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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240708BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20240708BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240708BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240708BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240708BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240708BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240708BHJP
【FI】
H05K3/46 T
C08L71/10
C08K3/34
B32B15/08 J
B32B27/00 A
B32B27/20 Z
B32B7/027
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021514923
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016123
(87)【国際公開番号】W WO2020213527
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019080405
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】権田 貴司
(72)【発明者】
【氏名】小泉 昭紘
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-338823(JP,A)
【文献】特開2019-046980(JP,A)
【文献】特開2018-109090(JP,A)
【文献】特開2002-052648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
C08L 71/10
C08K 3/34
B32B 15/08
B32B 27/00
B32B 27/20
B32B 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、非膨潤性の合成マイカ20質量部以上70質量部以下とを含有する成形材料を溶融混練し、この成形材料を押出成形機のダイスで樹脂フィルムに押出成形し、この樹脂フィルムを冷却ロールと圧着ロールの間に挟んで冷却することにより10μm以上800μm以下の厚さとする樹脂フィルムの製造方法であって、
成形材料の合成マイカは、平均粒子径が2μm以上20μm以下、アスペクト比が5以上100以下のフッ素金雲母、カリウム四ケイ素雲母、及びカリウムテニオライトの少なくともいずれかであり、
冷却ロールと圧着ロールは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+20℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満の温度範囲にそれぞれ調整され、
樹脂フィルムは、相対結晶化度が90%以上、線膨張係数が1ppm/℃以上50ppm/℃以下、23℃における引張弾性率がJIS K 7127に準拠して測定された場合に3800N/mm 以上10000N/mm 以下であることを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MHz帯域からGHz帯域にかけて使用される樹脂フィルムの製造方法に関し、より詳しくは、800MHzから100GHz以下の帯域で使用される樹脂フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、需要が急速に拡大している多機能携帯電話やタブレット端末等の移動体情報通信機器、次世代テレビ等の電子機器には、より大容量のデータを高速で送受信することが求められており、この要望に伴い、電気信号の高周波数化が検討されている。例えば、移動体情報通信分野では、第五世代移動通信システム(5G)の検討が世界的に進められている(特許文献1、2参照)。この第五世代移動通信システムの通信速度は前世代の数十倍以上であり、これを実現するため、電気信号は10GHz以上の高周波数帯域が検討されている。また、自動車分野においては、車載レーダシステムとして、ミリ波と呼ばれる60GHz以上の高周波数帯域の信号の利用が研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017‐502595号公報
【文献】特公平6‐27002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来における回路基板は、主に低周波数帯域を活用した通信を前提に設計・開発され、高周波数帯域を活用した大容量・高速通信を前提に設計・開発されてはいないので、比誘電率の値が通常タイプの4.3程度と高く、誘電正接も0.018程度と低くない値である。これに対し、大容量・高速通信用の回路基板は、比誘電率や誘電正接等の誘電特性が低く、しかも、耐熱性や機械的強度等の特性に優れる材料が要求される。
【0005】
この点について詳しく説明すると、比誘電率は、誘電体内の分極の程度を示すパラメータであり、値が高い程、電気信号の伝搬遅延が大きくなる。したがって、電気信号の伝搬速度を高め、高速演算を可能にするためには、比誘電率は低いほうが好ましい。また、誘電正接(tanδともいう)は、誘電体内の伝搬する電気信号が熱に変換されて失われる量を示すパラメータであり、値が低い程、信号の損失が減少し、電気信号の伝達率が向上する。さらに、誘電正接は、高周波数帯域では、周波数の増加に伴って増大してしまうので、損失を少しでも抑制するためには、値を小さくすることのできる材料を用いる必要がある。
【0006】
以上のことから、MHz帯域からGHz帯域等の高周波数帯域で使用される回路基板は、大容量・高速通信を実現するため、従来よりも比誘電率と誘電正接の低い材料により、製造されることが強く望まれる。この点を踏まえ、比誘電率と誘電正接の低い材料が鋭意検討されているが、その結果、ポリアリーレンエーテルケトン(芳香族ポリエーテルケトンともいう、PAEK)樹脂が提案され、注目されている。
【0007】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、電気絶縁性質、機械的性質、耐熱性、耐薬品性、耐放射線性、耐加水分解性、低吸水性、リサイクル性等に優れる熱可塑性の結晶性樹脂である。この優れた性質に鑑み、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、自動車分野、エネルギー分野、半導体分野、医療分野、航空・宇宙分等の広範囲な分野で使用が提案され、利用されている。
【0008】
このポリアリーレンエーテルケトン樹脂により、樹脂フィルムを製造すれば、樹脂フィルムの周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5以下、誘電正接が0.007以下となり、優れた低誘電特性を得ることができる。さらに、この樹脂フィルムによれば、288℃のはんだ浴に10秒間浮かべても変形しないという優れた耐熱性を得ることができる。
【0009】
しかしながら、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂製の樹脂フィルムは、優れた低誘電特性と耐熱性とを得られるものの、加熱寸法安定性に劣るため、導電層が積層された場合、導電層との加熱寸法特性が大きく異なるため、積層体がカールしたり、変形するという大きな問題が新たに生じることとなる。
【0010】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂製の樹脂フィルムの加熱寸法安定性を改良する方法としては、(1)ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、六方晶窒化ホウ素、及びタルクを含む成形材料により樹脂フィルムを成形する方法(特許第5896822号公報参照)、(2)ポリエーテルエーテルケトンを90質量%以上で含有する樹脂フィルムを二軸延伸処理する方法(特許第5847522号公報参照)等の方法が提案されている。
【0011】
しかし、(1)の方法の場合には、六方晶窒化ホウ素が均一分散性に劣るので、機械的特性や誘電特性の品質が安定しないという問題が新たに生じる。また、(2)の方法の場合には、樹脂フィルム上に金属層を形成する場合、樹脂フィルムと金属箔とを接着剤で接着したり、樹脂フィルムに金属層をシード層を介して積層形成することは可能ではあるが、樹脂フィルムと金属箔との熱融着は、樹脂フィルムの溶融により二軸延伸が外れてしまい、積層後、積層体にカールや変形が生じてしまうこととなる。
【0012】
本発明は上記に鑑みなされたもので、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂により製造した高周波回路基板用等のフィルムの低誘電特性と耐熱性を低下させることなく、加熱寸法安定性を向上させることのできる樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、鋭意研究した結果、熱可塑性樹脂の材料中、耐熱性が最も高く、低誘電特性に優れたポリアリーレンエーテルケトン樹脂に着目し、このポリアリーレンエーテルケトン樹脂を用いて本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明においては上記課題を解決するため、少なくともポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、非膨潤性の合成マイカ20質量部以上70質量部以下とを含有する成形材料を溶融混練し、この成形材料を押出成形機のダイスで樹脂フィルムに押出成形し、この樹脂フィルムを冷却ロールと圧着ロールの間に挟んで冷却することにより10μm以上800μm以下の厚さとする樹脂フィルムの製造方法であって、
