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特許7515960非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240708BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240708BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240708BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240708BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M4/48
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023533750
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 KR2022012763
(87)【国際公開番号】W WO2023027533
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0113470
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウー・オ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ギョ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-164860(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0062158(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0566-10/0569
H01M 10/052
H01M 4/36-4/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩と、
非水性有機溶媒と、
下記化学式1で表される化合物と、を含む、非水電解液:
【化1】
(前記化学式1中、
は、-CH 、CF 、-OCH 、およびOCF から選択される少なくとも1つであり、
は、
【化2】
および
【化3】
から選択される少なくとも1つである。)
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1~化学式1-4で表される化合物から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の非水電解液。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項3】
前記化学式1で表される化合物は、非水電解液の全重量を基準として0.1重量%~7.0重量%で含まれる、請求項1に記載の非水電解液。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物は、非水電解液の全重量を基準として0.5重量%~5.0重量%で含まれる、請求項1に記載の非水電解液。
【請求項5】
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、
請求項1からのいずれか一項に記載の非水電解液と、を含む、リチウム二次電池。
【請求項6】
前記負極は、シリコン系活物質を含む、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記シリコン系活物質は、金属シリコン(Si)、シリコン酸化物(SiO、ここで、0<x<2)、炭化ケイ素(SiC)、およびSi-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記負極は、炭素系活物質をさらに含む、請求項に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年8月26日付の韓国特許出願第10-2021-0113470号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、高温安定性および高温耐久性が向上した非水電解液、およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、情報社会の発達により、個人ITデバイスとコンピュータネットワークが発達しており、これに伴い、電気エネルギーに対する社会全体の依存度が高くなっている。そのため、高い安定性を有するリチウムイオン二次電池の需要が益々増加している。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、二次電池技術の中でも、理論的にエネルギー密度が最も高い電池システムであって、種々のデバイスに適用可能であり、個人ITデバイスなどに適用できる程度に小型化が可能であるという利点がある。
【0005】
リチウムイオン二次電池は、リチウムを含有している遷移金属酸化物からなる正極活物質を含む正極と、リチウムを貯蔵できる炭素系素材などの負極活物質からなる負極と、リチウムイオンを伝達する媒体となる非水電解液と、セパレータと、から構成される。
【0006】
前記リチウム二次電池は、初期充電時に、リチウム金属酸化物などの正極活物質から出たリチウムイオンが負極活物質に移動し、負極活物質の層間に挿入される。この際、前記リチウムイオンは反応性が強いため、負極活物質の表面で電解液組成物と負極活物質を構成する物質が反応し、負極活物質の表面に一種の保護膜であるSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成することになる。
【0007】
SEI被膜は、電解液組成物中でリチウムイオンとともに移動する分子量の大きい有機溶媒分子が負極活物質の層間に挿入され、負極構造が破壊されることを防ぐ。よって、電解液組成物と負極活物質の接触を防止することで、電解液組成物の分解が発生することなく、電解液組成物中のリチウムイオンの量が可逆的に維持され、安定した充放電が維持される。そのため、負極の表面に安定なSEI被膜を形成させるための添加剤に関する関心が増加している。
【0008】
一方、近年、前記負極活物質成分として、黒鉛に比べて高い理論容量を有し、高いエネルギー密度を実現することができるシリコン系負極活物質が浮上している。
【0009】
