(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】DICゲル及びポリオールの成分を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240708BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240708BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20240708BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240708BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/55
A61K8/29
A61K8/25
A61Q1/02
A61Q19/00
A61Q17/04
A61K8/02
A61K8/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019119924
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-06-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼崎 友美
(72)【発明者】
【氏名】小池 徹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 望
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
(72)【発明者】
【氏名】白谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 秀彦
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-015359(JP,A)
【文献】特開2006-083140(JP,A)
【文献】Restorative Anti-Aging Eye Cream, MINTEL GNPD [ONLINE], 2019.01,[検索日 2023.06.27],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.6281913)
【文献】Purifying Clay Cleanser, MINTEL GNPD [ONLINE], 2016.05,[検索日 2023.06.27],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.3992245)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体中に、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の粉末と、
(d)少なくとも1種のポリオールと
を含む皮膚化粧用組成物であって、
前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩が、フィチン酸及びその塩からなる群から選択され、
前記(d)ポリオールが、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
前記(a)カチオン性多糖の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%であり、
前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%から10質量%であり、
組成物中の前記(c)粉末の量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%~25質量%であり、
組成物中の前記(d)ポリオールの量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%~20質量%であり、
前記(a)カチオン性多糖及び前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩が動的イオン架橋ゲルを形成し、
前記(c)粉末が、生理学的に許容される揮発性媒体に不溶性である、皮膚化粧用組成物(但し、皮膚洗浄剤組成物を除く)。
【請求項2】
前記(a)カチオン性多糖が、カチオン性セルロースポリマーから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(a)カチオン性多糖が、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(a)カチオン性多糖が、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の前記(a)カチオン性多糖の量が、組成物の総質量に対して、0.05質量%~5質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の前記(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量が、組成物の総質量に対して、0.05質量%から5質量%である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記(c)粉末が、顔料、フィラー、UVフィルター及びそれらの混合物か
ら選択される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物中の前記(c)粉末の量が、組成物の総質量に対して、
0.5質量%~
20質量%である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記(d)ポリオールが
、ジプロピレングリコール
、ペンチレングリコール
、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中の前記(d)ポリオールの量が、組成物の総質量に対して、
0.5質量%~
15質量%である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
皮膚をメーキャップするための又は紫外線から皮膚を保護するための組成物である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
皮膚のための美容方法であって、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の組成物を皮膚に塗布する工程と、
前記組成物を乾燥させて、皮膚上に化粧膜を形成する工程と
を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的イオン架橋(DIC)ゲルを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーにより形成されるポリイオンコンプレックスは、既に知られている。
【0003】
ポリイオンコンプレックスを調製するために、典型的には、アニオン性ポリマーの水溶液と、別のカチオン性ポリマーの水溶液とを混合させることができる。得られた混合物のpHを変化させることによって、特定のpH条件下でアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーをイオン結合させてゲル粒子を形成する。ゲル粒子は、アニオン性及びカチオン性ポリマーの電荷を相殺することによって不溶性の耐水性皮膜を形成することができる。
【0004】
美容目的のポリイオンコンプレックスから作製される皮膜の使用は、例えばWO2013/153678及びJP-A-2014-227389でも提案されている。WO2013/153678及びJP-A-2014-227389に開示された皮膜は、ある特定の美容効果を提供することができる。
【0005】
ポリイオンコンプレックスを含む分散体は、常に安定であるとは限らないことが発見された。特に、ポリイオンコンプレックスを含む分散体は、高温、例えば45℃以上で不安定となる傾向がある。分散体が不安定である場合、ポリイオンコンプレックスは、沈殿する傾向があり、したがって、分散体は、相分離を起こす場合がある。
【0006】
ポリイオンコンプレックスを含む分散体の安定性を改善するために、少なくとも1種のカチオン性多糖の使用が有効であることも発見された。例えば、カチオン性ポリマーとして、カチオン性多糖を使用してもよい。或いは、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとの組み合わせに、カチオン性多糖を添加してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2013/153678
【文献】JP-A-2014-227389
【文献】仏国特許第1492597号
【文献】欧州特許第1184426号
【文献】米国特許第4578266号
【文献】USP 5240975
【文献】EP-669,323
【文献】米国特許第2,463,264号
【文献】米国特許第5,237,071号
【文献】米国特許第5,166,355号
【文献】GB-2,303,549
【文献】DE-19,726,184
【文献】EP-893,119
【文献】WO 93/04665
【文献】DE-19855649
【非特許文献】
【0008】
【文献】Cosmetics & Toiletries、1990年2月、第105巻、53~64頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
更なる研究の結果として、少なくとも1種のカチオン性多糖のみを、少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩と共に使用して、DICゲルと略される動的イオン架橋ゲルであるゲルを形成することができることを発見した。好ましくは粒子の形態のDICゲルは、不溶性耐水性皮膜も形成することができる。
【0010】
しかしながら、DICゲルによって形成される皮膜が粉末を含む場合、皮膜中の粉末の分布の均一性又は一様性は低減され得ることも発見した。したがって、粉末が白色等の色を有する場合、皮膜の色は不均一又は非一様となりうる。また、粉末がUVフィルターとして機能し得る場合、粉末によるUV遮蔽効果は、より低減された均一性又は一様性を示すことがあり、したがって、皮膜の一部分は、UV線を効果的に遮蔽できないことがあり、一方で、皮膜の他の部分は、UV線を効果的に遮蔽できることがあり、その結果、皮膜の全SPF値を低下し得る。
【0011】
したがって、本発明の目的は、皮膜中の粉末の分布をより均一又はより一様とすることができる、DICゲル及び粉末を含む皮膜を形成することができる組成物を提供することである。
【0012】
特に、本発明は、粉末による色及びUV遮蔽等の特性又は効果が、皮膜の表面からより均一又はより一様に示され得、その結果、例えば、皮膜の色をより均一若しくはより一様にし、且つ/又は全SPF値を高め得る、DICゲル及び粉末を含む皮膜を形成することができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記の目的は、少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体中に、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の粉末と、
(d)少なくとも1種のポリオールと
を含む組成物であって、(c)粉末が、生理学的に許容される揮発性媒体に不溶性である組成物によって、達成することができる。
【0014】
(a)カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマーから選択することができる。
【0015】
(a)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有してもよい。
【0016】
(a)カチオン性多糖は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0017】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%であってもよい。
【0018】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、3つ以上の酸基を有する非ポリマー有機酸及びその塩から選択することができる。
【0019】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びそれらの混合物からなる群から選択される3つ以上の酸基を有してもよい。
【0020】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、フィチン酸、クエン酸、アコニット酸、EDTA、グリチルリチン、イノシトール三リン酸、イノシトールペンタキスリン酸、トリポリリン酸、アデノシン三リン酸、その塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0021】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して0.001質量%から10質量%、好ましくは0.05質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%であってもよい。
【0022】
(c)粉末は、顔料、フィラー、UVフィルター及びそれらの混合物、好ましくは無機顔料、無機フィラー、UVフィルター及びそれらの混合物、より好ましくは二酸化チタン粒子、シリカ粒子及びそれらの混合物から選択することができる。
【0023】
本発明による組成物中の(c)粉末の量は、組成物の総質量に対して0.1質量%から25質量%、好ましくは0.5質量%から20質量%、より好ましくは1質量%から15質量%であってもよい。
【0024】
(d)ポリオールは、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0025】