成形材料の合成マイカは、平均粒子径が2μm以上20μm以下、アスペクト比が5以上100以下のフッ素金雲母、カリウム四ケイ素雲母、及びカリウムテニオライトの少なくともいずれかであり、
冷却ロールと圧着ロールは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+20℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満の温度範囲にそれぞれ調整され、
樹脂フィルムは、相対結晶化度が90%以上、線膨張係数が1ppm/℃以上50ppm/℃以下、23℃における引張弾性率がJIS K 7127に準拠して測定された場合に3800N/mm 以上10000N/mm 以下であることを特徴としている。
【0018】
ここで、特許請求の範囲における樹脂フィルムには、樹脂製のフィルムの他、樹脂シートが含まれる。この樹脂フィルムは、透明、不透明、半透明、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを特に問うものではない。また、合成マイカとして、非膨潤性の合成マイカや600℃以上で熱処理された非膨潤性の合成マイカ等があげられる。
【0019】
本発明によれば、樹脂フィルムを、非膨潤性の合成マイカ含有の成形材料により成形するので、樹脂フィルムの線膨張係数を低下させ、樹脂フィルムの加熱寸法安定性の向上を図ることができる。また、樹脂フィルムを、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の成形材料により成形するので、樹脂フィルムの周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5以下で、かつ誘電正接が0.006以下となり、比誘電率と誘電正接の値を従来よりも低くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂により、製造した高周波回路基板用等の樹脂フィルムの低誘電特性と耐熱性を低下させることなく、加熱寸法安定性を向上させることができるという効果がある。また、樹脂フィルムを溶融押出成形法により成形するので、樹脂フィルムの厚さ精度、生産性、ハンドリング性を向上させたり、製造設備を簡略化することができる。
【0021】
また、合成マイカがフッ素金雲母、カリウム四ケイ素雲母、及びカリウムテニオライトの少なくともいずれかなので、優れた加熱寸法安定性や耐熱性等を得ることができる。この合成マイカの平均粒子径は、2μm以上20μm以下なので、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂中で合成マイカを均一に分散させることができ、しかも、樹脂フィルムの靱性低下を防止することができる。加えて、合成マイカが樹脂フィルムから突き出し、樹脂フィルムが粗れて伝送特性に支障を来すのを抑制することができる。また、合成マイカのアスペクト比が5以上100以下なので、加熱寸法安定性を向上させ、機械的特性や加熱寸法安定性の異方性が大きくなるのを防止することが可能となる。加えて、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と合成マイカの混合物より得られる樹脂フィルムの靱性低下を防止することが可能となる。
【0022】
また、冷却ロールと圧着ロールの温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+20℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満の温度範囲にそれぞれ調整されるので、樹脂フィルムの相対結晶化度が80%未満となるのを防止することができる。また、樹脂フィルムの製造中に樹脂フィルムが冷却ロールに貼り付き、破断するおそれを払拭することができる。
【0023】
また、樹脂フィルムの相対結晶化度が90%以上なので、樹脂フィルムのはんだ耐熱性に問題が生じることを防ぐことができるし、高周波回路基板として使用可能な加熱寸法安定性の確保が期待できる。また、樹脂フィルムの線膨張係数が1ppm/℃以上50ppm/℃以下なので、樹脂フィルムを金属層と積層する場合にカールや反りが生じやすくなることがなく、しかも、樹脂フィルムと金属層とが剥離してしまうおそれを払拭することが可能となる。
【0024】
また、樹脂フィルムの23℃における引張弾性率が3800N/mm 以上10000N/mm 以下なので、樹脂フィルムの剛性を維持し、高周波回路基板の製造中に樹脂フィルムにシワが生じたり、樹脂フィルムの変形を招くおそれを払拭することが可能となる。さらに、樹脂フィルムの成形に長時間を要することがないので、コストの削減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る樹脂フィルムの製造方法における高周波回路基板を模式的に示す断面説明図である。
図2】本発明に係る樹脂フィルムの製造方法の実施形態を模式的に示す全体説明図である。
図3】本発明に係る樹脂フィルムの製造方法における第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における高周波回路基板は、図1図2に示すように、樹脂フィルム1と、この樹脂フィルム1に積層される導電層3とを積層構造に備えた第五世代移動通信システム(5G)用の回路基板であり、樹脂フィルム1が、熱可塑性樹脂であるポリアリーレンエーテルケトン樹脂と、電気絶縁性等に優れるマイカとを含有する成形材料4により製造され、マイカとして、寸法安定性に資する非膨潤性の合成マイカが選択される。
【0029】
樹脂フィルム1は、ポリアリーレンエーテルケトン(PAEK)樹脂含有の成形材料4を用いた成形法により、2μm以上1000μm以下の厚さのフィルムに押出成形される。成形材料4は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部に、非膨潤性の合成マイカ10質量部以上80質量部以下が添加されることより、調製される。この成形材料4には、本発明の特性を損なわない範囲で上記樹脂の他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機化合物、有機化合物等が選択的に添加される。
【0030】
成形材料4のポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、アリーレン基、エーテル基、及びカルボニル基からなる結晶性の樹脂であり、例えば特許5709878号公報や特許第5847522号公報、あるいは文献〔株式会社旭リサーチセンター:先端用途で成長するスーパーエンプラ・PEEK(上)〕等に記載された樹脂があげられ、低誘電特性や耐熱性等に優れる。
【0031】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の具体例としては、例えば化学式(1)で表される化学構造式を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、化学式(2)で表される化学構造を有するポリエーテルケトン(PEK)樹脂、化学式(3)で表される化学構造を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、化学式(4)の化学構造を有するポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、あるいは化学式(5)の化学構造を有するポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂等があげられる。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
これらポリアリーレンエーテルケトン樹脂の中では、易入手性、コスト、及び樹脂フィルム1の成形性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルケトンケトン樹脂とが好ましい。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、ビクトレック社製の製品名:Victrex Powderシリーズ、Victrex Granulesシリーズ、ダイセル・エボニック社製の製品名:ベスタキープシリーズ、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製の製品名:キータスパイア PEEKシリーズがあげられる。また、ポリエーテルケトンケトン樹脂の具体例としては、アルケマ社製の製品名:KEPSTANシリーズが該当する。
【0038】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、1種単独でも良いし、2種以上を混合して使用しても良い。また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、化学式(1)~(5)で表される化学構造を2つ以上有する共重合体でも良い。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、通常、粉状、顆粒状、ペレット状等の成形加工に適した形態で使用される。また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば文献〔株式会社旭リサーチセンター:先端用途で成長するスーパーエンプラ・PEEK(上)〕に記載された製法があげられる。
