する熱の処理が重要なイシューとなり、様々な放熱対策が提案されている。
【0004】
放熱対策に用いられる熱伝導性材料の中には、樹脂に熱伝導性フィラーを配合した硬化性組成物が知られている。
【0005】
特に、硬化性組成物は、放熱性(熱伝導性)を確保するため、または工程上必要に応じてチキソトロピー性を確保するため、過量のフィラーが含まれてもよい。
【0006】
樹脂に過量のフィラーを添加して配合する場合、分散しにくく、チキソトロピー性指数(Thixotropic Index、T.I.)が減少してフィラーが沈降するという問題が発生した。これにより、分散剤を用いて過量のフィラーが配合されていても分散性を高めようとしたが、樹脂の種類によって相溶性が低下するか、または分散剤が樹脂と反応するという問題があった。したがって、樹脂の種類に応じて優れた相溶性及び未反応特性を有する分散剤を使用することが重要である。
【0007】
特許文献1(特許第5218364号)には、常温で安定的な走査吐出性を保持する熱伝導性組成物に関し、樹脂とフィラーの分散性を向上させるために分散剤を使用しているが、優れた相溶性及び未反応特性を考慮した分散剤を選択していなかった。
【0008】
また、特定樹脂に対し、混合時には優れた相溶性及び未反応特性を有する分散剤であっても、長期保管時にフィラーが沈降するという問題があった。
【0009】
具体的には、無水マレイン酸単位を含有する高分子とフィラーが混合されている場合、アミン系分散剤を適用すると、前記高分子とアミン系分散剤が反応して硬化するという問題がある。したがって、アミン系分散剤を使用する場合には相溶性に劣り、配合自体が不可能で硬化物を形成できなかった。
【0010】
また、無水マレイン酸単位を含有する高分子にフィラーが混合されている場合、リン酸系共重合体分散剤を適用できるが、分散剤構造内にプロピレングリコールメチルエーテル構造を持たない場合には、硬化性組成物を長期放置時に粒子が沈降するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述した問題を解決できる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、過量のフィラーを含んでいても硬化前後に適正な粘度及びチキソトロピー性を有する硬化性組成物を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は、長期保管にも粒子の沈降現象のない硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による一例において、本発明は、硬化前後に適正な粘度及びチキソトロピー性を有し、長期保管にも粒子の沈降現象のない硬化性組成物に関する。ここで、硬化性組成物は、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダー、フィラー及び分散剤を含んでもよい。また、前記粒子は、硬化性組成物内で沈降できることを意味する。
【0016】
本発明による硬化性組成物は、分散剤を含んでもよく、前記分散剤は、下記化学式1の単位を含む高分子化合物であってもよい。
【0017】
【0018】
前記化学式1において、L1は、炭素数3~8のアルキレン基であり、L2は、メチレン基またはエチレン基であり、p/qは、0.1~10の範囲内の数であってもよい。
【0019】
前記化学式1において、L1は、炭素数3以上~6のアルキレン基、炭素数3以上~5のアルキレン基または炭素数3以上~4のアルキレン基であることが好ましく、前記アルキレン基は、分岐鎖であるアルキレン基であることがより好ましい。
【0020】
前記化学式1の単位を含む高分子化合物としては、例えば、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)及びリン酸(phosphoric acid)を共重合させて形成される単位であってもよい。すなわち、前記化学式1の単位を含む高分子化合物は、共重合を通じて形成されてもよい。
【0021】
p/qは、他の例示において、0.5~2の範囲内の数であってもよく、0.75~1.25の範囲内の数であってもよく、または0.8~1.2の範囲内の数であってもよい。p及びqは、前記範囲を満たすとともに、後述する前記化学式1の単位を含む高分子化合物の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散指数(PDI)を介して適切な数として選ばれてもよい。p/qの値が前記範囲を満たす場合には、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダー及びフィラーが混合された後にも適正なチキソトロピー性を確保しうる。
【0022】
本発明による硬化性組成物は、前記化学式1の単位を含む高分子化合物を分散剤として使用することにより、長期の保管にも粒子の沈降現象を防止しうる。
【0023】
前記化学式1の単位を含む高分子化合物は、重量平均分子量が5,000g/mol以上、6,000g/mol以上、7,000g/mol以上、8,000g/mol以上、9,000g/mol以上、10,000g/mol以上、11,000g/mol以上、12,000g/mol以上、13,000g/mol以上、14,000g/mol以上、15,000g/mol以上または16,000g/mol以上であってよく、他の例示において前記化学式1の単位を含む高分子化合物は、重量平均分子量が40,000g/mol以下、35,000g/mol以下、30,000g/mol以下、25,000g/mol以下、20,000g/mol以下または18,000g/mol以下であってもよい。重量平均分子量は、GPC(gel permeation chromatography)を用いて測定してもよい。
【0024】
また、化学式1の単位を含む高分子化合物は、数平均分子量が4,000g/mol以上、5,000g/mol以上、6,000g/mol以上、7,000g/mol以上、8,000g/mol以上、9,000g/mol以上、10,000g/mol以上、11,000g/mol以上または12,000g/mol以上であってもよく、他の例示において前記化学式1の単位を含む高分子化合物は、数平均分子量が35,000g/mol以下、30,000g/mol以下、25,000g/mol以下、20,000g/mol以下または15,000g/mol以下であってもよい。数平均分子量もGPCを用いて測定してもよい。
【0025】
また、化学式1の単位を含む高分子化合物は、多分散指数(PDI、polydispersity index)が0.8~2の範囲内であってもよく、1~1.5の範囲内であることが好ましい。
【0026】
化学式1の単位を含む高分子化合物が重量平均分子量、数平均分子量及び多分散指数が前記範囲を満たす場合、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダー及びフィラーが混合された後にも加工性に優れており、取り扱いが容易なだけでなく、これらの長期保管安定性を確保しうる。
【0027】