本発明による組成物中の(d)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%であってもよい。
【0026】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくは皮膚化粧用組成物であってもよい。
【0027】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程とを含む方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
鋭意検討の結果、本発明者らは、皮膜中の粉末の分布をより均一又はより一様とすることができるDICゲル及び粉末を含む皮膜を形成することができる組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0029】
したがって、本発明による組成物は、少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体中に、
(a)少なくとも1種のカチオン性多糖と、
(b)少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩と、
(c)少なくとも1種の粉末と、
(d)少なくとも1種のポリオールと
を含み、
(c)粉末は、生理学的に許容される揮発性媒体に不溶性である。
【0030】
驚くべきことに、(d)ポリオールを、DICゲルを形成する(a)カチオン性多糖と(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩との組み合わせと共に使用すると、本発明による組成物によって形成される皮膜中の(c)粉末の分布を改善することができる。したがって、皮膜中の(c)粉末の分布は、成分(a)及び(b)の組み合わせと共にポリオールを使用しない場合と比べて、より均一又はより一様になりうる。
【0031】
特に、本発明は、粉末による色及びUV遮蔽等の特性又は効果が、皮膜の表面からより均一又はより一様に示され得る、DICゲル及び粉末を含む皮膜を形成することができる組成物を提供することができる。例えば、本発明による組成物によって形成される皮膜は、成分(a)及び(b)の組み合わせの下でポリオールを使用しない場合と比較して、皮膜の表面に沿ってより一様の色及び皮膜の全表面のより高いSPF値を有し得る。したがって、皮膜は、より均一な色及び/又は皮膜のSPF値によって表されるより改善された総UV遮蔽効果を示すことができる。
【0032】
本発明はまた、追加の効果ももたらすことができる。
【0033】
本発明による組成物は、自己回復又は自己修復性皮膜をもたらすことができる。言い換えれば、本発明による組成物によって生成される皮膜は、例えば、引っ掻き等によって破壊されても自動的に修復され得、したがって、皮膜によってもたらされる美容効果の持続性を改善することができる。
【0034】
自己回復又は自己修復性皮膜は、ゲル、好ましくはヒドロゲルで構成され得る。ゲルは、動的にイオン架橋されている。本発明による組成物によって調製された動的イオン架橋ゲルは、DICゲルである。
【0035】
DICゲル中の動的イオン架橋は、破壊可能であるが、再形成可能であることから、永久的な共有結合とは異なる。動的イオン架橋は、例えば、切断すること等によって容易に破壊されうるが、例えば、互いに接触させることによって容易に再形成され得、それにより自己回復又は自己修復特性を示す。例えば、ゲルが2つの断片に切断された場合、カチオン性ポリマーと架橋剤との間のイオン相互作用が破壊される。しかしながら、2つの断片が互いに接触した場合、それらは、カチオン性ポリマーと架橋剤との間のイオン結合を再形成することができ、互いに接着することができる。したがって、例えば、亀裂がゲル上に形成された場合でも、それらは消失することができる。
【0036】
本発明による組成物は、長期間安定であり、組成物を基質、好ましくは皮膚等のケラチン物質上に塗布し、組成物を乾燥させることによって使用して、自己回復又は自己修復特性を有するゲルの皮膜を容易に調製することができる。
【0037】
本発明による組成物によって調製される皮膜は、多様な美容機能を有することができる。
【0038】
例えば、本発明による組成物によって調製される皮膜は、それ自体、悪臭を吸収若しくは吸着する、皮膚等のケラチン物質の外観を変化させる、ケラチン物質の触感を変化させる、及び/又は、例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン物質を保護する等の美容効果を有しうる。
【0039】
本発明による組成物によって調製される皮膜が少なくとも1種の粉末を含むことから、皮膜は、粉末によってもたらされる美容効果を有しうる。例えば、皮膜が、色及び/又はUV遮蔽効果を有する少なくとも1種の粉末を含む場合、皮膜は、皮膚等のケラチン物質の元の色を被覆若しくは隠蔽することができ、且つ/又はUV線からケラチン物質を保護することができる。更に、皮膜は、長持ちする色及び/又は長持ちするUV遮蔽効果を示しうる。更に、例えば、機械力によって皮膜中の力の分布を再整理し、皮膜を破壊することなくより均一にすることができるため、皮膜は、皮膜への摩擦による機械力を与えることによってSPF値を増加させることさえもできる。
【0040】
以下、本発明による組成物、方法等をより詳細に説明する。
【0041】
(カチオン性多糖)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のカチオン性多糖を含む。2つ以上の異なるタイプの(a)カチオン性多糖を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの(a)カチオン性多糖、又は異なるタイプの(a)カチオン性多糖の組み合わせを使用することができる。
【0042】
(a)カチオン性多糖は、正の電荷密度を有する。(a)カチオン性多糖の電荷密度は、0.01meq/gから20meq/g、好ましくは0.05から15meq/g、より好ましくは0.1から10meq/gであってもよい。
【0043】
(a)カチオン性多糖の分子量は、500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更により好ましくは5,000以上であることが好ましい場合がある。
【0044】
説明において別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味する。
【0045】
(a)カチオン性多糖は、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、及びピリジル基からなる群から選択される少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。本明細書における(第一級)「アミノ基」という用語は、-NH2基を意味する。(a)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有することが好ましい。
【0046】
(a)カチオン性多糖は、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、2種類を超えるモノマーから得られるコポリマー、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーの両方を意味すると理解される。
【0047】
(a)カチオン性多糖は、天然及び合成のカチオン性多糖から選択することができる。
【0048】
(a)カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマーから選択されることが好ましい。カチオン性セルロースポリマーの非限定的な例は、以下の通りである。
【0049】
(1)カチオン性セルロースポリマー、例えば仏国特許第1492597号等に記載されている、1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばDow Chemical社によって名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典で、トリメチルアンモニウム基で置換されているエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0050】
(2)少なくとも1種の水溶性第四級アンモニウムのモノマーでグラフト化され、例えば米国特許第4,131,576号に記載されるセルロースコポリマー及びセルロース誘導体等のカチオン性セルロースポリマー(例えばメタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、及びジメチルジアリルアンモニウムから選択される少なくとも1つでグラフト化されたヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース等)。これらのポリマーに相当する市販製品には、例えば、Akzo Novel社によって名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が含まれる。
【0051】
(3)少なくとも1つの脂肪鎖、例えば少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル又はアルキルアリール基を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有するカチオン性セルロースポリマー。カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つの脂肪鎖を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基(例えば、少なくとも8個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル若しくはアルキルアリール基、又はそれらの混合物)で修飾されている四級化ヒドロキシエチルセルロースであることが好ましいことがある。第四級アンモニウム基によって保持されているアルキル基は、好ましくは8~30個の炭素原子、特定すると10~30個の炭素原子を含みうる。アリール基は、好ましくは、フェニル、ベンジル、ナフチル又はアントリルの各基を示す。より好ましくは、カチオン性セルロースポリマーは、少なくとも1つのC8~C30炭化水素基を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含んでもよい。挙げることができるC8~C30脂肪鎖を含有する四級化アルキルヒドロキシエチルセルロースの例には、Dow Chemical社によって販売されている製品Quatrisoft LM 200、Quatrisoft LM-X 529-18-A、Quatrisoft LM-X 529-18B(C12アルキル)及びQuatrisoft LM-X 529-8(C18アルキル)又はSoftcat Polymer SL100、Softcat SX-1300X、Softcat SX-1300H、Softcat SL-5、Softcat SL-30、Softcat SL-60、Softcat SK-MH、Softcat SX-400X、Softcat SX-400H、SoftCat SK-L、Softcat SK-M、及びSoftcat SK-H、並びにCroda社によって販売されている製品Crodacel QM、Crodacel、QL(C12アルキル)及びCrodacel QS(C18アルキル)が含まれる。
【0052】
(a)カチオン性多糖は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0053】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0054】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下であってよい。
【0055】
本発明による組成物中の(a)カチオン性多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%であってもよい。
【0056】
(架橋剤)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩を含む。2つ以上の異なるタイプの(b)架橋剤又はその塩を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの(b)架橋剤若しくはその塩、又は異なるタイプの(b)架橋剤若しくはその塩の組み合わせを使用することができる。
【0057】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤の酸基の少なくとも1つは、塩の形態であってもよい。(b)架橋剤の全ての酸基が、塩の形態であってもよい。
【0058】
本明細書における「塩」という用語は、(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤に好適な塩基を添加することによって形成された塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤と塩基とを反応させることにより得ることができる。塩としては、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0059】
(b)架橋剤は、3つ以上の酸基を有する非ポリマー酸から、より好ましくは3つ以上の酸基を有する非ポリマー有機酸から選択されることが好ましい。
【0060】
本明細書における「非ポリマー」という用語は、(b)架橋剤が、2つ以上のモノマーを重合することによって得られないことを意味する。したがって、非ポリマー酸、特に非ポリマー有機酸は、ポリカルボン酸等の2つ以上のモノマーを重合することによって得られる酸に相当しない。
【0061】
3つ以上の酸基を有する非ポリマー酸、特に非ポリマー有機酸の分子量は、1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは600以下であることが好ましい。