【0039】
成形材料4のマイカ(雲母ともいう)は、フィロケイ酸鉱物雲母族に属する板状結晶であり、底面に完全な劈開を持っていることが特徴の鉱物である。このマイカは、自然界で産出される天然マイカ(白雲母、黒雲母、金雲母等)と、タルクを主原料として人工的に製造される合成マイカの2種類に分類され、工業的に優れた電気絶縁材料として広く用いられている。
【0040】
天然マイカは、その産地により組成や構造が異なり、加えて不純物を多く含むため、品質の安定した高周波回路基板用の樹脂フィルム1の製造には不適切である。また、天然マイカは、水酸基〔OH基〕有しているため、耐熱性に問題がある。これに対し、合成マイカは、人工的に製造されたマイカで、組成や構造が一定であり、不純物も少ないため、加熱寸法安定性等に安定した高品質の高周波回路基板用の樹脂フィルム1の製造に好適である。また、合成マイカは、水酸基が全てフッ素〔F基〕で置換されているので、天然マイカより耐熱性に優れる。したがって、本発明で使用されるマイカは、天然マイカより合成マイカが好ましい。
【0041】
合成マイカは、水に対する挙動の違いにより、非膨潤性マイカと、膨潤性マイカとに分類される。非膨潤マイカは、水と接触しても寸法安定性等に変化を起こさないタイプの合成マイカである。これに対し、膨潤性マイカは、空気中の水分等を吸収して膨潤し、劈開してしまう性質の合成マイカである。膨潤性マイカを使用した場合、膨潤性マイカが水分を含むため、高周波回路基板用の樹脂フィルム1が成形中に発泡してしまうおそれがある。このため、本発明で使用可能な合成マイカは、加熱寸法安定性や耐水性に優れる非膨潤性マイカが好ましく、より好ましくは600℃以上で熱処理を施された合成マイカが最適である。
【0042】
非膨潤性の合成マイカとしては、特に限定されないが下記一般式で示される合成マイカが好適に使用される。
一般式:X1/3~1.02~3(Z10)F1.5~2.0
【0043】
ここで、Xは配位数12の層間をしめる陽イオン、Yは配位数6の八面体席をしめる陽イオン、Zは配位数4の四面体をしめる陽イオンであり、それぞれ以下の1種または2種以上のイオンで置換される〔X:Na、K、Li、Rb、Ca2+、Ba2+及びSr2+、Y:Mg2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Co2+、Zn2+、Ti2+、Al3+、Cr3+、Fe3+、Li、Z:Al3+、Fe3+、Si4+、Ge4+、B3+〕。
【0044】
非膨潤性の合成マイカとしては、例えばフッ素金雲母(KMg(AlSi10)F)、カリウム四ケイ素雲母(KMg2.5(Si10)F)、カリウムテニオライト(KMgLi(Si10)F)があげられる。これらの中では、非膨潤性のフッ素金雲母が最適である。この合成マイカの具体例としては、耐熱性に優れる高純度で微粉末の片倉コープアグリ社製のカリウム四ケイ素雲母〔製品名:ミクロマイカMKシリーズ〕、トピー工業社製のフッ素金雲母〔PDMシリーズ〕、トピー工業社製のカリウム四ケイ素雲母〔PDMシリーズ〕等があげられる。
【0045】
合成マイカの製造方法としては、(1)溶融法、(2)固相反応法、(3)インターカレーション法等の方法があげられる。(1)の溶融法は、シリカ、酸化マグネシウム、アルミナ、フッ化物、長石、カラン岩、それに各種金属の酸化物や炭素塩等の原料を組み合わせて混合し、1300℃の以上の高温で溶融して徐冷する製造法、(2)の固相反応法は、タルクを主原料とし、このタルクに、フッ化アルカリ、ケイフッ化アルカリ、さらに遷移金属を含む各種金属の酸化物や炭酸塩等を加えて混合し、1000℃前後で反応させる製造法、(3)のインターカレーション法は、タルクを主原料とするインターカレーション法により製造する製造法である。
【0046】
合成マイカの平均粒子径は、0.5μm以上50μm以下、好ましくは1μm以下30μm以下、より好ましくは2μm以上20μm以下、さらに好ましくは3μm以上10μm以下が良い。これは、合成マイカの平均粒子径が0.5μm以下の場合には、合成マイカ粒子が凝集しやすく、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂中における均一分散性が低下するからである。
【0047】
これに対し、合成マイカの平均粒子径が50μmを越える場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と合成マイカの混合物より得られる高周波回路基板用の樹脂フィルム1の靱性が低下することがあるからである。また、合成マイカの平均粒子径が50μmを越える場合には、合成マイカが樹脂フィルム1の表面から突き出し、樹脂フィルム1の表面が粗れて伝送特性に支障を来すからである。
【0048】
合成マイカのアスペクト比は、5以上100以下が良い。ここで、アスペクト比は、合成マイカが鱗片状粉末の場合、粒子の径を厚みで割った値をいう。合成マイカの具体的なアスペクト比は、5以上100以下、好ましくは10以上90以下、より好ましくは20以上80以下、さらに好ましくは30以上50以下が良い。
【0049】
これは、アスペクト比が5未満の場合には、加熱寸法安定性の改良効果が低く、しかも、樹脂フィルム1の押出方向と幅方向の機械的特性、及び加熱寸法安定性の異方性が大きくなり、不適切であるからである。これに対し、アスペクト比が100を越える場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と合成マイカの混合物より得られる樹脂フィルム1の靱性が低下するからである。
【0050】
合成マイカは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部に対して10質量部以上80質量部以下、好ましくは20質量部以上70質量部以下、より好ましくは30質量部以上60質量部以下の範囲で添加される。これは、合成マイカの添加量が10質量部未満の場合には、高周波回路基板用の樹脂フィルム1の加熱寸法安定性の調製効果が不十分となるからである。
【0051】
これに対し、合成マイカの添加量が80質量部を越える場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と合成マイカよりなる成形材料4の調製中、著しく発熱し、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が熱分解するおそれがあるからである。また、この成形材料4より得られる樹脂フィルム1の靱性が失われて著しく脆くなり、樹脂フィルム1が成形中に損傷するおそれがあるからである。さらに、合成マイカの添加量が多くなるため、比誘電率や誘電正接が必要以上に著しく上昇してしまうという理由に基づく。
【0052】
合成マイカは、高周波回路基板用の樹脂フィルム1の特性を損なわない範囲において、例えば、シランカップリング剤〔ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトシキシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等〕、シラン剤〔メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリルシラン)ヘキサン、トリフルオロプロピルメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、イミダゾールシラン等〕、チタネート系カップリング剤〔イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジートリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシ-1-ブチル)ビス(ジートリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等〕、アルミネート系カップリング剤〔アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等〕等からなる各種カップリング剤で処理を施すことができる。
【0053】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と合成マイカとは、所定の時間溶融混練されて樹脂フィルム1用の成形材料4となるが、この成形材料4を調製する方法として、(1)ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と微粉末の合成マイカとを撹拌混合することなく、溶融したポリアリーレンエーテルケトン中に合成マイカを添加し、これらを溶融混練して成形材料4を調製する方法、(2)ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と微粉末の合成マイカとを室温(0℃以上50℃以下程度の温度)で撹拌混合させた後に溶融混練し、成形材料4を調製する方法があげられる。これら(1)、(2)の方法は、いずれでも良いが、分散性や作業性の観点からすると、(1)の方法が好ましい。
【0054】
(1)の方法について具体的に説明すると、成形材料4を調製するには、先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂をミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー単軸押出機、多軸押出機(二軸押出機、三軸押出機、四軸押出機等)等の溶融混練機で溶融し、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂に合成マイカを添加して溶融混練分散させることにより、成形材料4を調製する。
【0055】
