(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】透明系シャンプー組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20240708BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240708BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240708BHJP
C11D 1/18 20060101ALI20240708BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20240708BHJP
C11D 1/94 20060101ALI20240708BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20240708BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/20
A61K8/42
A61K8/46
A61K8/73
A61Q5/02
C11D1/18
C11D1/90
C11D1/94
C11D3/04
C11D3/22
(21)【出願番号】P 2017163815
(22)【出願日】2017-08-28
【審査請求日】2020-06-23
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2016179049
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】松尾 諭
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博也
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 昌彦
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】野田 定文
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/132444(WO,A1)
【文献】特開2014-122183(JP,A)
【文献】特開2009-24012(JP,A)
【文献】特開2002-285019(JP,A)
【文献】特開2016-88934(JP,A)
【文献】特開2013-216639(JP,A)
【文献】特開2010-159234(JP,A)
【文献】特開平8-183993(JP,A)
【文献】特開平5-246829(JP,A)
【文献】特開2014-101356(JP,A)
【文献】特開昭58-138799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分:式(1)で表される界面活性剤を1~20質量%、
(b)成分:両性界面活性剤を1~12質量%、
(c)成分:重量平均分子量が5×10
5~30×10
5であるカチオン化セルロースを0.05~2質量%、
(d)成分:塩化ナトリウムを0.75~2.1質量%、
(e)成分:ラウリン酸エタノールアミドまたはヤシ脂肪酸エタノールアミドを1.5~3質量%含有し、
(b)成分に対する(a)成分の質量比(a)/(b)が1~6.0であり、かつ、{(a)/(b)}/(d)が1.0~3.6であることを特徴とする透明系シャンプー組成物(ただし、下記(i)成分または(ii)成分を含有する場合、カチオン化グアガムを含有する場合
、糖及び/または糖アルコールを14質量%以上含有する場合
、ならびにPEG(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム3~15質量%と、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン3~5質量%と、カチオン化セルロース(レオガードMGP、カチオン化度1.8質量%、重量平均分子量170万)0.5質量%と、塩化ナトリウム1質量%と、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド1.0質量%を含有する場合を除く。)。
【化1】
(式(1)中、RCOは炭素数8~18の脂肪族アシル基を示し、M
1はアルカリ金属原子、アルカノールアミン、タウリンのアルカリ金属塩を示す。)
(i)成分:平均分子量10,000~35,000のポリエチレングリコールに、繰り返し数が5~70であるジメチル鎖を有するシリコーン基を導入したトリブロックポリマー
(ii)成分:シリコーン化された繰り返し数が60~10000である多糖類
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手に取った際に液だれを起こし難く、シャンプーすすぎ時の指通り性が良く、低温での経時安定性に優れる透明系シャンプー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アシルアミノ酸系界面活性剤は、皮膚や毛髪に対する刺激性が低く、起泡性が高いという優れた使用感を有することから、頭皮、頭髪やボディ用洗浄剤といった身体用洗浄剤の主要成分として使用されている。このアシルアミノ酸系界面活性剤の中でもアシルメチルタウリン塩は、シャンプーに使用した場合、洗髪時の泡立ちが良く、滑らかな仕上がりが得られることから、好適に使用されている。そのため、アシルメチルタウリン塩をシャンプーへ高配合することにより、洗髪時の泡立ちや滑らかな使用感をさらに向上させることが試みられている。
