(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】予防的及び治癒的ペルオキソメタレートベースの組成物、特に医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/24 20190101AFI20240708BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240708BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240708BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240708BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240708BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240708BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240708BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61K33/24
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/18
A61P29/00
A61P31/22
(21)【出願番号】P 2018551991
(86)(22)【出願日】2017-03-29
(86)【国際出願番号】 IB2017051797
(87)【国際公開番号】W WO2017168344
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-15
(32)【優先日】2016-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518344885
【氏名又は名称】オクシモ テクノロジーズ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】レミ ビルモット
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク ロレンゾ
(72)【発明者】
【氏名】ドニ オリビエ クレチアン
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】前田 佳与子
【審判官】井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0123642(US,A1)
【文献】金属塩,You-iggy[online],2022年05月20日,[令和4年5月25日検索],インターネット<URL:https://www.you-iggy.com/ja/type-of-substance/metal-salt/>
【文献】遷移金属塩,You-iggy[online],2022年05月20日,[令和4年5月25日検索],インターネット<URL:https://www.you-iggy.com/ja/type-of-substance/transition-metal-salt/>
【文献】オキソ酸塩,You-iggy[online],2022年05月20日,[令和4年5月25日検索],インターネット<URL:https://www.you-iggy.com/ja/type-of-substance/oxoacid-salt/>
【文献】第6族元素のオキソ酸の塩,You-iggy[online],2022年05月20日,[令和4年5月25日検索],インターネット<URL:https://www.you-iggy.com/ja/type-of-substance/salt-of-oxoacid-of-group-6-element/>
【文献】物質の分類,You-iggy[online],2022年05月20日,[令和4年5月25日検索]、インターネット<URL:https://www.you-iggy.com/ja/type-of-substance/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-9/72, A61K 47/00-47/69,A61K 33/00-33/44
A01N 59/00-59/26
A01P 1/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所適用用組成物又は混合物であって:
-1つ以上の遷移金属塩
、遷移金属ペルオキソ塩又は遷移金属ハイドロペルオキソ塩から選択される塩、ここで当該遷移金属は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、金(Au)及びランタノイドから選択される;
-1つ以上のキレート剤;
-1つ以上のペルオキシドラジカルの供給源;
-1つ以上の緩衝剤;
を含有し、当該組成物又は混合物の酸化還元電位が250~550ミリボルトであり、当該組成物
又は混合物が、ウイルス性疾患又は炎症性疾患を治療及び/又は予防するために使用される、組成物又は混合物。
【請求項2】
前記組成物又は混合物の酸化還元電位が300~450ミリボルトである、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項3】
300~450ミリボルトの酸化還元電位を示す、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項4】
300~420ミリボルトの酸化還元電位を示す、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項5】
前記塩が
遷移金属ペルオキソ塩又は遷移金属ハイドロペルオキソ塩の形態であり、前記塩が最高原子価(maximum valency)である、請求項1又は2のいずれかに記載の組成物又は混合物。
【請求項6】
前記金属が最大限に酸化されている、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項7】
前記
塩が
、モリブデン塩、モリブデン酸塩又はハイドロペルオキソモリブデン酸塩から選択される、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項8】
前記
塩が
、ランタノイド塩、ランタン酸塩又はハイドロペルオキソランタン酸塩から選択される、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項9】
前記
塩が、モリブデン塩とランタノイド塩の混合物である、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項10】
前記ランタノイドがランタンである、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項11】
前記
塩が、モリブデン酸塩又はハイドロペルオキソモリブデン酸塩である、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項12】
前記塩として、MoO
4
2-
型又はMoO
4
2-
のハイドロペルオキソ型の塩を、有効成分として含有する、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項13】
2つ以上のキレート剤を含有する、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項14】
前記キレート剤が、3つの末端に3つ以上の配位基を有する分子であり、当該配位基が、少なくとも窒素原子を含む3つ以上の原子の鎖によって隔離されている、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項15】
前記キレート剤が3つ以上のカルボン酸基を有する、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項16】
前記キレート剤が、BAPTA、EGTA及びそれらの任意の組合せの中から選択される、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項17】
ペルオキシドラジカルの供給源の濃度が200~600mMである、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項18】
ペルオキシドラジカルの供給源の濃度が300~500mMである、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項19】
ペルオキシドラジカルの供給源の濃度が340~450mMである、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項20】
pHを4.0~5.2とする緩衝剤を含有する、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項21】
pHを4.4~5.0とする緩衝剤を含有する、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項22】
カルボン酸緩衝剤を含有する、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項23】
酢酸緩衝剤を含有する、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項24】
350~420ミリボルトの酸化還元電位を示す、請求項1に記載の組成物又は混合物。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の混合物又は組成物を調製する方法であって、以下の工程:
(i)酸性pHを有する緩衝剤を含有する緩衝溶液(BS)を調製する工程、
(ii)金属オキシド塩を含有する金属錯体(SC)の溶液を調製する工程、
(iii)過酸化水素を含有する第1の初期溶液(Si1)を調製する工程、
(iv)BS溶液とSi1溶液を混合して第2の初期溶液(Si2)を調製する工程、
(v)SC溶液とSi2溶液を混合してペルオキソ金属化合物を含有する溶液(S1)を調製する工程、
(vi)溶液S1のpHを塩基で調整してS2溶液を調製する工程、ここで溶液S2のpHは、溶液BSのpHよりも塩基性である、
(vii)溶液S2に1つ又は幾つかのキレート剤を添加する工程、
(viii)pHを調整する工程、
(ix)最終溶液の体積を調整して、請求項1~24のいずれか1項に記載の混合物又は組成物を取得する工程、
を含む、方法。
【請求項26】
前記方法が、(viii)pHを調整する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、(ix)最終溶液の体積を調整する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記過酸化水素のSi1溶液中の含有量が200~600mMである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記過酸化水素のSi1溶液中の含有量が300~500mMである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記過酸化水素のSi1溶液中の含有量が330~460mMである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記BS溶液の緩衝剤がカルボン酸/カルボン酸塩緩衝剤であり、当該BS溶液が、20/1~1/1の割合で過酸化水素/カルボン酸塩を含有する、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記BS溶液の緩衝剤がカルボン酸/カルボン酸塩緩衝剤であり、当該BS溶液が、5/1の割合で過酸化水素/カルボン酸塩を含有する、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記工程(iii)~(ix)において酸化還元電位の測定を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記溶液S1のペルオキソ金属化合物がペルオキソモリブデン化合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
1つ以上の遷移金属塩
、遷移金属ペルオキソ塩又は遷移金属ハイドロペルオキソ塩から選択される塩、当該遷移金属が、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、金(Au)、ランタノイド、特にランタンから選択される;1つ以上のキレート剤;及びペルオキシダントラジカルの供給源;
1つ以上の緩衝剤;を含有する組成物であって、当該組成物の酸化還元電位が250~550ミリボルトである、ウイルス性疾患又は炎症性疾患を治療及び/又は予防するために使用される、局所適用用医薬組成物。
【請求項36】
前記組成物が、前記遷移金属ペルオキソ塩又は遷移金属ハイドロペルオキソ塩として、ペルオキソモリブデート又は
ハイドロペルオキソモリブデートを含有する、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記組成物が、前記
塩として、
ランタノイド塩、ペルオキソランタノイド塩、又はハイドロペルオキソランタノイド塩を含有する、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記ランタノイドがランタンである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記ペルオキソモリブデート又は
ハイドロペルオキソモリブデートが、(Mo
2O
6)
4+又は[Mo
4O
12(O
2)
2]
4+を含む、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記
遷移金属塩、遷移金属ペルオキソ塩又は遷移金属ハイドロペルオキソ塩から選択される塩、及びキレート剤が、ペルオキソメタレート-キレート剤の複合体を生成するのに十分な量及び比率で存在する、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記組成物が、
前記キレート剤として、BAPTA、EGTA及びそれらの任意の組合せの中から選択されるキレート剤を含有し、当該組成物は、
前記緩衝剤として、pHを4.0~5.2とする緩衝剤を含有する、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項42】
請求項1~24のいずれか1項に記載の混合物又は組成物を含有する、ウイルス性疾患又は炎症性疾患を治療及び/又は予防するために使用される、局所適用用の医薬組成物。
【請求項43】
前記組成物が、
前記遷移金属ペルオキソ塩又は遷移金属ハイドロペルオキソ塩として、(Mo
2O
6)
4+又は[Mo
4O
12(O
2)
2]
4+を含むペルオキソモリブデート又はハイドロペルオキソモリブデートを含有する、請求項42に記載の局所適用用の医薬組成物。
【請求項44】
前記
遷移金属塩、遷移金属ペルオキソ塩又は遷移金属ハイドロペルオキソ塩から選択される塩、及びキレート剤が、ペルオキソメタレート-キレート剤の複合体を生成するのに十分な量及び比率で存在する、請求項42に記載の局所適用用の医薬組成物。
【請求項45】
前記組成物が、
前記遷移金属塩、遷移金属ペルオキソ塩又は遷移金属ハイドロペルオキソ塩から選択される塩として、モリブデン塩、モリブデン酸塩又はハイドロペルオキソモリブデン酸塩を含有し、
前記キレート剤として、BAPTA、EGTA及びそれらの任意の組合せの中から選択されるキレート剤を含有し、
前記緩衝剤として、pHを4.0~5.2とする緩衝剤を含有する、請求項42に記載の局所適用用の医薬組成物。
【請求項46】
請求項1~24のいずれか1項に規定されている混合物又は組成物を0.001~5mM含有する、請求項42に記載の局所適用用の医薬組成物。
【請求項47】
ウイルス感染の治療方法に用いられる、請求項42に記載の局所適用用の医薬組成物。
【請求項48】
Herpesviridae科のウイルスの感染の治療方法に用いられる、請求項42に記載の局所適用用の医薬組成物。
【請求項49】
HSV-1及び/又はHSV-2の感染の治療方法に用いられる
、請求項35又は42のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項50】
抗炎症治療方法に用いられる
、請求項35又は42のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項51】
予防的又は治癒的治療方法に用いられる
