(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240708BHJP
A61K 35/18 20150101ALI20240708BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240708BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240708BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240708BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240708BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240708BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240708BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240708BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240708BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K35/18
A61P35/00
A61P35/02
C07K14/705
C07K16/00
C07K19/00
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/13
G01N33/574 A
(21)【出願番号】P 2017559530
(86)(22)【出願日】2016-05-16
(86)【国際出願番号】 US2016032780
(87)【国際公開番号】W WO2016187158
(87)【国際公開日】2016-11-24
【審査請求日】2019-05-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-21
(32)【優先日】2015-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598004424
【氏名又は名称】シティ・オブ・ホープ
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,ジョン・シー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,クリスティーン
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】長井 啓子
【審判官】天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】Journal of ImmunoTherapy of Cancer,2014年,2,suppl 3,01
【文献】信州医誌,2013年,61(4),p.197-203
【文献】PNAS,2013年 vol.110,no.43,p.17456-17461
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 16/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/REGISTRY・WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、重鎖定常領域1(CH1)および軽鎖定常領域(CL)によって形成され且つフレームワーク領域のアミノ酸残基を含むメディトープ結合部位を形成している中心空洞を含む、抗体領域;ならびに
(ii)膜貫通ドメイン
を含むキメラ抗原受容体をコードしている、単離された核酸。
【請求項2】
前記抗体領域が、抗体断片である、請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項3】
前記抗体領域が、ヒト化抗体領域である、請求項1または2に記載の単離された核酸。
【請求項4】
さらに、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインをコードしている細胞内T細胞シグナル伝達配列を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項5】
前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインである、請求項4に記載の単離された核酸。
【請求項6】
さらに、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインをコードしている細胞内共刺激シグナル伝達配列を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項7】
前記細胞内共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ICOS細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはOX-40細胞内共刺激シグナル伝達ドメインである、請求項6に記載の単離された核酸。
【請求項8】
さらに、スペーサー領域をコードしているスペーサー配列を含み、
該スペーサー領域が、前記膜貫通ドメインと前記抗体領域との間に存在している、請求項1から7のいずれか1項に記載の、単離された核酸。
【請求項9】
さらに、リンカードメインをコードしているリンカー配列を含み、前記リンカードメインが、前記膜貫通ドメインと前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの間に存在している、請求項1から8のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項10】
前記リンカードメインが、前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと前記細胞内共刺激シグナル伝達ドメインとの間に存在している、請求項9に記載の単離された核酸。
【請求項11】
前記リンカードメインが、配列GGCGGまたはGGGを含む、請求項9に記載の単離された核酸。
【請求項12】
(i)重鎖可変ドメインと前記膜貫通ドメインとを含む、前記キメラ抗原受容体の重鎖ドメインをコードしている、重鎖配列;および
(ii)軽鎖可変ドメインを含む、前記キメラ抗原受容体の軽鎖ドメインをコードしている、軽鎖配列
を含み、ここで、前記重鎖可変ドメインと前記軽鎖可変ドメインが、一緒になって前記抗体領域の少なくとも一部分を形成している、請求項1から11のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項13】
前記重鎖配列と前記軽鎖配列との間に自己切断性ペプチジル
リンカー配列を含む、請求項12に記載の単離された核酸。
【請求項14】
前記自己切断性ペプチジルリンカー配列が、T2A配列または2A配列である、請求項13に記載の単離された核酸。
【請求項15】
前記軽鎖配列が、前記重鎖配列の3’側である、請求項12から14のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項16】
前記抗体領域が、セツキシマブメディトープ使用可能ドメイン、トラスツズマブメディトープ使用可能ドメイン、ペルツズマブメディトープ使用可能ドメイン、M5Aメディトープ使用可能ドメインまたはリツキシマブメディトープ使用可能ドメインである、請求項1から15のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項17】
前記
キメラ抗原受容体の抗体領域が、抗CD19タンパク質、抗CD20タンパク質、抗CD22タンパク質、抗CD30タンパク質、抗CD33タンパク質、抗CD44v6/7/8タンパク質、抗CD123タンパク質、抗CEAタンパク質、抗EGP-2タンパク質、抗EGP-40タンパク質、抗erb-B2タンパク質、抗erb-B2,3,4タンパク質、抗FBPタンパク質、抗胎児型アセチルコリン受容体タンパク質、抗GD2タンパク質、抗GD3タンパク質、抗Her2/neuタンパク質、抗IL-13R-a2タンパク質、抗KDRタンパク質、anti k-軽鎖タンパク質、抗LeYタンパク質、抗L1細胞接着分子タンパク質、抗MAGE-A1タンパク質、抗メソテリンタンパク質、抗マウスCMV感染細胞タンパク質、抗MUC2タンパク質、抗NKGD2タンパク質、抗腫瘍胎児抗原タンパク質、抗PCSAタンパク質、抗PSMAタンパク質、mAb IfEによって標的化される抗TAAタンパク質、抗EGFRタンパク質、抗TAG-72 タンパク質または抗VEGF-72タンパク質である、請求項1から16のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項18】
さらに、自殺遺伝子配列を含む、請求項1から17のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項20】
前記発現ベクターが、ウイルスベクターである、請求項19に記載の発現ベクター。
【請求項21】
前記ウイルスが、レンチウイルスまたはオンコ-レトロウイルスである、請求項20に記載の発現ベクター。
【請求項22】
請求項19から21のいずれか1項に記載の発現ベクターを含む、Tリンパ球。
【請求項23】
重鎖の可変ドメイン、重鎖定常ドメイン、膜貫通ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび共刺激T細胞シグナル伝達ドメインを含む第1ポリペプチドと、軽鎖の可変ドメインおよび軽鎖の定常ドメインを含む第2ポリペプチドとを含む、請求項22に記載のTリンパ球。
【請求項24】
(i)重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、重鎖定常領域1(CH1)及び軽鎖定常(CL)領域によって形成され且つフレームワーク領域のアミノ酸残基を含むメディトープ結合部位を形成している中心空洞を含む、抗体領域;ならびに
(ii)膜貫通ドメイン
を含む、キメラ抗原受容体である、組換えタンパク質。
【請求項25】
前記抗体領域が、Fcドメインを含む、請求項24に記載の組換えタンパク質。
【請求項26】
前記抗体領域が、ヒト化抗体領域である、請求項24または25に記載の組換えタンパク質。
【請求項27】
前記抗体領域が、scFv抗体領域を含んでいない、請求項24から26のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項28】
前記タンパク質が、さらに、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む、請求項24から27のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項29】
前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインである、請求項28に記載の組換えタンパク質。
【請求項30】
さらに、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含む、請求項24から29のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項31】
前記細胞内共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ICOS細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはOX-40細胞内共刺激シグナル伝達ドメインである、請求項30に記載の組換えタンパク質。
【請求項32】
さらに、スペーサー領域を含む、請求項24から31のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項33】
前記スペーサー領域が、前記膜貫通ドメインと前記抗体領域との間に存在している、請求項32に記載の組換えタンパク質。
【請求項34】
さらに、リンカードメインを含む、請求項24から33のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項35】
前記リンカードメインが、前記膜貫通ドメインと前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの間に存在している、請求項34に記載の組換えタンパク質。
【請求項36】
前記リンカードメインが、前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと前記細胞内共刺激シグナル伝達ドメインとの間に存在している、請求項34に記載の組換えタンパク質。
【請求項37】
前記リンカードメインが、配列GGCGGまたはGGGを含む、請求項35または36に記載の組換えタンパク質。
【請求項38】
前記抗体領域が、セツキシマブメディトープ使用可能ドメイン、トラスズマブメディトープ使用可能ドメイン、ペルツズマブメディトープ使用可能ドメイン、M5Aメディトープ使用可能ドメインまたはリツキシマブメディトープ使用可能ドメインである、請求項24から37のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項39】
ペプチジル部分を含む化合物が、前記ペプチド結合部位に結合されている、請求項24から38のいずれか1項に記載の組換えタンパク質。
【請求項40】
前記化合物が、多価メディトープである、請求項39に記載の組換えタンパク質。
【請求項41】
前記膜貫通ドメインが、前記Tリンパ球の細胞膜内に存在している、請求項24から40のいずれか1項に記載の組換えタンパク質を含む、Tリンパ球。
【請求項42】
がんを治療するための医薬組成物であって、有効量の請求項41のT-リンパ球を含み、前記抗体領域が、抗がん抗体領域である、医薬組成物。
【請求項43】
前記T-リンパ球が、自己T-リンパ球である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記T-リンパ球が、異種T-リンパ球である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記がんが、固形腫瘍のがんまたは造血器悪性腫瘍である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記がんが、卵巣がん、腎細胞癌、B細胞性悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、神経芽細胞腫、黒色腫、髄芽細胞腫、肺がん、骨肉腫、膠芽腫または神経膠腫である、請求項42から45のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
インビトロにおいて、Tリンパ球を請求項19から21のいずれか1項に記載の発現ベクターと接触させることを含む、Tリンパ球のリプログラミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年5月15日に出願された米国特許仮出願第62/162,599号の優先権を主張するものであり、この仮出願の開示内容はその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルとして提出した「配列表」、表またはコンピュータプログラムリスティング付属書類の参照
2016年5月12日にマシンフォーマットIBM-PC,MS-Windowsオペレーティングシステムで作成した169,534バイトのファイル48440-558001WO_ST25.TXTに記載された配列表は、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
がんは、米国において死因の第2位であり、慢性呼吸器疾患、アルツハイマー病および糖尿病を含むこれ以下の5つの死因を合わせた数よりも死亡者が多い。桁外れの研究が、がんの検出、予防および処置において行なわれているが、依然として、特に進行症例において、腫瘍の進行を止めるだけでなくすべての腫瘍細胞を効率的に消去する治療をもたらす差し迫った必要性がある。アプローチの1つは、T細胞養子免疫療法である(5~7;非特許文献1~3)。この方法は、患者のT細胞の採取すること、この細胞を、腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)により操作すること、およびその後、改良したこの細胞を該患者に再導入することを要するものである。リプログラミングされたT細胞は、次いで、MHCペプチドの要件を回避して、直接、抗原発現腫瘍細胞を標的化し、強力だが局所的な免疫応答を誘起する。この処置方法(8;非特許文献4)では、初期段階の臨床試験で、ある程度のプラスの結果が、一握りの患者においてもたらされるが、すべての患者にもたらされるわけではない。当該技術分野において、CAR T細胞療法の奏功および不奏功がよりよく理解される必要性がある。例えば、当該技術分野において、形質転換細胞上のCARの密度を特性評価できる必要性、治療中、投与された任意の時点のCAR T細胞を追跡し、その分布を治療転帰と相関させることができる必要性、CAR T細胞を速やかに機能化し、移植CAR T細胞の数、位置およびバイアビリティをインサイチュでモニタリングできる必要性、ならびに必要であればCAR T細胞を選択的に消去できる必要性がある。有意義な相関により、医師が最良の処置選択肢を決定することが補助され、研究者らには、この治療アプローチを改変および改善するための重要な手がかりがもたらされよう。本明細書において、当該技術分野におけるこれらおよび他の必要性に対処する組成物および方法を、提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Kalos M,June CH.Adoptive T cell transfer for cancer immunotherapy in the era of synthetic biology.Immunity.2013;39(1):49-60.Epub 2013/07/31.doi:10.1016/j.immuni.2013.07.002.PubMed PMID:23890063 PMCID:PMC3809038.
【文献】Mardiros A,Dos Santos C,McDonald T,Brown CE,Wang X,Budde LE,Hoffman L,Aguilar B,Chang WC,Bretzlaff W,Chang B,Jonnalagadda M,Starr R,Ostberg JR,Jensen MC,Bhatia R,Forman SJ.T cells expressing CD123-specific chimeric antigen receptors exhibit specific cytolytic effector functions and antitumor effects against human acute myeloid leukemia.Blood.2013;122(18):3138-48.Epub 2013/09/14.doi:10.1182/blood-2012-12-474056.PubMed PMID:24030378 PMCID:PMC3814731.
【文献】Turtle CJ,Hudecek M,Jensen MC,Riddell SR.Engineered T cells for anti-cancer therapy.Curr Opin Immunol.2012;24(5):633-9.Epub 2012/07/24.doi:10.1016/j.coi.2012.06.004.PubMed PMID:22818942 PMCID:PMC3622551.
【文献】NCI.CAR T-Cell Therapy:Engineering Patients’ Immune Cells to Treat Their Cancers 2013.Available from:http://www.cancer.gov/cancertopics/research-updates/2013/CAR-T-Cells.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、単離された核酸を提供する。該核酸は、(i)重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、重鎖定常領域(CH)および軽鎖定常領域(CL)によって形成され且つフレームワーク領域のアミノ酸残基を含むペプチド結合部位を形成している中心空洞(central cavity)を含む抗体領域;ならびに(ii)膜貫通ドメインを含むタンパク質を、コードしている。
【0006】
一態様では、単離された核酸を提供する。該核酸は、(i)重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域によって形成され且つフレームワーク領域のアミノ酸残基を含むペプチド結合部位を形成している中心空洞を含む抗体領域;ならびに(ii)膜貫通ドメインを含むタンパク質を、コードしている。
【0007】
別の態様では、単離された核酸を提供する。該単離された核酸は、抗体重鎖の可変ドメインを含む第1部分および抗体軽鎖の可変ドメインと抗体軽鎖の定常ドメインとを含む第2部分を含むタンパク質をコードしており、ここで、第1部分は、さらに、膜貫通ドメインを含むものである。
【0008】
別の態様では、諸実施形態を含む本明細書において提供する核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0009】
別の態様では、諸実施形態を含む本明細書において提供する発現ベクターを含むTリンパ球を提供する。
【0010】
別の態様では、諸実施形態を含む本明細書において提供する発現ベクターを含む哺乳動物細胞を提供する。
【0011】
別の態様では、組換えタンパク質を提供する。該組換えタンパク質は、(i)重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域によって形成され且つフレームワーク領域のアミノ酸残基を含むペプチド結合部位を形成している中心空洞を含む抗体領域;ならびに(ii)膜貫通ドメインを、含むものである。
【0012】
別の態様では、組換えタンパク質を提供する。該組換えタンパク質は、抗体重鎖の可変ドメインを含む第1部分および抗体軽鎖の可変ドメインと抗体軽鎖の定常ドメインを含む第2部分を含むものであり、ここで、第1部分はさらに膜貫通ドメインを含むものであり、該抗体重鎖の可変ドメイン、該抗体軽鎖の可変ドメインおよび該抗体軽鎖の定常ドメインが、一緒になって抗体領域を形成している。
【0013】
別の態様では、諸実施形態を含む本明細書において提供する組換えタンパク質を含む哺乳動物細胞を提供し、ここで、該膜貫通ドメインは、該哺乳動物細胞の細胞膜に存在している。
【0014】
別の態様では、諸実施形態を含む本明細書において提供する組換えタンパク質を含むTリンパ球を提供し、ここで、該膜貫通ドメインは該Tリンパ球の細胞膜内に存在している。
【0015】
別の態様では、がんの処置方法を提供する。該方法は、がんの処置を必要とする被験体に、諸実施形態を含む本明細書において提供する哺乳動物細胞を有効量で投与することを含むものであり、ここで、該抗体領域は、抗がん抗体領域である。
【0016】
別の態様では、がんの処置方法を提供する。該方法は、がんの処置を必要とする被験体に、諸実施形態を含む本明細書において提供するT-リンパ球を有効量で投与することを含むものであり、ここで、該抗体領域は、抗がん抗体領域である。
【0017】
別の態様では、Tリンパ球のリプログラミング方法を提供する。該方法は、Tリンパ球を、諸実施形態を含む本明細書において提供する発現ベクターと接触させることを含むものである。
【0018】
別の態様では、がんの検出方法を提供する。該方法は、(i)がん患者に、諸実施形態を含む本明細書において提供する組換えタンパク質を含む有効量のTリンパ球と該ペプチド結合部位に結合し得るペプチジル部分を含む化合物とを投与することを含むものであり、ここで、該化合物は、さらに、検出可能な標識を含むものであり、該抗体領域は、抗がん抗体領域である。該方法は、(ii)該化合物が該ペプチド結合部位に結合し、これにより組換えタンパク質-化合物複合体を形成することを可能にすることを含むものである。ならびに、(iii)該がん患者において該組換えタンパク質-化合物複合体を検出し、これにより、該がんを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1Aから
図1B.
図1A:キメラ抗原受容体の模式図。腫瘍を特異的に標的化するため、腫瘍関連抗原を認識する完全mAbまたはFab断片を直接、膜貫通ドメインおよびゼータ鎖と融合させる。また、メディトープ(meditope)結合部位をmAB/Fab上にグラフト化し、CAR T細胞に機能性を付加するさらなる手段をもたらしてもよい。
【
図1B】
図1Aから
図1B.
図1B.2つの鎖を発現させなければならないため(例えば、mAbの軽鎖と重鎖+膜貫通シグナル伝達セグメントおよび細胞内シグナル伝達セグメント)、異なる鎖を発現させるための2つの異なる可能性がある。具体的には、軽鎖の後に重鎖または重鎖の後に軽鎖である。
【
図2A】
図2Aから
図2B:HER2特異的CAR。
図2A.2Aリボソームスキップ配列と細胞の形質導入の不活性免疫原性マーカーとしての機能を果たす切断型CD19(CD19t)とを含む、HER2特異的CARの発現のためのレンチウイルスCARカセットの略図。
【
図2B】
図2Aから
図2B:HER2特異的CAR。
図2B.HER2R:28ζを発現させるためにレンチウイルスで形質導入したTcmは、CARおよびCD19の両タンパク質の安定な細胞表面発現を示す。
【
図3A】
図3Aから
図3B.HER2-28ζ Tcmは、高発現HER2標的および低発現HER2標的の両方を殺傷する。
図3A.乳房腫瘍株およびHER2陰性U87膠芽腫細胞株のパネルにおいてHER2表面発現を評価するフローサイトメトリー解析。
【
図3B】
図3Aから
図3B.HER2-28ζ Tcmは、高発現HER2標的および低発現HER2標的の両方を殺傷する。
図3B.HER2-28z CAR T細胞による殺傷を評価する4時間のクロム放出アッセイは、高発現HER2+腫瘍細胞株および低発現HER2+腫瘍細胞株がともに殺傷されることを示す。
【
図4A】
図4Aから
図4D.メディトープ試験.:
図4A 結晶構造.5-ジフェニル-メディトープおよびタンパク質LをトラスツズマブmemAbに結合させる。抗原結合部位を画定するHER2の細胞外ドメインをpdb 1n8zを用いて重ね合わせた。注:タンパク質Lおよびメディトープは相違するものであり、抗原結合部位から遠位である。
【
図4B】
図4Aから
図4D.メディトープ試験.:
図4B FACS.SKBR3細胞を標識トラスツズマブ(親;memAb)および標識メディトープ-タンパク質L(MPL6)により、逐次処理するか、またはこれらの予備混合により処理するかのいずれかとした。トラスツズマブmemAbのみがメディトープ-タンパク質Lをシフトさせる。このことは、抗原結合がメディトープ結合を妨害しないことを示す。
【
図4C】
図4Aから
図4D.メディトープ試験.:
図4C 蛍光顕微鏡検査.SKBR3細胞の使用で、メディトープ-タンパク質L(MPL6-GFP)と融合させたGFPは、トラスツズマブmemAbと共局在する(上列)が、親トラスツズマブとは共局在しない(下列)。これは、嵩高い生物材料が抗原結合を障害しないことを示す。
【
図4D】
図4Aから
図4D.メディトープ試験:
図4D 超解像顕微鏡検査.個々のHER2受容体は、メディトープ-タンパク質L(MPL6-GFP)と融合させたpaGFPおよびトラスツズマブmemAbを用いて可視化され、定量され得る。左パネルは、細胞全体を示す。右パネルは、個々の受容体を示す。
【
図5】
図5.頭蓋内移植乳房腫瘍に対するHER2-scFv-CAR Tcmの抗腫瘍活性。NSGマウスにおける、i.c.移植されたBT474 EGFP-ffLuc
+腫瘍(1×10
5個の細胞)に対する、HER2R-CAR T細胞の腫瘍内i.c.注射後の代表的な治療応答。11日目、マウスに、1×10
6個のHER2-CAR Tcm、mock TcmまたはPBSのいずれかを投与した。
【
図6】
図6.meHER2R-CAR T細胞。一次ヒトT細胞を、HER2-scFv-CAR(HER2R-EQ-28Z)またはメディトープ使用可能(enabled)HER2-CAR(meHER2R-dCH2-28Z)のいずれかを発現するようにレンチウイルスで形質導入した。meHER2-dCH2-28Zの細胞表面発現を、フローサイトメトリーにより抗Fc抗体を用いて確認する。
【
図7】
図7.一次ヒトT細胞におけるマウスT84.66およびヒト化M5A由来scFv-CEA特異的CAR の発現。muT84.66およびM5A由来CEA-scFv-CARはどちらも、操作した細胞によって安定的に発現される。
【
図8A】
図8Aから
図8B.CEA+標的の殺傷に関するマウスT84.66対ヒト化M5A scFv-CEA特異的CAR T細胞の比較。
図8A:CEAの標的細胞発現。
【
図8B】
図8Aから
図8B.CEA+標的の殺傷に関するマウスT84.66対ヒト化M5A scFv-CEA特異的CAR T細胞(対比)の比較。
図8B:4時間のクロム放出アッセイ。muT84.66由来CEA-scFv-CAR T細胞は、4時間のクロム放出アッセイにおいてCEA+標的細胞を認識して殺傷する。それに対し、ヒト化M5A由来CEA-scFv-CAR T細胞では、CEA+標的細胞は殺傷されない。
【
図9】
図9.例示的なFabおよびリンカーの立体配置の例示。
【
図10】
図10.CHO-S細胞を、memAbトラスツズマブFab CAR(meCAR)またはトラスツズマブscFv-CAR(HER2CAR)プラスミドのいずれかで、2日間トランスフェクトした。meCARおよびHER2CAR構築物は、HER2標的性成分においてのみ異なり、各々、CH3、CD28膜貫通ドメインおよびCD3ゼータに連結されている。切断型CD19もまた、プラスミドから発現されて、トランスフェクション対照として使用され得る。トランスフェクトされたCHO-S細胞を40μmフィルターで濾過して残屑を除去し、0.3%BSA-PBSで1回洗浄した。次いで細胞を氷上で1時間、以下によって標識した:PE-抗CD19またはイソ型対照、ビオチン化抗Fcγおよびそれに続くストレプトアビジン-PE、またはPacific Blue-可溶性HER2とAlexa Fluor 488-メディトープFc(MFC)による二重標識。インキュベーションの終了時、細胞を1回洗浄し、800μlの洗浄バッファー中に再懸濁させた。Sytox blueをバイアビリティおよび膜透過性の評価のために非標識細胞に添加した。細胞を、前方側方散乱のみでゲーティングした。Sytox BlueおよびPacific Blueは、このスペクトルにおいてかなりの重複を有し、従って、非標識試料のSytox Blueシグナルは、Pacific Blueチャネル内に「漏出」したものである。CHO-S細胞が膜結合型タンパク質を発現する場合、黄色い楕円内の細胞群で示されるように、この膜がSytox Blue色素に対してより透過性となることに留意した。meCARトランスフェクト細胞およびHER2CARトランスフェクト細胞は、どちらも、CD19、CH3およびsHER2に陽性であるが、meCARだけはMFC結合にも陽性である。
【
図11A】
図11Aから
図11C.一次ヒトT細胞におけるメディトープ使用可能Fab-CARの発現。
図11A,メディトープ(me)使用可能トラスツズマブFab-CARカセット(meHER2)概略図であり、T2Aリボソームスキップ配列により、抗体軽鎖(meLc)と、IgG4-CH3-Fcリンカーに融合された重鎖、CD28膜貫通ドメイン(Tm)、CD28およびCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメイン(Hc28ζ)とが、分かれている。発現は、EF1αプロモーターによって駆動され、2つの配向:Lc-Hc28ζおよびHc28ζ-Lcで試験された。
【
図11B】
図11Aから
図11C.一次ヒトT細胞におけるメディトープ使用可能Fab-CARの発現。
図11B,一次ヒトT細胞をレンチウイルスで形質導入し、meHER2-CARの発現をフローサイトメトリーによって評価した。Fab軽鎖に結合するタンパク質Lの染色により両方のCAR配向の細胞表面発現が確認され、Hc28ζ-Lc(MFI 5357)ではLc-Hc28ζ(MFI 2592)配向と比べて高い発現レベル(MFI)が観察された。メディトープ-AF647染色によりCARメディトープポケットの機能的形成が確認され、Hc28ζ-Lc(MFI 6042)ではLc-Hc28ζ(MFI 2121)配向と比べて結合が大きい。
【
図11C】
図11Aから
図11C.一次ヒトT細胞におけるメディトープ使用可能Fab-CARの発現。
図11C,メディトープペプチドと事前に結合させたmeHER2-CAR T細胞は、タンパク質Lおよび可溶性HER2-抗原に結合する能力を保持しており、メディトープ結合は、Fabの抗原結合特性および構造成分を改変しないことが示唆される。
【
図12A】
図12Aから
図12D.メディトープ使用可能HER2-CAR(meHER2)T細胞は、HER2+標的に応答して、scFvHER2-CAR T細胞と同等レベルで脱顆粒し、メディトープペプチドはT細胞の脱顆粒にマイナスの影響を及ぼさない。
図12A,HER2+乳がん細胞株MCF-7およびSK-BR-3を、HER2の細胞表面発現についてフローサイトメトリー(Biolegend;カタログ番号324413)によって評価した。MCF-7は、HER2を過剰発現するSK-BR-3と比較すると相対的に低レベルのHER2を発現する。
【
図12B】
図12Aから
図12D.メディトープ使用可能HER2-CAR(meHER2)T細胞は、HER2+標的に応答して、scFvHER2-CAR T細胞と同等レベルで脱顆粒し、メディトープペプチドはT細胞の脱顆粒にマイナスの影響を及ぼさない。
図12Bから12D CD107a脱顆粒アッセイ。HD187.2 T細胞を、meHER2(Hc-Lc):28ζCAR、meHER2(Lc-Hc):28ζCAR、scFvHER2:28ζCARまたはCARなし(模擬)のいずれかを発現するように操作した。meHER2:28ζ-CAR型は、重鎖(Hc)および軽鎖(Lc)の配向においてのみ異なる。
図11参照。
図12B 1:1のエフェクター対MCF-7の比(CAR発現に基づく)にて5時間の共培養後の模擬T細胞(陰性対照)およびscFvHER2-CAR T細胞(陽性対照)についてのCD107a脱顆粒を示す代表的なFAC。CD107a脱顆粒(BD Pharmingen
TM;カタログ番号555800)を、CAR+ CD8+細胞に関してゲーティングするフローサイトメトリー(Miltenyi Biotec;MACSQuant)によって検出し、FCS Express(De Novo Software)を用いて解析した。
【
図12C】
図12Aから
図12D.メディトープ使用可能HER2-CAR(meHER2)T細胞は、HER2+標的に応答して、scFvHER2-CAR T細胞と同等レベルで脱顆粒し、メディトープペプチドはT細胞の脱顆粒にマイナスの影響を及ぼさない。
図12Bから12D CD107a脱顆粒アッセイ。HD187.2 T細胞を、meHER2(Hc-Lc):28ζCAR、meHER2(Lc-Hc):28ζCAR、scFvHER2:28ζCARまたはCARなし(模擬)のいずれかを発現するように操作した。meHER2:28ζ-CAR型は、重鎖(Hc)および軽鎖(Lc)の配向においてのみ異なる。
図11参照。
図12C meHER2(Hc-Lc):28ζおよびmeHER2(Lc-Hc):28ζT細胞をメディトープ-AF647(ME;200nM)とともに、およびメディトープ-AF647なしでインキュベートし、MCF-7標的に対する脱顆粒を
図12Bに記載のとおりに評価した。
【
図12D】
図12Aから
図12D.メディトープ使用可能HER2-CAR(meHER2)T細胞は、HER2+標的に応答して、scFvHER2-CAR T細胞と同等レベルで脱顆粒し、メディトープペプチドはT細胞の脱顆粒にマイナスの影響を及ぼさない。
図12Bから12D CD107a脱顆粒アッセイ。HD187.2 T細胞を、meHER2(Hc-Lc):28ζCAR、meHER2(Lc-Hc):28ζCAR、scFvHER2:28ζCARまたはCARなし(模擬)のいずれかを発現するように操作した。meHER2:28ζ-CAR型は、重鎖(Hc)および軽鎖(Lc)の配向においてのみ異なる。
図11参照。
図12D,MCF-7またはSK-BR-3のいずれかに対するすべてのmeHER2およびscFvHER2-CAR T細胞株の同等の脱顆粒を示す棒グラフ。メディトープペプチドとともにインキュベートしたmeHER2-CAR T細胞およびメディトープペプチドなしでインキュベートしたmeHER2-CAR T細胞は、CD107a脱顆粒による評価時、同等の活性化を示す。1つの条件あたり3つのウェルの平均および標準偏差をプロットしている。細胞をCD8
+CAR
+集団に関してゲーティングした。
【
図13A】
図13Aから
図13B.メディトープ使用可能HER2-CAR(meHER2)およびscFvHER2 CAR操作したT細胞は、HER2+標的を同等の効率で殺傷し、メディトープペプチドはT細胞の殺傷にマイナスの影響を及ぼさない。meHER2およびscFvHER2-CAR T細胞の殺傷効力を比較するための長期殺傷アッセイ。HD187.2 T細胞を、meHER2(Hc-Lc):28ζCAR、meHER2(Lc-Hc):28ζCAR、scFvHER2:28ζCARまたはCARなし(模擬)のいずれかを発現するように操作した。meHER2:28ζ-CAR型は重鎖(Hc)および軽鎖(Lc)の配向においてのみ異なる。
図11参照。HER2-CAR T細胞株または模擬対照を、HER2
+乳がん細胞株MCF-7およびSKBR3とともに、48時間、1:4のエフェクター対標的の比(CAR発現に基づく)において共培養した。殺傷を、共培養後に残存している腫瘍生細胞の数を定量することにより評価した。バイアビリティ染色、DAPI(Molecular Probes