【0003】
近年、泡立ちや使用感などの性能面に加え、シャンプーにおいてさらなる高付加価値化が求められており、例えば、高級感を演出する目的で、シリコーンやパール化剤を配合しない透明系シャンプーが求められる場合がある。アシルアミノ酸系界面活性剤は、アシル化剤として使用される脂肪酸クロリド由来の塩化ナトリウムを僅かながら含むため、特に高配合した場合には、シャンプー中に含有される塩化ナトリウムにより、低温時にシャンプーにくすみを生じる場合があり、透明系シャンプーを想定した商品では問題になる虞があった。
【0004】
特許文献1には、低温での経時安定性(以下、「低温安定性」とも言う。)を改善する処方として、1,3-ブチレングリコールやジプロピレングリコールといった二価アルコール等の多価アルコールを含有する洗浄剤組成物が提案されている。しかしながら、アシルメチルタウリン塩を高配合したシャンプーにおいて、低温安定性を改善しうる量の多価アルコールを配合した場合には、シャンプー組成物の粘度が大きく低下してしまい、適正な粘度を有するシャンプーを調製することが難しくなってしまうといった問題があった。
【0005】
特許文献2には、アシルメチルタウリン塩と両性界面活性剤とカチオン化ポリマーを特定の含有量で配合することにより、すすぎ時の指通り性が良く、低温時の経時安定性に優れるシャンプーが記載されている。配合処方を工夫することにより、ある程度の低温安定性は改善できるものの、アシルメチルタウリン塩を高配合したシャンプーにおいては適正な粘度が得られにくくなる場合があった。このような場合に、塩化ナトリウムを少量添加して粘度を向上させて、手に取った際に液だれを起こさないような処方を採ることが行われるが、低温でシャンプーにくすみが発生し、透明性が維持できなくなる場合があった。
【0006】
このように、アシルメチルタウリン塩を高配合したシャンプーにおいて、すすぎ時の指通り性が良く、塩化ナトリウムを添加して、液だれしない程度の粘度を有する処方にした場合でも、低温時の経時安定性に優れる透明系シャンプー組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-218744号公報
【文献】特開平5-246829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、手に取った際に液だれを起こし難く、シャンプーすすぎ時の指通り性が良く、低温での経時安定性に優れる透明系シャンプー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アシルメチルタウリン塩、両性界面活性剤、特定分子量のカチオン化セルロースを配合し、特定量の塩化ナトリウムを含有した透明系シャンプー組成物において、アシルメチルタウリン塩を高配合した際にも、シャンプーすすぎ時の指通り性が良く、低温時の経時安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(a)成分:式(1)で表される界面活性剤を1~20質量%、(b)成分:両性界面活性剤を1~12質量%、(c)成分:重量平均分子量が5×10
5~30×10
5であるカチオン化セルロースを0.05~2質量%、(d)成分:塩化ナトリウムを0.75~2.1質量%、(e)成分:ラウリン酸エタノールアミドまたはヤシ脂肪酸エタノールアミドを1.5~3質量%含有し、(b)成分に対する(a)成分の質量比(a)/(b)が1~6.0であり、かつ、{(a)/(b)}/(d)が1.0~3.6であることを特徴とする透明系シャンプー組成物(ただし、下記(i)成分または(ii)成分を含有する場合、カチオン化グアガムを含有する場合
、糖及び/または糖アルコールを14質量%以上含有する場合
、ならびにPEG(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム3~15質量%と、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン3~5質量%と、カチオン化セルロース(レオガードMGP、カチオン化度1.8質量%、重量平均分子量170万)0.5質量%と、塩化ナトリウム1質量%と、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド1.0質量%を含有する場合を除く。)。
【化1】
(式(1)中、RCOは炭素数8~18の脂肪族アシル基を示し、M
1はアルカリ金属原子、アルカノールアミン、タウリンのアルカリ金属塩を示す。)
(i)成分:平均分子量10,000~35,000のポリエチレングリコールに、繰り返し数が5~70であるジメチル鎖を有するシリコーン基を導入したトリブロックポリマー
(ii)成分:シリコーン化された繰り返し数が60~10000である多糖類
【発明の効果】
【0011】
本発明の透明系シャンプー組成物によれば、アシルメチルタウリン塩を高配合した際にも、手に取った際に液だれを起こし難く、シャンプーすすぎ時の指通り性が良く、低温での経時安定性に優れるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の透明系シャンプー組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、および(d)成分を含有する。以下、各成分を説明する。