【0062】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、親水性又は水溶性であってもよい。
【0063】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びそれらの混合物からなる群から選択される3つ以上の酸基を有してもよい。
【0064】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸、ヘキサカルボン酸、これらの塩、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0065】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、クエン酸、アコニット酸、フィチン酸、EDTA、グリシルリジン、イノシトール三リン酸、イノシトール五リン酸、トリポリリン酸、アデノシン三リン酸、これらの塩、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0066】
(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩は、クエン酸、フィチン酸、その塩、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0067】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して0.001質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0068】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下であってよい。
【0069】
本発明による組成物中の(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の量は、組成物の総質量に対して0.001質量%から10質量%、好ましくは0.05質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%であってもよい。
【0070】
(生理学的に許容される揮発性媒体)
本発明による組成物は、少なくとも1種の生理学的に許容される揮発性媒体を含む。
【0071】
「生理学的に許容される」揮発性媒体という用語は、本発明による組成物をケラチン物質に塗布するのに特に好適である揮発性媒体を示すことを意図している。
【0072】
「揮発性」という用語は、生理学的に許容される媒体が、標準大気圧、例えば1atm及び室温(25℃等)で蒸発することができることを意味する。
【0073】
生理学的に許容される媒体は、一般的に、本発明による組成物が塗布される支持体の性質、更には本発明による組成物が包装される形態に適合される。
【0074】
生理学的に許容される揮発性媒体は、少なくとも1種の親水性有機溶媒、水又はそれらの混合物を含んでもよい又はそれらからなってもよい。生理学的に許容される揮発性媒体は、水を含む又は水からなることが好ましい。
【0075】
親水性有機溶媒としては、例えば、2~6個の炭素原子を含むモノアルコール、例えばエタノール又はイソプロパノールを挙げることができる。
【0076】
本発明による組成物中の生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上でありうる。
【0077】
本発明による組成物中の生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して、90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下であってよい。
【0078】
本発明による組成物中の生理学的に許容される揮発性媒体、好ましくは水の量は、組成物の総質量に対して、30質量%から90質量%、好ましくは40質量%から80質量%、より好ましくは50質量%から70質量%であってよい。
【0079】
(粉末)
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の粉末を含む。2つ以上の異なるタイプの(c)粉末を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの(c)粉末又は異なるタイプの(c)粉末の組み合わせを使用することができる。
【0080】
本発明によれば、(c)粉末は、生理学的に許容される揮発性媒体に不溶性である。
【0081】
本発明の目的では、用語「不溶性」粉末は、25℃での水等の生理学的に許容される揮発性媒体への溶解度が、粉末の総質量に対して1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であり、最も好ましくは溶解度がない粉末を意味する。
【0082】
(c)粉末は、粒子の形態である。
【0083】
(c)粉末の粒径は、限定されない。(c)粉末の平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、より一層好ましくは100nm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、より一層好ましくは300μm以下である。したがって、(c)粉末は、10nmから1000μm、好ましくは50nmから500μm、より好ましくは100nmから300nmの平均粒径を有してもよい。平均粒径は、動的光散乱法により、例えばNicomp Z380により測定されうる数平均粒径であってもよい。
【0084】
(c)粉末は、好ましくは固体の形態である。
【0085】
(c)粉末は、顔料、UVフィルター、及びそれらの混合物から選択されてよい。
【0086】
顔料
「顔料」という用語は、生理学的に許容される揮発性媒体に不溶性であり、結果として得られる皮膜を着色及び/又は不透明化することを意図した、白色又は有色の、無機又は有機粒子を意味すると理解されるべきである。
【0087】
顔料は、好ましくは380~780nmの範囲で吸収され、少なくとも1つの実施形態において、この吸収範囲内で最大限に吸収される。
【0088】
顔料は有機顔料であってもよい。本明細書に使用されるとき、用語「有機顔料」は、Ullmann's encyclopediaの有機顔料の章の定義を満たす任意の顔料を意味する。有機顔料は、例えば、ニトロソ、ニトロ、アゾ、キサンテン、キノリン、アントラキノン、フタロシアニン、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、ジオキサジン、トリフェニルメタン及びキノフタロン化合物から選択することができる。
【0089】
少なくとも1種の有機顔料は、例えば、カルミン、カーボンブラック、アニリンブラック、メラニン、アゾイエロー、キナクリドン、フタロシアニンブルー、ソルガムレッド、青色の顔料(Color Indexの参照番号CI 42090、69800、69825、73000、74100及び74160で分類されているもの)、黄色の顔料(Color Indexの参照番号CI 11680、11710、15985、19140、20040、21100、21108、47000及び47005で分類されているもの)、緑色の顔料(Color Indexの参照番号CI 61565、61570及び74260で分類されているもの)、橙色の顔料(Color Indexの参照番号CI 11725、15510、45370及び71105で分類されているもの)、赤色の顔料(Color Indexの参照番号CI 12085、12120、12370、12420、12490、14700、15525、15580、15620、15630、15800、15850、15865、15880、17200、26100、45380、45410、58000、73360、73915及び75470で分類されているもの)、及び例えば仏国特許第2679771号に記載されているインドール誘導体又はフェノール誘導体の酸化重合によって得られる顔料から選択することができる。
【0090】
これらの顔料はまた、例えば欧州特許第1184426号に記載されている複合顔料の形態であってもよい。これらの複合顔料は、例えば、有機顔料で少なくとも部分的に被覆されている無機核、及び有機顔料をその核に固定するための少なくとも1種の結合剤を含む粒子から構成されてもよい。
【0091】
他の例には、Hoechst社により以下の名称で販売されている製品等の有機顔料の顔料ペーストが含まれうる: Jaune Cosmenyl IOG: Pigment Yellow 3 (CI 11710); Jaune Cosmenyl G: Pigment Yellow 1 (CI 11680); Orange Cosmenyl GR: Pigment Orange 43 (CI 71105); Rouge Cosmenyl R'': Pigment Red 4 (CI 12085); Carmine Cosmenyl FB: Pigment Red 5 (CI 12490); Violet Cosmenyl RL: Pigment Violet 23 (CI 51319); Bleu Cosmenyl A2R: Pigment Blue 15.1 (CI 74160); Vert Cosmenyl GG: Pigment Green 7 (CI 74260);及びNoir Cosmenyl R: Pigment Black 7 (CI 77266)。
【0092】
少なくとも1種の顔料は、レーキから選択することもできる。本明細書に使用されるとき、用語「レーキ」は、不溶性粒子に吸着させた不溶化染料を意味し、このようにして得られた錯体又は化合物は使用中に不溶性のままである。
【0093】
染料を吸着させる無機基質には、例えば、アルミナ、シリカ、ホウケイ酸カルシウムナトリウム、ホウケイ酸カルシウムアルミニウム及びアルミニウムが含まれうる。
【0094】
有機染料の非限定例としては、コチニールカルミン及び以下の名称で知られる製品が挙げられる: D&C Red 21(CI45380)、D&C Orange 5(CI45370)、D&C Red 27(CI45410)、D&C Orange 10(CI45425)、D&C Red 3(CI45430)、D&C Red 4(CI15510)、D&C Red 33(CI17200)、D&C Yellow 5(CI19140)、D&C Yellow 6(CI15985)、D&C Green(CI61570)、D&C Yellow 10(CI77002)、D&C Green 3(CI42053)、D&C Blue 1(CI42090)。
【0095】
レーキの更なる非限定的な例は、次の名称で公知の製品である: D&C Red 7(CI 15 850:1)。
【0096】
少なくとも1種の顔料はまた、特殊効果を有する顔料であってもよい。本明細書に使用されるとき、用語「特殊効果を有する顔料」は、一般に、観察条件(光、温度、観察角度等)に応じて変化する不均一な有色の外観(特定の色調、特定の彩度及び/又は特定の明度を特徴とする)を作り出す顔料を意味する。したがって、これらは、標準的な均一、不透明、半透明、又は透明の色調を付与する白色又は有色顔料と対照的である。
【0097】
特殊効果を有する顔料は、蛍光顔料、フォトクロミック顔料及びサーモクロミック顔料等の低屈折率のものと、真珠光沢剤及びフレーク等の高屈折率のものとの2種類存在する。
【0098】
少なくとも1種の顔料はまた、基質上へ固定されない干渉効果を有する顔料、例えば、液晶(Wacker社からのHelicones HC)及びホログラフィック干渉フレーク(Spectratek社からのGeometric Pigments又はSpectra f/x)から選択することもできる。
【0099】
特殊効果を有する顔料には、蛍光顔料(日光で蛍光を発する物質又は紫外線蛍光を発する物質のいずれにせよ)、リン光顔料、フォトクロミック顔料及びサーモクロミック顔料も含まれうる。
【0100】
好ましい実施形態において、顔料は、また、無機顔料であってもよい。本明細書に使用されるとき、用語「無機顔料」は、Ullmann's encyclopediaの無機顔料の章にある定義を満たす任意の顔料を意味する。好ましくは、無機顔料は、少なくとも1種の無機材料を含む。本発明に有用な無機顔料の非限定例には、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物、フェリックブルー及び二酸化チタン等の金属酸化物、特に遷移金属酸化物が含まれる。以下の無機顔料も使用することができる: TiO2、ZrO2、Nb2O5、CeO2、及びZnSとの混合物としてのTa2O5、Ti3O5、Ti2O3、TiO、及びZrO2。
【0101】
顔料は、また、白色真珠光沢顔料、例えば、チタン又はオキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ等の真珠光沢顔料、チタン及び酸化鉄で被覆されたマイカ、チタン及び例えばフェリックブルー又は酸化クロムで被覆されたマイカ、チタン及び上記に定義された有機顔料で被覆されたマイカ等の有色真珠光沢顔料、またオキシ塩化ビスマスをベースとした真珠光沢顔料でもあってもよい。そのような顔料の例には、Engelhard社により販売されているCellini顔料(マイカ-TiO2-レーキ)、Eckart社により販売されているPrestige(マイカ-TiO2)及びMerck社により販売されているColorona(マイカ-TiO2-Fe2O3)が含まれうる。
【0102】
マイカ支持体上の真珠層に加えて、アルミナ、シリカ、ホウケイ酸カルシウムナトリウム、ホウケイ酸カルシウムアルミニウム及びアルミニウム等の合成基質をベースとした多層顔料が、本開示によると有用でありうる。
【0103】
フィラー
「フィラー」という用語は、室温及び大気圧で固体であり、生理学的に許容される揮発性媒体が室温を超える温度に付される場合でも、これらの成分に不溶性である着色されていない粒子を意味すると理解すべきである。フィラーは、その無機性又は有機性により、本発明による組成物に堅さを与え、且つ/又は組成物によって形成されうるメーキャップに柔らかさ及び均一性を与えることを可能にする。