、請求項35又は42のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項52】
ヘルペスの治療のための局所適用用の医薬を製造するための、モリブデン塩
、モリブデン酸塩又はハイドロペルオキソモリブデン酸塩から選択される塩、1つ以上のキレート剤及びペルオキシドラジカルの供給源を含有する組成物の使用であって、当該医薬の酸化還元電位が250~550ミリボルトである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用の活性混合物に関し、当該混合物は、ペルオキソメタレート、例えばペルオキソモリブデン及び/又は例えばペルオキソランタン等を含有する。
【0002】
特に、本発明は、Herpesviridaeの感染、特にHerpes simplex 1(HSV-1又はHHV-1)及びHerpes simplex 2(HSV-2又はHHV-2)の感染の予防及び治癒的治療のための、活性混合物に関する。また、本発明は、そのような活性混合物を含有する医薬組成物、その調製方法、その特に治療の範囲内での使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
感染性の病原体の内、ウイルスによるものは、患者の死に及び得るそれらの種類による様々な重症度に加えて、及び人口及び時間に依存する非常に不公平な罹患率と共に、主要な医療上の問題を有している。この病原体は細胞宿主を必要とし、その代謝及び成分を複製に利用し、その結果として、罹患者に関連する健康な組織の丁重な治療又は予防的治療さえも困難となる。
【0004】
人間が罹患し得るウイルス感染の内、Herpesviridaeの感染は、流行性で、高度に伝染性で、風土性である、このDNAを有するウイルスの科は、8種類のウイルスからなる。それらの中で、HHV-1又はHSV-1及びHHV-2又はHSV-2は、口腔顔面-唇及び膣-肛門ヘルペスを引き起こす。
【0005】
全てのヘルペスウイルスは、潜伏、再発又は溶解活性化等の臨床的タンパク質及びゲノム構造の特徴を共有する。全てのウイルス感染と同様、治療手段は複雑でしばしば限定的である。本発明は、ウイルス感染、特にHerpesviridaeの感染及び特にHSV-1及びHSV-2の感染に対し作用する可能性をもたらす医薬組成物を提供するという技術的課題を解決することを目的とする。
【0006】
HSV-1及びHSV-2の感染は、高度に伝染性で(主に接触による)、風土性である(World Health Organization (WHO), January 2016, "The herpes virus", memorandum No. 400, http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs400/fr/#)。保有宿主は人間であり、動物原性感染症又は媒介生物は無い。口腔顔面-唇ヘルペス、幾つかの種類の生殖器ヘルペス及びヘルペス性爪周囲炎を引き起こすHSV-1感染の有病率は、大陸、診断の方法及び確立に依存して変化する。アフリカでは平均84~99%、アジアでは平均50~100%、欧州では平均65~98%、そして北米では平均57~68%と推定されている。生殖器及び肛門ヘルペスを引き起こすHSV-2の感染の有病率は、性別、社会的及び民族的プロフィール、年齢及び大陸に依存して異なる。例えば(による)、米国での40~49歳の期間における血清陽性率は、女性で32%及び男性で20%と推定されている。
【0007】
罹患率を考慮することにより、HSV-1及びHSV-2感染は、世界的な影響を有する。実際に、完全に効果的な治癒的治療は、抗ウイルス薬物が経口であるか非経口であるか、これがピロリン酸塩の類似体(例えばフォスカネット)、活性化不可能な又はin situで活性化可能なヌクレオチド(例えばフィアシタビン、ビダラビン、アシクロビル及びそのプロドラッグのバラシクロビル)又はヘリカーゼ-プライマーゼ酵素複合体の阻害剤(プリテリビル)であるかに拘らず、撲滅の観点で、存在しない。それらは、症状の重症度及び頻度を減少するのに寄与するが、感染を根絶しない。よりしばしば、これらの分子、特に「シクロビル」ファミリーの低い溶解度(アシクロビルの場合25℃の水に1.3mg/mL)及びそれらの限定的な小腸吸収(アシクロビル経口の場合20%オーダー)により、結果的な用量が患者に投与されなければならない。
【0008】
眼科的局所薬物と異なり、皮膚科用の抗HSV物質(シクロフォビル、イバシタビン、アシクロビル等)は、中度及び定常的ではない臨床的効果を有する。
【0009】
更に、経口又は非経口の従来の治療に対するHerpes simplexのウイルスに対する耐性の獲得された形態は、発生的に記載されている。それらは、多くの場合ウイルスゲノムの突然変異と結び付いている(Bacon T.H. et al, 2003, Clin. Microbiol. Rev., 16(1), 114-128; Biswas S. et al, 2008, Antiviral Res., 80(1), 81-85)。
【0010】
感染性、痛み及びウイルス再活性化の間の患者の再発の非民族的側面の次元に加えて、これらの感染は、ヘルペス性脳炎又は角膜炎等の希少であるが重症及び複雑な病理によって複雑化し得る。母体新生児汚染は、治療しない場合死亡率が60%になり得る。ヘルペス感染及びそれらの発達は、例えば所定の癌又は移植後の場合の患者の免疫抑制(誘導された又は病原性)又は免疫刺激により、他の病理と関連し得る。HSV-2は、HIVを担持する者の最も一般的な感染(60~90%)の部分である。新しくHIVに感染するリスクは、HSV-2感染の存在において3倍になる。両方の感染を担持する者は、HIVを伝播するリスクがより高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、そのような医薬組成物を調製する方法を提供するという技術的課題を解決することである。
【0012】
また、本発明の目的は、局所的に許容される医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0013】
また、本発明の目的は、親水性溶媒に容易に溶解する医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0014】
更に、本発明の目的は、経表皮医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0015】
更に、本発明の目的は、経皮浸透の間に不活性化する医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0016】
更に、本発明の目的は、その生物相が良く区切られ達成された医薬組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0017】
更に、本発明の目的は、その生体利用効率が最小の医薬組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0018】
更に、本発明の目的は、ウイルス、特にHSVに対する抗複製効果を有する医薬組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0019】
更に、本発明の目的は、ウイルス、特にHSVが感染した細胞に高い細胞傷害性を有する医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0020】
更に、本発明の目的は、健康な細胞に殆ど細胞傷害性を有しない医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0021】
更に、本発明の目的は、特にHSVに対し緩和的効果を有する医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0022】
更に、本発明の目的は、感染、特にHSV感染の特に前駆相の間に緩和的効果を有する医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0023】
更に、本発明の目的は、特にHSV感染の特に急性相を短縮することによる緩和的効果を有する医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0024】
更に、本発明の目的は、特にHSVの感染プロセスを阻害又は限定し得る医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【0025】
更に、本発明の目的は、室温及び最高45℃での保管の間良好な安定性を有する医薬活性組成物を提供するという技術的課題を解決することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明者らは、1つ以上のペルオキソメタレートを含有する医薬又は治療活性混合物を提供することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出した。
【0027】
「医薬活性」とは、混合物又は組成物が、治癒的治療の範囲内で有益な活性を有することを意味する。
【0028】
「混合物」は組成物を意味し、それを指定する組成物を特定の調製又は製造方法に限定しない。「混合物」は、意味論的な観点で、「組成物」から「混合物」を峻別することが可能で、例えば、「混合物」は、他の成分を含有する「組成物」に包含される。
【0029】
本発明は、より具体的には、第一の側面において、
-1つ以上の金属塩、ここで当該金属は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、金(Au)、ランタノイド、特にランタンから選択される;
-1つ以上のキレート剤;
-1つ以上のペルオキシドラジカルの供給源;
-1つ以上の緩衝剤;
を含有する、好ましくは治療的に活性な、局所経路を介する、組成物又は混合物に関する。
【0030】
本発明は、有利な場合、
-1つ以上の金属塩、ここで当該金属は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、金(Au)、ランタノイド、特にランタンから選択される;
-1つ以上のキレート剤;
-1つ以上のペルオキシドラジカルの供給源;
-1つ以上の緩衝剤;
を含有する、好ましくは治療的に活性な、局所経路を介する、組成物又は混合物に関し、好ましくは、酸化還元電位が250~550ミリボルト、好ましくは300~450ミリボルト、尚もより好ましくは300~420ミリボルトである。
【0031】
本発明の混合物は、有利な場合、薬物、より具体的にはin situで安定且つ活性の薬物を形成し得る。
【0032】
本発明の混合物は、有利な場合ペルオキソ金属複合体を形成する上記化合物の塩を含む平衡物を含有する。発明者によると、理論に拘らず、本発明の混合物は、安定な非恒常的平衡の格子形の超分子構造を形成でき、これは細胞外レベル及びin situでFenton及びHaber-Weiss様反応の触媒を提供し得る。これらの反応は、それらが本発明の混合物の金属又は鉄ではない他の金属によって起こる場合、「様」と表される。活性物質によって超時間的に生成した反応性物質の部分は、細胞、より有利な場合感染した細胞を穿孔する。
【0033】
他の場合、前記組成物は幾つかの金属塩を含有し、当該金属は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、金(Au)、ランタノイド、特にランタンから選択される。
【0034】
製造方法によっては、前記金属塩は、モリブデン塩又はモリブデンを含有する金属塩である。
【0035】
製造方法によっては、前記金属塩は、ランタノイド塩又はランタノイドを含有する金属塩である。
【0036】
製造方法によっては、前記金属塩は、モリブデン塩及びランタノイド塩の混合物である。
【0037】
本発明は、有利な場合、
-1つ以上の金属塩、ここで当該金属は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、金(Au)、ランタノイド、特にランタンから選択される;
-1つ以上のキレート剤;
-1つ以上のペルオキシドラジカルの供給源;
-1つ以上の緩衝剤;
を含有する、好ましくは治療的に活性な、局所経路を介する、組成物又は混合物に関し、好ましくは、酸化還元電位が250~550ミリボルト、好ましくは300~450ミリボルト、尚もより好ましくは300~420ミリボルトである。
【0038】
好ましくは、前記金属塩は、混合物中でオキシド又はペルオキシドとして存在する。有利な場合、本発明の混合物の金属オキシドは、金属酸、より具体的にはルイス酸である中間体を形成し得る。
【0039】
他の場合、金属塩は、その金属の酸化の状態がFenton-Haber-Weiss及びFenton-Haber-Weiss「様」反応に適合し(本発明の場合、キレート化の前後で、鉄等の他の金属イオンを含む酸化還元反応)、準安定、即ち主に遷移金属であり、特にMo(VI), W(IV)~(VI), V(III)~(V), Au(I)~(III)である。
【0040】
他の場合、金属塩は、ランタノイド化合物はLnO3型のセスキオキシドを形成し得るのが好ましく、その酸化の状態が準安定Fenton-Haber-Weiss及びFenton-Haber-Weiss「様」反応に適合し、特にLa(III), Ce(III) ~(IV), Nd(III)及び(IV), Sm(III)及び(IV), Gd(IV)である。
【0041】
有利な場合、メタレート又はランタネートの金属は、最高の原子価を有する。
【0042】
有利な場合、金属又はランタノイドは、その最大の酸化度まで酸化される。
【0043】
好ましい代替において、前記金属塩はモリブデンを含有する。従って、一つの代替において、前記金属塩はモリブデン塩である。より具体的には、本発明の混合物は、好ましくはモリブデン酸ナトリウムを含有する。本発明において、モリブデン塩の使用が好ましく、モリブデンの原子価はVIである。この塩は、有利な場合、前記組成物の混合物に顕著な安定性を提供し得る。更に、モリブデン、特に塩及び例えばナトリウム塩で反応性原子価(IV)、その適合可能な電気陰性度、その非常に低い細胞傷害性、そのFenton-Haber-Weiss反応(「様」であり得る)の可能性により、特に好ましい。
【0044】
一つの代替において、形成された金属塩は、ペルオキソメタレート、より好ましくはハイドロ-ペルオキソメタレート中間体形態であり得る。
【0045】
有利な場合、モリブデン塩は、好ましくは、ペルオキソ又はハイドロペルオキソ単位を有する。尚も有利な場合、活性物質は、型又はハイドロペルオキソ型であり(Oyerinde Oyeyemi F. et al., Solution structure of molybdic acid from Raman spectroscopy and DFT analysis, Inorganica Chimica Acta 361 (2008) 1000-1007. Doi:10.1016/j.ica.2007.06.025参照)、例えば、本発明の混合物中の、Na4[Mo2O6(キレート)].10H2O型の式の中間複合体である。
【0046】
一つの代替において、前記金属及びその塩は、ランタノイド又はその塩である。
【0047】
一つの代替において、形成される金属塩は、ペルオキソランタネートを含有し、より具体的には、ハイドロ-ペルオキソランタネート中間体の形態で再び見出され得る。例えば、それは、NaLn(キレート).xH2O2.yH2O型(x及びyは、本発明の混合物に用いるランタノイド(Ln)の型に依存する)の式の中間体複合体として再び見出され得る。
【0048】
有利な場合、モリブデン及びランタノイド塩、より具体的にはランタンは、好ましくは、ペルオキソ又はハイドロペルオキソ単位を有する(Suponitskiy, Y.L., Proshina, O.P., Dyunin, A.G. et al. Thermodynamic properties of lanthanum Molybdates, Russ. J. Phys. Chem. (2016) 90:267. Required: 10.1134/S00360244160202031X参照)。
【0049】
有利な場合、モリブデン塩の使用は、本発明の混合物の、特に赤血球及びリンパ球、表皮細胞、線維芽細胞、骨芽細胞に対する、細胞毒性を限定し得る。
【0050】
モリブデンの使用の一つの利点は、それが酵素補因子として天然に存在するところに有る(例えばキサンチンオキシダーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼとフォレドキシン等)。
【0051】
有利な場合、ランタン塩の使用は、本発明の混合物の細胞毒性を限定し得る。
【0052】