【0013】
〔(a)成分〕
本発明に用いられる(a)成分は、式(1)で表される界面活性剤であり、アシルメチルタウリン塩である。
式(1)中のRCOは炭素数8~22、好ましくは炭素数8~18の脂肪族アシル基を示す。脂肪族アシル基には、炭素数8~22の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸を由来とするアシル基のみならず、これら脂肪酸の二種以上を含む混合脂肪酸由来のアシル基が含まれる。かかる脂肪族アシル基としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基、カプリロイル基、カプリノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、ベヘノイル基などが挙げられる。好ましくは、ラウロイル基、ミリストイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基であり、特に好ましくは、ラウロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基である。
【0014】
式(1)中のM1は、アルカリ金属原子、アルカノールアミン、タウリンのアルカリ金属塩を示す。アルカリ金属原子としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。また、タウリンのアルカリ金属塩としては、例えば、タウリンナトリウム、タウリンカリウムなどが挙げられる。これらのうち好ましくは、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアミン、タウリンナトリウムである。
【0015】
式(1)で表されるアシルメチルタウリン塩の具体例としては、例えば、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンカリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンカリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウム、ラウロイルメチルタウリンタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンタウリンナトリウムなどが挙げられる。
【0016】
本発明において(a)成分は、上記式(1)で包含される化合物のうち一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0017】
〔(b)成分〕
本発明に用いられる(b)成分は、両性界面活性剤であり、例えば、N-アシル基またはN-アルキル基、陽イオン性基、陰イオン性基を合わせ持つ構造を有する界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルヒドロシキシスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドヒドロキシエチルアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルイミノジ酢酸塩等が挙げられる。
【0018】
上記の両性界面活性剤に含まれるN-アシル基は、例えば、炭素数8~18の直鎖あるいは分岐の脂肪酸残基である。かかる脂肪酸残基における脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;およびこれらの混合物であるヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸等が挙げられる。これらのうち好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸である。特に好ましくは、ラウリン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸である。
【0019】
上記の両性界面活性剤に含まれるアルキル基は、例えば、炭素数8~18の炭化水素基であり、混合脂肪酸由来のアルキル基も含まれる。例えば、カプリリル基、カプリル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基等のアルキル基;ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基、牛脂アルキル基等の混合アルキル基が挙げられる。これらのうち好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基である。特に好ましくは、ラウリル基、ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基である。
【0020】
(b)成分の両性界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。
【0021】
本発明において(b)成分は、上記両性界面活性剤のうち一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0022】
〔(c)成分〕