しかしながら、シリコン系負極活物質は、繰り返される充放電により活物質粒子の深刻な体積変化が起こり、これにより、負極の表面に形成されたSEI被膜のクラックが発生する。かかるクラックにより、新しい負極表面が電解液に継続的に露出することで、厚く且つ不安定な被膜が生成される恐れがある。不安定な構造の被膜は、安定性、特に、高温安定性を阻害し得る。
【0010】
したがって、従来のカーボネート系有機溶媒から形成されたSEI被膜に代えて、高温耐久性の高い安定なSEI被膜を形成できる非水電解液の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、シリコン系負極の表面に安定な被膜を形成することができる非水電解液を提供することを課題とする。
【0012】
また、本発明は、前記非水電解液を含むことで、高温安定性および高温耐久性が向上したリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、
リチウム塩と、
非水性有機溶媒と、
下記化学式1で表される化合物と、を含む、非水電解液を提供する。
【0014】
【化1】
【0015】
前記化学式1中、
は、少なくとも1つのフッ素元素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~5のアルキル基、または-OR(Rは、少なくとも1つのフッ素元素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~5のアルキル基である)であり、
は、少なくとも1つの窒素原子を含む炭素数2~8のヘテロシクロアルケニル基、または-C(O)-R(Rは、少なくとも1つの窒素原子を含む炭素数2~8のヘテロシクロアルケニル基である)である。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータと、本発明の非水電解液と、を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の非水電解液に含まれる化学式1で表される化合物は、構造内に少なくとも1つの窒素およびフッ素原子を含む化合物であって、前記化合物中の窒素原子は、ルイス塩基として作用し、電解質分解産物として発生するルイス酸を効果的に除去することができ、前記フッ素原子は、還元分解され、負極の表面にLiF含有の安定な被膜を形成することができる。よって、前記化学式1の化合物を含む本発明の非水電解液を用いると、初期抵抗が一定のレベルを満たすとともに、高温安定性および高温耐久性が向上したリチウム二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
【0019】
本明細書および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0020】
また、本明細書で用いられる用語は、ただ例示的な実施形態を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0021】
本発明を説明するに先立ち、本明細書において、「含む」、「備える」、「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせの存在または付加可能性を予め排除するものではないと理解されるべきである。
【0022】
一方、本明細書において、「炭素数a~b」の記載において、「a」および「b」は、具体的な官能基に含まれる炭素原子の個数を意味する。すなわち、前記官能基は、「a」~「b」個の炭素原子を含み得る。例えば、「炭素数1~5のアルキル基」は、炭素数1~5の炭素原子を含むアルキル基、すなわち、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-CH(CH)CH、-CH(CH)CHCHなどを意味する。
【0023】
また、本明細書において、「置換」とは、別に定義しない限り、炭素に結合された少なくとも1つの水素が、水素以外の元素で置換されることを意味し、例えば、炭素数1~6のアルキル基またはフッ素で置換されることを意味する。
【0024】
非水電解液
一実施形態によると、本発明は、非水電解液を提供する。
【0025】
前記非水電解液は、
リチウム塩と、
非水性有機溶媒と、
下記化学式1で表される化合物と、を含む。
【0026】
【化2】
【0027】
前記化学式1中、
は、少なくとも1つのフッ素元素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~5のアルキル基、または-OR(Rは、少なくとも1つのフッ素元素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~5のアルキル基である)であり、
は、少なくとも1つの窒素原子を含む炭素数2~8のヘテロシクロアルケニル基、または-C(O)-R(Rは、少なくとも1つの窒素原子を含む炭素数2~8のヘテロシクロアルケニル基である)である。
【0028】
(1)リチウム塩
先ず、リチウム塩について説明すると、次のとおりである。
【0029】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池用非水電解液に通常用いられるものなどが制限されずに使用可能であり、例えば、カチオンとしてLiを含み、アニオンとして、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、B10Cl10 、AlCl 、AlO 、PF 、CFSO 、CHCO 、CFCO 、AsF 、SbF 、CHSO 、(CFCFSO、(CFSO、(FSO、BF 、BC 、PF 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CSO 、CFCFSO 、CFCF(CFCO、(CFSOCH、CF(CFSO 、およびSCNからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0030】
具体的に、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiClO、LiB10Cl10、LiAlCl、LiAlO、LiPF、LiCFSO、LiCHCO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiCHSO、LiN(SOF)(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiFSI)、LiN(SOCFCF(lithium bis(pentafluoroethanesulfonyl)imide、LiBETI)、およびLiN(SOCF(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、LiTFSI)からなる群から選択される単一物または2種以上の混合物を含んでもよく、上述のリチウム塩の他にも、リチウム二次電池の電解液に通常用いられるリチウム塩が制限されずに使用可能である。具体的に、前記リチウム塩はLiPFを含んでもよい。
