(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】走行車両
(51)【国際特許分類】
B62K 5/10 20130101AFI20240708BHJP
B62K 5/05 20130101ALI20240708BHJP
B62K 5/027 20130101ALI20240708BHJP
B62K 25/16 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/05
B62K5/027
B62K25/16
(21)【出願番号】P 2019140117
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】中島 健志
(72)【発明者】
【氏名】長坂 和哉
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 太一
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106394761(CN,A)
【文献】国際公開第03/018390(WO,A1)
【文献】特開2005-104445(JP,A)
【文献】特開2014-117977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/01
B62K 5/027 - 5/05
B62K 5/10
B62K 25/00 - 25/32
B60G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
車幅方向の一方に配置され、前記車体から前方に延びるように設けられ、前記車体に上下方向に揺動可能に支持された左揺動部と、
車幅方向の他方に配置され、前記車体から前方に延びるように設けられ、前記車体に上下方向に揺動可能に支持された右揺動部と、
前記左揺動部に回転可能に支持された左前輪と、
前記右揺動部に回転可能に支持された右前輪と、
前記車体に保持された保持体と、
前記保持体に支持され、前記左前輪及び前記右前輪から前記車体へ伝達される振動を軽減する、前記左前輪と前記右前輪とで
共同で用いられるサスペンション装置と、
を備え、
前記保持体は、前記サスペンション装置を前後方向で挟むようにU字状に形成され、
前記サスペンション装置は、前記保持体に前後方向両側で支持された支軸を有し、
前記サスペンション装置は、前記支軸を中心として回転可能であり、
前記サスペンション装置は、前記左揺動部及び前記右揺動部よりも高い位置に配置され、前記左揺動部及び前記右揺動部の揺動と連動して伸縮することを特徴とする走行車両。
【請求項2】
請求項1に記載の走行車両であって、
前記サスペンション装置は、前記左前輪及び前記右前輪よりも後方に配置され、
前記車体の非リーン状態で、正面視で、前記サスペンション装置の一部が前記左前輪及び前記右前輪に重なることを特徴とする走行車両。
【請求項3】
請求項1に記載の走行車両であって、
前記サスペンション装置は、
車幅方向に伸縮動作可能に構成されたサスペンションユニットと、
前記サスペンションユニットの伸縮方向の一端部に連結され、前記支軸を介して前記保持体に回転可能に設けられた左回転部と、
前記サスペンションユニットの伸縮方向の他端部に連結され、前記支軸を介して前記保持体に回転可能に設けられた右回転部と、
前記左回転部と前記左揺動部とを連結する左ロッドと、
前記右回転部と前記右揺動部とを連結する右ロッドと、
を有し、
前記左ロッドは、前記左揺動部の車幅方向外側部分
の、車幅方向外側に突出する突出部分に連結され、前記右ロッドは、前記右揺動部の車幅方向外側部分
の、車幅方向外側に突出する突出部分に連結されることを特徴とする走行車両。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の走行車両であって、
前記サスペンション装置は、
車幅方向に伸縮動作可能に構成されたサスペンションユニットと、
前記サスペンションユニットの伸縮方向の一端部に連結され、前記支軸を介して前記保持体に回転可能に設けられた左回転部と、
前記サスペンションユニットの伸縮方向の他端部に連結され、前記支軸を介して前記保持体に回転可能に設けられた右回転部と、
前記左回転部と前記左揺動部とを連結する左ロッドと、
前記右回転部と前記右揺動部とを連結する右ロッドと、
を有し、
前記車体の非リーン状態において、
前記支軸と、
前記左回転部と前記サスペンションユニットとの連結部分と、
前記右回転部と前記サスペンションユニットとの連結部分と、
を頂点とする3角形は、正面視で左右対称であり、