分散剤の含量は、硬化性組成物の全重量に対して0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.15重量%以上、0.2重量%以上または0.25重量%以上であってもよい。他の例示において、前記分散剤の含量は、硬化性組成物の全重量に対して1重量%以下、0.75重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下または0.3重量%以下であってもよい。前記分散剤の含量が前記範囲を満たす場合、相溶性はもちろん長期保管安定性を確保しうる。
【0028】
他の例示において、分散剤の含量は、後述するポリオレフィンバインダー100重量部に対して1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上または4重量部以上であってよく、10重量部以下、9重量部以下、8重量部以下または6重量部以下であってもよい。前記分散剤の含量が前記範囲を満たす場合、相溶性はもちろん長期保管安定性を確保しうる。
【0029】
化学式1の単位を含む高分子化合物は、分散剤の全重量に対して50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上または80重量%以上であってもよい。
【0030】
本発明による硬化性組成物の分散剤は、より優れた分散性を確保するためにエステル化合物をさらに含んでもよい。
【0031】
前記エステル化合物としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、アルキレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、アルキレングリコールジアセテート、アルキルラクテート及びアルキル2-ヒドロキシアイソアルキレートからなる群から選ばれた一つ以上であってもよい。前記エステル化合物は、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートであることが好ましい。
【0032】
本明細書で使用される用語であるアルキル基またはアルキレン基は、他の記載がない限り、炭素数1~20、または炭素数1~16、または炭素数1~12、または炭素数1~8、炭素数1~6、または炭素数1~4の直鎖または分岐鎖の非環状アルキル基またはアルキレン基であるか、炭素数3~20、または炭素数3~16、または炭素数3~12、または炭素数3~8、または炭素数3~6の環状アルキル基またはアルキレン基であるか、またはこれらが結合した飽和炭化水素基であってもよい。
【0033】
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、メチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどがある。
【0034】
前記アルキルアルコキシプロピオネートとしては、例えば、メチルメトキシプロピオネート、メチルエトキシプロピオネート、エチルメトキシプロピオネート及びエチルエトキシプロピオネートなどがある。
【0035】
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネートとしては、例えば、メチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、メチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート及びエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネートなどがある。
【0036】
アルキレングリコールジアセテートとしては、例えば、メチレングリコールジアセテート及びエチレングリコールジアセテートなどがある。
【0037】
アルキルラクテートとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどがある。
【0038】
アルキル2-ヒドロキシアイソアルキレートとしては、例えば、メチル2-ヒドロキシアイソメチレート、メチル2-ヒドロキシアイソエチレート、エチル2-ヒドロキシアイソメチレート及びブチル2-ヒドロキシアイソブチレートなどがある。
【0039】
エステル化合物の含量は、分散剤全重量に対して5重量%以上、7.5重量%以上、10重量%以上、12.5重量%以上、15重量%以上、17.5重量%以上または20重量%以上であってもよい。他の例示において、前記エステル化合物の含量は、分散剤の全重量に対して40重量%以下、38重量%以下、36重量%以下、34重量%以下、32重量%以下、30重量%以下、28重量%以下、26重量%以下、24重量%以下、22重量%以下または20重量%以下であってもよい。
【0040】
分散剤は、化学式1の単位を含む高分子化合物及びエステル化合物の他にも、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダーと反応せずに長期保管安定性を確保できれば、他の種類の分散剤をさらに含んで使用されてもよい。
【0041】
本発明による硬化性組成物は、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダーを含んでもよい。前記酸無水物単位は、無水マレイン酸単位または無水フタル酸単位であってもよく、無水マレイン酸単位であることが好ましい。また、前記酸無水物単位は、ポリオレフィンバインダーの主鎖に結合されていてもよく、前記ポリオレフィンバインダーが有する置換基または分岐鎖に結合されていてもよい。
【0042】
ポリオレフィンバインダーは、酸価が50mgKOH/g以上、55mgKOH/g以上、60mgKOH/g以上、65mgKOH/g以上または70mgKOH/g以上であってもよく、他の例示において、前記ポリオレフィンバインダーは、酸価が120mgKOH/g以下、110mgKOH/g以下、100mgKOH/g以下または90mgKOH/g以下であってもよい。前記ポリオレフィンバインダーの酸価は、DIN EN ISO 2114規格に従って測定された値であってもよい。前記酸価を通じて、ポリオレフィンバインダーに含まれる酸無水物単位の量が分かる。
【0043】
ポリオレフィンバインダーは、スチレン系単位、ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群から選ばれる1つ以上の単位を含んでもよい。前記ポリオレフィンバインダーは、ブタジエン単位を含むことが好ましい。
【0044】
ポリオレフィンバインダーは、重量平均分子量が3,000g/mol以上、4,000g/mol以上、5,000g/mol以上、6,000g/mol以上、7,000g/mol以上、8,000g/mol以上、9,000g/mol以上または10,000g/mol以上であってもよく、他の例示において、前記化学式1の単位を含む高分子化合物は、重量平均分子量が30,000g/mol以下、25,000g/mol以下、20,000g/mol以下または15,000g/mol以下であってもよい。重量平均分子量は、GPC(gel permeation chromatography)を用いて測定してもよい。
【0045】