溶融混練機の調製時の温度は、溶融混練分散が可能でポリアリーレンエーテルケトン樹脂が分解しない温度であれば、特に制限されないが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満の範囲である。具体的には、320℃以上450℃以下、好ましくは360℃以上420℃以下、さらに好ましくは380℃以上400℃以下の範囲が良い。
【0056】
これは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が溶融しないので、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の成形材料4を溶融押出成形することができず、逆に熱分解温度を越える場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。調製された成形材料4は、通常は塊状、ストランド状、シート状、棒状に押し出された後、粉砕機あるいは裁断機で塊状、顆粒状、ペレット状等の成形加工に適した形態で使用される。
【0057】
次に(2)の方法について具体的に説明すると、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と合成マイカとを攪拌混合して攪拌混合物を得るには、タンブラーミキサー、ヘンシルミキサー、V型混合機、ナウターミキサー、リボンブレンダー、あるいは万能攪拌ミキサー等を使用する。この際、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の形状は、合成マイカとより均一に分散可能な粉体状であるのが好ましい。粉体に粉砕する方法としては、例えばせん断粉砕法、衝撃粉砕法、衝突粉砕法、冷凍粉砕法、溶液粉砕法等があげられる。
【0058】
成形材料4は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂と合成マイカの攪拌混合物をミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、多軸押出機(二軸押出機、三軸押出機、四軸押出機等)等の溶融混練機で溶融混練し、分散させることで調製される。
【0059】
この調製時における溶融混練機の温度は、溶融混練分散が可能でポリアリーレンエーテルケトン樹脂が分解しない温度であれば、特に制限はないが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満の範囲である。具体的には、(1)の方法の場合と同様の理由から、320℃以上450℃以下、好ましくは360℃以上420℃以下、より好ましくは380℃以上400℃以下の範囲が良い。調製された成形材料4は、通常は塊状、ストランド状、シート状、棒状に押し出された後、粉砕機あるいは裁断機で塊状、顆粒状、ペレット状等の成形加工に適した形態で使用される。
【0060】
成形材料4は、溶融押出成形法、カレンダー成形法、あるいはキャスティング成形法等の各種成形法により樹脂フィルム1に成形される。これらの成形法の中では、ハンドリング性の向上や設備の簡略化の観点から、溶融押出成形法が最適である。この溶融押出成形法は、図2に示すように、単軸押出成形機や二軸押出成形機等の溶融押出成形機10で成形材料4を溶融混練し、溶融押出成形機10のTダイス13から複数の冷却ロール16と圧着ロール17方向に帯形の樹脂フィルム1を連続的に押出成形する方法である。
【0061】
溶融押出成形機10は、図2に示すように、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、投入された成形材料4を溶融混練するように機能する。この溶融押出成形機10の上流側の上部後方には、成形材料4のポリアリーレンエーテルケトン樹脂用の原料投入口11が設置され、この原料投入口11には、へリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスを必要に応じて供給する不活性ガス供給管12が接続されており、この不活性ガス供給管12による不活性ガスの流入により、成形材料4のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の酸化劣化や酸素架橋が有効に防止される。
【0062】
溶融押出成形機10の温度は、樹脂フィルム1の成形が可能で、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が分解しない温度であれば、特に制限されるものでないが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満の範囲が良い。具体的には、320℃以上450℃以下、好ましくは360℃以上420℃以下、より好ましくは380℃以上400℃以下に調整される。これは、溶融押出成形機10の温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が溶融せずに樹脂フィルム1の成形が困難となり、逆に熱分解温度以上の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が激しく分解するからである。
【0063】
Tダイス13は、溶融押出成形機10の先端部に連結管14を介して装着され、帯形の樹脂フィルム1を連続的に下方に押し出すよう機能する。このTダイス13の押出時の温度は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満の範囲である。具体的には、320℃以上450℃以下、好ましくは360℃以上420℃以下、さらに好ましくは380℃以上400℃以下に調整される。これは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の成形材料4の溶融押出成形に支障を来し、逆に熱分解温度を越える場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。
【0064】
Tダイス13の上流の連結管14には、ギアポンプ15が装着されることが好ましい。このギアポンプ15は、溶融押出成形機10により溶融混練された成形材料4を一定の流量で、かつ高精度にTダイス13に移送する。
【0065】
複数の冷却ロール16は、例えば圧着ロール17よりも拡径の回転可能な金属ロールからなり、Tダイス13の下方からその下流方向に一列に配列軸支されており、押し出された樹脂フィルム1を隣接する圧着ロール17との間に狭持するとともに、隣接する冷却ロール16と冷却ロール16との間に狭持し、圧着ロール17と共に樹脂フィルム1を冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御する。
【0066】
各冷却ロール16は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+20℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満、好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+30℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+160℃〕以下、より好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+50℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+140℃〕以下、さらに好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+60℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+120℃〕の温度範囲に調整され、高周波回路基板用の樹脂フィルム1に摺接する。
【0067】
この点について説明すると、各冷却ロール16の温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+20℃〕未満の場合には、樹脂フィルム1の相対結晶化度が80%未満となり、はんだ耐熱性が得られないという問題が生じる。これに対し、各冷却ロール16の温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上の場合には、樹脂フィルム1の製造中に樹脂フィルム1が冷却ロール16に貼り付き、破断するおそれがある。各冷却ロール16の温度調整や冷却方法は、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒータや誘導加熱等があげられる。
【0068】
複数の圧着ロール17は、溶融押出成形機10のTダイス13下方からその下流方向に一対が回転可能に軸支され、一列に並んだ複数の冷却ロール16を挟持し、冷却ロール16に樹脂フィルム1を圧接する。この一対の圧着ロール17は、下流側に位置する圧着ロール17の下流に、樹脂フィルム1用の巻取機18が設置され、この巻取機18の巻取管19との間には、樹脂フィルム1の側部にスリットを形成するスリット刃20が少なくとも昇降可能に配置されており、このスリット刃20と巻取機18との間には、樹脂フィルム1にテンションを作用させて円滑に巻き取るためのテンションロール21が回転可能に必要数軸支される。
【0069】
各圧着ロール17の周面には、樹脂フィルム1と冷却ロール16との密着性を向上させるため、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム層が必要に応じて被覆形成され、このゴム層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの採用が好ましい。
【0070】
圧着ロール17は、表面が金属の金属弾性ロールが必要に応じて使用され、この金属弾性ロールが使用される場合には、表面が平滑性に優れるポリアリーレンエーテルケトン樹脂フィルム1の成形が可能となる。この金属弾性ロールの具体例としては、金属スリーブロール、エアーロール〔ディムコ社製:製品名〕、UFロール〔日立造船社製:製品名〕等が該当する。