前記左ロッドと前記右ロッドとは、正面視で左右対称に配置されていることを特徴とする走行車両。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の走行車両であって、
前記支軸は、車幅方向の中央部に配置されていることを特徴とする走行車両。
【請求項6】
車体と、
車幅方向の一方に配置され、前記車体から前方に延びるように設けられ、前記車体に上下方向に揺動可能に支持された左揺動部と、
車幅方向の他方に配置され、前記車体から前方に延びるように設けられ、前記車体に上下方向に揺動可能に支持された右揺動部と、
前記左揺動部に回転可能に支持された左前輪と、
前記右揺動部に回転可能に支持された右前輪と、
前記車体に保持された保持体と、
前記保持体に支持され、前記左前輪及び前記右前輪から前記車体へ伝達される振動を軽減する、前記左前輪と前記右前輪とで
共同で用いられるサスペンション装置と、
を備え、
前記保持体は、前記サスペンション装置を前後方向で挟むようにU字状に形成され、
前記サスペンション装置は、前記保持体に前後方向両側で支持された支軸を有し、
前記サスペンション装置は、前記支軸を中心として回転可能であり、
前記サスペンション装置は、前記左揺動部及び前記右揺動部よりも高い位置に配置され、前記左揺動部及び前記右揺動部の揺動と連動して伸縮し、
前記サスペンション装置は、
車幅方向に伸縮動作可能に構成されたサスペンションユニットと、
前記サスペンションユニットの伸縮方向の一端部に連結され、前記支軸を介して前記保持体に回転可能に設けられた左回転部と、
前記サスペンションユニットの伸縮方向の他端部に連結され、前記支軸を介して前記保持体に回転可能に設けられた右回転部と、
前記左回転部と前記左揺動部とを連結する左ロッドと、
前記右回転部と前記右揺動部とを連結する右ロッドと、
を有し、
U字状の前記保持体の開放部に近い側に、前記支軸が配置され、
前記保持体の内側において、前記支軸よりも前記開放部から遠い側に前記サスペンションユニットが配置されていることを特徴とする走行車両。
【請求項7】
車体と、
車幅方向の一方に配置され、前記車体から前方に延びるように設けられ、前記車体に上下方向に揺動可能に支持された左揺動部と、
車幅方向の他方に配置され、前記車体から前方に延びるように設けられ、前記車体に上下方向に揺動可能に支持された右揺動部と、
前記左揺動部に回転可能に支持された左前輪と、
前記右揺動部に回転可能に支持された右前輪と、
前記車体に保持された保持体と、
前記保持体に支持され、前記左前輪及び前記右前輪から前記車体へ伝達される振動を軽減する、前記左前輪と前記右前輪とで
共同で用いられるサスペンション装置と、
を備え、
前記保持体は、前記サスペンション装置を前後方向で挟むようにU字状に形成され、
前記サスペンション装置は、前記保持体に前後方向両側で支持された支軸を有し、
前記サスペンション装置は、前記支軸を中心として回転可能であり、
前記サスペンション装置は、前記左揺動部及び前記右揺動部よりも高い位置に配置され、前記左揺動部及び前記右揺動部の揺動と連動して伸縮し、
前記サスペンション装置は、
車幅方向に伸縮動作可能に構成されたサスペンションユニットと、
前記サスペンションユニットの伸縮方向の一端部に連結され、前記支軸を介して前記保持体に回転可能に設けられた左回転部と、
前記サスペンションユニットの伸縮方向の他端部に連結され、前記支軸を介して前記保持体に回転可能に設けられた右回転部と、
前記左回転部と前記左揺動部とを連結する左ロッドと、
前記右回転部と前記右揺動部とを連結する右ロッドと、
を有し、
U字状の前記保持体の開放部に近い側に、前記支軸が配置され、
前記保持体の内側において、前記支軸よりも前記開放部から遠い側に前記サスペンションユニットが配置され、
前記保持体は、下側を開放させたU字状に形成されていることを特徴とする走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、左右1対の前輪を備える走行車両が知られている。特許文献1は、この種の走行車両である鞍乗り型車両を開示する。
【0003】
特許文献1の鞍乗り型車両では、車体の前部に左右1対の前輪が設けられ、後部に1つの後輪が設けられている。左右1対の前輪は、それぞれ、サスペンションを介して車体に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成において、左右1対の前輪に対して個別のサスペンションが設けられているので、構成の簡素化という点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、左前輪及び右前輪を有する走行車両において、簡易な構成でサスペンション機能を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の1つの観点によれば、以下の構成の走行車両が提供される。