【0031】
前記リチウム塩は、通常使用可能な範囲内で適宜変更することができるが、最適の電極表面の腐食防止用被膜の形成効果を得るために、電解液中に0.8M~3.0Mの濃度、具体的には1.0M~3.0Mの濃度で含まれてもよい。前記リチウム塩の濃度が上記の範囲を満たす場合、最適の含浸性を実現するように非水電解液の粘度を制御することができ、リチウムイオンの移動性を向上させることで、リチウム二次電池の容量特性およびサイクル特性の改善効果を得ることができる。
【0032】
(2)非水性有機溶媒
また、非水性有機溶媒についての説明は、次のとおりである。
【0033】
前記非水性有機溶媒としては、非水電解液に通常用いられる種々の有機溶媒が制限されずに使用できるが、二次電池の充放電過程における酸化反応などによる分解が最小化され、添加剤とともに目的の特性を発揮することができるものであれば、その種類が制限されない。
【0034】
具体的に、前記非水性有機溶媒は、環状カーボネート系有機溶媒、直鎖状カーボネート系有機溶媒、またはこれらの混合有機溶媒を含んでもよい。
【0035】
前記環状カーボネート系有機溶媒は、誘電率が高いため非水電解液中のリチウム塩をよく解離させる高粘度の有機溶媒であり、その具体的な例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、およびビニレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つ以上の有機溶媒を含んでもよく、中でも、エチレンカーボネートを含んでもよい。
【0036】
前記直鎖状カーボネート系有機溶媒は、低粘度および低誘電率を有する有機溶媒であって、その具体例として、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つ以上の有機溶媒を含んでもよく、具体的に、エチルメチルカーボネート(EMC)を含んでもよい。
【0037】
本発明の非水性有機溶媒は、前記環状カーボネート系有機溶媒および直鎖状カーボネート系有機溶媒を10:90~80:20の体積比、具体的には50:50~70:30の体積比で混合して適用することができる。前記環状カーボネート系有機溶媒および直鎖状カーボネート系有機溶媒の体積比が上記の範囲を満たす場合、より高い電気伝導率を有する非水電解液を製造することができる。
【0038】
また、本発明の非水性電解液は、環状カーボネート系有機溶媒に比べて相対的に高温および高電圧駆動時における安定性が高い直鎖状エステル系有機溶媒および/または環状エステル系有機溶媒をさらに含むことで、高電圧駆動時にガスの発生を引き起こす環状カーボネート系有機溶媒の欠点を改善するとともに、高いイオン伝導率を実現することができる。
【0039】
前記直鎖状エステル系有機溶媒としては、その具体的な例として、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよく、具体的には、エチルプロピオネートおよびプロピルプロピオネートのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0040】
また、前記環状エステル系有機溶媒としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、およびε-カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0041】
一方、前記本発明の非水電解液中において、リチウム塩および添加剤である化学式1で表される化合物などを除いた残部は、別に断らない限り、全て非水性有機溶媒である。
【0042】
(3)化学式1で表される化合物
本発明の非水電解液は、添加剤として、下記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0043】
【化3】
【0044】
前記化学式1中、
は、少なくとも1つのフッ素元素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~5のアルキル基、または-OR(Rは、少なくとも1つのフッ素元素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~5のアルキル基である)であり、
は、少なくとも1つの窒素原子を含む炭素数2~8のヘテロシクロアルケニル基、または-C(O)-R(Rは、少なくとも1つの窒素原子を含む炭素数2~8のヘテロシクロアルケニル基である)である。
【0045】
従来、非水電解液添加剤として用いられている公知の物質であるフッ素含有の環状カーボネート化合物、例えば、下記化学式2で表されるフルオロエチレンカーボネート(FEC)も、有機無機複合被膜を形成すると知られている。
【0046】
【化4】
【0047】
しかし、前記フルオロエチレンカーボネートは、化学的に不安定であるため、ルイス酸の存在下で分解されやすいだけでなく、シリコン系負極を含む二次電池に適用した場合、高温安定性に劣るため、単独添加剤として含まれている際には、強固な被膜を形成することが困難であるという欠点がある。
【0048】
これに対し、本発明の添加剤として用いられる前記化学式1で表される化合物は、構造内に、窒素原子と選択的にフッ素原子を含んでいることで、電気化学的分解反応時に、正極および負極の表面、特に、シリコン系負極の表面に、耐酸化性を確保できる炭素原子と、窒素およびフッ素元素を含有した強固な有機無機複合被膜を容易に形成することができる。すなわち、前記化合物中の窒素原子は、ルイス塩官能基として作用し、電解質分解産物として発生するルイス酸を除去することで、SEI分解反応を制御し、非水性有機溶媒の追加分解を抑制することができる。また、本発明の化学式1で表される化合物の構造内にフッ素元素が含まれると、化合物の還元分解反応により負極のSEI膜成分であるLiFを形成することで、SEIの物性を強化することができる。したがって、負極の収縮膨張によりSEIの不安定性が激しくなるシリコン系負極の表面に安定なSEIを形成し、二次電池の高温安定性および高温耐久性の効果を実現することができる。
【0049】