【0071】
このような圧着ロール17は、冷却ロール16と同様、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+20℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満、好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+30℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+160℃〕以下、より好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+50℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+140℃〕以下、さらに好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+60℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+120℃〕の温度範囲に調整され、樹脂フィルム1に摺接する。
【0072】
圧着ロール17の温度が係る温度範囲に調整されるのは、樹脂フィルム1の相対結晶化を80%以上に調整するためである。すなわち、圧着ロール17の温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂フィルム1の〔ガラス転移点+20℃〕未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂フィルム1の相対結晶化度が80%未満となり、はんだ耐熱性が得られないという問題が生じる。また、圧着ロール17の温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上の場合には、樹脂フィルム1の製造中に樹脂フィルム1が冷却ロール16に貼り付き、破断のおそれがある。
【0073】
各圧着ロール17の温度調整や冷却方法としては、冷却ロール16同様、限定されるものではなく、例えば空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒータや誘電加熱等があげられる。
【0074】
上記において、高周波回路基板用の樹脂フィルム1を製造する場合には図2に示すように、先ず、溶融押出成形機10の原料投入口11に、成形材料4を同図に矢印で示す不活性ガスを供給しながら投入し、溶融押出成形機10により成形材料4のポリアリーレンエーテルケトン樹脂と合成マイカとを溶融混練し、Tダイス13から樹脂フィルム1を連続的に帯形に押し出す。
【0075】
この際、成形材料4の溶融押出前における含水率は、2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以上500ppm以下に調整される。これは、含水率が2000ppmを越える場合には、Tダイス13から押し出された直後、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が発泡するおそれがあるからである。
【0076】
樹脂フィルム1を押し出したら、一対の圧着ロール17、複数の冷却ロール16、テンションロール21、巻取機18の巻取管19に順次巻架し、樹脂フィルム1を冷却ロール16により冷却した後、樹脂フィルム1の両側部をスリット刃20でそれぞれカットするとともに、巻取機18の巻取管19に順次巻き取れば、高周波回路基板用の樹脂フィルム1を製造することができる。この樹脂フィルム1製造の際、樹脂フィルム1の表面には、本発明の効果を失わない範囲で微細な凹凸を形成し、樹脂フィルム1表面の摩擦係数を低下させることができる。
【0077】
樹脂フィルム1の厚さは、2μm以上1000μm以下であれば特に限定されるものではないが、高周波回路基板の厚さの充分な確保、ハンドリング性や薄型化の観点からすると、好ましくは10μm以上800μm以下、より好ましくは20μm以上500μm以下、さらに好ましくは75μm以上250μm以下が良い。
【0078】
樹脂フィルム1の周波数800MHz以上100GHz以下、好ましくは1GHz以上90GHz以下、より好ましくは10GHz以上85GHz以下、さらに好ましくは25GHz以上80GHz以下の範囲における比誘電率は、高周波数帯を活用した高速通信の実現の観点から、3.5以下、好ましくは3.3以下、より好ましくは3.1以下、さらに好ましくは3.0以下が良い。この比誘電率の下限は、特に制約されるものではないが、実用上1.5以上である。
【0079】
具体的には、樹脂フィルム1の周波数1GHzにおける比誘電率が3.4以下、周波数10GHzにおける比誘電率が3.17以下、周波数28GHz付近における比誘電率が3.29以下、周波数76.5GHzにおける比誘電率が3.42以下が好ましい。これは、樹脂フィルム1の周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5を越えると、電気信号の伝搬速度が低下するため、高速通信に不適であるという問題が生じるからである。
【0080】
樹脂フィルム1の周波数800MHz以上100GHz以下、好ましくは1GHz以上90GHz以下、より好ましくは10GHz以上85GHz以下、さらに好ましくは25GHz以上80GHz以下の範囲における誘電正接は、高周波数帯を活用した高速通信を実現するため、0.007以下、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.004以下、さらに好ましくは0.003以下が良い。この誘電正接の下限は、特に限定されるものではないが、実用上0.0001以上である。
【0081】
具体的には、樹脂フィルム1の周波数1GHzにおける誘電正接が0.003以下、周波数10GHz付近における誘電正接が0.003以下が望ましい。また、周波数28GHz付近における誘電正接が0.0037以下、周波数76.5GHz付近における誘電正接が0.0050以下が良い。これらは、周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における誘電正接が0.007を越える場合は、損失が大きく、信号伝達率が低下するため、大容量通信には不適切であるという理由に基づく。
【0082】
これら比誘電率と誘電正接の測定方法としては、特に制約されるものではないが、同軸プローブ法、同軸Sパラメータ法、導波管Sパラメータ法、フリースペースSパラメータ法等の反射・伝送(Sパラメータ)法、ストリップライン(リング)共振器を用いた測定法、空洞共振器摂動法、スプリットポスト誘電体共振器を用いた測定法、円筒型(スプリットシリンダー)空洞共振器を用いた測定法、マルチ周波数平衡形円板共振器を用いた測定法、遮断円筒導波管空洞共振器を用いた測定法、ファブリペロー共振器を用いた開放型共振器法等の共振器法等の方法があげられる。
【0083】
また、干渉計開放型を使用するファブリペロー法、空洞共振器摂動法により高周波数の比誘電率及び誘電正接を求める方法、相互誘導ブリッジ回路による3端子測定法等があげられる。これらの中では、高分解性に優れるファブリペロー法や空洞共振器摂動法の選択が最適である。
【0084】
樹脂フィルム1の相対結晶化度は、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%が良い。これは、樹脂フィルム1の相対結晶化度が80%未満の場合には、樹脂フィルム1のはんだ耐熱性に問題が生じるからである。また、相対結晶化度が80%以上であれば、高周波回路基板として使用可能な加熱寸法安定性の確保が期待できるからである。
【0085】
樹脂フィルム1の結晶化度は、相対結晶化度により表すことができる。この樹脂フィルム1の相対結晶化度は、示差走査熱量計を用いて10℃/分の昇温速度で測定した熱分析結果に基づき、以下の式により算出される。
【0086】
相対結晶化度(%)={1-(ΔHc/ΔHm)}×100
ΔHc:再結晶化ピークの熱量(J/g)
ΔHm:融解ピークの熱量(J/g)
【0087】
樹脂フィルム1の加熱寸法安定性は、線膨張係数により表すことができる。この線膨張係数は、樹脂フィルム1の押出方向と幅方向(押出方向と直角方向)共に1ppm/℃以上50ppm/℃以下、好ましくは3ppm/℃以上40ppm/℃以下、より好ましくは5ppm/℃以上35ppm/℃以下、さらに好ましくは10ppm/℃以上30ppm/℃以下が良い。これは、線膨張係数が1ppm/℃以上50ppm/℃以下の範囲から逸脱すると、樹脂フィルム1と導電層3との積層時にカールや反りが生じやすくなり、しかも、樹脂フィルム1と導電層3とが剥離してしまうおそれがあるからである。
【0088】
樹脂フィルム1の機械的特性は、23℃における引張弾性率で評価することができる。樹脂フィルム1の23℃における引張弾性率は、3500N/mm以上10000N/mm以下、好ましくは3800N/mm以上9000N/mm以下、より好ましくは3900N/mm以上8880N/mm以下の範囲が最適である。これは、引張弾性率が3500N/mm未満の場合には、樹脂フィルム1が剛性に劣るため、高周波回路基板の製造中に樹脂フィルム1にシワが生じたり、樹脂フィルム1の変形を招くおそれがあるからである。逆に、10000N/mmを越える場合には、樹脂フィルム1の成形に長時間を要し、コストの削減が期待できないという理由に基づく。
【0089】
樹脂フィルム1の耐熱性は、高周波回路基板の製造の便宜を考慮すると、はんだ耐熱性で評価されるのが望ましい。具体的には、JIS規格 C 5016の試験法に準拠し、樹脂フィルム1を288℃のはんだ浴に10秒間浮かべ、樹脂フィルム1に変形やシワの発生が認められた場合には、耐熱性に問題有と評価され、樹脂フィルム1に変形やシワの発生が認められない場合には、耐熱性に問題無と評価される。