即ち、この走行車両は、車体と、左揺動部と、右揺動部と、左前輪と、右前輪と、保持体と、サスペンション装置と、を備える。前記左揺動部は、車幅方向の一方に配置され、前記車体から前方に延びるように設けられ、前記車体に上下方向に揺動可能に支持される。前記右揺動部は、車幅方向の他方に配置され、前記車体から前方に延びるように設けられ、前記車体に上下方向に揺動可能に支持される。前記左前輪は、前記左揺動部に回転可能に支持される。前記右前輪は、前記右揺動部に回転可能に支持される。前記保持体は、前記車体に保持される。前記サスペンション装置は、前記保持体に支持され、前記左前輪及び前記右前輪から前記車体へ伝達される振動を軽減する。前記サスペンション装置は、前記左前輪と前記右前輪とで共同で用いられる。前記保持体は、前記サスペンション装置を前後方向で挟むようにU字状に形成される。前記サスペンション装置は、前記保持体に前後方向両側で支持された支軸を有する。前記サスペンション装置は、前記支軸を中心として回転可能である。前記サスペンション装置は、前記左揺動部及び前記右揺動部よりも高い位置に配置され、前記左揺動部及び前記右揺動部の揺動と連動して伸縮する。
【0009】
これにより、左前輪及び右前輪を有する走行車両において、車体のリーンを実現することができる。また、左前輪及び右前輪について、サスペンション装置を共通化することができ、走行車両に簡易な構成で適用することができる。車体のリーンに応じてサスペンション装置が支軸を中心として適宜回転することで、リーン時も、1つのサスペンション装置で、左右両側の前輪からの振動を適切に軽減することができる。サスペンション装置は振動が伝達される過酷な状況下で使用されることが多いが、上記の構成では、U字状の部品である保持体によって支軸が両持ち支持される。従って、支軸のブレを防止して円滑な振動低減を実現できるとともに、耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、左前輪及び右前輪を有する走行車両において、簡易な構成でサスペンション機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走行車両の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、本実施形態の走行車両1の概要について説明する。
図1は、走行車両1の側面図である。
【0013】
図1に示す走行車両1は、車体3と、前輪4と、後輪5と、を備える。走行車両1は、本実施形態では鞍乗り型車両である。運転者は、車体3に跨がった状態で走行車両1に乗車して、走行車両1の運転を行う。なお、走行車両の種類は、鞍乗り型車両に限定されない。
【0014】
以下の説明では、特別な記載がない限り、前、後、左、右、上及び下とは、走行車両1に乗車した運転者から見た前、後、左、右、上及び下を意味する。左右方向は、走行車両1の車幅方向に一致する。
【0015】
前輪4は、車体3に対して左右1対で2つ設けられ、走行車両1の前部に配置されている。左右の前輪4は、左右方向に所定間隔をあけて配置されている。後輪5は、車体3に対して左右方向の中央に1つ設けられ、走行車両1の後部に配置されている。
【0016】
車体3は、走行車両1を走行させる駆動源を支持する。本実施形態では、駆動源として、
図1に示すエンジン8が用いられる。エンジン8は、駆動輪である後輪5を駆動するパワーユニットとして機能し、例えばガソリンエンジンとして構成される。エンジン8で発生する駆動力は、図略の変速ギアによって変速され、ドライブチェーン9を介して後輪5に伝達される。なお、走行車両1の駆動源として、エンジン8の代わりに、例えば電動モータが用いられても良い。
【0017】
車体3は、車体フレーム11を備える。車体フレーム11は、エンジン8等を支持する骨格となる強度部品であり、例えば金属パイプにより構成される。この車体フレーム11には、左右の前輪アーム12と、後輪アーム13と、が取り付けられている。左右の前輪アーム12に、左右の前輪4がそれぞれ回転可能に支持されている。後輪アーム13に、後輪5が回転可能に支持されている。
【0018】
車体3の上部には、運転者が座るシート15が設けられている。シート15の前方に、シート15に座る運転者が操作可能なステアリングハンドル17が配置されている。ステアリングハンドル17は、前輪4に接続されている。車体3と前輪4とは、サスペンション装置20を介して連結されている。
【0019】
次に、
図2から
図5までを参照して、左右の前輪4及びステアリングハンドル17の構成について説明する。
図2は、走行車両1の前部の構成を示す前方斜視図である。
図3は、走行車両1の前部の構成を示す側面図である。