また、ポリオレフィンバインダーは、数平均分子量が500g/mol以上、1,000g/mol以上、1,500g/mol以上、2,000g/mol以上、2,500g/mol以上または3,000g/mol以上であってもよく、他の例示において、前記ポリオレフィンバインダーは、数平均分子量が6,000g/mol以下、5,500g/mol以下、5,000g/mol以下、4,500g/mol以下、4,000g/mol以下または3,500g/mol以下であってもよい。数平均分子量もGPCを用いて測定してもよい。
【0046】
また、ポリオレフィンバインダーは、多分散指数(PDI)が2~5の範囲内であってもよく、2.75~3.75の範囲内であることが好ましい。
【0047】
ポリオレフィンバインダーが重量平均分子量、数平均分子量及び多分散指数が前記範囲を満たす場合、過量のフィラーを含んでも硬化前後に適正な粘度を保持できる。
【0048】
ポリオレフィンバインダーの含量は、分散剤100重量部に対して1,000重量部以上、1,200重量部以上、1,400重量部以上、1,600重量部以上、1,800重量部以上または2,000重量部以上であってもよい。他の例示において、前記ポリオレフィンバインダーの含量は、分散剤100重量部に対して3,200重量部以下、3,000重量部以下、2,800重量部以下、2,600重量部以下、2,400重量部以下または2,200重量部以下であってもよい。ポリオレフィンバインダーの含量が前記範囲を満たす場合、過量のフィラーと混合されても適正な粘度と長期保管安定性を確保しうる。
【0049】
本発明による硬化性組成物は、1液型組成物に含まれるか、または2液型組成物のうち硬化剤パートに含まれてもよい。
【0050】
本発明による硬化性組成物は、主剤パートと混合して2液型組成物を形成してもよい。このとき、前記主剤パートは、ヒドロキシ基が2つ以上含有された化合物が含まれてもよい。
【0051】
本発明による硬化性組成物は、その硬化物が熱伝導性を確保するためにフィラーを含んでもよい。このとき、フィラーは、熱伝導性フィラーであってもよい。
【0052】
用語の熱伝導性とは、硬化性組成物が主剤パートと混合されて2液型組成物を形成した後、前記2液型組成物で直径2cm以上及び厚さ500μmのディスク(disk)状サンプル(硬化物)として作製された状態で、前記サンプルの厚さ方向に沿ってASTM D5470規格またはISO 22007-2規格に従って測定したときに約1.2W/m・K以上の熱伝導性を示す場合を意味しうる。
【0053】
前記熱伝導度は、他の例示において、1.3W/m・K以上、1.4W/m・K以上、1.5W/m・K以上、1.6W/m・K以上、1.7W/m・K以上、1.8W/m・K以上、1.9W/m・K以上、2.0W/m・K以上、2.1W/m・K以上、2.2W/m・K以上、2.3W/m・K以上、2.4W/m・K以上、2.5W/m・K以上、2.6W/m・K以上、2.7W/m・K以上、2.8W/m・K以上、2.9W/m・K以上または3.0W/m・K以上程度でもよい。前記熱伝導度は、高い数値であるほど高い熱伝導性を意味するため、その上限が特に制限されるものではない。例えば、前記熱伝導度は、20W/m・K以下、18W/m・K以下、16W/m・K以下、14W/m・K以下、12W/m・K以下、10W/m・K以下、8W/m・K以下、6W/m・K以下または4W/m・K以下であってもよい。
【0054】
熱伝導性フィラー自体の熱伝導度としては、例えば、約1W/m・K以上、約5W/m・K以上、約10W/m・K以上または約15W/m・K以上であってもよい。他の例示において、前記熱伝導性フィラー自体の熱伝導度としては、例えば、約400W/m・K以下、約350W/m・K以下または約300W/m・K以下であってもよい。
【0055】
熱伝導性フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムまたは酸化チタンなどの酸化物類、窒化ホウ素、窒化ケイ素または窒化アルミニウムなどの窒化物類、炭化ケイ素などの炭化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水和金属類、銅、銀、鉄、アルミニウムまたはニッケルなどの金属充填材、チタンなどの金属合金充填材、石英、ガラスまたはシリカなどのケイ素粉末などであってもよく、これらに制限されるものではない。
【0056】
また、絶縁特性が確保できれば、グラファイト(graphite)などのカーボンフィラーの適用も考慮しうる。例えば、カーボンフィラーは、活性炭を用いることができる。硬化物内に含まれる前記フィラーの形態や割合は、特に制限されず、硬化性組成物の粘度、硬化物内での沈降可能性、目的とする熱抵抗ないしは熱伝導度、絶縁性、充填効果又は分散性などを考慮して選ばれてもよい。
【0057】
熱伝導性フィラーの形状は、球状及び/又は非球状(例えば、針状及び板状など)を必要に応じて適切に選択して使用されてもよく、これに制限されるものではない。
【0058】
熱伝導性フィラーは、必要に応じて適切に選ばれた1種又は2種以上を使用してもよい。また、同じ種類の熱伝導性フィラーを用いても形状が異なるものを混合して使用してもよく、平均粒径が異なるものを混合して使用してもよい。例えば、水酸化アルミニウム、アルミニウム及びアルミナを混合して熱伝導性フィラーとして使用してもよく、これらの形状と平均粒径は、互いに異なってもよい。
【0059】
また、充填される量を考慮すると、球状の熱伝導性フィラーを用いることが有利であるが、ネットワークの形成や伝導性などを考慮し、針状や板状などの形態の熱伝導性フィラーも使用されてもよい。
【0060】
一例において、硬化性組成物は、平均粒径が0.001μm~80μmの範囲内の熱伝導性フィラーを含んでもよい。前記熱伝導性フィラーの平均粒径は、他の例示において、0.01μm以上、0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上または約6μm以上であってもよい。前記熱伝導性フィラーの平均粒径は、他の例示において、約75μm以下、約70μm以下、約65μm以下、約60μm以下、約55μm以下、約50μm以下、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下または約5μm以下であってもよい。
【0061】
このとき、熱伝導性フィラーの平均粒径は、いわゆるD50粒径(メジアン粒径)として、粒度分布の体積基準累積50%での粒径を意味しうる。すなわち、体積基準で粒度分布を求め、全体積を100%とした累積曲線において累積値が50%となる地点の粒径を前記平均粒径といえる。前記のようなD50粒径は、レーザー回折法(laser Diffraction)方式で測定してもよい。
【0062】
熱伝導性フィラーのサイズによって大型熱伝導性フィラー、中型熱伝導性フィラー及び小型熱伝導性フィラーに区分できる。大型熱伝導性フィラーは、平均粒径が80μm以下、78μm以下、76μm以下、74μm以下または72μm以下であってもよい。他の例示において、大型熱伝導性フィラーは、平均粒径が60μm以上、62μm以上、64μm以上、66μm以上または68μm以上であってもよい。中型熱伝導性フィラーは、平均粒径が58μm以下、50μm以下、40μm以下または25μm以下であってもよい。他の例示において、中型熱伝導性フィラーは、平均粒径が10μm以上、12.5μm以上、15μm以上または17.5μm以上であってもよい。小型熱伝導性フィラーは、平均粒径が9μm以下、5μm以下、3μm以下または1μm以下であってもよい。他の例示において、小型熱伝導性フィラーは、平均粒径が0.001μm以上、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.4μm以上、0.8μm以上または1μm以上であってもよい。