一方、前記化学式1中、Rは、少なくとも1つのフッ素元素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~3のアルキル基、または-OR(Rは、少なくとも1つのフッ素元素で置換されているかまたは置換されていない炭素数1~3のアルキル基である)であり、
は、少なくとも1つの窒素原子を含む炭素数2~6のヘテロシクロアルケニル基、または-C(O)-R(Rは、少なくとも1つの窒素原子を含む炭素数2~6のヘテロシクロアルケニル基である)である。
【0050】
具体的に、前記化学式1中、Rは、-CH、CF、-OCH、およびOCFから選択される少なくとも1つであり、Rは、
【化5】
および
【化6】
から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0051】
より具体的に、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1~化学式1-4で表される化合物から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0052】
【化7】
【0053】
【化8】
【0054】
【化9】
【0055】
【化10】
【0056】
前記化学式1で表される化合物は、非水電解液の全重量を基準として、0.1重量%~7.0重量%で含まれてもよい。
【0057】
前記化学式1で表される化合物が上記の範囲で含まれる場合、正極の表面に安定な被膜を形成することで、正極から金属異物が溶出されることを抑える効果が高く、特に、シリコン系負極の表面上に安定な被膜を形成し、電極と電解液の副反応を効果的に抑制することで、ガスの発生と、それによるセルの膨潤を防止することができる。したがって、電池の高温安定性および高温耐久性効果をより向上させることができる。
【0058】
前記化学式1で表される化合物の含量が0.1重量%以上である場合、安定な被膜を形成するとともに、電池の駆動中に電解質分解産物として発生するルイス酸の除去効果をより安定に維持することができる。また、前記化学式1で表される化合物の含量が7.0重量%以下である場合、余剰の化合物による電解液の粘度増加を防止するとともに、電池内におけるイオンの移動度を改善することができ、過度な被膜の形成を抑えて電池抵抗の増加を効果的に防止することができるため、容量およびサイクル特性の低下を防止することができる。
【0059】
具体的に、前記化学式1で表される化合物は、非水電解液の全重量を基準として、0.5重量%~5.0重量%、より具体的には0.5重量%~3.0重量%、さらに具体的には1.0重量%~3.0重量%で含まれてもよい。
【0060】
(4)その他の添加剤
また、本発明の非水電解液は、高出力の環境で非水電解液が分解されて負極の崩壊が引き起こされることを防止するか、低温高率放電特性、高温安定性、過充電防止、高温での電池膨張抑制効果などをより向上させるために、その他の付加的添加剤をさらに含んでもよい。
【0061】
かかるその他の添加剤の例としては、環状カーボネート系化合物、ハロゲン置換のカーボネート系化合物、スルトン系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系またはホスファイト系化合物、ボレート系化合物、ベンゼン系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、およびリチウム塩系化合物からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0062】
前記環状カーボネート系化合物としては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)などが挙げられる。
【0063】
前記ハロゲン置換のカーボネート系化合物としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられる。
【0064】
前記スルトン系化合物は、例えば、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,4-ブタンスルトン、エテンスルトン、1,3-プロペンスルトン(PRS)、1,4-ブテンスルトン、および1-メチル-1,3-プロペンスルトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物であってもよい。
【0065】
前記サルフェート系化合物は、例えば、エチレンサルフェート(Ethylene Sulfate;Esa)、トリメチレンサルフェート(Trimethylene sulfate;TMS)、メチルトリメチレンサルフェート(Methyl trimethylene sulfate;MTMS)などであってもよい。
【0066】
前記ホスフェート系またはホスファイト系化合物は、例えば、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、およびトリス(トリフルオロエチル)ホスファイトからなる群から選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0067】
前記ボレート系化合物としては、テトラフェニルボレート、負極の表面に被膜を形成できるリチウムオキサリルジフルオロボレート(LiODFB)、リチウムビスオキサレートボレート(LiB(C、LiBOB)などが挙げられる。
【0068】
前記ベンゼン系化合物はフルオロベンゼンなどであってもよく、前記アミン系化合物はトリエタノールアミン、エチレンジアミンなどであってもよい。
【0069】
前記シラン系化合物は、テトラビニルシランなどであってもよい。
【0070】
前記リチウム塩系化合物は、前記非水電解液に含まれるリチウム塩と異なる化合物であって、LiPOまたはLiBFなどが挙げられる。
【0071】
かかるその他の添加剤の中でも、初期活性化工程時に、負極の表面にさらに強固なSEI被膜を形成するために、優れた負極の表面への被膜形成効果を有するその他の添加剤、具体的に、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、およびリチウムオキサリルジフルオロボレート(LiODFB)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0072】
前記その他の添加剤は、2種以上の化合物を併用して用いてもよく、非水電解液の全重量を基準として、0.01~50重量%、具体的には0.01~10重量%で含まれてもよく、好ましくは、0.05~5重量%で含まれてもよい。前記その他の添加剤の含量が上記の範囲である場合、サイクル特性が改善され、過量添加による電池の副反応が防止され、未反応物の残存または析出が防止されることができて好ましい。