TM;カタログ番号D21490)およびヒト白血球抗原CD45(BD Biosciences;カタログ番号347464)を使用し、死細胞とT細胞を生存腫瘍計数から除外した。共培養の前にmeCAR-T細胞をメディトープ-AF647(200nM)とともに、およびなしでインキュベートし、meHER2リダイレクト(redirected)殺傷の能力に対するメディトープペプチドの影響を評価した。
図13A,棒グラフは、1つの組合せあたり三連のウェルの平均生存腫瘍計数を示す(DAPI-CD45-)。
【
図13B】
図13Aから
図13B.メディトープ使用可能HER2-CAR(meHER2)およびscFvHER2 CAR操作したT細胞はHER2+標的を同等の効率で殺傷し、メディトープペプチドはT細胞の殺傷にマイナスの影響を及ぼさない。meHER2およびscFvHER2-CAR T細胞の殺傷効力を比較するための長期殺傷アッセイ。HD187.2 T細胞を、meHER2(Hc-Lc):28ζCAR、meHER2(Lc-Hc):28ζCAR、scFvHER2:28ζCARまたはCARなし(模擬)のいずれかを発現するように操作した。meHER2:28ζ-CAR型は重鎖(Hc)および軽鎖(Lc)の配向においてのみ異なる。
図11参照。HER2-CAR T細胞株または模擬対照を、HER2
+乳がん細胞株MCF-7およびSKBR3とともに、48時間、1:4のエフェクター対標的の比(CAR発現に基づく)において共培養した。殺傷を、共培養後に残存している腫瘍生細胞の数を定量することにより評価した。バイアビリティ染色、DAPI(Molecular Probes
TM;カタログ番号D21490)およびヒト白血球抗原CD45(BD Biosciences;カタログ番号347464)を使用し、死細胞とT細胞を生存腫瘍計数から除外した。共培養の前にmeCAR-T細胞をメディトープ-AF647(200nM)とともに、およびなしでインキュベートし、meHER2リダイレクト殺傷の能力に対するメディトープペプチドの影響を評価した。
図13B,棒グラフは、模擬に対して正規化した場合の1つの条件あたりの殺傷された腫瘍のパーセントを表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本発明の種々の実施形態および態様を、本明細書において示して説明するが、当業者には、かかる実施形態および態様は一例として示したものにすぎないことは自明であろう。数多くの変形、変更および置き換えが、ここに、本発明から逸脱することなく当業者に思いつくであろう。本明細書に記載の本発明の諸実施形態に対する種々の代替案が、本発明の実施において使用され得ることは理解されよう。
【0021】
本明細書で用いているセクションの見出しは、整理の目的のためにすぎず、記載の主題を限定するものと解釈されるべきでない。特許、特許出願、論文、書籍、マニュアルおよび学術論文(これらに限定されない)を含む、本出願書類において挙げたすべての文献または文献の一部分は、参照によりその全体が、あらゆる目的のために明示的に本明細書に組み込まれる。
【0022】
本明細書で用いている略語は、化学分野および生物学分野におけるその慣用的な意味を有する。本明細書に示した化学構造および化学式は、化学分野で公知の化学結合価の標準的な規則に従って作図されている。
【0023】
置換基の基を、その慣用的な化学式により、左から右に記載して明示している場合、これは、構造を右から左に記載することにより得られる化学的に同一の置換基も等しく包含しており、例えば、-CH2O-は-OCH2-と等価である。
【0024】
用語「アルキル」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、特に記載のない限り、直鎖(即ち、非分枝)もしくは分枝の非環状の炭素鎖(もしくは炭素)またはその組合せを意味し、完全飽和型、一価不飽和または多価不飽和であり得、二価および多価の原子団を有していてもよく、指定された数の炭素原子を有する(即ち、C1-C10は1から10個の炭素を意味する)。飽和型の炭化水素原子団の例としては、限定されないが、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、(シクロヘキシル)メチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの同族体および異性体などの基が挙げられる。不飽和のアルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和のアルキル基の例としては、限定されないが、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニルならびに高級同族体および異性体が挙げられる。アルコキシは、分子の残部に酸素リンカー(-O-)によって結合しているアルキルである。アルキル部分は、アルケニル部分であってもよい。アルキル部分は、アルキニル部分であってもよい。アルキル部分は、完全飽和型であってもよい。
【0025】
用語「アルキレン」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、特に記載のない限り、限定されないが-CH2CH2CH2CH2-によって例示されるような、アルキルから誘導される二価の原子団を意味する。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は1から24個の炭素原子を有するものであり、10個以下の炭素原子を有する基が本発明において好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般的には8個以下の炭素原子を有する短鎖のアルキルまたはアルキレン基である。用語「アルケニレン」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、特に記載のない限り、アルケンから誘導される二価の原子団を意味する。
【0026】
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体で、または別の用語との組合せで、特に記載のない限り、少なくとも1個の炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、O、N、P、SiまたはS)を含む安定な非環状の直鎖もしくは分枝の鎖またはその組合せを意味し、窒素原子およびイオウ原子は場合により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は場合により4級化されていてもよい。ヘテロ原子(1個または複数)O、N、P、SおよびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置またはアルキル基が分子の残部に結合している位置に配置され得る。例としては、限定されないが:-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2、-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、-CH=CH-N(CH3)-CH3、-O-CH3、-O-CH2-CH3および-CNが挙げられる。2個または3個までのヘテロ原子が連続していてもよい(例えば、-CH2-NH-OCH3および-CH2-O-Si(CH3)3など)。ヘテロアルキル部分は1個のヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。ヘテロアルキル部分は場合により異なる2個のヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。ヘテロアルキル部分は場合により異なる3個のヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。ヘテロアルキル部分は場合により異なる4個のヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。ヘテロアルキル部分は場合により異なる5個のヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。ヘテロアルキル部分は場合により異なる8個までのヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。
【0027】
同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、特に記載のない限り、限定されないが-CH2-CH2-S-CH2-CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-によって例示されるような、ヘテロアルキルから誘導される二価の原子団を意味する。また、ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子が鎖の末端のいずれかまたは両方を占めていてもよい(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。なおさらには、アルキレン連結基およびヘテロアルキレン連結基について、連結基の式に記載された方向は該連結基の配向を示唆するものではない。例えば、式-C(O)2R’-は-C(O)2R’-および-R’C(O)2-の両方を表す。上記のように、ヘテロアルキル基は、本明細書で用いる場合、分子の残部にヘテロ原子を介して結合する基、例えば、-C(O)R’、-C(O)NR’、-NR’R’’、-OR’、-SR’および/または-SO2R’を包含している。「ヘテロアルキル」と記載されており、続いて、例えば-NR’R’’などの具体的なヘテロアルキル基が記載されている場合、ヘテロアルキルという用語と-NR’R’’は重複または相互に排他的でないことを理解されたい。そうではなく、この具体的なヘテロアルキル基は明瞭さを付加するために記載されている。従って、用語「ヘテロアルキル」は本明細書において、例えば-NR’R’’などの具体的なヘテロアルキル基は除外されると解釈されるべきでない。
【0028】
用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それ自体で、または別の用語との組合せで、特に記載のない限り、それぞれ、非芳香族の環状型の「アルキル」および「ヘテロアルキル」を意味し、炭素のすべての結合価が非水素原子との結合に関与しているため、環(1つまたは複数)を構成している炭素が水素に結合している必要はない。さらに、ヘテロシクロアルキルについて、ヘテロ原子が、複素環が分子の残部に結合している位置を占めていてもよい。シクロアルキルの例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチル、3-ヒドロキシ-シクロブト-3-エニル-1,2,ジオン、1H-1,2,4-トリアゾリル-5(4H)-オン、4H-1,2,4-トリアゾリルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、限定されないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられる。「シクロアルキレン」および「ヘテロシクロアルキレン」は、単独または別の置換基の一部として、それぞれ、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルから誘導される二価の原子団を意味する。ヘテロシクロアルキル部分は1個の環内ヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。ヘテロシクロアルキル部分は場合により異なる2個の環内ヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。ヘテロシクロアルキル部分は場合により異なる3個の環内ヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。ヘテロシクロアルキル部分は場合により異なる4個の環内ヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。ヘテロシクロアルキル部分は場合により異なる5個の環内ヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。ヘテロシクロアルキル部分は場合により異なる8個までの環内ヘテロ原子(例えば、O、N、S、SiまたはP)を含むものであってもよい。
【0029】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、特に記載のない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを包含していることを意図する。例えば、用語「ハロ(C1-C4)アルキル」としては、限定されないが、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどが挙げられる。
【0030】
用語「アシル」は、特に記載のない限り-C(O)Rを意味し、ここで、Rは置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【0031】
用語「アリール」は、特に記載のない限り、多価不飽和の芳香族炭化水素置換基を意味し、単環であっても多環(好ましくは、1から3つの環)であってもよく、これらは一体に縮合している(即ち、縮合環アリール)か、または共有結合により連結されている。縮合環アリールは、一体に縮合している多環であって、縮合環の少なくとも1つがアリール環であるものをいう。用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1個のヘテロ原子、例えばN、OまたはSを含有しているアリール基(または環)をいい、窒素原子およびイオウ原子は場合により酸化されており、窒素原子(1個または複数)は場合により4級化されている。従って、用語「ヘテロアリール」は、縮合環ヘテロアリール基(即ち、一体に縮合している多環であって、縮合環の少なくとも1つが芳香族複素環であるもの)を包含している。5,6-縮合環ヘテロアリーレンは、一体に縮合している2つの環であって、一方の環が5個の構成員を有するものであり、他方の環が6個の構成員を有するものであり、少なくとも一方の環がヘテロアリール環であるものをいう。同様に、6,6-縮合環ヘテロアリーレンは、一体に縮合している2つの環であって、一方の環が6個の構成員を有するものであり、他方の環が6個の構成員を有するものであり、少なくとも一方の環がヘテロアリール環であるものをいう。また、6,5-縮合環ヘテロアリーレンは、一体に縮合している2つの環であって、一方の環が6個の構成員を有するものであり、他方の環が5個の構成員を有するものであり、少なくとも一方の環がヘテロアリール環であるものをいう。ヘテロアリール基は分子の残部に炭素原子またはヘテロ原子を介して結合され得る。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリルおよび6-キノリルが挙げられる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系の各々に対する置換基は、後述する許容される置換基の群から選択される。「アリーレン」および「ヘテロアリーレン」は、単独または別の置換基の一部として、それぞれ、アリールおよびヘテロアリールから誘導される二価の原子団を意味する。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例としては、ピリジニル、ピリミジニル、チオフェニル、チエニル、フラニル、インドリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、チアナフタニル、ピロロピリジニル、インダゾリル、キノリニル、キノキサリニル、ピリドピラジニル、キナゾリノニル、ベンゾイソオキサゾリル、イミダゾピリジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチオフェニル、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピラジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、フリルチエニル、ピリジル、ピリミジル、ベンゾチアゾリル、プリニル、ベンゾイミダゾリル、イソキノリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾロピリミジニル、ピロロピリミジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリルまたはキノリルが挙げられる。上記の例は置換型であっても非置換であってもよく、各ヘテロアリールの二価の原子団の上記の例はヘテロアリーレンの非限定的な例である。ヘテロアリール部分は1個の環内ヘテロ原子(例えば、O、NまたはS)を含むものであってもよい。ヘテロアリール部分は場合により異なる2個の環内ヘテロ原子(例えば、O、NまたはS)を含むものであってもよい。ヘテロアリール部分は場合により異なる3個の環内ヘテロ原子(例えば、O、NまたはS)を含むものであってもよい。ヘテロアリール部分は場合により異なる4個の環内ヘテロ原子(例えば、O、NまたはS)を含むものであってもよい。ヘテロアリール部分は場合により異なる5個の環内ヘテロ原子(例えば、O、NまたはS)を含むものであってもよい。アリール部分は単環を有するものであってもよい。アリール部分は場合により異なる2つの環を有するものであってもよい。アリール部分は場合により異なる3つの環を有するものであってもよい。アリール部分は場合により異なる4つの環を有するものであってもよい。ヘテロアリール部分は1つの環を有するものであってもよい。ヘテロアリール部分は場合により異なる2つの環を有するものであってもよい。ヘテロアリール部分は場合により異なる3つの環を有するものであってもよい。ヘテロアリール部分は場合により異なる4つの環を有するものであってもよい。ヘテロアリール部分は場合により異なる5つの環を有するものであってもよい。
【0032】
縮合環ヘテロシクロアルキル-アリールは、ヘテロシクロアルキルに縮合しているアリールである。縮合環ヘテロシクロアルキル-ヘテロアリールは、ヘテロシクロアルキルに縮合しているヘテロアリールである。縮合環ヘテロシクロアルキル-シクロアルキルは、シクロアルキルに縮合しているヘテロシクロアルキルである。縮合環ヘテロシクロアルキル-ヘテロシクロアルキルは、別のヘテロシクロアルキルに縮合しているヘテロシクロアルキルである。縮合環ヘテロシクロアルキル-アリール、縮合環ヘテロシクロアルキル-ヘテロアリール、縮合環ヘテロシクロアルキル-シクロアルキルまたは縮合環ヘテロシクロアルキル-ヘテロシクロアルキルは各々、独立して、非置換であってもよく、本明細書に記載の置換基のうちの1つ以上で置換されていてもよい。
【0033】
用語「オキソ」は、本明細書で用いる場合、炭素原子に二重結合している酸素を意味する。
【0034】
用語「アルキルスルホニル」は、本明細書で用いる場合、式-S(O2)-R’を有する部分を意味し、式中、R’は上記に定義した置換もしくは非置換のアルキル基である。R’は、指定された数の炭素を有するもの(例えば、「C1-C4アルキルスルホニル」)であり得る。
【0035】
上記の各用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)は、表示した原子団の置換型形態と非置換の形態の両方を包含している。各原子団の型に対する好ましい置換基を以下に示す。
【0036】
アルキルおよびヘテロアルキル原子団(多くの場合、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルと称される基も含む)に対する置換基は、限定されないが、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R’’、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R’’R’’’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-CONR’R’’、-OC(O)NR’R’’、-NR’’C(O)R’、-NR’-C(O)NR’’R’’’、-NR’’C(O)2R’、-NR-C(NR’R’’)=NR’’’、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2N(R)(’R’’-NRSO2R’)、-CNおよび-NO2から選択されるさまざまな基のうちの1つ以上であり得、ゼロから(2m’+1)までの範囲の数で存在し得、ここで、m’はかかる原子団内の炭素原子の総数である。R’、R’’、R’’’およびR’’’’は各々、好ましくは、独立して、水素、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール(例えば、1から3個のハロゲンで置換されているアリール)、置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基またはアリールアルキル基を示す。例えば、本発明の化合物が1つより多くのR基を含むものである場合、各R基は独立して、各R’、R’’、R’’’およびR’’’’基(これらの基のうちの1つより多くが存在している場合)と同様に選択される。R’とR’’が同じ窒素原子に結合している場合、これらが該窒素原子と一体となって4員、5員、6員または7員の環を形成していてもよい。例えば、-NR’R’’としては、限定されないが1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルが挙げられる。置換基の上記の論考から、当業者には、用語「アルキル」は、水素基以外の基に結合している炭素原子を含む基、例えば、ハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)ならびにアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3など)を包含していることを意図していることが理解されよう。
【0037】
アルキル原子団について記載の置換基と同様、アリールおよびヘテロアリール基に対する置換基もさまざまであり、例えば:-OR’、-NR’R’’、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R’’R’’’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-CONR’R’’、-OC(O)NR’R’’、-NR’’C(O)R’、-NR’-C(O)NR’’R’’’、NR’’C(O)2R’、NRC(NR’R’’)=NR’’’、S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2N(R’)(R’’,-NRSO2R’)、-CN、-NO2、-R’、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシおよびフルオロ(C1-C4)アルキルから選択され、ゼロから芳香族環系の空いている結合価の総数までの範囲の数で存在し得、ここで、R’、R’’、R’’’およびR’’’’は好ましくは、独立して、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択される。例えば、本発明の化合物が1つより多くのR基を含むものである場合、各R基は独立して、各R’、R’’、R’’’およびR’’’’基(これらの基のうちの1つより多くが存在している場合)と同様に選択される。
【0038】
ある部分がR置換基で置換されている場合、該基は「Rで置換されている」と称され得る。ある部分がRで置換されている場合、該部分は少なくとも1つのR置換基で置換されており、各R置換基は場合により異なっている。例えば、本明細書におけるある部分がR1A置換または非置換のアルキルである場合、複数のR1A置換基が該アルキル部分に結合していてもよく、ここで、各R1A置換基は場合により異なっている。Rで置換されている部分が複数のR置換基で置換されている場合、各R置換基を、本明細書ではプライム記号(’)を用いてR’、R’’などと識別され得る。例えば、ある部分がR3A置換または非置換のアルキルであり、該部分が複数のR3A置換基で置換されている場合、該複数のR3A置換基は、R3A’、R3A’’、R3A’’’などとして識別され得る。一部の実施形態では、該複数のR置換基は3つである。一部の実施形態では、該複数のR置換基は2つである。
【0039】
2つ以上の置換基が場合により連接されてアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル基を形成していてもよい。かかるいわゆる環形成性置換基は典型的には(必ずしもそうでなくてよいが)、環状のベース構造部に結合している状態でみられる。一実施形態では、環形成性置換基は、ベース構造部の隣接している構成員に結合している。例えば、環状のベース構造部の隣接している構成員に結合している2つの環形成性置換基は縮合環構造を作る。別の実施形態では、環形成性置換基は、ベース構造部の単一の構成員に結合している。例えば、環状のベース構造部の単一の構成員に結合している2つの環形成性置換基はスピロ環構造を作る。また別の実施形態では、環形成性置換基は、ベース構造部の隣接していない構成員に結合している。
【0040】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接している原子上の置換基のうちの2つは場合により式-T-C(O)-(CRR’)q-U-の環を形成していてもよく、式中、TおよびUは独立して、-NR-、-O-、-CRR’-または単結合であり、qは0から3の整数である。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接している原子上の置換基のうちの2つは場合により式-A-(CH2)r-B-の置換基で置き換えられていてもよく、式中、AおよびBは独立して、-CRR’-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR’-または単結合であり、rは1から4の整数である。このようにして形成される新たな環の単結合のうちの1つは場合により二重結合で置き換えられていてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接している原子上の置換基のうちの2つは場合により式-(CRR’)s-X’-(C’’R’’R’’’)d-の置換基で置き換えられていてもよく、式中、変数sおよびdは独立して0から3の整数であり、X’は-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-または-S(O)2NR’-である。置換基R、R’、R’’およびR’’’は好ましくは、独立して、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のヘテロアリールから選択される。
【0041】
本明細書で用いる場合、用語「ヘテロ原子」または「環内ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、イオウ(S)、リン(P)およびケイ素(Si)を包含していることを意図している。
【0042】
「置換基の基」は、本明細書で用いる場合、以下の部分:
(A)オキソ、ハロゲン、-CF3、-CN、-OH、-NH2、-COOH、-CONH2、-NO2、-SH、-SO2Cl、-SO3H、-SO4H、-SO2NH2、-NHNH2、-ONH2、-NHC=(O)NHNH2、-NHC=(O)NH2、-NHSO2H、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-OCF3、-OCHF2、非置換のアルキル、非置換のヘテロアルキル、非置換のシクロアルキル、非置換のヘテロシクロアルキル、非置換のアリール、非置換のヘテロアリール、ならびに
(B)(i)オキソ、ハロゲン、-CF3、-CN、-OH、-NH2、-COOH、-CONH2、-NO2、-SH、-SO2Cl、-SO3H、-SO4H、-SO2NH2、-NHNH2、-ONH2、-NHC=(O)NHNH2、-NHC=(O)NH2、-NHSO2H、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-OCF3、-OCHF2、非置換のアルキル、非置換のヘテロアルキル、非置換のシクロアルキル、非置換のヘテロシクロアルキル、非置換のアリール、非置換のヘテロアリールならびに
(ii)(a)オキソ、ハロゲン、-CF3、-CN、-OH、-NH2、-COOH、-CONH2、-NO2、-SH、-SO2Cl、-SO3H、-SO4H、-SO2NH2、-NHNH2、-ONH2、-NHC=(O)NHNH2、-NHC=(O)NH2、-NHSO2H、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-OCF3、-OCHF2、非置換のアルキル、非置換のヘテロアルキル、非置換のシクロアルキル、非置換のヘテロシクロアルキル、非置換のアリール、非置換のヘテロアリールならびに
(b)オキソ、ハロゲン、-CF3、-CN、-OH、-NH2、-COOH、-CONH2、-NO2、-SH、-SO2Cl、-SO3H、-SO4H、-SO2NH2、-NHNH2、-ONH2、-NHC=(O)NHNH2、-NHC=(O)NH2、-NHSO2H、-NHC=(O)H、-NHC(O)-OH、-NHOH、-OCF3、-OCHF2、非置換のアルキル、非置換のヘテロアルキル、非置換のシクロアルキル、非置換のヘテロシクロアルキル、非置換のアリール、非置換のヘテロアリールから選択される少なくとも1つの置換基で置換されているアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール
から選択される少なくとも1つの置換基で置換されているアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール
から選択される少なくとも1つの置換基で置換されているアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール
から選択される基を意味する。
【0043】
「サイズ限定(size-limited)置換基」または「サイズ限定置換基の基」は、本明細書で用いる場合、「置換基」に対して上記されたすべての置換基から選択される基を意味し、ここで、置換もしくは非置換の各アルキルは置換もしくは非置換のC1-C20アルキルであり、置換もしくは非置換の各ヘテロアルキルは置換もしくは非置換の2から20員のヘテロアルキルであり、置換もしくは非置換の各シクロアルキルは置換もしくは非置換のC3-C8シクロアルキルであり、置換もしくは非置換の各ヘテロシクロアルキルは置換もしくは非置換の3から8員のヘテロシクロアルキルであり、置換もしくは非置換の各アリールは置換もしくは非置換のC6-C10アリールであり、置換もしくは非置換の各ヘテロアリールは置換もしくは非置換の5から10員のヘテロアリールである。
【0044】
「低級置換基」または「低級置換基の基」は、本明細書で用いる場合、「置換基の基」に対して上記されたすべての置換基から選択される基を意味し、ここで、置換もしくは非置換の各アルキルは置換もしくは非置換のC1-C8アルキルであり、置換もしくは非置換の各ヘテロアルキルは置換もしくは非置換の2から8員のヘテロアルキルであり、置換もしくは非置換の各シクロアルキルは置換もしくは非置換のC3-C7シクロアルキルであり、置換もしくは非置換の各ヘテロシクロアルキルは置換もしくは非置換の3から7員のヘテロシクロアルキルであり、置換もしくは非置換の各アリールは置換もしくは非置換のC6-C10アリールであり、置換もしくは非置換の各ヘテロアリールは置換もしくは非置換の5から9員のヘテロアリールである。
【0045】
一部の実施形態では、本明細書における化合物において記載される置換されている基の各々は少なくとも1つの置換基の基で置換されている。より具体的には、一部の実施形態では、本明細書における化合物において記載される置換されているアルキル、置換されているヘテロアルキル、置換されているシクロアルキル、置換されているヘテロシクロアルキル、置換されているアリール、置換されているヘテロアリール、置換されているアルキレン、置換されているヘテロアルキレン、置換されているシクロアルキレン、置換されているヘテロシクロアルキレン、置換されているアリーレンおよび/または置換されているヘテロアリーレンの各々は少なくとも1つの置換基の基で置換されている。他の実施形態では、これらの基のうちの少なくとも1つまたは全部が少なくとも1つのサイズ限定置換基の基で置換されている。他の実施形態では、これらの基のうちの少なくとも1つまたは全部が少なくとも1つの低級置換基の基で置換されている。
【0046】
本明細書における化合物の他の実施形態では、置換もしくは非置換の各アルキルは置換もしくは非置換のC1-C20アルキルであり得、置換もしくは非置換の各ヘテロアルキルは置換もしくは非置換の2から20員のヘテロアルキルであり、置換もしくは非置換の各シクロアルキルは置換もしくは非置換のC3-C8シクロアルキルであり、置換もしくは非置換の各ヘテロシクロアルキルは置換もしくは非置換の3から8員のヘテロシクロアルキルであり、置換もしくは非置換の各アリールは置換もしくは非置換のC6-C10アリールであり、および/または置換もしくは非置換の各ヘテロアリールは置換もしくは非置換の5から10員のヘテロアリールである。本明細書における化合物の一部の実施形態では、置換もしくは非置換の各アルキレンは置換もしくは非置換のC1-C20アルキレンであり、置換もしくは非置換の各ヘテロアルキレンは置換もしくは非置換の2から20員のヘテロアルキレンであり、置換もしくは非置換の各シクロアルキレンは置換もしくは非置換のC3-C8シクロアルキレンであり、置換もしくは非置換の各ヘテロシクロアルキレンは置換もしくは非置換の3から8員のヘテロシクロアルキレンであり、置換もしくは非置換の各アリーレンは置換もしくは非置換のC6-C10アリーレンであり、および/または置換もしくは非置換の各ヘテロアリーレンは置換もしくは非置換の5から10員のヘテロアリーレンである。
【0047】
一部の実施形態では、置換もしくは非置換の各アルキルは置換もしくは非置換のC1-C8アルキルであり、置換もしくは非置換の各ヘテロアルキルは置換もしくは非置換の2から8員のヘテロアルキルであり、置換もしくは非置換の各シクロアルキルは置換もしくは非置換のC3-C7シクロアルキルであり、置換もしくは非置換の各ヘテロシクロアルキルは置換もしくは非置換の3から7員のヘテロシクロアルキルであり、置換もしくは非置換の各アリールは置換もしくは非置換のC6-C10アリールであり、および/または置換もしくは非置換の各ヘテロアリールは置換もしくは非置換の5から9員のヘテロアリールである。一部の実施形態では、置換もしくは非置換の各アルキレンは置換もしくは非置換のC1-C8アルキレンであり、置換もしくは非置換の各ヘテロアルキレンは置換もしくは非置換の2から8員のヘテロアルキレンであり、置換もしくは非置換の各シクロアルキレンは置換もしくは非置換のC3-C7シクロアルキレンであり、置換もしくは非置換の各ヘテロシクロアルキレンは置換もしくは非置換の3から7員のヘテロシクロアルキレンであり、置換もしくは非置換の各アリーレンは置換もしくは非置換のC6-C10アリーレンであり、および/または置換もしくは非置換の各ヘテロアリーレンは置換もしくは非置換の5から9員のヘテロアリーレンである。一部の実施形態では、該化合物は、以下の実施例のセクション、図または表に示す化学種である。
【0048】
本明細書で用いる場合、用語「コンジュゲート」は原子間または分子間の会合をいう。会合は直接的であっても間接的であってもよい。例えば、核酸とタンパク質との間のコンジュゲートは、例えば共有結合による直接的なものであってもよく、または例えば非共有結合(例えば、静電的相互作用(例えば、イオン結合、水素結合、ハロゲン結合)、ファンデルワールス相互作用(例えば、双極子-双極子間、双極子-誘起双極子間、ロンドン分散)、環スタッキング(パイ効果)、疎水性相互作用など)による間接的なものであってもよい。諸実施形態では、コンジュゲートは、求核置換(例えば、ハロゲン化アシル、活性エステルを用いたアミンおよびアルコールの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)ならびに炭素-炭素および炭素-ヘテロ原子多重結合への付加(例えば、マイケル反応、ディールス・アルダー付加)を含むがこれらに限定されない、コンジュゲートケミストリーを用いて形成される。これらおよび他の有用な反応は、例えば、March,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY,3rd Ed.,John Wiley & Sons,New York,1985;Hermanson,BIOCONJUGATE TECHNIQUES,Academic Press,San Diego,1996;およびFeeney et al.,MODIFICATION OF PROTEINS;Advances in Chemistry Series,Vol.198,American Chemical Society,Washington,D.C.,1982に論考されている。諸実施形態では、この微小粒子は、固相支持体に、この微小粒子の成分と固相支持体の成分との間の非共有結合的化学反応によって非共有結合により結合される。他の実施形態では、この微小粒子は、1つ以上の反応性部分、例えば、本明細書に記載の共有結合性反応性部分(例えば、アミン反応性部分)を含むものである。他の実施形態では、この微小粒子は、1つ以上の反応性部分、例えば、本明細書に記載の共有結合性反応性部分(例えば、アミン反応性部分)を有するリンカーを含むものである。
【0049】
本明細書におけるコンジュゲートケミストリー(当該技術分野で知られている「クリックケミストリー」を含む)に使用される有用な反応性部分または官能基としては、例えば:
(a)カルボキシル基およびその種々の誘導体、例えば限定されないが、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、酸ハライド、アシルイミダゾール、チオエステル、p-ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族エステル;
(b)エステル、エーテル、アルデヒドなどに変換され得るヒドロキシル基.