【0063】
熱伝導性フィラーは、大型熱伝導性フィラー、中型熱伝導性フィラー及び小型熱伝導性フィラーのうち2つ以上を選んで使用されてもよい。このとき、熱伝導性フィラーは、本発明の硬化性組成物に含まれる酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダーとの適切な組み合わせにより常温速硬化性を確保できるように含量比率及び/又は粒径比率などを下記範囲内に満足させることができる。
【0064】
熱伝導性フィラーが大型熱伝導性フィラーを含む場合、前記大型熱伝導性フィラーの含量は、熱伝導性フィラーの全重量に対して30重量%以上、37.5重量%以上、42.5重量%以上、47.5重量%以上、50重量%以上、52.5重量%以上、55重量%以上、57.5重量%以上、60重量%以上または62重量%以上であってもよい。他の例示において、前記大型熱伝導性フィラーの含量は、熱伝導性フィラーの全重量に対して87.5重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、72.5重量%以下、70重量%以下、67.5重量%以下または65重量%以下であってもよい。また、大型熱伝導性フィラーは、球状粒子であることが好ましい。
【0065】
熱伝導性フィラーが中型熱伝導性フィラーを含む場合、前記中型熱伝導性フィラーの含量は、熱伝導性フィラーの全重量に対して5重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、14重量%以上、16重量%以上、18重量%以上または20重量%以上であってもよい。他の例示において、前記中型熱伝導性フィラーの含量は、熱伝導性フィラーの全重量に対して52.5重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、36重量%以下、32重量%以下、28重量%以下、24重量%以下または20重量%以下であってもよい。また、中型熱伝導性フィラーは、球状粒子であることが好ましい。
【0066】
熱伝導性フィラーが小型熱伝導性フィラーを含む場合、前記小型熱伝導性フィラーの含量は、熱伝導性フィラーの全重量に対して5重量%以上、7.5重量%以上、10重量%以上、12.5重量%以上または15重量%以上であってもよい。他の例示において、前記小型熱伝導性フィラーの含量は、熱伝導性フィラーの全重量に対して47.5重量%以下、40重量%以下、32.5重量%以下、25重量%以下、20重量%以下または17.5重量%以下であってもよい。また、小型熱伝導性フィラーは、非球状粒子であることが好ましい。
【0067】
熱伝導性フィラーが大型熱伝導性フィラー及び中型熱伝導性フィラーを含む場合、本発明による硬化性組成物の常温速硬化性を考慮すると、前記中型熱伝導性フィラーの含量は、大型熱伝導性フィラー100重量部に対して25重量部以上、26重量部以上、27重量部以上、28重量部以上、29重量部以上または30重量部以上であることが好ましい。他の例示において、本発明による硬化性組成物の常温速硬化性を考慮すると、前記中型熱伝導性フィラーの含量は、大型熱伝導性フィラー100重量部に対して45重量部以下、42.5重量部以下、40重量部以下、37.5重量部以下、35重量部以下または32.5重量部以下であることが好ましい。また、大型熱伝導性フィラーの平均粒径(D1)/中型熱伝導性フィラーの平均粒径(D2)の値は、2以上、2.25以上、2.5以上、2.75以上、3以上、3.25以上または3.5以上であることが好ましく、5以下、4.5以下、4.25以下、4以下、3.75以下または3.5以下であることが好ましい。大型及び中型熱伝導性フィラーが前記範囲を満たす場合、本発明による硬化性組成物の常温速硬化性を確保しうる。
【0068】
熱伝導性フィラーが大型熱伝導性フィラー及び小型熱伝導性フィラーを含む場合、本発明による硬化性組成物の常温速硬化性を考慮すると、前記小型熱伝導性フィラーの含量は、大型熱伝導性フィラー100重量部に対して15重量部以上、17.5重量部以上、20重量部以上または22.5重量部以上であることが好ましい。他の例示において、本発明による硬化性組成物の常温速硬化性を考慮すると、前記小型熱伝導性フィラーの含量は、大型熱伝導性フィラー100重量部に対して40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下または25重量部以下であることが好ましい。また、大型熱伝導性フィラーの平均粒径(D1)/小型熱伝導性フィラーの平均粒径(D3)の値は、50以上、52.5以上、55以上、57.5以上、60以上、62.5以上、65以上、67.5以上または70以上であることが好ましく、500以下、100以下、90以下、85以下、80以下、75以下または70以下であることが好ましい。大型及び小型熱伝導性フィラーが前記範囲を満たす場合、本発明による硬化性組成物の常温速硬化性を確保しうる。
【0069】
本発明において、大型熱伝導性フィラー、中型熱伝導性フィラー及び小型熱伝導性フィラーをすべて含む熱伝導性フィラーを使用することが最も好ましい。このとき、各粒子の含量比率と平均粒径比率は、前記の通りであり、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダーとこれらの適切な組み合わせにより本発明による硬化性組成物の常温速硬化性を確保しうる。
【0070】
熱伝導性フィラーは、モース硬度が6以上の熱伝導性フィラーを使用してもよい。本発明による硬化性組成物に含まれるアクリルモノマー成分と目的とする熱伝導度を考慮すると、モース硬度が6以上の熱伝導性フィラーの含量は、熱伝導性フィラーの全重量に対して70重量%以上、75重量%以上または80重量%以上であることが好ましい。他の例示において、モース硬度が6以上の熱伝導性フィラーの含量は、熱伝導性フィラーの全重量に対して92.5重量%以下、90重量%以下、87.5重量%以下または85重量%以下であることが好ましい。
【0071】
ただし、モース硬度が6以上の熱伝導性フィラーは、熱伝導の側面で有利な物性を持っているが、表面硬度が高く装置に損傷を起こすことがある。したがって、このような問題を防止するため、熱伝導性フィラーは、モース硬度が6未満の熱伝導性フィラーをさらに混合して使用してもよい。
【0072】
ただし、モース硬度が6未満の熱伝導性フィラーは、熱伝導の側面では、前記モース硬度が6以上の熱伝導性フィラーに比べて不利な物性を持っているので、これらの適切な混合を通じて目的とする熱伝導度を達成するとともに、硬度を下げて装備の損傷を防止しうる。
【0073】
このような点を考慮すると、モース硬度が6未満の熱伝導性フィラーの含量は、モース硬度が6以上の熱伝導性フィラー100重量部に対して5重量部以上、7.5重量部以上、10重量部以上、12.5重量部以上または15重量部以上であってもよく、他の例示において、30重量部以下、25重量部以下、22.5重量部以下または20重量部以下であってもよい。