【0104】
フィラーは、無機及び有機フィラーから選択することができる。フィラーが有機フィラーである場合、それはポリマー有機フィラーである。フィラーは、それらの結晶学的形態(例えば、層状晶、立方晶、六方晶及び斜方晶)に関係なく、任意の形態、例えば小板形状、球状及び長円形の粒子でありうる。
【0105】
本発明による組成物に使用されうるフィラーは、様々な無機及び/又は有機材料から作製することができ、これらに限定されないが、二酸化チタン、タルク、天然又は合成マイカ、アルミナ、ケイ酸アルミノ、シリカ(又は二酸化ケイ素)、カオリン又はクレイ等の他の不溶性ケイ酸塩、ポリアミド(Nylon(登録商標))、ポリ-β-アラニン及びポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー(Teflon(登録商標))粉末、粉末デンプン、窒化ホウ素、アクリル酸ポリマー粉末、シリコーン樹脂マイクロビーズ、例えばToshiba社製の「Tospearls(登録商標)」、オキシ塩化ビスマス、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、Maprecos社製の「Silica Beads SB 700(登録商標)」及び「Silica Beads SB 700(登録商標)」、Asahi Glass社製の「Sunspheres H-33(登録商標)」及び「Sunspheres H-51(登録商標)」等の中空シリカ微小球体、R.P. Scherrer社製の架橋アクリレートコポリマー「Polytrap 6603(登録商標)」から作製されたもの及びSEPPIC社製のポリメチルメタクリレート「Micropearl M100(登録商標)」から作製されたもの等のアクリルポリマー微小球体、ポリ尿素粉末、Toshiki社製の名称「Plastic Powder D-400(登録商標)」で販売されているヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチロールヘキシルラクトンコポリマー粉末等のポリウレタン粉末、ガラス又はセラミックマイクロカプセル、アクリル酸又はメタクリル酸メチルポリマー又はコポリマーのマイクロカプセル、或いは、塩化ビニリデン及びアクリロニトリルコポリマー、例えば、Expancel社製の「Expancel(登録商標)」、Shinetsu Chemical社製の名称「KSP100(登録商標)」で販売されているもの等の弾性架橋オルガノポリシロキサン粉末、Daito Kasei社製のCellulose Beads USF(登録商標)の名称で販売されているもの等の多孔質セルロースビーズ、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0106】
本発明の組成物に有用なシリカの中でも、結晶性、微晶質及び非晶質シリカを挙げることができる。
【0107】
例えば、挙げることができる結晶性シリカには、石英、トリジマイト、クリストバライト、キータイト、コーサイト及びスティショバイトが含まれる。微晶質シリカは、例えば、珪藻土である。
【0108】
非晶質形態の中では、石英ガラス並びに他のタイプの非晶質シリカ(コロイド状シリカ、シリカゲル、沈降シリカ及びヒュームドシリカ、例えばアエロジル及び焼成シリカ等)を使用することができる。エアロゲル(シリル化シリカ)等の多孔質シリカが好ましい。
【0109】
本発明の一実施形態において、(c)粉末は、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、セリサイト、焼成タルク、焼成マイカ、焼成セリサイト、合成マイカ、オキシ塩化ビスマス、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、及びヒドロキシアパタイトからなる群から選択される少なくとも1種の無機材料を含みうる。(c)粉末は、二硫化セレンを含んでもよい。
【0110】
本発明の別の実施形態では、(c)粉末は、ポリ尿素、メラミン-ホルムアルデヒド凝縮体、尿素-ホルムアルデヒド縮合物、アミノプラスト、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリホスフェート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、多糖、シリコーン、シリコーン樹脂、タンパク質、変性セルロース、及びガムからなる群から選択される少なくとも1種の有機材料を含みうる。
【0111】
表面処理
本発明によれば、(c)粉末は、表面処理されてもよい。表面処理は、任意の従来のプロセスによって実施することができる。
【0112】
本発明の目的において、表面処理とは、例えば、表面処理された粉末が処理前の固有の着色特性を維持し、表面処理されたフィラーが処理前の固有の充填特性を維持するというものである。例えば、有機染料を吸着させたアルミナ及びシリカ等の無機基質は、好ましくは、本発明の目的の表面処理したフィラーではない。
【0113】
(c)粉末は、少なくとも1つの疎水性コーティングを有していてもよい。
【0114】
疎水性コーティングは、(c)粉末を疎水性処理剤で処理することによって形成することができる。疎水性処理剤は、シリコーン、例えばメチコン、ジメチコン、又はパーフルオロアルキルシラン;脂肪酸、例えばステアリン酸;パーフルオロアルキルリン酸、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルシラザン、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を含むポリオルガノシロキサン、及びアミノ酸;N-アシル化アミノ酸又はそれらの塩;レシチン、イソプロピルトリイソステアリルチタネート、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0115】
(c)粉末として、シリコーン処理したシリカビーズを使用することができる。
【0116】
(c)粉末として、少なくとも1つの疎水性コーティングで被覆されたTiO2粒子も使用することができる。被覆されたTiO2粒子の中でも、以下のものを挙げてもよい:
- ポリジメチルシロキサンで被覆されたもの(CARDRE社によって供給されるCARDRE ULTRAFINE TITANIUM DIOXIDE AS);
- ポリメチルハイドロゲノシロキサンで被覆されたもの(MYOSHI社から商標名Cosmetic White SA-C47-051-10で販売されているポリメチルハイドロゲノシロキサンで被覆された未処理酸化チタン);
- パーフルオロポリメチルイソプロピルエーテルで被覆されたもの(CARDRE社から供給されたCARDRE MICA FHC 70173又は70170 CARDRE UF TIO2 FHC);
- シリカで被覆されたもの(CATALYSTS & CHEMICALS社から供給されたSPHERITITAN AB);
- テフロンで被覆されたもの(CLARK COLORS社から供給されたCS-13997 TEFLON COATED TITANIUM DIOXIDE);並びに
- ポリエステルで被覆されたもの(DESOTO社から供給されたEXPERIMENTAL DESOTO BEADS)。
【0117】
これらのTiO2の中でも、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンで被覆されたTiO2粒子が、より好ましい。
【0118】
本発明の一実施形態によれば、(c)粉末は、少なくとも1種の両親媒性物質で表面処理されていてもよく、特に(c)粉末は、少なくとも1種の両親媒性物質で部分的に又は完全に表面処理されていてもよい。(c)粉末は、両親媒性物質で部分的に処理されることが好ましい。(c)粉末は、本発明による組成物の連続相と分散相との間に位置し(これらの相を有する場合)、ピッケリングエマルジョンを形成しうる。分散相は、好ましくは、粒子を介して互いに接続する。
【0119】
両親媒性物質は、親水性及び組成性の両方の特性を有する(c)粉末をもたらすことができる。好ましくは、(c)粉末は、両親媒性の表面を有する。
【0120】
両親媒性物質は、例えば、アミノ酸;脂肪酸、脂肪アルコール及びこれらの誘導体、例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ステアリルアルコール、ヒドロキシステアリルアルコール、ラウリン酸及びこれらの誘導体;アニオン性界面活性剤;レシチン;脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、チタン塩、亜鉛塩又はアルミニウム塩、例えば、ステアリン酸アルミニウム又はラウリン酸アルミニウム;金属アルコキシド;多糖、例えば、キトサン、セルロース及びこれらの誘導体;ポリエチレン;(メタ)アクリルポリマー、例えばポリメタクリル酸メチル;アクリレート単位を含有するポリマー及びコポリマー;タンパク質;並びにアルカノールアミンから選択される少なくとも1種の化合物を含んでもよい。
【0121】
(c)粉末は、両親媒性物質の混合物で表面処理されていてもよい、及び/又は両親媒性物質により幾つかの表面処理を受けていてもよい。
【0122】
表面処理された粉末は、当業者に周知の表面処理技術に従って調製されうる、又は必要な形態で市販されうる。
【0123】
好ましくは、表面処理された粉末は有機層で被覆されている。有機層は、溶媒の蒸発、両親媒性物質中の分子間の化学反応、又は両親媒性物質中及び粉末中の分子間に共有結合を作り出すことによって、粉末に沈着されうる。
【0124】
したがって、表面処理は、例えば、両親媒性物質を粉末の表面と化学反応させることによって、及び両親媒性物質と粉末との間に共有結合を作り出すことによって実施されうる。この方法は、とりわけ米国特許第4578266号に記載されている。
【0125】
両親媒性物質が共有結合又はイオン結合している粉末が、好ましく使用される。
【0126】
両親媒性物質は、表面処理された粉末の総質量に対して、0.1質量%~50質量%、好ましくは0.5質量%~30質量%、より好ましくは1質量%~10質量%を表すことができる。
【0127】
両親媒性物質は、少なくとも1種の疎水性化されたアミノ酸を含むことが好ましい。疎水性化されたアミノ酸は、グルタミン酸誘導体又は少なくとも1種のグルタミン酸誘導体とアミノ酸との縮合物でありうる。
【0128】
グルタミン酸誘導体は、N-アシル化グルタミン酸又はその塩でありうる。塩としては、有機アルカノールアミンの金属塩、アンモニウム塩及びオニウム塩を挙げることができる。金属として、Na、K、Ba、Zn、Ca、Mg、Fe、Zr、Co、Al及びTiを使用することができる。有機アルカノールアミンとして、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール及びトリイソプロパノールアミンを使用することができる。グルタミン酸の窒素原子に結合しているアシル基は、8~22個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪酸、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸及び樹脂酸(アビエチン酸)から誘導されうる。
【0129】
少なくとも1種のグルタミン酸誘導体とアミノ酸との縮合物は、N-アシル化グルタミン酸と、アミノ酸、例えばリジンとの縮合物又はその塩でありうる。塩としては、上記に記述された有機アルカノールアミンの金属塩、アンモニウム塩及びオニウム塩を挙げることができる。ナトリウム塩が好ましい。グルタミン酸の窒素原子に結合しているアシル基は、上記に記述された8~22個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪酸から誘導されうる。ラウリン酸が好ましい。したがって、例えば、ジラウラミドグルタミドリジンナトリウム(旭化成ケミカルズ株式会社によって市販されているPellicer L-30)が上記の縮合物として好ましい。
【0130】
(c)粉末の両親媒性表面処理剤は、以下の処理剤から選択することができる:
- PEG-シリコーン処理剤、例えばLCW社により販売されているAQ表面処理剤;
- ラウロイルリジン処理剤、例えばLCW社により販売されているLL表面処理剤;
- ラウロイルリジンジメチコン処理剤、例えばLCW社により販売されているLL/SI表面処理剤;
- ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム処理剤、例えば三好化成株式会社により販売されているNAI表面処理剤;
- ジメチコン/グルタミン酸ステアロイル二ナトリウム処理剤、例えば三好化成株式会社により販売されているSA/NAI表面処理剤;
- 微結晶セルロース及びカルボキシメチルセルロース処理剤、例えば大東化成工業株式会社により販売されているAC表面処理剤;
- アクリレートコポリマー処理剤、例えば大東化成工業株式会社により販売されているAPD表面処理剤;
- ジラウラミドグルタミドリジンナトリウム処理剤、例えば大東化成工業株式会社により販売されているASL処理剤;及び
- ジラウラミドグルタミドリジンナトリウム/トリイソステアリン酸イソプロピルチタン処理剤、例えば大東化成工業株式会社により販売されているASL処理剤。
【0131】
両親媒性物質は、金属がMg、Al、Ca及びZnから選択されうる金属塩又は金属水酸化物、例えば水酸化アルミニウム及び塩化マグネシウムと共に、粒子にイオン的に結合されうる。
【0132】
ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム(及び)水酸化アルミニウムを使用する処理がより好ましい。
【0133】
ジラウラミドグルタミドリジンナトリウム又はジラウラミドグルタミドリジンナトリウム/トリイソステアリン酸イソプロピルチタンを使用する他の処理も、より好ましい。
【0134】