(c)ハライドが後に、求核基、例えば、アミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カルバニオンまたはアルコキシドイオンなどで置き換えられることより、該ハロゲン原子部位に新たな基の共有結合を生じ得る、ハロアルキル基;
(d)ディールス・アルダー反応に関与することができるジエノフィル基、例えばマレイミド基など;
(e)カルボニル誘導体、例えば、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンもしくはオキシムなどの形成によるか、またはグリニャール付加もしくはアルキルリチウム付加などの機構による後続の誘導体化が可能であるような、アルデヒド基またはケトン基;
(f)アミンとの後続の反応(例えば、スルホンアミドを形成する)のための、ハロゲン化スルホニル基;
(g)ハロゲン化アシルと反応するか、または金などの金属に結合する、ジスルフィドに変換され得るチオール基;
(h)例えば、アシル化、アルキル化または酸化され得るアミン基またはスルフヒドリル基;
(i)例えば、付加環化、アシル化、マイケル付加などを行ない得るアルケン;
(j)例えば、アミンおよびヒドロキシル化合物と反応し得るエポキシド;
(k)ホスホロアミダイトおよび核酸合成に有用な他の標準的な官能基;
(l)金属ケイ素の酸化物結合;
(m)例えば、リン酸ジエステル結合を形成するための反応性のリン基(例えば、ホスフィン)への金属の結合;ならびに
(n)スルホン、例えば、ビニルスルホン
が挙げられる。
【0050】
コンジュゲート(「click」)ケミストリーを用いて小さなモジュール単位を連接させることによる組成物の化学合成は当該技術分野で周知であり、例えば、H.C.Kolb,M.G.Finn and K.B.Sharpless((2001).“Click Chemistry:Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions”.Angewandte Chemie International Edition 40(11):2004-2021);R.A.Evans((2007).“The Rise of Azide-Alkyne 1,3-Dipolar ‘Click’ Cycloaddition and its Application to Polymer Science and Surface Modification”.Australian Journal of Chemistry 60(6):384-395;W.C.Guida et al.Med.Res.Rev.p 3 1996;Spiteri,Christian and Moses,John E.((2010).“Copper-Catalyzed Azide-Alkyne Cycloaddition:Regioselective Synthesis of 1,4,5-Trisubstituted 1,2,3-Triazoles”.Angewandte Chemie International Edition 49(1):31-33);Hoyle,Charles E.and Bowman,Christopher N.((2010).“Thiol-Ene Click Chemistry”.Angewandte Chemie International Edition 49(9):1540-1573);Blackman,Melissa L.and Royzen,Maksim and Fox,Joseph M.((2008).“Tetrazine Ligation:Fast Bioconjugation Based on Inverse-Electron-Demand Diels―Alder Reactivity”.Journal of the American Chemical Society 130(41):13518-13519);Devaraj,Neal K.and Weissleder,Ralph and Hilderbrand,Scott A.((2008).“Tetrazine Based Cycloadditions:Application to Pretargeted Live Cell Labeling”. Bioconjugate Chemistry 19(12):2297-2299);Stockmann,Henning;Neves,Andre;Stairs,Shaun;Brindle,Kevin;Leeper,Finian((2011).“Exploring isonitrile-based click chemistry for ligation with biomolecules”.Organic & Biomolecular Chemistry)に記載されており、これらはすべて、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0051】
本明細書に記載のタンパク質または核酸の化学安定性に関与または干渉しないような反応性官能基が、選択され得る。一例として、核酸は、ビニルスルホンまたは他の反応性部分(例えば、マレイミド)を含むものであり得る。場合により、核酸は、式-S-S-Rを有する反応性部分を含むものであり得る。Rは、例えば保護基であり得る。場合により、Rはヘキサノールである。本明細書で用いる場合、ヘキサノールという用語は、式C6H13OHを有する化合物を包含しており、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2,2-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノールおよび2-エチル-1-ブタノールが挙げられる。場合により、Rは1-ヘキサノールである。
【0052】
本明細書で用いる場合、用語「約」は、明示された値を含むある範囲の値であって、当業者により、明示された該値と正当に同様であるとみなされ得るであろう範囲の値を意味する。諸実施形態では、用語「約」は、当該技術分野で一般的に認められている測定を用いた標準偏差の範囲内を意味する。諸実施形態では、約は、明示された値の+/-10%に及ぶ範囲を意味する。諸実施形態では、約は明示されたその値を意味する。
【0053】
用語“a”または“an”は、本明細書で用いる場合、1またはそれ以上を意味する。また、語句「“a”または“an”~で置換されている」は、本明細書で用いる場合、明示された基が、名前を挙げた置換基のうちのいずれか1つもしくはそれ以上または全部で置換されたものであり得ることを意味する。例えば、基、例えばアルキルまたはヘテロアリール基が、「1つの(“a”もしくは“an”)非置換のC1-C20アルキルまたは非置換の2から20員のヘテロアルキルで置換されている」場合、該基は、1つ以上の非置換のC1-C20アルキルおよび/または1つ以上の非置換の2から20員のヘテロアルキルを含有しているものであり得る。さらに、ある部分がR置換基で置換されている場合、該基は「Rで置換されている」と称され得る。ある部分がRで置換されている場合、該部分は少なくとも1つのR置換基で置換されており、各R置換基は場合により異なっている。
【0054】
特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語は、当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。例えば、Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994);Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989)を参照のこと。本明細書に記載のものと類似または均等な任意の方法、デバイスおよび材料が、本発明の実施において使用され得る。以下の定義は、本明細書で頻繁に用いている特定の用語の理解を容易にするために示しており、本開示内容の範囲を限定することを意図するものではない。
【0055】
「生物学的試料」または「試料」は、被験体もしくは患者から採取されたか、または被験体もしくは患者に由来する物質をいう。生物学的試料としては、組織切片、例えば生検および検死の試料、ならびに組織学的目的のために採取された凍結切片が挙げられる。かかる試料としては、体液、例えば、血液および血液分画成分または血液製剤(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球など)、痰、組織、培養細胞(例えば、一次培養物、外植片および形質転換細胞)便、尿、滑液、関節組織、滑膜組織、滑膜細胞、線維芽細胞様滑膜細胞、マクロファージ様滑膜細胞、免疫細胞、造血細胞、線維芽細胞、マクロファージ、T細胞などが挙げられる。生物学的試料は、典型的には、真核生物生物体、例えば哺乳動物、例えば霊長類、例えば、チンパンジーもしくはヒト;ウシ;イヌ;ネコ;齧歯類、例えば、モルモット、ラット、マウス;ウサギ;または鳥類;爬虫類;または魚類から採取されたものである。
【0056】
「細胞」は、本明細書で用いる場合、ゲノムDNAが保存または複製されるのに充分な代謝機能または他の機能を果たす細胞をいう。細胞は、当該技術分野で周知の方法、例えば、インタクトな膜の存在、特定の色素による染色、子孫細胞を生ずる能力または、配偶子の場合は、第2の配偶子と結合して生存能のある子孫をもたらす能力などによって同定され得る。細胞には、原核生物細胞と真核生物細胞が包含され得る。原核生物細胞としては、限定されないが細菌が挙げられる。真核生物細胞としては、限定されないが、酵母細胞ならびに植物および動物に由来する細胞、例えば、哺乳動物、昆虫(例えば、スポドプテラ属のもの)およびヒトの細胞が挙げられる。細胞は、天然で非接着性であるか、または例えばトリプシン処理によって表面に接着しないように処理されている場合、有用であり得る。
【0057】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において、アミノ酸残基のポリマーをいうために互換的に用いられており、ここで、該ポリマーは場合により、アミノ酸からなるものでない部分にコンジュゲートされ得る。これらの用語は、1個以上のアミノ酸残基が天然に存在する対応アミノ酸の人工の化学的模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。「融合タンパク質」は、単一の部分として組換え発現される2つ以上の別個のタンパク質配列をコードしているキメラタンパク質をいう。
【0058】
用語「ペプチジル」および「ペプチジル部分」は一価のペプチドをいう。
【0059】
「標識」または「検出可能な部分」は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識としては、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAに一般的に使用されるようなもの)、ビオチン、ジゴキシゲニンもしくはハプテンおよびタンパク質または例えば、標的ペプチドと特異的に反応性のペプチドもしくは抗体に放射性標識を組み込むことによって検出可能となり得る他の存在体が挙げられる。抗体を標識にコンジュゲートさせるための当該技術分野で公知の任意の適切な方法が使用され得、例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques 1996,Academic Press,Inc.,San Diegoに記載の方法が使用される。
【0060】
「標識されたタンパク質またはポリペプチド」は、共有結合(リンカーもしくは化学結合による)または、非共有結合(イオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合もしくは水素結合による)のいずれかによって標識に結合されていることにより、標識されたタンパク質またはポリペプチドの存在が、標識された該タンパク質またはポリペプチドに結合された該標識の存在を検出することによって検出され得るものである。または、高親和性相互作用を使用する方法でも同じ結果が得られ得、この場合、結合パートナーのペアの一方が他方に結合する(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン)。
【0061】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによってコードされているもの、ならびに後で修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメートおよびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、即ち、水素に結合しているα炭素、カルボキシル基、アミノ基およびR基を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムをいう。かかるアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有しているが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能する化学的化合物をいう。
【0062】
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される一般的に知られた3文字表記または1文字表記のいずれかによって呼称され得る。ヌクレオチドも同様に、一般的に認められた1文字表記によって呼称され得る。
【0063】
アミノ酸またはヌクレオチド塩基の「位置」は、N末端(または5’末端)を基準にした位置に基づいて、参照配列内の各アミノ酸(またはヌクレオチド塩基)が順に同定される番号によって表す。最適なアラインメントを決定する場合に考慮され得る欠失、挿入、切断、融合などのため、一般に、N末端から単純にカウントすることによって決定される試験配列のアミノ酸残基の番号は必ずしも参照配列内の対応する位置の番号と同じではない。例えば、バリアントがアラインメント対象の参照配列と比べて欠失を有する場合、バリアント内には、参照配列内の欠失部位の位置に対応するアミノ酸がない。アラインメント対象の参照配列内に挿入がある場合、該挿入は、参照配列内の番号付けされたアミノ酸位置に対応しない。切断または融合の場合、参照配列またはアラインメントする配列のいずれかに、対応配列内のいずれかのアミノ酸に対応しないアミノ酸鎖が存在し得る。
【0064】
用語「~を基準にして番号付けする」または「~に対応する」は、所与のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の番号付けの状況において用いる場合、該所与のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を参照配列と比較するときの指定された参照配列の残基の番号付けをいう。タンパク質のアミノ酸残基は、これが、該タンパク質内で該所与の残基と同じ必須構造位置を占めている場合、所与の残基に「対応する」。例えば、選択された抗体(またはFabドメイン)内の選択された残基は、該選択された残基が、カバット方式による位置40の軽鎖のトレオニンと同じ必須の空間的または他の構造的関係を占めている場合に、カバット方式による位置40の軽鎖のトレオニンに対応する。一部の実施形態では、選択されたタンパク質が最大相同性で抗体(またはFabドメイン)の軽鎖とアラインメントされる場合、アラインメントされた該選択されたタンパク質内のトレオニン40とアラインメントされた位置は、トレオニン40に対応するといえる。また、一次配列アラインメントではなく、3次元構造のアラインメントも、例えば、選択されたタンパク質の構造を最大対応でカバット方式による位置40の軽鎖のトレオニンとアラインメントし、構造全体を比較する場合に使用され得る。この場合、構造モデル内のトレオニン40と同じ必須の位置を占めるアミノ酸は、トレオニン40残基に対応するといえる。
【0065】
「保存的修飾バリアント」はアミノ酸配列と核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的修飾バリアントは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードしている核酸をいうか、または核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合は、本質的に同一の配列をいう。遺伝コードの縮重のため、大量数の機能的に同一の核酸配列が任意の所与のアミノ酸残基をコードしている。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべてアミノ酸アラニンをコードしている。従って、アラニンがコドンによって指定されるどの位置においても、コドンを、コードポリペプチドを改変することなく、記載の任意の対応コドンに変更することができる。かかる核酸変異は「サイレント変異」であり、これは保存的修飾変異の一種である。ポリペプチドをコードしている本明細書におけるどの核酸配列についても、該核酸の考えられ得るすべてのサイレント変異も示されているものとする。当業者には、核酸の各コドン(AUG(通常、メチオニンの唯一のコドンである)およびTGG(通常、トリプトファンの唯一のコドンである)を除く)は、機能的に同一の分子を得るために修飾され得ることが認識されよう。従って、ポリペプチドをコードしている核酸の各サイレント変異は、記載の各配列において、発現産物に関しては暗に示されているといえるが、実際のプローブ配列に関してはそうでない。
【0066】
アミノ酸配列に関して、当業者には、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列に対して、コード配列内の単一のアミノ酸または少数割合のアミノ酸を改変、付加または欠失させる個々の置換、欠失または付加は「保存的修飾バリアント」であることが認識されよう。この場合、該改変によりアミノ酸は化学的に類似したアミノ酸と置換される。機能的に類似したアミノ酸を示す保存的置換の表は当該技術分野で周知である。かかる保存的修飾バリアントは、本発明の多型バリアント、種間ホモログおよび対立遺伝子に付加的なものであり、これらを排除するものではない。
【0067】
以下の8つの群は各々、互いに保存的置換体であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)参照)。
【0068】
「核酸」は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびその一本鎖もしくは二本鎖のいずれかの形態のポリマーならびにその相補鎖をいう。用語「ポリヌクレオチド」は線形配列のヌクレオチドをいう。用語「ヌクレオチド」は、典型的には、ポリヌクレオチドの1つの単位、即ちモノマーをいう。ヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはその修飾型であり得る。本明細書において想定されるポリヌクレオチドの例としては、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖および二本鎖のRNA(例えば、siRNA)ならびに一本鎖および二本鎖のDNAおよびRNAの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。また、核酸は、本明細書で用いる場合、天然に存在する核酸と同じ基本化学構造を有する核酸をいう。かかるアナログは、修飾された糖および/または修飾された環置換基を有するが、天然に存在する核酸と同じ基本化学構造を保持しているものである。核酸模倣物は、核酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在する核酸と同様の様式で機能する化学的化合物をいう。かかるアナログの例としては、限定されないが、ホスホロチオレート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチドおよびペプチド-核酸(PNA)が挙げられる。
【0069】
「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適にアラインメントされた配列を比較ウィンドウにおいて比較することにより求められ、このとき、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列部分またはポリペプチド配列部分は、この2つの配列の最適なアラインメントでは、参照配列(付加または欠失が含まれていない)と比較すると、付加または欠失(即ち、ギャップ)が含まれている場合がある。パーセンテージは、両方の配列で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を調べてマッチしている位置の数を得、マッチしている位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り算し、結果に100を掛け算して配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。
【0070】
用語「同一の」または「同一性」パーセントは、2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列において、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、または手動アラインメントと目視検査によって、比較ウィンドウまたは指定の領域にわたって比較し、最大対応でアラインメントして測定したとき、2つ以上の配列または部分配列が同じであるか、または指定されたパーセンテージの同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有すること(即ち、例えば、本発明のポリペプチド配列全体のうちの指定された領域、または本発明のポリペプチドの個々のドメインの指定された領域において、60%の同一性、場合により65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性)をいう。そのため、かかる配列は「実質的に同一」といわれる。また、この定義は、試験配列の相補鎖についてもいう。場合により、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域、またはより好ましくは、100から500もしくは1000もしくはそれ以上のヌクレオチド長の領域にわたって存在する。本発明は、配列番号:1から35のいずれかと実質的に同一のポリペプチドを包含している。
【0071】
配列比較では、典型的には、1つの配列が参照配列の機能を果たし、これと試験配列とが比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列と参照配列とをコンピュータに入力し、必要であれば部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用してもよく、または別のパラメータを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムにより、参照配列と比較した試験配列の配列同一性パーセントをプログラムパラメータに基づいて計算する。
【0072】
「比較ウィンドウ」は、本明細書で用いる場合、例えば、完全長配列または20から600、約50から約200もしくは約100から約150個までのアミノ酸またはヌクレオチドからなる群より選択されるいずれか1つの数の連続している位置のセグメントに対する言及を含み、このとき、配列は、2つの配列を最適にアラインメントした後、同じ数の連続している位置の参照配列と比較され得る。比較のための配列のアラインメント方法は、当該技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、局地的相同性アルゴリズム(Smith and Waterman(1970)Adv.Appl.Math.2:482c)、相同性アラインメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443)、類似性検索法(Pearson and Lipman(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444)、これらのアルゴリズムのコンピュータでの実行(Wisconsin Genetics Software PackageにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)、または手動アラインメントと目視検査(例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(1995 supplement)参照)によって行なわれ得る。
【0073】
配列同一性および配列類似性のパーセントを調べるために好適なアルゴリズムの一例はBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al.(1977)Nuc.Acids Res.25:3389-3402およびAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410に記載されている。BLAST解析を行なうためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公に入手可能である。このアルゴリズムは、クエリー配列内の長さWのショートワードを、データベース配列内の同じ長さWのワードとアラインメントしたときにある正の値の閾値スコアTとマッチしているかまたはこれを満たしているかのいずれかであるものとして特定することにより、まず、高スコアリング配列ペア(HSP)を特定することを含む。Tは、ネイバーフッドワードスコア閾値と称される(Altschul et al.上掲)。このような初期ネイバーフッドワードヒットは、これを含むより長いHSPを見つけ出すための検索を開始するためのシード(seed)としての機能を果たす。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列では、パラメータM(1対のマッチング残基のリワードスコア;常に>0)とN(ミスマッチ残基のペナルティスコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列では、スコアリングマトリックスが累積スコアの計算に使用される。各方向のワードヒットの拡張は:累積アラインメントスコアがその最大達成値からXの量で外れた場合;累積スコアがゼロ以下になった場合(1つ以上の負スコアの残基アラインメントの蓄積のため);またはいずれかの配列の終点に達した場合に停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、TおよびXにより、アラインメントの感度と速度が決定される。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)では、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4および両鎖の比較が使用される。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムにおいて、デフォルトとしてワード長3、および期待値(E)10ならびにBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4および両鎖の比較が使用される。
【0074】
また、BLASTアルゴリズムにより、2つの配列間の類似性の統計解析も行なわれる。(例えば、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787参照)。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の測定値の1つは最小和確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間のマッチングが偶然に起こったものである確率の指標を示す。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列と同様とみなす。
【0075】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることの指標は、第1の核酸にコードされたポリペプチドが、第2の核酸にコードされたポリペプチドに対して生じた抗体と免疫学的に交差反応性であるということである(後述のとおり)。従って、例えば、2つのペプチドが保存的置換だけで異なる場合、ポリペプチドは典型的には第2ポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の指標は、2つの分子またはその相補鎖がストリンジェント条件下で互いにハイブリダイズするということである(後述のとおり)。2つの核酸配列が実質的に同一であるというまた別の指標は、配列の増幅に同じプライマーが使用され得るということである。
【0076】
語「発現」または「発現される」は、遺伝子に関して本明細書で用いる場合、該遺伝子の転写産物および/または翻訳産物を意味する。細胞内におけるDNA分子の発現レベルは、該細胞内に存在する対応mRNAの量または該細胞によってもたらされるDNAにコードされたタンパク質の量のいずれかに基づいて測定され得る。非コード核酸分子(例えば、siRNA)の発現レベルは、当該技術分野で周知の標準的なPCR法またはノザンブロット法によって検出され得る。Sambrook et al.,1989 Molecular Cloning:A Laboratory Manual,18.1-18.88を参照のこと。
【0077】
トランスフェクトされた遺伝子の発現は、細胞内で一過性で起こってもよく、または安定的に起こってもよい。「一過性発現」中、トランスフェクトされた遺伝子は、細胞分裂時に娘細胞に移行されない。その発現はトランスフェクト細胞内に限定されるため、該遺伝子の発現は経時的に失われる。対照的に、トランスフェクトされた遺伝子の安定的発現は、該遺伝子を、該トランスフェクト細胞に対して選択上の有利性を付与する別の遺伝子とコトランスフェクトした場合に起こり得る。かかる選択上の有利性は、該細胞に提示された特定の毒素に対する耐性であり得る。トランスフェクトされた遺伝子の発現は、さらに、宿主のゲノム内へのトランスポゾン媒介性挿入によって行なうことができる。トランスポゾン媒介性挿入中、遺伝子は予測可能な様式で、宿主のゲノム内への挿入ならびにその後の切除を可能にする2つのトランスポゾンリンカー配列間に配置される。トランスフェクトされた遺伝子の安定的発現は、さらに、細胞をレンチウイルスベクター(感染後、細胞内のゲノムの一部を形成する(組み込まれる)ことにより、該遺伝子の安定な発現をもたらす)に感染させることによって行なうことができる。
【0078】
用語「プラスミド」、「ベクター」または「発現ベクター」は、遺伝子および/または遺伝子発現に必要な調節エレメントをコードしている核酸分子をいう。プラスミドによる遺伝子の発現は、シスまたはトランスで行なわれ得る。遺伝子がシスで発現される場合、該遺伝子と調節エレメントとは同じプラスミドにコードされている。トランスでの発現は、遺伝子と調節エレメントとが別個のプラスミドにコードされている場合をいう。
【0079】
用語「トランスフェクション」、「形質導入」、「トランスフェクトする」または「形質導入する」は互換的に用いている場合があり、核酸分子またはタンパク質を細胞内に導入する工程と定義する。核酸は細胞に非ウイルス系の方法またはウイルス系の方法を用いて導入される。核酸分子は、完全なタンパク質またはその機能性部分をコードしている遺伝子配列であり得る。トランスフェクションの非ウイルス法には、細胞内に核酸分子を導入するための送達系としてウイルスDNAまたはウイルス粒子を使用しない任意の適切なトランスフェクション法が包含される。例示的な非ウイルス系トランスフェクション法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソームによるトランスフェクション、ヌクレオフェクション、ソノポレーション、ヒートショックによるトランスフェクション、マグネティフェクション(magnetifection)およびエレクトロポレーションが挙げられる。一部の実施形態では、核酸分子は細胞内に、エレクトロポレーションを用いて当該技術分野で周知の標準的な手順に従って導入される。ウイルス系のトランスフェクションの方法では、任意の有用なウイルスベクターが本明細書に記載の方法において使用され得る。ウイルスベクターの例としては、限定されないが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられる。一部の実施形態では、核酸分子は細胞内に、レトロウイルスベクターを用いて当該技術分野で周知の標準的な手順に従って導入される。また、用語「トランスフェクション」または「形質導入」は、外部環境から細胞内にタンパク質を導入することをいう。典型的には、タンパク質の形質導入またはトランスフェクションは、細胞膜を通過し得るペプチドまたはタンパク質の目的のタンパク質との結合に依存する。例えば、Ford et al.(2001)Gene Therapy 8:1-4およびProchiantz(2007)Nat.Methods 4:119-20を参照のこと。
【0080】
「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子またはその断片由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドであって、抗原に特異的に結合して認識するものをいう。わかっている免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、mu、α、δまたはεに分類され、これらはさらに、それぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを規定する。典型的には、抗体の抗原結合領域は、結合の特異性および親和性の決定において大きな役割を果たす。一部の実施形態では、抗体または抗体断片は、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ラクダなどを含む種々の生物に由来するものであり得る。本発明の抗体には、抗体の所望の機能(例えば、グリコシル化、発現、抗原認識、エフェクター機能、抗原結合、特異性など)を改善またはモジュレートするために、1つ以上のアミノ酸位置が修飾または変異されている抗体が、包含され得る。
【0081】
抗体は、入り組んだ内部構造を有する大きな複雑な分子(約150,000の分子量または約1320個のアミノ酸)である。天然の抗体分子は2つの同一のポリペプチド鎖のペアを含むものであり、各ペアは1つの軽鎖と1つの重鎖を有する。軽鎖と重鎖は各々さらに、2つの領域:標的抗原の結合に関与する可変(「V」)領域と、免疫系の他の成分と相互作用する定常(「C」)領域とからなる。軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とは、3次元空間において一体となり、抗原(例えば、細胞表面上の受容体)に結合する可変領域を形成している。軽鎖または重鎖の各可変領域内には、相補性決定領域(「CDR」)と称される3つの短いセグメント(平均10アミノ酸長)が存在する。抗体可変ドメイン内のこの6つのCDR(軽鎖内の3つと重鎖内の3つ)が3次元空間において一体にフォールディングし、標的抗原にドッキングする実際の抗体結合部位を形成している。CDRの位置および長さは、Kabat,E.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Health and Human Services,1983,1987によって厳密に規定されている。CDRに含まれない可変領域部分はフレームワーク(「FR」)と称され、これはCDRのための環境を構成している。
【0082】
例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、四量体を構成している。各四量体は2つの同一のポリペプチド鎖のペアで構成されており、各ペアは1つの“軽”鎖(約25kD)と1つの“重”鎖(約50から70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100から110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を画定している。可変軽鎖(VL)または軽鎖可変領域および可変重鎖(VH)または重鎖可変領域という用語は、それぞれ、これらの軽鎖領域および重鎖領域をいう。可変軽鎖(VL)および軽鎖可変領域という用語は、本明細書において言及している場合、互換的に用いている場合がある。可変重鎖(VH)および重鎖可変領域という用語は、本明細書において言及している場合、互換的に用いている場合がある。Fc(即ち、結晶性領域の断片)は、免疫グロブリンの「基部」または「尾部」であり、典型的には、抗体クラスに応じて2つまたは3つの定常ドメインに寄与する2つの重鎖で構成されている。特定のタンパク質に結合することにより、Fc領域は、各抗体が所与の抗原に対して適切な免疫応答を生じることを確実にする。また、Fc領域は、種々の細胞受容体(Fc受容体など)および他の免疫分子(補体タンパク質など)にも結合する。
【0083】
本明細書において提供する「抗原」という用語は、本明細書において提供する抗体領域結合し得る分子をいい、ここで、該結合部位は該ペプチド結合部位ではない。
【0084】
抗体は、例えば、インタクトな免疫グロブリンとして、または種々のペプチダーゼでの消化によって生じる幾つかの充分に特性評価された断片として存在する。従って、例えば、ペプシンは、抗体をヒンジ領域内のジスルフィド結合の下で消化し、軽鎖がVH-CH1にジスルフィド結合によって連接されたものであるFabの二量体であるF(ab)’2を生じる。F(ab)’2を穏やかな条件下で還元してヒンジ領域内のジスルフィド結合を切断すると、それにより、F(ab)’2二量体はFab’モノマーに変換され得る。Fab’モノマーは本質的に抗原結合部分であり、ヒンジ領域の一部を有する(Fundamental Immunology(Paul ed.,3d ed.1993)参照)。種々の抗体断片はインタクトな抗体の消化に関して規定されるが、当業者には、かかる断片は化学的方法論または組換えDNA方法論の使用のいずれかによってデノボ合成されたものであってもよいことが認識されよう。従って、抗体という用語は、本明細書で用いる場合、完全抗体の修飾によるか、または組換えDNA方法論を用いてデノボ合成されるか(例えば、単鎖Fv)もしくはファージディスプレイライブラリーを用いて同定されるか(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)参照)のいずれかによって生じた抗体断片もまた包含している。
【0085】
単鎖可変断片(scFv)は、典型的には、10から約25個のアミノ酸の短鎖リンカーペプチドで接続された免疫グロブリンの重鎖(VH)の可変領域と軽鎖(VL)の可変領域との融合タンパク質である。リンカーは、通常、可撓性のためのグリシンならびに可溶性のためのセリンまたはトレオニンについて高含有であり得る。リンカーは、VHのN末端をVLのC末端と接続しているものまたはその逆のいずれかであり得る。
【0086】
mAbのエピトープは、該mAbが結合する対象抗原の領域である。2種類の抗体は、各々が、抗原に対する他方の結合を競合的に阻害(ブロック)する場合、同じかまたは重複するエピトープに結合する。即ち、競合的結合アッセイにおいて測定時、1×、5×、10×、20×または100×過剰の一方の抗体が他方の結合を少なくとも30%だが好ましくは50%、75%、90%またはさらには99%阻害する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.50:1495,1990参照)。または、2種類の抗体は、一方の抗体の結合を低減または消失させる抗原内の本質的にすべてのアミノ酸変異が他方の結合も低減または消失させる場合、同じエピトープを有する。2種類の抗体は、一方の抗体の結合を低減または消失させる幾つかのアミノ酸変異が他方の結合も低減または消失させる場合、重複するエピトープを有する。
【0087】
本発明の好適な抗体の調製および本発明による使用には、例えば、組換え抗体、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、当該技術分野で公知の多くの手法が、使用され得る(例えば、Kohler & Milstein,Nature 256:495-497(1975);Kozbor et al.,Immunology Today 4:72(1983);Cole et al.,pp.77-96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985);Coligan,Current Protocols in Immunology(1991);Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(1988);およびGoding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(2d ed.1986)参照)。目的の抗体の重鎖と軽鎖とをコードしている遺伝子を、細胞からクローニングすることができ、例えば、モノクローナル抗体をコードしている遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、組換えモノクローナル抗体を作製するために使用することができる。また、モノクローナル抗体の重鎖と軽鎖とをコードしている遺伝子ライブラリーをハイブリドーマまたは形質細胞から作製してもよい。重鎖および軽鎖の遺伝子産物の無作為な組合せにより、異なる抗原特異性を有する大型の抗体プールが得られる(例えば、Kuby,Immunology(3rd ed.1997)参照)。一本鎖抗体または組換え抗体の作製のための手法(米国特許4,946,778、米国特許第4,816,567号)が、本発明のポリペプチドに対する抗体の作製に適合され得る。また、トランスジェニックマウスまたは他の生物体、例えば他の哺乳動物が、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現させるために使用され得る(例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-13(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845-51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996);およびLonberg & Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)参照)。または、ファージディスプレイ技術が、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロ二量体Fab断片を同定するために使用され得る。(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990);Marks et al.,Biotechnology 10:779-783(1992)参照)。また、抗体を二重特異性に、即ち、2種類の異なる抗原を認識できるようにしてもよい(例えば、WO93/08829、Traunecker et al.,EMBO J.10:3655-3659(1991);およびSuresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)参照)。また、抗体をヘテロコンジュゲートに、例えば、共有結合により連接された2種類の抗体または免疫毒素にしてもよい(例えば、米国特許第4,676,980号、WO91/00360;WO92/200373;およびEP03089参照)。
【0088】
非ヒト抗体をヒト化または霊長類化するための方法は当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第4,816,567号;同第5,530,101号;同第5,859,205号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;同第5,777,085号;同第6,180,370号;同第6,210,671号;および同第6,329,511号;WO87/02671;EP特許出願0173494;Jones et al.(1986)Nature 321:522;ならびにVerhoyen et al.(1988)Science 239:1534)。ヒト化抗体はさらに、例えば、Winter and Milstein(1991)Nature 349:293に記載されている。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源由来の1個以上のアミノ酸残基が導入されているものである。このような非ヒトアミノ酸残基はしばしばインポート残基と称され、これは典型的にはインポート可変ドメインから採用される。ヒト化は本質的に、Winterおよび共同研究者らの方法に従って(例えば、Morrison et al.,PNAS USA,81:6851-6855(1984),Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-327(1988);Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65-92(1988),Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536(1988)およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992),Padlan,Molec.Immun.,28:489-498(1991);Padlan,Molec.Immun.,31(3):169-217(1994)参照)、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応配列で置き換えることにより行なわれ得る。従って、かかるヒト化抗体はキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、この場合、インタクトなヒト可変ドメインのかなり少ない部分が非ヒト種由来の対応配列で置き換えられている。実際、ヒト化抗体は典型的には、一部のCDR残基および場合によっては一部のFR残基が齧歯類抗体の類似部位の残基で置換されたヒト抗体である。例えば、ヒト化免疫グロブリンのフレームワーク領域をコードしている第1配列および所望の免疫グロブリンの相補性決定領域をコードしている第2配列セットを含むポリヌクレオチドが、合成により、または適切なcDNAとゲノムDNAセグメントとを合わせることにより作製され得る。ヒト定常領域のDNA配列は、さまざまなヒト細胞から周知の手順に従って単離され得る。
【0089】
「キメラ抗体」は、(a)定常領域もしくはその一部分が、改変、置き換えもしくは交換されることにより、抗原結合部位(可変領域)が、異なるかもしくは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域に連結されているか、もしくは該キメラ抗体に新たな特性を付与する完全に異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物などに連結されている抗体分子;または(b)可変領域もしくはその一部分が、異なるかもしくは改変された抗原特異性を有する可変領域で改変、置き換えもしくは交換されている抗体分子である。本発明の好ましい抗体および本発明による使用のための好ましい抗体としては、ヒト化および/またはキメラモノクローナル抗体が挙げられる。
【0090】
本明細書において提供する「治療用抗体」は、がん、自己免疫疾患、移植片拒絶、心血管疾患または他の疾患もしくは病状(例えば、本明細書に記載のもの)を処置するために使用される任意の抗体またはその機能性断片をいう。治療用抗体の非限定的な例としては、マウス抗体、マウス化キメラ抗体もしくはヒト化キメラ抗体またはヒト抗体が挙げられ、例えば限定されないが、Erbitux(セツキシマブ)、ReoPro(アブシキシマブ)、Simulect(バシリキシマブ)、Remicade(インフリキシマブ);Orthoclone OKT3(ムロモナブ-CD3);Rituxan(リツキシマブ)、Bexxar(トシツモマブ)Humira(アダリムマブ)、Campath(アレムツズマブ)、Simulect(バシリキシマブ)、Avastin(ベバシズマブ)、Cimzia(セルトリズマブペゴル)、Zenapax(ダクリズマブ)、Soliris(エクリズマブ)、Raptiva(エファリズマブ)、Mylotarg(ゲムツズマブ)、Zevalin(イブリツモマブチウキセタン)、Tysabri(ナタリズマブ)、Xolair(オマリズマブ)、Synagis(パリビズマブ)、Vectibix(パニツムマブ)、Lucentis(ラニビズマブ)およびHerceptin(トラスツズマブ)が挙げられる。
【0091】
治療用薬剤を抗体にコンジュゲートさせるための手法は周知である(例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623-53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review” in Monoclonal Antibodies ‘84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475-506(1985);およびThorpe et al.,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.,62:119-58(1982)参照)。本明細書で用いる場合、用語「抗体-薬物コンジュゲート」または「ADC」は、治療用薬剤を抗体にコンジュゲートさせたものまたは別の様式で共有結合により結合させたものをいう。「治療用薬剤」は、本明細書においていう場合、疾患、例えばがんの処置または予防に有用な組成物である。
【0092】
抗体に「特異的に(もしくは選択的に)結合する」または「~と特異的に(もしくは選択的に)免疫反応性の」という語句は、タンパク質またはペプチドに言及している場合、該タンパク質の(多くの場合、タンパク質および他の生物材料の不均一な集団における)存在を確定的にする、結合反応をいう。従って、指定されたイムノアッセイ条件下では、明示された抗体は特定のタンパク質に、バックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10から100倍より多く結合する。かかる条件下における抗体に対する特異的結合は典型的には、特定のタンパク質に対するその特異性に関して選択された抗体が必要とされる。例えば、選択された抗原と特異的に免疫反応性であり、他のタンパク質とはそうでない抗体サブセットを得るためだけならポリクローナル抗体が選択され得る。この選択は、他の分子と交差反応性である抗体を除外することにより行なわれ得る。さまざまなイムノアッセイ形式が、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択するために使用され得る。例えば、タンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択するためには固相ELISAイムノアッセイが慣用的に使用される(例えば、特異的免疫反応性を調べるために使用され得るイムノアッセイ形式および条件の説明については、Harlow & Lane,Using Antibodies,A Laboratory Manual(1998)を参照のこと)。
タンパク質).