図4は、走行車両1の前部の構成を示す正面図である。
図5は、車体3の非リーン状態を示す正面図である。
【0020】
以下の説明では、左右の前輪4のうち左側のものを左前輪4Lと呼び、右側のものを右前輪4Rと呼ぶことがある。同様に、左右の前輪アーム12のうち左側のものを左前輪アーム(左揺動部)12Lと呼び、右側のものを右前輪アーム(右揺動部)12Rと呼ぶことがある。
【0021】
ステアリングハンドル17は左右分離型のハンドルであり、左右の前輪4にそれぞれ接続されている。左右の前輪4を支持する構成、及び、ステアリングハンドル17と左右の前輪4とを接続する構成は、略左右対称である。従って、以下では、主として右側の構成について説明する。
【0022】
図2から
図5までに示すように、右前輪アーム12Rは、車幅方向の一方である右方に配置されている。右前輪アーム12Rは、車体3から前方に延びるように設けられ、上下方向に揺動可能に車体3に支持されている。右前輪アーム12Rは、左前輪アーム12Lと左右方向に所定間隔をあけて配置されている。右前輪アーム12Rは、
図4に示すように、右前輪4Rの車幅方向外側の面よりも、車幅方向内側に配置されている。
【0023】
右前輪アーム12Rの基端部(後端部)は、車体3の車体フレーム11の前下部11aに支持されている。右前輪アーム12Rの先端部(前部)には、右前輪4Rが支持部24を介して回転可能に設けられている。
【0024】
右前輪アーム12Rは、右揺動軸21Rを中心として揺動可能である。右揺動軸21Rは、左右方向に延びるように設けられている。車体フレーム11の前下部11aには、右前輪アーム12Rと同様に、左前輪アーム12Lが支持されている。左前輪アーム12Lは、左揺動軸21Lを中心として揺動可能である。右揺動軸21Rは、左揺動軸21Lと同軸に配置されている。
【0025】
支持部24は、右前輪アーム12Rの先端部に、操舵軸25を中心として回転可能に設けられている。支持部24は、右前輪4Rの中央部分に対して車幅方向内側に配置されている。操舵軸25は、概ね上下方向に延びるように設けられている。操舵軸25は、その上端部が下端部よりも後方に位置するように、傾斜して配置されている。
【0026】
支持部24には、右前輪4Rが取り付けられている。右前輪4Rは、左右方向に延びる車軸を中心として、支持部24に対して回転することができる。支持部24には、ステアリングハンドル17が備える右側のハンドルステム(右延長部)27が取り付けられている。支持部24は、ハンドルステム27の動作に応じて、操舵軸25を中心として回転する。
【0027】
ステアリングハンドル17は、
図5に示すように、ハンドルステム27に対応するハンドルグリップ28を有する。運転者が右側のハンドルグリップ28を握って操作することにより、右側のハンドルステム27を介して支持部24が回転する。この結果、右前輪4Rの向きを変えることができる。
【0028】
右側のハンドルステム27は、支持部24から斜め後上方(右前輪4Rに対して離れる方向)に延びている。ハンドルステム27の基端部(下端部)は、支持部24に固定されている。右側のハンドルステム27の基端部は、右前輪4Rに対して、車幅方向内側に配置されている。
【0029】
ハンドルグリップ28は、
図5に示すように、ハンドルステム27の上部に設けられている。右側のハンドルグリップ28は、右側のハンドルステム27から車幅方向外側へ突出するように配置されている。
【0030】
左前輪4Lに関して、ステアリングハンドル17は、左側のハンドルステム(左延長部)27、及びハンドルグリップ(左操舵操作部)28を備える。左右のハンドルステム27は、左右方向に間隔をあけて配置されている。
【0031】
左右の前輪4に対して、左右のハンドルステム27が、それぞれ車幅方向内側から接続される。従って、運転者に対するステアリングハンドル17の位置にかかわらず、左前輪4Lと右前輪4Rとの間隔を容易に大きくすることができる。即ち、左前輪4L及び右前輪4Rのそれぞれの位置がステアリングハンドル17により規制されなくなり、両者の間の幅の調整を容易に行うことができる。
【0032】
左右のハンドルステム27は、操舵リンク機構30を介して連結されている。この操舵リンク機構30は、左右1対のリンクロッドと、2つのリンクロッドを連結する回転部材と、を備える。これにより、左前輪4Lの向きと右前輪4Rの向きを連動して変更することができる。
【0033】
次に、
図1から
図6までを参照して、サスペンション装置20について説明する。
図6は、車体3のリーン状態を示す正面図である。
【0034】
サスペンション装置20は、左右の前輪4から左右の前輪アーム12を介して車体3へ伝達される振動を軽減することができる。
図1から