本発明の一実施形態において、(c)粉末それ自体は、乳白剤、真珠光沢剤、感触調整剤、皮膚保護剤、艶消し剤、摩擦強化剤、スリップ剤、品質改良剤、スクラブ剤、臭気吸収剤、着色剤及び清浄強化剤等の美容有効成分として機能しうる。
【0135】
UVフィルター
UVフィルターは、無機UVフィルター、有機UVフィルター、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0136】
無機UVフィルター
本発明に使用される無機UVフィルターは、UV-A及び/又はUV-B領域において活性であってよい。無機UVフィルターは、親水性及び/又は親油性であってもよい。無機UVフィルターは、好ましくは、化粧品において一般に使用される水及びエタノール等の溶媒に不溶性である。
【0137】
無機UVフィルターは、その平均(一次)粒子直径が1nmから50nm、好ましくは5nmから40nm、より好ましくは10nmから30nmの範囲であるような微粒子の形態であることが好ましい。本明細書における平均(一次)粒径又は平均(一次)粒子直径は、算術平均直径である。
【0138】
無機UVフィルターは、炭化ケイ素、被覆されていてもいなくてもよい金属酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0139】
好ましくは、無機UVフィルターは、金属酸化物で形成された顔料(平均一次粒径:一般的に5nmから50nm、好ましくは10nmから50nm)、例えば、酸化チタン(非晶質又はルチル及び/若しくはアナターゼ型の結晶質)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムで形成された顔料等から選択することができ、これらは全て、それ自体が周知のUV光保護剤である。好ましくは、無機UVフィルターは、酸化チタン、酸化亜鉛から選択することができ、より好ましくは酸化チタンである。
【0140】
無機UVフィルターは、被覆されていてもいなくてもよい。無機UVフィルターは、少なくとも1つのコーティングを有してもよい。コーティングは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、シリコーン、シラン、脂肪酸又はその塩(例えばナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄又はアルミニウム塩)、脂肪アルコール、レシチン、アミノ酸、多糖、タンパク質、アルカノールアミン、ワックス、例えばビーズワックス、(メタ)アクリルポリマー、有機UVフィルター、及び(ペル)フルオロ化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでもよい。
【0141】
コーティングは少なくとも1種の有機UVフィルターを含むことが好ましい。コーティング中の有機UVフィルターとしては、ジベンゾイルメタン誘導体、例えばブチルメトキシジベンゾイルメタン(アボベンゾン)及びBASF社によって「TINOSORB M」として市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチル-ブチル)フェノール](メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)が好ましい場合がある。
【0142】
公知のように、コーティング中のシリコーンは、様々な分子量の直鎖状又は環状及び分枝状又は架橋した構造を含む有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーであってよく、これは好適な官能性シランの重合及び/又は重縮合によって得られ、ケイ素原子が酸素原子を介して互いに接合(シロキサン結合)され、任意選択で置換された炭化水素基が炭素原子を介して前記ケイ素原子に直接接合されている、主要繰り返し単位から本質的に構成される。
【0143】
「シリコーン」という用語はまた、その調製に必要なシラン、特にアルキルシランを包含する。
【0144】
コーティングに使用されるシリコーンは、好ましくは、アルキルシラン、ポリジアルキルシロキサン、及びポリアルキルヒドロシロキサンからなる群から選択することができる。更に好ましくは、シリコーンは、オクチルトリメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、及びポリメチルヒドロシロキサンからなる群から選択される。
【0145】
当然ながら、金属酸化物で作製された無機UVフィルターは、シリコーンによるその処理の前に、他の表面処理剤、特に、酸化セリウム、アルミナ、シリカ、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、又はそれらの混合物で処理されていてもよい。
【0146】
被覆無機UVフィルターは、無機UVフィルターを、上記の化合物のいずれか、並びにポリエチレン、金属アルコキシド(チタン又はアルミニウムアルコキシド)、金属酸化物、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及び例えばCosmetics & Toiletries、1990年2月、第105巻、53~64頁に示されたものによる化学的、電子的、機械化学的、及び/又は機械的性質の1種以上の表面処理に供することによって調製されていてもよい。
【0147】
被覆無機UVフィルターは、以下であってよい:
シリカで被覆された酸化チタン、例えば池田物産株式会社製の製品「Sunveil」、
シリカ及び酸化鉄で被覆された酸化チタン、例えば池田物産株式会社製の製品「Sunveil F」、
シリカ及びアルミナで被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 500 SA」、Tioxide社製の製品「Tioveil」、及びRhodia社製の製品「Mirasun TiW 60」、
アルミナで被覆された酸化チタン、例えば石原産業株式会社製の製品「Tipaque TTO-55(B)」及び「Tipaque TTO-55(A)」、並びにKemira社製の「UVT 14/4」、
アルミナ及びステアリン酸アルミニウムで被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 T、MT 100 TX、MT 100 Z若しくはMT-01」、Uniqema社製の製品「Solaveil CT-10 W」及び「Solaveil CT 100」、並びにMerck社製の製品「Eusolex T-AVO」、
アルミナ及びラウリン酸アルミニウムで被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 S」、
酸化鉄及びステアリン酸鉄で被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 100 F」、
酸化亜鉛及びステアリン酸亜鉛で被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「BR351」、
シリカ及びアルミナで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 600 SAS」、「Microtitanium Dioxide MT 500 SAS」、及び「Microtitanium Dioxide MT 100 SAS」、
シリカ、アルミナ、及びステアリン酸アルミニウムで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばチタン工業株式会社製の製品「STT-30-DS」、
シリカで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えばKemira社製の製品「UV-Titan X 195」、
アルミナで被覆され、シリコーンで処理された酸化チタン、例えば石原産業株式会社製の製品「Tipaque TTO-55(S)」若しくはKemira社製の製品「UV Titan M 262」、
トリエタノールアミンで被覆された酸化チタン、例えばチタン工業株式会社製の製品「STT-65-S」、
ステアリン酸で被覆された酸化チタン、例えば石原産業株式会社製の製品「Tipaque TTO-55(C)」、又は
ヘキサメタリン酸ナトリウムで被覆された酸化チタン、例えばテイカ株式会社製の製品「Microtitanium Dioxide MT 150 W」。
【0148】
シリコーンで処理された他の酸化チタン顔料は、好ましくは、オクチルトリメチルシランで処理され、個々の粒子の平均粒径が25から40nmであるTiO2、例えばDegussa Silices社によって商標「T 805」で市販されているもの、ポリジメチルシロキサンで処理され、個々の粒子の平均粒径が21nmであるTiO2、例えばCardre社によって商標「70250 Cardre UF TiO2Si3」で市販されているもの、及びポリジメチルヒドロシロキサンで処理され、個々の粒子の平均粒径が25nmであるアナターゼ/ルチルTiO2、例えばColor Techniques社によって商標「Microtitanium Dioxide USP Grade Hydrophobic」で市販されているものである。
【0149】
好ましくは、以下の被覆TiO2を被覆無機UVフィルターとして使用することができる:
ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えば、平均一次粒径が15nmの、テイカ株式会社からの製品「MT-100 TV」;
ジメチコン(及び)ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えば、平均一次粒径が15nmの、三好化成株式会社からの製品「SA-TTO-S4」;
シリカ(及び)TiO2、例えば、平均一次粒径が15nmの、テイカ株式会社からの製品「MT-100 WP」;
ジメチコン(及び)シリカ(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えば、平均一次粒径が10nmの、テイカ株式会社からの製品「MT-Y02」及び「MT-Y-110 M3S」;
ジメチコン(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えば、平均一次粒径が15nmの、三好化成株式会社からの製品「SA-TTO-S3」;
ジメチコン(及び)アルミナ(及び)TiO2、例えば、平均一次粒径が15nmの、Sachtleben社からの製品「UV TITAN M170」、並びに
シリカ(及び)水酸化アルミニウム(及び)アルギン酸(及び)TiO2、例えば、平均一次粒径が15nmの、テイカ株式会社からの製品「MT-100 AQ」。
【0150】
UVフィルタリング能力の点から、少なくとも1種の有機UVフィルターで被覆されているTiO2がより好ましい。例えば、アボベンゾン(及び)ステアリン酸(及び)水酸化アルミニウム(及び)TiO2、例えば、平均一次粒径が15nmの、テイカ株式会社製の製品「HXMT-100ZA」を使用することができる。
【0151】
非被覆酸化チタン顔料は、例えば、テイカ株式会社によって商標「Microtitanium Dioxide MT500B」又は「Microtitanium Dioxide MT600B」で、Degussa社によって商標「P 25」で、Wacker社によって商標「Oxyde de titane transparent PW」で、三好化成株式会社によって商標「UFTR」で、Tomen社によって商標「ITS」で、及びTioxide社によって商標「Tioveil AQ」で市販されている。
【0152】
非被覆酸化亜鉛顔料としては、例えば、
Sunsmart社によって商標「Z-cote」で市販されているもの、
Elementis社によって商標「Nanox」で市販されているもの、及び
Nanophase Technologies社によって商標「Nanogard WCD 2025」で市販されているもの。
【0153】
被覆酸化亜鉛顔料としては、例えば、
Toshiba社によって商標「Oxide Zinc CS-5」で市販されているもの(ポリメチルヒドロシロキサンで被覆されたZnO)、
Nanophase Technologies社によって商標「Nanogard Zinc Oxide FN」で[Finsolv TN、安息香酸アルキル(C12~C15)中の40%分散体として]市販されているもの、
大東化成工業株式会社によって商標「Daitopersion Zn-30」及び「Daitopersion Zn-50」で市販されているもの(シリカ及びポリメチルヒドロシロキサンで被覆されたナノ酸化亜鉛を30%又は50%含む、オキシエチレン化ポリジメチルシロキサン/シクロポリメチルシロキサン分散体)、
ダイキン工業株式会社によって商標「NFD Ultrafine ZnO」で市販されているもの(シクロペンタシロキサン分散体としての、ペルフルオロアルキルホスフェート及びペルフルオロアルキルエチルベースのコポリマーで被覆されたZnO)、
信越化学工業株式会社によって商標「SPD-Z1」で市販されているもの(シクロジメチルシロキサン中に分散させた、シリコーングラフトアクリルポリマーで被覆されたZnO)、
ISP社によって商標「Escalol Z100」で市販されているもの(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル/PVP-ヘキサデセンコポリマー/メチコン混合物中に分散させたアルミナ処理ZnO)、
冨士色素株式会社によって商標「Fuji ZnO-SMS-10」で市販されているもの(シリカ及びポリメチルシルセスキオキサンで被覆されたZnO)、及びElementis社によって商標「Nanox Gel TN」で市販されているもの[ヒドロキシステアリン酸重縮合物を含む安息香酸アルキル(C12~C15)中に55%で分散させたZnO]。
【0154】
非被覆酸化セリウム顔料は、例えば、Rhone-Poulenc社によって商標「Colloidal Cerium Oxide」で市販されている。
【0155】