【0093】
「リガンド」は、受容体に結合し得る因子、例えば、ポリペプチドまたは他の分子をいう。
【0094】
用語「組換え」は、例えば、細胞、核酸、タンパク質またはベクターに関して用いている場合、該細胞、核酸、タンパク質またはベクターが実験室的製法によって修飾されているか、または該方法の結果物であることを示す。従って、例えば、組換えタンパク質は実験室的製法によって作製されたタンパク質を包含している。組換えタンパク質は、天然(非組換え)形態のタンパク質にはみられないアミノ酸残基を含むものであってもよく、修飾された、例えば標識されたアミノ酸残基を含むものであってもよい。
【0095】
用語「異種(heterologous)」とは、核酸内の部分に関して用いている場合、該核酸が、自然界では互いに同じ関係でみられない2つ以上の部分配列を含むものであることを示す。例えば、該核酸は典型的には組換え産生され、無関連の遺伝子由来の2つ以上の配列が新たな機能性核酸となるように配列されたものである(例えば、ある供給源由来のプロモーターと別の供給源由来のコード領域)。同様に、異種タンパク質は、該タンパク質が、自然界では互いに同じ関係でみられない2つ以上の部分配列を含むもの(例えば、融合タンパク質)であることを意味する。
【0096】
用語「単離された」とは、核酸またはタンパク質に適用されている場合、該核酸またはタンパク質が、自然状態では会合している他の細胞成分を本質的に無含有であることを表す。これは、例えば均質な状態であり得、非水性溶液(dry solution)中または水溶液中のいずれに存在していてもよい。純度および均質性は典型的には、分析化学的手法、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーを用いて測定される。調製物中に過半量の種として存在するタンパク質は、実質的に精製されたものである。
【0097】
「接触させる」は、その単純な通常の意味に従って用いており、少なくとも2種類の相違する種(例えば、生体分子または細胞を含む化学的化合物)を、反応、相互作用または物理的に接触するように充分に近接した状態にする工程をいう。しかしながら、得られる反応生成物は、添加した試薬間の反応により直接生成するものであってもよく、添加した試薬のうちの1種類以上に由来し反応混合物中に生じ得る中間体から生成するものであってもよいことを認識されたい。
【0098】
用語「接触させる」には、2つの種を反応、相互作用または物理的に接触させることが包含され得、この場合、該2つの種は、例えば、本明細書に記載の化合物および立体障害性化学分子であり得る。諸実施形態では、接触には、例えば、本明細書に記載の化合物を立体障害性化学分子と相互作用させることが包含される。
【0099】
「対照」試料または値は、試験試料との比較のための参照(通常、既知参照)としての機能を果たす試料をいう。例えば、試験試料は、試験条件から、例えば試験化合物の存在下で採取され、既知条件の、例えば、試験化合物の非存在下(陰性対照)または既知化合物の存在下(陽性対照)の試料と比較され得る。また、対照は、複数の試験または結果から得られる平均値を表す場合もある。当業者には、対照は、任意の数のパラメータ評価のために設計され得ることが認識されよう。例えば、対照は、薬理学的データ(例えば、半減期)または治療測定(例えば、副作用の比較)に基づいて治療有益性を比較するために案出され得る。当業者には、所与の状況においてどの対照が有用であるかが理解され、対照値との比較に基づいてデータを解析することができよう。また、対照は、データの有意性の判定に有用なものである。例えば、所与のパラメータの値が対照において広く異なる場合、試験試料における差異は有意とみなされない。
【0100】
「患者」または「~を必要とする被験体」は、本明細書において提供する組成物または医薬組成物の投与によって処置され得る疾患または病状に苦しんでいるか、または易罹患性である生きている生物体をいう。非限定的な例としては、ヒト、他の哺乳動物、ウシ(bovine)、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ(cow)、シカおよび他の非哺乳動物の動物が挙げられる。一部の実施形態では、患者がヒトである。
【0101】
用語「疾患」または「病状」は、本明細書において提供する化合物、医薬組成物または方法で処置され得る患者または被験体の体の状態または健康状態をいう。諸実施形態では、疾患ががん(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頸がん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌)、精巣がん、白血病、リンパ腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵がん、黒色腫、乳がん、神経芽細胞腫)である。
【0102】
用語「処置する」または「処置」は、傷害、疾患、病態または病状(任意の客観的または主観的パラメータを含む)の処置の奏功または改善の任意の指標、例えば、軽減;寛解;症状の減弱または傷害、病態もしくは病状が患者にとってより耐容性になること;変性または減退の速度の低下;変性の最終点の衰弱性を低減させること;患者の身体的または精神的健康状態の改善をいう。症状の処置または改善は、身体検査、神経精神病学検査および/または精神医学的評価の結果を含む客観的または主観的パラメータに基づいたものであり得る。用語「処置する(“treating”)」およびその活用形は、傷害、病態、病状または疾患の予防を包含している。諸実施形態では、「処置する」とは、がんの処置をいう。
【0103】
「有効量」は、該化合物なしと比べて記載の目的が達成される(例えば、投与効果が得られる、疾患が処置される、酵素活性が低下する、酵素活性が高まる、シグナル伝達経路が低減される、または疾患もしくは病状の1つ以上の症状が低減される)ために充分な、化合物についての量である。「治療有効量」の一例は、疾患の処置、予防またはその症状(1つもしくは複数)の低減に寄与するのに充分な量であり、これは「治療有効量」とも称され得る。症状(1つまたは複数)の「低減」(およびこの語句の文法的等価語句)は、症状(1つもしくは複数)の重症度もしくは頻度の減少または症状(1つもしくは複数)の解消を意味する。厳密な量は処置の目的に依存し、当業者により公知の手法を用いて確認されよう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar,Dosage Calculations(1999);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2003,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams & Wilkins参照)。
【0104】
本明細書で用いる場合、用語「がん」は、哺乳動物にみられるあらゆる型のがん、新生物または悪性の腫瘍をいい、白血病、リンパ腫、黒色腫、神経内分泌腫瘍、癌および肉腫を含む。本明細書において提供する化合物、医薬組成物または方法で処置され得る例示的ながんとしては、リンパ腫、肉腫、膀胱がん、骨のがん、脳腫瘍、子宮頸がん、結腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、腎臓がん、骨髄腫、甲状腺がん、白血病、前立腺がん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ、ER陽性、ER陰性、化学療法抵抗性、ハーセプチン抵抗性、HER2陽性、ドキソルビシン抵抗性、タモキシフェン抵抗性、腺管癌、小葉癌、原発性、転移性)、卵巣がん、膵がん、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、肺がん(例えば、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌、腺癌、大細胞肺癌、小細胞肺癌、カルチノイド、肉腫)、多形性膠芽腫、神経膠腫、黒色腫、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、膠芽腫、卵巣がん、肺がん、扁平上皮細胞癌(例えば、頭部、頸部もしくは食道)、結腸直腸がん、白血病、急性骨髄性(myeloid)白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫または多発性骨髄腫が挙げられる。さらなる例としては、甲状腺、内分泌系、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、食道、肝臓、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮もしくは髄芽細胞腫のがん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、多形性膠芽腫、卵巣がん、横紋筋肉腫、原発性血小板血症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、がん、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱がん、前癌状態の皮膚病変、精巣がん、リンパ腫、甲状腺がん、神経芽細胞腫、食道がん、尿生殖路のがん、悪性高カルシウム血症、子宮内膜がん、副腎皮質細胞がん、膵内分泌もしくは膵外分泌の新生物、甲状腺髄様がん、甲状腺髄様癌、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺乳頭がん、肝細胞癌、乳頭部のパジェット病、葉状腫瘍、小葉癌、腺管癌、膵星細胞のがん、肝星細胞のがんまたは前立腺がんが挙げられる。
【0105】
用語「白血病」は、広く造血器官の進行性の悪性疾患をいい、一般的には、血液および骨髄中の白血球およびその前駆細胞の増殖および発生の歪みを特徴とするものである。白血病は一般的に、(1)疾患の持続期間および性質:急性か慢性か;(2)関与している細胞の型:骨髄系(骨髄性(myelogenous))、リンパ球系(リンパ性(lymphogenous))または単球性;および(3)血液における異常細胞の数の増加の有無:白血球性か非白血球性(亜白血性)か、に基づいて臨床分類される。本明細書において提供する化合物、医薬組成物または方法で処置され得る例示的な白血病としては、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、ロイコサイテミック(leukocythemic)白血病、好塩基球性白血病、芽細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性(myelocytic)白血病、皮膚白血病、胎児性白血病、好酸球性白血病、グロス(Gross)白血病、ヘアリー細胞白血病、赤芽球性(hemoblastic)白血病、芽球性白血病、組織球性白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性(lymphatic)白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ性(lymphocytic)白血病、リンパ性(lymphogenous)白血病、リンパ性(lymphoid)白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞白血病、巨核球性白血病、微小骨髄芽球性(micromyeloblastic)白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄性顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、Naegeli型白血病、形質細胞白血病、多発性骨髄腫、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、Schilling型白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病または未分化細胞白血病が挙げられる。
【0106】
用語「肉腫」は、一般的に、胚結合組織のような物質で構成されており、一般的に、線維性または均質な物質内にぎっしり埋まった細胞で構成された腫瘍をいう。本明細書において提供する化合物、医薬組成物または方法で処置され得る肉腫としては、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、Abemethy肉腫、脂肪(adipose)肉腫、脂肪肉腫(liposarcoma)、胞状軟部肉腫、エナメル芽細胞肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫、絨毛腺癌、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、ジェンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫肉腫、骨膜傍肉腫、網状赤血球肉腫、ラウス肉腫、セロシスティック(serocystic)肉腫、滑膜肉腫または毛細血管拡張性(telangiectaltic)肉腫が挙げられる。
【0107】
用語「黒色腫」は、皮膚および他の器官のメラニン細胞系から発生する腫瘍を意味すると解釈されたい。本明細書において提供する化合物、医薬組成物または方法で処置され得る黒色腫としては、例えば、末端性黒子性黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング・パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫または表在拡大型黒色腫が挙げられる。
【0108】
用語「癌」は、上皮細胞で構成されており、周囲組織に浸潤し、転移をもたらす傾向にある悪性の新生増殖物をいう。本明細書において提供する化合物、医薬組成物または方法で処置され得る例示的な癌としては、例えば、甲状腺髄様癌、家族性甲状腺髄様癌、細葉細胞癌、細葉状癌、腺嚢癌、腺様嚢胞癌、アデノーマ様(adenomatosum)癌、副腎皮質の癌、肺胞癌、肺胞細胞癌、基底細胞(basal cell)癌、基底細胞(basocellulare)癌、基底様癌、基底有棘細胞癌、気管支肺胞癌、細気管支癌、気管支原性癌、大脳様癌、胆管細胞癌、絨毛膜癌、膠様癌、面皰癌、子宮体(corpus)癌、篩状癌、鎧状(en cuirasse)癌、皮膚(cutaneum)癌、柱状(cylindrical)癌、柱状細胞癌、管癌、腺管癌、デュラム(durum)癌、胎児性癌、脳様癌、エピエルモイド(epiermoid)癌、上皮腺癌、外向発育癌、潰瘍癌、フィブロスム(fibrosum)癌、膠状癌(gelatiniforni carcinoma)、膠様癌、巨細胞癌、巨細胞(gigantocellulare)癌、腺癌、顆粒膜細胞癌、毛母基癌、血液様癌、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞癌、硝子体癌、副腎(hypernephroid)癌、乳児胎児性癌、上皮内癌、表皮内癌、上皮内癌、Krompecher癌、Kulchitzky細胞癌、大細胞癌、水晶体癌、水晶体(lenticulare)癌、脂肪腫性癌、小葉癌、リンパ上皮癌、髄様(medullare)、髄様癌、悪性黒色腫(melanotic carcinoma)、悪性黒色腫(carcinoma molle)、粘液性癌腫、ムシパルム(muciparum)癌、粘膜細胞(mucocellulare)癌、粘膜表皮癌、粘液(mucosum)癌、粘膜癌、粘液腫性(myxomatodes)癌、鼻咽腔癌、燕麦細胞癌、骨化組織癌、類骨癌、乳頭状癌、門脈周囲癌、前浸潤癌、有棘細胞癌、糊状癌、腎臓の腎細胞癌、補充細胞癌、肉腫様癌、シュナイダー癌、硬性癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソラノイド(solanoid)癌、回転楕円面細胞癌、紡錘体細胞癌、海綿体(spongiosum)癌、扁平上皮癌、扁平上皮細胞癌、筋肉線維(string)癌、血管拡張性(telangiectaticum)癌、毛細血管拡張症様(telangiectodes)癌、移行上皮癌、結節(tuberosum)癌、管状腺癌、結節性癌、疣状癌または絨毛(villosum)癌が挙げられる。
【0109】
本明細書で用いる場合、用語「転移」、「転移性の」および「転移性のがん」は、互換的に用いられる場合があり、1つの器官または別の隣接していない器官もしくは身体部分からの増殖性の疾患または障害、例えばがんの拡延をいう。がんは、起源部位、例えば、乳房で発生し、ここでこの部位は、原発性腫瘍、例えば原発性乳がんと称される。原発腫瘍または起源部位の一部のがん細胞は、局所領域の周囲の正常組織内に浸透および浸潤する能力および/またはリンパ系もしくは血管系の壁に浸透し、体内の他の部位および組織へと該系内を循環する能力を獲得する。原発性腫瘍のがん細胞から形成された臨床的に検出可能な二次腫瘍は、転移性または続発性腫瘍と称される。がん細胞が転移する場合、転移性腫瘍およびその細胞は元の腫瘍のものと同様であると推測される。従って、肺がんが乳房に転移した場合、乳房部位の続発性腫瘍は異常な肺細胞からなるものであり、異常な乳房細胞ではない。乳房の続発性腫瘍は転移性肺がんと称される。従って、転移性がんという語句は、被験体が原発腫瘍を有しているかまたは以前に有していて、かつ1つ以上の続発性腫瘍を有する疾患をいう。非転移性のがんまたは転移性でないがんを有する被験体という語句は、被験体が原発腫瘍を有するが1つ以上の続発性腫瘍を有していない疾患をいう。例えば、転移性肺がんは、原発性肺腫瘍を有するかまたはその病歴を有し、かつ第2の位置または多数の位置、例えば乳房に1つ以上の続発性腫瘍を有する被験体の疾患をいう。
【0110】
「抗がん剤」は、その単純な通常の意味に従って用いており、抗新生物特性または細胞の成長もしくは増殖を抑止する能力を有する組成物(例えば、化合物、薬物、拮抗薬、阻害薬、調節薬)をいう。諸実施形態では、抗がん剤は、化学療法薬である。諸実施形態では、抗がん剤は、がんの処置方法において有用性を有する本明細書において特定した薬剤である。諸実施形態では、抗がん剤は、FDAまたは米国以外の国の同様の規制機関によってがんの処置について承認された薬剤である。
【0111】
用語「関連している」または「~と関連している」は、疾患(例えば、糖尿病、がん(例えば、前立腺がん、腎がん、転移性がん、黒色腫、去勢抵抗性前立腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、膠芽腫、卵巣がん、肺がん、扁平上皮細胞癌(例えば、頭部、頸部または食道)、結腸直腸がん、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫または多発性骨髄腫))と関連している物質または物質の活性もしくは機能の文脈において、該疾患(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頸がん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌)、精巣がん、白血病、リンパ腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵がん、黒色腫、乳がん、神経芽細胞腫)または該疾患の症状が、(全部または一部において)該物質または物質の活性もしくは機能によって引き起こされるものであることを意味する。
【0112】
「化学療法薬」または「化学療法剤」は、その単純な通常の意味に従って用いており、抗新生物特性または細胞の成長もしくは増殖を抑止する能力を有する化学的組成物または化合物をいう。
【0113】
用語「異常な」は、本明細書で用いる場合、正常と異なることをいう。酵素活性を説明するために用いる場合、異常なとは、活性が正常対照または正常な非疾患対照試料の平均より大きいか、または小さいことをいう。異常な活性は、疾患をもたらす活性の量を示している場合もあり、この場合、異常な活性が、(例えば、本明細書に記載の方法を使用することにより)正常または非疾患関連量に戻ると、該疾患または1つ以上の疾患症状の低減がもたらされる。
【0114】
組換え核酸
本明細書において、新規な診断能を示し、養子免疫療法に対して速やかに機能性が付与されるのを可能にする組成物を提供する。本明細書において提供する組換えタンパク質は、とりわけ、広くさまざまな治療目的および診断目的に有用である。例えば、諸実施形態を含む本明細書において提供する組換えタンパク質は、疾患(例えば、がん)の処置前および/または該処置中にキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を特性評価するための非観血的手段として使用され得る。CAR免疫受容体に機能性を付加することにより、抗原陽性腫瘍を有する患者集団が効率的に処置され得、そのHLA遺伝子型に関係なくモニタリングされ得る。このような機能的に改善された腫瘍特異的CARを発現するTリンパ球を用いた養子免疫療法は、がんおよび他の疾患(例えば、感染性疾患(例えば、HIV感染))の処置のための強力な治療ストラテジーとなり得る。さらに、諸実施形態を含む本明細書において提供する組換えタンパク質を使用すると、CAR T細胞の機能性および安全性の試験および改善が可能になる。
【0115】
一態様では、単離された核酸を提供する。該核酸は、(i)重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、重鎖定常領域(CH)および軽鎖定常領域(CL)によって形成されかつフレームワーク領域のアミノ酸残基を含むペプチド結合部位を形成している中心空洞を含む抗体領域;ならびに(ii)膜貫通ドメインを含む、タンパク質をコードしている。
【0116】
別の態様では、単離された核酸を提供する。該核酸は、(i)重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域によって形成されかつフレームワーク領域のアミノ酸残基を含むペプチド結合部位を形成している中心空洞を含む抗体領域;ならびに(ii)膜貫通ドメインを含む、タンパク質をコードしている。
【0117】
本明細書において提供する「抗体領域」は、諸実施形態を含む本明細書において提供するタンパク質の一部を構成する一価または多価タンパク質部分をいう。従って、当業者には、該抗体領域は、抗原(エピトープ)に結合し得るタンパク質部分であることがすぐに認識され得よう。従って、本明細書において提供する抗体領域には、抗体またはその断片(例えば、Fab)のドメインが包含され得る。諸実施形態では、該抗体領域は、タンパク質コンジュゲートである。本明細書において提供する「タンパク質コンジュゲート」は、1つより多くのポリペプチドからなる構築物をいい、ここで、該ポリペプチドは共有結合または非共有結合により一体に結合されている。諸実施形態では、該タンパク質コンジュゲートが、scFv部分(一価のscFv)に共有結合されたFab部分(一価のFab)を含むものである。諸実施形態では、該タンパク質コンジュゲートが、複数(少なくとも2つ)のFab部分を含むものである。諸実施形態では、タンパク質コンジュゲートのポリペプチドが1つの核酸分子にコードされている。諸実施形態では、タンパク質コンジュゲートのポリペプチドが異なる核酸分子にコードされている。諸実施形態では、該ポリペプチドがリンカーを介して接続されている。諸実施形態では、該ポリペプチドが化学的リンカーを介して接続されている。
【0118】
諸実施形態では、該抗体領域が複数の軽鎖可変ドメインと複数の重鎖可変ドメインを含むものである。本明細書において提供する「軽鎖可変ドメイン」は、軽鎖可変(VL)領域を含むポリペプチドをいう。諸実施形態では、軽鎖可変ドメインが軽鎖可変(VL)領域である。本明細書において提供する「重鎖可変ドメイン」は、重鎖可変(VH)領域を含むポリペプチドをいう。諸実施形態では、重鎖可変ドメインが重鎖可変(VH)領域である。諸実施形態では、前記複数の軽鎖可変ドメインと前記複数の重鎖可変ドメインとの各々は化学的に異なる。該複数の軽鎖可変ドメインと該複数の重鎖可変ドメインとが化学的に異なる場合、該軽鎖可変ドメインと該重鎖可変ドメインとの各々は異なる抗原(エピトープ)に結合する。化学的に異なる軽鎖可変ドメインと異なる重鎖可変ドメインとに結合される抗原は、同じタンパク質の一部であってもよく、異なるタンパク質の一部であってもよい。諸実施形態では、抗原ががん細胞の一部を構成している。諸実施形態では、該抗体領域が第1の軽鎖可変ドメインと第1の重鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインと第2の重鎖可変ドメインを含むものである。第1の重鎖可変ドメインと第1の軽鎖可変ドメインとは、第1のエピトープに結合する第1のパラトープを構成し、第2の重鎖可変ドメインと第2の軽鎖可変ドメインとは、第2のエピトープに結合する第2のパラトープを構成し、ここで、第1および第2のパラトープは独立して異なるものである。用語「パラトープ」は、抗体またはその断片の抗原結合部位をいう。
【0119】
諸実施形態では、該抗体領域が第1の軽鎖可変ドメインと第1の重鎖可変ドメイン、第2の軽鎖可変ドメインと第2の重鎖可変ドメイン、第3の軽鎖可変ドメインと第3の重鎖可変ドメイン、および第4(forth)の軽鎖可変ドメインと第4の重鎖可変ドメインを含むものである。第1の重鎖可変ドメインと第1の軽鎖可変ドメインは、第1のエピトープに結合する第1のパラトープを構成し、第2の重鎖可変ドメインと第2の軽鎖可変ドメインは、第2のエピトープに結合する第2のパラトープを構成し、第3の重鎖可変ドメインと第3の軽鎖可変ドメインは、第3のエピトープに結合する第3パラトープを構成し、第4の重鎖可変ドメインと第4の軽鎖可変ドメインは、第2のエピトープに結合する第4パラトープを構成し、ここで、第1、第2、第3および第4のパラトープは独立して異なるものである。
【0120】
諸実施形態では、第1、第2、第3および第4のパラトープが化学的リンカーを介して接続されている。諸実施形態では、化学的リンカーが共有結合性リンカー、非共有結合性リンカー、ペプチドリンカー(ペプチド部分を含むリンカー)、切断可能なペプチドリンカー、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレンまたは置換もしくは非置換のヘテロアリーレンまたはその任意の組合せである。従って、本明細書において提供する化学的リンカーは複数の化学的部分を含むものであってもよく、この場合、該複数の部分の各々は化学的に異なる。諸実施形態では、リンカーがペプチドリンカーである。諸実施形態では、該ペプチドリンカーが約5から約15アミノ酸残基長を有するものである。
【0121】
諸実施形態では、該抗体領域が二重特異性抗体である。諸実施形態では、該抗体領域が三価の抗体である。諸実施形態では、該抗体領域が四価のIgGである。諸実施形態では、該抗体領域が、Jakob CG et al.(MAbs.2013 May 1;5(3):358-363)およびByrne H et al.(Cell Volume 31,Issue 11,p621-632,November 2013)(これらは参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる)に記載のようなデュアル可変ドメイン免疫グロブリンである。
【0122】
諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:31と配列番号:32を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:33と配列番号:34を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:35と配列番号:36を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:37と配列番号:38を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:39と配列番号:40を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:41と配列番号:42を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:43と配列番号:44を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:45と配列番号:46を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:47と配列番号:48を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:49と配列番号:50を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:51と配列番号:52を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:53と配列番号:54を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:55と配列番号:56を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:57と配列番号:58を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:59と配列番号:60を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:61と配列番号:62を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:63と配列番号:64を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:65と配列番号:66を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:67と配列番号:68を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:69と配列番号:70を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:71と配列番号:72を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:73と配列番号:74を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:75と配列番号:76を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:77と配列番号:78を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:79と配列番号:80を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:81と配列番号:82を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:111と配列番号:112を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:113と配列番号:114を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:115と配列番号:116を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:117と配列番号:118を含むものである。諸実施形態では、該抗体領域が配列番号:119と配列番号:120を含むものである。
【0123】
本明細書において提供する「重鎖可変(VH)領域」は、抗体またはその断片の重鎖の可変領域を含むドメインである。同様に、本明細書において提供する「軽鎖可変(VL)領域」は、抗体またはその断片の軽鎖の可変領域を含むドメインである。諸実施形態では、重鎖可変(VH)領域が抗体の重鎖の可変領域である。諸実施形態では、重鎖可変(VH)領域が抗体断片の重鎖の可変領域である。諸実施形態では、重鎖可変(VH)領域がFabの重鎖の可変領域である。諸実施形態では、軽鎖可変(VL)領域が抗体の軽鎖の可変領域である。諸実施形態では、軽鎖可変(VL)領域が抗体断片の軽鎖の可変領域である。諸実施形態では、軽鎖可変(VL)領域がFabの軽鎖の可変領域である。
【0124】
諸実施形態では、該抗体領域がさらに重鎖定常領域(CH)と軽鎖定常領域(CL)を含むものである。諸実施形態では、重鎖定常領域(CH)が抗体またはその断片の重鎖の定常領域である。諸実施形態では、軽鎖定常領域(CL)が抗体またはその断片の軽鎖の定常領域である。諸実施形態では、重鎖定常領域(CH)がFabの定常領域である。諸実施形態では、軽鎖定常領域(CL)がFabの軽鎖の定常領域である。諸実施形態では、重鎖定常領域(CH)がF(ab)’2二量体の定常領域である。諸実施形態では、軽鎖定常領域(CL)がF(ab)’2二量体の軽鎖の定常領域である。諸実施形態では、該抗体領域がFcドメインである。諸実施形態では、該抗体領域がヒト化抗体領域である。諸実施形態では、該抗体領域がヒト化マウス抗体領域である。諸実施形態では、該抗体領域はscFV抗体領域を含まない。該抗体領域がscFv抗体領域を含まない場合、該抗体領域は、短鎖リンカーペプチドで接続された免疫グロブリンの重鎖(VH)と軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を含まない。
【0125】
「中心空洞」は、Fabの3次元構造に関して、重鎖および軽鎖の可変領域と定常領域の部分によって内表面が構成(line)されているFabの内部空洞をいい、該空洞内の孔の内表面を構成するアミノ酸を含む。諸実施形態では、該孔を含む中心空洞は、例えば、
図4Aに示すような構造、または
図4Aと同様の構造を有する。諸実施形態では、該抗体領域がFabを含むものである場合、中心空洞は、従って、VH、VL、CH1およびCL領域の残基によって内表面が構成される。中心空洞は抗原結合部位を含まない。従って、諸実施形態では、中心空洞に結合する該化合物は、抗体領域とエピトープとの結合に影響(例えば、測定可能な影響)を及ぼさない。換言すると、諸実施形態では、この部位の占有は抗原結合に影響しない。諸実施形態では、中心空洞は、諸実施形態を含む本明細書において提供するペプチジル部分を含む化合物(例えば、メディトープ)(例えば、式(I)または(II)のペプチド)と相互作用し得るアミノ酸残基によって内表面が構成されている。ペプチジル部分を含む化合物(例えば、メディトープ)と相互作用し得るアミノ酸残基が、該ペプチド結合部位(本明細書においてメディトープ結合部位とも称する)の一部を形成していてもよい(may from)。該ペプチド結合部位を任意の適切な抗体内に挿入し、それにより、該ペプチド結合部位を有する抗体または抗体領域を形成してもよい(本明細書においてメディトープ使用可能抗体またはメディトープ使用可能抗体領域とも称する)。
【0126】
諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置83に対応する位置の残基、カバット方式による位置30に対応する位置の残基またはカバット方式による位置52に対応する位置の残基を含む。諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置40に対応する位置の残基、カバット方式による位置41に対応する位置の残基、カバット方式による位置30に対応する位置の残基、カバット方式による位置52に対応する位置の残基、カバット方式による位置83に対応する位置の残基またはカバット方式による位置85に対応する位置の残基を含む。諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置40に対応する位置の残基を含む。諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置41に対応する位置の残基を含む。諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置30に対応する位置の残基を含む。諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置52に対応する位置の残基を含む。諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット83に対応する位置の残基を含む。諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置85に対応する位置の残基を含む。
【0127】
諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置30に対応する位置の残基を含む。諸実施形態では、カバット方式による位置30に対応する位置の残基が負電荷を有するアミノ酸残基である。諸実施形態では、カバット方式による位置30に対応する位置の残基がアスパラギン酸である。諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置52に対応する位置の残基を含む。諸実施形態では、カバット方式による位置52に対応する位置の残基が負電荷を有するアミノ酸残基である。諸実施形態では、カバット方式による位置52に対応する位置の残基がアスパラギン酸である。諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置83に対応する位置の残基を含む。諸実施形態では、カバット方式による位置83に対応する位置の残基が負電荷を有するアミノ酸残基である。諸実施形態では、カバット方式による位置83に対応する位置の残基がグルタミン酸である。諸実施形態では、カバット方式による位置83に対応する位置の残基がイソロイシンである。諸実施形態では、中心空洞の内表面を構成するアミノ酸残基がカバット方式による位置85に対応する位置の残基を含む。
【0128】
諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Gln38、Thr40、Gln41、Gly42、Ser43、Asp 52、Asp85、Ile83、Tyr87、Lys103、Val163、Thr164またはGlu165に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。本明細書において提供する「軽鎖残基」は、抗体または抗体断片の軽鎖の一部を形成している残基をいう。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Gln38に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Thr40に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている 諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Gln41に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Gly42に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Ser43に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Asp85に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Tyr87に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Lys103に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Val163に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Thr164に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている 諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Glu165に対応する位置の軽鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。
【0129】
諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Asp 30、Gln39、Pro40、Thr91、Ala92、Ile93、Tyr95、Gln112、Leu115、Glu155、Pro156、Pro174、Ala175またはTyr183に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。本明細書において提供する「重鎖残基」は、抗体または抗体断片の重鎖の一部を形成している残基をいう。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Gln39に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Pro40に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Thr91に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Ala92に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Ile93に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Tyr95に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Gln112に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Leu115に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Glu155に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Pro156に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Pro174に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Ala175に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。諸実施形態では、中心空洞は、カバット方式による位置Tyr183に対応する位置の重鎖残基によって内表面が構成(形成)されている。
【0130】
本明細書において提供する中心空洞は、フレームワーク領域のアミノ酸(FR)残基を含むペプチド結合部位(本明細書においてメディトープ結合部位とも称する)を含んでいる。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は重鎖または軽鎖のCDR残基を含まない。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は重鎖または軽鎖のFR残基を含んでいる。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は重鎖および軽鎖のFR残基を含んでいる。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は、カバット方式による位置83に対応する位置の残基、カバット方式による位置30に対応する位置の残基またはカバット方式による位置52に対応する位置の残基を含んでいる。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は、カバット方式による位置40に対応する位置の残基、カバット方式による位置41に対応する位置の残基、カバット方式による位置30に対応する位置の残基、カバット方式による位置52に対応する位置の残基、カバット方式による位置83に対応する位置の残基またはカバット方式による位置85に対応する位置の残基を含んでいる。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は、カバット方式による位置40に対応する位置の残基を含んでいる。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は、カバット方式による位置41に対応する位置の残基を含んでいる。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は、カバット方式による位置30に対応する位置の残基を含んでいる。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は、カバット方式による位置52に対応する位置の残基を含んでいる。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は、カバット方式による位置83に対応する位置の残基を含んでいる。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は、カバット方式による位置85に対応する位置の残基を含んでいる。諸実施形態では、ペプチド結合部位を形成している残基は、公開米国特許出願US20120301400A1(これは、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる)に記載されたものである。
【0131】
諸実施形態では、中心空洞は、ペプチジル部分を含む化合物に結合し得るアミノ酸残基によって内表面が構成されている。従って、諸実施形態では、本明細書において提供するペプチド結合部位はペプチジル部分を含む化合物に結合し得るものである。諸実施形態では、該ペプチド結合部位は該ペプチジル部分に結合し得るものである。諸実施形態では、本明細書において提供するペプチド結合部位がペプチジル部分を含む化合物に結合されている。諸実施形態では、該ペプチド結合部位が該ペプチジル部分に結合されている。諸実施形態では、該ペプチジル部分は、公開米国特許出願US20120301400A1およびAvery et al.2015(Scientific Reports 5:7817)(これらは、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる)に記載の部分である。
【0132】
諸実施形態では、該ペプチド結合部位に結合する化合物がペプチドであるか、またはペプチジル部分を含むものである。諸実施形態では、該化合物が置換型ペプチドである。諸実施形態では、該ペプチドが5から16アミノ酸長である。諸実施形態では、該化合物が置換型ペプチジル部分を含むものである。諸実施形態では、該ペプチジル部分が5から16アミノ酸長である。本明細書において提供するペプチドまたはペプチジル部分は「メディトープ」とも称され得る。諸実施形態では、該ペプチドまたはペプチジル部分は、式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12(I)
を有するものである。式(I)の配列がペプチジル部分である場合、当業者は、該ペプチジル部分は該化合物の残部に1つ以上の結合点で結合していることがすぐに理解されよう。式(I)において、X1はCys、Gly、β-アラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸、β-アジドアラニンであるかまたは存在せず;X2はGlnであるかまたは存在せず;X3はPhe、Tyr、β-β’-ジフェニル-Ala、His、Asp、2-ブロモ-L-フェニルアラニン、3-ブロモ-L-フェニルアラニン、4-ブロモ-L-フェニルアラニン、Asn、Gln、修飾Phe、水和性カルボニル含有残基またはボロン酸含有残基であり;X4はAspまたはAsnであり;X5はLeu;β-β’-ジフェニル-Ala、Phe、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンの非天然アナログ、水和性カルボニル含有残基またはボロン酸含有残基であり;X6はSerまたはCysであり;X7はThr、SerまたはCysであり;X8はArg、修飾(置換型)Arg、水和性カルボニルまたはボロン酸含有残基であり;X9はArgまたはAlaであり;X10はLeu、Gln、Glu、β-β’-ジフェニル-Ala、Phe、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンの非天然アナログ、水和性カルボニル含有残基またはボロン酸含有残基であり;X11はLysであり;X12はCys、Gly、7-アミノヘプタン酸、β-アラニン、ジアミノプロピオン酸、プロパギルグリシン、イソアスパラギン酸であるかまたは存在せず;ここで、修飾Pheは、1個以上のハロゲンがフェニル環内に組み込まれたPheであり、修飾Argは、式:
【0133】
【化1】
の構造を有するものである。式(IA)において、R、R’およびR”は独立して、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールまたはNHR’’’であり、R’’’は置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリールである。
【0134】
諸実施形態では、該ペプチドが環状ペプチドである。諸実施形態では、該ペプチジル部分が環状ペプチジル部分である。諸実施形態では、該ペプチドまたはペプチジル部分が、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ラクタム結合、付加環化を含むものである。諸実施形態では、環状ペプチドまたは環状ペプチジル部分の環状部分が、X1とX12との間、X1とX11との間、X3とX11との間、X4とX11との間またはX2とX12との間の結合によって形成されている。諸実施形態では、非天然アミノ酸がβ-β’-ジフェニル-Ala、分枝のアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールである。諸実施形態では、該1個以上のハロゲンの各々がオルト-、メタ-またはパラ-ブロモフェニル置換基である。
【0135】
諸実施形態では、該ペプチドまたはペプチジル部分は、以下の式を有するものである。
【0136】
【0137】
式(II)において、R3は水素、R3A置換もしくは非置換のアリールであり、ここで、R3Aは水素、ハロゲンまたは非置換のC1-4アルキルである。R3’は水素、R3A’置換もしくは非置換のアリールであり、ここで、R3A’は水素、ハロゲンまたは非置換のC1-4アルキルである。R5はR5A置換もしくは非置換のC1-8(例えば、C1-4)アルキルである。R5Aはオキソ、アセタール、ケタール、-B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、-CO2C1-4アルキル、-CH=CH-CHO、-CH=CH-C(O)R5A’、-CH=CH-CO2R5A’,-CO2H、-CONH2またはR5A’’置換もしくは非置換のアリール、R5A’’置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、ナフチル、イミダゾール、インドール)であり、ここで、R5A’は置換または非置換のC1-4アルキルであり、R5A’’は-OH、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。R6は-L6’OHまたは-L6’SHであり、ここで、L6’は置換または非置換のC1-4アルキレンである。R7は-L7’OHまたは-L7’SHであり、ここで、L7’は置換または非置換のC1-4アルキルである。符号mは0、1、2、3、4または5である。
【0138】
式(II)において、R8は-OH、-NRaRb、-N(Rc)C(O)Reまたは-N(Rc)C(=NRd)Reである。RaはHである。RbはHであるか、または場合により、オキソ、アセタールおよびケタール、-B(OH)2、-SH、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、-CH=CH-CHO、-CH=CH-C(O)C1-4アルキル、-CH=CH-CO2C1-4アルキル、-CO2Hまたは-CO2C1-4アルキル基からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されたC1-8アルキルである。RcはH、C1-8アルキル、C3-8シクロアルキル、分枝のアルキルまたはアリールである。RdはHまたはC1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、C3-8シクロアルキル、分枝のアルキルもしくはアリール基であり、各々は場合により、-N3、-NH2、-OH、-SH、ハロゲン、オキソ、アセタール、ケタール、-B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、-CH=CH-CHO、-CH=CH-C(O)C1-4アルキル、-CH=CH-CO2C1-4アルキル、-CO2Hおよび-CO2C1-4アルキル基からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されている。ReはH、-NHRdであるか;またはC1-12アルキル、C3-8シクロアルキル、C2-12アルケニル、C2-8アルキニルもしくはアリール基であり、各々は場合により、-N3、-NH2、-OH、-SH、オキソ、C2-4アセタール、C2-4ケタール、-B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、-CH=CH-CHO、-CH=CH-C(O)C1-4アルキル、-CH=CH-CO2C1-4アルキルおよび-CO2C1-4アルキル基からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されている。
【0139】
式(II)において、R9は置換または非置換のC1-4アルキルである。R10はR10A置換または非置換のC1-8アルキルであり、ここで、R10Aはオキソ、アセタール、ケタール、-B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、-CH=CH-CHO、-CH=CH-C(O)C1-4アルキル、-CH=CH-CO2C1-4アルキル、-CO2C1-4アルキル、-CO2H、-CONH2、R10B置換もしくは非置換のフェニル、R10B置換もしくは非置換のナフチル、R10B置換もしくは非置換のイミダゾリルまたはR10B置換もしくは非置換のインドリルであり、ここで、R10Bは-OHまたはハロゲンである。符号nは0または1である。符号pは0または1である。
【0140】
式(II)において、XはRX置換または非置換のC1-8アルキレン、Rx置換または非置換のC2-8アルケニレンであり、Rxはオキソ、-C(O)、-NH2、-NHC(O)または-NHC(O)Ryであり、ここで、該アルケニレンの1個の炭素は場合により、-C(O)NH、5員のヘテロアリーレンまたは-S-Sで置き換えられており、Ryは-C1-4アルキル、-CH(Rz)C(O)または-CH(Rz)CO2Hであり、ここで、Rzは-HまたはRz’置換もしくは非置換の-C1-4アルキルであり、ここで、Rz’は-OH、-SHまたは-NH2である。式(I)または(II)は、医薬として許容される適切なあらゆる塩を包含している。ペプチド結合部位(メディトープ結合部位)およびペプチド(メディトープ)の概念に関するさらなる情報は国際特許出願PCT/US2011/055656号、同第PCT/US2015/053880号、同第PCT/US2012/032938号および米国特許出願US14/453,586号において知得され得、これらは、その全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0141】
本明細書において提供する化合物としては、該ペプチジル部分に結合させた治療用薬剤、診断用薬剤または検出可能な薬剤(本明細書において検出可能な薬剤とも称する)も挙げられ得る。諸実施形態では、該化合物を治療用薬剤、診断用薬剤または検出可能な薬剤にコンジュゲートさせる。諸実施形態では、該ペプチジル部分(例えば、式(I)または(II)のペプチド)を治療用薬剤、診断用薬剤または検出可能な薬剤にコンジュゲートさせる。諸実施形態では、該抗体領域を治療用薬剤、診断用薬剤または検出可能な薬剤にコンジュゲートさせる。
【0142】
治療用薬剤、診断用薬剤または検出可能な薬剤を、化学的リンカーを介して、諸実施形態を含む本明細書において提供する該化合物(例えば、ペプチジル部分)および/または抗体領域に結合させてもよい。諸実施形態では、化学的リンカーは共有結合性リンカー、非共有結合性リンカー、ペプチドリンカー(ペプチド部分を含むリンカー)、切断可能なペプチドリンカー、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレンまたは置換もしくは非置換のヘテロアリーレンまたはその任意の組合せである。
【0143】
本明細書において提供する化学的リンカーは複数の化学的部分を含むものであってもよく、その場合、該複数の部分の各々は化学的に異なる。諸実施形態では、治療用薬剤、診断用薬剤または検出可能な薬剤が該化合物に非共有結合性または共有結合性リンカーを介して結合している。諸実施形態では、治療用薬剤、診断用薬剤または検出可能な薬剤が該ペプチジル部分に非共有結合性または共有結合性リンカーを介して結合している。諸実施形態では、治療用薬剤、診断用薬剤または検出可能な薬剤が該抗体領域に非共有結合性または共有結合性リンカーを介して結合している。典型的には、リンカーは本明細書に記載の共有結合性リンカーであり得、コンジュゲート(例えば「クリック」)ケミストリーによって形成され得る。リンカーはさらに、本明細書に記載の切断可能なペプチドリンカーであってもよい。治療用薬剤、診断用薬剤または検出可能な薬剤が、諸実施形態を含む本明細書において提供する該化合物、ペプチジル部分および/または抗体領域の一部を形成している場合(例えば、共有結合によって)、該治療用薬剤、診断用薬剤または検出可能な薬剤は、それぞれ、「治療性部分」、「診断性部分」または「検出可能な部分」と称され得る。諸実施形態では、該ペプチド部分(メディトープ)は反応性アミン官能部(例えば、Lysl l)を含有しており、これは、メディトープ(ペプチジル部分)と、例えば、構造骨格もしくはリンカーとのコンジュゲーションまたは機能性部分、例えば、本明細書に記載の診断用(例えばイメージング用)薬剤もしくは治療性部分とのコンジュゲーションに使用される。諸実施形態では、チオール官能部がメディトープ(ペプチジル部分)上の任意の適切な位置に導入され、イメージング(imagining)剤、他のタンパク質およびペプチド、金属キレート剤、siRNA、ナノ粒子および細胞毒性薬物を含有している試薬を用いて選択的に修飾される。治療性部分または診断性部分と本明細書において提供するペプチジル部分とのカップリングは、当該技術分野で周知であり、例えばWO2013055404A1(これは、参照によりあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されたペプチドケミストリー方法論を用いて行なうことができる。
【0144】
本明細書において提供する治療性部分としては、限定されないが、ペプチド、タンパク質、核酸、核酸アナログ、小分子、抗体、酵素、プロドラッグ、細胞毒性剤(例えば、毒素)が挙げられ得、限定されないが、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリンおよびグルココルチコイドが挙げられる。諸実施形態では、治療性部分が本明細書に記載の抗がん剤または化学療法剤である。諸実施形態では、治療性部分が核酸部分、ペプチド部分または小分子薬物部分である。諸実施形態では、治療性部分が核酸部分である。諸実施形態では、治療性部分が抗体部分である。諸実施形態では、治療性部分がペプチド部分である。諸実施形態では、治療性部分が小分子薬物部分である。諸実施形態では、治療性部分がヌクレアーゼである。諸実施形態では、治療性部分が免疫賦活薬である。諸実施形態では、治療性部分が毒素である。諸実施形態では、治療性部分がヌクレアーゼである。
【0145】
本明細書において提供する該化合物、ペプチジル部分または抗体領域は、イメージング部分または検出可能な部分を含むものであってもよい。諸実施形態では、検出可能な部分が該化合物に共有結合性リンカーを介して接続されている。諸実施形態では、検出可能な部分が該抗体領域に共有結合性リンカーを介して接続されている。諸実施形態では、検出可能な部分が該ペプチジル部分に共有結合性リンカーを介して接続されている。本明細書において提供する「イメージング部分または検出可能な部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的または他の物理的手段によって検出可能な一価の化合物である。諸実施形態では、イメージング部分は該化合物に共有結合により結合されている。諸実施形態では、イメージング部分は該抗体領域に共有結合により結合されている。諸実施形態では、イメージング部分は該ペプチジル部分に共有結合により結合されている。例示的なイメージング部分としては、限定されないが、32P、放射性核種、陽電子放出性同位体、蛍光色素、フルオロフォア、抗体、生物発光分子、化学発光分子、光活性分子、金属、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAに一般的に使用されるようなもの)、磁性造影剤、量子ドット、ナノ粒子、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテンおよびタンパク質、または、例えば標的ペプチドと特異的に反応性のペプチドもしくは抗体に放射性標識を組み込むことによって検出可能となり得る他の存在体が、挙げられる。抗体を該部分にコンジュゲートさせるための当該技術分野で公知の任意の方法が使用され得、例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques 1996,Academic Press,Inc.,San Diegoに記載の方法が使用される。例示的なフルオロフォアとしては、フルオレセイン、ローダミン、GFP、クマリン、FITC、AlExa fluor、Cy3、Cy5、BODIPYおよびシアニン色素が挙げられる。例示的な放射性核種としては、フッ素-18、ガリウム-68および銅-64が挙げられる。例示的な磁性造影剤としては、ガドリニウム、酸化鉄および鉄白金ならびにマンガンが挙げられる。諸実施形態では、イメージング部分が生物発光分子である。諸実施形態では、イメージング部分が光活性分子である。諸実施形態では、イメージング部分が金属である。諸実施形態では、イメージング部分がナノ粒子である。
【0146】
本明細書において提供する膜貫通ドメインは、生物学的膜の一部を形成しているポリペプチドをいう。本明細書において提供する膜貫通ドメインは、生物学的膜(例えば、細胞膜)を、該膜の片側から該膜の反対側へと貫通し得るものである。諸実施形態では、膜貫通ドメインは細胞膜の細胞内側から細胞外側に貫通しているものである。膜貫通ドメインは無極性の疎水性残基を含むものであってもよく、これは、生物学的膜(例えば、T細胞の細胞膜)において、諸実施形態を含む本明細書において提供するタンパク質をアンカリングする。諸実施形態を含む本明細書において提供するタンパク質をアンカリングし得る任意の膜貫通ドメインが想定される。諸実施形態では、膜貫通ドメインがL-セレクチンである。本明細書において提供する「L-セレクチン」という用語は、任意の組換え形態もしくは天然に存在する形態のL-セレクチンタンパク質(CD62Lとしても知られている)、またはL-セレクチン活性(例えば、L-セレクチンと比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%以内の活性)を維持しているそのバリアントもしくはホモログを包含している。諸実施形態では、該バリアントまたはホモログは、配列全体または該配列の一部分(例えば、50、100、150または200個の連続するアミノ酸部分)にわたり、天然に存在するL-セレクチンポリペプチドと比較して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有するものである。諸実施形態では、L-セレクチンは、NCBI配列参照GI:262206315によって特定されるタンパク質、そのホモログまたは機能性断片である。膜貫通ドメインの非限定的な例としては、CD8、CD4またはCD3-ゼータの膜貫通ドメインが挙げられる。
【0147】
諸実施形態では、膜貫通ドメインがCD28膜貫通ドメインである。本明細書において提供する「CD28膜貫通ドメイン」という用語は、CD28の膜貫通ドメインの組換え形態もしくは天然に存在する形態、またはCD28膜貫通ドメイン活性(例えば、CD28膜貫通ドメインと比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%以内の活性)を維持しているそのバリアントもしくはホモログのいずれかを包含している。一部の態様では、該バリアントまたはホモログは、配列全体または該配列の一部分(例えば、50、100、150または200個の連続するアミノ酸部分)にわたり、天然に存在するCD28膜貫通ドメインポリペプチドと比較して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有するものである。諸実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、配列番号:22、配列番号:2によって特定されるタンパク質、そのホモログまたは機能性断片である。諸実施形態では、CD28は、NCBI配列参照GI:340545506によって特定されるタンパク質、そのホモログまたは機能性断片である。
【0148】
諸実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10によって特定されるタンパク質、そのホモログまたは機能性断片である。
【0149】
諸実施形態では、本明細書において提供する単離された核酸は、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインをコードしている細胞内T細胞シグナル伝達配列を含むものである。諸実施形態では、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインがCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインである。本明細書において提供する「細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン」は、諸実施形態を含む本明細書において提供する抗体領域に対する抗原の結合に応答して一次シグナル伝達をもたらし得るアミノ酸配列を含むものである。諸実施形態では、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのシグナル伝達により、これを発現しているT細胞の活性化がもたらされる。諸実施形態では、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのシグナル伝達により、これを発現しているT細胞の増殖(細胞分裂)がもたらされる。諸実施形態では、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのシグナル伝達は、活性化T細胞に特徴的であることが当該技術分野で知られているタンパク質(例えば、CTLA-4、PD-1、CD28、CD69)の前記T細胞による発現をもたらす。諸実施形態では、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3複合体のゼータ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。諸実施形態では、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインがCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインである。諸実施形態では、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが配列番号:11である。
【0150】
諸実施形態では、本明細書において提供する単離された核酸は、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインをコードしている細胞内共刺激シグナル伝達配列を含むものである。本明細書において提供する「細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン」は、諸実施形態を含む本明細書において提供する抗体領域に対する抗原の結合に応答して共刺激シグナル伝達をもたらし得るアミノ酸配列を含むものである。諸実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインのシグナル伝達により、サイトカイン産生およびこれを発現しているT細胞の増殖がもたらされる。諸実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインがCD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ICOS細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはOX-40細胞内共刺激シグナル伝達ドメインである。諸実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインがCD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ICOS細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、OX-40細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその任意の組合せを含む。配列および受託番号を含む例示的な細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを表2に示す。諸実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15または配列番号:16によって特定されるタンパク質を含むものである。諸実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15または配列番号:16である。
【0151】
諸実施形態では、本明細書において提供する単離された核酸は、リンカードメインをコードしているリンカー配列を含むものである。諸実施形態では、リンカードメインが該膜貫通ドメインと該細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの間に存在している。諸実施形態では、リンカードメインが該細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと該細胞内共刺激シグナル伝達ドメインとの間に存在している。諸実施形態では、リンカードメインが配列GGCGGまたはGGGを含むものである。
【0152】
諸実施形態では、本明細書において提供する単離された核酸は、スペーサー領域をコードしているスペーサー配列を含むものである。諸実施形態では、スペーサー領域が該膜貫通ドメインと該抗体領域との間に存在している。本明細書において提供する「スペーサー領域」は、該抗体領域を該膜貫通ドメインと接続しているポリペプチドである。諸実施形態では、スペーサー領域は、該重鎖定常領域を該膜貫通ドメインと接続しているものである。諸実施形態では、抗原に対する該抗体領域の結合親和性は、スペーサー領域がない場合と比較した高くなる。諸実施形態では、スペーサー領域が存在する場合、抗体領域と抗原との間の立体障害が低減される。
【0153】
諸実施形態では、スペーサー領域がFc領域を含む。本明細書において提供する組成物および方法で想定されるスペーサー領域の例としては、限定されないが、免疫グロブリン分子またはその断片(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)およびFc受容体結合に影響する変異を含む免疫グロブリン分子またはその断片(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)が挙げられる。諸実施形態では、スペーサー領域がIgG(例えば、IgG4)の断片であり、前記断片はCH2ドメインの欠失を含むものである。スペーサー領域はペプチドリンカーであってもよい。諸実施形態では、スペーサー領域がセリン-グリシンリンカーである。諸実施形態では、スペーサー領域が配列GGSGを有するものである。諸実施形態では、スペーサー領域が配列GSGSGSGSを有するものである。諸実施形態では、スペーサー領域が少なくとも4アミノ酸長である。諸実施形態では、スペーサー領域が約4アミノ酸長である。諸実施形態では、スペーサー領域が4から250アミノ酸長である。スペーサー領域は、本明細書において提供するタンパク質のインビボ(例えば、血漿中)半減期を長くし得る残基を含むものであってもよい。諸実施形態では、スペーサー領域は10アミノ酸長である。諸実施形態では、スペーサー領域は229アミノ酸長である。諸実施形態では、スペーサー領域はGGGSSGGGSGである。スペーサー領域は「PAS化(pasylate)され」ていてもよい。用語「PAS化される」または「PAS化(pasylation)」は、その通常の意味で用いており、プロリン、アラニンおよびセリンの含量が高いため、可溶性が高い生物学的ポリマーを形成するアミノ酸配列をいう。従って、諸実施形態では、スペーサー領域が、合わせて約200個のプロリン、アラニンおよびセリン残基を含むものである。諸実施形態では、スペーサー領域が、合わせて約10から約200個のプロリン、アラニンおよびセリン残基を含むものである。諸実施形態では、スペーサー領域が親水性残基を含むものである。諸実施形態では、該組換えタンパク質はスペーサー領域を含まない。諸実施形態では、該核酸は、スペーサー領域をコードしているスペーサー配列を含まない。諸実施形態では、該核酸は、WO2015105522A1に記載のスペーサー領域をコードしているスペーサー配列を含まない。
【0154】
諸実施形態では、該核酸が、(i)該タンパク質の重鎖ドメインをコードしている重鎖配列(該重鎖ドメインは重鎖可変ドメインと該膜貫通ドメインを含むものである);と(ii)該タンパク質の軽鎖ドメインをコードしている軽鎖配列(該軽鎖ドメインは軽鎖可変ドメインを含むものである)とを含むものであり、該重鎖可変ドメインと該軽鎖可変ドメインが一緒になって該抗体領域の少なくとも一部分を形成している。
【0155】
諸実施形態では、該単離された核酸が、5’末端から3’末端に向かって:軽鎖配列、重鎖配列、膜貫通配列および細胞内共刺激シグナル伝達配列をコードしている。諸実施形態では、該単離された核酸が、5’末端から3’末端に向かって:重鎖配列、膜貫通配列、細胞内共刺激シグナル伝達配列および軽鎖配列をコードしている。諸実施形態では、該単離された核酸が、5’末端から3’末端に向かって:軽鎖配列、自己切断性ペプチジルリンカー配列、重鎖配列、スペーサー配列、膜貫通配列、細胞内共刺激シグナル伝達配列および細胞内T細胞シグナル伝達配列をコードしている。諸実施形態では、該単離された核酸が、5’末端から3’末端に向かって:重鎖配列、スペーサー配列、膜貫通配列、細胞内共刺激シグナル伝達配列、細胞内T細胞シグナル伝達配列、自己切断性ペプチジルリンカー配列および軽鎖配列をコードしている。
【0156】
本明細書において提供する「軽鎖配列」は、本明細書において提供する軽鎖ドメインをコードしている核酸配列をいう。本明細書において提供する軽鎖ドメインとしては軽鎖可変(VL)領域および/または軽鎖定常領域(CL)が挙げられ得る。本明細書において提供する「重鎖配列」は、本明細書において提供する重鎖ドメインをコードしている核酸配列をいう。本明細書において提供する重鎖ドメインとしては、重鎖可変(VH)領域および/または重鎖定常領域(CH)が挙げられ得る。本明細書において提供する「膜貫通配列」は、本明細書において提供する膜貫通ドメインをコードしている核酸配列をいう。本明細書において提供する「細胞内T細胞シグナル伝達配列」は、本明細書において提供する細胞内T細胞シグナル伝達ドメインをコードしている核酸配列をいう。本明細書において提供する「細胞内共刺激シグナル伝達配列」は、本明細書において提供する細胞内共刺激シグナル伝達ドメインをコードしている核酸配列をいう。
【0157】