【0090】
次に、高周波回路基板を製造する場合には、製造した樹脂フィルム1上に導電層3を形成し、その後、導電層3に導電回路の配線パターンを形成すれば、高周波回路基板を製造することができる。導電層3は、樹脂フィルム1の表裏両面、表面、裏面のいずれかの面に形成され、後から導電回路の配線パターンが形成される。この導電層3に用いられる導電体としては、通常、例えば銅、金、銀、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、スズ等の金属、あるいはこれら金属からなる合金があげられる。
【0091】
導電層3の形成方法としては、(1)樹脂フィルム1と金属箔2とを熱融着して導電層3を形成する方法、(2)樹脂フィルム1と金属箔2とを接着剤で接着することにより、導電層3を形成する方法、(3)樹脂フィルム1上にシード層を形成するとともに、このシード層上に金属層を積層形成し、これらシード層と金属層とから導電層3を形成する方法等があげられる。
【0092】
(1)の方法は、樹脂フィルム1と金属箔2とをプレス成形機あるいはロール間に挟み、加熱・加圧して導電層3を形成する方法である。この方法の場合、金属箔2の厚さは、1μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上80μm以下、より好ましくは10μm以上70μm以下の範囲内が良い。
【0093】
樹脂フィルム1あるいは金属箔2の表面は、熱融着時の融着強度を向上させるため、微細な凹凸を形成することができる。また、樹脂フィルム1あるいは金属箔2の表面をコロナ照射処理、紫外線照射処理、プラズマ照射処理、フレーム照射処理、イトロ照射処理、酸化処理、ヘアライン加工、サンドマット加工等で表面処理しても良い。また、樹脂フィルム1あるいは金属箔2の表面をシランカップリング剤、シラン剤、チタンネート系カップリング剤、あるいはアルミネート系カップリング剤で処理することもできる。
【0094】
(2)の方法は、樹脂フィルム1と金属箔2の間にエポキシ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂系接着剤等の接着剤を配置し、プレス成形機あるいはロール間に挟んだ後、加熱・加圧して金属箔2を樹脂フィルム1上に形成する方法である。この方法の場合、金属箔2の厚さは、1μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上80μm以下、より好ましくは10μm以上70μm以下の範囲内が良い。
【0095】
樹脂フィルム1あるいは金属箔2の表面は、上記同様、接着強度を向上させる観点から、微細な凹凸を形成することができる。また、樹脂フィルム1あるいは金属箔2の表面をコロナ照射処理、紫外線照射処理、プラズマ照射処理、フレーム照射処理、イトロ照射処理、酸化処理、ヘアライン加工、サンドマット加工等で表面処理を施しても構わない。また、樹脂フィルム1あるいは金属箔2の表面を上記同様、シランカップリング剤、シラン剤、チタンネート系カップリング剤、あるいはアルミネート系カップリング剤で処理することも可能である。
【0096】
(3)の方法は、樹脂フィルム1上にスパッタリング法、蒸着法、あるいはめっき法等の方法により接着用のシード層を形成し、このシード層上に熱融着法や蒸着法、めっき法により金属層を形成し、これらシード層と金属層とを導電層3に形成する方法である。シード層としては、例えば銅、金、銀、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、スズ、亜鉛等の金属、あるいはこれら金属からなる合金を使用することができる。シード層の厚さは、通常、0.1μm以上2μm以下の範囲である。
【0097】
樹脂フィルム1上にシード層を形成する際、これらの接着強度を改良する目的でアンカー層を形成することが可能である。このアンカー層は、ニッケルあるいはクロム等の金属があげられるが、好ましくは環境性に優れるニッケルが最適である。
【0098】
金属層としては、例えば銅、金、銀、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、スズ、亜鉛等の金属あるいはこれら金属からなる合金を使用することができる。この金属層は、1種類の金属からなる単層でも良いし、2種類以上の金属からなる複層や多層でも良い。金属層の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上30μm以下が良い。
【0099】
シード層と金属層からなる導電層3は、0.2μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは5μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上10μm以下の範囲内が良い。シード層と金属層は、同じ金属でも良いし、異なる金属でも良い。また、金属層の表面上には、表面の腐食を防止するため、金やニッケル等の金属保護層を被覆形成しても良い。
【0100】
これらの導電層3の形成方法の中では、樹脂フィルム1と金属箔2とを熱融着する(1)の方法が最適である。これは、(2)の方法の場合には、樹脂フィルム1と金属箔2とを接着剤で接着する必要があるので、接着剤の誘電特性が反映され、高周波回路基板の比誘電率や誘電正接が上昇してしまうという事態が生じるからである。また、(3)の方法の場合には、導電層3の形成工程が煩雑となり、コスト高を招くという理由に基づく。
【0101】
導電回路の配線パターンは、エッチング法、めっき法、あるいは印刷法等により必要数形成することができる。この配線パターンの形成方法には、アンダーカットや配線細りの発生を最小限に止め、良好な配線形成を可能とする硫酸‐過酸化水素系、塩化鉄のエッチング剤等の使用が可能である。このような所定形状の配線パターンを形成すれば、低誘電性に優れ、信号の損失を抑制することのできる高周波回路基板を製造することができる。
【0102】
上記によれば、樹脂フィルム1を、非膨潤性の合成マイカ含有の成形材料4により成形するので、線膨張係数を低下させることができる。したがって、樹脂フィルム1の加熱寸法安定性を向上させ、金属箔2等からなる金属層との加熱寸法特性の相違を抑制することができ、導電層3を積層して高周波回路基板を製造する場合に、高周波回路基板がカールしたり、変形するのを防止することができる。
【0103】
また、樹脂フィルム1を、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の成形材料4により成形するので、樹脂フィルム1の周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5以下で、かつ誘電正接が0.007以下となり、比誘電率と誘電正接の値を従来よりも低くすることができる。したがって、大容量の高周波信号を高速で送受信可能な高周波回路基板を得ることが可能となる。また、この高周波回路基板の使用により、第五世代移動通信システムの実現に大いに寄与することが可能となる。
【0104】
また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂を使用するので、損失が減少し、しかも、高周波回路基板用の樹脂フィルム1の長期使用が可能となり、高周波数帯を活用した高速通信の実現が非常に容易となる。また、ポリイミド樹脂ではなく、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂を用いるので、高周波回路基板を簡易に多層化することが可能となる。さらに、耐熱性に優れる相対結晶化度80%以上の樹脂フィルム1を基板材料に用いるので、優れたはんだ耐熱性を得ることができる。
【0105】
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、樹脂フィルム1の表裏両面に配線パターン用の金属箔2を熱融着法によりそれぞれ積層し、この一対の金属箔2により導電層3を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0106】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、樹脂フィルム1の両面に導電層3をそれぞれ形成するので、高周波回路基板の配線の高密度化や高周波回路基板の多層化が容易となるのは明らかである。
【0107】
なお、上記実施形態では合成マイカ1種類を単独で使用したが、2種以上を併用しても良い。また、一枚の樹脂フィルム1に導電層3を積層したが、何らこれに限定されるものではなく、積層構造の複数枚の樹脂フィルム1に導電層3を新たに積層しても良い。また、樹脂フィルム1の表面に金属箔2を熱融着法により積層し、導電層3を積層形成したが、何らこれに限定されるものではなく、蒸着法やめっき法により積層形成しても良い。さらに、高周波回路基板を、自動車の衝突防止ミリ波レーダ装置、先進運転支援システム(ADAS)、人工知能(AI)等に用いることもできる。
【実施例
【0108】
以下、本発明に係る樹脂フィルム、高周波回路基板及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、高周波回路基板用の樹脂フィルムを製造するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 450G(以下、「450G」と略す)〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿熱風乾燥器で12時間以上乾燥させた。