図4までに示すように、サスペンション装置20は、車体3に保持体41を介して取り付けられている。
【0035】
保持体41は、サスペンション装置20を前後方向で挟むようにU字状に形成されている。保持体41は、
図3に示すように、側面視で逆向きU字状となるように向けられ、車体3の車体フレーム11の前上部11bに固定されている。保持体41は、
図4に示すように、左右の前輪4の間の空間を左右方向で2等分する位置に配置されている。
【0036】
この保持体41に、サスペンション装置20が支持されている。サスペンション装置20は、その大部分が左前輪アーム12L及び右前輪アーム12Rよりも高くなるように配置されている。
【0037】
図3に示すように、保持体41は、開放部41aと、閉鎖部41bと、を有する。開放部41aは、側面視での保持体41の開放部分を含み、保持体41の一端部に配置されている。閉鎖部41bは、側面視で、保持体41の上下方向中央部に対して開放部41aと反対側の端部に配置されている。本実施形態では、開放部41aは当該保持体41の下端側に位置し、閉鎖部41bは当該保持体41の上端側に位置している。
【0038】
保持体41には、サスペンション装置20の支軸43が設けられている。支軸43は、その軸心方向が前後方向(車長方向)に沿うように配置され、保持体41の前後方向両側で支持されている。支軸43は、保持体41において、開放部41aに近い側(下部)に取り付けられている。
【0039】
支軸43は、走行車両1の正面視において、左右の前輪4の間の空間を2等分する位置に配置されている。サスペンション装置20は、保持体41に対して、支軸43を中心として回転することができる。
【0040】
サスペンション装置20は、サスペンションユニット51と、左回転アーム(左回転部)52と、右回転アーム(右回転部)53と、左ロッド54と、右ロッド55と、を備える。
【0041】
サスペンションユニット51は、細長く構成され、長手方向に伸縮動作可能に構成されている。サスペンションユニット51は、保持体41の内側に設けられている。
図3に示すように、サスペンションユニット51は、支軸43よりも開放部41aから遠い側(上側)に配置されている。従って、サスペンションユニット51は、支軸43と閉鎖部41bとの間を通過するように配置される。
図5に示すように、サスペンションユニット51は、車体3がリーンしていない状態では、左右水平に向けられる。
【0042】
図2に示すように、サスペンションユニット51は、ダンパ61と、スプリング62と、から構成される。スプリング62は、ダンパ61の周囲に設けられている。
【0043】
左回転アーム52は、保持体41に取り付けられている。左回転アーム52は、支軸43を中心として、保持体41に対して回転可能である。左回転アーム52は、左連結軸64を介して、サスペンションユニット51の長手方向一端部と回転可能に連結されている。左連結軸64は、前後方向に沿って配置されている。
【0044】
左回転アーム52は、正面視で、支軸43から左連結軸64まで斜め上に延びるように細長く形成されている。左回転アーム52の一端部は保持体41の下部に位置し、他端部は保持体41の上部左側に位置している。
【0045】
左回転アーム52は、左前側プレート52aと、左後側プレート52bと、を有する。左前側プレート52a及び左後側プレート52bは、それぞれ、板状部材から構成されている。左前側プレート52aと左後側プレート52bとは、前後方向に間隔をあけて配置されている。
【0046】
左前側プレート52aと左後側プレート52bとの間に、支軸43及び左連結軸64のそれぞれが架け渡されている。左後側プレート52bには、左突出部52cが設けられている。左突出部52cは、左連結軸64よりも車幅方向外側へ突出するように形成されている。この左突出部52cに、左ロッド54の上端部が連結されている。
【0047】
右回転アーム53は、保持体41に取り付けられている。右回転アーム53は、支軸43を中心として、保持体41に対して回転可能である。右回転アーム53は、右連結軸65を介して、サスペンションユニット51の長手方向他端部と回転可能に連結されている。右連結軸65は、前後方向に沿って配置されている。車体3がリーンしていない状態で、左連結軸64と右連結軸65は、同じ高さに位置する。
【0048】
右回転アーム53は、正面視で、支軸43から右連結軸65まで斜め上に延びるように設けられている。右回転アーム53の一端部は保持体41の下部に位置し、他端部は保持体41の上部右側に位置している。
【0049】
右回転アーム53は、右前側プレート53aと、右後側プレート53bと、を有する。右前側プレート53a及び右後側プレート53bは、それぞれ、板状部材から構成されている。右前側プレート53aと右後側プレート53bとは、前後方向に間隔をあけて配置されている。