諸実施形態では、該単離された核酸は、重鎖配列と軽鎖配列との間の自己切断性ペプチジルドメインをコードしている自己切断性ペプチジル配列を含むものである。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルリンカー配列がT2A配列である。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルリンカー配列がT2A配列または2A配列である。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルリンカー配列が口蹄疫ウイルス配列である。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルリンカー配列がPVKQLLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号:83)である。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルリンカー配列が馬鼻炎Aウイルス配列である。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルリンカー配列がQCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号:84)である。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルリンカー配列が豚テスコウイルス1配列である。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルリンカー配列がATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号:85)である。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルリンカー配列がThosea asignaウイルス配列である。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルリンカー配列がEGRGSLLTCGDVESNPGP(配列番号:86)である。諸実施形態では、軽鎖配列が重鎖配列の3’側である。諸実施形態では、軽鎖配列が重鎖配列の5’側である。
【0158】
諸実施形態では、該抗体領域がセツキシマブメディトープ使用可能ドメイン、トラスツズマブメディトープ使用可能ドメイン、ペルツズマブメディトープ使用可能ドメイン、M5Aメディトープ使用可能ドメインまたはリツキシマブメディトープ使用可能ドメインである。諸実施形態では、該抗体領域がヒト化セツキシマブメディトープ使用可能ドメインである。諸実施形態では、該抗体領域がヒト化リツキシマブメディトープ使用可能ドメインである。
【0159】
別の態様では、単離された核酸を提供する。該単離された核酸は、抗体重鎖の可変ドメインを含む第1部分および抗体軽鎖の可変ドメインと抗体軽鎖の定常ドメインを含む第2部分を含むタンパク質をコードしており、ここで、第1部分はさらに膜貫通ドメインを含むものである。諸実施形態では、該タンパク質は配列番号:17によって特定されるタンパク質である。諸実施形態では、該タンパク質は配列番号:28によって特定されるタンパク質である。諸実施形態では、該タンパク質は配列番号:98によって特定されるタンパク質である。諸実施形態では、該タンパク質は配列番号:110によって特定されるタンパク質である。
【0160】
諸実施形態では、該タンパク質は、N末端からC末端に向かって:配列番号:18のシグナル伝達ペプチド、配列番号:19の重鎖ドメイン、配列番号:20のヒンジ領域、配列番号:21のスペーサー領域、配列番号:22の膜貫通ドメイン、配列番号:23の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、配列番号:24のリンカードメイン、配列番号:25の細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、配列番号:26の第1自己切断性ペプチジルリンカードメイン、配列番号:29のマーカーペプチド、配列番号:30の第2自己切断性ペプチジルリンカードメイン、配列番号:18のシグナル伝達ペプチドおよび配列番号:27の軽鎖ドメインを含むものである。諸実施形態では、該タンパク質は、N末端からC末端に向かって:配列番号:18のシグナル伝達ペプチド、配列番号:19の重鎖ドメイン、配列番号:20のヒンジ領域、配列番号:21のスペーサー領域、配列番号:22の膜貫通ドメイン、配列番号:23の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、配列番号:24のリンカードメイン、配列番号:25の細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、配列番号:26の第1自己切断性ペプチジルリンカードメイン、配列番号:29のマーカーペプチド、配列番号:30の第2自己切断性ペプチジルリンカードメイン、配列番号:18のシグナル伝達ペプチドまたは配列番号:27の軽鎖ドメインを含むものである。諸実施形態では、該タンパク質は、N末端からC末端に向かって:配列番号:18のシグナル伝達ペプチド、配列番号:19の重鎖ドメイン、配列番号:20のヒンジ領域、配列番号:21のスペーサー領域、配列番号:22の膜貫通ドメイン、配列番号:23の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、配列番号:24のリンカードメイン、配列番号:25の細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、配列番号:26の自己切断性ペプチジルリンカードメイン、配列番号:18のシグナル伝達ペプチドおよび配列番号:27の軽鎖ドメインを含むものである。諸実施形態では、該タンパク質は、N末端からC末端に向かって:配列番号:18のシグナル伝達ペプチド、配列番号:19の重鎖ドメイン、配列番号:20のヒンジ領域、配列番号:21のスペーサー領域、配列番号:22の膜貫通ドメイン、配列番号:23の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、配列番号:24のリンカードメイン、配列番号:25の細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、配列番号:26の自己切断性ペプチジルリンカードメイン、配列番号:18のシグナル伝達ペプチドまたは配列番号:27の軽鎖ドメインを含むものである。
【0161】
用語「シグナル伝達ペプチド」は、本明細書で用いる場合、当該技術分野におけるその通常の意味に従って用いており、約5から30アミノ酸長を有するペプチドをいう。シグナル伝達ペプチドは、分泌経路の一部を構成する新たに合成されたタンパク質のN末端に存在させる。分泌経路のタンパク質としては、限定されないが、特定の細胞小器官(小胞体、ゴルジ体もしくはエンドソーム)の内部に存在しているか、細胞から分泌されたものであるか、または細胞膜内に挿入されたものであるかのいずれかであるタンパク質が挙げられる。諸実施形態では、シグナル伝達ペプチドはタンパク質の膜貫通ドメインの一部を形成している。
【0162】
用語「重鎖ドメイン」は、本明細書で用いる場合、当該技術分野におけるその通常の意味に従って用いており、重鎖可変(VH)領域と重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドをいう。用語「軽鎖ドメイン」は、本明細書で用いる場合、当該技術分野におけるその通常の意味に従って用いており、軽鎖可変(VL)領域と軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドをいう。
【0163】
諸実施形態では、該タンパク質は、N末端からC末端に向かって:配列番号:87のシグナル伝達ペプチド、配列番号:88の軽鎖ドメイン、配列番号:89の自己切断性ペプチジルリンカードメイン、配列番号:90の重鎖ドメイン、配列番号:91のヒンジ領域、配列番号:92の第1スペーサー領域、配列番号:93の第2スペーサー領域、配列番号:94の膜貫通ドメイン、配列番号:95の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、配列番号:96のリンカードメインおよび配列番号:97の細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むものである。諸実施形態では、該タンパク質は、N末端からC末端に向かって:配列番号:87のシグナル伝達ペプチド、配列番号:88の軽鎖ドメイン、配列番号:89の自己切断性ペプチジルリンカードメイン、配列番号:90の重鎖ドメイン、配列番号:91のヒンジ領域、配列番号:92の第1スペーサー領域、配列番号:93の第2スペーサー領域、配列番号:94の膜貫通ドメイン、配列番号:95の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、配列番号:96のリンカードメインまたは配列番号:97の細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むものである。
【0164】
諸実施形態では、該タンパク質は、N末端からC末端に向かって:配列番号:99のシグナル伝達ペプチド、配列番号:100の重鎖ドメイン、配列番号:101のヒンジ領域、配列番号:102の第1スペーサー領域、配列番号:103の第2スペーサー領域、配列番号:104の膜貫通ドメイン、配列番号:105の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、配列番号:106のリンカードメインおよび配列番号:107の細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、配列番号:108の自己切断性ペプチジルリンカードメインならびに配列番号:109の軽鎖ドメインを含むものである。諸実施形態では、該タンパク質は、N末端からC末端に向かって:配列番号:99のシグナル伝達ペプチド、配列番号:100の重鎖ドメイン、配列番号:101のヒンジ領域、配列番号:102の第1スペーサー領域、配列番号:103の第2スペーサー領域、配列番号:104の膜貫通ドメイン、配列番号:105の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、配列番号:106のリンカードメインおよび配列番号:107の細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、配列番号:108の自己切断性ペプチジルリンカードメインまたは配列番号:109の軽鎖ドメインを含むものである。
【0165】
諸実施形態では、第1部分がさらに細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むものである。諸実施形態では、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが配列番号:11である。諸実施形態では、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインがCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインである。諸実施形態では、第1部分が細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含むものである。諸実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインがCD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ICOS細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはOX-40細胞内共刺激シグナル伝達ドメインである。諸実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15または配列番号:16である。
【0166】
諸実施形態では、第1部分がリンカードメインを含むものである。諸実施形態では、リンカードメインが該膜貫通ドメインと該細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの間に存在している。諸実施形態では、リンカードメインが該細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと該細胞内共刺激シグナル伝達ドメインとの間に存在している。諸実施形態では、リンカードメインが配列GGCGGまたはGGGを含むものである。
【0167】
諸実施形態では、第1部分がCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと細胞内共刺激シグナル伝達ドメインとを含むものである。諸実施形態では、第1部分が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって:該重鎖の可変ドメイン、重鎖定常ドメイン、該膜貫通ドメイン、該CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインおよび細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含むものである。
【0168】
諸実施形態では、本明細書において提供する単離された核酸分子は、重鎖の可変ドメインと膜貫通ドメインとの間に配置されたスペーサー領域を含むものである。諸実施形態では、スペーサー領域がヒンジ領域を含む。諸実施形態では、ヒンジ領域がCD8ヒンジ領域である。諸実施形態では、ヒンジ領域がCD28ヒンジ領域である。本明細書において提供する「スペーサー領域」は、該抗体重鎖の可変ドメインを該膜貫通ドメインと接続しているポリペプチドである。諸実施形態を含む本明細書において提供するタンパク質の第1部分が重鎖定常ドメインを含む場合、該重鎖定常ドメインが該重鎖の可変ドメインをスペーサー領域と接続し、該スペーサー領域が該重鎖定常ドメインを該膜貫通ドメインと接続している。このように、諸実施形態では、スペーサー領域は、重鎖の可変ドメインを膜貫通ドメインと接続しているものである。諸実施形態では、スペーサー領域は重鎖定常ドメインを膜貫通ドメインと接続しているものである。
【0169】
諸実施形態では、抗体重鎖の可変ドメインおよび抗体軽鎖の可変ドメインがヒト化型である。諸実施形態では、第1部分が重鎖定常ドメインを含むものである。諸実施形態では、該単離された核酸は、第1部分と第2部分との間に自己切断性ペプチジル配列を含むものである。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルコード配列がT2Aコード配列であるか、または2Aコード配列である。諸実施形態では、自己切断性ペプチジルコード配列がT2Aコード配列または2Aコード配列である。諸実施形態では、第2部分をコードしている核酸配列が第1部分をコードしている核酸配列の3’側である。
【0170】
諸実施形態では、諸実施形態を含む本明細書において提供するタンパク質または抗体領域は、1種類以上の既知の抗体と抗原結合について競合するもの、該抗体と同じ抗原もしくはエピトープに特異的に結合するもの、および/または該抗体の1つ以上もしくはすべてのCDR(例えば、重鎖CDR1、2および/または3および/または軽鎖CDR1、2および/または3など)(または該CDRと少なくとも、もしくは約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%の同一性を含むCDR)を含むものであり、既知の抗体としては任意の市販の抗体、例えば、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アレムツズマブ、アルツモマブ、アルツモマブペンテタート、アナツモマブ、アナツモマブマフェナトクス、アルシツモマブ、アトリズマブ、バシリキシマブ、ベクツモマブ、エクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、セルトリズマブ、クリバツズマブテトラキセタン、ダクリズマブ、デノスマブ、エクリズマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エタラシズマブ、エルツマキソマブ、ファノレソマブ、Fbta05、フォントリズマブ、ゲムツズマブ、ギレンツキシマブ、ゴリムマブ、イブリツモマブ、イゴボマブ、インフリキシマブ、イピリムマブ、ラベツズマブ、メポリズマブ、ムロモナブ、ムロモナブ-CD3、ナタリズマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、オレゴボマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、サツモマブ、スレソマブ、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、Trbs07、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブおよび/またはブロダルマブ;および/またはアンルキンズマブ、バピネウズマブ、ダロツズマブ、デムシズマブ、ガニツマブ、イノツズマブ、マブリリムマブ、モキセツモマブパスドトクス、リロツムマブ、シファリムマブ、タネズマブ、トラロキヌマブ、トレメリムマブ、ウレルマブ、ハイブリドーマ10B5によって産生される抗体(Edelson & Unanue,Curr Opin Immunol,2000 Aug;12(4):425-31参照)、B6H12.2(abcam)または他の抗CD47抗体(Chao et al.,Cell,142,699-713,September 3,2010参照)が挙げられる。
【0171】
諸実施形態では、該タンパク質または抗体領域は:CA-125、糖タンパク質(GP)IIb/IIIa受容体、TNF-α、CD52、TAG-72、癌胎児性抗原(CEA)、インターロイキン-6受容体(IL-6R)、IL-2、インターロイキン-2 受容体a-鎖(CD25)、CD22、B細胞活性化因子、インターロイキン-5受容体(CD125)、VEGF、VEGF-A、CD30、IL-1β、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD3、EpCAM、EGF受容体(EGFR)、MUC1、ヒトインターロイキン-2受容体、Tac、RANKリガンド、補体タンパク質、例えば、C5、EpCAM、CD11a、例えば、ヒトCD11a、インテグリン、例えば、α-vβ-3インテグリン、ビトロネクチン受容体αvβ3インテグリン、HER2、neu、CD3、CD15、CD20(小ループおよび/または大ループ)、インターフェロンγ、CD33、CA-IX、TNFα、CTLA-4、癌胎児性抗原、IL-5、CD3ε、CAM、α-4-インテグリン、IgE、例えば、IgE Fc領域、RSV抗原、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のFタンパク質、TAG-72、NCA-90(顆粒球細胞抗原)、IL-6、GD2、GD3、IL-12、IL-23、IL-17、CTAA16.88、IL13、インターロイキン-1β、β-アミロイド、IGF-1受容体(IGF-1R)、デルタ様リガンド4(DLL4)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体のαサブユニット、肝細胞増殖因子、IFN-α、神経成長因子、IL-13、CD326、プログラム細胞死1リガンド 1(PD-L1、別名CD274、B7-H1)、CD47およびCD137からなる群より選択される抗原に特異的に結合する。
【0172】
諸実施形態では、該タンパク質または抗体領域が抗CD19タンパク質、抗CD20タンパク質、抗CD22タンパク質、抗CD30タンパク質、抗CD33タンパク質、抗CD44v6/7/8タンパク質、抗CD123タンパク質、抗CEAタンパク質、抗EGP-2タンパク質、抗EGP-40タンパク質、抗erb-B2タンパク質、抗erb-B2,3,4タンパク質、抗FBPタンパク質、抗胎児型アセチルコリン受容体タンパク質、抗GD2タンパク質、抗GD3タンパク質、抗Her2/neuタンパク質、抗IL-13R-a2タンパク質、抗KDRタンパク質、抗k-軽鎖タンパク質、抗LeYタンパク質、抗L1細胞接着分子タンパク質、抗MAGE-A1タンパク質、抗メソテリンタンパク質、抗マウスCMV感染細胞タンパク質、抗MUC2タンパク質、抗NKGD2タンパク質、抗腫瘍胎児抗原タンパク質、抗PCSAタンパク質、抗PSMAタンパク質、抗TAA(mAb IfEによって標的化)タンパク質、抗EGFRタンパク質、抗TAG-72タンパク質または抗VEGF-72タンパク質である。
【0173】
諸実施形態では、該タンパク質または抗体領域が、P8、V9もしくはI9、I10もしくはL10、Q38、R39、T40、N41 G42、S43、P44、R45、D82、I83、A84、D85、Y86、Y87、G99、A100、G101、T102、K103、L104、E105、R142、S162、V163、T164、E165、Q166、D167、S168および/またはY173(カバット方式の番号付けに従う)を含む軽鎖配列を有し、そして/またはQ6、P9、R38、Q39、S40、P41、G42、K43、G44、L45、S84、D86、T87、A88、I89、Y90、Y91、W103、G104、Q105、G106、T107、L108、V111、T110、Y147、E150、P151、V152、T173、F174、P175、A176、V177、Y185、S186および/またはL187(カバット方式の番号付けに従う)を有する重鎖を有するものである。
【0174】
また、本明細書において提供するペプチジル部分を含む1種類以上の化合物に結合させた抗体領域またはタンパク質を含む複合体を提供する。該抗体領域またはタンパク質は、本明細書に記載の抗体(その断片を含む)のいずれかであり得る。本明細書において提供するペプチジル部分を含む1種類以上の化合物としては、本明細書に記載の任意の1種類以上の化合物、例えば、一価および多価の化合物ならびに標識化合物を含むこのセクションに記載のものが挙げられ得る。
【0175】
別の態様では、諸実施形態を含む本明細書において提供する核酸を含む発現ベクターを提供する。諸実施形態では、該発現ベクターがウイルスベクターである。諸実施形態では、該ウイルスがレンチウイルスまたはオンコ-レトロウイルスである。諸実施形態では、該ウイルスがレンチウイルスまたはオンコ-レトロウイルスである。
【0176】
別の態様では、諸実施形態を含む本明細書において提供する発現ベクターを含む哺乳動物細胞を提供する。諸実施形態では、哺乳動物細胞がナチュラルキラー(Nk)細胞である。諸実施形態では、哺乳動物細胞が人工多能性幹細胞である。諸実施形態では、哺乳動物細胞が造血幹細胞である。諸実施形態では、哺乳動物細胞が第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含むものであり、第1ポリペプチドが重鎖の可変ドメイン、重鎖定常ドメイン、膜貫通ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび共刺激T細胞シグナル伝達ドメインを含むものであり、第2ポリペプチドが軽鎖の可変ドメインおよび軽鎖の定常ドメインを含むものである。
【0177】
別の態様では、諸実施形態を含む本明細書において提供する発現ベクターを含むTリンパ球を提供する。諸実施形態では、該Tリンパ球が第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドを含むものであり、第1ポリペプチドが重鎖の可変ドメイン、重鎖定常ドメイン、膜貫通ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび共刺激T細胞シグナル伝達ドメインを含むものであり、第2ポリペプチドが軽鎖の可変ドメインおよび軽鎖の定常ドメインを含むものである。
【0178】
組換えタンパク質
別の態様では組換えタンパク質を提供する。該組換えタンパク質は、(i)重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域によって形成されかつフレームワーク領域のアミノ酸残基を含むペプチド結合部位を形成している中心空洞を含む抗体領域;ならびに(ii)膜貫通ドメインを含むものである。諸実施形態では、該抗体領域がさらに重鎖定常領域(CH)と軽鎖定常領域(CL)とを含むものである。諸実施形態では、該抗体領域がFcドメインを含むものである。諸実施形態では、該抗体領域がヒト化抗体領域(例えば、ヒト化マウス抗体領域)である。諸実施形態では、該抗体領域はscFv抗体領域を含まない。
【0179】
諸実施形態では、該タンパク質はさらに、本明細書に記載の細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含むものである。諸実施形態では、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインがCD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインである。諸実施形態では、該タンパク質はさらに細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含むものである。諸実施形態では、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインがCD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ICOS細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはOX-40細胞内共刺激シグナル伝達ドメインである。
【0180】
諸実施形態では、該タンパク質はさらにスペーサー領域を含むものである。諸実施形態では、スペーサー領域が該膜貫通ドメインと該抗体領域との間に存在している。
【0181】
諸実施形態では、該タンパク質はさらにリンカードメインを含むものである。諸実施形態では、リンカードメインが該膜貫通ドメインと該細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの間に存在している。諸実施形態では、リンカードメインが該細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと該細胞内共刺激シグナル伝達ドメインとの間に存在している。諸実施形態では、リンカードメインが配列GGCGGまたはGGGを含むものである。諸実施形態では、該抗体領域がセツキシマブメディトープ使用可能ドメイン、トラスズマブメディトープ使用可能ドメイン、ペルツズマブメディトープ使用可能ドメイン、M5Aメディトープ使用可能ドメインまたはリツキシマブメディトープ使用可能ドメインである。諸実施形態では、ペプチジル部分を含む化合物が該ペプチド結合部位に結合されている。諸実施形態では、該化合物が多価メディトープである。本明細書において提供する「多価メディトープ」は、本明細書に記載のペプチジル部分である。従って、多価メディトープは、諸実施形態を含む本明細書において提供するペプチド結合部位に結合し得るものである。諸実施形態では、多価メディトープは、該ペプチド結合部位の内表面を構成するFRに結合するものである。諸実施形態では、多価メディトープが治療性部分または診断性部分に化学的リンカーを介して結合されている。諸実施形態では、多価メディトープが式(I)または(II)の構造を有するものである。該タンパク質および化合物は、諸実施形態を含む本明細書に記載のタンパク質または化合物のいずれかであり得る。
【0182】
別の態様では、組換えタンパク質を提供する。該組換えタンパク質は、抗体重鎖の可変ドメインを含む第1部分および抗体軽鎖の可変ドメインと抗体軽鎖の定常ドメインとを含む第2部分を含むものであり、ここで、第1部分はさらに膜貫通ドメインを含むものであり、該抗体重鎖の可変ドメイン、該抗体軽鎖の可変ドメインおよび該抗体軽鎖の定常ドメインが一緒になって抗体領域を形成している。
【0183】
別の態様では、諸実施形態を含む本明細書において提供する組換えタンパク質を含む哺乳動物細胞を提供し、ここで、該膜貫通ドメインは該哺乳動物細胞の細胞膜に存在している。諸実施形態では、哺乳動物細胞がナチュラルキラー(Nk)細胞である。諸実施形態では、哺乳動物細胞が人工多能性幹細胞である。諸実施形態では、哺乳動物細胞が造血幹細胞である。
【0184】
別の態様では、諸実施形態を含む本明細書において提供する組換えタンパク質を含むTリンパ球を提供し、ここで、該膜貫通ドメインは該Tリンパ球の細胞膜内に存在している。
【0185】
医薬組成物
本発明によって提供される医薬組成物(例えば、本明細書において提供するタンパク質と化合物)としては、活性成分(例えば、諸実施形態または実施例を含む本明細書に記載の組成物)が治療有効量で、即ち、意図する目的が達成されるのに有効な量で含有されている組成物が挙げられる。具体的な用途に有効な実際の量は、とりわけ処置対象の病状に依存する。疾患を処置するための方法において投与される場合、本明細書に記載の組換えタンパク質には、所望の結果、例えば、標的分子の活性のモジュレーションおよび/または疾患症状の低減、解消もしくはその進行の低速化が得られるのに有効な量の活性成分が含有されている。本発明の化合物の治療有効量の決定は、特に、本明細書において詳述した開示内容に鑑みると、充分に当業者の能力の範囲内である。
【0186】
哺乳動物に投与される投薬量および頻度(単回用量または反復用量)は、さまざまな要素、例えば、該哺乳動物が別の疾患に苦しんでいるかどうか、およびその投与経路;レシピエントの体格、年齢、性別、健康状態、体重、ボディマス指数および食生活;処置対象の疾患の症状の性質および程度(例えば、がんの症状およびかかる症状の重症度)、並行処置の種類、処置対象の疾患による合併症または他の健康関連の問題に応じて、変動し得る。他の治療レジメンまたは治療用薬剤を本発明の方法および化合物と一緒に使用してもよい。確立された投薬量(例えば、頻度および期間)の調整および操作は、充分に当業者の能力の範囲内である。
【0187】
本明細書において提供する任意の組成物(例えば、組換えタンパク質、核酸)について、治療有効量は最初に、細胞培養アッセイにより決定され得る。目標濃度は、本明細書に記載の方法または当該技術分野で公知の方法を用いて測定したとき、本明細書に記載の方法が達成され得る活性化合物(1種類または複数種)の濃度である。当該技術分野で周知であるように、ヒトにおける使用のための有効量はまた、動物モデルにより決定してもよい。例えば、ヒトに対する用量は、動物において有効であることがわかっている濃度が達成されるように設定され得る。ヒトにおける投薬量は、上記のように、有効性をモニタリングし、投薬量を増減して調整することにより調整され得る。ヒトにおいて最大限の有効性が得られるように上記の方法および他の方法に基づいて用量を調整することは、充分に当業者の能力の範囲内である。
【0188】
投薬量は、患者の要求および使用される化合物に応じて異なり得る。患者に投与される用量は、本発明の状況においては、患者において経時的に有益な治療応答がもたらされるのに充分なものであるのがよい。また、用量サイズは、何らかの有害な副作用の存在、性質および程度によっても決定される。具体的な状況に対する適正な投薬量の決定は当業者の技能の範囲内である。一般的に、処置は、該化合物の至適用量より少ない低投薬量から始める。そのあと、投薬量を、状況下で至適効果が達成されるまで少しずつ増やす。
【0189】
投薬の量および間隔は、処置対象の具体的な臨床適応症に有効な化合物投与レベルがもたらされるように個々に調整され得る。これにより、個体の疾患状態の重症度に相応した治療レジメンが得られる。
【0190】
本明細書において提供する教示を使用し、実質的な毒性を引き起こさないが具体的な患者が示す臨床症状を処置するのに有効である、有効な予防的または治療的処置レジメンを計画することができる。この計画は、好ましくは化合物の効力、相対バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の存在および重症度などの要素を考慮することにより、活性化合物の注意深い選択を伴うものであるのがよい。
【0191】
「医薬として許容される賦形剤」および「医薬として許容される担体」は、被験体への活性薬剤の投与および被験体によるその吸収を補助し、患者に対して有意な有害な毒性学的効果を引き起こすことなく本発明の組成物に含めることができる物質をいう。医薬として許容される賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、標準的な生理食塩水溶液、乳酸加リンゲル液、標準的なスクロース、標準的なグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味料、フレーバー、塩溶液(例えば、リンゲル液)、アルコール、油類、ゼラチン、糖質、例えば、ラクトース、アミロースまたはデンプン、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチル(methy)セルロース、ポリビニルピロリジンおよび着色料などが挙げられる。かかる調製物を、滅菌し、所望により、本発明の化合物と有害に反応しない助剤、例えば、滑沢剤、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、バッファー、着色物質および/または芳香性物質などと混合してもよい。当業者には、他の医薬用賦形剤も本発明において有用であることが認識されよう。
【0192】
用語「医薬として許容される塩」は、当該技術分野で周知のさまざまな有機および無機の対イオンにより誘導される塩をいい、一例にすぎないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど;および分子が塩基性官能部を含むものである場合は有機酸または無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などが挙げられる。
【0193】
用語「調製」は、担体として封入材料を用いてカプセル剤を得る、活性化合物の製剤化を包含していることを意図し、ここでは、活性成分が他の担体とともにまたは他の担体を含まずに、担体に囲まれていて、それによりこの担体と会合している。同様に、カシェ剤およびロゼンジ剤も包含される。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤およびロゼンジ剤は、経口投与に適した固形投薬形態として使用され得る。
【0194】
医薬調製物は場合により単位投薬形態である。かかる形態では、調製物が、適切な量の活性成分を含有している単位用量に細分されている。単位投薬形態はパッケージングされた調製物、別個の量の調製物を含有しているパッケージであってもよく、例えば、個包装の錠剤、カプセル剤およびバイアルまたはアンプル内の粉末剤であり得る。また、単位投薬形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤またはロゼンジ剤自体であってもよく、これらのいずれかが適切な数でパッケージングされた形態であってもよい。単位投薬形態は凍結された分散剤であってもよい。
【0195】
処置方法
別の態様では、がんの処置方法を提供する。該方法は、その処置を必要とする被験体に、有効量の諸実施形態を含む本明細書において提供する哺乳動物細胞を投与することを含むものであり、ここで、該抗体領域は抗がん抗体領域である。
【0196】
別の態様では、がんの処置方法を提供する。該方法は、その処置を必要とする被験体に、諸実施形態を含む本明細書において提供するTリンパ球を有効量で投与することを含むものであり、ここで、該抗体領域は抗がん抗体領域である。諸実施形態では、該Tリンパ球が自己Tリンパ球である。諸実施形態では、該Tリンパ球が異種Tリンパ球である。諸実施形態では、がんが固形腫瘍のがんまたは造血器悪性腫瘍である。諸実施形態では、がんが卵巣がん、腎細胞癌、B細胞性悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、神経芽細胞腫、黒色腫、髄芽細胞腫、肺がん、骨肉腫、膠芽腫または神経膠腫である。諸実施形態では、白血病が急性リンパ性白血病である。諸実施形態では、白血病が慢性リンパ性白血病である。諸実施形態では、白血病が急性骨髄性白血病である。諸実施形態では、白血病が慢性骨髄性白血病である。
【0197】
別の態様では、Tリンパ球のリプログラミング方法を提供する。該方法は、Tリンパ球を、諸実施形態を含む本明細書において提供する発現ベクターと接触させることを含むものである。
【0198】
別の態様では、がんの検出方法を提供する。該方法は、(i)がん患者に、諸実施形態を含む本明細書において提供する組換えタンパク質を含む有効量のTリンパ球と該ペプチド結合部位に結合し得るペプチジル部分を含む化合物とを投与することを含むものであり、ここで、該化合物はさらに、検出可能な標識を含むものであり、該抗体領域は抗がん抗体領域である。該方法は、(ii)該化合物が該ペプチド結合部位に結合し、それにより組換えタンパク質-化合物複合体を形成することを可能にすることを含むものである。ならびに、(iii)該がん患者において該組換えタンパク質-化合物複合体を検出し、これにより、該がんを検出する。
【0199】
本明細書で用いる場合、「処置」または「処置する」または「緩和する」または「改善する(ameliorating)」は、本明細書において互換的に用いている。これらの用語は、限定されないが、治療有益性および/または予防有益性を含む、有益な結果または所望の結果を得るためのアプローチを示すものである。治療有益性により、処置対象の原障害の根絶または改善を意図する。また、治療有益性は、原障害に伴う生理学的症状のうち1つ以上の根絶または改善を伴うものであり、その結果、患者はまだ原障害に罹患しているかもしれないが、該患者において改善が観察されるように達成されるものである。予防有益性のためには、該組成物は、特定の疾患を発症するリスクのある患者、または疾患の診断がなされていない場合であってもこの疾患の生理学的症状のうち1つ以上が報告されている患者に、投与され得る。処置としては、疾患を予防すること、即ち、疾患の誘導前での防御的組成物の投与によって疾患の臨床症状が現れないようにすること;疾患を抑制すること、即ち、疾患の誘導事象の後だが臨床発現もしくは再発現の前での防御的組成物の投与によって疾患の臨床症状が現れないようにすること;疾患を抑止すること、即ち、最初の発現後での防御的組成物の投与によって臨床症状が現れるのを止めること;疾患の再発を予防および/または疾患を軽減させること、即ち、最初の発現後での防御的組成物の投与によって臨床症状の消退を引き起こすことが挙げられる。例えば、本明細書における一部の特定の方法は、がん(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頸がん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌)、精巣がん、白血病、リンパ腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵がん、黒色腫、乳がん、神経芽細胞腫)を処置するものである。例えば、本明細書における一部の特定の方法は、がんを、がんの発生、増殖、転移もしくは進行を減少もしくは低減もしくは抑制することにより処置するもの;またはがんを、がんの症状を低減させることにより処置するものである。がん(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頸がん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌)、精巣がん、白血病、リンパ腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵がん、黒色腫、乳がん、神経芽細胞腫)の症状は、当業者にはわかるであろうもの、または当業者によって判定され得るものである。
【0200】