好ましい代替において、その活性物質の形態の金属は、反応性物質HO2
・及び任意でHO・及びO2
・の生産における触媒の役割を果たす。
【0053】
一つの代替において、本発明の混合物は、0.1~500μM、好ましくは1~200μM、尚も好ましくは5~150μMの金属塩を含有する。
【0054】
一つの代替において、本発明の混合物は、0.1~100μM、好ましくは1~50μM、更に好ましくは5~30μMのモリブデンの塩を含有する。
【0055】
一つの代替において、本発明の混合物は、0.1~100μM、好ましくは1~50μM、更に好ましくは5~30μMのランタンの塩を含有する。
【0056】
「キレート剤」(又は「キレータント」)は、1つ又は幾つかのイオン、より具体的には組成物中に存在する金属のイオン形態と、安定な配位錯体を形成し得る、化合物を指す。金属は、ペルオキシド化又はハイドロペルオキシド化形態に含まれる任意の形態で存在し得る。この錯体は、「キレート」と称される。
【0057】
キレート剤は、本発明の混合物に適しており、有利な場合、反応性ラジカルHO2
・、一方;主要であるがまたO2
・及びOH・のin situ生産を細胞外で触媒し、細胞外に有り、結合した又は遊離のカルシウム、並びに第一鉄イオン(Fe(II)又はFe2+)及び第二鉄イオン(Fe(III)又はFe3+)を含む金属イオンのキレートを可能とする。これらの剤の放出は、Ca2+及びFe2+/Fe3+細胞外イオンのキレートの親和性が顕著であるため、一層効果的である。これらのキレートは、本発明の医薬活性混合物中に存在する安定な化合物であり、ラジカルHO2
・の優先的な生産に加え、特にカルシウム及び鉄イオンの優先的なin situキレーションによって、本発明の混合物の医薬又は治療活性に関与する。このin situキレーションは、特に一方ではウイルス感染により、例えばHerpesviridaeにより、他方ではラジカル又はペルオキソ化合物の存在による酸化的ストレスにより誘導される、細胞のカルシウム流入の細胞外レベルでの制御も可能とする。
【0058】
有利な場合、キレート剤は、細胞を穿孔せず、細胞外に留まる。
【0059】
好ましい代替において、キレート剤は、製剤中に含有されるペルオキソ及びハイドロ-ペルオキソモリブデート複合体を安定化する。そのようなペルオキソ及びハイドロ-ペルオキソモリブデートは、(Mo2O6)4+及び[Mo4O12(O2)2]4+型であり得る。
【0060】
有利な場合、一つの代替において、キレート剤は、そのナトリウム形態の分子量は1モルあたり205,937gである活性物質イオンMoO4
2-又はペルオキソモリブデートのキレーションによる安定化を可能とする(例えばMoO3-BAPTAH2
2-及び/又はMoO3-EGTAH2
2-の形態)。
【0061】
一つの代替において、本発明の混合物は、2つ以上のキレート剤を含有する。
【0062】
有利な場合、キレート剤は、配位によって、溶液中の酸化又はペルオキシド化メタレートと結合する。
【0063】
一つの代替において、キレート剤は、酸化又はペルオキシド化メタレートと複合体を形成して、二量体複合体[Mo2O6(キレータント)]4+.10H2O及び/又は金属塩がモリブデン塩である場合、ペルオキソテトラモリブデート(VI)型[Mo4O12(O2)2]4+-キレータントを形成する。
【0064】
一つの代替において、キレート剤は、酸化又はペルオキシド化メタレートと複合体を形成して、金属塩がタングステン塩である場合、複合体[W2O6(キレータント)]4+.8H2Oを形成する。
【0065】
一つの代替において、キレート剤は、酸化又はペルオキシド化ランタネートと複合体を形成して、ランタノイド塩がランタン塩である場合、特に複合体[La(O2)-キレータント]2+.6H2Oを形成する。
【0066】
有利な場合、キレート剤は、メタレートの酸化及び/又はペルオキシド化複合体の立体的捕獲(steric capture)に適合する。より具体的には、カルボン酸残基を区切るそのN---N 《ポケット》は、配位及び中間体金属複合体、特に酸化ペルオキシド化形態の捕捉に有利に適合すべきこのポケットの炭素質の鎖の立体的フォールディングである。有利な場合、キレート剤は、メタレートの電荷に及びその外部的原子的軌道構造に適合する。
【0067】
一つの側面において、キレート剤は、有機ポリ酸及びその塩、特にアミノ-カルボンポリ酸から選択される。典型的には、アミノ-カルボンポリ酸は、アミン基の1つ以上の炭素原子を有し、好ましくは、一般に炭素及び任意で酸素原子を介して2つ以上のカルボン酸基に結合した第二級又は第四級アミンである。
【0068】
一つの代替において、キレート剤は、例えば、3つ以上の配位基、好ましくはカルボン酸基を、キレート剤を形成する分子の3つの末端に有しており、当該配位基は、1つ以上の窒素原子を含む3つ以上の原子の鎖によって隔離される。
【0069】
有利な場合、キレート剤は、キレート剤は、5つの配位基、好ましくはカルボン酸基を、キレート剤を形成する分子の5つの末端に有しており、当該配位基は、1つの窒素原子及び好ましくは2つ以上の原子によって隔離された2つの窒素原子を含む、6つ以上、好ましくは9つの原子の鎖によって隔離される。
【0070】
一つの代替において、キレート剤は、キレート剤は、4つの配位基、好ましくはカルボン酸基を、キレート剤を形成する分子の4つの末端に有しており、当該配位基は、8つ以上の原子によって隔離された2つの窒素原子を含む、6つ以上、好ましくは12個の原子の鎖によって隔離される。
【0071】
一つの代替において、前記キレート剤の配位基及び/又は窒素原子を隔離する原子は、炭素、窒素及び酸素原子から選択される。前記キレート剤の配位基及び/又は窒素原子を隔離する原子の幾つかのものは、1つ又は幾つかの同一又は異なる原子環、例えば非芳香、芳香又は複素芳香環、例えばフェニル又はピリジル中に含まれ得る。
【0072】
有利な場合、キレート剤は、BAPTA (1,2-bis(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-テトラ酢酸), EGTA: (エチレングリコール-bis(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-テトラ酢酸)), DTPA (ジエチレントリアミンペンタ酢酸)、及びそれらの任意の混合物から選択される。
【0073】
一つの代替において、キレート剤は、BAPTA、EGTA及びそれらの任意の混合物から選択される。
【0074】
有利な場合、BAPTA及び/又はEGTAは、前駆体の良好な安定性及び良好な合成収率を可能とする。
【0075】
BAPTAの4つのカルボン酸基のpKaは:pK1及びpK2 <4 (BAPTA不溶性), pK3 = 5.47,及びpK4 = 6.36であり;EGTAの場合は: pK1 = 2.00, pK2 = 2.65, pK3 = 8.85,及びpK4 = 9.46である。
【0076】
有利な場合、キレート剤のpKaは、本発明の溶液のpHに適合する。
【0077】
有利な場合、キレート剤のpKaは、本発明の溶液中に中間体として形成される金属酸又は金属過酸のpKaに適合する。
【0078】
有利な場合、キレート剤のpKaは、感染した領域、例えば表皮のpHに適合する。
【0079】
有利な場合、選択されるキレート剤は、僅かに細胞傷害性である。これは、BAPTA及びEGTAの場合に顕著である。
【0080】
前記金属塩及びキレート剤は、ペルオキソメタレート-キレート剤の複合体を生成するのに十分な量及び比率で存在する。
【0081】
好ましくは、存在する1つ以上のキレート剤は、本発明の混合物において用いる金属よりもカルシウムに対しより高い親和性を有する。この利点により、本発明の混合物のキレート複合体が、in vivoでキレート剤-カルシウム複合体と置換されることを可能とする。好ましくは、キレートの濃度は、細胞外Ca2+(ヒト血漿中に2-3mM)の濃度に適合し、即ち、本発明の混合物中に存在するキレート剤は、治療の観点から、存在する量の細胞外カルシウムと効率的に複合体を形成するのに十分な量である。
【0082】
有利な場合、存在するキレートは、本発明の混合物において用いる金属よりも、鉄(Fe2+/Fe3+)に対して高い親和性を有する。この利点により、本発明の混合物のキレート複合体が、in vivoでキレート剤-Fe2+/Fe3+複合体と置換されることを可能とする。
【0083】
一つの代替において、本発明の混合物は、0.0001~1mMのキレート剤を含有する。
【0084】
一つの代替において、本発明の混合物は、0.1~100 μM、好ましくは1~50 μM、尚も好ましくは5~20 μMのBAPTAを含有する。一つの変法において、本発明の混合物は、1~80μM、好ましくは20~80 μMのBAPTAを含有する。
【0085】
他の代替において、本発明の混合物は、0.1~1 mM、好ましくは50~800 μM、そして尚も好ましくは200~700 μMのEGTAを含有する。一つの変法において、本発明の混合物は、200~2,000 μM、好ましくは600~1,400 μMのEGTAを含有する。
【0086】
他の代替において、本発明の混合物は、それぞれ0.0001~1 mM、好ましくは5~20 μM及び200~700 μMの濃度でBAPTA及びEGTAを含有する。
【0087】
一つの代替において、モリブデン塩及びキレート剤は、10/1~1/100(比率:Mo塩/キレート剤、モル濃度で表す)の比率で存在する。
【0088】
一つの代替において、ランタン塩及びキレート剤は、10/1~1/100(比率:La塩/キレート剤、モル濃度で表す)の比率で存在する。
【0089】
一つの代替において、モリブデン塩及びBAPTAは、3/1~1/10(モル濃度で表す)の比率で存在する。
【0090】
一つの代替において、モリブデン塩及びEGTAは、1/10~1/70(モル濃度で表す)の比率で存在する。
【0091】
一つの代替において、ランタン塩及びBAPTAは、3/1~1/10(モル濃度で表す)の比率で存在する。
【0092】
一つの代替において、ランタン塩及びEGTAは、1/10~1/70(モル濃度で表す)の比率で存在する。
【0093】
一つの代替において、ラジカルの供給源は主にH2O2である。
【0094】
一つの代替において、ラジカルの1つ又は幾つかの第二の供給源が、添加され、又は僅かにin situで合成され得る。
【0095】
一つの代替において、は、110容又は30%又は8.82MでH2O2を含有するH2O2水溶液である。
【0096】
有利な場合、供給源は:ピリジン-カルボン酸、例えばピコリン酸;ホスホン酸及びアミノホスホン酸;置換アミド又はアミン;アルキルスルホン酸;及びそれらの混合物;から選択される安定化剤を含有しない。
【0097】
一つの代替において、ペルオキシド化ラジカルの主要な供給源は、過酸化水素である。従って、この代替において、過酸化水素は、200~600 mM、好ましくは300~500 mM、更に好ましくは340~450 mMの濃度範囲で存在する。
【0098】
一つの代替において、本発明の混合物は、30 mM~4.4 M、好ましくは150 mM~3 M、好ましくは235 mM~1.8 M、そして尚も好ましくは260 mM~440 mMの範囲の過酸化水素を含有する。一つの代替において、本発明の混合物は、過酸の即時添加を含まない。
【0099】
有利な場合、過酸化水素(H2O2)の量(又は濃度は、滴定によってアッセイされる。典型的には、過マンガン酸カリウム溶液によるアッセイを使用し得る。
【0100】
過酸化水素濃度は、UV分光法によってもアッセイされ得る。
【0101】
有利な場合、緩衝剤は、本発明の混合物のpHを特定の値に調整するのに使用され得る。
【0102】
有利な場合、緩衝剤は、本発明の溶液のin situでの使用の間にpHを特定の値に調整するのに使用され得る。
【0103】
緩衝剤の中で、カルボン酸が好ましい。
【0104】
好ましくは、緩衝剤は:水酸化カルボン酸(例えばリンゴ酸)又はポリカルボン酸(例えばクエン酸及びイソクエン酸、マロン酸);分子量100g/molのカルボン酸及び特に長鎖カルボン酸(C6超)(それらが細胞膜の不安定化を誘導し得るため);及び不飽和脂肪族カルボン酸(例えばソルビン酸)(それらの細胞傷害性であるアルケン型(alkenoic type)のペルオキシド化の可能性のため);を含有しない。
【0105】
一つの代替において、本発明は、合成の過程で、好ましくは少量の、in situで生成する幾つかの酸(例えば過酢酸)の存在を含む。それらは、本発明の製造及び本発明の治療的使用においてラジカルの補助的供給源として用いられる。
【0106】
一つの代替において、生理的pH(皮膚及び粘膜)、即ち例えばpH4.4~5.0のpKaを有する、及びその形態がイオン化される酸化及び/又はペルオキシド化金属酸のpKa(例えばMoO4H2の場合pk1 = 3.61及びpKa2 = 3.89)に適合する緩衝剤が好ましい。
【0107】
好ましくは、緩衝剤は、本発明の混合物中に、1~500 mM、好ましくは10~200 mM、尚も好ましくは50~100 mMの濃度で存在する。
【0108】
過酸化水素及び緩衝剤のモル濃度の比率は、2~9、好ましくは3~8である。
【0109】
有利な場合、前記混合物は、i)皮膚及び粘膜と本発明との接触、ii) H2O2の存在下での活性物質MoO4
2-の安定性、iii) Fenton-Haber-Weiss「様」又はそうではない触媒反応、及びiv)主にHOO・型のラジカル種のin situ生成、に適合する、pH4.4~5.0となるように緩衝される。
【0110】
一つの代替において、混合物は、pH4.0~5.2、好ましくは4.4~5.0となるように、例えばカルボン酸、好ましくは酢酸を含有する。
【0111】
有利な場合、混合物の酸化還元電位は、350~450 mV、好ましくは350~420 mVである。
【0112】
本発明の混合物の酸化還元効率は、鉄(III)又はイオンによるケルセチンのin vitro酸化によっても推定され得る。特に、これは、「ケルセチン法」と称されるアッセイ法に使用出来る(例えばEl Hajji H. et al (2006) "Interactions of quercetin with iron and copper ions: Complexation and autoxidation", Free Radic. Res., 40(3), 303-320 and Balcerzak M. et al (2008) "Selective determination of Fe(III) in Fe(II) samples by UV-spectrophotometry with the aid of quercetin and morin", Acta Pharm., 58, 327-334)。
【0113】
本発明は、本発明で規定される混合物を調製する方法にも関する。より具体的には、本発明は、以下の工程:
(i)酸性pHを有する緩衝剤を含有する緩衝溶液(BS)を調製する工程、
(ii)金属オキシド塩を含有する金属錯体(SC)の溶液を調製する工程、
(iii)過酸化水素を含有する第1の初期溶液(Si1)を調製する工程、
(iv)BS溶液とSi1溶液を混合して第2の初期溶液(Si2)を調製する工程、
(v)CS溶液とSi2溶液を混合してペルオキソ金属化合物を含有する溶液(S1)を調製する工程、
(vi)溶液S1のpHを塩基で調整してS2溶液を調製する工程、ここで溶液S2のpHは、溶液BSのpHよりも塩基性である、
(vii)溶液S2に1つ又は幾つかのキレート剤を添加する工程、
(viii)任意でpHを調整する工程、
(ix)任意で最終溶液の体積を調整して、本発明に規定する医薬活性混合物を取得する工程、
を含む。
【0114】
変更に応じて、2つ以上の金属オキシド塩が、異なる金属オキシドと共に使用される場合、金属複合体の溶液(SC)の調製は、各金属オキシド塩の溶液を別個に調製する工程、及びそれらの溶液を、同時に又は連続的にSi2と混合して、S1溶液を調製する工程からなり得る。
【0115】
好ましくは、本発明の混合物の調製は、触媒的合成方法によって達成される。本発明の混合物の触媒的合成は、典型的には連続的である。有利な場合、本発明の方法は、工程(iii)→(iv) →(v) →(vi) →(vii) →(viii)→(ix)の連続を含む。
【0116】
有利な場合、前記調製方法は、1つ又は幾つかの調製工程で、好ましくは調製工程の過程で、分光解析(例えばIR、UV及び/又は可視光による)によって確認される。
【0117】
一つの代替において、初期溶液Si1は、本発明の混合物の酸化還元電位よりも高い酸化還元電位を有する。
【0118】
好ましくは、本発明の混合物の化学的平衡が変化するのを避けるため、工程(ix)に続いて、混合物の体積の希釈は行われない。
【0119】
原材料として十分に満足な純度の物質又は化合物を用いるのが有利であることは当然である。