【0109】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂を乾燥させたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を、同方向回転二軸押出機〔φ42mm、L/D=38、ベルストルフ社製 製品名:K660〕のスクリュー根元付近に設けられた第一供給口であるホッパーに投入した。また、非膨潤性の合成マイカは、同方向回転二軸押出機の大気圧に開放されたベント口のすぐ隣のサイドフィーダーの第二供給口より強制圧入した。この合成マイカは、市販のカリウム四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製、製品名:ミクロマイカMK-100、平均粒子径:4.9μm〕を使用した。
【0110】
こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂を投入し、非膨潤性の合成マイカを圧入したら、これらを同方向回転二軸押出機のバレルの温度:350℃~370℃、スクリューの回転数:150rpm、時間当たりの吐出量:20kg/hrの条件下で溶融混練し、ストランド状に押出した。
【0111】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の溶融状態は、同方向回転二軸押出機のベント口から目視により観察した。このポリエーテルエーテルケトン樹脂と合成マイカは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対して合成マイカ25質量部となるように添加した。同方向回転二軸押出機よりストランド状の押出成形物を押し出したら、この押出成形物を空冷固化した後、ペレット状にカッティングして成形材料を作製した。
【0112】
次いで、得られた成形材料を幅900mmのTダイス付きの単軸押出機に投入して溶融混練し、この溶融混練した成形材料をTダイスから連続的に押し出して高周波回路基板用の樹脂フィルムを帯形に押出成形した。単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリューのタイプとした。また、単軸押出成形機の温度は380~400℃、Tダイの温度は400℃、単軸押出成形機とTダイとを連結する連結管とギアポンプの温度は400℃に調整した。この単軸押出成形機に成形材料を投入する際、不可性ガス供給管により窒素ガス18L/分を供給した。
【0113】
こうして高周波回路基板用の樹脂フィルムを成形したら、この樹脂フィルムを、図2に示すようなシリコーンゴム製の一対の圧着ロール、200℃、230℃、250℃の冷却ロールである複数の金属ロール、及びこれらの下流に位置する巻取機の6インチの巻取管に順次巻架するとともに、圧着ロールと金属ロールとに挟持させ、連続した樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることにより、長さ100m、幅650mmの樹脂フィルムを製造した。圧着ロールと巻取管との間には、樹脂フィルムの両側部を切断するスリット刃を昇降可能に配置し、巻取管とスリット刃との間には、樹脂フィルムにテンションを作用させるテンションロールを回転可能に軸支させた。
【0114】
樹脂フィルムを製造したら、この樹脂フィルムの厚さ、機械的特性、加熱寸法安定性、誘電特性、耐熱性をそれぞれ評価して表1にまとめた。機械的特性は引張弾性率で評価し、加熱寸法安定性は線膨張係数、誘電特性は比誘電率と誘電正接、耐熱性ははんだ耐熱性で評価することとした。
【0115】
・高周波回路基板用樹脂フィルムのフィルム厚
高周波回路基板用の樹脂フィルムのフィルム厚さについては、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC-25PJ〕を使用して測定した。測定に際しては、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂フィルムの幅方向(押出方向の直角方向)の任意の10箇所を測定し、その平均値をフィルム厚とした。
【0116】
・高周波回路基板用樹脂フィルムの相対結晶化度
高周波回路基板用の樹脂フィルムの相対結晶化度については、樹脂フィルムから測定試料約8mgを秤量し、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジーズ社製 製品名:EXSTAR7000シリーズ X-DSC7000〕を使用して昇温速度10℃/分、測定温度範囲20℃から380℃まで測定した。このときに得られる結晶融解ピークの熱量(J/g)、再結晶化ピークの熱量(J/g)から以下の式を用いて算出した。
【0117】
相対結晶化度(%)={1-(ΔHc/ΔHm)}×100
ここで、ΔHcは樹脂フィルムの10℃/分の昇温条件下での再結晶化ピークの熱量(J/g)を表し、ΔHmは樹脂フィルムの10℃/分の昇温条件下での結晶融解ピークの熱量(J/g)を表す。
【0118】
・高周波回路基板用樹脂フィルムの機械的性質
高周波回路基板用の樹脂フィルムの機械的性質は、23℃における引張弾性率で評価した。機械的性質は、押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。測定は、JIS K 7127に準拠し、引張速度50mm/分、温度23℃±2℃、相対湿度50RH±5%RHの条件で測定した。また、引張弾性率については、5回測定してその平均値を引張弾性率とした。
【0119】
・高周波回路基板用樹脂フィルムの誘電特性〔周波数:1GHz、10GHz〕
高周波回路基板用の樹脂フィルムの周波数:1GHz、10GHzにおける誘電特性は、ネットワーク・アナライザー〔アジレント・テクノロジー社製 PNA-Lネットワークアナライザー N5230A〕を用い、空洞共振器摂動法により測定した。1GHzにおける誘電特性の測定は、空洞共振器を空洞共振器1GHz〔関東電子応用開発社製 型式;CP431〕、空洞共振器10GHz〔関東電子応用開発社製 型式;CP531〕に変更した以外は、ASTMD2520に準拠して実施した。誘電特性の測定は、温度:23℃±1℃、湿度50%RH±5%RH環境下で実施した。
【0120】
・高周波回路基板用樹脂フィルムの誘電特性〔周波数:28GHz付近、76.5GHz付近〕
高周波回路基板用の樹脂フィルムの周波数:28GHz付近、76.5GHz付近の誘電特性は、ベクトルネットワークアナライザーを用い、開放型共振器法の一種であるファブリペロー法により測定した。共振器は、開放型共振器〔キーコム社製:ファブリペロー共振器 Model No.DPS03〕を使用した。
【0121】
測定に際しては、開放型共振器冶具の試料台上に高周波回路基板用の樹脂フィルムを載せ、ベクトルネットワークアナライザー用いて開放型共振器法の一種であるファブリペロー法で測定した。具体的には、試料台の上に樹脂フィルムを載せない状態と、樹脂フィルムを載せた状態の共振周波数の差を利用する共振法により、比誘電率と誘電正接とを測定した。誘電特性の測定に用いた具体的な周波数は表4に示す通りである。
【0122】
誘電特性の測定、具体的には28GHz付近、及び76.5GHz付近の誘電特性は、温度:24℃、湿度40%環境下で所定の測定装置により測定した。所定の測定装置としては、28GHz付近はベクトルネットワークアナライザE8361A〔アジレント・テクノロジー社製:製品名〕を使用した。76.5GHz付近では、ベクトルネットワークアナライザN5227A〔アジレント・テクノロジー社製:製品名〕を用いた。
【0123】
・高周波回路基板用樹脂フィルムの線膨張係数
高周波回路基板用の樹脂フィルムの線膨張係数は、樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。具体的には、樹脂フィルムの押出方向の線膨張係数を測定する場合には、押出方向20mm×幅方向4mm、幅方向の線膨張係数を測定する場合には、押出方向4mm×幅方向20mmの大きさに切り出して測定した。線膨張係数の測定に際しては、熱機械分析装置〔日立ハイテクサイエンス社製 製品名:SII//SS7100〕を用いた引張モードにより、荷重:50mN、昇温速度:5℃/min.の割合で25℃から250℃まで昇温速度:5℃/min.の割合で昇温し寸法の温度変化を測定し、25℃から125℃までの範囲の傾きにより線膨張係数を求めた。
【0124】
・高周波回路基板用樹脂フィルムのはんだ耐熱性
高周波回路基板用の樹脂フィルムのはんだ耐熱性は、JIS C 5016の試験法に準拠し、樹脂フィルムを288℃のはんだ浴に10秒間浮かべ、室温まで冷却した後、樹脂フィルムの変形やシワの発生の有無を目視により観察した。
○:樹脂フィルムに変形やシワの発生が認められない場合
×:樹脂フィルムに変形やシワの発生が認められた場合
【0125】
〔実施例2〕
先ず、高周波回路基板用の樹脂フィルムを製造するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、製品名:キータスパイアPEEK KT-851NL SP(以下、「KT-851NL SP」と略す)〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿熱風乾燥器で12時間以上乾燥させた。非膨潤性の合成マイカについては、市販されているカリウム四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製 製品名:ミクロマイカMK‐100DS、平均粒子径:3.3μm〕を使用した。
【0126】
次いで、ポリエーテルエーテルケトン樹脂と合成マイカとを実施例1と同様の方法により、高周波回路基板用の樹脂フィルムの成形材料に調製した。ポリエーテルエーテルケトン樹脂と合成マイカとは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対して合成マイカ35質量部となるように混合した。
【0127】