【0050】
右前側プレート53aと右後側プレート53bとの間に、支軸43及び右連結軸65のそれぞれが架け渡されている。右後側プレート53bには、右突出部53cが設けられている。右突出部53cは、右連結軸65よりも車幅方向外側へ突出するように形成されている。この右突出部53cに、右ロッド55の上端部が連結されている。
【0051】
左ロッド54は、
図3に示すように、側面視で上下方向に延びる細長い部材として構成されている。左ロッド54は、左回転アーム52と左前輪アーム12Lとを連結する。
【0052】
左ロッド54の長手方向一端部(下端部)は、左前輪アーム12Lの長手方向中途部に球面軸受を介して連結されている。左ロッド54の長手方向他端部(上端部)は、左回転アーム52の左突出部52cに球面軸受を介して連結されている。
【0053】
図5に示すように、左ロッド54と左回転アーム52との連結部分である左連結部分71は、左連結軸64よりも車幅方向外側に配置されている。また、車体3の非リーン状態で、左連結部分71は、支軸43よりも高く、左連結軸64よりも低い位置に配置されている。
【0054】
この構成で、左前輪アーム12Lが上下方向に揺動すると、左ロッド54が左前輪アーム12Lの揺動方向に応じて上昇又は下降する。これに連動して、左回転アーム52が支軸43を中心として回転する。この回転に応じてサスペンションユニット51が伸縮動作を行うことで、衝撃の緩衝が行われる。
【0055】
右ロッド55は、左ロッド54と同様に、側面視で上下方向に延びる細長い部材として構成されている。右ロッド55は、右回転アーム53と右前輪アーム12Rとを連結する。
【0056】
右ロッド55の長手方向一端部(下端部)は、右前輪アーム12Rの長手方向中途部に球面軸受を介して連結されている。右ロッド55の長手方向他端部(上端部)は、右回転アーム53の右突出部53cに球面軸受を介して連結されている。
【0057】
図5に示すように、右ロッド55と右回転アーム53との連結部分である右連結部分72は、右連結軸65よりも車幅方向外側に配置されている。また、車体3の非リーン状態で、右連結部分72は、支軸43よりも高く、右連結軸65よりも低い位置に配置されている。
【0058】
この構成で、右前輪アーム12Rが上下方向に揺動すると、右ロッド55が右前輪アーム12Rの揺動方向に応じて上昇又は下降する。これに連動して、右回転アーム53が支軸43を中心として回転する。この回転に応じてサスペンションユニット51が伸縮動作を行うことで、衝撃の緩衝が行われる。
【0059】
次に、車体3のリーンについて説明する。走行車両1は、
図5に示す状態から、左右の前輪アーム12の一方を上昇させ、他方を下降させることで、車体3を左右方向に傾けることができる。
図6には、左右の前輪4の高さを異ならせた状態が示されている。
図5との比較を容易にするために
図6では車体3が直立した状態が描かれているが、実際は、車体3は、
図6に示す左右の前輪4の高さの差に応じてリーンする。
【0060】
次に、サスペンション装置20の配置について説明する。
図4に示すように、車体3の非リーン状態において、サスペンション装置20は正面視で、支軸43を通る上下方向の直線に関して実質的に左右対称に構成されている。
【0061】
サスペンションユニット51に関して、正面視で、支軸43と、左連結軸64と、右連結軸65と、を頂点とする3角形75を仮想的に考えることができる。この3角形75は2等辺3角形であり、支軸43の部分が頂角に相当する。車体3の非リーン状態において、3角形75は左右対称である。
【0062】
左ロッド54の長さと右ロッド55の長さは、互いに等しい。また、車体3の非リーン状態において、左ロッド54と左回転アーム52の連結部分である左連結部分71と、右ロッド55と右回転アーム53の連結部分である右連結部分72と、が、略同じ高さとなっている。従って、左ロッド54と右ロッド55は、支軸43を通る上下方向の直線に関して左右対称となっている。
【0063】
この対称配置により、
図5の非リーン状態で、左前輪4Lがある距離だけ上昇/下降したときの左回転アーム52の回転角度と、右前輪4Rが同じ距離だけ上昇/下降したときの右回転アーム53の回転角度と、が等しくなる。
【0064】
図6のリーン状態でも、左前輪4Lがある距離だけ上昇/下降したときの左回転アーム52の回転角度と、右前輪4Rが同じ距離だけ上昇/下降したときの右回転アーム53の回転角度と、は殆ど等しくなる。
【0065】
サスペンションユニット51は左回転アーム52と右回転アーム53の間に配置されているので、振動の緩衝を左右対称的に行うことができる。
【0066】