【0120】
一つの代替において、本発明の混合物の組成が産業的規制、特に医薬的治療のための使用に適合していることを確認するため、製造された当該混合物に対し、IR-FT、NMR-H及び/又は質量分析を行うことが可能である。また、好ましくは、IR-FTスペクトロメトリーは、本発明の混合物の前駆成分に対して実施される。
【0121】
一つの代替において、pHは、1つ又は複数又は全ての調製工程で調整され得る。
【0122】
一つの代替において、酸化還元電位は、1つ又は複数又は全ての調製工程で調整され得る。
【0123】
一つの代替において、本発明の混合物は、1つ又は複数又は全ての調製工程で、密度測定及び/又はUV分光測光法によって調整され得る。
【0124】
一つの代替において、本発明の混合物の酸化還元効率は、ケルセチン法(存在する又はin vitroで生成したFe3+によってケルセチンをin vitroで酸化するUV分光測光法)によってアッセイされ得る。
【0125】
有利な場合、過酸化水素は、Si1溶液中に、200~600 mM、好ましくは300~500 mM、そして尚も好ましくは330~460 mMの濃度で存在する。
【0126】
一つの態様において、使用する材料は金属、好ましくはステンレス鋼、任意で不動態化金属である。
【0127】
一つの態様において、前記金属は、例えば過酸化水素溶液と金属を接触させることによって(材料又はその前駆体と接触させる)、本発明の混合物を調製するときに再不動態化され得る。
【0128】
好ましくは、存在する過酸化水素の量を保証し、本発明の混合物の調製において機能させるため、過酸化水素の供給源のアッセイが行われる。このアッセイは、滴定又はUV分光測光法(一般に240nm)で実施され得る。
【0129】
有利な場合、緩衝溶液BSのpHは4.4~5.0、好ましくは4.7~4.8である。
【0130】
有利な場合、BS溶液の緩衝剤はカルボン酸及び/又はカルボン酸塩緩衝剤であり、当該BS溶液は、20/1~1/1、好ましくは約5/1の割合で過酸化水素/カルボン酸塩を含有する。
【0131】
有利な場合、酢酸(AcOH)とその限定的な量の追加された酢酸塩の比率は、過酢酸(AcOOH)生産の最低の生産を許容する。有利な場合、本発明の調製方法において、過酢酸の生産は最小であり、その触媒に対する影響はとても小さい。
【0132】
第一の初期溶液Si1の調製は、カルボン酸、好ましくは酢酸の水溶液の調製、及び過酸化水素の添加を含む。
【0133】
好ましくは、第一の初期溶液Si1のpHは2.5~4.6、好ましくは2.7~4.2である。有利な場合、第一の初期溶液Si1の酸化還元電位は400~550 mV、好ましくは420~500 mVである。
【0134】
有利な場合、前記方法は、工程(iii)~(ix)において、酸化還元電位の測定を含み、好ましくは、工程(iii)~(ix)において、pHの測定を含む。
【0135】
一つの代替において、第二の初期溶液Si2のpHは2.5~3.2、好ましくは約2.9である。一つの代替において、初期溶液Si2の酸化還元電位は、第一の初期溶液Si1の酸化還元電位よりも高い。第二の初期溶液Si2の酸化還元電位は、420~570 mV、好ましくは440~520 mVであり得る。
【0136】
一つの代替において、緩衝溶液BSが、第一の初期溶液Si1に導入される。
【0137】
一つの態様において、第二の初期溶液Si2中の過酸化水素濃度は300~500 mM、好ましくは260~440 mMである。
【0138】
工程(iv)において、pHは、本発明の混合物の触媒的合成反応において許容されるpH限界の下に維持される。緩衝剤は、有利な場合、工程(iv)において使用される。
【0139】
有利な場合、工程(iv)において、過酢酸のin situ生成は最小限である。
【0140】
有利な場合、工程(iv)において、工程(iii)のSi1溶液の酸化還元電位は増大し、例えば工程(iv)において、440~460mVから460~480mVとなる。
【0141】
本発明の混合物の調製の過程で存在する過酸化水素濃度を追跡することにより、ペルオキシド生産は、その導入、即ち過酸化水素を緩衝溶液と接触させる(工程(iv))過程で観察される。有利な場合、過酸化水素の添加は、酸性pHとなる前に緩衝された水溶液中で達成される。従って、第一の初期溶液Si1の調製において、過酸化水素は、酸性pH、例えばpH2.7~4.2の溶液中に添加される。
【0142】
有利な場合、工程(iv)は、H2O2のin situ生成と共に、化学的平衡により生成し得る過酢酸の破壊に向けた、平衡の変化をもたらす。
【0143】
一つの代替において、緩衝剤CSは、溶液S1に導入される。
【0144】
一つの代替において、ペルオキソ金属複合体を含有する溶液S1のpHは2.5~3.5、好ましくは2.8~3.0である。
【0145】
一つの態様において、ペルオキソ金属複合体を含有するS1溶液の酸化還元電位は、400~550 mV、好ましくは440~500mVである。
【0146】
一つの態様において、ペルオキソ金属複合体を含有する溶液S1の過酸化水素濃度は、250~500 mM、好ましくは320~450 mMである。
【0147】
工程(v)において、添加されるモリブデン塩は、モリブデン酸MoO3.H2O及びMoO3.2H2Oの形態である。
【0148】
非発明的条件下、室温で、触媒無しで、強酸(例えば)の添加無しでの、平衡での活性物質MoO4
2の合成は、数日を要し得る。
【0149】
一つの態様において、S2溶液のpHは、好ましくは4.4~5.0、例えば4.5~5.0に緩衝される。有利な場合、緩衝されたpHにおいて、優位を占めるMoO4
2-(酸化Mo(VI)の状態)が不安定な形態で、過酸化水素が安定化される。しばしば過酸化水素は、リン酸緩衝剤によって産業的に安定化される。ホスホモリブデートの不安定な中間体化合物(黄色)が形成され、それは、平衡状態で消滅し、より反応性のH2O2が生成する。
【0150】
一つの代替において、S2溶液の酸化還元電位は、300~450 mV、好ましくは360~410mVである。
【0151】
水溶液中の、本発明の混合物を合成するpHでの、モリブデンMo(VI)オキシドは、異なる分子構造下で存在し得る:MoO4
2-及び[MoO6
2-]、[Mo2O3(O2)4(H2O)2]2-、又は多核フォーム(例えば二核複合体構造オキソ-Mo(VI) (Dement'ev I.A. et al (2007) “Mononuclear, polynuclear, and cluster complexes of molybdenum and their reactions as models of biochemical systems and processes", Russ. J. Gen. Chem., 77(5), 822-843))。
【0152】
有利な場合、調製条件は、使用される金属塩がモリブデン塩である場合、ペルオキソ-及びハイドロ-ペルオキソモリブデートのin situ形成を可能とする。後者は[Mo2O3(O2)4(H2O)2]2-型のものである。一つの代替において、過酸化水素のモル過剰は、Mo(VI)に対し、金属塩の1000倍以上、特に10,000倍以上、尚も好ましくは15,000倍が好ましい。
【0153】
有利な場合、キレート剤合成pHは、メタレートイオン、有利な場合即ちモリブデートの還元に本質が有る「Jones reductor」型の反応の、金属モリブデンに対応する低酸化の状態への変化を限定する。一つの代替において、この変化は、僅かに酸性、典型的にはpH4.4~5.0、例えば4.5~4.7の水性媒体中で限定される。
【0154】
好ましくは、幾つかのキレート剤が存在する場合、特定のキレート剤を含有するキレート剤の溶液が調製される。
【0155】
好ましい代替において、キレート剤の添加は、pKaの増大によって達成される。
【0156】
例えば、一方でBAPTA型のキレート剤、他方でEGTA型のキレート剤を含有する溶液を調製することが可能である。
【0157】
有利な場合、前記キレート剤は、in situで、即ち特に局所適用後、特に解離定数Kdキレート : Fe2+/Fe3+ > Ca2+のFenton-Haber-Weiss反応を与え得る。
【0158】
有利な場合、キレート剤は、細胞外で、主にHOO・、そして僅かにO2
・及びHO・の反応性ラジカル生成の自己維持を可能とする。
【0159】
一つの代替において、S3溶液を取得するために、S2溶液にBAPTAを添加し得る。例えばS3溶液のpHは4.0~5.0、好ましくは4.3~4.8である。例えばS3溶液の酸化還元電位は、S2溶液のものと本質的に同じである。言い換えると、酸化還元電位は、BAPTA型のキレート剤の添加によって変化しない。一つの代替において、S3溶液の酸化還元電位は、250~450 mV、好ましくは300~400mVである。有利な場合、少量のS2溶液中のBAPTAの事前の溶解は、それがS2溶液の残りと接触する前に達成される。
【0160】
好ましくは、BAPTA濃度は、モリブデン塩との相対モル比で、1/1~1/3、好ましくは1/2である。
【0161】
例えばS3溶液の過酸化水素濃度は、250~500 mM、好ましくは320~440 mMである。
【0162】
有利な場合、S4溶液を取得するために、S3溶液にEGTA型の1つ以上の他のキレート剤を添加し得る。例えばS4溶液のpHは4.0~5.0、好ましくは4.3~4.7である。一つの代替において、S4溶液の酸化還元電位は、300~400 mV、好ましくは350~390mVである。
【0163】
好ましくは、EGTAの濃度は、モリブデン塩に対し、モル比で10/1~50/1、好ましくは約25/1である。
【0164】
例えば、S4溶液の過酸化水素濃度は、250~550 mM、好ましくは320~470 mMである。
【0165】
一つの代替において、工程(viii)において、pHは、水酸化ナトリウム型の、好ましくは濃縮された、例えば濃度8~15Mの、塩基溶液によって調整される。有利な場合、工程(viii)におけるpHは、4.4~5.0、好ましくは約4.6に調整され得る。
【0166】
一つの代替において、本発明の混合物のpHは4.50~4.70である。有利な場合、本発明の混合物の酸化還元電位は、320~390mVである。
【0167】
好ましい代替において、前記方法は、工程(vi)において酸化還元電位を低下させる工程を含む。酸化還元電位の低下は、例えば、50~150 mV、好ましくは約90 mVであり得る。
【0168】
好ましくは、酸化還元電位は、工程(vi)の酸化還元電位の減少の後、実質的に定常である。
【0169】
有利な場合、本発明の混合物は、例えば室温又は45℃まで、6ヶ月間、保存の期間中安定である。当該混合物は、暗所で湿気の無いところでの維持が推奨される。
【0170】
pHは、校正され温度補償され、組み合わせられた電極KCl 4M / AgClを有するpHメーターによって測定される。
【0171】
酸化還元電位は、組み合わせられたpHメーター/酸化還元メーターで、校正されたプラチナ/甘汞電極を用いて測定される。典型的には、この測定は、室温、即ち20℃、及び常圧、即ち101325Paで実施される。
【0172】
過酸化水素濃度は、好ましくは、則に由来する等式に従ってUV分光測光法によって上記溶液中で評価される:A240nm = 43.6 x l x [H2O2](センチメートル)[H2O2](モル)(Noble R.W. et al (1970) "The reaction of ferrous horseradish peroxidase with hydrogen peroxide", J. Biol. Chem., 245(9), 2409-2413)。
【0173】
特定の代替において、溶液S1のペルオキソ金属化合物は、ペルオキソモリブデン化合物である。
【0174】
従って、本発明の混合物は、この代替において、ペルオキソ金属化合物を含有する。好ましい代替において、本発明の混合物は、ペルオキソモリブデン複合体を含有する。
【0175】
一つの代替において、前記溶液は、Mo(VI)形態のモリブデン酸ナトリウムを含有する。有利な場合、本発明の溶液のpHで、前記塩は主に触媒形態MoO3-BAPTA3-及び主にMoO3-EGTA3-をとり、いずれも活性物質MoO4
2-の供給源である。
【0176】
特定の態様において、本発明の混合物は、塩、好ましくはナトリウムの、モリブデンの、2つのキレート剤の混合物、好ましくはBAPTA及びEGTA型の、過酸化水素及び酢酸緩衝剤(例えば酢酸/酢酸塩)を含有する。
【0177】
特定の代替において、本発明の混合物は:
-モリブデン塩、例えばモリブデン酸ナトリウム;
-BAPTA;
-EGTA;
-H2O2;
-CH3COOH/CH3 COONa;
を含有し:
-Eredox 250~550 mV、好ましくは300~450 mV、尚も好ましくは300~420mV;
-pH 4.4~5.0;
である。
【0178】
一つの特定の変法において、本発明の混合物は:
-モリブデン塩、例えばモリブデン酸ナトリウム;
-ランタン塩、例えば硝酸ランタン;
-BAPTA;
-EGTA;
-H2O2;
-CH3COOH/CH3COONa;
を含有し;
-Eredox 250~550 mV、好ましくは300~450 mV、尚も好ましくは300~420mV;
-pH 4.4~5.0;
である。
【0179】
有利な場合、前記混合物の化合物は、モリブデンがVI価であるペルオキソモリブデート複合体又はハイドロペルオキソモリブデート複合体を形成するのに要求される量、pH条件及び酸化還元電位条件であり得る。
【0180】
特定の態様において、本発明の混合物は、1つ以上のキレート剤及び2つ以上及び以下のキレート剤を含有し、好ましくは、それぞれ濃度5~20 μM及び200~700 μMである。
【0181】
特定の態様において、本発明の混合物は、340 mM~450 mMのH2O2等主要なラジカル供与体を含有する。
【0182】
本発明は、特に、医薬組成物としての本発明に係る組成物に関し、当該組成物は、1つ以上の金属塩、当該金属が、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、金(Au)、ランタノイド、特にランタンから選択される;1つ以上のキレート剤;及びペルオキシダントラジカルの供給源;を含有する。そのような本発明の組成物は、治療的処置方法に有用である。
【0183】
また、本発明は、治療を要する対象に、治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む、治療的処置方法にも関する。
【0184】
また、本発明は、治療的処置方法に用いる本発明の医薬組成物の調製プロセスにも関する。
【0185】
本発明は、特に、本発明の混合物を含有し、又はこれからなる、医薬組成物に関する。
【0186】
従って、本発明は、局所使用用の医薬組成物に関し、本発明に規定される、又は本発明に規定される方法によって取得され得る、治療的に活性の混合物を含有することを特徴とする。
【0187】
有利な場合、本発明の医薬組成物は、0.001~5 mM、好ましくは0.01~2 mM、そして尚も好ましくは0.02~1 mMの医薬的に活性の混合物を含有する。
【0188】
特に、本発明は、ウイルス感染、特にHerpesviridae科のウイルス感染のための治療的処置方法に用いられる、本発明の局所使用用の医薬組成物に関する。
【0189】
本発明は、特に、HSV-1及び/又はHSV-2を含む感染のための治療的処置方法に用いられる本発明の局所使用用の医薬組成物に関する。
【0190】
特に、本発明は、抗炎症治療的処置方法に用いられる、本発明の局所使用用の医薬組成物に関する。
【0191】
特に、本発明は、予防的又は治癒的治療的処置方法に用いられる、本発明の局所使用用の医薬組成物に関する。
【0192】
また、本発明は、ヘルペスの治療的処置のための方法に用いる、モリブデン、1つ以上のキレート剤及びペルオキシド化ラジカルの供給源を含有する、医薬組成物に関する。この組成物は、本発明の態様、代替、有利な態様、好ましい態様、又は例の1つ、又はそれらのいずれかの組合せに従って規定される。
【0193】
「本発明において」という文言は、本発明の態様、代替、有利な態様、好ましい態様、又は例の1つ、又はそれらのいずれかの組合せを示す。
【0194】
典型的には、本発明の局所使用用の医薬組成物は、賦形剤、特に薬局方に認可された賦形剤を含有する。
【0195】
抗炎症治療的処置は、予防的治療的処置、緩和的処置及び治癒的治療のいずれも意味し、例えば汚染的接触の場合の感染、疾患の発生、その急性の相の抑制、病原体の部分的撲滅及び/又はその流行の抑制をもたらし得る。
【0196】
有利な場合、本発明の活性混合物又は医薬組成物は、その適用の過程でin situで活性である。
【0197】
有利な場合、本発明の活性混合物又は医薬組成物は、経表皮経路の過程で活性であり、好ましくは、その経粘膜経路では許容されず、又は限定的である。