【0073】
リチウム二次電池
また、本発明の他の実施形態は、正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータと、前述の本発明の非水電解液と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【0074】
本発明のリチウム二次電池は、正極、セパレータ、および負極が順に積層されている電極組立体を形成して電池ケースに収納した後、本発明の非水電解液を注液することで製造することができる。
【0075】
かかる本発明のリチウム二次電池を製造する方法は、当技術分野で知られている通常の方法により製造されて適用可能であり、具体的には、後述のとおりである。
【0076】
(1)正極
本発明に係る正極は、正極活物質を含む正極活物質層を含み、必要に応じて、前記正極活物質層は、導電材および/またはバインダーをさらに含んでもよい。
【0077】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であって、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、またはアルミニウムなどの1種以上の金属とリチウムを含むリチウム複合金属酸化物を含んでもよい。
【0078】
具体的に、前記正極活物質は、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoOなど)、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO、LiMnなど)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-YMn(ここで、0<Y<1)、LiMn2-zNi(ここで、0<Z<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y1CoY1(ここで、0<Y1<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y2MnY2(ここで、0<Y2<1)、LiMn2-z1Coz1(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NiCoMnr1)O(ここで、0<p<1、0<q<1、0<r1<1、p+q+r1=1)またはLi(Nip1Coq1Mnr2)O(ここで、0<p1<2、0<q1<2、0<r2<2、p1+q1+r2=2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr3s2)O(ここで、Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、Ti、およびMoからなる群から選択され、p2、q2、r3、およびs2は、それぞれ独立の元素の原子分率であって、0<p2<1、0<q2<1、0<r3<1、0<s2<1、p2+q2+r3+s2=1である)などを含んでもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の化合物が含まれてもよい。
【0079】
中でも、電池の容量特性および安定性を高めることができる点から、前記正極活物質は、リチウム-コバルト酸化物、リチウム-マンガン系酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物、およびリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよく、好ましくは、ニッケルの含有量が55atm%以上のリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物、およびニッケルの含有量が55atm%以上のリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0080】
具体的に、前記正極活物質は、その代表例として、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O、Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O、およびLi(Ni0.86Co0.05Mn0.07Al0.02)Oからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、好ましくは、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O、Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O、またはLi(Ni0.86Co0.05Mn0.07Al0.02)Oを含んでもよい。
【0081】
前記正極活物質は、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、80重量%~99重量%、具体的には90重量%~99重量%で含まれてもよい。この際、前記正極活物質の含量が80重量%以下である場合、エネルギー密度が低くなり、容量が低下し得る。
【0082】
前記導電材は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどの炭素粉末;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、またはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
【0083】
前記導電材は、通常、正極活物質層中の固形分の全重量を基準として1~30重量%で添加される。
【0084】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着、および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす成分であって、通常、正極活物質層中の固形分の全重量を基準として1~30重量%で添加される。かかるバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride、PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリビニルアルコールを含むポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;およびシラン系バインダーなどが挙げられる。