このように、本実施形態の走行車両1は、左右共通のサスペンション装置20によって、車体3のリーンの有無を問わず、左前輪4L及び右前輪4Rのそれぞれからの振動を適切に軽減することができる。この結果、サスペンション機能を簡素な構成で実現することができる。
【0067】
走行車両1の走行時においては、路面等の影響で左右の前輪4に振動が発生する。この振動は、前輪アーム12及び左ロッド54/右ロッド55を介して、サスペンション装置20に伝達される。サスペンション装置20は、1つの支軸43によって車体3に支持されている。左右の前輪4の振動が1つのサスペンション装置20に作用するため、支軸43に加わる衝撃も大きい。この点、本実施形態では、U字状の保持体41によって、支軸43の前部と後部が支持されている。従って、この両持ち支持により支軸43のブレ等を効果的に低減して、サスペンション装置20による振動の緩衝を円滑に行うことができる。
【0068】
保持体41は、側面視で逆U字状に配置されている。従って、車体フレーム11から保持体41を介してサスペンション装置20を吊り下げるレイアウトを容易に実現することができる。この結果、走行車両1の前下部の構成(例えば、左右の前輪4の旋回を連動させる操舵リンク機構30)と干渉しにくいコンパクトな構成を得ることができる。
【0069】
左ロッド54は、側面視で鉛直方向に向けられて、左前輪アーム12Lと左回転アーム52とを連結している。同様に、右ロッド55は、側面視で鉛直方向に向けられて、右前輪アーム12Rと右回転アーム53とを連結している。従って、左右の前輪4の上下動を効率良くサスペンション装置20に伝達して、振動を緩衝することができる。
【0070】
車体3の非リーン状態で、左ロッド54と左回転アーム52との連結部分(左連結部分71)は、支軸43よりも高い位置に配置されている。右ロッド55と右回転アーム53との連結部分(右連結部分72)も同様である。この構成で、例えば左前輪4Lが路面の凸部に乗り上げて、
図5の矢印のように上方に移動した場合を考える。左前輪アーム12Lに連結されている左ロッド54は、左前輪4Lの上昇に連動して、左回転アーム52を押し上げる。このとき、左連結部分71は、支軸43を中心とする円弧に沿って、
図5の白抜き矢印の向きに移動する。このように、本実施形態では、左ロッド54の押上げによって左連結部分71が上方かつ車幅方向内側に移動するレイアウトとなっている。同様に、右ロッド55が右回転アーム53を押し上げる場合は、右連結部分72が上方かつ車幅方向内側に移動する。従って、サスペンション装置20が動作するために必要なスペースを、特に車幅方向でコンパクトとすることができる。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態の走行車両1は、車体3と、左前輪アーム12Lと、右前輪アーム12Rと、左前輪4Lと、右前輪4Rと、保持体41と、サスペンション装置20と、を備える。左前輪アーム12Lは、車幅方向の一方に配置され、車体3から前方に延びるように設けられ、車体3に上下方向に揺動可能に支持される。右前輪アーム12Rは、車幅方向の他方に配置され、車体3から前方に延びるように設けられ、車体3に上下方向に揺動可能に支持される。左前輪4Lは、左前輪アーム12Lに回転可能に支持される。右前輪4Rは、右前輪アーム12Rに回転可能に支持される。保持体41は、車体3に保持される。サスペンション装置20は、保持体41に支持され、左前輪4L及び右前輪4Rから車体3へ伝達される振動を軽減する。保持体41は、サスペンション装置20を前後方向で挟むようにU字状に形成される。サスペンション装置20は、保持体41に前後方向両側で支持された支軸43を有する。サスペンション装置20は、支軸43を中心として回転可能である。サスペンション装置20は、左前輪アーム12L及び右前輪アーム12Rよりも高い位置に配置され、左前輪アーム12L及び右前輪アーム12Rの揺動と連動して伸縮する。
【0072】
これにより、左前輪4L及び右前輪4Rを有する走行車両1において、車体3のリーンを実現することができる。また、左前輪4L及び右前輪4Rについて、サスペンション装置20を共通化することができ、走行車両1の簡易な構成を実現することができる。車体3のリーンに応じてサスペンション装置20が支軸43を中心として適宜回転することで、リーン時も、1つのサスペンション装置20で、左前輪4L及び右前輪4Rのそれぞれからの振動を適切に軽減することができる。サスペンション装置20は振動が伝達される過酷な状況下で使用されることが多いが、上記の構成では、U字状の部品である保持体41によって支軸43が両持ち支持される。従って、支軸43のブレを防止して円滑な振動低減を実現できるとともに、耐久性を向上させることができる。
【0073】