【0074】
モース硬度が6以上の熱伝導性フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)などがあり、特に制限されるものではない。また、モース硬度が6未満の熱伝導性フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウムなどがあり、特に制限されるものではない。
【0075】
また、モース硬度が6以上の熱伝導性フィラーは、モース硬度が7以上、8以上または9以上であってもよく、モース硬度が6未満の熱伝導性フィラーは、モース硬度が5以下、4以下または3以下であってもよい。
【0076】
熱伝導性フィラーは、球状及び非球状粒子を含んでもよい。本発明において、用語の球状粒子は、球形度が約0.95以上の粒子を意味し、非球状粒子は、球形度が0.95未満の粒子を意味する。前記球形度は、粒子の粒状分析を通じて確認しうる。具体的には、3次元粒子であるフィラーの球形度(sphericity)は、粒子の表面積(S)とその粒子の同じ体積を有する球の表面積(S’)の割合(S’/S)と定義される。実際の粒子に対しては、一般的に円形度(circularity)を使用する。前記円形図は、実際の粒子の2次元イメージを求め、イメージの境界Pと同じイメージと同じ面積(A)を持つ円の境界の比で表し、下記数式により求められる。
【0077】
<円形度数式>
円形度=4πA/P2
【0078】
前記円形度は、0から1までの値で表され、完全な円は、1の値を有し、不規則な形態の粒子であるほど1より低い値を持つようになる。本明細書における球形度値は、Marvern社の粒状分析装備(FPIA-3000)により測定された円形度の平均値とした。
【0079】
本発明による硬化性組成物の適正な粘度及びチキソトロピー性を考慮すると、非球状粒子の含量は、球状粒子100重量部に対して5重量部以上、7.5重量部以上、10重量部以上、12.5重量部以上または15重量部以上であってもよく、他の例示において、30重量部以下、25重量部以下、22.5重量部以下または20重量部以下であってもよい。
【0080】
フィラーの含量は、分散剤100重量部に対して25,000重量部以上、26,000重量部以上、27,000重量部以上、28,000重量部以上、29,000重量部以上、30,000重量部以上、31,000重量部以上、32,000重量部以上または33,00重量部以上であってもよい。他の例示において、前記フィラーの含量は、分散剤100重量部に対して45,000重量部以下、43,000重量部以下、41,000重量部以下、39,000重量部以下、37,000重量部以下、36,000重量部以下、35,000重量部以下または34,000重量部以下であってもよい。フィラーの含量が前記範囲を満たす場合、適正な粘度、チキソトロピー性及び長期保管にも粒子の沈降現象を防止しうる。また、優れた熱伝導度を有する硬化物を形成しうる。
【0081】
また、本発明による硬化性組成物は、粘度を調節するためにチオール化合物をさらに含んでもよい。チオール化合物は、チオール基を有する化合物であれば特に制限されるものではないが、アルキル基が置換されたチオールであることが好ましい。また、チオール化合物は、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダーと作業容易性を考慮すると、炭素数2~16のアルキル基、炭素数4~14のアルキル基または炭素数8~12のアルキル基に置換されたチオールであることがより好ましい。
【0082】
また、チオール化合物の含量は、エステル化合物を含む分散剤との組み合わせを考慮すると、分散剤100重量部に対して100重量部以上、125重量部以上、150重量部以上、175重量部以上、200重量部以上、225重量部以上、250重量部以上、275重量部以上または300重量部以上であってもよい。他の例示において、前記チオール化合物の含量は、分散剤100重量部に対して500重量部以下、475重量部以下、450重量部以下、425重量部以下、400重量部以下、375重量部以下、350重量部以下または325重量部以下であってもよい。チオール化合物の含量が前記範囲を満たす場合、より優れた長期保管安定性を確保しうる。
【0083】
本発明による硬化性組成物は、必要に応じて可塑剤(plasticizer)をさらに含んでもよい。可塑剤は、物質の粘性を低下させるか、または塑性を低下させる添加剤として、フタレート系、トリメリット系、エポキシ系、ポリエステル系などを含んでもよい。フタレート系可塑剤としては、例えば、DEHP(ジエチルヘキシルフタレート、Diethylhexyl phthalate)、DINP(ジイソノニルフタレートDiisononyl phthalate)、DIDP(ジイソデシルフタレート、Diisodecy phthalate)などがあり、トリメリット系可塑剤としては、例えば、TOTM(トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)、Tris(2-Ethylhexyl)Trimellitate)などがある。また、ポリエステル系可塑剤としては、例えば、DINA(ジイソノニルアジペート、Diisononyl adipate)などがあり、エポキシ系可塑剤としては、例えば、エポキシ化大豆油(ESBO)などがある。また、可塑剤は、前記記載の他にもフェノールのアルキルスルホン酸エステル(CAS No:70775-94-9)及び汎用接着剤用エマルジョンとして使用されるポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate)などであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0084】
本発明による硬化性組成物は、必要に応じて難燃剤または難燃助剤などをさらに含んでもよい。難燃剤または難燃助剤などをさらに含む硬化性組成物は、硬化して難燃性樹脂を形成してもよい。難燃剤としては、特に制限されず、公知の様々な難燃剤が適用されてもよく、例えば、固相のフィラー状の難燃剤や液状難燃剤などが適用されてもよい。難燃剤としては、例えば、メラミンシアヌレート(melamine cynaurate)などの有機系難燃剤や水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤などがあるが、これらに制限されるものではない。硬化性組成物に含まれる熱伝導性フィラーの量が多い場合、液状の難燃材料(TEP、トリエチルホスフェート(Triethyl phosphate)又はTCPP、tris(1,3-chloro-2-propyl)phosphate(tris(1,3-chloro-2-propyl)phosphate)など)を使用してもよい。また、難燃上昇剤の作用が可能なシランカップリング剤が追加されてもよい。
【0085】
本発明による硬化性組成物は、前述した構成を含んでもよく、また溶剤型組成物、水系組成物または無溶剤型組成物であってもよい。
【0086】
本発明による硬化性組成物は、下記試験1により定義される押圧力が60gf以下、59gf以下、58gf以下、57gf以下、56gf以下、55gf以下、54gf以下、53gf以下、52gf以下、51gf以下、50gf以下、49gf以下または48gf以下であってもよい。押圧力が60gfより大きければ、硬化性組成物の分散性が低下して粒子が沈降したと評価できる。