成形材料を調製したら、この成形材料を使用して実施例1と同様の方法により、高周波回路基板用の樹脂フィルムを押出成形した。樹脂フィルムを押出成形したら、この樹脂フィルムの厚さ、機械的特性、加熱寸法安定性、誘電特性、耐熱性をそれぞれ実施例1と同様の方法により評価し、表1にまとめた。
【0128】
〔実施例3〕
先ず、高周波回路基板用の樹脂フィルムを製造するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として、実施例2で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、製品名:キータスパイアPEEK KT-851NL SP(以下、「KT-851NL SP」と略す)〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂と非膨潤性の合成マイカを実施例1と同様の方法により、高周波回路基板用の樹脂フィルムの成形材料に製造した。ポリエーテルエーテルケトン樹脂と合成マイカとは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対して合成マイカ45質量部となるように合成マイカを添加した。合成マイカは、実施例1のカリウム四ケイ素雲母とした。
【0129】
成形材料を調製したら、この成形材料を使用して実施例1と同様の方法により、高周波回路基板用の樹脂フィルムを押出成形した。樹脂フィルムを押出成形したら、この樹脂フィルムの厚さ、機械的特性、加熱寸法安定性、誘電特性、耐熱性をそれぞれ実施例1と同様の方法により評価して表1にまとめた。
【0130】
〔実施例4〕
高周波回路基板用の樹脂フィルムを製造するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 381G(以下、「381G」と略す)〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿熱風乾燥器で12時間以上乾燥させた。合成マイカは、実施例1のカリウム四ケイ素雲母を使用した。
【0131】
次いで、ポリエーテルエーテルケトン樹脂に非膨潤性の合成マイカを、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対して合成マイカが45質量部となるように添加し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂と合成マイカを実施例1と同様の方法により、高周波回路基板用の樹脂フィルムの成形材料に製造した。
【0132】
成形材料を調製したら、この成形材料を使用して実施例1と同様の方法により、高周波回路基板用の樹脂フィルムを押出成形した。樹脂フィルムを押出成形したら、この樹脂フィルムの厚さ、機械的特性、加熱寸法安定性、誘電特性、耐熱性をそれぞれ実施例1と同様の方法により評価して表2に記載した。
【0133】
〔実施例5〕
高周波回路基板用の樹脂フィルムを製造するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として、実施例4で用いたポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 381G(以下、「381G」と略す)〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿熱風乾燥器で12時間以上乾燥させた。
【0134】
次いで、ポリエーテルエーテルケトン樹脂と非膨潤性の合成マイカとを実施例1と同様の方法で高周波回路基板用の樹脂フィルムの成形材料に製造した。非膨潤性の合成マイカは、市販のカリウム四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製、製品名:ミクロマイカMK-300、平均粒子径:11.9μm〕を使用した。また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂と合成マイカとは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対して合成マイカ65質量部となるように添加した。
【0135】
成形材料を調製したら、この成形材料を使用して実施例1と同様の方法で高周波回路基板用の樹脂フィルムを押出成形した。樹脂フィルムを押出成形したら、この樹脂フィルムの厚さ、機械的特性、加熱寸法安定性、誘電特性、耐熱性をそれぞれ実施例1と同様の方法により評価して表2に記載した。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
〔比較例1〕
実施例1で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間以上乾燥させた。ポリエーテルエーテルケトン樹脂を乾燥させたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を幅900mmのTダイスを備えたφ40mm押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練したポリエーテルエーテルケトン樹脂を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出し、その後、単軸押出機側から200℃、230℃、250℃に加熱した金属ロールで冷却することにより、高周波回路基板用の樹脂フィルムを押出成形した。φ40mm単軸押出成形機の温度は380℃~400℃(確認)、Tダイスの温度は400℃とした。
【0139】
こうして高周波回路基板用の樹脂フィルムを押出成形したら、この樹脂フィルムを、図2に示すようなシリコーンゴム製の一対の圧着ロール、単軸押出機側から200℃、230℃、250℃の金属ロール、及びこれらの下流に位置する巻取機の6インチの巻取管に順次巻架するとともに、圧着ロールと金属ロールとに挟持させ、連続した樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることで、長さ100m、幅650mmの樹脂フィルムを製造した。樹脂フィルムが得られたら、この樹脂フィルムの厚さ、機械的特性、加熱寸法安定性、誘電特性、耐熱性をそれぞれ実施例1と同様の方法により評価して表3にまとめた。
【0140】
〔比較例2〕
実施例2で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間以上乾燥させた。こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂を12時間以上乾燥させたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂と炭酸カルシウム〔東洋ファインケミカル社製、製品名:ホワイトンP-10、平均粒子径:2.5μm〕とを実施例1と同様の方法により、高周波回路基板用の樹脂フィルムの成形材料に調製した。ポリエーテルエーテルケトン樹脂と炭酸カルシウムとは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対し、炭酸カルシウム43質量部となるように混合した。
【0141】
次いで、成形材料を使用して実施例1と同様の方法により、高周回路基板用の樹脂フィルムを押出成形した。樹脂フィルムを押出成形したら、この樹脂フィルムの厚さ、機械的特性、加熱寸法安定性、誘電特性、耐熱性をそれぞれ実施例1と同様の方法により評価し、表3にまとめた。
【0142】
〔比較例3〕
実施例4で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間以上乾燥させた。ポリエーテルエーテルケトン樹脂を12時間以上乾燥させたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂と非晶質シリカ〔アドマテックス社製、製品名:SC5500-SQ、平均粒子径:1.4μm〕とを、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対して非晶質シリカ37質量部となるように混合した。
【0143】
次いで、成形材料を調製したら、この成形材料を使用して実施例1と同様の方法により、高周波回路基板用の樹脂フィルムを押出成形した。樹脂フィルムが得られたら、この樹脂フィルムの厚さ、機械的特性、加熱寸法安定性、誘電特性、耐熱性をそれぞれ実施例と同様の方法により評価し、表3に記載した。
【0144】
【表3】
【0145】
【表4】
【0146】
〔結 果〕
各実施例の高周波回路基板用の樹脂フィルムは、比誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.005以下であった。また、機械的特性は、引張弾性率が3500N/mm以上で高い剛性を有しているため、高周波回路基板の組み立て時のハンドリング性に優れていた。加熱寸法安定性は、線膨張係数が50ppm/℃以下となり、従来よりも優れた結果を得た。さらに、耐熱性についても、288℃のはんだ浴に10秒間浮かべても、全く変形やシワの発生が認められず、高周波回路基板として使用可能な耐熱性を有していた。
【0147】
これに対して、比較例の高周波回路基板用樹脂フィルムは、非膨潤性の合成マイカを添加しなかったので、線膨張係数が55ppm/℃以上となり、不十分な結果となった。これらの測定結果から、各実施例の樹脂フィルムは、誘電特性に優れ、MHz帯域からGHz帯域の高周波帯域で用いられる高周波回路基板に最適であるのが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明に係る樹脂フィルムの製造方法は、情報通信や自動車機器等の分野で使用される。
【符号の説明】
【0149】
1 樹脂フィルム
2 金属箔(金属層)
3 導電層
4 成形材料
10 溶融押出成形機(押出成形機)
11 原料投入口
13 Tダイス(ダイス)
16 冷却ロール
17 圧着ロール
18 巻取機
19 巻取管
20 スリット刃
図1
図2
図3