本実施形態の走行車両1において、サスペンション装置20は、サスペンションユニット51と、左回転アーム52と、右回転アーム53と、左ロッド54と、右ロッド55と、を有する。サスペンションユニット51は、車幅方向に伸縮動作可能に構成される。左回転アーム52は、サスペンションユニット51の伸縮方向の一端部に連結され、支軸43を介して保持体41に回転可能に設けられる。右回転アーム53は、サスペンションユニット51の伸縮方向の他端部に連結され、支軸43を介して保持体41に回転可能に設けられる。左ロッド54は、左回転アーム52と左前輪アーム12Lとを連結する。右ロッド55は、右回転アーム53と右前輪アーム12Rとを連結する。
【0074】
これにより、左回転アーム52、右回転アーム53及びサスペンションユニット51を用いて、サスペンション装置20を簡易に構成することができる。
【0075】
また、本実施形態の走行車両1において、左ロッド54は、側面視で鉛直方向に延びるように配置される。右ロッド55は、側面視で鉛直方向に延びるように配置される。
【0076】
これにより、サスペンション装置20による振動緩衝機能を向上させることができる。
【0077】
また、本実施形態の走行車両1において、車体3の非リーン状態で、左ロッド54と左回転アーム52との左連結部分71、及び右ロッド55と右回転アーム53との右連結部分72は、それぞれ、支軸43よりも高い位置にある。
【0078】
これにより、左ロッド54が左回転アーム52を押し上げるときに、左連結部分71が車幅方向内側へ移動することになる。同様に、右ロッド55が右回転アーム53を押し上げるときに、右連結部分72が車幅方向内側へ移動することになる。そのため、サスペンション装置20を設置するスペースについて、特に車幅方向でのコンパクト化を図ることができる。
【0079】
また、本実施形態の走行車両1において、車体3の非リーン状態では、支軸43と、左回転アーム52とサスペンションユニット51との左連結軸64と、右回転アーム53とサスペンションユニット51との右連結軸65と、を頂点とする3角形75は、正面視で左右対称である。左ロッド54と右ロッド55とが、正面視で左右対称に配置される。
【0080】
これにより、サスペンション装置20を左右バランス良く機能させることができる。
【0081】
また、本実施形態の走行車両1において、支軸43は、左右の前輪4の間を左右方向で2等分する位置に配置される。
【0082】
これにより、サスペンション装置20の作用が左右で偏ることを、簡単な構成で抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態の走行車両1において、U字状の保持体41の開放部41aに近い側に、支軸43が配置される。保持体41の内側において、支軸43よりも開放部41aから遠い側にサスペンションユニット51が配置される。
【0084】
これにより、保持体41及びサスペンションユニット51のコンパクトなレイアウトを実現できる。
【0085】
また、本実施形態の走行車両1において、保持体41は、下側を開放させたU字状に形成される。
【0086】
これにより、保持体41の反開放側が上部となるので、例えば、車体フレーム11が車体3の上部に配置されたレイアウトの走行車両に適用することが容易になる。
【0087】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0088】
上記の実施形態では、サスペンション装置20を取り付ける保持体41は、車体3(車体フレーム11)の前上部に配置されているが、これに限定せず、車体3の任意の箇所に配置することができる。
【0089】
左ロッド54及び右ロッド55は、側面視で鉛直方向とせず、ある程度傾斜した方向に配置することもできる。
【0090】
左ロッド54と左回転アーム52との左連結部分71、及び右ロッド55と右回転アーム53との右連結部分72は、それぞれ、支軸43よりも低い位置にあっても良い。
【0091】
保持体41の内側において、サスペンションユニット51が支軸43よりも開放部41aに近い側に配置されていても良い。
【0092】
保持体41は、下側を開放するように配置しなくても良い。
【0093】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0094】
1 走行車両
3 車体
4 前輪
4L 左前輪
4R 右前輪
12 前輪アーム
12L 左前輪アーム(左揺動部)
12R 右前輪アーム(右揺動部)
20 サスペンション装置
41 保持体
41a 開放部
43 支軸
51 サスペンションユニット
52 左回転アーム(左回転部)
53 右回転アーム(右回転部)
54 左ロッド
55 右ロッド
71 左連結部分
72 右連結部分
75 3角形