非被覆酸化鉄顔料は、例えば、Arnaud社によって商標「Nanogard WCD 2002(FE 45B)」、「Nanogard Iron FE 45 BL AQ」、「Nanogard FE 45R AQ」、及び「Nanogard WCD 2006(FE 45R)」で、又はMitsubishi社によって商標「TY-220」で市販されている。
【0156】
被覆酸化鉄顔料は、例えば、Arnaud社によって商標「Nanogard WCD 2008(FE 45B FN)」、「Nanogard WCD 2009(FE 45B 556)」、「Nanogard FE 45 BL 345」、及び「Nanogard FE 45 BL」で、又はBASF社によって商標「Oxyde de fer transparent」で市販されている。
【0157】
金属酸化物の混合物、特に、二酸化チタンと二酸化セリウムとの混合物、例えば池田物産株式会社によって商標「Sunveil A」で市販されているシリカで被覆された二酸化チタンとシリカで被覆された二酸化セリウムとの等質量混合物、更には二酸化チタンとアルミナ、シリカ及びシリコーンで被覆された二酸化亜鉛との混合物、例えばKemira社によって市販されている製品「M 261」、又は二酸化チタンとアルミナ、シリカ及びグリセロールで被覆された二酸化亜鉛との混合物、例えばKemira社によって市販されている製品「M 211」も挙げることができる。
【0158】
無機UVフィルターのUV遮蔽効果を高めることができることから、被覆無機UVフィルターが好ましい。加えて、コーティングは、本発明による組成物中にUVフィルターを均一に又は均質に分散させるのに役立ちうる。
【0159】
有機UVフィルター
本発明に使用される有機UVフィルターは、UV-A及び/又はUV-B領域において活性であってよい。有機UVフィルターは、親水性及び/又は親油性であってもよい。
【0160】
有機UVフィルターは、固体であっても液体であってもよい(少なくとも1種の無機又は有機固体UVフィルターを一緒に使用する限り)。用語「固体」及び「液体」は、それぞれ、1atm下の25℃で固体及び液体を意味する。
【0161】
有機UVフィルターは、アントラニル化合物;ジベンゾイルメタン化合物;ケイ皮酸化合物;サリチル酸化合物;カンファー化合物;ベンゾフェノン化合物;β,β-ジフェニルアクリレート化合物;トリアジン化合物;ベンゾトリアゾール化合物;ベンザルマロネート化合物;ベンゾイミダゾール化合物;イミダゾリン化合物;ビス-ベンゾアゾリル化合物;p-アミノ安息香酸(PABA)化合物;メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物;ベンゾオキサゾール化合物;遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン;α-アルキルスチレンに由来するダイマー;4,4-ジアリールブタジエン化合物;グアイアズレン及びその誘導体;ルチン及びその誘導体;並びにそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0162】
有機UVフィルターの例としては、下記にそのINCI名で示すもの、及びそれらの混合物を挙げることができる。
- アントラニル化合物: 商標「Neo Heliopan MA」でHaarmann and Reimer社より市販されているアントラニル酸メンチル。
- ジベンゾイルメタン化合物: 具体的には商標「Parsol 1789」でHoffmann-La Roche社より市販されているブチルメトキシジベンゾイルメタン、及びイソプロピルジベンゾイルメタン。
- ケイ皮酸化合物: 特にHoffmann-La Roche社によって商標「Parsol MCX」で市販されているメトキシケイ皮酸エチルヘキシル;メトキシケイ皮酸イソプロピル;メトキシケイ皮酸イソプロポキシ;Haarmann and Reimer社によって商標「Neo Heliopan E 1000」で市販されているメトキシケイ皮酸イソアミル;シノキセート(2-エトキシエチル-4-メトキシシンナメート);メトキシケイ皮酸DEA;メチルケイ皮酸ジイソプロピル;及びジメトキシケイ皮酸エチルヘキサン酸グリセリル。
- サリチル酸化合物: Rona/EM Industries社によって商標「Eusolex HMS」で市販されているホモサレート(サリチル酸ホモメンチル);Haarmann and Reimer社によって商標「Neo Heliopan OS」で市販されているサリチル酸エチルヘキシル;サリチル酸グリコール;サリチル酸ブチルオクチル;サリチル酸フェニル;Scher社によって商標「Dipsal」で市販されているサリチル酸ジプロピレングリコール;及びHaarmann and Reimer社によって商標「Neo Heliopan TS」で市販されているサリチル酸TEA。
- カンファー化合物、特に、ベンジリデンカンファー誘導体: Chimex社によって商標「Mexoryl SD」で製造されている3-ベンジリデンカンファー;Merck社によって商標「Eusolex 6300」で市販されている4-メチルベンジリデンカンファー;Chimex社によって商標「Mexoryl SL」で製造されているベンジリデンカンファースルホン酸;Chimex社によって商標「Mexoryl SO」で製造されているカンファーベンザルコニウムメトスルフェート;Chimex社によって商標「Mexoryl SX」で製造されているテレフタリリデンジカンファースルホン酸;及びChimex社によって商標「Mexoryl SW」で製造されているポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー。
- ベンゾフェノン化合物: BASF社によって商標「Uvinul 400」で市販されているベンゾフェノン-1(2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン);BASF社によって商標「Uvinul D50」で市販されているベンゾフェノン-2(テトラヒドロキシベンゾフェノン);BASF社によって商標「Uvinul M40」で市販されているベンゾフェノン-3(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)又はオキシベンゾン;BASF社によって商標「Uvinul MS40」で市販されているベンゾフェノン-4(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸);ベンゾフェノン-5(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム);Norquay社によって商標「Helisorb 11」で市販されているベンゾフェノン-6(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン);American Cyanamid社によって商標「Spectra-Sorb UV-24」で市販されているベンゾフェノン-8;BASF社によって商標「Uvinul DS-49」で市販されているベンゾフェノン-9(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸二ナトリウム);ベンゾフェノン-12、及びn-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート(BASF社によるUVINUL A+)。
- β,β-ジフェニルアクリレート化合物: 特にBASF社によって商標「Uvinul N539」で市販されているオクトクリレン;及び特にBASF社によって商標「Uvinul N35」で市販されているエトクリレン。
- トリアジン化合物: Sigma 3V社によって商標「Uvasorb HEB」で市販されているジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、CIBA GEIGY社によって商標「TINOSORB S」で市販されているビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及びBASF社によって商標「UVINUL T150」で市販されているエチルヘキシルトリアゾン。
- ベンゾトリアゾール化合物、特にフェニルベンゾトリアゾール誘導体: 分枝状及び直鎖状の2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノ;並びにUSP 5240975に記載されているもの。
- ベンザルマロネート化合物: 4'-メトキシベンザルマロン酸ジネオペンチル、及びベンザルマロネート官能基を含むポリオルガノシロキサン、例えば、Hoffmann-LaRoche社によって「Parsol SLX」の商標で市販されているポリシリコーン-15。
- ベンゾイミダゾール化合物、特にフェニルベンゾイミダゾール誘導体: 特にMerck社によって商標「Eusolex 232」で市販されているフェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、及びHaarmann and Reimer社によって商標「Neo Heliopan AP」で市販されているフェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム。
- イミダゾリン化合物: エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオネート。
- ビス-ベンゾアゾリル化合物: EP-669,323及び米国特許第2,463,264号に記載の誘導体。
- パラ-アミノ安息香酸化合物: PABA(p-アミノ安息香酸)、エチルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、ジメチルPABAペンチル、特にISP社によって商標「Escalol 507」で市販されているジメチルPABAエチルヘキシル、グリセリルPABA、及びBASF社によって商標「Uvinul P25」で市販されているPEG-25 PABA。
- メチレンビス-(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)化合物、例えばFairmount Chemical社によって商標「Mixxim BB/200」で固体形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-フェノール]、BASF社によって商標「Tinosorb M」で、又はFairmount Chemical社によって商標「Mixxim BB/100」で水性分散体中の微粉化形態で市販されている2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、並びに米国特許第5,237,071号及び第5,166,355号、GB-2,303,549、DE-19,726,184及びEP-893,119に記載されている誘導体、並びに
下記に示すような、Rhodia Chimie社によって商標「Silatrizole」で、又はL'Oreal社によって商標「Mexoryl XL」で市販されているドロメトリゾールトリシロキサン。
【0163】
【0164】
- ベンゾオキサゾール化合物: Sigma 3V社によって商標Uvasorb K2Aで市販されている2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン。
- 遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン: WO 93/04665に記載のシリコーン。
- α-アルキルスチレンに由来するダイマー: DE-19855649に記載のダイマー。
- 4,4-ジアリールブタジエン化合物: 1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン。
【0165】
有機UVフィルターは、以下からなる群から選択されることが好ましい:
ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、n-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、1,1'-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン、4-メチルベンジリデンカンファー、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、エチルヘキシルトリアゾン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジイソブチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4-ビス-(n-ブチル4'-アミノベンザルマロネート)-6-[(3-{1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリルオキシ]-ジシロキサニル}プロピル)アミノ]-s-トリアジン、2,4,6-トリス-(ジフェニル)-トリアジン、2,4,6-トリス-(ターフェニル)-トリアジン、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ドロメトリゾールトリシロキサン、ポリシリコーン-15、ジネオペンチル4'-メトキシベンザルマロネート、1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン、2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、カンファーベンジルコニウムメトスルフェート及びそれらの混合物。
【0166】
(c)粉末は、無機顔料、無機フィラー、UVフィルター及びそれらの混合物から選択されることが好ましく、より好ましくは、二酸化チタン粒子、シリカ粒子及びそれらの混合物から選択される。
【0167】