【0085】
上記のような本発明の正極は、当技術分野において公知されている正極の製造方法により製造されることができる。例えば、前記正極は、正極活物質、バインダー、および/または導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極スラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することで正極活物質層を形成する方法、または、前記正極活物質層を別の支持体上にキャストした後、支持体を剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートする方法などにより製造されることができる。
【0086】
前記正極集電体としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものが用いられてもよい。
【0087】
前記溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone))などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられてもよい。例えば、正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む活物質スラリー中の固形分の濃度が10重量%~70重量%、好ましくは20重量%~60重量%となるように含まれてもよい。
【0088】
(2)負極
次に、負極について説明する。
【0089】
本発明に係る負極は、負極活物質を含む負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、必要に応じて、導電材および/またはバインダーをさらに含んでもよい。
【0090】
前記負極活物質としては、当業界で用いられる種々の負極活物質、例えば、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素系負極活物質、リチウムをドープおよび脱ドープできるシリコン系負極活物質、またはこれらの混合物などが用いられてもよい。
【0091】
前記炭素系負極活物質としては、特に制限されずに使用可能であり、その代表例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)などのグラファイト系物質;熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso-carbon microbeads)、メソフェーズピッチ(Mesophase pitches)、および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素、ソフトカーボン(soft carbon)、ハードカーボン(hard carbon)などが使用できる。前記炭素系負極活物質の形状は特に制限されず、無定形、板状、鱗片状、球状、または繊維状などのような多様な形状の物質が用いられてもよい。
【0092】
好ましくは、前記炭素系負極活物質は、天然黒鉛および人造黒鉛の少なくとも1つを含んでもよい。より好ましくは、前記炭素系負極活物質は、天然黒鉛および人造黒鉛を含んでもよい。天然黒鉛と人造黒鉛をともに用いる場合、集電体との接着力が高くなり、活物質の脱離を抑制することができる。
【0093】
他の実施形態によると、前記負極活物質は、シリコン系負極活物質を含んでもよく、前記シリコン系負極活物質は、例えば、金属シリコン(Si)、シリコン酸化物(SiO、ここで、0<x<2)、炭化ケイ素(SiC)、およびSi-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0094】
前記シリコン系負極活物質は、炭素系負極活物質に比べて高い容量特性を示すため、シリコン系負極活物質をさらに含む場合、より優れた容量特性を得ることができる。
【0095】
他の実施形態によると、本発明において、負極活物質は、炭素系負極活物質およびシリコン系負極活物質の混合物を含んでもよい。
【0096】
前記炭素系負極活物質および前記シリコン系負極活物質の具体的な例は、上述のとおりである。
【0097】
前記シリコン系負極活物質および炭素系負極活物質の混合比率は、重量比で、3:97~99:1、好ましくは5:95~30:70、より好ましくは5:95~15:85であってもよい。シリコン系負極活物質と炭素系負極活物質の混合比率が上記の範囲を満たす場合、容量特性を向上させるとともに、シリコン系負極活物質の体積膨張が抑えられ、優れたサイクル性能を確保することができる。
【0098】
一方、前記負極活物質は、炭素系負極活物質またはシリコン系負極活物質の他にも、リチウム金属;リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などの遷移金属酸化物;および通常の金属複合酸化物のうち少なくとも1つを特に制限されずに適用することができる。
【0099】
前記負極活物質は、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として、80重量%~99重量%で含まれてもよい。
【0100】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であって、負極活物質層中の固形分の全重量を基準として、1~20重量%で添加されてもよい。かかる導電材としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
【0101】
前記バインダーは、導電材、活物質、および集電体の間の結合を補助する成分であって、通常、負極活物質層中の固形分の全重量を基準として1~30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリビニルアルコールを含むポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;シラン系バインダーなどが挙げられる。
【0102】
前記負極は、当技術分野において公知されている負極の製造方法により製造されることができる。例えば、前記負極は、負極活物質と、選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極活物質スラリーを負極集電体上に塗布して圧延および乾燥することで負極活物質層を形成する方法、または、前記負極活物質層を別の支持体上にキャストした後、支持体を剥離させて得たフィルムを負極集電体上にラミネートする方法により製造されることができる。