本明細書で用いる場合、用語「処置」、「処置する(“treat”または“treating”)は、プロテアーゼの発現を特徴とする疾患もしくは病状の1つ以上の症状の影響またはプロテアーゼの発現を特徴とする該疾患もしくは病状の症状を低減させる方法をいう。従って、本開示の方法では、処置は、確立された疾患、病状または該疾患もしくは病状の症状の重症度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の低減を示すものであり得る。例えば、疾患を処置するための方法は、対照と比較したとき被験体において疾患の1つ以上の症状の10%の低減がみられる場合、処置であるとみなす。従って、該低減は、未処置または対照レベルと比較したとき、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%または10%から100%の間の任意のパーセントの低減であり得る。処置は、必ずしも疾患、病状または該疾患もしくは病状の症状の治癒または完全な消滅を示すものではないことは理解されよう。さらに、本明細書で用いる場合、減少、低減または抑止に対する言及は、対照レベルと比較したとき、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の変化を包含しており、かかる用語は完全な解消を包含し得るが、必ずしも包含しているとは限らない。
【0201】
「有効量」は、記載の目的が達成される(例えば、投与効果が得られる、疾患が処置される、酵素活性が低下する、疾患または病状の1つ以上の症状が低減される)のに充分な量である。「有効量」の一例は、疾患の処置、予防またはその症状(1つもしくは複数)の低減に寄与するのに充分な量であり、これは「治療有効量」とも称され得る。症状(1つまたは複数)の「低減」(およびこの語句の文法的等価語句)は、症状(1つもしくは複数)の重症度もしくは頻度の減少または症状(1つもしくは複数)の解消を意味する。薬物の「予防有効量」は、被験体に投与されると意図された予防効果を有する、例えば、傷害、疾患、病態もしくは病状の予防もしくは発症(もしくは再発)の遅延、または傷害、疾患、病態もしくは病状もしくはその症状の発症(もしくは再発)の尤度の低減の効果を有する薬物の量である。1回用量の投与では必ずしも完全な予防効果はもたらされるとは限らず、一連の用量の投与後にのみもたらされる場合がある。従って、予防有効量は、1回以上の投与で投与され得る。「活性低減量」は、本明細書で用いる場合、拮抗薬の量であって、酵素またはタンパク質の活性を該拮抗薬なしと比べて低減させるのに必要とされる量をいう。「機能破壊量」は、本明細書で用いる場合、拮抗薬の量であって、酵素またはタンパク質の機能を該拮抗薬なしと比べて破壊させるのに必要とされる量をいう。手引きは、所与の分類の医薬製剤品についての適切な投薬量に関する文献において知得され得る。例えば、該所与のパラメータについて、有効量は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%または少なくとも100%の増減を示す。また、有効性は「倍」の増減として表示され得る。例えば、治療有効量は、対照と比べて少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍またはそれ以上の効果を有するものであり得る。厳密な量は処置の目的に依存し、当業者により公知の手法を用いて確認され得よう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar,Dosage Calculations(1999);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2003,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams & Wilkins参照)。
【0202】
本明細書で用いる場合、用語「投与する」は、被験体への経口投与、坐剤としての投与、経表面接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、病変内、髄腔内、鼻腔内もしくは皮下投与、または低速放出デバイス、例えばミニ浸透圧ポンプの埋め込みを意味する。投与は、非経口および経粘膜(例えば、口腔内、舌下、口蓋、歯肉、経鼻、経膣、経直腸または経皮)を含む任意の経路によるものである。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内および頭蓋内が挙げられる。他の送達様式としては、限定されないが、リポソーム製剤、静脈内輸注、経皮パッチなどの使用が挙げられる。「共投与する」により、本明細書に記載の組成物が、1種類以上のさらなる治療、例えば、がん治療、例えば、化学療法、ホルモン療法、放射線療法または免疫療法の投与と同時、該投与の直前または該投与の直後に投与されることを意図する。本発明の化合物は患者に単独で投与してもよく、共投与してもよい。共投与は、(1種類より多くの化合物と)単独または併用にて、該化合物の同時投与または逐次投与を包含していることを意図する。従って、該調製物はまた、所望される場合は、他の活性物質と、(例えば、代謝による分解を低減させるために)併用され得る。本発明の組成物を、アプリケータスティック、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、ペースト剤、ゼリー剤、塗薬、粉末剤およびエーロゾル剤として製剤化し、経皮経路、経表面経路によって送達してもよい。
【0203】
本発明の組成物にさらに、徐放性および/または快適性をもたらすための成分を含めてもよい。かかる成分としては、高分子量のアニオン性粘液模倣性(mucomimetic)ポリマー、ゲル形成性多糖類および微粉砕薬物担体物質が挙げられる。このような成分は、米国特許第4,911,920号;同第5,403,841号;同第5,212,162号;および同第4,861,760号にさらに詳細に論考されている。これらの特許の全内容は参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。また、本発明の組成物を体内での低速放出のためのミクロスフェアとして送達してもよい。例えば、ミクロスフェアは、薬物含有ミクロスフェアの皮内注射によって投与され得、これは皮下でゆっくり放出する(Rao,J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623-645,1995参照;生分解性注射用ゲル製剤として(例えば、Gao Pharm.Res.12:857-863,1995参照);または経口投与用ミクロスフェアとして(例えば、Eyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669-674,1997参照)。諸実施形態では、本発明の組成物の製剤は、細胞膜と融合するか、またはエンドサイトーシスを受けるリポソームの使用によって、即ち、リポソームに結合させた受容体リガンド(細胞の表面膜タンパク質受容体に結合し、エンドサイトーシスをもたらす)を使用することにより送達され得る。リポソームを使用することにより、特に、リポソーム表面が、標的細胞に特異的な受容体リガンドを担持している場合、または別の様式で優先的に特定の器官に指向される場合、本発明の組成物の送達をインビボで標的細胞内に集中させることができる(例えば、Al-Muhammed,J.Microencapsul.13:293-306,1996;Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698-708,1995;Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46:1576-1587,1989を参照のこと)。また、本発明の組成物をナノ粒子として送達してもよい。
【0204】
本明細書において提供する教示を使用し、実質的な毒性を引き起こさないが具体的な患者が示す臨床症状を処置するのに有効である有効な予防的または治療的処置レジメンを計画することができる。この計画は、化合物の効力、相対バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の存在および重症度、選択された薬剤の好ましい投与様式および毒性プロフィールなどの要素を考慮することにより、活性化合物の注意深い選択を伴うものであるのがよい。
【0205】
「抗がん剤」は、この単純な通常の意味に従って用いており、抗新生物特性または細胞の成長もしくは増殖を抑止する能力を有する組成物(例えば、化合物、薬物、拮抗薬、阻害薬、調節薬)をいう。諸実施形態では、抗がん剤が化学療法薬である。諸実施形態では、抗がん剤が、がんの処置方法において有用性を有する本明細書において特定した薬剤である。諸実施形態では、抗がん剤が、FDAまたは米国以外の国の同様の規制機関によってがんの処置について承認された薬剤である。
【0206】
本明細書に記載の組成物同士を併用し、がんの処置に有用であることがわかっている他の活性薬剤、例えば抗がん剤とともに使用してもよい。
【0207】
抗がん剤の例としては、限定されないが、MEK(例えば、MEK1、MEK2もしくはMEK1およびMEK2)阻害薬(例えば、XL518、CI-1040、PD035901、セルメチニブ/AZD6244、GSK1120212/トラメチニブ、GDC-0973、ARRY-162、ARRY-300、AZD8330、PD0325901、U0126、PD98059、TAK-733、PD318088、AS703026、BAY 869766)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレア、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン(mechloroethamine)、シクロホスファミド、クロラムブシル、メイファラン(meiphalan))、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン(lomusitne)、セムスチン、ストレプトゾシン)、トリアゼン(ダカルバジン))、代謝拮抗薬(例えば、5-アザチオプリン、ロイコボリン、カペシタビン、フルダラビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、葉酸アナログ(例えば、メトトレキサート)もしくはピリミジンアナログ(例えば、フルオロウラシル、フロクスウリジン(floxouridine)、シタラビン)、プリンアナログ(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)など)、植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル、ドセタキセルなど)、トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド(VP16)、エトポシドリン酸塩、テニポシドなど)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトザントロン、プリカマイシンなど)、白金系化合物(例えば、シスプラチン、オキサロプラチン、カルボプラチン)、アントラセンジオン(例えば、ミトザントロン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、副腎皮質機能抑制剤(例えば、ミトタン、アミノグルテチミド)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド)、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン)、酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、マイトジェン活性化型プロテインキナーゼシグナル伝達の阻害薬(例えば、U0126、PD98059、PD184352、PD0325901、ARRY-142886、SB239063、SP600125、BAY 43-9006、ウォルトマンニンもしくはLY294002、Syk阻害薬、mTOR阻害薬、抗体(例えば、リツキサン)、ゴシホル(gossyphol)、ジェナセンス(genasense)、ポリフェノールE、クロロフシン(Chlorofusin)、全トランス型レチノイン酸(ATRA)、ブリオスタチン、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、5-アザ-2’-デオキシシチジン、全トランス型レチノイン酸、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、イマチニブ(Gleevec.RTM.)、ゲルダナマイシン、17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)、フラボピリドール、LY294002、ボルテゾミブ、トラスツズマブ、BAY 11-7082、PKC412、PD184352、20-epi-1、25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール(adecypenol);アドゼレシン(adozelesin);アルデスロイキン;ALL-TK拮抗薬;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生阻害薬;拮抗薬D;拮抗薬G;アンタレリクス(antarelix);抗背側化(dorsalizing)形態形成タンパク質-1;抗アンドロゲン薬、前立腺癌;抗エストロゲン薬;抗新生物薬;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシン酸塩;アポトーシス遺伝子調節薬;アポトーシス調節薬;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン(asulacrine);アタメスタン(atamestane);アトリムスチン;アキシナスタチン(axinastatin)1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン(azatoxin);アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール(balanol);バチマスタット;BCR/ABL拮抗薬;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害薬;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテン(bistratene)A;ビゼレシン(bizelesin);ブレフレート(breflate);ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトセシン誘導体;カナリア痘IL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害薬;カルゼレシン(carzelesin);カゼインキナーゼ阻害薬(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレレリクス(cetrorelix);クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト(cicaprost);シス-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェンアナログ;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチンアナログ;コナゲニン(conagenin);クランベスシジン(crambescidin)816;クリスナトール(crisnatol);クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム(cycloplatam);シペマイシン;シタラビンオクホスファート;細胞溶解性因子;シトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニン(dehydrodidemnin)B;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド(dexifosfamide);デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジクオン;ジデムニンB;ジドックス(didox);ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;9-ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル(emitefur);エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチンアナログ;エストロゲン作動薬;エストロゲン拮抗薬;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン(flezelastine);フルアステロン(fluasterone);フルダラビン;フルオロダウノルニシン(daunorunicin)塩酸塩;ホルフェニメクス;ホルメスタン;ホストリエシン(fostriecin);ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害薬;ゲムシタビン;グルタチオン阻害薬;ヘプスルファム(hepsulfam);ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセタミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン(ilmofosin);イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫賦活ペプチド;インスリン様増殖因子-1受容体阻害薬;インターフェロン作動薬;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール、4-;イロプラクト(iroplact);イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリド(kahalalide)F;ラメラリン-N三酢酸塩;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナン硫酸塩;レプトルスタチン(leptolstatin);レトロゾール;白血病抑止因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;リアロゾール;線状ポリアミンアナログ;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド(lissoclinamide)7;ロバプラチン;ロンブリシン(lombricine);ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン(losoxantrone);ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン(lurtotecan);ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン(lysofylline);溶解性(lytic)ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリシン阻害薬;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害薬;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシンアナログ;ミトナフィド;ミトトキシン(mitotoxin)線維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトザントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム(myobacterium)細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害薬;外発性腫瘍抑制因子1系療法;マスタード抗がん剤;マイカペロキシド(mycaperoxide)B;ミコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ(nagrestip);ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン(napavin);ナフテルビン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン(nemorubicin);ネリドロン酸(neridronic acid);中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節薬;ニトロキシド酸化防止剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導薬;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン(pazelliptine);ペグアスパルガーゼ;ペルデシン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール(pentrozole);ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニルアセテート;ホスファターゼ阻害薬;ピシバニル;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノゲンアクチベータ阻害薬;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン複合体;ポルフィマーナトリウム;ポリフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害薬;プロテインA系免疫調節薬;プロテインキナーゼC阻害薬;プロテインキナーゼC阻害薬、ミクロアルガール;プロテインチロシンホスファターゼ阻害薬;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害薬;プルプリン;ピラソロアクリジン;ピリ
ドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン(ethylerie)コンジュゲート;raf拮抗薬;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害薬;ras阻害薬;ras-GAP阻害薬;レテリプチン(retelliptine)脱メチル化型;レニウムRe 186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン(rohitukine);ロムルチド;ロキニメクス(roquinimex);ルビジノン(rubiginone)B1;ルボキシル(ruboxyl);サフィンゴル(safingol);サイントピン(saintopin);SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi 1模倣薬;セムスチン;老化由来(senescence derived)阻害薬1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害薬;シグナル伝達調節薬;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホシン(sparfosic)酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン(spongistatin)1;スクアラミン;幹細胞阻害薬;幹細胞分裂阻害薬;スチピアミド(stipiamide);ストロメリシン阻害薬;スルフィノシン;超活性血管作動性腸管ペプチド拮抗薬;スラジスタ(suradista);スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム(tellurapyrylium);テロメラーゼ阻害薬;テモポルフィン;テモソロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;サリブラスチン(thaliblastine);チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣薬;チマルファシン;サイモポエチン受容体作動薬;サイモトリナン(thymotrinan);甲状腺刺激ホルモン;エチルエチオプルプルリンスズ(tin ethyl etiopurpurin);チラパザミン;チタノセンビクロリド;トプセンチン(topsentin);トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害薬;トレチノイン;トリアセチルルリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害薬;チルホスチン;UBC阻害薬;ウベニメクス;尿生殖洞由来成長抑制因子;ウロキナーゼ受容体拮抗薬;バプレオチド;バリオリン(variolin)B;ベクター系、赤血球遺伝子療法;ベラレソール;ベラミン;ベルジン(verdin);ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン(vinxaltine);ビタキシン;ボロゾール;ザナテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;ジノスタチンスチマラマー、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、シスプラチン、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン(ambomycin);アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ビスナフィド二メシル酸塩;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナール(brequinar)ナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー(carbetimer);カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴル(cedefingol);クロラムブシル;シロレマイシン;クラドリビン;クリスナトールメシル酸塩;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニンメシル酸塩;ジアジクオン;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;ドロモスタノロンプロピオン酸塩;デュアゾマイシン(duazomycin);エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン(elsamitrucin);エンロプラチン;エンプロメート(enpromate);エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンリン酸塩;フルオロウラシル;フルオロシタビン;ホスキドン(fosquidone);ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イイモホシン(iimofosine);インターロイキンII(組換えインターロイキンIIもしくはrlL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-1a;インターフェロンγ-1b;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;マイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;メレンゲストロール酢酸塩;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトグリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスパー(mitosper);ミトタン;ミトザントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾイエ(nocodazoie);ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン(oxisuran);ペグアスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン(piroxantrone)塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポリフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴル;サフィンゴル塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン(simtrazene);スパルホセート(sparfosate)ナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スルホフェヌル(sulofenur);タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;トレストロン酢酸塩;トリシリビンリン酸塩;トリメトレキサート;トリメトレキサートグルクロン酸塩;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;ビングリシネート硫酸塩;ビンロイロシン硫酸塩;ビノレルビン酒石酸塩;ビンロシジン硫酸塩;ビンゾリジン(vinzolidine)硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩、細胞をG2-M期で停止させる、および/または微小管の形成もしくは安定性を調節する薬剤(例えば、タキソール(Taxol)TM(即ち、パクリタキセル)、タキソテール(Taxotere)TM、タキサン骨格を含む化合物、エルブロゾール(即ち、R-55104)、ドラスタチン10(即ち、DLS-10およびNSC-376128)、ミボブリンイセチオン酸塩(即ち、CI-980として)、ビンクリスチン、NSC-639829、ディスコデルモライド(即ち、NVP-XX-A-296として)、ABT-751(Abbott,即ち、E-7010)、アルトリルチン(Altorhyrtins)(例えば、アルトリルチンAおよびアルトリルチンC)、スポンギスタチン(例えば、スポンギスタチン1、スポンギスタチン2、スポンギスタチン3、スポンギスタチン4、スポンギスタチン5、スポンギスタチン6、スポンギスタチン7、スポンギスタチン8およびスポンギスタチン9)、セマドチン塩酸塩(即ち、LU-103793およびNSC-D-669356)、エポチロン(例えば、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC(即ち、デスオキシエポチロンAもしくはdEpoA)、エポチロンD(即ち、KOS-862、dEpoBおよびデスオキシエポチロンB)、エポチロンE、エポチロンF、エポチロンB N-オキシド、エポチロンA N-オキシド、16-アザ-エポチロンB、21-アミノエポチロンB(即ち、BMS-310705)、21-ヒドロキシエポチロンD(即ち、デスオキエポチロンFおよびdEpoF)、26-フルオロエポチロン、アウリスタチンPE(即ち、NSC-654663)、ソブリドチン(即ち、TZT-1027)、LS-4559-P(Pharmacia,即ち、LS-4577)、LS-4578(Pharmacia,即ち、LS-477-P)、LS-4477(Pharmacia)、LS-4559(Pharmacia)、RPR-112378(Aventis)、ビンクリスチン硫酸塩、DZ-3358(Daiichi)、FR-182877(Fujisawa,即ち、WS-9885B)、GS-164(Takeda)、GS-198(Takeda)、KAR-2(Hungarian Academy of Sciences)、BSF-223651(BASF,即ち、ILX-651およびLU-223651)、SAH-49960(Lilly/Novartis)、SDZ-268970(Lilly/Novartis)、AM-97(Armad/Kyowa Hakko)、AM-132(Armad)、AM-138(Armad/Kyowa Hakko)、IDN-5005(Indena)、クリプトフィシン52(即ち、LY-355703)、AC-7739(Ajinomoto,即ち、AVE-8063AおよびCS-39.HCl)、AC-7700(Ajinomoto,即ち、AVE-8062、AVE-8062A、CS-39-L-Ser.HClおよびRPR-258062A)、ビチレブアミド(Vitilevuamide)、ツブリシン(Tubulysin)A、カナデンソル(Canadensol)、センタウレイジン(Centaureidin)(即ち、NSC-106969)、T-138067(Tularik,即ち、T-67、TL-138067およびTI-138067)、COBRA-1(Parker Hughes Institute,即ち、DDE-261およびWHI-261)、H10(Kansas State University)、H16(Kansas State University)、Oncocidin A1(即ち、BTO-956およびDIME)、DDE-313(Parker Hughes Institute)、フィジアノリド(Fijianolide)B、ラウリマリド(Laulimalide)、SPA-2(Parker Hughes Institute)、SPA-1(Parker Hughes Institute,即ち、SPIKET-P)、3-IAABU(Cytoskeleton/Mt.Sinai School of Medicine,即ち、MF-569)、ナルコシン(NSC-5366としても知られている)、ナスカピン(Nascapine)、D-24851(Ast
a Medica)、A-105972(Abbott)、ヘミアステルリン(Hemiasterlin)、3-BAABU(Cytoskeleton/Mt.Sinai School of Medicine,即ち、MF-191)、TMPN(Arizona State University)、バナドセンアセチルアセトネート、T-138026(Tularik)、モンサトロール(Monsatrol)、ルナノシン(lnanocine)(即ち、NSC-698666)、3-IAABE(Cytoskeleton/Mt.Sinai School of Medicine)、A-204197(Abbott)、T-607(Tuiarik,即ち、T-900607)、RPR-115781(Aventis)、エレウテロビン(Eleutherobin)(例えば、デスメチルエレウテロビン、デサエチルエレウテロビン、イソエレウテロビンAおよびZ-エレウテロビン)、カリバエオシン(Caribaeoside)、カリバエオリン(Caribaeolin)、ハリコンドリン(Halichondrin)B、D-64131(Asta Medica)、D-68144(Asta Medica)、ジアゾンアミド(Diazonamide)A、A-293620(Abbott)、NPI-2350(Nereus)、タカロノリド(Taccalonolide)A、TUB-245(Aventis)、A-259754(Abbott)、ジオゾスタチン、(-)-フェニルアヒスチン(Phenylahistin)(即ち、NSCL-96F037)、D-68838(Asta Medica)、D-68836(Asta Medica)、ミオセベリンB、D-43411(Zentaris,即ち、D-81862)、A-289099(Abbott)、A-318315(Abbott)、HTI-286(即ち、SPA-110、トリフルオロ酢酸塩)(Wyeth)、D-82317(Zentaris)、D-82318(Zentaris)、SC-12983(NCI)、レスベラスタチンリン酸ナトリウム、BPR-OY-007(National Health Research Institutes)ならびにSSR-250411(Sanofi))、ステロイド(例えば、デキサメタゾン)、フィナステリド、アロマターゼ阻害薬、ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬(GnRH)、例えば、ゴセレリンもしくはロイプロリド、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、プロゲスチン(例えば、ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル、酢酸メゲストロール、酢酸メドロキシプロゲステロン)、エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール)、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン)、アンドロゲン(例えば、テストステロンプロピオン酸塩、フルオキシメステロン)、抗アンドロゲン薬(例えば、フルタミド)、免疫賦活薬(例えば、Bacillus Calmette-Guerin(BCG)、レバミゾール、インターロイキン-2、α-インターフェロンなど)、モノクローナル抗体(例えば、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗HLA-DRおよび抗VEGFモノクローナル抗体)、免疫毒素(例えば、抗CD33モノクローナル抗体-カリケアミシンコンジュゲート、抗CD22モノクローナル抗体-シュードモナス外毒素コンジュゲートなど)、放射免疫療法(例えば、111In、90Yもしくは131Iなどにコンジュゲートさせた抗CD20モノクローナル抗体)、トリプトリド、ホモハリングトニン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、トポテカン、イトラコナゾール、ビンデシン、セリバスタチン、ビンクリスチン、デオキシアデノシン、セルトラリン、ピタバスタチン、イリノテカン、クロファジミン、5-ノニルオキシトリプタミン、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、EGFR阻害薬、上皮増殖因子受容体(EGFR)標的化療法もしくは治療薬(例えば、ゲフィチニブ(イレッサ(Iressa)TM)、エルロチニブ(タルセバ(Tarceva)TM)、セツキシマブ(エルビツクス(Erbitux)TM)、ラパチニブ(タイケルブ(Tykerb)TM)、パニツムマブ(ベクティビックス(Vectibix)TM)、バンデタニブ(カプレルサ(Caprelsa)TM)、アファチニブ/BIBW2992、CI-1033/カネルチニブ、ネラチニブ/HKI-272、CP-724714、TAK-285、AST-1306、ARRY334543、ARRY-380、AG-1478、ダコミチニブ/PF299804、OSI-420/デスメチルエルロチニブ、AZD8931、AEE788、ペリチニブ/EKB-569、CUDC-101、WZ8040、WZ4002、WZ3146、AG-490、XL647、PD153035、BMS-599626)、ソラフェニブ、イマチニブ、スニチニブ、ダサチニブなどが挙げられる。諸実施形態では、本明細書における組成物は、がんの処置において単独で有効でなくもてよいが活性薬剤の有効性に寄与し得る補助剤と併用して使用され得る。