【0087】
[試験1]
1)酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダー、フィラー及び分散剤を含む硬化性組成物を形成した直後、反応器に入れて常温で30日以上放置する。
【0088】
2)押圧力測定装置のチップ(tip)を前記1)で放置した硬化性組成物に一定速度で2/3地点まで注入する。
【0089】
3)前記2)で測定された力のうち最大力を押圧力と定義する
前記試験1の1)において、放置時間は、30日以上、40日以上、50日以上または60日以上であってもよい。
【0090】
ここで、常温とは、加温又は減温していない自然そのままの気温で、約15~30℃、20~28℃又は24~26℃の範囲内の温度を意味する。
【0091】
前記1)において、反応器は、ガラスバイアル(vial)状であってもよく、前記ガラスバイアルは、直径が約3cm及び高さが約10cmであってもよい。
【0092】
また、前記試験1の2)において、押圧力測定装置は、チップ(tip)の脱付着が可能であり、チップに接触する液状物質が加える力を測定できれば特に制限されず、物性分析器(Texture Analyser、TA)などが挙げられる。
【0093】
本発明による硬化性組成物は、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダー、フィラー、及びリン酸系高分子分散剤を含み、押圧力が60gf以下であってもよい。ここで、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダーとフィラーは、前述の通りである。また、リン酸系高分子分散剤は、前述した化学式1の単位を含む高分子化合物を含んでもよい。また、押圧力も前述した試験1により定義された押圧力が60gf以下、59gf以下、58gf以下、57gf以下、56gf以下、55gf以下、54gf以下、53gf以下、52gf以下、51gf以下、50gf以下、49gf以下または48以下であってもよい。
【0094】
硬化性組成物は硬化して硬化物を形成でき、下記の物性のうち少なくとも1つ以上の物性を有してもよい。下記の各物性は独立しており、いずれかの物性が他の物性を優先せず、硬化性組成物の硬化物は、下記の物性のうち少なくとも1つまたは2つ以上を満たすことができる。下記の物性を少なくとも1つまたは2つ以上を満たす硬化性組成物の硬化物は、硬化性組成物の各構成要素の組み合わせによるものである。
【0095】
また、硬化性組成物は、2液型組成物のうち硬化剤パートに含まれてもよい。すなわち、本発明による硬化性組成物を主剤パートと混合して2液型組成物を形成してもよい。このとき、前記主剤パートは、ヒドロキシ基が2つ以上含有された化合物が含まれてよい。下記の各物性は、前記2液型組成物が硬化した硬化物に対するものであってもよい。
【0096】
硬化物は、熱抵抗が約5K/W以下、約4.5K/W以下、約4K/W以下、約3.5K/W以下、約3K/W以下または約2.8K/W以下であってもよい。このような範囲の熱抵抗が現れるように調節する場合には、優れた冷却効率ないし放熱効率を確保しうる。前記熱抵抗は、ASTM D5470規格またはISO 22007-2規格に従って測定された数値であってもよく、測定する方式は、特に制限されるものではない。
【0097】
また、前記接着力は、硬化物が接触している任意の基板やモジュールケースに対する接着力であってもよい。前記のような接着力が確保できれば、様々な素材、例えば、バッテリーモジュールに含まれるケースないしはバッテリーセルなどに対して適正な接着力が示されることができる。また、このような範囲の接着力が確保されると、バッテリーモジュールにおいてバッテリーセルの充放電時に体積変化、バッテリーモジュールの使用温度の変化または硬化収縮などによる剥離などが防止されて優れた耐久性が確保できる。また、バッテリーパックの組み立て過程においてモジュールの分離及び再付着が可能になるように再作業性(re-workability)を確保しうる。
【0098】
硬化物は、自動車などの長い保証期間(自動車の場合、約15年以上)が要求される製品に適用するために耐久性を確保しうる。耐久性は、約-40℃の低温で30分保持した後、再び温度を80℃に上げて30分保持することを1サイクルとし、前記サイクルを100回繰り返す熱衝撃試験後にバッテリーモジュールのモジュールケースまたはバッテリーセルから離れたり、剥離したり、あるいはクラックが発生したりしないことを意味しうる。
【0099】
硬化物は、電気絶縁性が約3kV/mm以上、約5kV/mm以上、約7kV/mm以上、10kV/mm以上、15kV/mm以上または20kV/mm以上であってもよい。前記絶縁破壊電圧は、その数値が高いほど硬化物が優れた絶縁性を示すもので、約50kV/mm以下、45kV/mm以下、40kV/mm以下、35kV/mm以下、30kV/mm以下であってもよいが、特に制限されるものではない。前記のような絶縁破壊電圧を達成するため、前記硬化性組成物に絶縁性フィラーを適用してもよい。一般に、熱伝導性フィラーの中で、セラミックフィラーは、絶縁性が確保できる成分として知られている。前記電気絶縁性は、ASTMD149規格に従って測定された絶縁破壊電圧で測定されてもよい。また、前記硬化物が前記のような電気絶縁性が確保できれば、様々な素材、例えば、バッテリーモジュールに含まれるケースないしはバッテリーセルなどに対して性能を保持するとともに、安定性を確保しうる。
【0100】
硬化物は、比重が5以下であってもよい。前記比重は、他の例示において、4.5以下、4以下、3.5以下または3以下であってもよい。前記硬化物の比重は、その数値が低いほど応用製品の軽量化に有利であるため、その下限は、特に制限されない。例えば、前記比重は、約1.5以上または2以上であってもよい。硬化物が前記のような範囲の比重を示すため、例えば、熱伝導性フィラーの添加時になるべく低い比重でも目的とする熱伝導性が確保できるフィラー、すなわち自体的に比重の低いフィラーを適用するか、または表面処理がなされたフィラーを適用する方式などが使用されてもよい。
【0101】
硬化物は、なるべく揮発性物質を含まないことが適切である。例えば、前記硬化物は、不揮発性成分の割合が90重量%以上、95重量%以上または98重量%以上であってもよい。前記不揮発性成分との比率は、以下の方式により規定できる。すなわち、前記不揮発分は、硬化物を100℃で1時間程度保持した後に残存する部分を不揮発分と定義でき、したがって前記割合は、前記硬化物の初期重量と前記100℃で1時間程度保持した後の比率を基準として測定してもよい。
【0102】
硬化物は、必要に応じて劣化に対して優れた抵抗性を有し、可能な化学的に反応しない安定性が要求されることができる。
【0103】
硬化物は、硬化過程または硬化後に低い収縮率を有することが有利である。これにより、様々な素材、例えば、バッテリーモジュールに含まれるケースないしはバッテリーセルなどの製造または使用過程で発生し得る剥離や空隙の発生などを防止しうる。前記収縮率は、前述した効果を示すことができる範囲で適切に調節されてもよく、例えば、5%未満、3%未満または約1%未満であってもよい。前記収縮率は、その数値が低いほど有利であるため、その下限は、特に制限されない。