【0103】
前記負極集電体は、一般に、3~500μmの厚さを有する。かかる負極集電体は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することで負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で用いられてもよい。
【0104】
前記溶媒は、水またはNMP、アルコールなどの有機溶媒を含んでもよく、前記負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む活物質スラリー中の固形分の濃度が50重量%~75重量%、好ましくは50重量%~65重量%となるように含まれてもよい。
【0105】
(3)セパレータ
本発明のリチウム二次電池に含まれる前記セパレータとしては、一般に用いられる通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して用いてもよく、または、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0106】
一方、本発明のリチウム二次電池の初期抵抗は、8mohm以下であることが好ましい。すなわち、二次電池の初期抵抗が8mohmを超えると、800サイクル後の長期寿命検証時に劣化が激しくなるという問題が引き起こされる。よって、製造された最終製品の初期抵抗は、8mohm以下のレベルを満たすことが好ましい。
【0107】
このような本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)形、またはコイン(coin)形などが可能である。
【0108】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、様々な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が、以下で詳述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0109】
実施例
実施例1.
(非水電解液の製造)
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、前記化学式1-1で表される化合物0.5重量%およびフルオロエチレンカーボネート0.5重量%を添加し、非水電解液を製造した(下記表1参照)。
【0110】
(二次電池の製造)
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に、正極活物質(Li(Ni0.86Co0.05Mn0.07Al0.02)O)、導電材(カーボンブラック)、およびバインダー(ポリビニリデンフルオライド)を97.5:1:1.5の重量比で添加し、正極スラリー(固形分の含量:50重量%)を製造した。前記正極スラリーを厚さ12μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行って正極を製造した。
【0111】
負極活物質(人造黒鉛:SiO=95:5重量比)、バインダー(SBR-CMC)、および導電材(カーボンブラック)を95:3.5:1.5の重量比で溶媒の水に添加し、負極スラリー(固形分の含量:60重量%)を製造した。前記負極スラリーを厚さ6μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0112】
前記正極、無機物粒子(Al)が塗布されたポリオレフィン系多孔性セパレータおよび負極を順に積層して電極組立体を製造した後、それをパウチ形電池ケース内に収納し、実施例1のリチウム二次電池用非水電解液を注液することで、駆動電圧が4.45V以上であるパウチ形リチウム二次電池を製造した。
【0113】
実施例2.
非水性有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、化学式1-1で表される化合物3.0重量%およびフルオロエチレンカーボネート0.5重量%を添加して非水電解液を製造した点を除き、前記実施例1と同様の方法により非水電解液およびリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0114】
実施例3.
非水性有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、化学式1-1で表される化合物5.0重量%およびフルオロエチレンカーボネート0.5重量%を添加して非水電解液を製造した点を除き、前記実施例1と同様の方法により非水電解液およびリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0115】
実施例4.
非水性有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、化学式1-1で表される化合物6.0重量%およびフルオロエチレンカーボネート0.5重量%を添加して非水電解液を製造した点を除き、前記実施例1と同様の方法により非水電解液およびリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0116】
実施例5.
化学式1-1で表される化合物に代えて、化学式1-2で表される化合物を添加して非水電解液を製造した点を除き、前記実施例1と同様の方法により非水電解液およびリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0117】
実施例6.
化学式1-1で表される化合物に代えて、化学式1-2で表される化合物を添加して非水電解液を製造した点を除き、前記実施例3と同様の方法により非水電解液およびリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0118】
比較例1.
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した非水性有機溶媒に、LiPFが1.0Mとなるように溶解した後、フルオロエチレンカーボネート0.5重量%を添加して非水電解液を製造した(下記表1参照)。
【0119】
(二次電池の製造)
実施例1の非水電解液に代えて、上記で製造された非水電解液を添加した点を除き、前記実施例1と同様の方法により非水電解液およびリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0120】
比較例2.