二酸化チタンは、顔料グレードであることが更により好ましい。例えば、二酸化チタンは、好ましくは、50nm超、より好ましくは70nm超、更により好ましくは100nm超の平均粒径を有する。平均粒径は、動的光散乱法により、例えばNicomp Z380により測定されうる数平均粒径であってもよい。
【0168】
本発明による組成物中の(c)粉末の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってよい。
【0169】
本発明による組成物中の(c)粉末の量は、組成物の総質量に対して、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下であってもよい。
【0170】
本発明による組成物中の(c)粉末の量は、組成物の総質量に対して0.1質量%から25質量%、好ましくは0.5質量%から20質量%、より好ましくは1質量%から15質量%であってもよい。
【0171】
(ポリオール)
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種のポリオールを含む。2つ以上の異なるタイプの(d)ポリオールを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの(d)ポリオール又は異なるタイプの(d)ポリオールの組み合わせを使用してよい。
【0172】
「ポリオール」という用語は、本明細書において、2つ以上のヒドロキシ基を有するアルコールを意味し、糖又はその誘導体を包含しない。糖類の誘導体には、糖類の1つ又は複数のカルボニル基を還元することによって得られる糖アルコール、及びその1つ又は複数のヒドロキシ基中の1つ又は複数の水素原子が、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基又はカルボニル基等の少なくとも1つの置換基で置き換えられている糖類又は糖アルコールが含まれる。
【0173】
本発明において使用されるポリオールは、大気圧(760mmHg又は105Pa)下、室温、例えば25℃において液体である。
【0174】
ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシ基、好ましくは2~5つのヒドロキシ基を含む、C2~C24ポリオール、好ましくはC2~C9ポリオールとなり得る。
【0175】
ポリオールは、天然の又は合成のポリオールであってよい。ポリオールは、直鎖状、分枝状又は環状の分子構造を有していてもよい。
【0176】
ポリオールは、グリセリン及びその誘導体、並びにグリコール及びその誘導体から選択することができる。ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール、C6~C24ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、及び1,5-ペンタンジオールからなる群から選択することができる。
【0177】
ポリオールは、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0178】
本発明による組成物中の(d)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってよい。
【0179】
本発明による組成物中の(d)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0180】
本発明による組成物中の(d)ポリオールの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%であってもよい。
【0181】
(pH)
本発明による組成物のpHは、3から9、好ましくは3.5から8、より好ましくは4から7であってよい。
【0182】
組成物のpHは、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することができる。
【0183】
(アルカリ剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでもよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組み合わせを使用することができる。
【0184】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよい。無機アルカリ剤は、アンモニア;アルカリ金属水酸化物;アルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩(monohydrogenophosphate)、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0185】
無機アルカリ金属水酸化物の例として、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例としては、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0186】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤は、モノアミン及びその誘導体;ジアミン及びその誘導体;ポリアミン及びその誘導体;塩基性アミノ酸及びその誘導体;塩基性アミノ酸のオリゴマー及びその誘導体;塩基性アミノ酸のポリマー及びその誘導体;尿素及びその誘導体;並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0187】
有機アルカリ剤の例としては、アルカノールアミン、例えばモノ、ジ及びトリエタノールアミン、及びイソプロパノールアミン;尿素、グアニジン及びそれらの誘導体;塩基性アミノ酸、例えばリジン、オルニチン又はアルギニン;並びにジアミン、例えば下記の構造:
【0188】
【0189】
(式中、Rは、ヒドロキシル又はC1~C4アルキル基で任意選択で置換されているプロピレン等のアルキレンを示し、R1、R2、R3及びR4は、独立して、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示す)に記載されているものを挙げることができ、これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示することができる。アルギニン、尿素及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0190】
アルカリ剤は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の総量で使用することができる。
【0191】
(酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでもよい。2種以上の酸を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組み合わせを使用することができる。
【0192】
酸としては、化粧料において一般に使用される任意の無機又は有機酸を挙げることができる。一価の酸及び/又は多価の酸を使用することができる。クエン酸、乳酸、硫酸、リン酸及び塩酸(HCl)等の一価の酸を使用することができる。HClが好ましい。
【0193】
酸は、その溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.001質量%から10質量%、好ましくは0.01質量%から5質量%、より好ましくは0.1質量%から1質量%の総量で使用することができる。
【0194】
(緩衝剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含んでもよい。2種以上の緩衝剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの緩衝剤、又は異なるタイプの緩衝剤の組み合わせを使用することができる。
【0195】
緩衝剤としては、酢酸緩衝液(例えば、酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(例えば、リン酸二水素ナトリウム+リン酸水素二ナトリウム)、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液(例えば、ホウ酸+ホウ酸ナトリウム)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸+酒石酸ナトリウム二水和物)、トリス緩衝液(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、及びHepes緩衝液(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を挙げることができる。
【0196】
(任意選択の添加剤)
本発明による組成物は、前述の成分に加えて、化粧品において典型的に用いられる成分、具体的には、例えば染料、油、界面活性剤、増粘剤、有機不揮発性溶媒、シリコーン及びシリコーン誘導体、動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0197】
本発明による組成物は、上記の任意選択の添加剤を、組成物の総質量に対して0.01質量%から25質量%、好ましくは0.1質量%から20質量%、より好ましくは1質量%から15質量%の量で含んでもよい。
【0198】
一実施形態では、本発明による組成物は、少なくとも1種の油を含んでもよい。2種以上の油を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの油、又は異なるタイプの油の組み合わせを使用することができる。
【0199】
本明細書において、「油」という用語は、室温(25℃)で液体である脂肪物質を意味すると理解される。油は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0200】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下であってもよい。
【0201】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってもよい。
【0202】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~40質量%、好ましくは1質量%~30質量%、より好ましくは5質量%~20質量%であってもよい。
【0203】
一実施形態では、本発明による組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を含んでもよい。2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの界面活性剤、又は異なるタイプの界面活性剤の組み合わせを使用することができる。
【0204】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの界面活性剤、又は異なるタイプの界面活性剤の組み合わせを使用することができる。
【0205】
界面活性剤は、非イオン性界面活性剤から、より好ましくはポリグリセリル脂肪酸エステルから、更により好ましくはHLB値が8~10のポリグリセリル脂肪酸エステルから選択することが好ましい場合がある。
【0206】
本発明による組成物中の界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0207】
本発明による組成物中の界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0208】
本発明による組成物中の界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0209】
[組成物]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用することを意図したものであってもよい。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質への塗布を意図したものであってもよい。本明細書におけるケラチン物質とは、ケラチンを主要構成要素として含有する材料を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が含まれる。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用することが好ましい。
【0210】
したがって、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メーキャップ組成物、特にUV光から皮膚を保護するための組成物であってもよい。
【0211】
本発明による組成物は、溶液、分散体、エマルジョン、ゲル、及びペースト等の任意の形態であってよい。本発明による組成物が少なくとも1種の油及び/又は少なくとも1種の有機UVフィルターを含む場合、本発明による組成物は、W/O、O/W、W/O/W及びO/W/O等のエマルジョン、好ましくはO/Wエマルジョンの形態であってよい。
【0212】
本発明による組成物は、当業者に周知の方法のいずれかに従って、上記の必須及び任意選択の成分を混合することによって調製することができる。
【0213】
[皮膜]
本発明による組成物は、皮膜、特に自己回復又は自己修復性皮膜を容易に調製するために使用することができる。
【0214】
したがって、本発明は、皮膜、好ましくは化粧膜を調製するための方法であって、
本発明による組成物を基質、好ましくはケラチン基質、より好ましくは皮膚に塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む方法にも関しうる。
【0215】
本発明による皮膜を調製するための方法は、本発明による組成物を基質、好ましくはケラチン基質、より好ましくは皮膚に塗布する工程と、組成物を乾燥させる工程とを含むことから、本発明による方法は、スピンコーティング又はスプレーすることを一切必要とせず、したがって、皮膜を容易に調製することが可能である。したがって、本発明による皮膜を調製するための方法は、スピンコーター及びスプレー機等の特殊な装置を一切用いずに皮膜を調製することができる。