【0208】
諸実施形態では、共投与は、第1活性薬剤を第2の活性薬剤の0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20もしくは24時間以内に投与することを含むものである。共投与は、2種類の活性薬剤を同時に、ほぼ同時に(例えば、互いに約1、5、10、15、20もしくは30分以内)または任意の順序で逐次投与することを含むものである。諸実施形態では、共投与は、共製剤化、即ち、両方の活性薬剤を含む単一の医薬組成物を調製することにより行なわれ得る。諸実施形態では、活性薬剤は別々に製剤化され得る。諸実施形態では、活性薬剤および/または補助薬剤が互いに連結またはコンジュゲートされ得る。
【実施例】
【0209】
本出願人らは、治療用mAbセツキシマブのFabアームの中心空洞内に、環状ペプチド(本明細書において「メディトープ」とも称する)に対する特有の結合部位を見出した(1)。本出願人らは、この部位がセツキシマブに特有であり、ヒトmAbには存在しないことを実証した。また、本出願人らは、生化学的に、ならびに細胞培養試験および動物異種移植片試験において、この部位の占有は抗原結合に影響しないことを示した。さらに、本出願人らは、この部位をヒトmAb上にグラフト化できること(「メディトープ使用可能化(enabling)」)ことを実証し、これは、このペプチド結合部位が例えば、標的化イメージング剤のビーコンとして、またはmAbに新たな機能性部をテザーリングするための「ヒッチ」として使用され得ることを示す。広範な操作により、本出願人らは、メディトープ-Fab相互作用の親和性が40,000倍を超え、推定半減期が室温で6日間を超えるように改善した。本出願人らはさらに、メディトープをFab結合性タンパク質であるタンパク質Lと融合させると、この親和性が有意に改善されることを実証し、この複合体の半減期は80日間を超えると推定された。最後に、本出願人らは、SPR試験により、蛍光マーカー、DOTA、GFPおよび他のタンパク質ドメインと高親和性メディトープのコンジュゲーション、およびメディトープ-タンパク質L(MPL)融合体とのコンジュゲーションは、MPL-Fabの親和性にもFab-抗原相互作用にも影響しないことを確認した。総合すると、このようなデータは、機能性部を任意の所与のメディトープ使用可能mAb上に「スナップ(snap)」することができることを示す。
【0210】
CAR T細胞療法は、特にB細胞悪性腫瘍において持続性の応答をもたらしており(2から6)、細胞外抗原標的化部分、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達モジュール(CD3ζならびにCD28および/またはCD137(4-1BB)の共刺激ドメインを含む)からなる人工受容体を用いて患者のT細胞のリプログラミングし、T細胞を活性化させて免疫応答を誘起することを伴うものである。CARの抗原標的化ドメインは、一般的に、腫瘍抗原を認識する単鎖のF可変抗体領域(scFv)である。当該技術分野において:1)形質転換細胞上のCARの密度を特性評価すること、2)治療中、任意の時点で投与されたCAR T細胞を追跡し、この分布を治療転帰と相関させること、3)CAR T細胞を速やかに機能化すること、および4)必要であれば、CAR T細胞を選択的に排除することができることが求められている。諸実施形態では、本明細書において提供する構築物により、これらの必要性が満たされ得る。
【0211】
諸実施形態では、本明細書において提供する構築物が、以下の分野に有用である:(i)T細胞上の受容体分布の直接観察によりCAR発現を特性評価するための超解像顕微鏡検査の適用。本出願人らは光活性化性GFP(paGFP)を高親和性メディトープと融合させ、そして、細胞由来受容体に結合させたメディトープ使用可能mAbを「計数」することができそのクラスターサイズを定量することができることを実証した。かかる情報を治療有効性と相関させることができ、クリニックにおいて「品質管理」のために使用することができる。(ii)DOTAコンジュゲート高親和性メディトープを有するメディトープ使用可能CAR T細胞のインサイチュでのイメージング。本出願人らは、高親和性コンジュゲートメディトープは抗原結合に影響しないことを実証した。従って、meCAR T細胞を64Cu-DOTAコンジュゲート高親和性メディトープで事前標識することができ、その遊走を追跡することができる。または、meCAR T細胞を投与し、局在化させて増殖させた後に、イメージングすることができる。提案するこのプレターゲティング型mAb系イメージング法は、操作抗体を用いて高品質のPET画像が得られることが実証されている(9から11)。(iii)meCAR T細胞に速やかに付加され得る、新規な直行する機能性部.具体的には、メディトープは、第2の腫瘍関連リガンド、強力な細胞毒素、サイトカインを含む免疫調節薬および腫瘍活性化型プロドラッグを認識する生物材料にコンジュゲートされ得る。このようなメディトープは、投与前にmeCAR T細胞に直接的に結合してもよく、meCAR T細胞を確立した後に付加してもよい。
【0212】
[実施例1]
免疫療法のためのメディトープ使用可能CAR構築物の作製、特性評価および同定。HER2陽性腫瘍を標的化するメディトープ使用可能FabベースおよびmAb-ベースのCAR(meCAR)構築物のさまざまな組合せを作製し、各々をレンチウイルス内にパッケージングし、T細胞に形質導入してメディトープ使用可能HER2+-CAR(meHER2+-CAR)T細胞を作製する。DOTA-コンジュゲートメディトープありおよびなしでの各meCARの発現レベルを可溶性の細胞外HER2に対するその親和性とともに特性評価する。最後に、各構築物の腫瘍細胞殺傷能を、DOTA-コンジュゲートメディトープの存在下および非存在下にてインビトロで定量する。
【0213】
CARは、がん細胞を認識して破壊させるための免疫系のリプログラミングにおけるツールである。CARは一般的に、抗原認識ドメイン(例えば、scFv)、スペーサー(例えば、IgGのFcドメインまたはCD8のヒンジドメイン)、膜貫通領域ならびに細胞内共刺激および活性化ドメイン(例えば、CD28および/またはCD137とCD3ζ鎖)で構成されている。諸実施形態では、メディトープ使用可能FabまたはmAbで構成された抗原認識ドメインは、CAR自体をさらに再操作することに頼らずにペプチドを介して速やかにかつ特異的に新たな機能性を付加するための特有のペプチド結合部位をもたらす。記載のように、このような機能性としては、イメージング能、さらなる腫瘍関連受容体の標的化能、免疫機能の調節能およびCAR T細胞の選択的殺傷能が挙げられ得る。本明細書において、クリニックにおいてHER2陽性腫瘍に対するものであり、本出願人らがメディトープ使用可能にした抗HER2 mAbである、トラスツズマブのための幾つかの発現プラスミドを提供する(1)。軽鎖と重鎖の発現順を改変し、異なる内部リボソーム進入部位の自己切断性2Aペプチド配列に対する有効性(15)を試験する。可溶性HER2の結合を定量するとともに、各構築物のメディトープもさまざまな結合アッセイおよび超解像顕微鏡検査を用いて定量する。種々のCAR構築物のインビトロ機能性を、インビトロHER2依存性T細胞殺傷、脱顆粒、サイトカイン産生および増殖を評価することにより特性評価する。meCAR T細胞のメディトープ占有の効果を、これらの同じアッセイを用いて特性評価する。トラスツズマブのscFvをベースにした古典的(canonical)HER2特異的CARを作製し、特性評価する。これは、基準点として発現アッセイおよび機能アッセイの両方に使用され得る。
【0214】
乳がん、肉腫および肺がんを含む幾つかの腫瘍は、HER2を異常に発現する。従って、有効な治薬の開発において取り組みがなされており、トラスツズマブはその1つである。しかしながら、HER2+がん患者の70%はこの全身性治療薬に応答せず、実際、この薬剤に対してすぐに耐性を発現し得る(16)。そのため、HER2シグナル伝達経路の阻害に勝り、強力な免疫応答を誘起するためのHER2ならびにHER2+ CAR T細胞に対するワクチンが開発されている。CAR T細胞の効力および有害な副作用の可能性を考えると(17)、HER2+ CAR T細胞をモニタリングし、調節し、可能であれば破壊することが有用である。CAR T細胞をメディトープ結合部位で使用可能にすることにより、このような問題が対処される。
【0215】
メディトープの相互作用および最適化。本明細書では、セツキシマブのFabアーム内の特有のペプチド結合部位であって、ヒト抗体にはみられない、該部位の内表面を構成する特有のアミノ酸残基を含むペプチド結合部位を説明する。この部位は、ヒトmAb、例えばトラスツズマブ、ヒト化抗CEAおよび他のmAb上にグラフト化され得る。ペプチド結合は、メディトープ使用可能抗体がその抗原に結合する能力に影響しない。該結合部位の位置がFabの中心空洞内であるため、このペプチドは「メディトープ」(“medius”および“topo”)と称され得る(
図2A)。メディトープ使用可能抗体「memAb」は、meFabとしてのメディトープ使用可能Fabをいう(1)。
【0216】
複数のメディトープバリアントが作製されており、その親和性測定および結晶学的データが各々について蓄積されている。この試験では、極めて重要な残基を同定し、非天然アミノ酸ならびにD-アミノ酸を導入し、結合親和性を有意に改善するための異なる環化ストラテジーを使用した(
図2B)。さらに、点変異をメディトープ結合境界面のFabに導入し(バージョン2)、結合親和性の100倍の増大を観察した(
図2B)。このような修飾により、メディトープの親和性は、37℃において1.2μMから860pMまで増大する(1000倍の増大)。また、メディトープの末端とタンパク質Lは、諸実施形態において、トラスツズマブmeFabに結合される場合は近接しており(
図2A)、短鎖リンカー(MPL)を介してメディトープをタンパク質Lと融合させることにより、好ましいアビディティが示された。元のトラスツズマブmeFabに対するMPL構築物の親和性は、Kinexa実験による測定時、25℃においてK
D=14pM即ち個々の成分の親和性と比べて87,000倍である(データ示さず)。各修飾が独立して作用すると仮定すると、合成MPLとmemAbの組合せでは、2億5800万倍の親和性の増大である。GFPとMPL構築物との融合はmemAb結合に影響せず、memAbとのGFP-MPL結合は会合もしくは解離の速度論またはHER2結合の親和性に影響しない(Avery et al.(37)に示されたとおり)。
【0217】
Alexa Fluor 647標識MPLをAlexa Fluor 488標識memAbとともにHER2過剰発現SKBR3細胞に共投与するか、または該細胞を該memAbで処理し、充分に洗浄した後に投与するかのいずれかにした。どちらの場合も、標識MPLはmemAbおよび抗原と共局在した(データ示さず)。また、蛍光顕微鏡検査により、嵩高いGFPとMPLとの融合は細胞の結合に影響しないことが示された(データ示さず)。最後に、光活性化性GFPをMPL構築物と融合させ、超解像顕微鏡検査を用いてBT474細胞上のHER2受容体を定量した(データ示さず)。
【0218】
HER2特異的scFv由来CAR T細胞はHER2陽性腫瘍を標的化し、殺傷する。トラスツズマブ抗体ベースのscFvとCD28およびCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインとで構成された第2世代のHER2特異的CARを作製した。このHER2特異的scFv CAR(HER2-28ζ)およびそれに続く2Aリボソームスキップ配列および切断型CD19(CD19t)(形質導入T細胞の特異的検出を可能にする、細胞内シグナル伝達を欠く不活性細胞表面マーカー)をコードしている、自己不活性型(SIN)レンチウイルスベクターカセットを、構築した(
図3A)。本明細書において提供する切断型CD19(CD19t)はまた、「マーカーペプチド」とも称される。用語「マーカーペプチド」または「tCD19」は、全体を通して互換的に用いている場合がある。HER2-28ζCARおよびCD19tポリペプチドを発現させるためのヒト中央記憶T細胞(Tcm)をレンチウイルスによる形質導入によって構築し、エキソビボで、CD3/CD28 Dynabeads(登録商標)刺激およびIL-2とIL-15を補足したX-Vivo培地中での増殖を用いて、cGMP-コンパチブルマニュファクチャリングプラットフォーム(compatible manufacturing platform)に従って増殖させた(
図3B)(18)。
【0219】
ヒト翻訳に関連するマウスおよび非ヒト霊長類モデルを使用すると、CD62L+ Tcmに由来するT細胞は、養子免疫伝達後、血液中に残存し、リンパ節および骨髄内の記憶T細胞ニッシェに遊走し、記憶T細胞の表現型特性を再獲得し、抗原刺激にインビボで応答することが観察された(21,22,24,25)。TcmまたはCD62L+記憶/ナイーブT細胞は、記憶T細胞の固有の長期残存性ならびにcGMP-コンパチブルマニュファクチャリングプラットフォーム(2つのフェーズI臨床試験(BB-IND 14645および15490)のための臨床用製剤品を作製するために使用した)を利用して、メディトープ使用可能HER2-CARを発現するように操作することができる(18)。
【0220】
HER2-28ζTcmは、インビトロで、低(MCF7)および高(BT-474およびSK-BR-3)HER2発現レベルのどちらも示す標的細胞株パネルに対して強力なHER2特異的細胞溶解活性を示す(
図4Aから4D)。さらに、HER2-28ζTcmの頭蓋内注射は、BT-474 HER2+乳房腫瘍細胞株に由来する確立された脳腫瘍の退縮を媒介し、100%のマウスで長期生存をもたらし得る(データ示さず)。
【0221】
合成メディトープ使用可能トラスツズマブの重鎖および軽鎖は、レンチウイルス発現ベクター内にサブクローニングされ得る(
図5)。各鎖は個々に作製しなければならないため、IRESモチーフが軽鎖と重鎖との間に組み込まれるか、またはリボソームスキップ配列、例えば、T2Aまたは2A配列が使用される[15]。さらに、メディトープ使用可能Fabが用いられたモノマー型CARを作出してもよい。従って、モノマー型メディトープ使用可能Fabを二価のメディトープと架橋し、CAR T細胞の活性の調節を可能にしてもよい(
図5)。膜貫通ドメインをモノマー型L-セレクチンで置き換え(26)、単純なポリグリシン-セリンリンカーを使用する。
【0222】
メディトープ使用可能CAR T細胞。一次ヒトT細胞、例えばCD62L+ Tcm細胞を少なくとも3例の健常ドナーの末梢血から単離し、HER2-CARを発現するようにレンチウイルスによる形質導入によって操作し、特異性および機能的活性についてインビトロで評価する。OKT3/CD28 Dynabead(R)とサイトカイン(IL-2およびIL-15)刺激とを用いたメディトープ使用可能HER2+ CAR Tcmの増殖後、各構築物の発現レベルをFACSより、細胞の形質導入およびCAR発現に対する抗Fcのマーカーとして抗CD19を、抗原結合のためにAlexa fluor 488標識細胞外Her2-Fc構築物を、および機能性メディトープ-CARドッキングのためにAlexa fluor 647-コンジュゲートメディトープを用いて、特性評価する。陽性CAR T細胞を、必要であれば、抗CD19磁気細胞選択またはFACSによって富化させる。各構築物、メディトープ使用可能Fabおよびメディトープ使用可能mAbがHER2陽性(低および高HER2発現腫瘍株;
図3A)ならびにHER2陰性乳がん細胞株を標的化して溶解させる能力を、DOTAコンジュゲート高親和性メディトープの存在下および非存在下で標準的なクロム放出アッセイおよび長期共培養アッセイ(24から96時間)を用いて調べる。種々のHER2-CAR T細胞のエフェクター機能を調べるため、腫瘍細胞との共培養後のHER2依存性サイトカイン産生、例えばIFNγおよびTNFαの分泌を、この場合もDOTAコンジュゲート高親和性メディトープの存在下および非存在下で測定する。さらに、活性化および細胞溶解活性のマーカー、即ち、CD69、グランザイム-BおよびCD107aならびに細胞消耗のマーカー、例えばPD-1を含める。さらに、DOTA-コンジュゲートメディトープの存在下および非存在下での種々のメディトープ使用可能HER2-CAR T細胞の抗原依存性増殖能を、CSFEを用いたフローサイトメトリー色素希釈解析により測定する。各場合において、結果をscFv CAR T細胞と比較する。このようなインビトロ機能アッセイを行なうための方法論は本発明者らのグループによって容易に確立される(6,27)。
【0223】
超解像顕微鏡検査および自己相関解析(28)を使用し、各メディトープ使用可能CAR T細胞について受容体分布を調べる。このアプローチにより、クラスター内のタンパク質のサイズ、占有および密度を定量的に測定することが可能になる。本明細書において示すように、超高親和性paGFP-MPL構築物を作製し、超解像顕微鏡検査を用いて15nmの解像で単一の分子を検出した。また、超解像イメージング用に、paGFP-MPLよりも立体的拘束性が少ない、蛍光標識した高親和性15量体メディトープを作製した。これらの試薬を使用し、メディトープ使用可能FabまたはmAbを発現している約12個の個々の細胞を解析し、meCAR T細胞の有効性を受容体分布と相関させる。
【0224】
[実施例2]
動物モデルにおけるメディトープ使用可能CARの有効性およびインビボイメージング。NSGマウスにおいて、腫瘍の増殖阻害に対するメディトープ使用可能CAR T細胞の有効性を評価し、64Cu標識DOTA-コンジュゲートメディトープで前処理したmeHER2+-CAR T細胞をPETを用いてイメージングする。NSGマウスをmeHER2-CAR T細胞で処置し、64Cu標識DOTA-コンジュゲートメディトープを規定の時間点で投与し、meHER2-CAR T細胞によるメディトープの取込みをインサイチュで評価する。
【0225】
プレターゲティング型イメージングにより、腫瘍におけるmAbの低速蓄積および血中からのmAbの低速排出を、比較的短い半減期の有用なPET金属から、2工程法によって分離する。まず、患者に(ストレプトアビジンまたは特有の結合ドメインとの)コンジュゲート型mAbを、次いで、
64Cuを担持しているホーミングリガンドを投与する。このホーミングリガンドは、腫瘍と結合している修飾mAbに速やかに結合するか、速やかに排出される。
64Cuの半減期の方が短いため、シグナルは大きくなる。また、このトレーサーは速やかに排出されるため、バックグラウンドが低減される。このアプローチを用いた前臨床画像は、直接コンジュゲーション法よりも有意に良好な画像となる(10)。患者におけるCAR T細胞の位置、増殖および寿命のイメージングは、この治療法の開発および臨床評価において途方もなく有用である。固形腫瘍、例えば脳腫瘍の処置のためのインビボCAR T細胞マウスモデル(
図6)は、本発明らの研究室で充分に確立されている(27,34)。
【0226】
雌NOD-scid IL2Rγヌル(NSG)マウスおよび非観血的Xenogenイメージングのためのホタルルシフェラーゼ(ffLuc)と蛍光レポーターEGFPとの両方を発現するように操作されたHER2増幅乳がん株BT474を用いて、直伸性(dual orthotropic)転移性デュアル腫瘍異種移植片モデルが、使用される(27)。EGFP-ffLuc+ BT474腫瘍細胞を、原発疾患のモデリングのために乳腺脂肪体に併存的に(PBSとマトリゲルの50μLの混合物中1×106個)、および転移性疾患のモデリングのために頭蓋内(2μLのPBS中1×105個)に移植した。腫瘍が確立されたら(典型的には、7から14日間)、単回用量の5×106個の各HER2-meCAR Tcmまたは非操作Tcm(模擬)またはPBSを静脈内輸注する。i.v.投与されたCAR T細胞は脳に輸送され、腫瘍の退縮を媒介することが示されている(35,36)。腫瘍の増殖/退縮をXenogen(登録商標)IVIS光学的イメージングとカリパスでの測定によって非観血的に定量し、生存率をカプラン・マイヤーによって解析する。この試験では、腫瘍内へのT細胞の浸潤と残存を免疫組織化学検査により、Alexa Fluor標識メディトープとCD3マーカーを用いて評価し、Tcmの残存をフローサイトメトリーにより、Alexa Fluor標識メディトープ、CD45、CD4/CD8およびCD62Lマーカーを用いて腫瘍およびリンパ性組織において定量する。腫瘍およびリンパ性組織における腫瘍(Ki67,TUNEL)の増殖/アポトーシス、CAR T細胞の活性化および細胞溶解機能(CD69、Granzyme B,IFNγ)をフローサイトメトリーにより測定する。meCAR T細胞のインビボ有効性を、先に特性評価されたHER2-28ζscFv CAR T細胞と比較する。この試験により、meCAR T細胞がHER2+腫瘍の退縮を媒介する能力が確立され、meFabまたはmemAbのCAR T細胞間での抗腫瘍活性およびT細胞の残存の潜在的な差が示される。
【0227】
C-末端DOTAを有する高親和性メディトープを直接、合成する。DOTA-メディトープに64Cuを付加し、ゲルクロマトグラフィーによって精製し、meCAR T細胞と混合する。この細胞を、EGFP-ffLuc+ BT474腫瘍担持動物に投与する。MicroPETイメージングを、注射直後およびその後の規定の時間点で実施する。1日目と2日目、動物を屠殺し、メディトープとmeCAR T細胞の生体内分布をmeCAR T細胞の原発部位および転移性疾患部位で調べる。次に、プレターゲティング型イメージング法を適用する。meCAR T細胞を同じ直伸性転移性異種移植片モデルに投与する。64CU-DOTAメディトープをmeCAR T細胞投与後1時間目に投与し、そのあと、規定の時間点でイメージングする(1、2、3および6時間)。meCAR T細胞投与後、1日目、3日目および10日目の同じイメージングスケジュールで行なう。この場合も、動物を屠殺し、生体内分布分布(1つまたは複数)をX線撮影によって調べる。
【0228】
表
表1.膜貫通ドメインの例。
【0229】
【0230】
表2.シグナル伝達ドメインの例。
【0231】
【0232】
参考文献
【0233】
【0234】
非公式な配列表
【0235】
【0236】
諸実施形態
実施形態1.(i)重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、重鎖定常領域(CH)および軽鎖定常領域(CL)によって形成され且つフレームワーク領域のアミノ酸残基を含むペプチド結合部位を形成している中心空洞を含む、抗体領域;ならびに(ii)膜貫通ドメインを含むタンパク質をコードしている、単離された核酸。
【0237】
実施形態2.前記抗体領域が、抗体断片である、実施形態1の単離された核酸。
【0238】
実施形態3.前記抗体領域が、Fcドメインを含む、実施形態1または2の単離された核酸。
【0239】
実施形態4.前記抗体領域が、ヒト化抗体領域である、実施形態1から3のうちの1つの単離された核酸。
【0240】
実施形態5.さらに、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインをコードしている細胞内T細胞シグナル伝達配列を含む、実施形態1から4のうちの1つの単離された核酸。
【0241】
実施形態6.前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインである、実施形態5の単離された核酸。
【0242】
実施形態7.さらに、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインをコードしている細胞内共刺激シグナル伝達配列を含む、実施形態1から6のうちの1つの単離された核酸。
【0243】
実施形態8.前記細胞内共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ICOS細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはOX-40細胞内共刺激シグナル伝達ドメインである、実施形態7の単離された核酸。
【0244】
実施形態9.さらに、スペーサー領域をコードしているスペーサー配列を含む、実施形態1から8のうちの1つの単離された核酸。
【0245】
実施形態10.前記スペーサー領域が、前記膜貫通ドメインと前記抗体領域との間に存在している、実施形態9の単離された核酸。
【0246】
実施形態11.さらに、リンカードメインをコードしているリンカー配列を含む、実施形態1から10のうちの1つの単離された核酸。
【0247】
実施形態12.前記リンカードメインが、前記膜貫通ドメインと前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの間に存在している、実施形態11の単離された核酸。
【0248】
実施形態13.前記リンカードメインが、前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと前記細胞内共刺激シグナル伝達ドメインのと間に存在している、実施形態11の単離された核酸。
【0249】
実施形態14.前記リンカードメインが、配列GGCGGまたはGGGを含む、実施形態11の単離された核酸。
【0250】
実施形態15.(i)重鎖可変ドメインと前記膜貫通ドメインとを含む前記タンパク質の重鎖ドメインをコードしている、重鎖配列;および(ii)軽鎖可変ドメインを含む前記タンパク質の軽鎖ドメインをコードしている、軽鎖配列を含み、ここで、前記重鎖可変ドメインと前記軽鎖可変ドメインが、一緒になって前記抗体領域の少なくとも一部分を形成している、実施形態1から14のうちの1つの単離された核酸。
【0251】
実施形態16.前記重鎖配列と前記軽鎖配列との間に自己切断性ペプチジル配列を含む、実施形態15の単離された核酸。
【0252】
実施形態17.前記自己切断性ペプチジルリンカー配列が、T2A配列または2A配列である、実施形態16の単離された核酸。
【0253】
実施形態18.前記軽鎖配列が、前記重鎖配列の3’側である、実施形態15から17のうちの1つの単離された核酸。
【0254】
実施形態19.前記抗体領域が、セツキシマブメディトープ使用可能ドメイン、トラスツズマブメディトープ使用可能ドメイン、ペルツズマブメディトープ使用可能ドメイン、M5Aメディトープ使用可能ドメインまたはリツキシマブメディトープ使用可能ドメインである、実施形態1から18のうちの1つの単離された核酸。
【0255】
実施形態20.抗体重鎖の可変ドメインを含む第1部分および抗体軽鎖の可変ドメインと抗体軽鎖の定常ドメインとを含む第2部分を含むタンパク質をコードしている単離された核酸であって、第1部分がさらに膜貫通ドメインを含む、単離された核酸。
【0256】
実施形態21.前記第1部分が、さらに、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む、実施形態20の単離された核酸。
【0257】
実施形態22.前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインである、実施形態20の単離された核酸。
【0258】
実施形態23.前記第1部分が、さらに、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含む、実施形態20から22のうちの1つの単離された核酸。
【0259】
実施形態24.前記細胞内共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ICOS細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはOX-40細胞内共刺激シグナル伝達ドメインである、実施形態23の単離された核酸。
【0260】
実施形態25.前記第1部分が、さらに、リンカードメインを含む、実施形態20から24のうちの1つの単離された核酸。
【0261】
実施形態26.前記リンカードメインが、前記膜貫通ドメインと前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの間に存在している、実施形態25の単離された核酸。
【0262】
実施形態27.前記リンカードメインが、前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと前記細胞内共刺激シグナル伝達ドメインとの間に存在している、実施形態25の単離された核酸。
【0263】
実施形態28.前記リンカードメインが、配列GGCGGまたはGGGを含む、実施形態25の単離された核酸。
【0264】
実施形態29.前記第1部分が、さらに、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと細胞内共刺激シグナル伝達ドメインとを含む、実施形態20の単離された核酸。
【0265】
実施形態30.前記第1部分が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって:該重鎖の可変ドメイン、重鎖定常ドメイン、該膜貫通ドメイン、該CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインおよび細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含む、実施形態23の単離された核酸分子。
【0266】
実施形態31.さらに、重鎖の可変ドメインと膜貫通ドメインとの間に配置されたスペーサー領域を含む、実施形態20から30のうちの1つの単離された核酸分子。
【0267】
実施形態32.前記スペーサー領域が、さらに、ヒンジ領域を含む、実施形態31の単離された核酸。
【0268】
実施形態33.抗体重鎖の可変ドメインおよび抗体軽鎖の可変ドメインが、ヒト化型である、実施形態20の単離された核酸。
【0269】
実施形態34.前記第1部分が、重鎖定常ドメインを含む、実施形態20の単離された核酸。
【0270】
実施形態35.前記第1部分と前記第2部分との間に自己切断性ペプチジル配列を含む、実施形態20の単離された核酸。
【0271】
実施形態36.前記自己切断性ペプチジルコード配列が、T2Aコード配列または2Aコード配列である、実施形態35の単離された核酸。
【0272】
実施形態37.前記第2部分をコードしている核酸配列が、前記第1部分をコードしている核酸配列の3’側である、実施形態20のうちの1つの単離された核酸。
【0273】
実施形態38.前記タンパク質が、抗CD19タンパク質、抗CD20タンパク質、抗CD22タンパク質、抗CD30タンパク質、抗CD33タンパク質、抗CD44v6/7/8タンパク質、抗CD123タンパク質、抗CEAタンパク質、抗EGP-2タンパク質、抗EGP-40タンパク質、抗erb-B2タンパク質、抗erb-B2,3,4タンパク質、抗FBPタンパク質、抗胎児型アセチルコリン受容体タンパク質、抗GD2タンパク質、抗GD3タンパク質、抗Her2/neuタンパク質、抗IL-13R-a2タンパク質、抗KDRタンパク質、anti k-軽鎖タンパク質、抗LeYタンパク質、抗L1細胞接着分子タンパク質、抗MAGE-A1タンパク質、抗メソテリンタンパク質、抗マウスCMV感染細胞タンパク質、抗MUC2タンパク質、抗NKGD2タンパク質、抗腫瘍胎児抗原タンパク質、抗PCSAタンパク質、抗PSMAタンパク質、mAb IfEによって標的化される抗TAAタンパク質、抗EGFRタンパク質、抗TAG-72 タンパク質または抗VEGF-72タンパク質である、実施形態1から37のうちの1つの単離された核酸。
【0274】
実施形態39.さらに、自殺遺伝子配列を含む実施形態1から38のうちの1つの単離された核酸。
【0275】
実施形態40.実施形態1から39のうちの1つの核酸を含む、発現ベクター。
【0276】
実施形態41.前記発現ベクターが、ウイルスベクターである、実施形態40の発現ベクター。
【0277】
実施形態42.前記ウイルスが、レンチウイルスまたはオンコ-レトロウイルスである、実施形態41の発現ベクター。
【0278】
実施形態43.実施形態40から42のうちの1つの発現ベクターを含む、Tリンパ球。
【0279】
実施形態44.重鎖の可変ドメイン、重鎖定常ドメイン、膜貫通ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび共刺激T細胞シグナル伝達ドメインを含む第1ポリペプチドと、軽鎖の可変ドメインおよび軽鎖の定常ドメインを含む第2ポリペプチドとを含む、実施形態43のTリンパ球。
【0280】
実施形態45.(i)重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域によって形成され且つフレームワーク領域のアミノ酸残基を含むペプチド結合部位を形成している中心空洞を含む、抗体領域;ならびに(ii)膜貫通ドメインを含む、組換えタンパク質。
【0281】
実施形態46.前記抗体領域が、さらに、重鎖定常領域(CH)と軽鎖定常領域(CL)とを含む、実施形態45の組換えタンパク質。
【0282】
実施形態47.前記抗体領域が、Fcドメインを含む、実施形態45または46の組換えタンパク質。
【0283】
実施形態48.前記抗体領域が、ヒト化抗体領域である、実施形態45から47のうちの1つの組換えタンパク質。
【0284】
実施形態49.前記抗体領域が、scFv抗体領域を含んでいない、実施形態45から48のうちの1つの組換えタンパク質。
【0285】
実施形態50.前記タンパク質が、さらに、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む、実施形態45から49のうちの1つの組換えタンパク質。
【0286】
実施形態51.前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインが、CD3ζ細胞内T細胞シグナル伝達ドメインである、実施形態50の組換えタンパク質。
【0287】
実施形態52.さらに、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含む、実施形態45から51のうちの1つの組換えタンパク質。
【0288】
実施形態53.前記細胞内共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ICOS細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはOX-40細胞内共刺激シグナル伝達ドメインである、実施形態52の組換えタンパク質。
【0289】
実施形態54.さらに、スペーサー領域を含む、実施形態45から53のうちの1つの組換えタンパク質。
【0290】
実施形態55.前記スペーサー領域が、前記膜貫通ドメインと前記抗体領域との間に存在している、実施形態54の組換えタンパク質。
【0291】
実施形態56.さらに、リンカードメインを含む、実施形態45から55のいずれか1つの実施形態の組換えタンパク質。
【0292】
実施形態57.前記リンカードメインが、前記膜貫通ドメインと前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインとの間に存在している、実施形態56の組換えタンパク質。
【0293】
実施形態58.前記リンカードメインが、前記細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと前記細胞内共刺激シグナル伝達ドメインとの間に存在している、実施形態56の組換えタンパク質。
【0294】
実施形態59.前記リンカードメインが、配列GGCGGまたはGGGを含む、実施形態57または58の組換えタンパク質。
【0295】
実施形態60.前記抗体領域が、セツキシマブメディトープ使用可能ドメイン、トラスズマブメディトープ使用可能ドメイン、ペルツズマブメディトープ使用可能ドメイン、M5Aメディトープ使用可能ドメインまたはリツキシマブメディトープ使用可能ドメインである、実施形態45から59のうちの1つの組換えタンパク質。
【0296】
実施形態61.ペプチジル部分を含む化合物が、前記ペプチド結合部位に結合されている、実施形態45から60のうちの1つの組換えタンパク質。
【0297】
実施形態62.前記化合物が、多価メディトープである、実施形態61の組換えタンパク質。
【0298】
実施形態63.抗体重鎖の可変ドメインを含む第1部分および抗体軽鎖の可変ドメインと抗体軽鎖の定常ドメインとを含む第2部分を含む組換えタンパク質であって、第1部分がさらに膜貫通ドメインを含み、該抗体重鎖の可変ドメイン、該抗体軽鎖の可変ドメインおよび該抗体軽鎖の定常ドメインが、一緒になって抗体領域を形成している、組換えタンパク質。
【0299】
実施形態64.前記膜貫通ドメインが、Tリンパ球の細胞膜内に存在している実施形態45から63のうちの1つの組換えタンパク質を含む、Tリンパ球。
【0300】
実施形態65.がんの処置方法であって、がんの処置を必要とする被験体に有効量の実施形態64のT-リンパ球を投与することを含み、前記抗体領域が抗がん抗体領域である、方法。
【0301】
実施形態66.前記T-リンパ球が、自己T-リンパ球である、実施形態65の方法。
【0302】
実施形態67.前記T-リンパ球が、異種T-リンパ球である、実施形態65の方法。
【0303】
実施形態68.前記がんが、固形腫瘍のがんまたは造血器悪性腫瘍である、実施形態65の方法。
【0304】
実施形態69.前記がんが、卵巣がん、腎細胞癌、B細胞性悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、神経芽細胞腫、黒色腫、髄芽細胞腫、肺がん、骨肉腫、膠芽腫または神経膠腫である、実施形態65から68のうちの1つの方法。
【0305】
実施形態70.Tリンパ球を実施形態40から42のうちの1つの発現ベクターと接触させることを含む、Tリンパ球のリプログラミング方法。
【0306】
実施形態71.(i)がん患者に、実施形態45から63のうちの1つの組換えタンパク質を含み且つここで前記抗体領域が抗がん抗体領域である有効量のTリンパ球と、前記ペプチド結合部位に結合し得るペプチジル部分を含み且つさらに検出可能な標識を含む化合物とを投与すること;(ii)前記化合物が、前記ペプチド結合部位に結合し、それにより、組換えタンパク質-化合物複合体を形成することを可能にすること;および(iii)前記がん患者において前記組換えタンパク質-化合物複合体を検出し、それにより、がんを検出することを含む、がんの検出方法。
【0307】
実施形態72.請求項1の単離された核酸を含む、Tリンパ球。
【配列表】