【0104】
硬化物は、さらに低い熱膨張係数(CTE)を有することが有利である。これにより、様々な素材、例えば、バッテリーモジュールに含まれるケースないしはバッテリーセルなどの製造または使用過程で発生し得る剥離や空隙の発生などを防止しうる。前記熱膨張係数は、前述の効果を示すことができる範囲で適切に調節されてもよく、例えば、300ppm/K未満、250ppm/K未満、200ppm/K未満、150ppm/K未満または100ppm/K未満であってもよい。前記熱膨張係数は、その数値が低いほど有利であるため、その下限は、特に制限されない。
【0105】
硬化物は、引張強度(tensile strength)が適切に調節されてもよく、これにより優れた耐衝撃性などを確保しうる。引張強度は、例えば、約1.0MPa以上の範囲で調節されてもよい。
【0106】
硬化物は、延伸率(elongation)が適切に調節されてもよく、これにより優れた耐衝撃性などを確保しうる。延伸率は、例えば、約10%以上または約15%以上の範囲で調節されてもよい。
【0107】
硬化物は、さらに適切な硬度を示すことが有利である。用語の適切な硬度とは、硬化物がブリトル(brittle)であると評価されない程度の硬度であってもよい。硬化物の硬度が高すぎると、硬化物が過度にブリトルになり、信頼性に悪影響を及ぼすことがある。また、硬度の調節により耐衝撃性、耐振動性を確保し、製品の耐久性を確保しうる。硬化物は、硬度計を用いて硬度を測定してもよい。また、硬化物は、例えば、ショア(shore)00タイプにおける硬度が80未満程度であってもよい。硬化物の硬度は、通常、その硬化物に含まれるフィラーの種類ないし割合によって左右され、過量のフィラーを含めると、通常、硬度が高くなる。
【0108】
硬化物は、さらに熱重量分析(TGA)における5%重量損失(weight loss)温度が400℃以上であるか、または800℃残量が70重量%以上であってもよい。このような特性により、様々な素材、例えばバッテリーモジュールに含まれるケースないしバッテリーセルなどに対して高温での安定性をより改善させることができる。前記800℃残量は、他の例示において、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上または約90重量%以上であってもよい。前記800℃の残量は、他の例示において、約99重量%以下であってもよい。前記熱重量分析(TGA)は、60cm3/分の窒素(N2)雰囲気下で20℃/分の昇温速度で25℃~800℃の範囲内で測定してもよい。前記熱重量分析(TGA)結果も硬化物の組成の調節を通じて達成しうる。例えば、800℃残量は、硬化物に含まれる熱伝導性フィラーの種類ないし割合により左右され、過量の熱伝導性フィラーを含めると、前記残量は増加する。ただし、硬化性組成物に使用されるポリマー及び/又はモノマーが他のポリマー及び/又はモノマーに比べて一般に耐熱性が高い場合には前記残量は更に高く、このように硬化物に含まれるポリマー及び/又はモノマー成分もその硬度に影響を及ぼす。
【0109】
本発明の硬化性組成物は、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダー、フィラー及び分散剤を攪拌混合して形成してもよい。また、前記硬化性組成物は、酸無水物単位を持つポリオレフィンバインダー、フィラー及び分散剤を添加し、可塑剤及び難燃剤などをさらに添加した後、攪拌混合して形成してもよい。
【0110】
本発明の硬化性組成物は、必要な成分がすべて含まれていれば、混合順序に対しては、特に制限されるものではない。
【0111】
本発明の硬化性組成物は、アイロン、洗濯機、乾燥機、衣類管理機、電気シェーバー、電子レンジ、電気オーブン、電気炊飯器、冷蔵庫、食器洗い機、エアコン、扇風機、加湿器、空気清浄機、携帯電話、無線機、テレビ、ラジオ、コンピュータ、ノートパソコンなど多様な電気製品及び電子製品または二次電池などのバッテリーに使用されて発生する熱を放熱させることができる。特に、バッテリーセルが集まって一つのバッテリーモジュールを形成し、複数のバッテリーモジュールが集まって一つのバッテリーパックを形成して製造する電池自動車バッテリーにおいて、バッテリーモジュールを連結する素材として本発明の硬化性組成物が使用されてもよい。バッテリーモジュールを連結する素材として本発明の硬化性組成物が使用される場合、バッテリーセルから発生する熱を放熱し、外部衝撃と振動からバッテリーセルを固定させる役割を果たすことができる。
【0112】
本発明は、発熱性素子及び冷却部位を含み、前記発熱性素子及び冷却部位との間で両者を熱的接触させている本発明の硬化性組成物の硬化物を含む装置を提供しうる。
【0113】
前記装置は、アイロン、洗濯機、乾燥機、衣類管理機、電気シェーバー、電子レンジ、電気オーブン、電気炊飯器、冷蔵庫、食器洗い機、エアコン、扇風機、加湿器、空気清浄機、携帯電話、無線機、テレビ、ラジオ、コンピュータ、ノートパソコンなど多様な電気製品及び電子製品または二次電池などのバッテリー(バッテリーセル及びバッテリーモジュールなど)であってもよい。
【0114】
本発明の硬化性組成物の硬化物は、発熱性素子から発生する熱を冷却部位に伝達できる。すなわち、前記硬化性組成物の硬化物は、前記発熱性素子から発生する熱を放熱できる。
【0115】
前記硬化性組成物の硬化物は、発熱性素子及び冷却部位の間に位置し、これらを熱的接触させることができる。熱的接触とは、前記硬化性組成物の硬化物が発熱性素子及び冷却部位と物理的に直接接触して前記発熱性素子から発生した熱を前記冷却部位に放熱するか、または前記硬化性組成物の硬化物が発熱性素子及び/又は冷却部位と直接接触しなくても(すなわち、硬化性組成物の硬化物と発熱性素子及び/又は冷却部位との間に別途の層が存在)、前記発熱性素子から発生した熱を前記冷却部位に放熱させることを意味する。
【発明の効果】
【0116】
本発明は、過量のフィラーを含んでも硬化前後に適正な粘度及びチキソトロピー性を有する硬化性組成物を提供しうる。
【0117】
本発明は、長期保管にも粒子の沈降現象のない硬化性組成物を提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1及び2と比較例1~4による硬化性組成物の時間による測定された力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0119】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を説明するが、本発明の範囲が下記の内容によって限定されるものではない。
【0120】
<物性測定方法>
(1)長期粒子沈降可否の評価方法
硬化性組成物をガラスバイアル(vial)に入れ、常温及び大気圧で約60日間放置した。以後、ガラスバイアル内にある硬化性組成物を目視で観察し、以下の基準に従って粒子沈降可否を評価した。
【0121】
PASS:バイアル内で硬化性組成物が層分離なしに液状形態を保持する。
NG:バイアル内で硬化性組成物の層分離が発生するか、または硬化して固まってしまう。
【0122】
(2)押圧力の測定方法