【0198】
有利な場合、本発明の医薬組成物は、経粘膜経路の過程で不活性化される。
【0199】
一つの代替において、本発明の混合物又はそれを含有する組成物は、口腔顔面レベルで非経口経路を介して適用される。
【0200】
一つの代替において、本発明の混合物又はそれを含有する組成物は、生殖器又は肛門レベルで非経口経路を介して適用される。
【0201】
一つの代替において、本発明の混合物又はそれを含有する組成物は、皮膚上の非経口経路を介して適用される。
【0202】
一つの代替において、本発明の混合物又はそれを含有する組成物は、粘膜上の非経口経路を介して適用される。
【0203】
一つの代替において、欧州薬局方(Ph. Eur.)、国立薬局方(特にUSP, JP, IP, Ph. Helv., Ph.Belg., Ph Fr., BP, DAB, OAB)及び国際薬局方(Ph. Int.; WHO)によって承認された賦形剤が、本発明の製造の過程で、及び/又は「混合物1」と表記される「混合物」の中に、導入され得る。
【0204】
本発明の混合物及び組成物は、人間における医薬的活性に特に適している。
【0205】
有利な場合、本発明の混合物は、Fenton-Haber-Weiss型及びFenton-Haber-Weiss「様」型の反応の利用、及び好ましくはラジカルHO2
・及び僅かにO2
・, HO・の生成の可能性をもたらし得る。
【0206】
本発明において、反応性物質HOO・の透過は、限定的又は調整されて、細胞アポトーシスを誘導するのに十分である。
【0207】
本発明において、反応性物質HOO・の透過は、効果的又は調整されて、ウイルス抗複製効果を有するのに十分である。
【0208】
本発明において、本発明の混合物の酸化還元電位は、ラジカル活性物質の前駆体の濃度を好ましくは狭い範囲内に限定するのに用いられ、これは、抗複製効果/健康な細胞における中度の細胞傷害性/感染した細胞における顕著な細胞傷害性/感染予防効果:の間の健全な平衡を生じる。
【0209】
有利な場合、本発明の治療的又は医薬的に活性な混合物は、反応性ラジカル種HOO・を主に及び優先的にもたらし得る。
【0210】
従って、本発明において、in vivoの細胞外カルシウムは、HOO・の生産において主要な引き金となる要素である。例えば、これは、モリブデン塩及びBAPTAが本発明の混合物中で動作し始めるとき、複合体2Mo(VI)-BAPTA2(H2O2)での主要な1つの動作である。例えば、これは、モリブデン塩及びEGTAが本発明の混合物中で動作し始めるとき、複合体2Mo(VI)-EGTA2(H2O2)での主要な1つの動作である。
【0211】
有利な場合、HOO・の細胞外媒体中での生産は、細胞の認識を変化させてウイルス感染を抑制し得る、細胞外修飾(例えば膜外アミノ酸残基の酸化)を可能とする。
【0212】
有利な場合、HOO・の細胞外媒体中での生産及びその細胞透過は、その長寿命(1秒以上)及びそのOH・又はO2
・(1ms及び1nmのオーダーの透過)と比較して良好な細胞透過性に適合する。有利な場合、この物質HOO・は、細胞外又は細胞内レベルでHaber-Weiss反応及びFenton反応(「様」であり得る)に関与し、後者の自己維持を可能とする。
【0213】
有利な場合、本発明のMo(IV)を含有する混合物のpHは、4.4~5.0である。これは、特に、HO2
・/O2
・分解の速度定数kobs (M-1.s-1)の最適化を可能とする。
【0214】
有利な場合、本発明の組成物と接触することによる細胞内酸化還元電位の変化は、アポトーシス/抗アポトーシス平衡を可能とする。より具体的には、このアポトーシス/抗アポトーシス平衡は、特に、HSV、主にHSV-1及び-2による感染の存在に依存する。
【0215】
一つの代替において、本発明の混合物は、HSV、主にHSV-1及び-2が感染した細胞に対し選択的に活性である。
【0216】
従って、カルシウム流入及びアポトーシスの制御を含む、HSV感染によって誘導されるストレスの経路の間の緊密な平衡が存在する。
【0217】
この平衡は、細胞の酸化還元電位の変化及び細胞内-細胞質ラジカルの存在によって攪乱される。これは、HSVによる感染と同一の細胞ストレス経路、同一のカルシウム流入及び同一の代謝経路の誘導を含み、これらの同一の経路は、他の抗アポトーシス平衡に向けて後方制御される。これは、本発明の混合物の、又はこれを含有する組成物の、治療的効果を支持する。
【0218】
一つの代替において、本発明の医薬組成物又は混合物は、口唇ヘルペス及び口腔顔面ヘルペスの治療的処置方法に使用される。
【0219】
一つの代替において、本発明の医薬組成物又は混合物は、生殖器及び肛門ヘルペスの治療的処置方法に使用される。
【0220】
一つの態様において、本発明の活性混合物は、抗感染効果(ウイルスに対する中~低度の直接作用、可能な候補として細胞のウイルス受容体)、抗認識及び内部化(顕著な作用、ウイルスに対する細胞受容体)を有する。これらの効果は、細胞の外部であり、ウイルスの感染性を抑制する。従って、本発明の活性混合物は、緩和作用を有する。従って、本発明の活性混合物は、抗感染効果を有する。
【0221】
一つの代替において、本発明の医薬組成物又は混合物は、そのエンベロープ、複製性又は感染性のHSVを発現する集団の治療的処置に使用される。
【0222】
一つの代替において、本発明の医薬組成物又は混合物は、HSV-1を発現する組織又は細胞集団の治療的処置に使用される(Kessler H.H. et al (2000) "Detection of Herpes Simplex Virus DNA by real-time PCR", J Clin Microbiol., 38(7), 2638-2642)。
【0223】
一つの代替において、本発明の医薬組成物又は混合物は、HSV-2を発現する組織又は細胞集団の治療的処置に使用される(Kessler H.H. et al (2000) "Detection of Herpes Simplex Virus DNA by real-time PCR", J Clin Microbiol., 38(7), 2638-2642)。
【0224】
有利な場合、本発明の活性混合物は、感染源と健康な細胞又は組織との事前の接触により誘導される抗複製効果を有する。本発明の活性混合物は、細胞内のウイルス複製を抑制し、及び/又は細胞内へのウイルスの透過を抑制することにより、感染を防止するのに使用され得る。
【0225】
有利な場合、本発明の活性混合物は、感染細胞の細胞代謝に対する好ましい抗複製効果を有する(酸化ストレス経路及びカルシウムチャンネル)。本発明の活性混合物は、細胞内ウイルス複製に対し、及び同一の感染した組織又は感染組織に近接した健康な組織のHSV-1及び/又はHSV-2による細胞の過感染(overinfection)に対し、直接作用するものとして特に使用され得る。
【0226】
一つの代替において、本発明の活性混合物は、人間の皮弁(cutaneous flap)のインターロイキン-6(IL-6)の生産の阻害を異種的に誘導することにより抗炎症効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【
図1】
図1は、混合物1の調製過程での酸化還元電位及びH
2O
2濃度の変化を示す。
【0228】
【
図2】
図2は、混合物1の酸化還元効率のアッセイに用いるFe
3+アバカスを示す。
【0229】
【
図3】
図3は、様々な濃度での混合物1(MoO
4
2-、nM)の酸化還元効率(混合物1と接触(2分間)させた後のヒト血漿媒体中のFe(III)によるケルセチンの吸光度)を示す。
【0230】
【
図4】
図4は、様々な濃度での混合物1の酸化還元効率のアバカスを示す。
【0231】
【
図5】
図5は、i)前記製剤と接触後のトランスフェリン-Fe
3+複合体による、ii)平衡時、及びiii)ケルセチンの酸化時の、Fe
3+のin situヒト血漿中の生産に対する、MoO
4
2-の濃度の異なる混合物1の影響を示す。
【0232】
【
図6】
図6は、混合物1(活性物質24.3μM)又は対照としてNaCl(100mM)によって刺激された(2分間)非病理的ヒト皮膚生検の培養上清中のインターロイキン-6(IL-6)の生産を示す。(D1~5:ドナー1~5、B1又は2:生検1又は2)
【0233】
【
図7】
図7は、混合物1(活性物質24.3μM)又は対照としてNaCl(100mM)によって刺激された(2分間)非病理的ヒト皮膚生検の培養上清中のインターロイキン-6(IL-6)の刺激後6時間及び24時間の産生量の平均を示す。
【0234】
【
図8】
図8は、異なる濃度の混合物1及び混合物2の酸化還元効率を表す(混合物1(MoO
4
2-、nM)又は混合物2(La(MoO
4)
1-、nM)と接触(2分間)させた後のヒト血漿培地中のFe(III)によるケルセチンの吸光度)。
【実施例】
【0235】
実施例1-本発明の活性混合物の例示
本例示はモリブデン塩を用いて作製される。表1の調合の組成物(混合物1)が調製され、含量は、各成分の初期濃度である。
【表1】
【0236】
この組成物は、適用される触媒プロセスを考慮せずに添加される試薬の濃度に対応するため、「初期」組成物と表記される。
【0237】
合成に用いられる全ての成分及び最終産物は、IR-FT分光測光法によって評価される。
【表1a】
【0238】
合成中又は後に実施される測定のグラフは、3回の試行の平均である。
【0239】
下記の量は、混合物1の1リットルの調製のためのものである。
【0240】
A-工程(i):緩衝溶液(BS)の調製
CH3COOH (100%;δ: 1.05g.cm-3(液体、20℃)) 4.0 ml(最終70mM)
CH3COONa.3H2O (100%) 8g (最終59mM)
水 qsp 1L
pHの評価: 4.7-4.8
室温(20℃)
【0241】
B-工程(ii):金属複合体溶液(溶液CS)の調製
Na2MoO4.2H2O(Mo(VI)の供給源; 100%) 200 mg(最終2.4mM)
水 qsp 340ml
軽く撹拌、室温
【0242】
C-工程(iii):初期溶液(Si1)の調製
水 900mL
CH3COOH (100%) 4mL (70mM)
非常にゆっくり添加し非常に軽く撹拌(250rpm)
pH: 2.9~3.8
Eredox: 470~490mV
そして
H2O2 (30%) 最終qsp1.2重量%及び予備アッセイによる
45分で:
pH: 2.70-2.90
Eredox: 440-460mV
Nobleの等式により: [H2O2] = 380~410mM(溶液Si1)
【0243】
D-工程(iv):初期溶液(Si2)の調製
溶液Si1にBS溶液を導入する 12mL (≒1mM酢酸)
軽く撹拌しながら添加する
45分で:
pH: ≒ 2.90
Eredox: 460-480mV
Nobleの等式により: [H2O2] = 380~410mM(溶液Si2)
【0244】
E-工程(v):ペルオキソモリブデン溶液S1の調製
溶液Si2にCS溶液を導入する 10mL
45分で:
pH: 2.80-3.00
Eredox: 450-480mV
Nobleの等式により: [H2O2] = 370~400mM(溶液S1)
【0245】
F-工程(vi):溶液S2の調製
軽く撹拌しながらpH調整:
NaOH 9.9-10.1M 0.9Lの混合物1に3.6 mL
pH 4.5-5.0
45分で:
pH: 4.60
Eredox: 380-390mV(溶液S2)
【0246】
G-工程(vii):キレート剤の添加-溶液S4の調製
BAPTA (98.8%)の導入 6mg/L
事前に25℃で平衡化した製剤S2(1.4L)のアリコートに軽く撹拌しながらBAPTAを非常にゆっくり溶解した後(S3.1溶液)。
溶液S3.1を溶液S2と共にプールして溶液S3.2を形成する。
45分で:
pH: 4.40-4.70
Eredox: 380-390mV
Nobleの等式により: [H2O2] = 370~390mM
EGTAの導入(99.1%) S3.2溶液に200mg/L、溶液S4を形成する
軽く撹拌して溶解
45分で:
pH: 4.40-4.60
Eredox: 380-390mV
Nobleの等式により: [H2O2] = 370~420mM
【0247】
H-工程(viii):pHの調整
pHの調整(NaOH 9.9-10.1M、即ち≒400g/L)→pH: 4.60 ± 0.2
【0248】
I-工程(ix):最終溶液(FS)の体積の調整
脱イオン化水による体積の調整 qsp 1L
12~18時間で:
pH: 4.50-4.70
Eredox: 380-390mV
Nobleの等式により: [H2O2] = 350~380mM
滴定により: [H2O2] = 400-430mM
密度: δ = 1.004g/ml
【0249】
本発明の混合物は、使用の前、室温又は45℃で6ヶ月以上暗黒中で安定である。
【0250】
Naハイドロペルオキソモリブデートの濃度は最終混合物1中で24.3μMである。
【0251】
実施例2-酸化還元電位の変化によるサイン
本発明の活性混合物のサインは、実施例1で調製された組成物の合成の過程での酸化還元電位の変化によって評価される。
【0252】
図1において、初期溶液(≒470mV;工程3)と比較して、工程6(ソーダによるpHの調整)において酸化還元電位が≒90mV低下している(≒380mV)。この酸化還元電位は、合成の終了(工程9)までは一定のままである。これは、実施例1の本発明の混合物の製剤を6ヶ月間それぞれpH4.56 ± 0.40及び4.53 ± 0.41において室温で(389mV ± 5mV)及び45℃で(389mV ± 8mV)置いた場合も同様である。
【0253】
実施例3-H2O2の消費及び生産によるサイン-混合物1のペルオキソ-試薬平衡の及び酸化還元電位の生産
本発明の活性混合物のサインは、実施例1で調製された組成物の合成過程でのH2O2の消費及び生産によって評価される。
【0254】
図1において、初期溶液工程のH
2O
2濃度(353mM;3~10)に対し、突然のペルオキシド生産(≒42mM;一部過酢酸を含む)が観察され、これは、緩衝溶液(酢酸/酢酸塩)へのH
2O
2の添加による。H
2O
2の添加が事前に酸緩衝された水溶液(工程3; pH = 2.84 ± 0.1)中で実施されない場合、その自発的及び急速な分解は、pH(水の)が高過ぎるためであり得る(pKa
HO2・-/O2・-: 4.8)。
【0255】
工程4から工程7まで、381mM ± 5mMでのその安定化まで(工程7; +BAPTA)、限定的なH2O2の消費が観察される。
【0256】
EGTAの添加は、ペルオキシド分解によるペルオキシド平衡(Fenton「様」反応)を変化させ、即ち工程7において393mM ± 29mMから工程9において357mM ± 26mM、及び工程9+12時間において365mM ± 15mMとなる。
【0257】
工程6において、pHの調整により、突然の酸化還元電位の低下が観察される(463mV ± 15 mVから392mV ± 17mV)。キレート剤BAPTA及びEGTAの連続的添加(工程7)は、化学的平衡の安定化による酸化還元電位(386mV ± 5mV及び383mV ±6mV)の安定化に寄与する。
【0258】
実施例4-本は詰めの混合物の酸化還元効率のアッセイ:ケルセチン法
A-反応性溶液
1-ケルセチン
メタノール中の10-3 mol/Lケルセチン二水和物(2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3,5,7-トリヒドロキシ-4H-1-ベンゾピラン-4-オンジヒドレート、3,3′,4′,5,7-ペンタヒドロキシフラボンジヒドレート; (C15H10O7.2H2O)を調製する。
【0259】
2-塩酸
塩酸1Mの第一の溶液をメタノール中で調製する。0.3Mの第二の溶液をメタノール中で調製する。当該0.3M溶液1,357μlに、溶液1Mを343μl添加して、反応性溶液を調製する。
【0260】
3-Fe3+の溶液(参照アバカス)
Fe3+ (Fe2(SO4)3.xH2O)の2 mg/ml溶液をHPLC水中で調製する。これを希釈して、20, 100, 200, 300, 400, 500, 1,000及び1,500 μg/mlの8つの参照溶液を取得する。これらの溶液を最終的にヒト血漿又はHPLC水で20倍に希釈して、0, 1, 5, 10, 15, 20, 25, 50及び75 μg/mlの希釈系列を取得する。
【0261】
4- Fe2+の溶液(参照アバカス、活性対象)
Fe2+ (FeSO4.7H2O)の89 mg/ml溶液をHPLC水中で調製する。これを希釈して、0.445, 4.45及び44.5 mg/mlの参照溶液を取得する。これらの溶液を最終的にヒト血漿又はHPLC水で10倍に希釈して、0, 0.0445, 0.445及び4.45 mg/mlの希釈系列を取得する。