化学式1-1で表される化合物に代えて、化学式3で表される化合物を添加して非水電解液を製造した点を除き、前記実施例1と同様の方法により非水電解液およびリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0121】
【化11】
【0122】
比較例3.
化学式1-1で表される化合物に代えて、下記化学式4で表される化合物を添加して非水電解液を製造した点を除き、前記実施例1と同様の方法により非水電解液およびリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0123】
【化12】
【0124】
【表1】
【0125】
実験例
実験例1.初期抵抗評価
前記実施例1~6で製造されたリチウム二次電池と比較例2および3で製造されたリチウム二次電池のそれぞれを、常温(25℃)で、0.33Cレート(C rate)で定電流/定電圧条件で4.2Vまで充電した後、DOD(depth of discharge)50%まで放電してSOC50%に調整した後、2.5Cレート(C rate)条件で10秒間放電し、PNE-0506充放電器(製造社:PNEソリューション)を用いて初期抵抗を測定した。その結果を下記表2に記載した。
【0126】
【表2】
【0127】
前記表2を参照すると、本発明の実施例1~3、5および6の二次電池の初期抵抗は、約6.57mohm以下であることが分かる。これに対し、化学式3で表される化合物を含む比較例2、および化学式4で表される化合物を含む比較例3の二次電池は、実施例1~6の二次電池に比べて初期抵抗が著しく増加していることが分かる。
【0128】
一方、添加剤がやや多く含まれた非水電解液を備えた実施例4の二次電池は、初期抵抗のレベルが、実施例1~3、5および6の二次電池に比べてやや増加していることが分かる。
【0129】
実験例2.高温サイクル特性評価
実施例1~3、5および6で製造されたリチウム二次電池と、比較例1~3で製造されたリチウム二次電池のそれぞれを、45℃で、0.33Cレート(C rate)で定電流/定電圧条件下で4.2Vまで充電した後、0.33Cレート(C rate)で定電流条件下で3Vまで放電することを1サイクルとし、200サイクルの充放電を行った後、容量維持率(%)および抵抗増加率(%)を測定した。容量維持率(%)は下記[式1]により計算し、抵抗増加率(%)は下記[式2]により計算した。測定結果は下記表3に記載した。
【0130】
[式1]
容量維持率(%)=(200サイクル後の放電容量/1サイクル後の放電容量)×100
【0131】
[式2]
抵抗増加率(%)={(200サイクル後の抵抗-1サイクル後の抵抗)/1サイクル後の抵抗}×100
【0132】
【表3】
【0133】
前記表3を参照すると、本発明の電解液添加剤を含んでいない比較例1の二次電池と、化学式3で表される化合物を含む比較例2、および化学式4で表される化合物を含む比較例3の二次電池は、実施例1~3、5および6の二次電池に比べて200サイクル後の容量維持率(%)および抵抗増加率(%)が何れも劣化していることが分かる。
【0134】
これに対し、本発明の実施例1~3、5および6の二次電池の200サイクル後の容量維持率(%)は約90.2%以上であり、抵抗増加率(%)は約6.31%以下に向上したことが分かる。すなわち、本発明の実施例1~3、5および6の二次電池は、添加剤により、さらに安定な被膜が形成されたため、駆動時に追加分解されるSEI被膜を補強し、非水性有機溶媒の追加分解による抵抗増加率、容量退化率が抑制され、向上した効果を実現することができる。
【0135】
実験例3.高温貯蔵後の体積増加率評価
実施例1~6で製造されたリチウム二次電池と、比較例1~3で製造されたリチウム二次電池のそれぞれを、常温(25℃)で、0.33Cレート(C rate)で定電流/定電圧条件で4.2Vまで充電した後、DOD(depth of discharge)50%まで放電してSOC50%に調整した後、2.5Cレート(C rate)条件で10秒間放電した後、初期厚さを測定した。
【0136】
その後、60℃で2週間貯蔵した後、それぞれのリチウム二次電池に対する高温貯蔵後の厚さを測定し、その結果を下記表4に記載した。
【0137】
【表4】
【0138】
前記表4を参照すると、本発明の実施例1~6の二次電池は、比較例1~3の二次電池に比べて高温貯蔵後の体積増加率(%)が改善されたことが分かる。