形成された硬化性組成物をガラスバイアル(vial、直径約3cm及び高さ約10cm)の底から30mmの高さになるように入れ、常温で約60日間放置した。
【0123】
押圧力の測定のため、物性分析器(Texture Analyser、TA)に脱着可能なチップ(tip)を作製した。具体的に、チップは、直径1mm及び高さ1cmを持つ円柱(T1部分)と直径3mm及び高さ3cmを持つ円柱(T3部分)を接合したもので、合計4cmの高さを持つ。前記T3部分の先端は、物性分析器と連結させた。以後、前記物性分析器の測定空間に前記放置された硬化性組成物が入っているガラスバイアルを位置させ、T1部分の先端は、前記ガラスバイアル内に入っている硬化性組成物と5mmの距離を置いて対向するようにして押圧力測定準備を終えた。
【0124】
以後、チップを2mm/sの一定速度で下降させながらガラスバイアル内に入っている硬化性組成物を押してチップに加えられる力を測定した。このとき、前記T1部分の先端が硬化性組成物と接触し始めてから20mmの深さに達するまで、時間によるチップに加えられる力と押圧力を測定した。
【0125】
実施例1
無水マレイン酸単位を含むポリブタジエン(A、メーカー:Evonik社、製品名:polyvest MA75)、熱伝導性フィラー(B)及び分散剤(C)を100:1,600:4.8(A:B:C)の重量比で混合して硬化性組成物を形成した。
【0126】
前記無水マレイン酸単位を含有するポリブタジエン(A)は、酸価が70~90mgKOH/g(DIN EN ISO 2114により確認)程度であり、重量平均分子量(Mw)が10,200g/mol程度であり、数平均分子量(Mn)が3,060g/mol程度であり、多分散指数(PDI=Mw/Mn)が約3.32程度であるものを使用した。
【0127】
また、前記熱伝導性フィラー(B)としては、平均粒径が約70μmの球状酸化アルミニウム(B1)、平均粒径が約20μmの球状酸化アルミニウム(B2)及び平均粒径が約1μmの非球状水酸化アルミニウム(B3)の65:20:15(B1:B2:B3)の重量比の混合物を使用した。
【0128】
本明細書で言及するフィラーの平均粒径は、いわゆるメジアン粒径とも呼ばれるD50粒径であり、粒度分布の体積基準累積曲線の累積50%での粒径(メジアン径)である。このような粒径は、体積基準で粒度分布を求め、全体積を100%とした累積曲線において累積値が50%となる地点での粒径と定義できる。前記D50粒径は、ISO-13320に準拠してMarven社のMASTERSIZER3000装備を用いて測定でき、溶媒としては、エタノール(Ethanol)を用いた。
【0129】
前記分散剤(C)としては、BYK社のDISPERBYK-118を使用した。前記分散剤は、重量平均分子量(Mw)が約16,500g/mol程度であり、多分散指数(PDI=Mw/Mn)が約1.23程度であった。また、前記分散剤は、全重量を基準として約20重量%がプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(propyleneglycol monomethyl ether acetate)となり、残りは、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)及びリン酸(PA)の共重合単位である化学式1の単位を含む化合物である。
【0130】
【0131】
前記化学式1において、p/qは、約1である。
【0132】
実施例2
無水マレイン酸単位を含むポリブタジエン(A、メーカー:Evonik社、製品名:polyvest MA75)、熱伝導性フィラー(B)及び分散剤(C)を100:1,600:4.8(A:B:C)の重量比で混合し、チオール化合物(D)をさらに混合して硬化性組成物を形成した以外は、前記実施例1と同じ方式で硬化性組成物を形成した。前記チオール化合物(D)は、1-ドデカンチオール(1-dodecantiol)を使用し、添加した前記チオール化合物(D)の含量は、分散剤(C)100重量部に対して300重量部である。
【0133】
比較例1
前記実施例1と同様の無水マレイン酸単位を含有するポリブタジエン(A、メーカー:Evonik社、製品名:polyvest MA75)及び熱伝導性フィラー(B)を使用するが、分散剤(C)を使用せずに100:1,600(A:B)の重量比で混合して硬化性組成物を形成した。
【0134】
比較例2
分散剤(C)としてリン酸系分散剤であるBYK社のDISPERBYK-111を用いた以外は、前記実施例1と同じ方式で硬化性組成物を形成した。前記DISPERBYK-111は、重量平均分子量(Mw)が約1,750g/mol程度であり、多分散指数(PDI=Mw/Mn)が約1.7程度であった。
【0135】
比較例3
分散剤(C)としてリン酸系分散剤であるBYK社のDISPERBYK-102を用いた以外は、前記実施例1と同じ方式で硬化性組成物を形成した。前記DISPERBYK-102は、比較例2で用いたDISPERBYK-111に比べて極性(polarity)が低く、重量平均分子量(Mw)が約1,630g/mol程度であり、多分散指数(PDI=Mw/Mn)が約1.46程度であった
【0136】
比較例4
無水マレイン酸単位を含むポリブタジエン(A、メーカー:Evonik社、製品名:polyvest MA75)、熱伝導性フィラー(B)及びチオール化合物(D)を100:1,600:4.8(A:B:D)の重量割合で混合して硬化性組成物を形成した以外は、前記実施例1と同じ方式で硬化性組成物を形成した。前記チオール化合物(D)は、1-ドデカンチオール(1-dodecantiol)を使用した。
【0137】
前記実施例及び比較例の物性測定結果を下記表に示す。
【0138】
【0139】
表1に示すように、実施例1及び2による硬化性組成物は、長期粒子沈降可否評価において長時間放置にもかかわらず沈降が起こらなかったことが分かり、これにより長時間での保存安定性に優れていることが分かる。
【0140】
一方、比較例1~4による硬化性組成物は、長期粒子沈降可否の評価では、バイアルの下に粒子が沈降して層分離が発生した。
【0141】
ここで表1に示すように、実施例1による硬化性組成物の押圧力は、46.8gf及び実施例2による硬化性組成物の押圧力は、27.7gfであり、いずれも長期放置しても粒子沈降が発生しないことが分かる。
【0142】
一方、比較例1~4による硬化性組成物の押圧力は、それぞれ67.0gf、219.7gf、184.8gf及び65.9gfであり、いずれも長期放置時に粒子沈降が発生したことが分かる。
【0143】
図1は、本発明の実施例1及び2と比較例1~4による硬化性組成物の時間による測定された力を示すグラフである。
図1において、時間による押圧力が急激に上昇する部分は、チップのT3部分が硬化性組成物と接触したときを意味する。
【0144】
図1に示すように、実施例1と2及び比較例1~4による硬化性組成物に対する最大の力は、前記表1に示す通りである。
【0145】
以上、本発明による実施例に基づいて本発明の構成と特徴を説明したが、本発明は、これに限定されず、本発明の思想と範囲内で様々に変更または変形できるのは、本発明が属する技術分野の通常の技術者にとって明白なものであり、したがって、このような変更または変形は、添付の特許請求の範囲に属することを明らかにする。