【0262】
B-ケルセチン法を用いたアッセイ
Fe3+(アバカス)の存在又はその生産(Fe2+アバカス及び接触2分後の本発明の混合物の効率)は、ケルセチン法によって定量された。
【0263】
混合物1の解析又は使用の条件において:
「混合物ox」は、酸化剤としての本発明の混合物を意味する。
「混合物red」は、還元剤としての本発明の混合物を意味する。
【0264】
Fe3+の生産を以下に示す:
トランスフェリン-2Fe3+ +混合物red + 3H+→トランスフェリンred+2Fe3+
(aq)+混合物ox (1)
Fe3+
(aq) +混合物red + e- ←→ Fe2+
(aq) +混合物ox (2)
Fe3+
(aq) +ケルセチンred →ケルセチンox+Fe2+
(aq) (3)
反応(1)は血漿媒体中で行われる。
反応(2)は血漿媒体中又はHPLC水中で行われ、Fenton-Haber-Weiss反応の平衡に対応する。
反応(3)は、混合物1の酸化還元電位を評価するためのケルセチンの酸化反応である。
【0265】
酸媒体中、70℃で、ケルセチンは、血漿媒体中のトランスフェリンによって負担された鉄イオン(Fe3+; El Hajji et al 2006 and Balcerzak et al, 2008)によって、そして第一鉄イオン(Fe2+)によらず、特に酸化される。Fe3+イオンは、これらの条件下で溶解する。
【0266】
30μlのケルセチン溶液が170μlの塩酸反応溶液に添加される。撹拌後、50μlの試料(ヒト血漿又はHPLC水中Fe3+、HPLC水中Fe2+、ヒト血漿と接触後2分の本発明の混合物)を添加する。当該溶液を強く撹拌し、1時間70℃でインキュベーションする。インキュベーション後、試料を15分間14000rpm及び室温で遠心分離する。100μlの上清を採取する。各試料の230~500 nmのUVスペクトルを取得する。ブランクは水であり、Fe2+, Fe3+,血漿は、実験の種類に従い差し引かれる。血漿ケルセチンから生産されたFe3+、及びin situ Fenton-Haber-Weiss反応による酸化ケルセチンの吸光度ピークが保持される(285-305 nm)。
【0267】
曲線の頂点は、実験がHPLC水又は血漿中で実施されるとき、292nmに向かい集中する。それは、実験のブランクが差し引かれるとき、最大で10nm移動し得る。
【0268】
1- Fe3+アバカス
Fe(III)イオンのアバカスは、例えば、ヒト血漿中の異なる濃度のFe3+ (cf.上記Fe3+範囲)における酸化ケルセチンのUV吸収(250-330nmの範囲)を測定し、波長に対する光学密度をレポートすることによって求められる。
【0269】
250-330nmの領域のスペクトルから、285及び305nmの間の曲線下面積(AUC)が、以下の式を用いて求められる。
【化1】
【0270】
従って、Fe3+の範囲の各点におけるピーク285-305nmの表面の各面積が、グラフ表示のためにプロットされる。傾向がプロットされ(Excel)、等式(その1に最も近い数値が実験を評価する相関係数R2)が推定される(Excel)。
【0271】
等式は、線形又は多項式形: y = ax
2 + bx +cであり得る。実験によって、この関連性は、以下の式で表され得る。
y = -0.0021x
2 + 0.4819x + 0.4521; R
2 = 0.9966 (4) (
図2)
【0272】
本発明の混合物において、血漿媒体中で、又はFe2+から生産されるFe3+等価物の濃度は、本発明の酸化電位の反映であり、等式(4)から計算される。これは、Fe3+による酸化ケルセチンをUV光中でアッセイすることにより、混合物1の還元効率を測定するための間接的な方法である。
【0273】
従って、Fe3+「等価物」中の濃度が示される。また、本発明の参照溶液に対して、試験される本発明の溶液の還元電位を比較すること、即ち本発明の混合物の還元効率の定量との比較を行うことが可能である。
【0274】
2-Fe2+アバカス
鉄Fe(III)と同様に、Fe(II)イオンにおいてもアバカスが作成された。例えば、活性物質1.22μM(250μg/L)及びFe2+との接触2分での本発明の混合物から得られたFe3+により酸化されたケルセチンのUV吸収(250~500nm)のピークは、例えば、上記の範囲において測定される。Fe(III)イオンに記載されたのと同様のAUCの数学的解析が実施され得る。
【0275】
3-例えば1.22 μM (250 μg/L)の活性成分MoO4
2-の本発明の混合物の酸化還元効率のアッセイ
B-に記載の手順において、本発明の混合物(ヒト血漿中1.22 μMのMoO4
2-)の酸化還元効率が、以下について試験される:
i)室温及び45℃でのその経年変化の評価
ii)その生産の正当化及び製剤の比較評価
iii)その経皮浸透の定量
iv)その生体利用効率
v)その生物相
【0276】
等式(4)において、トランスフェリン-Fe3+複合体を最終濃度1.22μMで含有する本発明の混合物を2分間接触させた血漿中で生産された遊離Fe3+によって酸化されたケルセチン(等式(1)、(2)、(3))の285~305nmのピークの間のUV吸収ピークの特定の面積が計算される。平均で、Fe3+等価物(Fe3+
eq)の生産は、30~50 μg/血漿mlのオーダーである。
【0277】
4-有効濃度本発明の混合物の血漿媒体中での推定アバカス
血漿中で鉄は遊離状態ではない。それはトランスフェリン(又はシデロフィリン)と結合しており、分子あたり1~2残基の量の第二鉄型(Fe3+)で存在する。第一鉄型の鉄は、ヘモグロビンとの複合の循環を外れない。使用されるヒト血漿は溶血していないものと考えられる。血漿銅と本発明の混合物とのケルセチン反応は、無視できるものとみなされる。
【0278】
様々な濃度範囲の本発明の混合物(最終MoO
4
2-15.2, 7.6, 3.8及び1.9 nM)をヒト血漿中でインキュベーションした。ケルセチンとの反応はB-に記載した通りに実施した。特異的吸収ピーク(血漿ブランク+ケルセチンを差し引く)は、B-1に記載のように積分された(
図3)。
【0279】
アバカスは多項式スケールでプロットされ(Excel)、傾向方程式が計算された(y = 0.0144x
2 + 0.5863x + 0.4511、R
2 = 0.9934 (5);
図4)。
【0280】
上記の本発明の混合物の範囲に従い、ヒト血漿に添加される本発明の混合物の濃度と、ケルセチンの酸化反応により検出されるFe3+(等式4)の等価物の量、即ち28.95, 12.19, 3.97, 3.12 μgのFe3+
eq/ヒト血漿mLとの間に、比例関係が確認される(等式5)。
【0281】
実施例5-ヒト血漿に対する本発明の酸化還元効率の評価
本発明の混合物(実施例1-混合物1)をヒト血漿に添加し、最高で0.03038 μMのMoO4
2-と2分間接触させた後、血漿トランスフェリンFe3+複合体から生じたFe3+の生産におけるケルセチンの酸化反応及びFenton-Haber-Weiss反応は最適及び線形である(実施例4)。
【0282】
実験的ブランクを引いた後、本発明の混合物の濃度の増大は、Fenton-Haber-Weiss反応による平衡(Fe
3+ ←→ Fe
2+)の変化によるFe
3+により酸化されたケルセチンのin situ生成における還元を生じる。MoO
4
2-の最終試験濃度は、0.00, 1.22, 4.05, 12.15, 24.30及び30.38 μMであった(
図5)。
【0283】
実施例6-抗複製効率
A-モデル
実施例1の混合物(混合物1)の4つの接触モデルを試験した。それらは、混合物1が局所的治療用途の過程で遭遇し得る4つの生理的可能性を表現している。即ち:
モデル1:HSV-1に感染した細胞への混合物1の適用
モデル2:HSV-1にまだ感染していない細胞への混合物1の適用
モデル3:HSV-1にまだ感染していない細胞への混合物1の適用及びHSV-1フリー(まだ感染していない)への混合物1の適用
モデル4:感染前のHSV-1への混合物1の適用
【0284】
2分及び1.5分の2つの混合物1との接触時間が試験され、その後混合物1は除去された。
【0285】
0.81及び2.03μMの2つの活性物質濃度、即ちそれぞれ167及び417 μg/Lの混合物1が試験された。
【0286】
効率を定量する方法は、qPCRである(定量的ポリメラーゼ連鎖反応; Mullis K. et al (1986) “Specific Enzymatic Amplification of DNA In Vitro: The Polymerase Chain Reaction”, Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol., 51 (Pt 1), 263-273.)。
【0287】
HSV-1に対する混合物1の抗複製効率(AE)は、ウイルスゲノムの特異的プライマーを用いたqPCRにおいて評価された(Kessler H.H. et al (2000) “Detection of Herpes simplex virus DNA by real-time PCR” J. Clin. Microbiol., 38(7), 2638-2642)。
【0288】
BHK-21株に対する混合物1の細胞傷害性(C)は、小リボソームサブユニット18Sの遺伝子の特異的プライマーを用いたqPCRにおいて評価された(Texcell - Evry, France)。
【0289】
感染多重度(MOI):1、即ち5.105 TCID50 (Tissue Culture Infective Dose 50%)。
【0290】
qPCR実験は、感染後0時間(BHK-21とHSV-1を接触させて2時間後にHSV-1を除去した時点)、2時間、4時間及び8時間で実施された。
【0291】
AE/C比は、試験モデルに対応する混合物1のin virto効率係数(EI)をもたらす。
【0292】
モデル1:
BHK-21+HSV-1(2時間;感染)→洗浄(PBS)によりウイルス除去→試料t0h→+混合物1(2分間)→洗浄(培養培地)により混合物1を除去→細胞インキュベーション37℃→試料t2h、t4h、及びt8h-感染後。
【0293】
モデル2:
BHK-21+混合物1(1.5及び2分)→洗浄(PBS)により混合物1を除去→細胞+HSV-1(2h;感染)→洗浄(培養培地)によりHSV-1除去→試料t0h→細胞インキュベーション37℃→試料t2h、t4h、及びt8h-感染後。
【0294】
モデル3:
BHK-21+混合物1(1.5及び2分)→洗浄(PBS)により混合物1を除去。
HSV-1+混合物1(1.5及び2分)→洗浄(PBS)により混合物1を除去。
予備的に混合物1と接触させた(2時間;感染)細胞及びウイルスのプール→洗浄(培養培地)によりHSV-1除去→試料t0h→細胞インキュベーション37℃→試料t2h、t4h、及びt8h-感染後。
【0295】
HSV-1+混合物1(2分)→洗浄(PBS)により混合物1を除去→細胞+BHK-21(2h;感染)→洗浄(培養培地)によりHSV-1除去→試料t0h→細胞インキュベーション37℃→試料t2h、t4h、及びt8h-感染後。
【0296】
B-結果
【表2】
*試験された物質(混合物1、対照のアシクロビル)によるHSV複製の減少(RR)はパーセンテージとして表現され、宿主細胞のサブユニット18Sを定量することにより評価される、HSV-1ゲノム及び細胞毒性のqPCR定量比に対応する:RR = {(100 x ([HSV-1]
test/[18S]
test)) / ([HSV-1]
control+/[18S]
control+)} - 100。
**試験された物質の抗複製効率指数in vitro(EI)は、HSVが感染した陽性対照([HSV-1]
control+/[18S]
control+)と、試験された物質(混合物1、対照のアシクロビル)のの(特異的qPCRにおいて評価される[HSV-1] / [18S])によって表される:EI = ([HSV-1]
control+/[18S]
control+) / ([HSV-1]
test/[18S]
test)。
# [ACV]: 1 g/L
【0297】
最良のEIは、混合物1の接触2分後及び濃度417μg/Lで得られた。EIに対する接触時間の顕著な影響は注目すべきである(1.5分及び2分;モデル2及び3)。
【0298】
接触時間2分及び混合物1の濃度167μg/Lのモデル1及び3で得られたEIは、特に顕著であった。
【0299】
モデルに拘らず、アシクロビル(ACV)で得られたEIは、顕著ではなかった(表2)。
【0300】
【0301】
混合物1(167~417μg/L)又はACV(1又は103 mg/L)において、使用される対照に拘らず(株+ PBS - HSV又は株+ PBS + HSV)、18Sの定量結果は、同一のモデルにおいて同等である(表3、試験1対4、2対5、3対6)。
【0302】
混合物1において、用量依存的な顕著な抗複製効果(表3、試験7及び8)が、モデル1、2及び3で確認される。これは、ACVでは見られない(表3、試験9)。
【0303】
モデル2及び3において、混合物1(167μg/L)及びACV(1mg/L)(表3)の細胞傷害性は同等である(表3、試験1、3、4及び6)。
【0304】
ACV(1 mg/L又は1g/L)における抗-SHV効率の欠如(表2及び表3、試験9)が特筆すべきである。混合物1の試験に導入されたモデルは、ACVを扱う試験に対応出来ない。
【0305】
モデル1(感染細胞に混合物1):
2つの濃度の混合物1を用いる条件で、最高のEIが得られた(表2)(接触時間2分、167及び417 μg/L、EI:それぞれ37及び48)。
【0306】
混合物1は、ウイルスの核内複製及び恐らく細胞代謝への直接的な効果を有する(表2及び3)。
【0307】
混合物1は、感染細胞に対し良好な特異性を有する(表3、試験4及び5;モデル1対2)。
【0308】
モデル2(感染前の細胞に混合物1):
興味深いEI(表2;2分間接触及び417 μg/L, EI: 23)。
【0309】
混合物1は、感染を受けにくくする、及び/又はウイルスの複製に適さない代謝を獲得する、細胞への作用を有する(表3、試験7及び8)。
【0310】
モデル3(混合物1:無感染細胞及びHSV-1、個別に又はプール前):
2つの濃度の混合物1(接触2分、それぞれ167及び417 μg/L、EI: 14及び35)において興味深いEI(表2)。
【0311】
適用した用量(167又は417μg/L)に依存して、抗ウイルス効果が非常に良好な場合であって、細胞傷害性が無く(表3、試験4)、又は限定される(表3、試験5)。
【0312】
当方は、細胞に対する顕著な作用を有するモデル2、及びウイルス単独に対する限定的な効果を有するモデル4の蓄積であり得る、混合物1の効率を有している(表2及び3)。
【0313】
モデル4(HSV-1に混合物1):
細胞傷害性の欠如及び顕著なウイルス複製によって確認される低いEI(接触時間2分、167及び417μg/L、EI:2及び3)(表3、試験8及び9)。
【0314】
C-結論
BHK-21株において、混合物1の主要な効果は:i)感染細胞の好ましい細胞傷害性、ii)感染細胞中のウイルス複製の阻害、及びiii)健康な細胞の感染の限定、である。
【0315】
標的は、膜(例えばウイルスの受容体)及び/又は代謝(例えばストレス及びアポトーシス経路の制御)であり得る。
【0316】
ウイルス認識及び内部化
モデル4において、混合物1は、ウイルスにおける直接の抗複製効果が低い。これらの実験条件下、局所治療的使用に近く、この観察は、細胞に対するウイルス受容体(gB (HSV-2)、gC (HSV-1)、gD及びgH/gL (HSV-1及び-2))の限定的な変化を肯定する。混合物1は、そのin vitro Fenton-Haber-Weiss反応により、ウイルス糖タンパク質を、限定的にのみ変化させ得る。
【0317】
同様に、膜融合及び穿孔を攪乱し得るHSVのリン脂質膜に対する混合物1の顕著な影響は見られない。
【0318】
これらの実験条件下、混合物1は殺ウイルス剤ではない。
【0319】
ウイルス複製及び細胞代謝:
qPCR技術は、感染8時間後における細胞ライゼートを用いる。ウイルス複製の減少は、認識及び/又は内部化及び/又は複製の低下 (感染及び/又は混合物1に誘導される細胞代謝の変化) に起因し得る。
【0320】
ウイルス脱塩経路が、他の経路を変化させず、モデルに拘らず、混合物1によって変化した場合、その結果のEIは、ビリオンの細胞質蓄積によってより小さくなる筈である。
【0321】
モデル2(EI:23、接触時間2分及び417μg/L)において、混合物1と予め接触させた後のウイルスの複製の低下が観察される(表2及び3、試験8)。
【0322】
このモデルにおいて、BHK-21細胞は、混合物1と2分間接触させられた。完全及び栄養培養培地中のHSVとの接触時間は2時間であった。混合物1は、2時間超持続する寿命を有する細胞の変化を誘導し、混合物1の緩和的効果を更に予測させる。