【0216】
皮膜は、薄く且つ/又は透明であってよく、したがって容易には認識されにくい。したがって、皮膜は、好ましくは化粧膜として使用することができる。
【0217】
基質が皮膚等のケラチン基質でない場合、本発明による組成物は、ケラチン以外の任意の材料から作製された基質に塗布することができる。非ケラチン基質の材料は限定されない。2種以上の材料を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの材料、又は異なるタイプの材料の組み合わせを使用することができる。いずれにせよ、基質は、可撓性又は弾性であることが好ましい。
【0218】
基質がケラチン基質でない場合、基質は、水溶性であることが好ましく、その理由は、基質を水で洗浄することによって皮膜を残すことが可能であるからである。水溶性材料の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、デンプン、酢酸セルロース等を挙げることができる。PVAが好ましい。
【0219】
非ケラチン基質がシートの形態である場合、これは、基質シートに付着した皮膜の取り扱いを容易にするために、本発明による皮膜の厚さを超える厚さを有してもよい。非ケラチン基質シートの厚さは限定されないが、1μmから5mm、好ましくは10μmから1mm、より好ましくは50から500μmであってよい。
【0220】
皮膜は、非ケラチン基質から取り外し可能であることがより好ましい。取り外し方式は限定されない。したがって、皮膜は、非ケラチン基質から剥がしてもよく、又は基質シートを水等の溶媒中に溶解することによって取り外してもよい。
【0221】
本発明はまた、
(1)本発明による組成物を基質、好ましくはケラチン基質、より好ましくは皮膚に塗布する工程、及び
組成物を乾燥させる工程
を含む方法によって調製される皮膜、好ましくは化粧膜、並びに
(2)少なくとも1種のカチオン性多糖、
少なくとも1種の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩、及び
任意選択の少なくとも1種のアニオン性ポリマー
を含む、皮膜、好ましくは化粧膜に関する。
【0222】
本発明による組成物中の成分についての上記説明は、上記のカチオン性多糖、上記の3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩、及び上記のアニオン性ポリマーに適用することができる。
【0223】
上記のこうして得られた皮膜は、自立性とすることができる。本明細書における「自立性」という用語は、皮膜をシートの形態とすることができ、基質又は支持体の補助なしに独立したシートとして取り扱うことができることを意味する。したがって、「自立性」という用語は、「自己支持性」と同じ意味を有することができる。
【0224】
皮膜は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、特に顔の美容処置に使用することができる。皮膜は、任意の形状又は形態であってよい。例えば、これは、フルフェイスマスクシート、又は頬、鼻、及び目の周り等の顔の一部用のパッチとして使用することができる。
【0225】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧膜を形成する工程とを含む方法に関する。
【0226】
本明細書における美容方法は、皮膚等のケラチン物質の表面をケア及び/又はメーキャップするための非治療的美容方法を意味する。
【0227】
上記の化粧膜は、化粧膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、化粧膜中のポリイオンコンプレックス粒子の特性により、悪臭を吸収若しくは吸着する、皮膚等のケラチン物質の外観を変化させる、ケラチン物質の触感を変化させる、及び/又は例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン物質を保護する等の美容効果を有しうる。
【0228】
加えて、上記の化粧膜は、化粧膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、皮膚上の光反射等を変化させることによって皮膚の外観を即座に変化させる又は修正することができる。したがって、上記の化粧膜は、毛穴又はしわ等の皮膚の欠陥を隠すことが可能でありうる。更に、上記の化粧膜は、皮膚上の表面粗さ等を変化させることによって皮膚の触感を即座に変化させる又は修正することができる。更に、上記の化粧膜は、環境ストレス、例えば汚染物質、夾雑物等から、バリアーとして、皮膚の表面を覆い、皮膚をシールドすることによって皮膚を即座に保護することができる。
【0229】
上記の美容効果は、上記の化粧膜の化学組成、厚さ及び/又は表面粗さを変化させることによって調整又は制御することができる。
【0230】
上記の化粧膜が、少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、化粧膜は、その美容有効成分によってもたらされる美容効果を有することができる。例えば、化粧膜が、抗老化剤、皮脂抑制剤、デオドラント剤、発汗抑制剤、美白剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、化粧膜は、皮膚の老化を処置し、皮膚上の皮脂を吸収し、皮膚上の匂いを制御し、皮膚上の発汗を制御し、且つ/又は皮膚を美白することができる。
【0231】
粉末が着色及び/又はUV遮蔽等の任意の美容効果を発揮する場合、本発明による組成物が粉末を含むことによって、上記の化粧膜は、皮膚等のケラチン物質の元の色を着色若しくは隠蔽することができ、且つ/又はケラチン物質の黒ずみを制限し、顔色の色及び均一性を改善し、且つ/若しくはUV線からケラチン物質を保護することができる。
【0232】
また、本発明によって調製される化粧膜上にメーキャップ化粧用組成物を塗布することも可能でありうる。
【0233】
本発明はまた、
組成物によって形成される膜中の(c)粉末の分布を改善するための、DICゲルを形成する、(a)カチオン性多糖と、(b)3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩との組み合わせを含む組成物中での(d)ポリオールの使用にも関しうる。本発明による組成物のための上記(a)~(d)についての説明は、本発明による使用についての説明にも適用させることができる。本発明による使用は、成分(a)及び(b)の組み合わせを含む組成物中にポリオールを使用しない場合と比べて、皮膜中の(c)粉末の分布を、より均一又はより一様にすることができる。
【実施例】
【0234】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明することにする。しかし、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0235】
[参考例]
(2つの成分(PQ-67/フィチン酸)で構成されるDICゲルの調製)
ホモジナイザーを使用して、カチオン性多糖としての0.79gのポリクオタニウム-67(PQ-67)、架橋剤としての0.50gのフィチン酸の50質量%水溶液、0.15gの水酸化ナトリウム、及び98.56gの水を混合した。こうして、安定な半透明の分散体を調製することに成功した。加熱によって水を蒸発させることによって、この分散体を濃縮し、DICゲルを調製した。最終固体濃度は、約10質量%であった。
【0236】
(DICゲルの自己回復特性の測定)
濃縮DICゲルを2断片に切り、これらを室温の空気中で接触させた。1時間後、これらの2つの断片は互いに接着した。
【0237】
また、1mlの半透明のDICゲル分散体(水を蒸発させる前)をガラス板上に適用し、室温で1日乾燥させてDICゲル膜を調製した。DICゲル膜の表面を爪楊枝で引っ掻き、共焦点顕微鏡法によって測定した。膜上に、1滴の水を注ぎ、30秒間静置した。水を除去した後、表面を再度測定した。引っ掻き傷跡は消失した。
【0238】
(実施例1及び2並びに比較例1及び2)
表1に示す実施例1及び2並びに比較例1及び2による以下の組成物を、表1に示す成分を混合することにより調製した。表1に示す成分の量の数値は、全て活性原料として「質量%」に基づいている。
【0239】
【0240】
[方法]
油性相の成分を加熱し、したがってそれらが溶解し、混合して、溶融油性相を形成した。二酸化チタン及び酸化鉄を溶融油性相に添加した。溶融油性相を、水及びカチオン性ポリマー(ポリクオタニウム-67)を含む水性相に添加し、高温で分散又は乳化させた。次いで、その他の成分を添加し、室温で混合して、均一なクリームを形成した。
【0241】
[評価]
(色の均一性)
各60mgの実施例1及び2並びに比較例1及び2による組成物を、指で1分間軽くたたいた後、室温で2分間乾燥させることによって、前腕(5×5cm2)に塗布した。次いで、同じ指で組成物を全体にのばした。パネリストにより、1(均一)から3(不均一)までのスコアリングに従って、のばした組成物の色の均一性を評価した。
【0242】
評価の結果を表1に示す。
【0243】
実施例1及び2と比較例1との比較は、DICゲルを形成するカチオン性多糖と3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩との組み合わせの存在下でのポリオールの添加が、色の均一性を改善することができることを実証する。
【0244】
(摩擦抵抗SPF)
それぞれ同じ量の実施例1及び2並びに比較例1及び2による組成物を、1kgの質量の下、10マイクロメートルの棒鋼塗工機(Elecometer 4340 Speed 3)を用いて、透明なポリエステルシート(厚さ:2mm、BYK)上に塗布した。塗布した組成物を室温で30時間放置した。組成物の初期SPFを、SPFアナライザUV 2000を用いて測定した。次いで、質量のない状態で10マイクロメートルの棒鋼塗工機(Elecometer 4340 Speed 3)を用いて、摩擦を適用した。棒鋼は、棒周りに巻かれたワイヤを有し、深さ10ミクロンの凹面及び高さ10ミクロンの凸面を形成する。次に、摩擦後の組成物のSPF値を、SPFアナライザUV 2000を用いて測定した。摩擦抵抗SPF(%)を、以下の式に基づいて計算した: 摩擦後のSPF値/初期SPF値。
【0245】
計算の結果を表1に示す。
【0246】
実施例1の摩擦後のSPF値は、その初期SPF値より高かったことに留意すべきであり、これは、実施例1による組成物の皮膜中のTiO2粒子の初期分布が、摩擦によってより均一化され、したがって摩擦後にSPF値が上昇したことを意味する。
【0247】
また、実施例2の摩擦後のSPF値は、その初期SPF値とほぼ同じであったことにも留意すべきであり、これは、実施例2による組成物の皮膜中のTiO2粒子の初期分布が、摩擦による影響を受けず、したがって初期SPF値が維持されたことを意味する。
【0248】
実施例1及び2と比較例1との比較は、DICゲルを形成するカチオン性多糖と3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩との組み合わせの存在下でのポリオールの添加が、摩擦抵抗SPFを改善することができることを実証する。
【0249】
その一方で、実施例1と比較例2との比較は、DICゲルを形成するカチオン性多糖と3つ以上の酸基を有する架橋剤又はその塩の欠如が、摩擦抵抗SPFを劣化させることを実証する。実施例1による組成物中のカチオン性多糖及び架橋剤によって形成されるDICゲルの存在は、自己回復特性を有する組成物の膜を形成することができ、したがって、皮膜上の摩擦によって形成される引っ掻きが消失し、SPF値によって表されるUV遮蔽効果が低下しない(むしろ、上記の摩擦によってTiO2粒子がより均一化されることで、全体のUV遮蔽効果は高まった)が、比較例2による組成物は、DICゲルに起因して、このような自己回復特性を有することができず、そのため、皮膜上の摩擦によって形成される引っ掻きは消失せず、摩擦により、全体のUV遮蔽効果は低下したことが理解できる。
【0250】
(実施例3)
表2に示す、実施例3による以下の組成物を、表2に示す成分を混合して調製した。表2に示す成分の量の数値は、全て活性原料として「質量%」に基づいている。
【0251】
【0252】
[方法]
油性相の成分を加熱し、したがってそれらが溶解し、混合して、溶融油性相を形成した。二酸化チタン及び酸化鉄を溶融油性相に添加した。溶融油性相を、水及びカチオン性ポリマー(ポリクオタニウム-67)を含む水性相に添加し、高温で分散又は乳化させた。次いで、その他の成分を添加し、室温で混合して、均一なクリームを形成した。
【0253】
(実施例4)
表3に示す、実施例4による以下の組成物を、表3に示す成分を混合して調製した。表3に示す成分の量の数値は、全て活性原料として「質量%」に基づいている。
【0254】
【0255】
[方法]
油性相の成分を加熱し、したがってそれらが溶解し、混合して、溶融油性相を形成した。二酸化チタン及び酸化鉄を溶融油性相に添加した。溶融油性相を、水及びカチオン性ポリマー(ポリクオタニウム-67)を含む水性相に添加し、高温で分散させた。次いで、その他の成分を添加し、室温で混合して、均一な乳液を形成した。
【0256】
(実施例5及び比較例3)
【0257】
【0258】
[方法]
油性相の成分を加熱し、したがってそれらが溶解し、混合して、溶融油性相を形成した。二酸化チタン及び酸化鉄を溶融油性相に添加した。溶融油性相を、水及びカチオン性ポリマー(ポリクオタニウム-67)を含む水性相に添加し、高温で分散させた。次いで、その他の成分を添加し、室温で混合して、均一な液体ファンデーションを形成した。
【0259】
[評価]
(非転移特性)
実施例5及び比較例3による各組成物を、基質上に塗布した。各基質上に塗布した組成物を紙の上に置いた。組成物の紙への転移を観察して非転移性を評価した。結果として、実施例5による組成物は、比較例3による組成物よりも良好な非転移効果を示した。