本発明に用いられる(c)成分は、重量平均分子量が5×105~30×105であるカチオン化セルロースである。(c)成分のカチオン化セルロースの重量平均分子量は、好ましくは7×105~25×105であり、特に好ましくは9×105~20×105である。
(c)成分は、(a)および(b)の各成分の混合ミセルと複合体を形成する機能を有する。この複合体が、毛髪のすすぎ時に析出(コアセルベーション現象)して毛髪に吸着することで、洗髪時およびすすぎ時の指通り性を向上させるコンディショニング効果を付与する。
(c)成分は、例えば、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる4級アンモニウム塩の重合体である塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。重量平均分子量が5×105~30×105である市販のカチオン化セルロースとしては、例えば、ライオン株式会社の「レオガードMGP」、東邦化学工業株式会社の「カチナールHC-200」や「カチナールLC-200」、花王株式会社の「ポイズC-150L」などが挙げられる。
【0023】
本発明において重量平均分子量の測定は、静的光散乱測定による。すなわち、希釈した高分子水溶液の示差屈折率計を用いた濃度-示差屈折率曲線と、散乱強度測定装置を用いて散乱強度の濃度-角度依存性を測定し、Zimmプロットの濃度0、角度0に外挿することにより重量平均分子量を測定することができる。
【0024】
本発明において(c)成分は、これらカチオン化セルロースのうち一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0025】
〔(d)成分〕
本発明に用いられる(d)成分は塩化ナトリウムであり、例えば、使用する(a)成分に含まれる塩化ナトリウムを(d)成分として利用することができ、必要に応じて、別途、塩化ナトリウムを用いることもできる。
【0026】
〔透明系シャンプー組成物〕
次に、本発明の透明系シャンプー組成物における各成分の含有量について説明する。
本発明の透明系シャンプー組成物における(a)成分の含有量は、1~20質量%であり、好ましくは2~16質量%であり、特に好ましくは3~12質量%である。(a)成分の含有量が少なすぎる場合には、洗髪時の泡立ちが悪くなることや乾燥後の毛髪に十分な滑らかさが得られないことがあり、含有量が多すぎる場合には、低温時に界面活性剤の析出などの問題が起きる可能性がある。
【0027】
本発明の透明系シャンプー組成物における(b)成分の含有量は、1~20質量%であり、好ましくは2~16質量%であり、特に好ましくは3~12質量%である。(b)成分の含有量が少なすぎる場合には、洗髪時の泡質が低下したり、すすぎ時の指通り性が低下したりすることがあり、含有量が多すぎる場合には、低温時に界面活性剤の析出などの問題が起きる可能性がある。
【0028】
本発明の透明系シャンプー組成物における(c)成分の含有量は、0.01~2質量%であり、好ましくは0.05~1.5質量%であり、特に好ましくは0.1~1.0質量%である。(c)成分の含有量が少なすぎる場合には、コアセルベートの生成がごく微量となり、すすぎ時に良好な指通り性が得られないことがあり、含有量が多すぎる場合には、シャンプー組成物の低温安定性が損なわれる可能性がある。
【0029】
本発明の透明系シャンプー組成物における(d)成分の含有量は、0.5~2.5質量%であり、好ましくは0.75~2.1質量%であり、特に好ましくは1.0~1.7質量%である。(d)成分の含有量が少なすぎる場合には、シャンプー組成物を手に取った際に液だれを起こし易くなり、含有量が多すぎる場合には、シャンプー組成物の低温安定性が損なわれる可能性がある。
なお、透明系シャンプー組成物中の(d)成分の含有量は、使用する(a)成分に含まれる塩化ナトリウムの含有量から算出することができ、必要に応じて、別途、塩化ナトリウムを加えるなどして含有量を調整することもできる。
【0030】
本発明の透明系シャンプー組成物は、(b)成分に対する(a)成分の質量比((a)/(b))が1~9であり、好ましくは1.1~6.0であり、特に好ましくは1.2~4.5であり、さらに好ましくは1.3~3.0である。質量比((a)/(b))が大きすぎる場合や小さすぎる場合には、シャンプー組成物の低温安定性が損なわれる可能性がある。
【0031】
また、本発明の透明系シャンプー組成物は、特に上記質量比(a)/(b)が3以上の場合、シャンプー組成物を手に取った際の液だれのしにくさと低温安定性を両立させる観点で、(d)成分に対する上記質量比(a)/(b)の質量比{(a)/(b)}/(d)が1.9~2.4を満たすことが好ましく、特に2.0~2.2を満たすことが好ましい。
【0032】
本発明の透明系シャンプー組成物は、通常の方法に従って製造することができる。本発明の透明系シャンプー組成物はさらに溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、例えば、水、エタノール等の低級アルコール、または低級アルコール水溶液が挙げられ、特に水が好ましい。
本発明の透明系シャンプー組成物は、(a)~(d)の各成分、および水などの溶剤の総含有量が100質量%以下である。
【0033】
本発明の透明系シャンプー組成物は、毛髪の洗浄を目的とするものであれば、液状、ゲル状等の使用形態は限定されず、例えば、シャンプー、リンスインシャンプーとして用いることができる。