【0323】
ウイルス糖タンパク質gDに対する推定される及び限定的な作用により(複製の38%;表2)、混合物1により部分的に影響を受けている細胞によるHSV-1の認識に加えて、この認識は、gDへの細胞受容体(HVEM及びネクチン)に対する、及びヘパラン硫酸及びインテグリンである他の2つの細胞表面受容体に対する作用によっても影響を受け得る。
【0324】
強い浸透性のため(細胞間又は膜透過酸化還元電位の変化、酸化ストレス経路の制御)、細胞カルシウム流入は変動し得る。これらの細胞カルシウム流入は、HSV感染によっても誘導され得る。しかしながら、後者は、有利及び非透過性キレート剤の混合物1への導入(細胞傷害性の限定)により、直ちに脱動化(demobilized)され得る。他方の主要な細胞の変化は排除されるべきではなく、タンパク質、特にウイルスエンドサイトーシスに関与し得る構造的タンパク質の酸化又は還元に対応し得る。
【0325】
モデル3(表2及び表3、試験7及び8)において、ウイルス複製の顕著な減少が観察される(EI:14及び35、接触時間2分、それぞれ167及び417 μg/L)。
【0326】
いずれの現象も蓄積する。第一は、ウイルスにおける限定的な作用(モデル4)であり、より顕著な第二(モデル2)は、細胞においてである。
【0327】
モデル2及び4(2分及び417μg/L)のEI、即ちそれぞれ23及び3は、モデル3において実験的に得られたEI:35よりも少ないが近い合計(26)を与える。
【0328】
i)HSVパートナー及び細胞の低い認識の可能性を持たせる蓄積、及びii)特に細胞代謝の変化による内部化及び/又は複製の阻害が想定される。
【0329】
モデル1(EI:48、接触事件2分及び417μg/L)が最も良好である。
【0330】
抗感染混合物1の作用は、ウイルスよりも細胞に対して優勢である。この作用は、細胞が既に感染している場合に一層効果的である。
【0331】
最良の治療的問題に対応するこのモデルにおいて、混合物1が特定の主要な細胞内薬理的効果を有することは自明である。417μg/Lの活性物質において、表3は、リボソームサブユニット18Sの量(使用される対照に依存し、27及び30%、試験2及び5)が、このモデルにおいて、モデル2(使用される対照に依存し、41及び44%、試験2及び5)及びモデル3(使用される対照に依存し、70及び58%、試験2及び5)よりも少ないことを示し、これは、感染細胞対正常細胞の特異性の根拠である。
【0332】
このモデルにおける混合物1の標的は、認識又は内部化のいずれかでは有り得ず、実際に代謝の変化である。後者は、特に膜透過ラジカル通過、細胞の酸化還元電位の変化及び酸化的ストレス経路間の外側のキレート剤の存在(既に感染によって誘導されている)、カルシウム流入(既に感染によって誘導されている)、ビリオンのカルシウム依存的放出の阻害、ウイルス複製に直接又は間接的に関与するタンパク質の酸化による変化により、新しい平衡に置かれる。
【0333】
実施例7-インターロイキンの生産のex vivo評価
原料のための外科手術で得たヒト皮膚の非病理的生検(生検8個及びドナー4名)を、混合物1(活性物質5 mg/L;2分間)でex vivoで試験した。生検の上澄を接触後6時間及び24時間で回収し、インターフェロン-α(IFN-α;HSV感染の阻害; Mikloska Z. et al (2001) "Alpha and Gamma Interferons Inhibit Herpes Simplex Virus Type 1 Infection and Spread in Epidermal Cells after Axonal Transmission", J. Virol., 75(23), 11821-11826)、-β(IFN-β;HSV複製の阻害; Sainz Jr. B. et al (2002) "Alpha/Beta Interferon and Gamma Interferon Synergize To Inhibit the Replication of Herpes Simplex Virus Type 1", J. Virol., 76(22), 11541-11550)及びインターロイキン6 (IL-6;炎症マーカー)を定量した。
【0334】
陽性実験対照は、生理的溶質(NaCl 100mM)である。
【0335】
IFN-α及びIFN-βの細胞ベースレベルの変化は見られなかった。
【0336】
生検及びドナー及び外科手術の外傷及び実験操作に依存して:
【0337】
接触後6時間(
図6及び7)
対照としてNaCl、基底IL-6の生産1,485 pg/mL ± 37~7,454 pg/mL ± 199。
【0338】
混合物1、NaCl対照に対してのIL-6生産の阻害、0 pg/mL~1,015 pg/mL ± 17。
【0339】
接触後24時間(
図6及び7)
対照としてNaCl、基底IL-6の生産277 pg/mL ± 11~2,866 pg/mL ± 206。
【0340】
混合物1、NaCl対照に対してのIL-6生産の阻害、84 pg/mL ± 15~5,910 pg/mL ± 29。
【0341】
結論:
NaCl及び混合物1との接触後のIL-6における生産及び過生産不均一性(それぞれ6時間及び24時間)(
図6)。
【0342】
NaCl対照に対して6時間で平均28%及び24時間で19%である混合物1(活性物質5 mg/L)と接触後のIL-6の生産の不均一な阻害(
図6)。
【0343】
この生産阻害によって、混合物1は、抗炎症作用を有する(
図7)。
【0344】
実施例8-血漿分解及び1/2寿命
混合物1の活性物質MoO4
2-のFenton-Haber-Weiss型の反応によるラジカルの供与体の1つ(主にHO2
・、数秒の寿命と顕著な細胞穿孔指数を有する)は、H2O2である。このトレーサーの分解を追跡して、混合物1の消費速度又は不活性化を評価した。
【0345】
技術:
混合物1(68.9 μM又は最終濃度14.2 μg/L)を新鮮なヒト血漿中でインキュベーションした。
【0346】
経路:
平均で(n=10)、接触2分後室温でヒト血漿中での混合物1のトレーサー物質の分解のパーセンテージは、最初の1分で85.3 ± 9.4%、74% ± 15.2 %である。
【0347】
最初の1分において、活性物質の初期濃度68.9μM及びH2O2の初期濃度1mMでの混合物1の溶液において、「50%分解時間」又はDT50は0.812分であった。
【0348】
室温、最初の1分において、初期濃度1mMのH2O2/min./血漿Lでの混合物1の分解速度KcH2O2: ≒ 740マイクロモル、又は初期濃度68.9 μMの活性物質MoO4
2-/min/血漿Lでの混合物1の分解速度KcMoO42-: ≒ 51.0マイクロモル。
【0349】
24.3 μM (5.0 mg/L)の活性物質又は353 mM (12 g/L)のH2O2トレーサーでの混合物1の200μLの試料において、局所治療的適用の範囲内で、約5ナノモルの活性物質MoO4
2-又は70マイクロモルのH2O2トレーサーが存在する。この試料は、1Lの血漿中で、約0.1分以内に分解する。
【0350】
実施例9-末梢血に対する限定的な血液傷害性
本試験の目標は、ヒト抹消血中で2、3及び5分間インキュベーション後の混合物1(24.3 μM又は最終濃度5.0 mg/L)の血液傷害性を評価することである。血液溶解性における毒性は、主要な血液パラメーター、即ち、赤血球、白血球のカウント、ヘマトクリット、血小板、平均小球体積及びヘモグロビンレベルを追跡して評価される。
【0351】
結論:
赤血球、白血球のカウント、ヘマトクリット、平均小球体積及びヘモグロビンレベルは、本発明の混合物との5分までのインキュベーションによって変化しない。
【0352】
血小板のカウントは、混合物1との接触によって、-35%から、その添加の直後、5分時点で、-69%に変化した。
【0353】
実施例10-本発明の混合物の限定的な経皮浸透、吸収、生物相及び生体利用効率(OECD 428; EMEA, Human Guideline, 2001)
使用される混合物1は、物質の最小の浸透を示すように、5倍に濃縮されたものであった(混合物1×5)。この試験の目標は、非病理的ヒト皮膚生検を通じての、混合物1×5及びトレーサーH2O2の透過を評価する(参照t0、t2min~t60min)ことである。
【0354】
この手順は、全生検、表皮を切り取った生検及び真皮を切り取った生検の3種類の基質に対して行われる。
【0355】
技術:
2名のドナーからの12個の生検を、以下の両方法:
i)混合物1×5の酸化還元効率を評価するケルセチン、及び
ii)トレーサーH2O2濃度を測定するペルオキシダーゼ、
に従い試験した(組織片上に置いた液滴(30μL)及び後者の下の培地(800μL)における測定)。
【0356】
生検及び表皮及び真皮上の液滴(30μL)は、治療用製剤(それぞれ24.3 μM又は5.0 mg/L 及び352.8 mM又は12 g/L)よりも、活性物質(121.5 μM又は25.02 mg/L)及びトレーサー(1.77 M又は60 g/L)が5倍以上濃縮されたものである。30μLの混合物1×5液滴中、3.65ナノモル又は750 ngの活性物質及び53 マイクロモル又は1.8 mgのトレーサーが存在する。
【0357】
【0358】
混合物1の酸化還元効率の低~中度の減少(試験1)は、組織片上の液滴中で観察される(-1.4~-23.9%)。
【0359】
混合物1のトレーサーH2O2の量の中~高度の減少(試験2)は、組織片上の液滴中で観察される(-16.5~-99.9%))。
【0360】
試験片下の培地の酸化還元効率の低~高度の増大(試験3)が観察される。それは、組織片及びその種類に依存する。これが完全な生検である場合、経皮浸透によるこの増大は低い。平均で6.35%で、混合物1の活性物質232ピコモル(47.6ng)の浸透に対応する。これが表皮又は真皮である場合、この増大は高度に変動する(0.8~100%)。これは、それらの組織学的構造の違い(例えば穴、真皮の血液の循環、表皮の神経終末等)によるものと思われる。
【0361】
組織片下の培地中のトレーサーH2O2の量の検出不可~低度の増大(試験4)は、その種類に拘らず検出される(<+0.001~1.7%)。これが完全な生検である場合、経皮浸透によるこの増大は特に低い(<0.53~47.7ナノモル、即ち<0.018~1.62 μg)。平均で6.35%で、混合物1の活性物質232ピコモル(47.6ng)の浸透に対応する。これが表皮又は真皮である場合、この増大は低い(1.04及び0.31%、即ち0.55マイクロモル及び0.16マイクロモル、又は18.7 μg及び5.6μg)。
【0362】
結論:
活性物質及びペルオキシドトレーサー、ラジカルの供与体の用量による酸化還元効率である混合物1の典型と考えられる2つのパラメーターの組織独立(吸収、不活性化、浸透)が存在する。
【0363】
全生検を考慮することにより、混合物1の穿孔指数は、組織片の厚さ、即ち1mm(表皮の平均の厚さ)~2mmに対応する。
【0364】
表皮は、患者のヘルペスビリオンの軸索脱塩(axone desalting)の中心であり得る多くの神経末端を含んでいる。それらは、感染した上皮細胞又は感染する前の細胞と同じように混合物1の標的である。両方の組織の連続を考慮することにより、混合物1の生物相は、ある程度厳しく上皮の厚さ(1mm)の1つであり、全体として最高の標的組織吸収が達成される。
【0365】
真皮のみが脈管化されると考慮することにより、混合物1の最大で80.6%の酸化還元効率は、その接触及び1.7%のトレーサーで再び見出され得る。これらの実験条件下、混合物1×5の生体利用効率は、活性物質が2.94ナノモル又は605 ng、及びペルオキシドトレーサーが0.9マイクロモル又は30.6 μgである。
【0366】
In vitroでの遺伝毒性試験において、Ames検定を用いて、本発明の混合物及びその代謝物は、アクチベーターS9の存在下変異原性ではなく(Salmonella株5/5)、その非存在下で1/5株に対して変異原性であった。
【0367】
刺激された又はされていない皮膚に対する局所適用において、本発明の混合物(活性物質24.3 μM又は5.0 mg/L)は、関連する刺激毒性を何ら有しない。
【0368】
口腔及び膣内刺激試験において、本発明の混合物(24.3 μM又は5.0 mg/L)は、それぞれ刺激性ではなく(スコア0/16)、及び非常に弱い(スコア1/16)。
【0369】
鶏卵の絨毛尿膜の刺激の高感度の試験において、混合物1(18.23及び24.3 μM又は3.75及び5.0 mg/L)は中度に刺激性である(それぞれの刺激指数又はIS = 6.8 ± 0.4及び6.3 ± 0/21)。
【0370】
真皮適用による急性毒性試験において、60及び75 mg/kgのH2O2トレーサー中に含有される25.0及び31.3 μg/kgの活性物質の用量での本発明の混合物は、31.3 μg/kgの活性物質及び75 mg/kgのトレーサーの「最大耐性量」(MTD)及び「観察し得る有害作用の無い最大用量」(MDWNODE)又は「観察し得る副作用の無いレベル」(NOAEL)において、全く症状が無く耐容性は良好である。
【0371】
血管内注射による急性毒性試験において、25及び30mg/kgのH2O2トレーサー中に含有される10.4及び12.5 μg/kgの活性物質の用量での本発明の混合物は、12.5μg/kgの活性物質の「最大耐性量」(MTD)において顕著な症状が無く耐容性である。
【0372】
実施例11-本発明の混合物の許容される毒性
I-in vitro変異原性(Ames検定-OECD471)
この試験の目標は、Salmonella typhimurium TA97a, TA98, TA100, TA102及びTA1535株に対する本発明の活性混合物(混合物1)及びその代謝物(ラット肝臓のS9フラクションによって生産された)の変異原活性を評価することであった。
【0373】
結論:
S9活性化系無しでは、本発明の活性混合物(7.7 μM又は2.43 μM、即ち1.58 mg/L又は0.50 mg/L)及びその代謝物は、TA97a, TA98, TA100, TA102及びTA1535株に対し変異原性効果を有しない。
【0374】
S9活性化系が有る場合、本発明の活性混合物(混合物1x5: 121.5 μM又は25.02 mg/L)及びその代謝物は、TA97a, TA98, TA100, TA102及びTA1535株に対し変異原性効果を有しない。
【0375】
S9活性化系無しでは、本発明の活性混合物は、0.50 mg/LでTA102株に対し変異原性効果を有しない。
【0376】
このin vitro試験において、本発明の活性混合物及びその代謝物の変異原性効果は、その使用において限定的である(TA102株)。
【0377】
II-誘導後の皮膚感受性化(雌ハムスター; OECD 406, ISO 10993-10: 2013及びICH Memorandum SCCP 2005)
Magnusson & Kligman (Magnusson B. et al (1969) "The identification of contact allergens by animal assay. The guinea pig maximization test", J. Invest. Dermatol., 52(3), 268-276)のプロトコルに従い、雌ハムスターの感受性化の可能性は、3つのプロトコルにより試験された。
【0378】
プロトコル1:耐容された限定用量の決定
3g/L~48 g/LのH2O2トレーサー中に含まれた活性物質1.25 mg/L~20.00 mg/Lの混合物1を含有する1mlの「パッチ」を動物の脇腹に24時間適用し、それらの動物を観察した。
【0379】
トレーサー24 g/L中に含まれた活性物質10mg/Lの混合物1は耐容性良好で、中度の刺激を引き起こす。
【0380】
12 g/L のH2O2トレーサー中に含まれた活性物質5.0mg/Lの混合物1は耐容性良好で、この濃度は最高の無刺激用量と見なされる。
【0381】
プロトコル2:皮下注射による誘導後の耐容された限定用量の決定
12 g/L~24 g/LのH2O2トレーサー中に含まれた活性物質5~10mg/Lの混合物1を100μL皮下注射した。8日目(第一チャレンジ)、1ml「パッチ」として第一の局所適用が達成された。27日目(第二チャレンジ)、1ml「パッチ」として第二の局所適用が達成された。観察は29日間行われた。
【0382】
トレーサー12g/L中に含まれた活性物質5mg/Lの混合物1は耐容性良好で、刺激を引き起こさない。
【0383】
プロトコル3:12 g/LのH2O2トレーサー中に含まれた活性物質5mg/Lの混合物1の刺激及び局所適用によって誘導された刺激の試験
5 mg/Lの混合物1を、皮下経路を通じて100μl注射した。4日目、「パッチ」中の混合物1(1ml)の局所適用の前に、注射した領域を10%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液で刺激した。6日目、第二の局所適用が行われた。21日目(チャレンジ)、15~24g/Lのトレーサー中に含まれた活性物質6.26~10mg/Lの濃度の「パッチ」中の混合物1(1ml)の局所適用が行われた。
【0384】
トレーサー12g/L中に含まれた活性物質5.0mg/Lの混合物1は耐容性良好で、当該製剤による皮膚過敏化スコアは0/3に等しい。
【0385】
結論: 活性物質5.0mg/Lの混合物1は刺激性ではない。動物の皮膚に肉眼での変化は観察されなかった。従って、解剖病理的試験は不要である。
【0386】
III-舌下及び膣内刺激(雌ウサギ; OECD(99)20, -21, -23 -24, -(95)115, -(02) 9及びISO-10993-10: 2013)
この試験の目標は、5日間の人間への治療的使用に準拠する暴露に従うトレーサー12g/L中に含まれた活性物質5.0mg/Lの混合物1の舌下及び膣内耐容性を評価することであった。
【0387】
0~6日目、舌下及び膣内経路を通じて、24時間ごとに動物を処理した(1ml)。7日目、動物を観察し、体重を測定した。
【0388】
結論:活性物質5.0 mg/Lの混合物1の濃度は良好な耐容性を示す。舌下及び膣内刺激指数はそれぞれ0/16及び1/16である。従って、解剖病理的試験は不要である。
【0389】
IV-眼球刺激試験(ICCVAM App B)
使用された眼球刺激試験は、Official Journal dated 26/12/1996で公開された置換試験HET-CAM (Hen's Egg Test - Chorioallantoic Membrane)であった。これは、ICCVAMによって推奨される。
【0390】
この特に敏感な試験はE.U.によって公的に有効ではないが、ラベルR41(2002)を割り当てるための眼球刺激因子であり得るものを含む僅かに刺激性の物質であっても配置することを狙う使用において許容される。
【0391】
要するに、この方法は、受精した鶏卵の絨毛尿膜に対して、それぞれ9及び12g/Lのトレーサー中の3.75及び5.00 mg/Lの活性物質の混合物1の試験物質を適用することからなる。接触後0.5、2及び5分で、出血、凝固及び充血の3つの基準を観察し評点した。
【0392】
結果及び結論:
活性物質が3.75 mg/L又は5.00 mg/Lの混合物1は、中度の刺激性と分類され得(刺激指数又はIS = それぞれ6.8 ± 0.4及び6.3 ± 0/21)、即ち、導入直後又は接触後30秒で僅かな溶解を誘導し(重症度スコア=1/3)、出血又は凝固は無かった。
【0393】
Q値(参照NaOH 0.1M [IS = 15 ± 3]及び1% SDS [10 ± 2]の陽性物質と混合物1との間の指数の比率)を考慮して、活性物質がそれぞれ3.75及び5.00 mg/Lの混合物1において、Q対NaOH = 0.51~0.54、及びQ対SDS = 1.10~1.18であった。
【0394】
従って、既に行われた雌ウサギにおける膣内刺激試験よりも更に顕著である、極度に感受性のこの試験に関し、混合物1は、軽度(3.75 mg/L)~中度(5.00 mg/L)の刺激物質と見なされる。
【0395】
V-皮膚適用及び静脈内注射による急性毒性の試験-最大耐性量(MTD)及び観察し得る副作用の無いレベル (NOAEL) (Rat; OECD 474, ICH M3(R2)及びS6(R1))
この試験の目標は、皮膚適用(1ml)又は尾内注射(5 ml/kg)による混合物1の最大耐性量(MTD)を決定することである。臨床的観察は、14日目まで記録された。
【0396】
皮膚適用プロトコルの結論:
混合物1は、50 μg/kgの活性物質(1 ml~10 mg/L)の用量を有しており、耐容性は良好である。処理領域で僅かな紅斑が見られ、また小さな瘡蓋が生じたが2日以内に消失した。刺激は見られない。
【0397】
同一の比例的に僅かな症状が、37.5 μg/kgの活性物質(1 ml~7.5 mg/L)を含有する混合物1において観察される。
【0398】
25.0及び31.3 μg/kgの活性物質(1 ml、5.0及び6.26 mg/L)の用量での混合物1は耐容性良好である。皮膚の、代謝的、又は生理的症状は、D14で見られない。
【0399】
ラットにおける皮膚適用での混合物1のMTDは、活性物質31.3 μg/kg (1 ml、6.26 mg/L)である。
【0400】
ラットにおける皮膚適用での混合物1の観察し得る副作用の無いレベル (NOAEL)は、活性物質31.3 μg/kg (1 ml、6.26 mg/L)である。
【0401】
尾内注射プロトコルの結論:
混合物1の尾内投与の困難性は、本発明の内在的毒性に基づくものではなく、塞栓症を引き起こし得る分子酸素を特に生成し得る血液との接触の際の分解による。倫理的に限定された用量(3頭のラット)は、可逆的呼吸停止は、14.6 μg/kgの活性物質(5 ml/kgの混合物1、2.92 mg/L)であることを示す。D14まで毒性のサインは記録されなかった。
【0402】
混合物1は、12.5 μg/kgの活性物質(5 ml/kgの混合物1、2.5 mg/L)の静脈注射後に耐容である。注射時点で生理的困難(動作及び呼吸困難)が見られた。D14まで毒性のサインは記録されなかった。
【0403】
同一の比例的に少ない有意性の症候が、10.4 μg/kgの活性物質(5 ml/kgの混合物1、2.1 mg/L)の静脈内注射後に観察された。臨床的サイン又は体重曲線の変化は記録されなかった。解剖後D14での臓器の肉眼的観察は、何も明らかにしなかった。
【0404】
尾内注射における混合物1のMTDは、活性物質12.5 μg/kg(5 ml/kgの混合物1、2.5 mg/L)である。
【0405】
VI-混合物1の静脈内投与後の微小核の生成の探索によるin vivo遺伝毒性の評価(ラット雄及び雌; OECD 474及びICH S2(R1))
ラット雌(n=5)及び雄(n=5)に、HPLC水担体(静脈内経路)、シクロホスファミド陽性対照5及び10mg/kg、静脈内経路及びメタンスルホン酸エチル100及び150mg/kg (腹腔内経路)及び混合物1、1.46, 4.17及び12.5 μg/kg活性物質(静脈内経路)を注射した(22~26時間周期;5 ml/kg)。
【0406】
動物の罹患率、死亡率、体重及び臨床的パラメーター(温度、皮膚、毛髪、眼球、粘膜、分泌及び排出、呼吸及び神経機能、歩行及び姿勢)を記録した。2回目の処理の36~48時間後、動物の血液を採取し、フローサイトメトリーで解析した(毒性対照:未発達の赤血球(CD-71-陽性)の比率の減少)。微小核未発達赤血球(網状赤血球)の比率は、血液試料あたり4000回の観察に対して評価された。各試験されて物質における各ラット集団(n=10)は、40000回の観察を表す(表5)。
【表5】
【0407】
結論:対照群(陽性及び陰性)と比較して、混合物1は、1.46, 4.17及び12.5 μg/kg活性物質の範囲でラット(n=10、5頭雄及び5頭雌)における静脈内注射後の微小核網状赤血球の生産を誘導することによる遺伝毒性を有しない。
【0408】
実施例12-他の組成物との比較
本実施例は、特に:
1-試験製剤のFentonHaber-Weiss「様」触媒におけるカルシウムの役割
2-活性物質の3つの5.0 mg/L製剤間の違いの存在
に対する、組成物の、特に酸化還元電位の影響を示す。
【0409】
S1:混合物1
S2: US 6,660,289の組成物
S3: WO/2010/004161の組成物
【0410】
プロトコル1(表6及び7):
-2つの測定されたパラメーター:)i)pH、ii)酸化還元電位
-触媒CaCl2 (1M、H2O中):最終濃度24mMにおける添加
-キネティクス:初期(T0)、CaCl2添加後撹拌しながら1、2、3分(T1、T2、T3)
【0411】
【0412】
皮膚のpHは、4.93+/-0.45~5.12+/-0.56である。膣内のpHは、通常は4.50のオーダーで、閉経期に6.00の範囲にまで上がり得る。
【0413】
-溶液S1は、ヒト皮膚及び粘膜のpHのオーダーのpHで緩衝される。このpHは、CaCl2を最終の24mMに添加した後接触の3分まで相対的に定常を維持する。CaCl2の塩素の添加に部分的により得るE°の中度の増大が見られる。
【0414】
-酸性pHは、鉄により媒介される細胞傷害性脂質ペルオキシド化を増幅する。
【0415】
溶液S2は緩衝されない。そのpHは、皮膚又は粘膜と接触するのにあまり適さない(治療的使用における共生フロラの破壊の可能性を含む)。このpHは、CaCl2を最終の24mMに添加した後接触の3分まで相対的に定常を維持する。CaCl2の塩素の添加に部分的により得る、少なくともより少ない中度の増大対E°のS1が見られる。
【0416】
溶液S3は緩衝されない。そのpHは、皮膚又は粘膜と接触するのにあまり適さない(治療的使用における共生フロラの破壊の可能性を含む)。このpHは、CaCl2最終24mMを添加した後接触の3分まで相対的に定常を維持する。E°の顕著な増大(+50mV)が観察され、これは、CaCl2の塩素の添加に部分的によるが、潜在的な増大対S1及びS2における違いに関し、この単一の要素は恐らく存在し得ない。
【0417】
酸性pH(<2.33)でのin situの鉄イオンに関し、酸化還元電位は400mVのオーダーであり、(III)フォームのFe、即ち最も細胞傷害性のフォームである。4.5のオーダーのpHにおいて、酸化還元電位は300mVのオーダーであり、(II)フォームのヘモグロビンFe及び(III)フォームのトランスフェリンと複合した血漿Feである。
【0418】
溶液S2及びS3のpHで、鉄オキシドフォームFe(OH)3は、高度に不利である。従って、Fenton-Haber-Weiss反応は、あまり効果的ではない。
【0419】
Fe(OH)
3/Fe
2+のペア(Fenton型)の電位の値は:E’° = 1.19 - 0.18 x pHである。
【表7】
【0420】
この試験において、Fe(OH)3/Fe2+のペアが不利であることが確認されている。このペアの酸化還元電位が改善されても(418-428mV)、それは、細胞の接触にとって顕著なままである。
【0421】
-動物細胞の膜電位は陰性である(≒-70mV)。溶液の酸化還元電位が顕著になるほど、真k電位の変化は大きくなり、溶液2及び3によって既に誘導された顕著な細胞ストレスを潜在化するカルシウム流入の誘導を伴う細胞の酸化ストレス(アポトーシスの遺伝子、eNOS経路、・・・の誘導)の誘導が多くなる。
【0422】
従って、製剤S2のpH及び酸化還元電位、特に製剤S3の酸化還元電位は、最も細胞傷害性に近い。これらの溶液S2及びS3のいずれも、治療的使用に適切では有り得ない。
【0423】
プロトコル2(表8):
カルシウムの細胞及び血漿濃度は、2~3mMのオーダーである。このプロトコルは、製剤の治療的使用に基づく。
【0424】
-1つの測定されるパラメーター:ペルオキシドの残留量(H2O2、過酢酸;試験範囲Quantofix 0~25 mg/L)
【0425】
-触媒CaCl2 (1M、H2O中):最終濃度1.25, 2.5, 10, 25及び50mMにおける添加
【0426】
-最終体積: 1ml = 0.950 μLの試験溶液+ 0.05 μLのCaCl2希釈物。試験溶液の希釈計数:1.05.試験溶液の4.76 mg/Lの活性物質(初期5.00 mg/L)を含有するトレーサーH2O2の最終濃度11.4 g/L(初期12 g/L)。
【0427】
-キネティクス:添加後撹拌しながら5分。
【0428】
【0429】
(生理的濃度)と接触して5分の製剤S1の不活性化は、係数1,500(試験4)、即ち12g/L~8mg/Lトレーサー及び5.00 mg/L~3.33 μg/L活性物質によるペルオキシド減少に対応する。
【0430】
S2及びS3製剤に関する比較の結果
使用される金属に拘らず、溶液S2は:
-その可能性を保持するための非緩衝的pH、
-その細胞傷害性酸化還元電位、
-そのカルシウム触媒に対する相対的非依存性、
- H2O2及び過酢酸による生理的条件下での細胞傷害性(Ag+イオンの存在に加え、例えば不可逆的な細胞傷害性を有する)、
-使用される実験条件下、Fenton-Haber-Weiss様触媒が無く、故に治療的使用のための反応性ラジカル生産が無い、
によって、治療的使用に適さない。
【0431】
特許出願WO2010/004161に記載される使用される金属及びキレートペアに拘らず、溶液S3は:
-BAPTAに適合しないpH、
-その細胞傷害性酸化還元電位、
-そのカルシウム触媒に対する相対的非依存性、
- H2O2及び過酢酸による生理的条件下での細胞傷害性、
-使用される実験条件下、Fenton-Haber-Weiss様触媒が無く、故に治療的使用のための反応性ラジカル生産が無い、
によって、治療的使用に適さない。
【0432】
対照的に、本発明の製剤S2の反応化学モデルは、そのカルシウムによる脱安定化によって正しい。
【0433】
製剤S1において:
-pH、
-緩衝ペア(ペアの一方の要素の添加:酢酸、in situで過酢酸が僅かに生産されるため)、
-Fenton-Haber-Weiss様反応に適合する又はしない遷移金属及びその原子価、
-キレート剤のペア(「カスケード」中のそれらとKdCa2+及びKdMo, KdFe2+/Fe3+との適合性)、
-キレート剤の非細胞穿孔、
-in situでの、
生理的用量及びpHでの(キレート剤の選択の重要性)、特に脂質酸化(Fe(III)を殆ど生産しない)及び短い範囲で蓄積せずに穿孔する反応性ラジカルの瞬間的な生成を限定する酸化還元電位での、カルシウム又は他の存在する金属イオンによる溶液S1の複合体の活性化、
の選択が、この製剤を治療的使用に適合するものとする。
【0434】
溶液S1は、最小で2.5mMの生理的濃度のカルシウムで強力に分解される。この非生理的カルシウム濃度の減少(1.25mM)又は増大(10~50mM)は、平衡の置換(質量作用の法則)によるFenton-Haber-Weiss様反応によりペルオキシドのこの分解を強力に変化させる。溶液S1に対応する化学複合体は、細胞及び血漿カルシウム定数における特定の反応に完全に適合される。
【0435】
実施例13-Mo及びLaの組合せを用いる本発明の活性混合物の例
本発明のこの組成物の例(混合物2)は、モリブデン塩とランタン塩を用いて作製される。表9に示すように調製され、この表の濃度は、各成分の初期濃度を示している。
【表9】
【0436】
この組成は、使用される触媒プロセスを考慮せずに添加される試薬の濃度に対応するので、「初期」と称される。
【0437】
合成に用いられる全ての物質及び最終産物は、IR-FTスペクトルによって評価される。
【0438】
【0439】
製造プロセス:
この製造プロセスは、下記の変更を除いて実施例1の混合物1のものと同じである:
-2つのSC溶液が調製される:
溶液A- Na2MoO4.2H2O (Mo(VI)の供給源; 100%) 200mg (最終2.4mM)
水 qsp 340ml
室温で静かに撹拌
溶液B- La(NO3)3.6H2O (La(III)の供給源; 100%) 200mg (最終1.4mM)
水 qsp 340ml
室温で静かに撹拌
【0440】
-溶液A(10mL)及びその後溶液B(10mL)を漸進的にSi2溶液に導入して、ランタンヒドロペルオキソモリブデートを調製する
-工程(vii):キレート剤添加-S4溶液の調製
BAPTA(98.8%)導入 20mg/L
EGTA(99.1%)導入 400mg/L
-NaOHで最終溶液のpHを4.67に調整する
-最終Eredoxは: 380 mV
【0441】
混合物2において、La(MoO4)1-, Na+の最終濃度は:20.8μMである。
【0442】
実施例14-ヒト血漿に対するモリブデン塩及びランタン塩の二重複合体における本発明の酸化還元効率の評価
(MoO
4)
2-(混合物1)及びLa(MoO
4)
1-(混合物2)の酸化還元効率を比較するため、
図3に記載されたものと同等及び
図5に記載されたものよりも低い濃度の製剤を、2分間ヒト血漿と接触させた。実験ブランクを差し引いた後、特にこの濃度領域において、本発明の混合物1及び2は、酸化ケルセチンのin situ生成の増大をもたらす。試験されたMoO
4
2-及びLa(MoO
4)
1-の最終濃度は:それぞれ0.00, 3.80, 7.59, 1215 nM、及び0.00, 3.25, 6.50, 1,040 nMであった(
図8)。
【0443】
2つの製剤(混合物1及び混合物2)の間の酸化ケルセチン生成(頂点は295nm周辺)の違いは顕著ではない。本発明の2つの組成物の間の酸化還元効率は同等である。