また、本発明の透明系シャンプー組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の界面活性剤や保湿剤、油分、水溶性高分子、防腐剤、殺菌剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、動植物由来の抽出エキス、色素、香料など、毛髪や身体の洗浄剤に一般的に用いられている各種成分を含有していてもよい。
【実施例】
【0034】
〔実施例1~11および比較例1~11〕
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
表1および表2に記載の配合に基づいて、常法に従いシャンプー組成物を調製した。
なお、表中の(c)成分として下記のものを用いた。
(c)-1 カチオン化セルロースA:レオガードMGP〔ライオン株式会社製、重量平均分子量17×105〕
(c)-2 カチオン化セルロースB:カチナールHC-200〔東邦化学工業株式会社製、重量平均分子量20×105〕
(c)-3 カチオン化セルロースC:ポイズC-150L〔花王株式会社製、重量平均分子量15×105〕
【0035】
実施例および比較例で得られたシャンプー組成物を試料として、下記のとおり評価を行い、その結果を表1および表2にまとめた。
【0036】
(1)液だれのしにくさ
各組成物を手の平に取ったときの液だれの程度を評価した。20名の男女(24~47才)をパネラーとし、手の平からの液だれが気にならないと感じた場合を2点、手の平からの液だれがやや気になるが、使用上問題ないと感じた場合を1点、手の平からの液だれが気になると感じた場合を0点として20名の合計点を求め、以下のように評価した。
◎:合計点が35点以上;手の平に取ったときにほとんど液だれせず、頭髪に十分塗布できる。
○:合計点が20点以上35点未満;手の平に取ったときにやや液だれするが、頭髪に塗布できる。
△:合計点が10点以上20点未満;手の平に取ったときに液だれし、頭髪に塗布しにくい。
×:合計点が10点未満;手の平に取ったときの液だれが激しく、頭髪に塗布できない。
【0037】
(2)すすぎ時の指通り性
カラーリングをしている20名の男女(24~47才)をパネラーとし、40℃の水を用いて試料(シヤンプー組成物)5mLで洗髪およびすすぎをした時の指通り性を評価した。指通りがスムーズで髪がひっかからないと感じた場合を2点、髪がやや指にひっかかると感じた場合を1点、指通りが非常に悪いと感じた場合を0点として20名の合計点を求め、以下のように評価した。
◎:合計点が35点以上;指通り性がとても優れている。
○:合計点が30点以上35点未満;指通り性が優れている。
△:合計点が20点以上30点未満;指通り性がやや乏しい。
×:合計点が20点未満;指通り性が乏しい。
【0038】
(3)経時安定性
各組成物を透明ガラス容器に密封して0℃、5℃でそれぞれ1週間保存し、その外観を観察して、下に示す3段階で評価した。
○:0℃、5℃のいずれにおいても外観の変化がない。
△:5℃において外観の変化はないが、0℃において組成物が白濁状に変化する。
×:0℃、5℃のいずれにおいても組成物が白濁状に変化する。
【0039】
【0040】
【0041】
実施例1~11はいずれの項目においても良好な評価であった。
一方、比較例1は(a)成分が含まれていないことから、組成物を手の平に取ったときの液だれが激しく、すすぎ時の指通り性も十分ではなかった。
比較例2では(b)成分を含有していないことから、組成物を手の平に取ったときの液だれが激しく、すすぎ時の指通り性も十分ではなく、低温での経時安定性に問題があった。
比較例3では(c)成分を含有していないことから、組成物を手の平に取ったときに液だれを起こしやすく、すすぎ時の指通り性も十分ではなく、低温での経時安定性に乏しかった。
比較例4では(a)成分の含有量が多いことから、低温での経時安定性に問題があった。
比較例5では(b)成分の含有量が多く、また質量比((a)/(b))が本発明規定範囲内でないことから、低温での経時安定性に問題があった。
比較例6では(d)成分の塩化ナトリウムの含有量が少ないことから、組成物を手の平に取ったときの液だれが激しく、頭髪に塗布できないという問題があった。
比較例7では(d)成分の塩化ナトリウムの含有量が多いことから、低温での経時安定性に乏しかった。
比較例8、比較例9、比較例10では(c)成分に替えて、それぞれカチオン化グァーガム、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・ アクリルアミド共重合体を含有していることから、低温での経時安定性に問題があった。
比較例11では1, 3-ブチレングリコールを含有していることから、組成物を手の平に取ったときに液だれを起こしやすく、頭髪にシャンプー組成物を十分塗布することができなかった。
【0042】
さらに、本発明の透明系シャンプー組成物の処方例を以下に具体的に示す。なお、いずれの処方例においても水を用いて全量を100質量%に調整した。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
これらの処方例の透明系シャンプー組成物は、手に取った際に液だれを起こし難く、シャンプーすすぎ時の指通り性が良く、低温での経時安定性に優れることから、本発明の効果が認められた。本発明により、手に取った際に液だれを起こし難く、シャンプーすすぎ時の指通り性が良く、低温での経時安定性に優れる透明系シャンプー組成物が提供される。